【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人松永東同野原松次郎同名尾良孝上告趣意書第一点は「原判決ハ理由不備ニ 付破毀セラル可キモノト信ス即チ原判決ハ其理由第
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人松永東同野原松次郎同名尾良孝上告趣意書第一点は「原判決ハ理由不備ニ 付破毀セラル可キモノト信ス即チ原判決ハ其理由第二ニ於テ被告人ハ知合ノ原審被 告人ABCD外二名ト共謀ノ上 (一) 昭和二十二年五月二十三日午前一時頃浦 和市a町E工業株式会社作業所内ニ於テFノ保管スル綿糸三梱包(容量計三十六貫) ヲ窃取シ (二) 同日午前一時二十分頃埼玉県北足立郡b町大字cG方物置軒下 ニ於テ同人所有ノリヤカー一台ヲ窃盗シタリト判示シソノ証拠トシテ原審法廷ニ於 ケル被告人ノ供述並ニ被害者ノ犯罪届書中ノ被害顛末ヲ摘示シ刑法第二百三十五条 及六十条ヲ適用シタリ然レトモ被告人ノ供述ヲ見ルニ第一回公判調書ニ於テ問、其 時ノ事ニ付テAハ斯様ニ述ヘテ居ルカ間違ハナイカ此時A聴取書中第八項ヲ読聞カ セタリ答、其ノ通リ間違ヒナシ問、仲間デ誰カ大将カ答、DテストアリAノ聴取書 第八項ニハ「五月二十三日ノ午後六時半頃夕食ヲ食ヘテ居リマストHトBノ二人カ Dカ呼ンデ居ルカラ直クコイト言フ訳テd駅ニ行ツタノデス其処ニ六人ノ友達が居 テ……D君カラ今夜ウマイ仕事ヲヤルンダガ未タ時間ガ早イカラ東京へ遊ヒニ行ウ ト言ツテ電車デe迄行キd駅へ帰ツタノガ午後十一時三十分頃ダツタト思ヒマスソ レカラH君ノ案内デ歩イテ六人デa町ノE工業株式会社迄参リマシテ塀ヲ乗リ越エ テ入リマシタ塀ノ外テ見張ヲシテ居タノガH君トI君ト二人デ中ニ這入ツテカラノ 見張ハ私カシマシタ作業服場内へ忍込ンダノハDトCトBノ三人ト思ヒマス暫クス ルト俵三俵ヲ持チ出シテ来マシタカソレカラ皆デ塀ノ外ニ担キ出シタノデスソレハ 純綿糸三梱包二千円相当ノモノデシタカ時間ハ二十三日ノ午前一時頃カト思ハレマ シタソレカラ今度ハB君カリヤカーヲ持ツテ来ルカラ待ツテ居レト言フ訳デコレモ タカソレカラ皆デ塀ノ外ニ担キ出シタノデスソレハ 純綿糸三梱包二千円相当ノモノデシタカ時間ハ二十三日ノ午前一時頃カト思ハレマ シタソレカラ今度ハB君カリヤカーヲ持ツテ来ルカラ待ツテ居レト言フ訳デコレモ 暫クスルトリヤカー一台ヲ一五〇〇円位ノニ挽イテ来タノテアリマス」トアリ而シ - 1 - テ共同正犯タルニハ「共同シテ犯罪ヲ実行シタルコトヲ」要件トシ主観的ニハ共同 ノ犯意ヲ有シ客観的ニハ犯罪行為ニ共同加功ノアルコトヲ要スルモノニシテ本件ニ 於テ 一、大将カDナル点 二、被告人ハ現場ニ案内セルモ塀ノ外ニテ見張ヲ為シ タルニ止ル点ヨリ見レハ単ニ幇助犯ヲ以テ問擬スベク共同正犯トシテ問擬スルニハ 理由ニ於テ不備ナリトノ誹ヲ免レサルモノト信ス殊ニ第二ノ(二)ノリヤカー窃取 ノ点ニ付テハ「Bガリヤカーヲ持ツテ来ルカラ待ツテ居レト言フ訳テコレモ暫クス ルトリヤカー一台ヲ挽イテ来タノデアリマス」トテ此点ニ付テハ其ノ時遽ニBカ窃 取ノ犯意ヲ起シ単独ニテ窃取セルコト明カニシテ主観的ニ意思ノ通謀ナク客観的ニ モ犯罪行為ニ共同加功ノ全然認メラレザルニ拘ラス共同正犯ヲ認メタル原判決ハ理 由不備ニ付破毀ヲ免レサルモノト信ス」というのである。 しかし数人が強盗又は窃盗の実行を共謀した場合において、共謀者のある者が屋 外の見張りをした場合でも、共同正犯は成立するということは、大審院数次の判例 の示すところであつて今これを改むべき理由は認められない、従つて被告人が相被 告人A外五名と共謀して、E工業株式会社作業場内の綿絲三梱包を窃取した行為に つき見張をした被告人を、窃盗罪の共同正犯と認めた原判決は正当であつて、論旨 の如き理由不備はない。 