平成28年12月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第29001号特許権侵害差止請求事件口頭弁論の終結の日平成28年10月11日判決 原告デビオファーム・インターナショナル・エス・アー 同訴訟代理人弁護士大野聖二同大野浩之同木村広行同訴訟代理人弁理士松任谷優子同訴訟復代理人弁護士多田宏文 被告マイラン製薬株式会社 同訴訟代理人弁護士村田真一同訴訟代理人弁理士大門良仁 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録1,2及び3記載の製剤を生産,譲渡,輸入又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録1,2及び3記載の製剤を廃棄せよ。 第2 事案の概要本件は,発明の名称を「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」とする発明についての特許権を有する原告が,被告による別紙被告製品目録1ないし3記載の各製剤(以下「被告製品」と総称する。)の生産等が上記特許権を侵害していると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の生産等の差止め及び廃棄を求める事案である。 1 前提事実(証拠を掲記したほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,医薬品等の製造,販売及び輸出等を業とし,スイス法に準拠して設立された法人である。 イ被告は,医薬品等の製造,販 (証拠を掲記したほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,医薬品等の製造,販売及び輸出等を業とし,スイス法に準拠して設立された法人である。 イ被告は,医薬品等の製造,販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。また,本件特許出願の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)を有している(甲2)。 ア特許番号第4430229号イ発明の名称オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用ウ出願日平成11年 2月25日エ登録日平成21年12月25日オ優先日平成10年 2月25日(優先権主張国英国)(3) 本件特許の特許請求の範囲本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1には,次のとおり記載されている(以下,この発明を「本件発明」という。)。 「オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体 を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物であって,製薬上許容可能な担体が水であり,緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,緩衝剤の量が,以下の:(a)5x10-5M ~1x10-2M,(b)5x10-5M ~5x10-3M,(c)5x10-5M ~2x10-3M,(d)1x10-4M ~2x10-3M,または(e)1x10-4M ~5x10-4Mの範囲のモル濃度である,組成物。」(4) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件 ~5x10-4Mの範囲のモル濃度である,組成物。」(4) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」のようにいう。)。 A オキサリプラチン,B 有効安定化量の緩衝剤およびC 製薬上許容可能な担体を包含するD 安定オキサリプラチン溶液組成物であって,E 製薬上許容可能な担体が水であり,F 緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,G 緩衝剤の量が,以下の:(a)5x10-5M ~1x10-2M,(b)5x10-5M ~5x10-3M,(c)5x10-5M ~2x10-3M,(d)1x10-4M ~2x10-3M,または(e)1x10-4M ~5x10-4Mの範囲のモル濃度である,組成物(5) 特許無効審判請求及び訂正請求 ア原告は,ホスピーラ・ジャパン株式会社(以下「ホスピーラ」という。)が請求人となった本件特許に係る無効審判請求事件(無効2014-800121号事件)の手続において,本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1を訂正する旨請求した(以下「本件訂正」といい,同訂正請求に係る請求項1記載の発明を「本件訂正発明」という。)。 イ特許庁は,平成27年7月14日,上記訂正請求を認め,無効審判請求が成り立たない旨の審決をした(以下「本件審決」という。)。 ウホスピーラは,同年8月21日付けで,本件審決の取消訴訟を提起した。 なお,上記訴訟は,本件口頭弁論終結時点で係属中であり,本件審決は確定していない。 (6) 本件訂正後の特許請求の範囲本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1には 取消訴訟を提起した。 なお,上記訴訟は,本件口頭弁論終結時点で係属中であり,本件審決は確定していない。 (6) 本件訂正後の特許請求の範囲本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1には,次のとおり記載されている(なお,訂正部分に下線を付した。)。 「 オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物であって,製薬上許容可能な担体が水であり,緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,1)緩衝剤の量が,以下の:(a)5x10-5M ~1x10-2M,(b)5x10-5M ~5x10-3M,(c)5x10-5M ~2x10-3M,(d)1x10-4M ~2x10-3M,または(e)1x10-4M ~5x10-4Mの範囲のモル濃度である,pHが3~4.5の範囲の組成物,あるいは2)緩衝剤の量が,5x10-5M~1x10-4Mの範囲のモル濃度である,組成物。」 (7) 本件訂正発明の構成要件本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(なお,訂正部分に下線を付した。)。 A オキサリプラチン,B 有効安定化量の緩衝剤およびC 製薬上許容可能な担体を包含するD 安定オキサリプラチン溶液組成物であって,E 製薬上許容可能な担体が水であり,F 緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,G’1 1)緩衝剤の量が,以下の:(a)5x10-5M ~1x10-2M,(b)5x10-5M ~5x10-3M,(c)5x10-5M ~2x10-3M, 衝剤の量が,以下の:(a)5x10-5M ~1x10-2M,(b)5x10-5M ~5x10-3M,(c)5x10-5M ~2x10-3M,(d)1x10-4M ~2x10-3M,または(e)1x10-4M ~5x10-4Mの範囲のモル濃度である,pHが3~4.5の範囲の組成物,あるいはG’2 2)緩衝剤の量が,5x10-5M~1x10-4Mの範囲のモル濃度である,組成物。 (8) 被告の行為等ア被告は,遅くとも平成26年12月12日以降,別紙被告製品目録記載1及び2の各製剤につき,また,遅くとも平成27年6月19日以降,同目録記載3の製剤につき,それぞれ製造,輸入又は販売を行っている。 イ被告製品には,オキサリプラチンが溶媒中で分解して生じたシュウ酸イオン(以下「解離シュウ酸」という。)が含まれている。 被告製品は,本件発明の構成要件A,C及びEをいずれも充足する。 (9) 本件特許の優先日より前に頒布された文献本件特許の優先日より前に,以下の文献が頒布されている。 ア国際公開第96/04904号公報(平成8(1996)年2月22日国際公開(乙1の1)。以下「乙1の1公報」といい,同公報の請求項1に記載された発明を「乙1発明」という。)イ 「制癌性白金錯体の研究」と題するReviews(甲14。以下「甲14文献」といい,同文献に記載された発明を「甲14発明」という。) 2 争点(1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(構成要件B,D,F及びGの充足性)(2) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)ア新規性欠如(争 告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(構成要件B,D,F及びGの充足性)(2) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)ア新規性欠如(争点2-1)(ア) 乙1発明に基づく新規性欠如(イ) 甲14発明に基づく新規性欠如イ進歩性欠如(争点2-2)(ア) 乙1発明に基づく進歩性欠如(イ) 甲14発明に基づく進歩性欠如ウ実施可能要件違反及びサポート要件違反(争点2-3)エ明確性要件違反(争点2-4)(3) 本件訂正により無効理由が解消するか等(争点3)ア本件訂正により無効理由が解消するか(争点3-1)イ被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか(争点3-2)(4) 本件訂正による新たな無効理由の存否(争点4)ア本件訂正発明に係る進歩性欠如(争点4-1)イ本件訂正発明に係るサポート要件違反及び実施可能要件違反(争点4-2) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)ア構成要件Bの充足性について(ア) 「緩衝剤」についてa 次のとおりの本件発明に係る特許請求の範囲や本件明細書の記載等に照らせば,「緩衝剤」とは,オキサリプラチン溶液組成物に現に含まれるすべての緩衝剤であり,添加したシュウ酸のみならず解離シュウ酸を含むと解すべきである。 (a) 本件発明に係る特許請求の範囲には,「オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物であって,」及び「緩衝剤の量が,以下の:」と記載されているところ,「包含」とは,文言上「つつみこみ,中に含んでい 安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物であって,」及び「緩衝剤の量が,以下の:」と記載されているところ,「包含」とは,文言上「つつみこみ,中に含んでいること」を意味する。また,本件発明は,「物」の発明であるから,「緩衝剤」の意義は,製造工程を措いてオキサリプラチン溶液組成物という物を基準に解釈すべきである。この点,当業者は,添加されたものであるか否かによって「緩衝剤」を区別していない。 (b) 本件明細書には,「緩衝剤という用語は,本明細書中で用いる場合,オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸性または塩基性剤を意味する。」(段落【0022】)と定義され,「緩衝剤は,有効安定化量で本発明の組成物中に存在する。緩衝剤は…(中略)…の範囲のモル濃度で存在するのが便利である。」(段落【0023】。下線は引用者による。)と記載されており,添加され ているか否かではなく,組成物中に存在するか否かによって「緩衝剤」を検討すべきものとされている。 (c) 本件明細書には,シュウ酸を添加していない実施例18(b)が記載されており,同実施例と非常に微量のシュウ酸ナトリウム又はシュウ酸を付加した実施例1及び実施例8の各実験結果,すなわち,いずれも5mg/mlのオキサリプラチンを使用しているが,各実施例で生じた不純物(ジアクオDACHプラチン,ジアクオDACHプラチン二量体及び不特定不純物)の量に大きな差がなかったという結果によれば,シュウ酸の全部又は大半を占める解離シュウ酸が,不純物の生成を防止し又は遅延させるにあたって支配的な働きを果たしているといえ,安定性 体及び不特定不純物)の量に大きな差がなかったという結果によれば,シュウ酸の全部又は大半を占める解離シュウ酸が,不純物の生成を防止し又は遅延させるにあたって支配的な働きを果たしているといえ,安定性に寄与している。 b なお,被告は,①辞典等の記載や専門家の意見,本件特許に対応する米国特許(以下「対応米国特許」という。)及びブラジル特許(以下「対応ブラジル特許」といい,対応米国特許と併せて「対応外国特許」という。)の各出願経過,実施例18(b)が比較例にすぎないことなどに照らせば,「緩衝剤」に解離シュウ酸は含まれず,②仮に,「緩衝剤」に解離シュウ酸が含まれると解すると,乙1発明より安定性を向上させるという本件発明の効果と矛盾することになるなどと主張する。 しかしながら,①については,本件発明における「緩衝剤」の解釈には,辞典等に記載された一般的な意義より本件明細書の定義(段落【0022】)を優先させるべき(特許法70条2項,特許法施行規則24条,同規則様式29備考8)であり,また,上記専門家の各意見は,いずれも一般的な意義に基づくものである上,本件明細書で定義された「緩衝剤」とは異なるpH緩衝剤に係る説明をするなど本件明細書の記載に基づく解釈をしていない。加えて,特許権に係る属地 主義に照らせば,対応外国特許の出願経過が日本における特許の技術的範囲の解釈に影響する余地はなく,この点を措いたとしても,上記各出願過程において,出願人から「緩衝剤」の意義を添加した試薬に限定する旨は述べられていない。したがって,被告が指摘する上記各事情によって,本件発明における「緩衝剤」を限定的に解釈するべきではない。 次に,②については,本件発明の効果は,被告の主張するようなものではない。本件発明と乙1発明の技術的思 記各事情によって,本件発明における「緩衝剤」を限定的に解釈するべきではない。 次に,②については,本件発明の効果は,被告の主張するようなものではない。本件発明と乙1発明の技術的思想は異なる(具体的には,本件発明は,含有されるシュウ酸またはそのアルカリ金属塩の量,安定性等で特定した発明であるのに対し,乙1発明は,オキサリプラチンの濃度,pH,安定性等で特定した発明である。)から,本件発明の目的は,乙1発明と比較して安定なものを提供することではなく,乙1発明と同様に,凍結乾燥粉末の形態で利用可能であったオキサリプラチンにつき,凍結乾燥物質の欠点(段落【0012】ないし【0016】)を克服して,2年以上の保存期間中,製薬上安定である,すぐに使える(RTU)形態のオキサリプラチン溶液組成物を提供すること(段落【0017】)である。そして,被告の主張するようなオキサリプラチンの水溶液に係る可逆反応を前提とすれば,オキサリプラチンの分解が生じる解離シュウ酸であってもオキサリプラチンの分解を防止又は遅延させ製薬上の安定という効果を実現することができるから,「緩衝剤」に解離シュウ酸を含むと解しても,何ら本件発明と矛盾することはない。なお,本件明細書に記載された「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物」(段落【0031】)とは,乙1発明のオキサリプラチン水溶液ではなく,凍結乾燥物質を再構築したような製薬上安定とはいえない水性組成物をいう。 (イ) 「安定」について a 本件明細書には,「本発明は,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物,癌腫の治療におけるその使用方法,このような組成物の製造方法,およびオキサリプラチンの溶液の安定化方法に関する。」(段落【0001】),「すぐに使える形態の製薬上安定なオキサ リプラチン溶液組成物,癌腫の治療におけるその使用方法,このような組成物の製造方法,およびオキサリプラチンの溶液の安定化方法に関する。」(段落【0001】),「すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することによりこれらの欠点を克服することが,本発明の目的である。」(段落【0017】)と記載されている。 よって,上記(ア)bで述べたとおり,「安定」とは,製薬上安定を意味する。 b なお,被告は,「安定」は,乙1発明との比較において,不純物の量が有意に少ないことであると主張する。 しかしながら,上記(ア)bで述べたとおり,本件発明と乙1発明の技術的思想は異なる。そして,本件発明の目的である「すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することによりこれらの欠点を克服すること」(段落【0017】)における「欠点」とは,「製薬上安定」を実現することで克服できるものをいうところ,乙1発明のオキサリプラチン溶液組成物は,既に「製薬上安定」である(段落【0010】参照)。 よって,「安定」の意義を乙1発明との比較において解することはできない。 (ウ) 小括以上を前提に,被告製品は,有効安定化量とされる構成要件Gに規定されたモル濃度のシュウ酸を含んでいることを考慮すると,被告製品は,構成要件Bを充足する。 イ構成要件Dの充足性について上記ア(イ)で述べたとおり,「安定」とは,製薬上安定であることであり,被告製品は,製薬上安定したオキサリプラチン溶液組成物であるから, 構成要件Dを充足する。 ウ構成要件F及びGの充足性について上記ア(ア)で述べたとおり,「緩衝剤」には解離シュウ酸も含まれ,被告製品は,構成要件Gに示された範囲のモ 構成要件Dを充足する。 ウ構成要件F及びGの充足性について上記ア(ア)で述べたとおり,「緩衝剤」には解離シュウ酸も含まれ,被告製品は,構成要件Gに示された範囲のモル濃度の解離シュウ酸を含む組成物であるから,構成要件F及びGをいずれも充足する。 (被告の主張)ア構成要件Bの充足性について(ア) 「緩衝剤」についてa 次のとおりの本件発明に係る特許請求の範囲や本件明細書の記載等に照らせば,「緩衝剤」とは,添加された試薬に限られ,解離シュウ酸は含まれないと解すべきである。 (a) 本件明細書には,「…水性溶液中では,オキサリプラチンは,時間を追って,分解して,種々の量のジアクオDACHプラチン(式I),ジアクオDACHプラチン二量体(式II)およびプラチナ(IV)種(式III ):」(段落【0013】),「を不純物として生成し得る,ということが示されている。任意の製剤組成物中に存在する不純物のレベルは,多くの場合に,組成物の毒物学的プロフィールに影響し得る」(段落【0016】)として,オキサリプラチン水溶液の安定性の課題が示され,その課題を解決するために,「不純物を全く生成しないか,あるいはこれまでに知られているより有意に少ない量でこのような不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を開発することが望ましい。」(段落【0016】)とされ,従来技術である乙1発明(段落【0010】)は「これまでに知られている」オキサリプラチン水溶液に含まれる。また,本件明細書には,本件発明の目的につき,「前記の欠点を克服し,そして長期間の,即ち2年以上の保存期間中,製薬上安定である,す ぐに使える(RTU)形態のオキサリプラチンの溶液組成物が必要とされている は,本件発明の目的につき,「前記の欠点を克服し,そして長期間の,即ち2年以上の保存期間中,製薬上安定である,す ぐに使える(RTU)形態のオキサリプラチンの溶液組成物が必要とされている。したがって,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することによりこれらの欠点を克服すること」(段落【0017】)と記載され,上記課題の解決手段として,「有効安定化量の緩衝剤」を包含することとされている(段落【0018】)。 