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主文 本件抗告を棄却する。抗告費用は抗告人の負担とする。理由 抗告代理人等は、「原決定を取り消す。仮処分債務者株式会社金子商店を賃貸人とし、仮処分債務者株式会社内藤商店を賃借人として、別紙物件目録記載の建物と有体動産について、昭和三十四年三月一日締結された賃料一ケ年金百二十万円、存続期間昭和三十四年三月一日から昭和三十七年二月末日まで満三年とする賃貸借契約を解除する。右仮処分債務者両名が右物件についてなした仙台法務局気仙沼支局昭和三十四年三月二十七日受付第九〇六号賃借権設定登記は抹消する。」との裁判を求め、その理由として、抗告代理人兼子一は別紙「抗告理由書その一」記載のとおり、抗告代理人寺崎万吉は別紙「抗告理由書その二」記載のとおり、右抗告代理人両名は「補充抗告理由書」記載のとおり、それぞれ主張した。本件記録によると、次の事実を認めることがてきる。抗告人は昭和三十三年一月十六日株式会社金子商店との間に、抗告人が同会社に対して有する機械工事残代金債権金壱千百三十五万円を割賦弁済による消費貸借に改めるとともに、その担保として同会社所有の別紙物件目録記載の建物並びに機械器具(以下本件物件という)について工場抵当法第三条所定の抵当権を設定することなどを定めた準消費貸借並びに抵当権設定契約を締結し、同年七月四日その仮登記を経由した。右会社は右債務のうち一部の弁済をなし、残債務は金七百三十八万一千四百八十円となつたところ、昭和三十三年十二月二十九日右残額を債権額とし、弁済期昭和三十六年三月末日、利息日歩三銭、利息支払期毎月末日、月賦支払を二回以上怠つたときは期限の利益を失い、期限後は日歩八銭の遅延損害金を支払うことと定め、昭和三十四年一月十九日前記仮登記について、その本登記を経由した。そ 利息日歩三銭、利息支払期毎月末日、月賦支払を二回以上怠つたときは期限の利益を失い、期限後は日歩八銭の遅延損害金を支払うことと定め、昭和三十四年一月十九日前記仮登記について、その本登記を経由した。 月末日、利息日歩三銭、利息支払期毎月末日、月賦支払を二回以上怠つたときは期限の利益を失い、期限後は日歩八銭の遅延損害金を支払うことと定め、昭和三十四年一月十九日前記仮登記について、その本登記を経由した。そ 利息日歩三銭、利息支払期毎月末日、月賦支払を二回以上怠つたときは期限の利益を失い、期限後は日歩八銭の遅延損害金を支払うことと定め、昭和三十四年一月十九日前記仮登記について、その本登記を経由した。その後、同会社は約定の割賦支払を怠つたため、昭和三十四年四月末日限り期限の利益を失い、その時の元本の残額七百十四万九千六百九十円とこれに対する同年五月一日から完済まで日歩八銭の割合の約定遅延損害金を即時抗告人に支払わなければならないこととなつた。これより先、昭和三十二年六月十二日同会社は中小企業金融公庫のために、本件物件とその敷地に抵当権を設定して右公庫から金壱千万円を借り受け、翌十三日右抵当権設定登記を経由し、また昭和三十二年九月三十日商工組合中央金庫のために融資契約により債権極度額を金八十万円とする根抵当権を本件物件に設定し、同年十月十四日その旨の登記を経由したところ、同会社は事業の経営が思わしくなく右債務の支払をすることができなかつたので、右公庫は右貸金残債権七百六十七万円の弁済を得るため、本件物件を上記土地について昭和三十四年五月十八日抵当権実行による競売の申立を仙台地方裁判所気仙沼支部になし、同日右不動産競売手続開始決定がなされた。ところが、右会社は昭和三十四年三月一日株式会社内藤商店に対して本件物件と上記土地を賃料一ケ年金百二十万円、存続期間同日から昭和三十七年二月末日まで満三年と定めて賃貸し、仙台法務局気仙沼支局昭和三十四年三月二十七日受付第九〇六号を以て右賃借権設定登記を経由し、且つその頃右内藤商店は金子商店から右賃借物件の引渡を受けてそれ以来これを占有使用してきた。そこで、仙台地方裁判所気仙沼支部は上記競売不動産は賃貸借があるものとして競売手続を進め、本件物件の最低競売価額を金一千四十八万三千円、上記土地の最低競売価額を金四 それ以来これを占有使用してきた。そこで、仙台地方裁判所気仙沼支部は上記競売不動産は賃貸借があるものとして競売手続を進め、本件物件の最低競売価額を金一千四十八万三千円、上記土地の最低競売価額を金四百三十六万一千七百二十円と定めて、競売及び競落期日を公告した後、昭和三十四年十月九日午前十時執行吏によつて第一回の競売期日が開かれたけれとも、競買の申出をするものがなく、後記のようにまだ競売手続が進行中で、本件物件の最低競売価額は数次に亘り低減せられ、抗告人の債権は右競落代金によつては完全には弁済が受けられない情況にある。 