平成13年合(わ)第7号,同第54号判決被告人に対する住居侵入,強盗殺人,強盗強姦未遂,窃盗,傷害,強姦未遂被告事件について,当裁判所は,検察官勝山浩嗣及び弁護人山田史彦各出席の上審理し,次のとおり判決する。 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中400日をその刑に算入する。 理由 (被告人及び被害者A子の身上経歴等) 1 被告人の身上経歴被告人は,昭和46年6月29日,青森県三沢市で出生し,東京都内の中学校を卒業した後,大工見習い,解体工,ホストクラブのホスト,大工,舞台設営等の仕事を転々としたが,平成12年5月ころからは,定職に就かずに過ごしていた。 2 A子の身上経歴等A子は,昭和48年12月16日,東京都板橋区で出生し,東京都内の高等学校を卒業後,会社員として稼働していた。なお,A子は,平成10年3月ころから,後記第2記載の建物に1人で居住していたところ,この建物は,実父のBが居住する家屋と同じ敷地内にあるが,同家屋とは別棟をなしていた。 (犯行に至る経緯等(1))被告人は,平成5,6年ころから,いわゆるキャバクラに頻繁に通うようになり,そのための遊興費等を捻出するため,消費者金融から多額の借金をするようになった。もっとも,それらの借金は,被告人の父の退職金を充てるなどしてほとんどをいったん返済し,その際,被告人は,両親との間で,今後キャバクラへは行かないことを約束したが,そのうち,またキャバクラ通いを始め,消費者金融からの借金も新たに重ねるようになった。 前記のように,被告人は,平成 し,その際,被告人は,両親との間で,今後キャバクラへは行かないことを約束したが,そのうち,またキャバクラ通いを始め,消費者金融からの借金も新たに重ねるようになった。 前記のように,被告人は,平成12年5月ころ仕事を辞めた以後は定職に就かずに過ごしていたが,家族には,仕事に行くと言って,作業衣姿で毎朝外出し,その際,仕事場へ行くための交通費が必要だなどとうそを言って,母親から小遣いをもらい,日中は公園などで時間をつぶし,夜になると,仕事帰りを装って帰宅し,また母親から小遣いをもらって外出してキャバクラへ行くなどする生活をするようになった。 また,被告人は,かねてから女性に対する関心が強く,上記のようにキャバクラ通いを続ける一方,平成10年ころから,街頭で見かけた女性が気に入ると,その女性の後をつけ,自宅を突き止めた上で,交際を求める手紙を書いて差し出すなどするようになった。さらに,つけて行った先の女性方で,自己の存在を女性に気付いてもらおうとして,玄関の呼び鈴を鳴らしたり,部屋の前に置いてある洗濯機のスイッチを押したり,部屋の窓に泥を投げ付けたりするなどの行動をすることもあった。 そうするうちの平成12年10月19日ころの夜,被告人は,コンビニエンスストアから出てきたA子をたまたま見かけ,同女が好みのタイプであったことから,同女の前記自宅まで後をつけていった上,無施錠の玄関から屋内に入り込んだが,A子に,出て行くよう懇願され,このときはその場から立ち去ったものの,A子について,以後も強い関心を持ち続けることになった。一方,A子は,被告人の不意の侵入に驚き,翌20日にBに相談したところ,Bは工務店に依頼し,同女方玄関に鎌錠を取り付けるなどした。 被告人は,同年11月8日夕方,いつものように,当時行きつけにしていた東京都豊島区巣鴨所 意の侵入に驚き,翌20日にBに相談したところ,Bは工務店に依頼し,同女方玄関に鎌錠を取り付けるなどした。 被告人は,同年11月8日夕方,いつものように,当時行きつけにしていた東京都豊島区巣鴨所在のキャバクラ「Z」に行こうと考え,母親に仕事に行くとうそをつき,交通費名目で金をもらい,仕事に行くふりをして,「Z」へ行って遊興した。そして,被告人は,いったん「Z」を出たものの,まだ遊び足りず,再度同店に入店したいと考えたが,所持金を使い果たしてしまったため,通行人から財布等の入ったバッグをひったくって,遊興費を手に入れようと考えた。 (罪となるべき事実(第1ないし第3))第1 こうして,被告人は,平成12年11月8日午後9時20分ころ,東京都豊島区巣鴨a丁目b番先路上において,同所を1人で通行中のC子(当時69歳)を見かけるや,同女が右手に持っていた同女所有の現金約1万4000円及び財布1個ほか11点在中の手提げ袋1個(時価合計約7000円相当)を引っ張ってひったくり窃取し,その際,その暴行により,同女を路上に転倒させ,よって,同女に加療約2箇月間を要する左橈骨遠位端骨折の傷害を負わせた。 第2 被告人は,第1の犯行後,再度「Z」に入店して遊興し,同店を出た。そして,被告人は,公園でしばらく時間を過ごし,その後,町中を徘徊していたが,そのうちA子(当時26歳)のことを思い出し,同女方は奥まった場所にあって周囲に人気がなく,また同女は1人暮らしのようであることなども分かっていたことから,侵入することができれば同女を強姦できると考え,同女方に侵入して同女を強姦しようと決意した。そこで,被告人は,翌9日午前2時ころ,東京都板橋区c町d番e号の前記A子方1階便所高窓引き戸を外して家屋内に侵入し,そのころ,同家屋内2階和室において,同女に対し,仰向 女を強姦しようと決意した。そこで,被告人は,翌9日午前2時ころ,東京都板橋区c町d番e号の前記A子方1階便所高窓引き戸を外して家屋内に侵入し,そのころ,同家屋内2階和室において,同女に対し,仰向けに押し倒して馬乗りになり,その着衣をはぎ取って全裸にするなどの暴行を加え,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女に抵抗されて声を上げて泣き出されたため,その目的を遂げなかった。 