平成23(ワ)5864 不正競争行為に基づく損害回復等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月6日 東京地方裁判所
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平成24年2月6日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第5864号不正競争行為に基づく損害回復等請求事件口頭弁論終結日平成23年12月19日判決東京都江東区<以下略>原告 A同訴訟代理人弁護士中田祐児同島尾大次同早崎卓也同高 木 誠一郎同益田歩美山口県下関市<以下略>被告株式会社デコス山口県下関市<以下略>被告株式会社安成工務店東京都千代田区<以下略>被告株式会社風土社上記3名訴訟代理人弁護士沖田哲義同山根康路同橋 本 由美子同大野幹憲同本間通義同片山智裕同菊池優太同神庭雅俊 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,原告に対し,連帯して,被告株式会社風土社発行の「チルチンびと」に,別紙1記載の謝 求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,原告に対し,連帯して,被告株式会社風土社発行の「チルチンびと」に,別紙1記載の謝罪広告を,同2記載の掲載条件で,1回掲載せよ。 2 被告らは,原告の氏名や写真を冒用し,原告が被告株式会社デコスの副社長であるとか,原告が同被告及び被告株式会社安成工務店の施工するデコスドライ工法の有益性を認めている旨を,第三者に対し,告知し,流布してはならない。 3 被告らは,連帯して,原告に対し,550万円及びこれに対する平成23年1月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 第3項につき仮執行宣言第2 事案の概要本件は,原告が,被告株式会社風土社(以下「被告風土社」という。)の発行した「チルチンびと別冊安成工務店」(以下「本件雑誌」という。)に掲載された本判決末尾添付の記事(以下「本件記事」という。)は,被告株式会社デコス(以下「被告デコス」という。)及び被告株式会社安成工務店(以下「被告安成工務店」といい,被告デコス及び被告安成工務店を併せて「被告安成工務店ら」ということがある。)と競争関係にある原告の営業上の信用を害する事実を告知又は流布し(不正競争防止法2条1項14号),かつ,原告の氏名権及び肖像権を侵害するものに該当するところ,本件雑誌は,被告デコス及び被告安成工務店の宣伝のため,同被告らの依頼及び資金提供のもとで発行されたものであるから,被告らは,共同して,前記不正競争行為又は氏名権等侵害の不法行為に及んだものであると主張し,被告らに対し,連帯して,①不正競争防止法14条に基づき,原告の営業上の信用を回復するのに必要な措置 としての謝罪広告の掲載,②同法3条に基づき,原告の氏名及び 行為に及んだものであると主張し,被告らに対し,連帯して,①不正競争防止法14条に基づき,原告の営業上の信用を回復するのに必要な措置 としての謝罪広告の掲載,②同法3条に基づき,原告の氏名及び肖像を使用し,本件記事と同旨の事実を告知又は流布することの差止め,③不正競争防止法4条に基づく損害賠償として440万円及び氏名権等侵害の共同不法行為責任(民法709条,710条及び719条)に基づく損害賠償として110万円並びにこれらに対する平成23年1月10日(不法行為日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア原告は,平成16年7月ころ,被告デコスの取締役副社長に就任し,平成21年5月21日,上記取締役副社長を退任したものである。 イ被告風土社は,雑誌,書籍等の出版販売等を目的とする株式会社であり,住宅専門誌「チルチンびと」本誌を隔月(偶数月)に発行し,また,各テーマ別に構成された「チルチンびと」別冊を,年に数回発行している(乙6,7,弁論の全趣旨)。 ウ被告安成工務店は,土木工事,建築工事等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 エ被告デコスは,建築資材の製造販売等を目的とする株式会社であり,セルロースファイバー断熱材をブローイング(乾式吹付け)して充填する方式による住宅断熱施工法(「デコスドライ工法」)に関し,工務店らとの間で施工代理店契約を締結し,ノウハウの開示等の対価として加盟金,ロイヤルティー等を受領するほか,同工法に使用するセルロースファイバー断熱材等を製造し,上記工務店らに販売納入する事業を行っている(甲10ないし12,21,弁論の全趣旨)。 等の対価として加盟金,ロイヤルティー等を受領するほか,同工法に使用するセルロースファイバー断熱材等を製造し,上記工務店らに販売納入する事業を行っている(甲10ないし12,21,弁論の全趣旨)。 (2) 本件雑誌の発行に至る経緯等ア被告風土社における抜き刷りパンフレット作成業務(ア) 被告風土社の発行する上記(1)イの「チルチンびと」本誌及び 別冊は,設計者(設計事務所),施工者(工務店)等が実際に設計又は施工等に携わった住宅を取材し,住まい手の思い,暮らしの実感,設計者らの努力等をまとめた記事を中心に構成されているところ,被告風土社は,平成16年ころから,設計事務所や工務店等からの依頼に基づき,当該設計事務所等について取材した記事を既刊の「チルチンびと」本誌及び別冊から抜き出してまとめ,同工務店等の宣伝用パンフレット(抜き刷りパンフレット)として印刷する業務を行うようになった(乙6ないし8,弁論の全趣旨)。 (イ) 被告風土社作成の「チルチンびと掲載記事でつくる抜き刷りパンフレット作成のご案内」によれば,上記抜き刷りパンフレットは,印刷ページ数と部数によって料金が決められており,工務店等が上記抜き刷りパンフレット作成の依頼をする場合には,まず,①ページ数と部数を決定し,次に,②被告風土社が手がけた住宅を取材した過去の「事例紹介」の記事からパンフレットに掲載するものを選び,③被告風土社が用意する「チルチンびと」既刊の表紙パターンから表紙のデザインを選択し,④保育に関する読み物などのオプションを加えるなどして印刷に至るものであり,上記①ないし④の手順は,被告風土社によるサンプルの作成及び同社と依頼者との間の数回の打合せを経て進めていくものとされている(乙8)。 (ウ) 被告風土社は,平成16年ころから平成 ものであり,上記①ないし④の手順は,被告風土社によるサンプルの作成及び同社と依頼者との間の数回の打合せを経て進めていくものとされている(乙8)。 (ウ) 被告風土社は,平成16年ころから平成23年ころまでの間に,約30社から上記抜き刷りパンフレット作成の依頼を受け,これを制作した(乙9,弁論の全趣旨)。 イ被告安成工務店らによる本件雑誌制作依頼(ア) 被告安成工務店は,平成22年3月ころ,被告安成工務店60周年記念のため,抜き刷りパンフレットの制作を被告風土社に依頼した(乙12,弁論の全趣旨)。 (イ) 被告風土社は,上記依頼を受けて,同年4月27日,同社内で企画会議を行い,「安成工務店60周年記念『抜き刷りMOOK』構成案」として,抜き刷りパンフレットの構成を,①被告安成工務店7支店毎の住宅事例紹介,②被告安成工務店代表者インタビュー,③「山から町づくりまで上津江村~菊川町」,④「林業再生からリサイクル林業,セルロースファイバー」,⑤ハイブリッドOMソーラー,⑥デザイン,⑦ギャラリー,⑧対談,⑨安成工務店史,⑩総論(安成工務店論)などとすることを企画し,発行予定を同年11月下旬とすることを決めた(乙10の1・2)。 (ウ) 被告風土社は,上記構成案に沿って,既刊の「チルチンびと」本誌及び別冊から記事を抜き出して選別するなどの業務を行った。 上記構成案のうち,④の「セルロースファイバー」に関する記事として選別されたのが,平成20年3月発行の雑誌「チルチンびと」47号の44頁及び45頁に掲載された記事(以下「本件原記事」という。)であり,本件原記事の内容及び構成は,本件記事と同一である(甲1,乙5)。 (エ) 被告風土社は,平成23年1月10日付けで,上記抜き刷りパンフレットを「チルチ 記事(以下「本件原記事」という。)であり,本件原記事の内容及び構成は,本件記事と同一である(甲1,乙5)。 (エ) 被告風土社は,平成23年1月10日付けで,上記抜き刷りパンフレットを「チルチンびと別冊安成工務店」と題する本件雑誌として発行した(甲1)。 (3) 本件記事の内容等ア本件記事は,本件雑誌の76頁から77頁にかけて掲載されたものであり,「【K邸】リサイクルできるセルロースファイバー」とのタイトルのもと,被告デコスと被告安成工務店が進めるセルロースファイバー断熱材のリサイクル実現プロジェクトの現場取材記事として,「デコスドライ工法」及び上記工法に使用した断熱材を回収し,被告デコス本社工場において再利用するプロセスを,その施工例とともに 説明したものである(甲1)。 イ本件記事中には,「デコスでは,メーカーとして断熱材を販売するうえ,施工現場に足を運び,改良や研究を重ねてきた。『どのようにリサイクルできるのか』という工務店側の声に応えた今回の試みの成功から,『エンドレスにリサイクルできますね』とデコス副社長のAさんは語る。」との記載がある(本件雑誌77頁,本件記事末尾から12行目ないし5行目)(甲1)。 また,本件記事中(本件雑誌76頁左上)には,「デコスの副社長であり,日本セルロースファイバー断熱施工協会のAさん(左から2番目),デコスの皆さん。」との説明文の右側に,被告デコス従業員と並んで立っている原告の写真(横約5㎝,縦約3㎝の人物写真の中に,原告の全身が横約1㎝,縦約3㎝の大きさで,そのうち顔の部分については5㎜前後の大きさで写っているもの。)が掲載されている(甲1)。 ウ本件記事は,上記(2)イ(ウ)のとおり,セルロースファイバー事業に関する紹介記事として,平成20年3 顔の部分については5㎜前後の大きさで写っているもの。)が掲載されている(甲1)。 ウ本件記事は,上記(2)イ(ウ)のとおり,セルロースファイバー事業に関する紹介記事として,平成20年3月1日発行の雑誌「チルチンびと」47号の44頁及び45頁に掲載された本件原記事をそのまま抜き出して印刷したものであり,本件記事の内容は,上記「チルチンびと」47号に掲載された本件原記事と同一である(甲1,乙5)。 エ本件雑誌の末尾には,「本書は,『チルチンびと』25号(2003年)・29号(2004年)・34号(2005年)・35号(2006年)・47号(2008年)・51号(2008年)・55号(2009年)・60号(2010年),『チルチンびと別冊』5号(2003年)・7号(2004年)・9号(2005年)・10号(2006年)・11号(2006年)・12号(2007年)・15号(2007年)・17号(2008年)・22号(2008年)・29号・35号 (2011年)にて取材・掲載した記事を再構成しました。」と記載されている(甲1)。 (4) 本件雑誌の配布等本件雑誌は,被告安成工務店の本社に2425冊,支店に計1800冊,OB顧客(以前に被告安成工務店で家を建てた施主)に計2020冊,被告デコスに95冊,その他の被告安成工務店関連会社等(エコビルド,ハウスドクター,アスティ・ケア,オークス建設,トライ・ウッド等)に計340冊,本件雑誌に広告を掲載した業者(計13社)に計130冊,謹呈先(被告安成工務店が被告風土社に「チルチンびと」本誌の謹呈を依頼している取引先等)に計120冊,福岡県,山口県,佐賀県等に所在する書店に計1070冊が各配布され,被告安成工務店らは,上記のとおり配布を受けた本件雑誌を,その取 に「チルチンびと」本誌の謹呈を依頼している取引先等)に計120冊,福岡県,山口県,佐賀県等に所在する書店に計1070冊が各配布され,被告安成工務店らは,上記のとおり配布を受けた本件雑誌を,その取引先(下請等の協力業者等),見学会への来場客,業者会への来場業者等に配布した(乙1)。 また,上記のとおり本件雑誌の配布を受けた書店は,本件雑誌を各書店において一般客に対し販売した(弁論の全趣旨)。 (5) 被告デコスによる警告書ア被告デコスは,平成22年9月28日付けで,原告に対し,「平成22年8月23日,貴殿が,『地産エコ断熱協会』なる団体を立ち上げ,セルロースファイバー断熱材の製造機械の販売,及びかかる断熱材を用いた施工のノウハウの提供を内容とする営業活動を開始するとの新聞報道がなされました。…このような事態は,大変遺憾であります。なぜならば,弊社及び弊社の施工代理店と弊社元取締役である貴殿による営業活動が,早晩,市場において競合することになるからです。」と記載し,原告がセルロースファイバー事業に関するノウハウの提供等を行うことは,被告デコスの特許権侵害,原告と被告デコスとの間の業務委託契約上の秘密保持義務違反,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争行為に該当すること, 平成22年9月15日に「地産エコ断熱協会」主催により開催された事業説明会において原告が被告デコス在任当時に撮影した写真を使用したことが被告デコスの著作権を侵害することなどを記載した「ご連絡」と題する書面を送付した(甲2,原告本人)。 イ被告デコスは,平成22年9月28日付けで,被告安成工務店らの取引先に対し,原告に対し上記アのとおり警告書を送付したこと等を記載した「ご連絡」と題する書面を送付した(甲3)。 2 争点( イ被告デコスは,平成22年9月28日付けで,被告安成工務店らの取引先に対し,原告に対し上記アのとおり警告書を送付したこと等を記載した「ご連絡」と題する書面を送付した(甲3)。 2 争点(1) 本件記事掲載の不正競争防止法2条1項14号該当性(2) 本件記事は原告の氏名権又は肖像権を侵害するものか。 (3) 上記(1)及び(2)における被告らの故意又は過失の有無(4) 差止請求の可否(5) 謝罪広告掲載請求の可否(6) 損害額第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(本件記事掲載の不正競争防止法2条1項14号該当性)について(原告の主張)(1) 原告の事業についてア原告は,平成22年8月20日,自らを設立発起人として「地産エコ断熱協会」を設立し,同協会の会長に就任して,住宅の断熱を目的とするセルロースファイバー事業を行っている。 イ被告らは,「地産エコ断熱協会」の名称で行われているセルロースファイバー事業は同協会の事業であり,原告の事業ではないと主張するが,否認する。地産エコ断熱協会には法人格はなく,かつ,理事会及び総会の開催,事業計画の作成,理事会における上記計画の承認等,定款所定の手続がいずれも行われていないなど,権利能力なき社団の 成立要件も満たさないものであって,同協会の名称で行われる事業は,実際には,原告の個人事業にすぎない。このことは,①同協会の会員に対し,セルロースファイバー製造機械の購入あっせん,セルロースファイバーの品質管理,断熱工事施工確認などの業務を行っているのは原告個人であって,地産エコ断熱協会が団体としての活動を行っている事実はないこと,②地産エコ断熱協会の事務局は株式会社断熱職人界に置かれているが,同社の資本金は原告がその全額を出資したもので のは原告個人であって,地産エコ断熱協会が団体としての活動を行っている事実はないこと,②地産エコ断熱協会の事務局は株式会社断熱職人界に置かれているが,同社の資本金は原告がその全額を出資したものであり,その本社は原告の住所に置かれ,電話及びFAXが原告の自宅電話及びFAXを兼ねており,原告のほかに従業員はおらず,同社は原告の個人会社にすぎないこと,③被告デコスが原告個人に宛てて前記前提事実(5)のとおり送付した警告書中には,地産エコ断熱協会の名称で行われているセルロースファイバー事業が原告の個人事業であると認める記載があることからも明らかである。 (2) 原告と被告安成工務店らとの「競争関係」についてア前記(1)の原告の事業は,工務店等が新聞紙からセルロースファイバーを製造し,これを住宅用断熱材として住宅断熱工事を施工するに当たり,上記工務店に「地産エコ断熱協会」の会員として入会登録してもらい,入会金,年会費等を受領する代わりに,上記製造に使用する機械の購入のあっせん,上記機械を用いて上記工務店等が製造するセルロースファイバーの品質確認,これを用いた断熱材の施工確認等のコンサルタント業務を行うというものである。 