平成14(わ)1030 覚せい剤取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年1月9日 神戸地方裁判所
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判決文本文10,996 文字)

主文 被告人を懲役2年6月及び罰金50万円に処する。 未決勾留日数中350日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。 被告人から金8万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,営利の目的で,みだりに,第1 平成14年2月末ころ,大阪市a区bc丁目d番e号先路上に停車中の普通乗用自動車内において,Aに対し,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する結晶粉末約0.25グラムを代金2万円で譲り渡した第2 同年3月4日ころ,同区fg丁目h番i北側路上前に停車中の普通乗用自動車内において,前記Aに対し,前同様の覚せい剤約0.4グラムを代金2万円で譲り渡した第3 氏名不詳者と共謀の上,同月13日ころ,大阪市j区kl丁目付近路上に停車中の普通乗用自動車内において,Bに対し,前同様の覚せい剤約0.8グラムを代金4万円で譲り渡したものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(補足説明)第1 被告人は,捜査段階から一貫して判示各事実につき全く身に覚えがない旨主張し,弁護人は,判示各事実について,被告人がA及びBに対し,覚せい剤を譲渡した事実はないから,被告人は無罪である旨主張するところ,前掲関係各証拠によれば,判示各事実は優に認められるのであるが,以下その理由を補足して説明する。 第2 前提事実本件につき関係各証拠により認められる事実中,被告人及び弁護人において格別争っていない事実は,以下のとおりである。 1 被告人 あるが,以下その理由を補足して説明する。 第2 前提事実本件につき関係各証拠により認められる事実中,被告人及び弁護人において格別争っていない事実は,以下のとおりである。 1 被告人とA及びBの関係等当時,風俗店のヘルス嬢として稼動していたAは,平成14年1月22日ころ(以下,年号については,全て平成14年をいう。),客である被告人と出会ったが,その際,前記風俗店近くのホテルで,被告人において覚せい剤をアルミ箔の上にのせライターの火であぶり,その煙をAが吸引したこと,被告人とAは,同日以後,携帯電話や,携帯電話のEメール(以下,単に「メール」という。)で連絡を取り合うようになり,1月25日ころにも,m駅近くのホテルで会ったこと,3月9日,被告人は,Aの自宅マンションを訪れ,同所でAの前夫であるBと会ったが,被告人とBが話をしている間に,Aは,通りかかったバスに飛び乗り,そのまま三重県n市の実家に帰ってしまったこと,その際,Aは,実家に覚せい剤2袋を持ち帰ったが,同月19日,Aの父親はその覚せい剤を実家から持ち出して,勤務先の机の引き出しに保管したこと,被告人は,同月11日,Bから,Aがいなくなった迷惑料として15万円を受領し,さらに,Bを通じて,Aの父親から迷惑料を受領することになったこと,3月13日から同月16日までの間,Bは,被告人とともに被告人宅に滞在したが,16日未明,被告人宅から逃走し,同日午後4時50分,覚せい剤使用による錯乱状態に陥ったところを,警察官に逮捕されたこと,同日,被告人は,Aの実家近くのパチンコ店に赴き,同所でAから現金30万円を受領したこと,同月19日,Aは再び被告人と会い,被告人宅に立ち寄ったが,まもなく同所から逃走し,翌20日,父親とともに警察に出頭して,父親が勤務先に保管し チンコ店に赴き,同所でAから現金30万円を受領したこと,同月19日,Aは再び被告人と会い,被告人宅に立ち寄ったが,まもなく同所から逃走し,翌20日,父親とともに警察に出頭して,父親が勤務先に保管していた前記覚せい剤を任意提出したこと。 2 Bから被告人に対する金銭の支払い3月4日,被告人の通常郵便貯金口座に,Bから4万円が送金されたこと(検察官請求証拠番号20。以下,検に続く数字は,検察官請求証拠番号をいう),3月13日,Bは,被告人の自宅近くのローソンo店において,現金5万円を引き出したこと(検88)。 