令和6(行コ)43 鈴鹿市運行記録票提出指導違反処分取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年10月30日 名古屋高等裁判所 津地方裁判所
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判決文本文10,021 文字)

令和6年(行コ)第43号鈴鹿市運行記録票提出指導違反処分取消等請求控訴事件令和6年10月30日名古屋高等裁判所民事第4部判決 主文 1 原判決中、国家賠償請求に関する部分を次のとおり変更する。 ⑴ 控訴人は、被控訴人らに対し、それぞれ5万5000円及びこれに対する令和4年9月27日から支払済みまで年3%の割合による金員を支 払え。 ⑵ 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 2 控訴人のその余の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審を通じ、全部控訴人の負担とする。 4 この判決の第1項⑴は、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記の部分につき、被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 1 本件は、三重県鈴鹿市に居住し、生活保護法(以下「法」という。)による保護を受けている被控訴人A(以下「被控訴人母」という。)が、同一世帯の構成員である二男被控訴人B(以下「被控訴人子」という。)の所有する自動車(以下「本件車両」という。)につき、処分行政庁から被控訴人子の通院に限り保有及び利用を容認され、運転記録票を提出するよう複数回にわたり求められたに もかかわらず、これを提出しなかったなどとして、処分行政庁が、法62条3項に基づき、被控訴人母に対し、生活保護を停止する旨の処分(以下「本件停止処分」という。)をしたところ、①被控訴人母が、本件停止処分は違法である と主張して、控訴人に対し、その取消しを求めるとともに、②被控訴人らが、控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金55万円(慰謝料50万円、弁護士費用5万円)及びこれに対する本件停止処分の日である令和4年9 の取消しを求めるとともに、②被控訴人らが、控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金55万円(慰謝料50万円、弁護士費用5万円)及びこれに対する本件停止処分の日である令和4年9月27日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、①被控訴人母の取消請求につき、本件停止処分が違法であるとして、これを取り消し、②被控訴人らの国家賠償請求につき、それぞれ損害賠償金10万円(慰謝料5万円、弁護士費用5万円)及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容したところ、控訴人が敗訴部分を不服として控訴をした。 2 関係法令の定め原判決「事実及び理由」第2の2に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 前提事実次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第2の3(前提事実)に 記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決3頁6行目冒頭から7行目末尾までを、以下のとおり改める。 「⑶ 処分行政庁は、控訴人の公権力の行使に当たる公務員であり、厚生労働省から法定受託事務として鈴鹿市長に委任された生活保護行政の実施につき、保護の実施、停止、廃止等の権限を有する者である。 処分行政庁は、令和元年8月9日、被控訴人母に対し、生活保護の支給を開始した(なお、生活保護開始決定は令和元年9月6日付けであるが、支給は同年8月9日に遡ってされた。)。同生活保護の支給は、被控訴人母と被控訴人子が同一世帯として生計を一にしている被保護世帯であることを前提に開始されたものであり、被控訴人らは、法にいう被保護者の地位 にある。(争いのない事実、甲A23)」 ⑵ 原判決4頁25行目の「原告の生活保護」を「原告母に対する生活保護」に改める に開始されたものであり、被控訴人らは、法にいう被保護者の地位 にある。(争いのない事実、甲A23)」 ⑵ 原判決4頁25行目の「原告の生活保護」を「原告母に対する生活保護」に改める。 4 争点及び当事者の主張次のとおり補正し、次項に当審における補充主張を加えるほか、原判決「事実および理由」第2の3(争点及び当事者の主張)に記載のとおりであるから、 これを引用する。 ⑴ 原判決5頁5行目、6頁3行目、7頁4行目、同12行目の各「必要最小限度」をいずれも「必要最少限度」に改める。 ⑵ 原判決7頁21行目「鈴鹿社会福祉事務所」を、「鈴鹿市社会福祉事務所(以下「福祉事務所」という。)」に改める。 5 当審における当事者の補充主張⑴ 争点3(本件停止処分の違法性)について(控訴人)ア処分行政庁は、厚生労働省の所管する生活保護行政の実施を委託され、被保護者に対して法27条に基づく指導・指示を行う権限を有するのであ るから、厚生労働省が定める基準に基づきこれを行うことになるところ、保護受給者は、生活保護制度の補足性の原理(法4条1項)により、原則として自動車の保有はできず、ただし、障害者である受給者が通院のために自動車を必要とする場合であって、本件通知(原判決別紙記載第3「関係通達等の定め」の1)⑴アないしオのいずれにも該当し、その保有が社 会的にも適当と認められるときは、通院目的に使用する場合に限り、保有が認められるとされ、本件通知に合理性がある以上、被控訴人子の通院以外に本件車両を利用しないこととする本件指示等は何ら違法ではないのであるから、その指示等に繰り返し反する行動をとった被控訴人らの態度につき、軽微な違反にとどまるかのごとき評価することは、本件指示等が違 法であること こととする本件指示等は何ら違法ではないのであるから、その指示等に繰り返し反する行動をとった被控訴人らの態度につき、軽微な違反にとどまるかのごとき評価することは、本件指示等が違 法であることを前提にした上での評価であって、許されない。 イ処分行政庁が、被控訴人らに対し、毎月提出すべきとする運転記録票の「使用時間」、「キロ数」、「運転経路」、「用件」、「運転車」及び「同乗者」の各記載事項は、本件車両が、被控訴人子の通院のみに使用されていることを確認するために必要不可欠な情報であり、これら記載等を求めることが、過剰な指示であるかの評価をすることは許されない。 (被控訴人ら)ア補足性の原理(法4条1項)を踏まえたとしても、被控訴人らが本件車両を保有、利用することが許されないと当然にいえるものではないし、控訴人が挙げる各種通知、通達をもって、被控訴人らの本件車両を保有、利用することが許されないと当然にいえるものではない。被控訴人らが、本 件指示等に違反したことは、軽微な違反といえる。 イ処分行政庁が、被控訴人らに対し、控訴人の主張するような詳細な記載を必要とする運転記録票の作成及び提出を求めることができる根拠は明らかではなく、過剰な指示であるといえる。 ⑵ 争点4(国家賠償請求の成否)について (控訴人)処分行政庁が本件車両につき被控訴人子の通院使用に限るとの条件を付して保有認定をした令和3年7月9日から本件停止処分をした令和4年9月27日までの約1年2か月の間、処分行政庁は、運転記録票の作成及び提出を、実に根気よく指導、指示したが、時を経るに連れ被控訴人らの指示違反の意 思が強固となり、本件停止処分に至ったものである。処分行政庁は、上記期間内に、運転記録票の作成及び提出に関して被控訴 を、実に根気よく指導、指示したが、時を経るに連れ被控訴人らの指示違反の意 思が強固となり、本件停止処分に至ったものである。処分行政庁は、上記期間内に、運転記録票の作成及び提出に関して被控訴人側と22回も接触し、文書での指導も2回行うなどした上で、慎重な判断をした。仮に、本件停止処分が結果として違法であったとしても、国家賠償法における違法があるとはいえない。 (被控訴人ら) 処分行政庁は、被控訴人らからの質問事項には回答せず、三重弁護士会からの勧告書についても真摯な検討をしていない。指導指示は、あくまでも被控訴人らが自発的に応諾するか否か検討して良い事柄であり、幾度も指導し、1年以上の時間を費やしたものであったとしても、それをもって、慎重な判断をしたといえるものではない。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、本件停止処分は違法であるからこれを取り消すべきであり、同処分は国家賠償法上も違法であるというべきであるが、控訴人らに生じた損害の額については、原審とは異なり、それぞれ5万5000円と認めるのが相当であると判断する。理由は、以下のとおりである。 1 認定事実次のとおり補正するほか、原判決第3の1に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決11頁24行目「証人C(以下「C」という。)」を「証人C(控訴人の職員であり、被控訴人らの生活保護に係る事務を担当していた者。以下 「C」という。)」に改める。 ⑵ 原判決12頁13行目から14行目にかけての「運転記録票には、」から17行目末尾までを、「運転記録票には、「使用年月日曜日」、「使用時間(使用開始時刻・使用終了時刻)」、「キロ数(開始時走行距離・終了時走行距離)」、「運転経路」、「用件(具体的に)」、「運転者」及び「同乗者」 までを、「運転記録票には、「使用年月日曜日」、「使用時間(使用開始時刻・使用終了時刻)」、「キロ数(開始時走行距離・終了時走行距離)」、「運転経路」、「用件(具体的に)」、「運転者」及び「同乗者」を記載する欄が あるが、特に「キロ数(開始時走行距離・終了時走行距離)」、「運転経路」及び「用件(具体的に)」を正確に記載することが求められていた。