平成25(ワ)554 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年10月1日 大分地方裁判所
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判決文本文27,980 文字)

平成27年10月1日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第554号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成27年6月4日判決主文 1 被告は,原告に対し,10万0300円及びこれに対する平成26年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを100分し,その1を被告の,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 被告は,原告に対し,802万5946円及びこれに対する平成25年1月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,301万1396円及びこれに対する平成26年2月5日(同月3日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告が実施する指名競争入札の参加資格を有する土木業者である原告が,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,①被告から,違法な指名基準に基づいて,被告の発注する公共工事の指名を回避されたと主張して,802万5946円(指名を受けていたならば得べかりし利益相当額の729万6 315円と弁護士費用72万9631円の合計)及びこれに対する平成25年1月12日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,追加的に,②被告が上記指名基準を公表していないのは違法であると主張して,301万1396円(事務所地代等の合計273万7633円と弁護士費用27万3763円の合計額)及びこれに対する平成26年2月5日(同月3日付け訴えの変更申立書送達日の翌 いのは違法であると主張して,301万1396円(事務所地代等の合計273万7633円と弁護士費用27万3763円の合計額)及びこれに対する平成26年2月5日(同月3日付け訴えの変更申立書送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は,大分市内に本店を有し,土木一式及び請負等を業とする有限会社である。平成20年頃,被告に対し,被告市内に新たに支店を設置した旨の届け出をした(乙27)。甲(以下「原告前代表者」という。)は,原告の前代表者であり,本件訴訟において平成26年11月13日に原告代表者本人として尋問が行われたが,その後,平成27年2月23日に息子である乙(以下「乙」という。)が代表取締役に就任した(甲55,56)。 イ被告は,公共工事につき指名競争入札を実施している地方公共団体であり,被告市長は被告の公務員である。 (2) 関係法令の定め地方自治法234条1項は「売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし,同条2項は「前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる。」としており,例えば,指名競争入札については,契約の性質又は目的が一般競争入札に適しない場合などに限り,これによることができるものとされている (同施行令167条)。 また,指名競争入札の参加者の資格については,契約を締結する能力を有しない者等についての制限があるほか,地方公共団体の長において,あらかじめ,指名競争入札に参加する者につき,契約の種類及 7条)。 また,指名競争入札の参加者の資格については,契約を締結する能力を有しない者等についての制限があるほか,地方公共団体の長において,あらかじめ,指名競争入札に参加する者につき,契約の種類及び金額に応じ,工事,製造又は販売等の実績,従業員の数,資本の額その他経営の規模及び状況を要件とする資格を定めて,公示しなければならず(地方自治法234条6項,同法施行令167条の11第2項,3項,167条の5),指名競争入札の参加者の資格について公表することが義務付けられている(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律〔以下「適正化法」という。〕8条1号,同法施行令7条1項2号)。さらに,地方公共団体の長は,資格を有する者のうちから入札に参加させようとする者を指名するが(地方自治法234条6項,同法施行令167条の12第1項),地方公共団体が指名競争入札に参加する者を指名する場合の基準を定めたときは,これを公表することが義務付けられている(適正化法8条1号,同法施行令7条1項3号)。 また,建設業法22条1項は,「建設業者は,その請け負つた建設工事を,いかなる方法をもつてするかを問わず,一括して他人に請け負わせてはならない。」と定め,同条3項において一定の場合に例外を認めているが,適正化法12条(平成26年法律第55号による改正前のもの。同法律による改正により繰り下げられ,現在の規定は同法14条)は,公共工事についてはその例外は適用されないとしている。そして,被告においては,指名競争入札で落札受注した業者が一括下請を行ったことが判明した場合,将来の指名競争入札について指名停止措置を執ることとされている(乙40,41)。 (3) 被告が実施する指名競争入札に関する定めア被告は,国東市契約規則(平成18年3月31日規則第71号)3 ,将来の指名競争入札について指名停止措置を執ることとされている(乙40,41)。 (3) 被告が実施する指名競争入札に関する定めア被告は,国東市契約規則(平成18年3月31日規則第71号)31条において,「令(注:地方自治法施行令)第167条の11第2項の規定による指名競争入札に参加する者に必要な資格は,市長が別に定める。」 とし,同32条1項において「契約担当者は,指名競争入札に付するときは,なるべく5人以上の入札者を指名しなければならない」と規定し(甲1),同条の規定等に基づき,「国東市建設工事請負契約の競争入札参加者資格等に関する規程」(平成18年3月31日告示第4号)を定めて,被告が発注する工事請負契約に係る競争入札に参加する者に必要な資格及び指名願いの提出の時期等に関し必要な事項を定めている(甲2,乙6)。 また,被告は,「国東市建設工事等指名委員会規程」(平成18年3月31日訓令第16号)を定め,市が発注する建設工事等の適正な執行を期するため,国東市建設工事等指名委員会(以下,単に「指名委員会」という。)を置くとし,その所掌事務として,①指名競争入札に参加する者の資格の審査及び格付に関すること,②建設工事等の指名競争入札の参加者の選考に関すること,③指名基準の作成に関すること(2条)などとし,指名委員会の委員は,副市長,総務課長,契約検査課長,農政課長,林業水産課長,土木建築課長,上下水道課長及び案件所管の担当課長をもって充てること(3条),委員会の庶務は,契約検査課(平成24年4月1日以降の部署の名称。それ以前は,「財産管理課検査班」,「財政課検査班」等との名称であった(乙34)。)において処理すること(8条),会議は非公開とし,関係者は審議の内容を他に漏らしてはならないこと(9条)などを定めている(乙 ,「財産管理課検査班」,「財政課検査班」等との名称であった(乙34)。)において処理すること(8条),会議は非公開とし,関係者は審議の内容を他に漏らしてはならないこと(9条)などを定めている(乙4)。 さらに,被告は,「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準」(平成18年3月31日訓令第17号)を定め,工事等の請負契約については,有資格業者(上記規程により資格を受けた者をいう。)のうちから,同基準に掲げる事項を総合勘案して指名することとされた(甲3,乙5)。そして,その勘案事項の一つとして,同指名基準第4項は,「当該工事に対する地理的条件」として「当該地域での工事実績等からみて,当該地域における工事の施工特性に精通し,工種及び工事規模等に応じて当該工事を 確実かつ円滑に実施できるかどうかを総合的に勘案すること。