平成20(行コ)275等 太田市恩賞随意契約損害賠償住民訴訟控訴,同附帯控訴事件(原審・前橋地方裁判所平成16年(行ウ)第40号)

裁判年月日・裁判所
平成21年2月24日 東京高等裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-37937.txt

判決文本文15,677 文字)

- 1 -主文1(1)原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 (2)同取消部分に係る被控訴人の訴えのうち,原判決別紙2の工事番号1ないし12,15ないし34及び36ないし53記載の工事の各随意契約に係る訴えを却下する。 (3)同取消部分に係る被控訴人の原判決別紙2の工事番号54記載の工事の随意契約に係る請求を棄却する。 被控訴人の本件附帯控訴を棄却する。 訴訟費用は,1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1申立て 控訴の趣旨(1)原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 (2)被控訴人の請求をいずれも棄却する。 附帯控訴の趣旨(1)原判決中,控訴人に対するAに係る請求部分を次のとおり変更する。 (2)控訴人は,Aに対し,8627万4200円及びこれに対する平成16年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 第2事案の概要 本件(当審における審判の対象)は,太田市の住民である被控訴人が,控訴人に対し,平成11年4月から平成15年12月までの間に太田市の恩賞随意契約制度(平成15年9月廃止)に基づくとしてされた51件の公共工事に係る各随意契約(原判決別紙2の工事番号1ないし12,15ないし34及び36ないし54に係る各契約)の締結が,地方自治法施行令167条の2第1項により随意契約により得ないのにされた違法なものであり,これにより支出さ- 2 -れた契約代金額の20パーセント相当額の損害を太田市が被ったとして,地方自治法(以下,単に「法」という)242条の2第1項4号本文に基づき,。 同各契約締結時の太田市長であるAに対し,当該損害金相当額の損害賠償の請求をすることを求める住民訴訟である(ただし,原審は,後記のとおり被控訴人がAに対し損害賠償の請求を 1項4号本文に基づき,。 同各契約締結時の太田市長であるAに対し,当該損害金相当額の損害賠償の請求をすることを求める住民訴訟である(ただし,原審は,後記のとおり被控訴人がAに対し損害賠償の請求をすることを求めていなかった同工事番号13に係る分についても一部認容したため,この部分も当審における審判の対象となる。なお,被控訴人は,原審では,契約代金額全額を損害として請求して。)いた。また,被控訴人は,本件請求に係る各契約について,平成16年8月19日に住民監査請求をしたところ,上記工事番号53までに係る各契約については1年の監査請求期間が経過しているとして却下されていた。 原審は,①(原審争点1)上記工事番号53までに係る各契約について監査請求期間の経過について正当な理由がある,②(原審争点3)太田市の恩賞随意契約制度に基づいて随意契約を締結することは違法であり,上記各随意契約はいずれも地方自治法施行令に規定する随意契約により得る場合に当たらないから違法である,③(原審争点5)上記各契約が締結されたことについてAに過失があり同人は不法行為責任を負う,④(原審争点6)上記各契約により太田市に損害が生じており,民事訴訟法248条により各契約価格(上記請求対象外の原判決別紙2の工事番号13に係る契約を含めて,合計4億3541万4000円)の3パーセントを損害と認めるとして,被控訴人の原審における請求を1306万2420円と附帯請求の限度で一部認容した。 そこで,控訴人は,これを不服として控訴し,被控訴人は,損害額は契約価格の20パーセントに及ぶとして,認容額の増額(ただし,上記工事番号13に係る契約価格404万2500円分を除くを求めて附帯控訴した請()。)(求金額を契約価格全額(ただし,その合計額を原審認定額より500円少 て,認容額の増額(ただし,上記工事番号13に係る契約価格404万2500円分を除くを求めて附帯控訴した請()。)(求金額を契約価格全額(ただし,その合計額を原審認定額より500円少なく算定している)からその20パーセント相当額に減額し,附帯請求の起算日。 をすべて最終請求日に改めて,附帯控訴の趣旨の限度に請求の減縮をした。 。)