このように,本件発明の課題解決手段は,従来技術とされていた乙1発明より有意に少ない量で,不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を調製するために十分な緩衝剤を存在させることにある。そして,乙1発明には,解離シュウ酸が含まれているから,上記調製には,解離シュウ酸とは別にシュウ酸を添加することが必要となる。 (b) 本件明細書には,「本発明はさらに,オキサリプラチンの溶液を安定化するための方法であって,有効安定化量の緩衝剤を前記の溶液に付加することを包含する方法に関する。この方法の好ましい局面では,溶液は水性(水)溶液であり,緩衝剤はシュウ酸またはそのアルカリ金属塩である。」(段落【0027】。下線は引用者による。)と記載されている。 (c) 「緩衝剤」は「緩衝液をつくるために用いられる試薬の総称」であり(乙12),「緩衝液」は「緩衝作用をもつ溶液」であって「緩衝作用」は「そとからの作用に対して,その影響を和らげようとする作用」であるから,「緩衝剤」とは,一般に,そとからの作用に対してその影響を和らげるために用いられる試薬の総称といえる。また,薬品に関する文献(乙39ないし42)では,「緩衝剤」とは添加する試薬に限られることが前提とされている。 (d 作用に対してその影響を和らげるために用いられる試薬の総称といえる。また,薬品に関する文献(乙39ないし42)では,「緩衝剤」とは添加する試薬に限られることが前提とされている。 (d) 本件発明の構成要件Fには,「緩衝剤」は「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」であると規定されている。この点,解離シュウ酸は「シュウ酸」又は「そのアルカリ金属塩」ではなく「シュウ酸イオン」であり,文言上,「緩衝剤」に当たらない。仮に,解離シュウ酸が「緩衝剤」に含まれるとすると,シュウ酸のアルカリ金属塩を添加した場合,緩衝剤としてシュウ酸を使用したとも,シュウ酸のアルカリ金属塩を使用したともいえることになる。 (e) 本件明細書には,「緩衝剤」は,「本明細書中で用いる場合,オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸性または塩基性剤を意味する。」(段落【0022】)とされ,①オキサリプラチン溶液を安定化し,②それにより望ましくない不純物の生成を防止するか又は遅延させ得るものではなければならない。 ①については,上記(a)で述べたとおり,「安定化」とはこれまでに知られているオキサリプラチン水溶液より有意に少ない量で不純物を生成することと解される(段落【0016】【0031】)が,これまでに知られているオキサリプラチン水溶液である乙1発明に開示されたオキサリプラチン水溶液に含まれる解離シュウ酸では上記の意味における「安定化」を実現できない。 また,②については,本件特許の優先日当時,化学平衡に達するまでオキサリプラチンが分解されてジアクオDACHプラチン及びシュウ酸イオンが生成され,その反応が次の式の可逆反応であ 」を実現できない。 また,②については,本件特許の優先日当時,化学平衡に達するまでオキサリプラチンが分解されてジアクオDACHプラチン及びシュウ酸イオンが生成され,その反応が次の式の可逆反応であることが知られていた(乙2)。 そうすると,解離シュウ酸は,不純物であるジアクオDACHプラチンと同時に生成されるから,不純物の生成の防止又は遅延させる「緩衝剤」に該当しない。この点は,当業者の理解とも合致する(乙13,37,38)。 (f) 本件明細書には,実施例として,オキサリプラチン水溶液にシュウ酸を添加した例が挙げられている(実施例1ないし17)。 (g) 本件特許の対応米国特許の出願過程において,出願人は,オキサリプラチンの溶液組成物に有効安定化量の緩衝剤を添加することにより,不純物を全く生成しないかIbrahimらの発明(乙1発明)の水溶性組成物より有意に少ない量で当該不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を得ることができることを発見した旨述べ,対応ブラジル特許の出願過程において,出願人は,「本願発明にあるシュウ酸を緩衝剤として加えれば,不純物が発生しない」旨述べている。このように,本件特許の対応外国特許の出願過程において,出願人は,緩衝剤を添加することが本件発明の技術的思想であると明示している。 以上によれば,構成要件Bの「緩衝剤」とは,オキサリプラチンの分解を和らげて安定化を図るために添加される試薬に限られると解される。この点,当業者も,同旨の理解をしている(乙13等)。 b なお,原告は,本件明細書に記載された「実施例」のうち,シュウ酸が添加されていない実施例18(b)も実施例であると主張する。 しかしながら,本件明細書において,オ 乙13等)。 b なお,原告は,本件明細書に記載された「実施例」のうち,シュウ酸が添加されていない実施例18(b)も実施例であると主張する。 しかしながら,本件明細書において,オキサリプラチン溶液に添加するシュウ酸ナトリウム溶液は「緩衝液」,「緩衝溶液」とされ(段落【0047】,【0056】,【0059】,【0061】等),シュウ酸ナトリウム溶液を添加していない比較例18のオキサリプラチン溶液組成物は「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」(下線は引用者による。)とされており(段落【0073】),比較例18のオキサリプラチン溶液組成物が「緩衝剤」を含まないことが前提とされている。 また,本件特許の対応米国特許及び対応ブラジル特許の各出願過程において,出願人は,実施例18(b)ないしこれに対応する明細書の記載が比較例であることを自認している。 よって,本件明細書の実施例18(b)は比較例にすぎない。 (イ) 「安定」について上記(ア)で述べたとおり,本件明細書の記載(段落【0016】【0031】等)や対応外国特許の各出願経過等に照らせば,「安定」とは,これまでに知られているオキサリプラチン水溶液(乙1発明のオキサリプラチン水溶液等)より有意に少ない量で不純物を生成することと解される。 (ウ) 小括被告製品は,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩が添加されておらず(甲5参照),乙1発明と同一の構成であるから,構成要件Bを充足しない。 イ構成要件Dの充足性について上記ア(イ)で述べた「安定」の意義及び被告製品の構成に照らせば,被告製品は,構成要件Dを充足しない。 ウ構成要件F及びGの充足性について 上記ア(ア)によれば,「緩衝剤がシュウ酸」 べた「安定」の意義及び被告製品の構成に照らせば,被告製品は,構成要件Dを充足しない。 ウ構成要件F及びGの充足性について 上記ア(ア)によれば,「緩衝剤がシュウ酸」とは,添加シュウ酸に限られるところ,被告製品は,構成要件Gの示す範囲のモル濃度の解離シュウ酸を含む組成物にすぎず,添加シュウ酸は含まれないから,構成要件F及びGをいずれも充足しない。 (2) 争点2(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか)についてア争点2-1(新規性欠如)について(被告の主張)(ア) 乙1発明に基づく新規性欠如についてa 仮に,「緩衝剤」に解離シュウ酸が含まれ,「安定オキサリプラチン溶液」が既存のオキサリプラチン溶液に比べて有意に少ない量で不純物を生成するものに限られないと解すると,次のとおり,本件発明は,本件特許の優先日前に公開されていた乙1の1公報に開示された発明(乙1発明)と同一である。 (a) 乙1発明は,「濃度が1ないし5mg/mlでpHが4.5ないし6のオキサリプラティヌムの水溶液からなり…(中略)…オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」(乙1の1公報【請求項1】)に係る発明であり,5mg/mlの安定なオキサリプラチン水溶液であるから,構成要件A,C,D及びEを充足する。 オキサリプラチンの水溶液中における分解によってシュウ酸イオン(解離シュウ酸)が生じ,乙1発明のオキサリプラチン水溶液にはシュウ酸イオンが不可避的に含まれるから,乙1発明は,構成要件B及びFを充足する。 また,乙1発明には,明示的には,オキサリプラチンの水溶液中に存在する解離シュウ酸のモル濃度は開示されていない。しかし,安定性試験の結果(乙4)には,純粋 1発明は,構成要件B及びFを充足する。 また,乙1発明には,明示的には,オキサリプラチンの水溶液中に存在する解離シュウ酸のモル濃度は開示されていない。しかし,安定性試験の結果(乙4)には,純粋なオキサリプラチンを水に溶 かした場合に6.7x10-5M程度のモル濃度のシュウ酸イオンが生じることが示されており,乙1発明に係る特許の無効審判請求事件(無効2010-800191号)で原告が提出した再現実験結果(乙5)にも,5mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液を保存して12か月経過後に同水溶液中に存在する解離シュウ酸のモル濃度が構成要件Gで示された範囲内であることが示されているから,乙1発明は,構成要件Gを充足する。 (b) 仮に,乙1発明が,5mg/mlではなく2mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液を直接開示するにすぎないとしても,安定性試験の結果(乙15)によれば,上記濃度のオキサリプラチンの水溶液中に存在する解離シュウ酸の濃度が構成要件Gに示された濃度の範囲内の7.3×10-5M,8.0×10-5M及び8.4×10-5Mであるといえるから,乙1発明は,本件発明のすべての構成要件を充足する。 