【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求を棄却する。ただし、昭和五五年六月二二日に行われた衆議院議員選挙 の東京都第三区における選挙は、違法である。 訴訟費用は、被告の負担とする。 ○ 事実 一 求める判決 (一) 原告
○ 主文原告の請求を棄却する。ただし、昭和五五年六月二二日に行われた衆議院議員選挙の東京都第三区における選挙は、違法である。 訴訟費用は、被告の負担とする。 ○ 事実一求める判決(一) 原告昭和五五年六月二二日に行われた衆議院議員選挙の東京都第三区における選挙を無効とする。 訴訟費用は被告の負担とする。 (二) 被告「本案前の申立」本件訴を却下する。 「本案の申立」原告の請求を棄却する。 二主張、(一) 原告「請求原因」 1 原告は昭和五五年六月二二日に行われた衆議院議員選挙(以下、本件選挙と略称。)の東京都第三区における選挙人である。 2 本件選挙は公職選挙法(昭和二五年法律一〇〇号。以下、公選法と略称。)について昭和五〇年法律六三号により改正された衆議院議員定数配分規定(公選法一三条、別表第一、同附則七ないし九項。以下、本件定数配分規定と略称。)に基づいて行われたが、本件定数配分規定による議員定数配分は右改正当時すでに人口分布に比例せず、かえつて人口の多い選挙区の議員数が人口の少ない選挙区の議員数より少ないというところもあり、平等選挙を保障する憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書に違反していたが、改正後の人口移動により右違憲性はますます増大したのに、その是正がされないまま本件選挙がなされるに至つた。従つて、右違憲である本件定数配分親定に基づく本件選挙は無効である(その詳細は別紙(一)、(二)記載のとおり。)。 3 よつて公選法二〇四条に基づき、原告の属する選挙区である東京都第三区における選挙を無効とする旨の判決を求める。 (二) 被告「訴却下を求める理由」別紙(三)の第一記載のとおり。 「請求原因に対する認否、反論」その1は認める。 その2のうち、本件定数配分規定か憲法に違反し、本件選挙は無効である、との主 。 (二) 被告「訴却下を求める理由」別紙(三)の第一記載のとおり。 「請求原因に対する認否、反論」その1は認める。 その2のうち、本件定数配分規定か憲法に違反し、本件選挙は無効である、との主張は争う。右定数配分規定は憲法に違反。するものではなく、本件選挙は有効である(その詳細は別紙(三)の第二、被告の主張欄および別紙(四)、(五)記載のとおり。)。 三証拠(省略)○ 理由一被告の本案前の上張について。 (一) 被告は、本件訴は公選法二〇四条が規定する選挙無効の訴の範ちゆうに入るものではなく、不適法である、と主張する。確かに、原告が本訴の根拠として主張する公選法二〇四条は、選挙規定の有効を前提とし、選挙の管理執行上の瑕疵があつた場合に当該選挙を無効とするための訴訟を予想して規定されており、選挙規定自体の違憲、無効を理由として選挙の効力を争う場合までをも予想し、規定されたものでないことは、同条に定める訴訟の被告が選挙管理委員会とされていることや、訴訟の結果、当選人がなくなつたなどの場合の再選挙に関する規定(同法一〇九条、一二四条)などに照らすとまず疑いはない。 しかし、選挙規定に基づく単なる管理執行上の瑕疵以上に重大な瑕疵というべき選挙規定それ自体の違憲、無効を理由とする選挙無効の訴が、前記規定の許容する範囲外であり、かつそのような訴を許すべき実定法規が存在しないからとしてその提起を許されないとするのは、本末転倒であつて妥当ではなく、選挙人は右のような場合には公選法二〇四条の訴訟形式をかりて選挙無効の訴を提起することができると解すべきである(最大判昭和五一年四月一四日民集三〇巻三号二二三頁)。 被告の主張は失当であり、採用できない。 (二) また被告は、国会議員の選挙区別定数をいかに定めるかは高度の政治問題に属し、立法府が自ら解決 ある(最大判昭和五一年四月一四日民集三〇巻三号二二三頁)。 被告の主張は失当であり、採用できない。 (二) また被告は、国会議員の選挙区別定数をいかに定めるかは高度の政治問題に属し、立法府が自ら解決すべき筋合であるから、定数配分規定の効力判定は司法審査に親しまず、これを訴訟の中心問題とする本件訴は不適法である、と主張する。 右定数を国会がいかに定めるかについては種々の政治的判断が加えられるべきことは否定できないが、定数配分規定の内容が合理性を欠く場合においても司法審査を排除する程高度の政治性を有するとは思われず、また被告主張のような理由でその効力の判定を司法審査から除外すべきであるとも解し難い。 被告の主張は失当であり、採用できない。 二請求の当否について。 (一) 請求原因1は当事者間に争いない。 (二) 原告は、本件定数配分規定は平等選挙を保障する憲法に違反するから、同規定に基づいて行われた本件選挙は無効である、と主張するから、以下、この点について検討する。 1 衆議院議員の選挙区および各選挙区において選出すべき議員数は公選法別表第一の定めるところによるとされ(憲法四三条二項、四七条、公選法一三条一項)、別表第一は全国を行政区劃に従い、地域的に分割して選挙区を編成し、これに議員定数を細分して一定の議員数を割当て、各選挙区において選挙することとしているから(公選法一二条一項)、右選挙の結果選ばれた議員は全国民の代表ではあるが(憲法四三条一項)、その選出方法としては地域代表制がとられているものであることは疑いをいれない。 2 別表第一は、昭和三九年法律一三二号による改正の結果、選挙区の数は一二四、議員定数は四九一人と増加、増員され、更に昭和五〇年法律六三号による改正にかかる本件定数配分規定により選挙区の数は一三〇、議員定数は五一一人に増加 法律一三二号による改正の結果、選挙区の数は一二四、議員定数は四九一人と増加、増員され、更に昭和五〇年法律六三号による改正にかかる本件定数配分規定により選挙区の数は一三〇、議員定数は五一一人に増加、増員された。 3 憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書を通覧すると、主権在民の民主主義を標榜し、国民の自由、平等に重きをおく憲法が、国会議員の選挙につき、いわゆる形式的平等主義すなわち国民個々人の事実上の相違を捨象して各人を均しく取扱うことを要請する平等選挙原則をとることは明白であり、この選挙における平等原則が、単に選挙資格の平等を意味する、投票の数的平等の保障を意味するだけではなく、前記のように地域代表制をとる選挙制度下において、より実質的な価値である選挙権の内容すなわち投票価値の平等を異なる選挙区間においても保障するものであることは、「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」との憲法前文および両議院は全国民の意思を適正、忠実に反映し、これを代表する議員で組織される、との趣旨の同法四三条一項から見ても、明らかである。 そしてこの選挙区間の投票価値の平等が、各選挙区において選出する議員一人当り人口または有権者数の均等化によつて実現されるべきことについても多言を要しない。 公選法別表第一がその末尾において、「本表は・・・・・・直近に行われた国勢調査の結果によつて更正するのを例とする。」と規定しているのも、選挙区間の投票価値の平等を実現するため、人口移動に伴つて生ずるその時時の人口分布に比例して各選挙区への議員定数配分がなされるべきこと、すなわち人口比例主義をとることを示すものにほかならない(この別表第一末尾の規定は訓示的なものではあるが、人口(有権者数もおおむね人口に比例すると考えて差支えない。)把握の方法をつく れるべきこと、すなわち人口比例主義をとることを示すものにほかならない(この別表第一末尾の規定は訓示的なものではあるが、人口(有権者数もおおむね人口に比例すると考えて差支えない。)把握の方法をつくして更正の必要が生じたと認められるときは、できる限り早期に、更正がなされるべきことを命じているものである。)。 定数配分に際しこの人口比例主義を最大限に尊重すべきことは、選出すべき議員数が同数である他の区(過疎区)に比し、人口もしくは有権者数が二倍の選挙区(過密区)の選挙人の一票の投票価値は右過疎区の選挙人の一票の投票価値の二分の一に過ぎず、このことは右過密区の選挙人一票に対し右過疎区の選挙人には二票が与えられていることと同視できるという不合理を生ずることに照らしても明らかであり、単にその属する選挙区(これは或る行政区劃に住所を置くという偶然事で決せられる。公選法二一条。)の如何により、異なる選挙区の選挙人間に、右述のような投票価値の差が生ずることは前記平等原則に反するものであつて、到底、容認できない。 4 この点に関し、被告は、議員定数配分については、人口的要素のほかに行政区劃の歴史的沿革、住民構成、交通事情、産業、経済、自然等の地理的条件などのいわゆる非人口的要素をも考慮すべきであり、また常々、政治的、経済的、文化的に不利益を受けている過疎地域を、議員定数配分土、都市部より多少優遇し、その投票価値を大きくすることが必要であると主張する。 