平成13(わ)1224 虚偽有印公文書作成・同行使,道路運送車両法違反

裁判年月日・裁判所
平成14年11月18日 神戸地方裁判所
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判決文本文6,519 文字)

判決平成14年11月18日神戸地方裁判所平成13年(わ)第1224号虚偽有印公文書作成・同行使,道路運送車両法違反被告事件 主文 被告人を懲役2年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,本件当時,兵庫県明石市a町bc番d号等に事業場を置き,近畿運輸局長から指定自動車整備事業の指定を受けて自動車の整備及び点検等の業務を営むA株式会社の取締役兼自動車検査員として道路運送車両法94条の5第1項の規定により保安基準適合証の証明等の業務に従事し,法令により公務に従事する職員とみなされるもの,分離前の相被告人Bは,一般区域貨物自動車運送事業を営むC株式会社の代表取締役であったが,第1 被告人は,Bと共謀の上,上記C株式会社使用に係る普通貨物自動車の継続検査を受けるに際し,同自動車が保安基準に適合する旨の内容虚偽の証明をして同自動車の継続検査を受けようと企て,平成13年1月9日,兵庫県明石市a町bc番d号の上記A株式会社事務所において,行使の目的をもって,ほしいままに,被告人において,C株式会社使用の普通貨物自動車(神戸11く○○○○)には原動機最高回転制御装置(通称NR装置)が解除されているため,国土交通省令で定める保安基準に適合すると認めるときでないのに,法令に定める基準により同自動車が保安基準に適合するかどうかの検査をせず,情を知らない上記A株式会社事務員Dをして保安基準適合証用紙の指定自動車整備事業者の氏名又は名称並びに事業場の名称及び所在地欄に「A株式会社 A(株)第二工場兵庫県明石市a町be番f号」のゴム印を押 知らない上記A株式会社事務員Dをして保安基準適合証用紙の指定自動車整備事業者の氏名又は名称並びに事業場の名称及び所在地欄に「A株式会社 A(株)第二工場兵庫県明石市a町be番f号」のゴム印を押捺させ,自動車登録番号又は車両番号欄に「神戸11く○○○○」,車台番号欄に「EXZ72J□□□□□□□」,使用者氏名又は名称及び住所欄に「C株式会社明石市a町gh」と記入させた後,検査の年月日欄に「13 1 9」,自動車検査員の氏名欄に「E」と記載し,その名下に「F」と刻した印鑑を押捺し,前記自動車が道路運送車両の保安基準に適合していることを証明する旨の虚偽の記載をなし,もって,公務員としての自動車検査員の業務に関し,被告人作成名義の内容虚偽の証明文書を作成するとともに保安基準に適合すると認めた場合でないのにその証明をし,さらに,そのころ,同所において,行使の目的をもって,ほしいままに,被告人において,上記A株式会社のゴム印名下に「A第2工場之印」と刻した事業者印を押捺し,もって,法令により公務に従事するものとみなされる上記A株式会社の保安基準適合証交付の業務に関し,A株式会社作成名義の内容虚偽の保安基準適合証を作成した上,同月18日,神戸市i区j町k番地のl所在の近畿運輸局兵庫陸運支局において,被告人において,同陸運支局係官に対し,前記内容虚偽の保安基準適合証1通(被告人作成名義の虚偽有印公文書及びA株式会社作成名義の虚偽有印公文書の複合文書-平成14年押第42号の1)を登録自動車の継続検査更新の申請書類とともに提出して行使し第2 被告人は,B及び上記A株式会社の自動車検査員として道路運送車両法94条の5第1項の規定により保安基準適合証の証明等の業務に従事し,法令により公務に従事する職員とみなされるGと共謀の上,上記C株式会社使用に係る普 び上記A株式会社の自動車検査員として道路運送車両法94条の5第1項の規定により保安基準適合証の証明等の業務に従事し,法令により公務に従事する職員とみなされるGと共謀の上,上記C株式会社使用に係る普通貨物自動車の継続検査を受けるに際し,同自動車が保安基準に適合する旨内容虚偽の証明をして同自動車の継続検査を受けようと企て,同年3月5日,上記A株式会社事務所において,行使の目的をもって,ほしいままに,前記Gにおいて,B株式会社使用の普通貨物自動車(神戸11き△△△△)には原動機最高回転制御装置(通称NR装置)が解除されているため,国土交通省令で定める保安基準に適合すると認めるときでないのに,法令に定める基準により同自動車が保安基準に適合するかどうかの検査をせず,情を知らない上記A株式会社事務員Hをして保安基準適合証用紙の指定自動車整備事業者の氏名又は名称並びに事業場の名称及び所在地欄に「A株式会社 A(株)第二工場兵庫県明石市a町be番f号」のゴム印を押捺させ,自動車登録番号又は車両番号欄に「神戸11き△△△△」,車台番号欄に「EXZ21J☆☆☆☆☆☆☆」,使用者氏名又は名称及び住所欄に「C株式会社明石市a町bh」と記入させた後,検査の年月日欄に「13 3 