以上によれば,本件発明は新規性を欠くから,本件特許は,特許法29条1項3号及び123条1項2号に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。 b なお,原告は,本件発明は,①シュウ酸のモル濃度の開示の有無や②シュウ酸の位置づけ(乙1発明では「不純物」とされ,本件発明では「緩衝剤」とされていること)において乙1発明と相違しているから,新規性は否定されない旨主張する。 しかしながら,①の点については,上記aで述べたところによれば,相違点とはならない。なお,原告は,上記①の主張の れていること)において乙1発明と相違しているから,新規性は否定されない旨主張する。 しかしながら,①の点については,上記aで述べたところによれば,相違点とはならない。なお,原告は,上記①の主張の裏付けとして,5mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液中に存在する解離シュウ酸の濃度が構成要件Gの示すモル濃度の範囲外となった実験結果(甲16)を提出するが,乙1発明に係る実施例に基づいて適正に調 製及び測定が実施されたものか疑問である上,水溶液の保存経過期間を2週間という不合理な短期間にして得られた結果であるから,信用性がない。 また,②の点については,シュウ酸が「不純物」か「緩衝剤」であるかという主観的な目的にかかわらず,「物」として同一である(特許庁「特許・実用実案審査ハンドブック付属書B 第3章医薬発明」(乙36)参照)から,本件発明と乙1発明におけるシュウ酸を別異と解すべきではない。 (イ) 甲14発明に基づく新規性欠如について仮に,「緩衝剤」に解離シュウ酸が含まれると解すると,本件発明は,本件特許の優先日以前に刊行された甲14文献に開示された発明(甲14発明)と同一である。 すなわち,甲14発明は,7.9mg/mlの濃度の安定オキサリプラチン水溶液を開示しているから,構成要件AないしFを充足する。 そして,上記濃度のオキサリプラチン水溶液に係る安定性試験(乙35)には,同溶液中の解離シュウ酸のモル濃度が構成要件Gに示されたモル濃度の範囲内である6.3×10-5Mになったことが示されているから,甲14発明は構成要件Gを充足する。 以上によれば,本件発明は新規性を欠き,本件特許は,特許法29条1項3号及び123条1項2号に基づき,特許無効審判により無効にされるべきもの るから,甲14発明は構成要件Gを充足する。 以上によれば,本件発明は新規性を欠き,本件特許は,特許法29条1項3号及び123条1項2号に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。 (原告の主張)(ア) 乙1発明に基づく新規性欠如についてa 上記(1)(原告の主張)ア(ア)bで述べたとおり,本件発明と乙1発明は,技術的思想が全く異なり,次の相違点(以下,順に「相違点①」,「相違点②」という。)があるから,同一ではない。 (a) 本件発明には,含有される緩衝剤としてのシュウ酸のモル濃度が開示されているが,乙1発明には開示されていない(b) 本件発明では,シュウ酸又はアルカリ金属塩が緩衝剤とされているが,乙1発明では,シュウ酸が不純物として開示されている。 よって,乙1発明によって本件発明の新規性は否定されない。 b なお,被告は,相違点①について,再現実験の結果によれば,乙1発明のオキサリプラチン水溶液に含まれるシュウ酸の濃度が構成要件Gに示された範囲に含まれることをもって,相違点①が実質的には相違点とはならない旨主張する。 しかしながら,「刊行物に記載された発明」(特許法29条1項3号)とは,刊行物に記載されている事項及び刊行物に記載されているに等しい事項から把握される発明をいい,当該刊行物記載の実施例の正確な再現とはいえない場合は「刊行物に記載された発明」とはいえないところ,被告が乙1発明に係る実施例の再現実験であると主張する実験(乙4,5,15,46,47)は,いずれも乙1発明に係る実施例とは異なる条件に基づいた実験である。具体的には,乙4,5,46及び47の各実験は,乙1発明に開示された2mg/mlのオキサリプラチン水溶液ではなく5 ,46,47)は,いずれも乙1発明に係る実施例とは異なる条件に基づいた実験である。具体的には,乙4,5,46及び47の各実験は,乙1発明に開示された2mg/mlのオキサリプラチン水溶液ではなく5mg/mlのオキサリプラチン水溶液を用いており,乙15の実験は,乙1発明に係る実施例と異なり,オートクレーブ処理が実施されており,50mlガラスバイアル中に40mlしか充填されておらず,20%もの空間を設けて密封されており,pHの値が5ではなく5.6とされている。よって,これらの実験は,乙1発明に係る実施例を正確に再現していないから,本件発明の新規性を否定する根拠にならない。 (イ) 甲14発明に基づく新規性欠如についてa 本件発明と甲14発明は,少なくとも次の相違点があるから,同一 ではない。 すなわち,甲14発明は,オキサリプラチンの溶解度を開示しているが,オキサリプラチン溶液組成物,それが製薬上安定であること,緩衝剤の濃度の範囲及びシュウ酸が緩衝剤であることを開示していないのに対し,本件発明は,甲14が開示していない上記各事項をいずれも開示している。 よって,甲14発明によって本件発明の新規性は否定されない。 b なお,被告は,乙35の実験結果によれば,上記aの相違点は実質的に相違点とはならない旨主張するようである。 しかしながら,甲14発明には,オキサリプラチンの溶解度7.9mg/mlという物性だけであり,オキサリプラチン水溶液やその調製方法・条件,保存条件などの具体的な構成が開示されていないから,そもそも,具体的なオキサリプラチン水溶液を正確に再現すること自体不可能である。よって,乙35の実験は,甲14発明に係る正確な再現実験であるとはいえず,これをもって 的な構成が開示されていないから,そもそも,具体的なオキサリプラチン水溶液を正確に再現すること自体不可能である。よって,乙35の実験は,甲14発明に係る正確な再現実験であるとはいえず,これをもって,本件発明の新規性は否定されない。 イ争点2-2(進歩性欠如)について(被告の主張)(ア) 乙1発明に基づく進歩性欠如①a 仮に,乙1発明に5mg/mlではなく2mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液が開示されているにすぎず,本件発明と乙1発明に相違点が存在したとしても,本件発明は,乙1発明自体に基づき,進歩性を欠く。 (a) 乙1発明には,少なくとも,1ないし5mg/mlの濃度で製薬上安定なオキサリプラチン製剤が得られることが示唆されている(乙1発明に係る請求項1)。そして,安定なオキサリプラチン水 溶液の調製は,当業者において望まれるものであったから(本件明細書の段落【0013】ないし【0017】),当業者において,臨床上使用されていた凍結乾燥製剤の水溶液の調製濃度と等しい(乙11)5mg/mlオキサリプラチン水溶液を調製する動機付けが十分に存在した。また,甲14文献には,オキサリプラチン水溶液の溶解度が7.9mg/mlであることが示されていたから,7. 9mg/mlの濃度に至るまでのオキサリプラチン水溶液を調製することは既に知られていた技術といえ,5mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液を調製することは技術的に困難ではなかった。 したがって,当業者は,乙1発明に開示された2mg/mlの濃度の安定オキサリプラチン水溶液を5mg/mlの濃度に調整する構成を容易に想到できた。 (b) また,安定性試験の結果(乙5)には,安定な5mg/mlのオキサリプラチン水溶液を調製するとオキサリプラチン水 オキサリプラチン水溶液を5mg/mlの濃度に調整する構成を容易に想到できた。 (b) また,安定性試験の結果(乙5)には,安定な5mg/mlのオキサリプラチン水溶液を調製するとオキサリプラチン水溶液の分解により生じる解離シュウ酸の濃度が構成要件Gの範囲内となることが示されている。 (c) 以上によれば,当業者は,乙1発明に基づき,解離シュウ酸の濃度を構成要件Gの示す範囲に調整した本件発明の構成を容易に想到することができたといえる。 よって,本件発明は,乙1発明によって進歩性を欠くから,本件特許は,特許法29条2項及び123条1項2号に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。 b なお,原告は,①5mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液には構成要件Gに示された範囲の濃度の解離シュウ酸が存在しない,②本件発明と乙1発明とではシュウ酸の位置づけが相違することなどを 指摘して,当業者において,乙1発明から本件発明の構成を想到できない旨主張する。 しかしながら,①については,上記ア(被告の主張)(ア)a(a)で述べたとおり,再現実験の結果(乙4,5,15)によれば,5mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液には構成要件Gの示す範囲内の解離シュウ酸が存在することは明らかであり,この結果と矛盾する実験結果(甲16)は信用できない。また,②については,上記ア(被告の主張)(ア)bで述べたとおり,オキサリプラチン水溶液にシュウ酸が含まれているという組成が同一である以上,両発明におけるシュウ酸を別異に解すべきではなく,相違点であるとはいえない。 (イ) 乙1発明に基づく進歩性欠如②a 乙1発明には,少なくとも「解離シュウ酸を含む製薬上安定なオキサリプラチン水溶液」が開示されてい 異に解すべきではなく,相違点であるとはいえない。 (イ) 乙1発明に基づく進歩性欠如②a 乙1発明には,少なくとも「解離シュウ酸を含む製薬上安定なオキサリプラチン水溶液」が開示されている。 仮に,乙1発明に開示されたオキサリプラチン水溶液に存在する解離シュウ酸の濃度が構成要件Gに示された範囲外であるとしても,解離シュウ酸が「緩衝剤」に含まれるか否かにかかわらず,乙1発明に対して,次のとおりの本件優先日当時における白金錯体を含む抗がん剤(以下「白金抗がん剤」という。)