平成27年1月28日判決言渡平成23年(ワ)第8408号地位確認等請求事件 主文 1 原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,18万5462円及びこれに対する平成23年1月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告に対し,平成23年2月から本判決確定の日まで,毎月25日限り23万4412円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 6 この判決は,2項及び3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文1項同旨 2 被告は,原告に対し,平成23年1月から本判決確定の日まで,毎月25日限り23万4412円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告に対し,250万円及びこれに対する平成23年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の会社更生手続中に更生管財人が行った整理解雇の対象となった原告が,整理解雇は無効であるとして,①労働契約上の地位にあることの確認と,解雇後,平成23年1月支払期から本判決確定までの賃金の支払 を求めるとともに,②原告に対する整理解雇や退職勧奨が違法なものであったとして,損害賠償を求める事案である。 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認めることができる。)(1) 当事者ア なものであったとして,損害賠償を求める事案である。 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認めることができる。)(1) 当事者ア被告(ア) 被告(変更前の商号:株式会社P1(以下「P1」といい,商号変更の前後を通じて「被告」ということもある。)は,その子会社・関連会社とともに航空運送事業及び関連する事業を営む企業グループ(以下「P2グループ」という。)を形成している。 (イ) 被告においては,後記(2)アの更生手続開始決定日において,以下の労働組合が存在した(乙4・27頁)。 ・P3労働組合・P4労働組合・P5労働組合・P6・P7組合・P8組合・P9組合・P10組合イ原告(ア) 原告は,昭和42年▲月▲日生まれの女性である(甲63)。 原告は,平成9年,株式会社P11(以下「P11」という。)の子会社である株式会社P12(以下「P12」という。)に客室乗務員として入社した。原告は,P12が航空事業から撤退することとなったことから,平成16年11月,P13株式会社(以下「P13」とい う。)に,客室乗務員(契約社員)として入社し,平成19年11月1日,正社員となった。その後,平成20年3月31日,P13がP1に吸収合併されたため,原告は,P1に正社員として勤務することとなった。 (イ) 原告は,客室乗務員として,乗客や行き先に関する情報の調査,ブリーフィング,機内での飲食の提供等のサービス,物品販売,保安業務等の業務に従事していた(甲120,原告本人尋問調書1頁)。 (ウ) 原告の平成2 室乗務員として,乗客や行き先に関する情報の調査,ブリーフィング,機内での飲食の提供等のサービス,物品販売,保安業務等の業務に従事していた(甲120,原告本人尋問調書1頁)。 (ウ) 原告の平成22年12月時点における賃金は以下のとおり,合計23万4412円であり,基準内賃金は毎月末日締め当月25日払い,基準外賃金は毎月末日締め翌月25日払いであった。 基準内賃金 18万5462円(基本賃金11万6511円,客室手当金5万9204円,世帯手当金9747円)基準外賃金乗務手当の一般保障4万8950円(以上,甲1の1ないし4)(エ)a 原告は,平成21年頃から,皮膚が赤くなるようになり,当初は化粧で隠すなどして勤務していたが,平成22年3月頃には,肌の状態が相当悪化し,年次有給休暇(以下「年休」という。)を取得するなどしながら勤務を続けていた。 b 原告は,平成22年4月8日,P14病院に通院し,顔面酒さ及び接触皮膚炎(以下「本件疾病」という。)と診断された。 c 原告は,治療を続けながら勤務を続けていたが,肌の状態が悪化し,久しぶりに同じフライトに乗務することとなった同僚から肌の状態を尋ねられるほどになり,平成22年5月には,乗客と接することが困難なほどに悪化してしまった。そのため,原告がマネージャーに相談したところ,P15基地の閉鎖に伴い,P16基地に原告の勤務先が変更になることが決まっており,勤務地が変更にな れば環境が大きく変化することとなるため,病気になることもあり得るから年休は残しておいた方がよいとの助言を受けた。原告も,勤務地が変更になることに不安を抱いていたことから,同助言に従って残っていた年休(16日)を取得しないで残しておくこととし,本件疾病の原因の精査及び治療のため,同年5月17日から同年1 た。原告も,勤務地が変更になることに不安を抱いていたことから,同助言に従って残っていた年休(16日)を取得しないで残しておくこととし,本件疾病の原因の精査及び治療のため,同年5月17日から同年10月12日まで,病気休職した。 (以上,甲63,120,原告本人尋問調書7ないし13頁)d 原告は,平成22年10月18日,P1の産業医であるP17医師により同月19日から乗務復帰可能であるとの診断を受けたため,同日,乗務復帰した(甲71)。 (2) P2グループの会社更生手続ア P1は,平成22年1月19日,株式会社P18(以下「P18」という。)及び株式会社P19(以下「P19」という。)とともに,東京地方裁判所に対し,会社更生手続開始申立てを行った。東京地方裁判所は,同日,株式会社P20(以下「機構」という。)及びP21弁護士(以下「P21管財人」という。)を管財人に選任し,会社更生手続開始決定を行った(以下,この会社更生手続を「本件更生手続」という。)。 また,機構は,同日,株式会社企業再生支援機構法25条4項に基づき,再生支援決定を行い,P1,P18及びP19の事業再生計画は,後に提出される更生計画によって修正・変更される可能性があるが,本な撤退とアライアンス効果の追求の意思決定の早い組織体制の確立の施策を検討している旨発表した(乙8)。 イ日本政府は,平成22年1月19日,前記アの開始決定・支援決定を 受けて,再生を果たすまでの間,十分な資金を確保するほか,運行の継続と確実な再生を図るため,必要な支援を行っていくこと,事業と財務基盤の健全化に強力に取り組み,安全な運行の確保について万全を期すことを強く要請することなどを内容とする政府声明を発表した(乙3)。 (3) 本件更生 め,必要な支援を行っていくこと,事業と財務基盤の健全化に強力に取り組み,安全な運行の確保について万全を期すことを強く要請することなどを内容とする政府声明を発表した(乙3)。 (3) 本件更生手続開始決定当初の事業再生計画機構は,平成22年1月19日,「○」と題する文書により事業再生計画を公表した。 同文書においては,窮境原因として,過去の大量輸送時代の構造を引きずり,事業構造の硬直化(大型機材の大量保有,不採算路線の維持)及び組織体制の硬直化(人員余剰・硬直的組織体制,意思決定の遅滞)により需要低迷に適時適応した事業規模及び組織体制の縮小ができなかったことが挙げられ,再生シナリオとして,①機材の小型化,効率性向上,②不採算路線からの大胆な撤退とアライアンス効果の追求,③人員・組織体制の効率化,柔軟性の抜本的向上,④現場基点の意思決定の早い組織体制の確立が挙げられた。また,再生の方向性として,事業について大幅なダウンサイジングをするとし,人員を,グループ全体で5万1862人から3万6201人に削減し,各種手当の見直し,年功序列型賃金体系の抜本的改革による人件費の削減を行うとされた。 (以上,甲96,乙5)(4) 人員削減に向けた取組みア被告は,平成22年2月24日付け「路便ネットワーク再構築案進捗状況報告書」において,被告の再生には「当社に対する各ステークホルダー(銀行,商社,国民等)の理解を得る必要性」があり,「特に債権者に対しては,リファイナンスを要請しなければならず,3年以内ではなく,更生期間内にリストラを即時実施し,十分なキャッシュを生み出せる体質になったことを足元実績として示す必要」があるとした(乙10)。 イ平成22年3月,P1の従業員を対象とする特別早期退職の募集が開始され,被告全体で し,十分なキャッシュを生み出せる体質になったことを足元実績として示す必要」があるとした(乙10)。 イ平成22年3月,P1の従業員を対象とする特別早期退職の募集が開始され,被告全体で合計3610人が応募した。客室乗務員に対する特別早期退職の募集については,以下のとおり行われた。 募集期間対象平成22 年3 月5 日から同月24 日部長級の客室常務管理職のみ平成22 年3 月11 日から同年4 月 9 日 3 月31 日時点で満35 歳以上の客室常務一般職,P15・P22基地在籍社員,休職者,室長・マネージャー級の客室常務管理職ウ被告は,平成22年4月28日,平成22年度上期路線便数計画を一部変更するとともに,平成22年度下期の路線便数計画(以下「下期計画」という。)を公表した(乙11)。被告は,同日付け「再生計画の方向性について」と題する書面を配布して,P2グループの社員に対し,平成22年度の路線便数計画を知らせるとともに,「再生計画における徹底した構造改革」と題する書面を配布し,前記(3)の事業再生計画から前倒しして同年度末までに人員削減を早期達成することとし,削減後の人員数についても,3万6200名から約3万3500名に変更することを明らかにした(乙9)。 エ被告は,平成22年8月20日,平成22年下期の路線便数計画の一部を変更して下期計画を確定した(乙21)(5) その後の再生計画の進展ア更生計画案の提出管財人は,平成22年8月31日,東京地方裁判所に対し,本件会社更生手続に係る更生計画案(以下「本件更生計画案」という。)を提出した。 本件更生計画案においては,人員について,「航空事業のリストラクチ ャリングに伴い,人員・組織体制等について 件会社更生手続に係る更生計画案(以下「本件更生計画案」という。)を提出した。 本件更生計画案においては,人員について,「航空事業のリストラクチ ャリングに伴い,人員・組織体制等についてもグループ全体として大幅なダウンサイジングと意思決定の適時・適切化を進める。これにより,運航乗務員,客室乗務員,整備,グランドハンドリング等の直接人員の削減と併せて,本社等の間接人員についても大幅に削減する」(11頁),「早期退職・子会社売却等により,P2グループの人員削減をより推進し,平成21年度末の4万8714人から平成22年度末には約3万2600人とする予定である」(23頁),「可能な限りスリムな組織構造を構築し,これにより人的生産性を向上させることで収益性を改善させ,更なるコスト競争力を確保していくことを骨子とし」(36頁),「事業規模に応じた直接・間接人員数削減を実施し,総人件費を圧縮する」(40頁)とされた。 (以上,乙4)イ基本合意管財人は,平成22年11月30日,主要な取引銀行5行との間で,借入れ等によって調達した資金を原資とする一般更生債権及び更生担保権の繰上げ早期一括弁済等(リファイナンス)に関し,法的拘束力のない形での基本合意(以下「主要行との基本合意」という。)を行った。 同基本合意においては,リファイナンス協議の前提として,リファイナンスに係る最終契約締結までの間に,更生計画に記載されている対象事業者における諸施策(人員圧縮等,実施中のコスト削減策)及び更生計画策定後に具体化が決定された生産性向上や購買改革等による持続的なコスト削減策等の実現に重大な支障が生じていないことなどが定められた。 (以上,乙29)(6) 本件更生計画案の認可本件更生計画案に対する更生債権者の投票期限は 革等による持続的なコスト削減策等の実現に重大な支障が生じていないことなどが定められた。 (以上,乙29)(6) 本件更生計画案の認可本件更生計画案に対する更生債権者の投票期限は平成22年11月19 日と定められていたところ,同月18日に法定多数の票が集まり,同月19日,更生債権者の多数の同意を得て,本件更生計画案が可決された。東京地方裁判所は,同月30日,同計画案を認可する旨の決定をした。 (以上,乙37。以下,認定された本件更生計画案を「本件更生計画」という。)(7) 希望退職措置の実施ア第一次,第二次希望退職措置(乙15)(ア) 被告は,平成22年8月31日,希望退職措置を実施することとした。 希望退職措置の対象者として,客室乗務員については,55歳以上の管理職,45歳以上(キャビンスーパーバイザー及び国際線先任業務資格保有者は52歳以上)の一般職(なお,年齢基準は平成22年11月30日時点の満年齢)が対象者とされた(なお,平成20年度以降,平成22年10月26日までの間に,業務上・業務外にかかわらず傷病により欠勤・休職・休業をしたことのある者については,希望退職措置の適用を認めることがある。)。 また,希望退職措置の内容として,①募集期間は,第一次募集期間が平成22年9月3日から同月24日まで,第二次募集期間が同年10月1日から同月22日まで,②退職日は同年11月30日,③希望退職措置の適用を受けて退職する場合には,規程上の退職金に加え,所定の一時金を支払う,④年休は最大限消化することとし,未消化の年休は買取りの対象とする,⑤外部専門会社によるキャリア相談の実施,⑥外部専門会社による再就職支援を行うなどとされた。 (イ) 客室乗務員については,第一次希望退職措置に193名, 未消化の年休は買取りの対象とする,⑤外部専門会社によるキャリア相談の実施,⑥外部専門会社による再就職支援を行うなどとされた。 (イ) 客室乗務員については,第一次希望退職措置に193名,第二次希望退職措置に456名が応募した(乙44)。 イ希望退職措置説明会(乙12) 被告は,平成22年9月3日,希望退職措置説明会を実施し,人員削減について,平成22年度末までにP2グループ全体で約3万2600人とすること,職種別に削減目標を定めること,削減目標は同月末を目途に最終化することなどを説明した。 ウ最終希望退職措置(乙16)被告は,平成22年10月26日,前記アのとおり,第一次希望退職措置及び第二次希望退職措置を実施したが,応募者が予定している数に満たなかったため,最終希望退職措置を実施することとした。 希望退職措置の対象者として,客室乗務員については,55歳以上の管理職,42歳以上(キャビンスーパーバイザー及び国際線先任業務資格保有者は52歳以上)の一般職(なお,年齢基準は平成22年11月30日時点の満年齢)が対象者とされた(なお,平成20年度以降,平成22年8月31日までの間に,業務上・業務外にかかわらず傷病により欠勤・休職・休業をしたことのある者については,希望退職措置の適用を認めることがある。)。 希望退職措置の内容として,募集期間を平成22年10月26日から同年11月9日までとしたほかは,第一次希望退職措置及び第二次希望退職措置と同様とされた。 同応募においては,客室乗務員の目標人数約140人に対し,約50人の応募があった(乙49)。 エ希望退職措置の延長(乙17)被告は,平成22年11月19日,前記ウのとおり,最終希望退職措置を実施したが,応募者が予定している数に満た 人に対し,約50人の応募があった(乙49)。 エ希望退職措置の延長(乙17)被告は,平成22年11月19日,前記ウのとおり,最終希望退職措置を実施したが,応募者が予定している数に満たなかったため,募集期間を同月30日までとしたほかは,最終希望退職措置と同様の対象者・内容で,引き続き希望退職措置を実施することとした。 オ希望退職措置の再度の延長(乙18) 被告は,平成22年12月1日,前記エのとおり,希望退職措置の期間を延長したが,応募者が予定している数に満たなかったため,希望退職措置を再度延長することとした。 なお,希望退職措置の対象者は,最終希望退職措置と同様であるが,希望退職措置の内容は,退職日が平成22年12月31日となること,所定の一時金の額が従前の額とは異なることなど,一部変更された。 同応募においては,客室乗務員の目標人数約90人に対し,約20人の応募があった(乙50)。 (8) 整理解雇の実施ア被告は,平成22年9月27日(以下「当初の人選基準案公表日」ともいう。),労働組合に対し,第一次希望退職措置の期間が終了したが,応募者数が目標を大きく下回っており,第二次希望退職措置の応募期間を設定するが,応募者数が目標に達しない場合も想定せざるを得ず,整理解雇の人選基準等についても検討を行わざるを得ない状況になったとして,「現時点での会社の整理解雇の人選基準(案)」として,以下の人選基準案(以下「当初の人選基準案」という。)