また,本市(被告)の区域内に主たる事務所を有する者(以下「地場業者」という。)に施工能力があると認められる場合は,地場業者を優先的に指名すること。」と定めている。 また,「国東市公共工事の発注の見通し,入札及び契約の過程並びに契約の内容に関する事項の公表要領」(平成18年3月31日訓令第19号)を定め,これらの事項の公表の手続に関し必要な事項を定めている(乙7)。 なお,被告における指名競争入札の流れは,別紙「起工伺~入札・契約」のとおりである(乙16)。 イ地場業者及び準地場業者の定義上記のとおり,被告の「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準」(平成18年3月31日訓令第17号)4項において,地場業者について定義があるのみであったが,被告は,平成20年5月30日,国東市建設工事入札事務取扱要綱に基づく参加資格を公平かつ公正に処理するため,国東市一般競争有資格者名簿(建設工事等)に登載された者 について定義があるのみであったが,被告は,平成20年5月30日,国東市建設工事入札事務取扱要綱に基づく参加資格を公平かつ公正に処理するため,国東市一般競争有資格者名簿(建設工事等)に登載された者のうち,地場業者及び準地場業者として認定するに当たり,必要な要件を定めるため,「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準に関する規定の運用」(乙14・4枚目)を制定したが,これは準地場業者として認定するに当たり必要な要件や手続を定めたもので,準地場業者に認定された者の取扱いについての明確な定めはなかった。そして,被告は,平成21年8月1日,上記平成20年に制定した規定を廃止し,同時に「国東市準地場業者の認定に関する規定」(乙14・3枚目)を制定し,準地場業者として認定する要件の追加改正のほか,準地場業者の取扱いについて,被告が発注する建設工事の指名において考慮すると定めた。そして,これらの規定において,地場業者及び準地場業者は,概ね,以下のとおり定義されている(甲7,甲8,乙14,34,証人丙)。 (ア) 地場業者常時契約を締結する事務所として被告市内に本店を有している業者で市税を完納している業者をいう。 (イ) 準地場業者建設業法に基づき大分県知事の許可を受けた大分県内に本店又は支店,支社若しくは営業所を有している業者のうち,常時契約を締結する事務所として被告市内に建設業法の規定により許可を受けた支店,支社又は営業所(以下「支店等」という。)を有している業者で,次に掲げる要件を満たすものとして認定を受け,市税を完納している業者をいう。 ① 準地場業者として認定を受けようとする者は,支店等の所在地等を記載した営業所報告書(様式第1号)を提出しなければならない。 ② 前項に定めるもののほか,準地場業者として認定するに当 者をいう。 ① 準地場業者として認定を受けようとする者は,支店等の所在地等を記載した営業所報告書(様式第1号)を提出しなければならない。 ② 前項に定めるもののほか,準地場業者として認定するに当たり必要な要件は,次に掲げるものとする。 a ⅰ)事務所としての形態を整え,常時連絡がとれる体制となっていること。 ⅱ)事務等を執り行える事務用什器や事務用機器が具備されていること。 ⅲ)事務所の所在を明らかにする看板又は表札が表示されていること。 ⅳ)社員等の自宅又は住居を事務所としていないことb 営業活動を行い得る人的配置がなされており,職員が常駐していること。 c 被告に法人等の設立(支店等の設置)の届出をしていること。 (4) 本件に至る経緯ア原告は,平成20年7月10日,被告に対し,被告市内の営業所の所在地等を記載した営業所報告書(様式第1号)を提出して準地場業者の認定 の申請をし(乙27),同年9月5日に開催された指名委員会において準地場業者との認定を受けた。そして,以後,被告が実施する指名競争入札について,平成21年5月22日から平成23年7月28日までの間,29件の指名を受けて入札に参加し,5件の工事を落札した(甲4の1~29,甲17)。原告が参加資格を有する工種(等級)は,土木工事C級・舗装工事C級・造園工事・とび・土木・コンクリート工事である。 原告は,平成22年10月に被告市内の営業所の所在地を変更し,現在も事務所を設置している場所に移転し,被告に対して,営業所変更届を提出した(乙29)。 イ平成23年8月9日に開催された指名委員会(以下,同日に開催された指名委員会を「本件指名委員会」という。)において,「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準」(甲3,乙5)第4項の運用について議 成23年8月9日に開催された指名委員会(以下,同日に開催された指名委員会を「本件指名委員会」という。)において,「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準」(甲3,乙5)第4項の運用について議論され,同月24日以降の指名競争入札参加者の指名にあたっては,以下のとおりの扱いとする旨の基準(以下「本件優先基準」という。)に従って行うよう選考方法の変更がなされた(乙20の1・2)。前記のとおり,指名委員会の構成員は被告の規程で定められていたが,本件指名委員会が開催された平成23年度は,委員長が副市長であり,その他の委員は総務部長,土木建築部長,案件所管の部長及び担当課長であった(乙21の1)。 ① 第1優先順位該当の等級に地場業者が5者以上いる場合は,地場業者だけを指名する。 ② 第2優先順位A級の工事の入札において,B級の入札資格を持った地場業者を入札に参加させることができる(ただし,設計額に上限がある。)。それでも5者に満たない場合は,被告市内に支店等を有している業者で,被告が準地場業者として認定している業者を指名する。 その他の等級においては,直近上位級の地場業者を参加させ,それでも5者に満たない場合は準地場業者を指名する。 ③ 第3優先順位上記においても,地場業者・準地場業者が5者に満たない場合は,市外業者を指名する。 ウ被告は,上記イの本件優先基準を一切公表しておらず,原告にも通知しなかった。 エ原告が入札資格を有する工種(前記ア)には,全て地場業者が5者以上いたため,同工種の指名競争入札において,被告は本件優先基準の第1優先順位に従って地場業者のみを指名し,準地場業者である原告を指名しなかった。そのため,原告は,本件優先基準が定められた以降の指名競争入札において,原告が指名資格を有する工事につ 本件優先基準の第1優先順位に従って地場業者のみを指名し,準地場業者である原告を指名しなかった。そのため,原告は,本件優先基準が定められた以降の指名競争入札において,原告が指名資格を有する工事について指名を受けることが一切なくなり,入札に参加することができなかった(甲11の1~33,甲23の1~27)(以下,このように結果的に原告が指名されなかったことを「本件指名回避」という。)。 3 主な争点(1) 本件指名回避が被告の裁量権を逸脱・濫用するものか(2) 本件優先基準を公表していないことが違法か(3) 損害とその額 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(本件指名回避が被告の裁量権を逸脱・濫用するものか)について(原告の主張)ア本件指名回避の違法性地方自治法等の法令が,普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき,機会均等,公正性,透明性及び経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしていることからすると,地方公共団体の 長が恣意的な指名又は指名停止・指名回避をしたときは,裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法となる(最高裁判所平成18年10月26日第一小法廷判決・集民221号627頁〔以下「平成18年判決」という。〕参照)。 そして,以下の事情に鑑みれば,本件指名回避は裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法である。 (ア) 本件指名回避の理由は,本件優先基準に従った結果,原告が入札資格を有する工種には地場業者が5者以上いるため,地場業者だけを指名して,準地場業者である原告を指名しなかったという1点のみである。 (イ) 指名回避をする際には公表された基準により判断するべきであるが,本件指名回避の根拠である本件優先基準は公表されていない。 (ウ) 準地場業者は,被告 を指名しなかったという1点のみである。 (イ) 指名回避をする際には公表された基準により判断するべきであるが,本件指名回避の根拠である本件優先基準は公表されていない。 (ウ) 準地場業者は,被告市内に支店等を有し,被告の要求する基準を満たして認定を受け,被告の市税を完納している業者であるから,地場業者と同等の取扱いがなされるべきであるところ,被告において,地場業者が5者に満たない工種はほとんどないから,本件優先基準によれば,準地場業者は事実上指名されないことになる。特に,地場業者が5者以上いる工種においては地場業者のみが指名されるため,準地地場業者を排除することになるので,地場業者同士による談合が横行し,指名競争入札の公正性,透明性,経済性(価格の有利性)が著しく損なわれる。 (エ) 本件優先基準が定められた経緯について,被告は,地場業者の育成保護を挙げ,被告の発注する公共工事や地場業者の減少などを主張するが,これらを裏付ける具体的な資料はなく,かかる必要性は抽象的な理由にとどまる。なお,平成25年時点でも建設工事業者は66者,土木工事業者は50者存在していたのに対し,準地場業者は6者しかいなかったのであるから(乙11),地場業者育成保護の必要性は低い。 むしろ,被告は,大分県内の多くの自治体において準地場業者の定め がない,又は地場業者と同等に取り扱っていないと判明したことで,被告の準地場業者に関する規定を反故にする本件優先基準を定めるに至ったものである。 イ被告の故意・過失(ア) 本件指名委員会の議題として,「指名基準第4項の運用について」と明記されており(乙20の1),かかる議題は競争入札参加者の指名という被告市長の権限に関わるから,当然被告市長に報告されるべき事項であり,被告市長が本件優先基準を関知してい 第4項の運用について」と明記されており(乙20の1),かかる議題は競争入札参加者の指名という被告市長の権限に関わるから,当然被告市長に報告されるべき事項であり,被告市長が本件優先基準を関知していないはずはない。 したがって,被告市長には,本件指名回避の違法性について故意・過失がある。 (イ) 仮に被告市長が本件優先基準を認識していなくとも,指名委員会における指名に基づき被告市長が指名競争入札の参加者の指名について決裁しているのであるから,本件指名委員会の故意・過失は,被告市長の故意・過失と同視できる。そして,平成18年判決の存在から,およそ準地場業者であることのみをもって排除するような指名基準の設定が違法であることは予見できたのであるから,本件指名委員会の委員には,本件指名回避の違法性について故意・過失がある。 (被告の主張)ア本件指名回避の違法性否認ないし争う。 以下の事情からすれば,本件指名回避は被告の裁量権を逸脱・濫用したものではない。 (ア) 目的の合理性a 本件優先基準は,被告において,建設工事の大幅な減少等に伴い,社会資本等の維持管理や災害応急対策などの地域維持事業を担ってきた地域建設業者の減少・小規模化が進んでいたこと(平成18年以降 の被告による工事発注額につき乙18の1~9,被告市内の土木関連業者数につき乙19の1・2)から,地域に密着し,地域の実情をよく知り,かつ,迅速確実に現場にアクセスすることが可能な地域精通度の高い地場業者を育成・保護することを目的として制定されたものである。 すなわち,本件指名委員会に先立ち,被告市民病院の改装工事を巡り平成23年に設置された被告の市議会の調査特別委員会において,地域の産業発展のため,地元業者が多く入札に参加できるよう配慮が必要であると指摘 ち,本件指名委員会に先立ち,被告市民病院の改装工事を巡り平成23年に設置された被告の市議会の調査特別委員会において,地域の産業発展のため,地元業者が多く入札に参加できるよう配慮が必要であると指摘されたという経緯がある。このことは,地場業者の組織である社団法人辛からの要望でもあった(乙2)。 b このように地元業者を優先することは,わが国の各地方自治体でも広く一般的に行われている。大分県内の他自治体においては,そもそも地元業者と非地元業者を同等に扱う定めがなく,基本的に当該自治体内に本店を有する地元業者のみを指名している。工事業者が足りない1,2の業種において,豊後高田市,杵築市,宇佐市が準地場業者を指名に入れている程度である(乙3,乙42)。 c したがって,地場業者を優先する本件優先基準の目的が合理的であることは明らかである。平成18年判決も,工事現場に関する知識等を有するため契約の確実な履行が期待できることや地元の経済の活性化に寄与することを考慮して地元企業を優先的に指名することの合理性を肯定しているところである。 (イ) 公正性及び経済性の確保本件優先基準は,土木や舗装など8つの工種について,さらに1~5のランク(等級)に分け,当該等級ごとに地場業者が5者以上いる場合にのみ準地場業者の指名参加資格を失わせるものであるから,競争性の低下を防止し,価格の有利性を十分確保しているといえる(なお,当該 5者が地場業者であるからといって,談合が横行するという根拠はない。)。 また,地場業者の数は業種ごとに判断するため,原告の工種においては地場業者が5者以上存在するが,他の工種に登録している限り,準地場業者が指名に入る工種も多数存在している(乙11,乙12)。 イ被告の故意・過失否認ないし争う。 (ア) 本件指 種においては地場業者が5者以上存在するが,他の工種に登録している限り,準地場業者が指名に入る工種も多数存在している(乙11,乙12)。 イ被告の故意・過失否認ないし争う。 (ア) 本件指名委員会で制定された本件優先基準について,被告市長に報告したり,決裁を得たことはない。被告市長は,地場業者を優先的に指名するとの認識はあるが,本件優先基準については関知していない。 指名通知も被告の契約検査課が被告市長に対し決裁伺いを立て,被告市長名で発送するため,被告市長としては指名された業者名はわかるものの,本件優先基準が適用されたかどうかは把握していないから,本件指名回避についての故意はない。 (イ) 平成18年判決の差戻審は,違法であることを予見できなければ過失といえないとする(高松高等裁判所平成20年5月29日判決。乙25)。地場業者の育成保護の必要性,他自治体の指名競争入札においても地場業者を優先する指名がほとんどであることを考えると,被告市長が本件指名回避の違法性まで認識するのは困難であり,過失はない。 (2) 争点(2)(本件優先基準を公表していないことが違法か)について(原告の主張)ア非公表の違法性指名基準が法令上公表を義務付けられている趣旨は,指名競争入札における指名権者による恣意を排除し,公平性・透明性を担保することにある。 本件優先基準には具体的な指名優先順位が定められており,指名に当たって考慮するという性質のものではなく,被告における全ての指名競争入 札において適用され,準地場業者が指名されるかどうかが機械的に決まる性質のものであるから,「指名競争入札に参加する者を指名する場合の基準」に該当し,公表されなければならない。 イ被告市長の故意・過失被告市長は,被告の長として,適正化法を熟知 機械的に決まる性質のものであるから,「指名競争入札に参加する者を指名する場合の基準」に該当し,公表されなければならない。 イ被告市長の故意・過失被告市長は,被告の長として,適正化法を熟知し,本件優先基準を公表しなければならないと認識していた。また,被告市長には,被告の指名委員会における基準の策定及び実施内容を把握する職務があり,指名委員会において本件優先基準が定められたことを知らないこと自体,当該職務を怠った過失がある。 仮に被告市長自身に故意又は過失がなくとも,指名委員会は公務員の補助機関であるから,職務執行の体制全体として,被告には過失があるというべきである。 (被告の主張)ア非公表の適法性(ア) 被告は,適正化法施行令7条に従い,「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準」(平成18年3月31日訓令第17号)(甲3,乙5)を策定し,同4項において「地場業者を優先的に指名すること。」との規定を設け,これを公表している。