平成29年4月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第34678号特許権侵害行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成29年3月3日判決原告株式会社豊田自動織機同訴訟代理人弁護士永島孝明同安國忠彦同朝吹英太同安 友 雄一郎同訴訟復代理人弁護士野中信宏同補佐人弁理士佐藤 努同中村 敬同磯田志郎同若山俊輔被告ハノンシステムズ・ジャパン株式会社(旧商号ハラビステオン・クライメイトコントロール・ジャパン株式会社)同訴訟代理人弁護士辻居幸一同渡辺 光同小和田 敦 子同訴訟復代理人弁護士山本飛翔同訴訟代理人弁理士倉 澤 伊知郎同補佐人弁理士丹澤一成同岩上 健 主文 1 被告は,別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各製品を生産し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。 2 被告は,その占有に係る別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各製品及びその半製品を廃棄せよ。 はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。 2 被告は,その占有に係る別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各製品及びその半製品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主文第1項ないし第3項と同旨 2 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,名称を「ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造」とする発明についての特許権を有する原告が,被告の輸入・販売する別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各圧縮機(以下,併せて「被告各製品」という。)は上記特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,①特許法100条1項に基づき,被告各製品の生産,使用,譲渡,貸渡し,輸出若しくは輸入,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求めるとともに,②同条2項に基づき,その占有する被告各製品及びその半製品の廃棄を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は,繊維機械,産業用運搬車両,自動車その他一般機械器具等及びその部品の製造・販売等を業とする株式会社である。(弁論の全趣旨) イ被告は,自動車用及び産業機器用の空調,温調及び冷却システム等の設計,開発,製造,販売,輸入及び輸出等を業とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権原告は,次の特許権(請求項の数2。以下「本件特許権」又は「本件特許」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明」という。なお,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その内容は別紙特許公報記載のとおりである。)を有している。 又は「本件特許」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明」という。なお,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その内容は別紙特許公報記載のとおりである。)を有している。 特許番号第4304544号発明の名称ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造出願日平成19年12月27日優先日平成13年11月21日登録日平成21年5月15日(3) 本件発明の内容本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,別紙特許公報記載のとおりである。 (4) 本件発明の構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A」などという。)。 A シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させ,前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備えたピストン式圧縮機において,B 前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路と, C 吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段とを有し,D 前記シリンダブロックは,前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔を有し,E 前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接 回転可能に収容する軸孔を有し,E 前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,F 前記ピストンは両頭ピストンであり,前記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,前記カム体は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくしたG ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。 (5) 本件特許の出願経過等ア原告は,本件特許の親出願(特願2002-324043)の出願過程において,特許庁審査官から拒絶理由通知書の送付を受けた。そこで,原告は,平成19年10月9日付け意見書(乙30。以下「乙30意見 書」という。)及び手続補正書を提出した。(乙30)イまた,原告は,本件特許の出願過程において,平成21年1月28日付け早期審査に関する事情説明書(乙25。以下「乙25事情説明書」という。)を提出したところ,特許庁審査官から,同年2月3日起案に係る拒絶理由通知書(乙24。以下「乙24拒絶理由通知書」という。) 付け早期審査に関する事情説明書(乙25。以下「乙25事情説明書」という。)を提出したところ,特許庁審査官から,同年2月3日起案に係る拒絶理由通知書(乙24。以下「乙24拒絶理由通知書」という。)の送付を受けた。そこで,原告は,同年3月12日付け意見書(乙26。 以下「乙26意見書」という。)及び手続補正書を提出し,本件特許として特許査定を受けた。(乙24ないし26)(6) 被告による無効審判請求被告は,平成27年5月1日,特許庁長官に対し,本件発明に係る特許について無効審判請求をした(無効2015-800122)。(甲12,乙29,48)(7) 審決の予告特許庁は,平成27年12月22日,上記(6)の無効審判請求事件において,本件発明は特許法29条1項3号及び同条2項により特許を受けることができないとの理由により,本件発明に係る特許を無効とする旨の審決の予告(以下「本件審決予告」という。)をした。(乙48)(8) 原告の訂正請求原告は,本件審決予告を受けて,平成28年3月7日,特許庁に対して訂正請求書(甲8。以下「本件訂正請求書」という。)を提出し,本件特許の特許請求の範囲請求項1(本件発明)について,次のとおり訂正する旨の訂正請求をした(以下「本件訂正」といい,本件訂正後の本件発明を「本件訂正発明」という。なお,訂正によって追加された記載に下線を付した。)。 「シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させ,前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前 記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備えたピストン式圧縮機において,前記シリンダボ と一体化されていると共に,前記ピストンによって前 記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備えたピストン式圧縮機において,前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路と,吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段とを有し,前記シリンダブロックは,前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔を有し,前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,前記ピストンは両頭ピストンであり,前記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し,前記カム体は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に 記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大き くしたピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。」(9) 本件訂正発明の構成要件の分説本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。(弁論の全趣旨)A シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させ,前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備えたピストン式圧縮機において,B 前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路と,C 吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段とを有し,D 前記シリンダブロックは,前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔を有し,E’前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段 前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,F’前記ピストンは両頭ピストンであり,前記両頭ピストンを収容する前 後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し,前記カム体は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくしたG ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。 (10) 被告の行為被告は,被告各製品を輸入し,日本国内においてその販売をしている。 (11) 被告各製品の構成被告各製品の構成は,別紙イ号物件説明書及び別紙ロ号物件説明書のとおりである。ただし,その構成の一部については争いがある(争いがある部分に下線を付した。)。 (12) 被告各製品における本件発明及び本件訂正発明の構成要件充足性ア被告各製品は,本件発明の構成要件B,D及びGを充足する。 イ被告各製品は,本件訂正発明の構成要件B,D及びGを充足する。 (13) 先行文献本件特許の優先日(平成13年11月21日)よりも前に公開された文献として,以下の ,D及びGを充足する。 イ被告各製品は,本件訂正発明の構成要件B,D及びGを充足する。 (13) 先行文献本件特許の優先日(平成13年11月21日)よりも前に公開された文献として,以下のものが存在する。 ア特開平5-126039号公報(公開日平成5年5月21日。乙4。 以下「乙4公報」といい,同公報に係る発明を「乙4発明」という。)イ特開平8-261150号公報(公開日平成8年10月8日。乙7。 以下「乙7公報」という。) ウ特開平9-60586号公報(公開日平成9年3月4日。乙9。以下「乙9公報」という。)エ特開平9-250453号公報(公開日平成9年9月22日。乙13。 以下「乙13公報」という。)オ特開平10-9130号公報(公開日平成10年1月13日。乙14。 以下「乙14公報」という。)カ実公昭58-46263号公報(公告日昭和58年10月21日。乙15。以下「乙15公報」という。)キ実開昭60-139083号公報(公開日昭和60年9月13日。乙16。以下「乙16公報」という。)ク実開昭61-145882号公報(公開日昭和61年9月9日。乙17。以下「乙17公報」という。)ケ特開昭64-63669号公報(公開日平成元年3月9日。乙18。 以下「乙18公報」という。)コ特開平8-334085号公報(公開日平成8年12月17日。乙19。以下「乙19公報」といい,同公報に係る発明を「乙19発明」という。)サ特開平9-60583号公報(公開日平成9年3月4日。乙20。以下「乙20公報」という。)シ特開平7-63165号公報(公開日平成7年3月7日。乙21。以下「乙21公報」といい,同公報に係る発明を「乙21発明」という。)ス日本工業規格JISB 1566-19 公報」という。)シ特開平7-63165号公報(公開日平成7年3月7日。乙21。以下「乙21公報」といい,同公報に係る発明を「乙21発明」という。)ス日本工業規格JISB 1566-1975「転がり軸受の取付関係寸法及びはめあい」の「表2 平面座スラスト玉軸受の肩の直径の最小値又は最大値」(乙27。以下「乙27規格」という。)セ特開平5-164046号公報(公開日平成5年6月29日。乙32。 以下「乙32公報」という。) ソ特開平5-126040号公報(公開日平成5年5月21日。乙33。 以下「乙33公報」という。)タ特開平5-172051号公報(公開日平成5年7月9日。乙50。 以下「乙50公報」という。)チ特開平6-129351号公報(公開日平成6年5月10日。乙51。 以下「乙51公報」という。)ツ特開平6-299956号公報(公開日平成6年10月25日。乙52。以下「乙52公報」という。)テ特開平7-293431号公報(公開日平成7年11月7日。乙53。 以下「乙53公報」という。)ト米国特許1367914号明細書(登録日1921年〔大正10年〕2月8日。乙54。以下「乙54明細書」という。)ナ特開平8-61230号公報(公開日平成8年3月8日。乙55。以下「乙55公報」という。)ニ特開平5-312145号公報(公開日平成5年11月22日。乙56。以下「乙56公報」という。) 3 争点(1) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するかア構成要件Aの「ロータリバルブ」の充足性イ構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「スラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」の充足性ウ構成要件Eの「前記軸孔の内 足性イ構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「スラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」の充足性ウ構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手段」の充足性(2) 本件発明に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものかア 〔無効理由1〕乙19発明による新規性欠如 イ 〔無効理由2〕乙19発明及び乙4発明による進歩性欠如ウ 〔無効理由3〕乙21発明並びに周知技術及び慣用技術による進歩性欠如(3) 本件訂正による対抗主張の成否ア本件訂正が訂正要件を充たしているかイ本件訂正により争点(2)の無効理由を解消することができるかウ新たな無効理由の存否第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(構成要件Aの「ロータリバルブ」の充足性)について〔原告の主張〕(1) 被告各製品のシャフト50は回転弁として機能し,構成要件Aの「ロータリバルブ」に相当する。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,シャフト50のうちフロント側通路23及びリヤ側通路33に対応する部分のみが回転弁としての機能を有するのであって,シャフト50が回転弁として機能することはないと主張する。 しかし,被告各製品において回転弁として機能するのは,「シャフト50のうち,フロント側通路23及びリヤ側通路33に対応する部分のみ」ではない。被告の上記主張の論拠は何ら示されておらず,その論拠も見出せない。 〔被告の主張〕否認する。被告各製品においてシャフト50が回転弁として機能することはない。シャフト50のうち,フロント側通路23及びリヤ側通路33に対応する部分のみが,回転弁(ロータ ない。 〔被告の主張〕否認する。被告各製品においてシャフト50が回転弁として機能することはない。シャフト50のうち,フロント側通路23及びリヤ側通路33に対応する部分のみが,回転弁(ロータリバルブ)としての機能を有する。 2 争点(1)イ(構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「スラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」の充足性)について 〔原告の主張〕(1) 被告各製品では,吐出行程において,ピストン60が移動する方向とは反対向きの「圧縮反力F」がピストン60に作用するところ,上記圧縮反力Fは,シュー61,斜板51,フロント側スラスト軸受70及びリヤ側スラスト軸受80を介してシャフト50(回転弁)に伝達され,斜板51の径中心部を中心としてシャフト50を傾かせようとするのであって,これにより,シャフト50(回転弁)は,吐出行程中のシリンダボア22に連通するフロント側通路23の入口に向けて付勢される。 したがって,被告各製品は,構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「スラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」を充足する。 (2) 被告の主張に対する反論①-「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」の解釈アこの点に関して被告は,本件発明の「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」とは「軸孔内で回転軸を傾け,回転軸のロータリバルブが吸入通路の入口に接触及び非接触(接離)の動作を繰り返させる構成」を意味するなどと主張する。 しかし,このような主張は,特許請求の範囲の記載を無視するものである。 イまた,被告は,「圧縮反力伝達手段」とは「ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブ 」を意味するなどと主張する。 しかし,このような主張は,特許請求の範囲の記載を無視するものである。 イまた,被告は,「圧縮反力伝達手段」とは「ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達」(構成要件C)し,「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」(同)ことを妨げる構造を有しない構成を意味するのであり,これらを妨げる構造を有した結果,回転軸が僅かに変位する程度では,本件発明の「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」という構成を充足しないなどと主張する。 しかし,本件発明は「圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」(構成要件C)と明確に記載されているのであるから,被告主張の追加構造を具備するか否かではなく,被告各製品が,圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する構造を具備するか否かにより,構成要件の充足性を判断するべきである。 ウさらに,被告は,本件特許の出願経過等に照らせば,回転軸が僅かに傾くにすぎない場合は「付勢」を充足しない旨主張する。 しかし,これらはいずれも,出願経過等における原告の主張を曲解し,特許請求の範囲を不当に限定的に解釈するものであって,理由がない。 エ加えて,被告は,2015年(平成27年)11月20日付け実験報告書(乙41。以下「乙41報告書」という。)及び2014年(平成26年)10月27日付け試験分析証明書(乙42。以下「乙42証明書」という。)を提出した上,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」スラスト軸受であっても,圧縮反力により弾性変形し,圧縮反力がロータリバル 月27日付け試験分析証明書(乙42。以下「乙42証明書」という。)を提出した上,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」スラスト軸受であっても,圧縮反力により弾性変形し,圧縮反力がロータリバルブに伝達されるのであるから,「スラスト荷重吸収機能が付与されている」スラスト軸受を有することをもって,本件発明の「圧縮反力伝達手段」を具備すると解することは許されないなどと主張する。 しかし,乙41報告書及び乙42証明書の実験において比較用圧縮機として使用されたのは,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」とされるスラスト軸受のみを用いた圧縮機であって,同圧縮機は本件発明を実施したものではなく,被告各製品とも異なる。そもそも,被告が上記実験に使用した比較用圧縮機は,被告各製品のような市販品ではなく,被告がこの実験のために特別に製造したものというのであって,そ の性質,品質,特性等は不明であり,通常の動作が可能か否かすら明らかではない。 (3) 被告の主張に対する反論②-被告各製品の充足性被告は,被告各製品においてはピストン60に「圧縮反力F」が作用し,シャフト50を傾かせる方向に力が働くことは事実であるものの,被告各製品では上記圧縮反力が吸収されるから,シャフト50は傾かないなどと主張する。 しかし,被告各製品のシャフト50の外径は平均19.003mmであり,シャフト用孔21,31の内径は平均19.033mmであるから,シャフト50の外周面とシャフト用孔21,31の内周面との間には平均0.03mm(30μm)の隙間がある。そのため,被告各製品は,上記隙間の範囲においてシャフト50の変位を許容するものということができる。 そして,現に,原告提出の平成27年9月15日付け実験結果報告書(甲7。以下「甲7報告書」とい そのため,被告各製品は,上記隙間の範囲においてシャフト50の変位を許容するものということができる。 そして,現に,原告提出の平成27年9月15日付け実験結果報告書(甲7。以下「甲7報告書」という。)によれば,運転中の被告各製品において,吐出行程にあるシリンダボアのフロント側通路に向けて近づくようにシャフトの外周面が変位していることが確認されている。 〔被告の主張〕以下のとおり,被告各製品は,構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「スラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」を充足しない。 (1) 「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」の意義ア接触及び非接触(接離)の動作を繰り返させる構成本件発明の「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」とは,「軸孔内で回転軸を傾け,回転軸のロータリバルブが吸入通路の入口に接触及び非接触(接離)の動作を繰り返させる構成」を意味するものであり,具体的には,①回転軸がロータリバルブにおいてのみ支持され, 他の部分においては支持されない(回転軸の外周面と軸孔の内周面の間隔が大きい)構造であること,②上記①の支持される部分であるロータリバルブにおいても,ロータリバルブが軸孔の内周面に接離可能なように,ロータリバルブの外径が,軸孔の内径よりも十分小さいこと,③スラスト軸受が,スラスト荷重を受けて撓む構造であること,との三つの構成を備えなければならない。 イ 「回転軸が僅かに変位する程度」の除外本件発明の「圧縮反力伝達手段」とは,「ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達」(構成要件C)し,「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」(同)ことを妨げる構造を有しない構成を意味するのであ 手段」とは,「ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達」(構成要件C)し,「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」(同)ことを妨げる構造を有しない構成を意味するのであり,これらを妨げる構造を有した結果,回転軸が僅かに変位する程度では,本件発明の「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」という構成を充足しない。 ウ本件特許の出願経過等による解釈以下のとおり,本件特許の出願経過等に照らせば,クリアランスが極めて小さく,回転軸が僅かに傾くにすぎない場合には,「付勢」を充足しない。 (ア) 本件特許の出願過程における乙26意見書には,「引用文献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明とは,従来からのニードルベアリングのような転がり軸受ではなく,ジャーナル軸受を採用することによって,回転軸側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸受との間のクリアランスを極めて小さくし,その結果,ロータリバルブからの冷媒漏れを抑制するというものです。」などと記載されているのであって,このことからすれば,原告が本件発明の技術的範囲から「クリアランスが小さい場合」を意識的に除外していることは明らかである。 (イ) 本件特許の親出願(特願2002-324043)の出願過程におけ る乙30意見書には,「引用文献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明は,回転軸24を支持する軸孔はバルブ収容室を含めすべて同じ径で形成されていて,軸孔全体で回転軸24を支持する構成となっています。したがって,バルブ収容室の内周面が本願発明でいう『圧縮反力伝達手段』として構成されていないことは明らかです。」などと記載されているのであって,このことからすれば,クリアランスを極めて小さくして軸孔全体で回転軸を支持する構成は本件 本願発明でいう『圧縮反力伝達手段』として構成されていないことは明らかです。」などと記載されているのであって,このことからすれば,クリアランスを極めて小さくして軸孔全体で回転軸を支持する構成は本件発明の技術的範囲に属しない。 (ウ) 本件特許の出願過程における乙25事情説明書には,「上記文献B群に記載された発明では,回転軸を支持するラジアル軸受手段を,たとえば,コロ軸受〔判決注:転がり軸受の一種〕等によって構成していると,圧縮反力によって発生するモーメントが吸収されることから,そのモーメントをロータリバルブに伝達しにくい構成であるといえる。つまり,上記文献B群は,本願発明でいう圧縮反力伝達手段を備えているとは言いがた(い)」と記載されており,また,コロ軸受にクリアランスが必要であることは技術常識であるから,当該クリアランスによって生じる程度の回転軸の変位しか許容されないような構成は「本願発明でいう圧縮反力伝達手段」にはならない。 エ 「押接」による「閉鎖」等本件特許の出願過程における乙26意見書に「吸入通路の入口をシールすることに特徴がある」との記載及び「ロータリバルブの外周面は,直接,吸入通路の入ロに付勢されます」との記載があること,本件明細書等に「吸入通路33A,34の入口331,341は,圧縮反力によるロータリバルブ35,36の押接によって閉鎖される状態となる」(段落【0043】)との記載があること,さらに,「付勢」が単に回転軸の傾きによって隙間を狭くする趣旨にすぎないのであれば,従来技 術(乙19発明及び乙19公報記載の従来技術)と何ら変わらないことなどからすれば,本件発明の「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」とは,回転軸が吸入通路入口の方向に傾けば足りるというものではなく,吸入通 報記載の従来技術)と何ら変わらないことなどからすれば,本件発明の「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」とは,回転軸が吸入通路入口の方向に傾けば足りるというものではなく,吸入通路入口を「押接」により「閉鎖」し,「シール」するものでなければならない。 オ乙41報告書及び乙42証明書乙41報告書のとおり,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」とされるスラスト軸受のみを用いた圧縮機(比較用圧縮機)であっても,原告提出の甲7報告書と全く同様の実験結果が得られている。また,乙42証明書のとおり,被告各製品と「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」とされるスラスト軸受のみを用いた圧縮機とで,運転効率を比較したところ,両者でほぼ同等の結果が得られている。 このように,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」スラスト軸受であっても,圧縮反力により弾性変形し,圧縮反力がロータリバルブに伝達されるとすれば,「スラスト荷重吸収機能が付与されている」スラスト軸受を有することをもって,本件発明の「圧縮反力伝達手段」を具備すると解することは許されない。 (2) 被告各製品の充足性ア被告各製品のシャフト50は傾かないこと被告各製品において,ピストン60に「圧縮反力F」が作用し,シャフト50を傾かせる方向に力が働くことは事実である。しかし,被告各製品は以下の①ないし④の構成を有しているため,上記圧縮反力が吸収され,シャフト50は傾かない。 ① 斜板51の取り付け部及びスラスト軸受70,80を除く全域が,シャフト用孔21,31により軸受けされている。 ② 当該軸受がシリンダブロック20,30の外側に突出するようにさ らに長く設けられている。 ③ シャフト50とシャフト用孔21,31がいずれも極めて高精度 31により軸受けされている。 ② 当該軸受がシリンダブロック20,30の外側に突出するようにさ らに長く設けられている。 ③ シャフト50とシャフト用孔21,31がいずれも極めて高精度に仕上げられ,両者のクリアランスが極限までに小さくされている。 ④ スラスト軸受70,80が,部品の寸法誤差による組付け誤差を吸収し,さらに,回転時にシャフト50が軸方向に変位することを防止するために,組立て完了時に,斜板の環状凸部51c,d及びシリンダブロック20,30の端面26,36がいずれもスラスト軸受70,80に接触し,かつ,環状凸部51c,51hと端面26,36とでスラスト軸受70,80を挟み込む力が加わった(予圧された)状態となっている。このような予圧を加えることで,回転時のシャフト50の軸方向の変位を抑え,かかる変位に起因する騒音,振動,破損等を防止している。 イ原告の主張に対する反論この点に関して原告は,被告各製品ではシャフト50が変位していることが確認されており,「圧縮反力伝達手段」を充足すると主張する。 しかし,以下のとおり,上記主張は失当である。 (ア) 原告は,甲7報告書を提出し,被告各製品では吐出行程にあるシリンダボアのフロント側通路に向けて近づくようにシャフトの外周面が変位していることが確認されていると主張する。 しかし,甲7報告書の測定結果は,軸孔中で最も力の加わる部分である端部(シリンダブロックの外側に突出して設けられた部分)が粉体によって磨耗し,これにより回転軸が傾くに至ったものにすぎない。 (イ) そもそも,被告各製品のスラスト軸受は予圧されているため,圧縮反力が加えられてもこれを吸収するのであって,さらに撓むことは容易ではない(上記④の構成参照)。 本件特許の親出願における乙30意見書 そもそも,被告各製品のスラスト軸受は予圧されているため,圧縮反力が加えられてもこれを吸収するのであって,さらに撓むことは容易ではない(上記④の構成参照)。 本件特許の親出願における乙30意見書にも,「〔乙9公報につき〕 この弾性変形機能が付与された41,42を含むスラスト軸受40は,本願発明1でいう『圧縮反力伝達手段』に相当しません。」及び「〔乙13公報につき〕所定量の弾性変形機能が付与されたスラスト軸受109は,本願発明1でいう『圧縮反力伝達手段』に相当しません。」との記載があるのであって,スラスト軸受を予圧によりあらかじめ撓ませ,圧縮反力による更なる撓みを抑制する構成が本件発明の「圧縮反力伝達手段」ではないことは,原告自身の出願経過における主張からも明らかである。 (ウ) また,被告各製品において回転軸を回転可能に支持するために設けられているクリアランスは,JIS規格上,「転合」とされる組合せにおいて必要最小限のものでしかなく,かかるクリアランスは「シャフトの傾きを許容する隙間」ではない。 (エ) さらに,上記(1)ウ及びエに引用した本件特許の出願経過等に照らせば,被告各製品は「圧縮反力伝達手段」を有していないというべきである。 (オ) 加えて,被告各製品は,クリアランスを管理することで冷媒の漏れを防止しているものである。このことは,2015年(平成27年)11月20日付け実験結果報告書(2)(乙44。以下「乙44報告書」という。)記載のとおり,被告各製品における回転軸と軸孔のクリアランス30μmを50μm,70μm,90μm,110μmに変えたところ,クリアランスが30μm(被告各製品)及び50μmでは効率はほとんど変わらないものの,それより大きいクリアランスでは効率が明らかに落ちていることからも明らかで ,90μm,110μmに変えたところ,クリアランスが30μm(被告各製品)及び50μmでは効率はほとんど変わらないものの,それより大きいクリアランスでは効率が明らかに落ちていることからも明らかである。 3 争点(1)ウ(構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手段」の充足性)について〔原告の主張〕 (1) 被告各製品では,シャフト用孔21,31の内周面にシャフト50(回転弁)の外周面が直接支持されている。このように,シャフト50は,シャフト用孔21,31の内周面とシャフト50(回転弁)の外周面とからなるラジアル軸受手段のみによって支持されており,かかる支持構造が,シャフト50の斜板51よりも前側及び後側に関する唯一のラジアル軸受手段である。 したがって,被告各製品は,構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手段」を充足する。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,構成要件Eにいう「ロータリバルブ」とは,回転軸の一部であって,導入通路及びその近傍を意味するものであり,それゆえ被告各製品は構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手段」を充足しない旨主張する。 しかし,被告の主張するような「ロータリバルブ」の解釈は,本件発明の構成要件A及びCには何ら記載されておらず,他の構成要件及び本件明細書等にも示唆すらされていない。本件発明の「唯一のラジアル軸受手段」とは,カム体からロータリバルブ側における回転軸の部分について,直接支持されたラジアル軸受手段の他にラジアル方向の軸受手段が存在しないことを意味するものであって,吸入 明の「唯一のラジアル軸受手段」とは,カム体からロータリバルブ側における回転軸の部分について,直接支持されたラジアル軸受手段の他にラジアル方向の軸受手段が存在しないことを意味するものであって,吸入通路入口付近のみにおいて回転軸を支持することを要件とするものではない。 〔被告の主張〕構成要件Eにいう「ロータリバルブ」とは,「導入通路を有するロータリバルブ」(構成要件A)及び「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」(構成要件C)との記載等に鑑みれば,回転軸の一部であって,導入通路及びその近傍を意味するものであり,それゆえ,構成要件Eにいう 「唯一のラジアル軸受手段」とは,吸入通路入口近傍のみにおいて軸受されていることを要する。 また,そもそも,「ロータリバルブを付勢する」(構成要件C)とは回転軸が吸入通路入口を「閉鎖」ないし「シール」するものでなければならず,そのためには吸入通路の入口近傍のみで回転軸が支持されていることを要するのであるから,この点でも,「唯一のラジアル軸受手段」とは当該吸入通路入口近傍のみで軸受されていることを要する。 しかし,被告各製品はシャフト全体が軸孔により支持されており,本件発明の「ロータリバルブの外周面」に相当するシャフトの開口52,53近傍の外周面以外でもシャフトが支持されていることになるから,構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」という構成となっておらず,「前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段」を有しない。また,被告各製品ではシャフトが吸入通路入口近傍のみにおいて軸受されているものではないから,「唯一のラジアル軸受手段」も備えない。 4 争点(2)ア(〔無効理由1〕乙19発明による新規性欠如)について 被告各製品ではシャフトが吸入通路入口近傍のみにおいて軸受されているものではないから,「唯一のラジアル軸受手段」も備えない。 4 争点(2)ア(〔無効理由1〕乙19発明による新規性欠如)について〔被告の主張〕(1) 本件発明の構成要件の分説本件発明の構成要件E,Fをさらに分説すると,それぞれ以下のとおりとなる(判決注:なお,被告は,充足論における分説を前記第2,2(4)のとおりとしつつ,無効論における構成要件F及びGをそれぞれ「構成要件F,G,H及びI」とし,従前の構成要件Gを「構成要件J」としているが,本判決では,便宜上,以下のとおりとし,従前の構成要件Gについては記号を変更しない。)。 E1 前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に 前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,E2 前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,F1 前記ピストンは両頭ピストンであり,前記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,F2 前記カム体は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,F3 前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,F4 該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブ F4 該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした(2) 乙19発明一方,乙19公報には,次の乙19発明が記載されている。 「シリンダブロック11における回転軸16の周囲に配列された複数のシリンダボア20内にピストン21を収容し,回転軸16の回転に斜板27を介してピストン21を連動させ,回転軸16と一体化されていると共に,ピストン21によってシリンダボア20内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための吸入通路を有するロータリバルブを備えた往復動型圧縮機において,(構成要件A)シリンダボア20に連通し,かつロータリバルブの回転に伴って吸入通路と間欠的に連通するガス通路41と,(構成要件B) 吐出行程にあるシリンダボア20内のピストン21に対する圧縮反力をロータリバルブに伝達して,吐出行程にあるシリンダボア20に連通するガス通路41の入口に向けてロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段とを有し,(構成要件C)シリンダブロック11は,ロータリバルブを回転可能に収容する軸支孔37を有し,(構成要件D)吸入通路の出口は,ロータリバルブの外周面上にあり,ガス通路41の入口は,軸支孔37の内周面上にあり,軸支孔37の内周面にロータリバルブの外周面が直接支持されることによってロータリバルブを介して回転軸16を支持するラジアルベアリング17,18となっており,(構成要件E1)ラジアルベアリング17,18は,斜板27からロータリバルブ側における回転軸16の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,(構成要件E2)ピストン21は両 となっており,(構成要件E1)ラジアルベアリング17,18は,斜板27からロータリバルブ側における回転軸16の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,(構成要件E2)ピストン21は両頭ピストンであり,両頭ピストン21を収容する前後一対のシリンダボア20に対応する一対のロータリバルブが回転軸16と一体的に回転し,(構成要件F1)斜板27は,前後一対のスラストベアリングによって挟まれて回転軸16の軸線の方向の位置を規制されており,(構成要件F2)各スラストベアリングは,圧縮反力伝達手段の一部をなし,(構成要件F3)圧縮反力伝達手段の一部をなす各スラストベアリングは,シリンダブロック11の端面に形成された環状の突条と斜板27の端面に形成された環状の突条とに当接し,斜板27の突条の径をシリンダブロック11の突条の径よりも大きくした,(構成要件F4)往復動型圧縮機における冷媒吸入構造。(構成要件G)」(3) 新規性欠如 以上のとおり,乙19発明は,本件発明の構成要件を全て備えており,両者は相違する点がない。 したがって,本件発明は,乙19公報に記載された発明であって新規性を欠き,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから,本件発明に係る特許は,同法123条1項2号の規定により無効とされるべきものである。 〔原告の主張〕乙19発明は,少なくとも以下の点において本件発明と相違するから,本件発明は乙19発明によって新規性を欠如することはない。 (1) 技術思想の相違乙19発明は,各シリンダボア20に連通した複数のガス通路41を介して,回転軸16の軸支部38の外面に形成された凹部40に圧縮室内において高圧となった冷媒ガスを導入して反力を付与する反力付与構造39を開 9発明は,各シリンダボア20に連通した複数のガス通路41を介して,回転軸16の軸支部38の外面に形成された凹部40に圧縮室内において高圧となった冷媒ガスを導入して反力を付与する反力付与構造39を開示しており,圧縮室内の冷媒を積極的に漏洩させる構成を採用している。 これに対し,本件発明は,「吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒が吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシリンダボア外に洩れ易い」(本件明細書等の段落【0004】)という問題を解決し,冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させるものであるから,圧縮室内の冷媒を積極的に漏洩させる乙19発明とは,そもそも技術思想が根本的に異なる。 (2) 構成要件Cについて乙19発明は,ピストンに発生する圧縮反力が,斜板を介して回転軸に対し,ラジアル方向の分力として作用し,ラジアルベアリングに大きな負荷が加わるため,ニードルベアリングやボールベアリング等のころがり軸受が使用されていたという点を課題としているのであるから,圧縮反力によって回転軸に発生するラジアル方向の分力を問題視している。そして,乙19発明では,反力付与手段を設けることにより,圧縮反力によるラジアル方向の分 力と反対方向の力を回転軸に付与し,ピストンに発生する圧縮反力に基づくラジアル方向の分力を相殺して,ころがり軸受ではなく安価な滑り軸受を使用できるようにしたものである。このように,乙19発明は,ピストンに発生する圧縮反力を否定的に捉えており,そもそも圧縮反力を利用する技術思想を欠いている。 この点,本件発明は,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力 出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」(構成要件C)を採用し,ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達させて,吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢することにより,冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させている。 したがって,乙19公報には,本件発明の圧縮反力を積極的に利用した「圧縮反力伝達手段」について記載も示唆も存在せず,乙19発明は,本件発明の構成要件Cを開示していない。 また,乙19公報は,段落【0049】において,ロータリバルブを備えた圧縮機について,単に回転軸のラジアルベアリングを滑り軸受けにより構成するために,ロータリバルブ上に反力付与構造を配設することを開示するだけであり,そもそもシリンダボアと連通する吸入通路の構成等については何ら開示していないのであるから,本件発明の構成要件Cにおける「吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」という点についても開示がない。 (3) 構成要件Fについて乙19公報では,リード弁を採用した両頭ピストン式圧縮機において,斜板27の前後にスラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段を設けることは図4に図示されているものの,ロータリバルブを備えた圧縮機にお いて,斜板27の前後にスラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段を設けることを記載及び示唆していない。 したがって,乙19発明は,本件発明の構成要件Fの「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段 示唆していない。 したがって,乙19発明は,本件発明の構成要件Fの「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」という構成を開示していない。 5 争点(2)イ(〔無効理由2〕乙19発明及び乙4発明による進歩性欠如)について〔被告の主張〕(1) 仮に,乙19公報自体にロータリバルブ及びラジアル軸受手段に係る構成について直接的な記載がないとしても,乙19公報の段落【0049】の記載に従い,同公報の図4の構成の「回転軸16のラジアルベアリング17,18と対応する部分」に,乙4公報に開示された回転弁22を適用して,ロータリバルブ及びラジアル軸受手段を想到することは,極めて容易である。 そうすると,本件発明は,乙19公報及び乙4公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明は進歩性を欠き,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本件発明に係る特許は,同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。 (2) 原告の主張に対する反論アこの点に関して原告は,乙19発明は本件発明の構成要件C及びFを開示していない点において本件発明と相違するところ,乙4公報には本件発明の構成要件C及びFが開示されていないので,本件発明は乙19発明及び乙4発明に基づいて容易に想到できるものではないなどと主張 する。 しかし,乙19公報の図4には,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対す ので,本件発明は乙19発明及び乙4発明に基づいて容易に想到できるものではないなどと主張 する。 しかし,乙19公報の図4には,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を回転軸に伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて回転軸を付勢する」構成(「ロータリバルブ」ではなく「回転軸」である点を除き,構成要件Cに相当),「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」(構成要件F3)及び「該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」(構成要件F4)の各構成がいずれもが記載されているところである。 イまた,原告は,乙19発明及び乙4発明においては,本件発明の課題,すなわちロータリバルブを備えたピストン式圧縮機に特有の課題が開示されておらず,本件発明の効果を予測することはできないなどと主張する。 しかし,乙19公報の図4に「圧縮反力を回転軸に伝達して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けて回転軸を付勢する構成」が記載され,かつ,乙19公報自体に,乙4発明(ロータリバルブ)と組み合わせるべきことが明示されている。かかる明示の示唆に従って両者を組み合わせることにより,圧縮反力をロータリバルブに伝達して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢する構成(構成要件C)が得られるものである。 したがって,乙19公報及び乙4公報に本件発明の課題が記載されていないとか,これらから本件発明の効果を予測できなかった に向けてロータリバルブを付勢する構成(構成要件C)が得られるものである。 したがって,乙19公報及び乙4公報に本件発明の課題が記載されていないとか,これらから本件発明の効果を予測できなかったなどという 原告の主張は,根拠がない。 ウさらに,原告は,乙19発明の必須の要件である反力付与手段は,ロータリバルブを備えた圧縮機においては,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口とロータリバルブの外周面との閉塞を阻害し,クリアランスを大きくし,冷媒漏れを引き起こすものであり,本件発明の効果を阻害するものとなるなどと主張する。 しかし,乙19公報の図4に記載の構成は,反力付与手段により圧縮反力の一部を相殺するものにすぎず,圧縮反力を回転軸に伝達して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けて回転軸を付勢する構成であることに変わりはない。乙19発明の反力付与手段は,本件発明の作用効果をなくしてしまうようなものではない。 〔原告の主張〕(1) 乙4公報には,従来の吸入弁を利用したリード弁方式の往復動型圧縮機における振動・異音等の問題を解決するために,駆動軸に一体回転可能に装着され,吸入室と吸入行程時の吸入ポートとを連通させる吸入通路をもつ回転弁を採用することが開示されている(段落【0007】ないし【0009】)。 しかし,乙4公報は,ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達させて,吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢することにより,冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させることを開示しておらず,本件発明の構成要件Cは開示されていない。 また,乙4公報の往復動型圧縮機は,駆動軸6が,スラスト軸受7aを介して支持されているが(段落【0011】),同公報の図1から明らかなように,スラ ず,本件発明の構成要件Cは開示されていない。 また,乙4公報の往復動型圧縮機は,駆動軸6が,スラスト軸受7aを介して支持されているが(段落【0011】),同公報の図1から明らかなように,スラスト軸受7aはスラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段ではなく,本件発明の構成要件Fは開示されていない。 上記4の〔原告の主張〕のとおり,乙19発明は,少なくとも本件発明の 構成要件C及びFを開示していない点において本件発明と相違するところ,乙4公報には本件発明の構成要件C及びFが開示されていないので,本件発明は乙19発明及び乙4発明に基づいて容易に想到できるものではない。 (2) また,乙19発明は,ピストンの圧縮動作時に発生する圧縮反力が,斜板を介して回転軸に対し,ラジアル方向の分力として作用して回転軸の円滑な回転に支障が生じるのを防止するため,滑り軸受けと回転軸との間に反力付与手段を設け,反対方向の力を回転軸に付与することを必須の要件とするものである。乙19発明の必須の要件である反力付与手段は,ロータリバルブを備えた圧縮機においては,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口とロータリバルブの外周面との閉塞を阻害し,クリアランスを大きくし,冷媒漏れを引き起こすものであり,本件発明の効果を阻害するものとなる。 さらに,乙19発明は,反力付与手段として圧縮室内の冷媒を積極的に漏洩させる構成を採用しているところ,ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達させ,吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢することにより冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させた本件発明を想到する動機付けは存在しない上,本件発明の効果を予測することもできない。 そもそも,乙19発明には,「吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒がこ り冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させた本件発明を想到する動機付けは存在しない上,本件発明の効果を予測することもできない。 そもそも,乙19発明には,「吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒がこのシリンダボアに連通する吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシリンダボア外に洩れ易い」(本件明細書等の段落【0004】)というロータリバルブを備えたピストン式圧縮機に特有の課題が開示されておらず,この点においても本件発明の効果を予測できないものである。そして,反力付与手段を必須の要件とする乙19発明は,本件発明の効果が阻害されるものであるから,当業者にとって,乙19発明から本件発明を容易に想到することはできない。 加えて,乙4発明においては,本件発明の課題は開示されておらず,この 点からも本件発明の効果を予測することはできない。 (3) したがって,本件発明は,乙19発明と乙4発明とに基づいて当業者が容易に想到できるものではない。 6 争点(2)ウ(〔無効理由3〕乙21発明並びに周知技術及び慣用技術による進歩性欠如)について〔被告の主張〕(1) 本件発明と乙21発明の対比本件発明と乙21発明とは,構成要件C,構成要件E1のうち「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」という構成,構成要件F3及び構成要件F4以外の全ての構成要件を備えている点で一致し,以下の点で相違する。 ア構成要件E1に係る相違点本件発明は「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」のに対し,乙21発明においては,フロント側のシリンダブロック2a及びリヤ側のシリンダブロック2bにそれぞれ一体的に固定されている比較的薄肉の滑り軸受35及び36によって,回転軸24自体の円筒面の一部であるジャーナ 明においては,フロント側のシリンダブロック2a及びリヤ側のシリンダブロック2bにそれぞれ一体的に固定されている比較的薄肉の滑り軸受35及び36によって,回転軸24自体の円筒面の一部であるジャーナル部24a及び24b,すなわちロータリバルブの外周面が支持されている点(以下「相違点1」という。)。 イ構成要件F4に係る相違点本件発明は「該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」のに対し,乙21発明におけるスラスト軸受は,乙21公報の図1において,シリンダブロックの端面と斜板の端面とに当接しているように描かれている点(以下「相 違点2」という。)。 ウ構成要件C及び構成要件F3に係る相違点本件発明は「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」を有し,「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」ているのに対し,乙21発明には,そのような圧縮反力伝達手段を有すること,そして一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方がこの圧縮反力伝達手段の一部をなすことについて開示されていない点(以下「相違点3」という。)。 (2) 相違点に係る構成の容易想到性ア相違点1についてピストン型圧縮機において,回転軸をシリンダブロックにて直接支持することは,周知技術である(例として,乙19公報の段落【0043】及び乙14公報の図1-5参照)。このことは,本 相違点1についてピストン型圧縮機において,回転軸をシリンダブロックにて直接支持することは,周知技術である(例として,乙19公報の段落【0043】及び乙14公報の図1-5参照)。このことは,本件特許の審査時においても審査官が認めている。 したがって,乙21発明において,上記周知技術を適用して,フロント側のシリンダブロック2a及びリヤ側のシリンダブロック2bのそれぞれの中心に同軸的に穿孔された貫通穴を介してジャーナル部24a及び24bを直接支持する構成を得ることは,当業者にとって極めて容易である。 イ相違点2についてピストン式圧縮機の分野において,スラスト軸受がスラスト荷重を吸収して撓むような構造を採用するのは,スラスト軸受に一定の予圧を掛けて圧縮機の動作時のガタ付き等を防ぐことや,スラスト軸受の撓みに より圧縮機を形成する各部材の製造公差を吸収することを目的としている(例として,乙15公報の2頁3欄21行ないし30行,乙7公報の段落【0003】,乙20公報の段落【0004】,乙14公報の段落【0017】,【0035】,【0036】及び【0040】参照)。 また,ピストン式圧縮機の分野において,スラスト軸受を,軸側(本件発明のカム体の側に当たる。)とハウジング側(本件発明のシリンダブロックの側に当たる。)との両側から挟む際に,スラスト軸受がスラスト荷重を吸収して撓むような構造を採用することは慣用技術である(例として,乙27規格参照)。そして,そのような構造として,軸側の端面と,ハウジング側の端面にそれぞれ環状の突条を形成し,軸側の突条の径をハウジング側の突条の径よりも大きくすることも慣用技術である(例として,乙7公報,乙14公報ないし乙18公報,乙20公報参照)。 そうすると,乙21発明のピストン式 条を形成し,軸側の突条の径をハウジング側の突条の径よりも大きくすることも慣用技術である(例として,乙7公報,乙14公報ないし乙18公報,乙20公報参照)。 そうすると,乙21発明のピストン式圧縮機において,スラスト荷重を適切に吸収するために「軸側の端面と,ハウジング側の端面にそれぞれ環状の突条を形成し,軸側の突条の径をハウジング側の突条の径よりも大きくする」という前記慣用技術を適用するというのは,極めて当然のことである。 ウ相違点3について上記イのとおり,乙21発明において,慣用技術を適用して,相違点2に係る構成を得ることは極めて容易である。 そして,本件特許の特許権者である原告は,本件特許の審査過程において,乙21発明において相違点2に係る構成を得ることにより,本件発明の圧縮反力伝達手段が得られること,そして,一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方が,この圧縮反力伝達手段の一部をなすこと,すなわち相違点3にかかる構成も得られることを主張している。 したがって,乙21発明において相違点2に係る構成を得ることが極めて容易である以上,相違点3に係る構成を得ることも極めて容易である。 (3) 小括以上によれば,本件発明は,乙21発明並びに周知技術及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本件発明に係る特許は,同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明と乙21発明の対比本件発明と乙21発明とを対比すると,両者は,少なくとも以下の2点で相違する。 