判決平成14年6月27日神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第28号固定資産評価審査決定取消請求事件 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が平成12年3月30日付けでした,別紙物件目録記載1ないし3の土地(以下,「1土地」「2土地」「3土地」といい,以上の土地をあわせて「本件各土地」という。)に対する平成10年度固定資産課税台帳登録価格についての原告の審査申出を棄却する旨の決定(以下「本件審査決定」という。)のうち,別紙原告主張の評価額記載の金額を超える部分を取消す。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件各土地を所有する原告は,兵庫県芦屋市長(以下「芦屋市長」という。)が評価額を決定し,固定資産課税台帳に登録した本件各土地の平成10年度の価格について,平成10年3月24日,被告に対し審査の申出をした。 本件は,被告が平成12年3月30日付でした原告の審査申出を棄却する旨の決定に対し,同審査決定は違法であるとして,同決定のうち,平成10年度固定資産課税台帳登録価格について,別紙原告主張の評価額記載の金額を超える部分の取消しを求める事案である。 2 前提事実以下の事実のうち,文章の末尾に証拠を掲げた事実は証拠等によって認定した事実であり,それ以外は当事者間に争いがない事実である。 (1) 当事者,本件土地原告は,平成10年1月1日(平成10年度の固定資産税課税の基準日)以前から,芦屋市に所在する本件各土地を所有している。 他方,被告は,地方税法423条に基づき芦屋市に設置された,固定資産課税台帳に登録された事項に対する不服申立てを審査決定する機関である。 本件各土地は,阪急芦屋川駅の北東側に隣接し,阪 他方,被告は,地方税法423条に基づき芦屋市に設置された,固定資産課税台帳に登録された事項に対する不服申立てを審査決定する機関である。 本件各土地は,阪急芦屋川駅の北東側に隣接し,阪急軌道敷以北の芦屋川から宮川との間に位置する。 (2) 固定資産課税台帳登録価額等ア本件各土地の平成9年度の固定資産評価額は,別紙被告主張の評価額1ないし3の各(1)記載のとおりであった(この金額自体については,原告も違法であるとは主張していない)。 イ芦屋市長は,本件各土地の平成10年度の価格(固定資産評価額)を別紙被告主張の評価額1ないし3の各(2)記載のとおりの金額と一旦は決定し,固定資産課税台帳に同各価額を登録した。なお,別紙被告主張の評価額1ないし3の各(2)記載の金額は,別紙被告主張の評価額1ないし3の各(1)記載の金額に減価修正率0.93(減価率7%)を乗じた金額である。 ウところが,芦屋市長は,被告が本件審査申出を審理中の平成11年3月23日,地方税法417条1項の規定により,次の(ア)ないし(ウ)のとおり,本件各土地に関する平成9年度,同10年度の固定資産評価額を修正(減額)した。同修正によって算定された価格(別紙被告主張の評価額1ないし3の各(3)記載の金額)を,以下「最終決定額」という。 (ア) 本件各土地のうち,一部公衆道路として利用されている土地があったため,以下のとおり課税地積の修正をした。 a 1土地について964.94㎡から924.87㎡に修正b 2土地について552.34㎡から536.01㎡に修正c 3土地について456.53㎡から429.46㎡に修正(イ) 本件各土地について,二方路線加算を行う際,二方路線の高低差を考慮する必要があり, .34㎡から536.01㎡に修正c 3土地について456.53㎡から429.46㎡に修正(イ) 本件各土地について,二方路線加算を行う際,二方路線の高低差を考慮する必要があり,芦屋市固定資産(土地)評価取扱要領第3章第3節7に従って,1㎡当たりの評点を32万5800から32万5600に高地補正をした。 (ウ) 本件各土地の上記修正後1㎡当たりの評点(32万5600)を踏まえて,修正価格(最終決定額)を以下のとおり算定した(10円未満切り捨て)。 a 1土地は2億8005万8030円b 2土地は1億6230万8110円c 3土地は1億3004万3910円(3) 審査決定等原告は,平成10年3月24日,被告に対し,本件各土地の平成10年度の登録価格について審査申出をしたところ,被告は,平成12年3月30日付けで,原告の審査申出を棄却する旨の決定(本件審査決定)をし,同決定書は,同年4月1日,原告に送付された。 (4) 関係規定等ア評価基準固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続は,地方税法388条1項の規定に基づく固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号,以下「評価基準」という。)に定められている。平成9年度(基準年度)の価格は,評価基準第1章第12節経過措置の一により,平成8年1月1日の地価公示価格等の7割を目処に評定し,さらに同経過措置の二により,平成8年7月1日までの間に地価の下落がある場合には修正を加えることができるものとされている。 イ地方税法附則17条の2と修正基準(ア) ところが,平成9年度の税制改正において,地方税法附則17条の2の規定により,平成10年度又は平成11年度において地価の下落 とされている。 イ地方税法附則17条の2と修正基準(ア) ところが,平成9年度の税制改正において,地方税法附則17条の2の規定により,平成10年度又は平成11年度において地価の下落が見られる場合には,同条1項の規定に基づく「平成10年度又は平成11年度における土地の価格に関する修正基準」(平成9年自治省告示第126号,以下「修正基準」という。)によって,土地の価格を簡易な方法で修正する特例措置が講ぜられた。 (イ) 土地価格の修正方法については,修正基準に概要次のように定められている。 a 都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士等による鑑定評価価格を活用し,平成8年1月1日から平成9年7月1日まで(平成10年度の下落修正の場合)の下落状況を把握する。 b 用途地区(住宅地区,商業地区等の区分)を基本に宅地を区分し,その区分毎に評価基準第1章第3節及び第12節一によって求めた価格(平成8年1月1日の価格)に,aによって把握した下落状況からみて最も適切であると判断した修正率を乗じて,平成10年度の価格とする。 ただし,用途地区内の宅地の価格の下落状況に幅があり,用途地区毎に修正率を適用することが不適当であると認める場合には,用途地区をさらに区分することができる。 c 平成9年度において,評価基準第1章第12節二による価格の修正(平成8年1月1日から平成8年7月1日までの地価の下落に応じた修正)を行った宅地については,次の(a)又は(b)のいずれか低い価格によってその価格を求める。 (a) 平成9年度における修正を行った後の価格(b) 前記a及びbにより修正を行った価格 3 争点本件各土地の平成10年度の固定資産税課税台帳登録価格を是認した 。 (a) 平成9年度における修正を行った後の価格(b) 前記a及びbにより修正を行った価格 3 争点本件各土地の平成10年度の固定資産税課税台帳登録価格を是認した同年度の本件審査決定は適法か。具体的には,芦屋市長が採用した本件各土地評価に対する下落修正率7%は適法か,それを踏まえて算定した本件各土地の同年度の固定資産税課税台帳登録価格は適法か。 4 争点に関する当事者の主張(1) 被告の主張本件各土地の平成10年度固定資産評価額は,別紙被告主張の評価額1ないし3の各(1)(平成9年度固定資産評価額)に0.93(下落修正率)を乗じた金額(別紙被告主張の評価額1ないし3の各(2))に,前記2(2)ウ記載のとおり課税地積の修正及び高地補正を加えたものであり,別紙被告主張の評価額1ないし3の各(3)(最終決定額)記載の金額である。本件各土地の平成10年度の下落率(平成9年度固定資産評価額に対する下落率)が7%である理由は,次のとおりである。 ア地区区分芦屋市長は,修正基準に従い,芦屋市の宅地評価において,市域を南北に北から阪急軌道敷,JR軌道敷,国道2号線,阪神軌道敷,国道43号線,臨港線,埋立地域に区分し,東西は芦屋川と宮川で区切り,また,町名により価格が変わる傾向があることから,原則として町を単位として類似する町については合わせ,類似しないところは切り離して,面的な広がりを持つ地区に区分した。 そして,本件各土地を含む面的な広がりを持つ単位として,甲町の全部(平成9年度の標準宅地番号25-1ないし3〔以下,番号のみを表示する。〕),乙町の一部(13-3),丙町の一部(23-3)を合わせた地域を一つの地区(以下「A地区」という。)とした。 イ下落率 標準宅地番号25-1ないし3〔以下,番号のみを表示する。〕),乙町の一部(13-3),丙町の一部(23-3)を合わせた地域を一つの地区(以下「A地区」という。)とした。 イ下落率(ア) 芦屋市長は,平成10年度におけるA地区(本件各土地も含まれる。)