(前提事実⑷、甲A3、4、22、乙8、証人C)」に改める。 ⑶ 原判決14頁11行目冒頭から19行目末尾までを削除する。 2 審査請求前置主義の例外について 法69条は「この法律の規定に基づき保護の実施機関又は支給機関がした処 分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない。」と定め、本取消請求に係る訴えについては、いわゆる審査前置主義が採られているところ、本件では、審査請求は経られていない。一方、行政事件訴訟法8条2項2号は審査前置主義が採られている場合でも、「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるた め緊急の必要があるとき」には、審査請求に対する裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起できる旨を定めている。 前記1のとおり、被控訴人母は、膀胱がんを患った後、ストーマ(人工膀胱)を装着しており、生活保護停止処分を受けることで、必要費を支出できなくなれば、尿を体外に排出できなくなるおそれがあること、被控訴人子は、汎下垂 体機能低下症、視床下部障害及び糖尿病の治療を要していることに照らすと、本件停止処分によって、被控訴人らの生命に重大な支障をきたすおそれがあるということができ、本件は、上記「著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき」に当たる。 したがって、被控訴人母の取消請求に係る訴えは 処分によって、被控訴人らの生命に重大な支障をきたすおそれがあるということができ、本件は、上記「著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき」に当たる。 したがって、被控訴人母の取消請求に係る訴えは、適法である。 3 争点3(本件停止処分の違法性)について⑴ 法62条1項は、保護の実施機関が法27条の規定により被保護者に対し必要な指導又は指示をしたときは、被保護者はこれに従わなければならない旨を定め、同条3項は、被保護者がこの義務に違反したときは、保護の実施機関において保護の変更、停止又は廃止をすることができる旨を定めている。 本件停止処分は、被控訴人らが、法27条に基づき本件指示等を受けているにもかかわらず、本件車両の保有条件を遵守せず、指導指示内容の履行がされていないことを理由とするものであり、確かに、前提事実及び上記認定事実によれば、被控訴人らは、処分行政庁から、被控訴人子の通院で利用する以外の目的だけで本件車両の利用をしないこと及び本件車両を利用する たびに運転記録票へ正確に記録し当該運転記録票を毎月福祉事務所に提出 することを内容とする本件指示等を受けたにもかかわらず、本件車両を被控訴人子の通院以外にも利用していたこと及び運転記録票にその利用状況を正確に記録し提出することを怠ったことが認められる。 ⑵ しかし、そもそも生活保護法による保護は、生活に困窮する者に対し、困窮の程度に応じて、その最低限度の生活を保障すること等を目的として必要 な保護を行うものであり、保護の変更、停止又は廃止は被保護者の権利利益に重大な影響を及ぼし得るものであること、そして、法27条に基づく指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない旨定められていること(同条2項)に照らすと、被 権利利益に重大な影響を及ぼし得るものであること、そして、法27条に基づく指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない旨定められていること(同条2項)に照らすと、被保護者に対し、法27条に基づく必要な指導又は指示に従うべき義務に違反したことを理由と してその保護の変更、停止又は廃止をするに当たっては、当該指導又は指示の必要の程度やこれに対する違反の程度と、当該保護に関する処分をすることによって被保護者の生活に生ずる影響を考量し、その処分が適正な保護の実施のために必要かつ相当なものであることを要するというべきであり、その必要性又は相当性を著しく欠く場合には、行政権の裁量の逸脱・濫用とし て違法となるというべきである。 ⑶ これを本件についてみると、本件指示等は、被控訴人らに対し、①被控訴人子の通院で利用する以外の目的だけで本件車両の利用をしないこと、及び、②本件車両を利用するたびに運転記録票へ正確に記録し、当該運転記録票を毎月福祉事務所に提出することを指示等するものであるので、これらを、以 下、順に検討する。 アまず、上記①に関しては、被控訴人らは、確かに、本件車両を被控訴人子の通院で利用する場合に限って保有及び利用することを容認されたものではあったが、前記1の認定事実⑴アによれば、本件指示等がされた当時、被控訴人子だけではなく、被控訴人母においても通院の必要性があったこ とが認められるから、本件車両の利用目的を被控訴人子の通院に限定して それ以外の目的だけでの自動車の利用をしないよう指導すること、つまり、被控訴人母の通院のみの目的で利用することを制限する指導をすることが、当時必要であったとは考え難い。 