平成31(ワ)3141 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年8月20日 東京地方裁判所
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令和2年8月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年(ワ)第3141号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和2年7月21日判決 原告 A同訴訟代理人弁護士小川義龍同山本和也同林知一 被告 IPP株式会社(以下「被告IPP」という。) 被告株式会社日新精工 (以下「被告日新精工」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士中西健文主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,別紙1物件目録記載の各製品を生産し,譲渡し,貸渡し,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告らは,その占有に係る別紙1物件目録記載の各製品及びその半製品を廃 棄せよ。 3 被告らは,原告に対し,連帯して,710万4000円及びこれに対する平成31年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告IPPは,原告に対し,192万円及びこれに対する平成28年2月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告IPPは,原告に対し,別紙2特許権目録記載の特許権の被告IPPの共有持分全部につき移転登録手続をせ これに対する平成28年2月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告IPPは,原告に対し,別紙2特許権目録記載の特許権の被告IPPの共有持分全部につき移転登録手続をせよ。 第2 事案の概要本件は,別紙2特許権目録記載の「レンズ交換式撮像装置用の掃除装置,および,レンズ交換式撮像装置の掃除方法」を発明の名称とする特許権(特許第 5845482号。請求項の数は5である。以下「本件特許権」といい,このうち請求項1に係る特許発明を「本件発明」という。)を被告IPPと共有する原告が,被告IPPとの間で,業務提携契約(以下「本件業務提携契約」という。)を締結し,被告らは,本件特許権の実施品である別紙1物件目録記載の各製品(以下「被告製品」という。)を製造・販売等していたところ,被告らによ る本件業務提携契約のライセンス期間満了日の翌日である平成28年2月1日以降における被告製品の製造・販売等が,被告IPPについては特許法73条2項の「契約で別段の定をした場合」にいう「契約」に当たる本件業務提携契約4条及び特別条項1項(以下,これらの定めのみを指して「本件業務提携契約」ということがある。)に違反し,被告日新精工については本件特許権の原告 の共有持分権を侵害すると主張して,被告らに対し,①本件業務提携契約違反ないし特許法100条1項,2項に基づき,被告製品の製造・販売等の差止め及び廃棄を,②本件業務提携契約違反ないし不法行為に基づき,710万4000円(前同日から平成30年12月末日までの本件特許権使用料相当損害金560万円及び弁護士費用150万4000円の合計額)及びこれに対する不 法行為の日の後であり訴状送達の日の翌日以降である平成31年3月30日か ら支払済みまで民法所定の年5分 当損害金560万円及び弁護士費用150万4000円の合計額)及びこれに対する不 法行為の日の後であり訴状送達の日の翌日以降である平成31年3月30日か ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,それぞれ求めるとともに,被告IPPに対し,③本件業務提携契約に基づき,平成27年2月1日から平成28年1月31日までのライセンス料192万円及びこれに対する最終の支払期日の翌日である同年2月16日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,④本件業務提携契約に基づ き,本件特許権の被告IPPの共有持分全部についての移転登録手続を,それぞれ求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む。以下同様。)⑴ 当事者 ア原告は,本件発明の発明者として登録され,株式会社レフコ(現在は清算会社)の代表取締役を務めていた者である(弁論の全趣旨)。 イ被告IPPは,カメラ用品の製造及び販売等を目的とし,本件発明を被告製品(商品名:「風塵」ないし「FUJIN」)として事業化した株式会社である(弁論の全趣旨)。 被告日新精工は,金属プレス用金型の設計製作等を目的とし,被告IPPから委託を受けて被告製品を製造していた株式会社である。 なお,被告らの本店所在地は同一であり,また,被告IPPの代表取締役であるBは,被告日新精工の代表取締役であるCの娘であるDの夫である。 ⑵ 本件業務提携契約の締結等ア平成26年5月15日,本件発明について,被告IPPの単独名義で特許出願がされた。 イ原告は,平成27年2月1日,被告IPPとの間で,本件業務提携契約を締結した。 結等ア平成26年5月15日,本件発明について,被告IPPの単独名義で特許出願がされた。 イ原告は,平成27年2月1日,被告IPPとの間で,本件業務提携契約を締結した。 本件業務提携契約に係る契約書(甲14。以下「本件業務提携契約書」という。)においては,原告と被告IPPが協力して,被告製品の製造・販売等を推進することが目的とされ,有効期間は同日から平成28年1月31日までの1年間とされ,期間満了時に自動更新されないこととされていた(12条)。 ウ平成27年10月8日,本件発明について,出願人名義変更届が提出され,原告が特許出願人に追加され,同年12月4日,原告及び被告IPPを特許権者として,本件特許権が登録された。 ⑶ 本件発明及び本件特許権ア原告及び被告IPPは,本件特許権について,共有持分各2分の1ずつ の割合で共有している。 