判決平成14年5月17日神戸地方裁判所平成13年(わ)第760号恐喝,恐喝未遂被告事件 主文 被告人を懲役1年8月に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 Aと共謀の上,Bから金員を喝取しようと企て,平成13年5月21日午後5時30分ころから同日午後7時ころまでの間,神戸市C区D町a丁目b番c号所在の喫茶店「E」店内において,同人(当時21歳)に対し,こもごも,「お前をかわいがってやったのに嘘ばっかりつくし,わしを裏切るし。今まで世話したった分を清算しろ。70万円や。」,「きっちりと払うと約束するまで帰さん。お前が払う気ないんやったら,知り合いのヤクザ呼んでお前を預けて金にする。」,「お前の家も店も分かっとんや。警察にたれ込んでもあかんぞ。ここに来る前に知り合いのヤクザに言うて来てるんや。俺らがパクられても,そのヤクザがお前を詰めることになっとんや。」などと語気鋭く申し向けて金員の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の生命,身体にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,その旨同人を畏怖させ,よって,同年6月6日午前8時40分ころ,同区F町d丁目e番f号Gビル東館2階所在の喫茶店「H」店内において,同人から上記70万円の一部として現金7万円の交付を受けてこれを喝取した第2 Iと共謀の上,Bから金員を喝取しようと企て,同月21日午前1時10分ころ,同区Jg丁目h番i号Kビル前付近路上において,呼び出した同人(当時21歳)を普通乗用自動車に乗車させた上,そのころから同日午前3時30分ころまでの間,同所から兵庫県加古川市Lj丁目k番地のl所在の有限会社「M」に向け ビル前付近路上において,呼び出した同人(当時21歳)を普通乗用自動車に乗車させた上,そのころから同日午前3時30分ころまでの間,同所から兵庫県加古川市Lj丁目k番地のl所在の有限会社「M」に向けて走行中の上記普通乗用自動車内及び上記「M」事務所内において,被告人がBに対し,「俺,お前に金貸しとるわな。お前,俺が今にっちもさっちもいかんの知っとるやろ。」などと,IがBに対し,暴力団組員を装いながら,「お前,Nに金借りとんやろ。ちゃんとせいよ。」,「ここに大きい池があるんや。人沈めるんやったらここやで。20年にいっぺんくらいしか掃除せえへんから,見つかりにくいぞ。」,「お前が借りた金が70万円,月イチの利息がついて月7万円。半年経っているので42万円。足して112万円や。わしも動いとるし,端数切り上げて120万円や。とりあえず,今日の昼までにまず50万円つけろ。」などと,それぞれ語気鋭く申し向けて金員の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の生命,身体にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,その旨同人を畏怖させ,更に同人と交際中のO(当時24歳)から上記50万円を喝取しようと企て,同日午前3時40分ころ,同県明石市P町Qm番地のn所在のコンビニエンスストア「R」S店前に同女を呼び出した上,Bから上記のようなそれまでの経緯を聞かされたOに対し,そのころから同日午前4時ころまでの間,同店駐車場に駐車中の上記普通乗用自動車内において,こもごも「払ってもらわなあかんねん。これ払えんかったら,こいつ1年くらい船に乗ってもらうで。」などと語気鋭く申し向けて金員の交付を要求し,もしその要求に応じなければBの生命,身体にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,その旨Oを畏怖させ,B及びOから金員を喝取しようとしたが,同女 語気鋭く申し向けて金員の交付を要求し,もしその要求に応じなければBの生命,身体にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,その旨Oを畏怖させ,B及びOから金員を喝取しようとしたが,同女らが警察官に被害申告したため,その目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)(省略)(補足説明)弁護人は,判示第2の各事実のうちOに対する恐喝未遂の点について,被告人にはOから金員を恐喝する故意がなく,恐喝行為もなかったから,恐喝未遂罪は成立しない旨主張する。 しかしながら,関係各証拠によれば,被告人及び共犯者のIは,判示第2のとおり,Bに対し脅迫を加えて金員を喝取しようとしたものの,Bが金員を持っていなかったことから,Bの同棲相手で風俗店で働いているOから金員を出させようと企て,Bをして,夜間,わざわざOを呼び出させた上,まずBからOに対して,被告人らから脅され金員を要求されている旨話をさせた後,被告人及びIの乗っている普通乗用自動車にB及びOを乗車させ,その車内において,被告人及びIにおいて,Oに対し,Bのために金員を用意して支払うよう求め,それができなければ,Bをマグロ漁船に売って1年間くらい働かせる旨の話をしたものであることが認められるのであって,被告人らのこのような行為は,Oに対して,被告人らの要求する金員を支払わなければ,Bの生命,身体にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,Oから金員を喝取しようとしたものにほかならないし,被告人にはその行為自体やその行為の意味についての認識に欠けるところはなかったのであるから,被告人らのこのような行為が恐喝行為に該当することも,また,被告人にOから金員を恐喝する故意のあったことは明らかである。 