主文 被告人を懲役6年に処する。 未決勾留日数中430日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は,第1平成18年12月28日午前7時15分ころ,大阪府吹田市(以下略)所在のA方2階洋室において,自己の二男であるV1(当時5歳)に対し,その頚部を右腕で締め付け,口及び鼻を左手でふさぐなどし,よって,そのころ,同所において,同人を頚部圧迫による窒息により死亡させて殺害した第2平成18年12月28日午前7時25分ころ,前記場所において,自己の長男であるV2(当時8歳)に対し,その頚部を右腕で締め付け,口及び鼻を左手でふさぐなどして殺害しようとしたが,前記Aらに制止されたため,上記V2に加療日数不詳の低酸素性虚血性脳障害(心肺停止蘇生後脳障害)の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかったものであるが,判示各犯行当時,いずれも統合失調症型障害のため心神耗弱の状態にあったものである。 【争点に対する判断】 当事者の主張検察官は,被告人は本件各犯行当時に完全責任能力を有していた旨主張するのに対し,弁護人は,被告人は統合失調症型障害又は統合失調症に罹患していて,事理弁識能力及び行動制御能力を完全に喪失していたため,被告人は無罪とされるべきである旨主張するので,以下検討する。 前提事実関係各証拠によれば,前提事実として,以下の事実が認められる。 (1)被告人及びその家族について被告人は,平成4年4月に(略)会社に就職し,平成18年6月30日まで同社の台車工場で作業員として勤務し,同年7月1日以降本件犯行に至るまでの間,同社の輪軸工場で作業員として勤務していた。平成9年12月10日,同社に勤務していたBと婚姻し,平成10年12月27日に判示第2の犯行の被害者である長男V2,平成13年2月9日に判示第1の犯行の 間,同社の輪軸工場で作業員として勤務していた。平成9年12月10日,同社に勤務していたBと婚姻し,平成10年12月27日に判示第2の犯行の被害者である長男V2,平成13年2月9日に判示第1の犯行の被害者である二男V1がそれぞれ誕生した。 被告人は,Bと結婚した当初は兵庫県尼崎市に居住していたが,平成11年ころ兵庫県三田市に自宅を購入し,その後は自宅から大阪市此花区にある会社まで通勤していた。 被告人の父であるA及び母であるC並びに弟であるDは,平成18年8月ころ本件現場であるA宅を購入し,同所に3人で暮らしていたが,同年9月ころからは,被告人の妹であるEが出産のため同所に里帰りしていた。 (2)平成18年12月ころまでの被告人の勤務状況平成10年ころから平成18年12月初旬ころまでの被告人の勤務状況については,別表1記載のとおりである。 被告人は,当公判廷において,同期間の心情について,以下のとおり供述している。 平成14年9月ころに発覚した,新幹線車両の台車に本来取り付けられているべき補強板が取り付けられていなかったという不備が,その後もずっと気になっていて,病院で心療内科を受診させられたことなどと相まって,感情的になってしまい,平成18年7月中旬に国土交通省に内部告発をした。 同省から安全性に問題はないとの調査結果を聞き,肩の荷が降りたように感じ,台車工場へ戻りたいという思いを持つようになった。平成18年の8月後半ころから,内部告発をしたことが会社に伝わっていて,会社から冷たくされている,監視されているといった感じを持つようになり,同年11月又は12月ころから,自宅の上を飛行機が通る音,朝方に救急車が走りっぱなしになる音が聞こえるようになった。 なお,Bは,そのころの被告人の様子について,平成17年ころから,職場で製造している車両 月又は12月ころから,自宅の上を飛行機が通る音,朝方に救急車が走りっぱなしになる音が聞こえるようになった。 なお,Bは,そのころの被告人の様子について,平成17年ころから,職場で製造している車両の安全性の問題について思い悩むようになり,時期は必ずしも明らかではないが,ねらわれている,ホームにいたら押される,刺されるといった不安を口にするようになった旨供述している。 