本件優先基準は,この「優先的に指名する」の文言について,具体的にどのように指名するかという運用基準を指名委員会において話し合い,それを委員会としての内規あるいは申合せ事項としたものにすぎず,本件優先基準が独立して指名基準になるものではない。したがって,適正化法により公表すべき指名基準は,上記指名基準程度で十分であり,運用指針にすぎない本件優先基準まで公表することは法律上要請されていない。しかも,本件優先基準は,「国東市建設工事等指名委員会規程」(平成18年3月31日訓令第16号)(乙4)9条の保持すべき秘密に該当するから,一般に公開することは予定 されていない。 (イ) また,被告は,準地場業者から個別の問い合わせがあった場合は,本件優先基準の内容について回答しているから 条の保持すべき秘密に該当するから,一般に公開することは予定 されていない。 (イ) また,被告は,準地場業者から個別の問い合わせがあった場合は,本件優先基準の内容について回答しているから,十分透明性を確保しているといえる。 イ被告市長の故意・過失否認ないし争う。 (3) 争点(3)(損害とその額)について(原告の主張)ア本件指名回避による損害原告は,被告の違法な本件指名回避により,下記(ア)の損害を被った。 (ア) 逸失利益等原告の工事受注能力及び工事遂行能力は,本件指名回避がなされている期間においても特に問題はなかったのであるから,本件指名回避がなかったとすれば,原告は,入札参加資格を有する指名対象工事に関して,被告から相応の指名を受け,一定の工事を受注することによって,経済的利益を受けることが見込まれた。よって,下記a~cの合計である802万5946円が原告の損害となる。なお,逸失利益については,上記指名対象工事の代金額に,原告の受注実績を考慮した受注率を乗じて原告が指名回避された期間中に受注し得たと推定される受注額を算出し,さらに,原告の経営状態等を考慮した利益率を算出することが相当である。 a 本件優先基準制定から本件訴訟提起に至るまでの逸失利益 450万9322円1億6825万8300円(上記期間の受注可能額〔平成26年9月1日付け訴えの変更申立書の別紙2枚目〕)×0.134(原告の平均受注率)×0.2(利益率)で計算した。 b 本件訴訟提起後から現在までの逸失利益 278万6993円1億0399万2300円(上記期間の受注可能額〔上記申立書の別紙1枚目〕)×0.134(原告の平均受注率)×0.2(利益率)で計算した。 c 弁護士費用 72万9631円上記aとbの 3円1億0399万2300円(上記期間の受注可能額〔上記申立書の別紙1枚目〕)×0.134(原告の平均受注率)×0.2(利益率)で計算した。 c 弁護士費用 72万9631円上記aとbの合計額である729万6315円の1割相当額(イ) 原告前代表者は,原告が被告から受注した各工事について一括下請けをさせたような供述をしているが,原告は,現在の原告代表者である乙が当時からすべて施工管理等を行い,請負工事について実質的に関与しており,一括下請けを行った事実はない。 原告前代表者は,平成26年夏頃から,話した内容をすぐ忘れたり,亡父が生きているとして話をしたり,乙を他人と間違えるなど,心神状態に問題が生じており,同年末に悪性リンパ腫と診断され,病院に入院したが,その後も支離滅裂な言動が続いたため,平成27年2月23日に原告の代表取締役を乙と交代した。このように原告前代表者は尋問が行われた平成26年11月当時,心神の状態に問題があった上に,その供述にも変遷がみられるなどの事情からすると,同人の供述を信用することはできない。 イ本件優先基準の非公表による損害本件優先基準が公表されていれば,原告は,指名が受けられないと判断して被告市内の事務所を撤退したのであるから,その事務所の維持等に要した費用は本件優先基準の非公表と相当因果関係のある損害である。 具体的には,下記(ア)~(エ)の合計である301万1396円。 (ア) 法人住民税合計12万7633円(甲14の1~3)(イ) 事務所地代 合計145万円(平成23年8月1日~平成25年12月31日の29か月で,月額5万円である。甲15)なお,原告が被告に提出した営業所変更届に添付した土地賃貸借契約書の賃料欄に「1000円」と記載されている(乙29)が,これ 月1日~平成25年12月31日の29か月で,月額5万円である。甲15)なお,原告が被告に提出した営業所変更届に添付した土地賃貸借契約書の賃料欄に「1000円」と記載されている(乙29)が,これは原告事務所の移転を届け出るにあたり,被告の担当者に記載するよう言われて1000円と記載したにすぎず,実態を反映したものではない。 原告は事務所を重機や資材置き場としても使用し,場所は十分な広さがあったから,月5万円の賃料も妥当である。 (ウ) 人件費116万円(上記(イ)と同期間で,月2日,日額2万円で計算)原告前代表者は,毎月2日程度,定期的に事務所に赴き,午前10時から午後3時ないし午後4時頃まで事務所内の整理や草刈りなどの事務所の維持管理を行っていたから,人件費が生じている。 (エ) 弁護士費用27万3763円上記(ア)~(ウ)の合計額である273万7633円の1割相当額(被告の主張)ア本件指名回避による逸失利益争う。 原告が準地場業者として被告の指名競争入札に参加するようになった経緯や,3%の手数料を控除して残りの請負代金を被告の地場業者である有限会社丁(以下「丁」という。)の戊(以下「戊」という。)に渡していたとの事実によれば,原告は,被告から受注した全ての工事を戊に一括下請けに出していたといえる。そして,原告がそのような手数料のみ受領していたのであれば,逸失利益相当額の損害は生じない(仮に違法な一括下請けによる利益の保持を認めるとしても,受注額の3%である。)。 また,今後原告は指名停止措置を受ける蓋然性が高いから,将来の指名競争入札に参加できないことによる逸失利益も生じない。 さらに,将来の逸失利益の請求については,上記の事情に加え,原告が実質的に準地場業者の要件を充足していなかった( る蓋然性が高いから,将来の指名競争入札に参加できないことによる逸失利益も生じない。 さらに,将来の逸失利益の請求については,上記の事情に加え,原告が実質的に準地場業者の要件を充足していなかった(すなわち,営業所に人的配置はされておらず,職員の常駐もなされていなかった。)ことから,信義則又はクリーンハンズの原則に反し,権利の濫用である。 イ本件優先基準の非公表による損害否認ないし争う。 (ア) 事務所維持費入札に参加するか否かの判断は原告の自己責任で行うものであり,事務所の維持費は当然原告が負担するものである。また,被告は問い合わせがあれば本件優先基準の内容を開示していたから,原告も疑念を抱いたら被告に連絡することで容易に本件優先基準を把握できたのであり,原告は自身の判断で事務所を維持したにすぎないから,因果関係がない。 少なくとも,原告は代理人を通じて本件優先基準の存在を認識し,入札指名を受けられないことを認識したのであるから,その時点以降は原告の自主的判断で事務所を維持していたものであって,因果関係を欠く。 (イ) 事務所地代原告が地代を支払っていたとの証拠は平成25年7月26日付け領収証(甲15)のみであり,原告の主張する地代の賃貸借契約書や地代を支払ったとされる全期間の領収書はない。しかも,甲15には「土地代金として」との記載があるのみで,賃料か否か不明である。 原告事務所の場所は利便性の悪い場所で,到底月5万円の地代が生じる場所ではない。むしろ,原告が平成22年10月8日に被告に提出した営業所変更届添付の土地賃貸借契約書の写しには,賃料月額1000円と記載されている(乙29)。 (ウ) 人件費原告前代表者が月2回程度の頻度で被告市内の事務所に赴き,維持管理を行っていたとの証拠はない。 第3 契約書の写しには,賃料月額1000円と記載されている(乙29)。 (ウ) 人件費原告前代表者が月2回程度の頻度で被告市内の事務所に赴き,維持管理を行っていたとの証拠はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲4の1~29,甲17,乙2,乙11,乙19の1・2,乙21の1・2,乙34~36,原告前代表者本人,証人丙)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められ,これに反する証拠は採用できない。 (1) 本件優先基準を定めた経緯ア被告は,市町村合併により発足した平成18年3月31日に「国東市建設工事請負契約の競争入札参加者資格等に関する規程」(甲2,乙6)及び「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準」(甲3,乙5)を定め,以後,被告市内に本店がない業者については,市町村合併前の指名状況や施工実績等を勘案し,指名委員会において選考していた。 その後,被告は,平成20年5月30日,上記指名基準に関し,「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準規定の運用」を定めたが(乙14・4枚目),これは準地場業者として認定するに当たり必要な要件や手続を定めたもので,準地場業者に認定された者の取扱いについての明確な定めはなかったが,平成20年度においては,指名委員会の選考により,準地場業者に認定された業者について地場業者と同等の取扱いがなされることとされ,準地場業者の指名についてはその都度協議することとした。 平成21年度に入り年度当初の指名委員会において,当該年度の指名に当たっての協議が行われ,その結果,準地場業者の取扱いについては,前年度に引き続き地場業者と同等の取扱いとすることとした。そして,被告は,平成21年8月1日,平成20年に制定した上記規定を廃止し,同時 に「国東市準地 結果,準地場業者の取扱いについては,前年度に引き続き地場業者と同等の取扱いとすることとした。そして,被告は,平成21年8月1日,平成20年に制定した上記規定を廃止し,同時 に「国東市準地場業者の認定に関する規定」(乙14・3枚目)を制定し,準地場業者として認定する要件の追加改正のほか,準地場業者の取扱いについて,被告が発注する建設工事の指名において考慮すると定め,事実上,地場業者と同様に指名されることとされた。 平成22年度に入り年度当初の指名委員会において,当該年度の指名に当たっての協議が行われ,異論もあったが,準地場業者の取扱いについては,前年度に引き続き地場業者と同等の取扱いとすることとした。 イ平成23年度に入り,同年4月27日に開催された指名委員会において,当該年度の指名に当たっての協議が行われ,準地場業者の取扱いについては,他市の状況を調査してから今後の対応を検討するとし,当面は前年度に引き続き地場業者と同等の取扱いをすることとされた(乙35)。 もっとも,平成21年度及び平成22年度以降,複数の地場業者から,市内業者と準地場業者を同じように扱うのはおかしいではないかとの意見が出されていた。また,平成23年3月頃には,被告市民病院の改装工事に係る入札事務を調査するために「市民病院改築工事調査特別委員会」が被告市議会に設置され,同年5月13日に行われた同委員会の中間報告において,地元業者の育成を図るべきであることや,多数の地元業者が公共工事の入札に参加できるような配慮が必要であることなどが指摘された(乙37)。 そして,同月26日の指名委員会において,準地場業者の取扱いについて協議がされ,準地場業者に関して定めた規定の経緯や認定要件,これまでの取扱い等について報告されるとともに,今後の準地場業者の取扱いの して,同月26日の指名委員会において,準地場業者の取扱いについて協議がされ,準地場業者に関して定めた規定の経緯や認定要件,これまでの取扱い等について報告されるとともに,今後の準地場業者の取扱いの方向性について議論され,その中で地場業者が5者以上ある場合について準地場業者を指名に入れないなどとすると,今後の準地場業者の工種ごとの指名で原告1者だけが,全ての工種において,指名から外れてしまうなどの問題点もあり,これらの内容を踏まえて,大分県内他市の準地場の取 扱い方の情報収集及び現時点における問題点を洗い出し,今後の準地場の取扱いについて検討課題とされた(乙36)。 その後,同年6月6日には,社団法人辛から,被告に対し,公共工事の指名入札において地場業者を優先して指名することを求める要望書が提出された(乙2)。また,同年8月5日,被告において臨時議会が開催され,上記特別委員会より,調査結果の報告書が提出された(乙30)。同報告書において,総合評価落札方式による課題と改善点が取りまとめられており,例えば,総合評価落札方式は技術力を持った企業に限定されるという課題に対して,改善点として地域の産業発展のため,共同企業体とし,地場業者が参加できるよう十分配慮すべきなどとされた。また,同日,被告市長は報道機関に対して,「他市の状況を参考に,競争性を確保しながら地場企業の受注機会が確保できるよう,見直しを職員に指示した」とコメントした(乙34,35)。 これらを受けて,指名委員会の庶務を担当する被告財産管理課検査班(現在の名称は契約検査課)において大分県内の他の自治体の状況を調査しつつ,準地場業者の取扱いの見直しを検討し,同年8月9日に本件指名委員会が開催された。被告財産管理課検査班は,それまでの検討結果をふまえ,本件指名委員会に配付 いて大分県内の他の自治体の状況を調査しつつ,準地場業者の取扱いの見直しを検討し,同年8月9日に本件指名委員会が開催された。被告財産管理課検査班は,それまでの検討結果をふまえ,本件指名委員会に配付する資料として,「『国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準』第4項の運用について」と題する書面(乙20の2)を作成し,本件指名委員会においてその内容がそのまま本件優先基準として定められた。 ウ被告は,本件優先基準について,自らホームページ等で公表したことはなく,原告を含む準地場業者に対して説明会を開催したり,個別に説明したりしたことはなかった(弁論の全趣旨)。 (2) 被告における建設関係業者の状況等平成18年度の建設関係の業者の数は93者であり,平成25年度にはこ れが66者まで減少していた。これに対し,準地場業者の数はうち6者にとどまっていた(乙11,乙19の1・2)。 なお,指名委員会において,本件優先基準を制定するまでに,被告におけるその当時までの公共工事に係る請負総額の推移や上記のような地場業者の減少数等のデータを示して議論したことはなかった(証人丙)。 (3) 本件指名回避の理由本件優先基準が制定されて以降,被告が発注するすべての指名競争入札において,本件優先基準が適用された(弁論の全趣旨)。その結果,原告が入札資格を有する工種には地場業者が5者以上いたため,被告は当該工種に係る競争入札について地場業者のみを指名したものであり,このこと以外に本件指名回避を行った理由はない。 指名委員会は,準地場業者のうち原告のみが全ての指名から排除されることを認識し,その点について議論を行ったが(乙35,36),他の準地場業者との公平を期するなどとして,原告について特段の是正措置は講じなかった。 2 争点(1)(本 みが全ての指名から排除されることを認識し,その点について議論を行ったが(乙35,36),他の準地場業者との公平を期するなどとして,原告について特段の是正措置は講じなかった。 2 争点(1)(本件指名回避が被告の裁量権を逸脱・濫用するものか)について(1) 地方自治法234条1項は「売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし,同条2項は「前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる。」としており,例えば,指名競争入札については,契約の性質又は目的が一般競争入札に適しない場合などに限り,これによることができるものとされている(同施行令167条)。このような地方自治法等の定めは,普通地方公共団体の締結する契約については,その経費が住民の税金で賄われること等にかんがみ,機会均等の理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保し得るという観点から,一般競争入札の方法によるべきことを原則とし, それ以外の方法を例外的なものとして位置付けているものと解することができる。また,適正化法は,公共工事の入札等について,入札の過程の透明性が確保されること,入札に参加しようとする者の間の公正な競争が促進されること等によりその適正化が図られなければならないとし(同法3条),前提事実(2)のとおり,指名競争入札の参加者の資格についての公表や参加者を指名する場合の基準を定めたときの基準の公表を義務付けている。 