の標準宅地は,県地価調査地点(甲町c番)の北側100m程度の位置に所在し,同標準宅地の平成8年1月1日の価格は,県地価調査地点の価格より比準して求められることから,本件各土地の価格の下落率についても,比準元の県地価調査地点の下落率と同じと判断して,その下落率を採用した。 (イ) すなわち,平成8年1月1日から平成8年7月1日までの下落率は3%である。平成8年7月1日から平成9年7月1日までの下落率は4%である。 したがって,平成8年1月1日から平成9年7月1日までの下落率は6.9%となる。 ところが,平成9年度における評価に際し,芦屋市長は,既に,平成8年1月1日から平成8年7月1日までの下落修正5%を行っているので,平成10年度の下落率は2%となる。 (ウ) しかし,阪急軌道敷以北の芦屋川から宮川までの間にある5地区(以下「本件5地区」という。A地区も含まれる)については,過去の地価動向にあまり大きな差がないこと,A地区に隣接する丁町,丙町の下落がA地区よりも大きいこと等との均衡を考慮して,A地区についても同じ7%の下落率を適用した。 (エ)a なお,芦屋市長は,阪急軌道敷以北の芦屋川から宮川までの間にある次の5地区(別紙区分表1参照,本件5地区)について,同じ7%の下落率を適用している。 (a) A地区(本件各土地が存在する地区)(b) B地区(c) C地区(d) D地 地区)について,同じ7%の下落率を適用している。 (a) A地区(本件各土地が存在する地区)(b) B地区(c) C地区(d) D地区(e) E地区b 本件5地区の下落率は,別紙一覧表(1)記載のとおりであり,いずれの地区においてもその下落率は7%以下であるから,芦屋市長の判断は適正である。 (2) 原告の主張本件各土地の平成10年度固定資産評価額は別紙原告主張の評価額1ないし3記載の金額であり,本件各土地の平成10年度の下落率(平成9年度固定資産評価額に対する下落率)は少なくとも9.4%以上である。芦屋市長が下落率を7%と認定したことについては,以下のような誤りがある。 ア地区区分の誤り(ア) 修正基準によれば,「市町村長は,用途地区内の宅地の価格の下落状況に幅があり,用途地区ごとに修正率を適用することが不適当であると認める場合には,用途地区をさらに区分することができる。」と定められているところ,以下のような事情からすると,芦屋市長が採用した区分けよりもより細分化すべきであった。 (イ) 芦屋市長が主張するA地区を同一の状況類似地区として評価することは,以下のような事情からして,適切でない。 aA地区の中には,都市計画法上の用途地区区分上,第1種低層住居専用地域(建ぺい率40%,容積率80%)と第1種中高層住居専用地域(建ぺい率60%,容積率200%)が併存し,渾然一体となっている。 bA地区のうち阪急沿線地域は,平成8年以前は併用住宅区分で,北側の山手側高級住宅区分とは相違する。 cA地区内には,標準宅地として芦屋市甲町b番地の県地価調査地点 っている。 bA地区のうち阪急沿線地域は,平成8年以前は併用住宅区分で,北側の山手側高級住宅区分とは相違する。 cA地区内には,標準宅地として芦屋市甲町b番地の県地価調査地点の北側100メートルの地点が存在していたが,被告は,同地をもってA地区全体を代表する標準宅地として適切でないことを認めた。その結果,A地区内には,その下落率を算定するための適切な標準宅地が存在しなくなった。 dA地区の路線価は,2%から9%まで大きな幅があった(甲4)。 概ね北の山手側の下落率が低く,南の阪急沿線の下落率が高い。 (ウ) 芦屋市長は,平成14年度において,A地区を2地区にさらに細分化しており,同細分化は原告が本件で主張した都市計画法上の用途地域区分と合致している。平成10年度においても,平成14年度と同様に細分化して,A2地区の下落率を算定し,それを適用すべきであった。 イ適用すべき下落率(イ) 本件各土地の平成10年度の評価額の平成9年度の評価額に対する下落率は,甲第2号証の1・2(不動産鑑定士作成の不動産鑑定評価書)のとおり9.4%である。 A地区の下落率は,9.4%の下落率を示していた土地(本件各土地)が存在していた以上,少なくとも9.4%を採用すべきであった。 (ウ) 本件各土地を含む都市部のように地価の高い地域では,神戸市が採用しているように(甲3),下落率が1%刻みの小区分で細かく設定して処理すべきである。 しかるに,芦屋市長は,神戸市と相違し,大区分によってその下落率の算出をしている。 