令和2年(ネ)第1683号損害賠償請求控訴事件令和5年8月30日大阪高等裁判所第9民事部判決 主文 1 1審被告の本件控訴に基づき、原判決中1審被告敗訴部分を取り消す。 2 上記部分に係る1審原告A、同D及び同Gの各請求をいずれも棄却する。 3 1審原告らの本件控訴をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は第1、2審を通じ、1審原告らの各負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 1審原告ら⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 1審被告は、1審原告Aに対し、1380万0300円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑶ 1審被告は、1審原告Dに対し、535万1000円及びこれに対する平 成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ 1審被告は、1審原告Gに対し、715万0804円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑸ 1審被告は、1審原告Bに対し、554万3484円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑹ 1審被告は、1審原告Cに対し、723万4539円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑺ 1審被告は、1審原告Eに対し、731万5000円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑻ 1審被告は、1審原告Fに対し、1583万6405円及びこれに対する 平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 1審被告主文1、2項に同旨第2 事案の概要1審原告らはいずれも 83万6405円及びこれに対する 平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 1審被告主文1、2項に同旨第2 事案の概要1審原告らはいずれも1審被告が福知山市内で行った造成事業の造成地である宅地を購入して所有し、同宅地上に存する建物に居住している。1審原告A は別紙物件目録記載1の宅地(以下「A土地」という。)、同Dは同目録記載2の宅地(以下「D土地」という。)、同Gは同目録記載3の宅地(以下「G土地」という。)を1審被告からそれぞれ購入した(以下、これら3名の1審原告を「買主原告ら」、買主原告らが購入した各土地を「本件売却地」という。)。また、1審原告Bは同目録記載4の土地(以下「B土地」とい う。)、同Cは同目録記載5の土地(以下「C土地」という。妻との共有)、同Eは同目録記載6の土地(以下「E土地」という。当初は妻との共有)、同Fは同目録記載7の土地(以下「F土地」という。妻との共有)を、第三者からそれぞれ購入した。G土地は福知山市内の戸田地区に、その余の1審原告らの宅地はいずれも石原(いさ)地区にある(以下、同目録記載の各土地を「本 件各土地」、1審原告Gを除く1審原告らを「石原地区原告ら」、同人らが取得した各土地を「本件石原地区土地」という。)。 平成25年9月15日から翌16日にかけて台風18号(以下「平成25年台風」という。)が近畿地方に襲来し、本件各土地が存する石原地区及び戸田地区(以下「本件各地区」という。)も床上浸水等の影響を受けた。 本件は、①買主原告らが、本件売却地の販売に携わった1審被告の職員らが、本件各地区の過去の浸水状況や今後の危険性の高さなどを買主原告らに適切に説明すべきであったのにこれを怠ったため、水害のリスクの高さを知 、①買主原告らが、本件売却地の販売に携わった1審被告の職員らが、本件各地区の過去の浸水状況や今後の危険性の高さなどを買主原告らに適切に説明すべきであったのにこれを怠ったため、水害のリスクの高さを知らずに本件売却地を購入したことで平成25年台風等により損害を被ったと主張して、1審被告に対し、各売買契約における説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償とし て、1審原告Aにおいて控訴の趣旨1項⑵、同Dにおいて同1項⑶、同Gにおい て同1項⑷の内容の各支払(附帯請求は平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による損害発生後の遅延損害金の支払を求めるもの。以下「前記同旨の遅延損害金」という。)を、②石原地区原告らが、1審被告の職員らは、元々浸水被害が強く懸念される石原地区の土地区画整理事業(以下「石原地区事業」という。)をあえて推進して同地区が浸水被害に遭う危険性 を作出し、平成16年に福知山市内に襲来した台風の後も減災措置が不十分で、由良川や大谷川が氾濫する可能性が軽減されていないことを認識していたのであるから、地方公共団体として、石原地区の住民や宅地の買受希望者等に対し、石原地区事業に係るウェブサイトにハザードマップを掲示するか、ハザードマップが閲覧できるウェブサイトへのリンクを張り、宅地が浸水被害に遭 う危険性について注意喚起し、宅地の買受希望者に対し、宅地の嵩上げや水害保険の締結等、浸水被害を軽減するための情報を提供する義務を負っていたのにこれを怠り、これによって平成25年台風等により損害を被ったと主張して、それぞれ、1審被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、1審原告A及び同Dにおいて前記①と同内容の(選択的併合)、1審原告 Bにおいて控訴の趣旨1項⑸、同Cにおいて同1項⑹、 て、それぞれ、1審被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、1審原告A及び同Dにおいて前記①と同内容の(選択的併合)、1審原告 Bにおいて控訴の趣旨1項⑸、同Cにおいて同1項⑹、同Eにおいて同1項⑺、同Fにおいて同1項⑻の内容の各支払(附帯請求は前記①と同じ。)を、それぞれ求めた事案である(第1事件、平成27年(ワ)第3452号は1審原告A、同B及び同Cの3名、第2事件、平成28年(ワ)第2679号は1審原告D、同E及び同Fの3名、第3事件、平成28年(ワ)第2834号は 1審被告Gがそれぞれ提起し、併合審理されている。)。 原判決(令和2年6月17日言渡し)は、前記①の買主原告らの不法行為に基づく損害賠償請求について、1審被告の職員らに、買主原告らの各売買に際して説明義務違反があり、買主原告らに対する不法行為に当たるとした上で、過失相殺の上で、1審原告Aに係る請求を432万1743円及びこれに対す る前記同旨の遅延損害金、同Dに係る請求を38万円及びこれに対する前記同 旨の遅延損害金、同Gに係る請求を341万0400円及びこれに対する前記同旨の遅延損害金の各支払を求める限度で認容し、その余の各請求をいずれも棄却し、前記②の石原地区原告らの国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求について、1審被告が石原地区原告らに対して情報提供義務を負う法令上の根拠がなく、1審被告の職員らが職務上の法的義務に違背したとはいえないとし た上で、同原告らの請求をいずれも棄却した。 本件は、原判決の敗訴部分を不服として、1審原告ら及び1審被告がそれぞれ控訴した事案である。 1 前提事実証拠(各文末に後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認 められる。 ⑴ 本件各地区の位置関係等1審 審原告ら及び1審被告がそれぞれ控訴した事案である。 1 前提事実証拠(各文末に後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認 められる。 ⑴ 本件各地区の位置関係等1審被告は、石原地区事業及び戸田地区非農地造成事業(以下「戸田地区事業」といい、石原地区事業と併せて「本件各事業」という。)の事業主であり、造成された石原地区の一部の保留地や戸田地区の一部の空き部分を宅 地として分譲していた。 ⑵ 買主原告らの宅地取得ア 1審原告Aは、平成22年9月27日、1審被告から、石原地区にあるA土地を約1130万円で購入し(以下「本件売買1」という。)、平成24年2月下旬以降、肩書住所地である同所(1審被告が当審において、 観音寺~土師川合流点付近のハザードマップに本件各土地を入れ込んで作成、提出したマップ(以下「当審マップ」という。)の「甲A:A」)の居宅で生活している。 (甲A1~3、7、8、乙75)イ本件売買1に際し、1審被告で主に対応したのは当時の土木建設部用地 販売促進室に在籍したWであった。 (甲A6、乙49)ウ 1審原告Dは、平成25年2月26日、1審被告から、石原地区にあるD土地を約891万円で購入し(以下「本件売買2」という。)、同年12月以降、夫のMと共に、肩書住所地である同所(当審マップの「甲D:D」)の居宅で生活している。 (甲D1~3、乙75、証人M)エ本件売買2に関し、1審被告で主に対応したのは、当時財務資産活用課主査であったQであった。 (証人Q、証人M)オ 1審原告Gは、平成22年6月30日、1審被告から、戸田地区にある G土地を約631万円で購入し(以下「本件売買3」という。)、平成23年5月以降、肩書住所地である同所(当 Q、証人M)オ 1審原告Gは、平成22年6月30日、1審被告から、戸田地区にある G土地を約631万円で購入し(以下「本件売買3」という。)、平成23年5月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲G:G」)の居宅で生活している。 (第3事件甲1、3、4、6、乙75)カ本件売買3に関し、1審被告で主に対応したのは当時農林商工部で非 農用地造成事業を担当していたRであった。 (乙51、1審原告G本人)⑶ その余の1審原告らの宅地の取得ア 1審原告Bは、不動産仲介により、平成21年12月28日、第三者から、石原地区にあるB土地を1070万円で購入し、平成22年7月以 降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲B:B」)の居宅で生活している。 (甲B1~3、乙75、1審原告B本人)イ 1審原告Cは、不動産仲介により、平成22年3月28日、第三者から妻との共有名義で、石原地区にあるC土地を1280万円で購入し、同年 11月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲C:C」)の居宅 で生活している。 (甲C1~3、乙75、1審原告C本人)ウ 1審原告Eは、不動産仲介により、平成22年9月18日、第三者から妻との共有名義で(その後、妻から共有持分を譲り受けた。)、石原地区にあるE土地を1030万円で購入し、平成23年5月以降、肩書住所地 である同所(当審マップの「甲E:E」)の居宅で生活している。 (甲E1~3、乙75、1審原告E本人)エ 1審原告Fは、不動産仲介により、平成21年8月1日、第三者から妻との共有名義で、石原地区にあるF土地を1050万円で購入し、平成22年1月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲F:F」)の居 宅で生活している。 (甲F1~3、乙 日、第三者から妻との共有名義で、石原地区にあるF土地を1050万円で購入し、平成22年1月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲F:F」)の居 宅で生活している。 (甲F1~3、乙75、1審原告F本人)⑷ 由良川、大谷川及び本件各土地の位置関係ア本件各土地及び由良川の位置関係は当審マップに記載のとおりである。戸田地区は石原地区より北側の由良川に近い位置にある。由良川は 国が管理する一級河川であり、上流部は勾配が急で流れが速いが、中流部の福知山盆地では勾配が緩くなって水が溜まりやすく、後記⑸のとおり、過去に台風等により氾濫等の水害が生じており、適切な治水の在り方が課題となっていた。 (甲共5、甲共106、乙75) イ大谷川は京都府が管轄する河川で、本件石原地区土地の北側を東方から西方に向けて流れ、本件石原地区土地の西北西にある由良川築堤予定箇所付近で由良川と合流する。 (甲共58、乙82)ウ本件石原地区土地は、北側(由良川方面)に接する農地よりやや高い位 置にある。他方で、同地区土地の一部はすり鉢状になって高低差があり、 石原地区の西側に隣接する土地区に近いB土地やC土地は本件石原地区土地の東側に比してやや低い位置にある。 (甲共31、乙75)⑸ 平成25年台風以前の福知山市に係る主な水害の概要ア昭和28年9月の台風による水害 昭和28年9月24日から翌25日にかけて台風13号(以下「昭和28年台風」という。)が近畿地方に接近し、その影響による豪雨により、由良川上流では時間雨量30~60mm、総雨量約500mm、福知山水位観測所で総雨量約360.2mm、由良川本川の最高水位7.8mを計測し、福知山市においても死者4名、床上浸水3641戸、床下浸水19 は時間雨量30~60mm、総雨量約500mm、福知山水位観測所で総雨量約360.2mm、由良川本川の最高水位7.8mを計測し、福知山市においても死者4名、床上浸水3641戸、床下浸水19 5戸等の被害が生じる水害が発生した。 (甲共5(9頁)、甲共13(5頁)、併合前甲14)イ平成16年10月の台風による水害平成16年10月20日頃、台風23号(以下「平成16年台風」という。)が近畿地方に上陸し、その影響による豪雨により、福知山水位観測 所で総雨量288.7mm、由良川本川の最高水位7.55mに達し、由良川の氾濫により、福知山市において死者はなく、床上浸水405戸、床下浸水439戸等の被害が生じる水害が発生した。 (甲共5(9頁)、甲共13(5頁)、乙26の1及び2)⑹ 1審被告によるハザードマップの作成、配布等 ア 1審被告は、当時の水防法及び水防法施行規則に基づき、国土交通省が提供するデータ等をもとに、平成18年6月、本件各地区を含む地域についての「福知山市由良川拡大版防災ハザードマップ(観音寺~土師川合流点)」を作成した(以下「本件ハザードマップ」という。)