3 被告人とAの連絡状況等2月28日から3月29日にかけて,被告人とAとの間で頻繁に携帯電話やメールのやりとりがあるが,その内容中には,次のようなやりとりがあること(検42)。 ・3月3日「ほしいので,次行かれる時連絡下さい!今回の合わないというか駄目だから‥」(Aから被告人への送信メール),「どのくらい欲しいのかな。 友達は,連絡取れたの。」(被告人からAへの送信メール),「夕方までに,いくつか,教えてな。」(被告人からAへの送信メール),「ほしいのだけど私今,現金持ってなくて銀行のATMもう閉まってる?と思うのでまた現金ある時にお願いします!」(Aから被告人への送信メール),・3月6日「今,吸ってるらしいです。その子の口が堅いかを確認してから番号言います。以前一緒にいれてた元彼に聞いてみるって言ってました」(Aから被告人への送信メール),・3月8日「入れてなくて吸ってみたんですけど私には合わないのかも。ホテルで買ったまでは合ってたけど‥」(Aから被告人への送信メール),「こっちで,0.5だけ引いて来るから,それ入れてみな。」(被告人からAへの送信メール) んですけど私には合わないのかも。ホテルで買ったまでは合ってたけど‥」(Aから被告人への送信メール),「こっちで,0.5だけ引いて来るから,それ入れてみな。」(被告人からAへの送信メール)また,被告人は,4月5日,Cなる人物に「0.7。1万でいらんか?電話くれ。」とのメールを送信していること(検42)。 4 被告人宅の捜索差押状況5月23日,被告人方で,同所にあった鞄内等から,赤色キャップ付プラスチック製注射器1組,注射器のポリ袋1袋,割り箸ばさみ1組,ストロー片2本,電子はかり器1個,チャック付きポリ袋2袋,チャック付ポリ袋入り大麻草(約0.085グラム)等が押収され(検21,24,26),これらのうち,赤色キャップ付注射器1組,ストロー片2本,チャック付きポリ袋2袋から,覚せい剤が検出されたこと(検23)。 第3 A及びBの各供述の概要及びその信用性 1 Aの供述の概要Aの第4回及び第5回公判供述(以下「A供述」という。)の概要は,以下のとおりである。 1月22日,Aは,いわゆるファッションヘルス嬢として客である被告人とファッションホテルに赴き,ヘルスのサービス後,被告人が覚せい剤を注射しているのを目撃したが,その際,被告人から覚せい剤の使用を勧められ,被告人においてたばこの銀紙の上に覚せい剤をのせ,ライターの火であぶり,発生した気体を丸めた紙で2,3回吸って,はじめて覚せい剤を使用した。その後,被告人から覚せい剤入りのパケ(小ビニール袋)を3,4個見せられ,覚せい剤約0.7グラムを1万5000円で購入した(1回目の購入)。購入した覚せい剤は,自宅で,あぶって煙を吸引する方法で何回か使用した。 1月25日深夜,m駅近くのホテルにおいて,被告人はAの面前で数十グラムの覚せい剤 0円で購入した(1回目の購入)。購入した覚せい剤は,自宅で,あぶって煙を吸引する方法で何回か使用した。 1月25日深夜,m駅近くのホテルにおいて,被告人はAの面前で数十グラムの覚せい剤を比較的大きなビニール袋から取り出し,斜めにカットしたストローで小さなビニール袋に小分けして電子はかり(被告人宅から押収された検90添付の写真番号1と同種のもの)で量り,割り箸でビニール袋を挟んでライターで加熱して封をし,4袋ないし7袋の小さなパケを作った。その後,被告人は,水に溶かした覚せい剤入りの注射器を2本を用意し,1本を自分の腕に使用し,もう1本をAに注射した。 2月下旬ころ(後記3回目の購入の1週間ほど前)の深夜,Aは,被告人から,覚せい剤を購入して欲しい,前払いでその代金2万円を欲しいと電話で依頼されてこれを承諾し,自宅マンションであるi前付近路上に停車中の被告人運転の普通乗用自動車内で,被告人に2万円を手渡したところ,約1時間後,Aは,覚せい剤を仕入れて戻ってきた被告人から,前記自動車内において,覚せい剤約0.25グラムの入ったパケを受け取った(2回目,判示第1事実)。Aは,この覚せい剤が糊のような臭いがしてあぶって吸引してみると頭が痛くなったとして,使用するのをやめ,2つの袋に分けて保管した。Aは,被告人から粗悪な覚せい剤を売りつけられたのではないかと疑い,新規の客に対してならば被告人が品質の良い覚せい剤を渡すのではないかと考え,3月3日,被告人に対し,勤務先のスナックの友人が覚せい剤を欲しがっている等の作り話をメールで送信した。 