第3 さらに,被告人は,同月10日,また前記「Z」で遊興した後,自宅に帰ろうとしていた途中,折から帰宅途中のD子(当時16歳)を見かけ,その後ろ姿を見ているうちに劣情をもよおし,同女を強姦しようと企て,同日午後11時ころ,同区板橋f丁目g番h号空き地に差し掛かった際,同女に対し,その頸部に右腕を巻き付けて引っ張って空き地内に引きずり込んだ上,仰向けに押し倒して馬乗りになるなどの暴行を加え,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女に抵抗されて悲鳴を出されたため,逃走し,その目的を遂げなかった。 (犯行に至る経緯等(2))被告人は,その後もA子のことが忘れられず,同女を強姦し,また,キャバクラ等へ行く遊興費等を手に入れるため,同女から金品を奪い取ろうと考えて,平成12年11月30日ころの昼過ぎ,また同女方に入り込んだところ,同女は仕事に行って不在であったが,その機会に同女名義の預金通帳とパスポート2通を盗み取った。そして,その際,被告人は,預金通帳に残高が約14万円と記帳されているのを見て,同女が銀行に約14万円の預金をしていることを知った。もっとも,被告人は,その通帳を使って銀行から預金を下ろそうと考えたものの,その後すぐ,知人から,印鑑がないと預金通帳のみでは預金を下ろせないと教えられたため,再度A子方に入り,盗み取った預金通帳とパスポート2通を部 ,その通帳を使って銀行から預金を下ろそうと考えたものの,その後すぐ,知人から,印鑑がないと預金通帳のみでは預金を下ろせないと教えられたため,再度A子方に入り,盗み取った預金通帳とパスポート2通を部屋の中へ投げ込んでおいた。 他方,A子は,何者かに侵入されたことに気付き,Bに相談して,同月30日,警視庁板橋警察署に被害届を提出した。また,Bは,そのころ,工務店に依頼して,1階東側掃き出し窓に板を張り付け,1階便所の高窓に錠前を取り付けるとともに格子を付けるなどの工事を行った。 同年12月15日夜,被告人は友人とともに「Z」で遊興し,更に巣鴨駅前の屋台で飲食したため,所持金が約200円のみとなった。被告人は,更に別のキャバクラへ遊びに行き,遊興したいと考えたが,所持金がわずかであったため,遊興費を得るため,通行人からその所持金をひったくろうと企て,通行中の女性の後をつけ,同女の居住するマンションの玄関に入ったが,同女の家族が同マンション内から出てくる気配がしたため,ひったくりを断念し,逃走した。 その後,被告人は,友人と別れ,歩いて自宅へ向かったが,途中でまたA子のことを思い出し,今度こそA子を強姦し,同女から金品を強取しようと決意して,A子方へ向かった。 (罪となるべき事実(第4))第4 こうして,被告人は,A子を強姦するとともに,同女から金品を強取しようと企て,平成12年12月16日午前1時30分ころ,前記第2のA子方1階玄関のガラスを割り,そこから手を差し入れ,施錠を外して家屋内に侵入したが,その際被告人は,今度はA子も以前と異なって被害を警察に通報するだろうし,自分は同女に顔を見られている上,かつて警察に指紋を採られたこともあり,また今まで同女方に入り込んだときにも指紋を遺留しているはずだから,同女に通報されれば自分が犯人で 害を警察に通報するだろうし,自分は同女に顔を見られている上,かつて警察に指紋を採られたこともあり,また今まで同女方に入り込んだときにも指紋を遺留しているはずだから,同女に通報されれば自分が犯人であると発覚してしまうのでないかなどと考えるうち,この際同女を殺害し,その上で同女を姦淫して金品を強取しようと決意するに至った。そして,被告人は,A子方2階和室に至り,折から就寝していたA子が目を覚ますと,室内にあったタオルをつかみ取り,殺意をもって,仰向けに寝ている同女の胸部付近に馬乗りになり,その頸部を上記タオルで絞め付け,よって,そのころ,同所において,同女を頸部圧迫により窒息死させて殺害した上,同女の下着を下げるなどして強いて同女を姦淫しようとしたが,陰茎が勃起しなかったためその目的は遂げなかったものの,同女所有又は管理に係る携帯電話1個(時価約5000円相当)並びに現金約1500円,キャッシュカード及びクレジットカード各1枚在中の財布1個(時価約500円相当)を強取した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(弁護人の主張に対する判断)第1 判示第2の犯行における侵入経路について 1 弁護人は,判示第2の犯行の際,被告人はA子方1階便所高窓の引き戸を外して家屋内に侵入したのではなく,無施錠の玄関から侵入したと主張する。 2 そこで,検討すると,被告人は,捜査段階において,判示第2の犯行の際,A子方に侵入しようとしたが,玄関にはかぎがかかって引き戸が動かなかったので,トイレのある場所の辺りに移動し,トイレの高窓の引き戸を外し,その内側にあった鉄パイプを押し上げて,そこから中に入った旨供述している。また,被告人は,屋内に入った後,鉄パイプの位置を戻し,玄関のかぎを外していったん外に出て,外してあったトイレの引き戸をもとに戻し 側にあった鉄パイプを押し上げて,そこから中に入った旨供述している。また,被告人は,屋内に入った後,鉄パイプの位置を戻し,玄関のかぎを外していったん外に出て,外してあったトイレの引き戸をもとに戻した,玄関のかぎは,その後逃げることを考えて開けたままにしておいたなどと,侵入直後の状況等についても供述をしている。 この供述は,自然かつ具体的で,捜査段階において一貫しており,トイレ高窓には平成12年12月1日ころまでかぎがついておらず,同月17日から同月19日にかけて実施された検証当時,高窓内側の金属製パイプが変形している状況が認められているなどの客観的事実関係とも符合している。 