また,Cは,被告人の様子について,時期は必ずしも明らかではないが,本件現場となったA宅に転居する平成18年8月以前に,被告人が実家へ訪ねてきた際,Cに対して,つけられているから玄関を見てきてほしいと言ったことや,会社で,家族をねらうとか,妻や子供にも危害を加えるといったことを言われていると話していたことがあった旨供述している。 (3)平成18年12月の被告人の行動及びそれに関連する被告人の公判供述平成18年12月の被告人の行動及びその際の被告人の内心に関する被告人の当公判廷における供述の概要は,別表2記載のとおりである。 (4)身柄拘束後の被告人の行動及びそれに関連する被告人の公判供述被告人は,平成18年12月28日午後4時43分に逮捕され,現在に至るまでその身柄を拘束されているが,その間,少なくとも平成18年12月30日,平成19年2月3日,同月5日の3回にわたり,壁に向かって頭を打ち付ける,右手を洗面台に叩きつける,大声で叫びながら居室扉を手拳で叩き続けるなどの特異行動が見られた。これらの特異行動について,被告人は,当公判廷において,特異行動の際に,家族が痛めつけられている声などの幻聴が聞こえていたと供述している。 当裁判所の判断(1)精神鑑定についてア鑑定人F医師及び同G医師作成の鑑定書(以下,F医師の公判供述も含めて「F・G鑑定」という。)の鑑定主文は などの幻聴が聞こえていたと供述している。 当裁判所の判断(1)精神鑑定についてア鑑定人F医師及び同G医師作成の鑑定書(以下,F医師の公判供述も含めて「F・G鑑定」という。)の鑑定主文は,以下のとおりである。 (ア)被告人は統合失調症型障害に罹患している。 (イ)本件各犯行時,被告人は統合失調症型障害に起因する病的体験に思考や行動を支配されていた。 (ウ)本件各犯行当時の被告人の事理弁識能力とそれに従って自己の行動を制御する能力は大きく障害されていた。 イ生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,その意見を十分に尊重して認定すべきものというべきである(最高裁平成18年(あ)第876号平成20年4月25日第二小法廷判決)。しかるところ,F医師及びG医師はいずれも精神医学の専門家であり,その公正さや能力に特に疑うべき点はなく,鑑定の前提条件にも問題はうかがえない。 ウこの点,検察官は,鑑定人がもっぱら鑑定面接時に被告人から聴取した妄想観念や被告人供述からその結論を導いているとしてこれを非難し,被告人は鑑定時には,実子2人のうち1人を殺害し,もう1人を殺害しようとしたことなどを原因とする心因反応等を起こしていたとも考えられるのであるから,犯行時に近接する捜査段階の被告人供述を重視して判断すべきところ,鑑定人はこれを無視しており,鑑定の手法に問題がある旨主張し,確かに,被告人の捜査段階における各供述調書には妄想観念に のであるから,犯行時に近接する捜査段階の被告人供述を重視して判断すべきところ,鑑定人はこれを無視しており,鑑定の手法に問題がある旨主張し,確かに,被告人の捜査段階における各供述調書には妄想観念に関する供述が顕れておらず,かかる捜査段階における供述状況を重視すると,鑑定の前提条件が異なってくるものといえなくもない。 しかしながら,B及びCの各供述によると,前記2の(2)記載のとおり,時期については明らかではないが,被告人には遅くとも平成18年中ごろには妄想様の症状が現れていたものと認められ,本件犯行の前日である平成18年12月27日には,子供たちと買い物をしているBの携帯電話に4回にわたり連絡を取ったり,公園で遊んでいる子供たちをBに連れ戻させるなどの行動を取っており,これらの行動は,被告人が当公判廷で供述する内容の妄想観念に影響されて行われたものとして矛盾しない。被告人には,公園で遊んでいる子供たちの様子を見に行くようBに言ったことがあるなど,普段から心配性の性向があるが,同日の被告人の行動は,Bの供述によれば,普段とは程度が異なると感じるほどの様子であったというのであり,Bに対して「家が爆発する。」