3月3日の夜,Aは,被告人から電話で覚せい剤の購入を勧められ,代金後払いで購入することとし,翌4日,前記i北側路上前に停車中の前記自動車内で,被告人から2つのパケを示され,そ 信した。 3月3日の夜,Aは,被告人から電話で覚せい剤の購入を勧められ,代金後払いで購入することとし,翌4日,前記i北側路上前に停車中の前記自動車内で,被告人から2つのパケを示され,そのうちの1つ(約0.8グラム)を選んで被告人から覚せい剤を購入した(3回目,判示第2事実)。Aは,被告人に指示されたとおり,その購入代金2万円及び次回の覚せい剤購入の前払代金として2万円(被告人から,次の覚せい剤が欲しければ前もって被告人の貯金口座に振り込むように言われたもの)の合計4万円を被告人に支払うこととし,Bに電話をかけ,4万円を被告人から指定された同人名義の郵便貯金口座に「D」名義で振り込むことを依頼した。この3回目に購入した覚せい剤も,2回目のそれと同様の臭いがしたため,Aは,この覚せい剤を2回目に購入した覚せい剤入りの2つの袋のいずれかに入れ,使用することなく保管した。 3月9日,Aは,自宅において,訪れた被告人から覚せい剤を2回注射され,体調が悪くなり,さらに注射されそうになって怖くなって自宅から逃げ出し,Bに助けを求めた。そして,かけつけたBが被告人と話をしている間に,通りかかったバスに飛び乗り,さらにタクシーを乗り継いで,病院に行き,その後,自宅から持ち出していた前記保管中の覚せい剤を携行して,実家に帰った。 3月16日,被告人がAが逃げ出したことを怒っている旨Bから聞いていたAは,迷惑料及び手切れ金として,あらかじめ父親から借りていた現金30万円を被告人に支払った。 3月19日,Aは,被告人と連絡をとり被告人宅に行ったが,被告人が怖くなって同所から逃げ出し,翌20日,父親と相談して,警察に出頭した。なお,その際同女が提出した尿から覚せい剤は検出されなかった。 2 Bの供述の概要 絡をとり被告人宅に行ったが,被告人が怖くなって同所から逃げ出し,翌20日,父親と相談して,警察に出頭した。なお,その際同女が提出した尿から覚せい剤は検出されなかった。 2 Bの供述の概要Bの第6回及び第7回公判供述(以下「B供述」という。)の概要は,以下のとおりである。 Bは,3月4日,突然,Aから電話でバッグを買うための代金を貸して欲しいと依頼され,これを承諾して,同女の指示に従って,被告人名義の郵便貯金口座に「D」名義で4万円を振込送金した。 Bは,3月9日午後2時半ころ,Aから電話で呼び出され同女宅に赴き,初めて被告人と出会って話をしたが,その面前でAがバスに飛び乗って姿を消したため,同月11日まで,被告人とともにAの自宅に止まってその帰りを待った。被告人は,同月11日,Aの居場所を突き止めようと,A宅の家捜しを始めて関係者の住所等を電子手帳に入力するなどし,同所で覚せい剤を注射して使用した後A宅を出ていったが,その間,Bは,被告人が,Aの実家にいるAやAと自分との間の子供に危害を加えないよう,被告人の覚せい剤使用を目撃したことを警察に話さないことを被告人に信用してもらうとの趣旨で,自らも覚せい剤を使用することとし,被告人に勧められるまま,同人から覚せい剤を注射してもらった。 その後,Bは,3月13日被告人と会ったが,その際,Aの父親に被告人のことなどを話した旨告げたところ,被告人は立腹し,Bを被告人の自宅まで連行し,同所に同月16日まで滞在することを余儀なくさせ,この間,被告人からAの父親に話した内容等を追及されたほか,被告人とともに覚せい剤を10回程度注射して使用した。Bは,このうち,最初の1,2回は被告人が持っていた覚せい剤を使用したが,同月13日ころ,被告人から覚せい剤の購 親に話した内容等を追及されたほか,被告人とともに覚せい剤を10回程度注射して使用した。Bは,このうち,最初の1,2回は被告人が持っていた覚せい剤を使用したが,同月13日ころ,被告人から覚せい剤の購入を勧められて,これを承諾し,被告人宅近くの前記ローソンo店で現金5万円を引き出して,そのうち4万円を被告人に支払った。すると,被告人は,そのまま自分が運転する自動車にBを乗せて大阪まで行き,JRp駅付近(判示第3の場所)において,いったんBを降車させ,その後同車に氏名不詳の男が乗り込んできた後再びBを乗車させ,茶封筒に入った注射器2本と約0.4グラム入りの覚せい剤2袋をBに渡し,もって,Bはこれらの覚せい剤を被告人らから譲り受け,そのうち1袋を,前記のとおり,被告人宅で使用した。