- 3 -なお,被控訴人は,原審において,上記請求のほか,①太田市教育委員会教育長に対する請求(原判決別紙2の工事番号9,13,17,49及び56に係るもの,②控訴人に対し,市長以外の市の職員に対し賠償命令をすること)を求める請求(同工事番号1ないし57に係るもの,③控訴人に対し,Aに)対し上記以外の随意契約(同工事番号14,35,55及び57に係る契約)に係る損害金の支払を請求することを求める請求をしていたが,いずれも棄却され,これらの棄却部分については不服申立てをしなかった。 前提事実原判決の 事実及び理由 の第2事案の概要2記載のとおりであるた「」「」(だし,原判決別紙2の工事番号1ないし12,15ないし34及び36ないし54に係る部分以下同様であり同各工事についての随意契約を併せて本。 ,,「件各契約」という)から,これを引用する。ただし,原判決10頁16行目。 から同17行目にかけての「なお,この1年以内との期間の制限は,後に削(除された」及び同18行目の「,証人B」をいずれも削り,同20行目の。)「9月」の次に「1日」を加え,11頁19行目の「に基づく公金の支出」を削る。 争点及び当事者の主張本件の争点は,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」3(1)ア(争点1,(2)ア(争点3,ウ(争点5)及びエ(争点6)記載のとおりで) づく公金の支出」を削る。 争点及び当事者の主張本件の争点は,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」3(1)ア(争点1,(2)ア(争点3,ウ(争点5)及びエ(争点6)記載のとおりで))あり(同(1)イ(争点2)及び(2)イ(争点4)は,当審における本件請求対象外の争点であり,本件請求についての争点とならない,これに対する当事。),(),者の主張は次のとおり当審における主張を付加原審主張の補充するほか原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」4(1)(争点1,(3)(争)点3,(5)(争点5)ア(ウ),イ,及び(6)(争点6)ア(イ),イ(ア),(イ))b記載のとおりである(被控訴人は,当審で,各契約が無効であり,契約価格(支出額)が損害である旨の主張(同ア(ア))を撤回したものと解される)。 - 4 -,。 ,「」,「」からこれらを引用するただし被告らとあるのをいずれも控訴人に改め,同ア(イ)及びイ(イ)bの各「予備的主張」をいずれも削り,原判決32頁下から5行目の「予定価格」を「契約価格」に,同行目から同4行目にかけての「8371万2600円」を「8627万4200円」にそれぞれ改める。 (1)控訴人アAの責任(故意過失)の有無(争点5)についてAは,本件恩賞制度の一般的抽象的政策目的(太田市の工事案件全体における工事品質の向上を図るもの)から工事品質を向上させるという市長としての当然の目的を遂行するために本件各契約を締結したものであり,故意はなく,本件恩賞制度を改廃し又は本件各契約の締結を違法なものとして事前に阻止すべき指揮監督上の義務を負っていたとはいえないから,義務違反(過失)はない。 イ損害の有無(争点6)について(ア)本件においては,被控訴人に想 又は本件各契約の締結を違法なものとして事前に阻止すべき指揮監督上の義務を負っていたとはいえないから,義務違反(過失)はない。 イ損害の有無(争点6)について(ア)本件においては,被控訴人に想定落札価格の立証を求めることは合理的期待を超えるとはいえないこと,想定落札価格を算出するための証拠方法について客観的な制約が存在するとはいえないこと,財産的損害,。 が問題となっていることから民事訴訟法248条の適用の前提を欠く(イ)本件各契約(本件契約13を含む)の設計金額の合計額は4億8。 020万7000円であり,その落札想定価格(全入札案件の平均落札率92.77パーセントによる)は合計4億4548万8033円で。 あるところ,同契約価格合計は4億3541万4000円であるから,本件各契約による太田市の損害は認められない。なお,個別の契約中には上記の想定落札価格より契約価格が若干上回る契約があるが,その金額は極めてわずかであり,損害とは認められない。また,受注希望型競争入札(その平均落札率82.82パーセント)は,問題点が多く,本- 5 -件の損害の有無の基準としては適切ではない。 (ウ)本件各契約の各業者は,いずれも太田市に損害を与えるような利潤をあげておらず,むしろ価格面及び品質面から総合的にみて太田市に必要以上の利益を与えていると考えているもので,業者の利益・損害の面からみても,太田市に本件各契約による損害はない。 (エ)本件各契約は,談合の存在等により明らかに適正価格を上回る価格での落札を意図して行われた契約ではなく,工事品質の向上を主目的として,優良な工事を提供する業者を過去の工事事例から選定して随意契約を締結したものであるから,損害が生じていると推認できない。 (2)被控訴人(損害の有無及び額(争点6)について の向上を主目的として,優良な工事を提供する業者を過去の工事事例から選定して随意契約を締結したものであるから,損害が生じていると推認できない。 (2)被控訴人(損害の有無及び額(争点6)について)本件各契約は,公正な自由競争が阻害されて契約価格が形成された点においては入札談合事案と構造が全く同じであるところ,入札談合による損害額が契約価格の20パーセント程度にまで及ぶことは,①太田市において条件付一般競争入札に移行した結果,平均落札率は80.31パーセントにまで低下したこと,②日弁連消費者問題対策委員会による入札制度改革に関する報告では,談合が困難になり競争が起きると15ないし20パーセント程度落札率(予定価格基準)が下がるとされていること,③公正取引委員会が開催した独占禁止法研究会の報告では,談合によって競争が阻害されたことによる損害は契約額の15ないし20パーセントであるとされていること,④C連合会の調査によって,入札改革を進めた自治体では,かって95パーセント以上だった落札率が70パーセント台まで低下していることが明らかになっていることから,本件各契約による損害額は,契約価格の20パーセントとみるべきである。 第3当裁判所の判断 監査請求期間の経過についての正当な理由の有無(争点1)について- 6 -(1)本件における住民訴訟,したがって,住民監査請求の対象となる財務会計上の行為は,支出負担行為である本件各契約の締結であるところ,本件各契約は,いずれも原判決別紙2記載の支出負担行為決議書の決裁日(本件契約12及び34については随意契約改札調書の決裁日)ころに締結されたものであるので,本件各契約のうち本件契約54を除く本件契約53までの各契約に係る本件監査請求は,法242条2項本文所定の監査請求期間である当該行為の ては随意契約改札調書の決裁日)ころに締結されたものであるので,本件各契約のうち本件契約54を除く本件契約53までの各契約に係る本件監査請求は,法242条2項本文所定の監査請求期間である当該行為のあった日(各随意契約の締結日)から1年を経過した日の後の平成16年8月19日にされているから,同項ただし書に定める正当な理由がない限り不適法というべきである。 そして,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に当該財務会計上の行為の,,存在又は内容を知ることができなかった場合には上記正当な理由の有無は特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照。 )(2)これを本件について検討するに,前記前提事実並びに証拠(甲7,8,,,,,,12の1・213ないし1518の1・225の1ないし57 ,,,,,,,) 乙1 22の1ないし3証人B被控訴人本人及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア(ア)被控訴人は,平成9年ころから,Dという群馬県内で会員100名以上の登録がされている市民グループに所属し,同団体では月に1回例会を開き,入札,談合等の地方自治体の財政に関する問題等を検討して,,,おり被控訴人もこれに参加し同団体事務局からの調査依頼を受けて太田市に対し,情報公開請求をし,その開示を受けるなどしていた。 - 7 -(イ)被控訴人は,自治体財政 る問題等を検討して,,,おり被控訴人もこれに参加し同団体事務局からの調査依頼を受けて太田市に対し,情報公開請求をし,その開示を受けるなどしていた。 - 7 -(イ)被控訴人は,自治体財政の調査,研究を目的として,平成13年6月6日,太田市の平成10年度から同12年度までの水道局発注の水道メーターに関する入札執行調書,契約書等について,同月13日,太田市の平成元年から同12年までの水道局発注の水道メーター落札者の入札書について,それぞれ公文書開示請求をし,その開示を受けた。 イ(ア)本件要綱に基づく太田市請負優良工事等表彰は,太田市の公式行事として,毎年9月又は10月に行われ,太田市が発行している「広報おおた(平成7年11月1日付け,平成11年10月1日付け等)に,」その表彰内容(優良工事施工業者,優良主任技術者,工事名等)が掲載。 ,,,されていたまた本件要綱はインターネット上で公表されていたが本件要綱の太田市請負優良工事等表彰に伴う恩賞として平成8年に施行された本件恩賞制度やこれを定めていた本件運用基準は,同広報に掲載されたことはなく,インターネット上で公表されていなかった。 