平成24年9月12日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成23年(行ケ)第10407号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年8月1日判決原告エムケーエスインストゥルメンツインコーポレイテッド同訴訟代理人弁護士根本浩同弁理士稲葉良幸佐藤睦大石幸雄被告特許庁長官同指定代理人村田尚英樋口信宏守屋友宏 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2010-5408号事件について平成23年8月2日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,後記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を後記2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が同請求は成 り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,平成15年4月14日,発明の名称を「負荷不整合信頼性および安定性のあるVHFプラズマ処理のための方法および装置」とする特許を出願したが(特願2004-507297。請求項の数24。パリ条約による優先権主張:平成14年5月20日,米国。甲3),平成21年11月9日付けで拒絶査定を受けたので,平成22年3月11日,これに対する不服の審判を請 004-507297。請求項の数24。パリ条約による優先権主張:平成14年5月20日,米国。甲3),平成21年11月9日付けで拒絶査定を受けたので,平成22年3月11日,これに対する不服の審判を請求した。 (2) 特許庁は,前記請求を不服2010-5408号事件として審理し,平成23年8月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その謄本は,同月12日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載本件審決が審理の対象とした特許請求の範囲の請求項1は,平成21年2月23日付け手続補正書(甲4)に記載された次のとおりのものである。以下,上記請求項1に係る発明を「本願発明」といい,本願発明に係る明細書(甲3)を,「本願明細書」という。文中の「/」は,原文の改行箇所を示す。 【請求項1】非線形負荷不整合状態に抵抗力のあるプラズマ処理システム用の無線周波数(RF)発生器装置であって,/RF信号を発生するように構成されたRF発振器と,/前記RF信号に応答し,プラズマチャンバ負荷を駆動するのに十分な電力を有するVHF・RF信号を生成するRF増幅器と,/前記増幅器に結合され,かつ広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離するように構成された広域帯VHF帯サーキュレータと,/を含む装置 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,本願発明が,後記アの引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。),後記イの引用例2に記載された技術的事項及び当業者に周知な事項等に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許 法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 ア引用例1:特開2000-31073号公報(甲1)イ引用例2:特開2002-110 に発明できたものであるから,特許 法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 ア引用例1:特開2000-31073号公報(甲1)イ引用例2:特開2002-110566号公報(甲2)(2) なお,本件審決が認定した引用発明,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明:真空容器内に,およそ20MHzないし500MHzの周波数範囲のVHF周波数から選択される周波数の高周波電力を投入してプラズマを生起させ,該プラズマにより処理を行うプラズマ処理装置であって,当該プラズマ処理装置は,プラズマ処理部と高周波電源部を有し,前記高周波電源部は,高周波を発振する高周波発振回路と,当該高周波発振回路に接続された,反射波を吸収する,反射波吸収負荷を具備するサーキュレーターからなる高周波電源回路と,入射,反射電力を検出する電力検出回路と,高周波ケーブルと,プラズマCVD装置の負荷との間のインピーダンスマッチングを行う整合回路とを有する装置イ一致点:プラズマ処理システム用の無線周波数(RF)発生器装置であって,RF信号を発生するように構成されたVHF・RF発振器と,前記RF信号を発生するように構成されたRF発振器と,前記RF信号に応答し,プラズマチャンバ負荷を駆動するのに十分な電力を有するVHF・RF信号を生成する高周波電力供給手段と,前記高周波電力供給手段に結合されたVHF帯サーキュレータと,を含む装置ウ相違点:本願発明は,RF信号に応答し,プラズマチャンバ負荷を駆動するのに十分な電力を有するVHF・RF信号を生成する「RF増幅器」を具備するとともに,VHF帯サーキュレータが,「広帯域」であって,「前記増幅器に結合され,かつ広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性 力を有するVHF・RF信号を生成する「RF増幅器」を具備するとともに,VHF帯サーキュレータが,「広帯域」であって,「前記増幅器に結合され,かつ広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離するように構成され」ていることにより,「非線形負荷不整合状態に抵抗力のある」装置であるのに対し,引用発明は,前記「RF増幅器」についての明示,及び,VHF帯サーキュレータが「広帯域」であるか否か明らかでないとともに,そ の機能についての明示がなく,「非線形負荷不整合状態に抵抗力のある」装置であるか否か明らかでない点(以下「本件相違点」という。) 