並びに化学反応の速度論及び平衡定数に関する周知技術を組み合わせれば,当業者において,乙1発明に開示されたオキサリプラチン水溶液に含まれる「緩衝剤」の濃度を構成要件Gに示された濃度の範囲内に調整することは,容易に想到できた。 (a) 白金抗がん剤に関する周知技術白金抗がん剤は,シスプラチン(第1世代),カルボプラチン・テトラプラチン等(第2世代),オキサリプラチン等(第3世代)と改良開発されている(乙26,乙27,乙28)。 本件特許の優先日当時,特に上記第1世代及び第2世代の白金抗がん剤(シスプラチン,テトラプラチン,JM40,スピロプラチン,カルボプラチン等)の溶液組成物につき,不純物とされていた脱離基の溶液組成物中の濃度を増加させることで安定化する技術が周知であった(乙9,乙10,乙21ないし23)。また,当業者において,白金抗がん剤の各世代間でそれぞれの技術が適用し得ることが認識されていた。そうすると,当業者において,上記の安定化の技術を第3世代のオキサリプラチンに適用することは,当然に想到できたといえる。 さらに,本件特許の優先日当時,脱離基のモル濃度を構成要件Gに示された範囲内に調整する技術も知られていた(乙10) 化の技術を第3世代のオキサリプラチンに適用することは,当然に想到できたといえる。 さらに,本件特許の優先日当時,脱離基のモル濃度を構成要件Gに示された範囲内に調整する技術も知られていた(乙10)から,当業者において,オキサリプラチンの溶液組成物につき,脱離基のモル濃度を上記の範囲に調整することは容易に想到できた。 (b) 化学反応の速度論及び平衡定数に関する周知技術上記(1)(被告の主張)ア(ア)a(e)で述べたとおり,本件特許の優先日以前において,以下の式のとおり,オキサリプラチンの分解による可逆反応が生じ,平衡状態に達することが知られていた。そうすると,オキサリプラチン水溶液中のシュウ酸の濃度を上昇させることによってオキサリプラチンを再合成する反応を促進させ,オキサリプラチンの濃度を高めることによって安定化が図られることは,当業者において周知であったといえる。 そして,当業者であれば,上記反応式から次の式による平衡定数の式を想到することができたといえ,その分子のシュウ酸の濃度が増大すれば,必然的に上記式の分母のオキサリプラチン濃度が増大する関係にあることも当然に理解できたといえる。 以上によれば,より安定なオキサリプラチン製剤を求める当業者は,毒性のあるジアクオDACHプラチンを減少させるために,上記周知技術を適用し,シュウ酸を添加してシュウ酸イオンの濃度を増大させてオキサリプラチンの分解を抑制する構成を想到することにつき,強い動機付けがあったといえる。 よって,本件発明は,乙1発明に上記周知技術を組み合せると進歩性を欠くから,本件特許は,特許法29条2項,123条1項2号に基づき,特許無効審判により無効にさ 動機付けがあったといえる。 よって,本件発明は,乙1発明に上記周知技術を組み合せると進歩性を欠くから,本件特許は,特許法29条2項,123条1項2号に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。 b なお,原告は,乙1発明にはシュウ酸が不純物として開示され,シュウ酸が毒物及び劇物取締法所定の「劇物」とされていることなどから,医薬品にシュウ酸を添加することには決定的な阻害要因があり,当業者は,シュウ酸を添加する構成を想到し得ないなどと主張する。 しかしながら,上記ア(被告の主張)(ア)bで述べたとおり,不純物であるか緩衝剤であるかは呼称の違いにすぎず,不純物とされていた脱離基の濃度を増大させる技術的思想が開示されており(乙21),シュウ酸の毒性(LD50270mg/kg)はオキサリプラチンの毒性(LD5014.3~19.8mg/kg)に比べて 極めて低いことなどから,シュウ酸を添加する構成に阻害要因はなく,乙1発明から上記構成を容易に想到できる。 (ウ) 甲14発明に基づく進歩性欠如仮に,本件発明と甲14発明は,「緩衝剤」の濃度において相違するとしても,上記(ア)及び(イ)で述べた理由は,7.9mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液を開示する甲14発明を主引例とする進歩性欠如の理由にもあてはまる。 よって,本件発明は,甲14発明によって進歩性を欠くから,本件特許は,特許法29条2項,123条1項2号に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。 (原告の主張)(ア) 乙1発明に基づく進歩性欠如①a 本件発明と乙1発明には,上記ア(原告の主張)(ア)で述べたとおり,2つの相違点(相違点①,相違点②)がある。 特に,相違点②については,乙1発明には,毒物及 ) 乙1発明に基づく進歩性欠如①a 本件発明と乙1発明には,上記ア(原告の主張)(ア)で述べたとおり,2つの相違点(相違点①,相違点②)がある。 特に,相違点②については,乙1発明には,毒物及び劇物取締法所定の「劇物」に該当するシュウ酸が不純物として開示されており,不純物とされたシュウ酸を緩衝剤とすることは従来の技術思想を覆すものであるから,乙1発明に触れた当業者が,不純物とされたシュウ酸を緩衝剤として,添加し,又は一定量存在させる構成を想到する動機付けはなく,上記構成には阻害要因がある。 また,乙1発明には,既に製薬上安定なオキサリプラチン溶液が開示されているから,当業者において,本件発明の課題,すなわち,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することを想起する動機付けはない。加えて,本件発明と乙1発明のシュウ酸が存在する技術的思想は異なるから,両発明が同一とはならない。 よって,乙1発明によって本件発明の進歩性は否定されない。 b なお,被告は,相違点①に関し,本件発明と乙1発明にシュウ酸の濃度が開示され,開示されたシュウ酸の濃度が相違するとしても,実験結果(乙4,5,46)によれば,乙1発明から本件発明に開示されたシュウ酸の濃度に調整することを容易に想到できる旨主張する。 しかしながら,上記ア(原告の主張)(ア)で述べたところに加えて,同濃度のオキサリプラチンであっても,分解によって生じる解離シュウ酸の量は異なる(乙4,5,38,46,47)。むしろ,正確な再現実験(甲16)には,5mg/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液に含有されるシュウ酸のモル濃度が構成要件Gに示された範囲外となったことが示されているから,仮に,乙1発明にシュウ酸の濃度が開示されていたとしても,当業者にお g/mlの濃度のオキサリプラチン水溶液に含有されるシュウ酸のモル濃度が構成要件Gに示された範囲外となったことが示されているから,仮に,乙1発明にシュウ酸の濃度が開示されていたとしても,当業者において,その濃度を構成要件Gの範囲に調整することを想到することはできない。 (イ) 乙1発明に基づく進歩性欠如②a 上記(ア)で述べたとおり,乙1発明によって本件発明の進歩性は否定されない。 b なお,被告は,オキサリプラチン水溶液が化学平衡の状態となることや白金抗がん剤の溶液組成物において,脱離基の濃度の増加させることで安定化することが周知技術であることを前提に,乙1発明に上記周知技術を組み合わせれば,本件発明の構成を容易に想到できる旨主張する。 しかしながら,本件特許の優先日当時,被告の主張する周知技術は存在していなかった。また,オキサリプラチンと,白金抗がん剤の第1世代に含まれるシスプラチン及び第2世代に含まれるカルボプラチンは,構造や配位子,分解生成物が異なるから,第1世代と第2世代に関する技術的な知見を当然にオキサリプラチンに適用する動機付けはない。 (ウ) 甲14発明に基づく進歩性欠如本件発明と甲14発明には,上記ア(原告の主張)(イ)で述べた相違点があり,甲14文献に開示された内容に照らせば,少なくとも,甲14発明に基づき,オキサリプラチンの溶液組成物という構成を想到することやそれが製薬上安定であるとの構成を想到する余地はない。また,上記(ア)及び(イ)で述べたとおり,当業者において,シュウ酸を添加する構成を想到する動機付けはない。 よって,甲14発明によって本件発明の進歩性は否定されない。 ウ争点2-3(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について において,シュウ酸を添加する構成を想到する動機付けはない。 よって,甲14発明によって本件発明の進歩性は否定されない。 ウ争点2-3(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について(被告の主張)仮に「緩衝剤」に解離シュウ酸を含むと解すると,当業者は,本件明細書の記載及び技術常識から,本件特許の優先日時点において既に知られていたオキサリプラチン水溶液(乙1発明)より有意に安定であるという本件発明の効果が得られることを認識できない。本件発明は,周知技術に基づいて同水溶液中の解離シュウ酸を含めたシュウ酸の量を数値として限定した発明にすぎない。 そして,本件発明は,「有効安定化量の緩衝剤」を包含するものであり,長期間(2年以上)にわたって安定して保存し得るオキサリプラチン溶液組成物を提供するとの課題の解決手段として,「緩衝剤」である「シュウ酸またはアルカリ金属塩」のモル濃度を構成要件Gの示す範囲に調整することを要旨とするものであるが,本件明細書には,解離シュウ酸を含めたシュウ酸(「緩衝剤」)を上記範囲に調整する方法,すなわち,本件発明の課題解決の手段が記載されていない。 また,数値限定範囲であれば当該発明における作用効果を奏することを裏付ける記載及びその具体例がなければ,実施可能要件及びサポート要件を欠くところ,本件明細書には,「安定」の意義にかかわらず,シュウ酸 が構成要件Gに示された範囲のモル濃度で存在することによる効果が記載されていないから,当業者において,解離シュウ酸を含めたシュウ酸の濃度と「安定化」という効果の関係,「安定オキサリプラチン溶液」が得られることを認識することができない。 