平成30(ワ)5506 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年3月24日 東京地方裁判所
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令和2年3月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第5506号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和2年2月18日判決 原告原田工業株式会社 同訴訟代理人弁護士高橋雄一郎阿部実佑季同訴訟代理人弁理士林佳輔 同補佐人弁理士荒井康行福永健司 被告株式会社ヨコオ 同訴訟代理人弁護士三村量一中島慧近藤正篤髙橋宗鷹福原裕次郎 同補佐人弁理士相田義明 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を生産し,譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,金4000万円及びこれに対する平成30年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,アンテナ装置の特許に係る特許権者であるところ,別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)は,上記特許に係る特許発明の技術的範囲に属するものである。 る金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,アンテナ装置の特許に係る特許権者であるところ,別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)は,上記特許に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張している。 そして,本件は,原告が,被告に対し,被告による被告製品の生産,譲渡等 は,上記特許権を侵害すると主張して,上記特許権に基づき,被告製品の生産,譲渡等の差止め,及び上記侵害行為を組成したものであるとして,被告製品の廃棄を求めるとともに,民法709条及び特許法102条3項に基づき,不法行為による損害賠償請求として,損害賠償金4000万円及びこれに対する平成30年3月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。)(1) 本件特許原告は,発明の名称を「アンテナ装置」とする特許権(特許第52376 17号。請求項の数は11である。以下,このうち請求項1に係る特許を「本件特許」という。)の特許権者である。原告は,本件特許につき,平成19年11月30日に特許出願をし,平成25年4月5日にその設定登録を受けた。 本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,訂正認容審決(訂正2014-390078号。平成26年9月29日審決確定登録),無効審判請求不成立 審決(無効2015-800040号。訂正請求が認められた上で,平成2 9年2月1日審決確定登録)を経て,後記のとおりの記載となるに至った。 (2) 本件発明本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,別紙特許公報の該当部分が上記各 で,平成2 9年2月1日審決確定登録)を経て,後記のとおりの記載となるに至った。 (2) 本件発明本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,別紙特許公報の該当部分が上記各訂正により訂正されたものであるところ(そのうち請求項1の記載を,以下「本件特許請求の範囲」といい,これに係る発明を「本件発明」という。 また,その明細書(図面を含む。)を「本件明細書」といい,その該当部分の記載を段落【0001】などと表すこととする。),かかる本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」などのようにいう。)。 A 車両に取り付けられた際に,車両から約70mm以下の高さで突出す るアンテナケースと,B 該アンテナケース内に収納されるアンテナ部C からなるアンテナ装置であって,D 前記アンテナ部は,面状であり,上縁が前記アンテナケースの内部空間の形状に合わせた形状であるアンテナ素子と,該アンテナ素子により 受信されたFM放送及びAM放送の信号を増幅するアンプを有するアンプ基板とからなり,E 前記アンテナ素子の給電点が前記アンプの入力に高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイルを介して接続され, F 前記アンテナ素子と前記アンテナコイルとが接続されることによりFM波帯で共振し,G 前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信し,H 前記アンテナコイルを介して接続される前記アンプによってFM放送及びAM放送の信号を増幅する I ことを特徴とするアンテナ装置。 (3) 被告の行為等被告は,被告製品(検乙1)を製造又は輸入し,これを日本国内 ンプによってFM放送及びAM放送の信号を増幅する I ことを特徴とするアンテナ装置。 (3) 被告の行為等被告は,被告製品(検乙1)を製造又は輸入し,これを日本国内で販売又は販売の申出をしている。 2 争点(1) 被告製品についての本件発明の技術的範囲への属否(文言侵害) ア構成要件Dの「面状」との文言の充足性(争点1)イ構成要件Dの「上縁が前記アンテナケースの内部空間の形状に合わせた形状であるアンテナ素子」との文言の充足性(争点2)ウ構成要件Eの「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」との文言の充足性(争点3) (2) 被告製品についての本件発明の技術的範囲への属否(均等侵害・争点4)(3) 本件特許の無効の抗弁の成否(本件特許には,次のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができないとの被告の主張の成否) ア無効理由1(本件発明が,アンテナ素子に加えて別のアンテナを組み込むことや,それらの間の間隔をどの程度開けるのかについて特定していないことに関してのサポート要件違反)の有無(争点5-1)イ無効理由2(本件発明の「面状であ…るアンテナ素子」に関するサポート要件違反)の有無(争点5-2) ウ無効理由3(本件発明の「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」に関するサポート要件違反及び明確性要件違反)の有無(争点5-3)エ無効理由4(本件発明の「アンテナ部」に関する明確性要件違反)の有無(争点5-4) オ 間に位置するアンテナコイル」に関するサポート要件違反及び明確性要件違反)の有無(争点5-3)エ無効理由4(本件発明の「アンテナ部」に関する明確性要件違反)の有無(争点5-4) オ無効理由5(後記公然実施発明1,2に基づく新規性・進歩性欠如)の 有無(争点5-5)カ無効理由6(国際公開第2006/061218号(乙30)記載の発明(以下「乙30発明」という。)に基づく進歩性欠如)の有無(争点5-6)キ無効理由7(中国特許出願公開第101000977号明細書(乙31) 記載の発明(以下「乙31発明」という。)に基づく進歩性欠如)の有無(争点5-7)ク無効理由8(特開平10-107542号公報(乙32)記載の発明(以下「乙32発明」という。)に基づく進歩性欠如)の有無(争点5-8)ケ無効理由9(特開2007-288757号公報(乙33)記載の発明 (以下「乙33発明」という。)に基づく進歩性欠如)の有無(争点5-9)コ無効理由10(本件発明の「面状」に関する明確性要件違反)の有無(争点5-10)サ原告の損害額(争点6) 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(構成要件Dの「面状」との文言の充足性)【原告の主張】被告製品の構成は,次のアないしオに照らすと,構成要件Dの「面状」との文言を充足する。 ア 「面」とは線の移動で生ずる図形のことをいい(甲5,乙3),「状」と は形や性質を表す語であるから(乙4),「面状」とは,線の移動で生ずる図形である面の性質を有するものであるといえ,その厚みより幅が大きい形状であればよい。しかして,被告製品の「エレメント」は,線の移動で生ずる図形であり,屈曲された厚さ約0.4mmの広がりのある金属であって,その厚 質を有するものであるといえ,その厚みより幅が大きい形状であればよい。しかして,被告製品の「エレメント」は,線の移動で生ずる図形であり,屈曲された厚さ約0.4mmの広がりのある金属であって,その厚みより幅が大きい形状であるから,上記の「面状」との文言を 充足する。 イ本件明細書には,「面状」のアンテナ素子について,厚みより幅が大きい形状の金属等の導電体を意味する旨記載され(段落【0023】,【0029】,【0030】),また,「導体損失が小さくなり,導体損失による電気的特性の劣化を防止することができる」ものと記載されているにとどまる(段落【0017】)。これらを含め,本件明細書において,「面状」との文言が, 一枚の「面」により形成されることに限定する記載は存せず,また,薄い金属が屈曲されて形成されることを排除する旨の記載も存しない。なお,本件明細書には,一枚の略平板状のアンテナ素子に係る実施例の記載があるが,本件発明は,かかる実施例に限定されるものではない。 ウ本件発明のアンテナ素子の形状を「面状」とする旨の訂正請求(乙6) は,細かく折れ曲がった導線を示す引用発明との相違をより明確にする趣旨であったものにすぎず,被告の主張するように,複雑な形状の面状を排除し,一枚の略平板状のものに限定する趣旨であったものではない。 エ被告製品のアンテナ利得は,被告製品につき,前件訴訟の第1審及び控訴審が「面状」との文言を充足するとしたアンテナ素子と同様の形状とす るべく,被告製品のエレメントに銅板を貼ったもの(以下「比較製品」という。)のアンテナ利得と比べて,ほぼ相違がない。そうすると,被告製品のエレメントも「面状」との文言を充足することとなる。 なお,本件発明に関する審決取消訴訟において,原告が, 下「比較製品」という。)のアンテナ利得と比べて,ほぼ相違がない。そうすると,被告製品のエレメントも「面状」との文言を充足することとなる。 なお,本件発明に関する審決取消訴訟において,原告が,引用発明につき,本件発明の面状のアンテナ素子のように,1枚の面として構成された ものではない旨述べたのは,飽くまで,細かく折れ曲がった導線である引用発明(乙1)の曲折導電層14と,本件発明の面状のアンテナ素子を区別する趣旨から述べたものであるにすぎない。 オ被告は,被告製品と同様のメアンダ形状であるアンテナ素子Bは,1枚の略平板状のアンテナ素子Aに比べて,導体損失が12.2倍となっている と述べるが,アンテナ素子Aの比較対象を,細かく折れ曲がった導線から なるアンテナ素子Cとしてみると,アンテナ素子Cの導体損失はアンテナ素子Aの917.29倍にも達している。