平成9(行ウ)4 非公開処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成10年10月9日 秋田地方裁判所 情報公開
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判決文本文15,693 文字)

主文 一被告が原告に対して平成九年四月一六日付けでなした別紙文書目録記載一の公文書のうち、同目録記載三の1及び3を非公開とした処分を取り消す。 二原告のその余の請求を棄却する。 三訴訟費用はこれを三分し、その二を被告の、その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第一原告の請求被告が原告に対して平成九年四月一六日付けでなした別紙文書目録記載一の公文書の非公開決定のうち、同目録記載三の1、2及び3を非公開とした処分を取り消す。 第二事案の概要等本件は、原告が、秋田県公文書公開条例(昭和六二年秋田県条例第三号。以下「本件条例」という。)に基づき、秋田県農政部農地計画課の平成三、四年度の食糧費に関する支出負担行為伺及び支出命令書に関する公文書公開請求をしたのに対し、被告が、懇談の相手方の職、氏名、債権者(被振込人)の振込先・口座番号及び債権者の従業員の氏名・印の部分を非公開とする部分公開決定処分をしたので、その取消しを求めた事案である。 一争いのない事実 1 本件公文書の公開請求及び本件処分等(一) 公文書の公開請求原告は、平成八年九月二〇日、本件条例七条に基づき、被告に対し、別紙文書目録一記載の公文書(以下「本件公文書」という。)の公開を請求した。 (二) 被告は、本件公文書のうち、別紙文書目録二の1記載の部分について本件条例六条一項一号及び四号により、同目録二の2記載の部分については本件条例六条一項二号及び四号により非公開とし、その余の部分を公開する旨の部分公開決定(以下「本件原処分」という。)をなし、同年一〇月一七日付けでその旨を原告に通知した。 (三) 原告は、同年一一月二六日、本件原処分を不服として行政不服審査法六条に基づき、実施機関である被告に対して異議申立てをした。 (四) 被告は、異議申立てに 一七日付けでその旨を原告に通知した。 (三) 原告は、同年一一月二六日、本件原処分を不服として行政不服審査法六条に基づき、実施機関である被告に対して異議申立てをした。 (四) 被告は、異議申立てに係る審査中の平成九年四月一六日、右原処分の非公開部分を変更し、本件公文書のうち、同目録三の1記載の部分については、本件条例六条一項一号により、同目録三の2記載部分については本件条例六条一項二号により、また、同目録三の3記載部分については、本件原処分では非公開の対象として記載されていなかったが、本件条例六条一項一号により、非公開とする決定を原告に通知した(以下「本件処分」という。)。 2 本件条例の規定のうち、本件に関する部分は次のとおりである。 第六条実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、公文書の公開をしないことができる。 (1) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの。ただし、次に掲げるものを除く。 ① 法令又は条例の定めるところにより何人でも閲覧することができるもの② 公表することを目的として実施機関が作成し、又は取得したもの③ 法令又は条例の規定による許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して実施機関が作成し、又は取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの(2) 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの。ただし、次に掲げるものを除く。 ① 法人等又は個人の事業活動によって生じ、又は生ずるお ことにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの。ただし、次に掲げるものを除く。 ① 法人等又は個人の事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、身体又は健康を保護するため、公開することが必要と認められるもの② 法人等又は個人の違法又は不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある支障から人の生活を保護するため、公開することが必要と認められるもの③ ①又は②に掲げる情報に準ずる情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの二争点 1 「懇談の相手方の職・氏名」が本件条例六条一項一号の「個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもの」に該当するか否か。 