平成17(わ)228 住居侵入,窃盗,強姦致傷,強姦被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年8月2日 広島地方裁判所 福山支部
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判決文本文5,977 文字)

判決主文被告人を懲役17年に処する。 未決勾留日数中230日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1(平成17年9月26日付け起訴状記載の公訴事実)強姦の目的で,平成16年12月8日午前2時ころ,広島県福山市a町b丁目c番d号ef号室C(当時28歳)方に,無施錠の同女方4畳半南側窓から侵入し,そのころ,同女方において,同女に対し,その肩口に背後から包丁様のものを押し当てながら,「声を出すな。包丁を持っとる。声を出したらぶち殺すぞ。」などと言って脅迫し,同女の顔面にTシャツ様のものを被せるなどして,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫した。 第2(平成17年12月19日付け起訴状記載の公訴事実)窃盗及び強姦の目的で,平成17年5月29日午前2時ころ,広島県福山市g町h丁i番j号kl号室E(当時19歳)方に,無施錠の同室出入口から侵入し,そのころ,同女方において,同女所有の現金3000円を財布内から抜き取って窃取し,同室ベッド上で就寝中の同女に対し,その面前に包丁様のものを突き付けながら,「騒いだら刺す。おとなしくしとけ。」などと言って脅迫し,頭から上半身にかけて毛布を被せるなどして,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫した。 第3(平成17年9月2日付け起訴状記載の公訴事実)窃盗及び強姦の目的で,平成17年8月13日午前4時15分ころ,広島県福山市m町n丁目o番p号qr号室F(当時18歳)方に,同室南側窓の施錠を外して侵入し,そのころ,同女方において,同女所有にかかる現金約7万1000 円を財布内から抜き取って窃取し,同室2段ベッド上段で就寝中の同女の顔面にタオルを被せ,その首元に包丁を押し当てながら,「騒ぐな。大声出したら殺すぞ。包丁を持っとるんど。」などと言って脅迫し,その反抗を抑圧した上 抜き取って窃取し,同室2段ベッド上段で就寝中の同女の顔面にタオルを被せ,その首元に包丁を押し当てながら,「騒ぐな。大声出したら殺すぞ。包丁を持っとるんど。」などと言って脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫し,その際,同女に経過観察約7日間を要する処女膜裂傷,会陰部擦過傷の傷害を負わせた。 第4(平成17年10月18日付け起訴状記載の公訴事実)正当な理由がないのに,平成17年8月13日午前5時15分ころ,広島県福山市s町t丁目u番v号wG方に,同女方リビング兼寝室南側掃き出し窓の施錠を外して侵入した。 (証拠の標目)省略(争点に対する判断)判示第1事実について,被告人は捜査段階から一貫して黙秘を続け,弁護人は犯行を否認しているので,以下検討する。 第1まず,信用性の認められる判示第1事実の被害者(以下「被害者」とする。)供述を始めとする関係各証拠によれば,判示第1記載の日時場所態様での住居侵入,強姦の犯行が行われたこと,その犯人は被害者の口に複数回にわたりキスをしたこと及び強姦の際の犯人の言動から犯人は日本人男性1名である可能性が高いことが認められる。弁護人もこれを積極的に争うものではない。 第2次に,被告人の犯人性について検討する。 血液型鑑定及びDNA型鑑定の結果について(1)関係各証拠によれば,いずれも適切に採取保存された,被害者の口唇付近から採取された付着物(以下「付着物」という。),被害者の口腔内容物及びだ液並びに被告人の血液を資料として血液型鑑定及びDNA型鑑定がなされたこと,前記血液型鑑定及びDNA型鑑定はいずれも専門的な知識及び経験を有する者により適切な方法で行われたことが認められる。ま た,付着物はだ液であると鑑定されているが,男性に由来するDNA型(アメロゲニン型)が含まれていることに鑑みる ずれも専門的な知識及び経験を有する者により適切な方法で行われたことが認められる。ま た,付着物はだ液であると鑑定されているが,男性に由来するDNA型(アメロゲニン型)が含まれていることに鑑みると,付着物には複数人のだ液が含まれていることも認められる。そして,付着物が就寝中深夜強姦された被害者の口唇付近から被害当日に採取されており,犯人以外の者が被害者の口唇付近にだ液を接触させる機会があったと認められない本件においては,それが被害者と犯人のだ液である蓋然性は極めて高い(なお,当時被害者宅には被害者の息子がいたが,すでに乳児の域を脱している年齢であり,犯行前から就寝中であったことに鑑みると,この子が被害者の口唇付近に接触し,付着物の中にだ液を混在させた可能性は極めて低い。)