また、本件車両に処分価値はなく(前記1の認定事実⑴ウ)、本件 ないよう指導すること、つまり、被控訴人母の通院のみの目的で利用することを制限する指導をすることが、当時必要であったとは考え難い。 また、本件車両に処分価値はなく(前記1の認定事実⑴ウ)、本件車両の維持費等は、被控訴人らの生活保護の範囲内で賄っていたこと(前記1の 認定事実⑴ウ)に照らすと、被控訴人らの日常生活に不可欠な買物等の必要な範囲において本件車両を利用することは、むしろ、被控訴人らが自立した生活を送ることに資する面があったというべきであり、補足性の観点からみても、被控訴人らが本件車両を上記範囲で利用することを厳格に制限する指導を行う必要性は低かったというべきである。そして、被控訴人 らは、処分行政庁による上記①の指導に大きく反して本件車両を遊興・娯楽等のために利用していたとか、被控訴人らが本件車両の利用に際し、通院や移動に要する費用やサービスを新たに要求したり、虚偽の申告をしたり、不正の手段を用いたりしてその費用を支出していたなどといった事実は、本件全証拠によっても認められない。 イさらに、上記②に関して、処分行政庁は、被控訴人らに対し、本件車両を利用するたびに、運転記録票に「キロ数(開始時走行距離・終了時走行距離)」、「運転経路」及び「用件(具体的に)」の必要事項を正確に記載するよう求めるとともに(前記1の認定事実⑵イ)、運転記録票を毎月福祉事務所に提出するよう求めたものであるが、被控訴人子の通院が、鈴鹿市の 自宅から四日市市の羽津医療センターへ月1回必要とされており(前記1の認定事実⑴イ)、おのずと月に必要な運行距離は分かることからすると、被控訴人らの本件車両の利用状況を把握するために、被控訴人らに上記の各事項を全て正確に記録することを指示する必要性は、相当低かったというべきである。 と月に必要な運行距離は分かることからすると、被控訴人らの本件車両の利用状況を把握するために、被控訴人らに上記の各事項を全て正確に記録することを指示する必要性は、相当低かったというべきである。 ウ他方、本件停止処分により被控訴人らが受ける不利益の程度について見 ると、前記1の認定事実⑴ア及びイによれば、本件停止処分時の被控訴人らの病状等は、被控訴人母につき、膀胱がんの手術によりストーマを購入しなければならない状況であり、被控訴人子については、定期的な投薬等がなければ生命に危険が生じる状況であったことが認められ、被控訴人母に対して保護の停止をすれば、被控訴人らの医療費等について支出が困難 になり、被控訴人らの日常生活だけではなく、生命の危険も生じかねず、被控訴人らが被る不利益は非常に重大なものであったと認められる。 なお、証人Cは、被控訴人子は障害者医療が受けられることから、医療費を一旦支払ったとしても全額返金される旨証言するが、証拠(甲A35、36)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人らは、本件停止処分時点にお いて、その一時的な支出をすること自体容易ではなかったことが認められるから、被控訴人子が障害者医療を受けられることをもって、本件停止処分により被控訴人らが被る不利益が重大なものであったことが否定されるものではない。 ⑷ 以上によれば、本件指示等の必要は低く、違反の程度は大きくないもので あった一方で、本件指示等に違反したことを理由としてされた本件停止処分は、被控訴人らに非常に重大な不利益を与えるものであったというべきであり、本件停止処分は、相当性を著しく欠くもので、行政権の裁量を逸脱した違法があるというべきである。 なお、被控訴人らは、本件停止処分について手続違反により違法であると も ったというべきであり、本件停止処分は、相当性を著しく欠くもので、行政権の裁量を逸脱した違法があるというべきである。 なお、被控訴人らは、本件停止処分について手続違反により違法であると も主張する。しかし、弁明の機会の付与について、前記1の認定事実⑵エ及びカの経緯からすれば、処分行政庁が被控訴人らに対してその機会を与えなかったものとまで評価することはできない。また、確かに本件停止処分の理由の記載の文字は小さすぎて読みにくいが、そのことから直ちに違法となるわけではなく、本件停止処分の理由には、被控訴人らが本件指示等に違反し たこと及び適用条文につき記載されていること(前提事実⑾、甲A23)か らすれば、被控訴人らは、いかなる事実に基づき、いかなる法令を適用して本件停止処分がされたかを了知し得たといえるから、本件停止処分につき、手続違反があったとは認められない。 ⑸ 以上に対し、控訴人は、被控訴人らが本件指示等に違反したことを理由とする処分の内容について、廃止ではなく、指示、指導違反の事実が除去され れば保護の再開が可能である停止にとどめていることからすれば、本件停止処分は正当であると主張する。 