ア本件発明では,構成要件Cにおいて,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピス 本件発明と乙21発明の対比本件発明と乙21発明とを対比すると,両者は,少なくとも以下の2点で相違する。 ア本件発明では,構成要件Cにおいて,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」を具備し,さらに,「圧縮反力伝達手段」について,構成要件Fの一部において,「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」ものに特定しているのに対し,乙21発明では,一対のスラスト軸受28,29のいずれもが,スラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段ではなく,「シリンダブロックの端面に形成された環状の突条とカム体(斜板)の端面に 形成された環状の突条とに当接し,カム体(斜板)の突条の径をシリンダブロックの突条の径よりも大きくしたもの」(構成要件Fの一部)を具備せず,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」(構成要件C)を具備しない点(以下「相違点A」という。)。 イ本件発明では,構成要件Dにおいて,「前記シリンダブロックは,前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔」を有することを規定し,構成要件Eにおいて,「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブ )。 イ本件発明では,構成要件Dにおいて,「前記シリンダブロックは,前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔」を有することを規定し,構成要件Eにおいて,「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段」と規定しているのに対し,乙21発明では,シリンダブロック2は貫通穴33及び34を有し,その貫通穴33,34の中に,ジャーナル部24a,24bを回転可能に収容する比較的薄肉の滑り軸受35,36が一体的に固定され,滑り軸受35,36の内周面にジャーナル部24a,24bの外周面が摺動回転可能に支持されることによってジャーナル部を介して回転軸を支持するジャーナル軸受25,26となっており,本件発明の「軸孔」及び「ラジアル軸受手段」を具備しない点(以下「相違点B」という。)。 (2) 相違点に係る構成の容易想到性ア乙21発明は,乙21公報の段落【0021】に端的に示されているように,滑り軸受を採用することにより「クリアランスをきわめて小さくすること」で流体の漏洩を防止したものであって(乙21公報の段落【0009】,【0016】,【0020】,【0021】及び【00 28】等参照),本件発明のように,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢することによって冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させることについては,記載も示唆も存在しない。 むしろ,乙21発明は,圧縮反力が問題発生の要因の一つであることを明らかにしている(乙21公報の段落【0004】及び【0025】参照)。し を向上させることについては,記載も示唆も存在しない。 むしろ,乙21発明は,圧縮反力が問題発生の要因の一つであることを明らかにしている(乙21公報の段落【0004】及び【0025】参照)。したがって,当業者にとって,乙21発明において否定的なものとされている圧縮反力を積極的に利用して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢し,冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させた本件発明を想到することは,容易になし得るものではない。 また,本件発明の効果は,ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達して,吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢することにより,冷媒の漏れを防止し,体積効率を向上させるというものである。 この効果は,ロータリバルブの外周面とシリンダブロックの軸孔の内周面とのクリアランスの大きさにそれほど左右されず,クリアランスの要求精度が低い場合にも奏するものであるから,本件発明は乙21発明から予測できない顕著な効果を奏するものといえる。 イさらに,乙21発明は,シリンダブロック内において回転軸を支持する軸受として,シリンダブロックの貫通穴の中に,一体的に固定されている比較的薄肉の滑り軸受と,回転軸の一部であるジャーナル部とによって構成されるジャーナル軸受とすることにより,軸受構造と吸入弁の構造が簡単になるだけでなく,滑り軸受の円筒内面の仕上げ加工が容易に行われ,ジャーナル部とのクリアランスを極めて小さくすることが可能になり,圧縮された流体が吸入弁から漏洩することを防止したものとされている(乙21公報の段落【0009】,【0016】,【002 0】,【0021】及び【0028】等参照)。 このように,乙21発明では,回転軸を支持する軸受を滑り軸受とジャーナル部と ている(乙21公報の段落【0009】,【0016】,【002 0】,【0021】及び【0028】等参照)。 このように,乙21発明では,回転軸を支持する軸受を滑り軸受とジャーナル部とによって構成されるジャーナル軸受とすることが,課題解決に必要不可欠な構成要件であるから,相違点Bに係る構成を採用して軸受構造を変更することは,当業者が容易になし得るものではない。 ウそして,ロータリバルブを備えたピストン式圧縮機において,相違点Aに係る構成を採用することも,相違点Bに係る構成を採用することも,本件特許の出願当時の周知技術又は慣用技術ではないので,当業者は,乙21発明並びに周知技術及び慣用技術に基づいて,本件発明を容易に想到することができない。 7 争点(3)ア(本件訂正が訂正要件を充たしているか)について〔原告の主張〕本件訂正請求書記載のとおり,本件訂正は訂正要件を充たすものである。 〔被告の主張〕本件訂正のうち「前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,」との記載を追加する部分については,以下のとおり,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではなく,特許法134条の2第9項において準用する同法126条5項に規定された訂正要件に違反するものである。 (1) 本件明細書等の図1ないし図5のいずれも第1の実施の形態の圧縮機の断面を示すものであるところ,ロータリバルブ35,36の外周面の全領域は,図1ないし図5のいずれにも表されていない。すなわち,本件明細書等には,「ロータリバルブ35,36の外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部等が設けられておらず,ロータリバルブ35,36の外周面が円筒形状であること」(本件訂正請求書)は一切記載され ,本件明細書等には,「ロータリバルブ35,36の外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部等が設けられておらず,ロータリバルブ35,36の外周面が円筒形状であること」(本件訂正請求書)は一切記載されておらず,ロータリバルブ35,36の外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部等が設けられないことの技 術的意義についても何ら記載されていない。 (2) また,ロータリバルブを備えた圧縮機において,ロータリバルブを構成する回転軸の外周面に溝や凹部を設けることは,例えば乙50公報ないし乙53公報に示されているように慣用技術である。 したがって,本件発明の実施の形態である図1ないし図5に示された圧縮機のロータリバルブの外周面が,図1ないし図5に示されていない領域において,乙50公報ないし乙53公報のように溝又は凹部を有している構成は,排除されるものではない。 (3) 以上のとおり,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面には,ロータリバルブの外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部が設けられていないことにつき,開示も示唆もされていない。 8 争点(3)イ(本件訂正により争点(2)の無効理由を解消することができるか)について〔原告の主張〕仮に本件訂正前の本件発明が乙19発明と同一(無効理由1)又は乙19発明及び乙4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの(無効理由2)と判断されるとしても,以下のとおり,本件訂正後の本件訂正発明は,乙19発明と同一ではなく,また,乙19発明及び乙4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (1) 本件訂正発明と乙19発明の対比本件訂正発明と乙19発明との間には,少なくとも次の相違点が存在する。 ア本件訂正発明の構成要件Cと乙19発明とを対 明をすることができたものではない。 (1) 本件訂正発明と乙19発明の対比本件訂正発明と乙19発明との間には,少なくとも次の相違点が存在する。 ア本件訂正発明の構成要件Cと乙19発明とを対比すると,本件訂正発明では「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」を有するのに対し,乙19発明では「圧縮動作 時にシリンダボア20内のピストン21からの圧縮反力が回転軸16に対しラジアル方向の分力として作用するが,前記軸支孔37と前記軸支部38との間に形成され,ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力を相殺する反対方向の力を,前記回転軸16に対して付与する反力付与構造39」を有し,「圧縮動作時にシリンダボア20内のピストン21からの圧縮反力が回転軸16に対しラジアル方向の分力として作用する」が,反力付与構造39により「ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力を相殺する反対方向の力を,前記回転軸16に対して付与する」ため,回転軸16には圧縮反力に基づく力が作用しておらず,本件訂正発明の「圧縮反力伝達手段」を有していない点(以下「相違点A’」という。)。 イ本件訂正発明の構成要件E’と乙19発明とを対比すると,本件訂正発明では「前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ」ているのに対し,乙19発明では,回転軸16の軸支部38の外面には反力付与構造39の凹部40が形成されている点(以下「相違点B’」という。)。 ウ本件訂正発明の構成要件F’と乙19発明 状とされ」ているのに対し,乙19発明では,回転軸16の軸支部38の外面には反力付与構造39の凹部40が形成されている点(以下「相違点B’」という。)。 ウ本件訂正発明の構成要件F’と乙19発明とを対比すると,本件訂正発明では「前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し」ているのに対し,乙19発明にはこの点が開示されていない点(以下「相違点C’」という。)。 (2) 相違点に係る構成の容易想到性ア相違点A’について乙19発明は,「反力付与構造39による反対方向の力」によって「圧縮反力のラジアル方向の分力P2」を相殺しているため,回転軸16には圧縮反力に基づく力が作用しておらず,本件訂正発明の「吐出行 程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」構成を導くことはできず,ロータリバルブの外周面を吸入通路の入口に近づけることによって,圧縮室内の冷媒が吸入通路から漏れ難くなり,体積効率を向上させる効果を得ることはできない。 また,乙19発明は,「吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒が吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシリンダボア外に洩れ易い」(本件明細書等の段落【0004】)というロータリバルブを備えたピストン式圧縮機に特有の課題が開示されておらず,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢し,ロータリバルブの外周面を吸入通路の入口に近づけることによって,圧縮室内の冷媒が吸入通路から漏れ難くなり,体積効率を向上させることができる効果も開示されていない。したがって,乙19発明においては,「反力付与構造3 外周面を吸入通路の入口に近づけることによって,圧縮室内の冷媒が吸入通路から漏れ難くなり,体積効率を向上させることができる効果も開示されていない。したがって,乙19発明においては,「反力付与構造39による反対方向の力」よりも「圧縮反力のラジアル方向の分力P2」を大きくし,「吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」構成を具備することへの動機付けは存在しない。そもそも乙4公報には,回転弁22に対してラジアル方向に力が作用することについて何らの記載も示唆も存在せず,本件発明の課題も効果も開示するものでもないから,乙19発明において相違点A’に係る本件訂正発明の構成を採用する動機付けとなるものではない。 したがって,乙19発明及び乙4発明に基づいて相違点A’に係る本件訂正発明の構成を想到することは,当業者が容易になし得るものではない。 イ相違点B’について 乙19発明は,「反力付与構造39」の一つとして,回転軸16の軸支部38の外面に凹部40が形成されており,凹部40が存在しないと「圧縮反力のラジアル方向の分力P2」を相殺する反対方向の力を回転軸16に付与することができなくなる。 したがって,乙19発明において,凹部40を無くし,回転軸16の軸支部38の外面を円筒形状とすることは,乙19発明の実施を不可能にするものであり,相違点B’に係る本件訂正発明の構成を採用することに阻害要因が存在する。 また,本件訂正発明では,吸入通路の入口に近づけるロータリバルブの外周面が,導入通路の出口以外,ロータリバルブの外周面に溝,凹部等が設けられていないことから,溝,凹部等が設けられていないロータリバルブの外周面を用いて冷媒を漏れ難くし,体積効率を向上させる効果が得られる ,導入通路の出口以外,ロータリバルブの外周面に溝,凹部等が設けられていないことから,溝,凹部等が設けられていないロータリバルブの外周面を用いて冷媒を漏れ難くし,体積効率を向上させる効果が得られるものである。一方,乙19発明においては,回転軸16の軸支部38の外面に凹部40が形成されており,ロータリバルブを備えた圧縮機においては,かかる凹部40は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口とロータリバルブの外周面との閉塞を阻害し,クリアランスを大きくし,冷媒漏れを引き起こすものとして作用する。 このように,相違点B’に係る構成は,両発明において効果を全く異にするものであり,本件訂正発明においては,相違点B’に係る本件訂正発明の構成を採用したことによって,乙19発明に比して顕著な効果を奏するものである。 ウ相違点C’について乙19公報には,ロータリバルブを配設した圧縮機全体の構成は開示されておらず,また,乙4公報には,ロータリバルブを配設した圧縮機であっても,片頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機の構成しか開示されていないのであって,両頭ピストン型のロータリバルブを 配設した圧縮機の構成はいずれの文献にも開示されていない。そのため,乙19公報及び乙4公報から,両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機において,前側のロータリバルブの導入通路及び後側のロータリバルブの導入通路にどのように冷媒を供給するのか把握することはできないのであり,相違点C’に係る本件訂正発明の構成は,乙19公報にも乙4公報にも開示されていないということになる。 したがって,当業者は,乙19発明及び乙4発明に基づいて,相違点C’に係る本件訂正発明の構成を容易に想到することができない。 (3) 小括以上のとおり,本件訂正 ていないということになる。 したがって,当業者は,乙19発明及び乙4発明に基づいて,相違点C’に係る本件訂正発明の構成を容易に想到することができない。 (3) 小括以上のとおり,本件訂正発明は,少なくとも相違点A’ないしC’が存在するために乙19発明と同一のものではなく,また,相違点A’ないしC’に係る本件訂正発明の各構成はいずれも乙19発明及び乙4発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって,無効理由1及び2は,いずれも解消されている。 〔被告の主張〕仮に本件訂正が訂正要件を充たすとしても,以下のとおり,本件訂正発明は無効理由1及び2を解消するものではない。 (1) 本件訂正のうち「前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,」との記載を追加する部分について原告は,乙19発明において凹部40を無くし,回転軸16の軸支部38の外面を円筒形状とすることは,乙19発明の実施を不可能にするものであり,相違点B’に係る本件訂正発明の構成を採用することに阻害要因が存在するなどと主張する。 しかし,乙19公報に「圧力作用部40bの大きさをどの程度にするかは,回転軸16に作用するラジアル方向の力P2を考慮して,最適なものを選択すればよい」(段落【0048】)と記載されているように,凹部40の大 きさをどの程度にするのかは,滑り軸受を使用しても回転軸の円滑な回転に支障が生じないように当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎない。したがって,滑り軸受を使用しても回転軸の円滑な回転に支障が生じないのであれば,凹部40を設ける必要がないことも,乙19公報に基づき当業者が容易に想到し得る。 また,そもそも,乙19発明の前提として凹部40を持たない圧縮機が従来存在したのであ に支障が生じないのであれば,凹部40を設ける必要がないことも,乙19公報に基づき当業者が容易に想到し得る。 また,そもそも,乙19発明の前提として凹部40を持たない圧縮機が従来存在したのであるから,本件訂正発明ではロータリバルブの外周面に乙19発明の凹部40に相当する構成が設けられていないこと,すなわち本件訂正発明が乙19発明に対する従来技術にすぎないことをもって進歩性を有するなどということはできない。 よって,本件訂正のうち「前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,」との記載を追加する部分は,乙19発明に実質的に含まれる,あるいは乙19発明から容易に想到できた構成である。 (2) 本件訂正のうち「前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し」との記載を追加する部分について原告は,乙19公報及び乙4公報のいずれにも両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機の構成が開示されていないため,乙19公報及び乙4公報から,両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機において,前側のロータリバルブの導入通路及び後側のロータリバルブの導入通路にどのように冷媒を供給するのか把握することはできないなどと主張する。 しかし,両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機において,回転軸内に通路を設け,この通路に前後の導入通路がそれぞれ接続されている構成は,周知技術である(乙54明細書,乙55公報及び乙56公報)。したがって,「前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し」ている本件訂正発明の構成は,周知技術であり,両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機である乙19発明において上 記構成を採用することは,当業者が通常行うもの た通路を介して連通し」ている本件訂正発明の構成は,周知技術であり,両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機である乙19発明において上 記構成を採用することは,当業者が通常行うものである。 9 争点(3)ウ(新たな無効理由の存否)について〔被告の主張〕原告は,本件訂正請求書において「『前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ』という記載を追加することにより,導入通路の出口以外,ロータリバルブの外周面に溝,凹部等が設けられていないことを明確にする」と述べており,ロータリバルブの外周面が「導入通路の出口を除いて円筒形状」とは,ロータリバルブの外周面が円筒形状であり,かつ,導入通路の出口以外の部分に溝や凹部等が形成されていないことを意味するとしている。 しかし,例えば乙50公報ないし乙53公報に開示されているロータリバルブのように,導入通路の出口以外の部分に溝や凹部等が形成されたロータリバルブの外周面も,実質的に「円筒形状」であると考えるのが自然である。 そうすると,本件訂正の「円筒形状」との記載からは,原告が主張するようにロータリバルブの外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部等が全く形成されていないことを意味するのか,あるいは溝や凹部等が形成されたものを含むのか,さらには,溝や凹部等が形成されたものが含まれるのであれば,どの程度の大きさの溝や凹部等が形成されたものが含まれるのかを把握することができないことになる。 したがって,本件訂正発明は明確ではなく,特許法36条6項2号に違反するものであるから,本件訂正発明に係る特許は同法123条1項4号により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の意義 るものであるから,本件訂正発明に係る特許は同法123条1項4号により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の意義 (1) 本件明細書等には,以下の記載がある。 ア技術分野・「本発明は,回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させるピストン式圧縮機における冷媒吸入構造に関する。さらに言えば,前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備えたピストン式圧縮機における冷媒吸入構造に関する。」(段落【0001】)イ背景技術・「従来,シリンダボア内に冷媒を導入するためにロータリバルブが採用されたピストン式圧縮機が知られている。そして,このロータリバルブに関して,回転軸とは別体とされたものがバルブ収容室に収容された可変容量型斜板式圧縮機が知られている(例えば,特許文献1参照。)。 また,回転軸そのものがロータリバルブとなっている,両頭ピストンを用いた固定容量型斜板式圧縮機が知られている(例えば,特許文献2〔判決注:乙21公報〕参照。)。」(段落【0002】)・「シリンダボア内へ冷媒を導入するための吸入ポートをロータリバルブで開閉する構成は,シリンダボア内へ冷媒を導入するための吸入ポートを撓み変形可能な吸入弁で開閉する構造に比べ,体積効率の向上を可能にする。」(段落【0003】)ウ発明が解決しようとする課題・「しかし,前記各特許文献の圧縮機のいずれにおいても,吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒がこのシリンダボアに連通する吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシリン 発明が解決しようとする課題・「しかし,前記各特許文献の圧縮機のいずれにおいても,吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒がこのシリンダボアに連通する吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシリンダボア外に洩れ易い。即ち,特許文献1の圧縮機では,バルブ収容室の内周面とロータリバルブの外周 面との間のクリアランスを極力小さくすることが冷媒洩れを防止する上で要求されるが,このクリアランス管理は非常に難しい。又,特許文献2の圧縮機においても,シリンダブロックに貫設した貫通孔の内周面とロータリバルブの外周面との間のクリアランスに関して同様の問題がある。このような冷媒漏れは,圧縮機の体積効率を低下させることとなる。」(段落【0004】)・「本発明は,ロータリバルブを用いたピストン式圧縮機における体積効率を向上させることを目的とする。」(段落【0005】)エ課題を解決するための手段・「そのために本発明は,シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させるピストン式圧縮機における冷媒吸入構造を対象としている。さらに本発明は,前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備えたピストン式圧縮機における冷媒吸入構造を対象としている。」(段落【0006】)・「そして請求項1の発明は,前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路を備えている。さらに請求項1の発明は,吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリン 前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路を備えている。さらに請求項1の発明は,吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段を備えている。」(段落【0007】)・「吐出行程にあるシリンダボア内のピストンは,圧縮反力を受け,この圧縮反力は,ピストン及びカム体を介して回転軸に伝達される。回転 軸に伝達される圧縮反力は,吐出行程にあるシリンダボアに向けてロータリバルブを付勢する。吐出行程にあるシリンダボアに向けて付勢されるロータリバルブは,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けて付勢される。吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢する構成は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路からの冷媒洩れ防止に寄与する。」(段落【0008】)・「また,請求項1の発明では,前記シリンダブロックは,前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔を有している。前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上に設けられ,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上に設けられている。そして,前記軸孔の前記内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段を構成している。さらに,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段とされている。」(段落【0009】)・「カム体からロータリバルブ側における回転軸の部分は,軸孔の内周面とロータリバルブの外周面とからなるラジアル軸受手段のみによって支持さ 一のラジアル軸受手段とされている。」(段落【0009】)・「カム体からロータリバルブ側における回転軸の部分は,軸孔の内周面とロータリバルブの外周面とからなるラジアル軸受手段のみによって支持される。このような支持構成は,吸入通路の入口に向けたロータリバルブの付勢による冷媒洩れ防止作用を高める。 さらに,請求項1の発明では,前記ピストンは両頭ピストンであり,前記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,前記カム体は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすス ラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくしている。 スラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段は,吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢する状態をもたらすような回転軸の変位を許容する。」(段落【0010】)オ発明の効果・「本発明では,吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力により,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢するようにした。 これにより,ロータリバルブを用いたピストン式圧縮機における体積効率を向上し得るという優れた効果を奏する。」(段落【0015】)カ発明を実施するための最良の形態・「以下,本発明の冷媒吸入構造を,両頭ピストンを備えた固定容量型圧縮機において具体化した第1の実施の形態を図1~図5に基づ 果を奏する。」(段落【0015】)カ発明を実施するための最良の形態・「以下,本発明の冷媒吸入構造を,両頭ピストンを備えた固定容量型圧縮機において具体化した第1の実施の形態を図1~図5に基づいて説明する。」(段落【0016】)・「シリンダブロック11,12には回転軸21が回転可能に支持されている。回転軸21は,シリンダブロック11,12に貫設された軸孔112,122に挿通されている。回転軸21は,軸孔112,122を介してシリンダブロック11,12によって直接支持されている。」(段落【0019】)・「図5に示すように,スラストベアリング26は,一対のレース261,262と複数のコロ263とからなる。シリンダブロック12の端面には環状の突条121が形成されている。突条121は,スラストベアリング26のレース261に当接している。斜板23の基部231の端面233には環状の突条234が形成されている。突条234は,ス ラストベアリング26のレース262に当接している。突条234の径は,突条121の径よりも大きくしてある。スラストベアリング26を回転軸21の軸線211の方向に見た場合,突条121とレース261との接合範囲と,突条234とレース262との接合範囲とは,重なり合わない。従って,レース261,262は,スラスト荷重によって撓み変形可能である。