- 1 -主文被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中680日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1平成19年4月28日午前5時15分ころ,岐阜市ab丁目c番d号eA方居室内及び同居室前通路において,B(当時23歳)に対し,殺意をもって,持っていた出刃包丁(刃体の長さ約15.2センチメートル,平成20年押第),,,,6号の1で同人の背部等を突き刺しよってそのころ同居室内において同人を背部刺創に基づく失血により死亡させて殺害した第2業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時場所において,前記出刃包丁1丁を携帯した,,()第3前記日時ころ同市fg丁目h番i号先路上において前記A当時23歳に対し,殺意をもって,その頭部を右足で数回踏みつけるなどしたが,犯行の発覚を恐れて逃走したため,同人に加療約6か月間を要し6か月後には右上下肢の運動機能障害,高次脳機能障害といった後遺障害を残したびまん性軸索損傷,顔面挫創等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった第4同18年12月15日午後4時ころ,岐阜県羽島郡j町kl丁目m番地所在のn店において,同店店長E管理に係る本4冊ほか8点(販売価格合計2万3709円)を窃取した第5金員窃取の目的で,同19年4月18日午前11時ころ,岐阜市op丁目q番r号G方に,無施錠の2階南側出入口ドアから侵入し,同日午前11時20分ころ,同所において,同人所有の現金5万円を窃取したものである。 (争点に対する判断)- 2 -第1本件の争点本件の争点は,①被害者B(以下「B」という)及びA(以下「A」という)に対す,。 ,。 る殺意の有無②判示第1ないし第3の各犯行当時の被告人の責任能力③被告人の供述調書(乙 件の争点本件の争点は,①被害者B(以下「B」という)及びA(以下「A」という)に対す,。 ,。 る殺意の有無②判示第1ないし第3の各犯行当時の被告人の責任能力③被告人の供述調書(乙4ないし8)の任意性の有無である。 第2証拠上明らかに認められる事実 被告人とA及びBとの関係(1)被告人とAは,同じ中学校の同級生であるところ,平成18年の年末こ,,。 ,ろから交際をはじめその後A方において同棲するようになったしかし被告人の仕事が続かないこと,被告人がギャンブルに明け暮れ,Aの財布から現金を抜き取っていたことなどから,Aの被告人に対する気持ちは次第に冷めていった。 被告人とBは,同じ小学校及び中学校の同級生であり,成人式の日に久しぶりに再会して以降,Bは,被告人に職をあっせんするなどして,被告人の自立に尽力していた。 (2)平成19年4月9日,Aが他の男性と浮気をしたことが被告人に発覚した。被告人とAは,話し合いをして,交際を継続することを決意したが,翌10日,Aが寝た後,被告人がAの携帯電話のメールを見ると,Aの浮気相手からAあてに,デートに誘うメールが届いていた。このことに激怒した被告人は,寝ていたAを起こし,Aが怪我をすれば,浮気相手の所にも行けな,。 ,くなると考えAの顔面等を手けんで多数回殴打したこの殴打行為によりAは,鼻骨骨折,眼球打撲等の傷害を負った。 Aの傷害を知ったAの母親は激怒し,4月16日,被告人をA方から追い出した。被告人は友人方で寝泊まりするようになり,被告人とAは距離を置- 3 -くことになったが,被告人はAのことを諦めきれず,Aに電話をかけたり,Aと会ったりした。 (3)被告人は,Bの紹介によって三重県内のパチンコ店で働くことになり,住むところが決まるまで,B方に住 -くことになったが,被告人はAのことを諦めきれず,Aに電話をかけたり,Aと会ったりした。 (3)被告人は,Bの紹介によって三重県内のパチンコ店で働くことになり,住むところが決まるまで,B方に住むことになった。また,被告人は,所有していたバイクを売って当面の生活費としたが,生活費を被告人が全額持っていると浪費してしまうことから,生活費はBが預かることになった。 4月27日から28日未明にかけての被告人の行動4月27日,被告人は,Bとともに三重県内のパチンコ店に行き,就職の面接を受けたあと,B方に一人で戻り,台所に置いてあった出刃包丁(刃体の長さ約15.2センチメートル,平成20年押第6号の1)を持ち出してスポーツタオルでくるんでバッグに入れ,自転車でAのいる岐阜に向かった。被告人は,Aと会った後,二人で金華山に行き,それから被告人が借りていた家に行った。被告人の借家において,被告人は,嫌がるAと強引に性行為をした後,Aに対し「一緒に死んでほしい。一緒に死んだらずっと一緒におれる。殺し,た後に自分も死ぬ。Aを殺したらすぐに俺もいくから」と言った。かかる被。 告人に対し,Aは「何いっとんの」と言った上で,二人でA方に行くこと,。 を提案し,被告人とAは,A方に行くことになった。A方に行く途中,立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,Aは被告人に気付かれないようトイレでBに電話をかけ,被告人から一緒に死んでほしい旨言われたことを伝えた。これに対し,Bは,Aに「今行くから」と答えた。そのあと,被告人とAは,,。 A方に行った。 A方における被告人の行動A方に被告人とAが着き,二人きりでいたところ,Bが到着した。Bは,被告人に対し,Aに会わない旨誓約書を書くよう指示し,被告人は,指示のとおり誓約書を書いた。その後,被告人は,包 おける被告人の行動A方に被告人とAが着き,二人きりでいたところ,Bが到着した。Bは,被告人に対し,Aに会わない旨誓約書を書くよう指示し,被告人は,指示のとおり誓約書を書いた。その後,被告人は,包丁をバッグから取り出し,座っているBの胴体を目がけて包丁で突き刺した。これにより,Bは腹部に損傷を負っ- 4 -た。 Aに対する行為Bが刺された後,Aは部屋から逃げ出した。被告人は靴をはかないままAを,。 ,,追いかけ近くの路上でAを発見した被告人はAの体をつかんで引き倒しAの頭を右足裏で踏んだ。 Bの発見状況及びBの死亡Bは,A方の室内で,入口ドアの方に頭を向けたまま,仰向けで倒れている状態で発見された。Bが発見された際,心臓停止の状態だったため,駆けつけた救急隊員が心臓マッサージをしたが,心臓が動き出すことはなかった。その後搬送された病院で,医師がBの死亡を確認した。病院において,看護師がBの背中を触っていた際,Bの背中に包丁が突き刺さったままであることに気付いた。 ,,。 A方の入口ドア前の通路には血痕のほかわずかな血溜まりが認められたまた,入口ドアの向かいの手すりの下部に,血液が付着していた。 Bの遺体の損傷状況(1)Bの遺体には,下記のとおりの損傷が認められた。 ア背部(左肩甲骨下端の右下方約6.5センチメートル)に長さ約6センチメートルの刺創。刺創管は2つあり,1つは深さ約17.0センチメートル,もう1つは深さ約14.9センチメートル。この刺創は左肺を刺通していた。 イ腹部(臍の上方約8.5センチメートル)に長さ約3.2センチメートル,深さ約8.2センチメートルの刺創。この刺創は十二指腸を刺通していた。 ウ顔面(左前額部)に長さ約3.4センチメートルの創傷。 エ右大腿内側に,長さ約2.2センチメ に長さ約3.2センチメートル,深さ約8.2センチメートルの刺創。この刺創は十二指腸を刺通していた。 ウ顔面(左前額部)に長さ約3.4センチメートルの創傷。 