「」,,,(イ)広報おおたには毎年行政審査報告の概要が掲載されており平成14年3月1日付け同広報には,太田市による工事契約,委託契約の審査の概要が掲載され,平成12年度の契約状況として,土木工事及び建築工事の随意契約の件数及び契約価格の合計額等が記載されていた。 (ウ)平成15年7月18日付け群馬県総務部地方課長及び土木部監理課長名による「公共工事の入札及び適正化の促進に関する法律」に基づく入札・契約手続に関する実態調査に対して,太田市は,契約内容の公表及び随意契約の相手方の選定理由の公表(インターネット上での公表 理課長名による「公共工事の入札及び適正化の促進に関する法律」に基づく入札・契約手続に関する実態調査に対して,太田市は,契約内容の公表及び随意契約の相手方の選定理由の公表(インターネット上での公表)について,いずれも「公表予定」と回答した。 (エ)被控訴人は「広報おおた」はよく見ており,同広報による上記掲,載内容も読んでおり,随意契約の内容についても,担当課に行けば,概要を閲覧できることは分かっていた。 - 8 -ウ(ア)被控訴人は,従前から,随意契約は不正の温床になりやすいと認識していたところ,平成16年の春ころ,太田市内のα土地区画整理事業において随意契約が多く行われ,特定の業者が受注しているとのうわさを聞き,太田市に対し,同事業の契約書類の情報公開請求をし,同年6月中旬ころ,その開示を受けた資料を調査していて,その業者選定理由(随意契約理由)に「優良工事の恩賞」と記載されていることに気付いた。 (イ)被控訴人は,同月24日,太田市役所に出向き,上記記載の意味を尋ねたところ,太田市契約検査課のBから「これは恩賞制度による随,意契約のことだと思う」旨の回答を得たので,直ちに,本件恩賞制度の内容の説明と資料の提示を求め,同月30日に交付,説明を受けることとされた。 (ウ)被控訴人は,同日,本件恩賞制度の具体的な内容を知り,太田市契約検査課に対し,平成11年度以降に本件恩賞制度に基づき締結された随意契約のリストアップを依頼し,平成16年7月7日,同課から,そのリストを入手し,これに基づき,直ちに,太田市に対し,平成11年度から同15年度までの優良工事に伴う恩賞工事の契約書,施工伺い及び支出負担行為決議書について公文書開示請求をし,契約書内の印鑑及び施工伺い内の設計金額を除いて開示する旨の部分開示決定を受け,その開示を受 15年度までの優良工事に伴う恩賞工事の契約書,施工伺い及び支出負担行為決議書について公文書開示請求をし,契約書内の印鑑及び施工伺い内の設計金額を除いて開示する旨の部分開示決定を受け,その開示を受けた。 (エ)被控訴人は,上記各資料等の検討を経て,Dの会員と相談の上,住民監査請求をする方針を決定したところ,住民監査請求をするに当たり太田市の損害額を算出する資料として,設計金額が非開示とされていたため,他の地方自治体での事例を調査し,予定価格であれば公開される可能性が高いことが分かったので,太田市に対し,予定価格が分かる資料の情報公開請求をし,同年8月9日,予定価格を示した文書の開示を- 9 -受けた。 ,,,エ(ア)被控訴人及び斎藤匠弁護士は同月19日太田市監査委員に対し太田市が締結した平成11年度以降の本件恩賞制度による本件各契約を含む随意契約59件,平成14年以降の本件恩賞制度によらないとする随意契約87件(ないし107件。被控訴人は,従前,本件恩賞制度による随意契約のほか,本件恩賞制度によらない随意契約についての資料収集も併せてしていたと推認される)等について,本件恩賞制度によ。 る随意契約は無効であり,工事代金額相当の損害を被り,また,本件恩賞制度によらない随意契約については,競争入札により契約を締結していれば,予定価格の80パーセント程度で契約できたものであり,その差額相当分の損害を被ったと主張して,住民監査請求をし,平成16年9月1日に受理された。 (イ)これに対し,太田市監査委員は,契約締結の日から1年以上経過している随意契約(本件契約53までの契約を含む)については,法2。 42条2項ただし書にいう正当な理由がないとし,契約締結日が請求書受付日から1年以内の工事案件のみを監査対象とし,このうち本件恩賞 ている随意契約(本件契約53までの契約を含む)については,法2。 42条2項ただし書にいう正当な理由がないとし,契約締結日が請求書受付日から1年以内の工事案件のみを監査対象とし,このうち本件恩賞制度による契約とされた本件契約54及び57については,本件恩賞制度によらない契約案件(34件)と重複するものとした上,上記契約2件について本件恩賞制度を適用したことには施行令2号に該当するものとして違法性がないから,これに基づく契約は無効でなく,また,上記2件を除いた本件恩賞制度によらない契約については施行令2号ないし5号のいずれかの規定に基づくもので,違法性,不当性がなく,監査請求に理由がないとした。 