平成25年9月12日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ハ)第26960号違約金請求事件口頭弁論終結日平成25年7月16日判決 主文 1 被告は,原告に対し,48万5839円及びこれに対する平成24年8月18日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,3年以上契約を継続することを条件に,コピー機能を有する複合機の使用料金を割り引き,3年以内に解約をした場合はその割引分を長期割引引戻し金として被告が原告に支払う旨の約定を含んだ当事者間の複合機のメンテナンス契約について,ユーザーである被告が契約開始後3年未満で解約をしたことにより,原告が,被告に対し,上記長期割引引戻し金及び遅延損害金の支払を求め,被告がこれを争った事案である。 1 争いのない事実当事者双方は,平成22年2月10日,被告が「Z社製カラー複合機」(以下「本件複合機」という。)を使用するに当たり,複写機・複合機メンテナンス契約を締結し,平成22年2月19日,本件複合機は被告指定場所に設置された。 2 争点(1) 当事者間において,長期割引サービス契約は締結されたか。 (原告の主張)平成22年2月10日,原告と被告は,複写機・複合機メンテナンス契約が3年以上継続することを条件に,カラーコピーは1枚当たり5円,モノクロコピーは1枚当たり2円(モノクロコピーについては,原告の当初価格は1枚当たり6円)を割り引 は,複写機・複合機メンテナンス契約が3年以上継続することを条件に,カラーコピーは1枚当たり5円,モノクロコピーは1枚当たり2円(モノクロコピーについては,原告の当初価格は1枚当たり6円)を割り引くが,被告の都合により本件複合機の設置日から3年以内に複写機・複合機メンテナンス契約を解約した場合,被告に対して,それまでの上記割引分を長期割引引戻し金として支払わなければならない(遅延損害金は年14.6パーセント)旨の長期割引サービス契約を締結した。 (被告の主張)知らない。 (2) 長期割引サービス契約締結について被告に錯誤はあったか。 (被告の主張)被告が長期割引サービス契約を締結したとしても,被告は中途解約による長期割引引戻し金の発生について認識しておらず,長期割引サービス契約は錯誤により無効である。 (原告の主張)被告は,長期割引引戻し金の発生を含め,長期割引サービス契約の内容を認識しており,被告に錯誤はない。 (3) 長期割引サービス契約は,公序良俗に反するか。 (被告の主張)長期割引サービス契約による料金は,カラーコピー1枚当たり25円,モノクロコピー1枚当たり4円であって,これは業界の相場に比して,何ら割引された金額ではなく,通常の価格である。業界において長期割引サービス契約なとどいう,契約の相手方を長期間不合理な拘束下におく不当な契約形態を採用する企業はごく少数である。原告は,長期割引引戻し金として不当に暴利を貪るものであり,長期割引サービス契約は公序良俗に反する。 (原告の主張)もともと長期割引サービスは,短期解約を抑制し,顧客が原告と長期的な契約関係を締結してもらうことを目的として設けられており,3年間という契約期間を経過した顧客に対して,初めて割引の恩恵が与えられるという制度 期割引サービスは,短期解約を抑制し,顧客が原告と長期的な契約関係を締結してもらうことを目的として設けられており,3年間という契約期間を経過した顧客に対して,初めて割引の恩恵が与えられるという制度である。こうした制度である以上,導入から3年未満で解約になった場合は,過去に遡って割引前の料金が適用されて,長期割引引戻し金が発生することになるが,かかる制度自体は不合理なものではなく,少なくとも,同制度そのものについての効力を否定するほど著しく正義に反するほどの不合理性はないことは明らかである。 (4) 長期割引サービス契約締結において,原告に詐欺行為があったか。 (被告の主張)長期割引サービス契約は,上記(3)で主張したとおり詐欺的手法であり,被告は詐欺取消を主張する。 (原告の主張)価格については,本件複合機のメーカー標準価格の最低金額を原告の設定価格とし,そこから更に割引きをしているのであって,原告が詐欺的手法を使ったという事実はない。他に安価な価格設定をしている業者が存在したとしても,それが業界の相場であるとも言えない。 (5) 複写機・複合機メンテナンスサービスは解約されたか。 (原告の主張)平成24年5月11日,他の販売店から,本件複合機を引き上げて新しい物件を設置したので複写機・複合機メンテナンス契約を解約する旨の連絡があった。よって,これは設置から3年以内の複写機・複合機メンテナンス契約の解約に当たるため,被告は,原告に対し,次のとおりの長期割引引戻し金48万5839円を支払う義務がある。 カラーコピー 5円(割引額)×6万0670枚(契約時から解約時までの枚数)=30万3350円モノクロコピー 2円(割引額)×7万9677枚(契約時から解約時までの枚数)=15万9354円消費税 額)×6万0670枚(契約時から解約時までの枚数)=30万3350円モノクロコピー 2円(割引額)×7万9677枚(契約時から解約時までの枚数)=15万9354円消費税 2万3135円顧客の使用している複合機を新しい機械に入れ替えた場合は,新しい販売店が従来の販売店に対して,機械を入れ替えたこと及び従来の機械の最終カウンター値を電話で連絡するのが業界の慣例である。本件では,平成24年5月11日に,新しい販売店である甲の従業員から,原告に対し,機械の入れ替え及び本件複合機の最終カウンター値の連絡があり,同日をもって,複写機・複合機メンテナンス契約の解約がなされたと解することは妥当であり,被告もそのことを認識していた。 (被告の主張)被告は,平成24年5月11日に,複写機・複合機メンテナンス契約を解約した認識はない。