また,関係証拠によると,前記のとおり,A子が同年10月19日ころ,見知らぬ男性である被告人に侵入された後,実父のBに相談し,Bが工務店に依頼して,玄関の扉に鎌錠を取り付けるなどし,A子もBも同女方の特に夜間の施錠に一層気をつけている状況がうかがわれることなどに照らしても,玄関が施錠されていたのでやむなくトイレの高窓から侵入したという被告人の捜査段階供述の信用性は高いといえる。 もっとも,被告人は,公判では,判示第2の犯行の際は,トイレの高窓からではなく,玄関から中に入った,このとき玄関は簡単に開き,かぎはかかっていなかったと思うという趣旨を供述している。また,被告人は,トイレの窓から入ったというのは,昼間にA子方に入って預金通帳等を盗んだときのことであるとも供述している。しかし,被告人のこの公判供述は,上記捜査段階供述と対比しても,内容にあいまいで不明確な点が多いし,捜査段階で上記のような供述をした理由についても合理的な説明ができていない。特に,被告人は,公判で,捜査段階における供述の経緯として,逮捕された当初は玄関から侵入したと捜査官 いで不明確な点が多いし,捜査段階で上記のような供述をした理由についても合理的な説明ができていない。特に,被告人は,公判で,捜査段階における供述の経緯として,逮捕された当初は玄関から侵入したと捜査官にも述べていたが,その後,トイレの窓から入ったと供述を変えることになったという趣旨を供述しているが,どのような経緯で供述を変えることになったというのか,具体的な説明ができていないし,そもそも,被告人は,逮捕された当日である平成12年12月20日に既に,判示第2の犯行の際のこととして,玄関のかぎがかかっていたからトイレの扉を外して中に入った旨を述べ(被告人作成の同日付け書面。乙42),この供述は,捜査段階において一貫していたことが認められるのであって,被告人の上記公判供述部分は,その前提が首肯できないといわざるを得ない。 また,その他検討しても,トイレの高窓から侵入したという被告人の上記捜査段階供述の信用性について疑いをいれるような事情があるとは認められない。 そうすると,判示のとおり,被告人は,判示第2の犯行の際,A子方1階便所高窓の引き戸を外して屋内に侵入したと優に認定することができるから,弁護人の前記1の主張は採用することができない。 第2 判示第2の強姦の未遂事由(中止未遂の成否)について 1 判示第2の強姦未遂の点について,弁護人は,被告人はA子が泣き出したのでかわいそうになり,自己の意思で強姦をやめたのであるから,中止未遂が成立すると主張する。 2 しかしながら,被告人は,捜査段階で,判示第2の強姦行為に及んだ状況について供述するとともに,A子を全裸にして,陰茎を挿入しようとしたら,同女は両腿に力を入れ足を閉じて必死の抵抗をし,そのうち外にも聞こえるほどの大声で泣き始め,被告人の陰茎が縮んでしまった旨を供述し(乙 て供述するとともに,A子を全裸にして,陰茎を挿入しようとしたら,同女は両腿に力を入れ足を閉じて必死の抵抗をし,そのうち外にも聞こえるほどの大声で泣き始め,被告人の陰茎が縮んでしまった旨を供述し(乙34等),公判でも,A子の泣き声が外に漏れるのではないかとけっこう気になった旨を述べ,また,性器が縮んで性交できなくなったのかという質問に対し,これを肯定する趣旨の供述をしている。 被告人のこの供述は,具体的で,関係の状況に照らしても,自然な内容のものということができる。そして,被告人のこの供述にも照らすと,要するに,被告人は,A子の抵抗にあい,同女が大声を上げるなどするのを気にするうち,それまで勃起していた性器が勃起しなくなり,姦淫を遂げることができなくなって,強姦を遂行することができなかったものであり,結局,本件は自己の意思によって強姦を中止したというのではなく,障害未遂の場合に当たることが明らかというべきである。 ただし,補足すると,被告人の公判供述中には,これと異なり,A子の声が外に聞こえて自分の犯行が分かってしまうとは全く考えなかったとか,強姦を続けようと思えば続けられたが,A子がかわいそうになり,自分の意思でやめたなどと,弁護人の前記主張に沿う趣旨を述べる部分もある。しかし,A子の声がかなり大きなものであったことは被告人自身が公判でも認めているところであり(もっとも,被告人の公判供述中にはこれと異なる趣旨を述べる部分もあるが,信用できない。),その声が外に漏れるとはおよそ心配しなかったというのは,A子方の周囲の状況等に照らしても不自然といわざるを得ないなど,この供述部分は,不自然で不合理と思われるところが多く,前摘示の捜査段階供述等と対比して,にわかに信用することができない。そうすると,被告人のこの公判供述部分は,そ も不自然といわざるを得ないなど,この供述部分は,不自然で不合理と思われるところが多く,前摘示の捜査段階供述等と対比して,にわかに信用することができない。そうすると,被告人のこの公判供述部分は,その信用性を肯定することができず,本件の強姦が未遂に終わった事情に関する上記認定を左右するような証拠価値を持つものではないといわざるを得ない。なお,被告人の捜査段階供述の中にも,特に当初の時期のものには,この点で趣旨が必ずしも明確でないところがあるなどの事情も認められないではないが,これも特に上記認定を左右するような事情には当たらない。また,その他関係証拠を精査しても,判示第2の強姦が未遂に終わった事情に係る上記の認定に疑いをいれるような点があるとは認めることができない。 以上の次第であるから,判示第2の強姦未遂の点が中止未遂に当たるという弁護人の前記主張は採用することができない。 第3 判示第4の犯行における殺意及び強盗の意思の存否について 1 弁護人は,判示第4の犯行について,被告人にはA子を殺害する意思はなく,また同女から金品を強取する意思もなかった旨主張する。