平成30(ワ)1130 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年8月31日 東京地方裁判所
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令和3年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第1130号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和3年5月27日判決 原告日本カーバイド工業株式会社 同訴訟代理人弁護士黒田健二同吉村誠同訴訟代理人弁理士松本孝 被告スリーエムジャパンイノベーション株式会社(以下「被告3Mジャパン」という。) 被告スリーエムジャパンプロダクツ株式会社(以下「被告3Mジャパンプロダクツ」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士大野聖二同小林英了 同大野浩之同木村広行主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して,15億5344万4548円及びうち1億円に対する平成30年2月3日から,うち14億5344万4548円に対する令和元年 10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを20分し,その17を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 却する。 3 訴訟費用は,これを20分し,その17を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求⑴ 主位的請求被告らは,原告に対し,連帯して,106億7874万6000円及びうち1億円に対する平成30年2月3日から,うち105億7674万6000円に対する 令和元年10月29日から,うち200万円に対する令和2年1月21日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 予備的請求被告らは,原告に対し,連帯して,34億3200万円及びうち1億円に対する平成30年2月3日から,うち32億3000万円に対する令和元年10月29日 から,うち1億200万円に対する令和3年5月14日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求⑴ 被告3Mジャパンは,原告に対し,15億0200万円及びこれに対する令和2年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告3Mジャパンプロダクツは,原告に対し,15億0200万円及びこれに対する令和2年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,「印刷された再帰反射シート」を発明の名称とする特許(特許第4466883号)に係る特許権を有する原告が,被告らによる別紙被告製品目録記載の反射シ ートの製造販売等が上記特許権を侵害すると主張して,⑴主位的請求として,被告ら に対し,①主位的には民法709条及び特許法102条2項に基づき,106億7874万6000円(後記の被告製品⑴につき105億7674万6000円(全部請求),被告製品⑵及び⑶につき各100万 に対し,①主位的には民法709条及び特許法102条2項に基づき,106億7874万6000円(後記の被告製品⑴につき105億7674万6000円(全部請求),被告製品⑵及び⑶につき各100万円(被告製品⑵及び⑶の合計332億7387万円の一部請求)及び弁護士費用等1億円)及びうち1億円に対する平成30年2月3日から,うち105億7674万6000円に対する令和元年10月29日から, うち200万円に対する令和2年1月21日から,各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金を,②予備的には民法709条及び特許法102条3項に基づき,34億3200万円(後記の被告製品⑴につき32億3000万円(全部請求),被告製品⑵及び⑶につき各100万円(被告製品⑵及び⑶の合計104億7600万円の一部請 求)及び弁護士費用等1億円)及びうち1億円に対する平成30年2月3日から,うち32億3000万円に対する令和元年10月29日から,うち1億200万円に対する令和3年5月14日から,各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,連帯して支払うよう求め,⑵予備的請求として,被告らに対し,民法703条に基づき,15億0200万円(後記の被告製品⑴につき15億円(全部請 求),被告製品⑵及び⑶につき各100万円(被告製品⑵及び⑶の合計額45億円の一部請求))及びこれに対する令和2年1月21日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,それぞれ支払うよう求めた事案である。 1 前提事実(証拠等の掲示のない事実は,当事者間に争いがない。なお,枝番の表示のない証拠は,枝番の全てを含む。以下同様。) ⑴ 当事者ア原告 ぞれ支払うよう求めた事案である。 1 前提事実(証拠等の掲示のない事実は,当事者間に争いがない。なお,枝番の表示のない証拠は,枝番の全てを含む。以下同様。) ⑴ 当事者ア原告は,接着製品及び各種ステッカー製品等を主体とした機能製品,再帰反射シート製品等を含む合成樹脂等の製造,加工,販売,並びにこれら製品等の輸出及び輸入等を業とする株式会社である。 イ被告3Mジャパンは,接着剤製品,テープ製品,フィルム製品,反射材,路面 表示材及びその他の交通安全関連製品等の開発,製造,輸出入,加工及び販売等 を業とする株式会社である。 なお,被告3Mジャパンは,平成26年9月1日,米国ミネソタ州に本社を有する3M(以下「米国3M」という。)の100%子会社となった際に,商号を「住友スリーエム株式会社」から「スリーエムジャパン株式会社」に変更し,令和2年8月1日,商号を「スリーエムジャパン株式会社」から「スリーエムジャパン イノベーション株式会社」に変更した(甲12,14)。 ウ被告3Mジャパンプロダクツは,接着剤製品,テープ製品,フィルム製品,反射材,路面表示材及びその他の交通安全関連製品等の開発,製造,輸出入,加工及び販売等を業とする株式会社である。 なお,被告3Mジャパンプロダクツは,平成27年6月1日,3Mジャパング ループの組織再編が行われた際に,商号を「山形スリーエム株式会社」から「スリーエムジャパンプロダクツ株式会社」に変更した。 ⑵ 本件特許ア原告は,下記の特許(請求項の数は4。以下,請求項1及び2に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者で ある。 特許番号特許第4466883号 記の特許(請求項の数は4。以下,請求項1及び2に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者で ある。 特許番号特許第4466883号登録日平成22年3月5日発明の名称印刷された再帰反射シート出願番号特願2007-283059 出願日平成19年10月31日原出願日平成12年4月10日イ本件特許に係る特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の記載は,下記のとおりであり(以下,請求項1の発明を「本件発明1」,請求項2の発明を「本件発明2」といい,これらを併せて「本件発明」という。また,その 明細書(図面を含む。)を「本件明細書」といい,その該当部分の記載を【000 1】等と表すこととする。),本件発明を構成要件に分説すると,下記のとおりとなる。 本件特許請求の範囲a 請求項1(本件発明1)「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反 射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており,該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料, 蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有することを特徴とする印刷された再帰反射シート。」b 請求項2(本件発明2)「上記反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である請求項1記載の印刷された再帰反射シート。」 とを特徴とする印刷された再帰反射シート。」b 請求項2(本件発明2)「上記反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である請求項1記載の印刷された再帰反射シート。」 本件発明の構成要件の分説a 本件発明11A 少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて, 1B 反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており,1C 該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,1D 該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり, 1E 該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料, および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する1F ことを特徴とする印刷された再帰反射シート。 b 本件発明22A 上記反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である2B 請求項1記載の印刷された再帰反射シート。 ⑶ 被告らの行為ア被告3Mジャパンプロダクツは,遅くとも本件特許の登録日である平成22年3月5日から,米国3M等から輸入した原反ロールを裁断・加工することで,別紙被告製品目録記載の反射シート(甲3,4,8~11。以下「被告製品」という。)を製造し,これらを被告3Mジャパンに販売し,被告3Mジャパンは,被告 3Mジャパンプロダクツから供給された被告製品を市場で販売している。 イ被告製品には,別紙被告製品目録記載のとおり,品番2930シリーズ(感熱型 ジャパンに販売し,被告3Mジャパンは,被告 3Mジャパンプロダクツから供給された被告製品を市場で販売している。 イ被告製品には,別紙被告製品目録記載のとおり,品番2930シリーズ(感熱型接着),3930シリーズ(感圧型接着)及びPX8470シリーズ(感圧型接着)の3シリーズがあるが(下一桁の数字は色によって異なる。),それぞれの中には,別紙被告製品の構成(ただし,このうち赤色の文字及び破線は,原告主張 の構成であり,当事者間に争いがある。)記載のとおり,①原反ロールの段階から印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるように設計されている旧製品(以下「被告製品⑴」ないし「被告旧製品」という。)と,②原反ロールの段階から印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されている新製品のうち,これを裁断・加工して製品化した際に両 端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15㎟~30㎟となっているもの(以下「被告製品⑵」という。)とそうでないもの(以下「被告製品⑶」といい,これと被告製品⑵とを併せて「被告新製品」という。)が含まれる(甲17,18,29~32,35,36,80,乙1)。 ウ被告製品の構成を,本件発明の構成要件に対応させて分説すると,別紙被告製 品の構成記載のとおりとなる(なお,下線部を付した部分は,被告ら主張部分で あり,当事者間に争いがある。)。 なお,被告製品の構成は,いずれも本件発明の構成要件2Aを充足している。 ⑷ 本件訴訟に至る経緯ア原告は,本件特許に対応する米国特許や欧州特許を含む複数の海外特許を保有しており,そのうちの1つに欧州特許第1193511号の特許(甲19。以下 「本件欧州特許」という。)がある る経緯ア原告は,本件特許に対応する米国特許や欧州特許を含む複数の海外特許を保有しており,そのうちの1つに欧州特許第1193511号の特許(甲19。以下 「本件欧州特許」という。)がある。本件特許の請求項1が構成要件1Eに係る構成を含む点を除き,本件特許と本件欧州特許は実質的に同一である。 イ原告は,平成23年3月,マンハイム地方裁判所に対し,3M ドイチュラントゲーエムベーハー(以下「ドイツ3M」という。)によるドイツ国内における再帰反射シート「3MTMHighIntensityGradePrismaticSerie 3930」(乙42。 以下「ドイツ侵害品」という。)の製造販売等が本件欧州特許等に係る特許権を侵害しているとして,侵害行為の停止と損害賠償を求める特許権侵害訴訟2件を提起した(乙4)。同地方裁判所は,平成24年1月24日,特許権侵害を認める第一審判決(甲20)を下した。 原告とドイツ3Mの双方が,上記第一審判決を不服として,カールスルーエ高 等裁判所に上訴した。同裁判所は,平成29年2月22日,上記第一審判決のドイツ侵害品についての侵害判断を是認する一方,ドイツ3Mの主張する「新実施形態」については非侵害認定とする第二審判決(甲21)を下した。 原告とドイツ3Mの双方が,上記第二審判決を不服として,ドイツ連邦通常裁判所(以下「ドイツ最高裁判所」という。)に上訴申立てをした。同裁判所は,平 成30年3月13日,双方の上訴申立てを退ける決定を下した。 これにより,ドイツ被疑侵害品による本件欧州特許に係る特許権の侵害を認めた上記第二審判決は確定した(以下,この訴訟を「ドイツ侵害訴訟」という。)。 ウドイツ3Mは,平成23年7月,ドイツ連邦特許裁判所に対し,本件欧州特許等に関する特 欧州特許に係る特許権の侵害を認めた上記第二審判決は確定した(以下,この訴訟を「ドイツ侵害訴訟」という。)。 ウドイツ3Mは,平成23年7月,ドイツ連邦特許裁判所に対し,本件欧州特許等に関する特許無効訴訟を提起した。同裁判所は,平成24年9月,本件欧州特 許等を無効とする第一審判決を下した。 原告が,上記第一審判決を不服として,ドイツ最高裁判所に上訴した。同裁判所は,平成27年4月,本件欧州特許等の有効性を認め,上記第一審判決を変更して,ドイツ3Mの訴えを棄却する最高裁判決(甲22)を下した。 これにより,本件欧州特許等の有効性が維持されることが確定した(以下,この訴訟を「ドイツ無効訴訟」といい,これとドイツ侵害訴訟を併せて「ドイツ訴 訟」といい,ドイツ訴訟の確定判決を「ドイツ判決」という。)。 エ原告は,平成30年1月16日,被告らに対し,本件訴訟を提起した。 オ他方で,被告らの関連会社は,ドイツ連邦特許裁判所に対し,本件欧州特許等に関する特許無効訴訟を提起していたところ,同裁判所は,平成30年9月27日及び同年11月8日,本件欧州特許等を無効とする第一審判決を下した(乙3 0)。 ⑸ 先行文献本件特許の原出願日(平成12年4月10日)より前に公表されていた文献として,次のものが存在した。 ア米国特許公報3973342(発行日:昭和51(1976)年8月10日) (乙6)イ国際公開公報WO99/37470(公表日:平成11(1999)年7月29日)(乙16の1)なお,特表2002-500969号公表特許公報(乙16の2)は,上記国際公開公報に対応するものである。 ウ特表平10-503133公報(公表日:平成10年3月24日 乙16の1)なお,特表2002-500969号公表特許公報(乙16の2)は,上記国際公開公報に対応するものである。 ウ特表平10-503133公報(公表日:平成10年3月24日)(乙17)エ特開平11-305018公報(公開日:平成11年11月5日)(乙18) 2 争点⑴ 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア被告製品が保持体層を有するか-構成要件1A,1B,2B充足性(争点1- 1) イ被告製品の印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されているといえるか-構成要件1C,2B充足性(争点1-2)ウ被告製品の独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であるといえるか-構成要件1D,2B充足性(争点1-3)エ着色剤の技術的意義-構成要件1E,2B充足性(争点1-4) ⑵ 本件特許に無効理由があるといえるか(争点2)ア無効理由1(サポート要件違反)の有無(争点2-1)イ無効理由2(実施可能要件違反)の有無(争点2-2)ウ無効理由3(明確性要件違反)の有無(争点2-3)エ無効理由4(乙6発明に基づく新規性欠如・進歩性欠如)の有無(争点2-4) オ無効理由5-1(乙16発明1に基づく新規性欠如・進歩性欠如)の有無(争点2-5)カ無効理由5-2(乙16発明2に基づく進歩性欠如)の有無(争点2-6)キ無効理由6(乙17発明に基づく進歩性欠如)の有無(争点2-7)ク無効理由7(乙18発明に基づく進歩性欠如)の有無(争点2-8) ⑶ 原告の損害賠償請求の可否及びその損害額(主位的請求)(争点3)ア特許法102条2項の適用を前提とする原 ク無効理由7(乙18発明に基づく進歩性欠如)の有無(争点2-8) ⑶ 原告の損害賠償請求の可否及びその損害額(主位的請求)(争点3)ア特許法102条2項の適用を前提とする原告の損害額(主位的主張)(争点3-1)イ特許法102条3項の適用を前提とする原告の損害額(予備的主張)(争点3-2) ウ消滅時効の成否(争点3-3) ⑷ 原告の不当利得返還請求の可否及びその損失額(予備的請求)(争点4) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1-1(被告製品が保持体層を有するか-構成要件1A,1B,2B充足性)ア原告の主張 本件発明の構成要件1A,1Bは,「少なくとも多数の反射素子と保持体層か らなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており,」である。これに対応する被告製品の構成1a,1bは,「再帰性反射効果を有する複数のキューブコーナー,及び,当該キューブコーナーの上層に設けられた表面層からなる再帰反射シートであり, キューブコーナーは単一層の樹脂シートであって,キューブコーナーと表面層の間に印刷層が設けられているが,当該印刷層はキューブコーナーの反射側面に設けられておらず,」である。 本件特許請求の範囲には,「多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」と記載されており,反射素子と保持体層が別個の構成であるとは記載されてお らず,反射素子と保持体層が一体のものが含まれることは明らかである。 また,本件明細書の段落【0021】には,【図1】~【図3】の「⑷は本発明の三角錐型反射素子が最密充填状に配置され らず,反射素子と保持体層が一体のものが含まれることは明らかである。 また,本件明細書の段落【0021】には,【図1】~【図3】の「⑷は本発明の三角錐型反射素子が最密充填状に配置された反射素子層であり,⑶は該反射素子を保持する保持体層であり」と記載されているところ,反射素子を保持するためには,反射素子と保持体層が一体であるのが最も合理的であるから, 「反射素子層⑷および保持体層⑶は一体であるのが普通」(「反射素子層⑷」は「反射素子」の誤記)とも明記されており,本件明細書の実施例1(【図1】)にもこれらが一体となっている例が記載されているから,「多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」との文言が,反射素子と保持体層が一体の場合を含むことは明らかである。そして,本件明細書の段落【0019】には,「本発 明に用いられる反射素子と保持体層からなる反射素子層」と記載されているから,反射素子⑷と保持体層⑶が一体となっている⑸が反射素子層であることが当然に理解できる。なお,ドイツ判決でも,反射素子層は,保持体層と反射素子が一体の場合を含むとされている。 そして,被告製品のキューブコーナーは,単一層の樹脂シートであるものの, 別紙被告製品の構成の図のとおり,多数の反射素子と反射素子を保持する部分 から構成されている。すなわち,被告製品のキューブコーナーにおいて,反射機能(再帰反射性)を有するのが,同図の赤破線より下側の三角錐部分,すなわち反射素子であることは明らかであり,同赤破線より上側の部分は,反射機能がない一方で,個々の反射素子と一体となって反射素子を保持している。 このように,被告製品のキューブコーナーは,「保持体層」を備えている。 したがって,被告製品の構成1a,1b並 ,反射機能がない一方で,個々の反射素子と一体となって反射素子を保持している。 このように,被告製品のキューブコーナーは,「保持体層」を備えている。 したがって,被告製品の構成1a,1b並びにこれと同一の構成2a,2b及び3a,3bは,それぞれ本件発明の構成要件1A,1B及びこれらを引用する構成要件2Bを充足する。 イ被告らの主張 本件発明の反射素子層は,反射素子と保持体層から構成されるのに対し,被 告製品は,単一層の樹脂シートからなるキューブコーナーを備え,キューブコーナーを保持する層は表面層以外に存在しない。したがって,被告製品には,表面保護層と異なる保持体層が存在せず,「多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」も存在しない。 すなわち,本件特許請求の範囲には,「多数の反射素子」と「保持体層」が別 個の要素として特定され,両者が一体との記載はないから,多数の反射素子と保持体層は別個独立の構成であると理解すべきである。また,本件明細書の段落【0018】には,「多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」と記載され,反射素子層が反射素子と保持体層から構成されると明記され,これを受けて段落【0021】で,「反射素子層⑷および保持体層⑶は一体⑸である」と 記載されており,実施例や図面には,「反射素子層⑷」や「保持体層⑶」自体の構成は記載されていない。これらを併せて読めば,「反射素子層⑷」が,多数の反射素子と保持体層を備えており,そのような「反射素子層⑷」と「保持体層⑶」が一体と記載されているにすぎず,「反射素子層⑷」自体について,反射素子と保持体層が一体であるとは理解できない。 これに対し,原告は,上記「反射素子層⑷」は「反射素子」の誤記であると 載されているにすぎず,「反射素子層⑷」自体について,反射素子と保持体層が一体であるとは理解できない。 これに対し,原告は,上記「反射素子層⑷」は「反射素子」の誤記であると 主張するが,本件明細書を通じて,「反射素子層⑷」の文言でほぼ統一され,これらが全て「反射素子」の誤記であるとは理解できない。また,原告は,被告製品のキューブコーナーを赤破線で分断するが,そのように分断できる根拠は不明であり,上側が下側を保持しているといえる根拠もない。キューブコーナーにおいて,入射光を反射させるのは空気層との界面部分であり,それ以外の 部分は光を透過させることで全体として入射光を全反射させるものである。すなわち,原告が反射素子と主張する三角錐の部分とそれ以外の部分は,いずれも入射光を透過させることで反射に寄与するという点で共通しており,一方のみが反射素子で他方は反射素子でないとは理解できない。 ⑵ 争点1-2(被告製品の印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパ ターンで設置されているといえるか-構成要件1C,2B充足性)ア原告の主張 本件発明の構成要件1Cは,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,」である。これに対応する被告製品の構成1cは,「印刷層を構成する印刷領域は,再帰反射シート の両端部以外でほぼ等間隔で設けられた複数のライン状パターンと,再帰反射シートの両端部における複数のライン状の側縁領域を含み,当該側縁領域は外部に露呈しており,」である。 本件発明は,印刷層の印刷領域が「独立」,すなわち「繋がっていない」ことにより,耐候性及び耐水性の向上という課題を解決するものである。ユーザー 外部に露呈しており,」である。 本件発明は,印刷層の印刷領域が「独立」,すなわち「繋がっていない」ことにより,耐候性及び耐水性の向上という課題を解決するものである。ユーザー は,使用に当たってシートを任意の形状に切断するから,印刷領域がシートの端部で切断されることは通常起こることであり,そのような場合は,端部に印刷領域が露出することにより,そこから水が浸入しても,印刷領域が連続層を形成していないため,端部のみで水の浸入を阻止し,更なる水の浸入を防止することで,上記課題を解決できるものである。 そして,被告製品の印刷層の印刷領域は,複数のライン状パターンが設けら れ,互いに繋がっていないから,「独立した領域をなして」いるといえるし,「繰り返しのパターンで設置」されているといえる。 なお,被告らは,下図のとおり,被告製品について切断面とは垂直な方向で見た場合,シート端部と内部では印刷領域の形状及び面積が全く異なることから,被告製品に「繰り返しのパターンで設置」された印刷領域は存在しないと 主張するが,端部の切断面方向では,印刷領域が「繰り返しのパターンで設置」されている。 切断面 したがって,被告製品の構成1c並びにこれと同一の構成2c及び3cは, それぞれ本件発明の構成要件1C及びこれを引用する構成要件2Bを充足する。 イ被告らの主張 被告製品は,シートの両端に印刷層が露出し,印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されずに配置されておらず,「印刷領域が独立した領域をなして」配置されたものではない。また,被告製品は,印刷領域として単一のラインが 繰り返されるものにすぎず,特に被告製品⑵の切断後の端部印刷領域は,シー れておらず,「印刷領域が独立した領域をなして」配置されたものではない。また,被告製品は,印刷領域として単一のラインが 繰り返されるものにすぎず,特に被告製品⑵の切断後の端部印刷領域は,シート内側の印刷領域とは全く異なる形状・面積であるから,「繰り返しのパターンで設置」されたものでもない。 すなわち,原告は,本件特許の出願経過では,印刷領域が独立しているために,印刷層を伝わる水の浸入を防止し,耐候性が備えられると主張し,本件明 細書の【図4】,【図5】からは,印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されずに配置されることで,印刷層を伝わる水の浸入を防止し,耐候性が備えられると理解できるから,本件発明の「印刷領域が独立した領域をなして」とは,水の浸入を防止するように印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されずに 配置されることを意味すると理解される。本件発明の構成要件1Cでは,「連続層を形成せず」の文言に加えて,「独立した領域をなして」との文言が用いられており,これらは異なる意味を有すると理解されるところ,原告が主張する「繋がっていない」とは,「連続層を形成せず」を指し,「独立」を指すものではない。そして,本件明細書には,ユーザーの使用によるシート端部の状態につい て記載されておらず,切断されて印刷層が端部に露出した場合であっても印刷領域が「独立」しているといえることを裏付ける記載もない。加えて,シート端部に印刷層が露出していると,特に隣接する印刷層の間隔が狭い場合やシートの材質によっては,シート内部に徐々に水が浸入して,フクレが生じたりすることにより,課題が解決できないから,「独立した」とは,印刷領域の全てが シート内部で互いに接続されずに配置され,シート端部で印刷層が露出していないこと 々に水が浸入して,フクレが生じたりすることにより,課題が解決できないから,「独立した」とは,印刷領域の全てが シート内部で互いに接続されずに配置され,シート端部で印刷層が露出していないことを意味するというべきである。 また,原告は,本件特許の出願経過において,「パターン」とは模様であり,ラインではないと主張していたのであるから,単一のラインが繰り返される構成は「繰り返しのパターン」に該当せず,被告製品の端部には,「繰り返しのパ ターンで設置」された印刷領域は存在しない。特に被告製品⑵の切り出し後の端部印刷領域は,シート内側の印刷領域とは全く異なる形状・面積であり,「繰り返しのパターンで設置」された印刷領域ではない。これに対し,原告は,端部印刷領域も,切断面方向で見れば繰り返しパターンであると主張するが,本件発明の技術的意義は水の浸入を防ぐことにあるから,水の浸入を防げない位 置の印刷領域について充足性を検討するのは失当である。 ⑶ 争点1-3(被告製品の独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であるといえるか-構成要件1D,2B充足性)ア原告の主張本件発明の構成要件1Dは,「該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であ り,」である。 被告製品⑴被告製品⑴の構成要件1dは,「印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,」であり,本件発明の構成要件1D及びこれを引用する構成要件2Bを充足する。 被告製品⑵ 被告製品⑵の構成要件2dは,「印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,両端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,」で 製品⑵の構成要件2dは,「印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,両端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,」であるところ,少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15㎟~30㎟であるため,本件発明の構成要件1D及びこれを引用する構成要件2Bを充足する。 これに対し,被告らは,被告製品⑵の原反ロールの切断前の状態について充足性を検討すべきであると主張するが,切断後も層間密着強度は変化しないし,被告製品⑵の右端部よりも左端部の方が,水の浸入長が短く,より耐水性等が優れたものであるから,被告製品⑵は,本件発明の技術的意義を備えたものである。 被告製品⑶被告製品⑶の構成3dは,「印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が約86.3㎟となるよう設計されており,両端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15 ㎟~30 ㎟ではなく,」である。 しかし,被告製品⑶を購入したユーザーが,被告製品⑶を切断し,シート端 部における印刷領域の面積を0.15 ㎟~30 ㎟とすることで,被告製品⑵を生産することになる。そして,被告製品⑶の印刷領域の面積以外は,本件発明の構成要件を充足する以上,被告製品⑶は,「本件特許の課題解決に不可欠なもの」であり,かつ,「日本国内において広く一般に流通しているもの」に該当しない。また,原告は,ドイツ3Mに対し,ドイツ侵害訴訟を提起したため, 被告らは,本件発明が「特許発明であること」,被告製品⑶が本件発明の「実施 に用いられることを知っ」ているといえる。 したがって,被告らによる被告製品⑶の製造販売等の行為は,本件特許 本件発明が「特許発明であること」,被告製品⑶が本件発明の「実施 に用いられることを知っ」ているといえる。 したがって,被告らによる被告製品⑶の製造販売等の行為は,本件特許の間接侵害に当たる。 イ被告らの主張原告の主張は,否認ないし争う。 被告製品⑴本件発明の構成要件1Dの「該印刷領域」は,構成要件1Cを受けて「繰り返しのパターン」で設置されることを要するところ,前記⑵イのとおり,被告製品⑴には,「繰り返しのパターンで設置」された「印刷領域」は存在しない。 被告製品⑵ 被告製品⑵にも,「繰り返しのパターンで設置」された「印刷領域」は存在しない。 また,本件明細書の段落【0030】によれば,本件発明の技術的意義は,層間密着強度を低下させないために印刷領域の面積の上限を30㎟に定めたところにあるところ,原反ロールを切断して印刷領域の面積が変化しても層間密 着強度は変化しないのであるから,原反ロールの切断前の印刷領域の面積が本件発明の構成要件1Dを充足するか否かを検討すべきである。そして,被告製品⑵は,原反ロールの切断前は,シート端部も内側の印刷領域と同様に30㎟を超えていたものであり,本件発明の構成要件1Dを充足しない。 被告製品⑶ 上記のとおり,被告製品⑵は,本件発明の構成要件1Dを充足しないから,被告製品⑶の製造販売等の行為について,間接侵害が成立する余地はない。 なお,被告製品⑶は,シート端部で印刷層が露出し,端部からの水の浸入の防止という課題を解決できず,「本件特許の課題の解決に不可欠なもの」でない。 また,原告は,本件訴訟の提起前,日本における本件特許に基づき, 製品⑶は,シート端部で印刷層が露出し,端部からの水の浸入の防止という課題を解決できず,「本件特許の課題の解決に不可欠なもの」でない。 また,原告は,本件訴訟の提起前,日本における本件特許に基づき,日本国内 で販売されている被告製品に対して警告書を出すなどの行為を行っておらず, ドイツ侵害訴訟の提起のみをもって,被告らが本件発明の存在及び被告製品⑶が本件発明の「実施に用いられることを知っ」ていたとはいえない。 ⑷ 争点1-4(着色剤が色相を明るくすることを要するか-構成要件1E,2B充足性)ア原告の主張 本件発明の構成要件1Eは,「該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する」である。