を提示し,同月28日,それについて説明を行った(乙13,45)。 a 平成22年8月31日時点の休職者(産前・育児・介護・組合専従によるものを除く。以下「休職者基準」という。)b 平成22年度(平成22年8月31日まで)において a 平成22年8月31日時点の休職者(産前・育児・介護・組合専従によるものを除く。以下「休職者基準」という。)b 平成22年度(平成22年8月31日まで)において(a) 病気欠勤日数が41日(キャリアサービスアテンダントにおいては21日)以上である者(b) 休職期間(産前・育児・介護・組合専従によるものを除く。以下,同じ。)が2か月以上である者(c) 病気欠勤日数及び休職期間の合計が61日以上である者c 平成20年度から平成22年度の過去2年5か月において (a) 病気欠勤日数が合計81日(キャリアサービスアテンダントにおいては41日)以上である者(b) 休職期間が4か月以上である者(c) 病気欠勤日数及び休職期間の合計が121日以上である者(d) 病気欠勤日数が,平成20年度13日以上,かつ,平成21年度13日以上,かつ,平成22年度6日以上である者ただし,(a)ないし(c)においては,平成22年度において病気欠勤日数・休職期間がいずれも0日であった者は除く。 (以下,bとcを併せて「病欠・休職日数基準」といい,aの休職者基準と併せて「病欠・休職等基準」という。)d 人事考課の結果が,平成19年ないし平成21年度の過去3年間において毎年2以下であった者(以下「人事考課基準」という。)e 以上によってもなお,目標人数に達しない場合は,各職種・職位・保有資格ごとに,年齢の高い者から順に,目標人数に達するまでを対象とする(育児・介護・組合専従による休職者を含む。以下「年齢基準」という。)。 イ管財人は,平成22年11月12日の会議において,整理解雇を行う方針を から順に,目標人数に達するまでを対象とする(育児・介護・組合専従による休職者を含む。以下「年齢基準」という。)。 イ管財人は,平成22年11月12日の会議において,整理解雇を行う方針を決定した(乙37,49)。 ウ被告は,平成22年11月15日(以下「本件人選基準変更日」ともいう。),労働組合に対し,当初の人選基準案と同様に「現時点での会社の整理解雇の人選基準(案)」として,上記基準案について,前記アの病欠・休職等基準に該当しても,上記基準案公表日(同年9月27日)現在で乗務復帰している者で,平成18年10月1日以降平成20年3月31日までに連続して1か月を超える病気欠勤期間及び休職期間がなかった者は対象外とする旨の変更を加えたもの(以下「本件人選基準」といい,そのうち,付加された部分を「復帰日基準」という。)を提示した (乙24)。 また,被告は,同日,希望退職措置について,運航乗務員の目標人数約130名に対し約20名,客室乗務員の目標人数約140名に対し約50名の各応募があったこと,本件更生計画案の実現のためには更に人員調整が必要であり,やむを得ず,整理解雇を行うこととしたこと,今後も希望対象の応募を受け付けること,これまでは休職者等を除いた人数をベースとしていたが,整理解雇にあたっては,休職者等約50名についても,一定の基準のもと,整理解雇を実施することなどを発表した(乙37,49)。 エ管財人は,平成22年12月9日の会議において,具体的な日時を含めて,整理解雇を行う方針を決定した。 被告は,同日,希望退職の期間を延長していたところ,運航乗務員の目標人数約110名に対し約20名,客室乗務員の目標人数約90名に対し約20名の応募があったこと,各目標数の未達分につい 。 被告は,同日,希望退職の期間を延長していたところ,運航乗務員の目標人数約110名に対し約20名,客室乗務員の目標人数約90名に対し約20名の応募があったこと,各目標数の未達分について,同月31日を解雇日として整理解雇に向けた手続を開始することなどを発表した。 (以上,乙37,50)オ管財人は,平成22年12月9日,原告に対し,就業規則で定める「企業整備等のため,やむをえず人員を整理するとき」に該当するため,同月31日付けで解雇する旨の解雇予告通知をした(甲2)。 なお,管財人は,同月9日,原告を含め客室乗務員108名に対して同月31日付けで解雇する旨の解雇予告通知をした(以下,同時に解雇予告通知された者も含め,これらの通知を「本件解雇通知」という。)。 カ管財人は,平成22年12月27日付けで,原告に対し,解雇理由証明書を交付した。 同証明書には,解雇理由は,就業規則52条1項4号の「企業整備等 のため,やむをえず人員を整理するとき」に該当するためであり,原告について,本件人選基準のうち,「病気欠勤・休職等による基準 ○2010年度(2010年8月31日まで)において a)病気欠勤日数が合計41日以上である者。 b)病気欠勤日数,乗務離脱期間および休職期間の合計が61日以上である者。」に該当することを理由としている旨が記載されていた。 (以上,甲3)キ被告は,本件解雇通知後も希望退職の募集を継続していたところ,23名の客室乗務員が新たに応募したため,原告を含め84名の客室乗務員を平成22年12月31日付けで解雇した(以下,これらの解雇を「本件整理解雇」という。乙44)。 2 争点本件の主な争点は,①本件整理解雇が有効か否か(争点1),②原告に対する本件整理解雇 成22年12月31日付けで解雇した(以下,これらの解雇を「本件整理解雇」という。乙44)。 2 争点本件の主な争点は,①本件整理解雇が有効か否か(争点1),②原告に対する本件整理解雇や退職勧奨が不法行為に当たるか(争点2)である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件整理解雇が有効か否か)について(被告の主張)ア人員削減の必要性について(ア) 本件における人員削減の必要性a 本件更生計画の基本方針航空事業は,外部の事業環境の変化に敏感であり,その影響を直ちに受けやすいため,イベントリスクの発生などにより大幅に売上が減少してしまう一方,固定費の割合が高く,変化に即応し得る柔軟性のある費用構造ではないことから,売上の減少が損益の大幅な悪化に直結するという特徴を有している。本件更生計画では,このような航空事業の特性を考慮に入れ,まずは赤字を出している路 便・地点からの撤退,更には燃費効率の悪い大型・中型機の退役や機材の小型化(ダウンサイジング)等を早期に実施することにより,早期の収支改善を目指した。 一方で,路線便数の縮小は,直ちに収入が減少することを意味するため,赤字路線からの撤退,機材のダウンサイジングの効果を得るためには,事業規模に応じた人員・組織体制とすることが必須となる。このような考え方に基づき,本件更生計画案においては,「航空事業のリストラクチャリングに伴い,人員・組織体制についてもグループ全体として大幅なダウンサイジング(中略)を進める」,あるいは「事業規模に応じた直接・間接人員数削減を実施し,総人件費を圧縮する」として,事業の縮小および縮小した事業規模に見合った人員削減を行うことを基本方針としている。 b 本件更生計画達成の必要性主要銀行 規模に応じた直接・間接人員数削減を実施し,総人件費を圧縮する」として,事業の縮小および縮小した事業規模に見合った人員削減を行うことを基本方針としている。 b 本件更生計画達成の必要性主要銀行ら債権者は,本件更生計画,特に人員削減の達成状況に強い関心を有しており,本件更生計画案に対して債権者らの同意を得るに当たっても,計画が実現されているのかについて厳しいチェックを受けていた。また,本件更生計画においては,人員削減のほか,一般更生債権の免除・分割弁済,既存株式の消却など,各利害関係人の利益を調整し,それぞれに応分の負担を求める内容となっている。 よって,本件更生手続開始に至った被告の再建のためには,本件更生計画(及びそれと一体をなすものとして利害関係人に対して開示された事業計画等)記載の事項を遂行することが必要であった。 c 本件更生計画達成のための人員削減の必要性本件更生計画案では,「平成21年度末の48,714人から平成22年度末には約32,600人とする予定である」と人員削減の 計画を示しているため,この計画を遂行することが必要であった。 しかし,平成22年11月の時点で,本件更生計画案が前提としている下期計画に基づいて,平成22年度下期(同年10月以降)より大幅に規模を縮小した路線便数計画が実行に移されており,他方で,本件更生計画案の事業損益計画表は,同年11月末に特別早期退職措置等の人員施策により人員削減が実行されることを前提として作成されており,本来であれば本件更生計画認可の時点(同月30日)で,人員削減についての結果を明確にする必要があった。 また,事業損益計画表は本件更生計画案において示されており,債権者らも,平成22年11月末以降,人員の余剰が顕在化することについては認識できた。加えて,被告 ついての結果を明確にする必要があった。 また,事業損益計画表は本件更生計画案において示されており,債権者らも,平成22年11月末以降,人員の余剰が顕在化することについては認識できた。加えて,被告は主要行との基本合意書を締結し,それには,「更生計画に記載されている対象事業者における諸施策(人員圧縮等,実施中のコスト削減策)…の実現に重大な支障が生じていないこと」がリファイナンス協議の前提として定められており,主要行が上記協議を開始するにあたり,本件更生計画案記載の人員削減施策に重大な支障が生じていないことが協議の「前提」であると考えられていた。 このように,被告においては,平成22年11月30日を経過した時点で,本件更生計画との齟齬が生じており,これ以上,人員削減を遅らせることのできない状況であった。そのため,本件更生計画に基づき,被告は早急に余剰となった人員の削減が必要であった。 d 削減目標人数の設定削減目標人数の設定は,稼働ベース((a) 事業運営に必要な労働力として,通常勤務をすることができる1人の社員の労働力(以下「1稼働」という。)を単位とする必要稼働数を算出し,(b) 在籍社員全体の実労働力についても,一定の換算基準に従い1稼働を単 位とする労働力に換算して有効配置稼働数を算出し,(c) それらを比較しながら人員計画を立てるという考え方。)に基づき,必要稼働数及び有効配置稼働数を算出した上で,後者から前者を差し引いた数に相当する人員を削減することとした。 更生計画案策定段階においては,平成23年末時点での客室乗務員の必要稼働数は4195名分であるのに対し,同時点に想定される有効配置稼働数は4712名分であったため,その差である517名分を削減目標として算定していた。しかし,平成22年8月1 の客室乗務員の必要稼働数は4195名分であるのに対し,同時点に想定される有効配置稼働数は4712名分であったため,その差である517名分を削減目標として算定していた。しかし,平成22年8月19日に,同年10月から実施される下期計画を一部修正して確定し,これにより必要稼働数が75名分減少したため,客室乗務員の平成23年3月末時点での必要稼働数は,4120名分となり,平成22年8月末時点での在籍者の稼働状況に基づき平成23年3月末時点での有効配置稼働数を算出したところ,4726名分となったため,同年9月末までに人員削減目標数を稼働ベースで606名分と最終決定した。 そして,希望退職措置の結果,763名(稼働ベースで534名分)の客室乗務員が応募して被告を退職し,人員削減目標数に対する不足数は稼働ベースで72名分となったことから,この不足数に当たる客室乗務員として特に対象者から除外した1名を除く108名(稼働ベースで71名分)に対して,同年12月9日に本件解雇通知を発した。同月10日から27日までの間も,被解雇者を対象にして希望退職者の募集を行った結果,客室乗務員23名(稼働ベースで10.5名分)の応募者があり,この他に関連会社への転籍者が1人(稼働ベースで0名分)いた。 そのため,削減目標に満たなかった客室乗務員84名(稼働ベースで60.5名分)に対して,本件整理解雇を行った。 (イ) 原告の主張に対する反論a 人員削減を行わなければならない経営状態ではなかったとの主張について原告は,被告の収支状況が改善していることを前提に人員削減の必要性がなかった旨主張している。 しかし,被告は,路線収支が赤字である路線について機材小型化や路線撤廃を行うなどして黒字化を図るべく供給規模を縮小し,その供給を維持する ることを前提に人員削減の必要性がなかった旨主張している。 しかし,被告は,路線収支が赤字である路線について機材小型化や路線撤廃を行うなどして黒字化を図るべく供給規模を縮小し,その供給を維持するのに必要な人員を職種ごとに算定し,その必要人員を削減するという人事施策の一環として本件整理解雇を行ったのである。そのため,原告が指摘するような,平成23年1月時点における業績は,そもそも本件整理解雇の必要性の存否を管財人が判断する上で直接の関連性がある事柄ではない。 また,管財人が本件整理解雇の実施を判断する基礎資料となり得るのは,判断時点の平成22年12月までの事情のみであり,平成23年1月以降のP2グループの業績などの本件整理解雇が実施された後の事情を考慮することは時系列からして不可能である。 b 人員削減により人手不足が生じていたとの主張について(a) 被告においては,本件整理解雇後,平成24年7月以降入社の新規採用(採用に係る新入客室乗務員の初期訓練が終了し,最も早く乗務についたのは同年9月である。)を行うまでの1年9か月もの間,人員の補充を行うことなく,また運航上の支障を生じさせることなく,現に事業運営がなされてきている。 また,客室乗務員の一人当たり月間稼働時間をみても,平成19年度の一人当たり月間稼働時間は63.5時間,平成20年度の一人当たり月間稼働時間は64.1時間,平成23年度の一人当たり月間稼働時間は64.5時間であり,平成23年度のみ特 に稼働時間が増加したという事実はない。 (b) 被告は,平成24年7月以降に新規採用募集を行っているが,本件整理解雇後における平成24年度の新規路線の開設に伴う必要数増や退職補充の観点から必要であると判断し,採用募集を実施したものである。この採用募集は,本件整理解 以降に新規採用募集を行っているが,本件整理解雇後における平成24年度の新規路線の開設に伴う必要数増や退職補充の観点から必要であると判断し,採用募集を実施したものである。この採用募集は,本件整理解雇後の状況を踏まえ,同解雇後に検討・決定されたものである。本件整理解雇の時点で,上記の採用募集を計画していた事実はなく,同解雇後の後発事象に当たる。 イベントリスクの発生等により損益の大幅な悪化に直結するという航空事業の特性,P2グループを取り巻く事業環境に照らせば,これらの採用募集は,本件整理解雇の時点で計画できる性質のものではなく,原告の主張は,後発事象を述べるものにすぎない。 c 人員削減目標を達成していたとの主張について(a) 原告は,整理解雇を実施しなくても人員削減目標を達成することができたと主張し,休職者を除く在籍者数,休職者を含む在籍者数といった稼働ベースとは異なる前提に基づき人員状況の計算を行っているが,異なる計算方法を用いれば,算出される数値が異なるのは当然のことである。全く異なる計算方法を比較して,「実は削減目標は達成されていた」との主張は何ら意味を持たない。 (b) また,原告は,乙第12号証15頁の「新しい人員体制」の客室乗務員欄に記載されている約4830名という数値を根拠として,人員削減目標は既に達成されていたと主張しているが,同欄に記載される数値は,在籍者数(客室乗務職では約5400名)から,削減目標の概数(客室乗務職では約570名)を差し引く 方法により計算され,記載されているものであり,新しい人員体制が「約4830名」であることを前提として,在籍社員数の約5400名からこれを差し引くことによって約570名という削減目標数が算出されているわけではない(なお,約570名という表記の根 い人員体制が「約4830名」であることを前提として,在籍社員数の約5400名からこれを差し引くことによって約570名という削減目標数が算出されているわけではない(なお,約570名という表記の根拠は,稼働ベースの削減目標517名分に達するまでの休職者を除く在籍社員数を573名と想定したものである。)。 原告の主張は,上記「新しい人員体制」欄に記載される数値(約4830名)を所与の前提とし,達成すべき人員体制を捉える点において誤りがある。