被告人宅で覚せい剤を最後に使用したのは3月15日の夜ころであり,また,被告人宅に滞在中,被告人からパケの作り方を教わったが,同月16日未明,覚せい剤使用により幻覚症状を起こして被告人宅から逃走した後,同日逮捕されるに至った。 Bは,逮捕当初,Aの覚せい剤への関与を隠すため,覚せい剤はテレクラで知り合った女性から入手した旨の供述をし,5月22日,覚せい剤取締法違反の罪で執行猶予付の懲役刑の判決を受けたが控訴し,控訴審において,真実を話すことを決意し,被告人から覚せい剤を購入した旨供述するに至った(検111,112)。 3 信用性(1) A供述についてA供述のうち,Aが一方的に被告人を畏怖し,被告人から覚せい剤を無理矢理買わされていたように述べる点に関しては,Aと被告人のメールの頻繁なやりとりやその内容にかんがみると,その信用性には疑問があるといわざるを得ず,加えて,質問に対して的確に応答しないなどのAの供述態度や供述内容にかんが に述べる点に関しては,Aと被告人のメールの頻繁なやりとりやその内容にかんがみると,その信用性には疑問があるといわざるを得ず,加えて,質問に対して的確に応答しないなどのAの供述態度や供述内容にかんがみると,判示第1及び第2のとおり被告人から覚せい剤の譲渡を受けた旨のAの供述部分についても,十分な吟味を加えてその信用性の有無を慎重に判断する必要があるものというべきである。 そこで,検討するに,Aが覚せい剤を所持していた以上,Aが何者かから覚せい剤を入手していたことは疑いがないところ,前述のように,被告人とAの間で,覚せい剤の売買があったことが強く推認されるメールのやりとりがあったことが認められる上,1月25日にAがホテルで見かけたという電子はかりや,覚せい剤の小分け道具と同様の物が被告人宅から発見押収されていること,3月4日にAがBに依頼したと供述する4万円が現に被告人の郵便貯金口座に振り込まれていることなど,Aの供述は前記前提事実や客観的証拠とよく符合している。また,被告人とAのいずれが覚せい剤取引に積極的であったのかはともかくも,Aが被告人から覚せい剤を購入したとの点については,Aの供述は当初から一貫しており,その供述内容も具体的であり,その点に限っていえば,不自然な点は何ら認められない。 (2) B供述についてB供述については,Bが供述する金銭の引き出しと符合する客観的証拠が存在する(検88)など,前記前提事実や客観的証拠等の裏付けがある。また,前認定のとおり,Bは,この金銭を引き出した3月13日ころから同人が逮捕された同月16日までほとんどの間被告人と行動をともにしているところ,Bが被告人方から逃走した直後に逮捕され,その日に提出したBの尿から覚せい剤が検出されていることからすると,そのこ から同人が逮捕された同月16日までほとんどの間被告人と行動をともにしているところ,Bが被告人方から逃走した直後に逮捕され,その日に提出したBの尿から覚せい剤が検出されていることからすると,そのこと自体で,Bが覚せい剤を入手した相手が被告人であるとするB供述に相当な信用性が認められるというべきである。なお,Bは,前記のとおり,当初は被告人以外の者から覚せい剤を入手した旨供述していたものであって,覚せい剤の入手先について供述を変遷させてはいるが,Bは,その理由について,自分の子供の面倒を見てもらっているAが自己の供述により捕まるとまずいと考えたからであると供述するところ,この理由は,BやAの逮捕時期と符合するものであって,首肯しうるものであるし,そもそも,Bに虚偽供述をして被告人を陥れる理由は見当たらない。 (3) そして,AとBの供述は,大筋において符合している上,両名が逮捕されたことなどの事情にかんがみると,両名が口裏をあわせて虚偽供述に及んだ可能性は考えられないというべきである。 これらのことを総合勘案すると,A及びBの各供述中,少なくとも,被告人から覚せい剤をそれぞれ購入した旨,それぞれ押収された覚せい剤はそれぞれ譲り受けた覚せい剤の残量である旨のA及びBの各供述部分はこれを信用することができるというべきである。 弁護人は,AやBが被告人に金銭的に負担を強いられたため,虚偽供述をして被告人を陥れようとしている可能性がある旨主張するが,覚せい剤購入代金を除くと,Aが被告人に渡した金銭はA自身ではなくAの父親が出捐した30万円,Bが渡した金額は貯金していた15万円であって,自らも覚せい剤譲受罪に問われる危険を冒してまで被告人を陥れようと考えるであろうほどの金額,種類のものとは到底考えられない上,A 親が出捐した30万円,Bが渡した金額は貯金していた15万円であって,自らも覚せい剤譲受罪に問われる危険を冒してまで被告人を陥れようと考えるであろうほどの金額,種類のものとは到底考えられない上,AやBの供述中これら金銭を被告人に渡すこととなった理由について述べるところもそれ自体不自然とはいえない。