これに対応する被告製品の構成1eは,「印刷層は,●(省略)●と●(省略)●を含有する●(省略)●印刷インキにより形成されるが,」であり,●(省略)●は,「白色」の「無機顔料」に当たる(甲26)。 これに対し,被告らは,本件発明については,印刷層が「白色の有機顔料,および蛍光増白剤」のいずれかを含有すれば,それだけで構成要件1Eを充足するのではなく,これにより「色相が明るくなる」ことを要するところ,被告製品の構成1eは,「印刷層は,●(省略)●と●(省略)●を含有する●(省略)●印刷インキにより形成されるが,これはキューブコーナーからの再帰性 反射光を抑制し,また,反射シートの白色度を低下させて色相を暗くするもの」であり,色相を明るくしないと主張する。 しかし,本件発明の構成要件1Eは,「色相が明るくなる」ことを必要としておらず,●(省略)●の含有も排除されていない。本件発明の「着色剤」の技術的意義は,本件明細書の段落 明るくしないと主張する。 しかし,本件発明の構成要件1Eは,「色相が明るくなる」ことを必要としておらず,●(省略)●の含有も排除されていない。本件発明の「着色剤」の技術的意義は,本件明細書の段落【0014】,【0015】のとおり,「色相の改 善」であって,明るくする点のみではないのであり,段落【0021】,【0030】,【0032】には,「色相を調節」,「色相の調整」と記載されている。確かに,本件明細書の段落【0036】は,「本発明に用いられる着色剤は,特に限定されるものではないが,色相を明るくすることができ」とされているが,これは「シートの色相に合わせた明色系の色」の例示であり,「色相を明るくす ることができ」るという「可能」な態様にすぎない。「色相の改善」の典型は, 色相を明るくすることであるが,これはあくまで好ましい態様にすぎず,色相が明るすぎる場合の「色相の調整」も,「色相の改善」に含まれるのであり,色相を明るくすることが要件とされているわけではない(なお,本件明細書の【表1】のY値(色相)でも,比較例1の48に対し,実施例2,3はそれよりも低い28,25であるが,それでも本件発明の技術的範囲に属さないことには なっていない。)。なお,ドイツ判決も,本件欧州特許に係る特許発明の特徴は,接着力の向上であって,色相を明るくすることではないと判断している。なお,被告製品では,●(省略)●を含有しない領域よりもこれを含有する領域の方が色相も改善(●(省略)●による色相改善の効果を享受)しており,キューブコーナーの領域は印刷領域よりも暗い●(省略)●であって,被告製品の● (省略)●印刷インキの色相が暗くなっているのは,●(省略)●で色相を上げる一方で,●(省略)●で色相を下げたからである。 した の領域は印刷領域よりも暗い●(省略)●であって,被告製品の● (省略)●印刷インキの色相が暗くなっているのは,●(省略)●で色相を上げる一方で,●(省略)●で色相を下げたからである。 したがって,本件明細書の「色相の改善」を明るくすることに限定する被告らの上記主張は失当である。 したがって,被告製品の構成1e並びにこれと同一の構成2e及び3eは, それぞれ本件発明の構成要件1E及びこれを引用する構成要件2Bを充足する。 イ被告らの主張 本件発明は,「白色の有機顔料,…及び蛍光増白剤」のいずれかを含有すれば,それだけで構成要件1Eを充足するのではなく,これにより色相が明るくなることを要するところ,被告製品は,●(省略)●と●(省略)●を含む●(省 略)●印刷インキを用いており,「Y値(色相=明るさ)」の改善をもたらさず,むしろ印刷層を設けない場合と比較して色相が下がっているから,構成要件1Eを充足しない。 すなわち,本件明細書の段落【0014】,【0036】には,着色剤を含有する理由は「色相を明るくする」ことであると記載されており,原告は,本件 特許の出願経過でも,「白色」等を用いて「Y値」を改善する技術的意義を強調 しているから,印刷層が「白色の有機顔料,…および蛍光増白剤」のいずれかを含有しても,色相を明るくすることに寄与しなければ,技術的意義を有しないこととなる。また,本件明細書の実施例及び比較例は,同じインキで印刷パターンを変えたものであり,着色剤の相違によって色相が明るくなるか否かを示すものではないから,【表1】のY値の違いを根拠として,着色剤の技術的意 義を否定することはできない。 これに対し,原告は,着色剤が色相を明るくすることは 相違によって色相が明るくなるか否かを示すものではないから,【表1】のY値の違いを根拠として,着色剤の技術的意 義を否定することはできない。 これに対し,原告は,着色剤が色相を明るくすることは好ましい態様にすぎないと主張する。しかし,原告は,本件特許の出願過程において,本件発明が進歩性を有することを裏付けるため,本件発明を「好ましい態様」に限定するために,補正によって構成要件1Eを追加し,着色剤により色相を改善したと 主張している。また,本件明細書の段落【0014】には,「色相の改善」と記載されており,段落【0053】には,「色相(明るさ)」,「Y値の平均値をもって再帰反射シートの色相(明るさ)とした」と記載されているから,本件発明の「色相」とは「明るさ」を意味し,「色相の改善」とは「明るさの改善」を意味すると理解されるところ,「改善」とは「悪いところを改めてよくすること」 であり(乙27),段落【0004】では,「明るさ」に関する課題について,「外観が暗く」なることだけ指摘しているから,「明るさの改善」とは,「明るくする(Y値向上)」を意味するというべきである。仮に本件発明が明るくするものでも暗くするものでも良いのであれば,「白色の有機顔料…のうちの一以上の着色剤」を含有するか否かは,課題解決とは無関係ということになってしま い不自然である。なお,原告は,「白色」の「無機顔料」に当たる●(省略)●が含まれることで色相は改善されると主張するが,●(省略)●が含まれていれば色相が改善されるということはない。 以上によれば,本件発明の印刷層の着色剤は,色相を明るくするものである必要があり,そうでないものは構成要件1Eを充足しないというべきである。 ⑸ 争点2-1(無効理由1(サポート要件違反)の有無 れば,本件発明の印刷層の着色剤は,色相を明るくするものである必要があり,そうでないものは構成要件1Eを充足しないというべきである。 ⑸ 争点2-1(無効理由1(サポート要件違反)の有無) ア被告らの主張次のとおり,本件発明は,本件明細書に記載された密着性や色相の改善等の課題を解決できる範囲のものではないから,サポート要件に違反するものであり,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものである。 「印刷層周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性が劣る」課題について 本件明細書の段落【0012】及び審査経過によれば,本件発明は,印刷層周辺の密着性が劣り耐候性等が劣るという課題を解決するため,「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設定されており」との構成を採用している。したがって,本件発明の「印刷領域が独立した領域をなして」とは,水の浸入を防止するよう印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されずに配 置されていることを意味するものと理解すべきであり,そうでなければ,シート両端に印刷領域が露出して水の浸入を防止できず,上記課題を解決しないものも本件発明に含まれることになってしまい,当業者(発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者。以下同様。)において上記課題を解決できると認識できる範囲を超えることになる。 したがって,本件発明の構成要件1Cの「印刷領域が独立した領域をなして」が,水の浸入を防止するように印刷領域の全てが反射シートの内部に互いに接続されることなく配置されていることを意味しないのであれば,本件発明についてはサポート要件違反があるということになる。 これに対し,原告は,サポート要件では出願過程は根拠にならないと主張 続されることなく配置されていることを意味しないのであれば,本件発明についてはサポート要件違反があるということになる。 これに対し,原告は,サポート要件では出願過程は根拠にならないと主張す るが,被告らが意見書(乙2)を参照したのは,本件特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比するに当たり,本件発明の「印刷領域が独立した領域をなして」の意義を明らかにすることを目的とするものであって,意見書のみを根拠としているわけではなく,また,意見書の記載は,本件明細書の段落【0012】に記載されているから,本件明細書に記載のない事項を捉え て本件発明の課題を認定したわけでもない。また,原告は,再帰反射シートの ユーザーは,これを所望の形状で切断するから,シート両端に印刷領域が露出しないと理解することはないと主張するが,問題は,印刷領域の全てが反射シートの内部に配置されていない場合に課題を解決できるかであり,ユーザーの使用態様ではない。さらに,原告は,本件発明の課題は,印刷層が「連続」している(すなわち「繋がっている」)状態が問題であると認識するものであり, シート端部の印刷層の状態は課題ではないと主張するが,本件明細書の段落【0012】のとおり,本件発明の印刷層周辺の密着性が劣り耐候性等が劣るという課題は,印刷層が連続した場合にのみ発生する課題ではない。 色相改善の課題について本件明細書の記載及び出願経過によれば,本件発明は「外観が暗くなる」課 題を解決するために,「白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤」を含有させることにより,色相を明るくするものと理解されるのであり,逆に色相を明るくしない場合も包含するなら,本件発明は課題を解決できる範囲を超えることとなる。 有機顔料,…のうちの一以上の着色剤」を含有させることにより,色相を明るくするものと理解されるのであり,逆に色相を明るくしない場合も包含するなら,本件発明は課題を解決できる範囲を超えることとなる。 これに対し,原告は,「色相の改善」とは明るくすることのみではないと主張 するが,前記⑷イで指摘したとおり,原告の主張は失当である。 独立印刷領域の課題について本件明細書の段落【0012】には,従来技術の問題点として,印刷層周辺の密着性等が記載され,段落【0030】には,印刷領域の面積が30㎟以下であれば印刷周囲の層間密着強度を低下させず好ましいと記載される一方で, 隣接する印刷領域の間隔を規定していない。 しかし,本件明細書には,印刷領域の面積が0.15㎟未満や30㎟超えのものと比較したときの実施例及び比較例が記載されていないから,「0.15㎟~30㎟」の技術的意義(臨界的意義)は裏付けられていない。また,印刷周囲の層間密着強度は,印刷領域の面積のみならず,隣接する印刷領域の間隔や 印刷領域と非印刷領域の面積比等に左右されるのであり,印刷領域の面積に比 べて間隔が非常に狭い場合は,2層の接着面積が著しく小さくなり,層間密着強度が弱くなるから,印刷領域の面積だけ特定しても,課題が解決できない。 また,原告は,印刷領域が独立している場合は,独立していない場合より層間密着強度が強いと主張するが,印刷領域の繋がりは多種多様であり,左下図と右下図を比較すれば,印刷領域が独立している前者よりも,これが繋がってい る後者の方が層間密着強度が強いことは明らかであるから,原告の上記主張は失当である。したがって,本件発明には,上記課題を解決できないものが含まれていることになる。 イ原告の主張 繋がってい る後者の方が層間密着強度が強いことは明らかであるから,原告の上記主張は失当である。したがって,本件発明には,上記課題を解決できないものが含まれていることになる。 イ原告の主張次のとおり,本件発明は,サポート要件を満たしている。 「印刷層周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性が劣る」課題について本件発明は,従来の「連続」した(すなわち繋がっている)印刷層を設置した場合に,「耐候性が劣り耐候性試験においてフクレを生じたり,また,吸水しやすい」という課題を解決するために,フクレが生じにくく吸水しにくい耐候性及び耐水性に優れた再帰反射シートを提供するものであって,「水の浸入を防 止し,フクレを防止する」ことを課題としているが,少しでも水が浸入してはならないわけではない。 なお,被告らは,本件特許の出願過程を根拠として,本件発明の課題を認定しようとしているが,サポート要件は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比すべきであり,出願過程は根拠にならない。また,被告らは, 本件発明の「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設定されており」との構成が,印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されることなく配置されていることを意味すると主張するが,前記⑵アで指摘したとおり,再帰反射シートのユーザーは,これを所望の形状で切断するから,シート両端において印刷領域が露出しないなどと理解する余地はない。本件発明の課題は, 印刷層が「連続」している(すなわち「繋がっている」)状態が問題であると認 識するものであり,シート端部の印刷層の状態は課題ではない。 色相改善の課題について前記⑷アで指摘したとおり,本件発明の「 っている」)状態が問題であると認 識するものであり,シート端部の印刷層の状態は課題ではない。 色相改善の課題について前記⑷アで指摘したとおり,本件発明の「色相の改善」は,色相を明るくすることのみを意味せず,明るすぎる場合に色相を調節して適切な色相にすることも含まれる。また,本件明細書の段落【0004】には,「蒸着型三角錐型キ ューブコーナー再帰反射シートは,その再帰反射素子の性質から金属の色の影響を受けて外観が暗くなってしまうという欠点を有している」と記載されているとおり,「蒸着型」の再帰反射シートの課題にすぎないが,本件発明は,「蒸着型」の再帰反射シートに限定されるものではない。 なお,被告らは,本件特許の出願過程を根拠として,本件発明の課題を認定 しようとしているが,上記で指摘したとおり,出願過程を根拠とするのは失当である。 独立印刷領域の課題について本件発明は,臨界的意義が要求される類型ではないから,0.15㎟未満や30㎟超えのものとの比較は不要であり,本件明細書の段落【0030】の記 載で十分である。 これに対し,被告らは,印刷パターンの面積に比べて間隔が非常に狭い場合は,2層の接着面積が著しく小さくなり,層間密着強度が弱くなるとか,印刷領域の繋がりは多種多様であり,印刷領域が独立しているものよりも,これが繋がっているものの方が層間密着強度が強いこともあると主張する。しかし, 本件発明は,再帰反射シートの発明である以上,再帰反射性を十分に確保できるものでなければならないところ,印刷領域が再帰反射シートの大部分を占めるような場合は,反射素子が有効に存在する箇所がほとんどなく,再帰反射シートとして意味をなさない 上,再帰反射性を十分に確保できるものでなければならないところ,印刷領域が再帰反射シートの大部分を占めるような場合は,反射素子が有効に存在する箇所がほとんどなく,再帰反射シートとして意味をなさないから,このようなものを想定することは相当ではない。あくまで,印刷領域が「独立」している場合は,これが独立していない場 合と比較すれば,層間密着強度が強いことは明らかである。 ⑹ 争点2-2(無効理由2(実施可能要件違反)の有無)ア被告らの主張実施可能要件を満たしているというためには,当業者が,発明の課題と解決手段を理解し,当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されていることが必要である。 そして,本件発明に,印刷領域の全てがシート内部に配置されない構成が包含されたり,色相を明るくしない印刷層も包含されたりするのであれば,課題を解決できないから,本件明細書は,当業者が課題を理解し発明を実施できるように明確かつ十分に記載されたものではないことになる。また,本件明細書には,隣接する印刷領域の間隔についての記載がなく,課題を解決できるシートを実現す るためには,当該間隔について条件を探索するため過度の試行錯誤を要する。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,経済産業省令で定めるところにより,当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず,実施可能要件に違反するものであり,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものである。 イ原告の主張前記⑸イと同様の理由により,本件明細書の発明の詳細な説明は,実施可能要件を満たしている。 ⑺ 争点2-3(無効理由3(明確性要件違反)の有無) イ原告の主張前記⑸イと同様の理由により,本件明細書の発明の詳細な説明は,実施可能要件を満たしている。 ⑺ 争点2-3(無効理由3(明確性要件違反)の有無)ア被告らの主張 明確性要件は,明細書の記載や出願時の技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確かという観点から検討されるべきであり,明細書等を参酌しても,その作用効果を奏しない構成も本件発明に含まれる場合は,明確性要件違反になるというべきである。 次のとおり,本件特許請求の範囲は,明確性要件に違反するものであり,本件 特許は,無効審判によって無効にされるべきものである。 「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」本件発明の構成要件1Aの「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」からは,「保持体層」は,「反射素子層」を構成する要素であると理解される。他方で,本件明細書の段落【0021】では,「反射素子層⑷」と「保持体層⑶」は,一体とされたり別体とされたりするが,「保持体層」と「反 射素子層」は異なる構成要素として説明されている。このように,「保持体層」と「反射素子層」が,本件特許請求の範囲では一方が他方の構成要素のように理解され,本件明細書では別々の構成要素と記載されており,両者を統一的に理解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるといえる。 「印刷領域が独立した領域をなして」及び「独立印刷領域」 本件発明の構成要件1C,1Dの「印刷領域が独立した領域をなして」及び「独立印刷領域」の意味が,本件特許請求の範囲の記載から明らかでない。そして,前記⑵イで指摘したとおり,本件明細書の記載 本件発明の構成要件1C,1Dの「印刷領域が独立した領域をなして」及び「独立印刷領域」の意味が,本件特許請求の範囲の記載から明らかでない。そして,前記⑵イで指摘したとおり,本件明細書の記載及び出願経過から理解される本件発明の課題からすれば,「独立」とは,印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されることなく配置されていることと理解される。しかし,原告が 主張するように,「独立」とは,「繋がっていない」ことを意味するのであれば,シート両端で印刷領域が露出しているものも本件発明に含まれ,印刷層を伝わった水の浸入を防止できず,本件発明には所定の作用効果を奏しない構成も含まれることになる。 したがって,仮に原告が主張するように本件発明に所定の作用効果を奏しな い構成も含まれるのであれば,第三者は「独立」の意義を一義的に明確に理解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるといえる。 「印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する」本件発明の構成要件1Eは,外観が暗くなる課題の解決のため,「印刷層は, 白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤を含有する」との構成を採用し, 色相を明るくしようとしたものと理解することができる。しかし,本件発明に被告製品のような色相を明るくしないものが含まれるとすれば,本件発明には所定の作用効果を奏しない構成も含まれることになる。 したがって,仮に原告が主張するように本件発明に所定の作用効果を奏しない構成も含まれるのであれば,第三者は「印刷層」の意義を一義的に明確に理 解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるといえる。 「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり」本 構成も含まれるのであれば,第三者は「印刷層」の意義を一義的に明確に理 解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるといえる。 「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり」本件明細書の段落【0030】には,印刷領域の面積の上限を30㎟としたのは,層間密着強度を低下させないので好ましいと記載されている。しかし,層間密着強度は,印刷領域の面積のみならず隣接する印刷領域の間隔でも変わ り,当該間隔が非常に狭い場合には,課題を解決できない。 したがって,仮に原告が主張するように本件発明に所定の作用効果を奏しない構成が含まれるのであれば,第三者は「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」の意義を一義的に明確に理解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるといえる。 イ原告の主張次のとおり,本件特許請求の範囲は,明確性要件を満たしている。 「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」本件明細書の図面によれば,反射素子が4,保持体層が3,反射素子層は,反射素子4と保持体層3からなる5であり,段落【0021】の「反射素子層」 は,「反射素子」の誤記であると理解できる。 「印刷領域が独立した領域をなして」及び「独立印刷領域」本件発明の構成要件1Cの「独立」とは,「単独で存在すること」(甲38)ないし「他と離れて,一つだけ立っていること。また,他のものとはっきり別になっていること」(甲39)であるから,まさに「繋がっていない」ことを意 味することは明らかである。そして,前記⑸イで指摘したとおり,本件発明は, 連続した印刷層を設置した場合の課題を解決しているから,被告らの主張は,その前提を誤っている。 「印刷層は,白色の有機顔料, である。そして,前記⑸イで指摘したとおり,本件発明は, 連続した印刷層を設置した場合の課題を解決しているから,被告らの主張は,その前提を誤っている。 「印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する」本件明細書の「色相の改善」には,色相が明るすぎる場合に適切な色相に調 節することも含まれるから,被告らの主張は,その前提を誤っている。 「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり」前記⑸イのとおり,本件発明は,印刷領域を「独立」させて,その面積を「0. 15㎟~30㎟」に限定することにより,層間密着強度の向上という課題を解決できているから,被告らの主張は,その前提を誤っている。 ⑻ 争点2-4(無効理由4(乙6発明に基づく新規性欠如・進歩性欠如)の有無)ア被告らの主張次のとおり,本件発明は,乙6に記載された発明(以下「乙6発明」という。)であり,仮に相違点があるとしても,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,新規性欠如・進歩性欠如の無効理由がある。 乙6発明の構成乙6発明の構成は,次のとおりである。 少なくとも多数のプリズム13とプリズム13を有する層からなる本体プレート12,および,本体プレート12の上層に設置された層16からなる再帰 反射性を有する反射プレート構造10において,プリズム13を有する層と層16の間にグリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層が設置されており, 該グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層のドットの領域が独立した領域をなして繰り返しのパタ パターン)の白い複数のドットが印刷された層が設置されており, 該グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層のドットの領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層は,白色の有機又は無機顔料の着色剤を含有することを特徴とする印刷された再帰 反射性を有する反射プレート構造10であって,上記プリズム13が再帰反射性を有する三角ピラミッド型プリズムである再帰反射性を有する反射プレート構造10。 本件発明と乙6発明の対比本件発明と乙6発明を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点(相違 点1)で一応相違する。 a 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置 されており,該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該印刷層は,白色の有機顔料又は白色の無機顔料のうちの一以上の着色剤を含有する ことを特徴とする印刷された再帰反射シートである点。 b 相違点⒜ 相違点1本件発明では,「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」(構成要件1D)とされているのに対し,乙6発明では,独立ドット領域の面積が明 記されていない点。 ⒝ 相違点2原告は,本件発明が「再帰反射シート」であるのに対し,乙6発明は「背面反射性を有する反射プレート構造」である点において,相違点が存在す 。 ⒝ 相違点2原告は,本件発明が「再帰反射シート」であるのに対し,乙6発明は「背面反射性を有する反射プレート構造」である点において,相違点が存在する旨を主張する。 しかし,乙6の「プレート」は,平板等を意味し,本件発明の「シート」 も,板等を意味するから(乙27,28),乙6の「プレート」は,本件発明の「シート」に包含される。 したがって,相違点2は,相違点であるとはいえない。 ⒞ 相違点3原告は,本件発明の「印刷層」が,「反射素子の反射側面上,または保持 体層と表面保護層の間」に設置されているのに対し,乙6発明は,層16の表面にグリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットで印刷された層が設置されている点において,相違点が存在する旨を主張する。 しかし,乙6によれば,本体プレート12には「さらなるコーティング又は層16が存在していてもよい」と記載されているから,本件プレート 12の表面にドットを印刷した上で層16を設置する構成が開示されているといえる。 したがって,相違点3は,相違点であるとはいえず,仮に相違するとしても,印刷層の保護のために印刷層を保持体層と表面保護層の間に設置することは周知慣用技術であるから(乙16~18,23,24),これは実 質的な相違点であるとはいえない。 ⒟ 相違点4原告は,本件発明の印刷層の印刷領域が,「独立した領域をなして」,「連続層を形成せず」であるのに対し,乙6発明では,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドット」が印刷された層は,連続する(繋がっ た)線をなして,連続層を形成している点において,相違点が存 を形成せず」であるのに対し,乙6発明では,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドット」が印刷された層は,連続する(繋がっ た)線をなして,連続層を形成している点において,相違点が存在する旨 を主張する。 しかし,乙6の「グリッドパターンの白い複数のドット」を合理的に理解すれば,下図のように,格子状に複数の白いドットが印刷されたものになる。 また,乙6には,グリッドパターンを印刷すると記載されているのではなく,「白い複数のドットで印刷」すると記載されているから,印刷されるのは,白い複数のドットであり,グリッドパターンではない。そして,ドットの輪郭は,通常円形で独立しており,ドットの印刷は,繰り返しの独立したドットを印刷するのが慣用技術である(乙6~17,23,24, 26)。そうすると,当業者が,乙6の「白い複数のドットで印刷」との記載に接した場合,繰り返しの独立したドットが開示されていると認識することができる。 したがって,相違点4は,相違点であるとはいえず,仮に相違するとしても,「印刷領域が独立した領域をなして」とは,印刷領域の全てが反射シ ートの内部で互いに接続されることなく配置されていることを意味しないのであれば,水の浸入を阻止するという課題を解決できず,相違点4の構成には技術的意義はないことになるから,相違点4は,あくまで形式的な相違点にすぎず,実質的な相違点であるとはいえない。 ⒠ 相違点5 原告は,本件発明が「印刷層は,白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤を含有する」のに対し,乙6発明はそれが不明である点において,相違点が存在する旨を主張する。 原告は,本件発明が「印刷層は,白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤を含有する」のに対し,乙6発明はそれが不明である点において,相違点が存在する旨を主張する。 しかし,白色を印刷するには白色顔料を用いるのが技術常識であるから,相違点5は,相違点であるとはいえず,仮に相違するとしても,実質的な相違点であるとはいえない。 新規性欠如本件発明の構成要件1Dの独立印刷領域の面積には技術的意義がなく,また 本件明細書にも技術的意義を裏付ける記載はないから,相違点1は実質的な相違点であるとはいえない。 したがって,本件発明は,乙6発明と同一の発明であり,新規性を欠いている。 進歩性欠如 仮に本件発明と乙6発明の相違点1が実質的な相違点であるとしても,次のとおり,本件発明は,当業者において容易に発明をすることができたものであり,進歩性を欠いている。 a 上記のとおり,本件発明と乙6発明の相違点1に係る独立印刷領域の面積に技術的意義はなく,本件明細書にも技術的意義を裏付ける記載はないか ら,相違点1は,設計事項にすぎない。 b また,本件発明と乙6発明の相違点1は,乙8~10から認められる周知技術又はそれぞれの文献記載の発明の適用により,当業者において容易に想到することができた。 すなわち,乙6発明では,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数 のドットで印刷された層」は,日中は印刷層の色が知覚され,その向こう側の本体材料の色が見えないようにすることを目的とするものであるから,当業者は,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットで印刷された層」を設けるに当た は印刷層の色が知覚され,その向こう側の本体材料の色が見えないようにすることを目的とするものであるから,当業者は,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットで印刷された層」を設けるに当たり,その目的を達成できるよう動機付けられる。 他方で,本件特許の原出願日の当時,乙6発明と同一ないし近接した技術 分野で,一方向からはドットの色が見え,その向こう側を視認できなくする ため,繰り返しのドットパターンを形成し,ドットの直径を1㎜,面積を0. 785(0.5×0.5×3.14)㎟とすることが周知であった(以下「周知技術1」という。)。 また,乙8の1には,反射性シートへの印刷において,パネル(シート)の表面に,1.4㎜四方の正方形を構成する格子の中央に直径1㎜の白色の ドット(面積0.785㎟)を印刷すると,白いドットに照明された光は反射され,一方向からはドットの色が見え,その向こう側を視認できなくする技術が開示されている。なお,乙8の2・3は,乙8の1と同一の優先権基礎出願に基づく出願であり,乙8の1と実質的に同一の事項が開示されている。そして,乙9には,乙6発明と同一ないし近接した技術分野である反射 性基材への印刷において,一方向からはドットの色が見え,その向こう側を視認できなくするため,ドットの形状を1㎜φ(面積0.785㎟)の網点形状とする構成が開示されている。さらに,乙10には,乙6発明と近似した技術分野である透明基材への印刷において,一方向からはドットの色が見え,その向こう側を視認できなくするため,ドットの直径を1㎜~2㎝(面 積0.785㎟~3.14㎠)等の適宜の大きさとすることが開示されている。 したがって,乙6に接した当業者は,上記動機付けにより,周知技術1を採用し,あるい ,ドットの直径を1㎜~2㎝(面 積0.785㎟~3.14㎠)等の適宜の大きさとすることが開示されている。 したがって,乙6に接した当業者は,上記動機付けにより,周知技術1を採用し,あるいは,本件発明と同一ないし近接した技術分野である乙8~10記載の構成を採用し,それによって「独立ドット領域」の面積は0.78 5㎟となるから,相違点1を容易に想到することができたといえる。 c さらに,本件発明と乙6発明の相違点1は,乙8~15から認められる周知技術又はそれぞれの文献記載の発明の適用により,当業者において容易に想到することができた。 すなわち,乙6発明に「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数の ドットで印刷された層」を設けるに当たり,当業者は,一般的なドットの面 積を採用するよう動機付けられる。 