以上のとおり,地方自治法等の法令が,普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき,機会均等,公正性,透明性,経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしていることからすると,指名競 のとおり,地方自治法等の法令が,普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき,機会均等,公正性,透明性,経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしていることからすると,指名競争入札における参加業者の指名に際しては,地方公共団体の長が恣意的な指名又は指名停止,指名回避をすることは許されず,当該指名又は指名停止,指名回避が上記の諸要素に照らして不合理であり,社会通念上著しく妥当性を欠くと認められる場合には,その裁量権を逸脱又は濫用したものとして,国家賠償法上,違法との評価を免れないと解される(平成18年判決参照)。 (2) そして,前記認定事実によると,本件指名回避は,本件優先基準を適用した結果,原告が入札資格を有する工種に地場業者が5者以上いたため,当該工種に係る競争入札について地場業者のみが指名されたものであることの一点のみが理由であるから,本件優先基準が,上記諸要素に照らし不合理であり,社会通念上著しく妥当性を欠くと認められるか,以下,検討する。 被告によると,被告が本件優先基準を定めた趣旨は,地域維持事業を担ってきた地域建設業者の減少・小規模化が進んでいたことから,地域に密着し,地域の実情をよく知り,かつ,迅速確実に現場にアクセスすることが可能な地域精通度の高い地場業者を育成・保護することにあるとされる。確かに, 地方公共団体が,指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり,①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや,②地元の経済の活性化にも寄与すること などを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができるものの,①又は②の観点からは地場業者と同様の条件を満たす,準地場業者を含む市外業者もあり得る と などを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができるものの,①又は②の観点からは地場業者と同様の条件を満たす,準地場業者を含む市外業者もあり得るのである。そうすると,価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば,考慮すべき他の諸事情にかかわらず,本件優先基準の第1優先順位を適用すると,該当の等級に地場業者が5者以上いる場合は,必ず被告市内に本店を有する地場業者だけが指名され,それ以外の業者については一切指名されないことになるから,このような取扱いが常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない(平成18年判決参照)。特に,本件優先基準を定めるに至った経緯についてみるに,平成25年当時で,地場業者は66者いたことからすると,平成23年当時にも同程度の地場業者がいたとみられ,これに対し準地場業者の数は6者にとどまっており,準地場業者の存在が地場業者の入札の受注を圧迫していることを裏付けるような事実はなかった。にもかかわらず,地場業者から市内業者と準地場業者を同じように扱うのはおかしいではないかとの意見が出され,地場業者の団体からは公共工事の指名入札において地場業者を優先して指名することを求める要望書が提出されるなど,準地場業者を殊更排除する動きがみられたのであり,このような事情の下においては,地方公共団体が入札参加資格を有する者のうちから業者を指名する場合の基準を定める場合には,地方自治法等の法令が求める公正な競争の促進や価格の有利性の確保(競争性の低下防止)といった趣旨を損なわないことが強く求められるべきところ,本件優先基準の第1優先順位を適用すると,単に地場業者を優先して指名するというだけではなく,該当の等級に地場業者が5者以上いる場合は,被告市内に本店を有す 損なわないことが強く求められるべきところ,本件優先基準の第1優先順位を適用すると,単に地場業者を優先して指名するというだけではなく,該当の等級に地場業者が5者以上いる場合は,被告市内に本店を有する地場業者だけを指名し,それ以外の業者については一切指名しないということになるのであって,地場業者として少なくとも5者は指名されるとはいえ,地場業者以外の業者を参加させた場合に比べて,公正な競争の促進や価格の有利性の確保(競争性 の低下防止)といった趣旨を損なうものといわざるを得ない。 また,前提事実(2)のとおり,地方公共団体が入札参加資格を有する者のうちから業者を指名する場合の基準を定めたときは,法令上公表が義務付けられているところ(適正化法8条1号,同法施行令7条1項3号),被告においては,「国東市が発注する工事請負契約に係る指名基準」(甲3,乙5)4項が「当該工事に対する地理的条件」として「当該地域での工事実績等からみて,当該地域における工事の施工特性に精通し,工種及び工事規模等に応じて当該工事を確実かつ円滑に実施できるかどうかを総合的に勘案すること。また,本市(被告)の区域内に主たる事務所を有する者(以下「地場業者」という。)に施工能力があると認められる場合は,地場業者を優先的に指名すること。」と定めるのみで,どのように優先すべきかについて具体的に定められていないが,これを具体化した本件優先基準のうち,本件に関係する第1優先順位に関する部分は,「該当の等級に地場業者が5者以上いる場合は,地場業者だけを指名する。」として,準地場業者が指名されるか否かが機械的に決定される規定である。そして,被告においては,本件優先基準の制定以後,被告が発注するすべての指名競争入札において本件優先基準を適用して,該当の等級に地場業者が5者以上 が指名されるか否かが機械的に決定される規定である。そして,被告においては,本件優先基準の制定以後,被告が発注するすべての指名競争入札において本件優先基準を適用して,該当の等級に地場業者が5者以上いる場合は,地場業者だけを指名したというのであり,指名競争入札の対象となる工事の種類等など条件次第で個別に指名する業者を選考することはなかったのである。このように,本件優先基準の第1優先順位に関する部分は,準地場業者が指名されるか否かが機械的に定まる性質を有しており,単なる運用指針に留まるということはできず,適正化法により公表が義務付けられる指名基準に該当し,これを公表していないことは同法に違反するというべきである。 他方で,原告は,平成20年に準地場業者との認定を受け,以後,被告が実施する指名競争入札について,平成21年5月22日から本件優先基準が制定された平成23年8月9日までの間,29件の指名を受けて入札に参加 し,5件の工事を落札し,この間,被告においては,準地場業者を地場業者と同等の取扱いとすることとされ,事実上,地場業者と同じように指名されていた。また,本件優先基準が制定されたことで指名を受けることがなくなったことについて,被告から原告にその理由が伝えられたことはなかった。 このように原告は,約2年という短くない期間にわたり準地場業者として指名及び受注の実績があり,原告が被告から受注した工事自体において施工上の支障を生じさせたこともうかがわれず,また,被告市内に本店が所在しないとしても,単なる市外業者ではなく,被告において準地場業者として認定を受けているのであるから,原告において提供し得る工事内容その他の条件によっては,地場業者と同様に取り扱って指名することが合理的であった工事もあり得たものとみられる。 このような原告 者として認定を受けているのであるから,原告において提供し得る工事内容その他の条件によっては,地場業者と同様に取り扱って指名することが合理的であった工事もあり得たものとみられる。 このような原告につき,平成23年8月以降,上記のような適正化法に違反する本件優先基準に基づき,原告が入札資格を有する工種に係る指名競争入札について,地場業者が5者以上いたことのみを理由とし,原告が提供し得る工事内容その他の条件いかんにかかわらず,地場業者のみを指名して,原告を一切指名せず指名競争入札に参加させなかったものであり,このような本件指名回避は,公正な競争の促進や価格の有利性の確保(競争性の低下防止)等の考慮すべき事情を十分考慮することなく,一つの考慮要素にとどまる地場業者であるか否かを重視している点において,極めて不合理であり,社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ない。