イ本件発明に係る特許請求の範囲は,次のaのとおりであるところ,これは,次のAないしHのとおりにその構成要件を分説することができる。 また,本件特許権に関する特許発明のうち請求項2の特許発明に係る特Aない しIのとおりにその構成要件を分説することができる。 特許請求の範囲a 請求項1「撮像レンズを着脱可能に保持するレンズマウントに係合するための係合部を備えた筒状筐体と,前記筒状筐体の内側に配置されて,撮像 装置の本体内部に連通する円筒状の排気通路と,前記排気通路の内部に配置されて,前記本体内部から前記排気通路の内部にかけて渦流を発生させるように回転して前記本体内部の空気を外部に排出するための排出手段と,前記筒状筐体の内側であって前記排気通路の周囲に配置されて,前記排出手段の駆動によって発生した渦流によって外部 けて渦流を発生させるように回転して前記本体内部の空気を外部に排出するための排出手段と,前記筒状筐体の内側であって前記排気通路の周囲に配置されて,前記排出手段の駆動によって発生した渦流によって外部か ら前記本体内部に吸気が供給される吸気通路と,前記吸気通路の内部に配置されるフィルタ部材と,を有し,前記吸気通路は,前記係合部の側に進むにつれて徐々に狭くなるように構成されて前記係合部の内側方で前記本体内部に接続する開口部を有し,前記開口部からは,前記レンズマウントの裏面側から撮像素子側に向けて延在する本体内壁 に当てるように,吸気が供給される,ことを特徴とするレンズ交換式撮像装置用の掃除装置。」b 請求項2「請求項1に記載されたレンズ交換式撮像装置用の掃除装置であって,前記吸気通路は,前記本体内部への吸気方向に沿って延在する平 板状の整流部材によって複数部分に仕切られる,ことを特徴とするレンズ交換式撮像装置用の掃除装置。」構成要件の分説A 撮像レンズを着脱可能に保持するレンズマウントに係合するための係合部を備えた筒状筐体と, B 前記筒状筐体の内側に配置されて,撮像装置の本体内部に連通する円筒状の排気通路と,C 前記排気通路の内部に配置されて,前記本体内部から前記排気通路の内部にかけて渦流を発生させるように回転して前記本体内部の空気を外部に排出するための排出手段と, D 前記筒状筐体の内側であって前記排気通路の周囲に配置されて,前記排出手段の駆動によって発生した渦流によって外部から前記本体内部に吸気が供給される吸気通路と,E 前記吸気通路の内部に配置されるフィルタ部材と,を有し,F 前記吸気通路は,前記係合部の側に進むにつれて徐々に狭くなるよ うに構成さ 記本体内部に吸気が供給される吸気通路と,E 前記吸気通路の内部に配置されるフィルタ部材と,を有し,F 前記吸気通路は,前記係合部の側に進むにつれて徐々に狭くなるよ うに構成されて前記係合部の内側方で前記本体内部に接続する開口部を有し,G 前記開口部からは,前記レンズマウントの裏面側から撮像素子側に向けて延在する本体内壁に当てるように,吸気が供給される,H ことを特徴とするレンズ交換式撮像装置用の掃除装置。 I 前記吸気通路は,前記本体内部への吸気方向に沿って延在する平板状の整流部材によって複数部分に仕切られる,ことを特徴とするレンズ交換式撮像装置用の掃除装置。 ⑷ 被告製品の製造・販売等ア被告IPPは,遅くとも平成27年2月1日以降,被告日新精工に被告 製品(甲3~7)の製造を委託し,これを販売・輸出等している。 イ被告製品の構成は,次のとおりに分説することができる。 a カメラのレンズ装着部分のマウント接点に,レンズに代わり接続可能なマウント接点を有する筒状の形状の筐体と,b 当該円筒状の外装部の内側に,カメラ内部の撮像装置箇所に接続する 円筒状の排気通路と,c 前記排気通路の内部に,その回転によりカメラ内部から排気通路にかけて渦状の気流を生じさせる,カメラ内部の空気を外部に排出するためのファンと,d 前記筒状筐体の内側で,円筒状の排気通路の周囲に配置されて,前記 ファンの駆動によって発生した渦流によって外部からカメラ内部に空気が取り込まれる,複数に区分けされた吸気通路と,e 前記吸気通路の内部に装着可能なフィルタを有し,f 前記吸気通路は,カメラ本体に進むにつれて次第に狭くなる形状を有し,カメラ内部に接合できる開口部を有し, g 前記 路と,e 前記吸気通路の内部に装着可能なフィルタを有し,f 前記吸気通路は,カメラ本体に進むにつれて次第に狭くなる形状を有し,カメラ内部に接合できる開口部を有し, g 前記開口部から,カメラ内部に向けて,カメラ内部の内壁に当てるように吸気が供給される形状,h のレンズ型のカメラ内部の掃除機。 ウ被告製品の各構成は,次のとおり本件発明等の各構成要件を充足し,被告製品は,本件発明等の技術的範囲に属する。 被告製品の構成aの「カメラのレンズ装着部分のマウント接点」及び「レンズに代わり接続可能なマウント接点を有する筒状の形状の筐体」は,それぞれ,構成要件Aの「撮像レンズを着脱可能に保持するレンズマウント」及び「レンズマウントに係合するための係合部を備えた筒状筐体」に該当するから,被告製品の構成aは構成要件Aを充足する。 被告製品の構成bの「カメラ内部の撮像装置箇所に接続する」は,構成要件Bの「撮像装置の本体内部に連通する」に該当するから,被告製品の構成bは構成要件Bを充足する。 被告製品の構成cの「その回転によりカメラ内部から排気通路にかけて渦状の気流を生じさせる」は,構成要件Cの「前記本体内部から前記 排気通路の内部にかけて渦流を発生させるように回転して」に該当するから,被告製品の構成cは構成要件Cを充足する。 被告製品の構成dの「前記ファンの駆動によって発生した渦流によって外部からカメラ内部に空気が取り込まれる」は,構成要件Dの「前記排出手段の駆動によって発生した渦流によって外部から前記本体内部に 吸気が供給される」に該当し,かつ,同構成dの「複数に区分けされた吸気通路」は,構成要件Iの「前記吸気通路は,前記本体内部への吸気方向に沿って延在する平板状の整流部材によって複 記本体内部に 吸気が供給される」に該当し,かつ,同構成dの「複数に区分けされた吸気通路」は,構成要件Iの「前記吸気通路は,前記本体内部への吸気方向に沿って延在する平板状の整流部材によって複数部分に仕切られる,ことを特徴とする」に該当するから,被告製品の構成dは構成要件D及びIを充足する。 