2 「債権者(被振込人)の振込先・口座番号」が本件条例六条一項二号の「法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの」に該当するか否か。 3(一) 「債権者の従業員の氏名・印」は、本件原処分において非公開の対象となっていたか否か。 (二) (一)を肯定したとして、「債権者の従業員の氏名・印」が本件条例六条一項一号の個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもの」に該当するか否か。 三争点に対する各当事者の主張 1 被告(一) 個人情報についての基本原則(1) 秋田県公文書公開条例(以下「公開条例」という)六条一項一号は、原則公開の立場をとる情報公開制度においても、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の観点から、個人に関する情報は最大限保護されるよう特定の個人が識別され、又は識別され得るような情報が記録されている公文書については、公文書の開示を原則とし おいても、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の観点から、個人に関する情報は最大限保護されるよう特定の個人が識別され、又は識別され得るような情報が記録されている公文書については、公文書の開示を原則としていないものと定め、個人に関する一切の情報は包括的に公開しないものとしたものである。 (2) 公文書公開条例は、現時点ではプライバシーの概念そのものが十分に成熟したものとは言えず、しかも情報公開制度に関連したプライバシーの保護制度が整備されてない段階においては、プライバシーの概念を厳重に規定したとしても個人生活に関する権利又は利益に対する不当な侵害を防止することはできないとの観点から、個人に関する情報としてプライバシーの保護の対象になるかどうか定かではない所謂グレーゾーンの情報及び自己情報を含む個人に関する一切の情報について、明らかにプライバシーの侵害にならない一定の事項を除いて、その内容についての吟味・検討をすることなく原則として保護することとして公開しないこととしたものである。 したがって、公開条例六条一項一号但書の事由に該当するかどうかの判断にあたっては、右の趣旨を踏まえて慎重な検討が肝要である。 (二) 懇談の相手方の職・氏名右は、以下の理由から、本件条例六条一項一号の「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」に該当する。 (1) 「個人に関する情報」とは、思想、信条、信仰、趣味等に関する情報、職業、資格、学歴等に関する情報、収入、財産状況等に関する情報、健康状態、病歴等に関するすべての情報をいうものとされている(秋田県編『情報公開事務の手引』昭和六二年九月刊・乙一)。 (2) また、「特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」とは、当該情報から特定の個人が判別でき、又は判別できる可能性のある情報をいう (秋田県編『情報公開事務の手引』昭和六二年九月刊・乙一)。 (2) また、「特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」とは、当該情報から特定の個人が判別でき、又は判別できる可能性のある情報をいうものとされている。一般的には個人の氏名及び住所等の記載により識別されることになるものであるが、氏名等の記載がなくともその情報の内容から特定個人が推測できるもの、他の情報と結び付けることにより間接的に氏名が特定されるものなど何らかの方法で特定の個人が識別され得るものをいうとされている。 (3) 「個人に関する情報」の例示として「職業」が掲示されているが、「公務員」も職業を示すものであり、既に公開することとした「所属」と原告が公開すべきとする「職」を併せ読むとまさに例示に示された「職業」の外、氏名も推測させることにもなり得る。 (4) 原告は、公務として行われる事項は個人に関する情報から除かれるとの主張のようであるが、立法論としては格別、公開条例の解釈としては文理上無理である。 