などと通常考えがたい不安を口にしていたことからしても,同日の被告人には強い妄想様の症状が生じていたことがうかがえる。 さらに,留置直後である平成18年12月30日に被告人に特異行動が見られたこと,本件の約半年前に心療内科の受診歴があること,平成19年1月9日付けのCの検察官に対する供述調書(甲7)に,平成18年12月27日におけるA宅での被告人の様子について,「物音がうるさいとか人からねらわれているなどと言うことはありませんでした。」との,被告人が訴える妄想観念を否定するかのような供述記載があることなどからすると,被告人は捜査段階の当 の様子について,「物音がうるさいとか人からねらわれているなどと言うことはありませんでした。」との,被告人が訴える妄想観念を否定するかのような供述記載があることなどからすると,被告人は捜査段階の当初から妄想観念について供述していたものと推測でき,被告人の捜査段階における供述調書に妄想に関する記載が見当たらないことは,これらの状況に照らすと不自然といわざるを得ない。したがって,鑑定人が被告人の妄想観念の存否を判断するに際し,被告人の捜査段階供述を重視しなかったからといって,鑑定の手法に問題があるとはいえず,検察官の主張には理由がない。 エしたがって,被告人の責任能力の判断に当たっては,F・G鑑定を十分に尊重すべきであって,被告人の病的基礎として,統合失調症型障害があったものと認められる。 (2)その他考慮要素ア平素の人格とのかい離被告人は,もともと心配性な面があるが,責任感が強く,優しく,子煩悩で,子供たちを叱るときも,大声を上げたり,暴力を振るうことはなく,言って聞かせることでしつけをしていたのであり,当時5歳と8歳という,かわいい盛りの子供たちの頚部を右腕で締め付け,口及び鼻を左手でふさぐなどして,二男を殺害し,長男を心肺停止状態にさせるなどしたという本件各犯行は,被告人の平素の人格からのかい離が大きく理解が困難であって,異常性が強いというべきである。 イ動機の異常性被告人は,V2に対して,頚部を締め付ける直前,仕事を辞めて食べていけなくなる,V2もいじめられるので死のうと話し,当公判廷においても,将来の悲観も本心としてあったとも供述している。しかし,F医師は,このような動機は統合失調症や統合失調症型障害とは異質であり,残酷に殺害されるという追いつめられた状況を子供に説明するため,わかりやすい,手っ取り早い説明をしたも も供述している。しかし,F医師は,このような動機は統合失調症や統合失調症型障害とは異質であり,残酷に殺害されるという追いつめられた状況を子供に説明するため,わかりやすい,手っ取り早い説明をしたものと供述しており,これによると,被告人が公判廷で述べるように,子供たちが体を引き裂かれるなど残酷な方法で殺害されるとの妄想観念に支配されていた被告人が,それよりは自らの手で殺してやった方が子供たちのためであるなどと考えて本件各犯行を敢行したものとの可能性を否定できない。そうすると,本件各犯行の動機は異常というほかない。 ウ犯行時の被告人の行動これに対し,本件各犯行時の被告人の行動として,被告人は,犯行日の早朝,子供たちの殺害を決意し,体が大きい長男のV2に抵抗されると隣室の父母に気付かれて二男のV1を殺害できなくなるおそれがあるため,まずV1を殺害することに決めたこと,V1を殺害する際,V1が小声で「痛い。」と言うのを聞き,かわいそうになり腕に込めた力を抜いたが,思い直して再度頚部を締め付けたこと,その際,「V1,うるさい。」と叫んだV2や隣室から入室してきたCに対しては,ごまかすために言い訳をした上で,V1の体を隠すため布団を掛けたこと,Cから差し出されたお茶を飲んだ後,その場から立ち去らせるために話があるので1階に下りておいてほしいと言ったこと,V2を殺害する際,Aらに制止されたが,殺害を途中でやめると子供に障害が残ることになり,却ってかわいそうであると考えて,なお頚部を締め付け続けたこと,V2の殺害をAらに制止された後,階下で包丁を探し,包丁が見つからないと知るや,フォークで左胸や首筋を突き刺して自殺を図ったことなどが認められる。