令和3(わ)260 不同意堕胎未遂被告事件

裁判年月日・裁判所
令和3年6月28日 福岡地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-90501.txt

判決文本文1,661 文字)

1 主 文被告人を懲役2年6月に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理 由(罪となるべき事実)被告人は,交際していた年下の未成年者であるA(以下「A」又は「被害者」という。)から,被告人の子を身籠もって妊娠したこと及び出産を希望していることを聞き及ぶや,責任を負ってAとの婚姻を余儀なくされ,束縛されるのは困るなどとしてAの意思に反する堕胎を企て,その方法として,継続服用により堕胎に至る薬剤をインターネットで購入し,医師の処方によらない同薬剤につき,Aをだまして服用させることを計画の上,令和2年9月24日午後10時45分頃,滞在先である福岡市a区bc丁目d番e号Bf号の兄方において,あらかじめ,被告人の性病り患が判明したから胎児のためにも共に治療が必要である旨のうそを告げて悩ませていたA(当時18歳)に対し,上記のとおり購入した薬剤の一部であって,妊娠継続に欠かせないプロゲステロンの作用を抑制するミフェプリストン含有の錠剤2錠を,それらが性病治療薬であると偽って手渡し,その旨誤信したAに同2錠を服用させ,さらに,Aに対し,「1日2回,12時間おきに薬を飲まないといけない。」「明日また薬を渡すから。」などと告げ,翌日以降も同錠剤を含む薬剤の服用を続けるよう申し向け,もってAの嘱託を受けず,かつ,その承諾を得ないで堕胎させようとしたが,Aが同錠剤の効能を確かめてだまされた事情に気付き,警察に届け出たため,堕胎の目的を遂げなかった。 (量刑の理由)本件は,判示の身勝手な動機に基づいて犯行を思案し,実行した事案であって,母体及び胎児の安全を脅かす程度が高くなりやすい不同意堕胎の事案であるところ,欺く行為を交えながら薬剤 。 (量刑の理由)本件は,判示の身勝手な動機に基づいて犯行を思案し,実行した事案であって,母体及び胎児の安全を脅かす程度が高くなりやすい不同意堕胎の事案であるところ,欺く行為を交えながら薬剤を継続服用させ,堕胎させようとした点に特徴がある。 用いられた未承認の薬剤は,その錠剤1錠でも堕胎の可能性をもたらし,子宮壁に2 影響が及ぶことによる出血や吐き気等の副作用を生じさせるものであって,これを被告人が安易に取り扱って服用させたことにより,その後被害者が吐き気や腹痛を覚えていたから,卑劣な行為を交えた事情と併せて,以上を見過ごすことはできない。しかし,服用した2錠によれば堕胎の可能性の高まりは限定的であったとうかがわれる上,併用すれば可能性を大きくする別の添付薬剤の使用には至らなかった。 また,被告人に欺かれている状態が続いてこそ継続服用をし,堕胎に達するという不確実さのある犯行であって,現に被害者も早い段階でだまされた事情に気付き,未遂に終わっている。因果性が不明ながらも結局流産に至った被害者の,被害感情が厳しいことは踏まえなければならないが,法益侵害が大きくなる類型であったとはいえない。必ずしも対応力が十分でなかった若い当事者間の事案であることに照らせば,被告人に向けるべき非難の程度に著しく強いものがあるともいえない。そのほか,前科もない被告人が罪を認め,被害者に対する謝罪及び反省の弁を述べていること,応じてもらえなかったものの100万円の被害弁償を申し出ており,慰謝に努める姿勢を示していること,母や雇用主が被告人の更生支援を約束していることなども考慮した。このような吟味をして主文のとおり刑期を定め,刑の執行を猶予するのが相当と判断した次第である。 (求刑 懲役3年6月)令和3年6月28日福岡地方裁判 ることなども考慮した。このような吟味をして主文のとおり刑期を定め,刑の執行を猶予するのが相当と判断した次第である。 (求刑 懲役3年6月)令和3年6月28日福岡地方裁判所第3刑事部裁判長裁判官 伊 藤 寛 樹裁判官 林 直 弘裁判官 加 藤 貴

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る