被告製品の構成eの「前記吸気通路の内部に装着可能なフィルタ」は,構成要件Eの「前記吸気通路の内部に配置されるフィルタ部材」に該当するから,被告製品の構成eは構成要件Eを充足する。 被告製品の構成fの「カメラ本体に進むにつれて次第に狭くなる形状を有し」及び「カメラ内部に接合できる開口部」は,それぞれ,構成要 件Fの「前記係合部の側に進むにつれて徐々に狭くなるように構成されて」及び「前記係合部の内側方で前記本体内部に接続する開口部」に該当するから,被告製品の構成fは構成要件Fを充足する。 被告製品の構成gの「カメラ内部の内壁」は,構成要件Gの「前記レンズマウントの裏面側から撮像素子側に向けて延在する本体内壁」に該 当するから,被告製品の構成gは構成要件Gを充足する。 被告製品の構成hの「レンズ型のカメラ内部の掃除機」は,構成要件Hの「レンズ交換式撮像装置用の掃除装置」に該当するから,被告製品の構成hは構成要件Hを充足する。 2 争点 ⑴ 原告の被告らに対する本件業務提携契約違反ないし特許法100条1項,2項に基づく被告製品の製造・販売等の差止請求及び廃棄請求並びに本件業務提携契約違反ないし不法行為に基づく損害賠償請求の可否ア本件業務提携契約の趣旨及びその終了の有無(争点1)イ原告の被告IPPに対する本件業務提携契約の期間満了後における被告 製品の製造・販売等の同意(本件実施合意) く損害賠償請求の可否ア本件業務提携契約の趣旨及びその終了の有無(争点1)イ原告の被告IPPに対する本件業務提携契約の期間満了後における被告 製品の製造・販売等の同意(本件実施合意)についての詐欺取消しの可否(争点2)ウ原告が被った損害の有無及び額(争点3)⑵ 原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づくライセンス料請求の可否(争点4) ⑶ 原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づく本件特許権の共有持 分権の移転登録手続請求の可否(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件業務提携契約の趣旨及びその終了の有無)について(原告の主張)被告IPPは,原告との間で締結した本件業務提携契約(後記4条及び特別 条項1項)により,実質的には原告が単独で本件特許権を有することを前提として,原告の同意を得た場合に限り,本件特許権を単独で実施することが可能とされたのであり,これは,形式的に本件特許権の共有持分権を有する被告IPPによる本件特許権の単独実施を制限する特許法73条2項の「別段の定」に当たる。なお,本件業務提携契約12条には,有効期間が定められているが, これは本件特許権に関するライセンス期間にすぎず,上記「別段の定」自体は,上記期間満了後も存続する。 したがって,被告IPPは,本件業務提携契約のライセンス期間満了日である平成28年1月31日の経過をもって,本件特許権を単独で実施し,あるいは被告日新精工にその実施をさせることができなくなったから,被告らによる 同年2月1日以降における本件特許権の実施行為(被告製品の製造・販売等)は,本件特許権の原告の共有持分権を侵害している。 よって,原告は,被告IPPに対しては,本件業務提携契約違反に基づ る 同年2月1日以降における本件特許権の実施行為(被告製品の製造・販売等)は,本件特許権の原告の共有持分権を侵害している。 よって,原告は,被告IPPに対しては,本件業務提携契約違反に基づき,被告日新精工に対しては,特許法100条1項,2項に基づき,本件特許権の実施行為の差止め及び本件特許権の侵害行為を組成した被告製品の廃棄を求め ることができる。 (被告らの主張)否認ないし争う。 被告IPPは,その担当者を通じて,送風装置(ファン)を用いて排気通路から除塵を行う機構をカメラレンズの接合部分に取り付ける本件発明を着想 し,原告から工学的及び技術的援助を受け,多額の資本等を投下して,本件発 明を完成させたことから,本件特許権の共有持分権を有することとされたのであり,原告が本件特許権を単独で有しているわけではない。 そして,被告IPPは,平成27年2月1日,原告との間で,本件業務提携契約を締結しているが,原告が将来にわたって本件特許権を独占する内容の「別段の定」をするわけがなく,同契約は平成28年1月31日の期間満了を もって終了しているし,後記2のとおり,少なくとも平成30年5月16日以降,原告との間で,本件特許権について何らの取り決めもしていない。 したがって,被告IPPは,特許法73条2項の原則に従って,原告の同意なく,本件特許権の共有持分権に基づき,これを単独で実施する権利を有しているのであり,同日以降に被告製品を製造・販売等しても,本件特許権の原告 の共有持分権を侵害することはない。 なお,被告日新精工は,被告IPPの下請けとして被告製品を製造し,これを被告IPPに納品していただけであり,これを第三者に販売するなどしたことはないから,被告IPPと同様に,本件特許 ことはない。 なお,被告日新精工は,被告IPPの下請けとして被告製品を製造し,これを被告IPPに納品していただけであり,これを第三者に販売するなどしたことはないから,被告IPPと同様に,本件特許権の原告の共有持分権を侵害していない。 2 争点2(原告の被告IPPに対する本件業務提携契約の期間満了後における被告製品の製造・販売等の同意(本件実施合意)についての詐欺取消しの可否)について(被告らの主張)⑴ 仮に本件業務提携契約の期間満了後においても上記「別段の定」が存続す るものとしても,次のとおり,原告は,同期間満了後において,被告製品の製造・販売等の同意(以下「本件実施合意」という。)をした。 すなわち,まず,原告は,本件業務提携契約の終了後,平成28年6月頃までに,被告IPPとの間で,被告IPPの新商品(介護施設向けの見守りカメラ装置。以下「見守り装置」という。)開発に関する業務提携契約を締結 し,見守り装置開発に関する業務支援に対する「技術開発費」として月額1 5万円(後に月額20万円に増額)の支払を受け,これに併せて,本件業務提携契約において定められた被告製品の毎月の販売数量に応じた「発明案使用料」の支払を受ける旨の合意をした。 