上積み分を織り込んでも「新しい人員体制」は約4740名であるとの主張についても,同様の理由で誤っている。 また,上記「新しい人員体制」欄に記載される数値(約570名)は,削減目標を最終決定する前のものであるのに対し,平成22年9月に最終決定された削減目標は,稼働ベース606名分である。原告の主張は,最終決定前の数値がもとになっている点でも誤っている。 (c) 原告は,株式会社P23(以下「P23」という。)の吸収合併後の必要稼働日数の増加を考慮していないことを批判しているが,P23においては,(合併前において)被告とは別途必要数と配置数が等しくなるように人員削減が行われていた。そのため,削減目標人数の算定に当たっては,統合に伴う人員削減効果も考慮されていない。P23統合による人員の増員は,被告の人員体制の構築とは無関係であり,削減目標や削減数に影響を与えるものではない。 (d) また,原告は,平成23年度の路線便数計画における必要稼働数の増加を考慮していないことが不合理である旨主張しており,かかる原告の主張は,被告が,本件整理解雇の時点で客室乗務員の拡充 を予定していたことを前提とするものであるが,中期計画の示す生産規模の増大及びそれに伴う客室乗務員の採用等を計画してい ,かかる原告の主張は,被告が,本件整理解雇の時点で客室乗務員の拡充 を予定していたことを前提とするものであるが,中期計画の示す生産規模の増大及びそれに伴う客室乗務員の採用等を計画していた事実はない。 平成23年度の客室乗務員の人員計画策定に際し,必要稼働数算定のベースとなる国内線路線便数は甲第92号証1頁に記載されたとおりであり,国内線の必要稼働数については増加していない。むしろ,被告においては本件整理解雇以降,新規採用の客室乗務員が乗務に就いた平成24年9月までの約1年9か月の間,客室乗務員の採用を実施しておらず,かつそれにもかかわらず客室乗務員の人員不足が生じることなく運航を継続していたものである。 イ解雇回避措置の相当性について(ア) 被告が実施した解雇回避措置a 特別早期退職措置被告は,客室乗務員を対象に,平成22年3月から4月にかけて,特別早期退職の募集を行った。特別早期退職においては,退職条件として,規程上の退職金に加え,一時金として6か月分の賃金を追加で支払うこと,改定前の制度による企業年金の存続,年休の買取り,外部機関による再就職支援サービスの提供などを付した。その結果,特別早期退職により,1367名(在籍社員数)の客室乗務員が応募し,被告を退職した。 b 希望退職措置被告は,第一次(平成22年9月3日から同月24日まで),第二次(同年10月1日から同月22日まで),最終(同年10月26日から同年11月9日まで。ただし,その後同月30日まで,そして同年12月9日までと順次期間を延長)の3度にわたり,希望退職者の募集を行った。その結果,763名(稼働ベースで534名分) の客室乗務員が応募し,被告を退職した。 また,本件解雇通知後においても,被解雇 と順次期間を延長)の3度にわたり,希望退職者の募集を行った。その結果,763名(稼働ベースで534名分) の客室乗務員が応募し,被告を退職した。 また,本件解雇通知後においても,被解雇者を対象にして,同月27日までの間,希望退職者の募集を行い,できる限りの合意退職を目指した。この結果,この間にも客室乗務員23名(稼働ベースで10.5名)の応募者があった。 c 再就職支援被告は,当初から,希望退職における退職条件として,外部機関による再就職支援サービスの提供を行うこととしており,再就職支援を行うことにより,希望退職措置等による退職を促す措置をとった。 被告が提供したP24社の再就職支援サービスの内容としては,主として次のものがある。そして,これらは,サービスを利用できる期間に制限を設けずに将来的に利用できるものとしていた。 (a) 求人情報の提供(b) キャリアカウンセリング(キャリアカウンセラーを通じたメンタルサポート,キャリア形成相談,経歴書作成・面談対策等)(c) その他:パソコンスクールやファイナンシャルプランなどのセミナー提供等また,上記再就職支援に加え,グループ内での再就職先のあっせんについて,グループ会社就業機会の紹介についても実施した。 d 経費削減措置(a) 被告は,本件更生手続開始に先立つ平成20年10月,5%の賃金減額措置を実施していたが,平成22年1月19日の本件更生手続開始後も更なる賃金の切下げを行った。すなわち,一般職及び管理職について,各職種共通の基準内賃金及び各職種の代表的な手当を各5%減額することなどを骨子とした「人件費施策等 について」を同年2月17日に各組合に提案した。なお,管理職に対しては,地上管理職・客室乗務管理職の管理職調整手 び各職種の代表的な手当を各5%減額することなどを骨子とした「人件費施策等 について」を同年2月17日に各組合に提案した。なお,管理職に対しては,地上管理職・客室乗務管理職の管理職調整手当及び客室乗務管理職の管理職乗務調整手当について,上記の5%の減額を含めて合計30%減額する内容等が含まれている。この賃金減額措置は,全ての組合と同年3月31日までに協定締結方針若しくは提案の受入れの表明があり,後述する新人事賃金制度が開始するまでの期間の措置として,同年12月31日まで実施された。 また,これらの措置に加えて,被告は,平成23年1月から,新しい人事賃金制度を導入している。同制度は,それまで年功序列的で硬直的であった賃金体系を見直し,昇格管理・ポスト管理を徹底するとともに,業績を上げた者がより報われる仕組みを構築するものであり,各種手当の廃止・水準の見直しという内容も含まれている。 (b) 被告は,本件整理解雇に先立ち,別紙1に列挙する措置を行った。これらの措置は,被告における経費削減策として機能するものであり,解雇回避措置として評価されるものである。 (イ) 原告の主張に対する反論a 希望退職措置の年齢制限について原告は,希望退職措置の年齢制限を撤廃又は引き下げることで解雇を回避すべきであった旨主張する。 しかし,第一次,第二次,最終いずれの募集においても,平成20年度以降,傷病により欠勤・休職・休業をしたことのある者については,年齢に関係なく希望退職措置の適用を認めていたものであり,応募対象者は,一定の年齢以上であった者のみに限定されていたのではない。また,年齢制限については,客室乗務員についてだ けではなく,整備技術職・地上職事務系に対する希望退職措置においてもなされていた。 本 以上であった者のみに限定されていたのではない。また,年齢制限については,客室乗務員についてだ けではなく,整備技術職・地上職事務系に対する希望退職措置においてもなされていた。 本件のように,更生手続に入った会社は,競争力を失い経営破綻した状況にあるので,大幅縮小した事業規模に適合させるためにその人員規模を削減する場合,当然に,競争力を回復してその事業を更生することを可能にする人的体制にすることが要請される。その観点から,同業他社との人員の平均年齢の差を是正して,競争力を付けることが必要であった。本件において,客室乗務員について希望退職措置の応募資格として年齢制限を設けたのは,被告の客室乗務員のうち20歳代,30歳代の若年層は,40歳代以上の層に比べ自己都合による退職率が高く,年齢制限を設けなければ,将来的に管理職を含む指導者を輩出する層としての若年層の十分な確保が危ぶまれたことによるものである。 また,若年層(一般職)の方が,定年までの期間も長いことから,将来にわたり貢献が見込まれること,被告において,全体的には年功序列的な賃金体系であったこと,企業年金等に関する退職条件が若年層に比べ高年齢層にメリットが生ずる面があるといった点をも考慮に入れたものである。 b ワークシェアリング・一時帰休等について原告は,ワークシェアリング,一時帰休,部分就労,リフレッシュ休職などの人件費削減策について一切具体的に検討せず,実行しなかったのであり,解雇回避措置を尽くしているとはいえないと主張しているが,以下に述べるとおり,本件においてワークシェアリング,一時帰休等は採り得なかったものである。 (a) ワークシェアリングについて被告においては,本件更生計画上,事業規模を大幅に縮小する ことを通じて事業再建を おいてワークシェアリング,一時帰休等は採り得なかったものである。 (a) ワークシェアリングについて被告においては,本件更生計画上,事業規模を大幅に縮小する ことを通じて事業再建を目指しているため,労働時間の短縮や仕事を分け合うことにより実施されるワークシェアリングの措置は,一時的な措置としてはともかく,恒久的な措置としては,採り得ないものであった。一般的に裁判例においても,整理解雇を行うに当たってのワークシェアリングの実施は必要とされていない。 また,ワークシェアリングを解雇回避措置として機能させるためには,労働時間の減少に見合った賃下げを行う必要があるが,被告では既に労働者の賃下げを行っており,従業員の生活の維持を考えるとワークシェアリングにより更に賃金を減額することは困難である。 (b) リフレッシュ休職及び部分就労についてⅰ 本件整理解雇時においては,被告の経営破綻という事態は既に現実のものとなっており,もはや一時的な業績悪化による経営難を回避し,あるいは将来の経営破綻を未然に防止しようとする状況ではなかった。かかる状況にあって,被告においては,リスクに対する耐性を高め,二度と破綻しない事業体を構築するため,事業規模を大幅に縮小することを通じて事業の再建を目指しており,縮小した事業規模を前提とする必要人員の縮小は,本件更生計画上,今後継続して生ずるものであった。しかも,リフレッシュ休職及び部分就労は,飽くまで従業員の応募を前提とする制度であり,恒久的な余剰人員を解消するには不確実な措置である。 また,本件においては,事業規模の縮小に応じた人員削減を行うことが本件更生計画の遂行のために不可欠であることから,人員削減の必要性が生じているのであり,リフレッシュ休職及 び部分就労の実施による 件においては,事業規模の縮小に応じた人員削減を行うことが本件更生計画の遂行のために不可欠であることから,人員削減の必要性が生じているのであり,リフレッシュ休職及 び部分就労の実施による人件費の削減を図ることが解雇回避措置として機能するものではない。 ⅱ 部分就労制度に関しては,かかる制度を選択した客室乗務員につき,所定の月間休日とは別に連続する就労義務のない10日間があらかじめ定型的に確保され,当該10日間がスケジュールアサインに際しての制約となるため,乗務・スタンバイ勤務・訓練等のアサインを柔軟に行うことが困難になるという問題が存在し,かつ,通常勤務の乗務員と比べて就労可能日数の割に稼働が低くなるという傾向が強い。 また,同様の理由から,同制度を選択した客室乗務員は,グループを基本とする乗務から外れ,アサインできる国際線も限定的なものとなるため,客室乗務員の生産性やサービス品質向上の観点においても問題がある。このような生産性の問題から,被告においては,経営判断として,平成20年度以降,部分就労制度の募集を行わないこととし,かつ,労働組合に対してもこの旨説明している。 (c) 一時帰休について一時帰休を行う場合,その期間について当然に賃金,休業手当が不発生となるものではないから,単に賃金あるいは休業補償等を発生させながらの労務提供の不受領という結果を招くことになりかねない。その場合,解雇回避措置としては全く機能しないものとしかなりえない。 また,一時帰休を行った場合においても,在籍社員数は変わらないため,訓練,社会保障といった雇用者1人当たりに掛かる固定コストについては,削減することができないものである。 さらに,「一時」帰休という語義から明らかなように,かかる措 置もまた,景況の悪化に対応して 保障といった雇用者1人当たりに掛かる固定コストについては,削減することができないものである。 さらに,「一時」帰休という語義から明らかなように,かかる措 置もまた,景況の悪化に対応して一時的・臨時的に行われるものであり,継続的に必要人員が縮小することとなった当時の被告の状況において,制度的に実施し得るものではない。 ウ人選基準の合理性について本件整理解雇は,84人の客室乗務員(稼働ベースで60.5名分)を対象に実施しているが,解雇対象者は,過去及び将来の被告の業務に対する貢献度に着目して定めた本件人選基準により選定している。 (ア) 病欠・休職等基準の合理性a 病気欠勤等の事情があった場合,他の社員に比較して,病気欠勤,休職等があった分,貢献度において低いものであり,対象者の特定を行うにあたって比較・相対の問題である人選基準を検討するに際し,このことを考慮に入れて人選基準とすることは合理的である。 b 原告は,貢献度を評価するのであれば,人事考課の評価等をもって人選基準とすべきであると主張するが,本件人選基準では,人事考課の内容も基準として挙げられているから,原告の主張は前提を欠く。 (イ) 復帰日基準の合理性a 復帰日基準を設けることの合理性(a) 被告は,現在何の問題もなく乗務復帰している者は,将来の貢献度が低いとはいえないのではないかとの趣旨の労働組合からの指摘を踏まえ,病欠・休職等基準に該当するが,当初の人選基準案公表日(平成22年9月27日)現在で乗務復帰している者であって,平成18年10月1日から平成20年3月31日までに連続して1か月を超える病気欠勤期間,休職期間がなかった者については,将来において相対的に貢献が期待できると判断して解雇の対象から除外することとした。 18年10月1日から平成20年3月31日までに連続して1か月を超える病気欠勤期間,休職期間がなかった者については,将来において相対的に貢献が期待できると判断して解雇の対象から除外することとした。 かかる復帰日基準は,本件人選基準の合理性をより担保するものであり,復帰日基準を設けたことにより,その合理性が減殺されることにはならない。 (b) 原告は,復帰日基準につき,被告の裁量的要素を含む職場復帰手続の完了を要件とすることは不合理であって認められるべきではないと主張する。 しかし,原告が職場復帰可能との診断を受けたのは,平成22年10月以降のことであり,職場復帰手続の如何とは関係なく,当初の人選基準案公表日の時点で乗務復帰可能な状態になかったことに違いはない。また,その点をさておくとしても,被告における復職手続は,本件整理解雇とは関係なく,以前から定められたものである。 よって,職場復帰手続を経て乗務復帰した者を解雇対象者から除外することは不合理と評価されるものではない。 b 乗務復帰の基準日を当初の人選基準案公表日(平成22年9月27日)としたことの合理性について(a) 乗務復帰の基準日については,そもそも一義的に決定できるものではなく,諸般の事情を考慮に入れて,恣意性を排除しつつ,一定の日を基準日として定めざるを得ないものである。 また,人員削減の必要性を前提とした対象者の人選の問題である以上,復帰日基準を設けること,あるいは乗務復帰の基準日の変動により,病欠・休職等基準の該当者が減少した場合,その分年齢基準により解雇対象者となる客室乗務員が増えることとなる。 すなわち,平成22年8月31日時点で,長期病欠・休職となっている者については,定義上当然に稼働数は0として算出されるが,過去において病気欠勤・ により解雇対象者となる客室乗務員が増えることとなる。 すなわち,平成22年8月31日時点で,長期病欠・休職となっている者については,定義上当然に稼働数は0として算出されるが,過去において病気欠勤・休職が一定期間を超えるとして人選 基準に該当する者が,同日時点で長期病欠・休職に入っていなければ,その稼働形態に応じて1ないし0.5の稼働数として算出される。よって,復帰日基準の有無や変動が生じれば,年齢基準により解雇対象者となる客室乗務員が変動するという関係がある。 そこで,本件において,被告は,当初の人選基準案公表日を基準日とした。 (b) 本件においては,希望退職応募者の約7割が,上記公表日後に実施した第2次募集及び当初の最終募集期間に応募したものであるが,希望退職応募者の多くは,当初の人選基準案に該当しており,被告との面談を経て,希望退職措置への応募を決断している。 この中には,人選基準に該当していることを考慮して応募した者もいたと推察される。 そのような中,同年11月15日になって,当初の人選基準案公表後の事情,それも該当者の行為をもって基準の該非が左右されるような人選基準の変更を行うのは,上記公表日から本件人選基準変更日までの間に復帰しながら被告が実施した個別面談を経て希望退職に応じた者との間での不公平を生じるため,上記公表日を基準日とすることが適切である。 また,この点については運航乗務員も客室乗務員と同じ人選基準を設定している以上,恣意性の排除の観点からも同様の問題が運航乗務員についても生じる。 (c) 一部の労働組合は,人員削減にかかわる労使交渉を通じ,乗務復帰した者については人員削減の対象外とすべきであるとの主張をしており,一方で,このような主張を行っていない労働組合もあった中,主張していた労働組合は 組合は,人員削減にかかわる労使交渉を通じ,乗務復帰した者については人員削減の対象外とすべきであるとの主張をしており,一方で,このような主張を行っていない労働組合もあった中,主張していた労働組合は「現在,このような主張をして会社と交渉しているので,今からでも乗務復帰すれば解雇の対 象外となるかもしれない」と,その時点での当該組合の解雇対象者に働きかけることもできる状況にあった。そのため,復帰日を本件人選基準変更日(同年11月15日)とした場合には,特定の労働組合の対象者のみを利することになる可能性を否定できなかった。 このように当初の人選基準案公表後の行為によって解雇の対象者となるか否かが左右されることがないようにする必要もあったことから,基準日を上記公表日としたのである。 なお,一定の基準日を設定する以上,基準日の前後で当該基準の適用の結果が大きく異なる事態となるからといって,そのことのみから当該基準が不合理であるということはできない。 (d) 復帰日基準の設定にあたっては,個別的なデータを前提に線引きを検討したことはなく,運航乗務員とで共通であり,特定の客室乗務員を対象としたものではない。また,P6の執行委員で本件整理解雇の対象となっていない者もいるから,復帰日基準の基準日を当初の人選基準案公表日としたのは,P25を整理解雇の対象とするためではない。 c 年休の事後振替を認めないことが不当であるとの主張について仮に,過去に,年休の事後振替が認められた事例が存在するとしても,それは,任意に振替を認めたとしても違法ではないということを意味するにすぎず,年休の事後振替は当然に認められるものではないから,原告から年休の事後振替の申出があったとして,それを認めなかったことが,人選基準の合理性を 認めたとしても違法ではないということを意味するにすぎず,年休の事後振替は当然に認められるものではないから,原告から年休の事後振替の申出があったとして,それを認めなかったことが,人選基準の合理性を否定する根拠とはならない。 (ウ) 原告の疾病との関係についてa 本件疾病については,原因は不明とされている。原告は本件疾病 につき,一般的に考えられる発生原因を列挙するものであるが,本件疾病のいずれについても,客室乗務員の業務とは関係のない業務外の要因が含まれている。 原告の主張は,本件疾病の原因として挙げられるものの一部に,乗務中に接する機会があるということでしかなく,業務外の要因が原因となっている可能性も否定するものではない。その意味で,原告の主張は,業務外の要因も含めた可能性ないし推測について語るものでしかなく,結論としては「原因不明」ということに尽きる。 したがって,原告の主張はその前提を欠く。 b また,本件疾病が業務上の原因により発生したとの事実はない上,原告は平成22年10月18日に復帰しており,本件整理解雇の時点(同年12月31日)で労働基準法(以下「労基法」という。)19条の「療養のために休業する期間及びその後三十日間」との要件を満たさないから,同条の解雇禁止が適用されるとの主張は失当である。 エ手続の相当性について(ア) 被告は,平成22年9月27日に当初の人選基準案を各組合に提示した後,被告からは労務,客室本部の担当者(回によっては,管財人代理及び機構担当者)も出席し,また途中からは社長,管財人も出席し,各組合との交渉・協議を行ってきた。これらの交渉・協議において,一部組合が「人選基準について議論する立場にない」と表明する中で被告は,本件整理解雇に至るまで(一部労働組合との間 長,管財人も出席し,各組合との交渉・協議を行ってきた。これらの交渉・協議において,一部組合が「人選基準について議論する立場にない」と表明する中で被告は,本件整理解雇に至るまで(一部労働組合との間では,同解雇後においても)人選基準や同解雇の実施について,交渉・協議を続けてきた。 原告の所属していたP3労働組合との交渉の時期,回数については,上記公表後から同年12月末日までの間,11回にわたっている。具 体的な団体交渉・事務折衝等の経緯は別紙2のとおりである。 (イ)a 被告は,平成22年9月27日に当初の人選基準案を示して以降,団体交渉において,本件更生計画案に従い,事業規模に見合った人員数にすることが必要であること及び余剰人員を抱えることで,その分の人件費コストが発生することの説明を行った。P3労働組合との間では,同月30日に行われた団体交渉において,同様に人員調整施策の必要性について説明し,その後も被告は,別紙2のとおり人員調整施策の必要性に関する説明を継続して行っている。 b 被告は,平成22年9月28日の事務折衝において突如として従前と異なる説明を行ったものではなく,毎年,P3労働組合(及びP6)に対して,説明資料を交付の上,当該年度における客室乗務員の人員計画を説明していたところ,この説明は,同資料記載のとおり稼働ベースによって行われていた。このように,客室乗務員の人員計画の策定にあたり稼働ベースによって労働力換算を行っていることは,従来から,P3労働組合及びP6ともに承知していたものである。そのため,P3労働組合からは,同日の事務折衝において,これまで客室乗務員の人員計画が稼働ベースで計画されていたことから削減目標も同様に稼働ベースで設定しているものか,との確認がなされ,被告は,それに応じて稼働 労働組合からは,同日の事務折衝において,これまで客室乗務員の人員計画が稼働ベースで計画されていたことから削減目標も同様に稼働ベースで設定しているものか,との確認がなされ,被告は,それに応じて稼働ベースに基づく削減目標に関する具体的な説明を行っている。 c 平成22年9月初めの時点における説明は,稼働ベースで算出した削減目標数から,一定の前提をおいて休職者を除く在籍社員数を割り出した,いわば想定値である。すなわち,希望退職措置を実施した場合には高年齢の方から応募されるであろうと想定し,特別早期退職措置後の実在籍者について,年齢が上の方から順次希望退職措置への応募があったと仮定したものであり,実際の稼働状況に照 らして稼働ベースでの応募数をカウントしていき,稼働ベースでの削減目標数517名分に達したところの休職者を除く在籍社員数が573名であった。この573名の概数として,社員説明会においては「約570名」と説明したものである。 また,平成22年9月初めの組合に対する説明の場と社員説明会においては,削減目標については,以後変更の可能性があり,同月末を目途に最終化する旨を説明し,資料にもその旨を記載している。 このように,もとより「約570名」との説明は想定値に過ぎず,変更の可能性があることは明らかにしていたものである。 (ウ) 本件においては平成22年12月の時点で本件整理解雇により人員削減目標を達成する必要があったため,被告は同解雇を延期することについては,応じられない旨回答したものである。 (エ)a 被告は労働組合に対し,本件整理解雇に先立ち行った解雇回避措置のうち,役員の人数・報酬額の減額及び海外地区ナショナルスタッフ(=現地雇用の社員)の契約終了など,組合員の労働条件に関連しない事項を除いては 労働組合に対し,本件整理解雇に先立ち行った解雇回避措置のうち,役員の人数・報酬額の減額及び海外地区ナショナルスタッフ(=現地雇用の社員)の契約終了など,組合員の労働条件に関連しない事項を除いては,その都度説明を行ってきた。 b 希望退職措置の対象年齢については,従来の人員構成を踏まえ将来において競争力をもった組織運営を行うための人材確保の観点,更生手続下にある会社として人件費や退職金についても費用の圧縮や抑制が求められる点,対象者の多くが年金制度上の優遇措置を受けられること等から,年齢制限が合理的理由に基づくものであることを説明している。他方,希望退職に関しては,労働組合からの要請があったことを踏まえ,最終募集において対象年齢を42歳以上に拡大し,かつ,募集期間を順次延長している。 また,一時帰休・ワークシェア等の実施については,いずれも抜本的かつ恒久的な施策としてとることはできない旨を,P3労働組 合に対し回答している。 (オ)a 当初の人選基準案は,平成22年9月27日に労働組合に対して提示したものであるが,P3労働組合との間においては,同月28日の事務折衝において,上記基準案について説明を行った。 P3労働組合との同日の事務折衝においては,人選基準に関する全般的な説明として,会社が再建していく過程にある至近の二,三年にどれだけ貢献が期待できるかという点を重視した,一般的に妥当な方法と言われている過去の貢献度を客観的にみることとした,そしてその貢献度合いの判断というものにあたっては,具体的な指標として人選基準案に示した内容を見ている,という説明を行った。 その上で,各基準に示した日数・基準日を設定した根拠についての説明も行った。 b 被告は,P3労働組合からは「現在何の問題もなく乗務復帰している者は, に示した内容を見ている,という説明を行った。 その上で,各基準に示した日数・基準日を設定した根拠についての説明も行った。 b 被告は,P3労働組合からは「現在何の問題もなく乗務復帰している者は,将来の貢献度が低いとはいえないのではないか」という趣旨の指摘を受けたことから,病欠・休職等基準に該当するものの,現時点で乗務復帰している者については,人選基準の対象から除外することとし,除外の対象とする基準日については,当初の人選基準案公表日とした。 このように人選基準案については,労働組合との交渉を踏まえた変更も行った。 オその他の事情について(ア) 本件整理解雇による退職条件については,平成22年11月末日付けで退職した希望退職者とのバランスを図りつつ,解雇による生活への影響をできる限り抑えるための配慮をした水準の退職条件を提供した。 具体的には,会社の都合等の事由により退職した場合の退職金(な お原告の場合は,P13において正社員となった平成19年11月1日以降,被告に在籍したものとして算出している。)のほかに,特別退職金と一時金を支給することとした。 特別退職金については,社内規程上は整理解雇時にこれを支給する根拠規定がないものの,整理解雇対象者の生活保障のために,特に支給することとした。また,一時金については,5か月分を支給することとした(ただし,特別退職金及び一時金は,就業規則に基づく60日分=2か月分の平均賃金にかえて,解雇予告手当として支払うものとしている。)。 原告に対しては,総額で175万4165円の支払を提示しており,うち解雇予告手当相当分としては117万2060円を支払済みである。これに加えて,別途企業年金基金からの脱退一時金(20万0538円)の支払も存在する。 ( 165円の支払を提示しており,うち解雇予告手当相当分としては117万2060円を支払済みである。これに加えて,別途企業年金基金からの脱退一時金(20万0538円)の支払も存在する。 (イ) 被告は本件解雇通知後においても,被解雇者が希望する場合には,外部機関による再就職支援サービス(当該サービスを希望しないときは10万円を支給)の提供を行った。 (ウ) 本件解雇通知後においても,被解雇者を対象に,平成22年12月27日までの間,希望退職措置の募集を行った。 (原告の主張)ア人員削減の必要性について(ア) 稼働ベース論による人員削減が不合理であること被告は,稼働ベース論に基づき,人員削減目標数を設定したと説明しているが,稼働ベース論は,被告の人員計画の策定に当たってこれまで用いられてきた考え方ではなく,従来の人員計画における労使共通の認識に基づいた算定方法でもない。稼働ベースなる考え方は,業務遂行上の人員体制を把握する人員計画においては一応の合理性を有 していても,人員削減目標数や解雇者数を算定するに当たっては合理性を有しておらず,むしろ,人員削減数あるいは解雇者数を意図的に増加させる効果しか持たない。 仮に,人員計画にあたって稼働ベースによることが肯定されるとしても,人員削減で稼働ベースの考え方を用いる場合,稼働ベースゼロとされる労働者が何人退職しても人員削減の数値に反映されず,稼働ベースゼロである労働者の退職によっても人件費削減効果があることを全く無視することになる。路線・便数計画の運航に必要となる客室乗務員数を超える余剰人員を削減の対象とするなら,稼働ベースゼロとしかカウントされず有効配置稼働数に含まれないため,人員配置に影響しない者まで解雇する必要はない。 (イ 計画の運航に必要となる客室乗務員数を超える余剰人員を削減の対象とするなら,稼働ベースゼロとしかカウントされず有効配置稼働数に含まれないため,人員配置に影響しない者まで解雇する必要はない。 (イ) 整理解雇によらなくても人員削減目標数は達成したことa 稼働ベース517名分の削減は平成22年11月9日時点で達成していること被告は,当初削減目標数を頭数で約570名,稼働ベースで517名分であったと説明している。仮に,被告の当初の更生計画に基づく削減目標が稼働ベースで517名分であったとしても,本件整理解雇以前の平成22年11月9日時点において,稼働ベースで517.5名分の希望退職応募者があったのであり,目標は達成済みであった。 被告は,客室乗務員の人員削減数の最終目標設定について,非稼働要素が減ったこと,ライン維持数が減ったことにより必要稼働数が減ったことを理由に,同年9月に人員削減目標数を従来の517名分から606名分に変更したというが,非稼働要素の減少や,ライン維持数の減少は検証されていない。 加えて,被告は,平成22年9月に,平成23年3月末に想定さ れる在籍者数について削減目標を固定化したが,客室乗務員の必要数は毎月自ずと変動するし,希望退職応募者数のいかんによって有効配置数にも変動が生じるから,平成22年9月段階における人員計画は机上の計算に基づく計画にすぎず,実際の必要数は確定しないはずである。 b 本件更生計画上の目標とした「新しい人員体制」は平成22年12月1日の時点で達成されていること被告は,平成22年9月2日に労働組合に対し,本件更生計画に基づく客室乗務員の人員削減計画について,「現在の在籍人数約5400名,新しい人員体制約4830名,削減数▲約570名」と説明していた(乙12・1 成22年9月2日に労働組合に対し,本件更生計画に基づく客室乗務員の人員削減計画について,「現在の在籍人数約5400名,新しい人員体制約4830名,削減数▲約570名」と説明していた(乙12・15頁)。 被告は,同年9月末頃にはさらに稼働ベースで89名削減することになったと主張しており,これを前提としても,新しい人員体制は約4740名,削減数は約660名ということになる。 ところが,同年12月1日時点での客室乗務員の在籍者数は4975名であり,同日に被告が吸収合併したP23のタイ人客室乗務員数557名を控除すると,同日時点での客室乗務員数は4418名であり,被告の人員削減目標を達成している。 c 被告の主張する人員削減目標数も既に達成していること(a) 被告は,平成23年3月末時点での有効配置数を4726名,必要稼働数を4120名と想定し,その差である606名を人員削減目標としたと主張している。 しかし,有効配置数606名分の削減という被告の目標は,飽くまで平成22年9月時点での想定に基づくものにすぎず,被告の人員削減計画の内容は,客室乗務員の有効配置数を事業規模の縮小に見合う人員体制である必要稼働数4120名まで削減す ることであった。そして,被告の同年12月1日時点及び同月末日における有効配置数や,その後の自然退職者数からすれば,整理解雇により人員を削減する必要はなかった。 (b) すなわち,被告の平成22年12月1日時点における有効配置数は4140名であり(被告は,子会社であるP23の統合要素を反映させていないので,P23から受け入れたタイ人客室乗務員は控除しなければならない。),被告の人員削減計画上の必要稼働数4120名との差は僅か20名となっていたから,108名もの客室乗務員に対して本件解雇通知を ので,P23から受け入れたタイ人客室乗務員は控除しなければならない。),被告の人員削減計画上の必要稼働数4120名との差は僅か20名となっていたから,108名もの客室乗務員に対して本件解雇通知を行う必要はなかった。 しかも,被告では,平成22年12月1日以降も相当数の退職が見込まれており,実際に同日から平成23年1月1日までの1か月間に,客室乗務員の総在籍者数は,本件整理解雇による84名の減少を除いて,132名も減少している。