すなわち,被告人がA子の頸部をタオルで絞めたのは,騒がれないように脅すためであって,殺害するためではなく,また被告人はあらかじめA子の金品を強取する意思で同女方に入ったのではなく,被告人が同女の金品を領得しようという意思を生じたのは姦淫行為を断念した時点のことであるというのである。 2 まず,関係証拠によると,以下の諸事情を認めることができる。 (1) 前記認定のとおり,被告人は,平成12年10月19日ころA子を初めて見かけて,同女の家までついて行き,屋内に勝手に入り込むという行動に出て以来,同女に対して強い関心を持ち,同年11月19日未明には強姦目的で同女方に侵入して強姦 成12年10月19日ころA子を初めて見かけて,同女の家までついて行き,屋内に勝手に入り込むという行動に出て以来,同女に対して強い関心を持ち,同年11月19日未明には強姦目的で同女方に侵入して強姦を遂げようとしたが,前記の経緯で未遂に終わったという判示第2の犯行を犯した。さらに,被告人は,同月30日ころにも,また同女方に入り込み,同女が不在であったため性的な欲望を遂げることはできなかったが,その預金通帳等を盗み出し,その口座に約14万円の預金があるのを知って,その預金を引き出そうと考えたものの,印鑑がなかったため断念したということもあった。 (2) 同年12月15日夜,被告人は,「Z」で遊興した後,所持金が200円くらいしかなくなり,たまたま見かけた女性を相手にひったくりをしようとしたが,それも成功せず,結局,そのまま歩いて自宅に帰ろうとした。しかし,被告人は,その帰宅途中にまたA子のことを思い出して,同女方に赴き,玄関が施錠されていた上,便所の高窓にも格子が設けられて侵入できないようにされていたのを見て,判示第4の日時ころ,折から所持していた携帯電話を玄関引き戸のガラスにたたきつけてガラスを割った。そのとき大きな音がしたので,被告人は,いったんその場を離れて様子をうかがったが,だれも気付いた様子がなかったので,また玄関に戻り,ガラスの割れた部分から手を差し入れて玄関のかぎを開け,屋内に侵入して,2階の和室に行った。 (3) 被告人が2階の和室に行くと,A子は室内で寝入っていたが,そのうち目を覚まし,被告人を認めて,驚いた様子で,「あれーっ,何やってんの。玄関のかぎ開いてた。」と聞き,被告人がかぎは開いていたとうそを言うと,「私ってだめね。」と言ったが,同女はまだ寝ぼけた様子で,大きな声を出したり騒いだりする様子はなかった。 ( ,何やってんの。玄関のかぎ開いてた。」と聞き,被告人がかぎは開いていたとうそを言うと,「私ってだめね。」と言ったが,同女はまだ寝ぼけた様子で,大きな声を出したり騒いだりする様子はなかった。 (4) すると,被告人は,室内にタオルがあるのを認めてそれをつかみ取り,A子の両腕を持ち上げるようにして同女の体を少し移動させた上,仰向けに寝ている同女の体の上に馬乗りになりながら,四つ折りにしたタオルを同女の首の下に通して,同女の首を絞めようとした。それを知ったA子は,「それだけはやめ…」と言ったが,被告人は,それにもかまわず,タオルの両端を両手で持ちながら,同女の首の前で交差させるなどして約5分間にわたり力を込めて絞め続けた。A子は,絞められている間,顔色がだんだん青くなり,口や鼻から出血し,口が半開きになって舌の先が出てくるなどの状態になって,結局動かなくなり,そのころ,頸部圧迫により窒息死するに至った。 (5) 被告人は,A子が動かなくなると,同女のスカートをまくり上げ,パンティを下ろすなどして,同女を姦淫しようとしたが,同女の顔の出血した状態などを見るうち,陰茎が勃起しなくなって姦淫を遂げることはできなかった。 (6) 被告人は,姦淫をあきらめると,それに引き続き,金品を捜して室内を物色し,バッグの中から判示の現金やキャッシュカード,クレジットカードの入った財布を取り上げ,また携帯電話も発見してこれも取り上げるなどした上,同女方から逃走した。 以上の(1)から(6)までの各事実は,被告人自身の供述の関係部分を含む関係証拠によって十分認定することができる(被告人の公判供述も,判示第2の強姦が未遂に終わった事情に関する部分を除き,おおむね以上の(1)から(6)までの認定に沿うものということができる。)。 3(1) 次に,判示第4の することができる(被告人の公判供述も,判示第2の強姦が未遂に終わった事情に関する部分を除き,おおむね以上の(1)から(6)までの認定に沿うものということができる。)。 3(1) 次に,判示第4の犯行に係る被告人の犯意の内容に関する被告人の捜査段階供述についてみると,その概要は,次のとおりである。 私は,帰宅する途中,またA子のことを思い出し,同女を強姦して金目の物を奪い取ろうと考えて,同女の家に行き,玄関の引き戸のガラスを割ってかぎを開け,家の中に入ったが,そのとき同女を殺そうと考えた。11月上旬ころの約束を破って再び強姦するのだから(判示第2の事件の際に,被告人がA子方を去るに当たり,A子は,被告人に対し,被告人がこのまま同女方から出て行けば,自分は警察にも届けない旨を言ってくれていたのに,また強姦をしに行ったら,被告人は同女との約束を破ることになる,との意),A子を生かしておいては今度こそ同女が警察に届け出ると思った。そうしたら,私は,かつて警察に指紋を採られたことがあり,また以前A子方に入ったときも今回も素手だったので,指紋から私が犯人だと分かってしまうと思った。それに,私は,前にA子に顔をはっきりと見られていた。そこで,この際,A子を殺して,それからすぐに強姦し,更に金目の物を奪い取ろうと考えた。 殺す方法は漠然とA子の首を絞めて殺すことが頭にあったが,それ以上に具体的なことを考えたかは思い出せない。