エ右大腿内側に,長さ約2.2センチメートル,深さ約2.5センチメートルの刺創。 - 5 -オ左前腕小指側に長さ約4.2センチメートル,深さ約4.7センチメートルの刺創。 カ左手背,左手掌,右手掌に切創。 (2)Bの遺体を解剖した医師によると,Bの死因は,上記アの刺創に基づく失血であると推定された。 また,上記の損傷は,いずれも刃器によるものであり,上記オ,カの創傷は,防御損傷であると推定された。 Aの負傷状況Aが発見された際,Aは救急隊員の呼びかけにも答えず,意識不明の状態だった。 Aの外傷としては,右側頭部に挫創,顔面に擦過傷,両膝及び両肘に擦過傷が認められた。また,CTスキャンの結果,左側頭後頭部に脳挫傷が確認され,脳内のいたる個所の神経が切断された状態であるびまん性軸索損傷と診断された。 被告人の前歴被告人には,平成12年9月21日,入院先の病院において,他の入院患者の顔面を殴打し,その場に倒れ込んだ同人の顔を3回くらい足で踏みつけ,同人を死亡させたこと等により,少年院に送致された前歴がある。 第3被告人の捜査段階における供述 供述の要旨被告人は捜査段階において,以下のとおり供述する。すなわち,被告人は,Aの気持ちが被告人から離れているのを感じ,Aを他の男に取られたくない,Aを殺せば自分のものになると考えるようになった,また,被告人は,Bに金銭面をはじめ生活を管理されるようになり,欲求が満たされないことからBに対して不満を持つようになったが,B方に住まわせてもらっていたので,文句,,,,,を言うことはなかった4月27日の未明Aと会って を管理されるようになり,欲求が満たされないことからBに対して不満を持つようになったが,B方に住まわせてもらっていたので,文句,,,,,を言うことはなかった4月27日の未明Aと会って別れた後被告人は- 6 -就職先の三重県に行ってしまえば,Aは他の男のところに行ってしまう,Aと離れたくない,Aを自分だけのものにしたい,そのためにはAを殺すしかないとはっきりと思うようになり,包丁を用いてAを殺害した上,自分も死のうと決意した,三重県のパチンコ店での面接が終わった後,B方に戻り,それからB方にあった包丁をバッグに入れてAのいる岐阜に向かった,Aと会った後,Aを殺害するタイミングをうかがっていたが,周囲に人がいたことなどからA,,,を殺害することはできなかったその後被告人がA方にいるとBが来たためはめられたと思うとともに,やはりAがコンビニで連絡をしていたのだとAに対する怒りがこみあげた,Bから,なぜ自分に無断でAに会いに行ったのかと注意を受け,さらに「俺がAを守ってやる」と言われ,自分の交際相手であ。 るAにつき,何故Bにそのようなことを言われなければならないのか,Bは自,,,分の邪魔をするのかとの腹立ちも加わってBを殺す決意を固めた被告人は一発でBを仕留めなければBに反撃され,Aを殺すこともできなくなる,胴体の真ん中辺りを狙って刺そうと思い,Bの指示に従って誓約書を書いた後,財布を探すふりをしながらバッグの中から包丁を取り出し,包丁を構え,座っていたB目がけてぶつかっていった,包丁がBの腹に刺さると,Bは「H(被告人」と叫び,足で被告人を蹴飛ばした,BがAに逃げろと叫び,Aと一緒に)玄関の方に走り出し,その後,被告人とBとが部屋の前の通路でもみ合いになった,もみ合いになった際の記憶は断片的であるが,Bが 人」と叫び,足で被告人を蹴飛ばした,BがAに逃げろと叫び,Aと一緒に)玄関の方に走り出し,その後,被告人とBとが部屋の前の通路でもみ合いになった,もみ合いになった際の記憶は断片的であるが,Bが被告人の肩の辺りをつかんで抵抗したこと,しゃがみ込むような姿勢で両手で頭を防ぐような姿勢をとったこと,被告人が包丁を振り上げ,4,5回Bの頭と胴体の辺りをめがけて思い切り振り下ろしたこと,Bが通路の手すりにもたれて,崩れ落ちるように通路に座り込んだこと,被告人が何か叫んでいたことなどは覚えている,Bが座り込んだ後,被告人は靴をはかないまま逃げたAを追いかけ,路上でAの体をつかみ,一緒に倒れた,その際,Aは両手,両肘,両膝を付くように一緒に転倒した,被告人は,さらにAを引き倒し,Aの頭の左側を右足で,連続- 7 -して4,5回踏みつけた,踏むときは思い切り体重をかけて踏みつけた,以上である。 供述の任意性(争点③について)(1)取調べの状況に関する争いない事実関係各証拠によると,以下の事実が認められる。 ア被告人に対する取調べについては,警察署においてはJ警察官(以下,「J警察官」という)が,検察庁においてはK検察官(以下「K検察。 ,官」という)がそれぞれ担当した。 。 ,,,イK検察官は取調べのときに被告人に対して黙秘権の告知をしておりまた,被告人に対して大声を張り上げるということはなかった。供述調書作成の際には,被告人の面前で口述して供述調書を作成し,作成した供述,,調書を被告人に手渡しK検察官が供述調書の内容を読み上げて確認させその上で被告人が供述調書に署名・押印をしていた。 (2)J警察官による取調べ状況アJ警察官の当公判廷における供述J警察官は,当公判廷において,以下のとおり供述する。すなわち,J警察 確認させその上で被告人が供述調書に署名・押印をしていた。 (2)J警察官による取調べ状況アJ警察官の当公判廷における供述J警察官は,当公判廷において,以下のとおり供述する。すなわち,J警察官は,被告人がs署に引致されて以降,被告人の取調べを担当した,弁解録取のときから,被告人は殺意を含め,被害者Bに対する殺人罪の被疑事実を認めていた,検察庁への送致前の段階で,動機についても概ねのところは聞いていた,被告人の取調べの態度は非常に素直で,記憶力が優れており,細かい部分まで記憶していた,ただし,Bに対する殺害の状況に関する場面についてははっきりと覚えていなかった,被告人が覚えていないことについて,こうじゃないかと言った記憶はない,取調べのときに机を叩くようなことはなかった,被告人が勾留直後に死んでしまいたいと言った際に,大声を上げて叱ったことがある,このときやってしまったことは仕方がないと被告人に言った,被告人は所持金も少なく,差し入れも- 8 -なかったことから,被告人にジュースやたばこを渡したことがある,ただし供述を得るためにジュースやたばこを渡したわけではない,供述調書の作成後,被告人が訂正を申し出たことはなかった,被告人が,逮捕してからしばらくして取調べ中に体調不良を訴えたことがあり,その際には取調べを中断した,以上である。 イJ警察官の供述の信用性J警察官は,被告人の供述内容,被告人の供述態度等について,被告人は細かい部分まで記憶していたが,殺害の状況に関する場面についてははっきりと覚えていなかったなど,詳細かつ具体的に供述しているほか,取調べ状況についても,大声で被告人を叱ったことがある,被告人にジュースやたばこを渡していたなど,自己にとって不利益になりかねない点も率直に供述しており,供述態度も誠実である。J警察 しているほか,取調べ状況についても,大声で被告人を叱ったことがある,被告人にジュースやたばこを渡していたなど,自己にとって不利益になりかねない点も率直に供述しており,供述態度も誠実である。J警察官の供述は信用できるのであって,J警察官による取調べ状況につき,上記供述のとおりの事実が認定できる。 (3)K検察官による取調べ状況アK検察官の当公判廷における供述K検察官は,当公判廷において,以下のとおり供述する。