第3 当裁判所の判断 1 平成9年度の税制改正について固定資産税の評価額は,地方税法349条の規定により,3年毎の基準年度(平成9年 し,大区分によってその下落率の算出をしている。 第3 当裁判所の判断 1 平成9年度の税制改正について固定資産税の評価額は,地方税法349条の規定により,3年毎の基準年度(平成9年度が該当)に決定され,第2年度及び第3年度においては,地目の変換及び分合筆があった場合を除き,原則として基準年度の価格に据え置くこととされている。そして,固定資産の評価の基準,実施方法及び手続は,固定資産評価基準に定められている。ところが,平成9年度の税制改正において,地方税法附則17条の2の規定により,平成10年度又は平成11年度において地価の下落が見られる場合には,修正基準によって土地の価格を修正する特例措置が講じられた。 地価の上昇局面においては,価格の据え置きは納税者に不利益をもたらすものではないが,地価の下落局面においては,第2年度又は第3年度に係る賦課期日における価格が基準年度の価格を下回ることになり,納税者は当該年度における価格を上回る価格に基づく税負担を求められることになる。このような状況下,地価の下落局面において顕著となる納税者不利の状況を改善するという要請と,課税事務と課税コストの増大をできる限り抑えるという要請とを調和させるため,平成10年度又は平成11年度においてさらに地価の下落傾向が見られる場合には,市町村長の判断により修正基準によって修正(減額)した価格を課税標準とすることができる特例措置を講ずることとされた。 以上の次第で,本件各土地の平成10年度の固定資産税の評価額については,前記第2の2(4)イで検討した地方税法附則17条の2,修正基準が特に問題となる。 2 事実の認定証拠(乙1,乙3)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (1) 芦屋市長が本件各土地の下落修正率を7%と た地方税法附則17条の2,修正基準が特に問題となる。 2 事実の認定証拠(乙1,乙3)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (1) 芦屋市長が本件各土地の下落修正率を7%とした理由ア下落状況の把握芦屋市長は,修正基準に従い,平成9年度(基準年度)に区分した全市域を平成10年度の時点修正を行ううえで更に集約し,県の地価調査及び不動産鑑定士による鑑定評価を活用して,平成8年1月1日から平成9年7月1日までの地価の下落状況を把握した。 イ地区区分そして,芦屋市長は,修正基準に従い,芦屋市の宅地評価において,市域を南北に北から阪急軌道敷,JR軌道敷,国道2号線,阪神軌道敷,国道43号線,臨港線,埋立地域に区分し,東西は芦屋川と宮川で区切り,また,町名により価格が変わる傾向があることから,原則として町を単位として類似する町については合わせ,類似しないところは切り離して,面的な広がりを持つ地区に区分した。 そして,本件各土地を含む面的な広がりを持つ単位として,甲町の全部(25-1ないし3),乙町の一部(13-3),丙町の一部(23-3)を合わせた地域を一つの地区(A地区)とした。 なお,A地区内には,都市計画法上第1種低層住居専用地域(建ぺい率40%,容積率80%)と第1種中高層住居専用地域(建ぺい率60%,容積率200%)が混在しているが,これらは同一の用途地域(住宅地区中の住居専用地域)に属する。 ウ下落率(ア) 芦屋市長は,平成10年度におけるA地区(本件各土地も含まれる。)の標準宅地は,県地価調査地点(甲町c番)の北側100m程度の位置に所在し,同標準宅地の平成8年1月1日の価格は,県地価調査地点の価格より比準して求められることから,本件各土 件各土地も含まれる。)の標準宅地は,県地価調査地点(甲町c番)の北側100m程度の位置に所在し,同標準宅地の平成8年1月1日の価格は,県地価調査地点の価格より比準して求められることから,本件各土地の価格の下落率についても,比準元の県地価調査地点の下落率と同じと判断して,その下落率を採用した。 (イ) すなわち,平成8年1月1日(平成7年7月1日の地価調査価格を標準宅地鑑定の際に時点修正した価格49万1582円/㎡)から平成8年7月1日(同時点の県地価調査価格47万7000円/㎡)までの時点修正率は,0.97(47万7000円÷49万1582円)(下落率3%)である。 平成8年7月1日(同時点の県地価調査価格47万7000円/㎡)から平成9年7月1日(同時点の県地価調査価格45万8000円/㎡)までの時点修正率は,0.96(45万8000÷47万7000円)(下落率4%)である。 