オ太田市(契約検査課担当)では,本件恩賞制度により随意契約をしたもの(随意契約理由を優良工事恩賞としたもの。本件契約1ないし13,15ないし34,36ないし54)について,随意契約により得る場合を規- 10 -,()定する施行令の該当条文としておおむね平成13年2月本件契約24までのものについては施行令5号該当,同年5月(本件契約25)以降のものについては施行令2号該当として(本件契約17及び49については4号該当とした,優良工事業者の中から特定の1業者を選定して,こ。)の業者と随意契約を締結していたものであり,随意契約に係る工事施工伺,。 ,,,いにその旨記載されていたただし控訴人は本件監査請求に対して本件恩賞制度による随意契約のすべてについて施行令2号によるものとして適法であると主張していた。 ,,,,カ(ア)被控訴人は本訴提起後控訴人らの主張を受けて太田市に対し平成17年2月18日付けで,本件恩賞制度の趣旨を太田市議会に説明したことが分かる資料について公文書開示請求をしたが,該当書類が存在し )被控訴人は本訴提起後控訴人らの主張を受けて太田市に対し平成17年2月18日付けで,本件恩賞制度の趣旨を太田市議会に説明したことが分かる資料について公文書開示請求をしたが,該当書類が存在しないとして,同年3月14日,請求却下の決定がされた。 (イ)被控訴人は,太田市に対し,同月22日付けで,本件恩賞制度に関する広報の記事一切について公文書開示請求をしたが,同月31日,請求のあった公文書が存在しないとして,不開示の決定がされた。 (ウ)被控訴人は,太田市に対し,同月30日付けで,平成7年以降の公表を前提とした随意契約の業者選定理由や随意契約理由を公表したことを示す文書又はインターネット情報一切について公文書開示請求をしたが,平成17年4月7日,請求のあった公文書が存在しないとして,不開示の決定がされた。 (エ)被控訴人は,太田市に対し,同年7月11日付けで,本件恩賞制度を説明したとされる建築関連業者との懇談会の記録一切について公文書開示請求をしたが,同月19日,請求のあった公文書が存在しないとして,不開示の決定がされた。 (3)以上の認定事実によれば,本件監査請求の対象とされた財務会計上の行為である本件各契約の締結は,太田市の公共工事として平成11年4月から- 11 -順次行われ,その履行がされていたものであって,一般住民に分からないように秘密裡に行われたものではなく,太田市の担当部署に問い合わせれば,その概要が判明し,情報公開請求をすれば,さらにその詳細が判明するものであり,現に,被控訴人において,契約検査課に資料提出を依頼し,又は,情報公開請求をして,その都度,直ちに当該資料を入手することができて,本件各契約の存在及び内容を具体的に知ったものである。そして,普通地方公共団体による随意契約の方法による契約の締結は,施行 又は,情報公開請求をして,その都度,直ちに当該資料を入手することができて,本件各契約の存在及び内容を具体的に知ったものである。そして,普通地方公共団体による随意契約の方法による契約の締結は,施行令所定の要件がある場合に限り行うことができるものであり,従前から随意契約の当否,適否,,が住民監査請求及び住民訴訟において問題とされてきたところ被控訴人は平成16年の春ころ,太田市内のα土地区画整理事業において随意契約が多く行われ特定の業者が受注しているとのうわさを聞いたと述べる(甲69の陳述及び供述)ところ,確かに同土地区画整理事業に係る随意契約は,本件監査請求の対象とされたものだけでも16件に及んでおり,特定の2業者に比較的集中していて,上記うわさを裏付けるものであるが,その契約はいずれも平成14年までのものである(原判決別紙2)ことに照らすと,当該うわさが平成16年の春ころに初めて生じたとは考え難く,それ以前からうわさになっていたことがうかがわれるものというべきである。これらの事情を併せ考慮すると,本件各契約について,その締結時から1年以内に,普通地方公共団体の住民(一般住民)が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度にその存在又は内容を知ることができなかったと認めることはできないというべきであり,既にこの点において,本件各契約のうち本件契約54を除く本件契約53までの各契約に係る住民監査請求につき期間を経過したことについて法242条2項ただし書にいう正当な理由はないといわざるを得ない。 (4)これに対し,被控訴人は,本件恩賞制度の非公表,随意契約の相手方選定理由の非公表及び市議会での隠ぺい答弁を理由として,平成16年6月下- 12 -旬の時点まで本件恩賞制度を知り得なかったので正当な理由 に対し,被控訴人は,本件恩賞制度の非公表,随意契約の相手方選定理由の非公表及び市議会での隠ぺい答弁を理由として,平成16年6月下- 12 -旬の時点まで本件恩賞制度を知り得なかったので正当な理由があると主張する。 しかしながら,本件各契約の存在及び内容を知れば,これについて住民監査請求をすることができるのであり,本件恩賞制度の存在及び内容を知らなければ本件各契約について住民監査請求をすることができないというものではないし,後記のとおり,本件恩賞制度による随意契約が当然に随意契約により得る要件を規定する施行令2号に該当するものとは認められないところ,一方で,本件恩賞制度自体が違法なものとまではいうことができず,その運用の仕方により問題が生じるというべきものであって,本件恩賞制度による随意契約が適法であるか否かは,当該契約が施行令各号のいずれかに該当するか否かにより決まるものというべきであるから,本件恩賞制度の存在及び内容を知り得たか否か自体が上記の正当な理由の判断要素となるものではないといわざるを得ない。このことは,被控訴人が,平成16年9月1日,,に受理された住民監査請求において本件恩賞制度による随意契約に限らず本件恩賞制度によらない極めて多数の随意契約も対象としたこと(前記(2)エ(ア) ,本件訴訟において,本件各契約が違法であることについて,随意)契約により得る要件を規定する施行令各号のいずれにも該当しないと主張していることに照らしても,明らかである。 また,確かに,本件恩賞制度及びこれを規定する本件運用基準は,太田市の広報誌に掲載されたり,インターネット上に公表されておらず,これらが各業者や報道機関等に公開されていたとまでは認められない(これを認めるに足りる証拠はない)し,随意契約の相手方の選定理由もインターネット。 掲載されたり,インターネット上に公表されておらず,これらが各業者や報道機関等に公開されていたとまでは認められない(これを認めるに足りる証拠はない)し,随意契約の相手方の選定理由もインターネット。 上に公表されていなかったが,他方で,随意契約についての情報公開請求をし,又は,太田市の担当部署に問い合わせれば,本件恩賞制度についても,随意契約の相手方の選定理由についても,開示され,説明を受けることができたのであるから,これらが太田市によりことさらに非公表とされ,一般市- 13 -民に対して秘密にされていたものとは認められず,被控訴人を含む一般市民において,平成16年6月下旬の時点まで本件恩賞制度を知り得なかったということは到底できないものというべきである。また,被控訴人は,市議会において本件恩賞制度を隠ぺいする答弁が繰り返されたとも主張するが,被控訴人主張の答弁がされた(甲9,16)ことから,控訴人又は太田市において本件恩賞制度を隠ぺいしたということはできない(なお,本件恩賞制度は,平成15年9月をもって廃止されているのであるから,平成16年6月8日の答弁において本件恩賞制度について触れていないのは,むしろ当然である。 。)したがって,被控訴人の上記主張は,いずれにしても理由がない。 (5)以上のとおりであるので,被控訴人の本件訴えのうち,本件契約1ないし12,15ないし34及び36ないし53に係る訴えは,適法な監査請求を経ていないから,不適法である。 本件契約54の適法性(争点3)について(1)控訴人は,本件契約54についても,施行令2号の要件を根拠付ける本件恩賞制度によるものとして適法であると主張する。 しかしながら,本件契約54は,その工事施工伺い(平成15年11月18日起案。甲25の54)によれば,随意契約適用条文を 行令2号の要件を根拠付ける本件恩賞制度によるものとして適法であると主張する。 しかしながら,本件契約54は,その工事施工伺い(平成15年11月18日起案。甲25の54)によれば,随意契約適用条文を施行令2号,随意契約理由を「優良工事に伴う恩賞のため」として,優良工事表彰受賞者である有限会社E(前年の受賞者と推認される)との間で締結されたものであ。 るが,本件恩賞制度は平成15年9月1日に廃止されたのであるから,その後に,しかも,表彰を受けた後1年を経過した場合でも恩賞を受けることができる特別の理由があるものとも認められないにもかかわらず(甲25の54,弁論の全趣旨,前年の表彰(平成14年10月までに行われたものと)推認される)から1年以上経過した後に,本件恩賞制度によるものとして。 