A子方の2階の部屋に入り,横たわって寝ていたA子の頭の上をそっと通り,同女の体のすぐそばにしゃがみ込んだ。私は,しゃがんだ状態で,寝ているA子の顔を眺めていた。そして,首を絞めてA子を殺そうかなどとその殺し方を考えていた。私の考えがまとまらないうちに,A子が私の気配に気づいたのか,目を開けた。そして,前記2(3)のよ 状態で,寝ているA子の顔を眺めていた。そして,首を絞めてA子を殺そうかなどとその殺し方を考えていた。私の考えがまとまらないうちに,A子が私の気配に気づいたのか,目を開けた。そして,前記2(3)のようなやり取りを同女との間で交わした。その間,A子は,大きな声を出して騒いだり,起き上がって逃げ出したりする素振りは見せなかったが,私は,同女が目を覚ましたことから,早く同女を殺して強姦し,金目の物を奪おうと考えた。その瞬間,A子の頭の斜め上の方に位置する物入れの開き戸が約10センチ開いていて,その物入れの中の上段から,タオルがぶら下がった状態で出ているのが目に入った。私は,とっさにそのタオルでA子の首を絞めて殺そうと考え,立ち上がってそのタオルをつかんだ。そして,私は,前記2(4)のようにして,A子の体の上に馬乗りになり,同女の首をタオルで絞めた。A子は,首の後ろにタオルを通されたとき,「それだけはやめ…」と声を出したが,私は,そのときはとにかく早く殺さなければならないと考えていたので,同女の首を縛り上げた。私がこのときにした縛り方は,私がとびをやっていたとき,建築用の外壁の足場を組む際に,安全用のネットを足場のパイプに固定するのに,ネットの穴にビニールひもを通して結びつける縛り方だった。私がさっとそのタオルの縛り方で首を絞めると,A子は,声も出さず,ただのどからヒューヒューという音を出した。私は,A子の首を完全に絞めたと思った。後は,無茶苦茶に力を入れてギューギューと絞めなくても,ある程度力を入れてギュッとタオルの両端を引っ張り続ければ,A子が全く息ができない状態が続き,しばらくすれば窒息死すると思った。それで,私は,しばらくA子の首に巻き付けたタオルの両端を左右両手でそれぞれギュッと引っ張り続けた。そうすると,A子は,ピクリとも動かな く息ができない状態が続き,しばらくすれば窒息死すると思った。それで,私は,しばらくA子の首に巻き付けたタオルの両端を左右両手でそれぞれギュッと引っ張り続けた。そうすると,A子は,ピクリとも動かないで,何の音も聞こえない状態になり,私は,同女が死んだと思い,タオルから手を離した。そして,前記2(5)のとおり,同女を姦淫しようとしたものの,青くなって口や鼻から血が出ているA子の顔を見ると,気持ちが悪く,また怖くなり,性器が勃起しなかった。私は,A子を殺してからすぐ強姦すれば生きている人を強姦するのと違わないだろうと考えていたのだが,実際に同女の様子を見ると,気持ちが悪くて,本当に驚いた。A子を強姦することをあきらめて,次に,最初から考えていたとおり,A子から金目の物を奪い取ることにして,室内を物色した。私は,とにかく財布を捜した。というのは,11月終わりころ,A子の家の中に侵入して預金通帳とパスポートを盗み出し,それらを公園で見たが,そのとき,同女の銀行口座に14万円くらいの残高があることが分かっていたので,キャッシュカードを手に入れたら,その金を引き出せることから,キャッシュカードが入っていると思われる財布を捜したのである。以前パスポートを盗んだ際に,A子の誕生日も知ったので,暗証番号もおそらく誕生日の日付けであろうと考え,キャッシュカードで金を下ろせると考えた。こうして,前記2(6)のとおり,A子方の財布を奪い取り,携帯電話も奪い取った(乙5,6等)。 (2) 被告人の前記捜査段階供述は,弁護人が争う被告人の殺意及び金品強取の意思の点を含め,内容が具体的かつ明確,合理的で,前記2で認定した本件の状況等とも基本的によく符合し,これらの状況に照らしても自然で無理がない。 もっとも,被告人は,公判では,A子の頸部をタオルで絞めた 含め,内容が具体的かつ明確,合理的で,前記2で認定した本件の状況等とも基本的によく符合し,これらの状況に照らしても自然で無理がない。 もっとも,被告人は,公判では,A子の頸部をタオルで絞めたのは黙らせるためとっさにしたことで,殺害しようとしてしたことではないし,同女がそのために死亡するとも思わなかったとか,あらかじめ金品を取ろうと思っていたのではなく,強姦をあきらめた後で同女の金品を取ろうという意思を生じたなど,前記1の弁護人の主張に沿う内容の供述をしている。しかし,被告人のこの公判供述は,内容があいまいかつ不合理,不自然で,たやすく信用し難い点が多い。例えば,被告人は,A子の頸部を絞めている際も同女が死ぬとは思わなかったなどとも供述するのであるが,被告人の絞頸行為が極めて強度のもので,それ自体同女の生命を奪うに足りるものであったことは,被告人の公判供述に照らしても明らかであるのに,同女が死ぬなどとは思わなかったというその供述内容は,余りにも不自然でおよそ首肯するに足りるものではない。このように,被告人の公判供述は,不自然,不合理な点が多く,しかも,被告人は,自己が捜査段階では前記(1)のような供述をした理由について結局首肯できる説明ができていないこともまた明らかである。このように,被告人の上記公判供述は,(1)の捜査段階供述と対比して,その信用性が低く,上記捜査段階供述の信用性を左右するような証拠価値を持たないといわざるを得ない。 また,その他関係証拠を精査しても,被告人の前記捜査段階供述の信用性について疑いをいれるような事情があるとは認められない。 若干補足すると,弁護人は,被告人には死体に性的関心を持つような性癖はなかったから,A子を殺害してから姦淫しようと考えたという被告人の捜査段階供述の内容は極めて不自 があるとは認められない。 