4 取消事由容易想到性に係る判断の誤り第3 当事者の主張〔原告の主張〕(1) 本件審決について本件審決は,本件相違点について,高周波電力波形に歪みによって生じる高調波等による反射波やインピーダンス不整合の発生が線形に発生するのでなく,また広帯域において発生することは,当業者に明らかな事項であると認定した上で,これを引用発明に適用することにより,引用発明のVHF帯サーキュレータを「広帯域」とし,「プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離する」ために用いて「非線形負荷整合状態に抵抗力のある」装置とすることは,当業者が格別の困難なくなし得る事項である旨を説示する。 (2) 本願発明について本願発明における「非線形負荷不整合状態」とは,プラズマチャンバ負荷のインピーダンスが温度等の影響により,例えば「非常に高く」なっている状態から「劇的に低下」した状態まで変化することにより,RF増幅器と負荷との整合状態が非線形に変化する状態を示すものであって(ゆえに,本願発明のサーキュレータは,「広帯域」なのである。),プラズマ持続時間においてインピーダンスが まで変化することにより,RF増幅器と負荷との整合状態が非線形に変化する状態を示すものであって(ゆえに,本願発明のサーキュレータは,「広帯域」なのである。),プラズマ持続時間においてインピーダンスが単に不整合となった状態を想定するものではない(本願明細書【0010】)。そして,本願発明は,「プラズマ処理システム用の無線周波数(RF)発生器装置」を「非線形負荷整合状態」に対して抵抗力のあるものとするという課題を解決するために,当該装置が「広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離するように構成された広帯域VHF帯サーキュレータ」を含む構成としているのである。 (3) 引用発明について他方,引用発明においては,「放電電極のインピーダンスが大きくな」った状態を回避するために,「放電電極の形態としては,平板ではなく,一般に直棒状あるいは放射状あるいは櫛形状等の表面積の少ない棒状の形態とす」ることとしている(引用例1【0009】【0010】)。すなわち,引用発明は,大きいインピーダンスに対して,放電電極の形態を変更するという解決策を採用しており,これによって「放電電極のインピーダンスがかなり小さくな」った状態を前提として,そこで発生する「導入される高周波電力がゆがんで高調波を生じ易く,入射,反射電力が正確に読めない,マッチングが正確に合わせられないという問題を解決」することを課題としているのであって(引用例1【0010】【0018】),プラズマ処理装置の駆動中に大きいインピーダンスから小さいインピーダンスへと変化する状態を想定していない。すなわち,引用発明は,本願発明における,プラズマ処理システムの駆動中(例えば,点火時における過渡状態の間など)においてインピーダンスが劇的に変化することにより発生す 変化する状態を想定していない。すなわち,引用発明は,本願発明における,プラズマ処理システムの駆動中(例えば,点火時における過渡状態の間など)においてインピーダンスが劇的に変化することにより発生する「非線形負荷不整合状態」については,何ら考慮していない。 なお,被告は,放電電極の面積に応じて電極間容量が変化することとインピーダンスが変化することを同視して引用例1を解釈しているが,これは,電気インピーダンスと電極間容量という異なる技術用語の意味が同一であるとするものであって,引用例1の記載に反しており,技術的にも矛盾している。引用発明における「放電電極のインピーダンス」は,放電電極の表面積のみに基づくものではなく,放電電極が置かれた環境すなわちプラズマの状態変化等を考慮したものであると解すべきである。 (4) 引用発明に基づく本願発明の容易想到性についてしたがって,仮に,反射波やインピーダンス不整合の発生が線形に発生するのでなく,また,広帯域において発生することが当業者に明らかな事項であるとしても,当該事項は,引用発明が前提とする,放電電極のインピーダンスがかなり小さくな った状態とは異なるのであって,引用発明においては何ら想定されていないし,引用発明は,プラズマ点火時やプラズマ持続期間において放電電極のインピーダンスが大きく変化する状態を何ら想定していない。したがって,上記事項を引用発明に適用し,「高周波電源」を「非線形負荷不整合状態」に対して抵抗力のあるものとすることは,引用発明の課題とは異なるから,引用例1には,当該事項を適用することについて動機付けがない。したがって,引用発明の「サーキュレータ」を「広帯域」とし,「広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離する」ために用いる構成とする ることについて動機付けがない。