したがって,平成8年1月1日から平成9年7月1日までの時点修正率は,0.931(0.97×0.96)(下落率6.9%)となる。 ところが,平成9年度における評価に際し,芦屋市長は,既に,平成8年1月1日から平成8年7月1日までの下落修正5%を行っているので,平成10年度の下落率は2%(0.931÷0.950=0.980)となる。 (ウ) しかし,阪急軌道敷以北の芦屋川から宮川との間にある住宅地域5地区(本件5地区,A地区も含まれる)については,過去の地価動向にあまり大きな差がないこと,A地区に隣接するB地区,C地区の下落がA地区よりも大きいこと等との均衡を考慮して,A地区(本件各土地も含まれる。)についても,本件5地区と同じ7%の下落率を適用した。 (エ) なお,芦屋市長は,阪急軌道敷以北の芦屋川か A地区よりも大きいこと等との均衡を考慮して,A地区(本件各土地も含まれる。)についても,本件5地区と同じ7%の下落率を適用した。 (エ) なお,芦屋市長は,阪急軌道敷以北の芦屋川から宮川までの間にある次の5地区(別紙区分表1参照,本件5地区)について,同じ7%の下落率を適用している。 aA地区(本件各土地が存在する地区),B地区,C地区bD地区cE地区(2) 被告による検証被告は,芦屋市長の前記(1)のアないしウの認定判断について,次のとおり検証した。 ア芦屋市長の前記(1)アの判断及び同ウの計算に誤りがない。 イ本件5地区についての各下落率及び各下落率の平均値は,別紙一覧表(1)(ア)の「8・7・1~9・7・1までの下落率」欄,同(イ)の「8・7・1~9・7・1までの下落率の平均値」欄に記載のとおり,いずれも7%以下である。 ウ本件5地区に存する地価公示地点(5ポイント)と県地価調査地点(2ポイント)の平成8年1月1日から平成9年7月1日まで,及び平成8年7月1日から平成9年7月1日までの各地点毎の価格及び下落率は,別紙一覧表(2)記載のとおりである。 本件5地区に存する地価公示地点(5ポイント)と県地価調査地点(2ポイント)の平成8年1月1日から平成9年7月1日まで,及び平成8年7月1日から平成9年7月1日までの下落率の平均値は,別紙一覧表(3)記載のとおりである。 エ別紙一覧表(3)のb欄記載のとおり,A・B・C・D・E・Hの7ポイント全体の下落率平均値は6.2%,A・B・C・Dの4ポイントの下落率平均値は5.8%,B・C・Dの3ポイントの下落率平均値は6.7%であって,いずれも7%未満である。 D・E・Hの7ポイント全体の下落率平均値は6.2%,A・B・C・Dの4ポイントの下落率平均値は5.8%,B・C・Dの3ポイントの下落率平均値は6.7%であって,いずれも7%未満である。 また,別紙一覧表(3)のd欄とa欄を比較すれば明らかなように,d欄の芦屋市長が適用した下落率平均値の方が,a欄の地価公示価格及び県地価調査価格による下落率平均値よりも,A・B・C・D・E・Hの7ポイント,A・B・C・Dの4ポイント,B・C・Dの3ポイントのいずれにおいても,12.6%対11.8%,11.7%対10.4%,11.7%対11.3%と上回っている。 オしたがって,別紙一覧表(2)の⑧欄のC・D・F・Gの4ポイントの下落率,同⑪欄のC・F・Gの3ポイントの下落率が7%を越え,また,別紙一覧表(3)のc欄のA・B・C・D・E・Hの7ポイントの下落率平均値が7.4%であり,同B・C・Dの3ポイントの下落率平均値が7.3%となっているが,本件5地区の平成10年度下落率の適用として7%を越える数値を採用することは,妥当性を欠き適切ではない。 カ被告は,以上の検証の経過を踏まえ,本件各土地を含むA地区に対する平成10年度の下落率につき,その利用状況や地価動向が類似する丁町,丙町等の隣接地区と同じ率の下落率7%とした芦屋市長の判断は,地価公示価格及び県地価調査価格の下落率の平均値から誤りがあるとは認められず,適切妥当であると判断した。 3 検討(1) 下落修正率7%の妥当性ア妥当性前記2の(1)(芦屋市長が本件各土地の減価率を7%とした理由),同(2)(被告による検証)によると,被告主張の減価率7%は,固定資産評価基準,地方税法附則17条の2,本件修正基準に従った合理 前記2の(1)(芦屋市長が本件各土地の減価率を7%とした理由),同(2)(被告による検証)によると,被告主張の減価率7%は,固定資産評価基準,地方税法附則17条の2,本件修正基準に従った合理的なものであり,納税者の利益を配慮した適切妥当な減価割合であることが認められる。 