そして,被告では,少なくとも1か月前には退職の届出がなされるため,被告は,本件解雇通知を行った平成22年12月9日時点において,同日以降にも相当数の退職者数が現れることを認識していた。 したがって,被告は,本件整理解雇を強行しなくても,被告が掲げた人員削減目標を達成することができた。 (c) 被告の平成23年1月1日時点における総在籍者数は5557名であり,平成22年12月31日付けで解雇された被解雇者数84名のうち休職者9名を除く75名を加えたものから休職者数755名を控除すると総配置数は4877名となる。そして,総配置数から,被告が想定する平成23年3月末の契約社員地上乗務10名,非稼働乗務員要素268名,子会社であるP23統合による増員したタイ人乗務員557名を控除すると,平成22年12月31日時点における有効配置数は4042名となり,被 告の人員削減計画上の必要稼働数4120名を既に下回っており,同計画は既に完遂されている。 (d) 平成23年4月1日に被告に在籍している客室乗務員の人数から有効配置数を算定すると4664名となるのに対し,被告が同月末の時点で想定している有効配置数は4750名である。 以上からすれば,整理解雇を前倒しせずに同年3月に判断していれば,整理解雇をする必要 有効配置数を算定すると4664名となるのに対し,被告が同月末の時点で想定している有効配置数は4750名である。 以上からすれば,整理解雇を前倒しせずに同年3月に判断していれば,整理解雇をする必要がなかったことは明らかであり,当初の人員削減計画を前倒しにより本件整理解雇を強行する必要は微塵もなかった。 (ウ) 人員削減により人手不足が生じていることa 被告が本件整理解雇後の平成23年6月に作成した平成23年度客室乗務員人員計画によれば,平成22年度の客室乗務員1人当たりの1か月の稼働時間数は59.6時間(有効配置数ベース)であった。平成23年の計画値は同じく64.5時間とされたが,同年の実績値は66時間であった。平成23年度の平均月末有効配置数は4544名であるから,6816時間分(4544人×1.5時間)の客室乗務員の稼働が当初の計画より不足した。この6816時間分を客室乗務員の稼働時間実績値である66時間で除すれば,人数にして103名余りの客室乗務員の稼働時間に相当する。つまり,75名の整理解雇を実施しなくても客室乗務員の稼働時間が平成23年度の稼働時間計画値を下回ることはなかった。 b 平成24年度の計画値が71.1時間と平成23年度実績値より5.1時間も増加したこと,被告が平成24年度に入って,同年7月以降入社の既卒者を募集して250名採用し,その後再度既卒者を募集して140名採用し,平成25年度の4月以降入社の新卒者290名を採用し,合計800名を採用したことからすれば,被告 において人手不足が進行していたことは明らかである。 (エ) 人員削減を行わなければならない経営状態ではなかったことa 人員削減の必要性について,解雇時点を基準に確実に予測できる将来の事情を考慮して,その有 ていたことは明らかである。 (エ) 人員削減を行わなければならない経営状態ではなかったことa 人員削減の必要性について,解雇時点を基準に確実に予測できる将来の事情を考慮して,その有効性が判断されなければならない。 将来の経営改善が見込まれるにもかかわらず,そのような予測できた将来の事情を考慮に入れることなく,整理解雇の実施に固執することは許されない。 b 本件更生手続開始決定後,被告の業績は大きく改善し,平成22年4月以降継続してその実績が当初計画を上回る状況となった。被告は,こうした業績回復を踏まえて,同年6月,当初の事業再生計画を大幅に修正せざるを得ず,平成22年度の連結営業利益目標額を250億円の黒字とした。その後も,業績は回復の一途をたどり,本件更生計画案を裁判所に提出した同年8月の段階では,本件更生計画上の平成22年度の連結営業利益目標額を641億円の黒字とした。 c 被告は,平成22年9月の月次決算時には,本件更生計画上の目標と実績との乖離が著しくなったため,事業計画に対する修正計画を策定し,連結営業利益ベースで,本件更生計画上の当初平成22年度目標としていた641億円を,700億円程度を上方修正して年度目標約1321億円に増額した。 d 被告は,平成22年10月以降も営業損益の黒字を拡大し続け,整理解雇が行われる同年12月末の時点で,本件更生計画上の利益目標を700億円も上方修正した修正計画から,更に300億円も「上振れ」するほどであった。 e 被告のP26会長(当時)は,平成23年2月8日の記者会見において,「(整理解雇した)160人を残すことが,経営上不可能か といえば,そうではないのは,もう皆さんにもおわかりになると思いますし,わたしもそう思います」と述べている。 日の記者会見において,「(整理解雇した)160人を残すことが,経営上不可能か といえば,そうではないのは,もう皆さんにもおわかりになると思いますし,わたしもそう思います」と述べている。 fP27社長は,P28でのインタビューにおいて,被告の驚異的な業績の回復について,「P2フィロソフィ」の浸透が大きく,整理解雇による人員削減を強行することなしに更生計画目標を達成することができたと回顧している。 イ解雇回避措置の相当性について(ア) 本件更生計画案における人員削減の実施時期は,平成23年3月末であった。本件整理解雇において,被告が最大限の解雇回避努力を尽くすのであれば,その時点まで,希望退職募集措置を継続することはもちろん,その他の解雇回避のための手段を採って整理解雇回避のための努力を行うべきであった。 (イ) 希望退職募集の年齢制限を撤廃又は引き下げる内容での解雇回避努力が行われていれば,(被告主張の計算方法でも)容易に削減目標を達成することができた。これに対し,被告は「若返った筋肉質の会社になる」ことにこだわり,年齢制限撤廃又は引き下げを行わなかった。 その被告の姿勢は,会社の経営状況を踏まえた純粋な余剰人員整理・人員削減を目的に柔軟な手段でそれを達成しようとするものではなく,被告の画一的硬直的な削減目標の断行のみならず,そこに便乗して被告が企図する年齢構成での会社組織を実現しようとするものである。 (ウ) 解雇回避努力の内容としては,一時帰休,ワークシェアリング,部分就労,リフレッシュ休職などといった人件費削減措置も考えられる。一時帰休などの措置は,最低限,整理解雇の必要性を判断すべき3月末時点まで継続すれば功を奏しえたのであって,被告が主張するような「恒久的」な実施を求めている訳ではない た人件費削減措置も考えられる。一時帰休などの措置は,最低限,整理解雇の必要性を判断すべき3月末時点まで継続すれば功を奏しえたのであって,被告が主張するような「恒久的」な実施を求めている訳ではない。 ウ人選基準の合理性について (ア) 病欠・休職等基準の合理性についてa 被告は,将来の貢献度に着目して本件人選基準を定めたものであり,休職及び病気欠勤の期間はその指標であると主張している。 しかし,貢献度を評価するというのであれば,被告が人事考課の評価や,人事考課等に用いてきた○などをもって整理解雇の人選基準とするのが合理的である。これらの指標が人選基準に反映されず,将来又は過去の貢献度と関連性の乏しい休職・病気欠勤の日数という基準によって整理解雇の対象とされるのは,不合理極まりない。 b 長期雇用システムの下で,労働者が傷病により欠勤や休業を余儀なくされることは予定されており,これを許容し,復職を可能にすることによって,長期雇用システムを維持しているにもかかわらず,欠勤や休業を理由として解雇することが有効であるとされれば,労働者は,欠勤や休業をすることができず,結果的には,傷病に至ってはならないとさえされる危険性があること,また,傷病を理由として解雇されることは,当該労働者の人格権ないし人格的利益を損ない,名誉を毀損するものである。 c 被告においては,病気欠勤となっても6か月は全額賃金が補償され,その後,基準内賃金,乗務手当が2分の1,3分の1と段階を経て減額され,病気欠勤を開始してから1年で支払われなくなるが,傷病手当金・傷病手当付加金や,2年目以降の延長傷病手当付加金等で補填され,3年半までは賃金の85%が支給されるなど,法定の制度に加重した手厚い労働者保護がなされている ら1年で支払われなくなるが,傷病手当金・傷病手当付加金や,2年目以降の延長傷病手当付加金等で補填され,3年半までは賃金の85%が支給されるなど,法定の制度に加重した手厚い労働者保護がなされているにもかかわらず,整理解雇の局面において,原告が皮膚疾患の治療に専念し,復職を果たせるようになるために,休業等をしたことを問題視するのは,自家撞着というほかない。 d 被告においては,一般企業と比較しても,はるかに復職のための 運用が慎重になされていた。産業医との面談やマネージャーとの面接などは,労働者側の事情によらずに,被告側の都合によって日程が先送りになったり,休業・休職期間が長引いたりすることもあるのであって,復職可能な健康状態に回復した時期と現実に復職をした時期とに一定のラグが生じざるを得ないという事情があるのに,これを無視して,休職・病気欠勤の期間で一律に整理解雇の対象者とすることは,基準としての合理性を欠く。 e 本件人選基準は特定の期間における休職期間や病気欠勤日数を問題とするものであるが,個々の従業員の貢献度を云々するのであれば,入社後の全期間について論じるべきである。 (イ) 復職日基準の合理性についてa 復帰日基準を設けることの合理性について復帰日基準は,病欠・休職等基準に該当するものであっても,平成22年9月27日現在で業務に復帰している者は解雇の対象外とするものであるが,これによれば,その基準日より1日でも早く職場復帰した者は,解雇を免れるのに対し,運悪く同日に欠勤していた者は解雇されるという不均衡が生じる。そして,休職からの職場復帰は,産業医との面談や担当マネージャーとの面談日時の設定,復帰の可否の判断など被告側の事情が大きく影響するのであり,被告の裁量的要素を多く含む職場 るという不均衡が生じる。そして,休職からの職場復帰は,産業医との面談や担当マネージャーとの面談日時の設定,復帰の可否の判断など被告側の事情が大きく影響するのであり,被告の裁量的要素を多く含む職場復帰手続の完了を要件とすることは,不合理であって認められるべきではない。 b 乗務復帰の基準日を当初の人選基準案公表日(平成22年9月27日)としたことの合理性について(a)「現在は,乗務復帰して通常勤務状態にある者」を将来の貢献度があるとして整理解雇の対象者から除外するのであれば,本件解雇通知の時点で復帰しているかどうかを問うべきであって,どん なに早くとも,新しい人選基準案を公表した本件人選基準変更日(平成22年11月15日)に復帰しているかどうかを基準としなければならず,当初の人選基準案公表日を基準とするのは,全く合理的な理由がない。 (b) 被告は,希望退職応募者の中には当初の人選基準案に該当することを考慮して応募した者もいるため,それを公表した日以降の対象者の行為により解雇の対象となるか否かが左右されるのは適切でないと主張している。 しかし,同年9月27日に示されたのは,あくまで人選基準案であって,その後の変更が予定されているものであるから,「『自分が整理解雇の対象者である』と考えて希望退職措置に応じたが,基準の変更などにより,結果的には(もし希望退職に応じていなければ)整理解雇対象者にはならずに会社に残れていた」という事態は,当然に当初から予想されていたことであり,実際にもそのようなケースは多かったはずである。そうであれば,なぜそのことを理由に人選基準案を示した日以降の対象者の行為により,解雇対象者の該非が左右されるのは適切でないと判断されるのか,全く意味不明である。 仮に,当初の人選基準案公表日以降,本 あれば,なぜそのことを理由に人選基準案を示した日以降の対象者の行為により,解雇対象者の該非が左右されるのは適切でないと判断されるのか,全く意味不明である。 仮に,当初の人選基準案公表日以降,本件人選基準変更日までの間に希望退職に応募した10名のうちに,復帰日基準を同日にすることで復帰可能になったはずの人が何名かいたとして,被告がそれらの人たちに対する配慮を考えるのであれば,復帰日基準を変更するに際して,「基準が変わったのですが,希望退職を撤回する意思はありますか」と尋ねて,撤回した者には復帰を認めるなど,取り得た方法はいくらでもあったはずである。 (c) 被告は,団体交渉において,現実に乗務復帰していた者につい て人員削減の対象外とするよう主張していた労働組合があり,乗務復帰を働きかけることもできる状況にあったので,復帰日を本件人選基準変更日とした場合には,特定労働組合の対象者のみを利することになる可能性を否定できなかった旨主張するが,P3労働組合が組合員に乗務復帰を働きかけた事実はない。そもそも客室乗務員が主観的に復帰をしたいと考えるだけで復職できるものではないから,被告の懸念は非現実的である。 (d) なお,被告は,復帰日基準を設けること,あるいは乗務復帰の基準日の変動により,病欠・休職等基準の該当者が減少した場合,その分,年齢基準により解雇対象者となる客室乗務員が増えることとなると主張しているが,平成22年8月31日時点での長期病欠者・休職者については稼働ベースゼロと扱われており,それらの者が復帰したとしても,削減目標数には全く影響を与えない。その結果,上記時点での長期病欠者・休職者で当初の人選基準公表日以降に復帰した者が,希望退職に応じて辞めたとしても,削減目標数は減らないのである。実際のところ,乗務復 目標数には全く影響を与えない。その結果,上記時点での長期病欠者・休職者で当初の人選基準公表日以降に復帰した者が,希望退職に応じて辞めたとしても,削減目標数は減らないのである。実際のところ,乗務復帰の基準日を変動させたとしても,年齢基準の該当者数にはほとんど影響を与えない。本件解雇通知を受けた病欠・休職等基準該当者34名の稼働ベースは合計4.5である。 (e) 被告が復帰日基準の基準日を当初の人選基準案公表日としたのは,P6の執行委員で,同組合の次世代のリーダーと目されるP25の乗務復帰日が平成22年10月1日であったため,同人を整理解雇の対象とするためであったことが強く疑われる。 c 有休残日数を考慮しないことの不当性病気欠勤・休業の日数を年休に振り替えれば,復帰日基準の基準日(平成22年9月27日)に復帰していたことになる者について, 整理解雇の対象者から除外しないのは不当である。 被告においては,長年にわたって,事後的に年休に振り替える取扱いをしていたのに,当初の人選基準案公表日以降に,その取扱いをしないように変更したのであるが,このような一方的な不利益変更(既得権の剥奪)は許されない。 (ウ) 原告の疾病との関係について原告の本件疾病(顔面酒さ,接触皮膚炎)の発症とその後の欠勤には,業務それ自体に含まれる危険性の発現という側面が色濃く,全体として見た場合,労働災害,あるいは少なくともそれに準じたものと考えることは十分可能である。そうであるならば,自ら労働者をして業務それ自体に起因する疾病を余儀なくしておいて,それを根拠に労使関係からの離脱(解雇)を一方的に言い渡してはならないという労基法19条の趣旨は,本件でもその精神は十分適用(準用)されるべきであり,そのような疾病(休業)の原告を,整理解雇の対象 それを根拠に労使関係からの離脱(解雇)を一方的に言い渡してはならないという労基法19条の趣旨は,本件でもその精神は十分適用(準用)されるべきであり,そのような疾病(休業)の原告を,整理解雇の対象として選定した本件での人選基準そのものが極めて不合理なものといわなければならない。 エ手続の相当性について(ア) 被告としては,有効配置数を基準に人員削減の必要性を説明しているのであり,有効配置数が何名になるのかについては,人員削減の必要性を判断する上で重要な要素である。また,有効配置数について被告主張の算定方法を採った場合の算定方法及び具体的な数値を示すことは容易に出来たはずである。にもかかわらず,被告は本件整理解雇の必要性について組合側が意見を述べる前提となる有効配置数について明らかにしなかった。このような重要な数値について,被告は,情報を開示せず,説明義務を果たしていないのであるから,事態を説明して了解を求めたことにも誠実に協議を尽くしたことにもならない。 (イ) 一般退職者数の増加によって人員削減の必要性がなくなっていれば,整理解雇の必要性も消滅しているはずであるから,具体的に一般退職者数が何名であるのかは,整理解雇の必要性を判断するために非常に重要な数値であるといえる。被告は,このような重要な数値について,労働組合から何度も説明を求められていたにもかかわらず,これまで答えていなかったからという理由のみで,労働組合に一切説明していないのであって,到底,事態を説明して了解を求めたことにも誠実に協議を尽くしたことにもならない。 (ウ) 被告は,労働協約の解雇条項に関する改訂や人選基準などについて,繰り返し組合と協議していくと説明していた。平成22年12月7日のP3労働組合との団体交渉の中でも,「今後とも継続 ならない。 (ウ) 被告は,労働協約の解雇条項に関する改訂や人選基準などについて,繰り返し組合と協議していくと説明していた。平成22年12月7日のP3労働組合との団体交渉の中でも,「今後とも継続的に協議を行い」,「人選基準案について引き続き貴労組と協議させていただくことに変わりはない」と明言している。にもかかわらず,その後何らの協議も持たないまま,2日後の同月9日には,労働組合を無視して本件人選基準を一方的に確定させ,本件解雇通知を発送し,本件解雇を強行している。それどころか,最終的な基準が,協議を踏まえて,いつどのように決定されたのかなどの説明すら一切ない。 (エ) 平成22年11月15日,P6らが,被告の整理解雇方針に反対してスト権の確立のための投票の手続を進めていたところ,被告の法人管財人であったP29ディレクターとP30管財人代理が「争議権が確立された場合,それが撤回されるまで,再生計画案で予定されている3500億円の出資をすることができない」とする発言をした。 東京都労働委員会は,平成23年8月3日に,管財人の上記発言は組合への支配介入に当たるとして,不当労働行為であることを認定した。これに対して,被告は,上記命令の取消訴訟を提起したが,平成26年8月28日,東京地方裁判所は「発言は組合への支配介入に当 たる」と認定し,同命令を維持し,同命令の取消しを求めた被告の請求を棄却した。 (2) 争点2(原告に対する本件整理解雇や退職勧奨が不法行為に当たるか)について(原告の主張)ア退職勧奨について(ア) 原告は,平成22年9月27日から同年11月にかけて,P31マネージャーやP32マネージャーから,日に何度も電話をかけられ,侮辱的な言葉を投げかけながら,退職に応じるよう強要された。不 て(ア) 原告は,平成22年9月27日から同年11月にかけて,P31マネージャーやP32マネージャーから,日に何度も電話をかけられ,侮辱的な言葉を投げかけながら,退職に応じるよう強要された。不在のときに,10回もの不在着信があったこともある。 (イ) 後記面談で,「人の天職を奪う」という重大な場面であるにもかかわらず,「P33さんは4月8日からお休みされていますね」と間違ったことを言うなど,その対応は杜撰であった。 (ウ) 以上からすれば,社会通念上相当と認められる範囲を超えた,違法な退職強要と評価される。 イ本件整理解雇について原告は乗務割完全履行を12年間継続するなど,被告に対して,極めて多大な貢献をしてきた。人事考課もよかったし,○においても高い評価を得ていた。そのような原告を,被告は,たった一度の病気による欠勤をとらえて,「将来の貢献可能性が認められない」などとして解雇した。これは原告の人格に対する侮辱であり,許されるものではない。 (被告の主張)ア退職勧奨について(ア) 希望退職措置の対象になったと告げたことについて希望退職措置については,45歳以上の客室乗務一般職のほか,平成20年度以降,欠勤・休職・休業をしたことのある者についても, 同措置の適用を認めることがあるとされていたものであり,原告も同措置の対象者に含まれていた。 そのため,原告に対して,上記措置の対象になったと告げたとしても,それは同措置に関して事実を説明したものに他ならず,およそ不法行為を構成するものではない。 (イ) 平成22年10月7日の面談a この日の面談は,希望退職措置の対象となっている者に対し,希望退職応募への理解を求めることを目的として行ったものであり,任意に希 るものではない。 (イ) 平成22年10月7日の面談a この日の面談は,希望退職措置の対象となっている者に対し,希望退職応募への理解を求めることを目的として行ったものであり,任意に希望退職に応じることを求めること自体が,退職を強要することにはならない。 また,面談の時間も約40分程度と長時間に及ぶものではなく,面談の人数も原告及び被告の役職者2名と比較的少人数で行われており,特に圧迫的と評価するに足る事情はない。 加えて,面談におけるマネージャーらの発言について,原告の主張を前提としても,飽くまで任意に希望退職に応じることを求めているものにすぎない。 b 「P33さんは4月8日からお休みしていますが」という発言や「P33さんは去年も悪くなったわよね」という発言については,4月8日以降,原告が勤務を休んでいたことに違いはない。面談においては,年休の使用日について,P32マネージャーが明確に認識していなかったため,改めて確認する旨を発言し,後日確認の上,回答したものである。 また,「P33さんは去年も悪くなったわよね」という発言について,原告の主張を前提としても「肌にブツブツができた」ということがあったものであり,事実の誤認があったわけではない。 (ウ) 平成22年10月13日の面接 この日の面談は,上記(イ)の面談に続いて,希望退職応募の有無を確認し,希望退職応募への理解を求めることを目的として行ったものであり,前記(イ)aと同様,任意に希望退職に応じることを求めること自体が退職を強要することにはならない。 加えて,一般に退職勧奨に対して消極的な意思表明があったとしても,そのことをもって退職勧奨のための説明等を終了させなければならないも 応じることを求めること自体が退職を強要することにはならない。 加えて,一般に退職勧奨に対して消極的な意思表明があったとしても,そのことをもって退職勧奨のための説明等を終了させなければならないものではない。本件において原告との面談を行ったのは前記(イ)と合わせて2回であり,うち1回目は希望退職応募への理解を求めることを目的として行い,2回目において希望退職応募の有無を確認したものである(なお,被告は他の面談対象者に対しても面談は2回にとどめて実施した。)。加えて,同日の面談内容に関する原告の主張を前提としても,本件における人員削減や希望退職に関する説明あるいは希望退職措置への応募の説得の範囲にとどまるものであり,違法と評価されるものではない。 (エ) 原告に対する電話連絡について被告から原告に対する電話連絡は,希望退職の追加募集及び募集期間の延長がなされた際にその旨の連絡を行ったほか,面談のための航空券の手配(各面談につき1回ずつ),産業医との面談の手配(2回),原告の欠勤日数を確認した結果の連絡(1回)のために電話連絡を行ったものであるところ,これらの連絡のうち,航空券の手配,産業医との面談の手配,欠勤日数の確認結果の連絡については,原告の退職とは全く関係のない内容である。 また,希望退職の追加募集及び募集期間の延長に関する連絡についても,希望退職に関する説明あるいは希望退職措置への応募の説得の範囲にとどまるものであり,違法と評価されるものではない。 そもそも電話連絡をするにあたり,不在の場合に本人との通話がで きるまで複数回電話をかけること自体は通常の電話連絡の過程であり,そのことが当然に違法となるものではない。加えて,かかる不在着信が被告からのものというのは原告の推測でしかない の通話がで きるまで複数回電話をかけること自体は通常の電話連絡の過程であり,そのことが当然に違法となるものではない。加えて,かかる不在着信が被告からのものというのは原告の推測でしかない。 イ本件整理解雇について原告の主張は,本件整理解雇が無効であることを前提にしたものと思われるが,そもそも本件整理解雇は有効になされたものであり,原告の主張は,前提を欠く。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実のほか,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告の経営を取り巻く状況等(乙4)ア平成13年以降,米国同時多発テロ,イラク戦争及びSARS(重症急性呼吸器症候群),新型インフルエンザの発生が,国際線を中心とする航空ネットワーク事業を展開するP2グループの経営に大きな影響を与えた。P2グループは,旅客需要の急激な減少と需要減退の長期化に対応するため,人件費の削減,普通株式の公募増資,優先株式の第三者割当増資等を実施したが大きな効果を上げることはできなかったばかりか,平成20年以降には,燃油価格の高騰及び燃油サーチャージの高額化による需要の低迷,いわゆるリーマンショックに端を発した金融危機の影響により,全世界的な景気後退に直面し,利益の源泉であったビジネスの国際旅客及び国際貨物の需要が急減した。 イ P2グループは,平成21年4月,中期経営改善計画を策定し,同年6月,P34銀行,P35銀行,P36銀行,P37銀行及びP38銀行(債務保証)の協調融資で1000億円を借り入れるなどした。 ウ国土交通省は,平成21年4月,被告に対し,更なる抜本的な経営改 善計画の策定を指示し,同年8月20日,P2の経営改善のための有識者会議を開催した。被告は,同年9月2 れるなどした。 ウ国土交通省は,平成21年4月,被告に対し,更なる抜本的な経営改 善計画の策定を指示し,同年8月20日,P2の経営改善のための有識者会議を開催した。被告は,同年9月24日,国土交通大臣に対し,検討中の経営改善計画を説明し,産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法による出融資の活用を含む支援を求めた。 エその後,新たに就任した国土交通大臣は,有識者会議を解散し,私的な諮問機関として,P39を立ち上げ,被告は,その指導・助言のもとで新たな事業再生計画を策定することとなった。 オ P39は,同年10月29日,国土交通大臣に対し,P2グループが機構による支援を受けて再建することを妥当とする調査結果を報告した。 これを受けて,被告は,機構に対し,P2グループの再生支援の事前相談を開始した。 カ機構は,事前相談を受け,支援の可否を判断するため,ビジネス・会計・法務等の多数の専門家による協力のもと,P2グループに対するいわゆるデューデリジェンスを開始した。 キ被告は,同年11月には再び事業運転資金が枯渇する状況に陥っていたことから,P18,P1及びP19は,同月13日,事業再生ADR手続の正式申込みを行い,金融機関から債権回収等の一時停止とプレDIPファイナンスの優先性の確認を得ることにより,P34銀行から,つなぎ資金として,同月27日に150億円,同年12月25日に400億円の融資を受けることができた。 (2) コンプライアンス調査委員会による調査(乙6)管財人は,平成22年3月2日,第三者の視点から更生会社が経営破綻に至った要因,過去の重大なコンプライアンス上の問題及びその他の経営上の問題を調査するため,コンプライアンス調査委員会を設置し,調査を委嘱した。 同委員会は,調査を行った結 から更生会社が経営破綻に至った要因,過去の重大なコンプライアンス上の問題及びその他の経営上の問題を調査するため,コンプライアンス調査委員会を設置し,調査を委嘱した。 同委員会は,調査を行った結果,破綻に至った要因は以下の経営上の問 題点を解決できなかったことにあるとの判断に至った。 ア収益面国際線・国内線ともに,競合他社の進出を受けて伸び悩んでいる。 (ア) 国際線国際線の依存度が高いため,数次にわたり発生したリスクイベントの影響を受けて,減収・赤字となった年度が多かった。 (イ) 国内線平成17年度以降,P2グループとP11の統合に危機感を抱いた競合他社の営業努力等と自らが招いた安全問題により,競合他社に顧客を奪われたままとなっている。この国内線の競合他社の優位は,競合他社のマイレージによる顧客確保につながり,国際線におけるP2のドル箱路線への競合他社の進出の武器ともなっている。 イコスト面航空需要の見通しを誤り,機種の削減や機材の小型化が遅れた上,地元自治体や労働組合の反発等を配慮する余り,不採算路線からの撤退や思い切った人件費の削減に踏み込めず,高コスト体質が温存されることとなった。 ウ財務面過去の為替差損やホテル事業・リゾート事業の失敗により従来から財務体質が脆弱であったが,その後もその体質は改善されず,借入金・社債・リース等の負債が多額に上り,平成20年度末時点での自己資本費率は10.0%と低く,極めて脆弱な財務体質のままであった。 エ小括上記のような収益・費用・財務の状況であったところ,平成20年半ばまでの燃油高騰による経費の増加とデリバティブ取引の失敗による損失の拡大,さらにはリーマンショックによる国際 であった。 エ小括上記のような収益・費用・財務の状況であったところ,平成20年半ばまでの燃油高騰による経費の増加とデリバティブ取引の失敗による損失の拡大,さらにはリーマンショックによる国際線の大幅な減収により, 資金繰りが急速に悪化して破綻に至った。 (3) P2グループの経営実績本件整理解雇前後のP2グループの連結収支状況(累積営業利益)は,以下のとおりであった(甲43ないし45,98ないし100)。 平成22年6月度164億3000万円7月度395億4000万円8月度817億4000万円9月度1096億6000万円 10 月度 1327億7000万円 11 月度1460億4000万円 12 月度 1586億円 (4) 人件費削減被告は,平成22年2月17日,P3労働組合及びP6に対し,「人件費施策等について」と題する書面をもって,基本賃金や各種手当を5%減額することなどを提示した(乙22の1・2)。 また,被告は,経費削減措置として,別紙1記載の各措置を行った。 (5) 人員削減計画(甲143,乙19(枝番を含む),20,44)ア被告は,人員計画の策定において,1稼働を単位とする必要稼働数を算出し,在籍社員全体の実労働力についても,一定の換算基準に従い1稼働を単位とする労働力に換算して有効配置稼働数を算出し,それらを比較しながら人員計画を立てるという稼働ベースの考え方を採用してきた。なお,職種ごとに勤務形態や代替性の相違があるため,稼働ベースの具体的な内容は職種ごとに異なっている。 そして,被告は,客室乗務員の必要稼働数を,ライン維持必要数(事 え方を採用してきた。なお,職種ごとに勤務形態や代替性の相違があるため,稼働ベースの具体的な内容は職種ごとに異なっている。 そして,被告は,客室乗務員の必要稼働数を,ライン維持必要数(事 業計画で決定された全ての路線の客室乗務に直接必要な人員数),ライン外必要数(運航維持及び客室組織を運営するため乗務以外で必要な業務にかかる人員数),訓練必要数(客室乗務員の訓練に必要な人員数),スタンバイ引当数(イレギュラー対応に備え,1日を3つの時間帯に分けてスタンバイする人員数)の合計で算定している。 イ被告は,本件更生計画案の基礎となる事業再生計画を策定した平成22年6月において,客室乗務員については,平成23年3月期における有効稼働配置数が4712名分,必要稼働数が4195名分であると算出し,その差である517名分(稼働ベース)を削減目標として算定した。 ウ被告は,平成22年9月時点で,その後の計画の修正や人員の減少を踏まえ,客室乗務員については,平成23年3月期における有効稼働配置数が4726名分,必要稼働数が4120名分であると算出し,その差である606名分(稼働ベース)を最終的な削減目標として算定した。 (6) 希望退職の状況第一次希望退職措置,第二次希望退職措置,最終希望退職措置(延長を含む。)の結果,客室乗務員については,786名(稼働ベースで544. 5名)が応募した(乙44)。 (7) 労働組合への説明ア被告は,平成22年6月7日,労働組合に対する合同説明会を行った。 被告は,同説明会において,P2グループ全体の人員数計画について,平成21年度末の人員4万8700人を,退役,拠点見直しにより,前提事実(3)の事業再生計画から深堀り・前倒しして,平成22年度末で3万2700人とする予定である グループ全体の人員数計画について,平成21年度末の人員4万8700人を,退役,拠点見直しにより,前提事実(3)の事業再生計画から深堀り・前倒しして,平成22年度末で3万2700人とする予定であることを説明した。また,P2グループにおける客室乗務員について,平成21年末の実績が9121人であったものを,平成22年末の必要数を6403人とし,削減必要数が271 8人であり,そのうち日本地区において今後実施する特別早期退職実施人数を573人とする予定であることを説明した(ただし,人数には休職者を含まない。)。(以上,甲97)イ被告は,平成22年9月1日から同年12月31日までの間,P3労働組合に対し,別紙2のとおり,11回にわたり,人員調整施策に関する説明を行った。 