即ち,スラストベアリング26にはスラスト荷重を吸収するスラスト荷重吸収機能が付与されている。」(段落【0023】)・「回転軸21を通す軸孔112,122の内周面にはシール周面113,123が形成されている。シール周面113,123の径は,軸孔112,122の他の内周面の径よりも小さくしてあり,回転軸21は,シール周面113,123を介してシリンダブロック11,12 面113,123が形成されている。シール周面113,123の径は,軸孔112,122の他の内周面の径よりも小さくしてあり,回転軸21は,シール周面113,123を介してシリンダブロック11,12によって直接支持される。」(段落【0026】)・「図4及び図5に示すように,シール周面113,123によって包囲される回転軸21の部分は,回転軸21に一体形成されたロータリバルブ35,36となる。シール周面113,123によって包囲されるロータリバルブ35,36の外周面351,361は,シール周面113,123に対応する。シール周面113は,ロータリバルブ35を収容するバルブ収容室37(図4に図示)の内周面となる。シール周面123は,ロータリバルブ36を収容するバルブ収容室38(図5に図示)の内周面となる。」(段落【0033】)・「両頭ピストン29Aを介して斜板23に伝達される圧縮反力は,図1に矢印F1で示す力として斜板23に作用する。シリンダボア28B内の両頭ピストン29を介して斜板23に伝達される圧縮反力も同様の力F2(図1に矢印F2で示す)として斜板23に作用する。これらの力F1,F2は,斜板23の径中心部を中心として斜板23と一体化さ れた回転軸21を傾かせようとする。回転軸21は,軸孔112,122の内周面に対して接離可能に軸受支持されており,軸孔112,122の内周面に対する回転軸21の変位がロータリバルブ35,36に伝達される。」(段落【0035】)・「(1-2)スラストベアリング25にはスラスト荷重吸収機能が付与されていないが,スラストベアリング26にはスラスト荷重吸収機能が付与されている。 スラストベアリング26におけるスラスト荷重吸収機能は,部品の寸法誤差による組み付け誤差を吸収する。スラストベ 与されていないが,スラストベアリング26にはスラスト荷重吸収機能が付与されている。 スラストベアリング26におけるスラスト荷重吸収機能は,部品の寸法誤差による組み付け誤差を吸収する。スラストベアリング26におけるスラスト荷重吸収機能は,斜板23がその径中心部を中心として図1の力F1,F2の方向へ回ろうとする動きを許容する。即ち,スラスト荷重吸収機能を備えたスラストベアリング26は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブ35,36を圧縮反力によって付勢することを許容する。スラスト荷重吸収機能を付与されたスラストベアリング26を圧縮反力伝達手段の一部とする構成は,圧縮室271,281から吸入通路を経由した冷媒洩れを抑制する上で簡便な構成である。」(段落【0039】)・「(1-3)斜板23からロータリバルブ35側における回転軸21の部分は,シール周面113(即ち,バルブ収容室37の内周面)とロータリバルブ35の外周面351とからなるラジアル軸受手段のみによって支持される。バルブ収容室37の内周面であるシール周面113は,ロータリバルブ35を介して回転軸21を支持するラジアル軸受手段となっている。ラジアル軸受手段であるシール周面113は,斜板23からロータリバルブ35側における回転軸21の部分に関する唯一のラジアル軸受手段である。又,シール周面113は,吐出行程にあるシリンダボア27Aに連通する吸入通路33Aの入口331に向けてロータリ バルブ35を付勢することを許容する圧縮反力伝達手段の一部である。」(段落【0040】)・「(1-4)吐出行程にあるシリンダボア27A,28Bに連通する吸入通路33A,34の入口331,341は,圧縮反力によるロータリバルブ35,36の押接によって閉鎖 る。」(段落【0040】)・「(1-4)吐出行程にあるシリンダボア27A,28Bに連通する吸入通路33A,34の入口331,341は,圧縮反力によるロータリバルブ35,36の押接によって閉鎖される状態となる。この閉鎖状態は,ロータリバルブ35,36の外周面351,361と,シール周面113,123との間のクリアランスの大きさにそれほど左右されない。従って,前記クリアランスに関する厳密な管理は不要となり,吐出行程にあるシリンダボア27A,28Bにおける圧縮室271,281から吸入通路33A,34を経由する冷媒の洩れ難さは,前記クリアランスの要求精度が低い場合にも殆ど変わらない。即ち,前記クリアランスの要求精度が低い場合にも,圧縮機における体積効率が向上する。」(段落【0043】)・「(3)第1及び第2の実施の形態では,ロータリバルブがバルブ収容室の内周面に押接されるものとしたが,両者を接触させるのではなく,クリアランスを減少させることで洩れを防止するように構成してもよい。」(段落【0067】)キ図面 ・図1・図4・図5 (2) 上記各記載によれば,本件発明の意義は,次のとおりであると認められる。 従前,シリンダボア内に冷媒を導入するためにロータリバルブが採用されたピストン式圧縮機においては,吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒がこのシリンダボアに連通する吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシリンダボア外に漏れやすいという課題があり,このような課題はバルブ収容室の内周面とロータリバルブの外周面との間のクリアランスを極力小さくすることにより解決されるものの,他方で,このクリアランス管理は非常に難しいという課題があった。 そこで,本件発明は,吐出行程にあるシリンダボアに リバルブの外周面との間のクリアランスを極力小さくすることにより解決されるものの,他方で,このクリアランス管理は非常に難しいという課題があった。 そこで,本件発明は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを「付勢」し,ロータリバルブの外周面を吸入通路の入口に近づけるという構成を採用することによって,圧縮室内の冷媒を吸入通路から漏れ難くし,よって体積効率を向上させるという作用効果を有するものである。 2 争点(1)ア(構成要件Aの「ロータリバルブ」の充足性)について(1) 前記第2,2(11)によれば,被告各製品は,別紙イ号物件説明書及び別紙ロ号物件説明書の各図1記載のとおりの構造を有しており,フロント側シリンダブロック20及びリヤ側シリンダブロック30において,「シャフト50」を支持するシャフト用孔21,31の周囲に設けられた五つのシリンダボア22,32内にピストン60を収容し,シャフト50の回転に斜板51を介してピストン60を連動させている。また,被告各製品は,ピストン60によってシリンダボア22,32内に圧縮室24,34が区画され,シャフト50には,圧縮室24,34に冷媒を導入するためのフロント側開口52及びリヤ側開口53が形成されている。 以上の被告各製品の構成によれば,シャフト50は回転弁として機能していることが明らかであり,構成要件Aの「ロータリバルブ」に該当すると認めるのが相当である。 (2) この点に関して被告は,シャフト50のうち「フロント側通路23及びリヤ側通路33に対応する部分のみ」が回転弁(ロータリバルブ)としての機能を有するのであって,シャフト50が回転弁(ロータリバルブ)として機能することはないと主張する。 しかし,仮に被告の主張によったとしても, 対応する部分のみ」が回転弁(ロータリバルブ)としての機能を有するのであって,シャフト50が回転弁(ロータリバルブ)として機能することはないと主張する。 しかし,仮に被告の主張によったとしても,少なくともシャフト50のうちフロント側通路23及びリヤ側通路33に対応する部分は構成要件Aの「ロータリバルブ」に該当することになるのであるから,被告の上記主張は,結局,構成要件Aの充足性についての判断を直接左右するものではないというべきである(むしろ,被告の上記主張は,実質的には構成要件Eに関するものというべきである。この点については後記4参照。)。 (3) 以上によれば,争点(1)アにおける原告の主張には理由があるから,被告各製品は構成要件Aを充足すると認めるのが相当である。 3 争点(1)イ(構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「スラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」の充足性)について(1) 被告各製品の充足性ア前記第2,2(11)によれば,被告各製品は,前側及び後側に圧縮室24,34が区画される両頭ピストン式であり,ピストン60は,両頭ピストンである。また,被告各製品は,一対のシリンダボア22,32にそれぞれ設けられたフロント側通路23及びリヤ側通路33に対応するフロント側開口52及びリヤ側開口53がシャフト50に形成されている。 そして,被告各製品の斜板51は,「フロント側スラスト軸受70及びリヤ側スラスト軸受80」を介してフロント側シリンダブロック20及びリヤ側シリンダブロック30の間に配置され,シャフト50の軸線の方向の位置を規制されている。 少なくとも,被告各製品のフロント側スラスト軸受70は,フロント側シリンダブロック20の「フロ 側シリンダブロック30の間に配置され,シャフト50の軸線の方向の位置を規制されている。 少なくとも,被告各製品のフロント側スラスト軸受70は,フロント側シリンダブロック20の「フロント側端面26」と斜板51の「環状凸部51c」との間に介在しており,フロント側スラスト軸受70の前面は,内径19.8mmから外径24.5mmまでの円環状の領域でフロント側シリンダブロック20のフロント側端面26と当接している。 また,フロント側スラスト軸受70の後面は,内径27.0mmよりも外側の領域で斜板51の環状凸部51cと当接している。フロント側スラスト軸受70との当接面である斜板51の環状凸部51cの内径(27.0mm)は,フロント側スラスト軸受70との当接面であるフロント側シリンダブロック20のフロント側端面26の外径(24.5mm)より大きい。 そして,フロント側スラスト軸受70は,被告も「回転時のシャフト50の軸方向の変位を抑え,かかる変位に起因する騒音,振動,破損等を防止している。」(前記第3,2の〔被告の主張〕の(2)ア④)と自認しているとおり,軸方向の変位に起因する騒音,振動,破損等を防止する,すなわちスラスト荷重を吸収し得るものである。 イところで,前記第2,2(11)によれば,被告各製品では,吐出行程において,ピストン60が移動する方向とは反対向きの「圧縮反力F」がピストン60に作用するところ,上記圧縮反力Fは,シュー61,斜板51を介してシャフト50(回転弁)に伝達され,フロント側スラスト軸受70及びリヤ側スラスト軸受80のスラスト荷重吸収により斜板51の動きを許容することで斜板51の径中心部を中心としてシャフト50を傾かせようと作用するのであって(下図「図6(A)」のシャフト50内部の↑及び↓),これによ 受80のスラスト荷重吸収により斜板51の動きを許容することで斜板51の径中心部を中心としてシャフト50を傾かせようと作用するのであって(下図「図6(A)」のシャフト50内部の↑及び↓),これにより,シャフト50(回転弁)は,吐出行程中のシリンダボア22に連通するフロント側通路23の入口に向けて付勢される。 ウ以上によれば,被告各製品は構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「スラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし」を充足するものというべきである。 (2) 被告の主張に対する判断①-「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」の意義ア 「接触及び非接触(接離)の動作を繰り返させる構成」の要否この点に関して被告は,本件発明の「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」とは「軸孔内で回転軸を傾け,回転軸のロータリバルブが吸入通路の入口に接触及び非接触(接離)の動作を繰り返させる構成」を意味するものであり,具体的には,①回転軸がロータリバルブにおいてのみ支持され,他の部分においては支持されない(回転軸の外周面と軸孔の内周面の間隔が大きい)構造であること,②上記①の支持される部分であるロータリバルブにおいても,ロータリバルブが軸孔の内周面に接離可能なように,ロータリバルブの外径が,軸孔の内径よりも十分小さいこと,③スラスト軸受が,スラスト荷重を受けて撓む構造である こと,との三つの構成を備えなければならないなどと主張する。 しかし,本件発明に係る特許請求の範囲請求項1の記載は「圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」(構成要件C 許請求の範囲請求項1の記載は「圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」(構成要件C)というものにすぎず,被告の主張するような「吸入通路の入口に接触及び非接触(接離)の動作を繰り返させる構成」は記載されていないし,ましてや,上記①ないし③の三つの構成を備えなければならない旨の記載もない。 なお,被告は,上記②の構成を要することの根拠として,ラジアル軸受手段とロータリバルブの外周面とのクリアランスが小さい場合には,「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」(構成要件C)ことも,回転軸が軸孔の内周面に対して「接離可能に軸受支持」(本件明細書等の段落【0035】)することも不可能であるなどと主張する。しかし,本件明細書等の段落【0043】には,「冷媒の洩れ難さは,前記クリアランスの要求精度が低い場合にも殆ど変わらない」ものであり,「〔吸入通路の閉鎖状態は〕クリアランスの大きさにそれほど左右されない」と記載されているのであって,本件明細書等の記載上,クリアランスの大きさは要件とされていない。 したがって,被告の上記各主張は,いずれも採用することができない。 イ 「回転軸が僅かに変位する程度」の除外の有無また,被告は,「圧縮反力伝達手段」とは「ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達」(構成要件C)し,「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」(同)ことを妨げる構造を有しない構成を意味するのであり,これらを妨げる構造を有した結果,回転軸が僅かに変位する程度では,本件発明の「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」という構成を充足しない旨主張 する。 るのであり,これらを妨げる構造を有した結果,回転軸が僅かに変位する程度では,本件発明の「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」という構成を充足しない旨主張 する。 しかし,上記アのとおり,本件発明に係る特許請求の範囲請求項1の記載は「圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」(構成要件C)というものにすぎず,被告の主張するような「ロータリバルブを付勢することを妨げる構造」を具備するか否かについては何ら記載されていない。なお,被告は,「付勢」とは「勢いを付ける」ことを意味するから,単に圧力ないし応力を加えるだけでは足りず,移動を伴うものと解されるとも主張するが,そうであるからといって,僅かに変位する程度では「付勢」に該当しないとか,さらに進んで「ロータリバルブを付勢することを妨げる構造」を有しない構成を意味するなどとまでいうことはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ本件特許の出願経過等による解釈さらに,被告は,回転軸が僅かに傾くにすぎない場合に「付勢」を充足しないことは,以下のような本件特許の出願経過等からも明らかであるなどと主張する。 (ア) 乙26意見書まず,被告は,本件特許の出願過程における乙26意見書に「引用文献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明とは,従来からのニードルベアリングのような転がり軸受ではなく,ジャーナル軸受を採用することによって,回転軸側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸受との間のクリアランスを極めて小さくし,その結果,ロータリバルブからの冷媒漏れを抑制するというものです。あくまでも,ジャーナル部と滑り軸受 って,回転軸側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸受との間のクリアランスを極めて小さくし,その結果,ロータリバルブからの冷媒漏れを抑制するというものです。あくまでも,ジャーナル部と滑り軸受との間のクリアランス管理に基づいて冷媒漏れの抑制を実現しているのであって,本願発明のように,ピストンに対する圧縮反力を ロータリバルブへの付勢力に変換し,ロータリバルブの外周面を直接,吸入通路の入口に付勢することによって冷媒漏れを抑制する技術とは明確に異なるのです。」と記載されていることを根拠に,原告が本件発明の技術的範囲から「クリアランスが小さい場合」を意識的に除外していると主張する。 しかし,乙26意見書の上記部分は,その記載内容からも明らかなとおり,乙21発明の「ジャーナル軸受を採用することによって,回転軸側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸受との間のクリアランスを極めて小さし,その結果」冷媒漏れを抑制する技術と,本件発明の「ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブへの付勢力に変換し,ロータリバルブの外周面を直接,吸入通路の入口に付勢することによって」冷媒漏れを抑制する技術とが相違することを述べたものにすぎず,「クリアランスが小さい場合」を本件発明の技術的範囲から除外したものと解することはできない。このことは,乙26意見書の上記部分の直前に「引用文献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明は・・・ジャーナル軸受をもってロータリバルブを支持する点に特徴があります。」と記載され,さらに,乙21公報の「回転軸を支持する軸受がジャーナル軸受であり,それが単にシリンダブロック内に設けられた滑り軸受と,回転軸の一部であるジャーナル部によって構成される簡単な構造であるだけでなく,そのジャーナル軸受の構成部材自体に半径方向の吸 ャーナル軸受であり,それが単にシリンダブロック内に設けられた滑り軸受と,回転軸の一部であるジャーナル部によって構成される簡単な構造であるだけでなく,そのジャーナル軸受の構成部材自体に半径方向の吸入通路や吸入ポートを形成して,各シリンダに対して圧縮すべき流体を吸入させるための吸入弁を構成しているため,軸受構造と吸入弁の構造が簡単になるだけでなく,滑り軸受の円筒内面の仕上げ加工が容易に行われて,ジャーナル部とのクリアランスをきわめて小さくすることが可能になり,圧縮された流体が吸入弁から漏洩することがない。」との記載が引用されていることからも明らかである。 (イ) 本件特許の親出願における乙30意見書また,被告は,本件特許の親出願(特願2002-324043)の出願過程における乙30意見書に「引用文献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明は,回転軸24を支持する軸孔はバルブ収容室を含めすべて同じ径で形成されていて,軸孔全体で回転軸24を支持する構成となっています。したがって,バルブ収容室の内周面が本願発明でいう『圧縮反力伝達手段』として構成されていないことは明らかです。」と記載されていることを根拠に,クリアランスを極めて小さくして軸孔全体で回転軸を支持する構成は本件発明の技術的範囲に属しないなどと主張する。 しかし,乙30意見書の上記部分は,当時の親出願の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件親出願発明1」という。)に関する記載であって,本件発明に関するものではない。 そもそも,本件親出願発明1は「前記圧縮反力伝達手段は,前記両頭ピストン,前記カム体,前記回転軸,前記スラスト荷重吸収機能を付与された前記スラスト軸受手段,前記バルブ収容室の前記内周面から構成された」とし,さらに「前記バルブ収容室」につい 伝達手段は,前記両頭ピストン,前記カム体,前記回転軸,前記スラスト荷重吸収機能を付与された前記スラスト軸受手段,前記バルブ収容室の前記内周面から構成された」とし,さらに「前記バルブ収容室」について「前記回転軸を支持する軸孔の端部側には,他部位よりも小径のバルブ収容室が形成され」とするものであって(乙30),このように,本件親出願発明1の「圧縮反力伝達手段」は,軸孔の端部側に形成された「他部位よりも小径のバルブ収容室の内周面」を構成要件の一つとしている点で,本件発明と異なる。 そして,乙30意見書の上記部分は,その記載内容からも明らかなとおり,軸孔の端部側に形成された他部位よりも小径のバルブ収容室の内周面を構成要件の一つとする本件親出願発明1の「圧縮反力伝達手段」が,乙21公報には開示されていないことを指摘したものにすぎない。 これに対し,本件発明の「圧縮反力伝達手段」は,軸孔の端部側に形成された他部位よりも小径のバルブ収容室の内周面を構成要件として限定していない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 乙25事情説明書さらに,被告は,本件特許の出願過程における乙25事情説明書に「上記文献B群〔判決注:ロータリバルブの具備を前提としていて,回転軸と,該回転軸を支持するラジアル軸受手段が回転軸の軸方向に配置される事項を開示する文献。乙4公報はその一つ。〕に記載された発明では,回転軸を支持するラジアル軸受手段を,たとえば,コロ軸受〔判決注:転がり軸受の一種〕等によって構成していると,圧縮反力によって発生するモーメントが吸収されることから,そのモーメントをロータリバルブに伝達しにくい構成であるといえる。つまり,上記文献B群は,本願発明でいう圧縮反力伝達手段を備えているとは言いがた(い) よって発生するモーメントが吸収されることから,そのモーメントをロータリバルブに伝達しにくい構成であるといえる。つまり,上記文献B群は,本願発明でいう圧縮反力伝達手段を備えているとは言いがた(い)」と記載されていることを引用し,コロ軸受にクリアランスが必要であることは技術常識であるとした上で,当該クリアランスによって生じる程度の回転軸の変位しか許容されないような構成は「本願発明でいう圧縮反力伝達手段」にはならないと主張する。 しかし,乙25事情説明書の上記記載部分は,乙4公報(文献B群)に記載された発明の「ラジアル軸受手段を,たとえば,コロ軸受等によって構成している」ことについて,本件発明との相違点として述べているものであって(それゆえ,圧縮反力によって発生するモーメントが吸収され,そのモーメントをロータリバルブに伝達しにくい構成であるとする。),コロ軸受のクリアランスに関しては一切記載されておらず,したがって,コロ軸受のクリアランスによって生じる程度の回転軸の変位を本件発明の技術的範囲から除外するものではない。 なお,被告は,転がり軸受を用いた従来技術である乙32公報及び乙33公報の各発明につき,原告が本件特許の対応韓国特許に対する韓国での無効審判及び審決取消訴訟において「回転軸の両端にニードル軸受(転がり軸受の一種)が存在し,回転軸を傾けることができない構造である」と説明していたなどとも主張する。しかし,原告によれば,上記説明は,単に,乙32公報及び乙33公報の各発明との相違点として「回転軸の両端にニードル軸受」が存在することを指摘したものにすぎないというのであるし,そもそも,上記説明自体,本件特許の対応韓国特許における説明にすぎないのであって,これをもって本件発明の技術的範囲を被告主張のように特定するもの 在することを指摘したものにすぎないというのであるし,そもそも,上記説明自体,本件特許の対応韓国特許における説明にすぎないのであって,これをもって本件発明の技術的範囲を被告主張のように特定するものとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ 「押接」による「閉鎖」等加えて,被告は,本件特許の出願過程における乙26意見書に「吸入通路の入口をシールすることに特徴がある」との記載及び「ロータリバルブの外周面は,直接,吸入通路の入ロに付勢されます」との記載があること,本件明細書等に「吸入通路33A,34の入口331,341は,圧縮反力によるロータリバルブ35,36の押接によって閉鎖される状態となる」(段落【0043】)との記載があること,さらに,「付勢」が単に回転軸の傾きによって隙間を狭くする趣旨にすぎないのであれば,従来技術(乙19発明及びこれに対する従来技術)と何ら変わらないことなどからすれば,本件発明の「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」とは,回転軸が吸入通路入口の方向に傾けば足りるというものではなく,吸入通路入口を「押接」により「閉鎖」し,「シール」するものでなければならないと主張する。 しかし,「押接」による「閉鎖」ないし「シール」という用語は本件発明(本件特許の特許請求の範囲請求項1)に記載されているものでは ない上,その意味するところも必ずしも明らかとはいえない。そもそも,前記1(2)で認定したとおり,本件発明は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢し,ロータリバルブの外周面を吸入通路の入口に近づけることによって,圧縮室内の冷媒を吸入通路から「洩れ難く」し,体積効率を向上させたというものであるし,現に,本件明細書 に向けてロータリバルブを付勢し,ロータリバルブの外周面を吸入通路の入口に近づけることによって,圧縮室内の冷媒を吸入通路から「洩れ難く」し,体積効率を向上させたというものであるし,現に,本件明細書等の段落【0067】には「第1及び第2の実施の形態では,ロータリバルブがバルブ収容室の内周面に押接されるものとしたが,両者を接触させるのではなく,クリアランスを減少させることで洩れを防止するように構成してもよい。」と記載されているのであって,本件発明においては,ロータリバルブがバルブ収容室の内周面に接触することまでを要件とするものではない。 そうすると,「押接」による「閉鎖」ないし「シール」が必須の構成要件であるというわけではないのであって,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 オ乙41報告書及び乙42証明書被告は,原告提出の甲7報告書(その内容については後記(3)イ(イ)で説示する。)を受けて,乙41報告書及び乙42証明書を提出した上,①乙41報告書のとおり,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」とされるスラスト軸受のみを用いた圧縮機(比較用圧縮機)であっても,甲7報告書と全く同様の実験結果が得られた,②乙42証明書のとおり,被告各製品と「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」とされるスラスト軸受のみを用いた圧縮機とで,運転効率を比較したところ,両者でほぼ同等の結果が得られたと説明する。その上で被告は,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」スラスト軸受であっても,圧縮反力により弾性変形し,圧縮反力がロータリバルブに伝達されるとすれば,「スラスト荷重吸収機能が付与されている」スラスト軸受を有すること をもって,本件発明の「圧縮反力伝達手段」を具備すると解することは許されないなどと主張す タリバルブに伝達されるとすれば,「スラスト荷重吸収機能が付与されている」スラスト軸受を有すること をもって,本件発明の「圧縮反力伝達手段」を具備すると解することは許されないなどと主張する。 しかし,乙41報告書及び乙42証明書の実験において比較用圧縮機として使用されたのは,「スラスト荷重吸収機能が付与されていない」とされるスラスト軸受のみを用いた圧縮機であって,同圧縮機は本件発明を実施したものではなく,被告各製品ですらない。結局,上記各実験は,単に本件発明を実施していない比較用圧縮機を運転した結果,回転軸の外周面及び軸孔の内周面に傷が付いたことを示すだけであって,本件発明の解釈や充足論を直ちに左右するものとはいい難い。 そもそも,本件発明は,構成要件Fの記載からも明らかなように,一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方に,圧縮反力伝達手段の一部として,「スラスト荷重吸収機能が付与されている」スラスト軸受を具備することを要件としている。そして,「スラスト荷重吸収機能が付与されている」スラスト軸受は,圧縮反力伝達手段の一部であるから,「スラスト荷重吸収機能が付与されている」スラスト軸受を有していれば圧縮反力伝達手段の一部を具備することは,構成要件Fの記載からも明らかというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (3) 被告の主張に対する判断②-被告各製品の充足性ア被告の主張被告は,被告各製品においてピストン60に「圧縮反力F」が作用し,シャフト50を傾かせる方向に力が働くことは事実であるとした上で,被告各製品は以下の①ないし④の構成を有しているため,上記圧縮反力が吸収され,シャフト50は傾かないなどと主張する。 ① 斜板51の取り付け部及びスラストベアリング70,80を除く全 とした上で,被告各製品は以下の①ないし④の構成を有しているため,上記圧縮反力が吸収され,シャフト50は傾かないなどと主張する。 ① 斜板51の取り付け部及びスラストベアリング70,80を除く全域が,シャフト用孔21,31により軸受けされている。 ② 当該軸受21,31がシリンダブロック20,30の外側に突出するようにさらに長く設けられている。 ③ シャフト50とシャフト用孔21,31がいずれも極めて高精度に仕上げられ,両者のクリアランスが極限までに小さくされている。 ④ スラスト軸受70,80が,部品の寸法誤差による組付け誤差を吸収し,さらに,回転時にシャフト50が軸方向に変位することを防止するために,組立て完了時に,斜板の環状凸部51c,d及びシリンダブロック20,30の端面26,36がいずれもスラスト軸受70,80に接触し,かつ,環状凸部51c,51hと端面26,36とでスラスト軸受70,80を挟み込む力が加わった(予圧された)状態となっている。 しかし,被告の上記主張はいずれも採用することができない。その理由は,以下のとおりである。 イ被告各製品における変位(ア) 隙間の存在まず,前記第2,2(11)によれば,被告各製品のシャフト50の外径は平均19.003mmであり,シャフト用孔21,31の内径は平均19.033mmであるから,シャフト50の外周面とシャフト用孔21,31の内周面との間には平均0.03mm(30μm)の隙間がある。