もとより選挙区の設定、分割につき行政区劃が基準となつていること前記のとおりであるから、選挙区の設定、分割と密接、不可分の関係にある、選挙区への定数割当につき、行政区劃がもつ影響力は小さいものではないが、もともと不確定要素の多い非人口的要素を強調することは前記人口比例主義の立場と相容れないものであり、ここでこ 可分の関係にある、選挙区への定数割当につき、行政区劃がもつ影響力は小さいものではないが、もともと不確定要素の多い非人口的要素を強調することは前記人口比例主義の立場と相容れないものであり、ここでこれまでこの非人口的要素への過度の考慮が人口比例主義の貫徹をいかに妨げてきたかを想起すべきである。 また議員定数配分における過疎地域優遇についての被告の主張は、都市部の住民は常々経済的、文化的に利益を受けているとの見解を前提とするものであるが、過疎地域とか都市部とかの概念それ自体あいまいであり、右見解は漠然として具体性に欠けるのみならず、過密都市における生活環境、物価などの問題をも考え合わせると、右前提自体採りえないものである。 5 このように考えてくると、端数の切り上げ処理の問題やある程度の前記非人口的要素を考慮に入れるにしても、選挙区のなかで議員一人当り人口もしくは有権者数の最少のもの(最大過疎区)の議員一人当り人口もしくは有権者数と選挙区のなかで議員一人当り人口もしくは有権者数の最多のもの(最大過密区)の議員一人当り人口もしくは有権者数との比率(いわゆる最大格差)がおおむね一対二を超えるような場合には、そのような定数配分を定めた定数配分規定は、全体として、前記憲法が保障する選挙における平等原則に反し、憲法に違反するといわざるをえない。 6 この点に関し、被告は、最大過疎区と最大過密区における議員一人当り人口もしくは有権者数を比較すべきでなく、全国の人口を全国議員定数で除した全国平均議員一人当り人口を基準とし、これとの比較をなすべきである、と主張する。 しかしもともと不平等とか差別とかは、抽象的基準との比較で決せられるものではなく、具体的な存在間における格差としてこれをとりあげて決せられるべき問題であるのみならず、被告主張のような全国平均的数値 しかしもともと不平等とか差別とかは、抽象的基準との比較で決せられるものではなく、具体的な存在間における格差としてこれをとりあげて決せられるべき問題であるのみならず、被告主張のような全国平均的数値を基準とすれば、選挙区への議員割当数が過多、または過少であつても、その異常性が平均値に没入され、看過されるおそれがあるから、被告の右主張はたやすくは採用できない。 また前記のような、最大格差いかんにより定数配分規定全体の合違憲性をみる、という方法をとらず、特定選挙区における議員一人当り人口もしくは有権者数とその全国平均値とを比較検討して、定数配分規定中、当該選挙区に関する部分だけの効力を吟味する立場(いわゆる可分説)があるが、定数配分においては過密区に対する議員数配分の過少だけではなく、過疎区に対する議員数配分の過多も問題とすべきである。過疎区議員数減員と過密区議員数増員とは相関連せしめることが重要であり、議員定数の総枠は不動のものとして、人口移動に伴ない、議員数の選挙区間移動がなされるべきである。もし可分説をとれば安易に過密区に対する議員数増員のみがなされ、人口移動が続く限り、議員定数が無限に増加していくおそれがある。従つてこの立場は採りえない。 7 右述したところを前提として、本件定数配分規定が前記平等原則に反し、憲法に違反するかどうかを考える。 前記のように本件定数配分規定は昭和五〇年法律六三号による改正にかかるものであるが、成立に争いない乙第一号証の一ないし三、乙第二号証の三によると、右改正は改正前直近の国勢調査である昭和四五年施行の国勢調査により把握された人口を斟酌してなされたものであること、右国勢調査時における各選挙区の人口および議員一人当り人口は別表一のとおりであることが認められ、これによると議員一人当り人口の最少区(最大過疎区) り把握された人口を斟酌してなされたものであること、右国勢調査時における各選挙区の人口および議員一人当り人口は別表一のとおりであることが認められ、これによると議員一人当り人口の最少区(最大過疎区)である兵庫県第五区(議員数三、人口三三八、一〇五人、議員一人当り人口一一二、七〇一人)と最大過密区である東京都第七区(議員数四、人口一、三一六、七九九人、議員一人当り人口三二九、二〇〇人)の各議員一人当り人口を比較すると、一対二・九二であることが認められる。 従つて前記基準に照らすと、定数配分の結果、最大格差が一対二を超える選挙区を是認する本件定数配分規定は、全体として、その改正当時すでに、前記平等原則に反し、憲法に違反する、といわざるをえない(なお西ドイツ連邦選挙法においては、平均人口からの乖離はプラス、マイナスとも一〇〇分の三三・三分の一をこえてはならない、とされている由であるが、プラス、マイナスが右比率の両選挙区間の最大格差は一対二となることから、右規定の合理性を認めることができる。前記国勢調査時における全国人口一〇四、六六五、一七一人を議員定数五一一で除すると、議員一人当り全国平均人口は二〇四、八二四人となり、これと比較すると前記兵庫県第五区の議員一人当り人口は、マイナス一〇〇分の四四であり、東京都第七区の議員一人当り人口はプラス一〇〇分の六〇であり、いずれも一〇〇分の三三・三分の一を超えている。念のため原告の選挙区である東京都第三区では前記国勢調査時における人口一、〇八二、九五〇人、議員数四、議員一人当り人口二七〇、七三八人であつて、これを議員一人当り全国平均人口と比較するとプラス一〇〇分の三二である。)。 8 全国各選挙区における人口もしくは有権者数は五年毎に行われる国勢調査(統計法四条二項但書の簡易国勢調査を含む。)のほか、国会議 員一人当り全国平均人口と比較するとプラス一〇〇分の三二である。)。 8 全国各選挙区における人口もしくは有権者数は五年毎に行われる国勢調査(統計法四条二項但書の簡易国勢調査を含む。)のほか、国会議員選挙の際、または毎年公選法に従つて調製登録される基本選挙人名簿、もしくは住民基本台帳法による同台帳記載者調査によつても把握可能であり、現にこれらによる人員数は毎年公表されているものであるが、前記昭和五〇年における定数配分規定改正時の人口資料を提供した昭和四五年施行の国勢調査後に把握された人口、有権者数に基づいて、最大過疎区と最大過密区間における議員一人当り人口もしくは有権者数の比率(最大格差)を以下、検討してみる(なお、以下の各選挙時における有権者数はいずれも自治省又は都道府県選挙管理委員会発表のもので当裁判所に顕著な事実である。)。 (1) 昭和四七年一二月一〇日に行われた衆議院議員選挙における有権者数は本件定数配分規定を定めた当時、既に判明していたと認められるところ、これに本件定数配分規定における議員数をあてはめて計算した場合の最大過疎区である兵庫県第五区(議員数三、当日有権者数二三七、五一六人、議員一人当り有権者数七九、一七二人)と最大過密区である東京都第七区(議員数四、当日有権者数九三九、四六六人、議員一人当り有権者数二三四、八六六人)間の最大格差は、一対二・九六である(全国平均議員一人当り有権者数一四四、三六三人と両選挙区の議員一人当り有権者数との比率は、兵庫県第五区のそれは、マイナス一〇〇分の四五であり、東京都第七区のそれは、プラス一〇〇分の六二である。)。 (2) 成立に争いない乙第二号証の四によると、昭和五〇年に施行された国勢調査における各選挙区の人口および議員一人当り人口は別表二のとおりであることが認められ、これによれば、 〇分の六二である。)。 (2) 成立に争いない乙第二号証の四によると、昭和五〇年に施行された国勢調査における各選挙区の人口および議員一人当り人口は別表二のとおりであることが認められ、これによれば、最大過疎区である兵庫県第五区(議員数三、人口三三二、二四三人、議員一人当り人口一一〇、七四八人)と最大過密区である千葉県第四区(議員数三、人口一、二三五、五三四人、議員一人当り人口四一一、八四五人)間の最大格差は、一対三・七一である(全国平均議員一人当り人口二一九、〇六〇人と両選挙区の議員一人当り人口との比率は、兵庫県第五区のそれは、マイナス一〇〇分の四九であり、千葉県第四区のそれは、プラス一〇〇分の八八である。)。 (3) 昭和五一年一二月五日に行われた衆議院議員選挙における最大過疎区である兵庫県第五区(議員数三、当日有権者数二四一、二一三人、議員一人当り有権者数八〇、四〇四人)と最大過密区である千葉県第四区(議員数三、当日有権者数八四三、二四七人、議員一人当り有権者数二八一、〇八二人)間の最大格差は、一対三・四九である(全国平均議員一人当り有権者数一五二、四九八人と両選挙区の議員一人当り有権者数との比率は、兵庫県第五区のそれは、マイナス一〇〇分の四七であり、千葉県第四区のそれは、プラス一〇〇分の八四である。)。 (4) 昭和五四年一〇月七日に行われた衆議院議員選挙における最大過疎区である兵庫県第五区(議員数三、当日(正確には同年九月一〇日現在、以下同じ)有権者数二四四、六九〇人、議員一人当り有権者数八一、五六三人)と最大過密区である千葉県第四区(議員数三、当日有権者数九四九、一八八人、議員一人当り有権者数三一六、三九六人)間の最大格差は、一対三・八七である(全国平均議員一人当り有権者数一五七、八八四人と両選挙区の議員一人当り有権者数との比率 員数三、当日有権者数九四九、一八八人、議員一人当り有権者数三一六、三九六人)間の最大格差は、一対三・八七である(全国平均議員一人当り有権者数一五七、八八四人と両選挙区の議員一人当り有権者数との比率は、兵庫県第五区のそれは、マイナス一〇〇分の四八であり、千葉県第四区のそれは、プラス一〇〇分の一〇〇である。)。 (5) 本件選挙における最大過疎区である兵庫県第五区(議員数三、当日有権者数二四四、一二六人、議員一人当り有権者数八一、三七五人)と最大過密区である千葉県第四区(議員数三、当日有権者数九六四、〇五四人、議員一人当り有権者数三二一、三五一人)間の最大格差は、一対三・九四である(全国平均議員一人当り有権者数一五八、三六六人と両選挙区の議員一人当り有権者数との比率は、兵庫県第五区のそれは、マイナス一〇〇分の四八であり、千葉県第四区のそれは、プラス一〇〇分の一〇二である。なお原告の選挙区である東京都第三区の議員数四、当日有権者数七六七、九一九人、議員一人当り有権者数一九一、九七九人、議員一人当り全国平均有権者数との比率はプラス一〇〇分の二一である。)。 9 これら事実に照らすと、本件定数配分規定による定数配分は、改正後、人口の移動によりますます人口もしくは有権者数の分布と乖離し、過疎区と過密区との格差が更に大となつて平等原則違反の程度を強めていることが理解されるところ、右改正後、人口もしくは有権者数は前記のように種々の方法で把握可能であつたにもかかわらず、本件選挙までの間、何らの是正措置はとられておらないことは公知の事実であり、このことは、本件定数配分規定の違憲性を一層大きくするものである。 (三) しかし、いま、本件定数配分規定の違憲を理由に本件選挙の全部又はその一部を無効とすることにより惹起するであろう種々の法律的、政治的混乱、そして 配分規定の違憲性を一層大きくするものである。 (三) しかし、いま、本件定数配分規定の違憲を理由に本件選挙の全部又はその一部を無効とすることにより惹起するであろう種々の法律的、政治的混乱、そしてそれにもまして、本件選挙に際し多くの選挙人および候補者が費やした莫大な労力、エネルギーを無にする結果になることについて考えると、これを無効と判断することには躊躇せざるをえない。 三結論よつて行政事件訴訟法三一条一項に示された一般的法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める原告の請求を棄却するとともに、本件選挙のうち原告の属する選挙区である東京都第三区の選挙が違法であることを宣言することとし、訴訟費用の負担につき同法七条、民訴法九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官吉岡進手代木進上杉晴一郎)別紙(一)第一平等選挙原則の規範的特質―「形式的平等」の原理一わが日本国憲法は、選挙に関する憲法上の原則として、平等選挙の原則を採用している。 しかして、この原則は、その形式的性格によつて一般平等原則と区別されるべき規範的特質を有する。ここに「形式的」性格とはリンクのいう平等の「ラジカルな性向」、「ラジカルな普遍化」を指す。したがつて、「形式的平等」は、個々人の事実上の相違を全く顧慮することなく各人を均しく取扱うこと、換言すれば画一的平等ないし算術的平等を要請する。一般平等原則が様々な相違を属性とする国民個々人を前提とし、国民を謂わば「人間」として把握するのに対して、平等選挙の原則は、政治的権利の担い手としての国民を一般的・抽象的な権利主体としての「公民」として把握するのである。これは、選挙においては「公民のみを識る」 (マウンツ)ことがデモクラシーの本質であることに起因する。かくして国民の直接投票によつてなされ ・抽象的な権利主体としての「公民」として把握するのである。これは、選挙においては「公民のみを識る」 (マウンツ)ことがデモクラシーの本質であることに起因する。かくして国民の直接投票によつてなされるべきデモクラシー国家の主権的意思形成の領域においては、すべての国民は絶対的に平等に評価されなければならず、選挙の平等は、その徹底的な形式化を媒介としてのみ実質化が可能とされる。 二平等選挙原則のこのような性格は、当然ながら、立法裁量の範囲、限界基準についての厳格さを要請する。選挙法の制定には、専ら平等選挙原則の具体化または補完のみが許容されるにすぎない。 このような「形式的平等」の原理に支えられた平等選挙原則の性格は、本来、普遍的なものであり、憲法に所謂障害条項の存しないわが国衆議院議員の選挙についても当然に妥当するものである。 したがつて、そこで選挙の平等が問題とされる場合には、一般平等原則における「実質的平等」や「相対的平等」の原理は妥当せず、画一的平等、算術的平等を志向する「形式的平等」の原理が妥当するものと解すべきである。 第二最高裁大法廷判決(昭五一・四・一四)の問題点一最高裁判所大法廷が投票価値の平等が「憲法の要求するところである」ことを初めて是認したのは昭和五一年四月一四日判決(民集三〇巻三号二二三頁)においてであつた。 しかして、判決は、選挙においては「徹底した平等化」が要請されるものとするが、まことに遺憾ながら、平等選挙原則と一般平等原則との相違については、精々、単に量的な徹底度の差として把握するにとどまり、両者の質的相違に及ぶところがないのみならず、議員配分に際して立法府が考慮すべき事項について、非人口的要素を殆んど無限に近く認める傾向にさえある。すなわち、判決は、人口的要素が「最も重要かつ基本的な基準」であることを認 ころがないのみならず、議員配分に際して立法府が考慮すべき事項について、非人口的要素を殆んど無限に近く認める傾向にさえある。すなわち、判決は、人口的要素が「最も重要かつ基本的な基準」であることを認めながらも、それ以外に「実際上考慮され、かつ、考慮されてしかるべき要素」は少くないとし、都道府県のほか、それを細分化するにあたつては、従来の選挙の実績、選挙区としてのまとまり具合、市町村その他の行政区画、面積の大小、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況等を挙げ、さらに人口の都市集中化等の社会の急激な変化等をも「国会における高度に政策的な考慮要素」の一つであるとする。 しかしながら、平等選挙原則からすれば、行政区画以外は殆んど考慮に値せず、とりわけ「住民構戒」を考慮の対象とするにおいては、正にゲリマンダーリングを是認するに等しい結果をもたらすにいたるものと評しうる。 思うに、判決においては、平等選挙原則と一般平等原則との原理上の相違が看過されている。形式的平等を指導理念とする平等選挙原則においては、「実質上の考慮」は原則として許されず、人口的要素のみを考慮すべき要素とすることが要請されるのである。 判決におけるこのような非人口的要素への不当な配慮の傾向は、選挙の場合においても、一般平等原則の指導理念である相対的平等、実質的平等を妥当せしめた結果生じたものであり、厳しく批判されるべきものといいうる。(註一)二ついで判決は、選挙立法に際しての立法裁量の範囲を著しく広いものと把握している点にも大きな難点をもつ。すなわち、「投票価値の平等は、さきに例示した選挙制度のように明らかにこれに反するもの、その他憲法上正当な理由となりえないことが明らかな人種、信条、性別等による差別を除いては、原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは 選挙制度のように明らかにこれに反するもの、その他憲法上正当な理由となりえないことが明らかな人種、信条、性別等による差別を除いては、原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものと解さなければならない」とし、さらに、「選挙人の投票価値の不平等が、国会において通常考慮しうる諸般の要素をしんしやくしてもなお、一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきであ」るとする。 この判示では、選挙立法についての立法裁量の限界について、「合理性」の基準を前提として所謂「明白原則」が採用されており、立法裁量の範囲は、結果的には一般平等原則の場合を超えて広範なものと理解されているかのごとくであり、これまた遺憾にたえないところである。 平等選挙原則においては、一般平等原則における「合理性」の基準の適用はなく、「特別の正当化」事由のみが差別を正当化する唯一の理由と解すべきである。 ちなみにわが憲法第四七条について触れれば、それは立法府に対して、国会議員選挙の執行法律の制定を強制し、立法義務を課するものである。