(乙9)。 防災ハザードマップとは、堤防決壊、洪水氾濫等が発生した際の浸水や 避難に関する情報を住民にわかりやすく提供し、人的被害等を防ぐことを主な目的として作成されるもので、浸水想定区域や避難情報等が記載され、市町村長が作成主体とされている(水防法14、15条、同法施行規則11条参照)。なお、当審マップは、本件ハザードマップに1審原告らの現住所及び転居前住所、本件に関連する建物等に関する情報を反映させ たものである。 (乙9、乙10、乙75)イ 1審被告は、平成18年6月、居住地を含む地域の防災ハザードマップ 審原告らの現住所及び転居前住所、本件に関連する建物等に関する情報を反映させ たものである。 (乙9、乙10、乙75)イ 1審被告は、平成18年6月、居住地を含む地域の防災ハザードマップを福知山市内の各世帯に自治会を通じて戸別配布したほか、同月23日以降に福知山市に転入した者にも、住民登録の際に、1審被告市民課の窓口 で、本件ハザードマップ外、居住地を含む地域の防災ハザードマップを交付していた。 (乙11の1~6、乙12)⑺ 平成25年台風以後の福知山市に係る水害ア平成25年台風による水害 平成25年9月15日から翌16日にかけて台風18号(平成25年台風)が近畿地方に接近し、福知山雨量観測所で総雨量216mm、1時間当たり最大雨量29mm、福知山水位観測所で由良川の最高水位8.3mと計測され、由良川流域の広い範囲で長時間の降雨が続いたことで河川水位が上昇し、福知山市内の本件各地区を含む広い区域で多数の家屋被害が 生じる水害が発生した。 (甲共2(4、21頁)、乙32(4頁))イ平成29年台風による水害平成29年10月23日に台風21号(以下「平成29年台風」という。)が静岡県御前崎市付近に上陸し、停滞した前線の影響等により本庄 雨量観測所で同日の累加雨量258.0mm、福知山水位観測所で由良川 の最高水位7.39mと計測され、福知山市内の本件各地区を含む広い区域で多数の家屋被害が生じる水害が発生した。 (甲共38~47) 2 本件の主たる争点及びこれに関する当事者の主張以下の⑴~⑷は買主原告らの1審被告に対する不法行為に基づく損害賠償請 求に関する争点であり、⑸~⑾は石原地区原告らの1審被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求に関する争点である。 ⑴ の⑴~⑷は買主原告らの1審被告に対する不法行為に基づく損害賠償請 求に関する争点であり、⑸~⑾は石原地区原告らの1審被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求に関する争点である。 ⑴ 争点1(本件各売買に係る1審被告の不法行為(説明義務違反)の有無)ア買主原告らの主張1審被告は、地方公共団体として、対象土地について浸水被害が強く懸 念されていた本件各事業をあえて推進して事業主として宅地造成に強く関与し、本件各地区の造成地が浸水被害に遭う危険性を作出してきたものであり、各事業の公共性、公益的性質に照らし、宅地売買の適正性が強く求められる立場にあった。また、1審被告は福知山市における由良川の氾濫による過去の水害履歴に係る情報を収集、分析し、これをもとに本件ハザ ードマップを作成するなど、本件売却地の浸水リスクの把握において高度の専門性を有しており、更には、平成16年台風により本件各地区が多大な浸水被害を受けたことや、その後も由良川の築堤事業が未了であり、由良川や大谷川の氾濫を防ぐ減災措置が不十分であるため、これらの河川の氾濫による本件各地区の浸水リスクが軽減されていないことについても認 識していた。 これに対し、私人である買主原告らにそのような情報はなく、1審被告との情報格差は顕著であった。また、事業主である地方公共団体である1審被告が造成、販売する宅地は、私企業のそれよりも安全性が高いと信頼するのが通常である。 これらの事情に照らせば、1審被告は、本件各事業に係る宅地の分譲で ある本件各売買に際し、信義則上、買主原告らに本件売却地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を説明すべき義務を負っていた。本件各売買と無関係な時期に自治会を通じて本件ハザードマップを配布するだけでは説明義 件各売買に際し、信義則上、買主原告らに本件売却地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を説明すべき義務を負っていた。本件各売買と無関係な時期に自治会を通じて本件ハザードマップを配布するだけでは説明義務の履行として不十分であって、1審被告は、本件各売買に際して買主原告らに対し、①本件ハザードマップの内容、②直近の平成16年台風の 被害状況及び③今後の浸水被害の見込み等について、その危険性を十分に説明すべきであった。それにもかかわらず、本件売買1につきWら、同2につきQら、同3につきRら1審被告の職員らは、本件各地区の過去の水害、浸水状況を認識しながら、そのような説明を怠って買主原告らに本件売却地を購入させたもので、買主原告らに対する不法行為に当たる。 イ 1審被告の主張否認し、又は争う。浸水被害の発生の有無及び程度は降雨量によってのみ決まるものではなく、降雨時間、降雨場所、由良川の水位、住宅地への直接の降雨量、由良川の築堤状況等の様々な要因が複雑に絡み合った上で明らかになるのであるから、1審被告の職員らが、平成25年台風等で本 件売却地に生じた浸水被害について本件各売買の時点で予測することは困難であった。1審被告としては、平成16年台風の際の浸水被害の程度や、その後にとられた減災措置などから、本件売却地の浸水リスクが高いとは認識していなかった。平成25年台風は稀にみる規模の天災で、買主原告らの浸水被害は不可抗力というほかない。 また、1審原告Aは本件売買1の4年前から、同Dは本件売買2の約6年前から、同Gは本件売買3の6年前から福知山市内に居住し、いずれも以前に本件ハザードマップの提供を受けており、ことに同Dにおいては本件売買2の際に対応に当たったQから本件ハザードマップの交付を受け、本件ハザードマップや 3の6年前から福知山市内に居住し、いずれも以前に本件ハザードマップの提供を受けており、ことに同Dにおいては本件売買2の際に対応に当たったQから本件ハザードマップの交付を受け、本件ハザードマップや物件調書を示されてD土地が本件ハザードマップの 浸水地域内にあることについて具体的に説明を受けるなど、本件売却地の 浸水リスクについて1審被告と同程度の情報に接しており、また、いずれの買主も情報の取得は容易であった。 したがって、本件各売買に際し、1審被告の職員らに買主原告らに対する説明義務違反はなく、不法行為に当たる事実はない。 ⑵ 争点2(争点1の不法行為に基づいて1審原告Aに損害が生じたといえる か。)ア 1審原告Aの主張1審原告Aは、本件売買1に際し、Wら1審被告の職員らから適切に説明を受けていればA土地を購入しないか、水害に備えた建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、説明がなか ったためにそのような選択ができず、平成25年台風により床上浸水70cm、自動車水没の被害を、平成29年台風でも床下浸水の被害を受けた。 したがって、平成25年台風の被害に係る建物補修費用719万円、電子レンジや自動車等の動産被害の合計54万0300円、慰謝料500万 円及び弁護士費用107万円の合計1380万0300円が、争点1の1審被告の職員らの不法行為と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張否認する。浸水被害の状況に係る写真からは、1審原告Aが提出する見積書記載の補修を要したかは不明であり、その余の損害も立証されていな い。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑶ 争点3(争点1の不法行為に基づいて1審原告Dに損害が生じた かは不明であり、その余の損害も立証されていな い。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑶ 争点3(争点1の不法行為に基づいて1審原告Dに損害が生じたといえるか。)ア 1審原告Dの主張 1審原告Dは、本件売買2に際し、Qら1審被告の職員らから適切に説 明を受けていればD土地を購入しないか、水害に備えて建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、説明がなかったためにそのような選択ができず、平成25年台風により建築中の自宅について床上浸水10cmの被害を受けた。 したがって、引渡しが遅れたために要した賃料5万1000円、慰謝料 500万円及び弁護士費用30万円の合計535万1000円が、争点1の1審被告の職員らの不法行為と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張否認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑷ 争点4(争点1の不法行為に基づいて1審原告Gに損害が生じたといえるか。)ア 1審原告Gの主張1審原告Gは、本件売買3に際し、Rら1審被告の職員らから適切に説明を受けていればG土地を購入しないか、水害に備えた建物を築造し、損 害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、説明がなかったためにそのような選択ができず、その結果、平成25年台風により床上浸水44cmの被害を受けた。 したがって、建物補修費用等の合計155万0500円、冷蔵庫買換え費用9万9800円、自動車購入費用185万0504円、慰謝料300 万円及び弁護士費用65万円の合計715万0804円が、争点1の1審被告の職員らの不法行為と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張 、自動車購入費用185万0504円、慰謝料300 万円及び弁護士費用65万円の合計715万0804円が、争点1の1審被告の職員らの不法行為と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張否認する。受注明細書だけでは1審原告Gが自動車を別途購入したことがわかるだけで買換えを要したかは不明であり、その余の損害も立証され ていない。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地 があるに過ぎない。 ⑸ 争点5(石原地区原告らに対する1審被告の情報提供義務に違反した不作為の公権力の行使があり、それが石原地区原告らに対する違法行為に当たるか。)ア石原地区原告らの主張 1審被告の職員らは、浸水被害が強く懸念される石原地区事業をあえて推進し、減災措置をとるべき立場にあったが、平成16年台風後も減災措置が不十分で、由良川や大谷川が氾濫する可能性が軽減されていないことを認識していた。 このため、1審被告の職員らは、地方公共団体の公務員として、石原地 区の住民や宅地の買受希望者等、同地区の住民になろうとする者が自らの生命、身体及び財産を自衛できるように、災害対策基本法(1条、2条の2、5条、8条、51条1項)、水防法(1条、15条3項、)、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)等の趣旨に基づき、①ハザードマップを作成、公表、配布し、ウェブサイトから誰でも閲覧可能にし、② 同事業に係るウェブサイトにハザードマップを掲示するか、ハザードマップが閲覧できるウェブサイトへのリンクを張り、宅地が浸水被害に遭う危険性について注意喚起し、③同事業に係る宅地の売却に関する広告等においても前記②と同様の措置をとり、④1審被告が自ら同事業に係る宅地を売却する場合は物件調書に前記②と同様の措置をとり、⑤ 害に遭う危険性について注意喚起し、③同事業に係る宅地の売却に関する広告等においても前記②と同様の措置をとり、④1審被告が自ら同事業に係る宅地を売却する場合は物件調書に前記②と同様の措置をとり、⑤同事業に係る宅 地の取引を仲介する不動産仲介業者にハザードマップを交付し、浸水被害に遭う危険性に係る情報提供や行政指導等の必要な措置をとり、⑥電信柱や建物等に洪水標識を設置し、浸水深を表示し、⑦目につきやすい場所に看板等を設置して必要な情報が得られる問合せ先やこれが入手できるウェブサイトのURLを表示し、⑧宅地の買受希望者に対し、宅地の嵩上げや 水害保険の締結等、浸水被害を軽減するための情報を提供する義務を負っ ていた。 1審被告の職員らは、公権力の行使として前記の各義務を怠り、石原地区原告らに後述の各損害を生じさせたものであるから、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うべきである。 イ 1審被告の主張 否認する。地方公共団体としての1審被告と土地購入希望者に過ぎない石原地区原告らに直接の接点はなく、不動産取引の契約交渉準備段階にあるわけでもなく、同人らが主張する情報提供義務を生じさせるだけの関係になかった。したがって、1審被告の職員らは、石原地区原告らに対し、そのような情報提供義務を負う立場になかった。1審被告の職員らは災害 対策基本法や水防法の定めに従って防災に係る情報を周知させる義務等を履践しており、これに加えて石原地区原告らの主張に係る情報提供義務を1審被告の職員らに義務付ける法的根拠はない。 また、前述のとおり、1審被告においては平成25年台風当時、石原地区の浸水リスクがそれほど高いとは認識していなかったもので、石原地区 原告らが主張する情報提供義務の前提となるリスク認識がなかっ また、前述のとおり、1審被告においては平成25年台風当時、石原地区の浸水リスクがそれほど高いとは認識していなかったもので、石原地区 原告らが主張する情報提供義務の前提となるリスク認識がなかった。他方で、石原地区原告らはいずれも本件ハザードマップの提供を受けるなど、石原地区の浸水リスクについて1審被告の職員らと同程度の情報に接しており、また、容易に情報を取得できる状況にあった。 加えて、1審被告が提供すべきであったとされる浸水被害の危険性に関 する情報は石原地区原告らによって一義的に特定されておらず、当該情報が宅地の購入希望者に伝えられた場合にどのように結果回避に結び付くのかの説明もなされていない。 