したがって,被告各製品は,上記隙間の範囲においてシャフト50の変位を許容するものということができる。 (イ) 甲7報告書そして,現に,原告提出の甲7報告書によれば,運転中の被告各製品において,吐出行程にあるシリンダボアのフロント側通路に向けて近づくようにシャ 容するものということができる。 (イ) 甲7報告書そして,現に,原告提出の甲7報告書によれば,運転中の被告各製品において,吐出行程にあるシリンダボアのフロント側通路に向けて近づくようにシャフトの外周面が変位していることが確認されている。 すなわち,甲7報告書は,被告各製品につき,シャフトとシャフト用 孔との間隙よりも微小な試験用粉体を混入させた状態で運転させた後,「シャフトの外周面」及び「シャフト用孔の内周面」の表面粗さを測定することにより,運転時におけるシャフトのシャフト用孔に対する挙動を明らかにしたものである。 そして,甲7報告書によれば,「シャフトの外周面」においてはピストン60が上死点(斜板51によってピストン60が最も吐出室10aに近づく位置)となる位置を0°とした場合の315°ないし45°の領域において顕著に傷が付いたのに対し,「シャフト用孔の内周面」においては,半分よりもフロント側の領域に顕著であるものの,全周に傷が付いたのであって,これらの傷の付き方は,被告各製品において,吐出行程にあるシリンダボア22のフロント側通路23に向けてシャフト50の外周面が近づくように変位したことの証左ということができる。 (ウ) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,甲7報告書の測定結果は,軸孔中で最も力の加わる部分である端部(シリンダブロックの外側に突出して設けられた部分)が粉体によって磨耗し,これにより回転軸が傾くに至ったものにすぎないと主張する。 しかし,被告の上記主張は推測の域を出るものではないし,そもそもなにゆえ軸孔中で「端部」が「最も力の加わる部分である」ことになるのかについても,被告の主張自体,明らかとはいい難い。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウスラス そもそもなにゆえ軸孔中で「端部」が「最も力の加わる部分である」ことになるのかについても,被告の主張自体,明らかとはいい難い。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウスラスト軸受の撓み(ア) なお,被告は,上記④の構成につき,「被告各製品のスラスト軸受が予圧されているため,圧縮反力が加えられてもこれを吸収するのであって,さらに撓むことは容易ではない」とも主張する。 しかし,上記イのとおり,被告各製品においては,現に,吐出行程に あるシリンダボア22のフロント側通路23に向けてシャフト50の外周面が近づくように変位している事実が確認されている。被告の上記主張は,単なる推測の域を出るものではないばかりか,上記事実にも反しており,直ちに採用することができない。 念のために検討しても,本件明細書等によれば,本件発明のスラストベアリング26にはスラスト荷重を吸収するスラスト荷重吸収機能が付与されており(段落【0023】),これによりロータリバルブ35,36を圧縮反力によって付勢することを許容する(同【0039】)。 そして,被告各製品についてみると,前記(1)アにも説示したとおり,被告自身,スラスト軸受70,80が「回転時のシャフト50の軸方向の変位を抑え,かかる変位に起因する騒音,振動,破損等を防止している」(前記第3,2の〔被告の主張〕の(2)ア④)ことを自認し,スラスト軸受70,80がスラスト荷重を吸収し得ること,すなわち撓み変形可能に構成されていることを明らかにしているところである。 (イ) この点に関して被告は,本件特許の親出願における乙30意見書に「〔乙9公報につき〕この弾性変形機能が付与された41,42を含むスラスト軸受40は,本願発明1でいう『圧縮反力伝達手段』に相当しません。」及び 関して被告は,本件特許の親出願における乙30意見書に「〔乙9公報につき〕この弾性変形機能が付与された41,42を含むスラスト軸受40は,本願発明1でいう『圧縮反力伝達手段』に相当しません。」及び「〔乙13公報につき〕所定量の弾性変形機能が付与されたスラスト軸受109は,本願発明1でいう『圧縮反力伝達手段』に相当しません。」との記載があることを指摘した上,「スラスト軸受を予圧によりあらかじめ撓ませ,圧縮反力による更なる撓みを抑制する構成が本件発明の圧縮反力伝達手段ではないことは,原告自身の出願経過における主張からも明らかである」などと主張する。 しかし,乙30意見書には,上記各引用部分に続けて,それぞれ以下のとおり記載されている。 ・「そもそも,引用文献4〔判決注:乙9公報〕の場合,ロータリバル ブの構成そのものを採用するものではないのですから,『吐出行程にある前記シリンダボア内の前記両頭ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する』という構成の圧縮反力伝達手段に引用文献4のスラスト軸受40が含まれないことは明らかです。したがって,引用文献4は,本願発明1の圧縮反力伝達手段を構成する『スラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段』を開示するものでないということができます。」・「そもそも,引用文献5〔判決注:乙13公報〕の場合,引用文献4の場合と同様に,ロータリバルブの構成そのものを採用するものではないのですから,『吐出行程にある前記シリンダボア内の前記両頭ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する』 吐出行程にある前記シリンダボア内の前記両頭ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する』という構成の圧縮反力伝達手段に引用文献5のスラスト軸受109の構成が含まれないのは明らかです。したがって,引用文献5も本願発明1の圧縮反力伝達手段を構成する『スラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段』を開示するものでないということができます。」このように,乙30意見書では,乙9公報及び乙13公報に開示されたスラスト軸受手段が本件親出願発明1の「圧縮反力伝達手段」に該当しない理由として,乙9公報及び乙13公報にはロータリバルブの構成が採用されていないことが明記されているものである。これに対し,被告各製品ではロータリバルブを採用しているのであるから,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 エ JIS規格の「転合」の組合せまた,被告は,被告各製品において回転軸を回転可能に支持するため に設けられているクリアランスは,JIS規格上,「転合」とされる組合せにおいて必要最小限のものでしかなく,かかるクリアランスは「シャフトの傾きを許容する隙間」ではないなどと主張する。 しかし,被告各製品の組合せがJIS規格の「転合」とされる組合せに該当するか否かはともかくとしても,そのクリアランスは平均0.03mm(30μm)であって(上記イ(ア)),シャフトの傾きを許容しないことが明らかであるとはいい難いし,現に,甲7報告書によれば,その程度のクリアランスであってもシャフトが傾いているところである。 したがって,被告各製品のクリアランスは「シャフトの傾きを許容する隙間」に当たり,被告の上記主張は採用することがで 書によれば,その程度のクリアランスであってもシャフトが傾いているところである。 したがって,被告各製品のクリアランスは「シャフトの傾きを許容する隙間」に当たり,被告の上記主張は採用することができない。 オ本件特許の出願経過等さらに,被告は,本件特許の出願経過等に照らせば,被告各製品は「圧縮反力伝達手段」を有していないと主張するが,上記(2)ウ及びエと同様に,以下のとおり採用することができない。 (ア) 乙26意見書まず,被告は,原告の乙26意見書を引用した上(前記(2)ウ(ア)参照),これによれば乙21発明は「ジャーナル部と滑り軸受との間のクリアランス管理に基づいて冷媒漏れの抑制」をするという技術思想に基づくものであり,本件発明の技術思想とは異なるところ,被告各製品は乙21発明の技術思想に基づいてロータリバルブからの冷媒漏れを抑制するものであるから,「圧縮反力伝達手段」を有していないなどと主張する。 しかし,前記(2)ウ(ア)に説示したとおり,乙26意見書は,乙21発明の「ジャーナル軸受を採用することによって」冷媒漏れを抑制する技術と,本件発明の「ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブへの付勢力に変換し,ロータリバルブの外周面を直接,吸入通路の入口に付勢 することによって」冷媒漏れを抑制する技術とが相違することを述べたものにすぎない。そして,被告各製品はジャーナル軸受を採用していないのであるから(被告も明らかに争わない。),乙26発明の技術思想を採用したものとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 (イ) 乙25事情説明書被告は,原告の乙25事情説明書には圧縮反力によって発生するモーメントがコロ軸受等によって吸収され,そのモーメントをロータリ その前提を欠き,採用することができない。 (イ) 乙25事情説明書被告は,原告の乙25事情説明書には圧縮反力によって発生するモーメントがコロ軸受等によって吸収され,そのモーメントをロータリバルブに伝達しにくい旨の記載があること(前記(2)ウ(ウ)),また,乙32公報及び乙33公報の各発明につき,原告が,本件特許の対応韓国特許に対する韓国での無効審判及び審決取消訴訟において,回転軸の両端にニードル軸受(転がり軸受の一種)が存在し,回転軸を傾けられない構造である旨の説明をしていたことを指摘した上,被告各製品は回転軸を傾斜させることができない構造であるから,「圧縮反力伝達手段」を有していないなどと主張する。 しかし,前記(2)ウ(ウ)に説示したとおり,乙25事情説明書は,乙4公報(文献B群)に記載された発明の「ラジアル軸受手段を,たとえば,コロ軸受等によって構成している」ことについて,本件発明との相違点として述べたものにすぎないし,韓国での無効審判及び審決取消訴訟においての説明も,乙32公報及び乙33公報との相違点として「回転軸の両端にニードル軸受」が存在することを指摘したものにすぎない。そして,被告各製品は,ラジアル軸受手段として「コロ軸受等」又は「回転軸の両端にニードル軸受」を採用したものではないから(被告も明らかに争わない。),乙25事情説明書における乙4公報(文献B群),乙32公報及び乙33公報の各発明とはラジアル軸受手段の構造が異な る。 したがって,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 (ウ) 本件特許の親出願における乙30意見書さらに,被告は,本件特許の親出願における乙30意見書に,乙21発明の「回転軸24を支持する軸孔はバルブ収容室を含めすべて同じ径で形成されていて (ウ) 本件特許の親出願における乙30意見書さらに,被告は,本件特許の親出願における乙30意見書に,乙21発明の「回転軸24を支持する軸孔はバルブ収容室を含めすべて同じ径で形成されていて,軸孔全体で回転軸24を支持する構成」について,「バルブ収容室の内周面が本願発明でいう『圧縮反力伝達手段』として構成されていない」と記載されているところ,被告各製品は軸孔全体で回転軸を支持する構成であるから,「圧縮反力伝達手段」を有しないなどと主張する。 しかし,前記(2)ウ(イ)に説示したとおり,乙30意見書は,本件発明とは異なり,軸孔の端部側に形成された「他部位よりも小径のバルブ収容室の内周面」を構成要件の一つとしている本件親出願発明1について,乙21公報には開示されていないことを指摘したものにすぎない。そして,本件発明の「圧縮反力伝達手段」は,軸孔の端部側に形成された「他部位よりも小径のバルブ収容室の内周面」を構成要件として限定していない。 したがって,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 カ 「押接」による「閉鎖」等加えて,被告は,原告の乙26意見書には「吸入通路の入口をシールすることに特徴がある」との記載があり,また本件明細書等には「吸入通路33A,34の入口331,341は,圧縮反力によるロータリバルブ35,36の押接によって閉鎖される状態となる」(段落【0043】)との記載があるのに対し,被告各製品ではシリンダブロック20, 30の外側に突出した部分において支持されているから,吸入通路入口を「押接」により「閉鎖」ないし「シール」することはできず,したがって「ロータリバルブを付勢する」(構成要件C)ものではないなどと主張する。 しかし,前記(2)エに説示したとおり,「押接」によ を「押接」により「閉鎖」ないし「シール」することはできず,したがって「ロータリバルブを付勢する」(構成要件C)ものではないなどと主張する。 しかし,前記(2)エに説示したとおり,「押接」による「閉鎖」ないし「シール」という用語は本件発明(本件特許の特許請求の範囲請求項1)に記載されているものではないし,本件発明は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢し,ロータリバルブの外周面を吸入通路の入口に近づけることによって,圧縮室内の冷媒を吸入通路から「洩れ難く」し,体積効率を向上させたというものである上,現に,本件明細書等の段落【0067】には,「第1及び第2の実施の形態では,ロータリバルブがバルブ収容室の内周面に押接されるものとしたが,両者を接触させるのではなく,クリアランスを減少させることで洩れを防止するように構成してもよい。」と記載されているところである。 そうすると,「押接」による「閉鎖」ないし「シール」が必須の構成要件であるというわけではないのであって,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 キクリアランスの厳密な管理被告は,被告各製品がクリアランスを管理することで冷媒の漏れを防止していることの証左として,乙44報告書を提出した上,同報告書によれば,被告各製品における回転軸と軸孔のクリアランス30μmを50μm,70μm,90μm,110μmに変えたところ,クリアランスが30μm(被告各製品)及び50μmでは効率はほとんど変わらないものの,それより大きいクリアランスでは効率が明らかに落ちていると説明する。 しかし,仮に被告の主張どおり「クリアランス管理によって冷媒漏れを防止している」というのであれば,クリアランスが30μmの被告各製 アランスでは効率が明らかに落ちていると説明する。 しかし,仮に被告の主張どおり「クリアランス管理によって冷媒漏れを防止している」というのであれば,クリアランスが30μmの被告各製品よりも50μmの圧縮機の方が効率は落ちることになるはずであるが,乙44報告書によれば,30μmととで50μm効率はほとんど変わらなかったというのであって,むしろ,本件発明の作用効果である「冷媒の洩れ難さは,前記クリアランスの要求精度が低い場合にも殆ど変わらない。クリアランスの要求精度が低い場合にも,圧縮機における体積効率が向上する。」(本件明細書等の段落【0043】)に沿うものである。そして,クリアランスを70μm以上とした場合に効率が落ちたという点についても,原告は「本件発明の効果に対してクリアランスを大きくしたことによる冷媒の漏洩の影響が相対的に大きくなっただけであり,そもそも70μm以上というクリアランスがシャフトの軸孔とのクリアランスとしては適切でなかったというにすぎない」旨説明しているところ,この説明自体,不自然,不合理として排斥することもできない。 したがって,乙44報告書の実験結果は,上記(1)の判断を左右するものではない。 (4) 小括以上によれば,争点(1)イにおける原告の主張には理由があるから,被告各製品は構成要件C及びFを充足すると認めるのが相当である。 4 争点(1)ウ(構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手段」の充足性)について(1) 前記第2,2(11)によれば,被告各製品では,シャフト用孔21,31の内周面にシャフト50(回転弁)の外周面が直接支持されている。このように,シャフト50は,シャフト用孔21,31の内周面とシャフト50( ,2(11)によれば,被告各製品では,シャフト用孔21,31の内周面にシャフト50(回転弁)の外周面が直接支持されている。このように,シャフト50は,シャフト用孔21,31の内周面とシャフト50(回転弁)の外周面とからなるラジアル軸受手段のみによって支持されており, かかる支持構造がシャフト50の斜板51よりも前側及び後側に関する唯一のラジアル軸受手段であって,他のラジアル軸受手段(例えば,コロ軸受,ニードル軸受等)を採用していない。 したがって,被告各製品は,構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手段」を充足する。 (2) 被告の主張に対する判断アこの点に関して被告は,①構成要件Eにいう「ロータリバルブ」とは,「導入通路を有するロータリバルブ」(構成要件A)及び「前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」(構成要件C)との記載等に鑑みれば,回転軸の一部であって,導入通路及びその近傍を意味する,②それゆえ,構成要件Eにいう「唯一のラジアル軸受手段」とは,吸入通路入口近傍のみにおいて軸受されていることを要するなどと主張する。その上で,被告は,被告各製品はシャフト全体が軸孔により支持されており,本件発明の「ロータリバルブの外周面」に相当するシャフトの開口52,53近傍の外周面以外でもシャフトが支持されていることになるから,構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」という構成となっておらず,また,吸入通路入口近傍のみにおいて軸受されているものではないから,構成要件Eの「唯一のラジアル軸受手段」も備えないと主張する。 しかし,上記②のような,ロータリバルブが「吸入通路入口近傍のみにおいて軸受されていることを において軸受されているものではないから,構成要件Eの「唯一のラジアル軸受手段」も備えないと主張する。 しかし,上記②のような,ロータリバルブが「吸入通路入口近傍のみにおいて軸受されていることを要する」などという要件は,本件発明(本件特許の特許請求の範囲請求項1)に記載されていない。 かえって,本件明細書等には,以下の各記載がある。 ・「シリンダブロック11,12には回転軸21が回転可能に支持されている。回転軸21は,シリンダブロック11,12に貫設された軸孔 112,122に挿通されている。回転軸21は,軸孔112,122を介してシリンダブロック11,12によって直接支持されている。」(段落【0019】)・「回転軸21を通す軸孔112,122の内周面にはシール周面113,123が形成されている。シール周面113,123の径は,軸孔112,122の他の内周面の径よりも小さくしてあり,回転軸21は,シール周面113,123を介してシリンダブロック11,12によって直接支持される。」(段落【0026】)・「シール周面113,123によって包囲される回転軸21の部分は,回転軸21に一体形成されたロータリバルブ35,36となる。」(段落【0033】)・「(1-3)斜板23からロータリバルブ35側における回転軸21の部分は,シール周面113(即ち,バルブ収容室37の内周面)とロータリバルブ35の外周面351とからなるラジアル軸受手段のみによって支持される。バルブ収容室37の内周面であるシール周面113は,ロータリバルブ35を介して回転軸21を支持するラジアル軸受手段となっている。ラジアル軸受手段であるシール周面113は,斜板23からロータリバルブ35側における回転軸21の部分に関する唯一のラジアル軸受手段である。」 介して回転軸21を支持するラジアル軸受手段となっている。ラジアル軸受手段であるシール周面113は,斜板23からロータリバルブ35側における回転軸21の部分に関する唯一のラジアル軸受手段である。」(段落【0040】)上記の各記載によれば,本件明細書等においては,回転軸がシリンダブロックに貫設された軸孔に挿通され,軸孔の内周面で支持された構造を「直接支持される」としているのであって,本件発明の「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」とは,軸孔の内周面とロータリバルブの外周面との間に他の部材が存在しないことを意味するものと解するのが相当である。 また,上記の各記載によれば,本件明細書等においては,軸孔の内周 面(シール周面)と回転軸(ロータリバルブ)の外周面とからなるラジアル軸受手段のみによって支持された構造を「唯一のラジアル軸受手段」としているのであって,本件発明の「前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段」とは,カム体からロータリバルブ側における回転軸の部分について,直接支持されたラジアル軸受手段の他にラジアル方向の軸受手段が存在しないことを意味するものと解するのが相当である。 これを被告各製品についてみると,被告各製品では,シャフト用孔21,31の内周面とシャフト50(回転弁)の外周面との間に他の部材は存在しない。また,被告各製品では,シャフト50は,シャフト用孔21,31の内周面とシャフト50(回転弁)の外周面とからなるラジアル軸受手段のみによって支持されており,他にラジアル方向の軸受手段は存在しない。 したがって,被告各製品は,構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手 って支持されており,他にラジアル方向の軸受手段は存在しない。 したがって,被告各製品は,構成要件Eの「前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持される」及び「唯一のラジアル軸受手段」をいずれも充足するのであるから,被告の上記主張は採用することができない。 イまた,被告は,「ロータリバルブを付勢する」(構成要件C)とは回転軸が吸入通路入口を「閉鎖」ないし「シール」するものでなければならないとした上,そのためには吸入通路の入口近傍のみで回転軸が支持されていることを要するから,「唯一のラジアル軸受手段」とは当該吸入通路入口近傍のみで軸受されていることを要するとも主張する。 しかし,前記3(2)エに説示したとおり,そもそも本件発明において「回転軸が吸入通路入口を『閉鎖』ないし『シール』するものでなければならない」とはいえない。 したがって,被告の上記主張はその前提を欠き,採用することができな い。 (3) 小括以上によれば,争点(1)ウにおける原告の主張には理由があるから,被告各製品は構成要件Eを充足すると認めるのが相当である。 5 争点(2)ア(〔無効理由1〕乙19発明による新規性欠如)について(1) 乙19公報の内容ア本件特許の優先日よりも前に公開された乙19公報には,次の記載がある。 (ア) 産業上の利用分野・「この発明は,斜板式圧縮機等の往復動型圧縮機に関するものである。」(段落【0001】)(イ) 従来の技術・「この種の往復動型圧縮機としては,例えば実開昭64-46480号公報に示すような構成のものが知られている。この構成においては,ハウジング内にラジアルベアリングを介して回転軸が支持されるとともに,その回転軸の周囲においてピストンを往復動可能に収容した複数のシリンダ に示すような構成のものが知られている。この構成においては,ハウジング内にラジアルベアリングを介して回転軸が支持されるとともに,その回転軸の周囲においてピストンを往復動可能に収容した複数のシリンダボアが形成されている。ハウジングのクランク室内において回転軸には斜板が支持され,回転軸の回転に伴い,この斜板を介してピストンが往復動されるようになっている。」(段落【0002】)(ウ) 発明が解決しようとする課題・「ところで,この種の圧縮機では,斜板が傾斜しているために,ピストンの圧縮動作時に発生する圧縮荷重,すなわち圧縮反力が,斜板を介して回転軸に対し,その回転軸のラジアル方向の分力として作用し,ラジアルベアリングに大きな負荷が加わる。尚,このラジアル方向の分力に関しては後に詳述する。従って,従来の圧縮機では,このよう な大きなラジアル方向の負荷が加わっても,回転軸の円滑な回転に支障が無いように,ラジアルベアリングとしてニードルベアリングやボールベアリング等のころがり軸受が使用されていた。」(段落【0003】)・「ところが,このニードルベアリングやボールベアリング等のころがり軸受は高価であるため,圧縮機のコスト低減の妨げになるという問題があった。この発明は,このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは,回転軸を支持するラジアルベアリングとして,ニードルベアリングやボールベアリング等の高価なころがり軸受を使用する必要がなく,製造コストの低減を図ることができる圧縮機を提供することにある。」(段落【0004】)(エ) 課題を解決するための手段・「上記の目的を達成するために,請求項1に記載の発明では,ラジアルベアリングを滑り軸受けにより構成し,その滑り軸受けと回転軸との間 。」(段落【0004】)(エ) 課題を解決するための手段・「上記の目的を達成するために,請求項1に記載の発明では,ラジアルベアリングを滑り軸受けにより構成し,その滑り軸受けと回転軸との間には,ピストンの圧縮動作時に斜板を介して回転軸にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向の力を,同回転軸に対して付与するための反力付与手段を設けたものである。」(段落【0005】)(オ) 作用・「請求項1に記載の発明によれば,回転軸を支持するラジアルベアリングが滑り軸受けにより構成されているので,ニードルベアリングやボールベアリング等のころがり軸受と比較して安価で済む。又,回転軸の回転に伴い,斜板を介してピストンが往復動されて,圧縮動作が行われるとき,その圧縮荷重が斜板を介して回転軸に対し,ラジアル方向の分力として作用し,滑り軸受けに大きな負荷が加わる。つまり,回転軸が滑り軸受けに強く圧接されて,両者間の摺動抵抗が大きくな る。ところが,滑り軸受けと回転軸との間に設けられた反力付与手段により,回転軸にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向の力が,同回転軸に対して付与されて,そのラジアル方向の力が相殺される。 このため,回転軸が滑り軸受けに強く圧接されることはなく,滑り軸受けを使用しても回転軸の円滑な回転に支障は生じない。」(段落【0013】)・「複数のシリンダボア20は前記回転軸16と平行に延びるように,シリンダブロック11の両端部間に同一円周上で所定間隔おきに貫通形成され,それらの内部には片頭型のピストン21が往復動可能に嵌挿支持されている。クランク室22はシリンダブロック11の前面側において,フロントハウジング12の内部に区画形成されている。」(段落【0024】)・「半球部を有する一対のシュー30はその半球部にて各 持されている。クランク室22はシリンダブロック11の前面側において,フロントハウジング12の内部に区画形成されている。」(段落【0024】)・「半球部を有する一対のシュー30はその半球部にて各ピストン21の基端部に相対的に摺動可能に嵌められている。摺動面29は前記斜板27の外周部の前後両面に形成され,この摺動面29上には両シュー30がその平面部にて摺動可能に係留されている。そして,前記駆動源により回転軸16が回転されるとき,ラグプレート23を介して斜板27が回転され,各ピストン21がシリンダボア20内において往復動される。」(段落【0027】)・「吸入弁機構35は前記弁板14に形成され,ピストン21がシリンダボア20内で往復動されるとき,この吸入弁機構35によって吸入室33から各シリンダボア20の圧縮室内に冷媒ガスが吸入される。 吐出弁機構36は弁板14に形成され,ピストン21がシリンダボア20内で往復動されるとき,この吐出弁機構36によって各シリンダボア20の圧縮室内で圧縮された冷媒ガスが吐出室34に吐出される。」(段落【0030】) (カ) 実施例・「図1~図3に示すように,前記後方のラジアルベアリング18はシリンダブロック11の中心に形成された軸支孔37からなり,その軸支孔37内には回転軸16の後端に形成された大径の軸支部38が回転可能に嵌挿支持されている。反力付与手段としての反力付与構造39は,ラジアルベアリング18の軸支孔37と回転軸16の軸支部38との間に形成され,ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向の力を,同回転軸16に対して付与するようになっている。」(段落【0031】)・「すなわち,前記反力付与構造39の凹部40は,軸支孔37と対向 て回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向の力を,同回転軸16に対して付与するようになっている。」(段落【0031】)・「すなわち,前記反力付与構造39の凹部40は,軸支孔37と対向する回転軸16の軸支部38の外面において,ピストン21が上死点付近にあるシリンダボア20と対応するように形成されている。また,この凹部40は,ピストン21が上死点付近にあるシリンダボア20から,そのシリンダボア20より圧縮行程途中にあるシリンダボア20側に渡って形成された圧力作用部40bと,その圧力作用部40bに接続され,ピストン21が上死点付近にあるシリンダボア20と対応するように軸線方向に延長された吐出圧導入溝40aとを備えている。」(段落【0032】)・「前記反力付与構造39を構成する複数のガス通路41は,各シリンダボア20の後端と軸支孔37との間に延びるように,シリンダブロック11に形成されている。そして,回転軸16の回転に伴い,斜板27を介して各ピストン21が圧縮動作されるとき,凹部40の導入溝40aが,ピストン21が上死点付近に移動された各シリンダボア20のガス通路41に順に連通する。この動作により,各シリンダボア20の圧縮室内において高圧となった冷媒ガスが,ガス通路41を介して凹部40の圧力作用部40b内に導入される。」(段落【00 33】)・「次に,前記のように構成された圧縮機について動作を説明する。さて,この実施例の圧縮機において,車両エンジン等の駆動源により,回転軸16を介してラグプレート23が回転されると,斜板27の傾角に応じたストロークで各ピストン21が往復動される。これにより,冷媒ガスが吸入室33から各シリンダボア20の圧縮室内に吸入され,それらの圧縮室内で圧縮された後,吐出室34に吐出される 斜板27の傾角に応じたストロークで各ピストン21が往復動される。これにより,冷媒ガスが吸入室33から各シリンダボア20の圧縮室内に吸入され,それらの圧縮室内で圧縮された後,吐出室34に吐出される。この圧縮運転時には,斜板27が傾斜しているために,図1及び図3に示すように,各ピストン21からの圧縮荷重P1が,斜板27を介して回転軸16に対し,その回転軸16のラジアル方向の分力P2として作用する。