、本件物件の最低競売価額を金一千四十八万三千円、上記土地の最低競売価額を金四百三十六万一千七百二十円と定めて、競売及び競落期日を公告した後、昭和三十四年十月九日午前十時執行吏によつて第一回の競売期日が開かれたけれとも、競買の申出をするものがなく、後記のようにまだ競売手続が進行中で、本件物件の最低競売価額は数次に亘り低減せられ、抗告人の債権は右競落代金によつては完全には弁済が受けられない情況にある。抗告人は仙台地方裁判所気仙沼支部に右金子商店と内藤商店の両会社を被告として、民法第三九五条但書に基いて上記賃貸借の解除と賃借権設定登記の抹消を求める本案訴訟を提起したが、右事件は昭和三十四年七月十五日東京地方裁判所に移送する旨の決定がなされた結果、東京地方裁判所昭和三十四年(ワ)第六一三七号事件として係属中であるが抗告人は、本案訴訟の判決確定までに本件物件が賃借権付のままで競落されてしまうときは後順位抵当権者である抗告人は著しい損害を蒙ることが明らかであるから、上記賃貸借の解除と賃借権設定登記の抹消を求めるため、本件仮処分の申請をした。原決定は、「いわゆる債権者の満足を目的とする仮処分は、その保全措置として、仮処分の内容が、本案請求の内容と同一の状態を実現せしめることをその目的とするものであるから、このような仮処分が許されるためには、まず仮処分命令をもつて、本案請求の内容と同一の状態を実現せしめることが、法律上可能な場合であることをその前提要件とするものである。本件仮処分の本案訴訟はいわゆる実体法上の形成訴訟であるところ、実体法上の形成訴訟の目的としている形成力は、形成の訴における形成判決によつてのみこれを賦与することがで をその前提要件とするものである。本件仮処分の本案訴訟はいわゆる実体法上の形成訴訟であるところ、実体法上の形成訴訟の目的としている形成力は、形成の訴における形成判決によつてのみこれを賦与することができるものであり、特別の規定がない限り形成の効果も、その確定によつて生ずると解するをの相当とする。債権者(抗告人)の提起した本案訴訟が実体法上の形成訴訟であること明らかな本件では、これに附随する派生的な法律効果を定めるものであるならばとに角、右形成訴訟における形成判決の効力として始めて与えられる形成効そのものを、仮処分によつて実現することは許されないと解する外はないから、結局短期賃貸借の解除を、本件仮処分によつて、債務者等に命ずることはできない。 、その確定によつて生ずると解するをの相当とする。債権者(抗告人)の提起した本案訴訟が実体法上の形成訴訟であること明らかな本件では、これに附随する派生的な法律効果を定めるものであるならばとに角、右形成訴訟における形成判決の効力として始めて与えられる形成効そのものを、仮処分によつて実現することは許されないと解する外はないから、結局短期賃貸借の解除を、本件仮処分によつて、債務者等に命ずることはできない。また賃借権設定登記の抹消を求める本件仮処分申請については、登記義務者に対する請求は、意思の陳述を求める請求として、その執行について、民事訴訟法は、第七三六条に、その判決の確定をもつて、意思の陳述があつたものと着倣しているのであるから、その判決の確定前において、仮処分命令をもつて、判決の確定した場合と全く同一の状態を実現せしめることは、同条及び不動産登記法第二七条に照し、法律上不可能というべきであるから、この点についての債権者の主張も失当である。」として、抗告人の本件仮処分申請を却下したものである。<要旨第一>しかし、保全される権利が勝訴判決の確定によつてのみ実現される本件の抵当権による賃貸借の解除請求権</要旨第一>のようなものであつても、その一事で仮処分請求権を否定すべきではなく、将来における原告勝訴の確定判決をまつていては、原告に本来の実益をもたらすことなく、反つて判決確定までの間に著しい損害を蒙らせるような場合には、権利の実現を妨げる現在の危険を除去又は防止するためには、本案訴訟の判決確定前に 判決をまつていては、原告に本来の実益をもたらすことなく、反つて判決確定までの間に著しい損害を蒙らせるような場合には、権利の実現を妨げる現在の危険を除去又は防止するためには、本案訴訟の判決確定前に暫定的に当該権利又は法律関係の内容に沿う状態を仮りに形成し、権利者に仮の満足を与えなければならない。もちろん仮処分命令の内容は権利保全の必要限度内にとどめなければならないけれども、仮の地位を定める仮処分にあつては、その避けようとする危険の性質上、権利者に仮の満足を与えることが、保全の必要を充す最善の手段となるのであるから、この種の仮処分にあつては、現在の危険の除去又は防止によつて権利又は法律関係の保全を期するための法律的手段として、右のような措置が民事訴訟法上認められているのである。