そうすると,本件指名回避は,入札参加業者の指名に係る被告の裁量権を逸脱・濫用するものであって,国家賠償法1条1項にいう違法があるとの評価を免れないというべきである。 (3) 被告の主張の検討ア被告は,地元建設業者の減少・小規模化が進んでおり,地域精通度の高い地場業者を育成・保護する必要性があったと主張する。 しかしながら,被告の実情をよく知り,かつ,迅速確実に現場にアクセスすることが可能な地域精通度の高い地場業者を育成・保護する必要性は否定できないとしても,被告の主張する必要性は抽象的なものにとどまっており,本件優先基準を制定した平成23年当時,被告において,その必要性が高かったことを示す具体的な事情は見当たらない。かえって,平成18年及び平成25年時点の被告市内の地場業者数は認定事実(2)のとおりであり,平成23年当時,業者数の減少により被告が発注す の必要性が高かったことを示す具体的な事情は見当たらない。かえって,平成18年及び平成25年時点の被告市内の地場業者数は認定事実(2)のとおりであり,平成23年当時,業者数の減少により被告が発注する公共工事に支障をきたすような状況にあったとまではいえないし,準地場業者の数は6者にとどまっていたから,地場業者の入札を圧迫していたともいえない。そして,指名委員会においても,平成23年当時までの数年間の公共工事に係る請負総額の推移や地場業者の減少数等のデータを示して議論したことはなかったというのであるから,本件優先基準の制定にあたっても,抽象的な議論がされていたにとどまるのである。そうすると,被告の指摘は,上記認定判断を左右するものではない。 イ被告は,本件優先基準の制定にあたり,大分県内の他自治体の指名状況を参考にしたと主張する。 しかしながら,被告においては,平成20年から平成23年までの間,準地場業者として認定をした市外業者を地場業者と同等の取扱いをしていたことなど他の自治体とは前提とされる状況が全く異なっているのであって,そのような取扱いをしていなかった自治体の指名状況をもって,本件指名回避を正当化することはできない。 また,被告が大分県内各市の建設工事の準市内業者(市外業者で,支店・営業所等が市内にある者)の取扱いを取りまとめた結果や指名基準の公表に関するアンケートの結果等(乙3,38,39の1~13,乙42)によると,本件優先基準の制定前の被告のように,準市内業者の取扱い規定を設けて,市内業者と同等の扱いをしていた自治体はなく,多くの自治体 は,準地場業者の取扱いが存在せず,基本的に当該自治体の市内に本店を有する業者を優先的に指名している旨の回答がなされていることが認められるが,本件優先基準のように,地場業者が 多くの自治体 は,準地場業者の取扱いが存在せず,基本的に当該自治体の市内に本店を有する業者を優先的に指名している旨の回答がなされていることが認められるが,本件優先基準のように,地場業者が5者以上いた場合には,他の条件いかんにかかわらず,そのことのみを理由とし,地場業者に限定して指名する取扱いをしている自治体があることを示す証拠はなく,いずれにしても被告による本件指名回避を正当化するものではない。 ウ被告は,業者から問い合わせがあれば本件優先基準について回答していたから,透明性は十分確保されていたと主張する。 しかし,適正化法施行令7条は,地方公共団体の長が指名競争入札に参加するものを指名する場合の基準を定めたときは,遅滞なく当該事項を公表しなければならないとされているのであって,仮に被告が主張するように,問い合わせがあれば回答していたとしても,そのことをもって公表義務を果たしたとはいえないことは明らかであり,被告の主張は理由がない。 (4) 故意又は過失について前記認定事実等のほか,証拠(乙4,16,31,34,証人丙)及び弁論の全趣旨によれば,被告においては,別紙「起工伺~入札・契約」のとおり,入札案件については,財産管理課検査班(現在は契約検査課)が入札案件について,指名委員会資料,業者指定伺(案)を作成し,副市長や契約検査課長などが委員となる指名委員会での選考に関する審議の結果を経て,入札参加者指定伺等を作成して,被告市長の決裁を受けて指名通知を行っていること,指名委員会の庶務は財産管理課検査班が行っており,その職員は指名委員会の審議の内容は共通認識としていること,被告においては指名競争入札の参加者について,指名の通知は被告市長名で行っているものの,指名の選考は指名委員会にゆだねられていたということ,被告市長 指名委員会の審議の内容は共通認識としていること,被告においては指名競争入札の参加者について,指名の通知は被告市長名で行っているものの,指名の選考は指名委員会にゆだねられていたということ,被告市長は,本件優先基準が制定される直前の平成23年8月5日頃,被告市民病院の改装工事に係る入札事務を調査するための特別委員会の報告を受け,「他市の状況を参考 に,競争性を確保しながら地場業者の受注機会が確保できるよう,見直しを職員に指示した。」とコメントしていることが認められる。これらの事情に加え,前記で認定した本件優先基準制定の経緯を併せ考えると,被告市長が地場業者の受注機会の見直しを指示していながら,本件優先基準の制定について関知していないとはおよそ考え難い。 そして,本件指名委員会は,本件優先基準制定により,それ以降,原告に対して指名されない事態になることを認識しながら,本件優先基準を制定し,それ以降,指名委員会は,本件優先基準を適用し,原告が入札資格を有する工種に係る個別の指名競争入札における入札参加者の指名の選考について,地場業者が5者以上いたことのみを理由として地場業者のみを指名し,さらに,被告市長は,そのような指名委員会の選考を受けて地場業者のみを指名して原告を指名しなかったのであり,このような事情に加え,本件優先基準が平成18年判決の言渡しから相当期間経過した後に制定されたものであることをも踏まえると,指名委員会及び被告市長には,本件指名回避について少なくとも過失があると認められる。 そうすると,本件指名回避は,被告の公権力の行使にあたる公務員たる被告市長及び指名委員会がその職務を行うについて,過失によって違法に原告に損害を加えたものであるから,被告は,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,原告に生じた損害を賠償す 行使にあたる公務員たる被告市長及び指名委員会がその職務を行うについて,過失によって違法に原告に損害を加えたものであるから,被告は,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,原告に生じた損害を賠償する責任を負う。 3 争点(2)(本件優先基準を公表していないことが違法か)について前記2(2)で認定,説示したとおり,地方公共団体が入札参加資格を有する者のうちから業者を指名する場合の基準を定めたときは,公表が義務付けられているところ(適正化法8条1号,同法施行令7条1項3号),本件優先基準は,単なる運用指針に留まるということはできず,適正化法により公表が義務付けられる指名基準に該当するから,これを公表しないことは同法に違反するものであり,公表されないことにより損害を被った原告に対して負う職務上の法的 義務に違反したものとして,国家賠償法1条1項にいう違法があるというべきである。 そして,適正化法に公表義務の定めがあることは被告市長も当然認識していると考えられるから,前記2(4)で認定,説示したところと併せ考えれば,被告市長に少なくとも過失があることは明らかである。 そうすると,本件優先基準を公表しないことについても,被告の公権力の行使にあたる公務員たる被告市長がその職務を行うについて過失によって違法に原告に損害を加えたものであるから,被告は,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,原告に生じた損害を賠償する責任を負う。 4 争点(3)(損害とその額)について(1) 本件指名回避による損害ア認定事実証拠(甲17,乙27,原告前代表者の本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告が指名競争入札に参加することになった経緯等a 原告前代表者は,被告の地場業者である丁を経営する戊から, 前代表者の本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告が指名競争入札に参加することになった経緯等a 原告前代表者は,被告の地場業者である丁を経営する戊から,「自分の会社を土木工事B級にランクを上げたいので協力してほしい。」