他方,本件発明と同一ないし近接した技術分野で複数のドットを印刷するに当たり,相違点1の範囲内(「0.15㎟~30㎟」)の適宜の面積とすることが周知であった(以下「周知技術2」という。)。 また,乙11には,直径4㎜(面積12.56㎟)のドットが記載され, 乙12には,直径2㎜(面積3.14㎟)と直径0.1㎜(面積0.00785㎟)のドットが記載され,乙13には,0.785㎟以下のドット(半径500㎛の円内にドットが設けられているため)が記載され,乙14には,一辺の長さが1㎜のドット(面積1㎟),0.2㎜~0.8㎜のドット(面積0.04㎟~0.64㎟)が記載され,乙15には,ドイツの標識に関する 規格において六角形の面積を1.95㎟とする発明が記載されている。 したがって,乙6に接した当業者は,上記動機付けにより,周知技術2を採用し,それによって「ドット領 は,ドイツの標識に関する 規格において六角形の面積を1.95㎟とする発明が記載されている。 したがって,乙6に接した当業者は,上記動機付けにより,周知技術2を採用し,それによって「ドット領域」の面積は相違点1の範囲内となるから,相違点1は容易に想到することができるし,あるいは,乙6発明の「複数のドットで印刷」との記載に動機付けられ,本件発明と同一ないし近接した技 術分野である乙8~15のいずれか記載のドット面積を適用し,それによって「ドット領域」の面積は相違点1の範囲内となるから,相違点1は容易に想到することができる。 イ原告の主張次のとおり,本件発明は,乙6発明と同一の発明であるとはいえず,当業者が 容易に発明をすることができたものであるともいえないから,新規性欠如・進歩性欠如の無効理由はない。 乙6発明の構成乙6の正しい構成は,次のとおりである。 少なくとも多数のプリズム13とプリズム13を有する層からなる本体プレ ート12,および,本体プレート12の上層に設置された層16からなる背面 反射性を有する反射プレート構造10において,層16としてグリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷され,該グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層は,連続する(繋がった)線をなして繰り返しパターンで設置されており,連続層 を形成し,該グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層は,白色であることを特徴とする印刷された背面反射性を有する反射プレート構造10であって,上記プリズム13が背面反射性を有する三角錐ピラミッド型プリズムである 背面反射性 た層は,白色であることを特徴とする印刷された背面反射性を有する反射プレート構造10であって,上記プリズム13が背面反射性を有する三角錐ピラミッド型プリズムである 背面反射性を有する反射プレート構造10。 本件発明と乙6発明の対比本件発明と乙6発明を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で相違する。 a 一致点 少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射物において,印刷層が設置されており,該印刷層の印刷領域が繰り返しのパターンで設置されており,該印刷層は,白色であることを特徴とする印刷された再帰反射物である点。 b 相違点 相違点1本件発明では,「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」とされているのに対し,乙6発明では,独立ドット領域の面積が明記されていない点。 ⒝ 相違点2 本件発明が「再帰反射シート」であるのに対し,乙6発明は「背面反射 性を有する反射プレート構造」である点。 これに対し,被告らは,本件発明のシートと乙6発明のプレートは相違しない旨を主張するが,「シート」は「薄板や紙などの一枚」(乙27)であるのに対し,「プレート」は「板。金属板」(甲49)であり,比較的厚い板を指し(乙28),両者は異なるものであるから,かかる主張は失当で ある。 ⒞ 相違点3本件発明の「印刷層」が,「反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間」に設置されているのに対し,乙6発明は,層16の表面にグリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットで印刷さ 本件発明の「印刷層」が,「反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間」に設置されているのに対し,乙6発明は,層16の表面にグリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットで印刷された層が 設置されている点。 これに対し,被告らは,印刷層の保護のために,印刷層を保持体層と表面保護層の間に設置することは,周知慣用技術である旨を主張するが,そのような周知慣用技術はない(乙16~18)。また,乙6には,グリッドパターンについて記載されていても,印刷層の場所を特定する記載はなく, 実施例でも印刷層は設けられていない。むしろ,乙6には,表面を着色被覆でラッカー塗布すること,前表面を白く見えるように白い複数のドットで印刷することが記載されているから,印刷層は,プリズム13を有する層と層16の「間」ではなく,層16の表面に設置するものと理解される。 したがって,被告らの上記主張は失当である。 ⒟ 相違点4本件発明の印刷層の印刷領域が,「独立した領域をなして」,「連続層を形成せず」であるのに対し,乙6発明では,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドット」が印刷された層は,連続する(繋がった)線をなして,連続層を形成している点。 これに対し,被告らは,当業者が乙6の「白い複数のドットで印刷」と の記載に接した場合,繰り返しの独立したドットが開示されていると認識することができると主張する。しかし,グリッドパターンは,複数の連続する線を交差させる模様であるから(甲45~47),「グリッドパターンの白い複数のドットで印刷」された層とは,下図のように,ドットを印刷して複数の連続する線を形成した模様を意味する(ドットを互いに重なる 線を交差させる模様であるから(甲45~47),「グリッドパターンの白い複数のドットで印刷」された層とは,下図のように,ドットを印刷して複数の連続する線を形成した模様を意味する(ドットを互いに重なる ように連続した線の模様にすることは普通の印刷技術)のであり,「白い複数のドット」と記載されていても,複数のドットが互いに独立していることにはならない(甲48)。このように,乙6には,「白い複数のドット」が,独立した領域であることも,連続しないことも記載されていないといえる。したがって,被告らの上記主張は失当である。 相違点5本件発明が「印刷層は,白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤を含有する」のに対し,乙6発明はそれが不明である点。 これに対し,被告らは,白色を印刷するには白色顔料を用いるのが技術 常識である旨を主張するが,白色顔料を使わずとも,発泡させた透明樹脂インクや透明樹脂の中空ビーズを含むインク等を用いて白色にする手法(甲41,42)もあるから,かかる主張は失当である。 新規性本件発明と乙6発明には,相違点1~5が存在するから,同一の発明である とはいえず,新規性を欠いていない。 進歩性次のとおり,本件発明と乙6発明の相違点は,当業者において容易に想到で きたものであるとはいえず,進歩性を欠いていない。 a 相違点1⒜ 本件発明の相違点1に係る技術的意義は,本件明細書の段落【0030】に記載されているから,被告らの設計事項である旨の主張は失当である。 ⒝ 本件発明と乙6発明の相違点1は,乙8~10から認められる周知技術 又はそれぞれの文献記載の発明の適用により, 0030】に記載されているから,被告らの設計事項である旨の主張は失当である。 ⒝ 本件発明と乙6発明の相違点1は,乙8~10から認められる周知技術 又はそれぞれの文献記載の発明の適用により,当業者において容易に想到することができたとはいえない。 すなわち,乙8~10が開示する技術は,材料の両側に観察者がいるような用途に使うパネル,遮光体,広告装置であり,乙6発明の反射プレート構造とも本件発明の再帰反射シートとも近接しない技術である。したが って,乙6発明に乙8~10が開示する技術を組み合わせるのは容易でなく,これによって再帰反射シートの印刷層の独立印刷領域の面積を0.15㎟~30㎟とすることが容易であるともいえない。 また,乙8の1~3は,透明又は半透明な材料の一方の側と他方の側でデザインが異なるようなパネルに関する発明であり,白い色を設ける目的 は透視できないようにするというものであって,白いドットを設けて光を散乱させて透視が妨げられ,反対側からは透視が可能となっている。他方で,乙6発明では,白い複数のドットを印刷する目的は,日中でも表面が白く見えるようにするためであり,透視できないようにするという目的はない。そして,乙9も,透明基材の両面から観察することが前提となって いる技術であり,光の透過を遮ることを目的としている。他方で,乙6発明は,両面から観察することはなく,印刷層の下にプリズム構造が存在し,光の透過を遮るという目的はない。さらに,乙10も,窓ガラスの両面から観察されることが前提であり,斑点の大きさを直径1㎜等にしているのは,「巨視的な視野から錯覚を起こして所定の文字,図柄が再現できる範囲」 という理由からであり,層間密着強度については記載も示唆もない。他方 で,乙6 を直径1㎜等にしているのは,「巨視的な視野から錯覚を起こして所定の文字,図柄が再現できる範囲」 という理由からであり,層間密着強度については記載も示唆もない。他方 で,乙6発明は,両側から対象物を観察するような使い方はせず,プリズムを用いるものであり,乙10とは全く異なる。それゆえ,乙6発明に,乙8~10を適用するのは容易ではない。 ⒞ また,本件発明と乙6発明の相違点1は,乙8~15から認められる周知技術又はそれぞれの文献記載の発明の適用により,当業者において容易 に想到することができたともいえない。 すなわち,乙11は,乙6発明とは蓄光顔料含有層を設ける目的が異なり,乙12,13は,面光源や液晶バックライト等の発明であるから,乙6発明とは技術分野が異なり,乙14は,透明基材の両面から観察されることが前提の技術であるから,乙6発明とは何ら関係がなく,乙15は, 乙6発明と異なりビーズ型再帰反射シートを用いた交通標識に関する規格であり(甲43),これを乙6に適用することには阻害要因がある上,印刷層が形成されているか否かも不明であり,むしろこれに記載されているのは,黒色六角形を形成することのみである。それゆえ,乙6発明に,乙8~15を適用するのは容易ではない。 b 相違点2なお,本件発明と乙6発明の相違点2も,当業者において容易に想到することができたとはいえない。 すなわち,乙6発明が解決しようとする課題は,ナンバープレートの偽造防止であり,乙6発明の偽造防止が図られているプレートをシートに代える 動機付けはないからである。 c 相違点3また,本件発明と乙6発明の相違点3も,当業者において容易に想到することができたとはいえない。 すなわち, ートに代える 動機付けはないからである。 c 相違点3また,本件発明と乙6発明の相違点3も,当業者において容易に想到することができたとはいえない。 すなわち,乙6発明では,層16が印刷層であり,本体プレート12と層 16は異なる着色をしている以上,更にその間に印刷層を設ける動機付けは ないからである。 ⑼ 争点2-5(無効理由5-1(乙16発明1に基づく新規性欠如・進歩性欠如)の有無)ア被告らの主張次のとおり,本件発明は,乙16の図9に記載された発明(以下「乙16発明 1」という。)であり,仮に相違点があるとしても,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明は,新規性欠如・進歩性欠如の無効理由がある。 乙16発明1の構成a 乙16発明1の構成は,次のとおりである。 1a (本件発明の保持体層に対応する構成を有する)多数のプリズム64,64A,及び,プリズム64,64Aに設置された光透過性保護層95からなる再帰反射シートにおいて,1b プリズム64,64Aと光透過性保護層95との間にプリントパタ ーン20が設置されており,1c プリントパターン20は繰り返しのドットで形成され,1e プリントパターン20は白色度を高めるためのパターンであって,プリントパターン20が●(省略)●(TiO2)色素等の白色の点(ドット)によって構成される, 1f 再帰反射シート。 b なお,乙16の図1~7には,次の発明が開示されている。 1a (本件発明1の保持体層に対応する構成を有する)多数のプリズム64,64A,及び,プリズム64,64Aに設置されたフ 反射シート。 b なお,乙16の図1~7には,次の発明が開示されている。 1a (本件発明1の保持体層に対応する構成を有する)多数のプリズム64,64A,及び,プリズム64,64Aに設置されたフィルム 46Bからなる再帰反射シートにおいて,1b プリズム64,64Aとフィルム46Bとの間にプリントパターン20が設置されており,1c プリントパターン20は繰り返しのドットで形成され,1e プリントパターン20は白色度を高めるためのパターンであって, プリントパターン20が●(省略)●(TiO2)色素等の白色の点(ドット)によって構成される,1f 再帰反射シート。 本件発明と乙16発明1の対比本件発明と乙16発明1を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点(相 違点1)で一応相違する。 a 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており, 該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,印刷層は白色の無機顔料を含有する,再帰反射シートである点。 b 相違点 相違点1本件発明では,「該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対し,乙16発明1では,これが不明である点。 ⒝ 相違点2原告は,本件発明が,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り 返しパターンで設置されており,連続層を形成せず」との構成を有してい ⒝ 相違点2原告は,本件発明が,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り 返しパターンで設置されており,連続層を形成せず」との構成を有してい るのに対し,乙16発明1は,そのような構成を有していない点において,相違点が存在すると主張する。 しかし,乙16の図9は,図1~7に対し,光透過性保護層95,金属皮膜等の材料98,接着剤97,基板96を追加で設けた態様であるから,図1~7の変形例であり,図9において図1~7の態様を当然に採用でき る。これに対し,原告は,乙16の「フィルム全体を横切る一連の斜線」という記載を根拠に,これは本件発明の反対教示であると主張するが,乙16には,ラインとドットが並列で記載されているから,「フィルム全体にわたって設けられる斜線」を「フィルム全体に設けられたドット」とする態様は,乙16に実質的に記載されているといえる。 そして,ドットで印刷する以上,「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,」という態様となる(乙8~15,26)。また,乙16の段落【0015】と請求項28には,「パターン中のドット」を「繰り返しまたはランダム」にプリントすること及びパターンの一部は着色マーキングが「白色の点」であることが明確 に記載されているから,当然に図9のプリントパターン20中でもドットが繰り返し又はランダムにプリントされることになり,少なくともそのことが示唆されている。したがって,原告の主張する相違点2は存在しない。 ⒞ 相違点3原告は,本件発明が,「保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されて おり」との構成を有しているのに対し,乙16発明1は,そのような構成 る相違点2は存在しない。 ⒞ 相違点3原告は,本件発明が,「保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されて おり」との構成を有しているのに対し,乙16発明1は,そのような構成を有していない点において,相違点が存在する旨を主張する。 しかし,乙16記載のプリズムは,保持体層を含む概念であり,乙16発明1は,「保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており」との構成を有しており,原告が主張する相違点3は存在しない。 ⒟ 相違点4 原告は,本件発明が,「白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤」との構成を有しているのに対し,乙16発明1は,「蛍光材料」が当該構成に相当するか不明である点において,相違点が存在すると主張する。 しかし,本件発明1の「着色剤」には「蛍光染料」も含まれる。そして,本件発明の段落【0035】には,「蛍光表示用に特に有効」と記載されて おり,乙16の「白色度を高めるパターン」の利用を否定する記載はない。 また,「蛍光材料」にも白色は存在し,蛍光材料の使用は白色の使用を否定しない。したがって,原告が主張する相違点4は存在しない。 新規性欠如前記⑻ア(無効理由4)で指摘したとおり,本件発明の独立印刷領域の面積 が0.15㎟~30㎟であることに技術的意義はないから,相違点1は,実質的な相違点ではない。 したがって,本件発明は,乙16発明1と同一の発明であり,新規性を欠いている。 進歩性欠如 前記⑻ア(無効理由4)で指摘したとおり,本件発明の独立印刷領域の面積に技術的意義はないから,当該面積の数値範囲は,当業者が適宜なし得る設計事項である。さらに,「ドット」=「点」の大きさに関しては,乙8~15のような多数の文献が存在し,乙16 明の独立印刷領域の面積に技術的意義はないから,当該面積の数値範囲は,当業者が適宜なし得る設計事項である。さらに,「ドット」=「点」の大きさに関しては,乙8~15のような多数の文献が存在し,乙16では,白色の点(ドット)を用いることが開示されているから,この点(ドット)の大きさとして,乙8~15の範囲を採 用することは容易である。 したがって,本件発明は,乙16発明1と周知技術2又は乙8~15に基づき容易に発明をすることができるものであり,進歩性を欠いている。 イ原告の主張次のとおり,本件発明は,乙16発明1と同一であるとはいえず,当業者が容 易に発明をすることができたものであるともいえないから,新規性欠如・進歩性 欠如の無効理由はない。 乙16発明1の構成乙16発明1の正しい構成は,次のとおりである。 1a 多数のプリズム64,64A,及び,プリズム64,64Aに設置された光透過性保護層95からなる再帰反射シートにおいて, 1b プリズム64,64Aと光透過性保護層95との間にプリント模様20が設置されており,1c 一つのプリント模様20が形成され,1e プリント模様20は蛍光材料を使用している,1f 再帰反射シート。 本件発明と乙16発明1の対比本件発明と乙16発明1を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一応相違する。 a 一致点少なくとも多数の反射素子からなる反射素子層,および,反射素子層の上 層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,印刷層が設置されている,再帰反射シートである点。 b 相違点 相違点1 の上 層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,印刷層が設置されている,再帰反射シートである点。 b 相違点 相違点1 本件発明では,「該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対し,乙16発明1では,これが不明である点。 ⒝ 相違点2本件発明が,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターンで設置されており,連続層を形成せず」との構成を有しているのに対 し,乙16発明1は,そのような構成を有していない点。 すなわち,乙16の図9には,印刷層を「繰り返しのドット」とすることは記載されていないし,仮に印刷層が「繰り返しのドット」で形成されていたとしても,ドットが重なるように繰り返し形成されている可能性や,ドットとドットの間に印刷領域が存在する可能性もあるから,該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターンで設置されており,連 続層を形成せず」には相当しない。 ⒞ 相違点3本件発明が,「保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており」との構成を有しているのに対し,乙16発明1は,そのような構成を有していない点。 すなわち,乙16の図9の表面保護層95にはプリズム64が直接形成されており,保持体層は存在しない。 ⒟ 相違点4本件発明が,「白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤」との構成を有しているのに対し,乙16発明1は,「蛍光材料」が当該構成に相当する か不明である点。 新規性本件発明と乙16発明1には,相違点1~4が存在するから,同一の発明であるとはいえず,新規性を欠いていない。 な に相当する か不明である点。 新規性本件発明と乙16発明1には,相違点1~4が存在するから,同一の発明であるとはいえず,新規性を欠いていない。 なお,前記⑻イ(無効理由4)で指摘したとおり,相違点1は,実質的な相 違点でないということはできない。 進歩性無効理由4で指摘したとおり,被告らが認める相違点1について,乙8~10は,材料の一方の側と反対側に観察者がいるような用途のパネル等で,乙16の再帰反射性材料とも本件発明の再帰反射シートとも近接しない技術である。 したがって,乙16発明1と乙8~10を組み合わせることはできず,そのよ うな動機もない。また,乙11~15を,乙16の再帰反射性材料に適用することはできず,そのような動機もない。 さらに,本件発明によって,印刷層周辺の密着性・耐候性等の欠点を解決できるのは,予測し得ない効果である。 したがって,本件発明は,乙16発明1と周知技術2又は乙8~15に基づ き容易に想到することができるとはいえず,進歩性を欠いていない。 ⑽ 争点2-6(無効理由5-2(乙16発明2に基づく進歩性欠如)の有無)ア被告らの主張次のとおり,本件発明は,被告ら主張のように反射素子と保持体層とを別体と解釈した場合であっても,乙16の図12に記載された発明(以下,「乙16発明 2」といい,乙16発明1と併せて「乙16発明」と総称する。)に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明は,進歩性欠如の無効理由がある。 乙16発明2の構成乙16発明2の構成は,次のとおりである。 1a 多数のプリズム ら,本件発明は,進歩性欠如の無効理由がある。 乙16発明2の構成乙16発明2の構成は,次のとおりである。 1a 多数のプリズム及びタイコート,並びに,タイコートに設置された表面フィルムからなる再帰反射シートにおいて,1c パターンは繰り返しのドットで形成され,1e パターンは白色度を高めるためのパターンであって,パターンが●(省 略)●(TiO2)色素等の白色の点(ドット)によって構成される,1f 再帰反射シート。 本件発明1と乙16発明2の対比本件発明と乙16発明2を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一 応相違する。 a 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,該印刷層の印刷領域が独立したパターンで設置されており,連続層を形成 せず,印刷層は白色の無機顔料を含有する,再帰反射シートである点。 b 相違点⒜ 相違点1 本件発明は,「該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対し,乙16発明2では,これが不明である点。 ⒝ 相違点2本件発明は「反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており」とされているのに対し,乙16発明2は,タ イコートされた表面フィルム上にパターンが形成されている点。 進歩性欠如本件発明は,乙16発明2と乙16の図9及び11に基づき容易に発明をすることができるもの タ イコートされた表面フィルム上にパターンが形成されている点。 進歩性欠如本件発明は,乙16発明2と乙16の図9及び11に基づき容易に発明をすることができるものであり,進歩性を欠いている。 すなわち,前記⑻ア(無効理由4)で指摘したとおり,相違点1は,実質的 な相違点ではない。 また,乙16の図9には,光透過性保護層95とプリズム64,64Aとの間にプリントパターン20を設ける製造工程が開示され,また,乙16には,白いドットのパターンを前もって印刷した態様を利用できること,乙16の図11にはタイコートを施した後で,プリズムを形成することが開示されている。 したがって,乙16発明2の印刷パターンをタイコートされる前の表面に設け, その後タイコートを施すことは,当業者であれば容易に想到することができる。 イ原告の主張次のとおり,本件発明は,乙16発明2に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,進歩性欠如の無効理由はない。 乙16発明2の構成 乙16発明2の正しい構成は,次のとおりである。 1a 多数のプリズム及びタイコート,並びに,タイコートに設置された表面フィルムからなる再帰反射シートにおいて,1c パターンはラインで形成され,1e パターンは光透過性又は不透明な着色ラインによって構成される, 1f 再帰反射シート。 本件発明と乙16発明2の対比本件発明と乙16発明2を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一応相違する。 a 一致点 少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射 本件発明と乙16発明2を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一応相違する。 a 一致点 少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,該印刷層が設置されており,印刷層は着色剤を含有する,再帰反射シートである点。 b 相違点⒜ 相違点1本件発明は,「該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対し,乙16発明2では,これが不明である点。 ⒝ 相違点2 本件発明は「反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間 に印刷層が設置されており」とされているのに対し,乙16発明2は,タイコートされた表面フィルム上にパターンが形成されている点。 ⒞ 相違点3本件発明では,「印刷層の印刷領域が独立したパターンで設置されており,連続層を形成せず,」であるのに対し,乙16発明2では,パターンはライ ンで形成されている点。 ⒟ 相違点4本件発明では,印刷層は白色の無機顔料を含有するのに対し,乙16発明2では,着色剤を含有するにすぎない点。 進歩性 前記⑻イ(無効理由4)で指摘したとおり,被告らが認める相違点1は,実質的な相違点である。 また,前記⑻イ(無効理由4)で指摘したとおり,被告らが認める相違点2について,乙16の図9は,プリズム64,64Aが光透過性保護層95に直接形成されており,被告らが保持体層に相当すると主張するタイコートを使用 しない構成である。そして,乙16の段落【00 について,乙16の図9は,プリズム64,64Aが光透過性保護層95に直接形成されており,被告らが保持体層に相当すると主張するタイコートを使用 しない構成である。そして,乙16の段落【0062】には,タイコートを使用しない場合には,プリズム成形体をパターン材料及び表面保護層に接着するように設計すると記載されているから,乙16発明2に図9を適用したところで,単にタイコートを使用しないだけのことであり,印刷パターンを設けるということにはならない。 したがって,本件発明は,乙16発明2と乙16の図9及び11に基づき容易に発明をすることができるものであるとはいえず,進歩性を欠いていない。 ⑾ 争点2-7(無効理由6(乙17発明に基づく進歩性欠如)の有無)ア被告らの主張次のとおり,本件発明は,乙17に記載された発明(以下「乙17発明」とい う。)及び乙6発明,乙16発明1,周知技術,乙15に記載された発明(以下「乙 15発明」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性欠如の無効理由がある。 乙17発明の構成乙17発明の構成は,次のとおりである。 キューブコーナー素子68を有するシート64と,この上層に配置されたカバーシート72からなる再帰反射シートであって,カバーシート72とシート64との間にグラフィックパターン76が埋封されており,グラフィックパターンは不連続のパターンであり,水性インクが用いられる,再帰反射シート。 本件発明と乙17発明の対比 本件発明と乙17発明を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一応相違する。 a 一 ンクが用いられる,再帰反射シート。 本件発明と乙17発明の対比 本件発明と乙17発明を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一応相違する。 a 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて, 保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており,該印刷層の印刷領域が独立したパターンで設置されており,連続層を形成せず,印刷層は着色に用いられ,着色に当たり白色の無機顔料を含有する,再帰反射シートである点 b 相違点 相違点1本件発明は,印刷層の印刷領域が繰り返しのパターンで設置されているが,乙17発明は,グラフィックパターンが繰り返しのパターンであるか 不明である点⒝ 相違点2本件発明は,印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であるが,乙17発明は,グラフィックパターンの面積が不明である点 進歩性欠如 a 乙6発明,乙16発明,乙17発明は,いずれも再帰反射性の交通標識として同一技術分野の発明であり,無効理由4,5で指摘したとおり,乙6発明,乙16発明は,相違点1である「印刷層の印刷領域が繰り返しのパターンで設置されている」との構成を有する。したがって,乙17発明の白色の無機顔料のグラフィックパターン印刷層として,乙6発明又は乙16発明の 「印刷層の印刷領域が繰り返しのパターンで設置されている」との構成を想到することは容易である。 また,無効理由4,5で指摘したとおり,基材に印刷層として繰り返しのドットパターンを形成するのは,乙17発明と同一ないし近接した分野の ターンで設置されている」との構成を想到することは容易である。 また,無効理由4,5で指摘したとおり,基材に印刷層として繰り返しのドットパターンを形成するのは,乙17発明と同一ないし近接した分野の周知技術1であるから,乙17発明のグラフィックパターンの形状として,か かる周知技術を適用することは設計事項にすぎない。仮に,原告が主張する相違点1のように,本件発明の印刷層が「連続層を形成せず」との構成を有しているのに対し,乙17発明のグラフィックパターン76が連続層を形成するものであるという相違点が存在するとしても,当該相違点については,周知技術等から容易に想到することができる。 無効理由4,5で指摘したとおり,独立印刷領域の面積の数値範囲を0. 15㎟~30㎟とする技術的意義を裏付ける記載はないから,相違点2は実質的な相違点ではない。仮に相違点であるとしても,無効理由4,5で指摘したとおり,乙17発明のグラフィックパターンの形状として,周知技術1,2を適用することは単なる設計事項にすぎない。 したがって,本件発明は,乙17発明及び乙6発明又は乙16発明及び周 知技術に基づき容易に想到することができる。 b また,乙15には,交通標識の規格において「再帰反射シートに印刷層を設け,該印刷層の印刷領域が独立した六角形の格子として設置されており,連続層を形成せず,該六角形の面積が1.95㎟」と開示されており,「独立した六角形の格子」が繰り返しのパターンに相当するのは明らかである。そ して,乙17発明は,標識に関する発明であるから,上記標識に関する規格を採用するよう動機付けられる。その結果,相違点1,2に係る構成は,容易に想到することができる。 したがって,本件発明 そ して,乙17発明は,標識に関する発明であるから,上記標識に関する規格を採用するよう動機付けられる。その結果,相違点1,2に係る構成は,容易に想到することができる。 したがって,本件発明は,乙17発明及び乙15発明により容易に想到することができる。 イ原告の主張次のとおり,本件発明は,乙17発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,進歩性欠如の無効理由はない。 本件発明と乙17発明の対比本件発明と乙17発明を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一応 相違する。 