したがって、1審被告は、石原地区原告らに対し、国家賠償法に基づく損害賠償責任を負わない。 ⑹ 争点6(争点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Aに損害が生じた といえるか。)ア 1審原告Aの主張1審原告Aは、1審被告の職員らから適切に情報提供を受けていれば、A土地を購入しないか、水害に備えた建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、情報提供がなかったためにそ のような選択ができず、前述のとおり、平成25年台風により床上浸水70cm、自動車水没の被害を、平成29年台風でも床下浸水の被害を受けた。 したがって、争点2に係る1審原告Aの主張と同旨の損害合計1380万0300円が、争点5の1審被告の情報提供義務違反と因果関係のある 損害である。 イ 1審被告の主張否認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑺ 争点7(争点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Dに損害が生じた といえるか。)ア 1審原告D 認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑺ 争点7(争点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Dに損害が生じた といえるか。)ア 1審原告Dの主張1審原告Dは、1審被告の職員らから適切に情報提供を受けていればD土地を購入しないか、水害に備えた建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、情報提供がなかったためにその ような選択ができず、前述のとおり、平成25年台風により建築中の自宅について床上浸水10cmの被害を受けた。 したがって、争点3に係る1審原告Dの主張と同旨の損害合計535万1000円が、争点5の1審被告の情報提供義務違反と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張 否認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑻ 争点8(争点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Bに損害が生じたといえるか。)ア 1審原告Bの主張 1審原告Bは、1審被告の職員らから適切に情報提供を受けていればB土地を購入しないか、水害に備えて建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、情報提供がなかったためにそのような選択ができず、平成25年台風により床上浸水125cmの被害を、平成29年台風により半壊し、床上浸水25cmの被害を受けた。 したがって、建物補修費用630万1575円、付属設備補修費用7万2030円、ピアノ等の買換え費用151万2879円、慰謝料500万円の合計から東京海上日動火災保険株式会社から受領した水害保険766万3000円を損益相殺した残金522万3484円及び弁護士費用32万円の合計554万3484円が、争点5の1審被告の情報 500万円の合計から東京海上日動火災保険株式会社から受領した水害保険766万3000円を損益相殺した残金522万3484円及び弁護士費用32万円の合計554万3484円が、争点5の1審被告の情報提供義務違反 と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張否認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑼ 争点9(争点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Cに損害が生じた といえるか。)ア 1審原告Cの主張1審原告Cは、1審被告の職員らから適切に情報提供を受けていればC土地を購入しないか、水害に備えて建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、情報提供がなかったためにその ような選択ができず、平成25年台風により半壊し、床上浸水130cm の被害を、平成29年台風により半壊し、床上浸水90cmの被害を受けた。 したがって、建物補修費用1020万6299円、ペットの死亡等の動産損害696万円、慰謝料500万円の合計から日本興亜損害保険株式会社から受領した水害保険1358万6760円及び三井住友海上火災保険 株式会社から受領した車両保険181万5000円を損益相殺した残金676万4539円及び弁護士費用47万円の合計723万4539円が、争点5の1審被告の情報提供義務違反と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張否認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余 地があるに過ぎない。 ⑽ 争点10(争点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Eに損害が生じたといえるか。)ア 1審原告Eの主張1審原告Eは、1審被告の職員らから適切に情報提供を受けていればE 土地を購入しないか、水害に 点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Eに損害が生じたといえるか。)ア 1審原告Eの主張1審原告Eは、1審被告の職員らから適切に情報提供を受けていればE 土地を購入しないか、水害に備えて建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、情報提供がなかったためにそのような選択ができず、平成25年台風により床上浸水15cmの被害を受けた。 したがって、建物補修費用等178万5000円、動産損害5万円、慰 謝料500万円及び弁護士費用48万円の合計731万5000円が、争点5の1審被告の情報提供義務違反と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張否認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余地があるに過ぎない。 ⑾ 争点11(争点5の情報提供義務違反に基づいて1審原告Fに損害が生じ たといえるか。)ア 1審原告Fの主張1審原告Fは、1審被告の職員らから適切に情報提供を受けていればF土地を購入しないか、水害に備えた建物を築造し、損害保険に加入して損害を軽減するなどの措置をとっていたが、情報提供がなかったためにその ような選択ができず、平成25年台風により半壊し、床上浸水110cmの被害を、平成29年台風により半壊し、床上浸水3cmの被害を受けた。 したがって、建物補修費用等675万7541円、動産損害552万3864円、慰謝料500万円の合計から車両保険として東京海上日動株式会社から受領した214万5000円、あいおいニッセイ同和損害保険株 式会社から受領した55万円を損益相殺した残金1458万6405円及び弁護士費用125万円の合計1583万6405円が、争点5の1審被告の情報提供義務違反と因果関係のある損害である。 イ 1審被告 式会社から受領した55万円を損益相殺した残金1458万6405円及び弁護士費用125万円の合計1583万6405円が、争点5の1審被告の情報提供義務違反と因果関係のある損害である。 イ 1審被告の主張否認する。自己決定権が侵害されたとして慰謝料の賠償が認められる余 地があるに過ぎない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、証拠(各文末に後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ 本件各地区の位置関係ア本件各地区はいずれも福知山市内の遷喬地区の一部である。石原地区は福知山市中心部から東に約5.5kmに位置し、北側を大谷川、西側を一般地方道石原停車場戸田線に囲まれ、同地区西側(大谷川下流側)には土(つち)地区が接している。 (甲共2(21頁)、乙59の1、乙75、証人U(24頁)) イ戸田地区は石原地区の北側に位置し、戸田地区の北側は由良川に接している(乙75)。 ⑵ 大谷川と本件各地区及び本件石原地区土地の位置関係大谷川は京都府が管理する一級河川で、本件石原地区土地の北側を東方から西方に向けて流れ、本件石原地区土地の西北西にある後記⑶の由良川 築堤予定箇所付近で由良川と合流する。川幅は3、4m程度で、由良川(福知山での川幅約480m)に比すると明らかに流水規模が小さい。 (甲共50、甲共53、甲共54、甲共58、乙28(右下手書き3、6頁)、乙82、乙83(5頁)、乙84)⑶ 由良川築堤事業の着工 ア国が管理する由良川は地勢的に氾濫による水害が生じやすく、以前から適切な治水の在り方が課題となっていた。由良川本川の観測によれば、福知山地点では昭和28年台風で上昇した水位(7.8m)が最高で、以後、福知山計画高水位は7.74m による水害が生じやすく、以前から適切な治水の在り方が課題となっていた。由良川本川の観測によれば、福知山地点では昭和28年台風で上昇した水位(7.8m)が最高で、以後、福知山計画高水位は7.74mと設定された。 (甲共5(9頁)、乙32(4頁)、乙42) イ国土交通省は、由良川の河川整備計画に係る30か年計画として、2003年(平成15年)から2033年までの30年間で由良川の築堤を完成させる工事に着手し(以下「由良川築堤事業」という。)、由良川左岸においては綾部方面から順次築堤がなされ、平成15年の時点で舞鶴若狭道路の高架下付近に至っていた。 (乙69、証人V(2、3頁))⑷ 本件各事業に関する事実経過ア京都府は、1審被告との協議を経て、昭和56年頃、本件石原地区土地を含む石原地区の一部の区域を市街化区域に指定した。本件石原地区土地はかつて農地で石原地区の北西部に位置し、1審被告を事業主とする石原 地区事業によって宅地化された。大谷川以北の農地側は同川以南の本件石 原地区土地付近よりも低くなっている。なお、石原地区事業の実施に際して石原地区の一部が市街化区域に指定された経緯は、当時の資料が保存期間の経過で現存しないために確認することができない。石原地区事業による宅地造成は平成4年頃に始まり、1審被告によって保留地の販売が平成11年度に開始された後も、同地区内の造成工事は同時並行的になされ、 同事業が継続していた。 (甲共16(205頁))イ戸田地区事業は、由良川改修事業で築堤する際に、現在の戸田地区北側にあった旧集落が堤防の川側に入ってしまうことから、1審被告が事業主となり、同集落住民の移転先となる住宅用地の確保を目的として、平成1 4年度から平成17年度にかけて実施さ 現在の戸田地区北側にあった旧集落が堤防の川側に入ってしまうことから、1審被告が事業主となり、同集落住民の移転先となる住宅用地の確保を目的として、平成1 4年度から平成17年度にかけて実施されたものである。 (乙33、乙51、乙57、乙85)⑸ 大谷川の治水事業等、1審被告が関与した減災措置の経過ア京都府は、平成3年に石原地区事業について都市計画を決定したが、治水対策計画書の治水対策計画概要の中で、京都府の管轄河川である大谷川 についても計画的に治水事業を進めるものとされていた。 (甲共13(22、23頁)、乙28(1頁)、証人U(2頁))イ 1審被告は、大谷川の早期の改修工事を京都府に要望していたが、実現までの暫定的な措置として、平成16年台風の前後を通じて、京都府の防災部門で専門的知見を有する担当者の指導を踏まえ、石原地区において以 下の減災措置をした。 ① 洪水調整池(大谷川の流下能力を超えるおそれのある局地的な出水を一時的に溜める池)を設置することとし、平成16年3月31日に1号洪水調整池、平成17年2月28日に2号洪水調整池を整備した(甲共50(DVD番号00011、00013)、乙3、乙4の1及び2、 乙5の1及び2、乙6の1及び2、乙28、乙57、証人U(4、5 頁))。 ② 大谷川の増水時に宅地側への逆流を防ぐため、石原地区事業の造成地の北西部の地下埋設雨水管の下流端(大谷川との合流点)にフラップゲート(河川の合流地点で逆流を防止するための可動式ゲート)を設置した(甲共50(DVD番号00002)、乙3、乙8、証人U(14、 15頁))。 ウ 1審被告は、平成16年台風の前後を通じて、前記イと同様に、戸田地区において以下の減災措置をした。 ① 戸田地区の造成地内 VD番号00002)、乙3、乙8、証人U(14、 15頁))。 ウ 1審被告は、平成16年台風の前後を通じて、前記イと同様に、戸田地区において以下の減災措置をした。 ① 戸田地区の造成地内に、戸田地区事業の期間内に輪中堤を築造したほか、造成地の区域外にも平成16年度及び平成21年度に輪中堤を築造 し、平成21年度の輪中堤の完成により、輪中堤によって旧集落と造成地の全体を囲んだ(乙85、乙86)。 ② 戸田地区外の冠水により水位が道路まで上がってきたときに浸水が輪中堤内に入らないように遮断するために、アルミ製の止水板を設置した(乙57、第3事件乙20、証人R(4、5頁)、証人U(9頁))。 ③ 洪水時に容量を超えた排水を送水する調整池(貯水量約450トン)と、その送水先となる排水ポンプ施設(貯水槽内の水位が一定の水位を超えると2台のポンプが稼働して貯水槽内から排水し、時間当たり約1400トンを排水できる仕組み。)を設置した(乙57、第3事件乙18、同乙19、証人U(9頁))。 ⑹ 本件各地区の平成16年台風による浸水状況ア本件各地区においては、平成16年台風に至るまでの近年は、由良川の増水により本件石原地区土地より低い位置にある農地が冠水することはあっても、地域住民の日常生活に大きな支障が出るほどの浸水被害は生じていなかった(甲共106、乙32、乙57、証人T(10、11頁))。 イ平成16年10月20日頃、台風23号(平成16年台風)が近畿地方 に上陸し、その影響による豪雨により、福知山雨量観測所で総雨量288.7mmが確認され、由良川本川の最高水位は7.55mに達した。 (乙58(3頁)、証人V(3、4頁))ウ由良川の外水氾濫等により福知山市全体では床上浸水405戸、床 山雨量観測所で総雨量288.7mmが確認され、由良川本川の最高水位は7.55mに達した。 (乙58(3頁)、証人V(3、4頁))ウ由良川の外水氾濫等により福知山市全体では床上浸水405戸、床下浸水439戸の被害が生じたが、由良川からやや離れた石原地区においては 床上浸水7戸、床下浸水14戸程度の被害に留まった。他方で、石原地区の住民は、前記の浸水被害を50年に一度程度の大規模なものと受け止めた。 1審被告は、石原地区の自治会長から事情を聴取し、被災住民の報告を受けて災害対策本部の税務課職員を中心とする調査班が現地に赴き、各種 支援制度の利用が可能となる罹災証明書を発行する前提となる被害状況調査を実施した。当時の本件石原地区土地周辺は造成途中の箇所も多く、相当程度に浸水がみられたものの、1審被告としては大谷川直近の2戸(「甲」、「乙」。乙26の2の青色表示)の床下浸水と、福知山市字石原a番地所在のアパート丙(乙26の2の赤色表示。本件石原地区土地と の位置関係は当審マップ参照)につき床上2cmの浸水被害を確認したにとどまり、その他の家屋の浸水被害は確認できなかった。他方で、前記の調査結果は、減免制度をはじめとする各種支援制度を有する部署に一部の情報が提供されたが、本件各地区の造成地の浸水被害の程度は推知できないとの考えから、造成地の売却に携わった1審被告の担当部署には情報提 供されなかった。 (甲共8、甲共9、甲共22(7頁)、甲共31「測量地点図」及び「測量結果2」、甲共105、乙26の1及び2、乙70、乙79、証人U(8、17~20、31、32頁)、証人V(16頁)、1審原告E本人(7、8頁)) エ他方で、由良川に近い戸田地区では、旧集落の移転対象及び移転対象外 の既存住居及 9、証人U(8、17~20、31、32頁)、証人V(16頁)、1審原告E本人(7、8頁)) エ他方で、由良川に近い戸田地区では、旧集落の移転対象及び移転対象外 の既存住居及び造成地の地区が浸水し、下水のマンホールポンプ場が浸水するなどしたが、造成工事の途中であった造成地については家屋被害がなかった。旧集落の既存住居の浸水被害は、移転対象の家屋では床上浸水49件、床下浸水18件、床上・床下浸水1件の合計68件、移転対象外の家屋では床上浸水34件、床下浸水2件の合計36件であった。 戸田地区では、1審被告の農政課によって浸水痕跡のあった箇所の水準測量、被災現場の写真撮影等の調査が行われたが、当時の関係資料は保存年限の経過により廃棄され、現存していない。 (甲共8、乙79、乙85、乙87、乙94の1)⑺ 平成16年台風後、平成25年台風までの由良川築堤事業の経過 平成16年台風後も由良川築堤事業の当初計画が変更されることはなく、平成20年から平成22年にかけて戸田樋門周辺を含めて相当程度に築堤が進められていたが、一部の用地買収が進まなかったこともあって、本件石原地区土地やG土地の北側の築堤は平成25年台風が襲来した時点で未了であった。ただし、築堤未了の箇所には高さ3m程度の盛土や大型土のうが設置 されていた。 (甲共5(23頁)、乙33、乙40(3枚目)、乙44、乙58、乙69、乙75、乙82、証人V(3~6頁))⑻ 1審被告等による平成16年台風以後、平成25年台風までの治水、減災措置、防災に関する経過 ア 1審被告は、平成16年台風以後に、以下のような治水、減災措置をとった。 ① 石原地区事業の造成地と道路が接する箇所において、雨水の流入経路等を考慮し、造成高を道路高よ に関する経過 ア 1審被告は、平成16年台風以後に、以下のような治水、減災措置をとった。 ① 石原地区事業の造成地と道路が接する箇所において、雨水の流入経路等を考慮し、造成高を道路高より10cm高く盛土した。本件石原地区土地はいずれも盛土対象の造成地であった。 (乙1、乙2、乙80(各土地の位置は青丸で反映された箇所であり、オレンジ色が盛土部分。))。 ② 石原地区事業の造成地内側の道路自体を嵩上げし、大谷川増水時に造成地内への浸水を防止する措置をとった(乙27の黄色ラインが嵩上げ箇所。高さ数値は堤防の計画高(大谷川の計画高水位から0.6mの余 裕高さをもたせたもの)以上に高くした分の数値を示す。)。 (乙57、証人U(6頁))③ 大谷川の起点である石原口池に調整機能を持たせるため、洪水捌けの切り込みを大きくしたほか、内ネジゲートを新設し、降雨時に同池の水を抜いて同ゲートを下げ、できるだけ同池に水を溜めてから大谷川に放 流するようにした。 (甲共50(DVD番号00040)、乙6の1、乙6の2〔写真④〕、乙7、乙28、乙57)イ 1審被告は、当時の水防法や水防法施行規則等に基づき、以下の情報提供を行った。 ① 平成18年6月に本件ハザードマップを作成した。 本件ハザードマップには昭和28年台風と同規模の大雨を想定した場合の由良川本川及び土師川等の支川の浸水想定区域とその水深、当該浸水想定区域に含まれていない区域で平成16年台風により浸水した区域、土砂災害警戒箇所、避難所の位置、情報の収集先等が記載されてお り、浸水想定区域と浸水想定深については国土交通省が作成したデータ等に依拠している。当該浸水想定区域は、堤防がないところは氾濫し、堤防があっても流下能力が乏しいと 報の収集先等が記載されてお り、浸水想定区域と浸水想定深については国土交通省が作成したデータ等に依拠している。当該浸水想定区域は、堤防がないところは氾濫し、堤防があっても流下能力が乏しいところは破堤するとの前提で流下能力が低い箇所を何点か選定し、他方で複数地点が同時に破堤するとは想定せずに、当該各地点が破堤した場合の氾濫による最大の影響値を重ね合 わせたものである。本件ハザードマップによれば、本件各土地はいずれ も2m以上浸水する可能性があるとされている。 (乙9、乙10、乙48、証人T)② 平成18年6月23日以降、自治会を通じて福知山市内の各世帯に本件ハザードマップを戸別配布し、同日以降に福知山市に転入した者に対しても、1審被告市民課の窓口において、住民登録の際に防災の手引き と併せて本件ハザードマップを交付した。 (乙11の1~6、乙12、乙48、乙52、証人T(5~7頁))③ 広報ふくちやまを月2回の頻度で自治会を通じて市民に配布し、その中で、平成19年6月以降、定期的に本件ハザードマップと同旨の防災マップの確認を呼び掛け、総務課、市民課及び各支所で配布する旨呼び 掛けていたほか、自治会を通じて定期的に市民に防災訓練を呼び掛け、その際に防災マップの確認を呼び掛けていた。 (乙13の1~11、乙15の1及び2、証人T(6~9頁))。 ⑼ 平成16年台風以後、平成25年台風までのその他の経過ア平成21年12月4日、石原地区事業について換地処分が公告された。 イ平成22年2月26日、石原地区事業について竣工式が行われた。 ウ平成23年に2回にわたって台風が接近したが、石原地区の浸水被害は石原地区事業内北側の農地や道路の冠水程度にとどまり、被災家屋認定調査の対象となる家屋が 石原地区事業について竣工式が行われた。 ウ平成23年に2回にわたって台風が接近したが、石原地区の浸水被害は石原地区事業内北側の農地や道路の冠水程度にとどまり、被災家屋認定調査の対象となる家屋がなかったため、1審被告による被害調査は実施されなかった。また、戸田地区についても、旧集落の既存住居(移転対象及び 移転対象外)、造成地のいずれも浸水被害は確認されなかった。 (乙43、乙68、乙88、乙95)⑽ 平成25年台風及び平成29年台風が本件各地区に及ぼした影響等ア平成25年台風による浸水被害等平成25年9月15日から翌16日にかけて台風18号(平成25年台 風)が近畿地方に上陸し、福知山雨量観測所で総雨量216mm、1時間 当たり最大雨量29mmと確認された。降雨傾向は昭和28年台風に近く、由良川流域の広い範囲で長時間の降雨が続き、比較的上流部からの流下が多かったこともあって、由良川本川の水位は福知山計画高水位の7. 74mを大きく超過し、観測史上最高となる8.3mとなった(福知山観測所)。実績流量は1秒当たり約5330㎥となり、同年8月30日から 気象庁で運用が開始された特別警報(従来の警報の発表基準をはるかに超える豪雨等が予想され、重大な災害の危険性が著しく高まっている場合に発令される警報)が初めて発令された。人的被害はなかったが、由良川は約15km(本件各地区を含む)にわたって氾濫し、福知山市全体で家屋全壊2戸、大規模半壊19戸、半壊311戸、一部損壊・床上浸水423 戸、床下浸水356戸、遷喬地区のうち由良川に近い戸田地区で大規模半壊3戸、半壊58戸、一部損壊・床上浸水49戸、石原地区で大規模半壊3戸、半壊33戸、一部損壊・床上浸水36戸、土地区で大規模半壊1戸、半壊31戸、一部 遷喬地区のうち由良川に近い戸田地区で大規模半壊3戸、半壊58戸、一部損壊・床上浸水49戸、石原地区で大規模半壊3戸、半壊33戸、一部損壊・床上浸水36戸、土地区で大規模半壊1戸、半壊31戸、一部損壊・床上浸水64戸の浸水被害が発生した。 (甲共2(4、21頁)、甲共3、乙17、乙18、乙32(2~4 頁)、乙36、乙40、乙41)前記の浸水被害は、主として由良川上流の豪雨による増水が由良川築堤事業で築堤未了であった戸田橋下流堤防から越水してきたことによるもので、大規模な外水氾濫となった。大谷川も水位が上昇し、氾濫を防ぐ洪水調整池等も奏功せず、本件石原地区土地を含む石原地区内に浸水被害が生 じた。また、戸田地区も同地区の輪中堤や調整池、排水ポンプ施設等の防水機能が奏効せず、広い範囲で家屋に浸水被害が生じた。 (甲共2(21頁)、甲共50(DVD番号00039)、乙33~41、乙44、乙47、乙69、乙82、証人U(6、7、9、23頁)イ由良川緊急治水対策 平成16年、平成25年の洪水で2度浸水した由良川下流部及び中流部 を対象に、平成25年6月に変更した由良川水系河川整備計画の治水対策を大幅に前倒しし、同年11月からおおむね10年以内に緊急治水対策が実施されることになった(乙58(4頁)、証人V(5頁))。 ウ平成29年台風による浸水被害等平成29年10月23日に台風21号(平成29年台風)が静岡県御前 崎市付近に上陸し、停滞した前線の影響等により、福知山水位観測所で由良川の最高水位7.39mと計測され、福知山市での24時間雨量は過去3番目の高値である169mmとなった。人的被害はなかったが、平成25年台風と同様に由良川の増水が整備中の戸田橋下流堤防から越水し、福知山市全体で .39mと計測され、福知山市での24時間雨量は過去3番目の高値である169mmとなった。人的被害はなかったが、平成25年台風と同様に由良川の増水が整備中の戸田橋下流堤防から越水し、福知山市全体で半壊12戸、一部損壊・床上浸水77戸、床下浸水92戸、 石原地区で床上浸水21戸、床下浸水13戸の浸水被害が発生した。他方で、戸田地区においては店舗兼倉庫1戸に床上浸水が発生するに留まった。 (甲共50、乙33~乙41、乙44、乙47、乙81、乙82) 2 前記1の事実認定に対する補足説明 ⑴ 買主原告らは、前記1⑹アについて、過去に福知山市において由良川の氾濫による多くの災害履歴があること(甲共1、甲共106)を指摘する。 しかしながら、本件では、1審被告が、本件売却地の売買に際し、買主原告らに対して説明義務違反を理由とする不法行為責任を負うか、その前提として、本件売却地を含む本件各地区の造成地周辺において、どの程度の浸水 リスクがあると認識していたかが問題となるところ、本件全証拠を検討しても、平成16年台風以前の過去の福知山市の災害履歴においては、本件各地区の造成地周辺の浸水被害が具体的にどのようなものであったかが判然としない。 したがって、本件において、由良川の氾濫による平成16年台風以前の過 去の福知山市の災害履歴については認定する必要が認められない。 ⑵ 買主原告らは、前記1⑹ウについて、平成16年台風に際し、本件石原地区土地を含む石原地区北西付近に全体的に0.5m以上の浸水被害が生じていたと主張する。 確かに、平成16年台風の後に西中筋商工振興会が作成した「にしなか防災マップ・電話帳」の平成16年水害地域データ(乙77)には、買主原告 らの主張に沿う内容と読み取れる図面がある。 張する。 確かに、平成16年台風の後に西中筋商工振興会が作成した「にしなか防災マップ・電話帳」の平成16年水害地域データ(乙77)には、買主原告 らの主張に沿う内容と読み取れる図面がある。 しかしながら、①同データの元資料(乙73、乙74)を提供した国土交通省は浸水深の記載に関与しておらず(乙72)、元資料に浸水深に関する記載がないことからすると、同データの浸水深の記載がどの程度客観的といえるかは疑問が残る。また、②石原地区北西の区域には高低差があり、平坦 でないと認められる上(甲共31)、③本件石原地区土地周辺では相当程度に浸水がみられたものの、平成16年台風による浸水の家屋被害は、大谷川直近の2戸に床下浸水、丙に2cmの床上浸水が確認されたにとどまるところ(前記1⑹エ)、当時、丙等の周辺に少なからず家屋が存したことからすると(乙26の2)、石原地区北西一体が0.5m近い浸水深に至っていた ならば、この程度の家屋被害にとどまるとは考えがたい。 したがって、同データに基づいて平成16年台風当時の浸水深を認定することはできず、これに反する買主原告らの前記主張は理由がない。 ⑶ 買主原告らは、前記1⑹エについて、丙に床上2cmの浸水が確認されており、標高差位置図(甲共31の測定結果2)を照らし合わせても、丙の周 辺は平成16年台風の水害により相当程度に浸水していたはずであると主張する。 確かに、丙が被った前記浸水被害の程度(乙70)からは、丙の周辺においても一定の浸水被害が生じていた可能性を否定することはできない。 しかしながら、前述のとおり、本件石原地区土地について平成16年台風 の際に確認できる家屋被害は前記⑵で述べた3戸のみである。また、1審原 告Dの義父及びM(以下、両名を併せて「Mら しかしながら、前述のとおり、本件石原地区土地について平成16年台風 の際に確認できる家屋被害は前記⑵で述べた3戸のみである。また、1審原 告Dの義父及びM(以下、両名を併せて「Mら」という。)は、後述のとおり、本件売買2に先立ち、D土地が過去に浸水被害に遭っていないことを近隣住民から現地で直接確認した上で購入しているところ(証人Q(3、4頁)、証人M(14、15頁))、同土地が丙の直近に存することからしても(当審マップ)、丙周辺の当時の浸水深がどの程度であったかを認定する のは困難である。 