また、懇談会は、相手方の勤務時間外に行われることが通例であり、県が公務として対している以上、相手方にとっても公務としての一面性は否定できないとしても、勤務時間外であれば、私的な面も相当部分あることから、本県側が公務であることをもって、直ちに相手方も公務であると断定することは論理の飛躍である。 (三) 公開条例六条一項二号について(1) 公開条例六条一項二号は、法人その他の団体及び個人事業者の事業活動の自由その他正当な利益を尊重し、保護する観点から、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの」を公開しないことができるとし は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの」を公開しないことができるとしたものである。 (2) 前掲の『情報公開事務の手引』によれば、右の「当該事業に関する情報」とは、当該事業が営利を目的とするか否かを問わず、また直接当該事業に係わるものの外、事業用資産、個人的信用等間接的に事業に関するものを含め、事業活動に関する一切の情報をいうものとされている。 (3) また、右の「事業運営上の地位が損なわれると認められるもの」とは、経営方針、経理、人事等組織秩序を維持する上で必要な内部管理に属する情報であって、公開することにより、団体等の自治、私的自治に干渉することになると認められるものをいうとされている。 (4) さらに、右の「社会的な地位が損なわれると認められるもの」とは、団体等の名誉、社会的信用、社会的活動の自由その他社会通念上一般に保護されるべきであると考えられる情報であって、公開することにより、これを侵害することになると認められるものをいうとされている。 (5) 本件における原告の主張は、当該法人等の振込先・口座番号は公開条例六条一項二号に規定されている「事業に関する情報」ではないというもののようであるが、「振込先・口座番号」は取引の際の支払方法の一つとして口座振替によることに伴って、当該法人等が秋田県に提供する情報であって、支払方法は必ずしも口座振替に限られるものではない。口座振替による支払方法は、債権者と債務者との取引関係で債権者の選択によって債務者たる秋田県に振込先・口座番号の情報を提供されたものである。そして、債権者が秋田県に提供した振込先・口座番号は当該法人等が必ずしもすべての取引行為において使用している振込 で債権者の選択によって債務者たる秋田県に振込先・口座番号の情報を提供されたものである。そして、債権者が秋田県に提供した振込先・口座番号は当該法人等が必ずしもすべての取引行為において使用している振込先・口座番号であるとは限らないものである。例えば、複数の口座があった場合、その選択は、債権者の判断によるものであり、債務者はその指定された口座に支払えぱ足りる。これは通常の商取引においてもみられるところである。 したがって、原告が主張するように、取引すれば明らかになる事項ではなく、この情報を公開することは当該法人等の利益を著しく損なうこととなる。例えば、当該法人等の財産の差押をしようとしている第三者が、情報公開制度において当該法人等の取引金融機関を調査することを目的として、公文書公開請求をする場合を想起すれば、公開条例の保護しようとしている利益にまさに該当するものである。 振込先・口座番号は、現金や小切手で取引する顧客には分からない情報であり、原告が主張するような「当該法人等と取引すれば明らかになる事項」ではない。日常生活において、商店で文房具や書籍等を購入する場合を考えると明らかであるが、いわゆるレシートを渡されるだけであり、レシートには振込先・口座番号は記載されていない。まして、取引関係のない市民には、これらは通常知り得ない情報である。 また、取引金融機関のランク等により、当該法人等のランク付けが推測される場合があるので、当該法人等にとって必ずしも積極的に明らかにしたい情報ではない。取引金融機関名等は、会社四季報等投資家向けの図書に登載されているが、圧倒的に多い閉鎖的会社においては、不特定多数の者に積極的に公表していないのが通例である。 したがって、これらは、取引関係において提供される情報であり、必ずしも他の取引にも使用されるとは限 るが、圧倒的に多い閉鎖的会社においては、不特定多数の者に積極的に公表していないのが通例である。 したがって、これらは、取引関係において提供される情報であり、必ずしも他の取引にも使用されるとは限らないものであるから、その開示範囲は当該法人等が自ら選択できるものであって、自ら開示した者以外に対しては公開せずに内部情報として管理するのが通常の情報である。 (6) 以上のとおり、原告が公開を請求している「振込先・口座番号」は、当該法人等の内部管理情報として、公開条例六条一項二号本文に該当し、同号ただし書に該当しないものである。 (四) 債権者の従業員の氏名・印について右は、本件条例六条一項一号の「個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」に該当する。 (1) 当初の部分公開決定処分(原処分)においては、請求書における「債権者の従業員の氏名・印」を分離特定して非公開決定しているものではない。これは、当時、「債権者の従業員の氏名・印」については、債権者の内部管理情報に含めて非公開とする取扱いをしていたことによるものである。 (2) その後、非公開の基準について詳細な検討の結果、債権者とその従業員とは前者は経営者、後者は使用人という立場の違いがあり、経営に対する立場や人格が異なることから、これらを分離して、「債権者の従業員の氏名・印」については従業員の個人的色彩が強いため、債権者の内部管理情報としてではなく、債権者から独立した個人に関する情報として取扱うこととしたものである。したがって、今回の決定においても当該部分は、公開されていた事項を非公開として原処分を変更したものではなく、原告に対し何ら不利益を与えたものではない。 本件処分は、非公開の基準についての事情の変遷があり、かつ、請求者に不利益を与えない事項について公益に適 事項を非公開として原処分を変更したものではなく、原告に対し何ら不利益を与えたものではない。 本件処分は、非公開の基準についての事情の変遷があり、かつ、請求者に不利益を与えない事項について公益に適合したものとする必要があったために行ったものであって、違法な処分ではない。 (3) 原告は、「秋田県と取引をしたことないし公金を受領したことを証するために」従業員の氏名・印を記載しているとの主張であるが、秋田県との取引を証するならば、法人名・代表者名・印で足りる。従業員の氏名・印は、請求書に記載される場合はあるが、請求書の記載の必須条件でもなく、なければなくてもよい情報である。実際、本件対象公文書で大量の請求書がある中、従業員の氏名・印が記載されているのは、一件である。 また、公金の受領についても、口座振替による入金を考えれば、領収書に担当者を記載して発行する理由はないし、本件対象公文書に従業員の氏名・印が記載された領収書はない。 あくまでも、当該取引に関して債務者の便宜を考慮し、たまたま記載されたものであり、通常は記載がないものである。債権者たる法人等は、経営者と使用人という立場の違いがあり、経営に対する立場や人格が異なる従業員をその法人等の「代理人」として氏名・印を記載させているのではない。 よって、「従業員の氏名・印」は債権者から独立した「個人に関する情報」であり、本件条例六条一項一号に該当する。 (4) 必要性の点本件は、平成三年度、四年度の食糧費の支出に関する公文書に記載された「振込先・口座番号」及び「従業員の氏名・印」の非公開処分について、これらが本件条例六条一項二号又は一号に規定する非公開情報に該当するかどうかを審理しているのであり、これらが非公開情報に当たるかどうかを決定するに当たり、当該情報の真否やこれに関する行政情報 いて、これらが本件条例六条一項二号又は一号に規定する非公開情報に該当するかどうかを審理しているのであり、これらが非公開情報に当たるかどうかを決定するに当たり、当該情報の真否やこれに関する行政情報の適否は、審査の基準とならない。その点で、本項での原告の主張は異質で、争点をすりかえるものである。 2 原告(一) 「懇談の相手方の職・氏名」の非公開(別紙文書目録三の一)について本件条例六条一号は、プライバシーの保護を目的としているから、プライバシーと無関係な事項すなわち公務として行われている事項は、これに該当しない。しかして、右相手方は、いずれも、秋田県農政部農地計画課の職員が、公務として懇談等を行っていた相手方であって、相手方らが、秋田県の公務とは無関係に同職員と懇談を行ったものではなく、そうでなければ、公金支出は違法となる。したがって、右相手方らは、いずれも、秋田県職員の公務との関係で懇談を行っているのであるから、右懇談出席者である相手方個人の行動ないし生活に関わる意味をもつものではない。県民の側としても、秋田県職員の懇談の相手方の情報も知り得なければ、「県政への理解と信頼」(本件条例一条)も得られないし、「公正な行政運営」(同条)の検証もできない。 被告は、本件条例のような「個人識別型」での条例では、プライバシーに関わるかどうかという「吟味検討をするまでもなく外形で判断」して、「個人に関する情報」は一律全部に非公開事由に該当すると主張する。