イ妥当性の裏付け(ア) 路線価の下落率との対比a 本件各土地の西側,東側及び南側の平成8年1月1日,平成9年1月1日,平成10年1月1日の相続税路線価格を見ると,一番大きな下落率となる南側路線価は次のようになっている(甲4,弁論の全趣旨)。 (a) 平成8年1月1日が42万円(b) 平成9年1月1日が40万5000円(c) 平成10年1月1日が35万円b 平成9年7月1日の路線価を上記(ア)a(b)と(ア)a(c)の平均値である37万7500円とすると,平成8年1月1日から平成9年7月1日までの下落率は10.2%となる。 これに対して,芦屋市長は,本件各土地の平成9年度の下落率を5%とし,平成10年度の下落率を7%としているから,平成9年度と平成10年度で合計11.7%の下落率を認定していることになる。 c 固定資産評価額と異なり,毎年路線価の見直しが行われている相続税路線価から算出した下落率と比較しても,なお,芦屋市長の行った下落率の方が大きいのである。 この事実からも,被告主張の減価率7%は,納税者に加重な固定資産税を課することのないように配慮した妥当なものであることが裏付けられる。 (イ) 本件各土地の鑑定評価額との対比原告提出に係る不動産鑑定評価書(甲2の2)は,本件各土地の平成9年7月1日時点での評価額合 妥当なものであることが裏付けられる。 (イ) 本件各土地の鑑定評価額との対比原告提出に係る不動産鑑定評価書(甲2の2)は,本件各土地の平成9年7月1日時点での評価額合計を7億7600万円と鑑定している。これに対し,芦屋市長が行った下落修正後の本件各土地の固定資産評価額合計は5億7241万0050円(別紙被告主張の評価額の1ないし3の各(3)〔最終決定額〕の合計額)である。 芦屋市長の固定資産評価額は原告主張の鑑定評価額の73.8%であり,ほぼ評価基準どおりの7割評価になっており,この点からも減価率7%の妥当性が裏付けられる。 (2) 前記認定に反する原告主張の検討ア地区区分の誤り(ア) 原告は,芦屋市長が大区分のままで下落修正を行ったことは違法であるとして,前記第2の4(2)アのとおり主張する。 (イ) しかし,修正基準は,「用途地区等を基本に宅地を区分し,その区分毎に修正率を適用する。」と規定しており,価格修正の措置が,基準年度における状況類似地区の区分とは異なり,用途地区等というより広い区分を想定している。 これは,下落修正の措置が,3年に一度の基準年度の評価替えとは違い,地価下落に対応するための臨時的な措置であるからであり,ここでいう「用途地区等を基本に宅地を区分」する理由は,価格修正の措置が,限られた時間の中である程度簡易な方法で行うものであり,面的に一定の広がりを持った地域を単位として修正する必要があるからである。そこで,地価の下落状況は,商業地区と住宅地区の間に典型的に見られるように,用途地区毎に異なる傾向を示していることから,用途地区等別に修正率を適用することとされているものである(乙4-2047・6頁,2047 の下落状況は,商業地区と住宅地区の間に典型的に見られるように,用途地区毎に異なる傾向を示していることから,用途地区等別に修正率を適用することとされているものである(乙4-2047・6頁,2047・12頁)。 修正基準は,用途地区をさらに細分化する(例えば,住居専用地域を更に第1種低層住居専用地域と第1種中高層住居専用地域に細分化する)ことを,積極的に求めているものではないのである。 (ウ) また,修正基準では,同一用途地区内に複数の下落率がある場合には,市町村長が地価の下落を最も適切に反映していると判断する率を適用することとなるが,地域の状況によっては,そのうちの最大の下落率を適用しても差し支えないこととされている(乙4-2047・12頁)。 つまり,必ずしも下落率を細かくし,用途地区を細分化する(例えば住居専用地域を更に第1種低層住居専用地域と第1種中高層住居専用地域に細分化する)必要はなく,同一用途地区(例えば大区分である住宅地区)なら同一の率でもよいのであり,用途地区を細分化するか否かについては,市町村長の判断(適切な裁量権の行使)に任されているのである。 そして,芦屋市長が,A地区を第1種低層住居専用地域と第1種中高層住居専用地域に細分化しなかったことについて,その裁量権の行使に逸脱,濫用の違法があったことを認めるに足る的確な証拠がない。 (エ) この点につき,原告は,修正基準には,「用途地区内の宅地の価格の下落状況に幅があり,用途地区毎に修正率を適用することが不適当と認める場合には,用途地区をさらに区分することができる。」