したがって、丙の床上浸水や標高差位置図のみで当時の浸水深を具体的に認定することができない以上、本件石原地区土地周辺の浸水被害としては前記1⑹エと認定するのが相当である。これに反する買主原告らの前記主張は理由がない。 3 本件各売買に係る1審被告の不法行為(説明義務違反)の有無(争点1)について⑴ 1審被告の買主原告らに対する説明義務違反の有無を判断する上では、1審被告及び買主原告らが本件各売買に際し、本件売却地が由良川の氾濫等で浸水する可能性についてどの程度具体的に予見していたかが重要な考慮要素 となる。 ⑵ そこで、前記1の認定事実をもとに、1審被告の当時の状況認識について検討する。 ア本件では、買主原告らが被った平成25年台風による浸水被害が、造成場所の選定の在り方に不備があったとか、造成地が軟弱地盤であったな ど、本件売却地の造成施工の不備といった事情によって生じたとは認められず、専ら由良川の外水氾濫等の自然災害によって生じたものであることは、証拠上明らかである。 そうすると、1審被告が本件売却地における浸水被害の危険性についてどの程度具体的に予見していたか否かを問題にすることなしに、1 氾濫等の自然災害によって生じたものであることは、証拠上明らかである。 そうすると、1審被告が本件売却地における浸水被害の危険性についてどの程度具体的に予見していたか否かを問題にすることなしに、1審被告 が本件各事業の事業主であったというだけで、買主原告らに対する説明義 務違反を問うことはできない。なお、本件全証拠を検討しても、1審被告が造成地の浸水リスクが著しく高くなることを知りながら本件各事業を実施してことさらに危険を作出した事実は認められない。 イこの点、買主原告らは、1審被告が、本件石原地区土地が本来は市街化区域とされるべきでない溢水等のリスクが高い区域であったにもかかわら ず、京都府によって市街化区域に指定された経緯があることを知っていたもので、同土地が浸水被害に遭う可能性が高いとわかっていたはずであると主張する。 しかしながら、宅地売買の売主である1審被告の買主原告らに対する説明義務違反の有無が問われている本件においては、1審被告の不法行為責 任を問う前提として、1審被告が、本件各売買に際し、台風等の自然災害によって本件売却地に浸水被害が生じることについて、相当程度の蓋然性をもって具体的に認識、予見していたといえなければならない。そして、石原地区の造成工事が開始された平成4年頃は由良川築堤事業さえ始まっていなかったことや、平成16年台風の後に同事業計画の見直しが行われ た形跡がないことからすれば、この当時、由良川の氾濫によって石原地区の造成地に浸水被害のリスクが生じ得ることについて、何らかの予測がされていたとは考えがたい。 そうすると、1審被告が、元々市街化区域でなかった本件石原地区土地が同区域に指定された上で宅地造成されたとの経緯を知っていたというだ けでは浸水被害のリスク 測がされていたとは考えがたい。 そうすると、1審被告が、元々市街化区域でなかった本件石原地区土地が同区域に指定された上で宅地造成されたとの経緯を知っていたというだ けでは浸水被害のリスク認識として不十分であって、買主原告らの前記主張は採用できない。 ウまた、買主原告らは、宅地売買の一方当事者が公共性の高い立場にある場合には、他方当事者に対して説明義務等の違反が問題となり得る、一般に、地方公共団体が造成、販売する宅地であれば高い安全性が確保されて いると信頼するのが当然であると主張する。 しかしながら、地方公共団体である1審被告が造成地を売却する場合でも、その実質は私人間の契約と同様の私経済活動に過ぎないのであるから、1審被告が本件売却地における浸水被害の危険性についてどの程度具体的に予見していたか否かを問題にすることなしに、1審被告が地方公共団体であるというだけで、宅地売買において特別な説明義務を課すことは できない。買主原告らは、宅地建物取引業法によれば、国や地方公共団体が主体となる宅地等の売買においては私企業に対する業法規制を上回る適正性が期待されているとも主張するが、そのような解釈が一般的に採られているとはいえない。 したがって、買主原告らの前記主張は理由がない。 エ買主原告らは、宅地売買の一方当事者が高度の専門性を有する場合には、他方当事者に対する説明義務が求められるべきである、1審被告は福知山市における由良川の氾濫による過去の水害履歴に係る情報を収集、分析し、これをもとに本件ハザードマップを作成するなど、本件売却地の浸水リスクの把握において高度の専門性を有していたのであるから、本件各 売買に際し、本件ハザードマップに掲載されている浸水リスクに関する情報について、買主原 マップを作成するなど、本件売却地の浸水リスクの把握において高度の専門性を有していたのであるから、本件各 売買に際し、本件ハザードマップに掲載されている浸水リスクに関する情報について、買主原告らに十分に説明すべきであったと主張する。 この点、買主原告らの主張を前提としても、本件売買2の際には、QがMらに対して本件ハザードマップを示し、本件ハザードマップの色分けの意味や本件ハザードマップ中のD土地の位置を確認するなどして浸水リス クに関する情報について説明したことが認められ、Qによって相応の説明がなされていたことが認められる(後記⑶イ②)。 他方で、1審被告の職員らは、1審原告A及び同Gに対しては、本件売買1及び同3に際し、本件ハザードマップ中の浸水リスクに関する情報について本件ハザードマップを示すなどして説明していない(後記⑶ア③、 同⑶ウ②、③)。 確かに、これらの売買においても、1審被告の職員らから本件売買2のような説明がなされることが望ましかったとはいえる。 しかしながら、本件ハザードマップは元々水防法等の要請に基づいて作成され、地域住民等に配布される形での利用が想定されていたもので、本件売買1及び同3の当時、本件ハザードマップを用いて説明することが法 律上求められていたわけでも、宅地売買の実務において本件ハザードマップを用いて説明することが当然の運用になっていたわけでもない。また、1審被告は、国土交通省や京都府から提供されたデータ等をもとに本件ハザードマップを作成したにとどまり、独自に河川の浸水被害について分析する技術や能力を有していたわけでもない(証人T(3、4頁))。 更に、一般に、台風や豪雨等の自然災害が由良川等の治水との関連で売買対象となる宅地にどのような影響を及ぼすかに 害について分析する技術や能力を有していたわけでもない(証人T(3、4頁))。 更に、一般に、台風や豪雨等の自然災害が由良川等の治水との関連で売買対象となる宅地にどのような影響を及ぼすかについては、福知山市内で日常生活を送る中で比較的容易に関連情報に接することが可能であるから、宅地地盤の軟弱性等と異なり、買主原告らが接することができないほどの専門性を有する情報ともいえない。このことは、後記⑶で認定すると おり、本件売買1に先立って1審原告Aが職場の同僚から水がつく土地である旨指摘を受けていたことや、本件売買2に先立ってMらが購入予定地を実際に見分して近隣住民から浸水被害の状況について直接確認していたこと、本件売買3に先立って1審原告Gが戸田宅地分譲フェアに参加し、その中で水害防止のポンプの実演や輪中堤の説明を受け、同地区の過去の 水害について聞かされていたことなど、由良川の氾濫による購入予定地周辺の浸水リスクについて、買主原告らが本件各売買に先立って実際にある程度の情報を得ることができていたことからも明らかである。 オこのほか、買主原告らは、1審被告が本件各事業を行ったことで造成地の浸水リスクについて情報を得ていたとも主張するが、本件全証拠を検討 しても、本件各売買の当時、1審被告の職員らに、本件売却地等の造成地 が立地に問題があるとの認識がなかったとみられる上に、造成事業に関連して、造成地に浸水被害が生じるような情報を得ていたとは認められない。 そうすると、本件売却地の浸水リスクについて、1審被告が買主原告らに比して高度の専門性に基づく情報を有していたとはいえず、1審被告の 職員らが本件売買1及び同3に際し、由良川の浸水リスクに関する情報について新たに本件ハザードマップを用いて説明する 買主原告らに比して高度の専門性に基づく情報を有していたとはいえず、1審被告の 職員らが本件売買1及び同3に際し、由良川の浸水リスクに関する情報について新たに本件ハザードマップを用いて説明する法的義務があったとも、これをしなかったことで、1審原告A及び同Gに対し、説明義務を怠ったともいえない。 したがって、買主原告らの前記主張は採用できない。 カそこで、本件各売買当時の1審被告が、本件売却地に浸水被害が生じることについてどの程度認識、予見していたかを検討する。 この点、本件各地区において、平成16年台風に至るまでの近年に、地域住民の日常生活に支障が生じるほどの浸水被害が生じていたとは認められない(前記第3の2⑴)。そうすると、1審被告が福知山市に係る情報 を有する地方公共団体として平成16年台風以前の由良川流域の災害履歴について把握していたとしても、それだけで前記の浸水の可能性について具体的に予見していたとはいえない。 キ他方で、平成16年台風は平成25年台風以前に襲来した台風としては比較的規模が大きく、実際にも由良川が氾濫して福知山市内に浸水被害が 生じた経緯が認められる(前記第3の1⑹ウ)。そこで、平成16年台風が本件売却地周辺に及ぼした浸水被害の程度と、1審被告が、その後に本件売却地周辺に台風等によって浸水被害が生じるリスクについてどの程度の認識を有していたかを検討する。 ① 本件売却地周辺の浸水被害の程度 平成16年台風で生じた由良川の外水氾濫等により、福知山市全体で は床上浸水405戸、床下浸水439戸の被害が生じたが、石原地区と戸田地区とでは家屋被害の程度にかなりの違いがみられた(前記第3の1⑹ウ)。 由良川に近い戸田地区では、旧集落の既存住居に相当程度の浸水被害が 05戸、床下浸水439戸の被害が生じたが、石原地区と戸田地区とでは家屋被害の程度にかなりの違いがみられた(前記第3の1⑹ウ)。 由良川に近い戸田地区では、旧集落の既存住居に相当程度の浸水被害が生じ、造成地も一部が浸水した。但し、戸田地区内の浸水の範囲や浸 水深がどの程度であったかなど、当時の浸水状況については関係資料が現存しない上、造成地内に既に建築されていた家屋に被害報告がなかったこともあって、詳細が明らかでない(同1⑹オ)。 これに対し、由良川からやや離れた石原地区は家屋の浸水被害が比較的少なく(同1⑹ウ)、ことに、由良川から離れた大谷川以南に位置 し、同川以北に比して高い位置にある本件石原地区土地周辺においては、同川直近の2戸に床下浸水が、丙に床上浸水が確認されただけであった(同1⑹エ)。 ② 1審被告の当時の状況認識に関する事情1審被告は、戸田地区の造成地については、平成16年台風による既 存住居の浸水被害の程度や現地調査(前記1⑹オ)等を通じてその浸水状況を把握し、ある程度は同程度の浸水被害が生じる可能性があることを推測できたことが窺われる。 他方で、本件石原地区土地を含む石原地区の造成地については、家屋の浸水被害に関する情報が少ないことや、本件石原地区土地が由良川か ら離れ、間に農地を挟んで一段高い場所にあったため、1審被告の職員が、平成16年台風程度の浸水であれば、宅地高さを道路から10cm上げることで対処できると考えていたこと(証人U(6~8頁))、1審原告Fが平成21年に本件石原地区土地内のF土地を第三者から購入した際に、同土地を紹介してきたセキスイハイムの担当者から、石原地 区の浸水被害については福知山市からのデータがない旨説明を受け、当 時の1審被告が石原地区に F土地を第三者から購入した際に、同土地を紹介してきたセキスイハイムの担当者から、石原地 区の浸水被害については福知山市からのデータがない旨説明を受け、当 時の1審被告が石原地区に浸水の危険性が高いと考えていないようだと受け止めていたこと(1審原告F(4、13、14頁))からすると、1審被告が、平成16年台風後の石原地区の造成地周辺に浸水被害が生じるおそれについて、具体的に予測できていたとは考えがたい。 ク前記の諸事情に加え、1審被告の状況認識に影響を与える事情として、 平成16年台風後の由良川の治水事業や、1審被告が関与していた減災措置についても考慮する必要がある。 前記認定のとおり、本件売却地の北側付近の由良川築堤事業は平成16年台風の後も未了であったが、築堤未了の箇所には浸水を防止するために高さ3m程度の盛土や大型土のうが設置されていた(前記第3の1⑺)。 ① そして、1審被告は、石原地区において、平成16年台風の前後を通じて、洪水調整池の整備や石原地区事業の造成地の地下埋設雨水管と大谷川の合流点にフラップゲートを設置するなど、大谷川の氾濫を防ぐための措置をとったほか(同1⑸イ)、平成16年台風後は、雨水の流入経路を考慮し、道路と接する場所の石原地区事業の造成地の造成高を道 路髙より10cm盛土し、大谷川増水時に造成地内への浸水を防止するために造成地内側の道路自体を嵩上げしたほか、石原口池の洪水捌けの切り込みを大きくし、内ネジゲートを新設するなどして、同池の調整機能を高める措置をとるなどしていた(同1⑻ア)。 そうすると、1審被告は、平成16年台風の後、本件石原地区土地周 辺において由良川の氾濫等によって浸水被害が生じるおそれがあるとはそれほど考えていなかったため(前記カ②)、当面 同1⑻ア)。 そうすると、1審被告は、平成16年台風の後、本件石原地区土地周 辺において由良川の氾濫等によって浸水被害が生じるおそれがあるとはそれほど考えていなかったため(前記カ②)、当面の浸水対策として、造成地の造成高を若干嵩上げし、改修工事が十分とはいえない大谷川の氾濫リスクを軽減するための措置をとる程度で足りると認識するにとどまっていたものと認められる。このことは、平成16年台風と同程度で あれば対応できると考えていたというVやUの認識(証人V(6頁)、 証人U(7、8頁))や、平成16年台風で被災した経験がある石原地区住民の当時の認識(乙47)とも符合する。 ② 他方で、1審被告は、戸田地区の造成地については、平成16年台風での浸水被害の程度から、今後、同程度の浸水被害が生じるおそれを推測できたものと考えられる(前記カ②)。 しかしながら、1審被告は、平成16年台風の前後を通じて戸田地区に輪中堤を築造し、平成21年には旧集落と造成地の全体を輪中堤で囲み、冠水により輪中堤内に浸水が入らないよう遮断するためにアルミ製の止水板を設置し、洪水時に排水を送水する調整池や排水ポンプ施設を設置するなどの防災対策をとっていた(同1⑸ウ)。