。 (2)そして,血液型鑑定の結果によると,付着物の血液型及び被害者の血液型はA型(以上65号証)であるのに対し,被告人の血液型はO型(50号証)であると鑑定されている。ただし,この種鑑定に専門的知見を有し信用できるH証人の証言(以下「H証言」という。)によれば,今回の血液型鑑定において採用された血液型鑑定の手法は解離試験法であり,この手法においては,O型以外と判定された体液についてO型の体液が含まれる可能性を排斥できず,付着物の血液型がA型と鑑定され,B型ないしAB型の反応が現れていないことからすれば,付着物に含まれるだ液の血液型としてはA型のみの場合とA型とO型が混在している場合の2つの可能性があることが認められる。だとすれば,A型と鑑定された付着物の中にO型である被告人のだ液が含まれる可能性が否定されるわけではなく,付着物に含まれるだ液の血液型に関する鑑定結果と被告人の血液型に関する鑑定結果との間には必ずしも矛盾があるとはいえない。 (3)次いで,DN る被告人のだ液が含まれる可能性が否定されるわけではなく,付着物に含まれるだ液の血液型に関する鑑定結果と被告人の血液型に関する鑑定結果との間には必ずしも矛盾があるとはいえない。 (3)次いで,DNA型鑑定について検討するに,付着物,被害者(以上48号証)及び被告人(50号証)のDNA型をそれぞれ鑑定した結果,被害者以外に由来するDNA型(以下「犯人のDNA型」という。)が1名の 男性に由来する可能性は否定されないこと,犯人のDNA型の出現頻度は,日本人男性1名に由来することを前提とし,この種鑑定で通常用いられている出現頻度表(以下「当該出現頻度表」という。)に基づいて計算すると約2754万人に1人であること,DNA型鑑定の結果からは犯人のDNA型が被告人に由来するものであるとしても矛盾しないものであること(以上H証言及び52号証)が鑑定されている。 このDNA型鑑定の結果,特に前記のとおり,被害者供述等と整合する犯人像,即ち日本人男性1名が犯人であるとの前提に則った当該出現頻度表に基づき計算された犯人と同一のDNA型の出現頻度の希少性に鑑みると,被告人と犯人との同一性が極めて強く推認されるところである。 さらに,被害者供述からは,犯人は身長約160センチメートルくらいの男性で,声の感じから若い男性ではなく,強いタバコの臭いをさせていたことが認められるが,この特徴は被告人と矛盾しない。 また,本件において犯人は刃物様のものを被害者に示すなどして,抵抗した場合刃物での傷害ないし殺害を示唆していること,被害者の顔に布を被せた後被害者を姦淫していることなどの態様が認められるが,この2点は判示第2,3の被告人がなしたことに争いのない強姦ないし強姦致傷時の犯行態様とその特徴的な点において類似しているものである。 以上のとおり,DNA型鑑定 ることなどの態様が認められるが,この2点は判示第2,3の被告人がなしたことに争いのない強姦ないし強姦致傷時の犯行態様とその特徴的な点において類似しているものである。 以上のとおり,DNA型鑑定の結果から被告人と犯人の同一性が極めて強く推認されることに加え,犯行態様の類似性や血液型鑑定の結果,被害者供述から認められる犯人と被告人の特徴が矛盾しないことに鑑みれば,被告人と犯人の同一性は合理的な疑いを入れる余地がない程度をもって認められる。 なお,弁護人は,DNA型鑑定がその性質上被告人と犯人の同一性を直接証明することはできないものであるし,当該出現頻度表を作成するに際し調べられたサンプル数が1200ないし約3200人であることからすると,当該出現頻度表に基づき計算された約2754万人に1人という出現頻度は犯人と被 告人の同一性を強く推認させるものではなく,その他の被告人と犯人の同一性を証明する証拠がない本件では被告人と犯人の同一性を認定するには合理的な疑いが残る旨主張している。 確かに,弁護人主張のとおり,DNA型鑑定はその性質上被告人と犯人の同一性を直接証明するものとはなりえない。しかし,H証言によれば,当該出現頻度表の基本となっている上記サンプル数はこの種鑑定で使用される文献の母集団としては大きいものであり,当該出現頻度表は専門家において信用性が保証された文献に記載されているものであるから,当該出現頻度表の信用性が認められる。だとすれば,当該出現頻度表を利用して得られた上記第2の1(3)記載のDNA型鑑定の分析結果は被告人と犯人の同一性を強く推認させるものといえ,さらに,上記のとおりDNA型鑑定の結果に第2の1(2)及び2記載の諸事実を勘案して,被告人と犯人の同一性を認めるのであるから,弁護人の主張はいずれも理由がない。 よ 性を強く推認させるものといえ,さらに,上記のとおりDNA型鑑定の結果に第2の1(2)及び2記載の諸事実を勘案して,被告人と犯人の同一性を認めるのであるから,弁護人の主張はいずれも理由がない。 