このため,回転軸16はその分力P2の方向へ向かってラジアルベアリング17,18に強く圧接され,同ベアリング17,18にはラジアル方向への大きな負荷が加わる。」(段落【0034】)・「ところが,各ピストン21の圧縮動作時には,後方のラジアルベアリング18と対応する位置において,回転軸16上の凹部40の吐出圧導入溝40aが各ガス通路41に順に連通して,各シリンダボア20の圧縮室内からガス通路41を介して,凹部40の圧力作用部40b内に高圧となった冷媒ガスが導入される。これにより,圧力作用部40b内の圧力が高められ,その圧力が回転軸16に作用するラジアル方向の分力P2と反対方向の力として,同回転軸16に付与される。 その結果,回転軸16に作用するラジアル方向の力P2が相殺される。」(段落【0035】)・「このため,回転軸16が後方のラジアルベアリング18に強く圧接されることはなく,そのベアリング18には大きな負荷が加わらないので,本実施例のように,そのラジアルベアリング18として安価な滑り軸受けを使用しても,回転軸16の円滑な回転に支障は生じない。 従って,ラジアルベアリング18として,ニードルベアリングやボールベアリング等の高価なころがり軸受を使用する必要がなくなり,圧縮機の製造コストを低減することができる。加えて,ころがり軸受 従って,ラジアルベアリング18として,ニードルベアリングやボールベアリング等の高価なころがり軸受を使用する必要がなくなり,圧縮機の製造コストを低減することができる。加えて,ころがり軸受を使用した場合に生じる騒音の問題がないとともに,軸受けのコロやボールが疲労したり劣化したりして,回転軸16の円滑な回転に支障を生じるといった問題もない。」(段落【0036】)・「また,この実施例の圧縮機においては,反力付与手段としての反力付与構造39が,回転軸16の外面に形成された凹部40とシリンダブロック11に形成されたガス通路41とから構成されている。このため,反力付与手段として,単に回転軸16の外面に凹部40を形成するとともに,シリンダブロック11にガス通路41を貫設するだけの簡単な構成で,回転軸16に作用するラジアル方向の力P2を確実に相殺することができる。」(段落【0037】)・「さらに,この実施例の圧縮機において,凹部40の圧力作用部40bは,回転軸16の外面において,ピストン21が上死点付近にあるシリンダボア20から,そのシリンダボア20より圧縮行程途中にあるシリンダボア20側に渡って形成されている。つまり,回転軸16の周囲に配置された複数のピストン21からの圧縮荷重P1の合力が,回転軸16に対し最も大きなラジアル方向の分力P2として作用する位置は,圧縮荷重P1が最も大きくなる上死点に対応する位置よりも圧縮行程側に若干変位した位置となる。このため,その位置に正確に対応して圧力作用部40bを設けることにより,回転軸16に作用するラジアル方向の力P2をより効果的に相殺できる。」(段落【0038】)(キ) 別の実施例・「次に,この発明の別の実施例を,図4~図6に従って説明する。ま ず,図4に示す第2実施例 るラジアル方向の力P2をより効果的に相殺できる。」(段落【0038】)(キ) 別の実施例・「次に,この発明の別の実施例を,図4~図6に従って説明する。ま ず,図4に示す第2実施例は,本発明を両頭ピストン型斜板式圧縮機に具体化したものであって,一対のシリンダブロック11が接合配置され,それらのシリンダブロック11のシリンダボア20内に両頭型のピストン21が往復動可能に嵌挿支持されている。シリンダブロック11の前後両端には,それぞれ弁板14を介してフロントハウジング12及びリヤハウジング13が接合配置されている。フロントハウジング12及びリヤハウジング13内にはそれぞれ吸入室33及び吐出室34が区画形成され,これらの吸入室33及び吐出室34に対応して,各弁板14には吸入弁機構35及び吐出弁機構36が形成されている。」(段落【0042】)・「回転軸16を支持する前後一対のラジアルベアリング17,18は,いずれもプレーンベアリング(滑り軸受け)により構成されている。 前記第1実施例と同様に,各ラジアルベアリング17,18はシリンダブロック11に形成された軸支孔37を備え,それらの軸支孔37には回転軸16上の大径の軸支部38が回転可能に嵌挿支持されている。各軸支孔37と各軸支部38との間には反力付与構造39がそれぞれ形成され,各反力付与構造39は吐出圧導入溝40a及び圧力作用部40bよりなる凹部40と,複数のガス通路41とから構成されている。」(段落【0043】)・「従って,この第2実施例においては,回転軸16を支持する両ラジアルベアリング17,18について,ニードルベアリングやボールベアリング等の高価なころがり軸受を使用する必要がなくなる。従って,前記のように両ラジアルベアリング17,18に安価な滑り軸受けを使用 アルベアリング17,18について,ニードルベアリングやボールベアリング等の高価なころがり軸受を使用する必要がなくなる。従って,前記のように両ラジアルベアリング17,18に安価な滑り軸受けを使用することができて,圧縮機の製造コストを低減することができる。」(段落【0044】)・「なお,この発明は,次のように変更して具体化することも可能であ る。 (1) 例えば特開平5-126039号公報〔判決注:乙4公報〕に開示されているように,回転軸16のラジアルベアリングと対応する部分にロータリバルブを配設した圧縮機において,そのロータリバルブ上に反力付与構造39を配設すること。因みに,このロータリバルブは,回転軸16と一体回転可能に設けられ,吸入行程にある各シリンダボア20に対してガスを導入するための吸入通路を備えたものである。従って,このロータリバルブを備えた圧縮機においては,ロータリバルブ上の吸入通路と各シリンダボアとを連通させるために設けられている通路を,前記ガス通路41としてそのまま利用できる。」(段落【0049】)(ク) 図面・図1 ・図4 イまた,上記記載事項及び図面の記載内容からすれば,乙19公報には,次の事項も記載されているものということができる。 (ア) 回転軸16の回転に伴い斜板27を介してピストン21が往復動すること(段落【0027】,【0042】,図4)(イ) ピストン21によってシリンダボア20内に圧縮室が区画されること(段落【0030】,【0033】ないし【0035】,【0042】,図4)(ウ) 圧縮動作時に少なくとも斜板27を含む手段が,回転軸16上の大径の軸支部38に,ラジアル方向の分力P2を作用させ,軸支部38は,軸支孔37の内周壁を圧接する 35】,【0042】,図4)(ウ) 圧縮動作時に少なくとも斜板27を含む手段が,回転軸16上の大径の軸支部38に,ラジアル方向の分力P2を作用させ,軸支部38は,軸支孔37の内周壁を圧接すること(段落【0003】,【0013】,【0034】ないし【0036】,【0042】,図4)(エ) 前記軸支孔37に回転軸16上の大径の軸支部38が回転可能に嵌挿支持されてラジアルベアリング17,18となっており,ラジアルベアリング17,18は,回転軸16の部分に関する唯一のラジアルベアリングであること(段落【0043】,図4)(オ) 斜板27が,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて回転軸1 6の軸線の方向の位置を規制されていること(図4)(カ) スラスト軸受手段は,シリンダブロック11の端面に形成された環状の突条と斜板27の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記斜板27の突条の径が前記シリンダブロック11の突条の径よりも大きいこと(図4)(2) 乙19発明上記(1)の記載によれば,乙19公報には,以下の乙19発明が開示されているものと認められる。 「シリンダブロック11の両端部間に回転軸16と平行に延びるように同一円周上で所定間隔おきに貫通形成された複数のシリンダボア20内にピストン21が往復動可能に嵌挿支持され,前記回転軸16の回転に伴い斜板27を介して前記ピストン21を往復動させ,前記ピストン21によって前記シリンダボア20内に区画される圧縮室に冷媒ガスを導入する吸入弁機構35を備えた両頭ピストン型斜板式圧縮機において,圧縮動作時にシリンダボア20内のピストン21からの圧縮反力を回転軸16に対しラジアル方向の分力として作用させ,軸支孔37の内周壁に対して前記回転軸16上の大径の軸支部38を圧接 縮機において,圧縮動作時にシリンダボア20内のピストン21からの圧縮反力を回転軸16に対しラジアル方向の分力として作用させ,軸支孔37の内周壁に対して前記回転軸16上の大径の軸支部38を圧接する少なくとも斜板27を含む手段とを有し,前記シリンダブロック11には,回転軸16上の大径の軸支部38が回転可能に嵌挿支持される軸支孔37が形成され,前記軸支孔37に回転軸16上の大径の軸支部38が回転可能に嵌挿支持されてラジアルベアリング17,18となっており,ラジアルベアリング17,18は,前記回転軸16の部分に関する唯一のラジアルベアリングであり,前記軸支孔37と前記軸支部38との間には,ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向 の力を,前記回転軸16に対して付与する反力付与構造39が形成され,前記ピストン21は両頭型のピストン21であり,前記斜板27は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸16の軸線の方向の位置を規制されており,前記スラスト軸受手段は,前記シリンダブロック11の端面に形成された環状の突条と斜板27の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記斜板27の突条の径を前記シリンダブロック11の突条の径よりも大きくした両頭ピストン型斜板式圧縮機における冷媒ガス吸入構造。」(3) 本件発明と乙19発明との対比上記(1)及び(2)に加え,本件発明の「ロータリバルブ」は「回転軸」と一体化されているものであり,乙19発明の「回転軸16」と「回転軸」という点で一致することをも併せると,本件発明と乙19発明の一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる。 ア一致点「シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複 回転軸」という点で一致することをも併せると,本件発明と乙19発明の一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる。 ア一致点「シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させ,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するためのバルブを備えたピストン式圧縮機において,吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を回転軸に伝達して,軸孔の内周面に向けて前記回転軸を付勢する手段とを有し,前記シリンダブロックは,回転軸を回転可能に収容する軸孔を有し,前記軸孔の内周面に前記回転軸の外周面が直接支持されることによって前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,前記ピストンは両頭ピストンであり,前記カム体は,前後一対のスラ スト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,スラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくしたピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。」イ相違点(ア) 本件発明は,「前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブ」を備えたものであり,それに伴い,「前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路」と,「吐出行程にある前記シリンダボア内の るロータリバルブ」を備えたものであり,それに伴い,「前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路」と,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」手段と,「前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔」とを有し,「前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段」であり,「前記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転」するものであるのに対して,乙19発明は,「吸入弁機構35」を有するものの,「ロータリバルブ」を有していない点(以下「相違点1-1」という。)。 (イ) 本件発明は,「吐出行程にあるシリンダボア内のピストンに対する圧 縮反力をロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」を有し,「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突 圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」構成を有するものであるのに対して,乙19発明は,「圧縮動作時にシリンダボア20内のピストン21からの圧縮反力を回転軸16に対しラジアル方向の分力として作用させ,軸支孔37の内周壁に対して前記回転軸16上の大径の軸支部38を圧接する少なくとも斜板27を含む手段」を有し,「前記スラスト軸受手段は,前記シリンダブロック11の端面に形成された環状の突条と斜板27の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記斜板27の突条の径を前記シリンダブロック11の突条の径よりも大きくした」構成を有するものであるが,「圧縮反力伝達手段」に相当する構成を含むか否かが明らかではなく,また,「前記軸支孔37と前記軸支部38との間には,ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向の力を,前記回転軸16に対して付与する反力付与構造39」を有している点(以下「相違点1-2」という。)。 (4) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,①相違点1-1につき,乙19公報の「例えば特開平5-126039号公報〔判決注:乙4公報〕に開示されているように」(段落【0049】)以下の記載に従って,同公報の図4の構成の「回転軸16のラジアルベアリング17,18と対応する部分」に乙4公報(詳細は後記6参照)に開示されたロータリバルブを配設した圧縮機の断面図を作成 すると以下の「図イ」のとおりとなり,それゆえ,乙19公報には,同公報の図4記載の圧縮機の吸入弁35をロータリバルブに変更した構成が記載さ たロータリバルブを配設した圧縮機の断面図を作成 すると以下の「図イ」のとおりとなり,それゆえ,乙19公報には,同公報の図4記載の圧縮機の吸入弁35をロータリバルブに変更した構成が記載されている,②「図イ」のとおり,乙19公報における斜板27及び回転軸16は,吐出行程にあるシリンダボア20内のピストン21に対する圧縮反力を,斜板27を介して回転軸16に作用させることによりロータリバルブ100に伝達して,吐出行程の状態にあるシリンダボア20に連通するガス通路41の入口に向けてロータリバルブ100を付勢するように構成されているのであるから,上記斜板27及び回転軸16は本件発明の「圧縮反力伝達手段」に相当するのであって,「圧縮反力伝達手段」は乙19公報に開示されていると主張する。 「図イ」しかし,乙19公報には,吸入弁構造35としてリード弁を採用した圧縮機については具体的な記載はあるものの,ロータリバルブを備えた圧縮機については,「例えば特開平5-126039号公報〔判決注:乙4公報〕に開示されているように,回転軸16のラジアルベアリングと対応する部分にロータリバルブを配設した圧縮機において,そのロータリバルブ上に反力付与構造39を配設する」(段落【0049】)との変更を加えることが可能 である旨の抽象的な記載があるにすぎないのであって,被告の主張するような上記「図イ」という特定の構成の圧縮機を開示するものではない。 そもそも,乙19公報においては,「ロータリバルブを配設した圧縮機」の構成として,段落【0049】において「回転軸16のラジアルベアリングと対応する部分にロータリバルブを配設した圧縮機において,そのロータリバルブ上に反力付与構造39を配設する」,「ロータリバルブは,回転軸16と一体回転可能に設 おいて「回転軸16のラジアルベアリングと対応する部分にロータリバルブを配設した圧縮機において,そのロータリバルブ上に反力付与構造39を配設する」,「ロータリバルブは,回転軸16と一体回転可能に設けられ,吸入行程にある各シリンダボア20に対してガスを導入するための吸入通路を備えたものである」及び「ロータリバルブ上の吸入通路と各シリンダボアとを連通させるために設けられている通路を,前記ガス通路41としてそのまま利用できる」ことしか明らかとされておらず,これ以外の「ロータリバルブを配設した圧縮機」の構成は開示されていないのであって,仮に同段落の「例えば特開平5-126039号公報〔判決注:乙4公報〕に開示されているように」という記載に依拠したとしても,せいぜい乙4公報に開示されている「ロータリバルブを配設した圧縮機」の構成を補助的に把握することができるという程度にすぎない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (5) 小括以上のとおり,本件発明と乙19発明とは,相違点1-1及び相違点1-2において相違することが認められる。 したがって,争点(2)アにおける被告の主張は理由がなく,本件発明が乙19発明により新規性を欠くと認めることはできない。 6 争点(2)イ(〔無効理由2〕乙19発明及び乙4発明による進歩性欠如)について(1) 乙4公報の内容ア本件特許の優先日よりも前に公開された乙4公報には,次の記載がある。 (ア) 産業上の利用分野 ・「本発明は,車両空調用に供して好適な往復動型圧縮機の改良に関する。」(段落【0001】)(イ) 実施例・「以下,本発明の実施例1,2及び変形例1~6を図面に基づき説明する。 (実施例1)図1は本実施例に係る揺動斜板式圧縮機の断面図である。 図に 関する。」(段落【0001】)(イ) 実施例・「以下,本発明の実施例1,2及び変形例1~6を図面に基づき説明する。 (実施例1)図1は本実施例に係る揺動斜板式圧縮機の断面図である。 図において,1は軸方向に貫通する軸心孔1a及び5個のボア1bを有するシリンダブロックであって,このシリンダブロック1の一端面には通しボルト16によりフロントハウジング2が接合され,他端面には弁板3,吐出弁18b及びリテーナ20を介して同通しボルト16によりリアハウジング4が接合されている。フロントハウジング2内のクランク室5には,駆動軸6がフロントハウジング2及びシリンダブロック1の軸心孔1aに嵌挿され軸封装置6a,ラジアル軸受6b,6cを介して回転可能に支承されている。この駆動軸6上にはフロントハウジング2との間にスラスト軸受7aを介してロータ7が固着され,該ロータ7の後面側に延出した支持アーム8の先端部には長孔8aが貫設されている。そして,該長孔8aにはピン8bが摺動可能に嵌入されており,同ピン8bには斜板9が傾動可能に連結されている。」(段落【0011】)・「ロータ7の後端に隣接して駆動軸6上にはスリーブ10が遊嵌され,コイルばね11により常にロータ7側へ付勢されるとともに,スリーブ10の左右両側に突設された枢軸10a(一方のみ図示)が斜板9の図示しない係合孔に嵌入されて,該斜板9は枢軸10aの周りを揺動しうるように支持されている。斜板9の後面側にはスラスト軸受9a等を介して揺動板12が相対回転可能に支持され,かつ外縁部に設けた案内部12aが通しボルト16と係合することにより自転が拘束 されるとともに,シリンダブロック1に貫設されたボア1b内のピストン15と該揺動板12とはコンロッド14により連節されている。」(段落【0 が通しボルト16と係合することにより自転が拘束 されるとともに,シリンダブロック1に貫設されたボア1b内のピストン15と該揺動板12とはコンロッド14により連節されている。」(段落【0012】)・「さらに,リアハウジング4には内周側に弁板3の中央孔3aを介してシリンダブロック1の軸心孔1aと連通する吸入室17が形成されており,吸入室17はリア側端面中央に開口し冷媒を導入する冷媒導入孔13aにより冷凍回路と接続されている。また,弁板3には,図2に示すように,中央孔3aから放射状に延在し各ボア1bの頂部と導通する吸入ポート21が設けられている。そして,図1に示すように,軸心孔1a内に延出した駆動軸6の後端には,軸心孔1a及び中央孔3aと滑合する円柱状の回転弁22がキー23により装着されており,回転弁22のリア側は,吸入室17の隔壁に形成された段部にスラスト軸受24を介して支持されている。この回転弁22には,図3及び図4に示すように,吸入室17側の軸心中央から径方向に屈曲貫通する円孔25aと,該円孔25aに連なって外周面の約半周部分にわたって延在する溝部25bとによって吸入通路25が形成されており,この溝部25bが吸入行程にある各ボア1bの吸入ポート21と対向する間,吸入通路25を介して吸入室17と吸入ポート21とが連通するようになされている。また,リアハウジング4の吸入室17の外周側には冷媒導出孔13bが開口する環状の吐出室18が隔設されており,この吐出室18は,弁板3の吐出ポート18a及び吐出弁18bを介して各ボア1bと連通している。したがって,駆動軸4の回転運動が斜板9を介して揺動板12の前後揺動に変換され,ピストン15がボア1b内を往復動することにより吸入室17からボア1b内へ吸入された冷媒が圧縮されつつ吐出室 している。したがって,駆動軸4の回転運動が斜板9を介して揺動板12の前後揺動に変換され,ピストン15がボア1b内を往復動することにより吸入室17からボア1b内へ吸入された冷媒が圧縮されつつ吐出室18へ吐出される。そして,クランク室5内の圧力とボア1b内の吸入圧力とのピストン15 を介した差圧に応じてピストン15のストロークが変動し,揺動板12の傾角が変化する。なお,クランク室5内の圧力はリアハウジング4の後端突出部内に配設された図示しない電磁制御弁機構により冷房負荷に基づいて制御される。」(段落【0013】)・「以上のように構成された揺動斜板式圧縮機は,車両空調用冷凍装置としてその回路中に配設され,使用に供される。この揺動斜板式圧縮機が運転されて駆動軸6が回転すると,斜板9は駆動軸6とともに回転しつつ揺動運動する。揺動板12は斜板9に対して回転規制状態とされて揺動運動のみを行い,これによりピストン15がボア1b内で往復動する。そして,ボア1b内でピストン15が下死点に向かって移動を開始して吸入行程に入ると,駆動軸6と同期して回転する回転弁22の吸入通路25の溝部25b先端側がそのボア1bの吸入ポート21と対向し,吸入通路25を介して吸入室17と吸入ポート21とが連通する。これにより,吸入室17からそのボア1bに冷媒が吸入される。その後,ボア1b内のピストン15が下死点に到達すると,回転弁22の回転に伴って吸入通路25の溝部25b後端側が吸入ポート21を通過し,吸入室17と吸入ポート21とが遮断される。そして,ピストン15が上死点に向かって移動を開始すると,冷媒が圧縮されそのボア1b内の圧力が高圧になるのに伴って吐出弁18bがリテーナ20に規制されて開弁し,その冷媒は吐出ポート18aから吐出室18へ吐出される。この 上死点に向かって移動を開始すると,冷媒が圧縮されそのボア1b内の圧力が高圧になるのに伴って吐出弁18bがリテーナ20に規制されて開弁し,その冷媒は吐出ポート18aから吐出室18へ吐出される。このように回転弁22が駆動軸6と同期して回転することにより,各ボア1b内では冷媒を吸入室17から吸入し,圧縮し,吐出室18へ吐出する動作が繰り返し行われる。」(段落【0014】)・「したがって,この揺動斜板式圧縮機では,振動・異音の発生を防止するとともに充分な性能を発揮することができる。 (変形例1)図5に示すように,上記のような回転弁22を用いることにより,吐出ポート18aをボア1bの中央に位置させて形成することが可能となる。これにより,ピストン15のヘッド部に吐出ポート18aと符合する突起15aを設けることによって,デッドスペースに残留する冷媒の量を減少させ,体積効率を向上させることができる。 (変形例2)図6に示すように,上記実施例において弁板3に設けられている吸入ポート21は,シリンダブロック1に設けてもよい。この場合には,吸入ポート21の長さを短くすることができるため,吸入ポート21内に残留する圧縮冷媒の量を減少させ,体積効率を向上させることができる。 (変形例3)図7に本変形例の要部の断面図を示す。本変形例は,駆動軸6の先端部近傍に形成されたフランジ部61と回転弁22との間にばね26を介装し,このばね26によって回転弁22をリア側方向に常時付勢するようにしたものである。これにより回転弁22の軸方向の組付寸法精度が緩和され,同時に回転弁22のがたつき,異常摩耗,焼付等の発生が防止される。 (変形例4)図8に示すように,駆動軸6とシリンダブロック1との間にラジアル軸受63を介装させ,そのラジアル軸受63によってば れ,同時に回転弁22のがたつき,異常摩耗,焼付等の発生が防止される。 (変形例4)図8に示すように,駆動軸6とシリンダブロック1との間にラジアル軸受63を介装させ,そのラジアル軸受63によってばね26の一端を支持するようにすれば,駆動軸6にフランジ部を形成する必要がないため,組付け性が良好となる。 (変形例5)図9に示すように,シリンダブロック1の軸心孔1aに張出部1cを設け,その張出部1cに支持されるスラスト軸受65によってばね25の一端を支持するようにしても,変形例4と同様に組付け性が良好となる。 (変形例6)図10は本変形例に係る揺動斜板式圧縮機の要部を示す 断面図であり,図11は回転弁の斜視図であり,図12はリアハウジングの斜視図である。」(段落【0016】)(ウ) 図面・図1・図3・図4 ・図6 イまた,上記記載事項及び図面の記載内容からすれば,乙4公報には,次の事項も記載されているものということができる。 (ア) シリンダブロック1における駆動軸6の周囲に5個のボア1bが配列されていること。 (イ) 駆動軸6の回転により斜板9を介してピストン15が往復動すること。 (ウ) 吸入ポート21は,ボア1bに連通しており,かつ回転弁22の回転に伴って吸入通路25との連通と遮断を繰り返すこと。 (エ) 吸入通路25の溝部25bは,回転弁22の外周面上にあること。 (オ) シリンダブロック1に吸入ポート21を配置した場合,吸入ポート21の入口は,軸心孔1aの内周面上にあること。 ウ以上の記載によれば,乙4公報には,以下の乙4発明が開示されているものと認められる。 「シリンダブロック1における駆動軸6の周囲に配列された5個のボア1b内にピストン15を収容し,前記駆動軸6 ウ以上の記載によれば,乙4公報には,以下の乙4発明が開示されているものと認められる。 「シリンダブロック1における駆動軸6の周囲に配列された5個のボア1b内にピストン15を収容し,前記駆動軸6の回転により斜板9を介して前記ピストン15を往復動させ,前記駆動軸6の後端に装着されているとともに,前記ピストン15によって前記ボア1b内の区画される空間に冷媒を導入するための吸入通路25を有する回転弁22を備えた揺動斜板式圧縮機において,前記ボア1bに連通し,かつ前記回転弁22の回転に伴って前記吸入通路25との連通と遮断を繰り返す吸入ポート21を有し,前記シリンダブロック1は,前記回転弁22を滑合可能に収容する軸 心孔1aを有し,前記吸入通路25の溝部25bは,前記回転弁22の外周面上にあり,前記吸入ポート21の入口は,前記軸心孔1aの内周面上にあり,前記ピストン15を収容するボア1bに対応する回転弁22が駆動軸6と同期して回転する揺動斜板式圧縮機における冷媒吸入構造。」(2) 相違点に係る構成の容易想到性前記5において論じたとおり,乙19発明は前記5(2)のとおりであるものと認められ,これと本件発明とは前記5(3)イの相違点1-1及び相違点1-2の点で相違しているものと認められる。そこで,以下,これらの相違点について検討する。 ア相違点1-1乙19発明と乙4発明とは,ピストン型斜板式圧縮機という同一の技術分野に属している。そして,乙19公報には「例えば特開平5-126039号公報〔判決注:乙4公報〕に開示されているように,回転軸16のラジアルベアリングと対応する部分にロータリバルブを配設した圧縮機において,そのロータリバルブ上に反力付与構造39を配設すること。」(段落【0049】)と記載さ に開示されているように,回転軸16のラジアルベアリングと対応する部分にロータリバルブを配設した圧縮機において,そのロータリバルブ上に反力付与構造39を配設すること。」(段落【0049】)と記載されているのであって,乙19公報に記載された実施例に乙4公報に記載された実施例を組み合わせることにつき,教示が存在する。 したがって,当業者であれば,乙19発明において,乙19発明の「吸入弁機構35」に代えて,乙4発明の「回転弁22」を「回転軸16」の「ラジアルベアリング17,18」の部分に設けることは,容易に想到し得るものというべきである。 イ相違点1-2(ア) 本件発明の「圧縮反力伝達手段」は,①吐出行程にあるシリンダボア内のピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達して,吐出行程 にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢するという機能を有するものであって,②その一部に,シリンダブロックの端面に形成された相対的に径の小さな環状の突条とカム体の端面に形成された相対的に径の大きな環状の突条とに当接するスラスト軸受手段という構成のものを含むものである。 (イ) まず,上記アに従い,乙19発明の「ラジアルベアリング17,18」の部分に乙4発明の「回転弁22」を適用したものと,上記(ア)記載の①の機能との関係について検討する。 乙19発明に乙4発明の「回転弁22」を適用したものにおいて,「少なくとも斜板27を含む手段」は,圧縮反力を「軸支部38」に伝え,その結果,「軸支孔37の内周壁に対して前記回転軸16上の大径の軸支部38を圧接する」ものであり,また,回転弁(ロータリバルブ)は「ラジアルベアリング17,18」を構成する「軸支部38」を設けられるものであるから,結局,当該「少なくとも斜 回転軸16上の大径の軸支部38を圧接する」ものであり,また,回転弁(ロータリバルブ)は「ラジアルベアリング17,18」を構成する「軸支部38」を設けられるものであるから,結局,当該「少なくとも斜板27を含む手段」は,圧縮反力を回転弁(ロータリバルブ)に伝達し,回転弁(ロータリバルブ)を圧接(付勢)する作用を有するものである。 そうすると,乙19発明に乙4発明の「回転弁22」を適用したものにおいて,前記「少なくとも斜板27を含む手段」は,本件発明の上記①と同様の機能を有するものであり,本件発明の「圧縮反力伝達手段」と同様の機能を有するものであるといえる。 (ウ) さらに,乙19発明に乙4発明の「回転弁22」を適用したものが,上記②の構成を備えるか否かについて検討する。 乙19発明に乙4発明の「回転弁22」を適用したものは,シリンダブロックの端面に形成された相対的に径の小さな環状の突条とカム体の端面に形成された相対的に径の大きな環状の突条とに当接するスラスト軸受手段という構成も含むものであるから,上記②の構成と同様の構成 を有しているといえ,また,これらの環状の突条は,圧縮反力を伝達する作用を自ずと備えるものであるから,「圧縮反力伝達手段」の一部を構成しているものであるといえる。 (エ) したがって,当業者であれば,乙19発明に乙4発明の「回転弁22」を適用して相違点1-2に係る本件発明の構成とすることは,容易に相当し得るものということができる。 ウ以上によれば,乙19発明において,相違点1-1及び相違点1-2に係る本件発明の構成を採用することは,当業者が乙4発明の「回転弁22」を適用することにより容易になし得たものということができる。 (3) 原告の主張に対する判断ア 「付勢」について(ア) この点に関 発明の構成を採用することは,当業者が乙4発明の「回転弁22」を適用することにより容易になし得たものということができる。 (3) 原告の主張に対する判断ア 「付勢」について(ア) この点に関して原告は,一致点及び相違点の認定(前記5(3))につき,乙19発明においては,圧縮反力に基づいて回転軸16に作用する「圧縮反力のラジアル方向の分力P2」は「反力付与構造39による反対方向の力」により相殺されているのであるから,本件発明の「圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」を開示するものではないと主張する。 (イ) そこで,まず乙19発明の「圧接」について検討すると,乙19発明は,「軸支部38」を「圧接」するものではあるが,「ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向の力を,前記回転軸16に対して付与する反力付与構造39」を備えたものであり,乙19公報の段落【0035】の記載によれば,この「反力付与構造39」により「回転軸16に作用するラジアル方向の力P2が相殺される」ものである。しかし,それに続く段落【0036】の「回転軸16が後方のラジアルベアリング18に強く圧 接されることはなく,そのベアリング18には大きな負荷が加わらないので,本実施例のように,そのラジアルベアリング18として安価な滑り軸受けを使用しても,回転軸16の円滑な回転に支障は生じない。」との記載を踏まえれば,当該「反力付与構造39」は,ラジアル方向の力P2(軸支部38に伝達される圧縮反力に起因する力)を「相殺」するとはいっても完全に打ち消すものではなく,回転軸16の円滑な回転に支障が生じない えれば,当該「反力付与構造39」は,ラジアル方向の力P2(軸支部38に伝達される圧縮反力に起因する力)を「相殺」するとはいっても完全に打ち消すものではなく,回転軸16の円滑な回転に支障が生じない程度まで低減するものにすぎないということができる。 したがって,乙19発明は,「反力付与構造39」を有するものではあるが,「軸支部38」を零ではない力で押し付けるものであるといえる。 この点に関して原告は,「相殺」とは「互いに差し引いて損得なしにすること」(広辞苑)との意味であるから,乙19発明は「反力付与構造39による反対方向の力」を「圧縮反力のラジアル方向の分力P2」と同じ大きさとし,その効果を完全になくす技術思想が開示されている旨主張する。しかし,「相殺」には「相反するものが互いに影響し合って,その効果などが差し引きされること」(大辞林第三版1448頁)という意味もあるのであって,その相反する範囲において効果が差し引きされれば足り,必ずしも効果を完全になくすことを意味するとはいえない。 (ウ) 次に,本件発明の「付勢」が意味する内容について検討するに,前記1(2)のとおり,本件発明は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを「付勢」し,ロータリバルブの外周面を吸入通路の入口に近づけることによって,圧縮室内の冷媒を吸入通路から「洩れ難く」する効果を奏するものであって,その漏出を完全に阻止するものではない。現に,本件明細書等の段落【0067】には,「第1及び第2の実施の形態では,ロータリバルブがバルブ収容室の内周面に押接されるものとしたが,両者を接触させるのではなく, クリアランスを減少させることで洩れを防止するように構成してもよい。」と記載されており,「付勢」として,ロータリバルブをバル 内周面に押接されるものとしたが,両者を接触させるのではなく, クリアランスを減少させることで洩れを防止するように構成してもよい。」と記載されており,「付勢」として,ロータリバルブをバルブ収容室の内周面に「押接」しなくても,クリアランスを減少させることで漏れを防止することも含まれるものである(前記3(2)エ参照)。 (エ) 以上によると,乙19発明の「圧接」は,本件発明の「付勢」に相当するものというべきであり,本件発明と乙19発明とは「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を回転軸に伝達して,軸孔の内周面に向けて前記回転軸を付勢する手段」を有する点で一致する。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,原告は,一致点及び相違点の認定(前記5(3))につき,乙4公報の往復動型圧縮機は,駆動軸6がスラスト軸受7aを介して支持されているものの(段落【0011】),同公報の図1から明らかなように,スラスト軸受7aはスラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段ではなく,したがって本件発明の構成要件Fは開示されていないなどと主張する。 しかし,乙19公報の図4には,斜板27の前後にスラスト軸受を配設し,当該スラスト軸受を,シリンダブロックの端面に形成された環状の突条とこれより大径のカム体の端面に形成された環状の突条とで挟む構成が図示されている。そうすると,乙19発明においては,スラスト軸受手段が,シリンダブロックの端面に形成された環状の突条とこれより大径のカム体の端面に形成された環状の突条とで挟む構成を有するのであって,このような構成のスラスト軸受がスラスト荷重を吸収する機能を有することは明らかである(本件明細書等【0010】,【0023】参照)。そうすると,乙4公報に記載 の突条とで挟む構成を有するのであって,このような構成のスラスト軸受がスラスト荷重を吸収する機能を有することは明らかである(本件明細書等【0010】,【0023】参照)。そうすると,乙4公報に記載されたスラスト軸受7aがスラスト荷重吸収機能を付与されたスラスト軸受手段ではないとしても, その点は,乙19発明に乙4発明を適用した場合の容易想到性の判断に影響しないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 小括以上によれば,本件発明は,乙19公報及び乙4公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,訂正前の本件発明は進歩性を欠き,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本件発明に係る特許は,特許法123条1項2号の規定により無効になるものと認められる(もっとも,後記9において説示するとおり,本件訂正により上記無効理由は解消されたものというべきである。)。 7 争点(2)ウ(〔無効理由3〕乙21発明並びに周知技術及び慣用技術による進歩性欠如)について(1) 乙21公報の内容ア本件特許の優先日よりも前に公開された乙21公報には,次の記載がある。 (ア) 請求項1「複数個のシリンダが形成されたシリンダブロックと,前記シリンダ内に挿入された複数個のピストンと,前記シリンダブロック内に形成された斜板室と,前記斜板室に延びている回転軸と,前記回転軸に取り付けられて共に回転することにより前記複数個のピストンを往復運動させる斜板と,からなる斜板型圧縮機において,前記シリンダブロック内において前記回転軸を支持する軸受がジャーナル軸受であって,前記シリンダブロック内に取り付けられる滑り軸受とそれによって支持さ せる斜板と,からなる斜板型圧縮機において,前記シリンダブロック内において前記回転軸を支持する軸受がジャーナル軸受であって,前記シリンダブロック内に取り付けられる滑り軸受とそれによって支持される前記回転軸の一部としてのジャーナル部とから構成されており, 前記回転軸は少なくとも一部が中空であって,それによって前記回転軸の内部に圧縮すべき流体を導く吸入通路が形成されていると共に,それと接続する半径方向の吸入通路が少なくとも1個形成されており,前記滑り軸受及び前記シリンダブロックには,前記回転軸の回転位置に応じて前記回転軸の前記半径方向の吸入通路と連通して,前記複数個のシリンダに順次圧縮すべき流体を吸入させる吸入ポートが形成されていることを特徴とする,前記斜板型圧縮機。」(イ) 産業上の利用分野・「本発明は,例えば自動車用空調装置の冷媒圧縮機として使用することができる斜板型圧縮機に係り,特にその吸入弁と軸受部に関するものである。」(段落【0001】)(ウ) 発明が解決しようとする課題・「通常のロータリバルブを吸入弁として使用する先行技術によれば,リード弁を用いる場合に比して吸入弁の吸入抵抗(圧力損失)を低減させ得るので,体積効率を5%程度向上させることができるが,その反面,先行技術による斜板型圧縮機においては,ニードルベアリングのような転がり軸受であるラジアル軸受によって支持されている回転軸と,回転軸に取り付けられたロータリバルブを摺動回転可能に受け入れているハウジング側のバルブシリンダとの間には,各部品の製作上の加工誤差(公差)や,転がり軸受の作動に必要な遊隙等によって相当大きな心ずれが存在し,構造上その心ずれ量を少なくすることが難しいのと,例えば斜板型圧縮機のような場合には,斜板に作用する圧縮 作上の加工誤差(公差)や,転がり軸受の作動に必要な遊隙等によって相当大きな心ずれが存在し,構造上その心ずれ量を少なくすることが難しいのと,例えば斜板型圧縮機のような場合には,斜板に作用する圧縮反力が回転軸の回りに均等に作用しないで一方に偏っていること等から,ロータリバルブのローターとバルブシリンダとの間のクリアランスが大きくなりやすく,それによってシリンダブロックに設けられた幾つかの吸入ポートのうちで,圧縮行程において閉塞されるべき ものが完全に閉塞されないために,それらの吸入ポートの周囲からロータリバルブの外周を通じて圧縮された冷媒等の流体が漏洩し,それによって圧縮機の作動効率が低下するという別の問題が生じる。」(段落【0004】)・「また,通常の構造のロータリバルブを斜板型圧縮機の吸入弁として使用した場合には,ロータリバルブはリード弁に比べてどうしても大型になるし,設置位置が回転軸の周囲に限られることから,ロータリバルブの弁開口の閉塞面から下流側の各シリンダの作動室までの圧縮されるべき流体の通路の容積,従って,有効な圧縮作用をしない空間の容積(デッドボリューム)が,各ピストンの限られた行程体積に対して相対的に大きくなりやすく,それによって圧縮機の体積効率が低下するという問題もある。」(段落【0005】)・「本発明は,従来技術や,それを改良するために考えられて来た先行技術における上記のような多くの問題点を改善し,弁部分における流体の抵抗や漏洩が少なくて作動効率が高い上に,作動室の上流側のデッドボリュームが小さくて体積効率も十分に高い小型の圧縮機を,それも比較的安価に製作可能とすることを発明の解決課題としている。」(段落【0006】)(エ) 課題を解決するための手段・「本発明は,複数個のシリンダが形成 積効率も十分に高い小型の圧縮機を,それも比較的安価に製作可能とすることを発明の解決課題としている。」(段落【0006】)(エ) 課題を解決するための手段・「本発明は,複数個のシリンダが形成されたシリンダブロックと,前記シリンダ内に挿入された複数個のピストンと,前記シリンダブロック内に形成された斜板室と,前記斜板室に延びている回転軸と,前記回転軸に取り付けられて共に回転することにより前記複数個のピストンを往復運動させる斜板と,からなる斜板型圧縮機において,前記シリンダブロック内において前記回転軸を支持する軸受がジャーナル軸受であって,前記シリンダブロック内に取り付けられる滑り軸受とそ れによって支持される前記回転軸の一部としてのジャーナル部とから構成されており,前記回転軸は少なくとも一部が中空であって,それによって前記回転軸の内部に圧縮すべき流体を導く吸入通路が形成されていると共に,それと接続する半径方向の吸入通路が少なくとも1個形成されており,前記滑り軸受及び前記シリンダブロックには,前記回転軸の回転位置に応じて前記回転軸の前記半径方向の吸入通路と連通して,前記複数個のシリンダに順次圧縮すべき流体を吸入させる吸入ポートが形成されていることを特徴とする。」(段落【0007】)(オ) 作用・「回転軸を支持する軸受がジャーナル軸受であり,それが単にシリンダブロック内に設けられた滑り軸受と,回転軸の一部であるジャーナル部によって構成される簡単な構造であるだけでなく,そのジャーナル軸受の構成部材自体に半径方向の吸入通路や吸入ポートを形成して,各シリンダに対して圧縮すべき流体を吸入させるための吸入弁を構成しているため,軸受構造と吸入弁の構造が簡単になるだけでなく,滑り軸受の円筒内面の仕上げ加工が容易に行われて,ジ 吸入ポートを形成して,各シリンダに対して圧縮すべき流体を吸入させるための吸入弁を構成しているため,軸受構造と吸入弁の構造が簡単になるだけでなく,滑り軸受の円筒内面の仕上げ加工が容易に行われて,ジャーナル部とのクリアランスをきわめて小さくすることが可能になり,圧縮された流体が吸入弁から漏洩することがない。言うまでもなくこのようにして構成された吸入弁は,所定の圧力差によって開弁するリード弁と異なって圧力損失が少ないから,圧縮機の効率が向上する。」(段落【0009】)(カ) 実施例・「図1及び図2に示す本発明の第1実施例を示す斜板型圧縮機において,斜板型圧縮機1の本体は,中央のシリンダブロック2と,その左側にバルブプレート3を挟んで締結されたフロントハウジング4と, 右側にバルブプレート5を挟んで締結されたリヤハウジング6とからなっている。シリンダブロック2は更にフロント側のシリンダブロック2aとリヤ側のシリンダブロック2bとの2つの部分に分かれている。そして,シリンダブロック2a及び2b,バルブプレート3及び5,フロントハウジング4及びリヤハウジング6を一体的に締結する手段として,5本(図2参照)の通しボルト7が用いられる。」(段落【0010】)・「フロント側のシリンダブロック2aには,中心のまわりの均等な位置に5個のシリンダ12a~12e(図1に12aのみを示す)が互いに平行となるように穿設されており,それらに対応してリヤ側のシリンダブロック2bにも,5個のシリンダ13a~13e(図2参照)が同様に穿設されている。フロントハウジング4内の外周部には環状の吐出室14が形成され,また,フロント側と略同様にリヤハウジング6内の外周部にも環状の吐出室15が形成されている。更に,リヤハウジング6の中央部分には,隔壁 フロントハウジング4内の外周部には環状の吐出室14が形成され,また,フロント側と略同様にリヤハウジング6内の外周部にも環状の吐出室15が形成されている。更に,リヤハウジング6の中央部分には,隔壁によって吐出室14と区画された吸入室16が形成されている。吸入室16は入口17を備えており,それに接続される図示しない吸入配管によって,例えば空調装置の冷凍回路に設けられた蒸発器から戻って来る低温低圧の冷媒のような,圧縮すべき流体を受け入れるようになっている。」(段落【0011】)・「フロント側のバルブプレート3には,シリンダ12a~12eの内部に形成されて拡縮する作動室と,環状で共通の吐出室14とを連通し得る吐出口18a~18e(図1に18aのみを示す)が開口しており,それらの吐出口の下流側の面は,薄いばね板からなるリード状の吐出弁によって閉塞されている。なお,図中19は,吐出口18a~18eに設けられる吐出弁の開弁角度を制限して吐出弁のリードを 保護するための,所謂弁おさえの1つを例示している。」(段落【0012】)・「リヤ側のバルブプレート5にも同様に吐出口21a~21e(図1に21aのみを示す)が開口しており,それぞれシリンダ13a~13eの内部の作動室を環状で共通の吐出室15に連通させることができる。フロント側と同様に,各吐出口21a~21eの下流側の面にもそれぞれ図示しないリード状の吐出弁が設けられる。なお,22はそれらの吐出弁の弁おさえの1つを例示している。そして,リヤ側の吐出室15は図示しない管路によってフロント側の吐出室14と連通しており,それらの吐出室から送り出される高圧の冷媒は,合流して図示しない冷凍サイクルの凝縮器へ流れるようになっている。」(段落【0013】)・「シリンダブロック2の内部 ト側の吐出室14と連通しており,それらの吐出室から送り出される高圧の冷媒は,合流して図示しない冷凍サイクルの凝縮器へ流れるようになっている。」(段落【0013】)・「シリンダブロック2の内部に形成された斜板室23には,図1において左側から回転軸24が伸びており,図示しない車両の内燃機関から電磁クラッチのような伝動装置を介して回転駆動される。回転軸24は,斜板室23の前後を後に詳細に説明する一対のジャーナル軸受25及び26によって半径方向に支持されている。斜板室23内において,回転軸24には楕円形の斜板27が適当な手段によって一体的に取り付けられており,斜板27を駆動することによって回転軸24に発生する反力としての軸方向荷重は,斜板27の両側に設けられた一対のスラスト軸受28及び29によって支持される。」(段落【0014】)・「回転軸24と平行にシリンダブロック2内に穿設されているフロント側のシリンダ12a~12eと,それらに対向するリヤ側のシリンダ13a~13eとの各対には,それぞれ両頭のピストン30a~30eが軸方向に往復摺動可能に挿入されており,それらの両端の頭部 を接続するピストンロッドの中心部分に形成された溝の両側には,例えば球形の窪み31が設けられていて,窪み31にはそれと同径の球の一部をなす一対の耐摩耗性シュー32が挿入され,それらのシュー32の間に前述の斜板27の周縁部を摺動可能に挟んでいる。」(段落【0015】)・「シリンダブロック2内において回転軸24を支持しているジャーナル軸受25及び26は,主として,フロント側のシリンダブロック2a及びリヤ側のシリンダブロック2bのそれぞれの中心に同軸的に穿孔された内径が回転軸24の外径よりも例えば2~4mm程度大きい貫通穴33及び34の中に,打ち 主として,フロント側のシリンダブロック2a及びリヤ側のシリンダブロック2bのそれぞれの中心に同軸的に穿孔された内径が回転軸24の外径よりも例えば2~4mm程度大きい貫通穴33及び34の中に,打ち込み等の方法で一体的に固定されている比較的薄肉の滑り軸受35及び36と,それらの滑り軸受35及び36によって摺動回転可能に支持されている回転軸24自体の円筒面の一部であるジャーナル部24a及び24bとからなっている。滑り軸受35及び36は,例えば金属ベースの上にフッ素樹脂等を積層したもので,貫通穴33及び34の中に打ち込んで一体化したのち,内径を精密加工して,それに対応する回転軸24のジャーナル部24a及び24bの外径にきわめて近い内径となるように高精度に仕上げる。」(段落【0016】)・「回転軸24の一部は中空になっていて,図1の右側から軸方向に吸入通路37が形成されており,右端において吸入室16に連通している。ジャーナル軸受25のジャーナル部24aの左端寄りの位置には,吸入通路37に接続して,回転軸24の軸心に対して円周方向に例えば130°程度に開く扇形の開口である1個の吸入通路38が半径方向に形成される。また,ジャーナル軸受26のジャーナル部24bの右端寄りの位置には,吸入通路37に接続して,回転軸24の軸心に対して円周方向にやはり130°程度に開く(図2参照)扇形の開口 である1個の吸入通路39が,吸入通路38とは180度の位相差を有するように半径方向に形成される。」(段落【0017】)・「フロント側のジャーナル軸受25には,回転軸24のジャーナル部24aに形成されている半径方向の吸入通路38に対して,回転軸24がそれぞれ所定の回転位置(角度)にあるときに連通して,冷媒を吸入通路37からフロント側の5つのシリン には,回転軸24のジャーナル部24aに形成されている半径方向の吸入通路38に対して,回転軸24がそれぞれ所定の回転位置(角度)にあるときに連通して,冷媒を吸入通路37からフロント側の5つのシリンダ12a~12eのそれぞれに吸入させる半径方向の吸入ポート40a~40e(図1に40aのみを示す)が形成される。また,リヤ側のジャーナル軸受26にも同様に,ジャーナル部24bに形成された半径方向の吸入通路39に対して,回転軸24がそれぞれ所定の回転位置にあるときに連通して,冷媒を吸入通路37からリヤ側の5つのシリンダ13a~13eのそれぞれに吸入させる半径方向の吸入ポート41a~41e(図2参照)が形成される。」(段落【0018】)・「本発明の第1実施例による斜板型圧縮機1はこのように構成されているので,回転軸24が自動車の内燃機関等によって回転駆動されると,斜板27の運動の揺動成分によって両頭のピストン30a~30eがそれぞれのシリンダ内で往復運動を行い,フロント側及びリヤ側の各シリンダ内の作動室は拡縮を繰り返す。それと同時に,フロント側のジャーナル軸受25及びリヤ側のジャーナル軸受26の内部においては,回転軸24のジャーナル部24a及び24bに形成された半径方向の吸入通路38及び39が回転することによって,フロント側の扇形の吸入通路38が,シリンダ12a~12eのうちで,そのときに吸入行程に入ったものに対応している吸入ポート40a~40eに順次連通して行くと共に,リヤ側の扇形の吸入通路39が,シリンダ13a~13eのうちで,そのときに吸入行程に入ったものに対応している吸入ポート41a~41eに順次連通して行くことになる。 この連通関係はどのシリンダについても,それが吸入行程にある間は継続するように,半径方向の吸入通路 行程に入ったものに対応している吸入ポート41a~41eに順次連通して行くことになる。 この連通関係はどのシリンダについても,それが吸入行程にある間は継続するように,半径方向の吸入通路38及び39の扇形に開く角度(図2参照)が設定されている。」(段落【0019】)・「本発明の第1実施例において,バルブ部分を有するジャーナル軸受25及び26のクリアランスから冷媒の漏洩が起こらない理由は,ジャーナル軸受25及び26を構成する滑り軸受35及び36の円筒内面の精密な仕上げ加工によって,回転軸24のジャーナル部24a及び24bとのクリアランスをきわめて小さくすることができた結果であって,このような滑り軸受35及び36の円筒内面と回転軸24のジャーナル部24a及び24bの円筒面の高精度の仕上げ加工と,微小なクリアランスの維持は,ジャーナル軸受25及び26がきわめて単純な構造であり,滑り軸受35及び36がシリンダ12a~12e及び13a~13eと平行に配置されることから初めて可能となったものである。従って,ジャーナル軸受25及び26自体に,半径方向の吸入通路38及び39や吸入ポート40a~40e及び41a~41eを穿設することによって形成された吸入弁は,リード弁のような吸入抵抗を生じないだけでなく,締切りが完全で,圧縮行程にあるシリンダからの流体の漏洩を許さない。」(段落【0021】)・「更に,先行技術による斜板型圧縮機42においては,比較的大径となるロータリバルブ47及び48の外周面と,それに摺動接触するバルブシリンダ45及び46の内周面との間の相対的な周速が大きくなるので,ロータリバルブ47及び48の外周面にフッ素樹脂等のコーティングを施すことが必要であり,その表面を仕上げるための加工も必要になるので,それらが工数の増加 内周面との間の相対的な周速が大きくなるので,ロータリバルブ47及び48の外周面にフッ素樹脂等のコーティングを施すことが必要であり,その表面を仕上げるための加工も必要になるので,それらが工数の増加とコストを上昇させる原因になる。また,ロータリバルブ47及び48に設ける扇形の弁開口51及び52の位置は,回転軸24に対する斜板27の圧入位置によって決 まるが,ロータリバルブ47及び48は何らかの抜け止め及び回り止め手段によって回転軸24上に軸方向にも回転方向にも固定する必要があり,ロータリバルブ47及び48の位置決め及び固定にはかなりの工数を要する。」(段落【0027】)・「これに対して,本発明の第1実施例による斜板型圧縮機1においては,回転軸24の支持をジャーナル軸受25及び26によって行い,それ自体に吸入弁を併設するので,軸受兼吸入弁の摺動回転する部分のクリアランスを大幅に小さくすることが可能になり,吸入弁の締切りを改善することができると共に,構造をきわめて簡素化し,加工を容易にすることができる。その結果,フロント側のシリンダブロック2aとリヤ側のシリンダブロック2bを組み合わせて,対になっているシリンダ12a~12e及び13a~13eをボーリング加工する際に,同時に滑り軸受35及び36の円筒内面の仕上げ加工を行うことが可能になって,回転軸24を挿入する際のクリアランスの大きさは考え得る最小限の値とすることができる。更に,回転軸24自体に吸入弁を構成する半径方向の吸入通路38及び39を形成するため,先行技術におけるロータリバルブ47及び48のように位置決めや固定手段の設置の必要がなくなり,これも構成の簡素化とコストの低減という好ましい結果をもたらす。」(段落【0028】)(キ) 図面 ・図1 バルブ47及び48のように位置決めや固定手段の設置の必要がなくなり,これも構成の簡素化とコストの低減という好ましい結果をもたらす。」(段落【0028】)(キ) 図面 ・図1・図2 イまた,上記記載事項及び図面の記載内容からすれば,乙21公報には,次の事項も記載されているものということができる。 (ア) ジャーナル部24a,24bの外周面は吸入通路38,39の出口を除いて円筒形状とされていること(図1,図2)(イ) ジャーナル部24a,24bの各吸入通路38,39は回転軸24内に形成された通路を介して連通していること(請求項1,段落【000 7】,【0017】)(2) 乙21発明上記(1)の記載によれば,乙21公報には,以下の乙21発明が開示されているものと認められる。 「シリンダブロック2における回転軸24の周囲に配列された複数のシリンダ12,13内にピストン30を収容し,回転軸24の回転に斜板27を介してピストン30を連動させ,回転軸24と一体化されていると共に,ピストン30によってシリンダ12,13内に区画される作動室に冷媒を導入するための吸入通路38,39を有するジャーナル部24a,24bを備えた斜板型圧縮機1において,シリンダ12,13に連通し,かつジャーナル部24a,24bの回転に伴って吸入通路38,39と間欠的に連通する吸入ポート40,41と,シリンダブロック2は貫通穴33及び34を有し,その貫通穴33及び34の中心に,ジャーナル部24a,24bを回転可能に収容する比較的薄肉の滑り軸受35,36が一体的に固定され,吸入通路38,39の出口は,ジャーナル部24a,24bの外周面上にあり,吸入ポート40,41の入口は,滑り軸受35,36の内周面上にあり, 比較的薄肉の滑り軸受35,36が一体的に固定され,吸入通路38,39の出口は,ジャーナル部24a,24bの外周面上にあり,吸入ポート40,41の入口は,滑り軸受35,36の内周面上にあり,滑り軸受35,36の内周面にジャーナル部24a,24bの外周面が摺動回転可能に支持されることによってジャーナル部24a,24bを介して回転軸24を支持するジャーナル軸受25,26を有し,ピストン30は両頭ピストンであり,両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダ12,13に対応する一対のジャーナル部24a,24bが回転軸24と一体的に回転し,斜板27は,前後一対のスラスト軸受28,29によって挟まれて回転軸24の軸線の方向の位置を規制されているピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。」(3) 本件発明と乙21発明との対比 上記(1)及び(2)によれば,本件発明と乙21発明の一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる。 ア一致点「シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させ,前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備えたピストン式圧縮機において,前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路を有し,前記シリンダブロックは,前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔を有し,前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段を有し,前記ピストンは両頭ピストンであ 可能に収容する軸孔を有し,前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段を有し,前記ピストンは両頭ピストンであり,前記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,前記カム体は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されているピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。」イ相違点(ア) 本件発明は,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」を有し,「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力 伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」ものであるのに対して,乙21発明は,「圧縮反力伝達手段」を有するか否かが明らかでなく,また,少なくとも一方のスラスト軸受手段が「前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接」するものであって,前記各突起が「前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」ものであるとの構成を有していない点(以下「相違点3-1」という。)。 (イ) 本件発明は,「前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによっ を有していない点(以下「相違点3-1」という。)。 (イ) 本件発明は,「前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,」との構成を有するのに対して,乙21発明は,ラジアル軸受手段が,「貫通穴33及び34」に一体的に固定された「滑り軸受35,36」と「ジャーナル部24a,24b」とからなるものである点(以下「相違点3-2」という。)