そして、1審被告 はこれらの防災対策を施したことで、同地区内の浸水リスクが相当程度に軽減されたと認識していたことが推測される。このことは、VやUの前記の認識に加えて、戸田地区の造成地の販売に携わっていたRが、輪中堤を越えるような水が来たときは市内が冠水するほどの大災害であると1審原告Gに説明するなど、そのような事態が想定外であることを念 頭に置いた発言をしていたこと(証人R(15頁))、1審被告の職員らが、戸田地区の造成地の購入を希望する者らに対し、輪中堤や排水 1審原告Gに説明するなど、そのような事態が想定外であることを念 頭に置いた発言をしていたこと(証人R(15頁))、1審被告の職員らが、戸田地区の造成地の購入を希望する者らに対し、輪中堤や排水ポンプ施設の水害予防の機能について説明し、同地区の浸水対策について理解を求める対応をしていたこと(証人R(3~5頁))からも窺い知ることができる。 ケ以上によれば、1審被告が、本件各売買に際し、平成16年台風程度の自然災害によって本件売却地に浸水被害が生じることについて、相当程度の蓋然性をもって具体的に認識、予見していたとまでは認められない。 加えて、平成25年台風は気象庁が初めて特別警報を発令した、由良川流域で最大規模の降雨量の自然災害であって、由良川本川の水位は観測史 上最高の8.3mを計測するまでに至ったところ(前記第3の1⑽ア)、 1審被告においてそのような規模の自然災害について具体的に予測できたとはいえない(乙57、乙58、証人V(6、7頁)、証人U(6~9頁))。 コこれに対し、買主原告らは、本件石原地区土地について、石原地区の西側にある土地区は農地と大谷川との高低差が少なく、すり鉢状になってい るのであって、1審被告は、土地区が浸水すればB土地の西側にある府道下通路を通って本件石原地区土地が浸水被害を被ることを予測できたはずであると主張する。 しかしながら、本件においては、専ら由良川の外水氾濫によって生じた平成25年台風等の浸水被害が問題とされており(同1⑽)、土地区と石 原地区の造成地との地勢的な関係から、土地区に生じた溢水によって本件石原地区土地の一部に浸水被害が生じ得ることのみをもって、1審被告が本件各売買の当時に本件石原地区土地の浸水リスクの高さを予測できたはずであるという 地勢的な関係から、土地区に生じた溢水によって本件石原地区土地の一部に浸水被害が生じ得ることのみをもって、1審被告が本件各売買の当時に本件石原地区土地の浸水リスクの高さを予測できたはずであるというのは合理的な指摘とはいえない。また、1審被告の職員らが本件各売買の時点でそのような浸水リスクについて具体的に予測してい たと認めるに足りる証拠もない。 したがって、買主原告らの前記主張は理由がない。 サまた、買主原告らは、1審被告の職員らは、治水対策が不十分であった大谷川が氾濫することで本件売却地の浸水リスクが高まることを認識していたはずであると主張する。 しかしながら、前述のとおり、平成25年台風等による浸水被害は専ら由良川の外水氾濫により生じたものと認められるから、1審被告が、本件各売買当時に大谷川の治水事業が京都府によって改修未了であり、豪雨等によって同川に溢水のリスクがあることを認識していたとしても、平成25年台風等で買主原告らに生じた浸水被害の発生まで予測できたとはいえ ない(証人V(7、8頁))。 その点を措くとしても、1審被告としては、大谷川右岸(北側)が左岸(南側)より低くなっており、同川単独の氾濫が生じるのは専ら同川右岸の農地部で、左岸の本件石原地区土地方面にそれほど氾濫が生じるとは想定していなかったことが認められる(乙58、証人V(14~16頁))。 なお、大谷川単独でも本件石原地区土地に浸水リスクが生じ得ることの裏付けとして買主原告らが指摘する図面は、本件訴訟が提起された後の令和元年5月末に京都府から公表された資料であるから(乙59の1、証人V(23頁))、1審被告における本件各売買当時の浸水リスクの認識を基礎付けるものとはいえない。 したがって、1審被告において 年5月末に京都府から公表された資料であるから(乙59の1、証人V(23頁))、1審被告における本件各売買当時の浸水リスクの認識を基礎付けるものとはいえない。 したがって、1審被告において、大谷川の氾濫によって本件売却地が溢水する危険性が高いと具体的に認識できたとはいえないから、買主原告らの前記主張は理由がない。 シなお、1審原告Bは、本件売買3に先立つ平成23年中に、自らが購入したB土地の近くに2回の浸水被害が生じていたと述べ(甲B21)、裏 付けとなる資料を提出する(甲B13の写真①~⑦))。 しかし、本件全証拠を検討しても、1審被告の関係者が、平成23年中に本件石原地区土地の住民からそのような浸水被害について申告を受け、被災状況について把握していたとはいえず(前記第3の1⑼ウ)、本件売買3に際し、1審被告がD土地にそのような浸水被害が生じることを具体 的に認識、予見していたと認めることはできない。 ⑶ 次に、本件各売買当時の買主原告らの状況認識について検討する。 証拠(各文末に後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ア 1審原告A(本件売買1) ① 1審原告Aは、平成18年12月頃に大阪市内から福知山市内に転入 し、当審マップの「甲A:A前住所」の社宅に転居し、同所で生活していた。 (甲A28、乙75)② 1審原告Aは、チラシ等をみて1審被告が販売する造成地の購入を検討するようになった(甲A4、甲A28)。 ③ 本件売買1を担当したWは、1審原告Aに、石原土地区画整理事業保留地位置図(以下「位置図」という。)や換地図、石原土地区画整理事業保留地参考資料等を示しながら造成地について説明したが、A土地が水につかるとは考えていなかったため、浸水区域に 原土地区画整理事業保留地位置図(以下「位置図」という。)や換地図、石原土地区画整理事業保留地参考資料等を示しながら造成地について説明したが、A土地が水につかるとは考えていなかったため、浸水区域について特段の説明はしなかった。 (甲A6、乙49、乙53~56、W(1、2、11、12頁)、1審原告A(4、21頁)④ 1審原告Aは、平成22年7月30日に買受申請を行い、同年9月27日に1審被告からA土地を約1130万円で購入し(本件売買1)、同宅地上に建物を新築し、平成24年2月下旬以降、肩書住所地である 同所(当審マップの「甲A:A」)で生活を始めた(甲A1~3、甲A7、甲A8、乙75)。 ⑤ 1審原告Aは、本件売買1に先立ち、職場の同僚から水がつく土地であるなどとからかわれたことがあったが、新居の建設に際し、保険料が高額になると考えて水害保険には加入しなかった。その後、平成25年 台風及び平成29年台風により、床上浸水等の被害を受けた。 (甲共50(DVD番号00015)、甲A9、甲A11、甲A23、甲A28、甲A29、1審原告A(4~7、18~22頁)イ 1審原告D(本件売買2)① Mらは、平成16年台風の当時から当審マップの「甲D:D前住所」 で生活しており、1審原告Dは、Mとの結婚を契機に、平成19年5月 下旬頃から同居宅で生活するようになった。 (甲D9、乙75、証人M(1頁))② Mらは、チラシをみて、平成25年2月12日に福知山市役所の財務部資産活用課を訪れ、応対したQに対し、福知山市石原5丁目19番の宅地を購入したいと申し出た。そこで、Qは、都市整備課の担当 職員から平成23年台風の際の石原地区の被害状況を確認して位置図に同年5月の降雨による冠水箇所を色塗りした 福知山市石原5丁目19番の宅地を購入したいと申し出た。そこで、Qは、都市整備課の担当 職員から平成23年台風の際の石原地区の被害状況を確認して位置図に同年5月の降雨による冠水箇所を色塗りしたものを受領し、これをMらに示した上で、前記宅地(位置図の物件番号3)の周辺道路が冠水して近隣民家の駐車場にまで浸水したことを説明した。これを受けて、Mらは同日中に現地を確認し、近隣の者から情報を得るなどして 再び福知山市役所に戻り、Qに対し、前記宅地よりも地盤が高く、由良川から離れた位置にあるD土地(位置図の物件番号18)の購入を希望する旨、申し出の内容を変更した。 (乙29、乙50、証人Q(2~4頁)、証人M(2、4~7、23頁)) ③ これを受けて、Qは、Mらに対し、物件調書の内容を説明したほか、本件ハザードマップを広げ、本件ハザードマップが昭和28年台風と同規模の大雨が生じた場合を想定して作成されたものであることや色分けの意味合い、本件ハザードマップ上のD土地の位置を説明し、本件ハザードマップをMらに交付するなどした。同日中に、1審原告D名義の保 留地買受申請書が1審被告に提出された。 (乙9、乙30、乙31、証人Q(4~6頁)、証人M(7、8頁))④ 1審原告Dは、平成25年2月26日、1審被告からD土地を約891万円で購入した(本件売買2)。1審原告Dは、同宅地上に建物を建築中に平成25年台風の襲来により床上浸水の被害を受けたが、その 後、同建物を完成させ、同年12月以降は肩書住所地である同所(当審 マップの「甲D:D」)で生活している。 (甲D1~3、甲D10、乙75)ウ 1審原告G(本件売買3)① 1審原告Gは、平成16年4月頃に福知山市東佳屋野町に転入し、平成18年11月末 マップの「甲D:D」)で生活している。 (甲D1~3、甲D10、乙75)ウ 1審原告G(本件売買3)① 1審原告Gは、平成16年4月頃に福知山市東佳屋野町に転入し、平成18年11月末頃に同市土師新町にある当審マップの「甲G:G前住 所」に転居し、同所で生活していた(甲G1、乙75、1審原告G(1、2頁))。 ② その後、仲介業者の代表者であるSから勧められるなどして、平成22年5月9日頃に戸田地区事業の造成地で行われた戸田宅地分譲フェアに参加し、水害防止のポンプの実演や、輪中堤の説明の一環として、輪 中堤が開いている道路部分を浸水時にアルミ板で締め切る様子の実演を見学するなどした。1審原告Gは戸田橋付近の堤防が途切れているのを現認したが、同フェアに同席したSから堤防ができるから大丈夫などと説明を受けると、いつ頃に堤防ができるかを会場にいた1審被告や戸田地区の関係者に確認したりはしなかった。 (甲共50(DVD番号00026)、第3事件甲6、同甲17、甲G1、乙51、乙82、証人R(4、5頁)、1審原告G(3、14~16頁)③ 1審原告Gは、同年6月23日の契約手続の際に、Rと共に同席した戸田地区の自治会長から戸田地区の水害の歴史や由良川の築堤を行うた めに移転が実現したこと、同地区に入居すると水防訓練があることなどについて説明を受けたほか、輪中堤を越える想定外の溢水があった場合は市内も冠水するほどの大災害となるなどとRから説明を受け、同月30日、1審被告からG土地を約631万円で購入した(本件売買3)。 (第3事件甲1、乙51、証人R(1、4、10、11、15、20頁) ④ 1審原告Gは、自宅建物の新築に際しては水害保険に加入しなかっ た。その後、平成23年5月以降、肩 3)。 (第3事件甲1、乙51、証人R(1、4、10、11、15、20頁) ④ 1審原告Gは、自宅建物の新築に際しては水害保険に加入しなかっ た。その後、平成23年5月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲G:G」)で生活を始めた。同年中の台風では輪中堤の効果もあって浸水被害が生じなかったが、平成25年台風では輪中堤も奏功せず、床上浸水の被害を受けた。 (甲共50(DVD番号00021)、第3事件甲1、甲3、甲4、 甲6、甲9、甲10、甲12、甲G1、乙57、乙71、乙75、1審原告G(1、6、7、12、13、17、18頁))⑷ 前記⑶の事実認定に対する補足説明ア買主原告らは、1審被告が本件各事業で多額の赤字を抱え、保留地を販売することで赤字を解消することが強く求められる状況にあったため に、由良川築堤に関する情報を含め、造成地が浸水被害に遭う危険性を極力秘匿して販売を促進していたなどと主張する。 しかしながら、本件全証拠を検討しても、1審被告の職員らが殊更に本件売却地の浸水リスクに係る情報を秘匿して買主原告らに本件売却地の購入を勧めたと認めるに足りる証拠はない。却って、前述のとおり、Qが本 件売買2に際し、Mらに対し、平成23年台風での冠水箇所を色塗りした位置図を示して直近の浸水被害の状況を説明したり、本件ハザードマップを用いてD土地の過去の浸水状況を説明するなど、浸水リスクについて相応の説明をしていたことからすれば、1審被告の職員らが買主原告らとの宅地売買に際し、ことさらに浸水リスクに関する情報を秘匿していたわけ ではないことを窺い知ることができる。 したがって、買主原告らの前記主張は理由がない。 イ本件売買1について1審原告Aは、石原は水のつく土地だと同僚に言 関する情報を秘匿していたわけ ではないことを窺い知ることができる。 したがって、買主原告らの前記主張は理由がない。 イ本件売買1について1審原告Aは、石原は水のつく土地だと同僚に言われて不安になって尋ねた際に、Wから堤防ができているので水につかることはないと言わ れたなどと述べる(甲A28、1審原告A(4頁))。 しかしながら、Wはそのような発言を否認している(W(3、4、19、20頁)。 そして、①平成18年12月頃から福知山市内の居宅で生活していた1審原告Aが(前記3⑴ア)、本件売買1に際し、自ら築堤の存否を確認したり、同僚に尋ねるなどせず、その必要性も感じなかった(1審原告A (5頁))というのは不合理であること、②1審原告Aが、堤防ができているから安心だと告げられた際に地元住民である同僚から事実に反する旨の指摘がなかったというのは不自然であること(同(20頁))、③築堤に係るWとのやりとりが宅地購入の決め手になったというには1審原告Aの陳述があいまいであること(同(18、19、25頁)、④Wが、容易 に確認できる築堤の存否(乙69、乙82)についてことさらに虚偽を述べて1審原告Aに宅地の購入を促すとは考えにくいことに照らすと、前記陳述は信用性が乏しいといわざるを得ない。 したがって、1審原告Aの陳述に沿う事実は認定できない。 