従つて保全の必要性がある限りは、本案訴訟がいわゆる実体法上の形成訴訟であつても給付訴訟または確認訴訟の場合と同じように、暫定的に債権者の仮の満足を目的とする仮処分は許容せらるるものである。 、保全の必要を充す最善の手段となるのであるから、この種の仮処分にあつては、現在の危険の除去又は防止によつて権利又は法律関係の保全を期するための法律的手段として、右のような措置が民事訴訟法上認められているのである。従つて保全の必要性がある限りは、本案訴訟がいわゆる実体法上の形成訴訟であつても給付訴訟または確認訴訟の場合と同じように、暫定的に債権者の仮の満足を目的とする仮処分は許容せらるるものである。それか確定的に債権者の満足を図るものであれば、原決定のいうように、形成訴訟を本案とする場合には、形成の効果は、形成判決によつてだけ賦与することができるもので、仮処分によつてこれを実現することは許されないと解するのは妥当であるが、抗告人の求めている本件仮処分は右のようなものではなく、上記のように暫定的に仮の地位の形成をすることを目的とするものであるから、原決定の見解はとることはできない。このことは、株式会社の取締役選任決議取消等を本案とする形成訴訟において、取締役の職務執行停止、代行者選任の仮処分が現行商法第二七〇条の規定が新に設けられる以前から、判例として一般に認められてきたことによつても明らかなところである。本件仮処分事件の本案訴訟は、東京地方裁判所昭和三十四年(ワ)第六一三 の仮処分が現行商法第二七〇条の規定が新に設けられる以前から、判例として一般に認められてきたことによつても明らかなところである。本件仮処分事件の本案訴訟は、東京地方裁判所昭和三十四年(ワ)第六一三七号事件として現に係属中であることは、上記認定のとおりであつて、本件記録によると、右本案訴訟事件は、昭和三十四年十一月四日口頭弁論が終結せられ、判決言渡期日が同月二十七日午前十時と指定せられたが、右言渡期日は延期せられ、言渡期日は追つて指定されることとなつたまま、まだその指定がなされない状態にあることが認められる。そして、抗告人が、たとえ、右本案訴訟の第一審で勝訴の判決を受けると仮定しても、訴訟の経過からみて、相手方である株式会社内藤商店等は控訴、上告を提起して抗告人の右請求を争うであろうし、従つて判決の確定までには相当長期間を要するであろうことは、当裁判所に明らかなことであつて、抗告人も本件仮処分申請書の申請の理由中で自認しているところである。他方、抗告人の抵当権に先き立つ抵当権者である中小企業金融公庫の申立に基いて開始された本件物件に対する上記認定の競売事件は、昭和三十四年十月九日午前十時の第一回の競売期日には競買の申出をするものがなかつたため、裁判所は同年十二月二十四日午前十時を第二回目の競売期日と定めたが、右期日にも競買の申出がなく、第三回目の競売期日は昭和三十五年二月二十五日午前十時と定められたけれども、右期日にも競買の申出がなかつたので、裁判所は更に第四回目の競売期日を同年三月二十四日午前十時と定め、右期日にも前回同様競買の申出をするものがなくて、近く第五回目の新競売期日が指定されようとしていることは、本件記録により明らかである。 裁判所は同年十二月二十四日午前十時を第二回目の競売期日と定めたが、右期日にも競買の申出がなく、第三回目の競売期日は昭和三十五年二月二十五日午前十時と定められたけれども、右期日にも競買の申出がなかつたので、裁判所は更に第四回目の競売期日を同年三月二十四日午前十時と定め、右期日にも前回同様競買の申出をするものがなくて、近く第五回目の新競売期日が指定されようとしていることは、本件記録により明らかである。右認定の事実に徴して考えてみると、上記競売事件は早晩競落許可決定が言い渡され、仮りにこれに対して利害 がなくて、近く第五回目の新競売期日が指定されようとしていることは、本件記録により明らかである。右認定の事実に徴して考えてみると、上記競売事件は早晩競落許可決定が言い渡され、仮りにこれに対して利害関係人から即時抗告がなされるとしても、抗告事件の審理期間は一般に訴訟事件のそれに比べて短いことは、当裁判所に顕著な事実である。しかも、抗告裁判所の決定に対する抗告は憲法違背を理由とするときにのみ許されているのであり特別の事情についてなんの主張立証もないから、本件仮処分の本案訴訟についての控訴審の判決の基本となる最終口頭弁論期日以前に遅くとも右競売手続が終結するとみるのを相当とする。