被告人の公判供述は,Bをマグロ漁船に売って1年間くらい働かせる旨の話を誰 ら,被告人らのこのような行為が恐喝行為に該当することも,また,被告人にOから金員を恐喝する故意のあったことは明らかである。 被告人の公判供述は,Bをマグロ漁船に売って1年間くらい働かせる旨の話を誰に対してしたのかはっきり覚えていないものの,その話をすることによってOを脅すつもりはなかったなどというのであるが,この話は,B自身に金員を用意させて恐喝することができなかったことから,Oに金員を用意させようとして,Oを交えて話をする中でなされたものであるところ,Bの同棲相手であるOにとって,Bをマグロ漁船に売って1年間くらい働かせる旨の話が脅迫になることは多言を要しないし,被告人らがOのいるところでこのような話をしたのは,Oに対して,Bがマグロ漁船に売られて働かされるのがいやなら,被告人らの要求に応じて金員を用意し支払うしかないと思わせようとしてのものであることにもまた疑いを容れないのであるから,被告人らがOから金員を恐喝するためにこの話をしたことに間違いはなく,被告人の公判供述がOを脅すつもりはなかったなどというところは,到底信用できないというべきである。 なお,弁護人は,Oに対する恐喝未遂罪が成立しない理由として他にも縷々主張しているが,そのいずれもにもOに対する恐喝未遂罪の成立を否定すべき理由となるものは存しない。 (累犯前科)被告人は,(1)平成7年11月10日神戸地方裁判所で道路交通法違反罪により懲役3月(3年間執行猶予,平成8年7月15日その猶予取消)に処せられ,平成9年2月8日その刑の執行を受け終わり,(2)平成8年6月17日岡山地方裁判所で同罪により懲役4月に処せられ,同年11月8日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は,検察事務官作成の前科調書(乙15)並びにその各裁判の調書判決謄本(乙16)及び判決書 方裁判所で同罪により懲役4月に処せられ,同年11月8日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は,検察事務官作成の前科調書(乙15)並びにその各裁判の調書判決謄本(乙16)及び判決書謄本(乙19)によって認められる。 (法令の適用)罰条判示第1の行為刑法60条,249条1項判示第2の各行為被害者ごとに刑法60条,250条,249条1項累犯加重刑法56条1項,57条(いずれも再犯の加重)併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重)宣告刑懲役1年8月未決勾留日数の算入刑法21条(180日)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,恐喝及び恐喝未遂の事案であるが,被告人は,金銭に窮するようになってきたことなどから,かつて親しくしていた被害者のBやその同棲相手のOから金員を恐喝しようとして,本件各犯行に及んだものであって,犯行の動機にあまり酌むべき点はないこと,被告人らは,奢った金を返せなどと理不尽な因縁を付けた上,暴力団が背後にいるように装いあるいは共犯者において暴力団組員であるかのように装って,判示第1及び第2のとおり執拗に脅迫を加え,金員を喝取しあるいは喝取しようとしたものであって,犯行の態様も悪質であること,被告人は,本件各犯行において,いずれも主導的役割を果たしており,特にIに対しては,本当に被害者のBに対して貸金があるかのように申し向けて,判示第2の共犯者に引き入れていることなどを考え併せると,被告人の刑事責任は重いというべきである。 してみると,判示第1の犯行による被害額は7万円であって,多額ではない上,その全額を共犯者のAにおいて取得 の共犯者に引き入れていることなどを考え併せると,被告人の刑事責任は重いというべきである。 してみると,判示第1の犯行による被害額は7万円であって,多額ではない上,その全額を共犯者のAにおいて取得していること,判示第2の各犯行はいずれも未遂に止まっていること,判示第1の犯行による被害は共犯者のAにおいて弁償しており,被告人においても後日その半額を負担していること,被告人も現在では反省し,今後の更生を誓っていること,被告人の義理の父親が被告人の更生のための協力を約束していること,被告人が本件で10か月以上の間身柄拘束を受けていること,現時点では前示の各累犯前科の執行終了から5年が経過していることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,本件は,被告人に対し,刑執行猶予の言渡しをなすべき情状の事案とは認められず,主文の実刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役2年6月)よって,主文とおり判決する。 平成14年5月17日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣
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