イ他方,被告デコスは,①工務店との間で,「デコスドライ工法」によるセルロースファイバー断熱工事の施工代理契約を締結し,加盟金,工法使用料等を徴収し,上記工務店らが,同社の施工代理店として「デコスドライ工法」の施工の発注を受けたり,同社の販売代理店の下請として同工法を施工したりできるようにしているほか,②上記工 法の施工に当たり使用されるセルロースファイバー断熱材,シート等を製造し,上記工務店らが「デコスドライ工法」を施工するに当たり納入して使用させている。 また,③上記施工代理店らは,「日本セルロースファ 施工に当たり使用されるセルロースファイバー断熱材,シート等を製造し,上記工務店らが「デコスドライ工法」を施工するに当たり納入して使用させている。 また,③上記施工代理店らは,「日本セルロースファイバー断熱施工協会」(「JCA」)との名称の団体に入会登録し,加盟金,年会費等を支払う必要があるが,JCAは,被告安成工務店らの代表者を会長とし,被告デコス内に事務局を置くものであり,その実態は被告安成工務店らそのものである。 ウ上記ア及びイのとおり,原告の事業は,地産エコ断熱協会の会員である工務店らに,各地域でセルロースファイバーを製造させ,これを用いて断熱工事を施工させるというものであり,原告の事業が拡大すれば,被告デコスの製造するセルロースファイバーの販売が縮小するという関係にあるから,原告と被告デコスは,この点で競争関係にあるといえる。 また,上記ア及びイのとおり,地産エコ断熱協会の会員とJCAの会員は,セルロースファイバー断熱工法を施工する工務店らという点で共通しているから,原告が,その事業において工務店を顧客(会員)として獲得すれば,JCAの会員は減少することになるのであって,原告と被告安成工務店らは,この点でも競争関係にあるといえる。 (3) 「営業上の信用を害する虚偽の事実」についてア本件記事の内容が虚偽のものであること(ア) 本件記事は,普通の読者の注意をもって読むと,本件雑誌発行時点で原告が被告デコスの取締役副社長であり,同立場においてインタビューに答え,被告安成工務店らが施工しているデコスドライ工法につき,その有用性を認め,賛美推奨する発言をしたものと理解されるものであるが,原告は,平成21年5月15日付けで被告 デコスを退職しているのであって,本件雑誌発行時点で同社の取締役 工法につき,その有用性を認め,賛美推奨する発言をしたものと理解されるものであるが,原告は,平成21年5月15日付けで被告 デコスを退職しているのであって,本件雑誌発行時点で同社の取締役副社長ではない上,前記前提事実(5)のとおり,地産エコ断熱協会を立ち上げたことによって,被告デコスから,競業行為をやめるよう警告を受けていたものであって,デコスドライ工法の有用性を賛美推奨する立場にないものであるから,本件記事の内容は虚偽である。 (イ) 被告らは,前記前提事実(3)エのとおり,本件雑誌にバックナンバーの記事を再掲載したものである旨の記載があることを挙げて,読者は本件記事の内容は過去のものであると認識するから,本件記事は虚偽のものではないと主張するが,争う。①本件記事には,これが平成20年に発行された雑誌記事の再掲載であることを示す記載はなく,本件記事からは,本件記事が平成20年当時のものであることを知ることができないこと,②前記前提事実(3)エの記載は,本件雑誌の末尾に小さな活字で記載されているものであり,通常の読者がこのような記載まで読むものとは思われず,仮に読んだとしても,上記記載が「…(2011年)にて取材・掲載した記事を再構成しました。」というものであることから,本件記事が直近のものであると理解する可能性もあること,③本件記事が過去のものであると認識したとしても,本件記事には,原告が被告デコスの取締役副社長を退任済みであることの注記がないから,読者は,本件雑誌発行時点でも,原告の立場に変更はなく,被告デコスの取締役副社長としてデコスドライ工法を賞賛しているものと受け止めるものと考えられることからすれば,本件記事が虚偽のものに当たることは明らかである。 イ原告の信用毀損について(ア 締役副社長としてデコスドライ工法を賞賛しているものと受け止めるものと考えられることからすれば,本件記事が虚偽のものに当たることは明らかである。 イ原告の信用毀損について(ア) 前記(1)アでみた,原告が「地産エコ断熱協会」の名称で行っ ているセルロースファイバー事業は,各地域にある工務店等にセルロースファイバー製造設備を販売し,上記設備を用いて製造される製品の品質及び施工水準をチェックすることにより,上記品質及び水準を確保するものであり,各地域でセルロースファイバーの原料となる新聞紙を調達することにより,各地域の環境を保全し,輸送費を節約することにより安価なセルロースファイバーを供給し,これを用いた断熱工事の普及に努めるという点で,被告安成工務店らが行うセルロースファイバー事業(被告デコスの製造するセルロースファイバーを断熱材として販売することを目的とするもの)とは,事業としての基本理念が全く異なるものであり,原告は,その事業に関し,上記のような事業理念や営業活動の独自性において対外的信用を有する。 なお,前記第3の1(1)でみたとおり,地産エコ断熱協会の名称で行われるセルロースファイバー事業は原告の事業であるから,同事業に関する信用は原告個人に帰属する。 (イ) 本件記事は,原告が被告安成工務店の関連会社である被告デコスの取締役副社長であり,デコスドライ工法の有用性を認め,これを賛美推奨する発言をしたことを内容とするものであるところ,本件記事を読むことによって,読者は,原告が被告安成工務店らと密接な関連を有したまま,地産エコ断熱協会の名称でセルロースファイバー事業を立ち上げ,同事業を行っていると受け取り,同事業は,被告安成工務店らの事業を手助けするものであって,被告安成工務店らの と密接な関連を有したまま,地産エコ断熱協会の名称でセルロースファイバー事業を立ち上げ,同事業を行っていると受け取り,同事業は,被告安成工務店らの事業を手助けするものであって,被告安成工務店らの事業又は同事業の別働隊にすぎないものと誤認することになり,結果として,上記(ア)でみたような原告事業の独自性が有する価値が評価されないこととなる。そうすると,本件記事の読者のうち,被告安成工務店らのセルロースファイバー事業の理念に納得せ ず,原告の事業理念に賛同し,これに参加して事業を開始しようと考える工務店等が,原告事業は被告安成工務店と同一のものであり独自性のないものだと認識することにより,原告の事業に参加することをやめるなどし,原告がその事業を継続させることができず,大きな損失を被ることも考えられるところである。 (ウ) したがって,本件記事の内容は,原告の営業上の信用を害するものに該当する。 (4) 「告知又は流布する行為」について前記前提事実(4)のとおり,本件記事を掲載した本件雑誌は,被告安成工務店に計6365冊,被告デコスに95部が配布されたものであり,被告安成工務店らは,これらの本件雑誌を,OB顧客,取引先,金融機関,協力業者,見学会への来場者等に配布したと主張しているところ,これだけ多数の本件雑誌が,これだけ広範囲に配布されれば,本件雑誌の配布を受けた者はもちろん,それ以外の者にも,その内容が伝わることは明らかであるから,本件記事の掲載は,同記事の内容を「告知又は流布する行為」に該当する。 (5) 小括したがって,本件記事の掲載は不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当する。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 原告に 小括したがって,本件記事の掲載は不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当する。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 原告に営業主体性が認められないことア 「地産エコ断熱協会」は,その定款において①正会員及び賛助会員等の構成員によって団体として組織され,②会議において多数決の原理によって議事が決せられ,③入退会の規定に基づき,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続することが定められており,④代 表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点も確定しているものであって,その実態を見ても,正会員等の構成員によって組織され,原告個人の会計とは分離してその会計が処理されているというのであるから,同協会が権利能力なき社団に当たることは明らかである。 