したがって,引用発明の「サーキュレータ」を「広帯域」とし,「広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離する」ために用いる構成とすることについても,何ら動機付けがない。 (5) 結論原告は,本件相違点のうち,VHF帯サーキュレータ以外についての本件審決の判断を争うものではないが,VHF帯サーキュレータに関する本件審決の容易想到性についての判断には誤りがあるから,本件審決は,取り消されるべきである。 〔被告の主張〕(1) 本願発明について「非線形負荷不整合状態」に関する本願明細書(【0001】【0010】【0011】)の記載によれば,本願発明は,①「無線周波数(RF)発生器装置」と「プラズマ処理システム」とは,「電力供給源」と「負荷」の関係にあること,②「プラズマ処理システム」(プラズマ)は,「電力供給源」に対して「非線形負荷」(インピーダンスが非線形に変化する負荷)として作用(反応)し,その結果,「無線周波数(RF)発生器装置」との間で,かなりの「インピーダンス不整合」がもたらされること,③インピーダンス不整合は,プラズマの点火時及びプラズマ持続期間において動的に発生し,「無線周波数(RF)発生器装置」(のトランジスタ)の性能を変化(劣化)させることを,前提としているものと理解できる。 そうすると,本願発明の「非線形負荷不整合状態」とは,プラズマの点火時及びプラズマ持続期間において,プラズマ処理システムが無線周波数(RF)発生器装置に対して「非線形負荷」として作用して,インピーダンス「不整合」となる「状 態」のことを意味すると考えるのが合理的である。すなわち,「非線形負荷不整合状態」は,原告が主張するようにプラズマ点火時に限って発生するものではなく,プラ インピーダンス「不整合」となる「状 態」のことを意味すると考えるのが合理的である。すなわち,「非線形負荷不整合状態」は,原告が主張するようにプラズマ点火時に限って発生するものではなく,プラズマ持続期間においてもかなりの程度で発生するものである。そして,本願発明も,その無線周波数(RF)発生器装置を「プラズマ点火時の」非線形負荷不整合状態に抵抗力があるものとして特定されているわけではない。したがって,本願発明の「広域帯範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離するように構成された広帯域VHF帯サーキュレータ」の構成についても,本願明細書(【0033】【0068】)の記載からすると,具体的には,「プラズマインピーダンス等の任意の負荷不整合によって引き起こされる反射電力を,終端抵抗器を介して接地することによって分離及び抑制し,全体的な発生器/プラズマ負荷システムの安定性及び信頼性を保つ」ことを意味するものと解される。 (2) 引用発明について他方,引用例1の記載(【0009】【0010】)は,放電電極の形状が異なると電極間のインピーダンスの容量成分が異なることを説明するものであって,このこととプラズマのインピーダンスが動的に変化することとは,直接的な関係がない。 したがって,原告の主張は,プラズマのインピーダンスが動的に変化することとは直接関係のない事項をあえて持ち出し,引用発明ではインピーダンスの劇的な変化が想定されていないなどと主張するものであるにすぎない。 そして,プラズマ点火時の負荷インピーダンスの大きな低下は,チャンバ内ガスが電離することによって絶縁体状態から導電体状態に変化すること(プラズマの発生)に起因し,また,プラズマ持続期間における負荷インピーダンスの変化は,ガス種やプラズマ密度の変 な低下は,チャンバ内ガスが電離することによって絶縁体状態から導電体状態に変化すること(プラズマの発生)に起因し,また,プラズマ持続期間における負荷インピーダンスの変化は,ガス種やプラズマ密度の変動に起因する,という物理的な因果関係から明らかなとおり,プラズマが非線形負荷であること(プラズマのインピーダンスが非線形に変化すること)によってもたらされるインピーダンス不整合状態は,放電電極の形状にかかわらず,引用発明においても発生する事象である(乙1)。 また,本願明細書を参照しても,非線形負荷不整合状態が平行平板型の形状の放 電電極においてのみ発生する現象である旨の記載はなく,本願発明は,放電電極の形状を特定するものでもない。 さらに,引用例1に記載された電力検出回路は,マッチングを正確に合わせるために,入射及び反射電力を常時監視するものであるが(【0017】),これは,プラズマのインピーダンスが動的に変化することによってインピーダンス不整合状態がもたらされ,放電電極から反射波が戻ってくるからにほかならず,プラズマのインピーダンスが動的に変化しないものであるならば,マッチングは初期値のままでよく,反射電力を常時監視する必要はない。すなわち,プラズマが非線形負荷であることによってもたらされるインピーダンス不整合状態は,引用発明においても発生しており,かつ,引用発明は,非線形負荷不整合状態を想定していることが明らかである。 (3) 引用発明に基づく本願発明の容易想到性について前記のとおり,引用発明は,プラズマが非線形負荷であることによってもたらされるインピーダンス不整合状態を想定しているところ,インピーダンス不整合によりアンテナから戻ってくる反射波は,波形が歪み,高調波を多く含んでいる(引用例1【0016】【0017】,乙2)。 もたらされるインピーダンス不整合状態を想定しているところ,インピーダンス不整合によりアンテナから戻ってくる反射波は,波形が歪み,高調波を多く含んでいる(引用例1【0016】【0017】,乙2)。そして,引用発明は,波形が歪んだ反射波に対抗するために,方向性結合器と検波器との間にローパスフィルタを備えている(引用例1【図1】)から,波形が歪んだ反射波は,ローパスフィルタによって濾波されることなくサーキュレータに到達する。 