主文 被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成15年1月14日午後5時10分ころ,神戸市a区b通c丁目d番先路上において,同所に駐車中のA所有の普通貨物自動車(軽4)の助手席側ドアの窓ガラスを所携の金槌で叩き割り(損害額約9800円相当),同窓から同車助手席上に置いてあった同人所有の現金1705円及び財布等17点在中のショルダーバッグ1個(時価合計約9000円相当)を窃取し,もって,他人の器物を損壊するとともにその財物を窃取したものである。 (証拠の標目)‐かっこ内は検察官請求証拠甲乙の番号省略(弁護人の主張に対する判断)弁護人は,被告人が,本件犯行当時,重度の飲酒酩酊のため心神耗弱の状態にあった旨主張する。 なるほど,前記各証拠及び警察官作成の酒酔い・酒気帯び鑑識カード(甲25)等によれば,被告人は,本件犯行後,被害者のAから詰問された際に,(酒に)酔っていて分からない旨を答え,その後,捜査段階から公判段階に至るまで一貫して,本件犯行前から犯行後にかけての記憶が殆どない旨供述していること,被告人が本件犯行の約1時間20分後の飲酒検知の際に呼気1リットルにつき0.65ミリグラムのアルコールを身体に保有する状態にあったことが認められる。 しかしながら,被告人は,本件犯行当時,1400円程度の現金しか所持していなかったこと,被害に遭った普通貨物自動車は公園近くの路上に駐車されており,その助手席上に置かれていたショルダーバッグが窓越しに外から見えていたこと,本件犯行当時,被害車両の近辺に被告人以外の人がいた気配は窺えないこと,被告人は,本件犯行直後に後を追ってきたAから声 り,その助手席上に置かれていたショルダーバッグが窓越しに外から見えていたこと,本件犯行当時,被害車両の近辺に被告人以外の人がいた気配は窺えないこと,被告人は,本件犯行直後に後を追ってきたAから声をかけられたが,それに答えることなく歩き続け,その間,本件被害品と犯行に使用した金槌を路上に放置したこと,前記のAから詰問された際には,また刑務所行きかという趣旨の発言をしていたこと,前記の飲酒検知に際しては,警察官の質問に答えて,氏名,生年月日,住所,職業,飲んだ酒の種類等を普通に答えていたことなどもまた認められるのであって,これら犯行の動機,態様,犯行後の言動等をも併せ考えると,被告人が,本件犯行当時,相当程度酩酊していて,被告人のいうとおりではないにせよ,ある程度その記憶力に減退がみられることはあり得るとしても,行為の是非善悪を弁識しこれに従って行動する能力を著しく欠く状態にまでは陥っていなかったと認めるのが相当であるから,弁護人の主張は採用できない。 (累犯前科)被告人は,(1)平成12年11月24日松阪簡易裁判所で住居侵入,窃盗未遂罪により懲役1年(3年間執行猶予,平成13年4月18日その猶予取消し)に処せられ,平成14年12月16日その刑の執行を受け終わり,(2)平成13年3月26日神戸地方裁判所で窃盗罪により懲役10月に処せられ,平成14年1月5日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙8)及び前記各裁判の判決書謄本(乙11,12)によって認められる。 (法令の適用)罰条器物損壊の点刑法261条窃盗の点刑法235条科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(1罪として重い窃盗罪の刑で処断)累犯加重刑法56条1項,57条(再犯の 刑法261条窃盗の点刑法235条科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(1罪として重い窃盗罪の刑で処断)累犯加重刑法56条1項,57条(再犯の加重)宣告刑懲役1年6月未決勾留日数の算入刑法21条(30日)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の事情)本件は駐車中の自動車の窓ガラスを割っての車上狙いによる器物損壊と窃盗の事犯であるが,被告人は,所持金が乏しかったことから,被害車両にショルダーバッグが置かれているのを認め犯行に及んだものと考えられ,犯行動機にあまり酌むべき点がないこと,被告人は,所携の金槌で窓ガラスを叩き割って,車中の物を盗んだものであって,犯行の態様は悪質であること,被害総額は2万円余と決して少額ではないこと,被告人は,記憶がないとして,自己の行為を認めておらず,真摯な反省悔悟の情があるとはいえないこと,被告人には,判示の累犯前科があって,安易に盗犯に及ぶ傾向が窺われることなどを考え併せると,犯情はよくなく,被告人の刑事責任は軽くないといわざるを得ない。 してみると,本件窃盗の被害については被害品の還付により回復していること,被告人の責任能力が著しく減退していたとはいえないものの,本件が相当多量の飲酒酩酊下の犯行であったことは間違いがないこと,被告人は,今後は酒を止め,社会復帰して仕事をし弁償したいと述べていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役2年6月)よって,主文のとおり判決する。 平成15年4月15日神戸地方裁判所第12刑事係甲 裁判官森岡安廣 主文 平成15年4月15日神戸地方裁判所第12刑事係甲 裁判官森岡安廣
▼ クリックして全文を表示