よって,本件特許には実施可能要件違反及びサポート要件違反の無効理由が存在するから,本件特許は,特許法36条4項 う効果の関係,「安定オキサリプラチン溶液」が得られることを認識することができない。 よって,本件特許には実施可能要件違反及びサポート要件違反の無効理由が存在するから,本件特許は,特許法36条4項(実施可能要件)ないし同条6項1号(サポート要件)及び123条1項4号により,特許無効審判により無効にされるべきものである。 (原告の主張)そもそも,本件発明における「安定」とは,「製薬上安定」を意味する(本件明細書・段落【0017】)から,被告の主張は前提において誤りがある。 この点を措くとしても,本件発明で問題とすべきことは,「オキサリプラチン溶液組成物に現に含まれる全ての緩衝剤の量」であり,本件明細書には,実施例1~17において,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物の具体的な調製方法が開示されており,その調製時におけるオキサリプラチン水溶液中の緩衝剤の量も開示されて,安定性も開示されている。また,実施例18(b)において,緩衝剤を添加しない態様による製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物の具体的な調製方法が開示されており,その水溶液中の緩衝剤の量も出願当時の技術常識に基づき推計可能である。 このように,本件明細書には,調製時のオキサリプラチン水溶液中のシュウ酸の濃度及びその安定性が示されている。本件明細書の実施例における「40℃75%RH」で6か月の安定性により「室温3年保存」の安定性を推定することは技術常識である(甲8,15)。 よって,本件特許に実施可能要件違反及びサポート要件違反はない。 エ争点2-4(明確性要件違反)について (被告の主張)本件発明における「有効安定化量」「有効安定化量の緩衝剤」の意義は,それぞれ,「有意に長期間の,即ち2年以上の保存期間中,製薬上安定である状態 件違反)について (被告の主張)本件発明における「有効安定化量」「有効安定化量の緩衝剤」の意義は,それぞれ,「有意に長期間の,即ち2年以上の保存期間中,製薬上安定である状態であり,かつ既存のオキサリプラチンに比べて有意に安定である状態を形成するに足りる量」,「オキサリプラチンの分解により生じるシュウ酸イオンとは別に,添加したシュウ酸またはそのアルカリ金属塩」と解するべきであり,本件明細書における一切の記載を斟酌しても,上記と異なる解釈はできないから,上記と異なる解釈をすることは,本件明細書の記載にない意義を「有効安定化量」,「有効安定化量の緩衝剤」に読み込むことになり,本件発明の技術的範囲を不明確にするものであって,明確性要件に違反する。 よって,本件特許には明確性要件違反の無効理由が存在するから,本件特許は,特許法36条6項2号及び123条1項4号により特許無効審判により無効にされるべきものである。 (原告の主張)本件発明には,構成要件Gに緩衝剤の量が範囲として示されているから,少なくとも,上記範囲内のモル濃度を「有効安定化量」と理解するのは明白である。また,本件発明における「緩衝剤の量」とは,「オキサリプラチン溶液組成物に現に含まれる全ての緩衝剤の量」であって,「緩衝剤」には,添加シュウ酸であるか否かにかかわらず解離シュウ酸も含まれることは明らかである。 よって,本件特許は明確性要件に反しない。 (3) 争点3(本件訂正により無効理由が解消するか等)についてア争点3-1(本件訂正により無効理由が解消するか)について(原告の主張)本件訂正は適法であるところ,仮に,本件特許について無効理由がある としても,本件訂正により無効理由は解消された。 訂正により無効理由が解消するか)について(原告の主張)本件訂正は適法であるところ,仮に,本件特許について無効理由がある としても,本件訂正により無効理由は解消された。 (被告の主張)本件訂正発明は,本件発明の構成要件Gに記載された緩衝剤の量を本件訂正発明の構成要件G’1及びG’2のとおり訂正するものにすぎず,上記(2)(被告の主張)で述べたところによれば,乙1発明が本件訂正発明の構成要件AないしFを充足し,構成要件G’1ないしG’2の示す濃度の範囲内のシュウ酸が存在するから,構成要件G’1及びG’2を充足する。 よって,本件訂正によって,本件特許の無効理由が解消されたとはいえない。 イ争点3-2(被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)本件訂正による訂正は,本件発明の緩衝剤の量を構成要件Gから構成要件G’1及びG’2のとおり訂正するものであり,当該訂正の内容に加えて,上記(1)(原告の主張)で述べたところによれば,被告製品は,本件訂正発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張)本件訂正による訂正の内容に加えて,上記(1)(被告の主張)で述べたところによれば,被告製品は,本件訂正発明の技術的範囲に属しない。 (4) 争点4(本件訂正による新たな無効理由の存否)についてア争点4-1(本件訂正発明に係る進歩性欠如)について(被告の主張)乙1発明には,pHの値が4.5~6の安定オキサリプラチン水溶液が開示されているのに対し,本件訂正発明には「pHが3~4.5の範囲の組成物」が開示されている。 仮に,乙1発明と本件訂正発明において,「pHが3~4.5の範囲」の組成物であるか否かが相違点となったとし に対し,本件訂正発明には「pHが3~4.5の範囲の組成物」が開示されている。 仮に,乙1発明と本件訂正発明において,「pHが3~4.5の範囲」の組成物であるか否かが相違点となったとしても,当業者において,乙1発明に対して,公開特許公報(乙29。特開平9-40685号公報)及び国際公開公報(乙30。国際公開第94/12193号)に開示された技術を適用すれば,乙1発明の安定なオキサリプラチン水溶液に含まれるpHの値を構成要件G’1の範囲に調整することは容易想到である。すなわち,乙29には,白金抗がん剤であるオキサリプラチンの水溶液に係る発明が開示され,オキサリプラチンの生成の促進及び多量体化の抑制を行い,溶液中の不純物の少ない高純度及び高収率のオキサリプラチン水溶液を得るとの課題を解決する手段として,pHの値を3.0~6.0,望ましくは4.0~5.0に調整するとの安定化方法が開示されている。また,乙30には,オキサリプラチン溶液の安定化という課題を解決する手段として,pHの値を約3~5,好ましくは3.2~4.3に調整する方法が開示されている。 そして,当業者において,白金抗がん剤の安定化に強い関心があったことは知られていたから,pHの値を乙29又は乙30に示された範囲の安定オキサリプラチン水溶液を得るために,乙1発明に対して,上記記載のpHの値に調整する技術を適用する動機付けがあるといえ,各世代の白金抗がん剤において,開示された溶液のpHの調整と安定性の技術(乙31ないし34)を斟酌すれば,上記動機付けは十分である。 よって,本件訂正発明は,乙1発明に乙29ないし乙30を組み合わせることによって進歩性を欠くから,本件特許には新たな無効理由がある。 (原告の主張)上記(2)イ(原告の主張)(ア)aで述べたとおり 本件訂正発明は,乙1発明に乙29ないし乙30を組み合わせることによって進歩性を欠くから,本件特許には新たな無効理由がある。 (原告の主張)上記(2)イ(原告の主張)(ア)aで述べたとおり,乙1に基づき,本件発明の進歩性は否定されない。 また,乙29には,pHの値を調整して白金錯体の合成の効率を高める という技術的事項は開示されているが,水溶液製剤の安定化の観点からpHの値を調整する技術的事項は開示されていない。また,乙30には,オキサリプラチン及びシスプラチンを含む組成物を凍結乾燥物として製剤化して溶解したもののpHの値を3ないし5に調整すると数時間安定であることは開示されているが,オキサリプラチン溶液が開示されていない。 よって,当業者において,乙1発明に対して乙29ないし乙30を適用する動機付けはないから,これらによって本件訂正発明の進歩性は否定されない。 イ争点4-2(本件訂正発明に係るサポート要件違反及び実施可能要件違反)について(被告の主張)本件明細書において,pHの値を3~4.5の範囲に調整することのできる技術は,シュウ酸(ただし,シュウ酸イオンを除く。)を添加した実施例10ないし13及び15ないし17にのみ示されており,pHの値に係るその余の記載(段落【0025】)によっても,オキサリプラチンを純水に溶解するにあたって当該pHの範囲を調整する方法,及び,当該pHの値と構成要件G’1ないしG’2に示されたモル濃度との関係は明らかではない。 このように,本件明細書には,シュウ酸の添加及びその濃度の調整とは独立してpHの値を調整する手段やその効果は示されていないから,当業者において,その手段及び効果を理解することができない。 そうすると,本件訂正後の本件特 には,シュウ酸の添加及びその濃度の調整とは独立してpHの値を調整する手段やその効果は示されていないから,当業者において,その手段及び効果を理解することができない。 そうすると,本件訂正後の本件特許は実施可能要件及びサポート要件に反するから,本件特許には新たな無効理由がある。 (原告の主張)少なくとも,本件明細書の実施例には,本件訂正発明に示されたpHの値になる具体的な製薬上安定なオキサリプラチン水溶液が開示されており, 当該記載をもってpHの値を調整でき,被告製品自体にpH調整剤が添加物として使用されてpHの値を調整しているように,従来技術を斟酌して,pHの値を調整することは可能である。また,本件明細書には,本件訂正発明に係る物を製造する具体的な方法が記載されている。 さらに,実施例1ないし4及び8ないし11によれば,当業者において,本件訂正発明に係る構成が製薬上安定であることは当然に理解することができる。 