令和3(わ)26 傷害致死被告事件

裁判年月日・裁判所
令和3年9月3日 札幌地方裁判所
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判決文本文2,187 文字)

1主 文被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中20日をその刑に算入する。 理 由(罪となるべき事実)被告人は,令和2年10月28日午後9時頃から同日午後9時22分頃までの間,札幌市(住所省略)所在のA方において,A(当時62歳)に対し,その頭部,顔面,頸部,前胸部及び腰部等を拳で多数回殴打し,足で多数回踏み付けるなどの暴行を加え,よって,同人に頭部顔面の多量皮下出血,外傷性くも膜下出血,輪状軟骨骨折,甲状軟骨骨折,気管上部裂開,多発肋骨骨折,腸間膜破裂,肝破裂及び腰椎左横突起骨折等の傷害を負わせ,同日午後9時58分頃,同市(住所省略)所在のB病院において,同人を前記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)1 構成要件及び法定刑を示す規定被告人の判示所為は刑法205条に該当する。 2 宣告刑の決定所定刑期の範囲内で被告人を懲役8年に処する。 3 未決勾留日数の算入刑法21条を適用して未決勾留日数中20日をその刑に算入する。 4 訴訟費用の不負担訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。 (量刑の理由)本件の犯行態様は,被告人が,一方的に,同居していた被害者の頭部や胸腹部等を執拗なまでに殴る踏み付けるなどして多大な苦痛を与えた苛烈で残酷なものである。何ら落ち度のない被害者の命が奪われた結果の重大性は論をまたず,慰謝の措2置を受けたとはうかがわれない被害者遺族が厳しい処罰を望むのも当然である。 被告人は,以前入居していたグループホームから十分な説明のないままに高額な退去費用を請求され,同ホームに管理を委ねていた自身の財産と退去費用との精算状況について同ホーム代表者に再三にわたり説明を求め 被告人は,以前入居していたグループホームから十分な説明のないままに高額な退去費用を請求され,同ホームに管理を委ねていた自身の財産と退去費用との精算状況について同ホーム代表者に再三にわたり説明を求めるも十分な説明を受けることができなかったばかりか,そのやり取りの中で自身の精神疾患を揶揄されるなどしたことに対して不満を抱くとともに,同代表者の対応によっては警察沙汰になったり病院に入院させられるのではないのかという不安もあり,犯行前,相当なストレスを募らせていたものと認められる。被告人は,犯行当日,このようなストレスから逃げるように相当量の飲酒に及び,退去費用の連帯保証人である被害者から退去費用に関する説明を繰り返し求められたり,買い物の釣り銭を被害者に誤魔化されたことによりストレスを更に高め,一時の激情から本件犯行に及んだ。このように,本件犯行は,ストレス耐性が低くフラストレーションによる他者への暴力を含む攻撃によって発散するなどの被告人の非社会性人格障害の特徴が表れたものといえるところ,統合失調症を含む過去の種々の疾病歴等が,ストレスの一因となった可能性や人格障害に達するまでの人格形成に影響を与えた可能性を否定できない。 そのため,前記のような経緯で本件犯行に及んだ点について,犯行を決意した意思決定への非難の程度を減じる性質のものとして考慮する余地はあるが,他方で,先に示したような苛烈で残酷な暴行を被害者に加えることへの理解は困難であること,前記疾病歴等の影響は間接的なものにとどまること,被告人には,粗暴犯による罰金前科が複数ある上,酒を飲んで激高して犯行に及んだ傷害罪により保護観察付き執行猶予に処され,その猶予期間中であったから,自己の特徴を顧みて自省する機会があったともいえること,飲酒は前記保護観察の特別遵守事項として禁止されていた 高して犯行に及んだ傷害罪により保護観察付き執行猶予に処され,その猶予期間中であったから,自己の特徴を顧みて自省する機会があったともいえること,飲酒は前記保護観察の特別遵守事項として禁止されていたにもかかわらずこれを破ってしたものであることなどを踏まえると,考慮の程度には自ずと限界がある。 以上のとおり,本件犯行に関する事情が相当に悪質であることを踏まえると,本件は,同種事案((処断罪)傷害致死,(共犯関係等)単独犯,(凶器等)なし,3(処断罪と同一又は同種の罪の件数)1件,(被告人から見た被害者の立場)知人・友人・勤務先関係,(被害者の落ち度)なし,(犯意)一時的・偶発的)の量刑傾向の中では,重い部類に位置付けられる。 その上で, 被告人が,自分なりに言葉を選んで被害者やその遺族に対する謝罪や反省の念を述べており,今後,飲酒への向き合い方や対人関係の構築に課題があるものの,相当期間の服役を通じた被告人の更生には期待したいと考えられること,犯行直後に救急車を呼ぶべく119番通報をしたこと等の事情も併せ考慮して,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (検察官沼前輝英,同小沼智,国選弁護人森谷拓朗(主任),同川上有 各出席)(求刑 懲役10年,弁護人の科刑意見 懲役4年)令和3年9月3日札幌地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官 石 田 寿 一 裁判官 古 川 善 敬 裁判官 北 村 規 哲

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