引用例1には,上記サーキュレータの機能が明記されていないが,プラズマチャンバに配された電極と高周波電源部との間にサーキュレータを設けることにより,プラズマチャンバからの反射高周波電力をダミーロードに導いて,高周波電力の逆流を防止して機器の破損を防止することは,公知技術である(引用例2)。しかも,引用発明のサーキュレータは,反射波吸収負荷を具備している。 したがって,引用例1に接した当業者は,引用発明のサーキュレータを,アンテナから戻ってくる波形が歪んだ反射波を反射波吸収負荷に導いて,高周波発信回路 の破損を防止するためにあると理解するのが合理的である。そして,引用発明の反射波の波形は,歪んでいるのだから,引用発明のサーキュレータを,「広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離するように構成された広帯域VHF帯サーキュレータ」として,本願発明の構成を採用することには動機付けがあり,当業者は,これを容易に想到することができたというべきである。 (4) 結論よって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 本願発明について(1) 本願明細書の記載について本願発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおりであるところ,本願明細書(甲3)には の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 本願発明について(1) 本願明細書の記載について本願発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおりであるところ,本願明細書(甲3)には,おおむね次の記載がある。 ア本願発明は,高電力プラズマ処理システムに関し,特に,激しい非線形負荷不整合状態の下で,プラズマ処理システムにVHF高電力無線周波数エネルギを供給するための方法及び装置に関する(【0001】)。 イプラズマ処理システムは,半導体ウエハ上に所望のパターンを有する薄膜(マイクロプロセッサ等の集積回路(IC)やコンパクトディスク)を製造するために,半導体産業において広く用いられているが,無線周波数(RF)発生器によりもたらされるRF電力を用いて,低圧で不活性ガスによって満たされているプラズマチャンバ(ガラスの箱)内に高エネルギ環境を作り出すことで実現される(【0002】~【0005】)。しかし,チップ製造環境においては,プラズマエッチングプロセスだけで,全ウエハスクラップの半分まで占めることもあり得ることから,信頼性及び安定性は,プラズマツール性能を決定する極めて重要な要素である(【0005】)。そして,チップ製造に用いられる典型的なプラズマ処理装置は,一般に,RF電力発生器(VHF高電力発生器は,より高いチップの生産性及び再現性をもた らすので,魅力的である。),インピーダンス整合ネットワーク及びRF電力ケーブルによりシステムに結合されたプラズマチャンバが含まれる。プラズマチャンバは,2つの大きな平行電極が含まれるプラズマエッチングリアクタを内蔵し,少量のエッチングガスと,低い方の電極に置かれた処理すべきシリコンウエハで満たされる(【0006】~【0008】)。 ウ高電力RF発生器は,その出力インピーダ プラズマエッチングリアクタを内蔵し,少量のエッチングガスと,低い方の電極に置かれた処理すべきシリコンウエハで満たされる(【0006】~【0008】)。 ウ高電力RF発生器は,その出力インピーダンスが50オームの抵抗及び0オームのリアクタンスとなるように,通常設計されている。点火前段階では,チャンバにおけるガスは,イオン化されず,導電性ではない。したがって,プレート電極の負荷インピーダンスは,非常に高く,RF発生器出力インピーダンスと極端に不整合である。点火時に,リアクタの原料ガスは,RF電源からの電力の下でイオン化を始め,プラズマに変化し,その結果として,チャンバの負荷インピーダンスは,劇的に低下する。この過渡現象の間に,プラズマ負荷インピーダンスの著しい触れのために,RF発生器は,リアクタから反射電力を受ける。RF順方向電力がどんなに増加しても,低い負荷インピーダンスのために,結果として,発生電力が100%発生器に反射し返される可能性がある。これは,電流及び電力の消散又はRF発生器の電力増幅器モジュールにおけるトランジスタの電圧のオーバーストレスにつながる(【0010】)。また,プラズマ持続期間であっても,プラズマ密度は,数オーダの規模で変化し,その結果として,かなりのインピーダンス不整合がもたらされる。このように,プラズマ処理環境においては,プラズマは,動的で極端な非線形負荷として反応する(【0011】)。プラズマ処理システムは,チャンバ及びプラズマプロセスタイプ,ガスタイプ及び圧力,温度並びに他の変数に従い,広範囲な大きさ及び位相を備えた動的な非線形負荷として作用する。不整合な負荷及び反射電力のために,プラズマ処理システムに供給しているRF発生器の電力増幅器におけるトランジスタの性能が変化し,それによって,結果として,負荷に 備えた動的な非線形負荷として作用する。不整合な負荷及び反射電力のために,プラズマ処理システムに供給しているRF発生器の電力増幅器におけるトランジスタの性能が変化し,それによって,結果として,負荷によっては,RF電流及び電力消散ストレスがもたらされ,他の負荷には,過電圧ストレスがもたらされる。