よって,本件訂正後の本件特許に,実施可能性要件違反及びサポート要件違反はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 構成要件B,F及びGの「緩衝剤」の充足性についてア本件発明の意義及び目的等構成要件B,F及びGの「緩衝剤」の充足性について判断する前提として,まず,本件発明の意義及び目的等を検討する。 (ア) 本件明細書の記載本件明細書の【発明の詳細な説明】には,次の各記載がある。 ・本発明は,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物,癌腫の治療におけるその使用方法,このような組成物の製造方法,およびオキサリプラチンの溶液の安定化方法に関する。(段落【0001】)・ Ibrahim等(豪州国特許出願第298 ラチン溶液組成物,癌腫の治療におけるその使用方法,このような組成物の製造方法,およびオキサリプラチンの溶液の安定化方法に関する。(段落【0001】)・ Ibrahim等(豪州国特許出願第29896/95号,1996年3月7日公開)(WO96/04904,1996年2月22日公開の特許族成員)は,1 ~5mg/mLの範囲の濃度のオキサリプラチン水溶液から成る非経口投与のためのオキサリプラチンの製薬上安定な製剤であって,4.5~6の範囲のpHを有する製剤を開示する。同様の開示は,米国特許第5,716,988号(1998年2 月10日発行)に見出される。(段落【0010】後段)・オキサリプラチンは,注入用の水または5%グルコース溶液を用いて患者への投与の直前に再構築され,その後5%グルコース溶液で稀釈される凍結乾燥粉末として,前臨床および臨床試験の両方に一般に利用可能である。しかしながら,このような凍結乾燥物質は,いくつかの欠点を有する。中でも第一に,凍結乾燥工程は相対的に複雑になり,実施するのに経費が掛かる。さらに,凍結乾燥物質の使用は,生成物を使用時に再構築する必要があり,このことが,再構築のための適切な溶液を選択する際にそこにエラーが生じる機会を提供する。例えば,凍結乾燥オキサリプラチン生成物の再構築に際しての凍結乾燥物質の再構築用の,または液体製剤の稀釈用の非常に一般的な溶液である0.9%NaCl溶液の誤使用は,迅速反応が起こる点で活性成分に有害であり,オキサリプラチンの損失だけでなく,生成種の沈澱を生じ得る。凍結乾燥物質のその他の欠点を以下に示す:(a) 凍結乾燥物質の再構築は,再構築を必要としない滅菌物質より微生物汚染の危険性が増大する。(段落【0012】後段)・(b) 濾過または加熱(最 燥物質のその他の欠点を以下に示す:(a) 凍結乾燥物質の再構築は,再構築を必要としない滅菌物質より微生物汚染の危険性が増大する。(段落【0012】後段)・(b) 濾過または加熱(最終)滅菌により滅菌された溶液物質に比して,凍結乾燥物質には,より大きい滅菌性失敗の危険性が伴う。そして,(c) 凍結乾燥物質は,再構築時に不完全に溶解し,注射用物質として望ましくない粒子を生じる可能性がある。(段落【0013】前段)・水性溶液中では,オキサリプラチンは,時間を追って,分解して,種々の量のジアクオDACHプラチン(式I),ジアクオDACHプラチン二量体(式Ⅱ)およびプラチナ(IV)種(式Ⅲ):(段落【0013】後段)・ 【化3】 (段落【0014】)・ 【化4】 (段落【0015】)・を不純物として生成し得る,ということが示されている。任意の製剤組成物中に存在する不純物のレベルは,多くの場合に,組成物の毒物学的プロフィールに影響し得るので,上記の不純物を全く生成しないか,あるいはこれまでに知られているより有意に少ない量でこのような不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を開発することが望ましい。(段落【0016】)・したがって,前記の欠点を克服し,そして長期間の,即ち2年以上の保存期間中,製薬上安定である,すぐに使える(RTU)形態のオキサリプラチンの溶液組成物が必要とされている。したがって,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することによりこれらの欠点を克服することが,本発明の目的である。 (段落【0017】)・より具体的には,本発明は,オ ,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することによりこれらの欠点を克服することが,本発明の目的である。 (段落【0017】)・より具体的には,本発明は,オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物に関する。(以下略):(段落【0018】) ・前記の本発明のオキサリプラチン溶液組成物は,本明細書中でさらに詳細に後述するように,現在既知のオキサリプラチン組成物より優れたある利点を有することが判明している,ということも留意すべきである。 凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンとは異なって,本発明のすぐに使える組成物は,低コストで且つさほど複雑ではない製造方法により製造される。(段落【0030】)・さらに,本発明の組成物は,付加的調製または取扱い,例えば投与前の再構築を必要としない。したがって,凍結乾燥物質を用いる場合に存在するような,再構築のための適切な溶媒の選択に際してエラーが生じる機会がない。 本発明の組成物は,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定であることが判明しており,このことは,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物の場合よりも本発明の組成物中に生成される不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体が少ないことを意味する。(段落【0031】)(イ) 本件発明の意義及び目的等について前記第2の1(前提事実)(3)で述べた本件発明に係る特許請求の範囲の記載に加えて,上記(ア)の本件明細書の各記載によれば,本件発明は,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物に関する発明であり,本件発明の目的は,①凍結乾燥粉末の形態の 本件発明に係る特許請求の範囲の記載に加えて,上記(ア)の本件明細書の各記載によれば,本件発明は,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物に関する発明であり,本件発明の目的は,①凍結乾燥粉末の形態のオキサリプラチンにおける欠点,すなわち,経費が掛かり,かつ,再構築の際にエラーが生じるおそれがあること(段落【0012】及び【0013】前段)を克服するとともに,②水性溶液中において,より安定,すなわち,オキサリプラチンの分解によって生成し得る不純物(ジアクオDACHプラチン,ジアクオDACHプラチン二量体及びプラチナ種)を全く生成させないか, これまでに知られているより有意に少ない量の生成に抑えるために(段落【0013】後段ないし【0016】),2年以上にわたって製薬上安定である,すぐに使える(RTU)形態のオキサリプラチン溶液組成物を提供することにある(段落【0017】)。 そして,上記(ア)の本件明細書の各記載によれば,本件発明の効果として,本件発明に係るオキサリプラチン溶液組成物は,①の課題に対し,低コストかつさほど複雑ではない製造方法により製造され(段落【0030】),凍結乾燥物質形態を使用する際の再構築に伴うエラーが生じる機会がないとされ(段落【0031】),②の課題に対し,「従来既知の水性組成物」より製造工程中に安定である,すなわち,当該組成物中に生成される上記不純物が少ないとされている(段落【0031】)。なお,本件発明の従来技術として,乙1発明に対応する豪州国特許出願に係る発明が示されている(段落【0010】)から,上記「従来既知の水性組成物」には乙1発明に係るオキサリプラチン水溶液が含まれる。 イ 「緩衝剤」の意義及び充足性について構成要件B,F及びGの「緩衝剤」について,原告は,添加したシュウ ,上記「従来既知の水性組成物」には乙1発明に係るオキサリプラチン水溶液が含まれる。 イ 「緩衝剤」の意義及び充足性について構成要件B,F及びGの「緩衝剤」について,原告は,添加したシュウ酸のみならず解離シュウ酸を含むと解すべきである旨主張するのに対し,被告は,添加された試薬に限られ解離シュウ酸は含まれないと解すべきである旨主張するので,以下,この点について検討する。 (ア) 特許請求の範囲の記載本件発明に係る特許請求の範囲には,「緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,」(構成要件F)と規定されている(前記第2の1(前提事実)(4))。 この点,一般的に,「緩衝剤」とは,「緩衝液をつくるために用いられる試薬の総称」とされ(乙12「化学大辞典」),「剤」とは「各種の薬を調合すること。また,その薬。」と解されていること(乙43「広辞 苑」))や医薬品に関する文献(乙39ないし42)の記載などに照らせば,「緩衝剤」は外部から添加されるものであることが前提とされているといえ,当業者も同旨の理解をしている(乙13,37,38)。 また,緩衝剤である「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」が包含された溶液においては,「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」の少なくとも一部は,シュウ酸イオンとして存在することが予定されているが(争いのない事実),仮に,「シュウ酸」について解離シュウ酸(シュウ酸イオン)を含むと解すると,「そのアルカリ金属塩」を添加した場合,緩衝剤として,シュウ酸を使用したともそのアルカリ金属塩を使用したとも解されることになって不合理である。 