しかし、本件条例の趣旨は、単に「個人に関する情報」を全面的に非公開とする趣旨ではなく、同条項の趣旨が個人のプライバシーを保護することにあるから、これと無関係で逆に情報公開制度の趣旨から公開すべき要請の強い公務に関する情報であれば、当該条項に該当しないと解釈するのが相当であり、現に被告がこれまで 個人のプライバシーを保護することにあるから、これと無関係で逆に情報公開制度の趣旨から公開すべき要請の強い公務に関する情報であれば、当該条項に該当しないと解釈するのが相当であり、現に被告がこれまで公開してきた様々な公文書中に個人の氏名や役職が記載されていても非公開とされずに公開されている文書も多い事実からすれば、被告自身も、単に「個人が識別される情報」という文言だけでなく、それを更に実質的に解釈して運用していることを示している。実際、被告も援用する「情報公開事務の手引」に当該条項に該当する例として示されている「思想、信条・・職業、資格・・・、収入、財産・・・、健康状態、病歴等に関する全ての情報」は、明らかにいわゆる個人のプライバシーに該当する情報である。 したがって、本件条例六条一項一号によって保護されるプライバシーに該当せず、同号の非公開事由に該当しない。 (二) 「債権者(被振込人)の振込先・口座番号(別紙文書目録三の2)」について被告は、右非公開部分は、「法人等に関する情報又は事業を営む個人に関する情報で、公開により、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的地位を損なうと認められるため」、本件条例六条一項二号に該当すると主張するが、当該法人等の振込先・口座番号も、当該法人等と取引すれば明らかになる事項ないし容易に知り得る情報であり、当該法人等(含・事業者)にとっても秘密にすべき事項ではない。したがって、この部分が開示されても、「当該法人等の事業運営上の地位又は社会的地位を損なう」とは考えられない。 したがって、右部分は、本件条例六条一項二号に該当しない。 (三) 債権者(被振込人)の従業員の氏名・印の非公開(別紙文書目録三の3)について(1) 被告は、右非公開部分は、「個人に関する情報であって、特定の 、右部分は、本件条例六条一項二号に該当しない。 (三) 債権者(被振込人)の従業員の氏名・印の非公開(別紙文書目録三の3)について(1) 被告は、右非公開部分は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもの」であって、本件条例六条一項一号に該当するとする。 しかし、右非公開部分は、前記のとおり、本件公開請求に対する原処分において、何ら非公開と決定されていなかった部分である。したがって、右部分に関する「変更決定」は、非公開とされていなかった部分(公開すると決定されていた部分)を、決定から六か月も経過して、非公開と変更したことになるが、本件条例上、一旦公開決定した部分を非公開とする処分に変更する規定はそもそも存在しない。したがって、右「変更決定」は、何ら条例上の根拠なく行われた処分で、違法である。 (2) 被告は、右非公開部分は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもの」であるから、本件条例六条一項一号に該当すると主張している。しかも、右非公開部分は、当初の部分公開決定処分では、「債権者の内部管理情報に含めて非公開」としていたが、「これらを分離して」「債権者から独立した個人に関する情報として取り扱うものにしたもの」と主張されている。 しかし、本件情報(右非公開部分)は、被告の右主張にも明らかなように、そもそも債権者に係る情報の一部として、非公開理由が説明されており、前記非公開事由の該当性は何ら主張されていなかった。この経緯の事実は、本件情報の性質を考える場合、次の二点において重要である。 第一に、本件情報は、被告においても、債権者に関わる情報といういわば「事業情報」に関するものと認識されており、従業員個人のプライバシーという点には考慮されていなかったことである。 第二に、本件情報が、「債権者に係る情報から分離」 も、債権者に関わる情報といういわば「事業情報」に関するものと認識されており、従業員個人のプライバシーという点には考慮されていなかったことである。 第二に、本件情報が、「債権者に係る情報から分離」した途端、「個人に関する情報」になるという説明の不合理性である。請求者・領収書に記載されている従業員の氏名は、公金の支出を求め、或いは公金を受領したことを証する重要な書類に関わる情報であって、単なる個人的な情報ではない。債権者という事業体の一部として、このような重要な行為を行政相手に行う担当者を示すものである。