そうすると,同協会の名称で行われる事業の営業上の利益や信用は,全て同協会に帰属するものであるから,同協会の名称で行われる事業は同協会の事業であって,原告個人は同営業の主体ではない。 なお,同協会は,株式会社断熱職人界を会長とするものであり,原告は,上記株式会社断熱職人界の代表取締役にすぎないから,同協会が権利能力なき社団としての実体があることを否定し,さらに,株式会社断熱職人界の法人格も否定しなければ,同協会の事業を原告個人の事業と同視することはできないはずである。また,原告は,同協会会員の入会費・年会費等の収入から原告の給料がまかなわれる旨主張しているが,同協会との関係で,どのような地位に基づき,どのように額が決定された給与を受け取っているのか等を,同協会の会計報告書等の裏付資料を開示して説明すべきところ,このような主張立証はない。 したがって,「地産エコ断熱 な地位に基づき,どのように額が決定された給与を受け取っているのか等を,同協会の会計報告書等の裏付資料を開示して説明すべきところ,このような主張立証はない。 したがって,「地産エコ断熱協会」の名称で行われる事業に関し,原告個人が営業の主体であるとは認められない。 イ以上のとおり,地産エコ断熱協会の名称で行われる事業は原告の事業であると認められないのであるから,同事業に関し,原告に信用が生じることはなく,かつ,原告に,本件記事によって害されるべき営業上の信用もない。 (3) 本件記事の内容は,原告の信用を害するものではないことア仮に,原告に地産エコ断熱協会の名称で行われる事業に関し信用が 生じることがあるとしても,本件記事は,原告の上記信用を害するものではない。 イすなわち,本件記事は,原告が被告デコスの取締役副社長である旨が記載されているものにすぎないところ,被告デコスの取締役副社長という肩書きは,原告を害するものではなく,むしろ原告の利益となるものであって,原告の信用を害するものではない。このことは,原告が,その見込み客に対し,パンフレット(乙3)及び「木が教えてくれた家。」との表題の書籍(乙4)を送付しているところ,上記パンフレットには,被告デコスの工場に設置された機器等の写真が使用されており,かつ,上記書籍の原告経歴欄には,「(株)デコス取締役副社長」と記載されているものであるなど,原告自身が被告デコスにおける経歴を積極的に利用し,原告と被告安成工務店らの関連性をうかがわせるような行動をとっていることからも明らかである。 ウなお,原告は,本件記事により,地産エコ断熱協会の活動が被告安成工務店らと結びつけて捉えられることになる結果,原告の信用が毀損される旨主張する 行動をとっていることからも明らかである。 ウなお,原告は,本件記事により,地産エコ断熱協会の活動が被告安成工務店らと結びつけて捉えられることになる結果,原告の信用が毀損される旨主張するが,そもそも,本件記事には,地産エコ断熱協会に関する記載はないから,原告と地産エコ断熱協会との関係を既に知っている者が読者となって初めて,原告の主張するような印象を受ける余地があることとなるが,本件雑誌のほとんどは被告安成工務店らの関連会社に配布されたものであり,また,一般書店に配布されたものについても,山口県,福岡県及び佐賀県と,被告安成工務店らの知名度が高い地域に限定されているものであるから,原告と地産エコ断熱協会との関係を知っている者を本件雑誌の読み手として想定することは不相当であり,原告の主張は当を得ないものである。 (4) 本件記事の内容が「虚偽の事実」には当たらないこと本件雑誌の奥付には,「チルチンびと」のバックナンバーに掲載され た記事を再構成したものである旨の記載があるから,普通の読者の注意をもって本件記事を読むと,本件記事の内容は,そのバックナンバーに掲載された時点での事実であると受け取られるものであるところ,本件記事は,平成20年に発行された「チルチンびと」47号に掲載された本件原記事と同一のものであるから,平成20年当時の事実を記載したものと受け取られることになる。 原告は,平成20年当時,被告デコスの取締役副社長であり,同立場において,本件記事記載の発言をしたものであり,本件原記事発行当時において,上記記事内容は真実であった。 したがって,本件記事の内容は,虚偽の事実には当たらない。 (5) 小括以上のとおり,本件記事の掲載は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争には ,上記記事内容は真実であった。 したがって,本件記事の内容は,虚偽の事実には当たらない。 (5) 小括以上のとおり,本件記事の掲載は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争には該当しない。 2 争点(2)(本件記事は原告の氏名権又は肖像権を侵害するものか。)について(原告の主張)(1) 氏名を他人に冒用されない権利(氏名権)や,人が自己の肖像をみだりに他人に撮影されたり使用されたりしない権利(肖像権)は,法的保護に値する人格的利益である。 (2) 原告は,本件記事に自らの写真を勝手に掲載され,かつ,氏名を冒用されている上,「デコス副社長」であり,「日本セルロースファイバー断熱施工協会」に所属しているなど,虚偽の事実をもって紹介され,被告安成工務店らの行っているデコスドライ工法の有益性を強調する談話まで掲載されているのであって,これが,原告の営業上の利益とは別異の氏名権及び肖像権という人格的利益の侵害に当たることは明らかである。 (3) 被告らは,原告が「チルチンびと」47号への本件原記事の掲載に同意していたことから,本件記事の掲載に当たり新たな原告の同意は不要であると主張するが,争う。本件記事の掲載時には,原告は被告安成工務店らの事業と競合する事業を行い,被告デコスから警告書を送付されていたのであり,争点(1)に関する原告の主張のとおり,本件記事により営業上の信用を毀損される状況にあったのであるから,「チルチンびと」47号の本件原記事の掲載に同意したからといって,本件雑誌への再掲載まで同意したとみるべきではない。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 原告の同意があること原告は,「チルチンびと」47号への本件原記事の掲載に同意しているとこ まで同意したとみるべきではない。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 原告の同意があること原告は,「チルチンびと」47号への本件原記事の掲載に同意しているところ,本件記事は,平成20年発行の「チルチンびと」47号に掲載された本件原記事と同一のものであって,本件記事の掲載は,上記同意の範囲内にあると解されるから,本件記事の掲載に当たり,新たな原告の同意は不要であり,本件記事の掲載に違法性はない。 (3) 本件記事が原告の人格権を侵害しないこと本件記事は,本件原記事を再掲載したものであるところ,原記事の掲載当時,上記記事に記載された内容に事実と反する点はなく,かつ,原告は,本件原記事の掲載を承諾していたものであること,本件雑誌の奥付には,本件雑誌記事は過去記事を再構成したものである旨の記載があること,本件記事は,本件原記事の内容と同一であり,原告の氏名及び肖像は,本件原記事により,原告の承諾の下,一旦掲載されたものであることなどからすれば,本件記事は,原告の人格的利益としての氏名権・肖像権を侵害するものではない。 3 争点(3)(上記(1)及び(2)における被告らの故意又は過失の有無) について(原告の主張)(1) 被告安成工務店らの故意又は過失について被告安成工務店らは,原告が被告デコスの取締役副社長を退任した事実を知っていたのであるから,本件記事が虚偽のものであることの認識に欠けるところはない。