a 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており, 印刷層は着色に用いられ,着色にあたり白色の無機顔料を含有する,再帰反射シートである点b 相違点⒜ 相違点1本件発明は,「印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパター ンで設置されており,連続層を形成せず」であるが,乙17発明は,印刷 領域が連続層である一方,独立した領域をなして繰り返しパターンで設置されているか不明である点⒝ 相違点2本件発明は,「該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対し,乙17発明では,これが不明である点 進歩性a 無効理由4,5で指摘したとおり,乙6発明も乙16発明も「印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターンで設置されており,連続層を形成せず」という構成を有さ 進歩性a 無効理由4,5で指摘したとおり,乙6発明も乙16発明も「印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターンで設置されており,連続層を形成せず」という構成を有さないから,乙6発明,乙16発明には相違点1は記載されておらず,仮に乙17発明に乙6発明,乙16発明を適用して も相違点1を容易に想到できない。結局,乙6発明,乙16発明は,連続した印刷層を設置した場合の密着性等の欠点を解決するという本件発明の技術思想を開示も示唆もしていない。また,無効理由4で指摘したとおり,被告らが主張する周知技術1は存在せず,それを乙17発明に適用する動機付けも存在しないから,乙17発明に周知技術1を適用できず,相違点1は容易 に想到できない。 b 無効理由4で指摘したとおり,相違点2に係る「独立印刷領域の面積が0. 15㎡~30㎡であり」との構成は周知技術ではなく,乙8~15の各発明と組み合わせることもできない。 c 乙15には,「印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターン で設置されており,連続層を形成せず」という構成が開示されておらず,相違点1は記載されていない。よって,仮に乙17発明に乙15発明を適用しても,相違点1に係る構成を想到できない。 ⑿ 争点2-8(無効理由7(乙18発明に基づく進歩性欠如)の有無)ア被告らの主張 本件発明は,乙18に記載された発明(以下「乙18発明」という。)に,乙1 5発明又は乙6に記載された発明(以下「乙6発明’」という。)(及び周知技術1又は周知技術2)を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性欠如の無効理由がある。 乙18発明の構成 」という。)(及び周知技術1又は周知技術2)を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性欠如の無効理由がある。 乙18発明の構成乙18発明の構成は,次のとおりである。 少なくとも多数の反射素子と保持体層⑵からなる反射素子層⑴,および,反射素子層⑴の上層に設置された表面保護層⑷からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層⑵と表面保護層⑷の間に印刷層⑸が設置されており, 上記反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子であることを特徴とする印刷された再帰反射シート。 本件発明と乙18発明の対比本件発明と乙18発明を対比すると,以下のaの点で一致し,bの点で一応相違する。 a 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されていることを特徴とする印刷された再帰反射シートである点 b 相違点 本件発明は,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する」との構成を有しているのに対し,乙18発明は,そのような構成を有するか不 明である点 進歩性欠如a 乙18発明は,道路標識等に用いる再帰反射シートであり,情報伝達又はシートの着色のた いるのに対し,乙18発明は,そのような構成を有するか不 明である点 進歩性欠如a 乙18発明は,道路標識等に用いる再帰反射シートであり,情報伝達又はシートの着色のために印刷層⑸を設けると記載されているから,当業者は,道路標識等による情報伝達やシートの着色のため,印刷層⑸に適宜の印刷を するよう動機付けられる。 そして,乙15には,ドイツの交通標識の表面色の規格(DIN 6171)が記載され,一般に,非自己発光性の標識には,赤,黄,緑,青,白,黒,灰色といった色が考えられるとして図表が開示されており,そこで図示された六角形の面積を算出すると,1.95㎟である。それゆえ,乙15に は,乙18発明と同一の道路標識(交通標識)の規格において,情報伝達や,シートの着色のため「再帰反射シートに印刷層を設け,該印刷層の印刷領域が独立した六角形の格子として設置されており,連続層を形成せず,該六角形の面積が1.95㎟である」とする発明(乙15発明)が開示されている。 そして,乙18に接した当業者は,道路標識等による情報伝達や,シート の着色のため,印刷層⑸として適宜の印刷をするよう動機付けられ,道路標識等の情報伝達やシートの着色のために,ドイツの標識に関する規格において,乙15発明が開示されているから,乙18発明に乙15発明を適用することを動機付けられる。また,道路標識等による情報伝達や,シートの着色のために,白い無機顔料又は有機顔料を用いることは周知である(乙6,1 5~17。以下「周知技術3」という。) そうすると,乙18発明に乙15発明を適用するための具体的手段として,周知技術3を用いることで,本件発明は容易想到ということができる。 b 無効理由4で指摘したとお 。) そうすると,乙18発明に乙15発明を適用するための具体的手段として,周知技術3を用いることで,本件発明は容易想到ということができる。 b 無効理由4で指摘したとおり,乙6には,ライセンスプレートによる情報伝達やシート着色のために「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層のドットの領域が独立した領域をなして繰り返しの パターンで設置されており,連続層を形成せず,該グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層は,白色の有機又は無機顔料の着色剤を含有する」との構成を採用することが開示されている(乙6発明’)。 したがって,当業者は,乙18発明のナンバープレート類等につき,情報伝達等のため印刷層を設けるよう動機付けられ,ナンバープレートによる情 報伝達等のための乙6発明’を採用するから,その結果,面積の数値範囲(0. 15㎟~30㎟)を除き,相違点は容易想到である。また,当該面積は,実質的な相違点でないし,乙18発明に乙6発明’を適用するに当たり,ドットの面積を適宜選択すれば,本件発明所定の面積となる。さらに,当業者が,乙18発明に乙6発明’を適用するための具体的手段として,ドット面積に つき周知技術1又は2を用いることができる。 したがって,いずれにしても,当業者が,乙18発明に乙6発明’を適用することで,本件発明は容易に想到することができる。 なお,乙23,24から再帰反射シートの分野に限定しても,色相調整のために白色の独立した規則的に繰り返すドットを印刷することは慣用技術で ある。したがって,乙18の「印刷層」との記載や,色相調整に動機付けられ,白色の独立した規則的に繰り返すドットを印刷すること,あるいは,乙23,24に開示された印刷さ 刷することは慣用技術で ある。したがって,乙18の「印刷層」との記載や,色相調整に動機付けられ,白色の独立した規則的に繰り返すドットを印刷すること,あるいは,乙23,24に開示された印刷されたドットを採用するのは容易である。 イ原告の主張次のとおり,本件発明には,進歩性欠如の無効理由はない。 乙15発明は,そもそも「印刷層」が形成されているか,「印刷層の印刷領域 が独立した」ものかが不明であるが,仮に印刷層を形成しているとしても,乙15には,六角形の間の白色部分が印刷されていない領域であるとは記載されておらず,白色部分も印刷している可能性がある。そうであれば,黒色六角形の印刷層と白色格子印刷層が連続して形成されているから,「印刷層の印刷領域が独立」しているとも「連続層を形成せず」ともいえない。 また,乙15には,黒色の六角形を黒以外にすることは記載も示唆もない。 通常の着色では,シートの全面を覆うように単色で印刷層を設けるか,または,表面保護層部分に単色で着色しており,灰色Aのみ,通常の単色の着色でなく,黒色六角形と白色格子を用いているところ,その意味は,ドイツの規格では灰色Aのみが特殊な着色(黒と白で遠くから灰色に見える)を用いているという ことである。また,乙18,乙15は,独立印刷領域を備えることで耐候性等の課題を解決するという技術的思想を記載も示唆もしていない。さらに,乙15には,図1の条件が灰色A以外の色にも適用されることについて記載も示唆もない。 乙6には,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターンで 設置されており,連続層を形成せず,」との構成を有することにより,連続した印刷層における耐候性が劣る等の課題を解 乙6には,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターンで 設置されており,連続層を形成せず,」との構成を有することにより,連続した印刷層における耐候性が劣る等の課題を解決するという技術的思想が開示されていない。また,乙6は,「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,」との構成を開示していない。 ⒀ 争点3-1(特許法102条2項の適用を前提とする原告の損害額(主位的主張) ア原告の主張 原告は,現在まで被告製品と競合する再帰反射シートの製造販売等を行っており,その中には本件発明の実施品も含まれるから(甲50~64),被告らによる本件特許権の侵害行為がなかったならば利益が得られていたであろうとの事情が存在する。 そして,原告が,本件特許の登録日である平成22年3月5日から現在まで の被告らによる本件特許の実施行為(被告らの共同不法行為)によって被った損害額は,特許法102条2項の適用を前提とすれば,次のとおりである。 なお,被告らは,当初は被告製品⑴の売上高が●(省略)●であると主張していたにもかかわらず,これを●(省略)●に訂正しているところ,かかる主要事実の自白の撤回は認められない。 a 原告の損害推定額⒜ 特許法102条2項に基づく損害i 被告製品⑴ 105億7674万6000円① 売上高 111億円② 限界利益率 95.286%(=(1万5000円-707.1円) ÷1万5000円×100)1m2当たりの販売単価 1万5000円1m2当たりの費用約707.1円仕入価格及び原材料費(接 ÷1万5000円×100)1m2当たりの販売単価 1万5000円1m2当たりの費用約707.1円仕入価格及び原材料費(接着剤,添加剤及び剥離ライナー) 約●(省略)● 梱包費及び運送費約●(省略)●③ 限界利益額 105億7674万6000円なお,被告らは,被告製品⑴の限界利益を算定するに当たり,「直接製造部門労務費」,「直接製造部門経費」,「製造間接費」,「製造関連費用」,「技術開発費」,「販売,マーケティング,受注処理費,管理部門 費」,「ダイ・ツールコスト」を変動費して控除すべきと主張するが,これは変動費でないことは明らかである。また,被告らは,協力会社にシート切断や梱包作業を依頼した際の「外注加工費」を変動費として控除すべきと主張するが,そもそもそのような作業の依頼があったかが不明である上,協力会社が被告3Mジャパンプロダクツである可 能性もあり,その場合には当該費用は控除されるべきではない。さら に,被告らは,「ロイヤルティ」を変動費として控除すべきと主張するが,米国3Mから購入して単に転売するだけの製品(HIP393x)についてもロイヤルティを支払うというのは不自然である。 ⅱ 被告製品⑵及び⑶ 332億7387万円① 売上高 349億2000万円 なお,上記期間における被告製品⑵及び⑶の全体の売上高は400億円であり,そのうち直接侵害が成立する被告製品⑵の割合は64. 4%,間接侵害が成立する被告製品⑶の割合は22.9%であるから,侵害品となる被告製品⑵及び⑶の売上高は,349億2000万 高は400億円であり,そのうち直接侵害が成立する被告製品⑵の割合は64. 4%,間接侵害が成立する被告製品⑶の割合は22.9%であるから,侵害品となる被告製品⑵及び⑶の売上高は,349億2000万円(=400億円×(64.4%+22.9%))である。 ② 限界利益率 95.286%③ 推定損害額(限界利益額) 332億7387万円⒝ 弁護士費用及び弁理士費用 1億円 推定覆滅事由本件においては,被告らの主張する推定覆滅事由①~④は,いずれも失当で ある。 すなわち,①本件発明は,被告らの主張する印刷領域の面積の数値限定のみならず,色相の改善された再帰反射シートを提供するなどの種々の特徴を有しているのであり,被告らの主張は前提を誤っている。また,②被告製品⑴は,印刷層を設けることで色相を改善する一方で,独立した印刷領域を設けること で,端面封止が不要で端のハガレやフクレの生じない,耐候性に優れた再帰反射シートとなるものであり,被告らもこのことをカタログやウェブサイトでアピールしているのであるから(甲3,4の2,甲9,10,23,67~70),本件発明は被告製品⑴の販売に大きく寄与している。そして,③被告らの3Mブランド等の被告製品⑴の消費者に対する販売への貢献を裏付ける的確な証拠 は提出されていない。 さらに,④原告は,平成3年に再帰反射シートの事業を開始し(乙55),地道な営業努力を重ねて,被告らの主張するように,平成22年当時,原告の売上シェアが10%未満になっていたというのであれば,被告らが,被告製品⑴を製造販売していなければ,原告の売上シェアが一気に拡大していたことも考えられる。なお,被告らは,仮に被告製品⑴が存在しな の売上シェアが10%未満になっていたというのであれば,被告らが,被告製品⑴を製造販売していなければ,原告の売上シェアが一気に拡大していたことも考えられる。なお,被告らは,仮に被告製品⑴が存在しなければ,その需要の大 部分が代替品(Diamondグレード及びEngineeringグレードの再帰反射シート)に向かう旨を主張するが,前者の価格は被告製品⑴の2倍以上であり,後者は被告製品⑴よりも性能が劣るものであるから,被告製品⑴の代替品になり得ない。 イ被告らの主張 原告は,被告らによる本件特許権の侵害行為がなかったならば利益が得られていたであろうとの事情が存在しない。すなわち,原告が製造販売等する再帰反射シート(以下「原告製品」という。)は,本件発明の構成である印刷層が設けられておらず,印刷層を設けた耐候性・耐水性に優れた再帰反射シートが得られるとの本件発明の効果を実現するものとはいえないこと等から,被告製品 ⑴の販売によって影響を受ける競合する競合品とはいえない。 これを措くとしても,原告らの損害額は,次のとおり,せいぜい1億2232万0143円である(乙39,58,69)。 なお,原告は,被告製品⑴の売上高の自白の撤回は許されないと主張するが,被告らは,●(省略)●を超えない旨を主張しただけであり,同額について自 白が成立する余地はないし,仮に被告らの主張と計算鑑定の結果等と被告らの従前の主張に齟齬があれば,それは半真実かつ錯誤によるものであることが明らかであり,撤回が許される。 a 原告の推定損害額⒜ 特許法102条2項に基づく損害 ⅰ 被告製品⑴ 12億2320万1430円 ① 売上高 ●(省略)● 許される。 a 原告の推定損害額⒜ 特許法102条2項に基づく損害 ⅰ 被告製品⑴ 12億2320万1430円 ① 売上高 ●(省略)●② 限界利益率 ●(省略)●③ 推定損害額(限界利益額)なお,被告製品⑴の限界利益を算定するに当たっては,原告が認める仕入価格及び原材料費(接着剤,添加剤及び剥離ライナー)並びに 梱包費及び運送費のほか,「直接製造部門労務費」,「直接製造部門経費」,「製造間接費」,「ロイヤルティ」,「商品配送費」,「製造関連費用」,「技術開発費」,「販売,マーケティング,受注処理費,管理部門費」,「ダイ・ツールコスト」を変動費として控除すべきである。 ⅱ 被告製品⑵及び⑶ 原告の主張は,否認する。 そもそも,被告らによる被告製品⑵及び⑶の製造販売等の行為は,本件特許権を侵害しない。 ⒝ 弁護士費用及び弁理士費用否認ないし争う。 推定覆滅事由次のとおり,本件においては,特許法102条の損害の推定を覆す事由が存在し,これらを考慮すると,原告の上記a⒜の推定損害額については,全部覆滅されるべきである。 すなわち,①本件発明において従来発明と相違する特徴とされる印刷層の面 積の限定は,顧客吸引には全く寄与しておらず,被告製品⑴(旧シート)と被告製品⑵及び⑶(新シート)の耐候性にも実質的な差異はないのであり(乙45~49),被告製品⑴のカタログ(甲3~11)でも,印刷層の面積の大小はセールスポイントとされていないし,原告も本件発明の実施品を日本国内で販売していない。それゆえ,②本件発明は,被告製品⑴の 5~49),被告製品⑴のカタログ(甲3~11)でも,印刷層の面積の大小はセールスポイントとされていないし,原告も本件発明の実施品を日本国内で販売していない。それゆえ,②本件発明は,被告製品⑴の販売に寄与していると はいえず,むしろ,③3Mブランドに裏付けられた被告らの信用,実績及び知 名度等こそが,被告製品⑴の販売に極めて大きな貢献をしているというべきであり(乙51~54),現に被告製品⑴から被告製品⑵及び⑶に切り替えた前後でも●(省略)●(乙50)。 また,④主要国道および高速道路等における道路標識に用いられる被告製品を含む長尺ロール製品については,再帰反射シートのパイオニア的存在である 被告らの売上シェアが極めて大きく,原告は被告製品⑴の販売数量分の実施能力を有していないのであり,実際に,被告らの販売する被告製品並びにその他の製品(Diamondグレード及びEngineeringグレードの再帰反射シート)の売上比がそれぞれ●(省略)●であり,原告製品の売上比が10%であるから,仮に被告製品⑴が販売できなくなったとすれば,そのうちの 約●(省略)●(=10/(10+●(省略)●))のみが原告製品に向かうことになる。 さらに,⑤仮に被告製品⑴の需要が全て原告製品に向かったとしても,原告の逸失利益は,被告製品⑴の販売数量に原告製品の限界利益率を乗じた額にとどまるところ,原告製品の販売単価は被告製品⑴の●(省略)●程度の価格帯 であり,原価等の控除すべき費用も被告製品⑴と同じく●(省略)●程度であるはずであり,原告製品の限界利益率は被告製品のそれの●(省略)●程度にすぎないことが推認されるから,特許法102条2項によって推定される損害額は,原告の逸失利益を大幅に超えることとなり,少なくとも90% であり,原告製品の限界利益率は被告製品のそれの●(省略)●程度にすぎないことが推認されるから,特許法102条2項によって推定される損害額は,原告の逸失利益を大幅に超えることとなり,少なくとも90%の覆滅が認められるべきである。 ⒁ 争点3-2(特許法102条3項の適用を前提とする原告の損害額(予備的主張))ア原告の主張原告が,本件特許の登録日である平成22年3月5日から現在までの被告らによる本件特許の実施行為(被告らの共同不法行為)によって被った損害額は,特許法102条3項の適用を前提とすれば,次のとおりである。 特許法102条3項に基づく損害 a 被告製品⑴ 33億3000万円ⅰ 売上高 111億円ⅱ 本件発明の実施料率 30%米国3Mが,過去に第三者に提起した特許権侵害訴訟において,再帰反射シートに関する特許の実施料率は9%であると主張していたこと(甲7 1),米国3Mらと第三者との間の訴訟において,ロイヤルティ料率20%での合意が成立していること(甲72,乙66),株式会社帝国データバンク編「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書 ~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」(平成22年3月)において,再帰反射シート(樹脂シート)が該 当する「化学」の最大値が32.5%であること(甲73,乙67),被告3Mジャパンらが原告に提起した特許権侵害訴訟において,実施料率を10%と主張していること等から,本件発明の相当実施料率は30%とするのが相当である。 ⅲ 推定損害額(実施に対し受けるべき料率) 33億3000万円 b 被告製品⑵及 0%と主張していること等から,本件発明の相当実施料率は30%とするのが相当である。 ⅲ 推定損害額(実施に対し受けるべき料率) 33億3000万円 b 被告製品⑵及び⑶ 104億7600万円ⅰ 売上高 349億2000万円ⅱ 本件発明の実施料率 30%ⅲ 推定損害額(実施に対し受けるべき料率) 104億7600万円弁護士費用及び弁理士費用 1億円 イ被告らの主張原告の損害額は,次のとおり,せいぜい1502万4963円である。 特許法102条3項に基づく損害a 被告製品⑴ⅰ 売上額 ●(省略)● ⅱ 本件発明の実施料率 ●(省略)● 原告は,被告らを含む3Mグループに対し,ライセンス料率5%を提案していたこと(乙41),被告らは,本件発明に技術的価値がなく,容易に設計変更可能であったから,実際にライセンス契約が成立することはなかったことから,仮に実施料率を定めるとしてもせいぜい●(省略)●である。 ⅲ 推定損害額 1502万4963円b 被告製品⑵及び⑶原告の主張は,否認する。 前記⒀で指摘したとおり,そもそも,被告らによる被告製品⑵及び⑶の製造販売等の行為は,本件特許権を侵害しない。 弁護士費用及び弁理士費用否認ないし争う。 ⒂ 争点3-3(消滅時効の成否)ア被告らの主張本件では,①原告と被告らが再帰反射シートを製造販売等する同業者であった こと,②被告製品⑴は,ドイツ侵害品と同様に,米国3Mが米国で製造した原反ロールを用 ア被告らの主張本件では,①原告と被告らが再帰反射シートを製造販売等する同業者であった こと,②被告製品⑴は,ドイツ侵害品と同様に,米国3Mが米国で製造した原反ロールを用いて製造されたものであり,これらの外観,構成及び製造番号(「3930」)が同一で,商品名も実質的に同一であったこと,③被告製品⑴は,市場で入手可能であり,現に原告は,平成23年10月26日までに被告製品⑴のうち品番2930シリーズと品番3930シリーズを入手し,サンプルを保存して公 正証書まで作成したこと(甲15,16),④原告は,これに先立って品番2930シリーズのカタログ(甲3)を入手し,これにより品番3930シリーズと品番2930シリーズが,単に接着剤部分等において若干の相違があるだけで,再帰反射シート部分の外観及び構成は同一であることを認識していたことが推認されること(甲12,乙59,60),⑤原告は,平成24年1月19日,被告らに 対し,本件特許を掲載し,被告製品のうち「3930シリーズ」がこれを侵害す る旨の警告をした上で,ライセンスオファーを出していたこと(乙41),⑥同月24日,ドイツ侵害品が本件欧州特許に係る特許権を侵害する旨の第一審判決が言い渡されたこと,⑦原告は,遅くとも平成26年9月1日までに,被告製品⑴のうち品番PX8470シリーズのカタログ(甲8)を入手し,これにより品番3930シリーズと品番PX8470シリーズが,単に接着剤部分等において若 干の相違があるだけで,再帰反射シート部分の外観及び構成は同一であることを認識していたことが推認されること(甲12,乙59,60)等からすると,原告は,遅くとも平成24年5月9日時点(品番PX8470シリーズを別異に解したとしても平成26年9月1日 成は同一であることを認識していたことが推認されること(甲12,乙59,60)等からすると,原告は,遅くとも平成24年5月9日時点(品番PX8470シリーズを別異に解したとしても平成26年9月1日時点)までには,被告製品⑴が本件発明の技術的範囲に属するという客観的事実を認識したといえ,この時点をもって本件特許 権侵害に係る「損害及び加害者」を知ったというべきである。 したがって,仮に原告が被告らに対して共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有していたとしても,そのうち本件訴訟提起の3年前の日の前日である平成27年1月15日までの期間分は,時効により消滅したというべきであるから,被告らは,上記消滅時効を援用する。 イ原告の主張消滅時効の起算点は,被害者等が「損害及び加害者を知った時」,すなわち加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに,その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当であり,また,違法行為による損害の発生及び加害者を現実に了知したことを要すると解される。本件のような物の製造販 売による特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の事案では,被害者である特許権者が,加害者による当該物の製造販売の事実及びそれによる損害発生の事実を認識したことに加え,当該物が当該特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することを認識したことも必要である。 本件では,被告製品⑴のうちドイツ侵害品に相当するものは,品番3930シ リーズだけであるところ,両者の内部の構成が同一か否かは,被告製品⑴を分析 しないことには判明し得ない。また,原告は,3Mグループとのグローバルな解決を図り多くのライセンス収入を得るために,全世界で販売する3M製品を対象として,本件特許を含め 製品⑴を分析 しないことには判明し得ない。また,原告は,3Mグループとのグローバルな解決を図り多くのライセンス収入を得るために,全世界で販売する3M製品を対象として,本件特許を含めたライセンスオファーの電子メール(乙41)を送信したにすぎず,これには被告製品(1)が本件特許権を侵害することは明示されていない。なお,被告らは,被告製品について,製品番号を変えることなく印刷層の構 成を変えているのであるから,製品番号,生産国,生産者が同一であるからといって構成が同一であると認識することはできない。 さらに,被告製品⑴のうち品番2930シリーズ及びPX8470シリーズは,ドイツ侵害品と同一ではない上,品番3930シリーズとは製品番号が異なり,品番3930シリーズは「madeinGermany」と表示されていたのに対し,293 0シリーズは「madeinUSA」と表示され,品番PX8470シリーズはそもそも生産国の表示もなかったのであり,被告製品のカタログにも,これらの製品の再帰反射シート部分の構成が同一である旨の記載もない。 原告は,平成29年頃,被告製品⑴の構造の分析を終え,ドイツ侵害品の構成と同一であるという客観的事実を認識した(甲17)。 したがって,原告が平成29年頃に本件の損害及び加害者を知り,平成30年1月に本件訴訟を提起したから,本件損害賠償請求権について消滅時効は完成していない。 ⒃ 争点4(原告の不当利得返還請求の可否及びその損失額(予備的請求))ア原告の主張 仮に被告らの前記⒂の消滅時効の主張が認められた場合,原告は,被告らに対し,本件特許の登録日である平成22年3月5日から本件訴訟提起の3年前の日である平成27年1月16日までの期間における被 仮に被告らの前記⒂の消滅時効の主張が認められた場合,原告は,被告らに対し,本件特許の登録日である平成22年3月5日から本件訴訟提起の3年前の日である平成27年1月16日までの期間における被告らによる本件特許の実施について,不当利得返還請求をする。 原告は,被告らによる上記期間における本件特許の実施によって,実施料相当 額の損失を被り,次のとおり,被告らは,これに相当する不当利得を得ている。 被告製品⑴ 被告らにつき各15億円a 売上高 50億円b 本件発明の実施料率 30%c 原告の損失(実施料相当額) 30億円 被告製品⑵及び⑶ 被告らにつき各45億円 a 売上高 300億円b 本件発明の実施料率 30%c 原告の損失(実施料相当額) 90億円イ被告らの主張 被告製品⑴ 被告3Mジャパンプロダクツは,被告3Mジャパンのために原反ロールを加工しているにすぎず,被告製品⑴を市場で販売していないから,原告が被ったとされる損失との間に因果関係がない。 仮に被告3Mジャパンについて被告製品⑴の販売による不当利得があったとしても,その額はせいぜい前記⒁の1502万4693円にとどまる。 被告製品⑵及び⑶原告の主張は,否認する。 前記⒀で指摘したとおり,そもそも,被告らによる被告製品⑵及び⑶の製造販売等の行為は,本件特許権を侵害しない。 第3 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載本件明細書には,本件特許請求の範囲として,前記前提事実⑵イの記載があり,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲2)。 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載本件明細書には,本件特許請求の範囲として,前記前提事実⑵イの記載があり,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲2)。 ⑴ 技術分野【0001】本発明は新規な構造の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シート… より詳しくは,該三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートの一部に色調改善用 の印刷層を設けたことを特徴とする三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートに関する。 【0002】詳しくは,本発明は,道路標識,工事標識等の標識類,自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート類…等において有用な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(以下単に,三角錐型反射素子ともいう)によって構成されるキュ ーブコーナー型再帰反射シートに関する。 ⑵ 背景技術【0003】従来より,入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートはよく知られており,その再帰反射性を利用した該シートは上記のごとき利用分野で広く利用されている。中でも三角錐型反射素子などのキューブコーナー型再帰反射素 子の再帰反射原理を利用したキューブコーナー型再帰反射シートや上記反射素子の反射側面に蒸着層が設置されている三角錐型キューブコーナー再帰反射シート(以下,蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートという)は,従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べ光の再帰反射効率が格段に優れており,その優れた再帰反射性能により年々用途が拡大しつつある。 【0004】しかしながら,蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは,その再帰反射素子の性質から金属の色の影響を受けて外観が暗くなってしまうという欠点を有している。 【0008】これら,三角錐型 】しかしながら,蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは,その再帰反射素子の性質から金属の色の影響を受けて外観が暗くなってしまうという欠点を有している。 【0008】これら,三角錐型キューブコーナー再帰反射シート…の色相を改善するために該再帰反射シートの一部に連続した印刷層を設ける試みもされている。 【0012】しかしながら,印刷層は,反射素子とも表面保護層とも密着性がやや劣り,また,その層自体の耐候性が劣り耐候性試験においてフクレが生じたり,また,吸水しやすいという欠点を有しており,三角錐型キューブコーナー再帰反射シート…に連続した印刷層を設置した場合,該印刷層の周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性が劣るという欠点を有していた。 ⑶ 発明が解決しようとする課題 【0014】本発明は,これら従来技術の欠点に鑑み,非常に簡単,かつ安価な方法により,色相の改善された再帰反射シートを提供するものである。 【0015】本発明者等は,三角錐型キューブコーナー再帰反射シート…の反射素子層または表面保護層に印刷層を設置することで,耐候性,耐水性に優れ,色相の改善された,再帰反射シートが得られることを見出し…た。 ⑷ 課題を解決するための手段【0016】…本発明によれば,少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間,または表面保護層上に印刷層が設置されており,該印刷層の印刷領域が独立した領域をな して繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,該印刷層は,白色の有機 印刷層が設置されており,該印刷層の印刷領域が独立した領域をな して繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,及び蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有することを特徴とする印刷された再帰反射シートが提供される。 ⑸ 発明を実施するための最良の形態 【0018】本発明に用いられる再帰反射シートは,少なくとも多数の反射素子,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射シート…が好ましい。