すなわち,K検察官は,被告人に対する殺人被疑事件(被害者B)の捜査を担当することになり,検察庁への送致後の弁解録取の手続を担当した,その際,事実に間違いないかどうか被告人に尋ねたところ,被告人は間違いないと答えた,また,弁解録取後の取調べにおいて,被告人はBに対する殺意も,Aに対する殺意も,両方とも認めていた,Bが室内で亡くなっていたことから,包丁で刺した場所についても丹念に問い質したが,被告人は室内では腹を刺した記憶しかなく,通路では包丁をBめがけて何度か振り下ろしたという供述を変えなかった,取調べにおいて,被告人が否認することはなく,供述調書に対する署名を拒否したこともなかった,被告人には,公判- 9 -廷で見られた考え込むような態度はなく,真摯に質問に答えていた,被告人が警察の取調べについてK検察官に不満を言ったことはなく,K検察官自身も警察での取調べに問題があるとは考えていなかった,被告人から精神的にちょっと今日は話をするのはきついとの申し出があった際には,被告人を留置場に帰している,K検察官から警察署の方に出向き,被告人を取り調べたこともあった,以上である。 イK検察官の供述の信用性K検察官は,被告人の供述内容や,被告人の供述態度,供述調書の作成状況等につき,被告人がどの時点でどのように述べたか,公判廷での 人を取り調べたこともあった,以上である。 イK検察官の供述の信用性K検察官は,被告人の供述内容や,被告人の供述態度,供述調書の作成状況等につき,被告人がどの時点でどのように述べたか,公判廷での供述態度と比較して捜査段階での供述態度がどのようなものだったか,供述調書の作成時に,被告人が訂正を申し立てたことがあったかなど,詳細かつ具体的に述べている。K検察官の供述は信用できるのであって,K検察官による取調べ状況につき,上記供述のとおりの事実が認定できる。 (4)任意性についての判断ア取調べ状況に関する外部的事情まず,J警察官による取調べ状況について検討すると,J警察官は,取調べの際,机を叩くといった暴行は加えていない。また,被告人を大声で叱った点や,やってしまったことは仕方がないと被告人に言った点については,前後の状況に照らすと,これをもって威圧があったということはで。 ,,,きないさらにJ警察官は被告人にジュースやたばこを渡しているがこれは被告人の所持金が少なく,差し入れもなかったのを見かねて行ったものであり,供述を得る目的でジュースやたばこを交付したものとは認め,,。 られずこのことによって被告人が殺意を認めるに至ったわけでもない,,,,以上によればJ警察官による取調べの際に被告人に対する誘導誤導利益誘導はなかったと認められる。 次に,K検察官による取調べ状況について検討すると,K検察官は,黙- 10 -秘権の告知を行った上で被告人を取り調べており,取調べの際に被告人に対して大声を張り上げることもしていない。また,作成した供述調書を被告人に確認させる手続にも問題は見当たらず,被告人が供述調書への署名を拒否した事実も認められない。さらに,上記のとおり,J警察官による取調べの際に,誘導あるいは誤導による取 た,作成した供述調書を被告人に確認させる手続にも問題は見当たらず,被告人が供述調書への署名を拒否した事実も認められない。さらに,上記のとおり,J警察官による取調べの際に,誘導あるいは誤導による取調べがない以上,検察官が,警察官の誘導あるいは誤導による取調べを是正すべき義務ももとより生じない。 以上によれば,本件の取調べにおいて,供述の任意性に疑いを生じさせる外部的事情は存在していないと認められる。 イ被告人供述の変遷について被告人の供述調書の内容については,逮捕直後の弁解録取の手続以降,その後のJ警察官及びK検察官による取調べに至るまで,供述の核心的部分は一貫している。また,Bを2回目に刺した状況についても,被告人は供述を維持しているのであって,被告人が取調官に迎合したとは認められない。 ウその他任意性に疑いを生じさせる特段の事情の有無,,,,この点に関し被告人は取調べ時の精神状態に関し薬の影響によりぼうっとした状態があった旨供述している。 しかし,J警察官とK検察官は,いずれも,被告人が体調不良を訴えたり,被告人が精神的に話をするのがきついとの申し出があった場合には,被告人に対する取調べを中断するなど,被告人の体調に配慮して取調べを行っている。J警察官及びK検察官が,被告人の精神状態に乗じて取調べを継続し,訴追側に有利な供述を得たとは認められないのであって,このことが,任意性に影響を与えたとは認められない。被告人の供述する事実は,任意性に疑いを生じさせる特段の事情とはいえない。 (5) 結論 - 11 -以上のとおり,本件においては,取調べにおいて供述の任意性に疑いを生,,じさせる外部的事情は存在しておらずかつ供述調書の内容も一貫しておりその他任意性に疑いを生じさせる特段の事情も存在しない。供述の任意性は優 件においては,取調べにおいて供述の任意性に疑いを生,,じさせる外部的事情は存在しておらずかつ供述調書の内容も一貫しておりその他任意性に疑いを生じさせる特段の事情も存在しない。供述の任意性は優に認められるのであり,証拠排除すべき場合にはあたらない。 供述の信用性(1)証拠上明らかな事実との整合性アBの遺体の損傷状況との整合性,,,まずBの腹部には十二指腸に達するほどの刺創が生じているところかかる刺創は,すきを見て包丁を構え,座っていたB目がけてぶつかっていき,包丁がBの腹に刺さったとの被告人の供述と整合している。また,Bの背部には肺を貫く刺創が,左前腕,左手背,左手掌,右手掌には防御損傷と見られる創傷がそれぞれ生じているところ,被告人は,しゃがみ込むような姿勢で両手で頭を防ぐようにしたBに対し,被告人が包丁を振り上げ,4,5回Bの頭と胴体の辺りをめがけて思い切り振り下ろしたと供述しており,このようなBの体勢で被告人が包丁を振り下ろせば,上記のとおり背部と両手に創傷が生じるのは自然であるといえる。 イAの負傷状況との整合性Aには,右側頭部に挫創,顔面に擦過傷,両膝及び両肘に擦過傷が認められるところ,被告人は,Aが両手,両肘,両膝を付くように一緒に転倒した後,Aの頭の左側を右足で,連続して4,5回踏みつけたと供述しており,被告人の供述のとおり,Aは,路面と擦れた個所に外傷を負っているといえる。また,CTスキャンの結果,Aの左側頭後頭部に脳挫傷が確認されているが,Aを診断した医師が,右側頭部の挫創部分に強い衝撃が加わり,その衝撃で脳が揺れ,反対側にあたる左側頭後頭部の頭蓋骨に脳がぶつかったことから脳挫傷が発生したと思われると供述しており,Aが負った脳挫傷と被告人の供述する暴行の態様との間に矛盾はない。 - 12 - 衝撃で脳が揺れ,反対側にあたる左側頭後頭部の頭蓋骨に脳がぶつかったことから脳挫傷が発生したと思われると供述しており,Aが負った脳挫傷と被告人の供述する暴行の態様との間に矛盾はない。 - 12 -ウ通路の血溜まり及び手すりの下部の血液の付着との整合性A方の入口ドアの前の通路には血溜まりが,同ドアの向かいの手すりの下部には血液の付着が認められるところ,かかる状況は,被告人とBとがドアの前の通路でもみ合いとなり,被告人が包丁でBを刺した後,Bが通路の手すりにもたれて,崩れ落ちるように通路に座り込んだとの被告人の供述と整合している。 エBが室内で発見された点との整合性Bは被告人の刺突行為により,相当重大な損傷を負っており,特に死亡に直結する原因となったのが背部の刺傷であったことからすると,室内ではBの腹部を刺した記憶しかないとする被告人の供述とは一見そごするようにも思われる。しかし,本件現場の状況からすると,Bが被告人に背部を刺された後,室内に戻り,仰向けに倒れて絶命した可能性も否定できないのであって,Bが室内で発見された点と,被告人の供述内容が矛盾しているとまではいえない。 (2)供述内容の合理性被告人は,Aの気持ちが自分から離れつつあることを感じ,Aと離れたくない,Aを自分だけのものにしたいという思いから,Aに対する殺意が発生し,この殺意が徐々に強固なものになっていったと供述しているところ,かかる殺意の発生過程につき,不自然な点はない。 この点に関し,弁護人は,Aに対する殺意があるにもかかわらず,金華山や被告人の借家において,被告人がAに対して行動を起こしていないのは不。 ,,,自然であると主張するしかし被告人が金華山でAを刺せなかったのは周囲に人がいたためであるし,被告人の借家で二人きりになった際に性行為をしているこ に対して行動を起こしていないのは不。 ,,,自然であると主張するしかし被告人が金華山でAを刺せなかったのは周囲に人がいたためであるし,被告人の借家で二人きりになった際に性行為をしていることからも,被告人には,もしよりが戻るならそうなって欲しいとの思いがあり,そのため殺害にためらいが生じた時期があったことは十分考えられる。弁護人の主張するような不自然な点はない。 - 13 -(3)供述の具体性,迫真性被告人は,Bを刺した際の感触について,意外なほど簡単に腹に刺さり,吸い込まれるような感じだったと供述し,Aの頭を踏みつけた際の感触については,足の裏に骨か肉が崩れるかのような,ゴリッ,グニャッという表現しがたい嫌な感触が伝わった,背筋にゾクッという悪寒が走ったと供述して,,,おりかかる供述は真に体験した者でなければ供述できないほどに具体性迫真性に富むものである。 なお,被告人は,A方の前の通路でBを刺した際の状況については,記憶,。 ,,が断片的であってあいまいにしか供述していないしかし後述のとおり被告人は,犯行時,一時的に心因性もうろう状態を呈していたと認められるのであり,明確な供述ができなかったとしても無理からぬ点がある。かかる点は,供述の信用性に影響を与えるものではなく,むしろ,被告人が自己の記憶に基づいて率直に供述したことを裏付けるものである。 (4)公判廷と捜査段階における供述態度の違いについて被告人は,公判廷における被告人質問の際に,質問者の質問に対して考え込むようなそぶりをしばしば示し,質問に対して「分からない「覚えて」,いない」などと応答することが多かったものである。弁護人は,公判廷における被告人のかかる供述態度からすると,捜査段階において,被告人が理路整然と供述をしたとは考えられず,捜査 らない「覚えて」,いない」などと応答することが多かったものである。弁護人は,公判廷における被告人のかかる供述態度からすると,捜査段階において,被告人が理路整然と供述をしたとは考えられず,捜査段階における被告人の供述調書は捜査官の作文にほかならないと主張する。 しかし,本件の公判廷においては,Bの遺族のほか,多数の傍聴人が環視する中で被告人質問が行われている(当裁判所に顕著な事実。被告人は,)後述のとおり,非社会性パーソナリティ障害であり,ただでさえ自分の感情等を把握して他人に説明するのが苦手であると推察されるのであって,このような被告人が,公判廷においてさらに萎縮したとしても不思議ではない。 また,本件で被告人質問が行われたのは,事件発生後相当期間が経過した後- 14 -であり,その間に記憶が薄れたことも十分考えられる。 一方,捜査段階における取調べは,時間をかければ,自分の言いたいことを言える状況にあるし,取調べがなされたのも,事件発生直後のことであって,記憶は鮮明であったといえる。 よって,本件の公判廷における被告人の供述態度をもって,捜査段階における供述が信用できないとはいえない。 (5) 結論 以上によると,被告人の捜査段階の供述は信用できるのであって,上記供述内容のとおりの事実が認定できる。 第4被告人の公判廷における供述 供述の要旨被告人は,当公判廷において,捜査段階における供述と異なり,A方を追い出された際,Aのことを好きではなかった,いったんAを殺そうと考えたが,Aを殺して自分のものにするというつもりはなかった,Aと岐阜で会ったときには,Aを殺そうとする気持ちはなくなっていた,Bを刺したのはBを動けなくするためであり,殺すつもりはなかった,Bのおなかを刺してから,Aを踏みつけるまで,自分が何をしていたのかは 岐阜で会ったときには,Aを殺そうとする気持ちはなくなっていた,Bを刺したのはBを動けなくするためであり,殺すつもりはなかった,Bのおなかを刺してから,Aを踏みつけるまで,自分が何をしていたのかはよくわからないなどと供述する。 供述の信用性しかし,被告人の公判廷供述に関しては,Bが「俺がAを守ってやる」と。 言ったか否かや,Bを刺した際のBの体勢,Aに対する殺意等の重要な事実につき,公判廷における供述の中で変遷があり,またこの変遷に合理的な理由は認められない。 また,被告人は,A方を追い出された際,Aのことを好きではなかったと供述しているが,証拠上明らかに認められる事実からは,被告人のAに対する強い執着がうかがわれ,供述との間にそごが生じている。 以上によれば,被告人の公判廷供述は信用できない。 - 15 -第5争点①について Bに対する殺意の有無(1)凶器の形状について被告人がBに対して用いた凶器は,刃体の長さが約15.2センチメートルもある鋭利な出刃包丁であり,人の殺傷能力を十分に備えていると認められる。 (2)創傷の部位,程度について被告人の刺突行為の結果,腹部及び背部という人体の枢要部に,それぞれ刺創が生じている。この刺創の深さは,腹部が約8.2センチメートル,背部が約17.0センチメートルと約14.9センチメートルという深いものであり,いずれの刺創も,内臓にまで達している。 なお,背部の刺創に関しては,Bが室内に移動して床に倒れた際や,Bに対する心臓マッサージの際,あるいは病院への搬送の際に,より深く刺さった可能性が否定できない。しかし,そもそも包丁がBの身体から抜けることなく,背中に突き刺さったままの状態であったこと,Bが心肺停止の状態で発見されたことなどからすると,Bが室内で倒れる前から,相当程度の深さ 否定できない。しかし,そもそも包丁がBの身体から抜けることなく,背中に突き刺さったままの状態であったこと,Bが心肺停止の状態で発見されたことなどからすると,Bが室内で倒れる前から,相当程度の深さまで包丁がBの身体に刺さっていたことが推認できる。 (3)刺突行為の態様についてBに生じた刺創のうち,腹部の刺創は,被告人が腹部を狙って,相当強い力で刺した結果生じたものであると認められる。また,背部の刺創についても,被告人の記憶が断片的にしかないため,詳細な態様は不明であるが,少なくともはずみで刺さったということはなく,相当な力で刺そうと思って刺した結果生じたものであることは明らかである。 (4)殺害の動機の有無について被告人は,BがA方に来ることは予想しておらず,当初からBを殺害することを意図していたわけではないが,Bが来た状況において,Bは,A殺害- 16 -という当初の目的を果たすための障害となっており,またA方におけるBの発言は,被告人の怒りを呼ぶだけの内容であったと認められる。このような事実はB殺害の動機が生じた理由として説明が可能である。 (5)殺意に関する被告人の認否について被告人は公判廷においてはBに対する殺意を否認しているが,捜査段階においては,Bを殺すつもりであったことをいったんは認めている。捜査段階の供述が信用できることは前述のとおりである。 (6) 結論 以上のとおり,被告人は,Bに対し,鋭利な出刃包丁という凶器を用い,腹部と背部という人体の枢要部を目がけ相当な力で刺し,その結果腹部と背部に内臓にまで達する深い刺創が生じている。