そして,アンテナ素子Bを,アンテナ素子A,Cと比較してみると,アンテナ素子Bは,アンテナ素子Aと近しい性質を有する一方,アンテナ素子Cとは大きく異なる性質を有する。 また,アンテナ長についてみても,被告製品の形状のアンテナの性能(ア ンテナ利得)は,前件訴訟に照らし「面状」との文言を充足するといえる比較製品のアンテナ利得とほぼ相違がなく,そのアンテナ長とも異なるものではないといえる。 【被告の主張】被告製品は,次のアないしオに照らし,構成要件Dの「面状」との文言を 充足しない。 ア 「面」とは「平たいもの」を意味し(乙3),「状」とは「形や性質を表す語」を意味する(乙4)。このような文言の一般的意義に照らすと,「面状」という文言は,平たい形状を意味するものであり,被告製品の「エレメント」のように,金型による板金のくり抜きや折り 形や性質を表す語」を意味する(乙4)。このような文言の一般的意義に照らすと,「面状」という文言は,平たい形状を意味するものであり,被告製品の「エレメント」のように,金型による板金のくり抜きや折り曲げ,整形といった 工程を経て製造された,複雑な立体的形状を含まないことは,明らかである。 イ本件明細書には,「面状」のアンテナ素子としては,一枚の略平板状のアンテナ素子が記載されているのみである。すなわち,本件発明のアンテナ素子は,「横幅(L)」,「縦幅(h)」,「厚み」の3つの数値のみによって定 義されており(段落【0017】,【0023】,【0030】),このような3つの数値のみによって定義可能な「面状」のアンテナ素子は,一枚の略平板状のもの以外には存しない。 ウ原告は,本件発明のアンテナ素子の形状を「面状」とする旨の訂正請求を行ったものであるところ(乙6),その根拠とする本件明細書の段落【0 017】,【0023】,【0029】,【0030】の各記載をみても,「面状」 と言い得るアンテナ素子は,一枚の略平板状のもののみである。 エ被告製品と比較製品とを比較したとしても,被告製品のエレメントが「面状」に当たるかどうかを判断する上では,何ら意味がない。 原告は,本件発明に関する審決取消訴訟において,「面状」とは「1枚の面として構成されたもの」に限られる旨を主張する一方で(乙34),本件 訴訟においては,「面状」には「1枚の面として構成されたもの」以外も広く含まれると主張しており,このような主張は,禁反言の法理に反し許されない。 オ被告製品と同様のメアンダ形状であるアンテナ素子Bは,1枚の略平板状(「面状」のもの)であるアンテナ素子Aに比べて,導体損失が12.2 倍となっている ,禁反言の法理に反し許されない。 オ被告製品と同様のメアンダ形状であるアンテナ素子Bは,1枚の略平板状(「面状」のもの)であるアンテナ素子Aに比べて,導体損失が12.2 倍となっている(乙58)。また,被告製品のエレメントにおいては,そのジグザグの形状に沿って信号が通ることにより,1枚の略平板状のもの(「面状」のもの)よりもアンテナ長が長くなっている。これらによれば,被告製品は「面状」との文言を充足しない。 (2) 争点2(構成要件Dの「上縁が前記アンテナケースの内部空間の形状に合 わせた形状であるアンテナ素子」との文言の充足性)【原告の主張】構成要件Dの「上縁」には,被告製品の立体エレメントの上面のように,インナーケースの屈曲した天井面と略平行な上面部を有するように屈曲された薄い金属における,インナーケースの屈曲した天井面と略平行な上面部が 含まれるから,被告製品は,構成要件Dの上記文言を充足する。 【被告の主張】構成要件Dの「上縁」という文言は,広がりを持つ1枚の略平面状のアンテナ素子において,その中心部分に対する末端部分(四辺)のうち上方の辺を意味するところ,被告製品の立体エレメントは,上方の辺である「上縁」 を有するものではないから,構成要件Dの上記文言を充足しない。 (3) 争点3(構成要件Eの「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」との文言の充足性)【原告の主張】被告製品は,本件発明の「アンテナコイル」に相当するその導線の巻線部が,アンテナ素子の最下端とアンプ基板の上面に挟まれた空間に位置してい るから,螺旋状にぐるぐる巻かれたものでなく「アンテナコイル」に該当しない非巻線部の一部の位置にかかわらず,構 導線の巻線部が,アンテナ素子の最下端とアンプ基板の上面に挟まれた空間に位置してい るから,螺旋状にぐるぐる巻かれたものでなく「アンテナコイル」に該当しない非巻線部の一部の位置にかかわらず,構成要件Eの「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」との文言を充足する。 【被告の主張】 被告製品のコイルは,その一部が立体エレメントの最下端よりも上方に位置しているため,立体エレメントの最下端とアンプ基板の上面に挟まれた空間に位置するということはできないから,構成要件Eの「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」との文言を充足しない。 (4) 争点4(被告製品についての本件発明の技術的範囲への属否(均等侵害))【原告の主張】被告製品は,本件特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁)。 ア本件特許請求の範囲に記載された構成と被告製品とは,幅が極薄で広がりのある金属において,屈曲がなされているか否かという点,及び,幅1.5mmの隙間が存在するか否かという点において相違する。 イしかし,本件発明の従来技術に見られない特徴的部分は,FM放送の信号を増幅するアンプの入力にアンテナコイルを介して接続され,同アンテ ナコイルと接続されることによりFM波帯で共振する,約70mm以下の 高さのケース内に収納されるアンテナ素子で,FM波帯を受信する構成であるところ,上記アの相違部分は,このような本件発明の従来技術に見られない特徴的部分には当たらない。 ウ以上に併せて,本件の事実関係に照らせば,本件 されるアンテナ素子で,FM波帯を受信する構成であるところ,上記アの相違部分は,このような本件発明の従来技術に見られない特徴的部分には当たらない。 ウ以上に併せて,本件の事実関係に照らせば,本件では,上記判決で示された所定の要件が全て満たされるから,被告製品は,本件特許請求の範囲 に記載された構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属するというべきである。 【被告の主張】原告の上記主張は争う。本件の事実関係に照らせば,被告製品は,本件特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲 に属するものとはいえない。 (5) 争点5-1(無効理由1(本件発明が,アンテナ素子に加えて別のアンテナを組み込むことや,それらの間の間隔をどの程度開けるのかについて特定していないことに関してのサポート要件違反)の有無)【被告の主張】 本件特許請求の範囲の記載については,アンテナ素子に加えて別のアンテナを組み込むことや,それらの間の間隔をどの程度開けるのかについて特定していないことに関し,次のとおり,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,特許法36条6項1号に適合しないから,本件特許には,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して されたサポート要件違反の無効理由(同法123条1項4号)がある。 すなわち,本件発明は,限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置において,アンテナ素子に加えて更に別のアンテナ(平面アンテナユニット)を組み込むと既設のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという課題を解決するために(段落【000 8】),平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔を約0. 設のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという課題を解決するために(段落【000 8】),平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔を約0. 25λ以上とすることを最も主要な特徴とするものである(段落【0009】)。 それにもかかわらず,本件特許請求の範囲においては,①アンテナ素子に加えて別のアンテナ(平面アンテナユニット)を組み込むこと,及び,②アンテナ素子の下縁と上記別のアンテナの上面との間隔が0.25λ以上であることをいずれも特定していない。 このように,本件特許請求の範囲は,発明の課題を解決するために不可欠な手段(発明の効果を奏するために不可欠な手段)に係る記載を欠いており,その結果,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されていない発明を広範に包含し,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもないことになるから,サポート要件に違反するものである。 【原告の主張】本件特許には,次のとおり,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたサポート要件違反の無効理由(同法123条1項4号)は存しない。 ア本件明細書には,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制す ることのできる車両に取り付けられるアンテナ装置を提供するという課題が記載されており(段落【0002】~【0005】),これがまさに,本件発明の課題である。本件明細書の段落【0017】にも,本件発明の課題と解決手段が記載されており,段落【0017】に記載の「このような超小型のアンテナ素子31」とされた原因は,段落【0016】に記載さ れているように,アンテナケースの内部空間の制約という点にある。そして,本件特許請求の範囲においては,70mm 「このような超小型のアンテナ素子31」とされた原因は,段落【0016】に記載さ れているように,アンテナケースの内部空間の制約という点にある。そして,本件特許請求の範囲においては,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付けられるアンテナ装置を提供するという課題を解決するために不可欠な構成が記載されており,そうである以上,本件特許に,サポート要件違反はないといえる。 イ本件発明は,基礎出願や国際出願の内容を権利化したものであり,本件 明細書の段落【0008】に記載されている内容は,「プラスα」の内容であって,本件発明の内容となるものではない。 ウ被告は,上記課題は,特願2006-315297号により解決済みの背景技術の課題である旨をいうが,背景技術の課題であるからといって,本件発明の課題でないということはなく,同一の課題であっても,解決法 が異なれば,別発明として認定される。 (6) 争点5-2(無効理由2(本件発明の「面状であ…るアンテナ素子」に関するサポート要件違反)の有無)【被告の主張】本件特許請求の範囲の記載については,「面状であ…るアンテナ素子」に関 し,次のとおり,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,特許法36条6項1号に適合しないから,本件特許には,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたサポート要件違反の無効理由(同法123条1項4号)がある。 すなわち,原告が主張するように,本件発明における「面状」のアンテナ 素子の中に,一枚の略平板状のアンテナ素子だけではなく,線の移動によって生ずるあらゆる形状のアンテナ素子が含まれるとする場合には,そのようなアンテナ素子を採用したときに本件 面状」のアンテナ 素子の中に,一枚の略平板状のアンテナ素子だけではなく,線の移動によって生ずるあらゆる形状のアンテナ素子が含まれるとする場合には,そのようなアンテナ素子を採用したときに本件発明の課題を解決できるかどうかは,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から明らかではない。そうすると,本件特許請求の範囲の記載については,本件発明が発明の詳細な説明に記載し たものであることという,サポート要件に適合しない。 【原告の主張】本件特許には,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたサポート要件違反の無効理由(同法123条1項4号)は存しない。すなわち,本件明細書に記載された「面状」のアンテナ素子と は,線の移動で生ずる図形である,面の性質を有するものであり,厚みより 幅が大きい形状であって,導体損失による電気的特性の劣化を防止することができる形状の金属の導電体であるから,「導体損失における電気的特性の劣化を防止する」(段落【0017】)という課題を解決する構成であるものと当業者は認識するものである。 (7) 争点5-3(無効理由3(本件発明の「高さ方向において前記アンテナ素 子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」に関するサポート要件違反及び明確性要件違反)の有無)【被告の主張】アサポート要件違反本件発明においては,「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アン プ基板との間に位置するアンテナコイル」とあるのに対し,本件明細書には,アンテナ素子の最下端とアンプ基板の上面に挟まれた空間に位置するアンテナコイルしか記載されていない。そうすると,本件特許請求の範囲の記載については,本件特許には,特許法36条6項1号に規定する要件を満 テナ素子の最下端とアンプ基板の上面に挟まれた空間に位置するアンテナコイルしか記載されていない。そうすると,本件特許請求の範囲の記載については,本件特許には,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたサポート要件違反の無効理由 (同法123条1項4号)は存することとなる。 イ明確性要件違反本件発明においては,「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」とあるが,これだけでは,例えば,①アンテナコイル全体(巻線部分以外も含む。)がアンテナ素子の最下端よ りも下方に位置する場合,②アンテナコイル全体ではないが,巻線全体については,アンテナ素子最下端よりも下方に位置する場合,③巻線部分の一部がアンテナ素子最下端よりも下方に位置する場合などについて,そのいずれの構成が本件発明の技術的範囲に属するのか明らかではなく,第三者に不測の損害を及ぼす。そうすると,本件発明の,「高さ方向において前 記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」との 文言につき,「特許を受けようとする発明」が明確であるとはいえず,特許法36条6項2号に適合しないから,本件特許には,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた,明確性要件違反の無効理由(同法123条1項4号)がある。 【原告の主張】 ア本件特許には,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたサポート要件違反の無効理由(同法123条1項4号)は存しない。被告の主張は,非巻線部も「アンテナコイル」に該当することを前提とするが,そもそも非巻線部は「アンテナコイル」に該当しないから,非巻線部が高さ方向においてアンテナ素子と 23条1項4号)は存しない。被告の主張は,非巻線部も「アンテナコイル」に該当することを前提とするが,そもそも非巻線部は「アンテナコイル」に該当しないから,非巻線部が高さ方向においてアンテナ素子とアンプ基板との 間に位置することが本件明細書に記載されていないとしても,サポート要件違反となるものではない。 イ本件特許には,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた,明確性要件違反の無効理由(同法123条1項4号)は存しない。すなわち,本件発明の,「高さ方向において前記アンテ ナ素子と前記アンプ基板との間に位置するアンテナコイル」との記載は,「アンテナコイル」というものが「高さ方向において」,「前記アンテナ素子」と「前記アンプ基板」との「間」に位置するとの記載であって,請求項の記載として明確である。 (8) 争点5-4(無効理由4(本件発明の「アンテナ部」に関する明確性要件 違反)の有無)【被告の主張】本件特許には,「アンテナ部」との文言に関し,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた,明確性要件違反の無効理由(同法123条1項4号)が存する。すなわち,本件発明の構 成要件Dは,「アンテナ部」が,アンテナ素子とアンテナ基板とからなると するが,本件明細書の記載と異なるものであり,技術的な見地からしても不自然であって,第三者は,「アンテナ部」の意義をどのように解すべきか判断することができない。 【原告の主張】本件特許には,被告が主張するような明確性要件違反の無効理由(同法 123条1項4号)は存しない。本件発明の構成要件Dでは,「アンテナ部」が「アンテナ素子」と「アンプ基板」とからなることが明確に記載さ には,被告が主張するような明確性要件違反の無効理由(同法 123条1項4号)は存しない。本件発明の構成要件Dでは,「アンテナ部」が「アンテナ素子」と「アンプ基板」とからなることが明確に記載されているものであって,本件発明において,「アンテナ素子」と「アンテナ基板」とを「アンテナ部」と表現した上で,それらが「アンテナケース」内に収納される,ということは,明確である。 (9) 争点5-5(無効理由5(後記公然実施発明1,2に基づく新規性・進歩性欠如)の有無)【被告の主張】アビジュアル・ガレージ・インコーポレイテッドは,本件特許の特許出願日(平成19年11月30日)より前である平成18年1月から,AM放 送及びFM放送を受信するための車載アンテナとして,VGアンテナ(検乙4,5)を顧客に販売していた。 VGアンテナは,予め車両に設置されている標準アンテナのアンテナベース部分からポール部分(棒状の部分)を取り外し,当該ポール部分に替えて,VGアンテナを取り付けて使用することとなる(以下,取付け後の VGアンテナに係る発明を「公然実施発明1」,取付け前のVGアンテナに係る発明を「公然実施発明2」という。)ところ,上記出願日より前に,標準アンテナと組み合わせて利用されていた(乙42,71,90~98,107,108)。 イしかして,本件発明は,次のとおり,公然実施発明1と同一のものであ るから,本件特許には,特許法29条1項2号に違反する無効理由(同法 123条1項2号)がある。 (ア) 公然実施発明1のアンテナエレメントは,原告の主張を前提とすると,本件発明の「面状」に当たるものといえる(構成要件D)。 すなわち,原告は,厚みより幅が大きい形状(線ではない形状)であ (ア) 公然実施発明1のアンテナエレメントは,原告の主張を前提とすると,本件発明の「面状」に当たるものといえる(構成要件D)。 すなわち,原告は,厚みより幅が大きい形状(線ではない形状)であれば,「面状」に該当すると主張するところ,公然実施発明1のアンテナ エレメントは,その外形寸法は横幅約96.5mm,縦幅約38mm,メアンダ幅約2mmであるのに対し,厚さは約0.11mmの銅膜であるから(乙99),厚みより幅が大きい形状であるといえ,「面状」に当たる。 (イ) 公然実施発明1のコイルコードは,原告の主張を前提とすると,本 件発明の「アンテナコイル」に該当するといえる(構成要件E)。 すなわち,原告は,本件発明の「アンテナコイル」とは,アンテナ素子と接続されることによりFM波帯で共振させるためのインダクタンス値(L値)を有する螺旋状に巻いた電気の導線をいう旨主張する。しかして,インダクタンスの値(L値)が小さくなると共振周波数は高い方 にずれるものであるところ,公然実施発明1のコイルコードを直線状の導線と交換すると,共振周波数は高い方に大きく変化した(乙117~119)。これに照らせば,公然実施発明1のコイルコードはインダクタンスの値(L値)を有しているものであり,「アンテナコイル」に当たる。 (ウ) 公然実施発明1のコイルコードは,本件発明にいう「高さ方向にお いて前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置する」に当たるものといえる(構成要件E)。 すなわち,「面状」が一枚の略平板状を意味するものと解する場合と異なり,一枚の略平板状に限定されないと解する場合や,アンテナ素子が傾斜して設置されている場合には,アンテナ素子の最下端を基準とすべ き理由はなく,アンテナコイルが高 味するものと解する場合と異なり,一枚の略平板状に限定されないと解する場合や,アンテナ素子が傾斜して設置されている場合には,アンテナ素子の最下端を基準とすべ き理由はなく,アンテナコイルが高さ方向においてアンテナ素子とアン プ基板によって挟まれていると評価できれば,本件発明にいう「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置する」に当たるものといえる。 しかして,公然実施発明1のコイルコードは,アンプ基板よりも高い場所に位置しており,また,同コイルコードは,アンテナケースの中央 に設置されているのに対し,公然実施発明1のアンテナエレメントは,アンテナケースの天井に貼り付けられており,上記コイルコードよりも高い場所に位置している(乙100)。そうすると,公然実施発明1のコイルコードは,高さ方向においてアンテナエレメントとアンプ基板によって挟まれているから,本件発明にいう「高さ方向において前記アンテ ナ素子と前記アンプ基板との間に位置する」に当たるものである。 (エ) 公然実施発明1は,本件発明にいう「前記アンテナ素子と前記アンテナコイルとが接続されることによりFM波帯で共振」に当たるものといえる(構成要件F)。 まず,公然実施発明1のアンテナエレメントのみが本件発明の「アン テナ素子」に当たると解する場合は,次のとおりである。 