弁護人のこの主張は理由がない。 第4 結論 1 以上のとおり,細部はともかくも,被告人から覚せい剤をそれぞれ購入した旨のA及びBの各供述部分の信用性は十分であり,このAやBの各供述その他の前掲関係各証拠によれば,被告人がA及びBに対し判示のとおり覚せい剤を各譲渡した事実は,これを認めるに十分である。 そして,被告人が無職無収入の身であって,覚せい剤を小分けするための道具である電子はかりを持っており,これを使用して現に覚せい剤を小分けしていたことや,判示のとおり,再三にわたり,AやBに覚せい剤の購入を勧めていたこと,被告人がCなる人物に対し「0.7。1万でいらんか?」とのメールを送信している事実を総合すれば,前記各譲渡が営利目的でなされたこともまた,優に認められるというべきである。 2 被告人の弁解について被告人は,Aに対して,ボールペンを注射器に見立てて注射の仕方を教えたり,覚せい剤の品定めをしたことは事実であるが,初対面のAやBに覚せい剤を売るわけがなく,Bから送金を受けた4万円は,Aに貸した電車代や,立て替えたホテル代を返済してもらったものである旨,自宅から押収された注射器や割り箸ばさみ,ストロー片はAから預かったもの,あるいは,Aが被告人宅で覚せい剤を使用した際置いていったものである,電子はかりは平成2年宣告の前科である覚せい剤取締法違反の事件の際に使用していたもの,あるいは,病院でもらった薬を量るなどするた あるいは,Aが被告人宅で覚せい剤を使用した際置いていったものである,電子はかりは平成2年宣告の前科である覚せい剤取締法違反の事件の際に使用していたもの,あるいは,病院でもらった薬を量るなどするため比較的最近買ったものである,チャック付ビニール袋は薬を入れるのに使用していたもの,あるいは,Aが忘れていったものである旨,Aとのメールのやりとりについては,Aの友人が覚せい剤を欲しがっていると聞いたときに,冗談でどのくらい欲しいのか聞いてみただけであり,自分でも意味がわからないものがある旨,Cなる人物に送ったメールについては,覚えていないとか,同人は,昔覚せい剤を使用していた友人であって,冗談で現在も覚せい剤を使用しているのか尋ねるメールを送っただけである旨種々弁解し,加えて,Aが覚せい剤を使用したことを父親に怒られないよう,同女の父親に対しては,被告人に責任がある如く話してもよいとBに言ったことがあるなどとも弁解する。 しかしながら,Aが警察署に出頭して覚せい剤を任意提出し,Aと被告人との交際がなくなった3月20日から2か月も後である5月23日に,被告人の自宅において,同所にあった鞄等から,覚せい剤の付着したパケや注射器,通常覚せい剤を小分けする道具として使用される電子はかり,ストロー片,割り箸ばさみなどが押収されていることや,被告人とAとの間でやりとりされた前記メールの内容に照らせば,被告人が覚せい剤を取り扱っていたことが強く推認できるところ,まず,4万円の送金を受けた理由に関する被告人の弁解については,これがBからの送金である点の理由を含め具体的裏付けが何もなく,また,Aに覚せい剤の使用方法を指導しただけであるとの前記弁解もそれ自体極めて不自然であるし,自宅からの押収物やメールの内容についての弁解に至っては,著しく不自然 理由を含め具体的裏付けが何もなく,また,Aに覚せい剤の使用方法を指導しただけであるとの前記弁解もそれ自体極めて不自然であるし,自宅からの押収物やメールの内容についての弁解に至っては,著しく不自然不合理である上,合理的な理由なく場当たり的に変遷しているのであって,結局,被告人の前記各弁解は到底信用できるものではなく,判示各犯罪事実認定につき合理的疑いを生じせしめるものではない。 3 以上のとおり,前掲関係各証拠によれば,判示各事実は優に認められるから,被告人及び弁護人の主張は理由がない。 (確定裁判)被告人は,平成14年9月5日神戸地方裁判所洲本支部で窃盗罪により懲役1年(4年間執行猶予)に処せられ,その裁判は同月20日確定したもので,この事実は検察事務官作成の前科調書(検察官請求証拠番号57)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1及び第2の各所為はいずれも覚せい剤取締法41条の2第2項,1項に,判示第3の所為は刑法60条,覚せい剤取締法41条の2第2項,1項にそれぞれ該当するところ,判示第1ないし第3の各罪につきいずれも情状により所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し,以上の各罪と前記確定裁判があった罪とは刑法45条後段により併合罪の関係にあるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし,なお,判示各罪もまた同法45条前段により併合罪の関係にあるから,懲役刑については同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第3の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をし,罰金刑については同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計し,その刑期及び金額の範囲内で,被告人を懲役2年6月及び罰金50万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中350日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することが より各罪所定の罰金の多額を合計し,その刑期及び金額の範囲内で,被告人を懲役2年6月及び罰金50万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中350日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,判示第1の犯行により被告人の取得した現金2万円,判示第2の犯行により被告人の取得した現金2万円及び判示第3の犯行により被告人の取得した現金4万円は,いずれも国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律11条1項1号の薬物犯罪収益に該当するが,既に費消して没収することができないので,同法13条1項前段によりその価格を被告人から追徴することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,営利目的で,知人女性及び同女の前夫に対し,3回にわたり,覚せい剤合計約1.45グラムを代金合計8万円で譲渡したという各覚せい剤取締法違反の事案である。 被告人が本件各犯行を否認しているため詳細は不明であるが,もとより,営利目的で覚せい剤を譲渡したその利欲的動機に酌量の余地はなく,覚せい剤の害悪をこのような形で社会に拡散させた行為は強い非難に値するというべきところ,被告人は,捜査段階から本件各犯行を一貫して否認し,当公判廷においても不合理な弁解を繰り返して恥じるところがないことなどに徴すると,被告人の刑事責任は相当に重いというべきであるが,Aに対する各覚せい剤譲渡については同女も積極的にこれを求めたものと認める余地があること,被告人には懲役前科は2犯あるもののいずれも執行猶予付き懲役刑であり,うち同種前科は1犯あるが,10年以 るが,Aに対する各覚せい剤譲渡については同女も積極的にこれを求めたものと認める余地があること,被告人には懲役前科は2犯あるもののいずれも執行猶予付き懲役刑であり,うち同種前科は1犯あるが,10年以上前のものであること,被告人には,老齢で介護を要する母親がいること,被告人の供述をみると,本件各犯行に関し後悔の念を有しているものと窺えることなど,被告人のためにしん酌すべき事情も認められるので,これらの事情に加え,本件が同時審判が可能であった前記確定裁判にかかる事件の余罪であって,本件により前記確定判決の懲役刑の執行猶予が取り消されることを量刑上最大限に考慮して,主文の刑に処するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 平成16年1月9日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官杉森研二 裁判官橋本一 裁判官沖敦子

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