RF発生器の出力電力及び負荷によってもたらされる過渡的不整合の 激しさ次第によっては,電力増幅器におけるトランジスタ全体にわたる電圧が,その動作DC供給電圧の9倍を超え,トランジスタの絶縁破壊電圧の150%を超える可能性がある。このストレスのために,プラズマ処理システム全体の信頼性が,激減される(【0012】)。 エ本願発明の構成によって,著しい負荷不整合が発生するときであっても,安定性及び信頼性が向上した高電力RF・VHF発生器及びプラズマ処理システムが提供される(【0025】)。 オ本願発明の一構成において,分離部にはVHF帯サーキュレータが含まれ,このサーキュレータが増幅器に結合されて,プラズマチャンバ負荷の非線形性をRF増幅器から分離するように構成されている。本願発明の一構成において,サーキュレータは,一ポートから隣接ポートにRFエネルギを伝える一方で,逆方向においては,他のポートからエネルギを切り離す受動非可逆(一方向)フェライト素子である。サーキュレータの第3のポートは,終端抵抗器を介して,接地に結合されている(【0033】)。プラズマ処理システムの安定性及び信頼性は,プラズマの安定性及び信頼性に,プラズマの安定性は,発生器の安定性及び信頼性に,それぞれ大きく依存しているが,サーキュレータは,負荷の入力VSWRを激減させる(【0034】)。サーキュレータは,通過域における低い1.13VSWR及び十二分な広帯域への応用をも 性及び信頼性に,それぞれ大きく依存しているが,サーキュレータは,負荷の入力VSWRを激減させる(【0034】)。サーキュレータは,通過域における低い1.13VSWR及び十二分な広帯域への応用をもたらし,本願発明のプラズマ処理システムの安定性を十分に改善する(【0035】,図4~7)。 カプラズマリアクタは,極めて非線形的な負荷を課するので,入力電力の正弦波波形が歪み,高調波及び低調波形状の帯域外エネルギを生成する。本願発明の一構成において,低域通過フィルタ及び広域通過フィルタを含む高調波ネットワークが,方向性結合器及び整合ネットワークとの間に置かれ,プラズマ負荷の非線形性によって発生される帯域外信号を処理する(【0041】)。 キ電力増幅器の出力段階とプラズマ負荷との間にサーキュレータを組み込むことによって,半導体産業において使用されるものなどの高電力VHFプラズマシス テムには,高電力RF発生器装置により電力を供給することができる。サーキュレータによって,相互作用するプラズマインピーダンスが引き起こす反射電力の分離及び抑制がもたらされるが,反射電力は,さもなければ,全体的な発生器/プラズマ負荷システムの安定性及び信頼性を劣化させるであろう。さらに,プラズマ負荷の状態,RF発生器装置と負荷との間のケーブル長又は任意の負荷不整合にもかかわらず,サーキュレータによって,RF発生器装置は,性能パラメータに何の変化もなく,定格どおりに動作が可能となる。RF発生器装置は,かくして,開回路及び短絡負荷を始めとするかなりの負荷不整合においてまで動作することができる。 結果として,安定性及び信頼性において,著しい改善が達成される(【0068】)。 (2) 本願発明の「非線形負荷不整合状態」についてア本願発明は,「非線形負荷不整合状 で動作することができる。 結果として,安定性及び信頼性において,著しい改善が達成される(【0068】)。 (2) 本願発明の「非線形負荷不整合状態」についてア本願発明は,「非線形負荷不整合状態に抵抗力のあるプラズマ処理システム用の無線周波数(RF)発生装置」であり,「非線形負荷不整合状態に抵抗力のある」装置であることは,本件相違点にも含まれているところ,ここにいう「非線形負荷不整合状態」の意義は,一義的に明確であるとはいえない。 そこで,本願明細書の記載を参酌すると,そこには,前記(1)ウに記載のとおり,プラズマ点火時に,チャンバの負荷インピーダンスが劇的に低下するという過渡現象の間に,RF発生器がリアクタから反射電力を受けること(【0010】。以下「プラズマ点火時の場合」ともいう。)に加えて,プラズマ持続期間であってもかなりのインピーダンス不整合がもたらされること(以下「プラズマ持続期間の場合」ともいう。)を挙げて,プラズマ処理環境においては,プラズマが動的で極端な非線形負荷として反応すること(【0011】)についての記載があり,これを受けて,プラズマ処理システムがチャンバその他の変数に従い,広範囲な大きさ及び位相を備えた動的な非線形負荷として作用するため,当該システムの信頼性に問題が生じる(【0012】)との記載がある。そして,前記(1)エに記載のとおり,本願明細書によれば,本願発明は,著しい負荷不整合が発生するときであっても,その構成により安定性及び信頼性が向上した高電力RF・VHF発生器及びプラズマ処理システ ムが提供される(【0025】)ものであるところ,解決されるべき課題について記載している本願明細書のこの部分は,当該課題である「著しい負荷不整合が発生するとき」を具体的に特定していないばかりか,本願明細書には れる(【0025】)ものであるところ,解決されるべき課題について記載している本願明細書のこの部分は,当該課題である「著しい負荷不整合が発生するとき」を具体的に特定していないばかりか,本願明細書には,プラズマ処理システムが,それ自体,広範囲な大きさ及び位相を備えた動的な非線形負荷として作用する旨の記載があり(【0012】),ここにいう動的な非線形負荷として作用する場合も,具体的に特定されていない。したがって,本願発明が解決すべき課題である上記「著しい負荷不整合が発生するとき」とは,本願明細書のそれ以前の部分に記載された,プラズマ点火時の負荷インピーダンスの劇的な低下(【0010】。プラズマ点火時の場合)に加えて,プラズマ持続期間にもたらされるインピーダンス不整合(【0011】。