平成15(わ)7409 道路交通法違反,危険運転致死被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年3月30日 大阪地方裁判所
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判決文本文3,526 文字)

主文 被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 公安委員会の運転免許を受けないで(免許の効力停止中),平成15年11月6日午後11時55分ころ,大阪市a区b丁目d番e号付近道路において,普通乗用自動車を運転した第2 そのころ,道路標識等により最高速度を50キロメートル毎時と指定されている左方に湾曲する前記場所付近道路において,4輪の前記普通乗用自動車を運転してf方面からg方面に向かって進行中,その進行を制御することが困難な時速約100キロメートルの高速度で自車を走行させたことにより,自車を,同道路の湾曲に応じて進行させることができず,左斜め前方に滑走させて同道路左側の歩道に乗り上げさせ,折から同歩道上を通行中のA(当時29歳)が乗った自転車に自車を衝突させ,同人を同自転車もろとも約36メートル先の同道路左側高架下側道に転落させ,よって,同人に頭蓋骨骨折,脳挫滅の傷害を負わせ,即時同所において同人を死亡するに至らしめた第3 前記普通乗用自動車を運転中,前記日時場所において前記第2のとおりAを負傷させて死亡させる交通事故を起こしたのに,歩道上で停止した自車から降りて,前記高架下側道に倒れている同人の姿を認めたものの,いまだ生死もつまびらかでない同人を救護する等必要な措置を講じず,かつ,その事故発生の日時場所等法定の事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示第1の所為は道路交通法117条の4第1号,64条に,判示第2の所為は刑法208条の2第1項後段,前段(致死の場合)に,判示第3の所為のうち,救護義務違反の点は道路交通法117条,72条 被告人の判示第1の所為は道路交通法117条の4第1号,64条に,判示第2の所為は刑法208条の2第1項後段,前段(致死の場合)に,判示第3の所為のうち,救護義務違反の点は道路交通法117条,72条1項前段に,報告義務違反の点は同法119条1項10号,72条1項後段にそれぞれ該当するところ,判示第3は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により,1罪として重い救護義務違反の罪の刑で処断し,判示第1及び第3の各罪について各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,最も重い判示第2の罪の刑に同法47条ただし書,14条の制限に従って法定の加重をし,その刑期の範囲内で被告人を懲役7年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入することとする。 (量刑理由) 1 本件は,運転免許停止中の被告人が,一般道を時速約100キロメートルもの高速度で自動車を走行させたため,カーブを曲がりきれずに自車を滑走させ,歩道上を自転車で通行していた被害者に衝突し,被害者を自転車もろとも高架下へ転落させて脳挫滅等の傷害により即死させ,側壁に衝突するなどして停止した自車から降りた際に高架下側道に被害者が倒れているのを発見しながら,いまだ生死も定かでない被害者を救護するための措置を何もとらず,警察に通報もしないで,その場から逃走した道路交通法違反及び危険運転致死の事案である。 2 被告人は,友人が新しく購入した自動車を運転してみたいという極めて安易な理由で判示自動車を無免許運転し,一般道を時速約100キロメートルもの猛スピードで走行し,しかもその運転直前まで友人らと飲酒していたというのであるから,被告人の本件運転行為は,交通三悪すべてに抵触する危険きわまりない 無免許運転し,一般道を時速約100キロメートルもの猛スピードで走行し,しかもその運転直前まで友人らと飲酒していたというのであるから,被告人の本件運転行為は,交通三悪すべてに抵触する危険きわまりないものであり,本件のような重大な結果を惹起したのは必然とすらいいうるところであって,本件危険運転行為の犯行態様はきわめて悪質である。