しかし、前記のとおり、本件停止処分によって被控訴人らの被る不利益は非常に重大なものであったというべきであり、処分を、廃止ではなく、停止にとどめたことをもって、違法性がないといえるものではない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 4 争点4(国家賠償請求の成否)について⑴ 次のとおり補正し、次項に当審における補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」第3の3に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア原判決17頁15行目「前記2の⑵イのとおり」を「上記3⑶ウの に当審における補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」第3の3に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア原判決17頁15行目「前記2の⑵イのとおり」を「上記3⑶ウのとおり」に改める。 イ原判決18頁冒頭から11行目「ものといえる。」までを、「そして、処分行政庁は、このような被控訴人らの極めて困難な生活状況や病状の実情等を十分に把握していたのであるから、被控訴人らが本件指示等に従わな いことを理由として法62条3項に基づく処分をするに当たっては、本件指示等の必要の程度やこれに対する違反の程度に照らして、その処分が適正な保護の実施のために必要かつ相当なものであるかを慎重に検討すべきであったにもかかわらず、証拠(甲A22、27、48、証人C)によれば、本件指示等の必要の程度やこれに対する違反の程度を問うことなく、 法27条による指示等に従うべき義務に違反したものとして硬直的に悪質 なものと評価し、本件停止処分をしたことが認められる。」に改める。 ウ原判決18頁24行目「また」から19頁2行目末尾までを、「また、本件においては、本件停止処分の効力の停止及び取消しを求めることの必要性又は緊急性が高く、弁護士に本件訴訟を委任する必要性があったといえること、本件における認容額、その他、本件に現れた事情を考慮すると、 相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害として、それぞれ5000円を認めるのが相当である。これによれば、被控訴人らの損害は、それぞれ5万5000円となる。」に改める。 ⑵ 当審における補充主張について控訴人は、処分行政庁は、令和3年7月9日の保有条件付き保有認定から 令和4年9月27日の本件停止処分までの約1年2か月半の期間内に、運転記録票の作成、提出に関して被 おける補充主張について控訴人は、処分行政庁は、令和3年7月9日の保有条件付き保有認定から 令和4年9月27日の本件停止処分までの約1年2か月半の期間内に、運転記録票の作成、提出に関して被控訴人ら側と22回も接触し、文書での指導も2回行うなどし、本件停止処分につき慎重な判断をしたものであるから、国家賠償法上の違法はないと主張する。 法27条3項は、指導指示は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強 制し得るものと解釈してはならないと定めており、指導又は指示に応諾するか否かは、一次的には、被控訴人らに委ねられた事項と解されるのであるから、1年以上にわたり、多数回、指導又は指示が繰り返されたことをもって、直ちに、本件停止処分につき慎重な判断がなされたと評価できるものではないし、上記のとおり、控訴人が、三重県弁護士会からの勧告書につき真摯な 検討をしていないことなども考慮すれば、処分行政庁の対応は、国家賠償法上も違法であるとする結論を左右するには至らない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 第4 結論以上によれば、被控訴人母の本件停止処分の取消請求は理由があり、被控訴人 らの国家賠償請求は、それぞれ5万5000円及びこれに対する令和4年9月2 7日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。 よって、原判決中、国家賠償請求に係る部分は一部失当であって、本件控訴は一部理由があるから、原判決の上記部分を変更することとして、主文のとおり判決する。なお、訴訟費用の負担については、事案の性質等に鑑み、行政事件訴訟 法7条、民事訴訟法67条2項、61条、64条ただし書を適用して、第1、2審を通じ全部控訴人の負担とする。 名古屋高等裁 する。なお、訴訟費用の負担については、事案の性質等に鑑み、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法67条2項、61条、64条ただし書を適用して、第1、2審を通じ全部控訴人の負担とする。 名古屋高等裁判所民事第4部裁判長裁判官中村さとみ 裁判官金谷和彦 裁判官松井洋

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