次にG方物置の軒下にあつたリヤカー一台を窃取したこ とには、被告人は関係がないと主張する論旨について考へてみるに、原審公判調書 によれば被告人は第一審判示摘示事実中の第二 論旨 の如き理由不備はない。 次にG方物置の軒下にあつたリヤカー一台を窃取したこ とには、被告人は関係がないと主張する論旨について考へてみるに、原審公判調書 によれば被告人は第一審判示摘示事実中の第二事実を認めていることが明記されて いる、そして第一審判決摘示実中の第二事実は、被告人及びB等が共謀してG方の リヤカーを窃取した事実を指すのであるから、被告人は原審公判において判示リヤ カーを窃取したと供述していることが明らかである、従つて被告人の前記供述を引 用して、被告人はリヤカー一台を窃取したものと認定した原判決は正当であつて論 旨は理由なきものである。 第二点は「原判決ハ理由不備ニ付破毀セラル可キモノト信ス即チ原判決ハ第一点 - 2 - ニ於テ被告人ハJト共謀ノ上被害者Lヲ脅迫シテ金員ヲ強取シタル事実ヲ認定シ其 ノ証拠トシテ被告人ノ原審公判廷ニ於ケル供述並ニ証人Lノ右事実ニ照応スル供述 ヲ摘示セリ然レドモ原審ニ於ケル被告人ノ供述ヲ見ルニ問被告人ハJト共謀ナシテ 通行人ヲ脅カシテ金員ヲ取ルコトハ斯様ニナツテ居ルカ間違ハナイカ第三回聴取書 ノ第四九丁十行目ヨリ第五十丁表十行目迄ヲ読聞ケタリ答其ノ通リ間違アリマセヌ 問ドウシテJト一諸ニ付イテ強盗スル気ニナツタノカ答自分ハ見テレハヨイト思ツ タノテズトアリ第三回聴取書ノ第四十九丁十行目ヨリ以下ノ記載ハ「……私ハfヘ 活動ヲ見ニ来タ帰リd駅ニ降リマツタ処Kハ便所ノ処ニ居リオ前金ヲ持ツテ居ナイ ダラウ取ツテヤルカラト言フノテ何ウセ喝上ヲヤルト言フコトハ承知シテ居リマツ タカKノ後カラ付テ行キマシタ」トアリ被告人ノ供述中ニハ兇悪ナ、強盗ヲ為ヲ意 思ハ全然ナカリシモノニシテ被害者Lノ証言ニヨルモ問ソレカラ怎ウシタカ答、私 ノ後ニ近付ク様子テシタカラ其時後カラヂヤンバーニ黒ズボンヲ着タ一人ノ男カ私 ノ前ニ出テ立塞リ「金ヲ出セ」ト嚇カサ 盗ヲ為ヲ意 思ハ全然ナカリシモノニシテ被害者Lノ証言ニヨルモ問ソレカラ怎ウシタカ答、私 ノ後ニ近付ク様子テシタカラ其時後カラヂヤンバーニ黒ズボンヲ着タ一人ノ男カ私 ノ前ニ出テ立塞リ「金ヲ出セ」ト嚇カサレ他ノ一人ノ男ハ同時ニ私ノ後カラピスト ルヲ突付ケテ居ルノカ感セラレタノテ反抗セズニ命令ニ服従シマシタ問ソノピスト ルハ見タカ答何カ固イモノヲ突付ケタノデピストルト思ヒマシタカ別ニ見マセンデ シタ中略、聞手ヨリ固イモノト思ツタカ答左様テス手ヨリ固イノデピストルト思ヒ マシタ併シ後テハピストルデナイト感シマシタ問何故ピストルデナイト感ジタカ答 私ハ反抗セズニ居ルト前ニ居タ男カ私ノ洋服ノポケツヲト探シテ居ル中ニ私モ最初 ニ驚イタ気持モ幾分冷靜ニナツタノデ後ノ男カ突付ケテ居ルモノガピストルデナイ コトガ判リマシタトアリ被害者ガ反抗セザリシハ被告人ニ於テピストルヲ突付ケタ リトノ錯誤ニヨリ誤信セシカ為ニシテ被告人ノ為シタルハ単ニ恐喝ニ止ルカ故ニ仮 令被害者ノ錯誤ニヨリ反抗ヲ為サヽリシトスルモソノ為ニ被告人等ノ恐喝が直ニ強 盗ヲ以テ問擬スヘカラサルハ刑法第三十八条第二項ノ法意ヨリ明カナル処ナリ原審 ニ於テ松永弁護人ヨリ本件ハ恐喝ヲ以テ処断スヘク強盗ヲ以テ処断スヘカラスト弁 - 3 - 論セルコト及本件カ強盗ニ非ラサルコトハ被告人自身モ力説セル処ナルニ拘ラス原 審判決ハ被害者ノ錯誤ノ点ヲ看過シ直ニ強盗ヲ以テ処断シタルハ理由不備アルヲ以 テ破毀ヲ免レサルモノト信ス」というのである。 