プラズマ持続期間の場合)を含むものと認められる。 次に,本願発明による課題解決手段は,本願明細書によれば,前記(1)オ及びキに記載のとおり,増幅器に結合されたサーキュレータをプラズマ処理システムに組み込むことにより,上記プラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合に発生する反射電力をRF発生器から分離するというものであるが(【0033】~【0035】【0068】),単にインピーダンスの変化により生じる反射電力を分離するだけであれば,当該サーキュレータが広帯域VHF帯サーキュレータとして特定される必然性はない。したがって,上記サーキュレータが広帯域VHF帯サーキュレータとして特定されているのは,プラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合におけるインピーダンスの変化(不整合)が大きく,そのため強い反射電力を吸収する必要があること(【0012】)のほか,前記(1)カに記載のとおり,プラズマリアクタが極めて非線形的な負荷を課するので,入力電力の正弦波波形が歪み,高調波及び低 大きく,そのため強い反射電力を吸収する必要があること(【0012】)のほか,前記(1)カに記載のとおり,プラズマリアクタが極めて非線形的な負荷を課するので,入力電力の正弦波波形が歪み,高調波及び低調波形状の帯域外エネルギを生成することから,このようなプラズマ負荷の非線形性によって発生される帯域外信号を処理するため(【0041】)であると認められる。 そして,本願発明は,課題解決手段である上記広域帯VHF帯サーキュレータ等を含むことによって,「非線形負荷不整合状態に抵抗力のある」装置が実現するもの であるから,以上を総合すると,本願発明にいう「非線形負荷不整合状態」とは,プラズマ点火時の負荷インピーダンスの劇的な低下(【0010】。プラズマ点火時の場合)及びプラズマ持続期間にもたらされるインピーダンス不整合(【0011】。 プラズマ持続期間の場合)によりプラズマチャンバの負荷状態が動的(時間的)に変化し,かつ変化範囲が大きい結果,RF発生器に対する強い反射電力(【0012】)及び高調波成分(帯域外エネルギ)を含む反射波(【0041】)が生じる状態を意味するものと認められる。 イ以上に対して,原告は,本願発明がプラズマ持続時間における単なるインピーダンス不整合の状態(プラズマ持続期間の場合)を想定するものではない旨を主張する。 しかしながら,前記アに記載のとおり,本願明細書は,解決すべき課題である「著しい負荷不整合が発生するとき」を具体的に特定しておらず,プラズマ処理システムがそれ自体,動的な非線形負荷として作用する旨を記載しており,そのような作用が生じる場合を特定していないから,本願発明の課題は,本願明細書のそれ以前の部分に記載されたプラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合を含むものと認められるばかりか,本願明細書には, そのような作用が生じる場合を特定していないから,本願発明の課題は,本願明細書のそれ以前の部分に記載されたプラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合を含むものと認められるばかりか,本願明細書には,本願発明がプラズマ持続期間の場合を想定しないと認めるに足りる具体的な記載がない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 (3) 本願発明の課題及び課題解決手段について以上によれば,本願発明は,プラズマ処理システムにおいては,プラズマ点火時の負荷インピーダンスの劇的な低下(【0010】。プラズマ点火時の場合)及びプラズマ持続期間にもたらされるインピーダンス不整合(【0011】。プラズマ持続期間の場合)によりプラズマチャンバの負荷状態が動的(時間的)に変化し,かつ変化範囲が大きい結果,RF発生器に対する強い反射電力(【0012】)及び高調波成分(帯域外エネルギ)を含む反射波(【0041】)が生じる状態(「非線形負荷不整合状態」)が生じ,これが当該システムの安定性及び信頼性を損なうという課題 を解決するため(【0025】),当該システムにRF増幅器に結合された広帯域VHF帯サーキュレータを含めることにより,当該反射電力及び高調波成分を含む反射波を当該増幅器から分離し(【0033】~【0035】),その結果,RF発生器装置がプラズマ負荷の状態や任意の負荷不整合に関わりなく,かなりの負荷不整合においてまで動作することができるようにすることで,安定性及び信頼性が向上した高電力RF・VHF発生器及びプラズマ処理システムを提供するものである(【0025】【0068】)と認められる。 2 引用発明について(1) 引用例1の記載について引用例1には,おおむね次の記載がある(甲1)。 ア真空容器内に高周波電力を投入して,プラズマを生起させ 5】【0068】)と認められる。 2 引用発明について(1) 引用例1の記載について引用例1には,おおむね次の記載がある(甲1)。 ア真空容器内に高周波電力を投入して,プラズマを生起させ,該プラズマにより処理を行うプラズマ処理装置において,高周波電力の基本発振周波数がVHF周波数であり,高周波電源の入射電力及び/又は反射電力検出回路に,基本発振周波数を透過し,その高調波成分をカットするローパスフィルターを挿入したことを特徴とするプラズマ処理装置(【請求項1】)イこの発明は,プラズマによって処理を行う処理装置及び処理方法に関するものであるが(【0001】),この発明の発明者らは,VHF周波数のプラズマCVD法によって大面積に堆積膜を形成しようとしたところ,従来の一般的に用いられてきた平行平板型の放電電極では放電電極のインピーダンスが大きくなり,整合回路でマッチングがとれず,有効に電力を投入できないことが分かった(【0008】【0009】)。