と定められていることや,本件5地区の下落率には4%から7%まで3%もの開差があり,同じA地区内でも下落率に明らかな差があることを根拠に,用途地区 場合には,用途地区をさらに区分することができる。」と定められていることや,本件5地区の下落率には4%から7%まで3%もの開差があり,同じA地区内でも下落率に明らかな差があることを根拠に,用途地区をさらに区分して評価しなければならなかったと主張する。 しかし,芦屋市長は,平成10年度の修正率を,住宅地区について,阪急沿線より北側の芦屋川から東は7%,西は5%としており,把握した下落状況から判断して,用途地区を細分化していることが窺える(乙3,別紙区分表2参照)。 しかも,芦屋市長は,平成10年度における地価下落状況を把握するため,阪急沿線以北の芦屋川から宮川までの間にある住宅地域5地区(本件5地区)の下落状況を調査しており,その調査結果によると,A地区(本件各土地が存在する地区)の下落率は4%にすぎないが,A地区の下落率も,最も下落率の大きなE地区の下落率7%と同一の下落率としたのであるから(前記2(1)ウ(ウ)(エ),別紙一覧表(1)参照),A地区に土地を所有する納税者(原告を含む)の権利が違法に侵害されているとはいえないのである。 イ神戸市の修正率との比較(ア) 1%きざみ原告は,「神戸市は,1%刻みで小区分しており,芦屋市でも,1%刻みで小区分して処理しなければ,場所による不均衡が発生し,適切な課税をすることができない。」と主張する。 しかし,神戸市の下落率は,最大でも4%までがほとんどであり,下落率が低いため,神戸市長が発表した地区区分では,結果的に1%刻みになったものと思われる(甲3,乙3,弁論の全趣旨,別紙区分表2参照)。 したがって,芦屋市は1%刻みで小区分していないが,そのために,芦屋市に土地を所有する者は,神戸市に土地を所有する者 なったものと思われる(甲3,乙3,弁論の全趣旨,別紙区分表2参照)。 したがって,芦屋市は1%刻みで小区分していないが,そのために,芦屋市に土地を所有する者は,神戸市に土地を所有する者に比べて,過重な固定資産税を負担しているなどとはいえない。 (イ) 大区分さらに,原告は,「芦屋市長が,神戸市のように小区分ではなく,大区分のままで下落修正を行ったことは違法である。」と主張する。 しかし,別紙区分表2(乙3)からも明らかなように,芦屋市及び神戸市ともに色分けした部分毎に異なった修正率で下落修正をしており,芦屋市の区分が神戸市に比べて大きいとはいえず,また,神戸市が1%刻みで下落修正しているからといって,神戸市の下落修正の区分が小さいともいえないのである。 ウ不動産鑑定評価書に基づく本件各土地の下落率(ア) 原告の主張原告は,次のとおり主張する。 a 不動産鑑定評価書(甲2の1・2)によると,本件各土地の平成10年度の下落率は9.4%である。 bA地区の下落率も,少なくともこの9・4%を採用すべきであり,芦屋市長が採用した下落率7%は高すぎて違法である。 (イ) 検討a 一定の面的な広がりを持つ地域での地価下落地方税法附則17条の2で規定されている「当該市町村の区域内の自然的及び社会的条件から見て類似の利用価値を有すると認められる地域」とは,当該市町村内においてその利用状況や環境が類似する一定の面的広がりを持った地域を指すが,修正事務の簡素化を図る観点から,修正基準においては,市街地宅地評価法における用途地区等を基本として,地価下落による修正を行うこととしているのである(乙4-2047・ 的広がりを持った地域を指すが,修正事務の簡素化を図る観点から,修正基準においては,市街地宅地評価法における用途地区等を基本として,地価下落による修正を行うこととしているのである(乙4-2047・8頁)。 したがって,今回の据え置き年度の価格の修正は,一定の面的な広がりを持つ地域において地価が下落した場合に価格を修正するものであり,面的な修正に必要な下落率を把握すれば足り,必ずしも全ての土地の下落を把握しなければならないものではない(乙4-2047・5頁)から,原告が行った不動産鑑定評価(甲2の1・2)により,直接個別の土地について下落修正をおこなわなければならないものではない。 b 不動産鑑定評価書による下落率の疑問しかも,不動産鑑定評価書(甲2の1・2)による本件各土地の平成10年度の下落率9.4%自体についても,以下のとおりの疑問がある。 (a) 本件各土地の鑑定書(甲2の1・2)は,次のとおり本件各土地の評価額を鑑定している。 ⅰ 平成8年7月1日の価格(甲2の1)下記の比準価格及び収益価格を関連づけ,更に地価公示法に基づく地価公示(標準地)価格との均衡を考慮して,本件各土地の平成8年7月1日時点での評価額を43万5000円/㎡と鑑定している。 