また,同被告らは,前記前提事実(5)のとおり,平成22年9月28日付けで,同被告らの取引先及び原告に対し,その事業が特許権侵害,業務委託契約上の秘密保持義務違反,不正競争防止法違反に該当するものである旨の警告及び通知文書を送付する一方,平成23年1月10日発行の本 で,同被告らの取引先及び原告に対し,その事業が特許権侵害,業務委託契約上の秘密保持義務違反,不正競争防止法違反に該当するものである旨の警告及び通知文書を送付する一方,平成23年1月10日発行の本件雑誌に本件記事を掲載させ,大量の本件雑誌を関係先に配布しているのであるから,原告の上記事業が原告独自のものではないことを関係者等に認識させ,原告に上記事業の継続を困難にさせる目的で本件記事を掲載させたことが強く疑われるところである。したがって,被告安成工務店らは,故意により前記(1)の不正競争行為及び前記(2)の氏名権等侵害行為に及んだものである。 仮にこれが意図的に行われたものではないとしても,被告安成工務店らに重大な過失があることは明らかである。 (2) 被告風土社の故意又は過失について被告風土社は,被告安成工務店らから資金提供を受け,同被告らと共同して本件雑誌を発行したものであるから,本件記事の内容が虚偽であること及び本件記事掲載の目的が上記(1)の点にあることを知っていたものというべきである。 また,本件記事は過去の記事を再掲載したものであるから,時間の経過によって事実関係が変化している可能性があり,被告風土社は,被告安成工務店らに事実関係を確認するなどして,原告が被告デコスの取締役副社長を退任している可能性があることを容易に知り得たものである から,被告風土社には少なくともこの点につき過失がある。 したがって,被告風土社は,故意又は過失によって前記(1)の不正競争行為及び前記(2)の氏名権等侵害行為に及んだものである。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 被告らに故意又は過失がないことア被告安成工務店らの故意又は過失について前記前提事実(2)のとおり,本件 んだものである。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 被告らに故意又は過失がないことア被告安成工務店らの故意又は過失について前記前提事実(2)のとおり,本件雑誌は,平成22年3月ころ,被告安成工務店から同社の60周年記念のため被告風土社に対し制作依頼があり,同年4月27日に同社内で構成案が作成され,発行予定を同年11月下旬として制作されたものであるが,原告が地産エコ断熱協会を立ち上げたのは同年8月20日であり,被告デコスが原告に「ご連絡」(甲2)を送付したのは同年9月28日であるから,本件雑誌は,原告が地産エコ断熱協会を立ち上げる半年以上前から制作が開始されていたことになる。 なお,被告安成工務店らは,過去記事の選択,掲載順序等を被告風土社に一任していたものであるところ,被告風土社は,過去の記事を抜き刷りにする場合,過去の記事をそのまま転載する扱いとしており,本件記事も,「チルチンびと」47号に掲載された記事と同一のものであり,地産エコ断熱協会についても記載されていない。 以上のことからすれば,被告安成工務店らが本件雑誌を発行した目的は,同被告の創業60周年記念のためという点にあり,原告の営業活動妨害にはないことが明らかである上,本件雑誌の発行を依頼した時点では,まだ地産エコ断熱協会は設立されていないから,本件記事により原告の社会的信用を毀損することに関する予見可能性もないというべきである。 したがって,被告安成工務店らに故意又は過失はない。 イ被告風土社の故意又は過失について被告風土社は,被告安成工務店から,安成工務店創業60周年記念のためとして抜き刷りパンフレット作成の依頼を受け,平成22年4月27日付けで作成した構成案に沿って本件雑誌を作成したもの ついて被告風土社は,被告安成工務店から,安成工務店創業60周年記念のためとして抜き刷りパンフレット作成の依頼を受け,平成22年4月27日付けで作成した構成案に沿って本件雑誌を作成したものであり,上記作成依頼及び構成案作成の段階では,地産エコ断熱協会は設立されていなかったのであるから,被告風土社としては,原告と被告安成工務店らの間の紛争を知りようがなく,上記時点において,本件記事により原告の社会的信用を毀損することに関する予見可能性はない。 被告風土社は,その後,上記企画案に沿って作業を進めたものにすぎず,抜き刷り記事の内容についても,著作者人格権の問題が生じないよう,内容を一切変更せずに再掲載することとし,本件雑誌の奥付に,本件雑誌は再掲載である旨を記載して本件雑誌を発行しているのであり,被告風土社にも故意又は過失はないことが明らかである。 4 争点(4)(差止請求の可否)について(原告の主張)(1) 争点(1)に関する原告の主張のとおり,被告らは,本件記事の掲載により,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に及んだものであるところ,原告が被告デコスの取締役副社長である旨や,被告安成工務店らの施行するデコスドライ工法の有益性を認めている旨などを告知又は流布されることにより,原告は,その事業を独自のものと認められないこととなり,事業を継続することができず,大きな損失を被る結果となるのであるから,上記不正競争により,原告の営業上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれがある。 (2) したがって,原告は,不正競争防止法3条に基づき,被告らに対し, 上記事実を告知し,又は流布する行為の差止めを求めることができる。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。本件 たがって,原告は,不正競争防止法3条に基づき,被告らに対し, 上記事実を告知し,又は流布する行為の差止めを求めることができる。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。本件記事の掲載によって原告の営業上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれはないから,原告に不正競争防止法3条に基づく差止請求は認められない。 (2)アすなわち,原告は,広告宣伝や営業活動等に当たって,営業主体を「地産エコ断熱協会」と表示しているから,原告と取引に入ろうとする者は,当初,原告のことを知らずに「地産エコ断熱協会」と取引すると理解するのが通常である(なお,原告と地産エコ断熱協会の関係を既に知っている者であれば,「地産エコ断熱協会」に属する原告と取引すると理解することも考えられるが,そのような限られた者を本件記事の読者として想定するのは不相当である)。 そうすると,本件記事が地産エコ断熱協会に何ら言及するものではない以上,原告のことを知らずに「地産エコ断熱協会」と取引すると考えている者が本件記事を読んだとしても,上記取引に本件記事が影響を及ぼすことはなく,原告の営業上の利益が侵害されることはない。 イまた,原告と「地産エコ断熱協会」との関係を既に知っており,地産エコ断熱協会に属する原告と取引すると考えている者が本件記事を読んだとしても,取締役に競業避止義務があることは周知の事実であるから,原告が地産エコ断熱協会に属している以上,被告デコスの取締役ではなくなったと理解するのが通常であるから,やはり上記取引に本件記事が影響を及ぼすことはなく,原告の営業上の利益が侵害されることはない。 ウ加えて,もし,本件記事により,原告が被告デコスの取締役副社長であって,地産エコ断熱協会は被告安成工務店らと関係があるも 事が影響を及ぼすことはなく,原告の営業上の利益が侵害されることはない。 ウ加えて,もし,本件記事により,原告が被告デコスの取締役副社長であって,地産エコ断熱協会は被告安成工務店らと関係があるものと誤解する者がいたとしても,原告は,上記誤解を容易に払拭すること ができる。 すなわち,地産エコ断熱協会は,いわゆるコンサルタント業務を行うものであり,潜在顧客との間にある程度の信頼関係が生じてからでないと成約に至らないものであるから,潜在顧客との成約に至るまで,コンサルタント側である原告(地産エコ断熱協会)から顧客に対する十分な説明の機会があると解されるところ,特に,同協会の事業は,無資格による特殊分野のコンサルティングであり,入会金等のイニシャルコストも大きいものであるので,潜在顧客は,同協会と継続的な取引関係に入るかどうかを検討するに当たり,地産エコ断熱協会のホームページやパンフレットを閲覧することはもちろんのこと,原告個人からも十分な説明を受けるものと想定される。