被告は,甲に対して同契約の解約について代理権を与えたこともなく,解約は甲の無権代理行為である。 第3 争点に対する判断 1 当事者間において,長期割引サービス契約は締結されたか。 本件で被告が作成,提出した甲に対する平成24年12月26日付け訴訟告知書の第1の(1)において,被告代表者が,甲の営業担当者に対して,「(原告との契約は)3年の縛りがあるので変更することができない。」旨告げたと記載していること,契約書兼契約内容確認書(甲2の1,2),メンテナンス料金表(甲2の3,4),陳述書(甲9)及び証人Aの証人尋問結果によれば,被告代表者は原告が主張する長期割引サービス契約の内容を,上記契約書兼契約内容確認書,メンテナンス料金表の各記載事項及びAの説明によって認識し,その上で,当事者間に長期割引サービス契約が締結されたことが認められる。 2 長期割引サービス契約締結について被告に錯誤は 契約内容確認書,メンテナンス料金表の各記載事項及びAの説明によって認識し,その上で,当事者間に長期割引サービス契約が締結されたことが認められる。 2 長期割引サービス契約締結について被告に錯誤はあったか。 被告代表者が長期割引サービス契約の内容を認識していたのは上記1のとおりであり,被告に長期割引サービス契約締結に当たって錯誤があったと認めるに足りる証拠はない。 3 長期割引サービス契約は,公序良俗に反するか。 (1) 本件複合機のような機械を事業者に導入させようとする原告のような業者としては,単に導入すれば目的を達するのではなく,その後長期間にわたってメンテナンス等の契約を締結することにより,その利益を得ることを目的としているものと認められる。ある程度の期間,契約を存続させるためには,本件のような長期割引サービスを設定し,機械のユーザーに,短期間で契約を終了することが不利益になるような契約,換言すれば,長期間契約を継続すれば,ユーザーに利益となるような契約を設定することも,それが,ユーザーに対してとてつもない不利益を与えるのでなければ,合理的なものであると言うことができる。 (2) これを本件についてみると,被告は,特にコピー価格について,原告の設定が高過ぎ,長期割引サービス契約による割引後の価格自体,通常価格であると主張するが,確かに,原告の設定価格より安価な設定をする業者が存在することは認められるものの(乙2,枝番を含む),だからといって,「Z社複合機価格・カウンター料金・保守サービスのご案内」(甲8)及びAの証人尋問結果によれば,原告の設定価格が業界の相場を大きく上回っているとは認められず,これに反する証拠ない。よって,長期割引サービス契約が被告に大きな不利益を与え,公序良俗に反するとまでは認めることは 人尋問結果によれば,原告の設定価格が業界の相場を大きく上回っているとは認められず,これに反する証拠ない。よって,長期割引サービス契約が被告に大きな不利益を与え,公序良俗に反するとまでは認めることはできない。 4 長期割引サービス契約締結において,原告に詐欺行為があったか。 上記3で述べたことからは,原告が詐欺行為によって長期割引サービス契約を締結したと認めることはできない。 5 複写機・複合機メンテナンスサービスは解約されたか。 (1) 「顧客データ」(甲4),被告と甲間の契約書(乙1),Aの証人尋問結果及び弁論の全趣旨から,平成24年5月11日に,本件複合機が,被告から撤去されたことが認められる。 (2) 被告が,原告に対し,平成24年5月11日に,複写機・複合機メンテナンス契約を解約する旨,直接意思表示をした事実はないが,平成24年12月26日付け訴訟告知書の第1の(1)において,被告代表者が,甲の営業担当者に対して,「(原告との契約は)3年の縛りがあるので変更することができない。」旨告げたと記載していることから,被告としては,甲の機械を導入することは,原告との複写機・複合機メンテナンス契約を解約することであるとの認識を有していたものと認められること,上記(1)のとおり,実際に本件複合機は被告から撤去されていること,原告や甲のような業界において,新たな業者が参入する際には,新たな業者から従来の業者に対してその旨の連絡をすることが慣例であると認められること(Aの証人尋問結果)を考慮すると,被告は,平成24年5月11日に,甲を通じて(それが代理人であるか,使者であるかはともかく),原告に対し,複写機・複合機メンテナンス契約の解約の意思表示をしたものと認めるのが相当である。 (3) そうすると,上記解約の意思表示 ,甲を通じて(それが代理人であるか,使者であるかはともかく),原告に対し,複写機・複合機メンテナンス契約の解約の意思表示をしたものと認めるのが相当である。 (3) そうすると,上記解約の意思表示は,複写機・複合機メンテナンス契約が締結された平成22年2月10日から3年を経過しない時期になされたものであるから,長期割引サービス契約によって,被告は,原告に対し,長期割引引戻し金を支払う義務があるところ,その金額は,メンテナンス料金表(甲2の3,4),「月別利用カウント/出力カウントならびに長期割引引戻し金(違約金)の算出」と題する書面(甲14)からは,原告の主張どおりであること,「再請求書」(甲5)及び弁論の全趣旨からは,原告がこの金額を,平成24年8月17日を支払期限として請求したことが認められる。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,遅延損害金の請求も含めて(甲第2号証の4の「長期割引サービス契約約款」第4条,「複写機・複合機メンテナンス契約約款」第14条)理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第5室 裁判官片倉毅
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