このほか,殺害の動機や被告人の供述状況を考慮すると,被告人には,Bを積極的に殺害するために出刃包丁でBを刺したという確定的殺意があったと優に認められる。 Aに対する殺意の有無(1) じている。このほか,殺害の動機や被告人の供述状況を考慮すると,被告人には,Bを積極的に殺害するために出刃包丁でBを刺したという確定的殺意があったと優に認められる。 Aに対する殺意の有無(1)創傷の部位,程度について被告人の踏みつけ行為の結果,頭部という人体の枢要部に損傷が生じているが,この損傷は,単なる外傷にとどまらず,脳にも挫傷が生じるほどのものであり,約6か月という長期の加療を経ても,Aにはなお後遺症が残っている。このことは,被告人の踏みつけ行為が,生命の危険に直結するほど強度なものであったことを示している。 (2)踏みつけ行為の態様について被告人は,下が固い路面であり,それを認識していたにもかかわらず,そのような状態で,右足を用い,あえて全力で複数回にわたってAの頭部を踏みつけている。かかる行為は,凶器こそ用いていないものの,それ自体,極めて危険なものであることは明らかである。 (3)殺害の動機の有無について- 17 -被告人は,Aに対し,恋愛感情のもつれから,Aを殺して自分のものにしたいとの思いを抱くに至っており,かかる被告人の心情は,A殺害の動機として,説明が可能である。 (4)殺意に関する被告人の認否について被告人は公判廷においては,Aを殺害しようとしてB方から出刃包丁を持ち出したが,Aを踏みつけた時点においては殺意はなくなっていたと供述している一方,捜査段階においては,一貫してAを殺すつもりであったことを認めている。捜査段階の供述が信用できることは前述のとおりである。 (5)過去の被告人の行為との関連性について凶器がない状態において,人を殺害するために頭を踏みつけにするというのは,例えば首を絞めるという行為と比較すると,確かに経験則上,多く採られる方法であるとはいえない。 しかし,被告人には,上記のと 凶器がない状態において,人を殺害するために頭を踏みつけにするというのは,例えば首を絞めるという行為と比較すると,確かに経験則上,多く採られる方法であるとはいえない。 しかし,被告人には,上記のとおり,人の頭部を踏みつけ,死亡させたという前歴があるのであって,被告人は,人の頭を踏みつけると,死亡に至る場合があることを認識していたと認められる。凶器がないという当該状況のもとで,被告人がAを殺害するために頭を踏みつけるというのは,何ら不自然な行動ではない。 (6) 結論 以上のとおり,被告人の行為は,凶器こそ用いていないものの,極めて危険な行為であり,実際にその結果,Aに重篤な傷害が生じている。この点に加え,Aに対して殺害の動機が十分にあること,捜査段階で殺意をいったん認めていること,過去に同様に人の頭部を踏みつけて死亡させたという前歴があることなどからすると,被告人には,Aを殺害するためにAの頭部を踏みつけたものと認められ,確定的殺意があったと優に認められる。 第6争点②について 証拠により認定できる事実- 18 -信用できる被告人の捜査段階における供述のほか,関係各証拠により,以下の事実が認められる。 (1)被告人の精神科治療歴について被告人は,平成11年3月29日,傷害,恐喝,ぐ犯保護事件でt少年院に送致された。被告人は,仮退院時期が近づくにつれて社会に対応できるかどうか不安になり,また自己臭が気になり不眠も呈するようになったことから,同12年4月13日u医療少年院に移送された。同院入院後,自己臭恐怖や「やめろ,死ね」といった自分を批判する幻聴があり,同年5月統合。 失調症と診断され医療措置が講じられた。 同年8月18日,被告人は同院を仮退院し,v病院を受診し,同病院の開放病棟に任意入院した。同年9月,被告人は,職員の説明 を批判する幻聴があり,同年5月統合。 失調症と診断され医療措置が講じられた。 同年8月18日,被告人は同院を仮退院し,v病院を受診し,同病院の開放病棟に任意入院した。同年9月,被告人は,職員の説明に納得せず暴れ出したため,閉鎖病棟に移された。 同月21日,被告人は,他の入院患者から臀部を箒で1回軽打されたことに激高し,同人の顔面を殴打し,その場に倒れ込んだ同人に馬乗りになり,同人の顔を3回くらい足で踏みつけ,同人の頭部に傷害を負わせ,これに続発する肺炎によって同人は死亡した。また,同13年6月1日,同病院の看護助手から音楽CDを病室に持ち込むことを止められたことに激高し,同人の左頬を1回殴打し,倒れた同人の上に馬乗りになり,同人の顔を10回くらい踏みつけ,同人に対して約6か月の加療を要する傷害を負わせた。 被告人は,上記傷害罪により同日逮捕され,同月2日w病院に緊急措置入院となった。被告人は,観護措置を経て,同年12月17日,傷害致死と傷,,。 害の非行により医療少年院送致となり同16年1月8日同院を出院したその後,被告人は,同月9日から,同18年11月27日にかけて,x病院及びy病院を外来で受診した。 (2)被告人の犯行後の行動について被告人は,路上においてAの頭部を踏みつけた後,現場から走って逃げ出- 19 -した。その際,被告人は,警察に発覚して捕まることが怖く,自分が死ぬことは頭から抜けてしまっていた。被告人は,スーパーマーケットの自転車置き場で鍵のかかっていない自転車を盗み,さらに逃走したが,その途中で,手に血が付着していることに気付き,これでは警察に不審に思われてしまうと考え,墓地の水くみ場で手を洗った。その後,被告人は,寒さをしのぐための毛布を盗み,神社の境内で横になるなどしていたところ,警察に逮捕された。 ことに気付き,これでは警察に不審に思われてしまうと考え,墓地の水くみ場で手を洗った。その後,被告人は,寒さをしのぐための毛布を盗み,神社の境内で横になるなどしていたところ,警察に逮捕された。 被告人の精神障害の有無とその程度(1)鑑定の実施被告人の精神疾患の有無とその程度に関し,当裁判所は,平成20年4月23日の第1回公判において,鑑定人L医師に対して鑑定人尋問を行い,①本件犯行当時及び現在の被告人の精神状態②本件犯行当時,被告人が自己の行動の是非善悪を判断し,それに従って行動する能力を有していたか否か,有していた場合にはその程度について鑑定し,その経過及び結果を,書面をもって報告するよう命じた。 鑑定人は,同日より鑑定に従事し,一件書類や公判記録を精読するとともに,被告人に対して諸検査や面接を行い,平成20年7月23日付け精神鑑定書をもって,鑑定の内容を報告し,上記鑑定書は,平成21年1月19日の第5回公判において取り調べられた。 (2)鑑定結果鑑定人は,犯行時及び現在の精神障害の有無につき,①被告人は,ICD-10F20統合失調症診断基準を犯行時及び現在満たさない。 ②被告人は,自己臭恐怖をもつが,信念と呼べるほどの強度をもたず,思春期妄想症の診断は疑いがあるというレベルである。 ③被告人は,ICD-10F60.2非社会性パーソナリティ障害の診断- 20 -基準を満たす。 ④被告人は,犯行着手後,友人を刺殺するという非日常的な行為に対する著しい精神的興奮に起因する心因性もうろう状態を一時呈したと考えられる。 と診断した上,鑑定主文につき,以下のとおり述べている。 ①本件犯行当時及び現在の被告人の精神状態被告人は,犯行当時及び現在,ICD-10F60.2非社会性パーソナリティ障害の診断基準を満たすが,元々 断した上,鑑定主文につき,以下のとおり述べている。 ①本件犯行当時及び現在の被告人の精神状態被告人は,犯行当時及び現在,ICD-10F60.2非社会性パーソナリティ障害の診断基準を満たすが,元々の性格であり,責任能力に影響を与えなかった。 