そして,その上で,原告は,平成29年1月,被告製品の「発明案使用料」の収入が原告の期待を下回ったことを理由として,被告IPPに対し,毎月 の見守り装置の「技術開発費」の引き上げを要請したことにより,被告IPPとの間で,①同月以降の「技術開発費」を月額20万円から月額50万円に大幅に引き上げる代わりに,②被告IPPが本件特許権を実施することに同意し,その対価である「発明案使用料」の支払及び毎月の販売数量等の報告を免除する旨を合意したものである(本件実施合意 額50万円に大幅に引き上げる代わりに,②被告IPPが本件特許権を実施することに同意し,その対価である「発明案使用料」の支払及び毎月の販売数量等の報告を免除する旨を合意したものである(本件実施合意。なお,原告と被告I PPは,平成30年5月15日をもって,本件実施合意を将来に向かって合意解約した。)。 このように,原告は,少なくとも被告らによる平成28年2月1日から平成30年5月15日までの被告製品の製造・販売等について同意していた。 ⑵ 本件実施合意について,原告が主張するような瑕疵はなく,詐欺取消しを することはできない。 (原告の主張)⑴ 原告は,被告IPPとの間で,本件業務提携契約が存続することを前提として,ライセンス料支払義務等について変更する旨を合意したにすぎない。 ⑵ 原告は,被告IPPから,被告製品が実際には売れていたにもかかわらず, ほとんど売れていないとの虚偽の事実を告げられたため,本件実施合意をしたのであり,これは被告IPPの詐欺に基づいてなされた瑕疵ある意思表示であるから,令和元年10月1日の第3回弁論準備手続期日において陳述した同年9月17日付け準備書面1によって,本件実施合意を取り消す旨の意思表示をした。 3 争点3(原告が被った損害の有無及び額)について (原告の主張)原告は,被告らによる平成28年2月1日以降の本件特許権の実施行為(本件特許権の原告の共有持分権の侵害)によって,次のとおり合計710万4000円の損害を被った。 ⑴ 特許権使用料相当損害額 ア販売台数の推計平成27年初旬の販売台数報告原告が,有限会社ナカソインターナショナルのEから提供された資料(卸売事業者である加賀ハイテック株式会社から提供された資料)によ 害額 ア販売台数の推計平成27年初旬の販売台数報告原告が,有限会社ナカソインターナショナルのEから提供された資料(卸売事業者である加賀ハイテック株式会社から提供された資料)によると,平成27年3月の被告製品の卸売販売数量は,256台と報告さ れている(甲27の2)。 また,Eによれば,被告IPPにおける被告製品の自社ウェブサイト上の販売数量は,平成26年11月及び同年12月について,平均で1か月当たり100台程度とされている(甲28)。 それゆえ,被告製品については,1か月当たり,卸売事業者を通じて 250台,被告IPPウェブサイト上で100台,合計で350台程度の販売実績があったことになる。 平成28年3月及び同年4月の販売台数報告被告IPPは,原告に対し,平成28年春頃,同年3月及び同年4月の売上報告として,同期間の売上台数が合計777台,売上金額が合計 403万1688円であったと伝えている(甲26)。 平成30年初旬における関係者の発言原告が,被告らの関係者から平成30年初旬に直接聞いたところによれば,国内だけで8000台,海外でも2000台は売れているとの発言もあるところ,平成27年1月頃から約3年の期間に合計1万台売れ たとすると,1年当たり3333台,1か月当たり300台程度の販売実績となる。 小括以上によれば,被告らによる被告製品の販売数量は,1か月当たり300台ないし400台程度であると考えられ,その売上高は 1か月当たりの売上金額200万円程度である。 イ使用料相当損害額の推計本件業務提携契約15条によれば,被告IPPが原告に対して支払うべき特許権使用料は,毎月の売上高の8%である。 したが たりの売上金額200万円程度である。 イ使用料相当損害額の推計本件業務提携契約15条によれば,被告IPPが原告に対して支払うべき特許権使用料は,毎月の売上高の8%である。 したがって,平成28年2月1日から本件訴訟提起直前の平成30年1 2月末日までの35か月間の特許権使用料として原告が得べかりし利益(損害額)は,560万円(=200万円×8%×35か月)となる(特許法102条3項)。 ウ小括したがって,原告が被った特許権使用料相当損害額は,560万円を下 回らない。 ⑵ 弁護士費用相当損害額原告は,被告らが原告による損害賠償等の請求に応じないため,弁護士に対して本件訴訟の提起・追行を委任せざるを得なくなったところ,被告らの不法行為等と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額は,前記⑴の損害額 (560万円)及び後記のライセンス料請求額(192万円)の合計額(752万円)の2割相当額である150万4000円とするのが相当である。 (被告らの主張)否認ないし争う。 4 争点4(原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づくライセンス料 請求の可否)について(原告の主張)原告は,被告IPPに対し,本件業務提携契約15条に基づき,本件発明の使用に係るライセンス料として,毎月の売上高に対する8%相当額の支払を求めることができるところ,同契約に基づくライセンス期間(平成27年2月1 日から平成28年1月31日までの1年間)における毎月の被告製品の販売数量は約340台,売上高は少なくとも200万円であると考えられるから,同期間におけるライセンス料として,192万円(=200万円×8%×12か月)の支払を求めることができる。 なお,被告IPP 数量は約340台,売上高は少なくとも200万円であると考えられるから,同期間におけるライセンス料として,192万円(=200万円×8%×12か月)の支払を求めることができる。 なお,被告IPPの上記ライセンス料の支払義務は,遅くとも上記ライセン ス期間の最終月(同月)に係るライセンス料支払期日である同年2月15日(同契約16条)の翌日である同月16日には遅滞に陥っている。 (被告IPPの主張)否認ないし争う。 本件業務提携契約15条2項によれば,被告IPPは,原告に対し,平成2 7年3月31日までは,「金型償却期間」として5%を支払うとされており,全期間が8%とされているわけではない。