すなわち,そもそも本件発明の上記「ことにより」という文言は,「接続されること」という事実と「共振し」という結果の事実的因果関係について意味するにすぎず,本件発明の構成要件Fは他の部材の存在を排除していない。そうすると,①アンテナ素子とアンテナコイルとが接続 していること,②アンテナ装置がFM波帯で共振することの2点を満たしていれ にすぎず,本件発明の構成要件Fは他の部材の存在を排除していない。そうすると,①アンテナ素子とアンテナコイルとが接続 していること,②アンテナ装置がFM波帯で共振することの2点を満たしていれば,本件発明にいう「前記アンテナ素子と前記アンテナコイルとが接続されることによりFM波帯で共振」に当たるというべきところ,公然実施発明1は,上記を満たしている。 また,これと異なり,公然実施発明1のアンテナエレメント及びフラ クタルアンテナとが,併せて本件発明の「アンテナ素子」に当たると解 する場合でも,「アンテナ素子」(アンテナエレメント及びフラクタルアンテナ)と「アンテナコイル」(コイルコード)は電気的に接続されており,FM波帯で共振するから,やはり公然実施発明1は,上記を満たしているといえる。 ウ仮に,本件発明の「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基 板との間に位置する」(構成要件E)につき,アンテナコイルがアンテナ素子の最下端よりも下方に位置することを要すると解したとしても,本件発明は,公然実施発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) すなわち,上記の場合,公然実施発明1には,次の相違点に係る本件発明の構成を除き,本件発明のその余の構成が開示されていることとなる。 (相違点)本件発明のアンテナコイルは,「高さ方向において前記アンテナ素子と 前記アンプ基板との間に位置する」(構成要件E)のに対し,公然実施発明1のコイルコードは,アンテナエレメントの最上端よりも下方に位置するが,その最下端及びアンプ基板よりも上方に位置している点。 (イ) 上 プ基板との間に位置する」(構成要件E)のに対し,公然実施発明1のコイルコードは,アンテナエレメントの最上端よりも下方に位置するが,その最下端及びアンプ基板よりも上方に位置している点。 (イ) 上記の相違点を具体的にみると,本件発明と公然実施発明1とは,単に,公然実施発明1のコイルコードの巻線部分がアンテナエレメント の最下端よりも上方に位置している点においてのみ相違するものである。 しかるに,本件明細書の発明の詳細な説明には,アンテナコイルとアンテナ素子及びアンプ基板の物理的な位置関係に関する記載は一切存せず,アンテナコイルを「高さ方向において前記アンテナ素子と前記アンプ基板との間に位置」させることの技術的意義についても,全く記載が ない。そして,アンテナコイルは,アンテナ素子とアンプ基板とを電気 的に接続していることが重要なのであり,アンテナコイルがアンテナ素子の最下端よりも上方に位置しているか否かによって,アンテナの性能に有意な差が出るものではない。そうすると,アンテナコイルの巻線部分がアンテナ素子の最上端よりも下方に位置するもののアンテナ素子の最下端よりも上方に位置している構成とするか否かは,当業者が適宜調 整しうる設計事項にすぎない。 したがって,当業者であれば,公然実施発明1に基づき本件発明を想到することは容易であったものといえる。 エ本件発明は,公然実施発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違 反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 すなわち,公然実施発明2は,標準アンテナのアンテナベース部分に係る構成を除き,公然実施発明1と同一であり,本件発明とは,アンプ基板を備えたアンテナベースとVGアンテナとが 3条1項2号)がある。 すなわち,公然実施発明2は,標準アンテナのアンテナベース部分に係る構成を除き,公然実施発明1と同一であり,本件発明とは,アンプ基板を備えたアンテナベースとVGアンテナとが接続されていない点においてのみ相違するものである。しかして,公然実施発明2に係るVGアンテ ナは,標準アンテナのアンテナベース部分と接続して使用することが予定されていたこと(乙42,72,73),実際に,VGアンテナを取り付けることが可能な標準アンテナを搭載した車種のうち,アンテナベースにアンプ基板を備えているものが存在していたこと(乙42,71)などに照らせば,当業者であれば,公然実施発明2に基づき本件発明を想到するこ とは容易であったものといえる。 【原告の主張】ア公然実施発明1,2に係るVGアンテナが,本件特許の特許出願日(平成19年11月30日)より前に販売されていた事実も,被告が主張するような標準アンテナと組み合わせて利用されていた事実もなく,被告が挙 げる各証拠はこれらの事実を証明するに足りるものではない。 イ公然実施発明1は,本件発明の「アンテナコイル」,「アンテナ素子」等を有していない。すなわち,公然実施発明1のコイルコードは,特定の周波数に共振するアンテナとしてその役割を果たすコイルではなく,本件発明の「アンテナコイル」に該当しない。また,公然実施発明1では,アンテナエレメントとコイルコードが接続されることによりFM波帯で共振 する構成としているのではなく,アンテナエレメント,フラクタルアンテナ及びコイルコードが接続されることによりFM波帯で共振する構成となっているものである。 そうすると,本件発明が,公然実施発明1と同一のものであるとはいえないから,本件特許には,特 ラクタルアンテナ及びコイルコードが接続されることによりFM波帯で共振する構成となっているものである。 そうすると,本件発明が,公然実施発明1と同一のものであるとはいえないから,本件特許には,特許法29条1項2号に違反する無効理由(同 法123条1項2号)はない。また,両者の相違点は大きく,本件発明は,公然実施発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,進歩性は欠如しておらず,本件特許に,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)はない。 ウまた,本件発明が,公然実施発明2に基づいて容易に発明をすることが できたものであるともいえないから,進歩性は欠如しておらず,本件特許に,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)はない。 (10) 争点5-6(無効理由6(乙30発明に基づく進歩性欠如)の有無)【被告の主張】 本件発明は,次のとおり,乙30発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア乙30発明には,次の相違点に係る本件発明の構成を除き,本件発明のその余の構成が開示されている。 (相違点) 本件発明は,アンテナケースが車両に取り付けられた際に,「車両から約70mm以下の高さ」で突出するものであるのに対し(構成要件A),乙30発明の非導電カバーは,車両から突出する高さを約161mmより低くすべきことしか記載されていない点。 イ本件特許の特許出願時,わが国及びEUには,シャークフィンアンテナ の車体表面からの突出量は70mmを超えてはならないという規制が存在していたから(乙48,49),乙30発明の いない点。 イ本件特許の特許出願時,わが国及びEUには,シャークフィンアンテナ の車体表面からの突出量は70mmを超えてはならないという規制が存在していたから(乙48,49),乙30発明のアンテナケースについて,規制に適合させるために,車両に取り付けられた際に車両から約70mm以下の高さで突出するようにすることは,乙30発明の課題からみても当業者を動機付ける示唆が存在し,当業者が当然に試みることであることなど に照らせば,当業者であれば,乙30発明に基づき上記相違点に係る本件発明の構成を想到することは容易であったものといえる。 【原告の主張】本件発明は,乙30発明と対比すると,被告が主張する相違点を含め,構成要件A,B,D,Eに係る相違点があり,これらが当業者にとり容易想到 であるとはいえず,乙30発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,進歩性は欠如しておらず,本件特許に,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)はない。 (11) 争点5-7(無効理由7(乙31発明に基づく進歩性欠如)の有無)【被告の主張】 本件発明は,次のとおり,乙31発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア乙31発明には,次の相違点①,②に係る本件発明の構成を除き,本件発明のその余の構成が開示されている。 ① 本件発明は,アンテナケースが車両に取り付けられた際に,「車両から 約70mm以下の高さ」で突出するものであるのに対し,乙31発明のアンテナハウジング1は,車両から突出する高さが特定されていない点。 ② 本件発明は,アンテナ素子 た際に,「車両から 約70mm以下の高さ」で突出するものであるのに対し,乙31発明のアンテナハウジング1は,車両から突出する高さが特定されていない点。 ② 本件発明は,アンテナ素子の給電点がアンテナコイルを介して接続されているものであるのに対し,乙31発明においては,「アンテナ接続部材14」としてコイルを使用することが明示されていない点。 イ前記(10)イと同様の理由により,当業者であれば,乙31発明に基づき上記相違点①に係る本件発明の構成を容易に想到することができた。また,小型の車載用アンテナを提供するためにアンテナ素子にコイルを付加することは,本件特許の特許出願当時,周知技術であったから(乙51~53,64~67),乙31発明の課題からみて当業者に対する動機付けの示唆が 存在することに照らし,当業者は,乙31発明に周知技術を適用して,上記相違点②に係る本件発明の構成を容易に想到することができた。 【原告の主張】本件発明は,乙31発明と対比すると,被告が主張する相違点を含め,構成要件A,D,E,F,Hに係る相違点があり,これらが当業者にとり容易 想到であるとはいえず,乙31発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,進歩性は欠如しておらず,本件特許に,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)はない。 (12) 争点5-8(無効理由8(乙32発明に基づく進歩性欠如)の有無)【被告の主張】 本件発明は,次のとおり,乙32発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア乙32発明には,次の相違点①,②に係る本件発明の構成を除き, することができたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア乙32発明には,次の相違点①,②に係る本件発明の構成を除き,本件発明のその余の構成が開示されている。 ① 本件発明は,アンテナ素子の給電点が「…アンテナコイル」を介して 接続されているものである(構成要件E)のに対し,乙32発明では,アンテナエレメント18がアンプ回路(24,26)に直接接続されている点。 ② 本件発明は,アンテナケースが車両に取り付けられた際に,「車両から約70mm以下の高さ」で突出するものである(構成要件A)のに対し, 乙32発明の一体的なケースは,車両から突出する高さが特定されていない点。 イしかして,前記(11)イと同様の理由により,当業者は,乙32発明に周知技術を適用して,上記相違点①に係る本件発明の構成を容易に想到することができ,また,前記(10)イと同様の理由により,乙32発明に基づき 上記相違点②に係る本件発明の構成を容易に想到することができた。 【原告の主張】本件発明は,乙32発明と対比すると,被告が主張する相違点を含め,構成要件A,D,E,F,Hに係る相違点があり,これらが当業者にとり容易想到であるとはいえず,乙32発明に基づいて容易に発明をすることができ たものであるとはいえないから,進歩性は欠如しておらず,本件特許に,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)はない。 (13) 争点5-9(無効理由9(乙33発明に基づく進歩性欠如)の有無)【被告の主張】本件発明は,次のとおり,乙33発明に基づいて容易に発明をすることが できたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法 由9(乙33発明に基づく進歩性欠如)の有無)【被告の主張】本件発明は,次のとおり,乙33発明に基づいて容易に発明をすることが できたものであるから,進歩性が欠如し,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 ア乙33発明には,次の相違点①~③に係る本件発明の構成を除き,本件発明のその余の構成が開示されている。 ① 本件発明と異なり,乙33発明では「レードーム200」の突出量が 特定されていない点。 ② 本件発明と異なり,乙33発明では,コイルが介在するかどうか不明である点。 ③ 本件発明と異なり,乙33発明では,アンプによってFM放送の信号が増幅されるかどうか不明である点。 イしかして,前記(10)イと同様の理由により,当業者は,乙33発明に基 づき上記相違点①に係る本件発明の構成を容易に想到することができ,また,前記(11)イと同様の理由により,乙33発明に基づき上記相違点②に係る本件発明の構成を容易に想到することができた。さらに,アンプによって,AM放送の信号のみならずFM放送の信号をも増幅することは,公然実施発明1及び2,乙31発明並びに乙32発明にみられるとおり,本 件特許の特許出願当時,周知技術であり,当業者は,乙33発明に基づき上記相違点③に係る本件発明の構成を容易に想到することができた。 【原告の主張】本件発明は,乙33発明と対比すると,被告が主張する相違点を含め,構成要件A,B,D,E,F,Hに係る相違点があり,これらが当業者にとり 容易想到であるとはいえず,乙33発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,進歩性は欠如しておらず,本件特許に,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条 容易想到であるとはいえず,乙33発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,進歩性は欠如しておらず,本件特許に,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)はない。 (14) 争点5-10(無効理由10(本件発明の「面状」に関する明確性要件違反)の有無) 【被告の主張】本件発明の「面状」との文言につき,「特許を受けようとする発明」が明確であるとはいえず,特許法36条6項2号に適合しないから,本件特許には,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた,明確性要件違反の無効理由(同法123条1項4号)がある。すなわち,本件発明の「面 状」に関し,原告は,線の移動で生ずる図形であるというものの,他方で, 「線そのもの」なのか「線ではない形状」なのかという点において,相互に矛盾する主張をしており,このような原告の主張を前提とすると,「線の移動で生ずる図形」の範囲を一貫して解釈することは不可能である。しかも,「線そのもの」と「線ではない形状」との具体的な境界を現実に観念することはできず,導体損失という点でみても,両者の境界をその具体的な値によって 定めることは不可能である。 【原告の主張】本件発明の「面状」との文言につき,「特許を受けようとする発明」は明確であり,本件特許に明確性要件違反の無効理由があるとの旨の被告の上記主張は失当である。すなわち,「面状」とは,厚みよりも幅が大きく(平たく), 線の移動で生ずる図形の形や性質を有することを意味し,請求項の記載がそれ自体明確であり,本件明細書の記載によってこれが不明確になることもない。 (15) 争点6(原告の損害額)【原告の主張】 被告製品の平成25年4月5日から現在 味し,請求項の記載がそれ自体明確であり,本件明細書の記載によってこれが不明確になることもない。 (15) 争点6(原告の損害額)【原告の主張】 被告製品の平成25年4月5日から現在までの売上合計は5億円を下らない。そして,原告が第三者に本件特許を実施許諾する場合における実施料率は8%を下らない。 よって,原告が,被告製品の製造,販売行為に対し,被告から受けるべき金員の額は,上記売上合計の8%である4000万円を下らない(特許法1 02条3項)。 【被告の主張】原告の上記主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件事案に鑑み,まず,争点5-1(無効理由1(本件発明が,アンテナ素 子に加えて別のアンテナを組み込むことや,それらの間の間隔をどの程度開け るのかについて特定していないことに関してのサポート要件違反)の有無)について判断する。 (1) 特許請求の範囲の記載が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記 載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高判平成17年11月11日判例タイムズ1192号164頁参照)。 そこで検討するに,本件特許請求の範囲は,前記第2の1のとおりであり,車両から約70mm以下の高さという限られた空間のアンテナケースに収納されるアンテナとして,アンテナ素子についての記載があるのみで,アンテナ素子とは別のアンテナ(平 ,前記第2の1のとおりであり,車両から約70mm以下の高さという限られた空間のアンテナケースに収納されるアンテナとして,アンテナ素子についての記載があるのみで,アンテナ素子とは別のアンテナ(平面アンテナユニット)の存在の有無や,同アンテナ(平面アンテナユニット)とアンテナ素子との位置関係について, 何ら具体的構成を記載しないまま,アンテナ素子とアンテナコイルとが接続されることによりFM波帯で共振する構成のものとなっているものである。 そうである以上,本件特許請求の範囲は,上記のような限られた空間のアンテナケースに収納されるアンテナとして,アンテナ素子とは別のアンテナ(平面アンテナユニット)が存在しない構成や,同アンテナ(平面アンテナユニ ット)がアンテナ素子と様々な位置関係において存在する構成が含まれているものといわざるを得ない。 (2) しかして,本件明細書には,発明の詳細な説明として,次の記載がある(甲2)。 ア技術分野 【0001】本発明は,少なくともFM放送を受信可能な車両に取り付け られる低姿勢のアンテナ装置に関するものである。 イ背景技術【0002】車両に取り付けられる従来のアンテナ装置は,一般にAM放送とFM放送を受信可能なアンテナ装置とされている。従来のアンテナ装置では,AM放送およびFM放送を受信するために1m程度の長さのロッ ドアンテナが用いられていた。このロッドアンテナの長さは,FM波帯においてはおよそ1/4波長となるが,AM波帯においては波長に対してはるかに短い長さとなることからその感度が著しく低下する。…【0003】ロッド部を短くした従来のアンテナ装置101を車両102に取り付けた構成を図23に示す。図23に示すように,従来のアンテナ はるかに短い長さとなることからその感度が著しく低下する。…【0003】ロッド部を短くした従来のアンテナ装置101を車両102に取り付けた構成を図23に示す。図23に示すように,従来のアンテナ 装置101は車両102のルーフに取り付けられており,車両102から突出しているアンテナ装置101の高さh10は約200mmとされている。…ウ発明が解決しようとする課題【0004】このような従来のアンテナ装置101では,ロッド部が車体 から大きく突出しているため車両の美観・デザインを損ねると共に,車庫入れや洗車時等に倒したロッド部を起こし忘れた場合,アンテナ性能が失われたままになるという問題点があった。また,アンテナ装置101は車外に露出しているため,ロッド部が盗難にあう恐れも生じる。 …このような小型アンテナの放射抵抗Rrad は,600~800×(高さ/ 波長)2として表されるように高さの2乗に比例してほぼ決定されるようになる。例えば,アンテナ高を180mmから60mmに縮小すると約10dBも感度が劣化するようになる。…【0005】そこで,出願人は特願2006-315297号において,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車 両に取り付けられるアンテナ装置を提案した。ところで,車両には地上波 ラジオ放送,衛星ラジオ放送やGPS等の多種多様な用途に応じたアンテナが搭載されていることがある。しかし,各種メディア対応の各アンテナが増加するに従い,車両に搭載するアンテナの数が増加し,車両の美観は損なわれると共に,取り付けるための作業時間も増大する。そこで,アンテナ装置に複数のアンテナを組み込むことが考えられる。一例として,上 記提案したアンテナ装置に,例えばSD 増加し,車両の美観は損なわれると共に,取り付けるための作業時間も増大する。そこで,アンテナ装置に複数のアンテナを組み込むことが考えられる。一例として,上 記提案したアンテナ装置に,例えばSDARS(SatelliteDigitalAudioRadioService: 衛星デジタルラジオサービス)を受信するアンテナを組み込んだアンテナ装置の構成例を示す平面図を図24に示し,そのアンテナ装置の構成例を示す側面図を図25に示す。 【0008】アンテナ装置200の水平面内の放射指向特性を図26に示 す。ただし,仰角は20°とされている。図26に示す放射指向特性を参照すると,無指向性とはなっておらず,特に,アンテナ素子231が存在している方向(180°)において放射指向特性が落ち込んでいることが分かる。これは,アンプ基板234の上に設置した平面アンテナユニット235の設置高が高くなり,グランド面と平面アンテナユニット235の パッチ素子との間隔が大きくなり,平面アンテナユニットの電気的特性,特に放射指向特性に影響を及ぼすことになるからである。