被告人は,本件犯行当時及び現在,自己臭恐怖を有するが,本件殺人・殺人未遂被告事件に影響を与えなかった。 被告人は,犯行時,一時的に心因性もうろう状態を呈したが,責任能力に影響を与えなかった。 ②本件犯行当時,被告人が自己の行動の是非善悪を判断し,それに従って行動する能力を有していたか否か,有していた場合にはその程度本件犯行時,被告人は自己の行動の是非善悪を判断し,それに従って行動する能力を有しており,その能力は減弱していなかったと思料される。 (3)鑑定結果の信用性についてところで,責任能力の判断の前提となる精神障害の有無及び程度等について専門家たる精神医学者の鑑定意見等が証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,裁判所はその意見を十分に尊重して認定すべきである(最高裁判所平成20年4月25日判決・刑集62巻5号1559頁。 )以下,上記事情の有無を検討する。 ア鑑定人の能力について- 21 -鑑定人は,精神科医として,20年以上の臨床経験を持ち,精神鑑定についても,本件以外に,簡易鑑定を約28件,起訴前の本鑑定を2件,公判鑑定を2件行っている。鑑定人は,鑑定を行うに必要な専門的知見と経験を十分に備えていると認められる。 イ鑑定の基礎資料について鑑定人は,まず,起訴状,検察官の冒頭陳述メモ,弁護人の冒頭陳述要旨,採用された証拠,第1回ないし第3回の公判記録,少年調査記録 見と経験を十分に備えていると認められる。 イ鑑定の基礎資料について鑑定人は,まず,起訴状,検察官の冒頭陳述メモ,弁護人の冒頭陳述要旨,採用された証拠,第1回ないし第3回の公判記録,少年調査記録を参照し,その上で被告人に対して面接を行っている。また,鑑定の時点では,,証拠採用されていなかった甲39号証の精神鑑定書や乙号証については鑑定の後半部分で,被告人に鑑定人が質問する際の参考資料にするにとどめ,そのままの形では引用していない。このように,鑑定人は,基礎資料とした捜査記録中証拠能力に争いのあるものについては明確に区別して慎重に扱い,被告人に対する予断が生じないよう,一定の配慮をしているといえる。 また,鑑定人は,証拠採用されていなかった任意性に争いのある被告人の供述調書を,証拠として前提にしたとしても,鑑定の結果が異なることはないと供述している。 以上によれば,鑑定の基礎資料とその扱いにつき問題はないと認められる。 ウ鑑定結果と客観的事実との整合性について鑑定人は,被告人と面接を重ねた上,被告人には統合失調症に特有の幻覚や妄想が認められないことから,統合失調症ではないと判断している。 証拠上認定できる事実を検討しても,犯行当時,被告人に幻覚,妄想があったと疑わせる事実は,存在しないのであって,この点については,鑑定結果と客観的事実との間に整合性があるといえる。 なお,上記のとおり,被告人は,過去に統合失調症と診断されたことが- 22 -あり,かつその直後の入院中に,本件と同じように,人の頭を踏みつけるという事件を起こしている。 しかし,鑑定人は,従前このように被告人が統合失調症と診断されたことを重視しつつ,慎重に統合失調症の症状があるかどうかを検討し,その上で,被告人については,統合失調症と紛らわしい状態が過去にあったこ かし,鑑定人は,従前このように被告人が統合失調症と診断されたことを重視しつつ,慎重に統合失調症の症状があるかどうかを検討し,その上で,被告人については,統合失調症と紛らわしい状態が過去にあったことを認めつつ,統合失調症に特有の幻覚や妄想が認められないことから,統合失調症ではないと判断している。過去の診断歴と,鑑定結果にそごがあるとはいえないと認められる。 エ鑑定結果を導く過程について鑑定人は,合計9回,計14時間40分という十分な時間をかけて被告人と面会を重ね,診断基準として,国際的に定評のある診断基準であるICD-10を用い,さらに心理テストとの整合性も考慮して,鑑定結果を導き出している。鑑定結果を導く過程に問題があるとは認められない。 オ小括以上によると,鑑定結果を信用し得ない合理的な事情は認められず,鑑定人の鑑定結果は信用できる。被告人の精神の障害に関し,被告人は,犯行時及び鑑定時において,統合失調症ではないこと,被告人は,非社会性パーソナリティ障害であり,自己臭恐怖を有し,かつ犯行時には心因性もうろう状態であったが,これらは責任能力に影響を与えるものではないことが認められる。 (4)弁護人の主張に対する判断本件鑑定に関し,弁護人は,①鑑定人は,被告人と面談する前に捜査記録,,,を精読しており捜査機関側からの予断をもってしまっている②鑑定人は被告人が非社会性パーソナリティ障害であることをもって,一刀両断的に,責任能力に減退が認められないと判断していると主張する。 しかし,まず①については,鑑定人が面接前に基礎資料となる一件記録を- 23 -精査すること自体は何ら問題がないものであるし,上記イのとおり,鑑定人,,,は鑑定の資料とする証拠につきまず同意のあった証拠を基礎とするなど資料の証拠能力の点をも十分考慮 記録を- 23 -精査すること自体は何ら問題がないものであるし,上記イのとおり,鑑定人,,,は鑑定の資料とする証拠につきまず同意のあった証拠を基礎とするなど資料の証拠能力の点をも十分考慮して鑑定にあたっていることは明らかである。また,②に関しても,鑑定人は,精神医学の専門家として,被告人が非社会性パーソナリティ障害であると診断し,その上で,被告人の非社会性パーソナリティ障害は,元々の性格であって,責任能力に影響を与えないと判断しているのであって,決して一刀両断的に判断しているわけではない。弁護人の主張はいずれも採用できない。 以上の鑑定結果をふまえて,さらに検討する。 (1)動機の了解可能性被告人は,Aの気持ちが被告人から離れているのを感じ,Aを他の男に取られたくない,Aを殺せば自分のものになると考えるようになり,Aに対する犯行を行ったものである。このような恋愛感情のもつれに伴う強い独占欲,,。 は一般的に生じうる感情でありAに対する殺害の動機は了解可能であるまた,被告人は,生活を管理されていたことからそもそもBに対して不満を有していた上,A方に突然Bが現れ,注意を受けたことにより,何でそこ,,,まで言うんやと怒りがこみ上げBを殺したいという気持ちが生じさらにBが「俺がAを守ってやる」と言ったことによって,頭に血がのぼり,自。 分のものであるAをなぜBが守らなければならないのか,俺の邪魔をするのか,黙らせてやるとの思いが生じ,Bの殺害に至ったものである。本件状況のもとでは,A殺害という目的を達成するためには,Bの存在が現実に障害となっており,また,被告人のAに対する強い独占欲によれば「俺がAを,守ってやる」とのBの言葉により,被告人が激高するのも自然である。B。 殺害に対する動機も了解可能であるといえる。 が現実に障害となっており,また,被告人のAに対する強い独占欲によれば「俺がAを,守ってやる」とのBの言葉により,被告人が激高するのも自然である。B。 殺害に対する動機も了解可能であるといえる。 (2)犯行の手段,態様被告人は,A殺害を計画し,出刃包丁をB方から持ち出した上,その包丁- 24 -をバッグの中に隠し,金華山や被告人の借家において,A殺害の機会をうかがっている。 また,B方においては,Bを殺害するため,財布を取り出すふりをして包丁を取り出し,確実に殺害できるようにBの腹部を狙って刺している。 ,,,さらにその後路上でAに追いついた際には手元に包丁がなかったためそのような状況でAを殺害する目的で,あえて踏みつけという行為を行っているが,このような行為は,被告人の過去の前歴に照らせば,決して不自然な行為ではない。 このように,被告人は,A及びB殺害という目的を達成するために,臨機応変に手段,態様を選択しているのであって,合目的的に行動していると認められる。 (3)了解不可能な異常行動の有無被告人は,本件前日も,三重県まで就職のために面接に行くなどの日常生活を送っていた。被告人に,了解不可能な異常行動は認められない。 (4)犯行及びその前後の状況についての記憶の有無被告人は,A方において,Bの腹部を1回刺した後については,その後の記憶は断片的であると供述している。しかし,このように記憶が断片的になった点については,Bを刺したことに起因する心因性もうろう状態に陥ったということで合理的に説明できる上,それ以外の行動については,意識は清明であったと認められる。 (5)犯行後の被告人の行動被告人は本件犯行後,警察に捕まりたくないと思って現場から逃走し,逃走するための道具として自転車を盗み,さらに,手に付着した血に気付い 意識は清明であったと認められる。 (5)犯行後の被告人の行動被告人は本件犯行後,警察に捕まりたくないと思って現場から逃走し,逃走するための道具として自転車を盗み,さらに,手に付着した血に気付いてその血を水で洗うなどしている。このように,被告人は,犯行後,捜査機関に逮捕されないよう,自己防衛的な行動を行っていると認められる。 (6)被告人の性格と犯行との関連性- 25 -被告人は,過去の傷害致死事件のほか,本件の直前にもAを殴って重い傷害を負わせているのであり,頭に血が上ると,自然に手が出てしまう性格であると推察できる。本件犯行は,被告人のかかる人格の表れであると評価することができるのであって,被告人の平素の性格と,犯行との間には,一定の関連性があるといえる。 結論 以上のとおり,本件においては,被告人は,統合失調症の診断基準を満たさず,また,被告人の非社会性パーソナリティ障害や自己臭恐怖,犯行時の心因,。 ,性もうろう状態も責任能力に影響を与えるものではない被告人については精神に特段の障害はないのであって,そもそも責任能力に疑義を生じさせる前提を欠くといえる。 また,被告人の犯行の動機は,B及びAの両名に関していずれも了解可能であって,被告人は,両名殺害という目的を達成するために合目的的に行動している。そのほか,了解不可能な異常行動の有無,犯行及びその前後の状況についての記憶の有無,犯行後の被告人の行動,被告人の性格と犯行との関連性においても,責任能力に疑いを生じさせる事情は何ら認められない。 よって,これらの事情を総合して考慮すると,被告人は,犯行当時,自己の行動の是非善悪を判断し,それに従って行動する能力を有しており,その能力は減弱していなかったと優に認められる。 (法令の適用)記載省略(量刑の理由)第1本件 すると,被告人は,犯行当時,自己の行動の是非善悪を判断し,それに従って行動する能力を有しており,その能力は減弱していなかったと優に認められる。 (法令の適用)記載省略(量刑の理由)第1本件は,被告人が,恋愛感情のもつれから,交際相手であったAを殺害しようと企て,その際,Aの依頼で同女方に駆けつけたBに対し,その発言に怒り,,,,を覚えるとともにA殺害のためにはBが障害になると考え殺意をもって,,持っていた出刃包丁でBの腹部等を刺しBを死亡させて殺害したという殺人- 26 -銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案(判示第1,第2,Bを出刃包丁で刺し)た後,路上において,殺意をもって,Aの頭部を右足で数回踏みつけ,Aに重傷を負わせたという殺人未遂の事案(判示第3,雑貨店において,本等を万)引きしたという窃盗の事案(判示第4,金員窃取の目的で,中学校時代の同)級生宅に侵入し,現金5万円を窃取したという住居侵入,窃盗の事案(判示第5)である。 第2本件の量刑を定めるに当たっては,Bに対する殺人及びAに対する殺人未遂の事案に関する量刑事情を特に重視するべきであるところ,その中でも特に考慮すべき点は以下のとおりである。 犯行の動機について(1)Bに対する殺害の動機について被告人は,Aを殺害しようと機会をうかがっていたところ,A方に突然Bが現れたことに驚くとともに,はめられたと思い,Bの言葉を聞いているうちに何でそこまで言うんやと怒りがこみ上げ,その後,Bが「俺がAを守,ってやる」と言った際,頭に血が上り,自分のものであるAをなぜBが守。 らなければならないのか,俺の邪魔をするのか,黙らせてやるとの思いで頭の中が一杯になり,A殺害のためにはBが障害になるとも考え,B殺害を決意したものである。 Bは,被告人に住まい AをなぜBが守。 らなければならないのか,俺の邪魔をするのか,黙らせてやるとの思いで頭の中が一杯になり,A殺害のためにはBが障害になるとも考え,B殺害を決意したものである。 Bは,被告人に住まいを提供したり,就職先をあっせんしたりするなど,被告人の更生のために尽力しており,犯行当日も,Aから被告人に殺されるかもしれないとの連絡を受け,すぐさまA方に駆けつけている。被告人は,Bのこのような尽力に感謝するどころか,Bの忠告を無視し,Bの「俺がAを守ってやる」という言葉に一方的に激高した上で,A殺害のためにはB。 が邪魔であると考え,B殺害に至ったのであり,被告人は,A殺害という目的を達成するための手段として,Bを殺害したと言っても過言ではない。当然のことながら,Bについては,被告人から感謝こそされ,落ち度など何ら- 27 -存在しない。Bの尽力に対し,A殺害の障害になるなどという理由で,恩を仇で返すかのような被告人の行為は,人命軽視も甚だしく,理不尽極まりないというべきである。B殺害の動機に関し,被告人に酌量すべき点は全くない。 (2)Aに対する殺害の動機について被告人は,Aの気持ちが被告人から離れているのを感じ,Aと離れたくない,Aを他の男に取られたくない,Aを自分だけのものにしたい,そのためにはAを殺すしかないと考え,A殺害を企てている。 そもそも被告人は,仕事が続かないこと,ギャンブルに明け暮れ,Aの財布から現金を抜き取っていたことなどを棚に上げ,その上で,Aに対し,激しい暴行を加えるなどしているのであって,Aの気持ちが被告人から離れるのは当然のことである。自己の行動を省みることなく,Aに対する独占欲から,短絡的にA殺害を企てたその動機について,被告人に酌量すべき点は全くない。 犯行の態様について(1)Bに対する行為 るのは当然のことである。自己の行動を省みることなく,Aに対する独占欲から,短絡的にA殺害を企てたその動機について,被告人に酌量すべき点は全くない。 犯行の態様について(1)Bに対する行為について被告人は,財布を探すふりをしてBの注意をそらした上,刃体の長さ約15.2センチメートルの鋭利な出刃包丁をバッグから取り出して,いきなりBの腹部を突き刺し,さらに逃走し,身をかばおうとするBに対し,4,5回にわたって,包丁を振り下ろしている。被告人のこのような行為の結果,Bは,身体の複数箇所に創傷を負い,とりわけ背部と腹部の刺創は,内蔵ま,,,で達するほどの深い傷なのであって被告人の行為は強固な犯意に基づく冷酷かつ残忍な行為であるといえる。 (2)Aに対する行為について被告人は,Aを殺害しようと企て,出刃包丁を用意した上,金華山などでA殺害の機会をうかがっている。最終的にAに対して出刃包丁は用いていな- 28 -いものの,A殺害に関し,計画性があるのは明らかである。 