記比準価格(取引事例比較法) 45万6000円/㎡収益価格(収益還元法) 27万6000円/㎡規準価格(地価公示価格との関連) 43万8000円/㎡ⅱ 平成9年7月1日の価 収益価格(収益還元法) 27万6000円/㎡規準価格(地価公示価格との関連) 43万8000円/㎡ⅱ 平成9年7月1日の価格(甲2の2)下記の比準価格及び収益価格を関連づけ,更に地価公示法に基づく地価公示(標準地)価格との均衡を考慮して,本件各土地の平成9年7月1日時点での評価額を39万3000円/㎡と鑑定している。 記比準価格(取引事例比較法) 42万2000円/㎡収益価格(収益還元法) 25万8000円/㎡規準価格(地価公示価格との関連) 40万5000円/㎡(b) 上記ⅰ,ⅱの比準価格,収益価格,規準価格の下落率を計算すると,次のとおりとなる。 比準価格 7.4%収益価格 6.5%規準価格 7.5%(c) 上記各鑑定書によると,鑑定金額の基礎となった比準価格等の下落率が6.5%から7.5%となっているのに,どうして鑑定評価額のみがそれを2%弱上回る9.4%の下落率となるのか,必ずしも明らかでない。 また,平成8年7月1日の鑑定評価額は,規準価格43万8000円/㎡とほぼ同額の43万5000円/㎡であるのに,どうして,平成9年7月1日の鑑定評価額は,規準価格40万5000円/㎡よりも相当低い39万3000円/㎡となるのか,その理由が必ずしも明らかでない。 (d) 以上の次第で,原告主張の基になっている本件 年7月1日の鑑定評価額は,規準価格40万5000円/㎡よりも相当低い39万3000円/㎡となるのか,その理由が必ずしも明らかでない。 (d) 以上の次第で,原告主張の基になっている本件各土地の鑑定評価書の下落率9.4%には疑問がある。 (3) まとめ以上の認定判断を総合すると,本件各土地の平成10年度の下落率(平成9年度固定資産評価額に対する下落率)7%は妥当なものであり,低すぎて違法な下落率であるとは認められない。 第4 結論 1 以上によると,本件各土地の平成10年度固定資産評価額は,別紙被告主張の評価額1ないし3の各(1)(平成9年度固定資産評価額)に0.93(下落修正率)を乗じた金額(別紙被告主張の評価額1ないし3の各(2))に,前記第2の2(2)ウ記載のとおり課税地積の修正及び高地補正を加えたものであり,別紙被告主張の評価額1ないし3の各(3)(最終決定額)記載の金額となる。 2 したがって,固定資産課税台帳に登録した本件各土地の平成10年度の価格に誤りはなく,被告が平成12年3月30日付でした原告の審査申出を棄却する旨の決定(本件審査決定)は正当であり,原告の本訴請求(本件審査決定の取消請求)は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官紙浦健二 裁判官中村哲 裁判官秋田志保(別紙) 哲 裁判官秋田志保(別紙)物件目録 1 1土地芦屋市甲町a番2宅地 964.64平方メートル 2 2土地芦屋市甲町a番6宅地 552.34平方メートル 3 3土地芦屋市甲町a番7宅地 456.53平方メートル・(別紙)原告主張の評価額 1 1土地 2億3389万6816円 2 2土地 1億3388万4560円 3 3土地 1億1066万0672円・(別紙)被告主張の評価額 1 1土地(1) 平成9年度における修正を行った価格(平成9年度固定資産評価額)3億1437万7450円(2) 修正基準第2節二及び三によって修正を行った後の価格2億9237万1020円(3) 最終決定額(平成10年度固定資産評価額)2億8005万8030円 2 2土地(1) 平成9年度における修正を行った価格(平成9年度固定資産評価額)1億7995万2370円(2) 修正基準第2節二及び三によって修正を行った後の価格1億6735万5700円(3) 最終決定額(平成10年度固定資産評価額)1億6230万8110円 3 3土地(1) 平成9年度における修正を行った価格(平成9年度固定資産評価額)1億4873万7470円(2) 修正基準第2節二及び三によって修正を行った後の価格1億3832万5840円(3) 最終決定額(平成10年度固定資産評価額)1億3004 1億4873万7470円(2) 修正基準第2節二及び三によって修正を行った後の価格1億3832万5840円(3) 最終決定額(平成10年度固定資産評価額)1億3004万3910円
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