などと言われ,平成20年7月頃,被告市内に原告の支店を設置し,準地場業者の資格を得て被告の指名競争入札に参加するようになった。 原告は,被告の指名競争入札に参加し,指名を受けて落札し受注した工事について丁に下請けに出し,同社に全て施工させた上,手数料等の名目で工事代金の3%を収受し,残額を同社に交付していた。 b また,原告は,被告に対し,原告の被告市内の事務所には戊の娘である己(以下「己」という。)が職員として常駐している旨申告していた(乙27)が,同人は,平成20年当時の上記事務所から約70メートル離れた場所にある丁の事務所に勤務しており,月に数回程度(平 成22年に原告の事務所が移転してからは,10~20日に1回程度),原告の事務所に顔を出し,清掃等を行っていたにとどまり,常駐していた職員ではなかった。 原告は,平成20年に事務所を設置するにあたり,己に10万円を1回支払ったが,それ以外の金銭を支払ったことはない。 (イ) 原告前代表者の供述について原告は,原告前代表者の尋問当時,同人の心神状態に問題が生じており,記憶に従って事実を供述することができていたのか疑問であるとし,その供述は全く信用できないと主張する。 しかし,原告前代表者の供述は,趣旨不明の発言がないではないものの,重ねて質問されることなどにより質問内容については理解した上で供述しているものとみられ,また,戊への下請けの経緯やその内容などの重要な部分については,具体的に供述しているのであり いではないものの,重ねて質問されることなどにより質問内容については理解した上で供述しているものとみられ,また,戊への下請けの経緯やその内容などの重要な部分については,具体的に供述しているのであり,尋問の申出をした原告代理人において,尋問時までに証拠申請の撤回や尋問の延期等を求めていないことなどの事情をも踏まえると,上記重要な部分についての供述の信用性に疑問を生じさせるような心身の状態にあったとは認められない。 イ損害の額上記アの認定事実(ア)aによれば,原告は,被告から指名を受けて落札し受注した工事について丁に下請けに出し,同社に全て施工させた上,手数料等の名目で工事代金の3%を収受し,残額を同社に交付していたというのであるから,かかる経緯及び原告の関与の状況に照らせば,原告は,丁に対し,建設業法22条により禁止されている一括下請けを行っていたと認められる。そうすると,このような違法行為を行っていた原告について,原告の主張するような逸失利益相当額の損害が生じたと認めることはできない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件指名回避と相当因果関係を有する逸失利益の請求は認められない。 (2) 本件優先基準の非公表による損害ア認定事実証拠(甲14の1~3,甲15,原告前代表者の本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 法人住民税納税分原告は,被告市内に支店として事務所を設置していたため,被告に対し,以下の法人住民税を納付した。 ① 平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度納税分 5万4500円(2万9200円〔甲14の1〕+2万5300円〔甲14の2〕)② 平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度納税分 6万0900円(甲1 までの事業年度納税分 5万4500円(2万9200円〔甲14の1〕+2万5300円〔甲14の2〕)② 平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度納税分 6万0900円(甲14の3)③ 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度予定申告による納税分 3万0400円(甲14の3)(イ) 事務所等の地代原告前代表者は,被告市内に事務所を設置するにあたり,地主である庚(以下「庚」という。)から土地を借り受けたが,その際,地代を毎月いくらにするかの合意をしたことはなく,月5万円とする約束もしていない。 ただし,原告は,資金的な余裕ができた場合に,庚に対し,5万円を支払うことがあった(甲15)。 イ原告が納付した法人住民税について,上記アの認定事実(ア)①の期間については,平成23年8月に本件優先基準が公表されたとしても,原告が 直ちに被告市内から撤退できたか否かは不明であり,また,事業年度途中である同月に撤退した場合に,同月以降の期間分について課税を免れ得ることを認めるに足りる証拠もない。 しかし,遅くとも平成24年4月1日以降の上記アの認定事実(ア)②及び③の事業年度に納付した法人住民税(前提事実(3)イ(イ)のとおり,市税を完納していることは準地場業者の要件となっている。)については,その基準日までに被告市内から撤退し得たと認めるのが相当である。 したがって,上記②及び③の合計納付額である9万1300円は,本件優先基準の非公表と相当因果関係を有する損害であると認められる。 ウ上記アの認定事実(イ)によれば,原告は,庚との間で毎月地代をいくら支払うかについての合意をしていなかったというのであるから,同人との間で,賃貸借契約に基づく月5万円の賃料支払債務が発生していたとはいえ の認定事実(イ)によれば,原告は,庚との間で毎月地代をいくら支払うかについての合意をしていなかったというのであるから,同人との間で,賃貸借契約に基づく月5万円の賃料支払債務が発生していたとはいえない。 したがって,本件優先基準の非公表により月5万円の賃料相当損害金が生じていたとは認められない(なお,原告が被告に提出した土地賃貸借契約書〔乙29〕には,庚に支払うべき賃料を月1000円とする旨記載されているが,この契約書の記載内容が実態を反映していないことは原告前代表者自身が明確に認めており,同契約書記載のとおり,原告と庚との間で賃貸借契約が締結されたと認めることもできない。)。 エ原告の請求する人件費について,原告前代表者は,月に2回程度,被告市内の事務所に赴き,掃除や片付けを行っていたと供述するが,他にいかなる作業をしていたかは不明であることに加え,実際に出勤していたことを裏付ける出勤簿等の証拠はなく,この点に関する同人の供述はにわかに信用できない。したがって,原告前代表者が月2回,原告の事務所に出勤していたとは認められないから,人件費相当額の損害が生じているとは認められない。 オ弁護士費用については,上記イの9万1300円の約1割である9000円の限度で相当因果関係を認めることができる。 カ小括以上のとおりであるから,本件優先基準の非公表と相当因果関係を有する損害は,平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度に係る法人住民税の納税分6万0900円と,平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度に係る予定申告による納税分3万0400円の合計9万1300円及び弁護士費用9000円の総計10万0300円である。 5 結論以上によれば,原告の請求のうち,上記の10万0300円及びこ 業年度に係る予定申告による納税分3万0400円の合計9万1300円及び弁護士費用9000円の総計10万0300円である。 主文 以上によれば,原告の請求のうち,上記の10万0300円及びこれに対する平成26年2月5日(同月3日付け訴えの変更申立書送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるが,その余の請求については理由がない。なお,仮執行宣言については,相当でないから付さない。 よって,原告の請求を上記の限度で認容し,その余の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官 竹内浩史 裁判官 鈴木喬 裁判官 藤丸貴久 (別紙)省略

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