5」,自動車検査員の氏名欄に「G」と記載し,その名下に「G」と刻した印鑑を押捺し,同自動車が道路運送車両の保安基準に適合していることを証明する旨の虚偽の記載をなし,もって,公務員としての自動車検査員の業務に関し,前記G作成名義の内容虚偽の証明文書を作成するとともに保安基準に適合すると認めた場合でないのにその証明をし,さらに,そのころ,同所において,行使の目的をもって,ほしいままに,前記Gにおいて,上記A株式会社のゴム印名下に「A第2工場之印」と刻した事業者印を押捺し,もって,法令に 合でないのにその証明をし,さらに,そのころ,同所において,行使の目的をもって,ほしいままに,前記Gにおいて,上記A株式会社のゴム印名下に「A第2工場之印」と刻した事業者印を押捺し,もって,法令により公務に従事するものとみなされる上記A株式会社の保安基準適合証交付の業務に関し,A株式会社作成名義の内容虚偽の保安基準適合証を作成した上,同月15日,兵庫県姫路市m区n町o番地所在の近畿運輸局兵庫陸運支局姫路自動車検査登録事務所において,前記Hをして,同陸運支局姫路自動車検査登録事務所係官に対し,前記内容虚偽の保安基準適合証1通(G作成名義の虚偽有印公文書及びA株式会社作成名義の虚偽有印公文書の複合文書-同押号の2)を登録自動車の継続検査更新の申請書類とともに提出させて行使したものである。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,被告人には,本件各車両にNR装置が装着されていることの認識がなかったのであるから,虚偽公文書作成・同行使罪における故意ないし明確な故意を欠くものであり,またその点についてのBあるいはB及びGとの共謀もない旨主張する。 2 しかしながら,被告人の検察官調書(乙12),Bの検察官調書(乙38-検察官主張の相反部分に限る),Gの検察官調書(甲68-検察官主張の相反部分に限る)等によると,Bは,被告人に対し,C株式会社のトラクタはNR装置が解除されているが,そのままの状態で検査を通してほしいと依頼し,被告人は,これを了承して,Gらにもその旨指示し,Cのトラクタについては保安基準に適合しないにもかかわらず,虚偽の内容の保安基準適合証を作成・行使していた旨いうのであるから,それによれば,被告人に判示第1及び第2の各虚偽公文書作成・同行使罪についての明確な故意はもちろん,BあるいはB及びGとの共謀も認めら 偽の内容の保安基準適合証を作成・行使していた旨いうのであるから,それによれば,被告人に判示第1及び第2の各虚偽公文書作成・同行使罪についての明確な故意はもちろん,BあるいはB及びGとの共謀も認められることが明らかである。 3 他方,被告人の当公判廷における供述並びに証人B及び同Gの当公判廷における各供述は,いずれも上記のような明確な依頼,了承,指示等の事実を否定するものであるが,被告人の当公判廷における供述によっても,①被告人は,NR装置の装着が必要なトラクタについてはNR装置が機能していることが保安基準の一つであり,NR装置が解除されていれば保安基準に適合しないことを認識していたこと,②被告人は,Cとの継続検査の年間契約を締結する際,BからCが保有する車両には,NR装置が外されている車もあるが,現車のままで車検を通して欲しい,NR装置は新車の時から外しているためどれが外されている車両か特定できない旨言われ,それを了承したこと,③被告人は,判示第1の車両について,NR装置装着の有無や機能確認などの検査をしないまま,指定整備記録簿にNR装置の機能確認をした旨の虚偽の記載をした上,保安基準に適合する旨の証明をし,保安基準適合証を作成・行使したこと,④また,被告人は,GにはNR装置についての知識がないと聞いており,自分もよく知らないが,指定整備記録簿に「NR装置不要機能確認」というゴム印を押して機能確認に丸をしておけば陸運支局による監査は通る旨教えていたことから,判示第2の車両について,GがNR装置装着の有無や機能確認などの検査をしないまま,前同様に保安基準に適合する旨の証明をし,保安基準適合証を作成・行使するであろうと認識しながら,Gに対し判示第2の車両の継続検査をすることを指示したことが認められるのであって,そうだとすると,被告人 同様に保安基準に適合する旨の証明をし,保安基準適合証を作成・行使するであろうと認識しながら,Gに対し判示第2の車両の継続検査をすることを指示したことが認められるのであって,そうだとすると,被告人は,Cが車検を依頼してくる車両の何台かについては,NR装置が解除されて作動しないために保安基準に適合しないことから,これらについては保安基準に適合する旨の虚偽の証明をし,虚偽の保安基準適合証を作成・行使することになることを明確に認識・認容していたことになるのであるから,被告人には,判示第1及び判示第2の各虚偽公文書作成・同行使罪についての故意(概括的ではあるが)が認められるとともに,BあるいはB及びGとの間における判示第1及び第2の各虚偽公文書作成・同行使罪についての共謀の成立も認定することができるというべきである。 4 以上のとおりであるから,いずれにしても被告人が判示第1及び第2のとおり各虚偽公文書作成・同行使の罪を犯したことは優に認定することができる。 (法令の適用)被告人の判示各所為のうち,各虚偽有印公文書作成の点はいずれも刑法60条,156条,155条1項,道路運送車両法94条の7に,各虚偽有印公文書行使の点はいずれも刑法60条,158条1項,156条,155条1項に,各道路運送車両法違反(虚偽証明)の点はいずれも刑法60条,道路運送車両法107条2号,94条の5第2項にそれぞれ該当するところ,判示各罪について,自動車検査員名義の各虚偽有印公文書作成と各道路運送車両法違反(虚偽証明)の点及び各虚偽有印公文書(自動車検査員名義の証明文書及び指定自動車整備事業者名義の保安基準適合証)の一括行使の点はいずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,各虚偽有印公文書作成とその各行使との間にはいずれも手段結果の関係があるので,刑法54条1 定自動車整備事業者名義の保安基準適合証)の一括行使の点はいずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,各虚偽有印公文書作成とその各行使との間にはいずれも手段結果の関係があるので,刑法54条1項前段,後段,10条により結局判示各罪ごとに以上を1罪としていずれも刑及び犯情の最も重い自動車検査員名義の各虚偽有印公文書行使の罪の刑で処断し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,一般区域貨物自動車運送業を営むBあるいはB及び自己が取締役を務めていた自動車整備会社の自動車検査員であるGと共謀の上,Bの経営する運送会社で使用する普通貨物自動車2台について,原動機最高回転制御装置(通称NR装置,以下「NR装置」という。)が解除されているため保安基準に適合しないにもかかわらず,これに適合する旨の内容虚偽の証明及びこれに基づく保安基準適合証を作成して,その保安基準適合証を陸運支局係官に提出したという虚偽有印公文書作成・同行使,道路運送車両法違反の事案である。 被告人は,指定自動車整備事業者であるA株式会社の取締役及びその自動車検査員という責任ある職業に就いていたのにもかかわらず,Bの経営するC株式会社と年間整備契約を締結することで得られる利益が大きいことなどから,平成11年4月ころからC株式会社が保有する車両について同種の犯行を繰り返し,更に他の運輸会社が保有する車両についても同種の犯行を繰り返し,不正に自動車の継続検査(以下「車検 が大きいことなどから,平成11年4月ころからC株式会社が保有する車両について同種の犯行を繰り返し,更に他の運輸会社が保有する車両についても同種の犯行を繰り返し,不正に自動車の継続検査(以下「車検」という。)を受けさせるうちに,本件各犯行に及んだものであって,自社の利益を優先したその動機には酌量の余地はなく,本件各犯行には常習性も認められること,被告人は,自動車検査員として自動車の検査を通じて道路交通の安全を図る職責があるにもかかわらず,顧客の依頼のままにその職責を放棄し,本件各犯行に及んだものであって,その犯行態様は,NR装置による法規制ひいては車検制度を無意味にする無責任かつ悪質なものであること,本件各車両がトラクタという大型車両であることに鑑みれば,NR装置が解除されていることによって,大きな騒音をまき散らす一方,その高速走行により道路交通の安全を害することに加担したことにもなること,被告人は,自己の部下である共犯者Gに判示第2の犯行を行わせていること,被告人は,酒気帯び運転及び業務上過失傷害の罪による罰金前科1犯,酒気帯び運転の罪による罰金前科2犯を有し,更に平成12年3月に酒気帯び運転の罪により懲役3月,2年間執行猶予の判決を受けながら,その執行猶予期間中に本件各犯行に及んでいるのであって,交通安全や交通法規を軽視する傾向が認められることなどを考え併せると,その犯情はよくなく,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 しかしながら,被告人は,本件についてそれなりに反省の弁を述べ,再び同種犯行に及ばない旨誓っていること,被告人は,本件により2年間の自動車検査員の資格停止処分を受け,更に自己が取締役及び工場長を務めていたA株式会社も50日の営業停止処分及び30万円の罰金の処分を受けていること,本件について新聞報道等がなされ, 件により2年間の自動車検査員の資格停止処分を受け,更に自己が取締役及び工場長を務めていたA株式会社も50日の営業停止処分及び30万円の罰金の処分を受けていること,本件について新聞報道等がなされ,上記会社が取引先から取引を停止されるなどの事実上の不利益を被っていること,被告人は本件により上記会社の取締役を辞任していること,被告人には扶養すべき妻と3人の子供がいることなどの,被告人のために酌むべき事情もまた認められるので,今回に限り,被告人に対して社会内更生の機会を与え,主文の刑を科した上,その刑の執行を猶予することとする。 (検察官の科刑意見懲役2年)よって,主文のとおり判決する。 平成14年11月18日神戸地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官森岡安廣裁判官前田昌宏裁判官伏見尚子

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