また,大面積に均一なプラズマを得ようとする場合,放電電極の形態としては,平板ではなく,一般に直棒状,放射状又は櫛形状等の表面積の少ない棒状の形態とすれば都合がよいが,この場合,放電電極のインピーダンスがかなり小さくなるために整合回路から放電電極までの間の浮遊容量の影響を大きく受けるようになり,整合回路から先で高周波の波形が歪みやすくて高調波を生じやすくなった結果,投入電力が正確に読みとれなくなるとともにマッチングも正確に合わせられ なくなり,高周波の投入電力の再現性が著しく低下するという問題があった(【0010】)。プラズマCVD法による堆積膜形成装置においては,高周波の投入電力は一般に高周波電源に設けた電力検出回路によって入射電力及び反射電力を読み取るが,常時電力を監視する う問題があった(【0010】)。プラズマCVD法による堆積膜形成装置においては,高周波の投入電力は一般に高周波電源に設けた電力検出回路によって入射電力及び反射電力を読み取るが,常時電力を監視する方向性結合器を用いた透過型の電力検出回路では基本発振周波数に対してのみ正しい値を示すように較正されている。そのため,整合回路から先で高周波の波形が歪み,高調波を生じると,高調波を多く含んだ反射波が高周波電源の電力検出回路に戻ってくるため,入射・反射電力が正確に読めなくなり,マッチングも正確に合わせることができない(【0017】)。 ウこの発明の目的は,導入される高周波電力が歪んで高調波を生じやすく,入射・反射電力が正確に読めない,マッチングが正確に合わせられないという問題を解決し,再現性よく,大面積にわたって均一にプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置等を提供することである(【0018】)。 エこの発明(プラズマ処理装置)の高周波電源部は,高周波を発振し,反射波を吸収する高周波電源回路と,入射・反射電力を検出する電力検出回路と,プラズマCVD装置の負荷との間のインピーダンスマッチングを行う整合回路と,高周波ケーブルとを有する(【0028】)。上記高周波電源回路は,高周波発振回路,サーキュレータ及び反射波吸収負荷からなり,上記電力検出回路は,方向性結合器,検波器,アンプ,メーター及びローパスフィルターからなり,当該ローパスフィルターは,方向性結合器と検波器との間に挿入されている(【0029】)。 オこの発明において用いられる高周波電力は,基本発振周波数がVHF周波数であり,これは,従来一般的に用いられている13.56MHz等のRF周波数よりも高く,2.45GHz等のマイクロ波周波数よりも低い周波数範囲を指し,およそ20MHzない 基本発振周波数がVHF周波数であり,これは,従来一般的に用いられている13.56MHz等のRF周波数よりも高く,2.45GHz等のマイクロ波周波数よりも低い周波数範囲を指し,およそ20MHzないし500MHzの周波数範囲である(【0055】【0056】)。 その範囲の中でも,プラズマ密度を高め,堆積速度の向上を望む場合には比較的高い周波数領域を選択し,大面積の均一性を望む場合には,より波長が長く大面積での均一性が高い,比較的低い周波数領域を選択する(【0057】)。 (2) 引用発明の課題及び課題解決手段についてア本件審決が認定した引用発明は,前記第2の3(1)アに記載のとおりであるところ,以上の引用例1の記載によれば,引用発明は,プラズマ処理システムにおいて,プラズマCVD装置に導入されるおよそ20MHzないし500MHzの周波数範囲である高周波電力が(【0055】【0056】),プラズマ処理部における放電電極のインピーダンス変化等により歪んで高調波を生じ,高調波を多く含んだ反射波が高周波電源の電力検出回路に戻ってくると入射・反射電力が正確に検出できず,インピーダンス整合回路においてマッチングが正確に合わせられないという課題を解決するため(【0010】【0011】【0018】),高周波電源の電力検出回路に,基本発振周波数を透過し,その高調波成分をカットするローパスフィルターを挿入することで(【請求項1】【0028】【0029】),再現性よく,大面積にわたって均一にプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置を提供するものである(【0117】)。 そして,前記(1)エに記載のとおり,引用発明の高周波電源部は,高周波電源回路を有しているが,当該高周波電源回路は,高周波発信回路,サーキュレータ及び反射波吸収負荷からなり ある(【0117】)。 そして,前記(1)エに記載のとおり,引用発明の高周波電源部は,高周波電源回路を有しているが,当該高周波電源回路は,高周波発信回路,サーキュレータ及び反射波吸収負荷からなり,高周波を発振するほか,反射波を吸収する役割を果たしている(【0028】【0029】)。 イ以上に対して,原告は,引用発明が大きいインピーダンスに対する解決策として放電電極の形態を変更するという解決策を採用し,これによりインピーダンスが小さくなった状態を前提としているから,例えばプラズマ点火時におけるインピーダンスの劇的な変化(プラズマ点火時の場合)を何ら考慮していない旨を主張する。 しかしながら,引用発明は,プラズマ処理装置である以上,点火によりプラズマ処理を開始するものであるところ,放電電極の形態を変更したとしても,プラズマ点火時におけるインピーダンスが大きく変化することは,明らかであって,引用発明がプラズマ点火時におけるインピーダンスの変化(プラズマ点火時の場合)を考 慮していないということはできない。 