以上によれば,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」とは,添加された「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」であって解離シュウ酸は含まれない を使用したとも解されることになって不合理である。 以上によれば,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」とは,添加された「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」であって解離シュウ酸は含まれないと解するのが相当である。 (イ) 本件明細書の記載上記解釈は,以下のとおり,本件明細書の記載からも裏付けられる。 a 本件明細書において,「緩衝剤」は,「緩衝剤という用語は,本明細書中で用いる場合,オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸性または塩基性剤を意味する。」(段落【0022】)と定義されている。 この点,本件特許の優先日以前において,オキサリプラチンが水溶液中で分解して,ジアクオDACHプラチン及びシュウ酸イオン(解離シュウ酸)が生成され,その反応が次式の可逆反応であり,化学平衡の状態(溶液全体で最も安定な状態)に達することが知られていた(乙2,13,37,38)。 そうすると,化学平衡状態に達したオキサリプラチン水溶液にシュウ酸を加えると,オキサリプラチンを再生成する反応(上記式の左向きの反応)が進み,新たな化学平衡状態に達することになり,当該溶液中に存在する不純物であるジアクオDACHプラチンの量は上記再生成反応前よりも少なくなるから,「不純物…の生成を防止するかまたは遅延させ得る」ことが実現される。他方,解離シュウ酸(シュウ酸イオン)は,オキサリプラチンの分解によって不純物とともに生成され,平衡状態にある水溶液中に当然含まれるものにすぎず,解離シュウ酸の存在によって平衡状態が変化し,上記再生成反応(左向きの反応)が進むことに は,オキサリプラチンの分解によって不純物とともに生成され,平衡状態にある水溶液中に当然含まれるものにすぎず,解離シュウ酸の存在によって平衡状態が変化し,上記再生成反応(左向きの反応)が進むことにはならない。 したがって,「不純物…の生成を防止するかまたは遅延させ得る」ものである「緩衝剤」は,解離シュウ酸ではなく,添加されたシュウ酸を意味すると解される。 b また,本件明細書には,実施例として,実施例1ないし18が記載されているが,実施例1ないし17は,オキサリプラチンの水溶液にシュウ酸等が添加されている例(段落【0039】ないし【0049】)であるのに対し,実施例18(a)及び(b)(段落【0050】)は,シュウ酸等が添加されていない例である。 ところで,実施例18については,文言上「実施例」と記載されているものの,本件明細書において,「実施例18 比較のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月7日公開)に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以下のよう に調製した:」(段落【0050】)(なお,上記豪州国特許出願は,上記ア(イ)で述べたとおり,乙1発明に対応するものである。)との記載や,「比較例18の安定性実施例18(b)の非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物を…」(段落【0073】)と記載されていることなどに照らせば,その実質は比較例にすぎないと認められる。 そうすると,本件明細書には,実質的には,オキサリプラチンの水溶液にシュウ酸等が添加されている実施例のみが記載されているというべきである。 c さらに,本件発明の目的との関係についてみても,上記アで述べたとおり,本件明細書の記載によれば,本件発明の目的は,①凍結乾燥粉末の形態のオキサリプ 記載されているというべきである。 c さらに,本件発明の目的との関係についてみても,上記アで述べたとおり,本件明細書の記載によれば,本件発明の目的は,①凍結乾燥粉末の形態のオキサリプラチンにおける欠点を克服するとともに,②オキサリプラチンの分解によって生成し得る不純物を全く生成させないか,乙1発明のオキサリプラチン水溶液を含む従来既知の水性組成物より有意に少ない量の生成に抑えるために,より製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することにある。 そして,仮に,本件発明の「緩衝剤」に解離シュウ酸を含むと解すると,解離シュウ酸が存在していた乙1発明のオキサリプラチン水溶液(段落【0010】)を含む従来既知の水性組成物と同様の組成物が本件発明に含まれることとなり,従来既知の水性組成物より安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供するとの本件発明の目的との関係を合理的かつ整合的に解釈することができない。 (ウ) 「緩衝剤」の解釈したがって,上記(ア)及び(イ)によれば,構成要件Bの「緩衝剤」とは,添加された「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」であって解離シュウ酸は含まれないと解するのが相当である。 ウ小括 以上に検討したところに加えて,弁論の全趣旨によれば,被告製品には「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」が添加されていないと認められることによれば,被告製品は,構成要件B,F及びGを充足しない。 エ原告の主張に対する判断(ア) 原告は,本件発明の意義及び目的につき,本件発明は,凍結乾燥粉末の形態で利用可能であったオキサリプラチンにつき,凍結乾燥物質の欠点を克服して,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的としてお につき,本件発明は,凍結乾燥粉末の形態で利用可能であったオキサリプラチンにつき,凍結乾燥物質の欠点を克服して,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的としており,乙1発明と比較して安定なオキサリプラチン溶液を提供することを目的とするものではない旨主張する。 しかしながら,前記ア(ア)のとおり,本件明細書においては,凍結乾燥物質の形態だけではなく水性溶液のオキサリプラチンも従来技術とされている(段落【0010】)。また,「不純物を全く生成しないか,あるいはこれまでに知られているより有意に少ない量でこのような不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を開発することが望ましい」(段落【0016】)との記載や,「本発明の組成物は,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定である」(段落【0031】)との記載があるが,使用時に再構築された後に長期間保存することの想定されていない凍結乾燥物質に,水溶液中の分解に伴って不純物が生成される欠点があるとは解し難いから,上記各記載が凍結乾燥物質に関する記載であるとはいえない。これらの記載も踏まえれば,本件発明の意義及び目的は,上記ア認定のとおりであって,原告の上記主張は採用できない。 (イ) また,原告は,「緩衝剤」の意義について,本件発明に係る特許請求の範囲には「緩衝剤…を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物」と記載され,文言上「つつみこみ,中に含んでいる」を意味する「包含」 という用語が使用されていることや,本件明細書において,「緩衝剤」はオキサリプラチン溶液組成物中に「存在」すれば足りると記載されていることをもって,「緩衝剤」には解離シュウ酸も含まれる旨主張する。 しかしながら,「 や,本件明細書において,「緩衝剤」はオキサリプラチン溶液組成物中に「存在」すれば足りると記載されていることをもって,「緩衝剤」には解離シュウ酸も含まれる旨主張する。 しかしながら,「緩衝剤」に解離シュウ酸を含むものと解すると,上記イで述べたとおり,特許請求の範囲や本件明細書の記載等との関係に係る多くの点において合理的かつ整合的な説明をすることができないことになるから,そのような解釈をすることはできない。本件発明に係る特許請求の範囲に記載された「緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,」との規定は,緩衝剤が「包含」されたオキサリプラチン溶液における緩衝剤の由来を規定したものであり,「包含」とはシュウ酸等が添加された後の状態を「含んでいる」ことを意味すると解すべきである。したがって,原告の上記主張も採用できない。 (ウ) その他,「緩衝剤」の意義に係る原告の主張を精査しても,上記ウの認定は左右されない。 (2) まとめしたがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するとは認められない。 2 結論よって,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官廣瀬達人 裁判官村井美喜子 (別紙)被告製品目録 1 オキサリプラチン点滴静注液 50mg/10mL「ファイザー」 2 オキサリプラチン点滴静注液 100mg/20mL「ファイザー」 3 オキサリプラチン点滴静注液 200mg/40mL「ファイザー」 50mg/10mL「ファイザー」 オキサリプラチン点滴静注液 100mg/20mL「ファイザー」 オキサリプラチン点滴静注液 200mg/40mL「ファイザー」
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