該再帰反射シートであれば,再帰反射性能が特に優れ,印刷層を設置したものも十分な再帰反射性能が得られるのである。 【0019】本発明に用いられる反射素子と保持体層からなる反射素子層は,三角 錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの反射素子層として公知のものを利用することができる。 【0020】本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの一例を断面図を参照しながら説明する。 【0021】⑷は本発明の三角錐型反射素子が最密充填状に配置された反射素子層 であり,⑶は該反射素子を保持する保持体層であり,⑾は光の入射方向である。反 射素子層⑷および保持体層⑶は一体⑸であるのが普通であるが,別々の層を積層しても良い。本発明における再帰反射シートの使用目的,使用環境に応じて表面保護層⑴,色相を調節する着色のための印刷層⑵…を設けることができる。 【0022】印刷層⑵は,通常,表面保護層⑴と保持体層⑶の間,あるいは,表面保護層⑴の上や反射素子層⑷の反射面上,または表面保護層上に設置することがで のための印刷層⑵…を設けることができる。 【0022】印刷層⑵は,通常,表面保護層⑴と保持体層⑶の間,あるいは,表面保護層⑴の上や反射素子層⑷の反射面上,または表面保護層上に設置することがで き,表面保護層⑴が2層以上の場合には,表面保護層間に設置することもできる。 【0029】本発明の独立した印刷層⑵の印刷領域は,独立印刷領域の面積が0. 15㎟~30㎟であり,好ましくは0.2㎟~25㎟であり,さらに好ましくは0. 4㎟~15㎟である。 【0030】該独立印刷領域の面積が0.15㎟以上であれば,成形性に優れ,且 つ色相の調整が容易であるので好ましく,30㎟以下であれば,印刷周囲における印刷層⑵を挟む2層の層間密着強度を低下させることがないので好ましい。 【0036】本発明に用いられる着色剤は,特に限定されるものではないが,色相を明るくすることができ,且つ,隠蔽性が得られるものが良く,シートの色相に合わせた明色系の色が好ましく,例えば,白色の有機顔料や白色や黄色の無機顔料, 並びに蛍光染料や蛍光増白剤を挙げることができ,中でも,隠蔽性がより優れる白色や黄色の無機顔料が好ましい。 【0038】本発明に用いられる上記の無機顔料としては,例えば,白色として●(省略)●…を挙げることができ…る。 ⑹ 実施例 【0050】以下,実施例により,本発明の詳細を更に具体的に説明するが,本発明は実施例にのみに限定されるものではないことはいうまでもない。 【0051】実施例をはじめ本明細書及び特許請求の範囲に記載の数値は以下で述べる方法で測定されたものである。 【0055】以上の結果は,まとめて表1に示した。 【0079】 【表1】 ⑺ 特許請求の範囲に記載の数値は以下で述べる方法で測定されたものである。 以上の結果は,まとめて表1に示した。 表1 図面の簡単な説明 図1 本発明の表面保護層に印刷した,印刷された三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートの一例の断面図である。 実施例1 図2 本発明の表面保護層に印刷した,印刷された蒸着型三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートの一例の断面図である。 実施例2 図3 本発明の反射素子層に印刷した,印刷された蒸着型三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートの一例の断面図である。 実施例3 図4 本発明に用いられる印刷層の印刷模様の一例の平面図である。 実施例 図5 本発明に用いられる印刷層の印刷模様の一例の平面図である。 実施例 図6 従来よりある印刷層の印刷模様の一例の平面図である。 比較例 符号の説明 1・・・・・表面保護層 2・・・・・印刷層 3・・・・・保持体層 4・・・・・反射素子層 5・・・・・保持体層+反射素子層 6・・・・・空気層 7・・・・・結合材層 8・・・・・支持体層 9・・・・・粘着剤層 10・・・・剥離材層 11・・・・光の入射方向 12・・・・鏡面反射層 以上によれば,本件発明の技術的特徴は, 8・・・・・支持体層9・・・・・粘着剤層10・・・・剥離材層11・・・・光の入射方向 12・・・・鏡面反射層⑼ 以上によれば,本件発明の技術的特徴は,次のとおりであると認められる。 すなわち,本件発明は,道路標識,工事標識等の標識類,自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート類等において有用な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子によって構成されるキューブコーナー型再帰反射シートについて,新規な構造, 特にその一部に色調改善用の印刷層を設けたことを特徴とするものに関するものである。 従来から,入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートは,上記利用分野で広く利用されており,中でも三角錐型反射素子などのキューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用したキューブコーナー型再帰反射シートは,従来の マイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べて,光の再帰反射効率が格段に優れており,年々用途が拡大しつつあった。 他方で,三角錐型キューブコーナー再帰反射シートのうち,反射素子の反射側面に蒸着層が設置されている「蒸着型」三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは,その再帰反射素子の性質から,金属の色の影響を受けて,外観が暗くなってしまう という欠点を有している。そこで,三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの色 相を改善するために,その一部に連続した印刷層を設ける試みもされてきたが,印刷層は,反射素子とも表面保護層とも密着性がやや劣り,また,その層自体の耐候性が劣るため,耐候性試験においてフクレが生じたり,吸水したりしやすいという欠点を有しており,三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに連続した印刷層を設置した場合,印刷層の周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性 ため,耐候性試験においてフクレが生じたり,吸水したりしやすいという欠点を有しており,三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに連続した印刷層を設置した場合,印刷層の周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性が劣るという欠点を 有していた。 そこで,本件発明は,三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの色相の改善という課題解決のために,反射素子層又は表面保護層に,色相を明るくしながら隠蔽性も得られる白色の無機顔料(●(省略)●)等の着色剤を含有する印刷層を設け,さらに,当該印刷層とこれを挟む2層との密着性及び印刷層自体の耐候性が劣るた めに生じるフクレや吸水の改善という課題解決のために,印刷層の印刷領域を独立させて連続層を形成させず,かつ,印刷領域の面積を0.15㎟以上とすることで色相の改善等を容易にし,30㎟以下とすることで層間密着強度を高めようとしたものであり,この点に技術的特徴があると認められる。 以上を前提に,以下検討する。 2 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について⑴ 争点1-1(被告製品が保持体層を有するか-構成要件1A,1B,2B充足性)についてア前記前提事実によれば,本件発明の構成要件1A,1Bは,「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置され た表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており,」である。これに対応する被告製品の構成1a,1bは,「再帰性反射効果を有する複数のキューブコーナー,及び,当該キューブコーナーの上層に設けられた表面層からなる再帰反射シートであり,キューブコーナーは単一層の樹脂シートであって,キューブコーナーと 表面層の間に印刷層 複数のキューブコーナー,及び,当該キューブコーナーの上層に設けられた表面層からなる再帰反射シートであり,キューブコーナーは単一層の樹脂シートであって,キューブコーナーと 表面層の間に印刷層が設けられているが,当該印刷層はキューブコーナーの反射 側面に設けられておらず,」である。 これによれば,被告製品のキューブコーナーと表面層の間に「印刷層」が設けられ,表面層は「表面保護層」に当たるから,キューブコーナーが「多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」に当たるか,特にキューブコーナーが表面層側に「保持体層」を備えているといえるかが問題となる。 イ前記1のとおり,本件特許請求の範囲には,「多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」と記載されているところ,本件明細書の段落【0019】には,「本発明に用いられる反射素子と保持体層からなる反射素子層」と記載され,段落【0021】には,実施例1~3(【図1】~【図3】)の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートの一例の断面図の「⑷は本発明の三角錐型反射素子が最 密充填状に配置された反射素子層であり,⑶は該反射素子を保持する保持体層であり,…反射素子層⑷および保持体層⑶は一体であるのが普通である」と記載され,上記断面図にもこれらが一体となっている例が記載されている。このような本件明細書の記載を併せて読めば,本件特許請求の範囲の「多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」との文言が,「反射素子」と「保持体層」が一体とな っている「反射素子層」を含むものであり,本件明細書の段落【0021】や上記断面図等の「反射素子層⑷」が「反射素子」を意味し,⑸が当該「反射素子」と「保持体層⑶」が一体となった「反射素子層」を意味するものと理解できるというべきである り,本件明細書の段落【0021】や上記断面図等の「反射素子層⑷」が「反射素子」を意味し,⑸が当該「反射素子」と「保持体層⑶」が一体となった「反射素子層」を意味するものと理解できるというべきである。 他方で,証拠(甲17,18)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品のキュー ブコーナーは,単一層の樹脂シートの構成であるところ,別紙被告製品の構成の下図のとおり,多数の反射素子と反射素子を保持する部分から構成されていること,すなわち,同図の赤破線より下側の三角錐部分が,反射機能(再帰反射性)を有する反射素子であり,同赤破線より上側の部分が,個々の反射素子と一体となって反射素子を保持する保持体層であることが認められる。 以上によれば,被告製品のキューブコーナーは,表面層側に「保持体層」を備 えているというべきである。 ウこれに対し,被告らは,本件特許請求の範囲には,「多数の反射素子」と「保持体層」が別個の要素として特定され,両者が一体との記載はないから,多数の反射素子と保持体層は別個独立の構成であると理解すべきであると主張する。しかし,上記イで説示したとおり,本件特許請求の範囲の「多数の反射素子と保持体 層からなる反射素子層」との文言が,「反射素子」と「保持体層」が一体となっている「反射素子層」を含むことは明らかである。 また,被告らは,本件明細書の記載を併せて読めば,実施例1~3(【図1】~【図3】)の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートの一例の断面図の「反射素子層⑷」が,多数の反射素子と保持体層を備えており,そのような「反射素子 層⑷」と「保持体層⑶」が一体と記載されているにすぎず,「反射素子層⑷」自体について,反射素子と保持体層が一体であるとは理解できず,「反射素子層⑷」が「反射素子」 おり,そのような「反射素子 層⑷」と「保持体層⑶」が一体と記載されているにすぎず,「反射素子層⑷」自体について,反射素子と保持体層が一体であるとは理解できず,「反射素子層⑷」が「反射素子」の誤記であるとは理解できないと主張するが,上記イで説示したとおり,むしろ本件明細書の記載からは,当該「反射素子層⑷」が「反射素子」を意味し,これと「保持体層⑶」が一体となって⑸の反射素子層を構成していると 理解できるというべきである。 さらに,被告らは,原告が反射素子と主張する三角錐の部分とそれ以外の部分は,いずれも入射光を透過させることで反射に寄与するという点で共通しており,一方のみが反射素子で他方は反射素子でないとは理解できないと主張するが,上記イで説示したとおり,被告製品のキューブコーナーについて,別紙被告製品の 構成記載の下図の赤破線の下側にある三角錐の部分が「反射素子」に,上側の部分が保持体層に当たるというべきである。 その他,被告らの主張を検討しても,採用すべきものはない。 エしたがって,被告製品の構成1a,1b並びにこれと同一の構成2a,2b及び3a,3bは,それぞれ本件発明1の構成要件1A,1B及びこれを引用する 本件発明2の構成要件2Bを充足する。 ⑵ 争点1-2(被告製品の印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されているといえるか-構成要件1C,2B充足性)についてア前記前提事実によれば,本件発明の構成要件1Cは,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,」である。これに対応する被告製品の構成1cは,「印刷層を構成する印刷領域は, 再帰反射シートの両端部以外でほぼ等間隔で設けられた複数のライン状パター パターンで設置されており,連続層を形成せず,」である。これに対応する被告製品の構成1cは,「印刷層を構成する印刷領域は, 再帰反射シートの両端部以外でほぼ等間隔で設けられた複数のライン状パターンと,再帰反射シートの両端部における複数のライン状の側縁領域を含み,当該側縁領域は外部に露呈しており,」である。 ここでは,被告製品の印刷領域が,「独立した領域をなして」,「繰り返しのパターンで設置」されているといえるかが問題となる。 イ前記1のとおり,本件明細書の段落【0008】,【0012】,【0015】,【0016】によれば,再帰反射シートの色相の改善のために,連続した印刷層を設置した場合,印刷層の周辺の密着性並びに耐候性及び耐水性が劣るという欠点を有していたため,印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置され,連続層を形成しない構成を採用し,耐候性及び耐水性に優れたシートを提供 しようとしたものと理解できる。そうだとすれば,本件発明の「印刷層の印刷領域」が「独立」しているとは,本件明細書の比較例【図6】のように「印刷領域」が「連続」しているものではなく,実施例【図4】,【図5】のように,これらが「連続しない」こと,すなわち「繋がっていない」ことを意味するものと理解できるというべきであり,「印刷領域」が「繰り返しのパターンで設置」されている とは,実施例【図4】,【図5】のように,同一の形状や面積の「独立」した「印刷領域」が「繰り返しのパターンで設置」されることを意味するものと理解できる。 ウそして,前記前提事実によれば,別紙被告製品の構成記載の上図のとおり,被告製品の印刷層のライン状の印刷領域は,両端部を含めて互いに繋がっておらず, 連続していないから,「独立した領域をなして」いると ,前記前提事実によれば,別紙被告製品の構成記載の上図のとおり,被告製品の印刷層のライン状の印刷領域は,両端部を含めて互いに繋がっておらず, 連続していないから,「独立した領域をなして」いるというべきである。 これに対し,被告らは,原告の本件特許の出願経過及び本件明細書の実施例【図4】,【図5】からは,印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されずに配置されることで,印刷層を伝わる水の浸入を防止し,耐候性が備えられると理解できるから,本件発明の「印刷領域が独立した領域をなして」とは,水の浸入を防止するように印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されずに配置されることを 意味すると理解されると主張する。 しかし,本件明細書の上記図面は,あくまで「印刷模様の一例の平面図」とされているのであり,本件明細書の記載を精査しても,シート端部に印刷領域が露出している構成を排除する旨の記載は存在しない。むしろ,本件発明に係る道路標識等に利用される再帰反射シートのユーザーは,その使用に当たってこれを任 意の形状に切断することが想定されるところ,上記図面のように印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されずに配置されているシートであったとしても,印刷領域がシートの端部で切断されることも十分に想定されるものであるから,本件発明がシート端部に印刷領域が露出された構成を排除するものであったとは考え難い。また,このようにシート端部に印刷領域が露出することにより,そこか ら水が浸入することがあったとしても,右下図のように印刷領域が連続層を形成していなければ,端部のみで水の浸入を阻止し,更なる水の浸入を防止することができるから,左下図のように印刷領域が連続層を形成している場合と比較して,耐候性及び耐水性に「優れた」シートを提供するこ 成していなければ,端部のみで水の浸入を阻止し,更なる水の浸入を防止することができるから,左下図のように印刷領域が連続層を形成している場合と比較して,耐候性及び耐水性に「優れた」シートを提供することができるというべきである。 また,被告らは,本件発明では,「連続層を形成せず」の文言に加えて,「独立した領域をなして」との文言が用いられており,これらは異なる意味を有すると理解されるところ,原告が主張する「繋がっていない」とは,「連続層を形成せず」を指し,「独立」を指すものではないと主張するが,必ずしも「独立した領域をな して」と「連続層を形成せず」が異なる意味であると理解する必要はなく,むし ろ本件明細書の記載を併せて読めば,「独立した領域をなして」の意味付けを付加ないし補強するために「連続層を形成せず」との文言を使用したものと理解すべきである。 その他,被告らの主張を検討しても,いずれも採用すべきものはない。 エ次に,前記認定事実によれば,別紙被告製品の構成記載の上図のとおり,被告 製品の印刷層のライン状の印刷領域は,少なくともシート内部において同一の形状及び面積で繰り返しのパターンで設置されているといえ,シート端部においても少なくとも下図の切断面の方向において同一の形状及び面積で繰り返しのパターンで設置されているといえるから,全体として「繰り返しのパターンで設置」されているというべきである。 切断面 これに対し,被告らは,被告製品について切断面とは垂直な方向で見た場合,シート端部と内部では印刷領域の形状及び面積が全く異なることから,被告製品に「繰り返しのパターンで設置」された印刷領域は存在しないと主張するが,上 記ウで説示したとおり,本件発 向で見た場合,シート端部と内部では印刷領域の形状及び面積が全く異なることから,被告製品に「繰り返しのパターンで設置」された印刷領域は存在しないと主張するが,上 記ウで説示したとおり,本件発明に係る再帰反射シートのユーザーは,その使用に当たってこれを任意の形状に切断することが想定されるところ,本件明細書の実施例【図4】,【図5】のように印刷領域の全てにおいて「繰り返しのパターンで設置」されていることが明らかであるシートであったとしても,印刷領域がシートの端部で切断されて印刷領域の形状及び面積が変化することも十分に想定さ れるものであるから,本件発明がシートの加工によりシート端部の印刷領域の形状及び面積が変化した構成を排除するものであったとは考え難い。 その他,被告らの主張を検討しても,いずれも採用すべきものはない。 オしたがって,被告製品の構成1c並びにこれと同一の構成2c及び3cは,それぞれ本件発明の構成要件1C及びこれを引用する構成要件2Bを充足する。 ⑶ 争点1-3(被告製品の独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であるといえるか-構成要件1D,2B充足性)についてア被告製品⑴について 前記前提事実のとおり,本件発明の構成要件1Dは,「該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,」である。これに対応する被告製品⑴の構成要件1dは,「印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,」であり,前記⑵で説示したとおり,各ライン状パターンが「独立印刷領域」に当たり,これが「繰り返しのパターンで設置」されているといえ,さ らに各ライン状パターンの面積が「0.15㎟~30㎟」の範囲内である●(省略)●であるといえる。 したがって,被告製品⑴の構成 当たり,これが「繰り返しのパターンで設置」されているといえ,さ らに各ライン状パターンの面積が「0.15㎟~30㎟」の範囲内である●(省略)●であるといえる。 したがって,被告製品⑴の構成1dは,本件発明の構成要件1D及びこれを引用する構成要件2Bを充足する。 イ被告製品⑵について これに対し,本件発明の構成要件1Dに対応する被告製品⑵の構成要件2dは,「印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,両端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0. 15㎟~30㎟であり,」であり,シート端部の印刷領域を除く内部の印刷領域の面積は「0.15㎟~30㎟」の範囲に属さない。 したがって,その余の点について検討するまでもなく,被告製品⑵の構成2dは,本件発明の構成要件1D及びこれを引用する構成要件2Bを充足しない。 ウ被告製品⑶についてまた,本件発明の構成要件1Dに対応する被告製品⑶の構成3dは,「印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており, 両端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15 ㎟~3 0 ㎟ではなく,」であり,シートの全ての印刷領域が「0.15㎟~30㎟」の範囲に属さない。 したがって,被告製品⑶の構成3dは,本件発明の構成要件1D及びこれを引用する構成要件2Bを充足しない。また,原告は,被告らによる被告製品⑶の製造販売等の行為が本件特許権の間接侵害に当たると主張するが,上記イのとおり, 被告製品⑵が本件発明の構成要件1D及びこれを引用する構成要件2Bを充足せず,被告製品⑵の製造販売等の行為による直接侵害が成立し得ない以上,原告の主張する間接侵害が 張するが,上記イのとおり, 被告製品⑵が本件発明の構成要件1D及びこれを引用する構成要件2Bを充足せず,被告製品⑵の製造販売等の行為による直接侵害が成立し得ない以上,原告の主張する間接侵害が成立することはないから,その余の点を検討するまでもなく,原告の上記主張には理由がないことになる。 エ小括 以上によれば,被告新製品である被告製品⑵及び⑶は,その余の点(争点1-4)について検討するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属しない。 それゆえ,以下,被告旧製品である被告製品⑴が本件発明の技術的範囲に属するか否かのみを検討する。 ⑷ 争点1-4(着色剤が色相を明るくすることを要するか-構成要件1E,2B充 足性)ア前記前提事実によれば,本件発明の構成要件1Eは,「該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する」である。これに対応する被告製品⑴の構成1eは,「印刷層は,●(省略)●と●(省略)●を含有する●(省略)●印刷インキにより形成 されるが,」である。そして,被告製品の印刷層の●(省略)●印刷インキに含有される●(省略)●は,「白色」の「無機顔料」に当たる。 ここでは,本件発明については,印刷層が「白色の有機顔料…着色剤」を含有すれば,それだけで構成要件1Eを充足するのではなく,これにより「色相を明るくすること」を要するかが問題となる。 イ本件発明の構成要件1Eには,印刷層が「白色の有機顔料,および蛍光増白剤」 のいずれかを含有するとの記載がされているだけであり,「色相を明るくすること」が発明特定事項として記載されているわけではない。 また,前記1のとおり,本件発明は,再帰反射シ 白剤」 のいずれかを含有するとの記載がされているだけであり,「色相を明るくすること」が発明特定事項として記載されているわけではない。 また,前記1のとおり,本件発明は,再帰反射シートに関する発明であるところ,本件明細書の段落【0004】には,三角錐型キューブコーナー再帰反射シートのうち,反射素子の反射側面に蒸着層が設置されている「蒸着型」三角錐型 キューブコーナー再帰反射シートについては,その再帰反射素子の性質から金属の色の影響を受けて外観が暗くなってしまうという欠点を有していると記載されているものの,それ以外の再帰反射シートについては,外観の暗さが課題になっている旨の記載がない。また,本件明細書の【0014】,【0015】には,本件発明の技術的意義は「色相の改善」であると記載され,段落【0021】,【0 030】,【0032】には,印刷層の目的は「色相を調節」,「色相の調整」と記載され,段落【0036】には,「本発明に用いられる着色剤は,特に限定されるものではないが,…色相を明るくすることができ,且つ,隠蔽性が得られるものが良く,シートの色相に合わせた明色系の色が好ましく,…白色の有機顔料や白色や黄色の無機顔料,並びに蛍光染料や蛍光増白剤を挙げることができ,中でも, 白色や黄色の無機顔料が好ましい。」と記載されており,「色相を明るくすること」は,「隠蔽性」を得ることや「シートの色相に合わせた」色であることと並んで,あくまで好ましい態様であるとされているにすぎない。そのため,本件発明の着色剤の技術的意義である「色相の改善」は,色相の調節ないし調整を意味するものであり,「色相を明るくすること」に限定されるものではないと解される。他方, 本件明細書の実施例では,白色顔料が用いられているものの,そ る「色相の改善」は,色相の調節ないし調整を意味するものであり,「色相を明るくすること」に限定されるものではないと解される。他方, 本件明細書の実施例では,白色顔料が用いられているものの,その他の着色剤と比較して明るさが向上するとの趣旨で記載されているものではなく,比較例でも,実施例とは印刷の模様のみを変えて,「Y値」すなわち「色相(明るさ)」には変化がないが耐候性が改善することを確認しているにすぎない。このような本件明細書全体の記載を考慮すれば,本件発明の構成要件1Eの「着色剤」が「色相を 明るくすること」を要件としたものとは解されない。 以上によれば,本件発明の構成要件1Eの「着色剤」が「色相を明るくすること」を要しているとはいえないというべきである。 ウこれに対し,被告らは,本件特許の出願経過において,原告が,補正により本件発明に構成要件1Eを追加し(乙21),本件発明の効果は,「色相,特に昼光下での色相(Y値=明るさ)が改善されて」いることであり,同構成要件の着色 剤を用いることにより色相(Y値=明るさ)を改善したと主張しており(乙3),同構成要件の「白色」,「黄色」,「蛍光」を用いて「色相(Y値=明るさ)」を改善する技術的意義を強調しているから,上記着色剤の意義は,色相を明るくすることにあると主張している。 しかし,原告が提出した乙21の内容を見ても,本件発明の構成要件1Eの技 術的意義が,「色相を明るくすること」であるとは記載されていない。 むしろ,乙3には,本件発明の効果は,「十分な再帰反射性能を有し,かつ色相,特に昼光下での色相(Y値=明るさ)が改善されており,耐候性及び耐水性にも優れている」ことであると記載され,Y値と同義である「色相(Y値=明るさ)」と,それに限定されな 帰反射性能を有し,かつ色相,特に昼光下での色相(Y値=明るさ)が改善されており,耐候性及び耐水性にも優れている」ことであると記載され,Y値と同義である「色相(Y値=明るさ)」と,それに限定されない意味での「色相」とが区別されているため,明るさに限 定されない色相の改善についても主張していると解される。さらに,乙3には,一般に用いられている着色剤は,再帰反射性の確保のために光透過性を有するが,光透過性を有する着色剤は光劣化しやすいという欠点があったのに対して,本件発明の構成要件1Eの着色剤は,光透過性を有するものではないこと,本件発明は,構成要件1Eの着色剤を用いることにより,再帰反射シートの昼光下での色 相(Y値=明るさ)を更に改善したこと,本件発明では,印刷領域が構成要件1B~1Dを具備する独立印刷領域であるため,印刷層が光透過性を有しない構成要件1Eの着色剤を含有しても,それ以外の領域を通じて十分な再帰反射性能を有することが記載されている。以上によれば,原告は,本件特許の出願経過において,本件発明の構成要件1Eの着色剤について,明るさの改善だけでなく,そ れ以外の効果も主張していると解されるから,そのような主張をもって,本件発 明の着色剤の技術的意義が色相を明るくすることに限定されるとまではいえないというべきである。 その他,被告らの主張を検討しても,採用すべきものはない。 エしたがって,被告製品⑴の構成1eは,それぞれ本件発明の構成要件1E及びこれを引用する構成要件2Bを充足する(なお,仮に同構成要件の着色剤が「色 相を明るくすること」を意味するものとしても,これは相対的に色相を明るくできるような所定の着色剤を含有させれば足り,必ずしも絶対的に「色相を明るくすること」を要するものではない の着色剤が「色 相を明るくすること」を意味するものとしても,これは相対的に色相を明るくできるような所定の着色剤を含有させれば足り,必ずしも絶対的に「色相を明るくすること」を要するものではないというべきであるところ,証拠(甲17)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品では,「白色」の「無機顔料」に当たる●(省略)●を含有しない領域よりも,これを含有する領域の方が色相も改善●(省略)● による色相改善の効果を享受)していることがうかがわれ,被告製品の●(省略)●印刷インキの色相が暗くなっているのは,●(省略)●で色相が明るくなった一方で,●(省略)●で色相が暗くなったにすぎないというべきであり,これによって本件発明の構成要件1Eの充足性が否定されることにはならないというべきである。)。 ⑸ 小括以上によれば,被告旧製品である被告製品⑴は,本件発明の技術的範囲に属するが,被告新製品である被告製品⑵及び⑶は,本件発明の技術的範囲に属しない。 3 争点2(本件特許に無効理由があるといえるか)について⑴ 争点2-1(無効理由1(サポート要件違反)の有無)について ア特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件(特許法36条6項1号)に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技 術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否 かを検討して判断すべきものである。 イ 「印刷層周辺の密着性が劣り なくとも当業者が出願時の技 術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否 かを検討して判断すべきものである。 イ 「印刷層周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性が劣る」課題について被告らは,本件発明の「印刷層周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性が劣る」課題を解決するためには,印刷領域の全てが反射シートの内部で互いに接続されずに配置されていることを要するものであり,そうでなければ,下図のように, シート両端に印刷領域が露出し,印刷層を伝わった水の浸入を防止できないものまで本件発明に含まれることとなり,当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲を超えると主張する。 しかし,前記2⑵で説示したとおり,シート端部に印刷領域が露出しても,印 刷領域が連続している場合と比較すれば,シート端部の印刷領域から浸入した水が内部まで浸透するのを阻止することで,耐水性及び耐候性を向上させ,もって本件発明の課題を解決できるというべきである。確かに,本件発明には,上図のように,上記課題を解決し得ないような極端な例が含まれ得るとしても,本件明細書【0008】,【0012】に,従来技術として連続した印刷層を設ける試み がされていたが,印刷層周辺の密着性が劣り,耐水性及び耐候性に問題があったこと,実施例及び比較例において,印刷模様を【図4】,【図5】に代えて【図6】とすると耐候性が劣ることが確認されていること等からすると,当業者は,連続した印刷領域に代えて連続層を形成しない印刷領域を設置することにより,本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。 したがって,本件発明は,上記課題を解決できると認識できる範囲を超えるものではないというべきである。 ウ色相改善 ることにより,本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。 