しかして、所謂「付託条項」が立法府に対して保障する裁量の範囲は、その規定形式と規定内容によつて様々に異なり、当該条項から直ちに広い裁量の自由を引出すことは理論上困難である。同条は、一見、立法府に何らの拘束を課さずに広範な裁量の自由を保障しているように解されないではないが、その規定内容は、実に、主権原理と直結する国会議員選挙に関する事項そのものであり、憲法の規範的要請、とりわけ選挙に関する諸原則に具体的形象を与える権限が付与されているにすぎず、立法裁量はその枠内でのみ認められるものである。 (註一) 一般平 会議員選挙に関する事項そのものであり、憲法の規範的要請、とりわけ選挙に関する諸原則に具体的形象を与える権限が付与されているにすぎず、立法裁量はその枠内でのみ認められるものである。 (註一) 一般平等原則の指導原理である「相対的平等」は、政治的識見や知識に基づく差別を「少くとも一般的・抽象的には」排除することができない。このことはかつてのプロイセン「三級選挙制」にみられるような不平等選挙に対しては、一般平等原則によつて対抗することが困難なことから容易に窺い知ることができよう。 第三昭和五〇年の議員配分改訂の経緯・実態とその違憲性一本件選挙は、昭和五〇年法律第六三号により改訂された衆議院議員配分規定に基づいて執行されたものである。 そこで、われわれは、その実態を「山賊の山分け」もどきと評するに何らの躊躇すら感じない改訂作業の一端を紹介した上、その平等選挙原則違反を論証する。 その改訂作業は、昭和四五年施行の国勢調査の結果に基く人口を基礎とし、議員定数に減員なし、人口比は上下三倍以内とするということで開始された。したがつて、議員一人当りの人口が全国中最少である兵庫五区のそれである一一二、七〇一に対し、その三倍に当る三三八、一〇三を超える選挙区が是正対象とされた。 それによると、議員一人当りの人口が三三六、一二一である愛知六区は是正対象から除外されるべきなのであるが、某党(前回総選挙において同区の次点者を出した政党)の提唱で、前記一一二、七〇一を一一二、〇〇〇と置き換え、その三倍に当る三三六、〇〇〇を超えるとして右区を是正対象に加えた。(同区の議員数は三、人口は一、〇〇八、三六三であつて議員一人当りの人口は三三六、一二一であるから、僅か一二一、百分率で〇・一パーセントの差で議員数を一つ増やしたことになる。)こうなると、他の選挙区についても右 三、人口は一、〇〇八、三六三であつて議員一人当りの人口は三三六、一二一であるから、僅か一二一、百分率で〇・一パーセントの差で議員数を一つ増やしたことになる。)こうなると、他の選挙区についても右某党だけでなく他の政党からも、この際に、という欲望が絡み、同じ上下三倍偏差でも基準を議員一人当りの平均人口である二一三、一六七(総人口一〇四、六六五、一七一を議員定数四九一で除した数)の二分の一偏差による上下三倍偏差に代置して神奈川一二区と兵庫一区をも是正区に追加し、さらに、右二一三、一六七を二一三、〇〇〇に置き換えることによつて神奈川一区の増員幅を〇・五パーセントの差(註一)で二名から三名に押し上げ、結局、合計二〇名増としたものである。(註二)二さて、わが衆議院議員総選挙は、昭和二二年の法改正によつて戦前の一区三ないし五名の所謂中選挙区制に復帰した。そこでは選挙区数一一七、議員定数四六六とされたが、現行の公職選挙法(昭和二五年四月一五日法律第一〇〇号)別表第一はこれをそのまま継承した。 しかして、所謂中選挙区制における議員配分方式には、配当基数にて除して得た商の小数点部分に残余議員数を配当するに際して、その剰余の大なるものから順次に一議席ずつ追加する「最大剰余方式」と過半数に達した剰余に無条件で一議席を追加する「過半数剰余方式」とがあるが、右別表第一は、都道府県単位において前者に拠つたものであつた。 しかるに前項で見た昭和五〇年改訂は、そのいずれにも拠らず、強いて名付ければ「人口比上下概ね三倍方式」に拠つたというのである。したがつて、それがわが憲法の要請する平等選挙原則を著しく逸脱するものであることは明白である。 三 「人口比三倍、四倍」が放置されたり、はたまた「三倍以内に」という審議が立法府で罷通るなどという国はわが国を措いてはすでに存在 法の要請する平等選挙原則を著しく逸脱するものであることは明白である。 三 「人口比三倍、四倍」が放置されたり、はたまた「三倍以内に」という審議が立法府で罷通るなどという国はわが国を措いてはすでに存在しない。 現代の代表民主制国家に共通しているところは、定数配分問題は定数配分かぎりのものとし、そこには政治問題を介入させない努力と工夫がなされていることおよび正に「一枚の紙を剥がして二枚にする」作業が理論面だけではなく、現実に実践されていることである。ラウンド・ナンバーや切上げ数値によつては混乱は必至であつて、そこに政治の介入を許す余地を生ずることが充分に考慮されているのである。(註三)われわれは、ここで諸外国に見る厳格な人口偏差基準の設定と運用が何に基づくものであるかについて深思すべきである。 思うに、議員定数配分問題はすぐれて憲法上の問題である。それは代表民主制の根幹に直接係わるものであるから、その国の憲法に特段の規定が存在しない限り、議員定数配分における人口偏差の限界基準は著しく厳格なものでなければならない。 さらにいえば、それは代表民主制国家の存在にとつて正に根本問題であることが充分認識されているからなのである。 四第二次大戦はわが国に民主制をもたらした。そして第二三回総選挙はその直後に行われたものである。われわれは、その選挙に用いられた議員定数配分規定から窺える当時の立法者の意気込みに新生民主制の息吹きを感ぜずにはおられない。 昭和三九年二月の時点においてすら、人口に比例する議員定数配分が「法の下の平等の憲法の原則からいつて望ましいところである」(最判民集一八巻二号二七〇頁)としか説かれなかつた時代背景から推して、その感は一入である。 ましてや、社会の進化、平等観念の滲透により「投票の価値」の平等が憲法上の要請と解されるにいたつた現今に 」(最判民集一八巻二号二七〇頁)としか説かれなかつた時代背景から推して、その感は一入である。 ましてや、社会の進化、平等観念の滲透により「投票の価値」の平等が憲法上の要請と解されるにいたつた現今において、第三三回総選挙の結果を生んだ議員定数配分規定が違憲の判断を受けたのは当然といつてよい。 しからば、本件選挙の場合はどうであろうか。本件選挙がすでに最高裁判所大法廷による違憲判断が確定した議員定数配分規定について昭和五〇年法律第六三号による公職選挙法の改正を経た新規定(以下、本件議員定数配分規定という。)に基いて行われたものであることは公知のところである。 そして、改正作業に用いられた議員定数配分の方式および基準そのものに多大の欠陥が認められ、そのため本件議員定数配分規定はいまだ憲法の要請に適合するにいたつていないというべきである。 よつて、違憲の法令に基いて行われた本件選挙が無効とされるべきことは当然である。 (註一) 二一三、一六七であれば、二分の一偏差の上限は三一九、七五〇となり、神奈川一区の定数五、人口二、二三八、二六四は二名増でよいが、二一三、〇〇〇であれば、三名増とせざるを得ないことになる。 (註二) この間の事情については、藤田博昭「日本の選挙区制」(東洋経済新報社)一九八頁以下に詳しい。 (註三) 例えば、オーストラリアでは、配当基数の算出および配当に用いる数値は小数点三位まで求めて同四位以下を切捨てるよう規定されている。(同国下院議員選挙法第五条第二、三項)以上別紙(二)第一昭和五〇年法律第六三号による衆議院議員定数配分の改訂がもたらした「人口偏差」の変化について一アメリカ合衆国最高裁判所が同国の連邦下院の議席配分について「実行できるかぎり精密に」投票の価値を等しくするよう要求し、その論拠を同国憲法第一四修正のい がもたらした「人口偏差」の変化について一アメリカ合衆国最高裁判所が同国の連邦下院の議席配分について「実行できるかぎり精密に」投票の価値を等しくするよう要求し、その論拠を同国憲法第一四修正のいわゆる平等保護条項に求めず、歴史的背景を踏まえて同第一条第二節の解釈に求めたことは、前回の準備書面に掲げたA対B判決において明らかである。 そして、このことは本件事案の解決について極めて示唆に富むところであるが、この点については後に触れることとし、われわれは、まず、前掲C対DおよびE対F各判決において違憲判断の対象とされたそれぞれの議席配分の実態を明らかにするために用いられた手法に倣つて、わが国の衆議院議員定数配分の実態を、昭和五〇年法律第六三号による改訂の前後に焦点を絞つて分析することにする。 二全国を多数の選挙区に区割りし、かつ、一区に三ないし五名の議員を配分するいわゆる中選挙区制を採用するわが国においては、中選挙区制に特有の準備作業が必要となるので、その方法を説明する。 (一) まず、議員一人あたりの適正人口を考えると、それは人口総数を議員定数で除することによつて得られる。今、これを「Q」という記号で示す(「Q」は整数値とならないのが通例である)。 