また,被告は,P6に対し,17回にわたり,人員調整施策に関する説明を行った。 (8) 原告との面談等ア被告は,原告に対し,電話をかけ,原告が不在であれば電話をかけ直すなどした上で,希望退職措置の実施あるいは応募期間の延長について説明し,希望退職措置に応募するよう説得した。 また,被告は,原告に対し,電話をかけ,面談のための航空券の手配(2回),産業医との面談の手配(2回),欠勤日数の確認を行っている。 イ原告は,平成22年10月7日及び同月13日,αで,それぞれ約40分程度,被告担当者であるP31マネージャー及びP32マネージャー(以下,併せて「被告担当者ら」という。)と面談を行った。被告担当者らは,原告に対し,原告が整理解雇の対象者となっていることを説明し,希望退職措置に応募するよう説得した。 (以上,原告本人尋問調書32頁)。 (9) P26会長の記者会見P26会長は,平成23年2月8日,P40記者クラブにおける記者会 っていることを説明し,希望退職措置に応募するよう説得した。 (以上,原告本人尋問調書32頁)。 (9) P26会長の記者会見P26会長は,平成23年2月8日,P40記者クラブにおける記者会見において,「いわゆる会社更生法を適用しましたので,裁判所にもその更生計画を出して,こういう計画でもってP2を再生していきますので認可していただきたいというので,裁判所,債権者,金融機関,あらゆるところにその更生計画を出してそれを承認していただいて,じゃあこれなら, P2は再生,これを実行すれば再生できるだろうということで認めていただいたものなんだ。その人数が最後に残ったのが160名,ではその160名を残すことが経営上不可能かというと,そうではないのはもう皆さんもお分かりになると思います。私もそう思います」などと発言した。 (甲8,乙52)(10) P27社長のインタビュー被告のP27社長は,平成22年10月15日,同月23日発行のP28でのインタビューにおいて,被告の業績のV字回復について言及し,コスト競争力を示すユニットコストの低下について,会社更生法による恩恵が4分の1程度であり,その余の4分の3は人員削減,給料減額等の自助努力によるものである旨述べた(甲101)。 (11) 本件整理解雇後のP2グループにおける人員採用ア被告の子会社である株式会社P41は,平成24年4月頃,同年7月1日以降入社予定(予定:8月ないし10月,12月)で,約90名の客室乗務員(期間1年間の契約社員)を募集した(甲65)。 イ(ア) 被告の子会社である株式会社P42(以下「P42」という。)は,平成24年4月頃,同年6月,同年9月入社予定で,約24名の客室乗務員(期間1年間の契約社員)を募集した(甲66)。 (イ ) 被告の子会社である株式会社P42(以下「P42」という。)は,平成24年4月頃,同年6月,同年9月入社予定で,約24名の客室乗務員(期間1年間の契約社員)を募集した(甲66)。 (イ) P42は,平成24年7月頃,同年11月,平成25年1月,同年3月,同年5月入社予定で,約50名の客室乗務員(期間1年間の契約社員)を募集した(甲79)。 ウ(ア) 被告は,平成24年4月頃,同年7月上旬以降入社予定で,人数を相当数として客室乗務員(既卒採用)(期間1年間の契約社員)を募集した(甲67の1)。 (イ) 被告は,平成24年4月頃,平成25年4月以降入社予定で,約200名の客室乗務員(期間1年間の契約社員)を募集した。 (甲67の2)(ウ) 被告は,平成24年7月頃,同年10月中旬以降入社予定で,人数を相当数として客室乗務員(既卒採用)(期間1年間の契約社員)を募集した(甲80)。 エ被告の子会社であるP43株式会社は,平成24年7月頃,同年9月上旬以降入社予定で,人数を若干名として,客室乗務員(期間1年間の契約社員)を募集した(甲81)。 オ被告の子会社であるP44株式会社は,平成24年8月頃,同年11月1日以降入社予定で,人数を若干名として,客室乗務員(期間1年間の契約社員)を募集した(甲82)。 2 争点1(本件整理解雇が有効か否か)について(1) 人選基準の合理性についてア本件整理解雇は,対象とされる労働者に解雇されるに足りる責めに帰すべき事由がないにもかかわらず行われるものである以上,仮に人員削減の必要性が肯定できるとしても,解雇されるか否かを分ける本件人選基準の設定については,もちろん使用者側の裁量が認められることは否定できないものの,恣意的なものであっては ものである以上,仮に人員削減の必要性が肯定できるとしても,解雇されるか否かを分ける本件人選基準の設定については,もちろん使用者側の裁量が認められることは否定できないものの,恣意的なものであってはならず,解雇されなかった労働者との比較において,当該労働者に解雇を受忍させるに足りる合理性が必要というべきである。 イ本件整理解雇における人選基準は,前提事実(8)ア,ウのとおりであり,(a)病欠・休職等基準(復帰日基準も含む),⒝人事考課基準,(c)年齢基準で構成されている。 (ア)a 病欠・休職等基準については,客観的な基準をもって対象者を選定するものであり,被告の恣意性が入る余地がないほか,私傷病等による休職・病欠がある者については,客観的な事実として,現実に一定期間就労していないのであるから,当該期間に休職・病欠 することなく現実に勤務していた他の労働者と比較した場合に,被告の業務に従事していないという点において,被告に対する貢献度が劣ると評価せざるを得ないし(これは,当該労働者の業務遂行能力が,他の労働者と比較して劣るということを意味するものではない。),また,将来の貢献度を想定するにあたっても,過去に休職・病欠がある者は,ない者と比較した場合に,相対的に劣る可能性があると判断することも,あながち不合理ともいえない。 b 年齢基準についても,被告の恣意性が入る余地がない点については病欠・休職等基準と同様であるほか,年功序列型の賃金体系を採用している企業においては,年齢で比較した場合,年齢の高い者を解雇対象者にする方が人件費削減の効果が大きく,また,年齢が高ければ高いほど今後の在職期間が短くなるのであるから,会社に対する将来の貢献度という観点からみても,年齢の高い者を対象者にすることは合理的であるといえる。 c 費削減の効果が大きく,また,年齢が高ければ高いほど今後の在職期間が短くなるのであるから,会社に対する将来の貢献度という観点からみても,年齢の高い者を対象者にすることは合理的であるといえる。 c なお,人事考課基準については,本件整理解雇においては,同基準に基づいて整理解雇対象者として選定された者は存在しないから,検討を要しない。 d 以上からすると,前記a,bの観点から整理解雇の対象者を選定すること自体は合理性を有するといえる。 (イ) 原告は,①病欠・休職日数基準は貢献度との関連性が乏しく,貢献度を評価するのであれば人事考課等に用いてきた○を用いるのが合理的である,②傷病を基準とすると,傷病に至ってはならないとされる危険性があり,傷病を理由として解雇することは,労働者の人格権ないし人格的利益を損ない,名誉を毀損する,③被告では法定の制度に加重した手厚い労働者保護がなされているにもかかわらず,解雇の局面において休職等をしたことを問題視するのは自家撞着というほか ない,④被告では,復職のための運用が慎重になされており,被告側の都合によって休職期間等が長引くこともある,⑤一定期間を問題とするのは非科学的・不合理であり,貢献度を問題とするのであれば,入社後の全期間について論じるべきである旨主張する。 a しかし,①については,病欠・休職期間がある者が,そのような期間がない者と比較すると,貢献度が劣ることは,前記(ア)a説示のとおりである。 また,そもそも,本件人選基準は,前提事実(8)ア,ウのとおりであり,人事考課基準も採用されているから,原告の主張は前提が誤っており,失当である(なお,同基準の該当者がいなかったため,同基準により整理解雇の対象となった者は存在しない。)。 b ②については,労働者の責めに帰すべき されているから,原告の主張は前提が誤っており,失当である(なお,同基準の該当者がいなかったため,同基準により整理解雇の対象となった者は存在しない。)。 b ②については,労働者の責めに帰すべき事由によらない本件整理解雇の対象者を選定するために病欠・休職等基準を採用した理由は前記(ア)で述べたとおりであって,労務の提供を行うことは労働契約に基づく労働者の基本的な義務であるから,傷病により労務の提供を行うことができないことを否定的に評価されるとしても,やむを得ないというべきである。 また,病欠・休職日数基準に基づいて整理解雇の対象となるのは,病欠・休職期間が存在するという客観的な事実に該当するためであるが,そのことをもって,当該労働者の社会的評価が低下するわけではないから,同人の人格権や人格的利益を損ない,名誉を毀損することになるわけではないことも明らかであるc ③については,確かに,証拠(甲10)によれば,被告においては,原告が主張するとおり,病気欠勤をしても6か月間は基準内賃金及び乗務手当が全額支給され,その後,基準内賃金及び乗務手当が2分の1,3分の1と段階を経て減っていき,病気欠勤開始から 1年で支給されなくなること,健康保険の傷病手当金・傷病手当付加金のほか,病気欠勤2年目以降は,延長傷病手当付加金などで補填され,病気欠勤3年半までは賃金の85%が支給されることになることが認められる。 しかし,被告が,上記のとおり,従業員に対し,病欠・休職について手厚い保障をしていたとしても,それは,被告が経営危機に瀕していないことを前提にするものであって,本件更生手続が開始された被告が,整理解雇の際の人選基準として,病欠・休職等基準を採用することが自家撞着になるものでない。 d ④については,確かに,証拠 していないことを前提にするものであって,本件更生手続が開始された被告が,整理解雇の際の人選基準として,病欠・休職等基準を採用することが自家撞着になるものでない。 d ④については,確かに,証拠(甲10,証人P45尋問調書13,14頁)によれば,被告においては,病気欠勤(整形外科関連の傷病は3週間以上,それ以外の傷病は1か月以上)等をしていた労働者が乗務復帰を希望する場合には,主治医から乗務復帰可能の診断書をもらい,マネージャーに主治医から乗務復帰可能の診断が出たことを伝え,産業医の乗務復帰チェックの予約をし,産業医の乗務復帰許可が出れば,マネージャーと面接を行った上で(休業期間によっては諮問委員会が開催される。),乗務復帰が決定されるという手続を踏んだ上で乗務復帰するとされていたことが認められ,かかる手続を経ることで,復職までに一定の期間を要するといえる。 しかし,客室乗務員は航空運送事業に従事する職種であるところ,同事業においては,安全確保に慎重の上にも慎重を期す必要があるのであって,そのためには,乗務に従事する者が,心身ともに万全の健康状態であることが必要不可欠であるところ,復職しようとする者の心身の状態が乗務に従事するに適した状態まで回復しているか否かを判断するためには,産業医による医学的知見を踏まえた判断や,マネージャーあるいは諮問委員会による現場で必要な能力・ 状態を踏まえた判断が必要不可欠なのであり,そのためには一定の期間を要することが避けられない。そうすると,復職のために一定の期間を要するとしても,そのことをもって,病欠・休職日数基準を採用することに合理性がないことの証左であると評価することはできない。 e ⑤については,病欠・休職日数基準をもって被告への貢献度を評価することに合理性がある ことをもって,病欠・休職日数基準を採用することに合理性がないことの証左であると評価することはできない。 e ⑤については,病欠・休職日数基準をもって被告への貢献度を評価することに合理性があることは前記(ア)a説示のとおりであるところ,過去の貢献度をもって将来の貢献度を予測するのであるから,判断の基礎となる事情をもって,将来の事情を推測することができる蓋然性があることが必要である。そして,年月の経過により,労働者の心身の状態・能力等が変化することからすれば,過去の事情はその後の変化に対応しておらず,将来の事情を適切に推測する根拠としては不適切というべきであるから,入社以降の全ての期間を推測の根拠とするのではなく,直近の期間をもって,推測の根拠とすることが合理的であるといえる。 ウもっとも,復帰日基準を含む病欠・休職等基準については,基準日をいつにするかによって,本件整理解雇の対象者に該当するか否かに大きな影響を与えることとなるので,更に,検討をする。 (ア) 前提事実(8)アのとおり,被告は,平成22年9月27日に労働組合に対し,当初の人選基準案を公表しているところ,被告自身が認めるとおり,同日に公表したものは飽くまで人選基準「案」であって,確定した人選基準ではなく,被告も,そのことを前提とした上で,当初の人選基準案を公表した日(同日)の時点はもちろん,その人選基準案を変更した日(同年11月15日)の時点においても,各人選基準案については,いずれも公表後に,同基準案に基づいて労働組合に対する説明を行ったり,交渉を行っていたものであって,証人P45 が証言しているとおり(証人P45尋問調書24ないし27頁),その後の各組合との交渉の結果,人選基準案を変更する可能性を排除するものではなく,人選基準案から一歩 ものであって,証人P45 が証言しているとおり(証人P45尋問調書24ないし27頁),その後の各組合との交渉の結果,人選基準案を変更する可能性を排除するものではなく,人選基準案から一歩も動かないというものではなかった。そのため,被告は,前記第2の3(1)被告の主張エのとおり,本件整理解雇手続も相当である旨主張しているのである。 もちろん,当初の人選基準案の病欠・休職等基準については,同基準案の公表日の直近の月末であるとともに,本件更生計画案を裁判所に提出すると同時にその基礎となった人員削減計画に基づき希望退職措置を実施することとした平成22年8月31日を基準日とするものであるが,例えば,被告が,それについて労働組合に対する説明を行い,交渉を重ねる中で,同組合もその内容をおおむね同意しており,その後の「案」の変更が,上記基準の基本的な考え方は修正せず,上記基準日,あるいは病気欠勤日数や休職期間等についての微調整の範囲にすぎないと評価されるような場合であれば,上記基準日とされた同年8月31日を当初の人選基準案の発表された日(同年9月27日)に変更することなども被告の裁量の範囲内と評価できる。 しかし,被告は,その後の交渉において,労働組合から,「現在何の問題もなく乗務復帰している者は,将来の貢献度が低いとはいえないのではないか」との指摘を受けたことを踏まえ,同年11月15日に至り,病欠・休職等基準の前記基準日(同年8月31日)は変更しないものの,それに該当する者のうち,乗務復帰している者で(基準日の点についてはさて措く。),休職・病欠日数基準の対象期間の更に1年前の期間(平成18年10月1日以降平成20年3月31日まで)に,連続して1か月を超える病気欠勤期間・休職期間(合算を含む。)がなかった者は除外するという新たな対 ・病欠日数基準の対象期間の更に1年前の期間(平成18年10月1日以降平成20年3月31日まで)に,連続して1か月を超える病気欠勤期間・休職期間(合算を含む。)がなかった者は除外するという新たな対象者を絞る要件(復帰日基準)を付加して当初の人選基準案を変更している。これは,被告において, 当初の基準日(平成22年8月31日)の時点で,休職していたり,過去に病気欠勤又は休職期間がある者であっても,現在,乗務復帰している者については,将来被告に貢献してくれるものとして,原則として本件整理解雇の対象から除外するという判断をしたということであり,そのような判断をするのであれば,その後の交渉の結果,対象者の特定のため基準日を特定の日とする合意が成立するなど特段の事情がない限り,本件解雇通知時に近い,手続的にできるだけ遅い時点をもって基準日とするのが,上記趣旨に合致し,合理的といえる。 逆に,被告が主張するとおり(あるいは被告担当者も認めるとおり),被告が復帰日基準の基準日とした当初の人選基準案公表日に公表したのは,復帰日基準が含まれていない人選基準であって,飽くまで病欠・休職等基準の基準日は同年8月31日としている上,しかも「案」として提示したにすぎず,被告の主張を前提としても,その後に変更があり得ることが想定されていたといえることからすれば,この後で検討する被告が主張する消極的な理由を除けば,その後の本件人選基準変更日において付加された復帰日基準の基準日を当初の人選基準案の公表日としなければならないような積極的な根拠は見出し難い。 (イ) この点,被告は,復帰日基準の基準日としては,当初の人選基準案の基準日(平成22年8月31日),希望退職措置の募集開始日(同年9月3日),上記基準案公表日(同月27日),本件人選基準変 (イ) この点,被告は,復帰日基準の基準日としては,当初の人選基準案の基準日(平成22年8月31日),希望退職措置の募集開始日(同年9月3日),上記基準案公表日(同月27日),本件人選基準変更日(同年11月15日)など複数の候補日が考えられるところ,そもそも基準日は一義的に決定できるものではなく,恣意性を排除しつつ,一定の日を定めざるを得ないとした上で,上記9月27日を基準日とした理由として,①当初の人選基準案の公表日であったこと,②希望退職応募者の7割が,上記基準案を示した後に応募していることからして,人選基準に該当していることを考慮して応募したことが推察さ れるが,その後に基準の変更を行うのは,個別面談を経て希望退職に応じた者との間での不公平が生じること,③運航乗務員も客室乗務員と同じ人選基準を設定しており,恣意性の排除の観点から同様の問題が運航乗務員についても生じること,④乗務復帰した者は人員削減の対象外とすべきと主張していた組合と主張していない組合があり,その主張を容れて復帰日基準を付加した上,その基準日をその旨変更した上記11月15日とした場合に特定の労働組合の対象者のみを利することになる可能性があったことなどを挙げる。 a しかし,①については,当初の人選基準案公表日を復職日基準の基準日としなければならないような積極的な根拠は見出し難いことは,前記(ア)で説示したとおりである。 むしろ,前記説示のとおり,病欠・休職等基準該当者の中でその後に乗務復帰している者については整理解雇の対象から除外するという新たな対象者を絞る要件(復帰日基準)を付加した以上,その基準日については,手続的にできるだけ本件解雇通知に近い遅い時期とするのが合理的であり,同基準を付加した本件人選基準を示した本件人選基準変更日(同年 象者を絞る要件(復帰日基準)を付加した以上,その基準日については,手続的にできるだけ本件解雇通知に近い遅い時期とするのが合理的であり,同基準を付加した本件人選基準を示した本件人選基準変更日(同年11月15日)とすることに技術的・現実的な支障があることもうかがわれないにもかかわらず,少なくとも復帰日基準の基準日とした同年9月27日から復帰日基準を公表した同年11月15日の間に乗務復帰した者を,依然として,本件整理解雇の対象にとどめることには合理的な理由がないといわざるを得ない。 この点,被告は,一定の基準日を設定する以上,基準日の前後で当該基準の適用の結果が大きく異なる事態となるからといって,そのことのみから当該基準が不合理であるということはできないと主張するが,本件人選基準については,基準日の前後で本件整理解雇 の対象になるか否か重大な差異が生じるからこそ,基準日の設定の合理性はより厳格に審査しなければならないのであって,そのことが被告の主張するような基準日の設定に関する被告の広範な裁量を根拠づけることにはならない。しかも,前記で判示したことは,単に基準日の前後で復帰日基準の適用の効果が分かれて不合理であるというのではなく,同基準を付加した趣旨とその基準日の設定が整合していないから不合理であるというものであって,被告の上記主張は理由がない。 また,被告は,復帰日基準の基準日を当初の人選基準案公表日から本件人選基準変更日に遅らせることで年齢基準による整理解雇の対象者が増加するとも主張するが,本件人選基準は,整理解雇の対象者を,基本的に病欠・休職等基準と人事考課基準で選定し,それでも目標人数に達しない場合に補充的に年齢基準で選定する方式を採用していることに照らせば,病欠・休職等基準による対象者をどの範囲で選定すべき を,基本的に病欠・休職等基準と人事考課基準で選定し,それでも目標人数に達しない場合に補充的に年齢基準で選定する方式を採用していることに照らせば,病欠・休職等基準による対象者をどの範囲で選定すべきか,その基準日の合理性を検討する際に,補充的な年齢基準による対象者の増減が,その積極的な根拠になるとは言い難い。 b ②については,確かに,被告が主張するとおり,希望退職措置への応募者の約7割が,平成22年9月27日に当初の人選基準案を公表した後に応募していること(証人P45尋問調書14,15頁)からすれば,同日に公表された上記基準案の内容あるいは同日以降に実施された個別面談における面談内容によって,自らが人選基準に該当していることを認識し,その結果,希望退職措置に応募することとした者が少なくないことは容易にうかがわれる。そして,被告が当初に公表した人選基準案では整理解雇の対象者に該当していたことなどから退職を決意して希望退職措置に応募した者が,後に 変更された人選基準では整理解雇の対象者に該当しないこととなれば,希望退職措置に応募した者と応募しなかった者との間で大きな差が生じることになるのは被告が主張するとおりである。 しかし,平成22年9月27日に公表された当初の人選基準案は,飽くまでも「案」にすぎず,確定したものではない。人選基準が確定する前に希望退職措置に応じた者は,その後の労働組合との交渉等により人選基準が変更される可能性があることを認識しつつ,自らのリスク判断に基づいて希望退職措置に応じたのであるから,必ずしも回避しなければならない不都合とはいい難い。 しかも,第一次,第二次希望退職措置の内容は前提事実(7)アのとおりであり,同措置に応募した場合の退職日は平成22年11月30日であるとされていたことからすれば, ればならない不都合とはいい難い。 しかも,第一次,第二次希望退職措置の内容は前提事実(7)アのとおりであり,同措置に応募した場合の退職日は平成22年11月30日であるとされていたことからすれば,第一次,第二次希望対象措置に応募したとしても,復帰日基準が付加された本件人選基準変更日の時点においては,いまだ被告の従業員としての地位を喪失していないのであるから,人選基準を変更することで整理解雇の対象から除外されることとなる者が生じるのであれば,そのような者については,一定の期間を設けた上で,希望退職措置への応募の撤回を認めることとするなど,人選基準の変更に伴う救済措置を設ければ不公平は生じないこととなるのであり(実際に応募を撤回するかどうかは,各人が諸般の事情を考慮して検討することとなり,検討の結果,応募を撤回しないこととする者もいるであろうが,それは自らの選択の結果であるから,不公平ではない。),また,そのような措置を講じることに特段の支障はない。 c ③については,確かに,被告は,客室乗務員のみならず運航乗務員についても整理解雇を行っていることからすれば,乗務復帰の基準日をどうするかについては運航乗務員についても同様の問題が生 じるといえる。そして,乗務復帰の基準日について,客室乗務員についてのみ変更し,運航乗務員については当初のままとするのであれば,そのような差異を設ける合理的な理由が必要となるが,客室乗務員の人選基準と運航乗務員の人選基準(乙28)とを比較した場合,地上職変の同意の有無,乗務離脱期間基準の有無,キャリアサービスアテンダントの場合の病気欠勤日数等に相違はあるものの,その余については概ね同様であることからすれば,基本的には,客室乗務員の人選基準及び運航乗務員の人選基準は,いずれも過去及び将来の被告の ービスアテンダントの場合の病気欠勤日数等に相違はあるものの,その余については概ね同様であることからすれば,基本的には,客室乗務員の人選基準及び運航乗務員の人選基準は,いずれも過去及び将来の被告の業務に対する貢献度に着目して人選基準を設定することとし,病気欠勤,休職等の事情があった場合には,他の社員と比較すると病気欠勤,休職等があった分,貢献度において低いものと扱うこととしたという,同じ観点に基づくものであるということができる。そうすると,客室乗務員の乗務復帰の基準日を変更することが必要となったのであれば,それに合わせて,運航乗務員の人選基準についても同様の変更をすれば足りることになるから,運航乗務員についても整理解雇を行うことをもって,客室乗務員の乗務復帰の基準日を変更することができない根拠と評価することはできない。 d ④については,仮に,被告が主張するとおり,一部の労働組合が,乗務復帰した者は人員削減の対象外とすべきと主張しており,他方,別の労働組合は,そのような主張を行っていなかったとしたとしても,現実に,上記のような主張を行っていた労働組合が,加入している組合員に対して,上記のような主張をしているから,早期に乗務復帰すれば,整理解雇の対象から除外されるとして乗務復帰するよう働きかけをしていたというような事実はうかがわれず,被告の担当者も,そのような働きかけがなされる可能性について検討した ものである旨証言している(証人P45尋問調書16ないし18頁)。 また,前記イ(イ)dのとおり,被告においては,病気欠勤等をしていた労働者が乗務復帰するには一定の手続を経ることが必要とされていたのである。そうすると,病気欠勤等をしていた労働者が乗務復帰を希望したとしても,自らの意向のみで直ちに乗務復帰できるというような体 いた労働者が乗務復帰するには一定の手続を経ることが必要とされていたのである。そうすると,病気欠勤等をしていた労働者が乗務復帰を希望したとしても,自らの意向のみで直ちに乗務復帰できるというような体制にはなかったのであって,仮に,一部の労働組合が,組合員に乗務復帰するよう働きかけたとしても,産業医の復帰チェックやマネージャーあるいは諮問委員会の判断等の要件を満たさない限りは乗務復帰できなかったのだから,恣意的な乗務復帰は不可能であったというべきである。 仮に,病気欠勤等をしている労働者が乗務復帰できる状態に回復していたのであれば乗務復帰するのが当然であって,そのきっかけが労働組合からの働きかけであったとしても,乗務復帰が正当なものであることが左右されるものではない。 そうすると,一部の労働組合のみが乗務復帰した者は人員削減の対象外とすべきと主張しており,同主張を踏まえて乗務復帰の基準日を本件人選基準変更日に変更したとしても,不当に一部の労働組合に属する組合員のみが整理解雇を免れることになるという事態は想定し難い。 エ以上を総合考慮すると,本件人選基準は前記ウで述べたとおり,当初の人選基準案に現在乗務復帰できた者は本件整理解雇の対象から除外するという復帰日基準を追加しながら,その基準日を,同基準を提示した平成22年11月15日ではなく,当初の人選基準案を提示した同年9月27日に遡らせた点において,同月1日から同月27日までに復職した労働者が本件整理解雇を免れることと比較した場合に,上記趣旨で設定された復職日基準の追加が提示された同年11月15日までに復職で きている点は同じであるにもかかわらず,同年9月28日から同年11月15日までに復職した者が依然本件整理解雇の対象者とされることになり,その余の点を判断するまでもな 月15日までに復職で きている点は同じであるにもかかわらず,同年9月28日から同年11月15日までに復職した者が依然本件整理解雇の対象者とされることになり,その余の点を判断するまでもなく不合理といわざるを得ない。 そして,基準日を同年11月15日とした場合には,前提事実(1)イ(エ)dのとおり,同年10月19日に乗務復帰した原告が本件整理解雇の対象者に該当しないことは明らかである。 (2) 小括以上からすると,その余の点について検討するまでもなく,本件整理解雇は無効となる。 3 争点2(原告に対する本件整理解雇や退職勧奨が不法行為に当たるか)について原告は,同人に対する①本件整理解雇や②退職勧奨が不法行為に当たる旨主張する。 (1) しかし,①については,整理解雇が無効であり,雇用契約上の地位を有することが確認され,いわゆるバックペイが支払われることで,労働者としての地位が回復され,また,経済的損害も填補されることからすれば,整理解雇が解雇権の濫用に当たるとして無効となる場合であっても,そのことをもって直ちに不法行為が成立することになるものではなく,当該整理解雇が,当該労働者を排除することのみを目的としたり,当該労働者に対する嫌がらせとして行われたものであるなど,その手段・態様に照らし,著しく社会的相当性に欠けるものである場合に,不法行為に当たると解するのが相当である。 これを本件についてみると,本件整理解雇が解雇権の濫用として無効となるのは,前記2認定説示のとおり,被告が当初の人選基準案を公表した後,その後,労働組合からの要望を受けて,復職日基準を追加して本件人選基準を公表したものの,復職日基準の基準日を人選基準が確定した日で はなく,当初の人選基準案を発表した日とした点が合理性 後,その後,労働組合からの要望を受けて,復職日基準を追加して本件人選基準を公表したものの,復職日基準の基準日を人選基準が確定した日で はなく,当初の人選基準案を発表した日とした点が合理性を欠くと判断されたためであるものの,被告によるそのような復職日基準の基準日の設定が,原告に対する嫌がらせであるなど著しく社会的相当性を欠くとまではいえず,ほかに,本件整理解雇が,著しく社会的相当性に欠けるものであることをうかがわせる事情があることを認めるに足りる証拠もない。 (2) ②については,確かに,被告を退職する意思のない原告としては,退職勧奨を受けることが不本意であったことは推察に難くない。 しかし,本件において,被告が行った退職勧奨は,電話あるいは面談によるものであるところ,面談の回数は2回,時間は約40分間,被告側の出席者の数も2名であったことからすれば,原告に対する退職勧奨が,その態様・方法において,社会通念上,相当性を欠くとまではいえず,ほかに,面談時における被告担当者らの発言が,相当性を欠くものであったことをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠もない。 また,原告は,日に何度も被告から電話がかかってきた旨主張するが,被告担当者が常軌を逸した時間あるいは回数にわたって電話をかけたことを裏付ける証拠はなく,仮に,電話あるいは面談の際に,原告が主張するとおり,被告担当者が原告の休暇の時期を間違えた発言をしたこと,不在着信が10件以上あったことを前提としても,その内容・程度に鑑みると,やはり同様である。 (3) 以上からすると,本件において,原告に対する本件整理解雇や退職勧奨が不法行為に当たるということはできず,原告の損害賠償請求は理由がない。 4 賃金請求について前記2で説示したとおり,本件整理解雇は無効であるから 件において,原告に対する本件整理解雇や退職勧奨が不法行為に当たるということはできず,原告の損害賠償請求は理由がない。 4 賃金請求について前記2で説示したとおり,本件整理解雇は無効であるから,被告は,原告に対し,労働契約に基づき,平成23年1月分以降の賃金を支払う義務がある。 もっとも,原告は,請求の趣旨において,同月から毎月25日限り23万4412円の支払を求めているところ,これは同月以降に支払期限が到来する賃金を請求する趣旨と解されるが,原告の賃金23万4412円の内,基準内賃金18万5462円は毎月末日締め当月25日払いであるが,基準外賃金4万8950円は毎月末日締め翌月25日払いである(前提事実(1)イ(ウ))。そうすると,原告が訴状において請求している平成23年1月25日を支払期限とする23万4412円は,平成22年12月分の基準外賃金と平成23年1月分の基準内賃金を請求しているものと解されるが,原告は,訴状4頁において,基準内賃金及び基準外賃金の弁済期が上記のとおりであるとした上で,平成22年12月分の基準外賃金の支払を受けたことを平成23年1月分の賃金支払明細票(甲1の4)を引用して自認しているのであるから,同月25日に支払期限が到来する賃金のうち,基準外賃金に対応する部分の請求については既に弁済済みであり,理由がないことになる。 したがって,原告の賃金請求は,18万5462円及びこれに対する平成23年1月26日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金並びに同年2月から本判決確定の日まで,毎月25日限り23万4412円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲内で理由があるが,その余の請求は理由がない。 第4 結論以上の次第で,原 り23万4412円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲内で理由があるが,その余の請求は理由がない。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官中垣内健治 裁判官中島崇 裁判官佐 々 木隆憲
▼ クリックして全文を表示