むしろ,引用例1には,引用発明が用いられる場合について特定をしていないから,引用発明は,プラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合の双方の状態を想定したものであると認めるのが自然であって,これに反する原告の上記主張は,採用できない。 3 引用発明に基づく本願発明の容易想到性について(1) 広帯域VHF帯サーキュレータについてア前記1(3)に記載のとおり,本願発明は,プラズマ処理システムにおいてプラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合にRF発生器に対する強い反射電力及び高調波成分(帯域外エネルギ)を含む反射波が生じる状態(「非線形負荷不整合状態」)が当該システムの安定性及び信頼性を損なうという課題を解決しようとする 期間の各場合にRF発生器に対する強い反射電力及び高調波成分(帯域外エネルギ)を含む反射波が生じる状態(「非線形負荷不整合状態」)が当該システムの安定性及び信頼性を損なうという課題を解決しようとするものである。他方,前記2(2)ア及びイに記載のとおり,引用発明は,プラズマ処理システムにおいてプラズマ処理部から生じる高調波を多く含んだ反射波のためにインピーダンス整合回路においてマッチングが正確に合わせられないという課題を解決しようとするものであって,プラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合の双方の状態を想定したものであり,本願発明と同様に,引用発明も,「非線形負荷不整合状態」においてプラズマ処理により生じる反射波から起因する問題を解決しようとするものである。このように,本願発明と引用発明には,解決すべき課題に重複する部分がある。 イ次に,前記2(2)アに記載のとおり,引用発明の高周波電源部は,高周波電源回路を有しているが,当該高周波電源回路は,サーキュレータを含むことで反射波を吸収する役割を果たしているものである。そして,技術分野を同じくする「高周波プラズマ生成装置」に係る引用例2には,サーキュレータと電気的に接続されて電力を消費する負荷によって,反射電力を分離処理する逆流防止回路を具備することにより,高周波電源の逆流・干渉による機器の破損を回避できることが記載されている(【0012】【0029】)ことを併せ考えると,引用発明におけるサーキュ レータは,プラズマ処理部からの反射波を,高周波電源の電力検出回路から分離する目的で設置されたものであることが明らかである。 また,前記2(2)アに記載のとおり,引用発明における上記反射波は,プラズマ処理部における放電電極のインピーダンス変化等により生じた高調波を多く含んだものである れたものであることが明らかである。 また,前記2(2)アに記載のとおり,引用発明における上記反射波は,プラズマ処理部における放電電極のインピーダンス変化等により生じた高調波を多く含んだものである。したがって,引用例1には,引用発明のサーキュレータを,このような高周波も分離できるように広帯域のものとすることで上記目的を達成することについて,示唆があるということができる。 ウしたがって,当業者は,引用発明に基づき,引用例2のうち前記イに記載の部分(【0012】【0029】)を参照することで,引用発明について,本件相違点のうち,本願発明の広帯域VHF帯サーキュレータに該当する構成(「前記増幅器に結合され,かつ広帯域範囲において前記プラズマチャンバ負荷の非線形性を前記RF増幅器から分離するように構成され」ていることにより,「非線形負荷不整合状態に抵抗力のある」装置)を採用することを容易に想到することができたものというべきである。 (2) 原告の主張について以上に対して,原告は,引用発明がプラズマ点火時のインピーダンスの変化を想定していないから,引用発明に基づき,プラズマ点火時の場合を想定した本願発明を想到することができない旨を主張する。 しかしながら,前記1(3)及び2(2)イに説示のとおり,本願発明及び引用発明は,いずれもプラズマ点火時及びプラズマ持続期間の各場合の双方を想定しているから,原告の上記主張は,前提を欠くものとして採用できない。 (3) RF増幅器について引用例2(甲2)には,プラズマ処理装置の高周波電源を発振器及びアンプによって構成することが記載されている。そして,引用発明,本願発明及び引用例2に記載の発明は,いずれも同一の技術分野に属するものであるところ,引用例2に記載のようにプラズマ処理装置の高周波電力を発振 よって構成することが記載されている。そして,引用発明,本願発明及び引用例2に記載の発明は,いずれも同一の技術分野に属するものであるところ,引用例2に記載のようにプラズマ処理装置の高周波電力を発振器及びアンプ(増幅器)により構 成することは,当業者の技術常識に属するものといえるから,本件相違点のうち,高周波電力を生成するものとして「RF増幅器」を具備する構成を採用することは,当業者が容易に想到することができたものというべきであり,原告も,この点については争わないものである。 (4) 小括以上によれば,当業者は,引用発明に基づいて,本件相違点に係る本願発明の構成に容易に想到することができたものというべきである。よって,本件審決の判断に誤りはない。 4 結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光
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