もとより,そのような犯行動機や犯行経緯に酌量の余地など微塵も認められない。そればかりか,被告人は,事故後,高架下に倒れている被害者の姿を認めながら,救急車を呼んだり警察官に報告するなどの措置をまったくとることなく,直ちに現場から逃走し,同乗者らとともに犯行使用車両に消火剤を噴射する等の犯跡隠蔽工作までおこない,犯行の3日後に警察署に出頭した際にも,人をはねたことは気づかなかったなどと虚偽の供述をしているのであって,事故後の態度も卑怯でまことに悪質である。 被告人は,普通自動車運転免許取得後わずか2年程の間に,速度超過等の交通違反で何度も検挙され,2度にもわたり運転免許停止の行政処分を受け,しかるに,極めて安易に本件に至っているのであって,交通法規無視の態度ははなはだしいとの非難を免れない。 本件の結果がきわめて重大であることは改めていうまでもない。被害者は,当時弱冠29歳,仕事上の大きな飛躍を目前にした前途洋々たる青年であった。 もとより,被害者には何の落ち度も認められない。たまたま本件歩道を通行していたというそれだけの理由で,「事故」と呼ぶことすらはばかられる被告人の蛮行により,突如としてその尊い生命を断たれ,将来の夢も希望もすべてを奪われたのである。その無念の想いや,肉体的・精神的苦痛には,およそ余人の安易な想像を許さないものがある。まことに痛ましいというほかはない。そして,残された遺族の を断たれ,将来の夢も希望もすべてを奪われたのである。その無念の想いや,肉体的・精神的苦痛には,およそ余人の安易な想像を許さないものがある。まことに痛ましいというほかはない。そして,残された遺族の悲嘆と憤りも大きい。わずか数日前に言葉を交わしたばかりの息子の変わり果てた姿に対面せざるを得なかった母親の悲しみと苦しみ,そして怒りは,これもまた余人の想像も及ばないものがある。被害者の母と姉とが当公判廷における意見陳述に際し,極めて峻厳な処罰感情を示しているのは,けだし当然というべきである。そして,そのような悲しみ,怒りは,被害者を知る多くの人々に共通の思いであることが窺われるのである。 被告人の刑事責任にはまことに重いものがある。 3 他方において,被告人が,きわめて遅きに失したとはいえ,自ら警察署に出頭している点は,被告人にもその当時から幾分かは反省の念が存したことを窺わせるものではある(なお,この出頭は,判示第1及び第2事実に関する限りでは,法律上の自首が成立するものと認められるが,本件犯情に照らし,自首減軽をすべきであるなどとは到底認められない。また,判示第3事実については,被告人は上記のとおり出頭当初は被害者をはねたことは知らなかったなどと述べており,自己の犯罪を自発的に申告したとは評価できず,自首は成立しない。)。そして,被告人は本件犯行時の心情等につきやや不合理な供述もしてはいるが,本件各犯行を遅まきながらも被告人なりに反省していることは窺える上,いまだ若年でもあり,今後は厳しく監督する旨証言した母親,雇用を約束する旨証言した雇用主,寛刑を嘆願する友人らも存在し,被告人自身の決意の堅さによっては,今後の更生も期待できないわけではない。さらに,保険加入状況や被告人の資力等に照らし,最低限必要な賠償すら直ちには期待できない状況 ,寛刑を嘆願する友人らも存在し,被告人自身の決意の堅さによっては,今後の更生も期待できないわけではない。さらに,保険加入状況や被告人の資力等に照らし,最低限必要な賠償すら直ちには期待できない状況ではあるが,被告人の母が,遺族のもとへ謝罪に赴いたり,事故現場に献花し,被害弁償の申入れを行うなど,現時点でなし得る慰藉の努力をしている様子も窺える。 4 以上の諸事情を総合考慮して被告人に対する科刑を検討するに,きわめて危険な運転行為の結果,何の落ち度もない被害者の死亡という重大な結果を招いた上,被害者を救護するどころか自動車の破壊等の自己保身行為に走ったという本件各犯行態様の悪質さや,被害者の遺族の被害感情が峻烈なままであること等の事情に鑑み,被告人に対しては,被告人のため斟酌すべき事情を考慮しても,長期間の刑をもって臨むほかはなく,そこで,主文のとおり量刑した次第である。 (求刑懲役8年)平成16年3月30日大阪地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官川合昌幸裁判官畑口泰成裁判官藤原瞳

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