被告IPPは,本件業務提携契約の有効期間(平成27年2月1日から平成28年1月31日までの1年間)について,原告から,被告IPPの報告した販売数量に基づいて算出された「発明案使用料」の請求を受け,合計161万4257円を支払った(乙2)。 5 争点5(原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づく本件特許権の共有持分権の移転登録手続請求の可否)について(原告の主張)原告は,本件業務提携契約の特別条項2項に基づき,被告IPPに対し,本件特許権の被告IPPの共有持分権の移転登録手続を求めることができる。 (被告IPPの主張) 否認ないし争う。 本件特許権は,原告と被告IPPの共有に属するのであり,原告には,被告IPPの共有持分権の移転を求める権利はない。 なお,原告が主張する本件業務提携契約の特別条項2項は,原告からの申出があれば「出願者名」を変更できるとしているにすぎず,これに基づいて,平 成27年10月8日,本件特許権の出願人名義は,原告と被告IPPの 主張する本件業務提携契約の特別条項2項は,原告からの申出があれば「出願者名」を変更できるとしているにすぎず,これに基づいて,平 成27年10月8日,本件特許権の出願人名義は,原告と被告IPPの共同出願に変更され,平成28年1月31日,同契約は延長されることなく終了した。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら れる。 ⑴ 本件業務提携契約の締結に至る経緯及び内容等ア原告は,防塵機能付きカメラレンズカバーの発明を構想していたところ,平成26年頃,Eから,上記発明を事業化できる会社として,被告らの紹介を受けた(甲12,33)。 被告らは,原告から技術的指導を受け,上記発明の商品化に係る開発費用・特許申請費用・製造費用を負担して,被告製品の商品化を実現した。 被告IPPは,被告日新精工に対し,被告製品の製造を委託し,これを国内外に販売等した(甲8~12,19~28)。 イ平成26年5月15日,本件発明(発明の名称:レンズ交換式撮像装置 用の掃除装置,および,レンズ交換式撮像装置の掃除方法)について,原告を発明者と記載しつつ,被告IPP単独名義で特許出願がされた(甲1,2,16,乙1)。 ウ原告は,平成26年5月29日,被告IPP及び有限会社ナカソインターナショナルとの間で,業務提携契約(以下「当初業務提携契約」という。) を締結した。 当初業務提携契約に係る契約書(甲13)においては,次のような定めがあった。 本契約は,原告(甲)と被告IPP(乙)の相互が発展するために,新製品・新技術の開発を甲及び乙が協力して推進することを目的とする (1条)。 本契約により提携する業務の範囲は,甲及び乙が,共同 契約は,原告(甲)と被告IPP(乙)の相互が発展するために,新製品・新技術の開発を甲及び乙が協力して推進することを目的とする (1条)。 本契約により提携する業務の範囲は,甲及び乙が,共同又は協力して行う新製品開発のための企画・研究・開発・設計・生産・販売業務とする(2条1項)。 本契約の有効期間は,平成26年6月1日から平成27年5月31日 までの満1年間とする(12条1項)。 ただし,期間満了の3か月前までに,甲及び乙の双方から何ら申出のないときは,本契約は期間満了の翌日から自動的に満1年間延長されるものとし,以後も同様とする(12条2項)。 甲は,乙に対し,被告製品の知的財産権の使用を認め,特許出願,特 許取得後であっても契約期間であれば使用を認める(特別条項1項)。 エ原告は,平成27年1月頃,Eが本件発明に関する事業から離脱することとなったため,同年2月1日,被告IPPとの間で,本件業務提携契約を締結した。 本件業務提携契約書(甲14)においては,次のような定めがあった。 本契約は,原告(甲)と被告IPP(乙)が協力して,被告製品(商品名:「風塵」ないし「FUJIN」)の製造・販売等を推進することを目的とする(1条)。 本契約により提携する業務の範囲は,甲が協力して行う新製品開発・研究・設計とする。乙は,被告製品の製造に当たり,被告日新精工に委 託するものであるが,本契約はこの基本契約を優先とする。(2条) 本契約以前からの考案・発明は,出願者が乙であっても,特許権については,発明又は考案した者である甲に帰属するものとする(4条)。 乙は,販売売上を毎月末日に締め,甲に対し,翌月10日までに報告する(9条3項) 明は,出願者が乙であっても,特許権については,発明又は考案した者である甲に帰属するものとする(4条)。 乙は,販売売上を毎月末日に締め,甲に対し,翌月10日までに報告する(9条3項)。 本契約の有効期間は,平成27年2月1日から平成28年1月31日までの満1年間とする(12条1項)。 期間満了後であっても,甲及び乙の協議の上,特許の使用を決定し,書面にて約定するものとする(12条2項)。 乙は,甲に対し,発明案使用料として,販売開始時期から,毎月初日 から毎月末日までの1か月間の被告製品の売上高の8%を支払う(15条1項)。 金型償却期間を設け,平成27年3月31日までは,被告製品の売上高の5%を支払う(15条2項)。 乙は,販売売上を毎月末日に締め,甲に対し,翌月10日までに報告 し,15日までに支払うものとする(16条1項)。 甲は,乙に対し,被告製品の知的財産権の使用を認め,特許出願,特許取得後であっても契約期間であれば使用を認める(特別条項1項)。 特許権にあっては,甲に帰属するものであり,甲からの申出があれば,出願者名は変更できるものとする。ただし,出願者変更に係る費用は, 甲の負担とする(特別条項2項)。 オ平成27年10月8日,本件発明について,出願人名義変更届が提出され,原告が出願人に追加され(甲15,16),同年12月4日,原告及び被告IPPを特許権者として,本件特許権が登録された。 原告及び被告IPPは,本件特許権について,共有持分各2分の1ずつ の割合で共有している。 カ被告IPPは,原告に対し,平成27年2月分から平成28年1月分の被告製品の販売数量等を報告し,これに基づく原告の請 許権について,共有持分各2分の1ずつ の割合で共有している。 