若干補足すると,弁護人は,被告人には死体に性的関心を持つような性癖はなかったから,A子を殺害してから姦淫しようと考えたという被告人の捜査段階供述の内容は極めて不自然であるという趣旨をもいうが,A子に対する殺害行為を終えてから同女を姦淫しようとした被告人の本件における現実の行動内容に照らしても,被告人の上記供述内容が不自然で信用し難いとはいえない。また,弁護人は,被告人がA子に対する殺意を有していたのなら,殺害の道具を準備して行かなかったのは不自然であるともいう。しかし,弁護人のこの主張は,A子方に赴いてから殺意を生じたという被告人の捜査段階供述の内容を必ずしも正確に理解していないきらいがある上,1人暮らしの女性を襲って絞頸の手段によって殺害しようと考えた者があらかじめ絞頸の手段を準備して行かなかったとしても,弁護人がいうほど不自然であるとも,あり得ないことであるとも,いうことはできない。その他,弁護人の主張にかんがみ慎重に検討しても,被告人の捜査段階供述の内容に特段の疑問をいれる点があるとは認められない。 結局,前記(1)の被告人の捜査段階供述は,その信用性を十分肯定できることが明らかである。 4 以上の検討結果に照らすと,判示第4のとおり,被告人は,A子を強姦するとともにその金品を強取する意思で,A子方に赴き,同女方に侵入したが,その際同女に対する殺意を生じ,同女を殺害した上で同女を姦淫してその金品を奪う意思で,判示のとおりの強盗殺人,強盗強姦未遂の犯行に及んだという事実を優に認定することができるから,弁護人の前記1の主張は採用することができない。 (量刑の理由)本件は,被告人が平成12年11月8日から同年12月16日までの間に敢行した一連の犯行,すなわち,C子に対する窃盗,傷害(判示第 から,弁護人の前記1の主張は採用することができない。 (量刑の理由)本件は,被告人が平成12年11月8日から同年12月16日までの間に敢行した一連の犯行,すなわち,C子に対する窃盗,傷害(判示第1),A子に対する住居侵入,強姦未遂(判示第2),D子に対する強姦未遂(判示第3)と,A子に対する住居侵入,強盗殺人,強盗強姦未遂(判示第4)とから成る事案である。 本件の量刑に当たり最も重要な位置を占めるA子に対する各犯行の内容は,既に詳述したとおりである。すなわち,被告人は,かねてキャバクラに頻繁に通ったり,町中で見かけた女性の家までついて行っては,交際を求める手紙を送るなどの行動を繰り返していたところ,平成12年10月19日ころの夜,A子をたまたま見かけて同女が気に入り,同女の家までついて行って,中に入り込むことまでし,同女に懇願されてその場はいったん立ち去ったものの,同女のことが忘れられず,また同女方に侵入して同女を強姦しようと企てて,同年11月9日午前2時ころ,同女方の便所高窓の引き戸を外して侵入し,同女を押し倒して馬乗りになり,その着衣をはぎ取って全裸にするなどの暴行を加えたが,同女に抵抗されて,前記の経緯で強姦は未遂に終わった(判示第2の住居侵入,強姦未遂)。被告人は,強姦が未遂に終わり,A子からも,警察にもだれにも言わないから出て行ってくれと言われて同女方を立ち去ったものの,その後も同女のことが忘れられず,同女に対する強姦をまた試みようと考えるとともに,キャバクラへ行く遊興費等を手に入れるため同女から金品を奪い取ろうとも考え,同月30日ころにまたも同女方に入り込んだところ,A子は在宅していなかったが,同女の居室から預金通帳やパスポートを盗み取ったということもあった(もっとも,被告人は,印鑑がなければ通帳を使っても預金を引き出 0日ころにまたも同女方に入り込んだところ,A子は在宅していなかったが,同女の居室から預金通帳やパスポートを盗み取ったということもあった(もっとも,被告人は,印鑑がなければ通帳を使っても預金を引き出すことができないと知り,その後また同女方に入って,通帳とパスポートを戻しておいた。)。そして,被告人は,同年12月15日夜,行きつけのキャバクラで遊興した後,帰路に就いたが,途中でまたA子のことを思い出し,今度こそは同女を強姦してその金品を強取しようと考え,同女方に赴き,玄関が施錠され,判示第2の犯行の際の侵入経路である便所の高窓にも格子が設けられて侵入できなかったことから,翌16日午前1時30分ころ,携帯電話を玄関引き戸のガラスにたたきつけてガラスを割り,そこから手を差し入れ,かぎを開けて,屋内に侵入した。ところが,被告人は,自分がまたも強姦しに来たことが分かれば,A子は今度は警察に届け出るだろうし,そのときは指紋を照合されるなどして自分が犯人であることが分かってしまうだろうなどと考えるうち,この際同女を殺害し,その上で同女を姦淫して金品を強取しようと決意するに至り,2階の和室で就寝中のA子が被告人の様子に気付いたためか目を覚ますと,その場にあったタオルを同女の首に巻き付け,同女が「それだけはやめ…」と懇願するのもかまわず,力を込めて首を絞めつけ,その場で同女を窒息死するに至らせた。さらに,被告人は,その場で同女の下着を下げるなどして同女を姦淫しようとしたものの,首を絞められて死亡した同女の様子を見て気持ちが悪くなって性器が勃起しなくなり,強姦は未遂に終わったが,引き続き室内を物色し,同女の携帯電話及び現金約1500円,キャッシュカード,クレジットカード在中の財布を強取したものである(判示第4の住居侵入,強盗殺人,強盗強姦未遂)。 こ は未遂に終わったが,引き続き室内を物色し,同女の携帯電話及び現金約1500円,キャッシュカード,クレジットカード在中の財布を強取したものである(判示第4の住居侵入,強盗殺人,強盗強姦未遂)。 これら各犯行の罪質はいずれも悪質であり,殊に判示第4の犯行の罪質が誠に凶悪で重大であることはいうまでもない。 