したがって,本件発明は,上記課題を解決できると認識できる範囲を超えるものではないというべきである。 ウ色相改善の課題について被告らは,本件明細書の記載及び出願経過によれば,本件発明は「外観が暗くなる」課題を解決するために,「白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤」を 含有させることにより,色相を明るくするものと理解されるのであり,逆に色相を明るくしない場合も包含するなら,本件発明は課題を解決できる範囲を超えることとなると主張する。 しかし,前記2⑷で説示したとおり,本件発明の課題である「色相の改善」とは,「色相を明るくすること」に限定されているとまではいえないから,被告らの 主張は,前提を欠くものであって失当である。また,仮に本件発明の課題である「色相の改善」が「色相を明るくすること」を意味するとしても,本件明細書の記載に照らせば,当業者においては,通常は本件発明の構成要件1E所定の白色顔料等の着色剤を含有すれば,少なくとも相対的に色相を明るくすることができ,本件発明の上記課題を解決できると認識できるというべきである。そして,仮に 本件発明の構成要件1E所定の着色剤を含有しながら,絶対的に色相が明るくなっていない態様のものが含まれ得るとしても,一般的に,本件発明の技術的範囲に含まれ得る態様には,条件によっては本件発明の課題を解決できない場合も含まれることは通常のことであり,そのような態様を逐一列挙して,サポート要件に違反すると考えるのは相当でないというべきである。 したがって,本件発明は,上記課題を解決できると認識できる範囲を超えるものでもないというべきである。 エ サポート要件に違反すると考えるのは相当でないというべきである。 したがって,本件発明は,上記課題を解決できると認識できる範囲を超えるものでもないというべきである。 エ独立印刷領域の課題について被告らは,本件明細書には,①印刷層の独立印刷領域の面積が0.15㎟未満や30㎟超えの場合と比較した例が示されておらず,技術的意義(臨界的意義) が裏付けられていないし,また,②密着性は,印刷領域の面積のみならず,印刷領域の間隔や,印刷領域と非印刷領域の面積比,層の材質にも左右されるから,面積だけ特定しても,本件発明の課題を解決できるとは認識できないと主張する。 まず,①について,本件明細書の段落【0008】には,「三角錐型キューブコーナー再帰反射シート…の色相を改善するために該再帰反射シートの一部に連続 した印刷層を設ける試みもされている。」と記載され,段落【0012】には,「印 刷層は,反射素子とも表面保護層とも密着性がやや劣り,また,その層自体の耐候性が劣り耐候性試験においてフクレが生じたり,また,吸水しやすいという欠点を有しており,…に連続した印刷層を設置した場合,該印刷層の周辺の密着性が劣り,耐候性や耐水性が劣るという欠点を有していた。」と記載され,段落【0030】には,「独立印刷領域の面積が0.15㎟以上であれば,成形性に優れ, 且つ色相の調整が容易であるので好ましく,30㎟以下であれば,印刷周囲における印刷層⑵を挟む2層の層間密着強度を低下させることがないので好ましい」と記載されている。このような本件明細書の記載に接した当業者であれば,再帰反射シートの色相を改善ないし調整するための印刷層の面積が小さすぎると,色相の調整という効果が享受できないから,ある ましい」と記載されている。このような本件明細書の記載に接した当業者であれば,再帰反射シートの色相を改善ないし調整するための印刷層の面積が小さすぎると,色相の調整という効果が享受できないから,ある程度の大きさが必要であると理解 でき,また,密着性に劣る印刷層の面積が大きすぎると,層間密着強度が低下するため,ある程度小さい印刷層である必要があると理解できるから,本件明細書に印刷領域の面積が0.15㎟未満や30㎟超えの場合と比較した例が示されていなくとも,本件発明の技術的意義を理解できるというべきである。 また,②について,本件発明は,再帰反射シートの発明である以上,再帰反射 性を十分に確保できるものでなければならないところ,印刷領域が再帰反射シートの大部分を占めるような場合は,反射素子が有効に存在する箇所がほとんどなく,再帰反射シートとして意味をなさない。そして,被告らが指摘するような構成を採用すると,通常再帰反射シートとして意味をなさないようなものになるため,そのような極端な例を想定するのは相当でないというべきである。確かに, 印刷領域の面積のみならず,その間隔等も層間密着強度に影響を与えるため,これらを特定すれば,より密着性が高く好ましい態様のシートを得ることができるとも考えられるが,そうであるからといって,より好ましい態様が得られるように印刷領域の間隔等を限定しなければ,本件発明の課題を解決することができないというものではなく,印刷領域が連続層を形成していない場合は,連続層を形 成している場合と比較すれば,より密着性が高いシートとなるのであり,当業者 においては,本件発明の課題を解決できると認識できるというべきであるから,印刷領域の間隔等を限定していないからといって,サポート要件違反 ,より密着性が高いシートとなるのであり,当業者 においては,本件発明の課題を解決できると認識できるというべきであるから,印刷領域の間隔等を限定していないからといって,サポート要件違反になることはないというべきである。 したがって,本件発明は,上記課題を解決できると認識できる範囲を超えるものでもないというべきである。 オ小括以上によれば,本件発明は,本件明細書に記載された課題を解決できる範囲のものであるといえ,サポート要件を満たすから,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはいえない。 ⑵ 争点2-2(無効理由2(実施可能要件違反)の有無)について ア明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たしているというためには,当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものであることが必要であり,同記載及び出願時の技術常識に基づき,過度の試行錯誤を要することなく,その物を生産し,かつ,使用することができる程度の記載がされていることが必要である。 イ被告らは,①本件発明に,印刷領域の全てがシート内部に配置されない構成が包含されたり,色相を明るくしない印刷層も包含されたりするのであれば,課題を解決できないし,また,②隣接する印刷領域の間隔についての記載がないため,課題を解決できるシートを実現するためには,当該間隔について条件を探索するため過度の試行錯誤を要するから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,実 施可能要件に違反する旨を主張する。 しかし,①については,前記⑴で説示したとおり,本件発明に,印刷領域の全てがシート内部に配置されない構成が包含されたり,色相を明るくしない印刷層も包含されたり 件に違反する旨を主張する。 しかし,①については,前記⑴で説示したとおり,本件発明に,印刷領域の全てがシート内部に配置されない構成が包含されたり,色相を明るくしない印刷層も包含されたりしているとしても,当業者において,本件発明の構成を採用することで,連続層を形成する印刷層を採用した場合と比較して,シート端部の印刷 層からの水の浸入及びその内部の印刷層への浸透並びにこれによるフクレの発生 を可及的に防止し,耐水性及び耐候性を向上させるとともに,印刷層に所定の着色剤を含有させることで,色相の改善を図ることができるものと理解できるというべきである。また,②については,当業者において,本件明細書に明示の記載がなくとも,隣接する印刷領域の間隔が狭ければ層間密着強度が低下するものと理解できるから,適宜,十分な層間密着強度を得ることができる程度の間隔に設 定するものというべきであり,過度の試行錯誤を要するものとはいえない。 その他,被告らの主張を検討しても,採用すべきものはない。 ウ以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえ,実施可能要件を満たすから,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはいえない。 ⑶ 争点2-3(無効理由3(明確性要件違反)の有無)についてア明確性要件(特許法36条6項2号)を満たすか否か,すなわち特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほど に不明確であるか否かという観点から検討さ に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほど に不明確であるか否かという観点から検討されるべきである。 イ 「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」被告らは,本件発明の構成要件1Aの「保持体層」と「反射素子層」が,本件特許請求の範囲では一方が他方の構成要素のように理解され,本件明細書では別々の構成要素と記載されており,両者を統一的に理解できず,第三者に不測の 不利益を及ぼすほどに不明確であるといえると主張する。 しかし,本件発明の構成要件1Aの「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」の記載からは,「反射素子層」は「反射素子」と「保持体層」を含む層であることが明確に理解できるといえる。 他方で,本件明細書の段落【0021】,【0081】及び実施例【図1】~【図 3】等には,「反射素子層⑷」が「保持体層⑶」を含むことは記載されておらず, 「保持体層⑶」は,「反射素子層⑷」とは別の層として記載され,「反射素子層⑷および保持体層⑶は一体⑸であるのが普通」などと記載されている。このように,本件特許請求の範囲の記載と本件明細書の記載では,「反射素子」と「反射素子層」の用語が明確に使い分けられておらず,本件発明の構成要件1Aの「反射素子層」の定義が曖昧になっている。 もっとも,あくまで本件発明の構成要件1Aにおいては,「反射素子層」は,「反射素子と保持体層からなる」層であると定義されているのであり,これを踏まえて,本件明細書の段落【0021】及び【図1】等を見れば,これらに記載された3の「保持体層」,4の「反射素子層」,5の「保持体層+反射素子層 層からなる」層であると定義されているのであり,これを踏まえて,本件明細書の段落【0021】及び【図1】等を見れば,これらに記載された3の「保持体層」,4の「反射素子層」,5の「保持体層+反射素子層」は,それぞれ本件発明の構成要件1Aの「保持体層」,「反射素子」,「反射素子層」に対 応することは明らかであり,本件特許請求の範囲の記載と本件明細書の記載を統一的に理解することができるというべきである。 したがって,本件発明の構成要件1Aの「保持体層」と「反射素子層」の意味については,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないというべきである。 ウ 「印刷領域が独立した領域をなして」及び「独立印刷領域」被告らは,①本件発明の構成要件1C,1Dの「独立した領域」及び「独立印刷領域」の意味が,本件特許請求の範囲の記載から明らかでないし,②本件明細書の記載及び出願経過からは,「独立」とは,印刷領域の全てがシート内部で互いに接続されることなく配置されていることを意味すると理解できるが,原告が主 張するように,シート両端に印刷領域が露出しているものも本件発明に含まれるとすれば,本件発明には所定の作用効果を奏しない構成も含まれることになるから,第三者は「独立」の意義を一義的に明確に理解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえると主張する。 しかし,①について,本件特許請求の範囲のみからは,「独立した領域」及び「独 立印刷領域」がどのような印刷領域を定義しているのか直ちには理解できないと しても,本件明細書【0012】記載のとおり,従来技術の連続した印刷層には,密着性が劣るという欠点があったことを踏まえ,実施例では【図4】及び【図5】の印刷模様を用い,比較例では【図 しても,本件明細書【0012】記載のとおり,従来技術の連続した印刷層には,密着性が劣るという欠点があったことを踏まえ,実施例では【図4】及び【図5】の印刷模様を用い,比較例では【図6】の印刷模様を用いていることを考慮すれば,「独立した領域」及び「独立印刷領域」は,連続していない印刷領域であると理解できるから,特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに 不明確であるとはいえないというべきである。 また,②について,前記⑴で説示したとおり,再帰性反射シートにおいて,印刷領域の全てが反射シートの内部に設置されていないとしても,連続した印刷領域よりは所定の作用効果を奏すると考えられるから,被告らの上記主張は,その前提を欠くものであって失当である。 したがって,本件発明の構成要件1C,1Dの「独立した領域」及び「独立印刷領域」の意味についても,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないというべきである。 エ 「印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する」 被告らは,本件発明の構成要件1Eの着色剤の技術的意義は「色相を明るくすること」と理解することができるにもかかわらず,本件発明に被告製品のような色相を明るくしないものが含まれるとすれば,本件発明には所定の作用効果を奏しない構成も含まれることになるから,第三者は「印刷層」の意義を一義的に明確に理解できず,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえると 主張する。 しかし,本件特許請求の範囲の「印刷層は,…着色剤を含有する」との記載は,それ自体明確であり,仮に本件発明に所定の作用効果を奏しない構成も含まれ得 確であるといえると 主張する。 しかし,本件特許請求の範囲の「印刷層は,…着色剤を含有する」との記載は,それ自体明確であり,仮に本件発明に所定の作用効果を奏しない構成も含まれ得るとしても,上記記載が不明確になるということにはならないというべきである。 なお,前記⑴で説示したとおり,着色剤は「色相の改善」を図ることができるか ら,被告らの上記主張は,その前提を欠くものであって失当である。 したがって,本件発明の構成要件1Eの意味についても,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないというべきである。 オ 「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり」被告らは,仮に原告が主張するように,本件発明に隣接する印刷領域の間隔が非常に狭いような再帰反射シートが含まれるとすれば,本件発明には所定の作用 効果を奏しない構成が含まれることになってしまうから,第三者は「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」の意義を一義的に明確に理解できず,同文言は,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえると主張する。 しかし,上記エと同様に,本件特許請求の範囲の「独立印刷領域の面積が0. 15㎟~30㎟であり」との記載は,それ自体は明確であり,仮に本件発明に所 定の作用効果を奏しない構成も含まれ得るとしても,上記記載が不明確になるということにはならないというべきである。なお,前記⑴で説示したとおり,印刷領域の間隔を特定することで,より好ましい態様になるとしても,より好ましい態様でないと所定の作用効果を奏しないというものではなく,印刷領域が独立していることにより,連続した印刷領域よりは所定の作用効果を奏すると考えられ るから,被告らの上記主張は,その前提を欠くものであって失 所定の作用効果を奏しないというものではなく,印刷領域が独立していることにより,連続した印刷領域よりは所定の作用効果を奏すると考えられ るから,被告らの上記主張は,その前提を欠くものであって失当である。 したがって,本件発明の構成要件1Dの「独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」との記載の意義についても,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないというべきである。 カ小括 以上によれば,本件発明は,明確性要件を満たすから,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはいえない。 ⑷ 争点2-4(無効理由4(乙6発明に基づく新規性欠如・進歩性欠如)の有無)についてア被告らは,本件発明は,乙6発明と同一の発明であり,仮に相違点があるとし ても,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,新規性欠如・進 歩性欠如の無効理由があると主張する。 イ米国特許公報3973342(乙6)の記載米国特許公報3973342(乙6)には,下記~のような記載があり,これらによれば,乙6発明の特徴は,下記のとおりであると認められる。 夜間走行の安全性に資するように,自動車のヘッドライトによって照らされ たときに輝く,微細なガラスビーズを埋め込んだ複数の層よりなる合成プラスチック構造の反射フィルムで覆われた金属シートからなる反射性交通標識が既に知られている。(1欄4~9行目)自動車も同様に反射性プレートを備え,夜間のハイウエイの交通中で或る距離をおいてもそれらが見えるようにすることが望ましく,特に,夜間に車両の ナンバープレートが照らされたときそれによって車両が認識可能なようにナンバープレートを反射性に作製することが望ましかろう。既知の てもそれらが見えるようにすることが望ましく,特に,夜間に車両の ナンバープレートが照らされたときそれによって車両が認識可能なようにナンバープレートを反射性に作製することが望ましかろう。既知のナンバープレートは,少なくとも多くのエリアにおいて非反射性で,一般には,浮き出すように型押しされた記号,文字および/または数字と,最終的に別の色で,一般には暗色系で,ラッカー塗布されるそれらの隆起表面とを備えた,シート状の鉄, アルミニウムおよび同様のもののラッカー塗布された金属プレートから成る。 (1欄10~21行目)本発明の基本的な目的は,背面反射性表面と,夜間の高速道路交通の安全を向上するとともに,通行権,交通整理デバイスおよび車両の感知をより良くする役割を果たすプレートの提供である。(1欄22~26行目) 本発明によれば,本背面反射表面およびプレートは,前表面または見取り面が一般に平滑であり,裏側は,三角錐,プリズムまたは同様のものとして光学的に高精度で形成された背面反射素子を備え,例えば,銀,アルミニウム,銅,クロム,またはニッケルなどの反射層でコートされている合成プラスチックプレート本体を,反射体プレートが有するという事実を特徴とする,該反射体プ レートから成り,この本体プレートには,その前表面上に刻印された,または 表面に押し出された,または施された,文字または数字などの記号がある。但し,光反射のため他のプリズム系を使うことも可能である。 本発明概念の或る特定の実施形態によれば,本発明の反射体プレートは,プレートの他の部分とは別の色を有する記号を備えた,自動車用のナンバープレートとして用いられる。 このように使用されるような本発明の本質的な特質によれば,これらの記号は,反射体プレ ートは,プレートの他の部分とは別の色を有する記号を備えた,自動車用のナンバープレートとして用いられる。 このように使用されるような本発明の本質的な特質によれば,これらの記号は,反射体プレートの前表面または見取り面から浮き出すように隆起させることができる。反射性ナンバープレートがこのようなやり方で製造される場合,既存の種類のナンバープレートを従来製造していた者が,新規の型押プレス機を必要とせず,ナンバープレートの型押しおよびさらなる加工の基本手順を修 正する必要もない。というのは,本発明の反射性プレートは,基本的には,既知のアルミニウムまたは金属プレートが型押しされるのと同様,刻印された記号が反射体の共通面の上に隆起されまたは突出するように型押しまたは刻印され,最終的に原則として黒色のラッカーコーティングを塗装されるからである。 (1欄30~60行目) 本発明の反射体プレートのプレスまたは型押し作業において,浮き出し形成された記号の背後に配置されたプリズムは,隆起された記号がもはや反射しないように破砕される。ナンバープレートでは,浮き出し形成された記号は,当然,各々がその表面を着色被覆でラッカー塗布されるので,このことは基本的な反射能力には何の関係もない。 また,本発明の反射体プレート中の記号の型押しまたは刻印は,これら記号の背後に配置されたプリズムを破砕せずに,代わりに反射体プレートの記号以外のものを破砕するようにすることもでき,この場合は記号だけが反射性であるようにすることができる。 また,本発明によれば,記号を,前表面が記号または文字(characters)の 周りに事実上隆起されるようなやり方で,前表面または見取り面の中に刻印す ることも可能である。さらなる有利な特徴によれ ,記号を,前表面が記号または文字(characters)の 周りに事実上隆起されるようなやり方で,前表面または見取り面の中に刻印す ることも可能である。さらなる有利な特徴によれば,記号の縁部または境界部だけを,前表面中にまたは前表面から陥凹または表出させることができ,このとき,プレスまたは型押しの過程で記号縁部の区域内に所在するプリズムだけが破砕され,これにより,これら縁部は非反射性となるが,プリズムが維持されている記号の大部分は反射性である。 ナンバープレートに関し,本発明の反射性プレートにおける,型押しまたはプレス作業過程での,記号の背後のプリズムの破砕は,実際上,従来型のナンバープレートに比べ大きな利点を有する。後者に対しては,ラッカー塗布された金属シートの刻印は,適切な工具を使って,偽造の一切の明白な痕跡を残すことなく,再度戻しプレスすることが可能である。これに対し,本発明の反射 体プレートについては,あらゆる場合において,破砕されたおよび未破砕のプリズムのパターンが当初の記号に対応して生じているので,前述のようなことはできず,たとえ新しい記号の刻印があっても,記号を改変するための材料のいかなる平坦化も,当初のパターンの位置における反射特性の変化を介して明らかとなる。 したがって,本発明の反射性プレートで作製されたナンバープレートは,刻印された記号を,その明瞭な証拠を一つも残さないで改変することはできないので,実際的に偽造するのは絶対的に不可能である。或る記号が平たくプレスされたりまたはたたき戻されたりした場合,その記号の位置および形状は,それらの位置ではプリズムが反射しないので,それらの破砕されたプリズムを介 して常に認識可能である。また,ナンバープレートの偽造は,同じ位置に き戻されたりした場合,その記号の位置および形状は,それらの位置ではプリズムが反射しないので,それらの破砕されたプリズムを介 して常に認識可能である。また,ナンバープレートの偽造は,同じ位置に別の記号が刻印された場合にあっても,別記号は,従前の記号と形状が正確に一致することはないであろうから認識可能となろう。(1欄66~2欄18行目)本体プレート自体がガラスのように透明な透明材料から構成されているので,日中において白の背景の外観を与えるために,本発明の他の態様では,プラス ティック材料は,光透過性白乳色にすることができる。プレートの反射パワー を低減させるために,プラスティック材料は一様な着色により曇らせることができ,その結果光に対する透過性を少なくすることができる。 ナンバープレートの例でいうと,突出していない前方の表面を日中の光の中で白く色づけられたように見えるようにするため,それはグリッドパターン(格子パターン)又はスクリーンパターンの白い複数のドットで印刷することがで きる。そのような場合には,グリッド(格子)は,反射光のそれぞれ予め定められた部分が通過することが許容されるように作成され,設けられる。もし,そのグリッド(格子)が不透明な被覆顔料から作られている場合,反射光はグリッド(格子)の隙間だけを通過するため,それゆえ反射光はグリッド(格子)の色を呈さない。反射プレートの着色及びグリッド(格子)の色は,日中にお いて,前方の表面が,色において,グリッド(格子)に対応するか,目でそのように知覚され,他方対照的に,夜間において,反射領域の色は合成プラスティックの本体の材料の着色に対応するように見えるように選択することができる。それゆえ,例えば,反射領域は,日中は黒に見え,夜は白のように見 され,他方対照的に,夜間において,反射領域の色は合成プラスティックの本体の材料の着色に対応するように見えるように選択することができる。それゆえ,例えば,反射領域は,日中は黒に見え,夜は白のように見えるように作成することができる。(2欄62~3欄18行目) 図1は,本件発明の反射プレート構造10の有用な適用及び実施態様として,自動車のライセンスプレートを示しており,その前方の表面11上に,つまり入射光にさらされた視認される側面上に描かれた記号,ここでは文字と,参照番号18により示された数字の1のような数字が存在する。しかし,ここにおいて開示された概念は,光反射プレート,特に記号を有するプレートが望まれ るような他の分野における適用を有することが理解されるべきである。記号18は,後に説明するような様々な方法により前方から視認されるときに見えるよう描かれ得る。 基礎反射プレート構造19(図2を見よ)は,一般的には,その前面11が平らで滑らかな本体プレート12であって,その裏面全体又は記号の描写によ って占められているか,その描写に特に有用な本体プレート領域に対応するそ の裏面の相当部分に一様に分布し,一体化し,光学的に正確に形成された列又は多数のプリズム13を有する本体プレート12と,少なくとも,その裏面のプリズム保持領域上の反射金属層またはコーティング14及び時には保護コーティング又は14の金属の性質や反射板の使用状況により必要とされる場合は保護層15を有する。また説明するようにさらなるコーティング又は層16が 存在していてもよい(図12を見よ)。(5欄14~27行) 上記ないしのとおり,ヘッドライトで照らされたときに輝く反射フィルムで覆われた金属シートによる交 層16が 存在していてもよい(図12を見よ)。(5欄14~27行) 上記ないしのとおり,ヘッドライトで照らされたときに輝く反射フィルムで覆われた金属シートによる交通標識が既に知られていること,自動車のナ ンバープレートも反射性にするのが望ましいこと,そのため,乙6発明の目的は,背面反射性表面と夜間の安全を向上するとともに車両の感知等をより良くする役割を果たすプレートの提供であることが記載されている。 また,プレートの裏側には,プリズムなどの背面反射素子を備え,プレートの前表面には,刻印または押し出された文字や記号が施されていること,この 刻印又は押し出しにより,その背後のプリズムは破砕され,もはや反射しないこと,そのため,従来型のナンバープレートは,戻しプレスすることにより偽造が可能であったのに対して,乙6のプレートは,破砕されたプリズムと破砕されていないプリズムが当初の記号に対応しているために,偽造ができないという利点があることが記載されている。 そして,前方の表面のうち,突出していない部分を日中の光の中で白く色付けられたように見えるようにするために,グリッドパターン(格子パターン) 又はスクリーンパターンの白い複数のドットで印刷することができること,上記の図12のように,さらなるコーティング又は層16が存在していてもよいことが記載されている。(乙16抄訳,甲40参照)ウ乙6発明の構成上記イによれば,乙6発明の構成は,次のとおりであると認められる。 少なくとも多数のプリズム13を有する層からなる本体プレート12,および,本体プレート12の上層に設置された層16からなる背面反射性を有する反射プレート構造10において,上記プリズム13 少なくとも多数のプリズム13を有する層からなる本体プレート12,および,本体プレート12の上層に設置された層16からなる背面反射性を有する反射プレート構造10において,上記プリズム13が背面反射性を有する三角錐ピラミッド型プリズムである背面反射性を有する反射プレート構造10。 エ本件発明と乙6発明の対比本件発明と乙6発明を対比すると,以下のの点で一致し,の点で相違する。 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射物である点 相違点a 相違点1本件発明の再帰反射物が「再帰反射シート」であるのに対し,乙6発明のそれは「背面反射性を有する反射プレート構造」である点b 相違点2 本件発明は,「反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており,該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含 有する」のに対し,乙6発明は,そのようなものではない点 オ新規性・進歩性まず,上記エのとおり,本件発明と乙6発明には,相違点1,2が存在すると認められ,その内容に照らし,相違点1,2はいずれも実質的な相違点であるというべきであるから,同一の発明であるとはいえず,新規性を欠くとはいえないというべきである。 次に,本件発明と乙6発明の相違点1,2は,いずれも当業者において容易に想到できたものであるとはい うべきであるから,同一の発明であるとはいえず,新規性を欠くとはいえないというべきである。 次に,本件発明と乙6発明の相違点1,2は,いずれも当業者において容易に想到できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえない。 すなわち,相違点1について,上記イのとおり,そもそも乙6発明は,本体プレートを覆う再帰反射シートに代えて,本体プレートと反射素子を一体化することで偽造を防ぐプレートの発明であるから,乙6発明のプレートを再帰反 射シートに代える動機はなく,相違点1は,当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないというべきである。 また,相違点2について,乙6には,プレートに白いドットの印刷を設置することができると記載され,白いドットを印刷するに当たり,被告らが主張する周知技術1(一方向からはドットの色が見え,その向こう側を視認できなく するため,繰り返しのドットパターンを形成し,ドットの直径を1㎜,面積を0.785(0.5×0.5×3.14)㎟とすること)及び2(複数のドットを印刷するに当たり,相違点1の範囲内(「0.15㎟~30㎟」)の適宜の面積とすること)が知られていたとしても,プレートの層間密着性並びに耐水性及び耐候性の向上のために,相違点2に係る構成の印刷領域を設置すること は,本件訴訟に提出されたいずれの文献にも記載ないし示唆されていない。そうすると,相違点2も,当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないというべきである。 以上によれば,本件発明は,乙6発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえないというべきである。 カ被告らの主張 これに対し,被告らは,次のとおり主張するが,いずれも採用すること 容易に発明できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえないというべきである。 カ被告らの主張 これに対し,被告らは,次のとおり主張するが,いずれも採用することができない。 相違点についてa 乙6発明の「反射プレート」が本件発明の「再帰反射シート」に当たるか被告らは,乙6の「プレート」は,平板等を意味し,本件発明の「シート」 も,板等を意味するから(乙27,28),乙6の「プレート」は,本件発明の「シート」に包含されるのであり,この点について相違点があるとはいえないと主張する。 しかし,前記1のとおり,本件明細書【0044】には,本件発明の再帰反射シートを金属板等に貼付することが記載されているから,本件発明の再 帰反射シートは,ナンバープレート自体ではなく,ナンバープレートに貼付して用いる薄いシートであると考えられる。他方で,上記イのとおり,乙6には,ヘッドライトで照らされた際に輝く反射フィルムで覆われた金属シートが従来技術として記載されているところ,当該反射フィルムが,本件発明の「再帰反射シート」に該当し,乙6発明は,上記反射フィルムで覆うので はなく,反射素子であるプリズムを本体プレートと一体化して形成すると記載されているから,乙6発明の「反射プレート」は,乙6に従来技術として記載された本体プレートを覆う薄い反射フィルム,すなわち,本件発明の「再帰反射シート」とは異なるというべきである。 したがって,乙6発明の「反射プレート」は,本件発明の「再帰反射シー ト」とは異なるというべきである。 b 乙6発明についてプリズム13を有する層と層16の間に印刷層が設置されているといえるか被告らは, ,本件発明の「再帰反射シー ト」とは異なるというべきである。 b 乙6発明についてプリズム13を有する層と層16の間に印刷層が設置されているといえるか被告らは,乙6によれば,本体プレート12には「さらなるコーティング又は層16が存在していてもよい」と記載されているから,本件プレート1 2の表面にドットを印刷した上で層16を設置する構成が開示されていると いえるし,仮にそうでないとしても,印刷層の保護のために印刷層を保持体層と表面保護層の間に設置することは周知慣用技術であるから,この点における本件発明と乙6発明の相違点は,実質的な相違点であるとはいえないと主張する。 しかし,上記イの乙6の記載によれば,コーティング層は,本体プレート 12を保護するための層であると考えられ,印刷層を保護するためのコーティング層であるとは記載されていないから,必ずしもコーティング層の下に印刷層を設けるとは認識できず,コーティング層の上に印刷層を設けることも考えられる。