カ被告IPPは,原告に対し,平成27年2月分から平成28年1月分の被告製品の販売数量等を報告し,これに基づく原告の請求に応じて,本件業務提携契約15条が定める「発明案使用料」として,合計161万4257円(税抜)を支払った(乙2)。 ⑵ 本件実施合意等に至る経緯及び内容ア原告は,本件業務提携契約の有効期間満了後である平成28年2月頃以降,被告IPPから,被告IPPの新商品である見守り装置に関する技術開発の協力を依頼され,同年6月頃までに,被告IPPとの間で,見守り装置開発に関する業務提携契約を締結し,見守り装置開発に関する「技術 開発費」として月額15万円(同年8月からは月額20万円に増額)の支払を受け,本件業務提携契約と同様に被告製品の毎月の販売数量に応じた「発明案使用料」の支払を受ける旨の合意をした。 被告IPPは,原告の請求に応じて,平成28年2月分以降の上記合意に基づく「技術開発費」ないし「発明案使用料」を支払った(乙3)。 イ原告は,平成29年1月,被告IPPとの間で,①同月から「技術開発費」を月額20万円から月額50万円に引き上げる代わりに,②被告IPPが本件特許権を実施することに同意し,その対価である「発明案使用料」を「技術開発費」に含める旨の本件実施合意をした(乙6)。 ウ被告IPPは,原告の請求に応じて,平成29年1月分以降の本件実施 合意に基づく「技術開発費」を支払った(乙4,5)。 ⑶ 本件訴訟に至る経緯等ア原告は,平成30年4月頃,被告IPPからの被告製品の販売数量等の報告に疑いを抱くようになり,同年5月以降は,見守り装置と被告製品を切り離し,原告の同意がない限り,被告製品 に至る経緯等ア原告は,平成30年4月頃,被告IPPからの被告製品の販売数量等の報告に疑いを抱くようになり,同年5月以降は,見守り装置と被告製品を切り離し,原告の同意がない限り,被告製品の製造・販売等を行わないよ う申し入れた。 イ被告IPPは,平成30年5月15日,原告に対し,本件実施合意を将来に向かって解約し,以後は見守り装置に関する技術開発費を支払わない旨の意思表示をした。 原告は,同日,被告IPPに対し,上記解約を了承するとともに,新たに被告IPPとの間で,「特許使用許諾」に関する新規契約書を作成して, 契約を取り交わしたい旨を述べた(乙7)。 ウ被告IPPの代表者の妻であり,被告日新精工の代表者の娘であるDは,原告に対し,平成30年6月29日,同年5月の技術開発費に「特許使用料」を含める旨の約束はしておらず,これは技術開発費とは別途に書面上の契約に基づいて支払う旨を記載したメール(甲31)を,同年7月5日, 原告との契約が締結できていない状態で,勝手に被告製品の販売を継続することは大変心苦しいため,同月以降の被告製品の販売を一時中止し,同年5月分及び同年6月分の支払をする旨を記載したメール(甲32)を,それぞれ送信した。 エ原告は,平成30年8月6日付けで,原告訴訟代理人らを通じて,被告 らに対し,原告の同意なく被告製品の製造・販売等をしてはならない旨を記載した文書を送付した(甲29,30)。 オ原告は,平成31年2月8日に本件訴訟を提起し,本件訴状は,同年3月28日に被告日新精工に,同月29日に被告IPPに,それぞれ送達された。 (以上につき,前掲各証拠のほか,甲34,乙8,弁論の全趣旨) 2 争点1(本件業務提携契約の趣旨及びその終 年3月28日に被告日新精工に,同月29日に被告IPPに,それぞれ送達された。 (以上につき,前掲各証拠のほか,甲34,乙8,弁論の全趣旨) 2 争点1(本件業務提携契約の趣旨及びその終了の有無)について⑴ 原告は,被告IPPが,特許法73条2項の「契約で別段の定をした場合」の「契約」に当たる本件業務提携契約4条及び特別条項1項により,原告の同意を得ないで本件発明の実施をすることができない旨の特約をしたもの であり,この特約は,同契約12条のライセンス期間満了後も存続している 旨を主張し,これに沿う陳述(甲34)をする。 ⑵ 確かに,本件業務提携契約においては,同契約以前からの考案・発明は,出願人が被告IPPであっても,特許権については,発明又は考案した者である原告に帰属する旨の定め(4条),原告は,被告IPPに対し,被告製品の知的財産権の使用を認め,特許出願及び特許取得後であっても,契約期間で あれば使用を認める旨の定め(特別条項1項),また,特許権については,原告に帰属するものであり,原告からの申出があれば,出願人名は変更できる旨の定め(特別条項2項)が設けられている(認定事実⑴エ)。 しかし,そもそも上記各定めの文言については,特許権が原告に帰属するとする一方,その排他的帰属について明記しているわけではなく,また,被 告IPPが特許出願人であることを前提としており,特許を受ける権利は特許権に転化するものであるのに,出願人名を原告に変更できる旨を定めるにとどまっており,被告IPPがそのまま特許権に係る権利者となる蓋然性を否定していないことが認められ,原告のほか被告IPPが特許権に係る権利を有するとの解釈が排斥されるものとはなっていないというべきである。 また,本件における客観的な事実経 利者となる蓋然性を否定していないことが認められ,原告のほか被告IPPが特許権に係る権利を有するとの解釈が排斥されるものとはなっていないというべきである。 また,本件における客観的な事実経過をみても,本件発明につき,本件業務提携契約12条1項の契約の有効期間(平成27年2月1日から平成28年1月31日まで)内の平成27年10月8日,被告IPPに加えて原告が特許出願人に追加されてはいるが(認定事実⑴エ,オ),原告が単独の特許出願人となることはなかったものであり,このことは,当事者が,本件業務提 携契約において,本件発明につき,原告が単独の特許権者であり被告IPPは何ら権利を有しないとの合意がされたとみる旨の原告の上記主張には沿わないものである。そして,同年12月4日,被告IPPは,原告と共に,本件特許権について,各2分の1の共有持分権の設定の登録を経由しており(認定事実⑴オ),同共有持分権を有しているものといえ(特許法66条1項), このことは,当事者間において争いがない。 これらに照らせば,本件業務提携契約における原告の指摘する各定めについては,当事者の合理的意思解釈の見地からみて,いずれも原告が本件特許権に係る単独の特許権者であることを前提とする内容のものであったということはできず,被告IPPにおいても本件特許権に係る権利を有するに至ることを許容することを前提とする内容のものであったといわざるを得ない。 