上記の者に対する殺人被告事件について、当裁判所は、検察官星野英毅及び同林正章並びに国選弁護人中野雅文(主任)及び同米津義尚各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、自宅で認知症の妻の介護をしていたが、令和5年10月中旬頃から、めまい等の体調の悪化を感じ、この症状は治癒の見込みがないなどと考えるようになり、妻の介護を今後も続けていくことは難しく、妻を施設に預けることも経済的に難しいなどと将来を悲観して、無理心中を決意し、同年11月11日午後3時5分頃から同日午後3時49分頃までの間に、札幌市甲区(住所省略)の当時の被告人方において、妻であるA(当時89歳)に対し、殺意をもって、その頸部に紐を巻き付けて絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を絞頸による窒息により死亡させて殺害した。 なお、被告人は、犯行後の同月12日午前8時30分頃、110番通報し、上記犯行を申告して自首した。 (証拠の標目) 省略(法令の適用)罰条刑法199条刑種の選択有期懲役刑を選択法律上の減軽刑法42条1項、68条3号(自首)刑の全部執行猶予刑法25条1項訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由) 被告人は、苦しんで抵抗する被害者の様子を目の当たりにしながら、数分間にわたってその頸部を絞め続けており、犯行態様は強固な殺意に基づく悪質なものである。被害者の尊い命が失われたという結果はもとより重大で、信頼していた被告人の手にかかり、絶命するに至った被害者の肉体的・精神的苦痛 の頸部を絞め続けており、犯行態様は強固な殺意に基づく悪質なものである。被害者の尊い命が失われたという結果はもとより重大で、信頼していた被告人の手にかかり、絶命するに至った被害者の肉体的・精神的苦痛も察するに余りある。 本件犯行に至る経緯や動機についてみると、被告人が、周囲の福祉関係者や家族等に相談するなどの採り得る手段を尽くすことなく、無理心中により事態の打開を図ろうとした点に、独りよがりな面があることは否定できない。もっとも、起訴前に被告人の精神鑑定を実施した医師の証言によれば、被告人は、本件犯行当時、介護疲れを一因とする中等度うつ病エピソードの否定的認知の影響により、判示のように、事実認識に歪みが生じて物事を悲観的に考え、選択肢が狭まる状態に陥っており、被告人の完璧主義的な性格傾向や周囲に頼ることを屈辱とするという価値観の影響も無視できないものの、同疾病は動機の形成過程に相当程度の影響を与えたことが認められる。そうすると、被告人が、将来を悲観して本件犯行に至ったことについては、非難を相当程度減ずる事情があるということができる。 以上の犯情に加え、心中又は介護疲れを動機とする、配偶者に対する紐等を用いた殺人1件の同種事案の量刑傾向も踏まえると、被告人の負うべき刑事責任には重いものがあるが、刑の執行を猶予する余地はあるといえる。 その上で、一般情状について検討すると、被告人は犯行翌日に自首し、当公判廷においても、被告人なりに反省と後悔の態度を示していること、被告人の息子ら被害者遺族が処罰を望んでいないことのほか、被告人が現在94歳と高齢であることなども、被告人のために酌むことができる。 これらの事情を考慮すると、被告人に対しては、自首減軽をし、主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予するのが相当と判断するが、刑事責任の重さや被告人が ことなども、被告人のために酌むことができる。これらの事情を考慮すると、被告人に対しては、自首減軽をし、主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予するのが相当と判断するが、刑事責任の重さや被告人がこれと向き合う必要性に鑑み、法律上最長の猶予期間を定めることとした。(求刑懲役5年、弁護人の科刑意見執行猶予)令和6年7月24日 主文 札幌地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官 吉戒純一 裁判官 藤井俊彦 裁判官 小町勇祈
▼ クリックして全文を表示