さらに,平面アンテナユニット235の放射界において,低仰角放射範囲に平面アンテナユニット235の動作周波数の1/2波長程度の大きな金属体であるアンテナ素子231が存在しており,このアンテナ素子231による反射・ 回折等の影響で,平面アンテナユニット235の放射指向特性が大きく劣化する傾向にあるからである。このように,限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置にさらにアンテナを組み込むと既設のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという問題点があった。 そこで,本発明は限られた空間しか有していないアンテナケースを備え らにアンテナを組み込むと既設のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという問題点があった。 そこで,本発明は限られた空間しか有していないアンテナケースを備え るアンテナ装置にさらにアンテナを組み込んでも良好な電気的特性を得ることができるアンテナ装置を提供することを目的としている。 エ課題を解決するための手段【0009】上記目的を達成するために,本発明は,立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と,アンテナ基板と重 ならないように配置されているアンプ基板と,アンテナ素子の直下であって,前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットとを備え,平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に,平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることを最も主要な特徴として いる。 オ発明の効果【0010】本発明によれば,(中略)平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に,平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることから,アン テナ素子の影響を受けることなく平面アンテナユニットの水平面内の放射指向特性を無指向性とすることができると共に,良好なゲイン特性が得られるようになる。 カ発明を実施するための最良の形態【0011】…図1に示すように,本発明にかかる第1実施例のアンテナ 装置1は車両2のルーフに取り付けられており,車両2から突出している高さhは約75mm以下で好適には約70mm以下とされている。第1実施例のアンテナ装置1は後述するアンテナケースを備え極めて低姿勢とされてい 両2のルーフに取り付けられており,車両2から突出している高さhは約75mm以下で好適には約70mm以下とされている。第1実施例のアンテナ装置1は後述するアンテナケースを備え極めて低姿勢とされているが,AM放送,FM放送および衛星ラジオ放送を受信することが可能とされている。… 【0012】…本発明の第1実施例にかかるアンテナ装置1は,アンテナ ケース10と,このアンテナケース10内に収納されているアンテナベース20と,アンテナベース20に取り付けられているアンテナ基板30と,アンプ基板34と,平面アンテナユニット35から構成されている。アンテナケース10の長手方向の長さは約200mmとされ,横幅は約75mmとされている。 【0013】アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており,先端に行くほど細くなると共に,側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナケース10の下面は取り付けられる車両2の取付面の形状に合わせた形状とされている。アンテナケース10内には,アンテナ基板30を立設して収納できる空間と,アンプ基板34を アンテナベース20にほぼ平行に収納する空間が形成されている。アンテナケース10の下面には金属製のアンテナベース20が取り付けられている。そして,アンテナベース20にアンテナ基板30が立設して固着されていると共に,アンテナ基板30の前方に位置するようにアンプ基板34がアンテナベース20に固着されている。また,アンテナ基板30の下縁 の中央部に矩形状の切欠30aが形成されており,この切欠30a内に位置するように平面アンテナユニット35がアンテナベース20に取り付けられている。このアンテナベース20をアンテナケース10の下面に取り付けることに の切欠30aが形成されており,この切欠30a内に位置するように平面アンテナユニット35がアンテナベース20に取り付けられている。このアンテナベース20をアンテナケース10の下面に取り付けることにより,アンテナケース10の内部空間にアンテナ基板30とアンプ基板34と平面アンテナユニット35とを収納することができる。 なお,立設して固着されるアンテナ基板30の上縁をアンテナケース10の内部空間の形状に合わせた形状として,アンテナ基板30の高さをなるべく高くすることが好適とされる。 【0016】アンテナ基板30は,高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており,AM放送とFM放送を受信可能なアン テナを構成するアンテナ素子31のパターンが上部に形成されている。ア ンテナ基板30のアンテナベース20からの高さはH,長さはLとされている。また,アンテナ素子31の長さはアンテナ基板30と同じLとされ,幅(高さ)はhとされている。さらに,アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔はDとされている。このアンテナ素子31の大きさは,アンテナケース10の内部空間の制約から高さHは約7 5mm程度までの高さ,長さLは約90mm程度までとされている。ここで,FM波帯の周波数100MHzの波長をλとすると,約75mmの寸法は約0.025λ,約90mmの寸法は約0.03λとなり,アンテナ素子31は波長λに対して超小型のアンテナとなる。 【0017】ところで,このような超小型のアンテナ素子31とされると, インダクタ成分が小さくなることからFM波帯にアンテナ素子31を共振させることが困難となる。そこで,1μH~3μH程度のアンテナコイル32をアンテナ素子31の給電点とアンプ基板 とされると, インダクタ成分が小さくなることからFM波帯にアンテナ素子31を共振させることが困難となる。そこで,1μH~3μH程度のアンテナコイル32をアンテナ素子31の給電点とアンプ基板34におけるアンプの入力との間に直列に挿入することにより,アンテナ素子31とアンテナコイル32とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させられるようになる。 このアンテナコイル32が図6に図示されている。これにより,アンテナ素子31とアンテナコイル32とからなるアンテナ部がFM波帯において良好に動作することができるようになる。なお,このFM波帯で共振するアンテナ素子31をAM波帯では電圧受信素子として利用することにより,AM波帯を受信できるようにしている。また,長さがLで幅がhの面状の アンテナ素子31としていることから導体損失が小さくなり,導体損失による電気的特性の劣化を防止することができる。 また,アンプ基板34に設けられているアンプは,アンテナ素子31により受信されたFM放送信号とAM放送信号とを増幅して出力している。 【0018】上記したように,本発明の第1実施例のアンテナ装置1にお いてはAM/FM受信用のアンテナ素子31の直下に衛星ラジオ放送を受 信する平面アンテナユニット35が配置されている。平面アンテナユニット35は,摂動素子を備え円偏波を受信可能なパッチ素子を備えている。 …【0021】図7ないし図11に示すゲイン特性を参照すると,間隔Dは大きくするほど良好なゲイン特性を示すようになり,間隔Dを約33mm 以上とすれば衛星ディジタルラジオの衛星受信側仰角範囲の仕様である20°ないし60°の仰角範囲において良好なゲイン特性を得ることができる。…【0022】さらにま り,間隔Dを約33mm 以上とすれば衛星ディジタルラジオの衛星受信側仰角範囲の仕様である20°ないし60°の仰角範囲において良好なゲイン特性を得ることができる。…【0022】さらにまた,図12に平面アンテナユニット35の水平面内の放射指向特性を示す。ただし,間隔Dは約33mm,仰角は20°とさ れている。図12に示す放射指向特性を参照すると,ほぼ無指向性が得られており,平面アンテナユニット35の直上にアンテナ素子31が存在していても,放射指向特性はその影響を受けていないことがわかる。…【0027】次に,本発明の車載用にかかる第2実施例のアンテナ装置3の構成を図20ないし図22に示す。… 【0029】アンテナ部40は,ほぼ矩形とされた板状の絶縁スペーサ42と,この絶縁スペーサ42の上端に固着された断面が細長い菱形の導電性(例えば,金属製)の棒状とされたアンテナ素子41から構成されている。絶縁スペーサ42は高周波特性の良好な絶縁材からなり,下縁の中央部に矩形状の切欠42aが形成されている。アンテナ素子41はAM放送 とFM放送が受信可能とされ,厚みより縦方向の幅が大きくされた金属等の導電体,あるいは,絶縁体の全面に導電膜が形成されて構成されている。 このアンテナ素子41の下部が,絶縁スペーサ42の上端に挟持されて一対の取付ネジ43が締着されることにより,アンテナ素子41が絶縁スペーサ42の上端に固着されている。このように,アンテナ素子41を極力 高い位置に配置することによりアンテナ装置3の電気的特性を第1実施例 と同様に向上することができる。なお,アンテナ素子41の断面形状は菱形に限らず楕円形や多角形状としたり,板状のアンテナ素子41とすることができる。さらに,アンテナ素子 性を第1実施例 と同様に向上することができる。なお,アンテナ素子41の断面形状は菱形に限らず楕円形や多角形状としたり,板状のアンテナ素子41とすることができる。さらに,アンテナ素子41も超小型とされてインダクタ成分が小さくなることからFM波帯にアンテナ素子41を共振させることが困難となる。そこで,1μH~3μH程度のアンテナコイル32をアンテナ 素子41の給電点とアンプ基板34におけるアンプの入力との間に直列に挿入することにより,アンテナ素子41とアンテナコイル32とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させるようにしている。このアンテナコイル32が図22に図示されている。さらにまた,アンプ基板34に設けられているアンプは,アンテナ素子41により受信されたFM放送信号と AM放送信号とを増幅して出力している。 キ産業上の利用可能性【0031】以上説明した本発明にかかるアンテナ装置は,アンテナ素子をグラウンドからなるべく離して高い位置に配置すると共に,その直下に平面アンテナユニットを配置することにより,アンテナ素子によりFM放 送およびAM放送を良好に受信することができると共に,衛星ディジタルラジオ放送を平面アンテナユニットにより良好に受信することができるようになる。