按ずるに原判決において引用し被害者Lの原審公判における証言によれば、被害 者Cは最初に驚いた気持も幾分冷静になつたので、後の男が突きつけておるものが ピストルではないことがわかつた旨、述べており、又多勢に無勢で反抗できないか ら、諦めて被告人のいうがままになつたと述べておることが明らかである、従つて 被害者Cは たので、後の男が突きつけておるものが ピストルではないことがわかつた旨、述べており、又多勢に無勢で反抗できないか ら、諦めて被告人のいうがままになつたと述べておることが明らかである、従つて 被害者Cは所論の如くビストルを突きつけられたと誤信した結果被告人の加えた脅 迫の程度に比し、必要以上に畏怖心をおこして被告人のいうがままになつたもので はないことが窺われるから、原審判決において被告人の行為は所論の如き恐喝では なく強盗であると認めたことは正当であつて、所論の如き違法は認め難い。 次に論旨は、被告人は強盗の意思はなかつたことの論拠として原審公判における 被告人の「喝上をやるということは承知しておりました」と述べたことを引用して おるのであるが、「喝上」ということは他人を脅迫して金員を奪い取ることを意味 し、恐喝に当る場合もあり、強盗に当る場合もあるといわなければならない。いや しくも他人を脅迫して金品を奪い取る意思を以て他人を脅迫した場合において脅迫 者は強盗をする意思はなかつたとしても脅迫の行はれた周囲の事情や被告者の精神 上体力上等の関係如何により強度の畏怖心をおこし強度に自由を抑圧された場合に おいて客観的に観察して被害者が自由を抑圧されることは当然であると認められる 場合は強盗を以て論ずへきこと疑いの余地なきところである、原審の認定によれば、 本件の犯行は午前一時の真夜中時人通りなき道路上においてJは前方より被告人は 後方より被害者Cをはさみ打ちの態勢をとり、金を出せと脅迫したものであるから、 被害者が抵抗の自由を失い、被告人のいうがままになつたことは、経験則にてらし 首肯できることである、従つて原判決において本件犯行を強盗と認めたことは正当 - 4 - であつて、論旨は理由がない。 第三点は「原判決ハ擬律錯誤ニヨリ破毀ヲ免レサルモノト信ス即チ原判決ハ第一 ノ し 首肯できることである、従つて原判決において本件犯行を強盗と認めたことは正当 - 4 - であつて、論旨は理由がない。 第三点は「原判決ハ擬律錯誤ニヨリ破毀ヲ免レサルモノト信ス即チ原判決ハ第一 ノ点ニ付キテハ強盗ヲ認定シ第二ノ点ニ付キテハ窃盗ヲ認メ両者ハ犯意継続ニ係ル ヲ以テ連続犯ナリト判示セリ而シテ窃盗ト強盗トカ連続犯タルコトハ従来判例ノ一 貫セル所ナリ然レトモ刑法第五十五条ニ連続犯タルタメニハ同一罪名ニ触レルコト ヲ要件トシ判例カ同一条章ノ下ニ於テ同一罪質ナリトノ理由ニテ窃盗ト強盗トヲ連 続犯ト為スハ明カニ刑法第五十五条ノ明文ニ反スルモノト言フヘク(参照M全訂刑 法講義総論第二九九頁第十二行以下各論六四七頁五行以下連続犯ヲ認メルコトニ反 対ス)擬律錯誤ニヨリ破毀ヲ免レサルモノト信ス」というのである。 しかし窃盗と強盗の連続行為は刑法第五十五条にいわゆる同一罪名にふれるもの であるということは当裁判所判例(昭和二十二年(れ)第一五四号事件)の示すと ころである。従つて被告人の犯した判示第一の強盗行為と、これに連続して行はれ た第二の窃盗行為に対し刑法第五十五条を適用して強盗の一罪として処断した原審 判決は正当であつて所論の如き違法はない。 よつて刑事訴訟法第四百四十六条により主文の如く判決する。 以上は裁判官全員一致の意見である。 検察官小幡勇三郎関与 昭和二十三年三月十六日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎 裁判官 井 上 登 裁判官 庄 野 理 一 裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 - 5 - 裁判官 庄 野 理 一 裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 - 5 -
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