ついで、中選挙区制における理論上の適正な係数関係を考えると、それは三人区には「Q」の三倍に等しい人口が、四人区にはその四倍に等しい人口が、さらに五人区にはその五倍に等しい人口がそれぞれ過不足なく存在する場合にのみ成立することは明らかである。 換言すれば、三人区の「理論上の適正人口」は三「Q」、四人区のそれは四「Q」、五人区のそれは五「Q」である。 (二) そこで、各区における「人口」と「理論上の適正人口」との差を考える。 「理論上の適正人口」に比して過剰の人口を有する区はいわば「過小代表」区であり は四「Q」、五人区のそれは五「Q」である。 (二) そこで、各区における「人口」と「理論上の適正人口」との差を考える。 「理論上の適正人口」に比して過剰の人口を有する区はいわば「過小代表」区であり、反対に、人口不足の区はいわば「過大代表」区ということになるが、各区の「過小」度または「過大」度を「Q」からの偏差値をもつて表示する(この偏差値こそが前掲各事件においてアメリカ合衆国最高裁判所判決に示されている各表中の「偏差」値に該当するものであるが、この点については後に述べる)。 三さて、本書面の末尾に添附した「改訂効果一覧表」は、昭和五〇年法律第六三号による衆議院議員定数配分規定の改訂の前後における各選挙区の「偏差」値をその算出過程とともに示したものであるが、これによると右改訂にどの程度の効果が認められるかが一目瞭然である。以下、各欄の表示について若干の説明を加える。 (一) 「人口」欄には、昭和四五年施行の国勢調査の結果に基づく各区の人口が表示してある。これは前記改訂がそれを資料として行われたことによる。ただし、改訂後の「人口」欄についてはそれによつて変動があつたもののみを表示した(なお、乙第一号証の三参照)。 (二) 「過不足人口」欄には、「人口」と「理論上の適正人口」(人口総数を議員定数で除して得た数に「議員数」を乗じた数)との差が、人口がそれより大の場合は+(プラス)にて、人口がそれより小の場合には一 (マイナス)にて示してある。 (三) 「偏差」欄には、右の「過不足人口」の「Q」に対する比率が百分率で示してある。 (四) この一覧表の示す「偏差」値について、上限グループ、下限グループの各第一位から第三位までを列記すると次のとおりである。 改訂前の上限グループ(1) 東京都第七区プラス六八八・六七%(2) 大阪府第三区 偏差」値について、上限グループ、下限グループの各第一位から第三位までを列記すると次のとおりである。 改訂前の上限グループ(1) 東京都第七区プラス六八八・六七%(2) 大阪府第三区プラス六二二・九三%(3) 千葉県第一区プラス五六三・九二%同下限グループ(1) 秋田県第二区マイナス一五四・九〇%(2) 新潟県第三区マイナス一五一・二九%(3) 長野県第三区マイナス一五〇・七五%改訂後の上限グループ(1) 兵庫県第二区プラス二七四・二二%(2) 神奈川県第二区プラス二六八・三一%(3) 北海道第一区プラス二六四・四三%同下限グループ(1) 栃木県第二区マイナス一五一・〇八%(2) 秋田県第二区マイナス一四四・九一%(3) 長野県第三区マイナス一四〇・六〇%(五) 右のところから明らかなように昭和五〇年改正が「偏差」値にもたらしたものは、上限においてプラス六八八・六七%、下限においてマイナス一五四・九〇%の隔りから上限においてプラス二七四・二二%、下限においてマイナス一五一・〇八%の隔りへの変化である。 しかして、右改正前の「偏差」幅はすでに最高裁判所大法廷において違憲と判断されたところのものであるから、右改正によつてもたらされた「偏差」幅が違憲と判断し得ない程度のものといえるかどうかが本件の帰趨を左右するところであることは明らかである。 第二、投票価値と選挙区間における人口偏差の許容限度について一立法府が選挙区割と議員定数の配分を決定するにあたり憲法上の「平等選挙」原則を逸脱したかどうかの判断基準は、一般には、投票価値の平等における選挙区間の人口偏差の許容限度として論じられてきた。 この点につい が選挙区割と議員定数の配分を決定するにあたり憲法上の「平等選挙」原則を逸脱したかどうかの判断基準は、一般には、投票価値の平等における選挙区間の人口偏差の許容限度として論じられてきた。 この点について、ドイツ連邦共和国では、「一選挙区の人口数は、選挙区の平均人口数から二五%を超えて上下に偏差を生じてはならず、もしその偏差がで三三・三三%を超えるときは、新たな区割を行なうものとする。」(註一)、「各邦における選挙区の数は、できるかぎり邦の人口に比例させなければならない。」(註二)旨を法律で定めている。 また、アメリカ合衆国では、具体的な数値によらず「実行できるかぎり精密に」という基準を厳格に適用することによつて人口偏差を零に近づける努力が払われている。 これらのいわゆる小選挙区制における人口偏差の問題は、前項(二)において述べた「過不足人口」の算出過程における「議員数」が常に「一」であることから、「人口」から「Q」を控除することによつて極めて簡単に得られる数値の比率として処理することが可能である。 しからば、いわゆる大、中選挙区制における人口偏差の問題を解く鍵は、果して何であろうか。われわれは、それを大、中選挙区制に特有の議員配分基準そのものの中に見出すべきものと考える。すなわち、まず、各選挙区または一団の選挙区群(以下「配当単位」と呼ぶことがある。)の人口を配当基数(前掲「Q」がこれに該当する)で除して得られる商の整数部分に見合う数の議員が配分され、ついでその商の小数点部分に残余議員が配分される手順、そして、一団の選挙群を用いる場合には、さらに右と同一の手順が繰り返されるその手順こそがそれである。 また、残余議員の配分には、小数点部分の大なるものから順次に一議員ずつ追加する「最大剰余方式」(議員定数が固定している場合には、つねにこれによるこ と同一の手順が繰り返されるその手順こそがそれである。 また、残余議員の配分には、小数点部分の大なるものから順次に一議員ずつ追加する「最大剰余方式」(議員定数が固定している場合には、つねにこれによることになる。)と過半数に達した剰余(具体的には〇・五を指す。)に無条件で一議員を追加する「過半数剰余方式」(配当基数を固定して議員定数を固定しない場合に用いられる。)とがあることはすでに原告準備書面(第一)第一〇頁において述べたとおりである。 今、大選挙区制における議員配分方式の例として、オーストリア連邦憲法の条文を引用してみる。 第二四条下院は、連邦の人民が直接選挙する議員をもつて組織する。下院議員の定数は、できるかぎり、上院議員の定数の二倍とする。 各州において選挙される下院議員の定数は、それぞれの人口数に比例するものとし、議会が別段の定めをするまでは、いかなる場合においても、次に掲げる方法によつて決定する。 (1) 下院議員一人に対する割当人口数(Quota)は、直近の連邦統計表に掲げる連邦の人口を上院議員の定数の二倍で除することにより決定する。 (2) 各州において選挙される下院議員の定数は、直近の連邦統計表に掲げるそれぞれの州の人口数を下院議員一人に対する割当人口数で除することにより決定する。この場合において、当該割当人口数の半数以上の剰余があるときは、さらに一人を選挙する。 ただし、本条の規定にかかわらず、各基本州においては少くとも五人を選挙しなければならない。 右は同国の連邦下院議員について基本州への配分方式を定めたものであるが、さきに述べた「過半数剰余方式」が採用されていることは明らかである。 二さて、大、中選挙区制における議員定数配分が憲法上の「平等選挙」原則に違反すると認められる場合として、平等な配分基準に反する二つの類型を考 た「過半数剰余方式」が採用されていることは明らかである。 二さて、大、中選挙区制における議員定数配分が憲法上の「平等選挙」原則に違反すると認められる場合として、平等な配分基準に反する二つの類型を考えることができる。すなわち、その第一は、配当単位に対し、その有する人口を配当基数で除して得られる商の整数部分に見合う数を超えたまたはそれに満たない数の議員を配分する場合(以下「基本配分上の違法」という。)であり、その第二は、右の整数部分に見合う数の議員を配分した後の残余議員の配分に不合理が認められる場合(以下「剰余配分上の違法」という。)である。 ところで、昭和五〇年の前掲改訂が人口偏差にもたらした変化、すなわち、「偏差」値上限プラス二七四・二二%、下限マイナス一五一・〇八%がいずれの範疇に属する議論の対象となるべきものであるかは明白である。 思うに、プラスにせよ、マイナスにせよ、「偏差」値一〇〇%に達する選挙区が存在する場合には、それが「基本配分上の違法」性を帯びる議員定数配分であることは論をまたないところであるから、さらに論を進めるまでもなく、右改訂によつてわが衆議院議員定数配分規定が違憲の域を脱し、適憲に転じたものとすることは困難である。 よつて、諸外国の例にみる厳格な「許容限度」または「限界基準」を援用して「剰余配分上の違法」を論ずる必要をみないものというべきである。 