…(3) このような本件明細書の各記載によれば,発明の詳細な説明の記載について,次のように整理することができる。 ア本件発明は,少なくともFM放送を受信可能な車両に取り付けられる低姿勢のアンテナ装置に関するものであるところ(段落【0001】),車両に取り付けられる従来のアンテナ装置として,1m程度の長さのロッドアンテナや,これを短くして車両102から突出しているアンテナ装置101の高さh10を約200mmとしたロ (段落【0001】),車両に取り付けられる従来のアンテナ装置として,1m程度の長さのロッドアンテナや,これを短くして車両102から突出しているアンテナ装置101の高さh10を約200mmとしたロッドアンテナがあった(段落【0 002】,【0003】)。 イこのような従来のアンテナ装置101では,ロッド部が車体から大きく突出していることなどに起因する様々な問題点があったが,アンテナ高を縮小すると急激に感度が劣化する(段落【0004】)。 そこで,出願人は特願2006-315297号において,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付 けられるアンテナ装置を提案した(段落【0005】)。 しかして,車両には地上波ラジオ放送,衛星ラジオ放送やGPS等の多種多様な用途に応じたアンテナが搭載されていることがあり,アンテナ装置に複数のアンテナを組み込むことが考えられるが,限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置にさらにアンテナを組 み込むと,既設のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという問題点があった(段落【0005】,【0008】)。 ウそこで,本件発明は,限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置にさらにアンテナを組み込んでも良好な電気的特性を得ることができるアンテナ装置を提供することを課題としてこれを解 決したものであり,そのための手段として,立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と,アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と,アンテナ素子の直下であって,前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットとを備え,平面アンテナユ テナ基板と,アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と,アンテナ素子の直下であって,前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットとを備え,平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長 をλとした際に,平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることを最も主要な特徴としている(段落【0009】)。本件発明は,このような構成をとったことによって,アンテナ素子の影響を受けることなく平面アンテナユニットの水平面内の放射指向特性を無指向性とすることができると共に,良好なゲイン特性 が得られるようになる(段落【0010】)。 エ本件発明の構成として,平面アンテナの性能を向上させることを目的として,立設したアンテナ基板の下縁中央部に設けた切欠きにアンテナ基板(AM/FM受信用)と直交するようにして,平面アンテナユニット(衛星ラジオ受信用)を設置し,アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔Dを0.25λとして,アンテナ基板の上部にア ンテナ素子を形成した構造(図5)などがある(段落【0008】,【0009】,【0013】,【0016】,【0029】)。 オ本件発明に係るアンテナ装置は,アンテナ素子をグラウンドからなるべく離して高い位置に配置すると共に,その直下に平面アンテナユニットを配置することにより,アンテナ素子によりFM放送およびAM放送を良好 に受信することができると共に,衛星ディジタルラジオ放送を平面アンテナユニットにより良好に受信することができようになる(段落【0031】)。 (4) 以上によれば,まず,本件特許請求の範囲は,前記のとおり,車両から約70mm以下の高さで ルラジオ放送を平面アンテナユニットにより良好に受信することができようになる(段落【0031】)。 (4) 以上によれば,まず,本件特許請求の範囲は,前記のとおり,車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケース内という限られた空間のアン テナケースに収納されるアンテナとして,アンテナ素子とは別のアンテナ(平面アンテナユニット)が存在しない構成や,同アンテナ(平面アンテナユニット)がアンテナ素子と様々な位置関係において存在する構成が含まれているものといわざるを得ない。すなわち,本件特許請求の範囲の記載においては,車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケース内という限ら れた空間において,面状であり,上縁がアンテナケースの内部空間の形状であるアンテナ素子を配する構成は記載されているものの,当該アンテナ素子に加えて平面アンテナユニットを組み込むことや,その際において,アンテナ素子と平面アンテナユニットとの位置関係をどのようにするかについて何ら記載はないから,本件発明は,平面アンテナユニットが存在しない構成や, 同平面アンテナユニットが存在し,アンテナ素子31の下縁と平面アンテナ ユニット35の上面との間隔Dを0.25λよりも小さくなっているような構成をも包含しているものといわざるを得ない。 しかして,本件明細書をみると,本件発明は,限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置にさらにアンテナを組み込んでも良好な電気的特性を得ることができるアンテナ装置を提供することを課題と してこれを解決したものであり,そのための手段として,立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と,アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と,アンテナ素子の直下であ これを解決したものであり,そのための手段として,立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と,アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と,アンテナ素子の直下であって,前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットとを備え,平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長を λとした際に,平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることを最も主要な特徴としているとされ,このような構成をとったことによって,アンテナ素子の影響を受けることなく平面アンテナユニットの水平面内の放射指向特性を無指向性とすることができると共に,良好なゲイン特性が得られるようになったものとされている。 そうすると,本件明細書の記載により当業者は,アンテナ素子とその直下であってアンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットを備え,平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされているという構成を採用することにより,本件発明の課題(限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテ ナ装置にさらにアンテナを組み込んでも良好な電気的特性を得ることができるアンテナ装置を提供すること)を解決することができると認識することができるにとどまるというほかない(上記の電気的特性のうち,複数のアンテナをアンテナケースに収容している構成についての段落【0005】ないし【0008】の記載も,専ら平面アンテナユニットの特性劣化についての記 載であって,アンテナ素子(FM波帯の共振)に係る課題については記載も 示唆もないから,当業者は,平面アンテナユニットの電気的特性に係る課題のみを認識す の特性劣化についての記 載であって,アンテナ素子(FM波帯の共振)に係る課題については記載も 示唆もないから,当業者は,平面アンテナユニットの電気的特性に係る課題のみを認識するにすぎない。)。 しかして,本件特許請求の範囲の記載は,その範囲を超えて,平面アンテナユニットが存在しない構成や,同平面アンテナユニットが存在し,アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔Dを0.25 λよりも小さくするような構成をも包含しているものというべきであるが,発明の詳細な説明の記載は,上記のとおり,アンテナ素子とその直下であってアンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットを備え,平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされているという構成を採用することにより,本件発明の 上記課題を解決することができると当業者が認識することができる範囲にとどまるものというのであるから,本件特許請求の範囲の記載のうちの上記構成(平面アンテナユニットが存在しない構成や,同平面アンテナユニットが存在し,アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔Dを0.25λよりも小さくするような構成)については,本件発明の上記 課題を解決することができると当業者が認識することができる範囲を超えているものというほかなく,また,このような本件発明の構成につき,発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の上記課題を解決できると認識できる範囲のものであることを認めるに足りる証拠もない。 以上によれば,本件特許請求の範囲の記載については,特許を受けようとする発明(本件発明)が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,特許 る範囲のものであることを認めるに足りる証拠もない。 以上によれば,本件特許請求の範囲の記載については,特許を受けようとする発明(本件発明)が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,特許法36条6項1号に適合しないから,本件特許には,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたサポート要件違反の無効理由(同法123条1項4号)があるというほかない。 (5) 原告の主張について ア原告は,本件明細書には,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付けられるアンテナ装置を提供するという課題が記載されており(段落【0002】~【0005】),本件明細書の段落【0017】にも,本件発明の課題と解決手段が記載されており,段落【0017】の「このような超小型のアンテナ素子31」とされた原 因は,段落【0016】に記載されているように,アンテナケースの内部空間の制約という点にある旨主張し,これを前提として,本件特許請求の範囲においては,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付けられるアンテナ装置を提供するという課題を解決するために不可欠な構成が記載されているのであるから,本件特許に, サポート要件違反はない旨主張するので,更に検討する。 (ア) 原告の上記主張は,本件明細書の記載(発明の詳細な説明の記載)から把握できる本件発明の課題を,平面アンテナユニットの存在を前提としない本件特許請求の範囲の記載と整合させるべく,本件発明の同課題についても,平面アンテナユニットの存在を前提としない,超小型の アンテナ素子のみアンテナケース内に設置する構成において,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車 課題についても,平面アンテナユニットの存在を前提としない,超小型の アンテナ素子のみアンテナケース内に設置する構成において,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付けられるアンテナ装置を提供するという課題(アンテナケースの内部空間の制約)である旨をいうものと解されるところ,前記(3)エに説示したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の構成として, 平面アンテナの性能を向上させることを目的として,立設したアンテナ基板の下縁中央部に設けた切欠きにアンテナ基板(AM/FM受信用)と直交するようにして,平面アンテナユニット(衛星ラジオ受信用)を設置し,アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔Dを0.25λとして,アンテナ基板の上部にアンテナ素子を形成 した構造(図5)が記載されているものであって,原告が指摘する本件 明細書の段落【0016】,【0017】も,その前後の文脈に照らし,これに接した当業者は,上記のような平面アンテナユニットの存在を前提とする構造についての記載であることを,合理的に読み取ることができるというべきである。 (イ) この点,原告は,本件発明の課題が平面アンテナユニットの存在 を前提としないことを根拠付けるために,本件明細書の段落【0017】に,本件発明の課題と解決手段が記載されている旨を指摘するところ,確かに,段落【0017】には,アンテナ素子がFM波帯に共振することができないという課題と,その解決手段(アンテナコイルの付加)が記載されている。しかし,この記載も,その前後の文脈に照らし,段落【0 017】に至る本件明細書の記載を慎重に検討すると,低姿勢アンテナの限られた空間内に「アンテナ素子」に加え,そ の付加)が記載されている。しかし,この記載も,その前後の文脈に照らし,段落【0 017】に至る本件明細書の記載を慎重に検討すると,低姿勢アンテナの限られた空間内に「アンテナ素子」に加え,その直下に0.25λ以上の間隔をとって「平面アンテナユニット」が存することが前提となっている旨が記載されていることや,そのような構造を採用したのも,更なるアンテナである「平面アンテナユニット」を設ける場合にその性能が 劣化しないようにするというそもそもの課題を解決するためである旨が記載されていることを合理的に理解することができる。すなわち,段落【0017】に記載の上記課題については,当業者は,発明の詳細な説明の記載から,低姿勢アンテナの限られた空間内に,アンテナ素子に加えて,その直下に,かつ0.25λ以上の間隔をとって,平面アンテナユ ニットが存在するという構造であることが前提となっているものと理解すると認められるものである(なお,本件特許請求の範囲の記載には,平面アンテナユニットの存在や,アンテナ素子と比べたその位置について,具体的構成が何ら特定されていないのであるから,当業者において,このような本件発明について,上記のように,限られた空間にアンテナ 素子に更に平面アンテナユニットを特定の間隔や位置に組み込むことか ら生じる課題を,アンテナコイルという構成により解決するものであると理解すると認めることもできない。)。 (ウ) そうすると,本件明細書の段落【0017】の記載が,「平面アンテナユニット」とは無関係に独立したものとして記載されているとはいえず,原告の上記指摘は成り立たないというほかない。そして,段落【00 17】の「このような超小型のアンテナ素子31」との記載も,「このような」とあることから したものとして記載されているとはいえず,原告の上記指摘は成り立たないというほかない。そして,段落【00 17】の「このような超小型のアンテナ素子31」との記載も,「このような」とあることから,これに至る本件明細書の記載を慎重に検討するときは,図25(アンテナ素子の大きさは図5よりかなり大きい)のように複数のアンテナをアンテナケース内に収容したアンテナ装置において,平面アンテナの性能を向上させるために,上記のような構造(アンテナ 素子の大きさは図5よりかなり小さい)を採用したものであることをいうものと解される。また,段落【0017】の「このアンテナコイル32が図6に示されている。」との記載は,原告が主張する課題解決手段である「アンテナコイル」が図6に記載されていることを示しているところ,図6には「平面アンテナユニット」が記載されていることからすれば,原 告が主張する課題解決手段も「平面アンテナユニット」の存在を前提としているものと解される。そうすると,原告がいうように,上記記載が,本件発明の課題として,平面アンテナユニットの存在を前提としない,70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付けられるアンテナ装置を提供するという課題(アンテナケー スの内部空間の制約)について記載したものと解することはできない。 (エ) この点,本件明細書の段落【0004】,【0005】には,アンテナケース内にアンテナを収容した車載用のアンテナ装置として,「70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる」アンテナ装置を提案したとの記載が存するが,上記のようなアンテナ装置を提 案したとするこのような記載からは,当業者であれば,その前後の文脈 に照らし,原告の主張する上記 できる」アンテナ装置を提案したとの記載が存するが,上記のようなアンテナ装置を提 案したとするこのような記載からは,当業者であれば,その前後の文脈 に照らし,原告の主張する上記課題は既に解決済みであることを読み取ることができるというべきであり,上記の記載をもって,低姿勢のアンテナケースに1つのアンテナを収容することによっても,アンテナ素子が「超小型」となりそのために感度が劣化するという課題が記載ないし示唆されているとはいえないというべきである(なお,上記説示に照ら し,本件明細書の記載を精査しても,その発明の詳細な説明においては,アンテナケース内に1つのアンテナを収容したときに生ずる課題を克服するために,アンテナコイルを付加することが記載されているとは認められず,その旨を示唆する記載もないというべきである。)。 (オ) 以上によれば,原告の上記主張は,そもそも主張の前提を欠いてお り,採用することができない。 イ原告は,本件発明は,基礎出願や国際出願の内容を権利化したものであり,本件明細書の段落【0008】に記載されている内容は,「プラスα」の内容であって,本件発明の内容となるものではない旨主張する。 しかし,本件特許の特許出願については,基礎出願に基づく優先権を主 張しているものであると認めるに足りる証拠はなく,国際出願を国内出願に移行したものであると認めるに足りる証拠もない。また,本件明細書において,「70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付けられるアンテナ装置」(段落【0005】)という記載以上に,基礎出願に係る発明の構成を具体的に特定する記載も存しない ところである。これらによれば,本件発明が,原告の主観はともかく,基礎出願や国際出願の内容 置」(段落【0005】)という記載以上に,基礎出願に係る発明の構成を具体的に特定する記載も存しない ところである。これらによれば,本件発明が,原告の主観はともかく,基礎出願や国際出願の内容を権利化したものであることを客観的,合理的に基礎付ける根拠はないというほかなく,本件明細書の段落【0008】に記載されている内容が「プラスα」の内容であって本件発明の内容となるものではないことの根拠もないことに帰する。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,被告においては,原告の指摘する本件発明の課題は,特願2006-315297号により解決済みの背景技術の課題である旨をいうが,背景技術の課題であるからといって,本件発明の課題でないということはなく,同一の課題であっても,解決法が異なれば,別発明として認定される旨主張する。 しかし,原告の指摘する上記課題については,背景技術(別発明)の課題であることから直ちに本件発明の課題でない旨を導いたものではない。 原告の指摘する上記課題を,本件発明の課題と認めることができないことは,前記(4),(5)アに説示したとおりである。また,上記(5)アに説示したとおり,原告の主張する上記課題は既に解決済みであることが本件明細書 の記載から合理的に読み取れるものであることにも照らし,原告の上記主張を採用することはできない。 2 原告は,その他縷々詳細に主張するが,その主張内容を証拠に照らしつつ慎重に検討するも,上記1の認定判断を左右するに足りるものはなく,いずれも採用の限りでない。 以上によれば,本件特許には,サポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号)があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,同法10 以上によれば,本件特許には,サポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号)があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,同法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。 3 結論 よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官奥俊彦 裁判官本井修平 (別紙被告製品目録省略)

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