。 (4) 相違点に係る構成の容易想到性事案に鑑み,相違点3-2について検討する。 ア上記(1)アの記載事項からすれば,乙21発明は,冷媒の漏洩を防止することを課題として,ロータリバルブとバブルシリンダのクリアランスを冷媒が漏れない程度にまで小さく製造するものであると認められる。 また,乙21発明において,回転軸を円滑に回転可能なものとすることは,当業者にとって自明の課題であるということができる。 イところで,乙21公報には,「課題を解決するための手段」として,「前記シリンダブロック内において前記回転軸を支持する軸受がジャーナル軸受であって,前記シリンダブロック内に取り付けられる滑り軸受とそれによって支持される前記回転軸の一部としてのジャーナル部とから構成されており」(段落【0007】)と記載され,「回転軸を支持する軸受がジャーナル軸受であり,それが単にシリンダブロック内に設けられた滑り軸受と,回転軸の一部であるジャーナル部によって構成される簡単な構造であるだけでなく,そのジャーナル軸受の構成部材自体に半径方向 がジャーナル軸受であり,それが単にシリンダブロック内に設けられた滑り軸受と,回転軸の一部であるジャーナル部によって構成される簡単な構造であるだけでなく,そのジャーナル軸受の構成部材自体に半径方向の吸入通路や吸入ポートを形成して,各シリンダに対して圧縮すべき流体を吸入させるための吸入弁を構成しているため,軸受構造と吸入弁の構造が簡単になるだけでなく,滑り軸受の円筒内面の仕上げ加工が容易に行われて,ジャーナル部とのクリアランスをきわめて小さくすることが可能になり,圧縮された流体が吸入弁から漏洩することがない。」(段落【0009】)と記載されている。 さらに,乙21公報には,ジャーナル軸受25及び26のクリアランスから冷媒の漏洩が起こらない理由に関して,「本発明の第1実施例において,バルブ部分を有するジャーナル軸受25及び26のクリアランスから冷媒の漏洩が起こらない理由は,ジャーナル軸受25及び26を構成する滑り軸受35及び36の円筒内面の精密な仕上げ加工によって,回転軸24のジャーナル部24a及び24bとのクリアランスをきわめて小さくすることができた結果であって,このような滑り軸受35及び36の円筒内面と回転軸24のジャーナル部24a及び24bの円筒面の高精度の仕上げ加工と,微小なクリアランスの維持は,ジャーナル軸受25及び26がきわめて単純な構造であり,滑り軸受35及び36がシリンダ12a~12e及び13a~13eと平行に配置されることから初めて可能となったものである。」(段落【0021】)と記載され ている。 そして,乙21公報には「滑り軸受35及び36は,例えば金属ベースの上にフッ素樹脂等を積層したもの」(段落【0016】)との記載があり,フッ素樹脂は低摩擦を実現するための素材として周知慣用されているもので 乙21公報には「滑り軸受35及び36は,例えば金属ベースの上にフッ素樹脂等を積層したもの」(段落【0016】)との記載があり,フッ素樹脂は低摩擦を実現するための素材として周知慣用されているものであることを踏まえれば,乙21発明における「滑り軸受35,36」は,回転抵抗低減のために設けられる部材であるということができる。 ウそうすると,乙21発明における「滑り軸受35,36」は,ロータリバルブとバブルシリンダのクリアランスを小さくすると増大する回転抵抗を低減するために設けられる部材であって,極めて小さなクリアランスと回転軸の円滑な回転とを同時に実現するという乙21発明の課題を解決するために,必須の構成であるというべきである。 したがって,乙21発明の課題を踏まえると,乙21発明を「滑り軸受35,36」を備えないものとすることは,当業者が想定し得ないということになる。 (5) 被告の主張に対する判断アこの点に関して被告は,乙21発明の作用効果は,回転軸を支持するラジアル軸受として転がり軸受に代えて滑り軸受構造を採用し,かつ,当該滑り軸受の位置に吸入ポートを設けたことによって得られるものであるから,乙21発明においては,回転軸のラジアル軸受に「滑り軸受構造」を採用することが課題解決に必要不可欠であったとしても,「滑り軸受部材」を採用することは課題解決に必要ではないと主張する。 しかし,上記(4)イにおいて引用したとおり,乙21公報は「滑り軸受35,36」(被告のいう「滑り軸受部材」)を採用したことにより乙21発明の効果が得られる旨を明らかにしている(段落【0016】及び【0021】)のであるから,「滑り軸受35,36」を採用するこ とが課題解決に必須であることは明らかである。 したがって,被告の上記主張は 旨を明らかにしている(段落【0016】及び【0021】)のであるから,「滑り軸受35,36」を採用するこ とが課題解決に必須であることは明らかである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イまた,被告は,回転軸をシリンダブロックにより直接支持する構成は周知であり,「滑り軸受部材」を使用するか否かは当業者が適宜選択できるものであると主張する。 しかし,ロータリバルブを備えたピストン式圧縮機において,回転軸をシリンダブロックにより直接支持する構成が周知であることの立証があるとはいえない上,上記(4)ウにおいて説示したとおり,乙21発明における「滑り軸受35,36」(滑り軸受部材)は乙21発明の課題を解決するために必須の構成というべきであって,このことは,回転軸をシリンダブロックにより直接支持する構成が周知であることに左右されるものではない。 したがって,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 ウさらに,被告は,乙21公報にいう「内径を精密加工して,それに対応する回転軸24のジャーナル部24a及び24bの外形にきわめて近い内径となるように高精度に仕上げる」(段落【0016】)ことによって得られる作用効果は,「滑り軸受35,36」を採用せずにシリンダブロックによる直接支持構造を採用した場合でも実現できるから,「滑り軸受け35,36」は課題解決に必要不可欠なものではない旨主張する。 しかし,「滑り軸受35,36」は,「内径を・・・高精度に仕上げる」ことのみを目的として採用されたものではなく,上記(4)ウにおいて説示したとおり,ロータリバルブとバブルシリンダのクリアランスを小さくすると増大する回転抵抗を低減するために設けられる部材であり,極めて小さなクリアランスと回転軸の のではなく,上記(4)ウにおいて説示したとおり,ロータリバルブとバブルシリンダのクリアランスを小さくすると増大する回転抵抗を低減するために設けられる部材であり,極めて小さなクリアランスと回転軸の円滑な回転とを同時に実現するた めに採用されたものであって,乙21発明の課題を解決するために必須の構成というべきである。 したがって,被告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。 エ最後に,被告は,①乙21公報の段落【0027】の記載によれば,回転軸の径を小さくすることによって,回転軸のジャーナル部24a及び24bの外周面と,それに摺動接触する「滑り軸受35,36」との間の相対的な周速を小さくすることができ,フッ素樹脂等の固体潤滑材のコーティングを施す必要がなくなることが示唆されているから,乙21発明において「滑り軸受35,36」のような部材を用いることは必須の構成ではない,②滑り軸受部材を用いない滑り軸受構造においても,フッ素樹脂等の固体潤滑剤のコーティングにより低摩擦を実現することは周知であるから,やはり乙21発明において「滑り軸受35,36」のような部材を用いることは必須の構成ではないなどと主張する。 しかし,回転軸の円滑な回転が,回転軸の径を小さくすることやフッ素樹脂等の固体潤滑剤のコーティングによって実現できるものであったとしても,乙21発明は,「滑り軸受35,36」を採用するという別個の手段でこれを実現したものであって,上記(4)ウにおいて説示したとおり,「滑り軸受35,36」は乙21発明の課題を解決するために必須の構成というべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (6) 小括以上によれば,その余の相違点について判断するまでもなく,争点(2)ウにおける被 するために必須の構成というべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (6) 小括以上によれば,その余の相違点について判断するまでもなく,争点(2)ウにおける被告の主張は理由がなく,本件発明は乙21発明並びに周知技術及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 8 争点(3)ア(本件訂正が訂正要件を充たしているか)について前記5ないし7において説示したとおり,本件発明に係る特許には無効理由1(乙19発明による新規性欠如)及び無効理由3(乙21発明及び周知技術,慣用技術による進歩性欠如)による特許法104条の3の各抗弁に理由があるとはいえないものの,無効理由2(乙19発明及び乙4発明による進歩性欠如)による同条の抗弁には理由があるということができる。 ところで,原告は,本件訂正を主張し,もって訂正の対抗主張(再抗弁)を主張しているところ,特許法104条の3の抗弁に対する訂正の再抗弁が成立するためには,①特許庁に対し適法な訂正審判の請求又は訂正の請求を行っていること,②当該訂正が訂正要件を充たしていること,③当該訂正によって被告が主張している無効理由が解消されること,④被告各製品が訂正後の特許発明の技術的範囲に属すること,以上の各要件を全て充たしている必要があるというべきである。 本件において,被告は上記②及び③を争い(争点(3)ア及びイ),また本件訂正発明に係る特許に新たな無効理由が存する(争点(3)ウ)と主張している(なお,被告の平成28年6月10日付け準備書面(6)には「被告製品は本件訂正発明の構成要件を充足しない」との記載がみられるが,その内容は本件発明の構成要件充足性を争うものにすぎず,本件発明の構成要件を充足する場合に上記④の 10日付け準備書面(6)には「被告製品は本件訂正発明の構成要件を充足しない」との記載がみられるが,その内容は本件発明の構成要件充足性を争うものにすぎず,本件発明の構成要件を充足する場合に上記④の充足性を争う趣旨ではないと認められる。)。 以下,まず上記②(当該訂正が訂正要件を充たしていること)について検討する。 (1) 本件訂正のうち「前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,」との記載を追加する部分についてア本件明細書等(以下に引用する部分は,いずれも,本件特許の願書に添付した明細書又は図面と同内容であるものと認められる。)の図1には,ロータリバルブ35,36の指し示す範囲において,外周面に導入 通路の出口を除いて溝や凹部等の記載がない。 そして,図2(a)とその要部拡大図である図2(b)及び図3(a)とその要部拡大図である図3(b)は,それぞれ図1のA-A線断面図及びB-B線断面図ではあるが,導入通路31,32を含む位置のロータリバルブ35,36の断面を表そうとするものであり,仮に導入通路31,32の出口を除いて溝や凹部等が存在するのであれば,図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)において,破線等を用いて図示されるところである(例として,乙50公報の図3及び図5,乙51公報の図3及び図5,乙52公報の図3及び図4参照)。しかるに,図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)にはそのような図示がないのであるから,上記各図面においては,ロータリバルブ35,36の外周面351,361には導入通路31,32の出口を除いて溝や凹部等が設けられていないことが記載されているというべきである。 したがって,本件明細書等の図1ないし図5には,ロータリバルブ35,36の外周面に導 361には導入通路31,32の出口を除いて溝や凹部等が設けられていないことが記載されているというべきである。 したがって,本件明細書等の図1ないし図5には,ロータリバルブ35,36の外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部等が設けられていないことが記載されていると認められる。 イそして,本件明細書等の図1に記載されたロータリバルブ35,36の縦断面,図2(a)及び(b)に記載されたロータリバルブ35の横断面並びに図3(a)及び(b)に記載されたロータリバルブ36の横断面からすれば,本件明細書等には,ロータリバルブ35,36の外周面が,導入通路の出口を除いて円筒形状であることが記載されていると認められる。 ウ以上によれば,本件明細書等には,ロータリバルブを構成する回転軸の外周面に溝や凹部を設けないものが記載されており,ロータリバルブの外周面が,導入通路の出口を除いて円筒形状となることが記載されているといえるのであるから,本件訂正のうち「前記ロータリバルブの外 周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,」との記載を追加する部分については,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものということができる。 (2) 本件訂正のうち「前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し,」との記載を追加する部分について本件明細書等には,「回転軸21内には通路212が形成されている。通路212の始端は,回転軸21の内端面にあってリヤハウジング14内の吸入室142に開口している。回転軸21には導入通路31,32が通路212に連通するように形成されている。」(段落【0027】)という記載があり,前側の導入通路31と後側の導入通路32とが回転軸21内に形成された通路212を介して連通し は導入通路31,32が通路212に連通するように形成されている。」(段落【0027】)という記載があり,前側の導入通路31と後側の導入通路32とが回転軸21内に形成された通路212を介して連通していることが開示されている。 したがって,本件訂正のうち「前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し,」との記載を追加する部分については,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 (3) 被告の主張に対する判断アこの点に関して被告は,本件明細書等にはロータリバルブ35,36の外周面の全領域の記載がなく,ロータリバルブ35,36の外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部等が設けられないことの技術的意義についても何ら記載がないなどと主張するが,上記(1)で引用した各図面の記載に照らし,採用することができない。 イまた,被告は,ロータリバルブを備えた圧縮機において,ロータリバルブを構成する回転軸の外周面に溝や凹部を設けることは,例えば乙50公報ないし乙53公報に示されているように慣用技術であるなどと主張する。 しかし,仮に上記慣用技術が存したとしても,それは,ロータリバルブを構成する当該回転軸の部分に溝ないし凹部が必ず設けられているこ とを意味するものではない。そして,上記(1)で引用したとおり,本件明細書等の図1ないし図5には,ロータリバルブ35,36の外周面に導入通路の出口を除いて溝や凹部等が設けられていないことが記載されている。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (4) 小括以上によれば,本件訂正は,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものである。 そして,被告が他に本件訂正の訂正要件を争わない以上, とができない。 (4) 小括以上によれば,本件訂正は,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものである。 そして,被告が他に本件訂正の訂正要件を争わない以上,本件訂正は訂正要件を充たすというべきである。 したがって,争点(3)アの原告の主張は,理由がある。 9 争点(3)イ(本件訂正により争点(2)の無効理由を解消することができるか)について(1) 本件訂正発明と乙19発明との対比前記8の(1)及び(2)によれば,本件訂正発明と乙19発明の一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる(本件発明との相違点と異なる部分に下線を付した。)。 ア一致点「シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内にピストンを収容し,前記回転軸の回転にカム体を介して前記ピストンを連動させ,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するためのバルブを備えたピストン式圧縮機において,吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を回転軸に伝達して,軸孔の内周面に向けて前記回転軸を付勢する手段とを有し, 前記シリンダブロックは,回転軸を回転可能に収容する軸孔を有し,前記軸孔の内周面に前記回転軸の外周面が直接支持されることによって前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記回転軸の部分に関する唯一のラジアル軸受手段であり,前記ピストンは両頭ピストンであり,前記カム体は,前後一対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,スラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに 対のスラスト軸受手段によって挟まれて前記回転軸の軸線の方向の位置を規制されており,スラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくしたピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。」イ相違点(ア) 本件発明は,「前記回転軸と一体化されていると共に,前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブ」を備えたものであり,それに伴い,「前記シリンダボアに連通し,かつ前記ロータリバルブの回転に伴って前記導入通路と間欠的に連通する吸入通路」と,「吐出行程にある前記シリンダボア内の前記ピストンに対する圧縮反力を前記ロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する前記吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する」手段と,「前記ロータリバルブを回転可能に収容する軸孔」とを有し,「前記導入通路の出口は,前記ロータリバルブの外周面上にあり,前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,前記吸入通路の入口は,前記軸孔の内周面上にあり,前記軸孔の内周面に前記ロータリバルブの外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブを介して前記回転軸を支持するラジアル軸受手段となっており,前記ラジアル軸受手段は,前記カム体から前記ロータリバルブ側における前記回転軸 の部分に関する唯一のラジアル軸受手段」であり,「前記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通」するものである 記両頭ピストンを収容する前後一対のシリンダボアに対応する一対のロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転し,前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通」するものであるのに対して,乙19発明は,「吸入弁機構35」を有するものの,「ロータリバルブ」を有していない点(以下「相違点1-1’」という。)。 (イ) 本件発明は,「吐出行程にあるシリンダボア内のピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達して,吐出行程にある前記シリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けて前記ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」を有し,「前記一対のスラスト軸受手段の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし,該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段は,前記シリンダブロックの端面に形成された環状の突条と前記カム体の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記カム体の突条の径を前記シリンダブロックの突条の径よりも大きくした」構成を有するものであるのに対して,乙19発明は,「圧縮動作時にシリンダボア20内のピストン21からの圧縮反力を回転軸16に対しラジアル方向の分力として作用させ,軸支孔37の内周壁に対して前記回転軸16上の大径の軸支部38を圧接する少なくとも斜板27を含む手段」を有し,「前記スラスト軸受手段は,前記シリンダブロック11の端面に形成された環状の突条と斜板27の端面に形成された環状の突条とに当接し,前記斜板27の突条の径を前記シリンダブロック11の突条の径よりも大きくした」構成を有するものであるが,「圧縮反力伝達手段」に相当する構成を含むか否かが明らかではなく,また,「前記軸支孔37と前記軸支部38との間には,ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向 手段」に相当する構成を含むか否かが明らかではなく,また,「前記軸支孔37と前記軸支部38との間には,ピストン21の圧縮動作時に斜板27を介して回転軸16にそのラジアル方向へ作用する力と反対方向の力を,前記回転軸16に対して付与する反力付与構造39」を有して いる点(以下「相違点1-2’」という。)。 (2) 相違点に係る構成の容易想到性以上を前提に,相違点1-1’に係る構成の容易想到性について検討する。 ア相違点1-1’のうち「前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とされ,」との部分について(ア) 前記6(2)アで説示したとおり,乙19発明と乙4発明とは,ピストン型斜板式圧縮機という同一の技術分野に属している。そして,乙19公報には「例えば特開平5-126039号公報〔判決注:乙4公報〕に開示されているように,回転軸16のラジアルベアリングと対応する部分にロータリバルブを配設した圧縮機において,そのロータリバルブ上に反力付与構造39を配設すること。」(段落【0049】)と記載されているのであって,乙19公報に記載された実施例に乙4公報に記載された実施例を組み合わせることにつき,教示が存在する。 したがって,当業者であれば,乙19発明において,乙19発明の「吸入弁機構35」に代えて,乙4発明の「回転弁22」を「回転軸16」の「ラジアルベアリング17,18」の部分に設けることは,容易に想到し得るものというべきである。 (イ) しかるに,乙19発明に「回転弁22」を採用した場合であっても,同発明にいう「反力付与構造39」の機能は当然に保持されることになる。すなわち,乙19発明は,滑り軸受を使用しても回転軸の円滑な回転に支障が生じないようにするために反力付与手段を設けたものであり( 同発明にいう「反力付与構造39」の機能は当然に保持されることになる。すなわち,乙19発明は,滑り軸受を使用しても回転軸の円滑な回転に支障が生じないようにするために反力付与手段を設けたものであり(乙19公報の段落【0013】),反力付与手段としての「反力付与構造39」(段落【0031】)を備えることが必須の発明である。 そして,乙19発明は,この「反力付与構造39」の一つとして,回転軸16の軸支部38の外面に「凹部40」を備えているのであるから, 「凹部40」は,乙19発明にとって必須の構成要件ということになる。 そうすると,乙19発明において,「前記ロータリバルブの外周面は,前記導入通路の出口を除いて円筒形状とし」との構成を採用し,もって「凹部40」を無くしてしまうことについては,阻害要因が存在するというべきである。 イ相違点1-1’のうち「前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し」との部分について上記アによれば,相違点1-1’に係る構成の容易想到性は,その余の点について判断するまでもなく否定されることになるが,さらに,事案に鑑み,「前記ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通し」との部分についても検討する。 両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機において,「ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通」したものとすることは,本件特許の優先日前に周知の事項ということができる(乙54明細書,乙55公報及び乙56公報)。 しかし,乙19発明は,「吸入室33」を両頭ピストンの両側に有する形式であるから,乙19発明において「吸入弁機構35」に代えて乙4発明の「回転弁22」を採用した場合,軸方向両側に配置される回転弁 しかし,乙19発明は,「吸入室33」を両頭ピストンの両側に有する形式であるから,乙19発明において「吸入弁機構35」に代えて乙4発明の「回転弁22」を採用した場合,軸方向両側に配置される回転弁は,それぞれ両頭ピストンの両側の吸入室と連通させようとするものであり,「ロータリバルブの各導入通路は回転軸内に形成された通路を介して連通」させる必要性はない。 したがって,乙19発明に乙4発明を適用する際に,上記周知事項を考慮することにより,「ロータリバルブの各導入通路は回転軸内に形成された通路を介して連通」する構成とすることは,当業者にとって容易に想到し得たものではないというべきである。 ウ小括 以上によれば,相違点1-1’に係る構成とすることは,上記ア及びイに説示した理由により,乙19発明及び乙4発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではないというべきである。 (3) 被告の主張に対する判断ア上記(2)アに関して被告は,乙19公報に「圧力作用部40bの大きさをどの程度にするかは,回転軸16に作用するラジアル方向の力P2を考慮して,最適なものを選択すればよい」(段落【0048】)と記載されているとおり,滑り軸受を使用しても回転軸の円滑な回転に支障が生じないように当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎないのであって,滑り軸受を使用しても回転軸の円滑な回転に支障が生じないのであれば,「凹部40」を設ける必要がないことも,乙19公報に基づいて当業者が容易に想到し得るなどと主張する。 しかし,上記(2)アで説示したとおり,「凹部40」は,乙19発明にとって必須の構成要件であるから,その「大きさをどの程度にするか」は設計事項であるとしても,それを設けない構成とすることには,阻害要因が存在するというべきである。 ,「凹部40」は,乙19発明にとって必須の構成要件であるから,その「大きさをどの程度にするか」は設計事項であるとしても,それを設けない構成とすることには,阻害要因が存在するというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イまた,上記(2)イに関して被告は,両頭ピストン型のロータリバルブを配設した圧縮機において「ロータリバルブの各導入通路は前記回転軸内に形成された通路を介して連通」したものとすることが本件特許の優先日前に周知の事項である以上は,乙19発明の回転軸内に設けられる通路の構造について,当業者は両導入通路を連通したものと理解することが当然であるなどと主張する。 しかし,被告の上記主張は裏付けを欠くものにすぎないし,乙19発明が「吸入室33」を両頭ピストンの両側に有する形式であることを考慮に入れていないものでもあるから,にわかに採用することができない。 (4) 小括以上によれば,その余の相違点について判断するまでもなく,本件訂正発明が乙19発明及び乙4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって,本件訂正により無効理由2を解消することができたというべきである。争点(3)イにおける原告の主張は,理由がある。 争点(3)ウ(新たな無効理由の存否)について被告は,ロータリバルブの外周面が「導入通路の出口を除いて円筒形状」というのは,本件訂正請求書によれば「導入通路の出口以外,ロータリバルブの外周面に溝,凹部等が設けられていないこと」を意味するというのに対し,例えば乙50公報ないし乙53公報に開示されているロータリバルブのように,導入通路の出口以外の部分に溝や凹部等が形成されたロータリバルブの外周面も,実質的に「円筒形状」であると考え というのに対し,例えば乙50公報ないし乙53公報に開示されているロータリバルブのように,導入通路の出口以外の部分に溝や凹部等が形成されたロータリバルブの外周面も,実質的に「円筒形状」であると考えるのが自然であるから,「円筒形状」との記載は明確ではないなどと主張する。 しかし,本件訂正発明の「円筒形状」との記載は,乙19発明の「凹部40」との相違に基づき,「導入通路の出口を除いて」との限定が付されていることからすれば,本件訂正発明における「円筒形状」の意義は,導入通路の出口以外に「導入通路の出口」程度の溝,凹部等がないものを意味することが明らかである(そうすると,乙50公報ないし乙53公報の図面に開示されているロータリバルブは,いずれも「溝,凹部等」が設けられているものであって,本件訂正発明にいう「円筒形状」には該当しない。)。 したがって,本件訂正発明が明確でないということはできないから,争点(3)ウにおける被告の主張は,理由がない。 11 結論以上によれば,被告各製品は本件発明の技術的範囲に属し(争点(1)アないしウ),他方で訂正前の本件発明に係る特許は乙19発明及び乙4発明による 進歩性欠如により無効にされるべきものではあるが(争点(2)イ),本件訂正による訂正の再抗弁が成立する(争点(3)アないしウ)。 したがって,原告の請求は理由があるからいずれも認容することとし,仮執行宣言については,主文第1項については付すのが相当であるのでこれを付し,主文第2項についてはこれを付さないのが相当であるから,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来未子 (別紙)イ号物件目録 圧縮機RS-15 (別紙)ロ号物件目録 圧縮機RS-13 別紙「特許公報」省略
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