ウ本件売買2について 1審原告Dは、本件売買2に先立ち、Qが、当初購入を希望した宅地の近隣民家の駐車場の浸水についてMらに説明し、同人から本件ハザードマップや物件調書の交付を受けたことは認めるが、位置図を用いた説明は受けておらず、当初の希望物件の周辺の浸水が平成23年5月の降雨によるものであったとの説明もなかった、本件ハザードマップの交付を受 マップや物件調書の交付を受けたことは認めるが、位置図を用いた説明は受けておらず、当初の希望物件の周辺の浸水が平成23年5月の降雨によるものであったとの説明もなかった、本件ハザードマップの交付を受けただ けで、本件ハザードマップを広げて色分けの意味等具体的に説明を受けたことも、D土地が本件ハザードマップの浸水区域内にあることの説明もなかったと主張する。 本件売買2に際し、実際にQと売買交渉に当たったのはMらであり、この場合、Qの説明如何はMらとの関係で検討する必要があるところ、Q は、Mらに位置図や物件調書、本件ハザードマップを用いて説明した、M らの当初の希望物件については平成23年5月の降雨による浸水状況を説明し、本件ハザードマップを広げて色分けの意味やD土地の位置関係等についてもMらに具体的に説明したと述べている。その証言内容は、当初の説明の後にMらが一旦退席し、現地確認をして戻った後に別の希望物件を申し出たため、改めて図面を示すなどして説明したという経緯を含め、一 貫した内容で具体的に述べられており、総じて信用性が高いといえる。 これに反するMの証言内容は、Qから当初説明を受けた後に自ら現地確認に赴いた理由の説明が乏しい上、全体的にあいまいで信用性が乏しく(証人M(12~15、17~20、23、24頁等))、Qの証言内容に依拠して売買に至る経緯を認定するのが相当である。 したがって、1審原告Dの前記主張は理由がない。 また、1審原告Dは、MらがD土地の購入を決めたのは、Qの本件ハザードマップを用いた説明が不十分、不正確であったためであると主張する。 しかしながら、前述のとおり、Qは、本件売買2に先立ち、本件ハザー ドマップを示し、D土地が本件ハザードマップのどこにあり、色分けの 用いた説明が不十分、不正確であったためであると主張する。 しかしながら、前述のとおり、Qは、本件売買2に先立ち、本件ハザー ドマップを示し、D土地が本件ハザードマップのどこにあり、色分けの意味合いを踏まえて少なくとも2m以上浸水する可能性があると説明したものと認められ(前記⑶イ③)、その意味するところは本件ハザードマップの記載から明らかである。Mらは、当初の希望物件に関し、Qから浸水リスクについて説明を受けた直後に退席して現地確認を行い、近隣の者から 水害に関する情報を得た上で(証人Q(13頁))、本件ハザードマップの記載内容にはそれほど関心を示さず(証人Q(5、6頁)、証人M(8頁))、自らの判断に基づいて改めてD土地の購入を申し出たものと認めるのが相当であって、Mらに対するQの説明に特段不十分、不正確な点があったとはいえない。 したがって、1審原告Dの前記主張は理由がない。 さらに、Mは、Qから、堤防ができているから大丈夫と説明を受けたと述べる(同(5頁))。 しかしながら、Qはそのような発言を否認しているところ(証人Q(3頁))、Mの前記陳述を裏付ける的確な証拠はない。 そして、①平成16年台風の当時から福知山市内の居宅で生活していた Mらが(前記⑶イ①)、Qから平成23年5月の浸水に係る説明を受けて現地確認し、地元の住民から事情を確認した上でD土地の購入を希望するに至りながら、自ら築堤の存否を確認したり近隣の者に尋ねるなどしないというのは不自然であること、②築堤に係るやりとりが宅地購入の決め手になったというにはMの証言があいまいであること(同(18、19、2 1頁))、③Qが、容易に確認できる築堤の存否についてことさらに虚偽を述べて宅地の購入を促すとは考えにくいことに照らす め手になったというにはMの証言があいまいであること(同(18、19、2 1頁))、③Qが、容易に確認できる築堤の存否についてことさらに虚偽を述べて宅地の購入を促すとは考えにくいことに照らすと、Mの前記証言は信用性が乏しいといわざるを得ない。 したがって、Mの前記証言に沿う事実は認定できない。 なお、1審原告Dは、Qが本件売買2に際し、あえて被害の小さい平成 23年5月の浸水被害のみを取り上げてMらに不適切な説明をしたとも主張するが、手元にあった平成23年5月のデータに基づいて説明したというQの証言(同(10、15頁))に特段不合理な点は見受けられず、1審原告Dの前記主張は理由がない。 エ本件売買3について 1審原告Gは、戸田地区分譲フェアには参加したが、排水ポンプの稼働実演の際に説明は受けておらず、輪中堤の締切のイベントも必要性を感じなかったので見なかった、水害に対する安全性に関する説明を聞いた覚えもないなどと述べる(甲G1、1審原告G(4、5、17頁))。 しかしながら、1審原告Gは、平成16年4月頃から福知山市内で居住 していたもので(前記⑶ウ①)、転居後間もなく襲来した平成16年台風 が戸田地区にどのような影響を及ぼしたかを全く知らなかったとは考えがたい。また、1審原告Gは、由良川の築堤に伴い、歴史的に水害が多かった戸田地区の旧集落を築堤内側の水害のリスクが少ない区域に移転させることを主目的とする、戸田地区事業の造成地の一筆を購入したものであるから、そのような造成地を購入するに当たっては、由良川氾濫による水害 リスクがどの程度軽減されているか、予定されている防災対策がどのようなものかに関心を寄せるのが通常と考えられる。そして、1審被告の職員らは、平成22年5月に行われた同造 、由良川氾濫による水害 リスクがどの程度軽減されているか、予定されている防災対策がどのようなものかに関心を寄せるのが通常と考えられる。そして、1審被告の職員らは、平成22年5月に行われた同造成地の分譲フェアに参加する1審原告Gに対して特別対応の扱いをしていたのであるから(証人R(9頁))、同フェアで行われた排水ポンプ場の実演や輪中堤の締切の実演に ついて、1審原告Gに確認するよう促さなかったとは考えがたく、同人がそれらのイベントの詳細を確認しなかった(1審原告G(4、5頁))というのは不自然である。このほか、水防訓練に備えた水害対策について同フェアの中で参加者に対して説明があったとするRの証言(証人R(3頁))を併せ考えると、1審原告Gが述べるように、Rや同フェアの関係 者が、由良川氾濫に係る従前の経緯や同事業の造成地に係る水害対策について全く1審原告Gに説明しなかったとは考え難い。結局、1審原告Gは、Rからの説明如何にかかわらず、同フェアで見分できた由良川の浸水リスクや水害対策に関する情報について、それほど関心を向けていなかったものといわざるを得ない。 したがって、同フェアでのやり取りについて、1審原告Gの陳述に沿う事実は認定できない。 また、1審原告Gは、本件売買3の締結のために平成22年6月に福知山市役所に赴いた際に、同席したRや戸田地区の自治会長から戸田地区の水害の危険性や水害対策の必要性について特段の説明はなかったと述べる (甲G1、1審原告G(5、6、17頁))。 この点、Rは、同月の市役所での説明に際し、自らが1審原告Gに水害対策の説明をしたわけではないことを自認する(証人R(4頁))。しかしながら、1審原告Gは、前述のとおり、前月に参加した分譲フェアで排水ポンプ場の 同月の市役所での説明に際し、自らが1審原告Gに水害対策の説明をしたわけではないことを自認する(証人R(4頁))。しかしながら、1審原告Gは、前述のとおり、前月に参加した分譲フェアで排水ポンプ場の稼働実演や輪中堤による水害対策について情報提供を受けたほか、市役所での説明に同席した戸田地区の自治会長から、同地区では住 民が水防訓練に参加する必要がある旨の説明を受けるなどしたことが認められるところ(証人R(10、11頁))、平成22年6月の市役所での説明にとどまらずに本件売買3に至る全体の経緯をみたならば、前記フェアの関係者や戸田地区の自治会長から1審原告Gに対し、購入予定の造成地周辺における水害対策や由良川氾濫による浸水リスクについて、相当程 度の情報提供がなされたとみるべきである。 したがって、1審原告Gの陳述によっては、当裁判所の前記認定は左右されない。 このほか、1審原告Gは、Sから、関連する建築会社に1審被告から説明会があり、戸田地区は安全なので勧めてくださいと1審被告の関係者か ら言われていると聞かされたなどと述べる(甲G1(2頁)、1審原告G(3頁))。 しかしながら、1審被告は関連業者にそのような説明をした事実を否認しているところ、1審原告Gは、Sが1審被告の誰から、いつ頃にどのようにして前記の説明を受けたというのかを明らかにしておらず、証拠上も 確認できない(同(3頁))。また、Sは、本件売買3に先立ち、実際は平成16年台風により、戸田地区にある程度の浸水被害が生じていたにもかかわらず(前記第3の1⑹オ)、戸田地区は輪中堤があったので大丈夫であった旨、事実と異なる説明をしていたもので(甲G1、1審原告G(3、14頁))、S自身も1審原告Gから、不動産取引における説明義 務等について法 ⑹オ)、戸田地区は輪中堤があったので大丈夫であった旨、事実と異なる説明をしていたもので(甲G1、1審原告G(3、14頁))、S自身も1審原告Gから、不動産取引における説明義 務等について法的責任を問われかねない立場にあったことからすれば(甲 共108)、1審被告の関係者から積極的に営業活動を行うよう働きかけを受けたなどと、自らの責任を1審被告の関係者に転嫁するかのように述べるSの陳述を直ちに信用することはできない。 そして、本件全証拠を検討しても、1審原告Gの前記陳述を裏付ける的確な証拠がないことに照らせば、1審被告の関係者がSら建築会社の関係 者に対し、1審原告Gが伝聞で知ったと述べる働きかけを行ったと認めることはできない。 したがって、1審原告Gの陳述に沿う事実は認定できない。 オ本件ハザードマップの配布について1審被告は、1審被告A及び同Gは、1審被告から本件ハザードマップ の配布を受けているはずであると主張する。 しかしながら、前記両名はいずれもそのような事実を否認しており(1審原告A(1、2、23、24頁)、1審原告G(1、2頁))、事実関係が明らかでない以上、これらの事実については認定しない。 ⑸ 買主原告らの状況認識についてのまとめ ア 1審原告A1審原告Aは、①平成18年12月頃から福知山市内の居宅(当審マップの「甲A:A前住所」)に転入していたもので(前記⑶ア①)、②本件売買1(平成22年9月27日)までに、1審被告や京都府が配布している防災マップの確認や防災訓練、情報の問合せ先等に関する情報提供や、 福知山市を含む京都府全域における平成16年台風やその後の自然災害に関する報道に接することが少なくなかったと考えられること(乙14の1~4、乙45の1及び2、証人 せ先等に関する情報提供や、 福知山市を含む京都府全域における平成16年台風やその後の自然災害に関する報道に接することが少なくなかったと考えられること(乙14の1~4、乙45の1及び2、証人T(7、8頁))、③本件売買1に先立ち、職場の同僚から水がつく土地であるなどと言われていたこと(前記⑶ア⑤)が認められる。 そうすると、1審原告Aは、本件売買1に際し、ある程度はA土地やそ の周辺の浸水リスクについて認識することができたものと認められる。これに対し、1審原告Aが、上記の浸水リスクについて積極的にWら1審被告の職員らに問い合わせるなどしたとは認められないのであるから、1審原告Aは、Wからの説明如何にかかわらず、上記の浸水リスクに関する情報について、それほど関心を向けていなかったものといわざるを得ない。 イ 1審原告D1審原告Dの夫であるMは、①1審原告Dと婚姻する平成19年5月以前から福知山市内の居宅(当審マップの「甲D:D前住所」)に居住しており(前記⑶イ①)、②本件売買2(平成25年2月26日)までに、1審被告や京都府が配布している防災マップの確認や防災訓練、情報の問合 せ先等に関する情報提供、福知山市を含む京都府全域における平成16年台風やその後の自然災害に関する報道に接することが少なくなかったと考えられること(乙14の1~4、乙45の1及び2、証人T(7、8頁))、③平成25年2月12日に本件石原地区土地内の宅地の購入を申し出たMらが、Qから、位置図や本件ハザードマップを示されて平成23 年5月の台風の際の当該宅地周辺の浸水に関する情報を告げられ、これを受けて直後に現地確認を行い、近隣の者から情報を得るなどした上で、改めてD土地の購入を申し出た経緯があること(前記⑶イ②)、④Q 年5月の台風の際の当該宅地周辺の浸水に関する情報を告げられ、これを受けて直後に現地確認を行い、近隣の者から情報を得るなどした上で、改めてD土地の購入を申し出た経緯があること(前記⑶イ②)、④Qが本件ハザードマップを広げて購入希望地の位置や本件ハザードマップの色分けの意味等をMらに説明し、D土地が過去の水害実績から少なくとも2m以 上浸水する可能性があることを告げた上、説明終了後に本件ハザードマップをMらに手交したこと(前記⑶イ③)が認められる。 そうすると、Mの妻である1審原告Dにおいても、本件売買2に際し、Qから本件ハザードマップの記載内容を含め、D土地やその周辺の浸水リスクについて具体的に説明を受け、同リスクについて相当程度に認識し、 又は認識することができたものと認められる。 ウ 1審原告G1審原告Gについても、①平成16年4月頃に福知山市東佳屋野町の居宅に、平成18年11月末頃には戸田地区から比較的近い同市土師新町の居宅(当審マップの「甲G:G前住所」)に転入し(前記⑶ウ①)、②本件売買3(平成22年6月30日)までに1審被告や京都府が配布してい る防災マップの確認や防災訓練、情報の問合せ先等に関する情報提供、福知山市を含む京都府全域における平成16年台風やその後の自然災害に関する報道に接することが少なくなかったと考えられること、③平成22年5月に分譲フェアに参加し、その際、水害防止のポンプの実演や輪中堤の内容を確認し、戸田地区事業の造成地の水害対策の概要について説明を受 けたほか、戸田橋付近の堤防が途切れているのも現認していたこと(前記⑶ウ②)、④同年6月23日の契約手続の際に、Rと同席した戸田地区の自治会長から戸田地区の水害の歴史や同地区では水防訓練があることなどの説明 戸田橋付近の堤防が途切れているのも現認していたこと(前記⑶ウ②)、④同年6月23日の契約手続の際に、Rと同席した戸田地区の自治会長から戸田地区の水害の歴史や同地区では水防訓練があることなどの説明を受けていたこと(前記⑶ウ③)が認められる。 そうすると、1審原告Gは、本件売買3に際し、ある程度はG土地やそ の周辺の浸水リスクについて認識することができたものと認められる。