「印」も同様であって、従業員の個人的な印鑑が使われているわけではない。その印影は、債権者の請求行為ないし領収行為を明らかにするためのものである。当該事業体から従業員の押印のある請求書等を受領しても、誰もその印影がその従業員の個人的な印影であるとは理解しないであろう。その意味で、本件情報は、個人的な情報ではあり得ない。 (3) 対外的に同担当者は、当該取引に関して、同法人等の「代理人」ないし「被用者」たる立場にある。もし、当該取引に関する公金支出等に不明、疑問点が生じた場合は、当然のことながら、当該担当者に問い合わせをし、場合によっては証言等を求めることになる立場にある。その場合、当該担当者は、一個人として証言等を求められるわけではなく、当該法人等の担当者として、当該法人等の組織的一員として求められる立場にあるのである。 このような点からみれば、本件非公開部分は、当該法人等の情報の一部として意味があるのであって、当該個人の「個人的情報」としても意味があるのではない。 したがって、右情報が、本件条例六条一項一号に該当するものではない。これは、前記懇談の相手方の氏名等が、形式的には「個人情報」に該当するかのようであっても、同条例の趣旨等から、 味があるのではない。 したがって、右情報が、本件条例六条一項一号に該当するものではない。これは、前記懇談の相手方の氏名等が、形式的には「個人情報」に該当するかのようであっても、同条例の趣旨等から、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもの」であっても、本件条例六条一項一号に該当しないという解釈・判決例を想起すれば容易に理解し得る。そして、右公開によって、当該従業員等が、プライバシー等を侵害されるような不利益を受けないことは、右のとおり本件情報自体が当該法人等の組織的行為の一環をなすに過ぎないことから、明らかである。 以上のとおり、本件非公開部分は、本件条例一項一号に該当しない。 (四) 実際の支出関係文書における問題点と開示の必要性(別紙文書目録三の2及び3に関して)秋田県における不正支出が全庁において、長年にわたり行われていることは、既に公知の事実であるが、これらは、実際の支出関係文書の検討なくしては明らかにできなかったものである。しかも、債権者名が開示されるに至って、なお更、支出関係文書の不可解な事実が明らかにされている。例えば、実際に、同一の飲食店からの請求書なのに、請求書用紙が異なったり、飲食店名の記載や押印が異なるもの、飲食の明細が同じ筆跡であるにもかかわらず、飲食店名の押印が異なるもの、同一の請求日で、同一の課の二日違いの懇談会の請求書であるにもかかわらず、明細の筆跡の異なるものなどがあり、そのため、請求書にある債権者の従業員の氏名、押印、振込先等の開示によって事実の確認することで、公金の適正な支出の監視・検討をすることが必要となる。 別紙文書目録三の2に関しては、もし被告において、法人等の請求書の口座等の情報が非開示条項に該当すると主張するのであれば、右情報が公開された場合、右各法人等にどのような「事業運 ことが必要となる。 別紙文書目録三の2に関しては、もし被告において、法人等の請求書の口座等の情報が非開示条項に該当すると主張するのであれば、右情報が公開された場合、右各法人等にどのような「事業運営上の地位又は社会的地位を損なう恐れがある」のか、個別具体的に主張立証しなければならないはずであり、被告が主張立証できない限り本件条例六条一項二号の該当性は否定されるほかない。 第三争点に対する判断一争点1について 1 本件条例六条一項一号(以下「一号」と略称する。)の趣旨、解釈(一) 一号は、個人の尊厳という観点から、いわゆるプライバシーに関する情報を、原則として非公開として取り扱うこととしたものであり、プライバシー概念の内容及び範囲が必ずしも明確ではなく、主観的要素が強いことから、個人に関する一切の情報を原則として非公開とし、プライバシーの保護に万全を期することとしたものである。 ここに、「個人に関する情報」とは、典型的には、思想、信条、信仰、趣味等に関する情報、職業、資格、学歴等に関する情報、収入、財産状況等に関する情報、健康状態、病歴に関する情報など個人に関する全ての情報をいうものと考えられるから、これは、個人の私生活に関する情報ないしは私的な領域に関する情報をいうものと解すべきである。 (二) 本件では、懇談等の相手方の職、氏名が、一号の「個人に関する情報」に当たるか否かが問題となるが、ここに相手方とは、本件文書が秋田県農政部の食糧費の支出に係る文書であることからすれば、いずれも秋田県農政部の事務事業に直接関係のある懇談の相手方であると考えられる。