締結されたものとは認め難く,そうであるとすると,仮に本件恩賞制度が施- 14 -行令2号の要件を根拠付けるものであるとしても,太田市が本件契約54を締結したことについて,上記随意契約理由(優良工事に伴う恩賞」は廃止「されておらず,これによる随意契約締結の恩賞が廃止されたものである)。 によって随意契約により得るものということはできない。 また,仮に,本件契約54が上記特別の理由により本件恩賞制度により締結されたとしても,本件恩賞制度が施行令2号の要件を根拠付けるものであるということができないことは,原判決の「事実及び理由」の「第3 争点 に対する判断」2(1)及び(2)アにおいて説示するとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決45頁5行目から同9行目までを「また,太田市では,本件恩賞制度による随意契約の締結について平成13年2月ころまではおおむね施行令5号該当としており,施行令2号該当としていなかったことに照らしても,本件恩賞制度を運用してい でを「また,太田市では,本件恩賞制度による随意契約の締結について平成13年2月ころまではおおむね施行令5号該当としており,施行令2号該当としていなかったことに照らしても,本件恩賞制度を運用していた太田市において,本件恩賞制度が施行令2号の要件を根拠付けるものであるとは考えていなかったものとせざるを得ない。結局,本件恩賞制度は,当該契約の締結が施行令2号ないし5号のいずれかに該当して随意契約により得る場合に,優良工事表彰又は特別表彰の受賞者を優先的に当該契約の締結の相手方に選定する運用をすべき制度であったということができる(工事施工伺いの記載によれば,そのような運用をする建前になっていたことがうかがわれる」に改める。 。)。 (2)そうすると,いずれにしても,本件恩賞制度の存在を理由として本件契約54の締結が適法であるということはできないところ,控訴人は,本件契約54について施行令2号に該当すると主張するので,以下,この点について判断する。 施行令2号に該当するか否かの判断については,前掲最高裁判所昭和62年3月20日第二小法廷判決に示されるとおり,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類等の諸般の事情を考慮して,契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきであるところ,控訴人は,施行令2号に該当するとし- 15 -た具体的な事情として「管理事務所が13年の経過による老朽化により雨,漏りが生じ,施設管理及び利用者に著しく支障をきたすため早急に改修する,。」必要があるため直ちに施工体制をとることのできる専門業者を選定すると主張するが,本件契約54に係る工事施工伺い(甲25の54)には,工事施工理由として「β管理事務所は,築13年を経過し,屋根部分の老朽,化が進んだため,屋根の塗装塗替工事を行うものです」とされており,同 るが,本件契約54に係る工事施工伺い(甲25の54)には,工事施工理由として「β管理事務所は,築13年を経過し,屋根部分の老朽,化が進んだため,屋根の塗装塗替工事を行うものです」とされており,同。 ,,工事は経年変化に対する改修工事であって上記控訴人の主張に係る緊急性専門性を認めることはできないものであるから,施行令2号に定める「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に当たらないものといわざるを得ない。 したがって,本件契約54の締結は,施行令2号に該当せず,法234条2項,施行令167条の2第1項に違反する違法なものというべきである。 Aの責任(故意過失)の有無(争点5)について太田市では,500万円未満(100万円以上)の工事請負費の支出負担行為については,太田市事務専決規程(甲4)により部長に専決権限が付与されており,本件契約54は,契約価格208万9500円であるから,太田市都市づくり部長であったFが専決しており,太田市長であったAは決裁に関与していない(甲70の54)が,普通地方公共団体の長は,その権限に属する一定範囲の財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合であっても,長として当該補助職員に対する指揮監督責任があり,専決権者において法234条2項,施行令167条の2第1項に違反する行為を行わないようにすべき指揮監督上の義務を負っていたものであるところ,Aは,従前から本件恩賞制度について同法令に違反するような運用がされていたのに任せて,担当部長をして本件恩賞制度によるものとして本件契約54を締結せしめ,施行令167条の2第1項に違反する行為を行うことを阻止しなかったのであるから,上記指揮監督上の義務に違反した過失があるものといわざ- 16 -るを得ない。 