第三、補論われわれは、本件において、衆議院議員がすべての選挙区に平等に配分されているか否かを問題とした。 しかして、その際、「一票の価値」、「一票の重さ」という表現の下に、各選挙区における「議員一人あたりの人口または有権者数」を比較・検討の主座に置いた従来の方法に従わなかつた。それは、その方法が今や正当な結論付けを遅延させる作用を営んでいるように思われたからである。(註三 における「議員一人あたりの人口または有権者数」を比較・検討の主座に置いた従来の方法に従わなかつた。それは、その方法が今や正当な結論付けを遅延させる作用を営んでいるように思われたからである。(註三)問題は、議員定数をどのように配分すれば憲法上の「平等選挙」原則に即したものになるかに尺きる。 現行法の違憲性は、中選挙区制における平等な議員配分の基準を確定することによつて自ら明らかとなるものである。 (註一) 同国連邦選挙法(一九七五年九月一日改訂公示)第三条第二項第二号。 たゞし、「三三・三三」は正確には「331/3」となつている。 (註二) 同第三号(註三) ここで正当な結論付けとは、現行の衆議院議員定数配分規定に対する違憲判断をいうのであるが、本件における問題が「議員定数配分」という選挙区相互間のものであることを認識するならば、規定制定(改正)時における議員定数配分が平等といえたか否か、さらに、その後の人口移動によつてそれが不平等になつたか否かを問えば充分である。 そしてその際、中選挙区制における配分原則と認められ、かつ、現行制度発足の当初―中選挙区制に復帰した昭和二二年改正時―において実際に用いられた配分基準を用いて実態を分析・検証することこそ最も適切であり、また、不平等是正の指針ともなし得ることに想いを致すべきであろう。 以上別紙(三)第一本案前申立の理由は、次のとおりである。 一本件訴訟は訴状自体で明らかな如く公職選挙法(以下「公選法」と称する。)第二〇四条を根拠とする選挙無効の訴えであり、その主張の骨子は、昭和五五年六月二二日に行われた衆議院議員選挙は公選法別表第一及び同法附則第七項ないし第九項による選挙区及び議員定数の定めに従つて実施されたが、右による選挙区別定数は憲法第一四条第一項に反し、違憲であるから、右選挙は無効で われた衆議院議員選挙は公選法別表第一及び同法附則第七項ないし第九項による選挙区及び議員定数の定めに従つて実施されたが、右による選挙区別定数は憲法第一四条第一項に反し、違憲であるから、右選挙は無効である、というものであり、右以外には選挙無効事由を主張していない。ところで、公選法第二〇四条の訴えはいわゆる民衆訴訟に属し、法律の定めにより初めて訴えの提起が認められるものであり、右訴訟は公選法に基づき施行された選挙の管理執行上瑕疵があつた場合これを無効とし、当該選挙管理委員会をして早期に適正な再選挙を実施せしめ、もつて選挙の自由と公正を確保せんとするため特に法により認められた制度であつて、本件の訴えのようにたとえ選挙を無効とし再選挙を実施しても、その瑕疵を是正できないような、およそ被告選挙管理委員会ではその瑕疵の是正ができないような事由による訴訟までを許容する趣旨で制定された規定ではない。従つて、右第二〇四条に不適合の訴えは却下を免れないものである。ところで、原告らの選挙無効事由は前述した如く公選法別表第一自体を違憲とするものであり、選挙管理委員会の権限をもつてしてはその是正が全く不可能なことをその無効事由としており、そのことはその主張自体に徴し明白であるから、公選法第二〇四条に不適合な訴えというほかなく、本件訴えは、不適法な訴えとして却下を免れない。 また本件のような訴えは本来公選法第二〇四条の訴えに該当しないが、国権行為により侵害された国民の政治的権利の回復を求めているものであるから基本的人権にかかわる問題として極力その救済が考えられねばならず、他に適当な救済方法が見当らない現状においては右第二〇四条を拡張解釈して司法判断の対象とすべきであるとの学説判例が存在する。しかしながら被告は次の理由により右見解には賛同できない。 司法は本来具体 他に適当な救済方法が見当らない現状においては右第二〇四条を拡張解釈して司法判断の対象とすべきであるとの学説判例が存在する。しかしながら被告は次の理由により右見解には賛同できない。 司法は本来具体的権利義務に関する紛争の解決を目的としているものであつて、あらゆる紛争をすべて救済する万能の制度ではなく、民衆訴訟の如きは法の制定により初めてその救済が認められ、しかもそれがその法により司法の権限とされたとき初めて司法に属せしめられるに至るにすぎないから、裁判所はその制定法の要件の範囲内で裁判権を有するものといわなければならない。従つて、政治的権利も基本的人権に関わるとして民衆訴訟を不当に拡張解釈することはその制定法の精神に反するものであり、当事者の厳につつしまなければならないところである。 また、更に本件のような事態は立法当時予想していなかつたから適当な救済立法が存在しない現状では右第二〇四条を拡張解釈することが許されるという見解がある。しかしながら立法当時予想していたか否か等の論議は法の制定により初めて認められる民衆訴訟には全く無縁なことというべく、そのような論議より現に救済手段が存在していないこと自体にそれなりの正当な理由が存在していることを知らなければならない。即ち、本件の如き事案につき救済制度が存在しないのは、選挙権は政治的権利のひとつではあろうがその内容は選挙区、議員定数等の選挙制度の在り方によつて種種異なることが考えられ、その如何は現在並びに将来の国政のあり方に重大な影響を及ぼすものであつて、もともと憲法上政治の分野において決着をみることが要請されており、具体的な権利義務の紛争の解決を目的とする司法審査の対象とするには本質的に適しないが故である。 二更に、本件における選挙人の投票価値の不平等とは要するに選挙区別定数の不均衡をさし が要請されており、具体的な権利義務の紛争の解決を目的とする司法審査の対象とするには本質的に適しないが故である。 二更に、本件における選挙人の投票価値の不平等とは要するに選挙区別定数の不均衡をさしているものであるところ、選挙区別定数をどうするかは、単なる数字の操作の問題ではなく、政治のあり方を規定し、政治の根幹に関わるものであつて、それは常に政党並びに国民の真撃な関心事であり、高度の政治問題として立法府が自ら解決すべき筋合の問題であつて、憲法上も立法府にその解決が委ねられており、その上、司法はその可否を審査するに必要な明確な基準を当然持ち合せていないとともにそのために必要な諸資料も持ち合せていないから、かかる訴えは司法審査になじまないものとして却下されなければならない。 1 憲法第八一条は具体的訴訟事件につき裁判所に違憲立法審査権を認めているが、一二権分立が憲法の原則である以上その審査権には自づから限界があり、立法府自らの解決が要請される高度の政治問題については立法府の専権事項として司法判断が不適合とされている。この点については既にいわゆる砂川判決等において判例上も認められているところである。 2 憲法第一五条、同第四一条ないし第四四条及び同第四七条は国会議員の定数、選挙人並びに被選挙人の資格、選挙区及び投票の方法等選挙制度に関することはすべて法律の定めによるとし、選挙権被選挙権の資格につき人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならないと規定しているにとどまり、選挙権の内容につき特段の定めをしてはいない。 3 勿論憲法第一四条に基づく平等条項が存在し、選挙権等についても基本的にはその平等な行使が法律上認められねばならないが、選挙制度は、国の政治の根幹に関わる問題なので、政局の安定をはかりながら、しかも少数 論憲法第一四条に基づく平等条項が存在し、選挙権等についても基本的にはその平等な行使が法律上認められねばならないが、選挙制度は、国の政治の根幹に関わる問題なので、政局の安定をはかりながら、しかも少数意見をも国政に適正に反映せしめ得るような代表制度を、その国民を代表する国会議員によつて確立させることとした方がより望ましいため、選挙制度全般を立法府の裁量権限としたものである。従つて、各政党間の利害が最も厳しく対立するところでもあるけれども、国会は、右憲法の要請に応え複雑な諸要素を総合調整し公正かつ効果的な代表制度を定めなければならないことはいうまでもない。 4 現行の公選法の規定も右の趣旨をふまえ国会において総合的調整の結果定められているものと考えられ、単なる数字的格差のみを原因として安易に改正することは適当でなく、また現実問題として政党間の利害対立により一朝一夕に改正が行われうることは考えられない。従つて選挙制度の改正は、一定の年月をかけて慎重な検討を行い諸要素を総合的に調整しながら国会により漸進的な解決を図ることが現実的に最も妥当な方策というべく、立法政策の当否につきその違憲性を云々すべき筋合のものではない。 また立法府にその解決が委ねられている事項につき仮に裁判所が違憲判断をなし得るとしても、その為には少くとも裁判所にその判断の為の明確な基準が存し、かつその判断に適合する実効性が保障されているという要件が充足される場合に限られるものと考える。