また,これらの各犯行は,被告人がたまたま見かけたA子によこしまな欲望を抱き,深夜同女の住居に侵入した上,その欲望を遂げようとしたというもので,動機が誠に悪質である。殊に判示第4の犯行は,被告人が,判示第2の強姦が未遂に終わった後も,なおも執ようにA子をつけねらった挙げ句,強姦と金品強取の意図で深夜同女方の玄関ガラスを毀して屋内に侵入し,その際,あろうことか自己の犯行の発覚の防止等のため同女を殺害しようと決意して,その実行に及んだというものであって,自己の性欲や金銭欲の実現のために他人の生命さえ奪うこともためらわないというその非情さには,人を慄然とさせるに十分なものがある。 各犯行の態様をみても,殊に判示第4の犯行は,被告人が,上記経緯で深夜A子方自宅に侵入した上,就寝中の同女が目を覚ますと,その首にタオルを巻き付け,同女が被告人の意図を悟って最後までは言えないまま必死に「それだけはやめ…」と懇願するのもかまわず,力強くその首を絞め続け,ついに同女を絶命するに至らせ,更に引き続き同女の下着を下ろして姦淫しようとするなどの陵辱行為を働き,また,その金品を奪い取ったというものであって,誠に冷酷残虐で,その悪質さは言葉に尽くし難い。判示第2の犯行も,深夜A子方に侵入した上,いきなり前記のような暴行を加えて強姦を遂げようとしたというものであって,態様は誠に放縦で,悪質というほかない。 これらの各犯行の結果,A子は,判示第2の住居侵入,強姦未遂の 夜A子方に侵入した上,いきなり前記のような暴行を加えて強姦を遂げようとしたというものであって,態様は誠に放縦で,悪質というほかない。 これらの各犯行の結果,A子は,判示第2の住居侵入,強姦未遂の被害にあった上,ついには判示第4の犯行により,自宅で就寝中に上記態様でいきなり首を絞められ,その生命さえ奪われるに至ったものであって,その結果が誠に重大であることもまたいうまでもない。A子は,若年性糖尿病の持病を抱えながらも,会社員として働き,本件当時いまだ26歳で今後の人生にも多くの可能性があったのに,前記のような経緯で就寝中被告人に突然襲われ,首を絞められて窒息死させられ,その後その身体を陵辱する行為にまで及ばれたのであって,その苦痛と無念の気持ちには察するに余りあるものがあるし,遺族や親しい人たちが本件により被った精神的衝撃にも誠に大きなものがあったとうかがえる。A子の実父のBは,同女を失った衝撃について述べるとともに,被告人については極刑を希望すると述べているところ,その心情ももとより十分に理解することができる。なお,弁護人は,A子が判示第2の犯行の被害を受けたことを警察に届け出ていれば判示第4の犯行は防げたと考えられるのに,そうしなかった点で同女にも落ち度があったという趣旨を主張する。しかし,A子は,判示第4の犯行に至るまでも,自己が受けた被害について,Bや知人に相談し,玄関に鎌錠を取り付けたり,便所高窓の侵入口をふさぐなどの対処をし,また,平成12年11月30日ころの窃盗被害については,(もとより,その犯人等に関する事情はよく分からないまま,)警察に届け出るなどのこともしていたと認められるのであって,玄関のガラスをたたき割り,かぎを外してまで同女方に入った判示第4の被告人の侵入態様等にも照らすとき,弁護人指摘の点を同女の落ち度 まま,)警察に届け出るなどのこともしていたと認められるのであって,玄関のガラスをたたき割り,かぎを外してまで同女方に入った判示第4の被告人の侵入態様等にも照らすとき,弁護人指摘の点を同女の落ち度として重視するのは相当ではないというべきである。 なお,被告人は,判示第4の犯行によりキャッシュカード等を強取し,以前A子の預金通帳を盗んだ際に同女の口座に約14万円の残高があることを知っていたことから,このキャッシュカードを使って預金を引き下ろそうと考え,成功はしなかったものの犯行の翌朝早速金融機関に行って,預金の引き下ろしを試みることなどもしているのであって,このように犯行後の事情にもまた甚だ悪質なところがある。また,本件が社会に与えた不安感やその他の影響などにも軽視し難いものがあったとうかがえる。 次に,判示第1の犯行についてみると,この犯行は,要するに,被告人がキャバクラで所持金を使い果たし,再度キャバクラで遊興するための金を得るため,通行人を相手にひったくりをしようと企て,たまたま見かけたC子(当時69歳)が高齢で足も不自由なように見えたことから,夜間人気のない路上を1人で歩行中の同女にいきなり近づいて手提げ袋のひもを力任せに引っ張ってひったくり,その際同女を転倒させて加療約2箇月を要する傷害を負わせたというものである。動機に酌む点がなく,態様も粗暴,危険で,金品を失った上に上記のような傷害を被ったC子の被害は大きく,その被害感情にもまた大きなものがあることがうかがえる。 また,判示第3の犯行は,被告人が,深夜女子高校生のD子(当時16歳)が路上を歩いているのをたまたま認めて,同女を強姦しようという気を起こし,同女の後をつけた上,人気のない路上で同女に駆け寄って,いきなり近くの空き地に引きずり込み,仰向けに押し倒し馬乗りになるな )が路上を歩いているのをたまたま認めて,同女を強姦しようという気を起こし,同女の後をつけた上,人気のない路上で同女に駆け寄って,いきなり近くの空き地に引きずり込み,仰向けに押し倒し馬乗りになるなどして姦淫しようとしたが,抵抗されて目的を遂げなかったというものであって,これまた被告人がその性的欲望について抑制が乏しいことを端的に示す犯行であることが明らかであり,動機にも酌む点がないし,態様も誠に放縦で粗暴かつ悪質である。本件によってD子が被った衝撃に大きなものがあったこともまた明らかなところである。