また,被告人は,逃走するAに追いついた上,Aを路上に引き倒し,下が固い路面であるにもかかわらず,Aの頭部を全力で複数回踏みつけるという苛烈な暴行を加えている。このように被告人は,Aをあたかも物であるかのように扱っているのであって,かかる行為は,強固な犯意に基づく残忍な行為であるといえる。 犯行の結果について(1)Bの死亡について上記のとおり,Bは,被告人の更生のために尽力していたのであって,犯行当日も,Aから連絡を受けるや,Aを助けるため,すぐさまA方に駆けつけている。このようなBの尽力に対し,被告人は,A殺害の障害になるからなどという理不尽極まりない理由で,死をもって報いたのである。被告人の不意打ちによって出刃包丁で刺されたBは,それでもなお,Aに逃げ ている。このようなBの尽力に対し,被告人は,A殺害の障害になるからなどという理不尽極まりない理由で,死をもって報いたのである。被告人の不意打ちによって出刃包丁で刺されたBは,それでもなお,Aに逃げろと言い,自らは最後の力を振り絞って通路からA方に戻り,ついに力尽きたものと推察される。一人A方で絶命したBの無念さ,驚愕,苦痛は,到底言葉で言い尽くせるものではない。 Bは,当時23歳という春秋に富む若さであって「ビッグになりたい。 ,。 。」,自分で会社を興したい社会貢献がしたいという夢と希望に燃えており周囲の友人からも慕われ,まさに人生これからという状況であった。それにもかかわらず,被告人の理不尽な行為によって,一瞬にしてその夢と希望が失われたのであり,生じた結果は余りに重いといわざるを得ない。 (2)遺族の処罰感情についてこのように,Bが理不尽な理由で殺害されたことにより,遺族もBの死を受け入れることができず,深い悲しみと怒りを抱いている。 Bの母親は,愛する一人息子の死について「被告人に対し,Bがされた,事をそのまま同じように同じだけ返してやりたい,刺される痛み,死んでい- 29 -く悲しみ,苦しさ,つらさを感じてもらいたい,それでも私の心がいえることはない,被告人に対しては極刑を望む」と述べ,Bの父親は「23歳。 ,という若さで命を失った我が子,色々な夢や希望があったろうに,本当にかわいそうで残念でならない,どうもしてやれない,何もしてやれない自分が情けなく,この気持ちをどこへ,だれにぶつければいいのか,殺された理由も,自分勝手な考えだけで他人のことは一切お構いなしという身勝手で独りよがりの行為でしかない,被告人に対しては厳罰で対処してもらいたい」。 と述べている。また,Bの祖父母も,愛する孫が突然命を奪われたこと 分勝手な考えだけで他人のことは一切お構いなしという身勝手で独りよがりの行為でしかない,被告人に対しては厳罰で対処してもらいたい」。 と述べている。また,Bの祖父母も,愛する孫が突然命を奪われたことに深い悲しみを抱くとともに,被告人に対して厳罰を求めている。 Bが命を奪われたその理不尽さからすれば,遺族がこのような厳しい処罰感情を抱くのも,至極当然である。 (3)Aの傷害についてAは救急隊員に発見された際,血まみれで倒れており,意識不明の状況であった。また,受傷後も,しばらく意識は戻らず,植物状態に近い状態になることが懸念されていた。その後,奇跡的なことにAの意識は戻り,Aの懸命なリハビリの甲斐もあって,何とか日々の生活を送れるまでには回復したものの,事件前の状態にまで完全に回復したわけでは決してなく,今なお言語や行動に相当の制約を受けている状況にあり,犯行の影響は日常生活に確実に及んでいる。 ,,,このようにAは結果的にリハビリによってある程度は回復したものの重篤な後遺障害が残っても決しておかしくない重い傷害を受けているのであって,Aが受けた肉体的,精神的苦痛,恐怖心は多大であるといわざるを得ない。かかる結果の重さからすれば,Aやその家族が,被告人に対して厳罰を求めるのも,当然である。 被告人の反省態度について被告人は,上記のとおりの重大な結果を引き起こしたにもかかわらず,Bの- 30 -遺族や,Aに謝罪文を書くこともせず,最終陳述において,ようやく反省の弁を述べるに留まっている。このような被告人の態度からすれば,被告人が,本件犯行を真摯に反省しているかは,甚だ疑問である。 被告人の再犯可能性について被告人は,少年時に,入院中の病院内で,他の入院患者及び同病院の看護助手の頭部を足で踏みつけたことによる傷害致死及び傷 件犯行を真摯に反省しているかは,甚だ疑問である。 被告人の再犯可能性について被告人は,少年時に,入院中の病院内で,他の入院患者及び同病院の看護助手の頭部を足で踏みつけたことによる傷害致死及び傷害の非行で医療少年院に送致されている。このように被告人には,過去に人の頭部を踏みつけて死亡させた前歴があり,そのことで医療少年院送致の処分を受け,矯正の機会を与えられたにもかかわらず,またもや,前回と同様に,Aの頭部を踏みつけるという行動を行って重傷を負わせたばかりか,Bを残忍な方法で殺害しているのである。以上は,少年時の前歴に関するものではあっても,本件における被告人の行動とも密接に関連するものであり,本件は決して偶発的な犯行ではなく,被告人の性格が行動に表れたものであると評価せざるを得ない。 また,被告人は,鑑定人により,非社会性パーソナリティ障害であると診断されている。被告人の生育歴をみると,幼少のころ父から暴力を受け,父母の離婚後は母の手1つで育てられたというやや不遇な事情はあったものの,長じてからは,2度にわたって少年院送致の処分を受け,矯正の機会を与えられている。被告人の性格の偏りについては,自己責任によるところが大きいといわざるを得ず,再犯可能性を考える上でも,かかる事情は無視できない。 さらに,被告人は,仕事につくも長続きせず,ギャンブルに明け暮れ,金に困ると,判示第4及び第5のとおり窃盗に及ぶなどしている。 このような被告人の前歴の内容,非社会性パーソナリティ障害と診断されて,,,いること被告人の生活態度などからすると被告人の犯罪傾向は相当根深く被告人の再犯可能性は高いといわざるを得ない。 第3 結論 以上検討したとおり,本件においては,当初殺害を計画したAに対する殺人は- 31 -未遂にとどまり,たまたま居合わせたBに 傾向は相当根深く被告人の再犯可能性は高いといわざるを得ない。 第3 結論 以上検討したとおり,本件においては,当初殺害を計画したAに対する殺人は- 31 -未遂にとどまり,たまたま居合わせたBに対する殺人が既遂になっている点に特色があるところ,Bに対する犯行をみると,被告人は,理不尽極まりない動機かつ残忍な態様でBを殺害しており,それゆえにBを失った遺族の処罰感情は峻烈である。また,被告人は,Aに対して,Aの頭部を全力で踏みつけるという残忍な行為を行い,重い傷害を負わせている。B及びAに対し,連続して殺害行為に及んだ被告人の責任は,極めて重大である。 そして,このような責任の重大性に加え,被告人の再犯可能性が高いといわざるを得ないことからすると,B殺害に関しては計画的な犯行ではなかったこと,懸命なリハビリの結果,Aが何とか日々の生活を送れるまでには回復したこと,被告人が若年で前記の前歴はあるものの前科がないことなどの酌むべき事情を最大限考慮したとしても,有期懲役に処することは相当でなく,被告人を無期懲役に処し,その生涯をもって償いの日々とするのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑無期懲役)平成21年7月15日岐阜地方裁判所刑事部裁判長裁判官田邊三保子裁判官宮本聡- 32 -裁判官中山知
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