そうすると,乙6には,コーティング層の下に印刷層を設置すること,すなわち,「プリズム13を有する層と層16の間に印刷層を設置」 することが記載されているとまではいえないというべきである。 したがって,乙6発明は,プリズム13を有する層と層16の間に印刷層が設置されているものではないというべきである。 c 乙6発明のドットが独立しており連続していないといえるかなど被告らは,乙6の「グリッドパターンの白い複数のドット」を合理的に理 解すれば,左下図のように,格子状に複数の白いドットが印刷されたものになるから,乙6の「ドット」は独立しており連続していないと主張するのに対し,原告は,ドットを互いに のドット」を合理的に理 解すれば,左下図のように,格子状に複数の白いドットが印刷されたものになるから,乙6の「ドット」は独立しており連続していないと主張するのに対し,原告は,ドットを互いに重なるようにして印刷して連続した線の模様にするのは普通に用いられる印刷技術であるから,右下図のように,印刷されるのはグリッドパターン(格子状)であると主張する。 この点,乙6には,印刷層に関するものとして,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットで印刷することができる」との記載があるの みで,それ以上の具体例は記載されていないから,上記記載が左上図と右上図のいずれを意図しているのかは,乙6の記載それ自体からは必ずしも明らかであるとはいえない。 そして,原告が主張するとおり,ドットを互いに重なるように連続した線の模様にすることが普通の印刷技術であるとしても,「線を印刷する」ことに ついて「ドットで印刷する」と記載したものとは考え難いから,乙6の上記記載は,ドットで線を印刷するのではなく,ドットを印刷すると記載されていると理解するのが自然であるが,他方で,必ずしも「独立」したドットを印刷しているとは限らず,ドットを重なるように印刷する可能性も考えられるから(甲48),乙6には,「独立」しており「連続していない」ドットを 印刷するとまでは記載されていないというべきである。また,乙6に,白いドットを印刷してもよいことが記載されているとまではいえても,図12の本件プレート12に白いドットを印刷したことは記載されていない。そうすると,乙6には,白い複数のドットが印刷された層を有すること,それが独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置され,連続層を形 本件プレート12に白いドットを印刷したことは記載されていない。そうすると,乙6には,白い複数のドットが印刷された層を有すること,それが独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置され,連続層を形成していな いことについては記載されていないというべきである。 したがって,乙6発明は,そもそも,白い複数のドットが印刷された層を有しているとか,それが独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置され,連続層を形成していないということはできないというべきである。 d 乙6発明が白色の着色剤を含有するか 被告らは,乙6には,白い複数のドットが印刷できることが記載され,白色を印刷するには白色顔料を用いるのが技術常識であるから,乙6には,白色顔料を含有することが記載されていると主張する。 しかし,被告らが主張するように,一般的には,白色を印刷するのに白色顔料を用いるとしても,発砲させた透明樹脂インクや透明樹脂の中空ビーズ を含むインク等を用いた,白色顔料を含有しない白色インキも存在するから (甲41,42),乙6には,「白色顔料」について記載されているとまではいえないというべきである。 e 小括以上によれば,そもそも,乙6発明の「反射プレート」は,本件発明の「再帰反射シート」とは異なる上,乙6発明は,プリズム13を有する層と層1 6の間に印刷層が設置されているとか,白い複数のドットが印刷された層(印刷層)を有しているとか,それが独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置され,連続層を形成していないとか,白色の着色料を含有しているとはいえず,上記ウの構成を有するものであるとしか認められない。 新規性・進歩性について 被 り返しのパターンで設置され,連続層を形成していないとか,白色の着色料を含有しているとはいえず,上記ウの構成を有するものであるとしか認められない。 新規性・進歩性について 被告らは,基本的に,本件発明と乙6発明の相違点が,独立印刷領域の面積の特定のみであることを前提として,新規性欠如及び進歩性欠如を主張する。 しかし,本件発明と乙6発明の相違点は,上記エのとおり多数あり,これらの全てが当業者において容易に想到することができたことは主張立証されていないのであり,むしろこれが否定されることは,上記オで説示したとおり である。 キ小括以上によれば,本件発明は,乙6発明と同一の発明であるとはいえず,これに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,新規性・進歩性を欠くものではなく,本件特許は,無効審判によって無効にされ るべきものであるとはいえない。 ⑸ 争点2-5(無効理由5-1(乙16発明1に基づく新規性欠如・進歩性欠如)の有無)についてア被告らは,本件発明は,乙16発明1(図9)であり,仮に相違点があるとしても,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,新規性欠如・進 歩性欠如の無効理由があると主張する。 イ乙16発明1の構成国際公開公報WO99/37470(乙16)の図9によれば,乙16発明1の構成は,次のとおりであると認められる。 1a 多数のプリズム64,64A,及び,プリズム64,64Aに設置された光透過性保護層95からなる再帰反射シートにおいて, 1b プリズム64,64Aと光透過性保護層95との間にプリント模様20が設置された,1f 再帰反射シート。 ウ本件発明と乙16発明1 護層95からなる再帰反射シートにおいて, 1b プリズム64,64Aと光透過性保護層95との間にプリント模様20が設置された,1f 再帰反射シート。 ウ本件発明と乙16発明1の対比本件発明と乙16発明1を対比すると,以下のの点で一致し,の点で相違 する。 一致点少なくとも多数の反射素子からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,印刷層が設置されている, 印刷された再帰反射シートである点 相違点a 相違点1本件発明は,反射素子層が反射素子と保持体層からなるのに対して,乙16発明1は,保持体層が存在するか不明な点 b 相違点2本件発明は,印刷層の設置場所が「反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間」であるのに対して,乙16発明1は,「プリズムと表面保護層の間」である点c 相違点3 本件発明は,印刷層が「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパタ ーンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対して,乙16発明1は,そのようなものであるか不明な点d 相違点4本件発明は,印刷層に含まれる着色剤が,「白色の有機顔料,白色または黄 色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上」であるのに対して,乙16発明1の着色剤は,どのようなものか不明な点エ新規性・進歩性まず,上記ウのとおり,本件発明と乙16発明1には,相違点1~4が存在すると認められ,その内容に照らし,相違点1~4はいずれも実質的な相違 点である 不明な点エ新規性・進歩性まず,上記ウのとおり,本件発明と乙16発明1には,相違点1~4が存在すると認められ,その内容に照らし,相違点1~4はいずれも実質的な相違 点であるというべきであるから,同一の発明であるとはいえず,新規性を欠くとはいえないというべきである。 次に,本件発明と乙16発明1の相違点1~4のうち,少なくとも相違点3は,当業者において容易に想到できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえない。 すなわち,乙16の段落【0015】には,「白色度を高めるパターンをプリントすること」,「パターンの中のラインまたはドットを,繰返しまたはランダムのどちらでも」プリントできることが記載されているから,「白色度を高めるパターン」として「ドットの繰り返しのパターン」が選択肢の一つとして記載されているとはいえるものの,「ライン」ではなく「ドット」の「繰返し」のパ ターンとした上で更に「ドット」の面積を所定の範囲とすることにより密着性及び耐候性が向上することは記載も示唆もされていない。そうすると,乙16発明1において,印刷層周辺の密着性を改良するために「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」の印刷層を設置する動機付けはなく, 相違点3は,当業者が容易に想到し得たものではないといえる。 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件発明は,乙16発明1に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえないというべきである(なお,被告らは,乙16の図1~7に記載された発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如も念のために主張するとしているが,本 易に発明できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえないというべきである(なお,被告らは,乙16の図1~7に記載された発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如も念のために主張するとしているが,本件発明と当該発明とを対比しても,同様の相違点が存在するから, やはり新規性及び進歩性を欠くとはいえない。)。 オ被告らの主張これに対し,被告らは,次のとおり主張するが,いずれも採用することができない。 相違点について 被告らは,本件発明と乙16発明1の相違点3について,乙16発明1は,印刷層の「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず」との構成を有していると主張する。 しかし,乙16の図9の説明以外の部分には,ドットについて記載されていても,同図のプリントパターン20がドットであるとは記載されていないし, プリント模様が一つか否かも不明であるから(すなわち,同図が,シートの部分構造を示した図であれば,プリントパターン20は他にも存在する可能性があり,模様は一つとは限らない可能性がある。),乙16において,印刷層の「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず」との構成が開示されているとはいえない。 したがって,乙16発明1が,印刷層の「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず」との構成を有しているとはいえない。 新規性・進歩性について被告らは,基本的に,本件発明と乙16発明1の相違点が,独立印刷領域の 面積の特定のみであることを前提として,新規性欠如及び進歩性欠如を主張す る。 しかし,本件発明と乙16発明1の相違点は に,本件発明と乙16発明1の相違点が,独立印刷領域の 面積の特定のみであることを前提として,新規性欠如及び進歩性欠如を主張す る。 しかし,本件発明と乙16発明1の相違点は,上記ウのとおり多数あり,これらの全てが当業者において容易に想到することができたことは主張立証されていないのであり,むしろこれが否定されることは,上記エで説示したとおりである。 カ小括以上によれば,本件発明は,乙16発明1と同一であるとはいえず,これに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,新規性・進歩性を欠くものではなく,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはいえない。 ⑹ 争点2-6(無効理由5-2(乙16発明2に基づく進歩性欠如)の有無)についてア被告らは,本件発明は,被告ら主張のように反射素子と保持体層とを別体と解釈した場合であっても,乙16発明2(図12)であり,仮に相違点があるとしても,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性欠如の無 効理由があると主張する。 イしかし,乙16の図12からは,被告らが主張するような乙16発明2の構成は認められず,また,仮に被告らの主張を前提として,本件発明と乙16発明2を対比したとしても,本件発明と乙16発明1の相違点3と同様の相違点が存在し,当業者がこれを容易に想到できたとはいえないから,やはり進歩性を欠くと はいえない。 ウ以上によれば,本件発明は,乙16発明2と同一であるとはいえず,これに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,進歩性を欠くものではなく,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはい 発明2と同一であるとはいえず,これに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,進歩性を欠くものではなく,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはいえない。 ⑺ 争点2-7(無効理由6(乙17発明に基づく進歩性欠如)の有無)について ア被告らは,本件発明は,乙17発明及び乙6発明,乙16発明,周知技術1,2,乙15発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性欠如の無効理由があると主張する。 イ乙17発明の構成特表平10-503133公報(乙17)の図3によれば,乙17発明の構成 は,次のとおりであると認められる。 多数のキューブコーナー素子68を有するシート64を含むキューブコーナータイプ再帰反射性ベースシート62を含み,ベースシート62は,その全面に耐 摩耗性カバーシート72を含み,カバーシート72とシート64の間に埋封されたグラフィックパターン76を含む再帰反射性ベースシート62。 ウ本件発明と乙17発明の対比本件発明と乙17発明を対比すると,以下のの点で一致し,の点で相違する。 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されている,印刷された再帰反射シートである点 相違点a 相違点1本件発明は,印刷層の印刷領域が,「独立した領域をなして繰り返しのパタ ーンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対して,乙 点1本件発明は,印刷層の印刷領域が,「独立した領域をなして繰り返しのパタ ーンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」であるのに対して,乙17発明は,そのようなものか不明である点b 相違点2本件発明は,印刷層が,「白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍 光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤」を含有するのに対して,乙17発明は,そのようなものか不明である点エ進歩性本件発明と乙17発明の相違点1,2のうち,少なくとも相違点1は,当業者において容易に想到できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえない。 すなわち,前記⑷(無効理由4)で説示したのと同様に,被告らが主張する乙6,15,16の記載や周知技術1(一方向からはドットの色が見え,その向こう側を視認できなくするため,繰り返しのドットパターンを形成し,ドットの直径を1㎜,面積を0.785(0.5×0.5×3.14)㎟とすること)及び2(複数のドットを印刷するに当たり,相違点1の範囲内(「0.15㎟~30㎟」) の適宜の面積とすること)を考慮しても,乙17発明の「グラフィックパターン76」について,印刷層周辺の密着性を改良するために,「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」の印刷層を設置する動機付けは存在しないから,相違点1は,当業者が容易に想到し得たものではないと考える。 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件発明は,乙17発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえないというべきである。 オ被告らの主張 上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件発明は,乙17発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえないというべきである。 オ被告らの主張これに対し,被告らは,次のとおり主張するが,いずれも採用することができ ない。 相違点について被告らは,本件発明と乙17発明の相違点1について,乙17発明の「グラフィックパターン」は「不連続」のパターンとの構成を有していると主張する。 しかし,乙17には,「グラフィックパターンは連続でありかつ再帰反射製品の実質的全体を覆ってもよく,又は不連続でありかつイメージ形状の部分のみ を覆ってもよい」(17頁)と記載されており,「グラフィックパターン」について「連続」のものと「不連続」のものとを選択できることが記載されているといえるが,実際に図3の「グラフィックパターン76」が「不連続」であることは記載されておらず,そのことを示唆する記載もないから,図3の「グラフィックパターン76」が「不連続」であるとは認められないというべきであ る。 したがって,乙17発明の「グラフィックパターン」が「不連続」のパターンとの構成を有しているとはいえない。 進歩性について被告らは,主引用発明である乙17発明が,「印刷層の印刷領域が独立した領 域をなして」,「連続層を形成せず」との構成を有していること,副引用発明である乙6発明及び乙16発明が,いずれも「印刷層の印刷領域が」「繰り返しのパターンで設置されて」いるとの構成を有していることを前提として,進歩性欠如を主張する。 しかし,上記のとおり,主引用発明である乙17発明が,「印刷層の印刷領域 が独立した領域をなして」,「連続 ーンで設置されて」いるとの構成を有していることを前提として,進歩性欠如を主張する。 しかし,上記のとおり,主引用発明である乙17発明が,「印刷層の印刷領域 が独立した領域をなして」,「連続層を形成せず」との構成を有しているとはいえず,本件発明と乙17発明には,この点の相違点を含む相違点1が存在している。 また,前記⑷~⑹のとおり,被告らが当該相違点に関する副引例として主張する乙6発明及び乙16発明は,いずれも「印刷層の印刷領域が繰り返しのパ ターンで設置されている」との構成を有しているとはいえない。 それゆえ,当業者が,相違点1を容易に想到することができたことは主張立証されていないのであり,むしろこれが否定されることは,上記エで説示したとおりである。 カ小括以上によれば,本件発明は,乙17発明と同一の発明であるとはいえず,これ に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,進歩性を欠くものではなく,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはいえない。 ⑻ 争点2-8(無効理由7(乙18発明に基づく進歩性欠如)の有無)についてア被告らは,本件発明は,乙18発明に乙15発明又は乙6発明’(及び周知技術 1又は2)を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性欠如の無効理由があると主張する。 イ特開平11-305018公報(乙18)の記載特開平11-305018公報(乙18)には,次のような記載がある。 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は新規な構造の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。より詳しくは,本発明は新規な構造の三角錐型反射素子が最密充填状に配置された三 る。 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は新規な構造の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。より詳しくは,本発明は新規な構造の三角錐型反射素子が最密充填状に配置された三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。 【0137】図13において,⑴は本発明の三角錐型反射素子(R1,R2)が最密充填状に配置された反射素子層,⑵は反射素子を保持する保持体層であり,⑽ は光の入射方向である。反射素子層⑴及び保持体層⑵は一体であるのが普通であるが,別々の層を積層しても構わない。本発明における再帰反射シートの使用目的,使用環境に応じて表面保護層⑷,観測者に情報を伝達したりシートの着色のための印刷層⑸,反射素子層の裏面に水分が侵入するのを防止するための封入密封構造を達成するための結合材層⑹,反射素子層⑴と結合材層⑹に囲まれて,反 射素子の界面での再帰反射を保証するための空気層⑶,結合材層⑹を支持する支 持体層⑺,及び,該再帰反射シートを他の構造体に貼付するために用いる接着剤層⑻と剥離材層⑼とを設けることができる。 【0139】印刷層⑸は通常,表面保護層⑷と保持体層⑵の間,あるいは,表面保護層⑷の上や反射素子⑴の反射面上に設置することが出来,通常グラビア印刷,スクリーン印刷及びインクジェット印刷などの手段により設置可能である。 【図13】本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの一態様であるマイナス傾斜の再帰反射シートの構造を示す断面図である。 ウ乙18発明の構成上記イによれば,乙18発明の構成は,次のとおりであると認められる。 三角錐型反射素子が最密充填状に配置された反射素子層⑴,保持体層⑵,表面保護層⑷,表面保護層⑷と保持体層⑵の間に設置された印刷層⑸を有する三 18発明の構成は,次のとおりであると認められる。 三角錐型反射素子が最密充填状に配置された反射素子層⑴,保持体層⑵,表面保護層⑷,表面保護層⑷と保持体層⑵の間に設置された印刷層⑸を有する三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 エ本件発明と乙18発明の対比本件発明と乙18発明を対比すると,以下のの点で一致し,の点で相違す る。 一致点少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層,および,反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて,反射素子の反射側面上,または保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されている ことを特徴とする印刷された再帰反射シートである点。 相違点本件発明は,「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟であり,該印刷層は,白色の有機顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上の着色剤を含有する」のに対して, 乙18発明は,かかる構成を有するか不明である点。 オ進歩性次のとおり,本件発明と乙18発明の相違点は,当業者において容易に想到できたものであるとはいえず,進歩性を欠くとはいえない。 乙18発明と乙15発明の組合せについて a 被告らは,乙15には,ドイツの交通標識の表面色の規格が記載され,一般的に,非自己発光性の標識には,赤,…,白,黒,灰色等が考えられると記載され,図1には六角形が繰り返される印刷が記載されており,当該六角形の面積を算出すると1.95㎟であり,また,着色のために白色顔料を用いるのは周知(周知技術3)であるから,本件発明は えられると記載され,図1には六角形が繰り返される印刷が記載されており,当該六角形の面積を算出すると1.95㎟であり,また,着色のために白色顔料を用いるのは周知(周知技術3)であるから,本件発明は,乙18発明に乙15 発明及び周知技術3を適用することにより,当業者が容易に発明することができたと主張する。 b そこで検討するに,「ドイツ規格DIN6171(交通標識の表面色)」(乙15)には,ドイツの交通標識の表面色の規格が記載され,表面色の例示の一つとして白が挙げられている。そして,表1には,灰色Aの再帰反射性の 数値について※が付され,脚注において,灰色Aの上記※が付された数値は,「網羅率60%(下記の図1参照)の六角形格子において黒のスクリーンインキを用いて達成しなければならない」と記載され,「図1」には,表面色灰色A(再帰反射性)を作成するための網羅率60%の六角形格子として,面積1.95㎟の六角形が繰り返しのパターンで設置された図が記載されてい る。 c このように,乙15には,交通標識の表面色を灰色Aとするために,黒色の六角形を繰り返しのパターンで設置した印刷層を設けることが記載されているから,同じく交通標識等に使用し得る乙18発明において,印刷層を灰色Aとすること,その際に黒色の六角形を繰り返しのパターンで設置することまでは,当業者において容易に想到し得るといえる。しかし,他方で,乙 15には,上記灰色Aは黒のスクリーンインキを用いて作成することが記載されており,黒のスクリーンインキによって印刷された六角形の周囲に白色部分が存在し黒色部分の網羅率が60%であることにより,遠くからは灰色Aに見えるようになっているのであり,黒のスクリーンインキに白色顔料等を含有させる動機付けはないか て印刷された六角形の周囲に白色部分が存在し黒色部分の網羅率が60%であることにより,遠くからは灰色Aに見えるようになっているのであり,黒のスクリーンインキに白色顔料等を含有させる動機付けはないから,当業者において,印刷層が「白色の有機 顔料,…のうちの一以上の着色剤を含有する」ものとすることを容易に想到できたとはいえないというべきである。 したがって,乙18発明に,乙15の黒色の六角形の印刷を適用することにより,当業者が本件発明を容易に想到することができたとはいえないというべきである。 d また,乙15には,交通標識の表面色として白が例示されているから,同じく,交通標識等に使用し得る乙18発明において,印刷層を白色とすることは,当業者が任意に行うことができるといえ,その際,印刷層を白色にするための着色剤として,白色の有機顔料等を用いることは周知技術(周知技術3)であるから,印刷層を「白色の有機顔料,…のうちの一以上の着色剤 を含有する」ものとすることも,当業者が容易に想到することができたといえる。 しかし,白色の印刷層を設置するに当たり,当該白色の印刷層を,「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置され,連続層を形成せず,独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」とすることが,乙15の記 載及び技術常識からみて,当業者が容易に行うことができるといえる理由は ない。なぜなら,乙15には,灰色Aとして,六角形が独立した繰り返しのパターンで設置される例は記載されていても,それはあくまでも,印刷層を灰色Aとするための印刷であり,白色とするために,当該六角形の印刷をする動機付けはないからである。 したがって,乙18発明に,乙15に例示された白や,周知技術3(白色 顔料) も,印刷層を灰色Aとするための印刷であり,白色とするために,当該六角形の印刷をする動機付けはないからである。 したがって,乙18発明に,乙15に例示された白や,周知技術3(白色 顔料)を適用することにより,当業者が本件発明を容易に想到することができたとはいえないというべきである。 e 以上によれば,乙18発明に,乙15発明を組み合わせることによって,当業者が本件発明を容易に発明することができたとはいえないというべきである。 乙18発明と乙6発明’(及び周知技術1,2)又は慣用技術との組合せについて被告らは,①乙6には,ライセンスプレートによる情報伝達等のため,「グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層のドットの領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を 形成せず,該グリッドパターン(格子パターン)の白い複数のドットが印刷された層は,白色の有機又は無機顔料の着色剤を含有する」との構成(乙6発明’)を採用することが記載されているから,当業者は,乙18発明のナンバープレート(ライセンスプレート)による情報伝達等のため,乙6発明’を採用した結果,本件発明の印刷領域の面積(0.15㎡~30㎡)を除く相違点は容易 想到であり,また,面積の相違点は,実質的な相違点でなく,仮に相違点であったとしても,周知技術1,2から容易想到であり,さらに,②再帰反射シートの分野において,色相調整のために白色の独立した規則的に繰り返すドットを印刷することは慣用技術であるから(乙23,24),乙18発明の印刷層について,白色の独立した規則的に繰り返すドットを印刷すること及び印刷領域 の面積を所定のものとすることが容易想到であると主張する。 ら(乙23,24),乙18発明の印刷層について,白色の独立した規則的に繰り返すドットを印刷すること及び印刷領域 の面積を所定のものとすることが容易想到であると主張する。 しかし,前記⑷(無効理由4)で説示したのと同様に,乙6(及び周知技術1,2)又は乙15を考慮しても,当業者が,乙18発明において,印刷層周辺の密着性を改良するために,「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず,該独立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」である印刷層を設置する動機付けは存在しないというべきであ る。 以上によれば,乙18発明に,乙6発明’(及び周知技術1,2)又は慣用技術を組み合わせる動機付けは存在しないから,本件発明は,当業者が容易に発明をすることができたとはいえないというべきである。 カ小括 以上によれば,本件発明は,乙18発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,進歩性を欠くものではなく,本件特許は,無効審判によって無効にされるべきものであるとはいえない。 ⑼ 小括以上によれば,本件発明に無効理由があるとはいえない。 4 争点3(原告の損害賠償請求の可否及びその損害額(主位的請求))について⑴ 争点3-1(特許法102条2項の適用を前提とする原告の損害額(主位的主張)についてア前記1及び2で説示したところによれば,被告3Mジャパンプロダクツが被告製品⑴(被告旧製品)を製造し,被告3Mジャパンがこれを仕入れて顧客に販売 等する行為は,本件特許権を侵害するものであり,当該行為については過失があったことが推定され(特許法103条),これを覆すに足りる立証はない。そして,被告らの パンがこれを仕入れて顧客に販売 等する行為は,本件特許権を侵害するものであり,当該行為については過失があったことが推定され(特許法103条),これを覆すに足りる立証はない。そして,被告らの行為については,客観的な関連共同性があると認められる。 したがって,被告らは,原告に対し,共同不法行為(民法719条1項,709条)に基づき,原告が被った損害を賠償する責任を負う。 そして,原告は,主位的主張として,特許法102条2項の適用を前提とする 損害額の支払を求めているため,以下検討する。 イ特許法102条2項に基づく損害額次のとおり,原告の特許法102条2項に基づく損害額は,別紙「損害額一覧表」の番号1の「2項による損害額」欄記載の金額であると認められる。 特許法102条2項について a 特許法102条2項は,「特許権者…が故意又は過失により自己の特許権…を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において,その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,特許権者…が受けた損害の額と推定する。」と規定する。特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者が被った 損害の賠償を求めるためには,特許権者において,損害の発生及び額,これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,その立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,その利益の額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困 難性の軽減を図った規定である。そして,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなか 侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,その利益の額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困 難性の軽減を図った規定である。そして,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきである。 