したがって 本件契約54を締結せしめ,施行令167条の2第1項に違反する行為を行うことを阻止しなかったのであるから,上記指揮監督上の義務に違反した過失があるものといわざ- 16 -るを得ない。 したがって,本件契約54の締結により太田市が損害を被ったとすれば,Aは,太田市に対し,民法709条により,その損害を賠償すべき不法行為責任を負うものというべきである。 損害の有無(争点6)についてそこで,本件契約54の締結により太田市が損害を被ったかについて判断するに,本件は,一次的に競争入札により最低価格での落札者と当該落札価格で契約を締結すべきところ,競争入札によらずに,優良工事業者とされた特定の業者との間で随意契約を締結したものであるから,このような場合の損害については,本件契約54の契約価格が,仮に同契約を競争入札に付していた場合に競争により形成されたであろう落札価格(以下「想定落札価格」という)。 を上回る場合に損害の発生が認められるというべきである。 被控訴人は,この場合の損害について,入札談合事案の場合と同様に損害の発生が認められ,民事訴訟法248条により契約価格の20パーセントを損害とみるべきであると主張する。 しかしながら,民事訴訟法248条を適用するには,まず,損害が生じたことが認められなければならないところ,随意契約が締結された場合には,そのことによって当然に損害が生じたということはできないものであるのに対し,入札談合事案では,談合者間で落札価格(最低価格)を意図的に操作して落札者において不当な利益を得て,もって契約の相手方に損害を与えるものである,,から本件を入札談合事案の場合と同様に取り扱うことはできないものであり本件契約54について,太田市又は契約業者において当該業者に不当な利益を得させ,又はこれを得るために契約価格 るものである,,から本件を入札談合事案の場合と同様に取り扱うことはできないものであり本件契約54について,太田市又は契約業者において当該業者に不当な利益を得させ,又はこれを得るために契約価格(その前提としての設計金額,予定価格を含む)を意図的に操作したことは何らうかがわれないものである。そし。 て,本件契約54は,その契約価格が208万9500円(設計金額が221万5500円,予定価格が210万円。原判決別紙5)の比較的小規模な屋根- 17 -塗装改修工事事案であり,本件で問題とされた随意契約の中では最も契約価格等が少額なものであるところ(ちなみに,予定価格が都道府県及び政令指定都市で250万円以下,その他の市町村で130万円以下の少額の場合には,随意契約によることができることとされており(施行令1号,別表第5,太田)市契約規則(甲3)においても同様に規定されている,これに他の競争入。)札事案の統計的数値(原判決別紙4)を適用するなどして想定落札価格を算出することは相当でないといわざるを得ないし,また,上記のような事案では,競争入札に付した場合において,入札者,落札者がない可能性(施行令6号)も否定することができない。 そうすると,本件契約54について,その契約締結により太田市に損害が生じたことが認められるとはいえず,民事訴訟法248条を適用する前提を欠くものといわざるを得ない。そして,他に本件契約54の契約の締結により太田市に損害が生じたこと及びその損害額を認めるに足りる証拠はない。 したがって,被控訴人の本件契約54に係る請求は,理由がない。 ところで,原判決は,控訴人に対する請求として,被控訴人がAに対し損害賠償請求をすることを求めていない本件契約13についても一部認容しているので,原判決中のこの部分は,被控訴人 は,理由がない。 ところで,原判決は,控訴人に対する請求として,被控訴人がAに対し損害賠償請求をすることを求めていない本件契約13についても一部認容しているので,原判決中のこの部分は,被控訴人が申し立てていない事項について判決したもので,違法(処分権主義違背)であり,取消しを免れない。 よって,原判決中,控訴人敗訴部分を取り消し,同取消部分に係る被控訴人の訴えのうち,本件契約1ないし12,15ないし34及び36ないし53に係る訴えを却下し,その余の被控訴人の本件契約54に係る請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部裁判長裁判官大谷禎男- 18 -裁判官杉山正己裁判官吉村真幸

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る