そして,本件業務提携契約の他の定めの内容等に照らせば,同契約において,当事者は,被告IPPが本件特許権について2分の1の共有持分権を有する以上,被告IPPが本件特許権を実施することを当然の前提として認め,その上で,実際に被告製品の製造・販売等を行って売上を得る被告IPPから,他方の共有持分権者で について2分の1の共有持分権を有する以上,被告IPPが本件特許権を実施することを当然の前提として認め,その上で,実際に被告製品の製造・販売等を行って売上を得る被告IPPから,他方の共有持分権者である原告に対する支払等について取り決める旨の 一体的な合意を行っているものであることが認められる。そうすると,本件業務提携契約4条及び特別条項1項についても,これらの合意を構成する一部分であると位置付けられ,上記説示も併せ考慮すれば,事柄の性質上,上記のような内容の各定めが,被告IPPの実施権を法的に制約するものとして,特許法73条2項の「契約で別段の定をした場合」の「契約」に当たると いうことはできないと解するのが相当である。そして,本件業務提携契約から,原告の指摘する4条及び特別条項1項を分離して取り出し,本件業務提携契約が期間満了等により終了した後も,当該部分のみは存続するとみることは,本件業務提携契約において一体的な合意がされたとの認定に沿わないものであって,その事柄の性質に照らし,不合理であるものといわなければ ならない。 以上によれば,原告の上記主張及びこれに沿う陳述(甲34)は,いずれも採用することができない。 このことは,本件事実経過からも裏付けられる。すなわち,被告IPPは,原告と共に,本件特許権について,各2分の1の共有持分権を有し,当初業 務提携契約及び本件業務提携契約等に基づいて,被告日新精工に本件発明を 使用した被告製品の製造を委託し,これを国内外に販売していたものであって(認定事実⑴ウ~カ),相当額の資本・労力・時間を投下していたことが推認されるところである。そうすると,このような被告IPPにおいて,原告の同意がない限り,本件業務提携契約の有効期間が満了することとなる,当該期間の ),相当額の資本・労力・時間を投下していたことが推認されるところである。そうすると,このような被告IPPにおいて,原告の同意がない限り,本件業務提携契約の有効期間が満了することとなる,当該期間の開始から僅か1年後において,被告製品の製造・販売等が一切でき なくなるような内容の契約を締結したとみるのは不自然かつ不合理であり,あくまで同契約の有効期間に限って,原告に対し,被告製品の開発・研究等に関する協力に対する対価として,その売上高の8%相当額(ただし,「金型償却期間」である平成27年2月1日から同年3月31日までは5%相当額)を「発明案使用料」という名目で支払うものとしたとみるのが,当事者の合 理的意思に沿うものというべきである。そして,本件業務提携契約の有効期間は,平成28年1月31日までとされており,自動更新に関する定めはなく,原告と被告IPPが双方協議の上で,「特許の使用を決定し書面にて約定する」とされは作成されていないのであるから,同日の経過をもって,同契約は4条及び特別条項1項 も含めて終了したものとみるのが相当である。 ⑶ これに対し,原告は,実質的な特許権者は原告であり,本件業務提携契約4条及び特別条項1項もそのことを前提とし,被告らもそのことを前提とした行動をしている旨を主張する。 しかし,前記説示のとおり,被告IPPは,原告と共に,本件特許権につ いて,各2分の1の共有持分権の設定の登録を経由しており,同共有持分権を有しているものといえ(特許法66条1項),また,本件業務提携契約における本件特許権の帰属に関する各定めについても,当事者の合理的意思を解釈すれば,いずれも原告が本件特許権に係る単独の特許権者であることを前提とする内容のものであったということはできず,被告IPPにおいても本 特許権の帰属に関する各定めについても,当事者の合理的意思を解釈すれば,いずれも原告が本件特許権に係る単独の特許権者であることを前提とする内容のものであったということはできず,被告IPPにおいても本 件特許権に係る権利を有するに至ることを許容することを前提とする内容の ものであったといわざるを得ない。 加えて,原告自身も,飽くまで原告と被告IPPが本件特許権を共有していることを前提とした主張をしているのであって(平成31年3月11日付け訴状訂正申立書4,5,7頁,令和元年9月17日付け準備書面1の4頁等参照),前記説示のとおり,上記のような本件業務提携契約によって,その 有効期間の終了後も半永久的に,被告IPPによる本件特許権の単独実施が制限されることになると解するのは相当ではない。また,被告IPPは,本件業務提携契約の有効期間満了後も,原告との間で本件特許権の使用に関する契約を締結し,その使用料を支払う意向を示しているが(認定事実⑵,⑶),これについては,被告IPPにおいて,本件業務提携契約の有効期間が満了 した後であっても,本件発明に係る技術的思想の創作に関わり本件特許権の2分の1の共有持分権者であって被告製品の開発等にも協力をしてきた原告に対し,被告製品の売上高の一部を還元しようと考えることもあり得ることに鑑みると,事柄の性質上,上記のことから直ちに,被告IPPにおいて,原告の同意がない限り本件特許権を単独で実施することができなくなること を受け入れていたことが導かれることとはならない。原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 ⑷ 以上によれば,被告IPPは,本件業務提携契約の終了後は,本件特許権の共有者として,特許法73条2項に従って,原告の同意なく本件特許権を単独で実施すること ずれも採用することができない。 ⑷ 以上によれば,被告IPPは,本件業務提携契約の終了後は,本件特許権の共有者として,特許法73条2項に従って,原告の同意なく本件特許権を単独で実施することができたのであって,被告日新精工に被告製品の製造を 委託して,これを販売・輸出等したことは,本件特許権の原告の共有持分権を侵害するものではないというべきである。 