なお,本件記事は,地産エコ断熱協会や原告について何ら否定的な評価を加えるものではないから,本件記事が,原告の潜在顧客に,原告と関わることすら全く拒否させるなどして,原告の潜在顧客に対する上記説明の機会を奪うようなものでないことは明らかである。 そうすると,原告は,潜在顧客に対し,ホームページやパンフレット,講演その他成約に至るまでの面談等の営業の機会に,自らの事業の独自性を説明することにより,被告安成工務店らが展開するセルロースファイバー事業との違いを説明し,原告が被告安成工務店らと関係がないことを明らかにすることができ,これにより,本件記事により生じた誤解を解くことができるのである。 (3) したがって,本件記事の掲載により,原告の営業上 し,原告が被告安成工務店らと関係がないことを明らかにすることができ,これにより,本件記事により生じた誤解を解くことができるのである。 (3) したがって,本件記事の掲載により,原告の営業上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれはないから,原告に,不正競争防止法3条に基づく差止請求は認められない。 5 争点(5)(謝罪広告掲載請求の可否)について(原告の主張) 争点(1),(3)及び(4)に関する原告の主張のとおり,被告らは,故意又は過失により,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争を行い,原告の営業上の利益を侵害したものであるから,原告は,同法14条に基づき,原告の営業上の信用を回復するのに必要な措置として,別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の条件で掲載することを求めることができる。 (被告らの主張)原告の主張は争う。 争点(4)に関する被告らの主張のとおり,本件記事の掲載により,原告の営業上の信用が侵害された事実はないから,原告が営業上の信用を回復するのに必要な措置として謝罪広告の掲載等を求めることはできない。 6 争点(6)(損害額)について(原告の主張)(1) 不正競争防止法3条に基づく損害の請求前記前提事実(4)のとおり,本件記事を掲載した本件雑誌は,合計8000冊も発行され,広範囲に配布されたものであって,これによって,本件雑誌の配布を受けた者はもちろん,それ以外の者にも,その内容が伝わり,原告の信用が大きく毀損された。 これによる原告の損害は,440万円(弁護士費用40万円を含む。)を下らない。 (2) 氏名権及び肖像権侵害の共同不法行為責任に基づく損害の請求本件記事の掲載により原告の氏名権及び肖像権が侵害されたことに ,440万円(弁護士費用40万円を含む。)を下らない。 (2) 氏名権及び肖像権侵害の共同不法行為責任に基づく損害の請求本件記事の掲載により原告の氏名権及び肖像権が侵害されたことによる損害は,110万円(弁護士費用10万円を含む。)を下らない。 (被告らの主張)原告の主張はいずれも争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件記事掲載の不正競争防止法2条1項14号該当性)につ いて(1) 原告の事業主体性についてア後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,地産エコ断熱協会に関し,以下の事実が認められる。 (ア) 定款の内容等平成22年8月20日付けで定められた地産エコ断熱協会定款には,以下の定めがある。 まず,地産エコ断熱協会の目的は「地域の新聞,紙類,木質品で断熱材を製造し,地域の住宅に供給する地産地消の仕組みに賛同する,志の高い会員の入会を促進し,技術者の育成と地産エコ断熱材『セルロースファイバー』の普及を図ること」とされている。 その事業内容は「①断熱材の製造及び施工の技術研修,品質管理,②製品の性能試験及び許認可関係に関するサポート,③会員相互の情報交換,④業界誌,専門誌,HPの共同広告宣伝」等とされている。 会員については「①正会員(製造から施工までを一貫して行う企業),②賛助会員(本会の目的に賛同し,正会員に協力する企業),③サポータの会(本会の趣旨に賛同する企業,団体,個人。将来的に正会員を希望し正会員の入会までサポータの会に入会することが出来る。特別な会則がなく議決権を有しない私設応援団)」とされている。 会費については「①正会員入会金200万円,年会費50万円,②賛助会員年会費1万円,③サポータの会入会登録費1万円, が出来る。特別な会則がなく議決権を有しない私設応援団)」とされている。 会費については「①正会員入会金200万円,年会費50万円,②賛助会員年会費1万円,③サポータの会入会登録費1万円,年会費2万円」とする旨の各記載がある。 また,組織の構成については,会長,副会長,理事等を置くこと,理事は正会員の中から総会において選出し,会長及び副会長は理事 の互選によって定めること,正会員及び賛助会員によって構成される総会を開催すること,会議の議事は出席した会員の過半数の同意をもって決することが定められている。 さらに,会の資産については,入会金,会費,事業収入等によって構成されることとされている(甲5,6)。 (イ) 地産エコ断熱協会の構成員等地産エコ断熱協会は,株式会社斉藤林業ら6社を正会員,セーレン株式会社ら3社を賛助会員,株式会社ランバーテックら6社をサポータ会員として発足した(甲4)。 地産エコ断熱協会の会長は株式会社断熱職人界,副会長は株式会社斉藤林業であり,同会の事務局は上記株式会社断熱職人界に置かれている(甲4,原告本人)。 株式会社断熱職人界は,原告が代表取締役を務める株式会社である(乙2)。 (ウ) 地産エコ断熱協会の定款は上記(ア)のとおりであるが,同会において理事会,総会等が開催されたことはなく,事業報告書等が作成されたこともない(甲21,原告本人)。 (エ) 地産エコ断熱協会は,新聞紙等を原料とし,これを断熱材として再利用すること(エコ)及び断熱工事の施工対象物件が所在する地域において新聞紙等を調達し,セルロースファイバーを製造すること(地産地消)を理念とし,セルロースファイバー断熱材の製造機械の購入のあっせん,上記機械を用いて製造され 工事の施工対象物件が所在する地域において新聞紙等を調達し,セルロースファイバーを製造すること(地産地消)を理念とし,セルロースファイバー断熱材の製造機械の購入のあっせん,上記機械を用いて製造されたセルロースファイバー断熱材の品質管理,同断熱材を用いた断熱工事の施工指導等を行うほか,セミナーや講演会の開催によるセルロースファイバーの販路拡大,共同広告(HP,住宅業界誌等)の掲載等の活動を行っている(甲4,5,14ないし21,乙3,原告本人)。 (オ) 原告は,地産エコ断熱協会の上記活動に当たり,施工指導やセミナーのセッティング等において実働し,地産エコ断熱協会から年間350万円程度の報酬を得ているが,原告個人が同会の会員として登録し,または,同会において役職を得ているなどの事実はない(甲21,原告本人)。 (カ) なお,地産エコ断熱協会が法人格を有しないことについては,当事者間に争いがない。 イ上記認定事実を前提に検討するに,地産エコ断熱協会においては,理事会,総会等が開催されたことはなく,事業報告書等が作成されたこともないというのであるから,同協会を権利能力なき社団と認めることはできない。 しかし,地産エコ断熱協会は,前記ア(ア)のとおり,「地域の新聞,紙類,木質品で断熱材を製造し,…セルロースファイバーの普及を図ること」を目的として設立されたものであり,正会員らは入会金200万円及び年会費50万円を,賛助会員は年会費1万円を負担することで同会の構成員となり,同会員らが支払った入会金及び年会費は同会の資産を構成するというのであって,実際に,前記ア(イ)のとおり,数社の企業が入会金及び年会費を支払うなどして同会の会員となり,前記ア(エ)のとおり,「地産エコ断熱協会」としての上記目的に沿っ 会の資産を構成するというのであって,実際に,前記ア(イ)のとおり,数社の企業が入会金及び年会費を支払うなどして同会の会員となり,前記ア(エ)のとおり,「地産エコ断熱協会」としての上記目的に沿った活動がされているというのであるから,地産エコ断熱協会は,各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって成立するに至ったもの(民法667条)として,正会員等を組合員とする民法上の組合の性質を有するものと認めることができる。 