本件の如き選挙区別定数の不均衡の是正は上述した如く憲法上立法府にその解決が委ねられており、仮に裁判所がその是否を判断し得るとしても裁判所はその違憲の限界を示す明確な基準を持ち合せておらず、その上違憲として選挙を無効としてみたところで新たな立法措置が講じられない限りその是正は不可能なことである。前記 の是否を判断し得るとしても裁判所はその違憲の限界を示す明確な基準を持ち合せておらず、その上違憲として選挙を無効としてみたところで新たな立法措置が講じられない限りその是正は不可能なことである。前記のように、選挙制度の改正には国会における相当長期の慎重な審議が必要であるが、仮にこれを考慮しないとしても、現実問題として現在の如く与野党間の議員数の接近した段階に於ては、定数是正の内容如何がその勢力関係に直ちに反映するのであつて、かかる政党間の厳しい対立状態を想定した場合、裁判所の意向を酌んで国会により直ちに定数改正がなされると期待することはむしろ幻想に近く、折角の裁判所による選挙無効の判断も、単なる宣言効にとどまり、その是正の為には全く効果がなく、かえつて選挙の無効を宣言した結果本来定数不足として増員が認められるべき選挙区につきその代表を失わしめるという結果が招来され、かくなつてはかかる請求を認めた意義が全く没却されてしまうのであつて、この点から考えても、本件の如き請求は司法審査不適合というほかはない。 第二本案についての答弁被告の主張原告の本件請求は次の事由により失当として棄却を免れない。 一憲法第一五条、同第四一ないし四四条、および同第四七条によれば国会議員の定数、選挙人・被選挙人の資格、選挙区及び投票の方法等選挙制度に関する事項はすべて法律によるとし、わずかに選挙権被選挙権の内容につき人種・信条・性別・社会的身分・門地・教育・財産又は収入によつて差別してはならない旨の制約条項が存するに過ぎない。しかして、かかる規定のあり方は、選挙制度全般が政治の根幹にかかわる重大問題であるが故に、政治の領域において、政治の安定をはかりながら、しかも少数意見をも国政に反映せしめるような公正且つ効果的代表制度を確立せしめんとする趣旨によるものであるか 政治の根幹にかかわる重大問題であるが故に、政治の領域において、政治の安定をはかりながら、しかも少数意見をも国政に反映せしめるような公正且つ効果的代表制度を確立せしめんとする趣旨によるものであるから、国会は憲法上選挙制度全般に関し広汎な裁量権を有し、議員定数の配分に関しても憲法第一四条の平等条項が存する関係上それが極端な不平等を生じさせている場合は格別、右以外の場合はなお立法政策の当否の問題にとどまり違憲問題を生ずる余地はない。(最高裁昭三九・二・一五大法廷判決民集一八巻二号二〇七頁)二衆議院議員に関する選挙区別定数配分も人口要素と共に従来の議員定数の沿革、選挙区の大小、行政区画の歴史的沿革、住民構成・交通事情・産業・経済・自然等の地理的条件等の非人口的要素を考慮し、高度の政治的裁量の結果、昭和五〇年法律第六三号改正法により確定をみているものであるから選挙区別定数一人当りの人口数に多少の較差があるとしても、右は立法政策の当否の問題にとどまるというべく、違憲性は全くないものといわなければならない。 1 昭和三九年改正後、定数に関し何等の是正措置がなされなかつたところ、昭和四五年国勢調査の結果不均衡が一部選挙区で甚しいことが明らかとなつたので、その不均衡是正を目的とする改正(昭和五〇年法第六三号)がなされた。 2 昭和五〇年法第六三号による改正の経過(添付改正公職選挙法解説(以下「解説」と略す。)の抜すい参照のこと。)(1) 昭和三九年の法改正は十九人を増員し、その結果、最高と最低の選挙区間の較差がそれまでの三・二一倍から二・一九倍に縮小された。(解説二二頁、乙第一号証の三)(2) 昭和三九年の改正以後定数の改正がなされず、その不均衡が問題とされてきたが、昭和四五年国勢調査の結果、その人口偏差が著しく大きくなつていることが明らかとなつ (解説二二頁、乙第一号証の三)(2) 昭和三九年の改正以後定数の改正がなされず、その不均衡が問題とされてきたが、昭和四五年国勢調査の結果、その人口偏差が著しく大きくなつていることが明らかとなつた。(一対四・八三倍)(解説二二頁、乙第一号証の三)(3) その主な原因は都市及びその周辺への人口集中の結果とみられ、定数是正が現実的政治課題となり、各党間の長い折衝の末、昭和四九年に至り衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会が衆議院に設置され、衆議院議員の定数是正が真剣に検討されることになつた。(解説十一頁、乙第一号証の二)(4) 昭和五〇年三月二〇日右特別委員会内に設けられた小委員会において、自民、社会、公明、民社、共産の五党一致で定数を二〇名増員し選挙区別定数の不均衡を是正するが減員はせず、過少選挙区にこれを振りあて六人以上となる選挙区は分区し、分区については人口比、自然条件を勘案し、従来の選挙区域を尊重し自治省に試案を作成せしめることとなつた。(解説十二、二二、二三頁、乙第一号証の二、乙第一号証の三)(5) 政府は各党の意見並びに世論の動向に徴し右五党案が適切と判断し、これを政府案として提出し、ただ分区については国会に一任する方針をとつた。(解説二三頁、乙第一号証の三)(6) 分割については、(1)分割により設定される関係選挙区の国勢調査人口及び将来人口がなるべく均衡のとれたものとなるようにすること (2)行政区域を尊重し、この区域を分割することとならないようにすること (3)分割後の選挙区の地域がそれぞれ地勢、交通、産業、行政的沿革等の諸般の事情を考慮して合理的なものとなるようにすること (4)分割後の選挙区の地域がそれぞれ拠点を中心として地域的なまとまりを示すこととなる等社会的経済的観点からも地域的一体性を傑持することとな の諸般の事情を考慮して合理的なものとなるようにすること (4)分割後の選挙区の地域がそれぞれ拠点を中心として地域的なまとまりを示すこととなる等社会的経済的観点からも地域的一体性を傑持することとなるよう配慮することの四基準を基本として国会において決定をみたこと。(解説二三~三一頁、乙第一号証の三)(7) 国会において分区が決定され(五〇年七月一二日)法第六三号として昭和五〇年七月十五日公布され、次の総選挙から施行されることとなつた。(解説二三頁、乙第一号証の三) 3 右法第六三号による定数是正の結果、不均衡の限度は最大と最少の差二・九(解説二三頁、乙第一号証の三)、平均値からの較差はほぼ〇・五どまりとなり、較差の縮小に著しい効果をもたらしたものというべく、仮に改正前の定数の不均衡にして違憲性を帯びるものがあつたとしても、右改正の結果、衆議院議員の選挙区別定数の違憲性は右改正時点で解消されたものといわなければならない。 (改正前)昭和四五年国勢調査人口による全国平均議員一人当り人口二一三、一六七同最高議員一人当り人口(選挙区・大阪府第三区) 五四五、一三六同最低議員一人当り人口(選挙区・兵庫県第五区) 一一二、七〇一平均議員一人当り人口と最高議員一人当り人口の較差二・五六(四捨五入)平均議員一人当り人口と最低議員一人当り人口の較差 〇・五三(四捨五入)(改正後)昭和四五年国勢調査人口による全国平均議員一人当り人口二〇四、八二四同最高議員一人当り人口(選挙区・東京都第七区) 三二九、二〇〇同最低議員一人当り人口(選挙区・兵庫県第五区) 一一二、七〇一平均議員一人当り人口と最高議員一人当り人口の較差一・六一 (四捨五入)平均議員一人当り人口と最低議員一人当り人口の較差 〇・五五(四捨五入)注昭和四 挙区・兵庫県第五区) 一一二、七〇一平均議員一人当り人口と最高議員一人当り人口の較差一・六一 (四捨五入)平均議員一人当り人口と最低議員一人当り人口の較差 〇・五五(四捨五入)注昭和四五年国勢調査人口一〇四、六六五、一七一人、改正前議員定数四九一(含沖縄)、改正後議員定数五一一。 三原告は昭和五五年六月二二日施行の衆議院議員選挙における各選挙区別議員一人当り有権者分布比率を問題としている公職選挙法別表第一は「本表はこの法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によつて更正するのを例とする。」としているのであるから、選挙区別議員一人当り人数の較差を問題とするときは当該選挙の直近における国勢調査の結果によるそれを論ずべき筋合のものであり、しかもその格差の有無は全国平均議員一人当り人口数(平均値)と当該選挙区の議員一人当り人口数との差を対象として論議すべきものである。右選挙直近の国勢調査の結果は昭和五〇年一〇月施行にかかるものであるから、右に基き選挙区別議員一人当り人口数分布比率を算出してみると平均値からの比率は昭和四五年の一・三二倍から一・二四倍程度に変動しているに過ぎず、右期間内に著しく変動しているものとは到底いい得ないから、右程度の格差の是正問題は未だ立法政策の当否にとどまり違憲を云々すべき場合に該当しないものである。