また,証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば,被告日新精工は,被告IPPの下請けとしてその委託を受けて被告製品を製造し,その全量を被告IPPに納品していたものであることが認められ,被告日新精工がこれを第三 者に販売するなどしたことは証拠上何らうかがわれないから,被告日新精工 は,本件事実関係の下においては,いわば被告IPPの手足に等しいと評価されるものといえる。そうすると,上記のとおり,被告IPPの行為については,本件特許権の原告の共有持分権を侵害するものではない以上,被告日新精工の行為についても,本件特許権の原告の共有持分権を侵害するものではないというべきである。 そして,上記説示に照らし,被告らにおいて,本件業務提携契約違反ないし特許権侵害は認められず,不法行為が成立するものでないこともまた明らかである。 ⑸ したがって,争点2及び3について検討するまでもなく,原告の被告らに対する本件業務提携契約違反ないし特許法100条1項,2項に基づく被告 製品の製造・販売等の差止請求及び廃棄請求,並びに本件業務提携契約違反ないし不法行為に基づく損害賠償請求は,いずれも認められない。 3 争点4(原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づくライセンス料請求の可否)について⑴ 原告は,被告IPPに対し,①本件業務提携契約15条に基づき,本件発 明 認められない。 3 争点4(原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づくライセンス料請求の可否)について⑴ 原告は,被告IPPに対し,①本件業務提携契約15条に基づき,本件発 明の使用に係るライセンス料として,毎月の売上高に対する8%相当額の支払を求めることができること,②同契約に基づくライセンス期間(平成27年2月1日から平成28年1月31日までの1年間)における被告製品の売上高が少なくとも200万円であることを前提として,同期間におけるライセンス料として,192万円(=200万円×8%×12か月)の支払を求 めている。 ⑵ しかし,①については,本件業務提携契約15条によれば,被告IPPは,同契約の有効期間のうち,平成27年2月1日から同年3月31日までは,「金型償却期間」として被告製品の売上高の5%相当額を支払い,同年4月1日から平成28年1月31日までは,被告製品の売上高の8%相当額を支 を通じて被告製品の売上高の8%相当額を支払うものとはされていない。 また,②については,本件業務提携契約の有効期間における毎月の被告製品の売上高が,少なくとも200万円であることを認めるに足りる的確な証拠はなく,むしろ,原告は,被告IPPから,上記有効期間における被告製品の販売数量等の報告を受け,これに基づいて,被告IPPに対し,上記有 効期間における「発明案使用料」として,合計161万4257円(税抜)を請求し,その支払を受けているのである(認定事実⑴カ)。 そうすると,本件業務提携契約の有効期間における被告製品の売上高及び同契約15条に基づいて算定した「発明案使用料」が,上記161万4257円(税抜)を上回るものと認めることはできない。 ⑶ 以上によれば,原告の被告IPPに対 間における被告製品の売上高及び同契約15条に基づいて算定した「発明案使用料」が,上記161万4257円(税抜)を上回るものと認めることはできない。 ⑶ 以上によれば,原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づくライセンス料請求も認められない。 4 争点5(原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づく本件特許権の共有持分権の移転登録手続請求の可否)について⑴ 原告は,本件業務提携契約の特別条項2項に基づき,被告IPPに対し, 本件特許権の被告IPPの共有持分権の移転登録手続を求めている。 ⑵ しかし,前記1,2で認定説示したとおり,本件特許権は,原告及び被告IPPが共有するものであり,原告が請求の根拠とする本件業務提携契約は,上記特別条項も含めて既に期間満了により終了し,その効力を失っていると認められるものであるから,原告の上記主張は,既に理由がない。 なお,これを措いたとしても,前記説示のとおり,本件業務提携契約における本件特許権の帰属に関する各定めについては,当事者の合理的意思を解釈すれば,いずれも原告が本件特許権に係る単独の特許権者であることを前提とする内容のものであったということはできず,被告IPPにおいても本件特許権に係る権利を有するに至ることを許容することを前提とする内容の ものであったといわざるを得ない。そうすると,上記特別条項についても, 上記に沿う内容のものとして,本件発明の特許出願人に,2分の1の共有持分権者たる原告を追加するなどすることを認める趣旨の定めにすぎないとみるべきであって,この内容は既に実施されているものである。原告が主張するような,特許登録後の特許権者を原告単独名義に変更することを認めた定めであったとは到底解されない。 ⑶ 以上によれば,原告の きであって,この内容は既に実施されているものである。原告が主張するような,特許登録後の特許権者を原告単独名義に変更することを認めた定めであったとは到底解されない。 ⑶ 以上によれば,原告の被告IPPに対する本件業務提携契約に基づく本件特許権の共有持分権の移転登録手続請求も認められない。 5 結論その他,原告は縷々主張するが,そのいずれを慎重に精査するも,上記説示を左右するに足りるものはない。 よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官奥俊彦 裁判官西尾信員 別紙1物件目録 1 商品名:FUJIN型名: EF-L001 2 商品名:FUJIN-D型名: F-L001/L001R 3 商品名:FUJINMARKII 型名: EF-L002/L002R 4 商品名:FUJINMARKIIWHITE型名: EF-L002WR 別紙2特許権目録 特許番号第5845482号発明の名称レンズ交換式撮像装置用の掃除装置,および,レンズ交換 式撮像装置の掃除方法出願日平成26年5月15日登録日平成27年12月4日

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