そうすると,地産エコ断熱協会の名称で行われる事業は,組合としての同協会の事業とみるべきこととなるところ,組合の事業は各組合員が共同の目的とするものであり(同法667条),組合の出資その 他の財産は,総組合員の共有に属し(同法668条),組合の業務の執行は組合員の過半数で決するものとされる(同法670条)など,各組合員は,いずれも,上記事業に関し利害関係をもって関与する地位にあるということができるから,組合に係る事業は,総組合員の共同事業に当たるものとみるべきであり,地産エコ断熱協会に係る事業も,その組合員たる会員らの共同事業とみるべきこととなる。 したがって,地産エコ断熱協会の事業を原告の個人事業とみることはできないから,原告に,個人事業の事業主としての事業主体性を認めることはできない。また,原告は,前記ア(オ)のとおり,地産エコ断熱協会の会員ではなく,かつ,同会において何らかの地位を得て実働しているものでもないというのであるから,原告に,上記共同事業の構成員としての事業主体性を認めることも困難であるというべきである。 (2) したがって,地産エコ断熱協会の名称で行われる事業に関し,原告に事業主体性が認められない以上,原告が同事業に関し信用を有するもので めることも困難であるというべきである。 (2) したがって,地産エコ断熱協会の名称で行われる事業に関し,原告に事業主体性が認められない以上,原告が同事業に関し信用を有するものではなく,かつ,原告と被告安成工務店らが競争関係にあるものともいうことができないから,その余の点について検討するまでもなく,本件記事の掲載が不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当することはない。 (3) なお,念のため,原告に事業主体性が認められるものとして検討してみても,以下のとおり,本件記事の掲載により原告の信用が毀損されることはない。 アすなわち,前記前提事実(3)のとおり,本件記事は,原告が被告安成工務店らのセルロースファイバー断熱材のリサイクル実現プロジェクトに関し,被告デコスの取締役副社長としてインタビューに答え,エンドレスにリサイクルできる旨を回答したというものであり,原告 が被告デコスの要職に就き,そのセルロースファイバー事業に代表的な立場で関与していることが読み取れるものであるが,同記事は,地産エコ断熱協会の名称で行われるセルロースファイバー事業に何ら言及するものではなく,かつ,同事業内容のうち,被告安成工務店らの事業との相違点として原告が主張する点(遠隔地の工場でセルロースファイバーを製造し,施工現場に輸送するのではなく,施工現場のある地域で原料を調達してセルロースファイバーを製造することにより,各地域の環境を保全し,かつ,輸送費の節約により安価なセルロースファイバーを供給しようとするものであることなど)につき,否定的な評価を加える内容のものでもないから,本件記事により,地産エコ断熱協会の事業内容の上記のような点における独自性が害されることはないものと認められる。 ものであることなど)につき,否定的な評価を加える内容のものでもないから,本件記事により,地産エコ断熱協会の事業内容の上記のような点における独自性が害されることはないものと認められる。 イまた,本件記事は,原告が被告安成工務店らと関連があるとの印象を与えるものである上,本件記事でテーマとされている事業と地産エコ断熱協会の名称で行われている事業が,セルロースファイバー断熱材に関するものという点で共通することから,本件記事により,原告の事業が被告安成工務店らと関連するものではないかとの印象を与えるものであるといえる。 しかし,原告は,地産エコ断熱協会の営業に当たり,工務店らに対し,原告が被告安成工務店らと無関係な地位にあり,その事業も被告安成工務店らとは無関係である旨を自ら話したり,パンフレット等に記載したりしたことはない(原告本人)。そして,原告は,本件雑誌が発行されたころ,地産エコ断熱協会のパンフレットやガイダンス資料等に,自らの著書として,「木が教えてくれた家。」と題する書籍(乙11)の写真及び題名を掲載し,地産エコ断熱協会の説明会やセミナー等において配布し,かつ,営業先に同書籍を配布するなどして いることが認められる(甲4,5,乙3,11,原告本人)ところ,同書籍は,被告デコスらの資金提供により制作されたものである(乙12,原告本人)。そればかりか,同書籍の内容は,被告デコスのセルロースファイバー事業の内容やその施工例等の紹介を内容とする記載が相当部分を占め,その巻末には,被告安成工務店代表者や被告デコス関係者に対する謝辞が「あとがき」として記載されている。そのうち,被告安成工務店代表者についての「あとがき」には,「わたしがセルロースファイバーにかける情熱をいち早く理解して下さり,とても大きな力になっ に対する謝辞が「あとがき」として記載されている。そのうち,被告安成工務店代表者についての「あとがき」には,「わたしがセルロースファイバーにかける情熱をいち早く理解して下さり,とても大きな力になっていただきました。そして,デコスドライ工法の開発・普及のために事業開始から二人三脚で頑張ってきました。多くの困難なことに遭遇してきましたが,なんとかここまでやってこられたのも,B社長のお力添えがあったからこそです。心から感謝しております。また,安成工務店のスタッフの皆さんにも大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。」との記載がある。また,被告デコスのC工事部長についての「あとがき」には,「セルロースファイバーは施工で決まる,施工が一番大切だということをわたし同様,確信している仲間の一人です。これからも頑張りましょう。」との記載がある。そして,奥付の原告の経歴紹介の末尾には,「(株)デコス取締役副社長」と記載されている(乙11)。したがって,同書籍を読むと,原告と被告安成工務店らが深い関連を有することが印象付けられるものであることが認められる。そうすると,原告は,その営業に当たり,被告安成工務店らと自己又は自己の営業が無関係であることを利用しているものではなく,むしろ,被告安成工務店らと関連を有することを,その顧客に積極的に知らせる結果となる行動を取っていることが認められるのであるから,原告又はその事業が被告安成工務店らと無関係であるという点において,営業上の信用を有して いたものではないというべきである。 したがって,原告に,上記の意味での信用が認められない以上,本件記事が,原告及びその事業と被告安成工務店らとの関連性をうかがわせるものであるとしても,原告の信用を毀損するものには当たらないというべ したがって,原告に,上記の意味での信用が認められない以上,本件記事が,原告及びその事業と被告安成工務店らとの関連性をうかがわせるものであるとしても,原告の信用を毀損するものには当たらないというべきである。 (4) したがって,その余の点について検討するまでもなく,本件記事の掲載は,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当しない。これに反する原告の主張はいずれも採用しない。 2 争点(2)(本件記事は原告の氏名権又は肖像権を侵害するものか。)について(1) 氏名は,社会的にみれば,個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが,同時に,その個人からみれば,人が個人として尊重される基礎であり,その個人の人格の象徴であって,その人格の一部になっているものであるから,人は他人に自己の氏名を無断で使用されないことについて不法行為法上の保護を受け得る人格的な利益を有するものというべきであり(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁),他人が氏名を無断で使用し,これによってその氏名を有する者の利益が害され,それが違法と評価されるときは,その行為は氏名権を侵害するものとして不法行為に該当することとなる。 