なお,弁護人は,D子及びその両親は現段階では被告人を宥恕していると主張するが,弁護人指摘に係るD子の両親名義の書面の内容に照らしても,宥恕の意思が表されているとまでみるのは相当ではない。 さらに,判示第1から第4までの全犯行を通じ,(被告人の実父が苦しい家計の中から被告人のため80万円を支出して贖罪寄附をしたという事情はうかがえるが,)損害賠償等の措置は講じられていない。また,被告人は,前記「弁護人の主張に対する判断」の項でも指摘したように,公判で,犯行に及んだ際の自己の意思の内容などについて不合理で容易に首肯できない弁解に固執しているところがあるなど,本件で自己が行った行為に正面から向き合い,真しに反省しようという気持ちになっているのか,疑問をいれる余地があることも決して否定することができない。 以上の諸事情に照らすとき,本件は犯情が誠に重大,悪質で,自己の性的,金銭的欲望の赴くまま他人の人格や生命さえも軽視してはばからない被告人の反社会的性向には顕著なものがあり,被告人の刑事責任は重大というほかはないのであって,被告人を死刑に処すべきとする検察官の主張にも傾聴に値するところがある。 ところで,死刑選択の許される基準としては,最高裁第 向には顕著なものがあり,被告人の刑事責任は重大というほかはないのであって,被告人を死刑に処すべきとする検察官の主張にも傾聴に値するところがある。 ところで,死刑選択の許される基準としては,最高裁第二小法廷昭和58年7月8日判決・刑集37巻6号609頁が,「死刑制度を存置する現行法制の下では,犯行の罪質,動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には,死刑の選択も許されるものといわなければならない。」と判示しているとおりである(弁護人は,死刑という刑罰自体が残虐な刑罰を禁ずる憲法の規定に違反すると主張するが,この主張は理由がなく,採用することができない。最高裁大法廷昭和23年3月12日判決・刑集2巻3号191頁等をも参照)。 この観点に立って更に検討すると,本件,殊に判示第4の犯行は,その罪質,動機,態様が甚だ悪質で,A子の生命まで奪ったその結果もまた重大であり,遺族の被害感情も峻烈で,被告人の犯行後の情状等にも芳しくないところがあるなどの点は,既に詳細に説示したとおりである。 他方,本件は殺害された被害者が1名の事案であるという点は,もとよりこれを過大視することはできないとはいえ,死刑選択の当否という点では,一定の考慮を要する事情であることは否定できないところである。また,判示第4の犯行は,前記のようなその経緯,態様等にかんがみ,場当たり的で衝動的な犯行にとどまるということが到底できないことは明らかであるが,他面,被害者の殺害までをあらかじめ意図して,計画的に殺害に及んだという類型の犯行とは異な その経緯,態様等にかんがみ,場当たり的で衝動的な犯行にとどまるということが到底できないことは明らかであるが,他面,被害者の殺害までをあらかじめ意図して,計画的に殺害に及んだという類型の犯行とは異なる面があり,この点はその限りで被告人のため考慮する余地があると考えられる。また,被告人は,前記のようなその生活歴等に照らし,これまで通常の社会生活を営んできたなどとはおよそいうことができないとはいえ,少年時に家裁で不処分になった経歴があったことなどはうかがえるものの,29歳の犯行時に至るまで,前科がなく過ごしてきたという事情も認められる。この点に,被告人の成育歴や家庭環境等に種々問題があったことなどをも併せてみると,被告人は,これまで前記のようなその問題点について適切な矯正教育等を受ける機会がないまま,その反社会的性向をつのらせてきたといった事情があることもまた必ずしも否定することはできない。これに加え,被告人が真に自己の行為に向き合って本件を真しに反省しているか疑問とすべき点もあることは前記のとおりではあるが,被告人が,自己のよこしまな欲望のため,A子の生命を奪うことになったほか,他の被害者らにも大きな被害を与えたことを被告人なりに自覚し,また,判示第4の犯行について逮捕勾留された後,その他の犯罪についても進んで供述してきたといった事情もうかがうことができる(ただし,弁護人は,判示第1,第3の各事件について被告人に自首が成立すると主張するが,被告人の供述等の関係証拠によると,被告人は,余罪の嫌疑を持った捜査官の取調べに応じ,これを契機として上記各事件についても供述するに至ったという事情が認められるから,この点を自首に当たるとまで評価することはできない。)。また,そうすると,被告人の反社会的性向には既に誠に高度のものがあるとはいえ,検察官 各事件についても供述するに至ったという事情が認められるから,この点を自首に当たるとまで評価することはできない。)。また,そうすると,被告人の反社会的性向には既に誠に高度のものがあるとはいえ,検察官が主張するように,被告人についてはもはや改善更生の余地は見いだせず,その矯正は不可能であるとまでいうことには,いささか疑問とする余地があることも否定することはできない。 そうすると,被告人の罪責は誠に重大ではあるが,上記事情を含む諸般の事情及び近年の我が国における同種事犯に対する量刑の事情をも併せ考慮した結果,被告人に対し極刑を科することが誠にやむを得ない場合であるとまでは認められない。 よって,被告人には無期懲役刑を選択し,自己の犯した罪の重さを改めて自覚させつつ,終生被害者A子の冥福を祈るとともに,被害者らに対する贖罪の日々を送らせるのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年9月4日東京地方裁判所刑事第11部裁判長裁判官木口信之裁判官幅田勝行裁判官北村治樹
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