従つて、原告の本件請求は失当として棄却を免れない。 別紙(四)第一議員定数の配分に当たり非人口的要素を重視すべきことについて一議員定数の配分に当たつて、各選挙区の人口数と配分議員定数との比率の平等が重視されるべきことは当然であるとしても、議員定数の配分は単に人口的要素のみによつて決せられるべきものではなく、従来の議員定数の沿革や立候補者数の多寡、選挙区の大小、選挙区を構成する行政区画の歴 が重視されるべきことは当然であるとしても、議員定数の配分は単に人口的要素のみによつて決せられるべきものではなく、従来の議員定数の沿革や立候補者数の多寡、選挙区の大小、選挙区を構成する行政区画の歴史的沿革、住民構成、交通事情、産業、経済、自然等の地理的条件等諸般の非人口的要素をも考慮し、国会の高度な政治的裁量に基づいて行われるべきものである(最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決・民集三〇巻三号二四六ページ参照)。 そして、右のような国会の裁量は、それが著しく裁量の範囲を逸脱し、しかもそのことが一見して明白でない限りは、違憲にならないと解すべきである。 二また、右のような非人口的要素を検討する場合には人口の都市集中化現象及び一部地域の過疎化現象の政治的、経済的、文化的意義を検討することも極めて重要である。 1 近年の人口の都市集中化の現象は、経済的、文化的などの諸利益が都市部に集中しているために生じたものであるが、このような都市への人口の集中化が急激に生ずることは多くの弊害や歪みを伴うものであり、社会政策的あるいは経済政策的にみて、必らずしも望ましいこととはいい難い。 そこでこのような傾向をできるだけ抑制し、過疎地域における経済面、文化面等の充実を図り、その魅力を増大させることが望ましいが、そのためには、当該過疎地域の住民が一きわ大きな政治的影響力の可能性を持つようにすることが必要である。すなわち、選挙におけるその投票の価値が大きくなつていることが必要であり、これによつて、その地域の政治力に対する住民の影響力を増大させることが可能となるのである。 2 これに反し、人口の集中した都市は元来、それ自体政治的に大きな影響力を行使し得る可能性を有するのであり、これに更に大きな政治力が行使される可能性を与えることは、政治的に望ましいことではない。こ 2 これに反し、人口の集中した都市は元来、それ自体政治的に大きな影響力を行使し得る可能性を有するのであり、これに更に大きな政治力が行使される可能性を与えることは、政治的に望ましいことではない。このように、都市の政治力は過疎地域のそれよりも大きいのであるから、更に、人口数に応じて、投票権の完全な平等が実現されると、その政治的影響力は均衡を失して著しく増大し、政治的、経済的、文化的等の各種の利益がますます都市部にのみ集中し、過疎地域との間の地域的不均衡が実質的に拡大する結果になる。 3 右のような観点からすれば、投票価値ないし結果価値の平等を厳格に要求することは、かえつて政治の不平等をもたらすおそれがあるのである(東京高裁昭和五三年九月一一日判決判例時報九〇二号二四ページ参照)。 三人口的要素の外に、以上のような非人口的要素を併せ考えれば、本件において、争点となつている有権者分布差比率の単純比較の最大が三・九六対一であるとしても、これをもつて一見明白に違憲な比率ということは到底できない。ちなみに、最高裁昭和三九年二月五日大法廷判決(民集一八巻二号二七〇ページ)は、議員定数の配分は極端な不平等を生じさせない限り立法政策の当否の問題にとどまり違憲問題を生じないとし、有権者比較差四・〇九対一の程度では違憲ではないとしている。右は参議院議員地方区の定数配分についてのものであるが、本件においても先例として十分考慮に値するものである。 四以上、要するに選挙区別の定数配分に当たつて憲法の要求する平等とは単に人口による形式的平等ではなく、各選挙区の実態を踏まえた上での実質的な平等であると考えるべきである。かかる非人口的要素を考慮に入れるならば、未だ違憲を云々すべき場合に該当しないことは明らかである。 第二選挙区別議員一人当たりの人口比較の基準につい えた上での実質的な平等であると考えるべきである。かかる非人口的要素を考慮に入れるならば、未だ違憲を云々すべき場合に該当しないことは明らかである。 第二選挙区別議員一人当たりの人口比較の基準について本訴において、選挙区別議員一人当たり人数の較差を問題とするときは、まず、公職選挙法別表一の規定・文理から、昭和五〇年一〇月施行にかかる国勢調査の結果判明した人口数を基準とすべきことは明らかであり、次に、いわゆる過疎地域のいわば特殊と思われる一部選挙区(たとえば兵庫第五区)のように、選挙区の人口数に対する配分議員定数の比率が大きいものを基準とすべきではなく、全国的な各選挙区の平均値を基準とし、同基準によつて投票価値の差等に一般的合理性が存するかどうかの判断をすべきである。そもそも、平等であるかどうかの判断基準の設定に当たつては、一般的にいつて、特殊なものを基準におくのは無意味であり、平均値が最も合理的であるといわれており、本訴の関係で具体的に考察すると平均値を基準にしないとたまたま一部の不合理な定数配分のなされた選挙区のために他の平均的中庸を得ている選挙区、つまり合理的な差等の範囲内の定数の選挙区の投票権についてまで広く違憲の累を及ぼすことになつて、妥当でない結果を生ずるのである(東京高裁昭和五三年九月一一日判決・判例時報九〇二号二四ページ以下参照)。 第三事情判決について本件選挙における格差の是正問題は未だ立法政策の当否にとどまり、違憲を云々すべき場合に該当しないことは明らかで本件請求は失当として棄却されるべきであるが、仮に違憲無効と判断されることがあつたとしても、右判断によつて違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに適合しない結果を生ずることは明らかであるから、行政事件訴訟法三一条の法理にしたがい事情判決が相 ことがあつたとしても、右判断によつて違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに適合しない結果を生ずることは明らかであるから、行政事件訴訟法三一条の法理にしたがい事情判決が相当であるので、本件請求は棄却されるべきである(前掲最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決参照)。 別紙(五)被告の主張一昭和四五年及び同五〇年国勢調査の結果に基づく衆議院議員の議員一人当り人口数並びにその平均と当該選挙区との比率については、本準備書面末尾記載の衆議院議員一人当り人口調べと題する表のとおりであつて、既に被告が被告準備書面(一)第二、本案についての答弁のうち被告の主張三項で述べている如く、昭和四五年と昭和五〇年とにおける当該選挙区議員一人当り人口数と全議員一人当り人口数との比率の変動は僅かであり、右程度の変動に基づく議員数配分是正問題は、非人口的要素との総合勘案の結果結論付けられる立法政策上の問題にとどまり違憲をもつて論ぜらるべき場合には該当しない。 二本件原告の請求が公選法第二〇四条に依拠し、原告が選挙権を有する特定選挙区の選挙無効を訴求しているものであることは、請求の趣旨並びに原因に照し明らかなところ、原告は、漫然公選法別表第一の違憲性を論ずるのみで、積極的に何ら当該選挙区にかかる具体的選挙無効事由を主張しようとはしない。しかしながら、公選法第二〇四条に基づく選挙無効請求が認められるためには、請求にかかる特定選挙区の選挙規定違反並びに右規定違反が選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものであることとが具体的に主張立証されなければならないところ、原告の請求は前述した如く当該選挙区にかかる選挙規定違反を主張せず、単に公選法別表第一の違憲性を論じているに過ぎないから、原告の請求は畢竟公選法第二〇四条の規定に基づく選挙無効請求の構成 いところ、原告の請求は前述した如く当該選挙区にかかる選挙規定違反を主張せず、単に公選法別表第一の違憲性を論じているに過ぎないから、原告の請求は畢竟公選法第二〇四条の規定に基づく選挙無効請求の構成要件を充しておらず、原告の主張が現状にとどまる限り爾余の点を論ずるまでもなく原告の請求は構成要件を欠く失当の主張として棄却を免れない。因みに、原告請求にかかる東京都第三区を原告の主張にそい、具体的に検討してみると、前記一で明かにしているとおり、昭和五〇年国勢調査の結果に基づく全議員一人当り人口数との比率は一・二四倍であり、昭和四五年のそれ一・三二倍より縮小されており、該選挙区についてはむしろ今後は一層縮小の傾向にあるものというべきものであるから、右程度の格差をもつて違憲を論ずるは、議員数配分を国会の裁量行為とした現憲法に基づく国会の合理的裁量権限を侵すものというべきであつて、到底容認され得べき筋合の主張ではない。
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