また,人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないこと及び自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されないことについて法律上保護されるべき人格的利益を有し(最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁),他人がみだりに写真を撮影し,公表することにより,その者の利益が害され,それが違法と評価されるときは,その行為は肖像権を侵害するものとして,不法行為に該当することとなる。 そして,氏名の使用や撮影された写真の公 ことにより,その者の利益が害され,それが違法と評価されるときは,その行為は肖像権を侵害するものとして,不法行為に該当することとなる。 そして,氏名の使用や撮影された写真の公表が違法といえるか否かは,被侵害利益の程度や侵害行為の態様を総合考慮して,その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるか否かを判断して決すべきである(前掲最高裁平成17年11月10日判決参照)。 (2)アそこで,本件についてみると,前記前提事実(3)イのとおり,本件記事は,原告の氏名をその本文及び写真説明文中に各1回使用し,かつ,原告の容ぼうの写った写真1枚を掲載したものであることが認められる。また,被告らが,本件記事の掲載に当たり,原告から上記氏名及び肖像の利用に関し承諾を得ていないことについては当事者間に争いがない。 しかし,本件記事が平成20年3月1日に発行された本件原記事を本件雑誌に再掲載したものであることは前記前提事実(2)イ(ウ)のとおりであり,原告は,本件原記事の掲載に当たっては,氏名及び肖像の利用を承諾していたものと認められる(甲14,原告本人,弁論の全趣旨)。そして,前記前提事実(2)アのとおり,被告風土社は,平成16年ころから,設計事務所や工務店等からの依頼を受けて,雑誌「チルチンびと」本誌及び別冊の既刊記事の中から,上記依頼に係る設計事務所等に関する記事を抜き出してまとめ,広告用冊子として発行する業務を開始していたというのであるから,原告は,本件原記事への氏名及び肖像の掲載を上記のとおり承諾するに当たり,同記事が再掲載される可能性があることを認識することが可能であったものと考えられる。また,本件原記事は,被告安成工務店らの進める事業プロジェクトを取材し,その内容を肯定的な表現により紹 るに当たり,同記事が再掲載される可能性があることを認識することが可能であったものと考えられる。また,本件原記事は,被告安成工務店らの進める事業プロジェクトを取材し,その内容を肯定的な表現により紹介するというものであって(乙5),このような内容の記事が公刊された場合,当該企業の宣伝広告のため,同企業が,事後に当該記事を利用することがあり得ることは,当然に予測し得るものであるということができる。 そうすると,原告は,本件原記事における氏名及び肖像の利用を承諾するに当たり,少なくとも,原告が被告デコスにおける勤務を継続する限りは,本件原記事が再掲載され,又は,事後に,被告安成工務店らの宣伝広告のため,本件原記事が利用される可能性があり得ることを前提に,上記可能性を含めて承諾していたものと解するのが相当である。 イもっとも,本件雑誌は,原告が被告デコスの取締役を退任し,同被告と競業する事業を開始した後に発行されたものであり,その記事本文において,原告が被告デコスの副社長として被告デコスの工法を評価する旨の記載がされ,同様の肩書の記載により紹介された原告の写真が掲載されているのであるから,本件雑誌の発行時点においては,原告の肩書について事実に反する記事を掲載すること及びその写真を掲載することを原告が当然に承諾していたものとみることはできない。 しかし,仮に,原告が本件記事の掲載を承諾していたものとみることができないとしても,本件においては,その掲載された記事の内容は原告の承諾を得て既に発行されたことのある「チルチンびと」の記事と同内容の記事をそのまま抜粋して掲載したものにすぎない。 また,争点(1)に関する判断でみたとおり,原告は,地産エコ断熱協会の事業活動に関して活動するに当たり,被告安成工務店らと無関係である 事と同内容の記事をそのまま抜粋して掲載したものにすぎない。 また,争点(1)に関する判断でみたとおり,原告は,地産エコ断熱協会の事業活動に関して活動するに当たり,被告安成工務店らと無関係であることを強調するなどの行動を取っておらず,むしろ,被告安成工務店らとの関連性が依然として存続していることをうかがわせるような書籍を配布するという行動を取っているものであり,その自ら配布していた書籍の奥付には,原告の経歴について,その末尾に「(株)デコス取締役副社長」との表示が,あたかも原告が現在その職にあるとみられるような態様で記載されているのである。そうすると,本件雑誌に,原告の氏名及び写真が掲載され,そこに「デコス副社長 A」との記載があったとしても,それは原告が本件雑誌の発行のころ,自ら積極的に配布していた書籍における記載と内容が異なるものではないのであるから,この点からみても原告の不利益が大きいものということはできない。 さらに,掲載された写真の大きさは前提事実(3)イのとおりであって,写真についての説明文を見なければ原告であるかどうかも識別が難しい程度の大きさのものにすぎない。 以上の事実に照らすと,本件記事の掲載によって原告の人格的利益が侵害される程度は小さいものといわざるを得ない。 他方,被告らが,本件雑誌の作成を企画したのは,平成22年3月ころのことであって,原告が地産エコ断熱協会の事業についての関与を始めた同年8月ころより前のことであって,被告らが地産エコ断熱協会の事業に何らかの影響を与えるために企画したものとは認められない。また,本件雑誌において原告に関する記事が掲載されているのは76頁と77頁の2箇所のみであり,それらはいずれも既に発行されたことのある「チルチンびと」の記事から抜粋されたものにすぎず,その ない。また,本件雑誌において原告に関する記事が掲載されているのは76頁と77頁の2箇所のみであり,それらはいずれも既に発行されたことのある「チルチンびと」の記事から抜粋されたものにすぎず,そのうち,76頁の原告の写真は前記のとおりの大きさであって,その写真からだけでは直ちに原告であるか否かを判別できない程度の態様での使用である。また,77頁の「デコス副社長のAさん」との記載は,「エンドレスにリサイクルできますね。」というデコス工法の利点を評価した発言の主体として記載されているものであるが,その発言内容は短いものであり,前記原告が自ら配布している書籍の記載内容等に照らせば,その発言の主体として原告の氏名及び旧肩書きが表示されたとしても,原告に大きな不利益を与えるような態様での使用とはいえない。 そうすると,本件記事のうち,原告を,被告デコスの副社長として, その写真を掲載し,また,その氏名を紹介する部分が,本件雑誌の発行の時点において事実に反するものとなっており,被告らはこの点についてより慎重な配慮をすべきであったとはいえるとしても,上記のとおりの事実関係に照らせば,原告が侵害された利益は小さいものであり,他方,被告らの侵害の態様も害意に基づくなどの悪質なものとはいえず,その侵害内容も限定されたものであって,被告らによる,原告の氏名権,肖像権の侵害は社会的に受忍すべき限度を超えるものということはできず,被告らの行為を違法なものと評価することはできないものというべきである。 (3) したがって,本件記事における原告の氏名及び肖像の利用は,原告の氏名権及び肖像権を侵害する違法な行為であるとはいえず,これに反する原告の主張は採用できない。 3 小括よって,その余の点について検討するまでもなく,原告の の利用は,原告の氏名権及び肖像権を侵害する違法な行為であるとはいえず,これに反する原告の主張は採用できない。 3 小括よって,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないことに帰着する。 第5 結論以上のとおり,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官菊池絵理 裁判官森川さつき

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