よって,判示第1のとおり認定した。 (累犯前科)省略(法令の適用)省略(量刑事情) 本件は,被告人が,強姦等の目的で夜間女性宅に侵入し,刃物様のものを突き付けて脅すなどして強姦(判示第1,2)ないし強姦致傷(判示第3)に及び,うち2件においては現金を窃取した(判示第2,3)事案及び他人の住居に侵入した事案(判示第4)である。 被告人は,捜査段階においては,強姦致傷(判示第3)の動機について交際相手との不仲の鬱憤晴らしであり,住居侵入(判示第4)の動機についても,設置してもいないのに防犯ベル設置などと掲示してあることに立腹したなどと述べ, 公判においては,判示第2ないし第4の犯行動機の中に,前刑出所後警察が被告人の身辺に執拗に姿を見せていたことに対する反発があるなどと述べている。しかし,仮に犯行当時の被告人の身辺に警察が姿を見せていたのが事実であったとしても,それに対する反発心からまったく無関係な被害者の心身に重大な影響を及ぼす強姦致傷等をはじめとする犯罪を思い立ち,実行することそれ自体身勝手かつ自己中心的であり,被告人の述べるいずれの動機においても酌量の余地はない。 本件強姦ないし強姦致傷において,被告人はいずれも夜間女性宅に侵入し,刃物様のものを突き付けるなどしながら,声を出したら殺すなどと脅迫して,被害女性の顔に布を掛けるなどして姦淫行為に及ぶという態様をとっているが,これ自体手慣れた態様であるし,刃物を女性の身体の至近距離においている以上,被害女性の身体を傷つけるおそれは否定できず,危険な態様といえる。しかも,被告人は幼い 行為に及ぶという態様をとっているが,これ自体手慣れた態様であるし,刃物を女性の身体の至近距離においている以上,被害女性の身体を傷つけるおそれは否定できず,危険な態様といえる。しかも,被告人は幼い子が傍にいても構わず姦淫に及んだり(判示第1),被害女性が性経験がないことを聞いたり(判示第3),痛みを訴えるなどしても意に返すことなく姦淫行為を続ける(判示第2,3)など自己の性欲の満足のみを執拗に果たそうとしていたことが窺え,本件強姦ないし強姦致傷の態様は極めて悪質といえる。 そして,このような被告人の判示各犯行の結果は重大といわざるを得ない。すなわち,安全たるべき自宅に見知らぬ者が侵入したことでさえ恐怖を感じる(判示第4)ものであるのに,さらに殺すなどと言われて生命の危険さえ感じさせられながら姦淫された被害女性等の心身の苦痛は想像に余りあるし,実際,強姦ないし強姦致傷の被害女性のうちには引っ越しを余儀なくされたり(判示第2),明かりをつけたままでないと眠れなくなるなど(判示第1)の影響が生じたものもいるのである。このような被害を受けた判示各被害女性ないしその保護者の多くが被告人の厳罰を希望するのは当然といえる。 しかも,被告人は,上記累犯前科2犯を有するばかりか,さらに前科5犯を有しているが,前科のうち6犯は窃盗を含むものであり,窃盗が含まれていない唯 一の前科(上記累犯前科の1)には住居侵入後,刃物を突き付けるなどして被害女性の反抗を抑圧して強姦したという本件と類似した態様による住居侵入,強姦罪も含まれており,被告人の本件各犯行に関連する規範意識の鈍麻が著しいことは明らかである。さらに,被告人は前刑仮出所後3か月も経ないうちに判示第1の犯行に手を染め,以後,犯行を重ねており,安定した経済状況でありながら窃盗に及んでいることや各犯行の手 識の鈍麻が著しいことは明らかである。さらに,被告人は前刑仮出所後3か月も経ないうちに判示第1の犯行に手を染め,以後,犯行を重ねており,安定した経済状況でありながら窃盗に及んでいることや各犯行の手慣れた態様等も加味すると,被告人にはこれらの犯行に対する常習性も認められる。 以上に鑑みれば,被告人の刑事責任は非常に重い。 一方で,被告人は,判示第1を除く各犯行については事実を認めて謝罪の弁を述べ,判示第3の被害者に500万円を支払い,判示第2の被害者には500万円,判示第4の被害者には30万円を支払って示談するなどして被害者の慰謝に相応の努力をしていること,判示第4の被害者からは宥恕を得ていること,被告人の交際相手が被告人の社会復帰を待ち,社会復帰後の同居を望んでいる旨証言したことなど,被告人にとって有利に斟酌すべき事情も認められる。 以上の諸事情に基づき量刑を検討するに,特に強姦ないし強姦致傷の態様の悪質さや被告人の規範意識の鈍麻等に鑑みると,被告人にとって有利に斟酌すべき事情を最大限考慮しても主文掲記の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑懲役20年)平成18年8月2日広島地方裁判所福山支部裁判長裁判官杉本正樹裁判官西﨑健児裁判官藤原瞳

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