これに対し、1審原告Gが、上記の浸水リスクについて積極的にRら1審被告の職員らに問い合わせるなどしたとは認められないのであるから、1審原告Gは、Rからの説明如何にかかわらず、上記の浸水リスクに関する情報について、それほど関心を向けていなかったものといわざるを得ない。 ⑹ 争点1のまとめ以上によれば、1審被告が、本件各売買に際し、本件売却地が特に水害発生の可能性が高いとされる場所にあると認識していたとはいえず、平成16年台風と同程度の台風等の自然災害によって本件売却地に浸水被害が生じることについて、相当程度の蓋然性をもって具体的に認識、予見して いたともいえない。また、平成25年台風は、由良川流域で最大規模の降 雨量となり、由良川本川の水位は観測史上最高の8.3mとなったが、1審被告において、そのような規模の自然災害によって由良川の大規模氾濫が生じ、本件売却地に浸水被害が生じることは想定外であったことが認められる。他方で、買主原告らは、本件各売買に際し、購入希望地やその周辺の浸水リスクについて、ある程度は認識し、又は認識することができた ものと認められる。そうすると、本件各売買に際し、1審被告と買主原告らとの間で本件売却地に係る浸水被害のリスクに係る情報の格差がそれほど大きかったとはいえないから、1審被告の職員らに、買主原告らに対 ものと認められる。そうすると、本件各売買に際し、1審被告と買主原告らとの間で本件売却地に係る浸水被害のリスクに係る情報の格差がそれほど大きかったとはいえないから、1審被告の職員らに、買主原告らに対し、契約締結における自己決定権を侵害したといえるような説明義務違反があったとは認められない。 したがって、1審被告の職員らに、買主原告らに対する不法行為があったとは認められないから、買主原告らによる1審被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求は認められない。 4 石原地区原告らの1審被告に対する国家賠償請求の可否(争点5)について⑴ 認定事実 前記各認定事実に加えて、証拠(各文末に後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ア① 1審原告Bは、平成15年頃からJR石原駅付近にある当審マップの「甲B:B前住所」で生活していた。当審マップのとおり、同所はB土地に近接していた。 (甲B21、乙75、1審原告B(17頁))② 1審原告Bは、平成18年6月頃、地元の自治会を介するなどして1審被告から本件ハザードマップの交付を受けた(甲B21、1審原告B(1、2頁))。 ③ 1審原告Bは、平成21年12月28日、石原地区にあるB土地を第 三者から1070万円で購入した。その際、仲介業者のIから、同土地 がつかるような洪水なら戸田地区に住む自分の家の方が先につかるなどと言われた。 (甲B1及び2、1審原告B(20、21頁))④ 1審原告Bは、平成22年7月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲B:B」)で生活を始めたが、その後、平成25年台風及び 平成29年台風により床上浸水等の被害を受けた。 (甲B1~5、甲B14、甲B21、甲B22、乙75、1審原告B(3頁) 審マップの「甲B:B」)で生活を始めたが、その後、平成25年台風及び 平成29年台風により床上浸水等の被害を受けた。 (甲B1~5、甲B14、甲B21、甲B22、乙75、1審原告B(3頁))イ① 1審原告Cは、福知山市内で出生し、約27年間、石原地区に近接した福知山市駒場新町又は当審マップの「甲C:C前住所」で生活してい た。当審マップのとおり、C前住所はC土地に近接していた。 (甲C1、乙75)② 1審原告Cは、以前から福知山市は水害が多い地域だと知っており、石原地区のC土地の購入に際し、親戚の助言を得てここは水がつからないのかと仲介業者のIに尋ねた。これに対し、Iは、平成16年台風の ときでも自動車のタイヤ半分がつかるかどうかの被害しか出ていないなどと答えた。 (甲C22、1審原告C(1~3、18頁)))③ 1審原告Cは、平成22年3月28日、C土地を第三者から1280万円で購入した(妻との共有名義。甲C1及び2)。 ④ 1審原告Cは同宅地上に建物を新築し、平成22年11月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲C:C」)で生活を始めたが、平成25年台風及び平成29年台風により床上浸水等の被害を受けた。 (甲C3及び4、甲C10、甲C22、甲C23、乙75、1審原告C(3~5、18頁)) ウ① 1審原告Eは、平成18年5月頃から福知山市内にある当審マップの 「甲E:E前住所」で生活していた(甲E12、乙75、1審原告E1頁15~24行目、13頁3~7行目)。 ② 1審原告Eは、平成22年9月18日、石原地区にあるE土地を第三者から1030万円で購入したが(当初は妻との共有名義で後に共有持分を譲り受けた。)、その際、仲介業者のHの関係者から、数年前には 水害があ は、平成22年9月18日、石原地区にあるE土地を第三者から1030万円で購入したが(当初は妻との共有名義で後に共有持分を譲り受けた。)、その際、仲介業者のHの関係者から、数年前には 水害があったが少し高いところにある同土地は水につかっておらず、堤防も整ってきているので安全でしょうなどと聞かされていた(甲E1、甲E12、1審原告E(2頁))。 ③ 1審原告Eは、同宅地上に建物を新築したが、水害保険には加入しなかった。その後、平成23年5月以降、肩書住所地である同所(当審マ ップの「甲E:E」)で生活を始めたが、平成25年台風により床上浸水等の被害を受けた。 (甲E1~3、甲E6、甲E10~13、乙75、1審原告E(2、9、10頁))エ① 1審原告Fは、平成18年頃から福知山市内にある当審マップの「甲 F:F前住所」で生活していた(甲F19、乙75、1審原告F(1、2頁))。 ② 1審原告Fは、平成21年6月か7月頃にセキスイハイム近畿株式会社(以下「セキスイハイム」という。)の担当者から石原地区にあるF土地の紹介を受け、その際、石原地区については浸水被害についてデー タを持っていない、福知山市(1審被告)も石原地区について特に浸水に関するデータを収集、分析していないので大丈夫だろうなどと説明を受けた(甲F19、1審原告F(4頁))。 ③ 1審原告Fは、平成21年8月1日、積和不動産関西株式会社を仲介業者として、F土地を第三者から1050万円で購入した(妻との共有 名義。甲F1、甲F2、甲F4)。 ④ 1審原告Fはセキスイハイムに依頼して同宅地上に建物を新築したが、水害保険には加入しなかった。その後、平成22年1月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲F:F」)で生活を始めたが、 ④ 1審原告Fはセキスイハイムに依頼して同宅地上に建物を新築したが、水害保険には加入しなかった。その後、平成22年1月以降、肩書住所地である同所(当審マップの「甲F:F」)で生活を始めたが、平成25年台風及び平成29年台風により床上浸水等の被害を受けた。 (甲F3、甲F5~8、甲F16、甲F19、乙75、1審原告F(5 頁))⑵ 1審被告の職員らが石原地区原告らに対して浸水リスクについて情報提供を怠った不作為の公権力の行使があり、それが石原地区原告らに対する違法行為に当たるか(争点5)。 ア本件において、公権力の行使に当たる公務員の行為が国家賠償法1条1 項の適用上違法と評価されるためには、当該公務員が損害賠償を求めている国民との関係で個別具体的な職務上の法律義務を有し、かつ、当該行為がその職務上の法的義務に反してなされた場合であることを要する。また、規制権限の不行使が国家賠償法上違法となるためには、公務員による規制権限の不行使が、その権限を定めた法令の趣旨、目的やその権限の性 質等に照らし、具体的な事情の下でその不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められなければならない(最高裁判所平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁参照)。 イ検討するに、情報提供義務の発生根拠についてはさておき、石原地区原告らの主張は、1審被告が、平成25年台風以前に、本件石原地区土地に 台風等の自然災害によって浸水被害が生じることについて相当程度の蓋然性をもって具体的に認識、予見していたことを前提に、石原地区原告らがそのような浸水被害を被ることのないように適切に情報提供すべき作為義務を負っていたことを前提とするものと解される。 しかしながら、争点1で検討したとおり、1審被告が、 ことを前提に、石原地区原告らがそのような浸水被害を被ることのないように適切に情報提供すべき作為義務を負っていたことを前提とするものと解される。 しかしながら、争点1で検討したとおり、1審被告が、本件石原地区土 地が特に水害発生の可能性が高いとされる場所にあると認識していたとは いえず、台風等の自然災害によって本件石原地区土地内において浸水被害が生じることを、相当程度の蓋然性をもって具体的に認識、予見していたとは認められない。 また、前述のとおり、本件石原地区土地内の造成地を購入した1審原告A及び同Dにおいては、購入希望地やその周辺の浸水リスクについてある 程度は認識し、又は認識することができたものと認められるところ、その余の石原地区原告らについても、1審原告Bは平成15年頃からB土地に近接する居宅で生活し(当審マップの「甲B:B前住所」)、平成18年6月頃に地元自治会を通じて本件ハザードマップを受領していた経緯があり、1審原告Cも元々C土地に近接する居宅で生活し(当審マップの「甲 C:C前住所」)、仲介業者から、平成16年台風の際に周辺土地に自動車のタイヤが半分つかる程度の浸水被害があったことを知らされた上で同土地を購入した経緯がある。1審原告Eや1審原告Fも元々福知山市内で生活していたもので、1審原告Fにおいては造成地の購入に際し、石原地区の浸水被害についてセキスイハイムの担当者に確認するなどしていた経 緯がある。 そうすると、1審原告A及び同Dを除くその余の石原地区原告らが第三者から各土地を購入した際の状況についても、前記両名とおおむね同様であって、購入希望地やその周辺の浸水リスクについてある程度は認識し、又は認識できる状況にあったものと認められる。 そうすると、1審被告と石原地区 際の状況についても、前記両名とおおむね同様であって、購入希望地やその周辺の浸水リスクについてある程度は認識し、又は認識できる状況にあったものと認められる。 そうすると、1審被告と石原地区原告らとの間で本件石原地区土地の浸水被害のリスクに係る情報の格差がそれほど大きかったとはいえないから、1審被告が、浸水被害を被ることのないように石原地区原告らに情報提供義務を負うとする前提を欠くというべきである。 したがって、石原地区原告らの前記主張は理由がない。 ウ付言するに、石原地区原告らは、災害対策基本法や水防法、宅地建物取 引業法の趣旨に照らし、1審被告には石原地区原告らに対し、石原地区原告らが主張するような情報提供が法的に義務付けられていたと主張する。 しかしながら、①災害対策基本法は、国土や国民の生命、身体及び財産を災害から保護するために国や地方公共団体等を通じて必要な体制を確立すること等を目的として(1条)、市町村に対して住民との関係で防災計 画等を整備する責務(5条1項)等を定めるが、石原地区原告らが主張する内容の情報提供義務に関する定めはなく、同法51条の「情報伝達」をもって、1審被告の職員らにそのような情報提供を義務付けていたともいえない。石原地区原告らの主張する規定(1条、2条の2、5条、8条、51条1項)は、いずれも1審被告の職員らに対する規制権限について定 めるものではないから、1審被告の職員らの不行使が国家賠償法上違法となることはない。また、②水防法も住民との関係で防災計画に定められた事項を周知させるために必要な措置を講ずべきことを定めるに過ぎず(同法15条3項)、同規定に基づいてハザードマップを作成し、福知山市民に交付するなどして防災意識の向上に努めていた1審被告に、同法が定め を周知させるために必要な措置を講ずべきことを定めるに過ぎず(同法15条3項)、同規定に基づいてハザードマップを作成し、福知山市民に交付するなどして防災意識の向上に努めていた1審被告に、同法が定め る作為義務に違反した事実は認められない。このほか、③1審被告に宅建業法が適用されないこと(宅建業法78条1項)を併せ考えると、そもそも、1審被告が石原地区原告らに対し、同人らが主張するような情報提供を法的に義務付けられていたといえるかについても、疑問が残るというべきである。 エなお、石原地区原告らは、1審被告の職員らに、石原地区の造成地の売買に携わる宅建業者に対し、当該造成地には由良川の氾濫により浸水するリスクがあることを購入希望者に情報提供するように行政指導を行うべき法的義務があったとも主張するが、前述のとおり、1審被告と石原地区原告らとの間で本件石原地区土地の浸水被害のリスクに係る情報の格差がそ れほど大きかったとはいえない以上、1審被告の職員らがそのような法的 義務を負うことはない。 したがって、石原地区原告らの前記主張は理由がない。 オ以上によれば、1審被告の職員らが石原地区原告らに対し、本件石原地区土地に係る浸水リスクについて、石原地区原告らが主張する内容の情報提供をすべき作為義務を負うべき理由はないことになる。 したがって、石原地区原告らの1審被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は認められない。 第4 結論よって、その余の争点について検討するまでもなく、1審原告らの請求はいずれも理由がないから、1審被告の控訴に基づいて原判決中1審被告敗訴部分 を取り消して同部分につき買主原告らの請求をいずれも棄却し、1審原告らの本件控訴をいずれも棄却することとして、主文のとお ずれも理由がないから、1審被告の控訴に基づいて原判決中1審被告敗訴部分を取り消して同部分につき買主原告らの請求をいずれも棄却し、1審原告らの本件控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 大阪高等裁判所第9民事部 裁判官種村好子 裁判官空閑直樹 裁判官千葉和則は退官につき署名押印することができない。 裁判官種村好子 別紙当事者目録(省略) 別紙物件目録(省略) 以上
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