してみると、抗告人が本件物件に対して有している抵当権は、右競落によつて消滅に帰するわけであるから、この一事によつて抗告人は本件仮処分の本案訴訟事件では敗訴の判決言渡を受けるものといわなければならない。抗告人は、競落によつて抗告人の抵当権が消滅し、本案訴訟の請求がそのままの形では維持できないこととなつても、抗告人としては本案訴訟で仮処分に基いて相手方の賃借権は存在しなくなつたことの確認を求めるように、請求の趣旨を変更すれば足りる旨主張するけれども、仮処分によつて生ずる法律上の効果は、本案判決確定に至るまでの暫定的仮定的なもので、確定的のものではないので、裁判所が本案について判決をするに当つては、仮処分によつて生じた効果を考慮すべきものではないから、抗告人か本案訴訟で、仮処分により相手方の賃借権が消滅したことを主張し、請求の趣旨を訂正して右賃借権の不存在の確認を求めても、抗告人勝訴の判決を受ける望みはないから、抗告人の右主張は採用できない。もつとも、このように解すると、抗告人の権利は侵害されながらもこれを保護する保全的の手段がなにもないことになるが、抗告人はもともと 判決をするに当つては、仮処分によつて生じた効果を考慮すべきものではないから、抗告人か本案訴訟で、仮処分により相手方の賃借権が消滅したことを主張し、請求の趣旨を訂正して右賃借権の不存在の確認を求めても、抗告人勝訴の判決を受ける望みはないから、抗告人の右主張は採用できない。もつとも、このように解すると、抗告人の権利は侵害されながらもこれを保護する保全的の手段がなにもないことになるが、抗告人はもともと 人勝訴の判決を受ける望みはないから、抗告人の右主張は採用できない。もつとも、このように解すると、抗告人の権利は侵害されながらもこれを保護する保全的の手段がなにもないことになるが、抗告人はもともと先順位の抵当権のあることを承知した上別紙物件目録記載の建物と有体動産について工場抵当法第三条による抵当権の設定を受けたのであるから、賃借権の設定されているままで先順位の抵当権が実行されることをも予想し得たし、少くとも予想し得なければならない関係にあつて、その抵当権の実行を阻止し得ないのはもちろん、賃借権の設定されたままでの抵当権の実行をも甘受しなければならないものといわざるを得ない。この場合、もしその賃借権の設定か抗告人の抵当権を害するものであれば、損害賠償の請求をなす外、後記のように、本案訴訟を予定しない特別の仮処分を認めないわが国では道がないといわなければならない。<要旨第二>もともと、保全処分は、これによつて保全しようとする権利又は法律関係、まだ確定しない間になされる</要旨第二>応急的な措置であるから、将来右の権利又は法律関係が、本案訴訟で終局的に確定され、必要且つ可能な場合には、これに基く強制執行がなされることを前提として初めて認められている従属的のものであつて、本案訴訟を前提としない、保全処分は、仮登記仮処分又は仮登録仮処分のように、特別に法が認めているものの外は認められないといわなければならない。従つて、仮処分申請人が申請当時にはまだ実体法上の権利を有していても、右権利は早晩消滅して本案訴訟で敗訴判決を受けるであろうことが十分に予想される場合には、結局においては保全請求権を有しないものと解するのを相当とする。ところが、上記認定のとおり抗告人は本件仮処分の本案訴訟で、少くとも控訴審では、敗訴の判決を受けることが十分予想されるの れる場合には、結局においては保全請求権を有しないものと解するのを相当とする。 分申請人が申請当時にはまだ実体法上の権利を有していても、右権利は早晩消滅して本案訴訟で敗訴判決を受けるであろうことが十分に予想される場合には、結局においては保全請求権を有しないものと解するのを相当とする。ところが、上記認定のとおり抗告人は本件仮処分の本案訴訟で、少くとも控訴審では、敗訴の判決を受けることが十分予想されるの れる場合には、結局においては保全請求権を有しないものと解するのを相当とする。ところが、上記認定のとおり抗告人は本件仮処分の本案訴訟で、少くとも控訴審では、敗訴の判決を受けることが十分予想されるのであるから、本件仮処分はその他の点について審理するまでもなく、理由がないとして排斥を免れない。従つて、当裁判所と理由を異するけれども、抗告人の本件仮処分申請を却下した原決定は、結局相当であるから、本件抗告は理由がないものとしてこれを棄却することとし、抗告費用は抗告人に負担させ、主文のとおり決定する。(裁判長裁判官村松俊夫裁判官伊藤顕信裁判官土肥原光圀)(別紙目録は省略する。)
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