これらによれば,本件各犯行時,被告人は,突発的な事態にも相応の対応をしており,その際の判断及びそれに基 丁が見つからないと知るや,フォークで左胸や首筋を突き刺して自殺を図ったことなどが認められる。これらによれば,本件各犯行時,被告人は,突発的な事態にも相応の対応をしており,その際の判断及びそれに基づく行動は概ね合理的といえる。 エ本件各犯行後の事情被告人は,留置中の平成18年12月30日以降3回にわたり,自傷行為などの特異行動を示しているが,他方で,平成19年1月上旬以降犯行態様について詳細に供述し,警察署内で犯行を再現するなどしており,その内容はA,Cらの供述と概ね合致していて,犯行時の記憶は清明であって,これが十分に保持されているといえる。 (3)評価弁護人は,被告人が統合失調症型障害であるとするF・G鑑定を前提として,少なくとも平成19年2月5日ころまで幻聴が継続していた疑いがあることから,被告人が統合失調症に罹患していたことを前提に責任能力を判断すべきである旨主張し,犯行時の被告人の行動が一見合理的である点,被告人の記憶が清明に保たれていることは,精神的疾患を有する者にも正常な精神作用が存在することで説明でき,被告人の責任能力を肯定する理由にはならないと主張する。 しかし,留置中に幻聴があったとしても,その間被告人は犯行時の行動について詳細な供述をして,犯行再現も行っているのであり,幻聴が絶え間なく続いていたとは認められないし,留置中の特異行動に関しては心因反応や拘禁反応の可能性もあり,留置中の被告人の特異行動は,被告人が統合失調症ではなく統合失調症型障害であるとするF・G鑑定の信用性を左右する事情ではない。そして,前記(2)のウ,エ記載のとおり,被告人が,V1に対する殺害行為中に,V1の声を聞いてかわいそうになり,V1の頚部を締め付けていた右腕の力を一旦緩める,V2に対する殺害行為中に,途中でやめると障害を負うことに ウ,エ記載のとおり,被告人が,V1に対する殺害行為中に,V1の声を聞いてかわいそうになり,V1の頚部を締め付けていた右腕の力を一旦緩める,V2に対する殺害行為中に,途中でやめると障害を負うことになり却ってかわいそうであると考えて頚部を締め付け続けるなど,犯行当時の状況を認識しつつ,現に自らが行っている行為の意味内容,すなわち,右腕で頚部を締め付け続けていると殺害することになり,締め付けを緩めると殺害には至らないが後遺障害が残ってしまう可能性があるなどということを弁えた上で,合理的な行動を取っていたものといえることや,犯行時の記憶が清明に保持されていることなどからすると,本件各犯行当時,被告人が事理弁識能力及び行動制御能力を喪失していなかったことは明らかというべきである。 もっとも,「本件各犯行当時の被告人の事理弁識能力とそれに従って自己の行動を制御する能力は大きく障害されていた」(鑑定主文),「思考の障害,あるいは幻覚,妄想のために是非弁別の能力と,それに従って行動を制御する能力が著しく障害されている」(F医師の公判供述)とのF・G鑑定に加え,前記(2)のア,イ記載のような,被告人の平素の人格からのかい離の大きさや,犯行動機の異常性等を併せ考えれば,本件各犯行当時の被告人の事理弁識能力及び行動制御能力は,当時罹患していた統合失調症型障害の影響により著しく低下していた可能性を否定することができない。 以上によれば,被告人は本件各犯行当時,心神耗弱の状態にあったものと認めるのが相当である。 