b そして,証拠(甲50~64)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,現在まで,被告旧製品と同等性能である多数の再帰反射シート(原告製品)の製 造販売等を行っていたことが認められる。 これによれば,本件において,原告に,被告らによる本件特許権の侵害行為がなかったならば利益が得られていたであろうとの事情が存在することが認められ,特許法102条2項の適用が認められる。 c そして,特許法102条2項の上記趣旨からすると,同項所定の特許権侵 害行為により侵害者が受けた利益の額とは,原則として,侵害者が得た利益 全額であると解するのが相当であって,このような利益全部について同項による推定が及ぶと解すべきである。もっとも,上記規定は推定規定であるから,侵害者の側で,侵害者が得た利益の一部又は全部について,特許権者が受けた損害との相当因果関係が欠けることを主張立証した場合には,その限度で上記推定は覆滅されるということができる。 被告らが本件特許権の侵害行為によって得た利益の額a 特許法102条2項所定の特許権侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要になった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者の側にあるというべきで ある。 ら,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要になった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者の側にあるというべきで ある。 b そこで検討するに,計算鑑定の結果に加え,証拠(乙39,50,56,58,69)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許権の設定登録の日である平成22年3月5日以降の被告旧製品の売上高及びこれに関して被告らが主張する経費項目に係る経費の額は,それぞれ別紙「売上高・経費一覧表」の 番号1~14のとおりであることが認められる(なお,計算鑑定の結果については,会計業務等につき専門的知見を有する計算鑑定人が,中立的な立場から,被告会社の会計システムその他の資料を検討の上,その検討過程を随時期日で報告するなどの手続を経て得られたものであり,その信用性を疑わせるべき具体的な事情もないから,その信用性は優に認められるというべき である。)。 そして,上記の被告らが主張する経費項目に係る経費のうち,限界利益の算定に当たって売上高から控除すべき経費は,侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要になったものをいうから,例えば,侵害品についての原材料費,仕入費用,運送費等がこれに当たるのに対し,管理部門の人件費や交 通・通信費等は,通常,侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要にな った経費には当たらないというべきである。これを踏まえて検討するに,別紙「売上高・経費一覧表」記載の番号2~14の経費のうち,被告旧製品の製造販売に直接関連して追加的に必要になった経費は,番号2~5,9,10の経費のみであると認めるのが相当である。 そうすると,被告らがそれぞれ被告旧製品の製造販売等によって得た限界 利 売に直接関連して追加的に必要になった経費は,番号2~5,9,10の経費のみであると認めるのが相当である。 そうすると,被告らがそれぞれ被告旧製品の製造販売等によって得た限界 利益の額は,別紙「売上高・経費一覧表」の番号15のとおりであると認められ,これらの額が,原告が被告らによる本件特許権の侵害行為によって被った損害の額であると推定されるというべきである。 c これに対し,被告らは,その余の経費についても,被告旧製品の製造販売に直接関連して追加的に必要になった経費に当たると主張するが,本件各証 拠をみても,被告旧製品の製造販売に関する従事状況等は明らかではなく,これらの経費が被告旧製品に直接関連して追加的に必要になったものであることは必ずしも明らかではないから,被告旧製品の売上高から控除すべき経費とみるのは相当でない。被告らの上記主張は,採用することができない。 推定覆滅の事情 a 特許法102条2項における推定の覆滅については,同条1項ただし書の事情と同様に,侵害者が主張立証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。例えば,①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブ ランド力,宣伝広告),④侵害品の性能(機能,デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情について,特許法102条1項ただし書の事情と同様,同条2項についても,これらの事情を推定覆滅の事情として考慮することができるものと解される。 b そこで,被告らが特許法102条1項ただし書の推定覆滅事由として主張 する点について検討するに,次のとおり,2割の推定覆滅を認め 推定覆滅の事情として考慮することができるものと解される。 b そこで,被告らが特許法102条1項ただし書の推定覆滅事由として主張 する点について検討するに,次のとおり,2割の推定覆滅を認めるのが相当 である。 ⒜ 被告らは,本件発明において従来発明と相違する特徴とされる印刷層の印刷領域の面積の限定は,顧客吸引には全く寄与しておらず,被告旧製品と被告新製品の耐候性にも実質的な差異はないのであり,被告旧製品のカタログでも,印刷層の面積の大小はセールスポイントとされていないし, 原告も本件発明の実施品を日本国内で販売していないのであり,本件発明は,被告旧製品の販売に寄与しているとはいえない旨を主張する。 しかし,前記1⑼で説示したとおり,本件発明の従来技術とは異なる技術的特徴は,再帰反射シートの印刷層について,「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず」,「独 立印刷領域の面積が0.15㎟~30㎟」,かつ,「白色の有機顔料…着色剤を含有させる」との構成を組み合わせることにより,印刷層周辺の密着性を向上させ,耐水性・耐候性を向上させるとともに,色相の改善を図ることにあるのであるから,その一部のみを独立して捉えて技術的特徴を措定する被告らの上記主張は,その前提を欠くものである。また,被告旧製 品と被告新製品の耐候性の実験結果(乙45~49)についても,その実験条件や環境の適否については必ずしも明らかでないから,これをもって直ちに被告旧製品と被告新製品の耐候性に実質的な差異はないとはいえない。そして,証拠(甲3,4,9,10,23,67~70)及び弁論の全趣旨によれば,被告旧製品のカタログやウェブサイトには,本件発明の 技術的特徴である耐水性・ に実質的な差異はないとはいえない。そして,証拠(甲3,4,9,10,23,67~70)及び弁論の全趣旨によれば,被告旧製品のカタログやウェブサイトには,本件発明の 技術的特徴である耐水性・耐候性・色相に関する性能の良さを強調する記載が多数存在することも認められる。 したがって,被告らの上記主張をもって推定覆滅事由と認めるのは相当ではないというべきである。 ⒝ 次に,被告は,本件発明は,被告旧製品の顧客への販売に貢献しておら ず,むしろ,3Mブランドに裏付けられた被告らの信用,実績及び知名度 等こそが,被告旧製品の販売に極めて大きな貢献をしているというべきであり,現に被告旧製品から被告新製品に切り替えた前後でも売上高は大きく変化していないと主張する。 しかし,仮に被告らが3Mグループとしてのブランド力を有するとしても,これが被告旧製品の販売にどの程度の貢献をしたかを裏付ける的確な 証拠は提出されていない。また,仮に被告旧製品から被告新製品に切り替えた前後で売上高が大きく変化していないとしても,顧客において被告旧製品と被告新製品との相違点を認識しているか否かが定かでない以上,従前の被告旧製品の顧客吸引力がその後の被告新製品の販売に影響を与えた可能性が否定できないから,これをもって直ちに本件発明が顧客への販売 に貢献していないということはできない。 したがって,被告らの上記主張をもって推定覆滅事由であると認めるのは相当ではない。 ⒞ また,被告らは,主要国道および高速道路等における道路標識に用いられる被告製品を含む長尺ロール製品については,再帰反射シートのパイオ ニア的存在である被告らの売上シェアが極めて大きく,原告は被告旧製品の販売数量分の実施能力を有していない る道路標識に用いられる被告製品を含む長尺ロール製品については,再帰反射シートのパイオ ニア的存在である被告らの売上シェアが極めて大きく,原告は被告旧製品の販売数量分の実施能力を有していないのであり,実際に,被告らの販売する被告製品並びにその他の製品(Diamondグレード及びEngineeringグレードの再帰反射シート)の売上比がそれぞれ●(省略)●であり,原告製品の売上比が10%であるから,仮に被告製品⑴が販売 できなくなったとすれば,そのうちの●(省略)●(=10/(10+●(省略)●))のみが原告製品に向かうことになると主張する。 しかし,そもそも,競合品といえるためには,市場において侵害品と競合関係に立つ製品であることを要するものと解される。被告らは,被告らが販売するDiamondグレード及びEngineeringグレード の再帰反射シートが競合品であることを前提としているが,弁論の全趣旨 によれば,前者の価格は被告旧製品の●(省略)●以上であり,後者の性能は被告旧製品と同等ではないこともうかがわれるから,これらの製品の価格や性能等を捨象して,同様の用途に用いられる再帰反射シートであることをもって競合品であると解するのは相当ではない。そうすると,被告らが主張するDiamondグレード及びEngineeringグレー ドの再帰反射シートが市場において被告旧製品と競合関係に立つものと認めることはできず,それゆえに被告旧製品の需要がDiamondグレード及びEngineeringグレードの再帰反射シートと原告製品の売上シェアに応じて按分されるとはいえないというべきである。 したがって,被告らの上記主張をもって推定覆滅事由であると認めるの は相当ではない。 ⒟ 再帰反射シートと原告製品の売上シェアに応じて按分されるとはいえないというべきである。 したがって,被告らの上記主張をもって推定覆滅事由であると認めるの は相当ではない。 ⒟ さらに,被告らは,仮に被告旧製品の需要が全て原告製品に向かったとしても,原告の逸失利益は,被告旧製品の販売数量に原告製品の限界利益率を乗じた額にとどまるところ,原告製品の販売単価は被告旧製品の●(省略)●程度の価格帯であり,原価等の控除すべき費用も被告旧製品と同じ く●(省略)●程度であるはずであり,原告製品の限界利益率は被告製品のそれの●(省略)●程度にすぎないことが推認されるから,特許法102条2項によって推定される損害額は,原告の逸失利益を大幅に超えることとなると主張する。 この点,弁論の全趣旨によれば,原告製品の販売単価は,被告旧製品の ●(省略)●程度の価格帯であることが認められるところ,仮に被告旧製品が販売されなかったとしても,原告において,被告旧製品の限界利益と同額の限界利益を得ることができたとは認め難く,この点については,一定割合の推定覆滅を認めるのが相当であるが,他方で,原告製品の販売単価が低価格であることにより,その販売数量が,被告製品の販売数量より も大きくなる可能性もあるのであるから,大幅な推定覆滅を認めるのが相 当であるともいえない。 ⒠ 以上の事情を総合考慮すると,被告らが主張する推定覆滅事由のうち,原告製品と被告旧製品の販売単価の差異についてのみ,推定覆滅事由として考慮するのが相当であり,その覆滅割合は2割と認めるのが相当である。 小括 したがって,原告の特許法102条2項に基づく損害額は,上記bで認定した別紙「売上高・経費一覧表」の番号15の合計額の るのが相当であり,その覆滅割合は2割と認めるのが相当である。 小括 したがって,原告の特許法102条2項に基づく損害額は,上記bで認定した別紙「売上高・経費一覧表」の番号15の合計額の8割である別紙「損害額一覧表」の番号1の「2項による損害額」欄記載の金額であると認めるのが相当である。 ウ弁護士費用相当額 弁論の全趣旨によれば,原告は,本件訴訟の提起・追行を原告訴訟代理人らに委任し,相当額の弁護士報酬を支払う旨を約したことが認められる。そして,本件事案の内容,難易度,認容額その他諸般の事情を考慮すると,被告らの共同不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,上記イで認定した別紙「損害額一覧表」の番号1の「2項による損害額」欄記載の金額の1割である同別紙の番号 2の「弁護士費用相当額」欄記載の金額であると認めるのが相当である。 エ小括以上によれば,特許法102条2項の適用を前提とする原告の損害額は,別紙「損害額一覧表」の番号3の「合計額」欄記載の金額であると認めるのが相当である。 ⑵ 争点3-2(特許法102条3項の適用を前提とする原告の損害額(予備的主張))についてア次に,原告は,予備的主張として,特許法102条3項の適用を前提とする損害額の支払を求めているため,以下検討する。 イ特許法102条3項に基づく損害額 特許法102条3項について 特許法102条3項は,特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定である。同項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許権…を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求す た規定である。同項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許権…を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」旨規定する。そうすると,同項による損害は,原則として,侵 害品の売上高を基準とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額a 特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」については,平成10年法律第51号による改正前は「そ の特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」と定められていたところ,「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得になってしまうとして,同改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。 特許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許が無効にされるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最低保証額 を支払い,当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの実施料の返還を求めることができないなどさまざまな契約上の制約を受けるのが通常である状況の下で事前に実施料率が決定されるのに対し,技術的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものとはいえないとして特許権侵害に当たるとされた場合には,侵害者が上記のような契約上の制約を負わない。そして,上記 のような特許法改正の経緯に照らせば,同項に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該特許権についての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料率は,むしろ,通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうこ 諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料率は,むしろ,通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。 したがって,実施に対し受けるべき料率は,①当該特許発明の実際の実施 許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様,④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮し て,合理的な料率を定めるべきである。 b そこで検討するに,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,本件訴訟の提起前に,被告らを含む3Mグループに対し,本件特許のライセンス料率5%を提案していたこと(乙41),他方で,米国3Mは,過去に第三者に提起した特許権侵害訴訟において,再帰反射シートに関する特許の実施 料率は9%であると主張していたこと(甲71),米国3Mらは,過去に第三者に提起した訴訟において,ロイヤルティ料率20%での合意をしたこと(甲72,乙66),株式会社帝国データバンク編「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書 ~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」(平成22年3月)において,再 帰反射シート(樹脂シート)が該当する「化学」の最小値が0.5%,最大値が32.5%,平均が4.3%であるとされていること(甲73,乙67),被告3Mジャパンらは,原告に提起した特許権侵害訴訟において,実施料率を10%と )が該当する「化学」の最小値が0.5%,最大値が32.5%,平均が4.3%であるとされていること(甲73,乙67),被告3Mジャパンらは,原告に提起した特許権侵害訴訟において,実施料率を10%と主張していること等が認められる。 また,②本件発明は,前記のとおり,再帰反射シートの構成全体に関わる 発明であり,相応の重要性を有しているといえ,これらの構成を備えた従来技術は存在せず,この点についての代替技術が存在することはうかがわれない。 そして,③本件発明は,被告旧製品の全体について実施されており,これによって向上される耐水性・耐候性は,需要者の購入動機に影響を与えるも のであるから,本件発明を被告旧製品に用いることにより,被告らの売上及 び利益に貢献するものと認められる。 さらに,原告と被告らは,いずれも再帰反射シートの製造販売業者であり,競業関係にある。 c 上記bの諸事情を含む本件訴訟に表れた事業を総合考慮すると,本件特許権を侵害した被告らに事後的に定められるべき,本件での実施に対し受ける べき料率は,10%を下らないものと認めるのが相当である。 したがって,本件特許権侵害について,特許法102条3項により算定される損害額は,前記⑴で認定した被告旧製品の売上高の10%になる。 ウ小括以上によれば,特許法102条3項に基づく損害額は,前記⑴で認定した同条 2項に基づく損害額を超えず,それゆえ弁護士費用相当額を加算した金額も,前記⑴で認定した同項を前提とする原告の損害額を超えることはないから,同額を原告の損害額と認めるのが相当である。 ⑶ 争点3-3(消滅時効の成否)についてア被告らは,仮に原告の被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求権の えることはないから,同額を原告の損害額と認めるのが相当である。 ⑶ 争点3-3(消滅時効の成否)についてア被告らは,仮に原告の被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求権の 存在が認められるとしても,原告は,遅くとも平成24年5月9日時点(品番PX8470シリーズを別異に解したとしても平成26年9月1日時点)までには,被告旧製品が本件発明の技術的範囲に属するという客観的事実を認識したといえ,この時点をもって本件特許権侵害に係る「損害及び加害者」を知ったというべきであるから,上記損害賠償請求権のうち本件訴訟提起の3年前の日の前日である 平成27年1月15日までの期間分は,時効により消滅したというべきであると主張する。 イ消滅時効の起算点は,被害者等が「損害及び加害者を知った時」,すなわち加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当であり,また,違法行為による損害の発生及 び加害者を現実に了知したことを要すると解される。本件のような物の製造販売 による特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の事案では,被害者である特許権者が,加害者による当該物の製造販売の事実及びそれによる損害発生の事実を認識したことに加え,当該物が当該特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することを認識したことも必要であると解するのが相当である。 ウそこで検討するに,前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば, 次の事実が認められる。 原告と被告らはいずれも再帰反射シートを製造販売等する競業関係にある。 原告は,平成23年3月,ドイツ3Mに対し,ドイツ国内におけるドイツ侵害品の製造販売等が本件欧州特許(本件発明とは,色相 原告と被告らはいずれも再帰反射シートを製造販売等する競業関係にある。 原告は,平成23年3月,ドイツ3Mに対し,ドイツ国内におけるドイツ侵害品の製造販売等が本件欧州特許(本件発明とは,色相に関する構成要件1Eに係る構成がないことを除いて同一)等に係る特許権を侵害すると主張して, ドイツ侵害訴訟を提起した。 原告は,平成23年10月26日までに,日本国内の市場において,被告旧製品のうち品番2930シリーズと品番3930シリーズを入手し,サンプルを保存して公正証書まで作成した(甲15,16)。 少なくとも被告旧製品のうち品番3930シリーズとドイツ侵害品は,いず れも米国から輸入した原反ロールを用いて製造されたものであり,外観,製品番号(「3930」),生産国,生産者が同一であった(乙40,42)。 原告は,平成24年1月19日,代理人を通じて,米国3Mからのレターに対する回答として,同社に対し,「我々のクライアントが知る限りにおいて,全ての被疑侵害品,すなわち3930シリーズの再帰反射シートは,本特許及び そのファミリー特許が成立している国で製造されている。この点に鑑み,我々のクライアントは,ライセンス料の算出において全世界での販売を考慮すべきとの見解を持っている。NCIは,35万ユーロの一括払いとの提案は受け入れられず,よって,3Mの提案に基づく和解交渉については関心がない。侵害品のシートの全世界での販売の推計額に基づき,2007年から本日までのラ イセンス料として1億ドルが適切であると思われる。3Mの実際の販売額が 我々のクライアントの推計額より著しく低い場合は,ライセンス料の額は交渉可能である。…タイムシート案をPDFファイルにて添付する。」旨を記載し,「TIMESHE の実際の販売額が 我々のクライアントの推計額より著しく低い場合は,ライセンス料の額は交渉可能である。…タイムシート案をPDFファイルにて添付する。」旨を記載し,「TIMESHEETSETTLEMENTAGREEMENT(タイムシート和解契約)」というタイトルで,別紙にNCI(原告)特許の一覧として本件特許の特許番号が記載されたファイルを添付した英文メールを送信し た(乙41,43)。 平成24年1月24日,ドイツ侵害訴訟において,ドイツ3Mによるドイツ侵害品の製造販売等が本件欧州特許等に係る特許権を侵害することを認める第一審判決が下された。 この頃,被告らは,本件旧製品から本件新製品への切替えを行い,印刷層の 印刷領域の面積が本件発明の構成要件1D所定の面積を超えるものとなった(乙39,58,69)。 原告は,平成29年頃,被告旧製品の構造の分析を終え,遅くともこの時点までに,被告旧製品とドイツ侵害品の構成が同一であることを認識した(甲17,18,28)。 被告旧製品のうち,品番2930シリーズには「madeinUSA」と表示され,品番3930シリーズには「madeinGermany」と表示され,品番PX8470シリーズには生産国の表示がなかった。 原告は,平成30年1月,本件訴訟を提起した。 エ上記ウの認定事実を踏まえて検討するに,原告は,平成23年3月にドイツ侵 害訴訟を提起し,同年10月に被告旧製品の一部を入手しており,平成24年1月には,ドイツ侵害訴訟においてドイツ侵害品が本件欧州特許の技術的範囲に属することを認める本件第一審判決が下されたところ,被告旧製品のうち品番3930シリーズとドイツ侵害品の再帰反射シートは,いずれも米国3Mから輸入した原反 てドイツ侵害品が本件欧州特許の技術的範囲に属することを認める本件第一審判決が下されたところ,被告旧製品のうち品番3930シリーズとドイツ侵害品の再帰反射シートは,いずれも米国3Mから輸入した原反ロールを用いて製造されたものであり,その外観も同一であることが認め られるが,そうであるからといって,両者の内部の構成が同一であるとは限らな いといえる。特に本件においては,被告らは,被告旧製品の品番を変更せずに構成の変更を行っており,必ずしも原反ロールの生産者,生産国,品番が同一であるからといって,その構成が同一であるとはいえないことをうかがわせる事情があるといえる。それゆえ,上記の事情をもって,直ちに原告において被告旧製品が本件発明の技術的範囲に属することを認識していたと認めることはできない。 また,その頃,原告は,被告らに対し,本件特許及び被告製品のうち「3930シリーズ」の存在を指摘した上で,ライセンスオファーをする警告書を送付しているが,これには被告製品が本件特許権を侵害することを認識していることを認めるに足りる記載はないし,早期かつ抜本的な紛争解決の観点から,本件特許権の侵害の有無を十分に検討することなく,本件特許に係るライセンスオファー を出したとしても不自然ではない。それゆえ,上記警告書の存在をもって,原告において被告旧製品が本件発明の技術的範囲に属することを認識していたと認めることもできない。 そうすると,原告が,平成29年頃に被告旧製品の構造の分析を終える前に,被告旧製品のうちの品番3930シリーズとドイツ侵害品の構成が同一であり, 本件特許権の技術的範囲に属することを確定的に認識したことを認めるに足りず,ましてやドイツ侵害品とは品番や生産国表示等も異なる品番2930シリーズ及びP ズとドイツ侵害品の構成が同一であり, 本件特許権の技術的範囲に属することを確定的に認識したことを認めるに足りず,ましてやドイツ侵害品とは品番や生産国表示等も異なる品番2930シリーズ及びPX8470シリーズとドイツ侵害品の構成が同一であり,本件特許権の技術的範囲に属することを確定的に認識したことを認めるに足りないというべきである。 そして,原告は,平成29年頃に被告旧製品の構造の分析を終えてから3年以内である平成30年1月に本件訴訟を提起しているのであるから,本件損害賠償請求権について消滅時効は完成していないというべきである。 オ以上によれば,被告らの主張する消滅時効の抗弁は認められない。 5 争点4(原告の不当利得返還請求の可否及びその損失額(予備的請求))について 原告は,仮に被告らの主張する消滅時効の主張が認められた場合,予備的に,被告 本件特許の登録日である平成22年3月5日から本件訴訟提起の3年前の日である平成27年1月16日までの期間における被告らによる本件特許の実施について,同期間の被告旧製品の売上高に30%を乗じた額の損失を受けたとして,不当利得返還請求をするが,前記4⑶で説示したとおり,上記消滅時効の主張は認められず,かつ,原告の損失額が前記4⑴で認定した損害額を上回ることはない。 したがって,原告の被告らに対する不当利得返還請求のうち,前記4⑴で認定した損害額の限度で理由があるとしても,これを上回る部分については,理由がないことになる。 6 原告の請求の当否以上によれば,原告の主位的請求(民法709条に基づく損害賠償請求)は,被告 旧製品に係る損害15億5344万4548円及びうち1億円に対する不法行為の終了日(平成29年4月) の当否以上によれば,原告の主位的請求(民法709条に基づく損害賠償請求)は,被告 旧製品に係る損害15億5344万4548円及びうち1億円に対する不法行為の終了日(平成29年4月)の後である平成30年2月3日から,うち14億5344万4548円に対する令和元年10月29日から,各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり,その余の主位的請求及び予備的請求(民法703条に基づく不当利得返還請求)は,いずれも理由がないことに なる。 7 結論よって,原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 田中孝一 裁判官鈴木美智子 裁判官稲垣雄大 別紙 被告製品目録 下記品番の反射シート 記2930293129322935 29373930393139323935 3937HIP2930HIP2931HIP2932HIP2935 HIP2937HIP3930HIP3931HIP3932HIP3935 HIP3937 PX8470PX8471PX8472PX8474以上 HIP3931HIP3932HIP3935 HIP3937 PX8470PX8471PX8472PX8474以上 別紙被告製品の構成 1 被告製品⑴(下図は被告製品⑴の一例) ●(省略)● 印刷パターン 被告製品⑴の構成1a再帰性反射効果を有する複数のキューブコーナー,及び,当該キューブコーナーの上層に設けられた表面層からなる再帰反射シートであり,キューブコーナーは単一層の樹脂シートであって,1bキューブコーナーと表面層の間に印刷層が設けられているが,当該印刷層はキューブコーナーの反射側面に設けられておらず,1c印刷層を構成する印刷領域は,再帰反射シートの両端部以外でほぼ等間隔で設けられた複数のライン状パターンと,再帰反射シートの両端部における複数のライン状の側縁領域を含み,当該側縁領域は外部に露呈しており,1d印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,1e印刷層は,●(省略)●と●(省略)●を含有する●(省略)●印刷インキにより形成されるが,これはキューブコーナーからの再帰性反射光を抑制し,また,反射シートの白色度を低下させて色相を暗くするものである,1f上記1a~1e を備える印刷された再帰反射シートである。 表面層(保持体層)(反射素子)キューブコーナー 2 被告製品⑵(下図は被告製品⑵の一例) ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●●(省略)● ●(省略)● ●(省略)● 印刷パターン 被告製品⑵の構成 ●(省略)● ●(省略)●●(省略)● ●(省略)● ●(省略)● 印刷パターン 被告製品⑵の構成2a~2c被告製品⑴の1a~1c と同じ。 2d印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,両端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15 ㎟~30 ㎟であり,2e印刷層は,●(省略)●と●(省略)●を含有する●(省略)●印刷インキにより形成されるが,これはキューブコーナーからの再帰性反射光を抑制し,また,反射シートの白色度を低下させて色相を暗くするものである,2f上記2a~2e を備える印刷された再帰反射シートである。 (保持体層)(反射素子)キューブコーナー表面層 3 被告製品⑶(下図は被告製品⑶の一例) ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●●(省略)● 印刷パターン 被告製品⑶の構成3a~3c被告製品⑴の1a~1c と同じ。 3d印刷層を構成する各ライン状パターンの面積が●(省略)●となるよう設計されており,両端部のうちの少なくとも一つの端部における側縁領域の面積が0.15 ㎟~30 ㎟ではなく,3e印刷層は,●(省略)●と●(省略)●を含有する●(省略)●印刷インキにより形成されるが,これはキューブコーナーからの再帰性反射光を抑制し,また,反射シートの白色度を低下させて色相を暗くするものである,3f上記3a~3e を備える印刷された再帰反射シートである。 成されるが,これはキューブコーナーからの再帰性反射光を抑制し,また,反射シートの白色度を低下させて色相を暗くするものである。上記3a~3eを備える印刷された再帰反射シートである。以上 表面層(保持体層)(反射素子)キューブコーナー 別紙 売上高・経費一覧表 番号費目被告3Mジャパンプロダクツ被告3Mジャパン 売上高●(省略)●●(省略)● 原反ロールの購入金額●(省略)●●(省略)● 被告旧製品の仕入金額●(省略)●●(省略)● 製造及び出荷するのに要する費用(接着剤,ライナー及び梱包費用)●(省略)●●(省略)● 外注加工費●(省略)●●(省略)● 直接製造部門労務費●(省略)●●(省略)● 直接製造部門経費●(省略)●●(省略)● 製造間接費●(省略)●●(省略)● ロイヤルティ●(省略)●●(省略)● 商品配送費●(省略)●●(省略)● 製造関連費用●(省略)●●(省略)● 技術開発費●(省略)●●(省略)● 販売,マーケティング,受注処理費,管理部門費●(省略)●●(省略)● ダイ・ツールコスト●(省略)●●(省略)● 限界利益●(省略)●●(省略)●*被告旧製品の販売終了月は,●(省略)●である。 別紙 損害額一覧表 番号費目損害額 2項による損害額14億1222万2317円 弁護士費用相当額1億4122万2231円 合計 別紙 損害額一覧表 番号 費目 損害額 2項による損害額 14億1222万2317円 弁護士費用相当額 1億4122万2231円 合計 15億5344万4548円

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