【法令の適用】被告人の判示第1の所為は刑法199条に,判示第2の所為は同法203条,199条にそれぞれ該当するところ,各所定刑中いずれも有期懲役刑を選択し,判示の各罪はいずれも心神耗弱者の行為であるから同法39条2項,68条3号によりそれぞれ法律上の 示第2の所為は同法203条,199条にそれぞれ該当するところ,各所定刑中いずれも有期懲役刑を選択し,判示の各罪はいずれも心神耗弱者の行為であるから同法39条2項,68条3号によりそれぞれ法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役6年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中430日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 【量刑の理由】本件は,被告人が,就寝中の二男を絞殺した殺人(判示第1),続いて長男を絞殺しようとしたが,父親らに制止されたため,加療日数不詳の傷害を負わせるにとどまった殺人未遂(判示第2)の事案である。 被告人は,就寝中で無抵抗であった二男に対し,強く締められるようにその身体の上に覆い被さり体重をかけながら,その頚部を腕で締め,さらに呼吸できないように手で口と鼻をふさぐなどして,その鼓動が感じられなくなるまで頚部を締め続けた上,いったん頚部から腕を離した後も,再び鼓動が始まったと気付くや,再度その頚部を締め付けて,二男を殺害し,さらに,弟が殺害されているのに気付いた長男に対しても,頚部を腕で締め,長男が脅え,暴れ,逃れようとしたのに対し,二男と同様その身体の上に覆い被さり,口と鼻を手でふさいだものであり,その殺害方法は残酷かつ執拗で,強固な殺意に基づくものといえる。判示第1の犯行の被害者である二男は,当時わずか5歳で,両親や祖父母らから愛情を注がれ健やかに成長していたところ,こともあろうに実の父親の手にかかり,理不尽にもその短い一生を終えなければならなかったものである。判示第2の犯行の被害者である長男は,隣で寝ている弟が実の父親の手により殺害 かに成長していたところ,こともあろうに実の父親の手にかかり,理不尽にもその短い一生を終えなければならなかったものである。判示第2の犯行の被害者である長男は,隣で寝ている弟が実の父親の手により殺害されているのを目撃し,自らもまた実の父親の手にかかり殺害されようとしたのであり,その際感じたであろう恐怖感や絶望感には察してあまりあるものがある。本件各犯行により,二男は突如その未来を一方的に奪われ,長男も意識の回復する見込みの乏しい脳障害を負わされたのであって,かかるいわれのない甚大な被害を被った被害者らには,もとより何らの落ち度もなく,その結果が極めて重大であることは論を俟たない。また,被告人の妻は,二男を殺害された上に,回復の見込みはないと診断され,病院で寝たきり状態の長男を今後共養育していかなければならないのであり,その経済的,精神的負担は到底軽視することができない。被告人に対しては,厳しくその刑責を問う必要がある。 しかしながら,他方,上記のとおり,被告人は本件各犯行当時,統合失調症型障害に罹患しており,同障害のため心神耗弱の状態にあったこと,同障害に対する周囲の対応が不十分であったことも本件の一因といえること,被告人は,同障害に起因する妄想観念に支配され子供らが残酷な方法により殺害されるものと誤信し,苦しみながら殺されるくらいであれば,自らの手で殺害しようと考え本件各犯行に及んだものであって,理不尽極まりない動機とはいえ,そこには被害者らに対する被告人なりの愛情が含まれていたことは否定できないこと,被告人が罪を認めて反省の弁を述べていること,これまで交通関係の罰金前科以外には前科前歴がないこと,本件で逮捕,勾留され,約1年5か月にわたり身柄を拘束されており,既に一定の事実上の制裁を受けているといえることなど,量刑上被告人に有利に斟 と,これまで交通関係の罰金前科以外には前科前歴がないこと,本件で逮捕,勾留され,約1年5か月にわたり身柄を拘束されており,既に一定の事実上の制裁を受けているといえることなど,量刑上被告人に有利に斟酌すべき事情も認められる。 そこで,以上諸般の情状を総合考慮して,主文のとおり刑を量定した次第である。(求刑:懲役18年)平成20年5月30日大阪地方裁判所第6刑事部裁判長裁判官水島和男裁判官山崎威裁判官寺村隼人
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