そして、かかる場合に相手方のプライバシーが問題となるのは、主として、相手方が当該懇談会に出席したという情報であるところ、当該相手方が、個人としての資格を離れて、公務として或いは所属す 考えられる。そして、かかる場合に相手方のプライバシーが問題となるのは、主として、相手方が当該懇談会に出席したという情報であるところ、当該相手方が、個人としての資格を離れて、公務として或いは所属する団体の職務として右懇談会に出席する限りは、通常は、私的な領域の問題とは言えず、かかる場合、出席したという情報自体は、プライバシーとは無関係となる。 したがって、相手方の氏名は、それ自体個人を識別する情報ではあるが、相手方が職務として行った行為についての情報は、通常、一号の「個人に関する情報」に該当しないというべきである。また、相手方の職も、特定の個人に密接に関連している情報であるが、その特定の個人が識別されることが当該個人にとってプライバシーと関係がない場合には、相手方の氏名と同様、通常、一号の非公開事由に当たらない。 もっとも、相手方が、公務或いは所属団体の職名と相まって個人名が公開されると、それは他面で、個人に関する職業の所属に関する情報或いはその職業遂行、態様に関する情報を含むということもできるから、かかる場合に役職や氏名を公開されることにより、事実上個人としての非難を受けたり名誉を害されるなどその者個人の生活の平穏を害される場合や公務或いは所属団体の職務以外の私人としての立場で当該懇談会に出席する場合など私的領域に関わる場合も考えられるところであって、このように、当該情報がプライバシーに関するものとして「個人に関する情報」に当たるというべき場合、かかる事情の存在を非公開事由として具体的に被告側で主張立証する必要がある。 2 本件文書への適用本件では、懇談の相手方として考えられるのが、国、他の地方公共団体の職員又は議会の議員などの公務員である場合と、農協、民間企業などの公務員以外の公共ないし民間の各種団体である場合とが考えられる 用本件では、懇談の相手方として考えられるのが、国、他の地方公共団体の職員又は議会の議員などの公務員である場合と、農協、民間企業などの公務員以外の公共ないし民間の各種団体である場合とが考えられる。 本件相手方が公務員である場合には、当該公務員は、被告の事務事業のうち農政部所管に直接関係ある事項につき行われた懇談に出席していると考えられ、とすれば、当該懇談会への出席は、当該公務員にとって所属する各省庁や公共団体等の職務としてのそれとみるのが自然であり、その他に、当該公務員が個人として懇談会に出席したとの事情や本件懇談会への出席の事実が当該公務員の個人としての生活の平穏を害するなどの私的領域に関する事情が主張立証されていない。 本件相手方が公共ないし民間の各種団体である場合にも、同様に、当該懇談は同団体の職務と言え、相手方の出席が直ちに私的領域の事柄であるとは言えない。また、他に、私的領域である事情の主張立証もない。 以上により、本件相手方の職及び氏名は、一号の「個人に関する情報」には該当せず、よって非公開事由には該当しない。 したがって、一号に該当するという理由でこれを非公開とした本件処分は違法である。 二争点2について 1 本件条例六条一項二号(以下「二号」という。)の趣旨、解釈二号は、法人その他の団体及び個人事業者の事業活動の自由その他正当な利益を尊重し、保護する観点から、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの」を公開しないことができるとしたものである。 ここに二号本文にいう「当該事業に関する情報」とは、当該事業が営利を目的とするか否かを問わず、また直接当該事業に係 的な地位が損なわれると認められるもの」を公開しないことができるとしたものである。 ここに二号本文にいう「当該事業に関する情報」とは、当該事業が営利を目的とするか否かを問わず、また直接当該事業に係わるものの外、事業用資産、個人的信用等間接的に事業に関するものを含め、事業活動に関する一切の情報をいうものと解せられ、「事業運営上の地位が損なわれると認められるもの」とは、経営方針、経理、人事等組織秩序を維持する上で必要な内部管理に属する情報であって、公開することにより、団体等の自治、私的自治に干渉することになると認められるものをいうと解せられる。 2 本件情報の二号本文の該当性原告が公開を求める債権者(被振込人)の振込先、口座番号は、法人等又は事業を営む個人が事業活動を行うために不可欠な金銭の出納に関わる情報であり、「当該事業に関する情報」である。また、振込先、口座番号は、右の法人等や事業を営む個人が経営や経理を行う上で必要な内部管理に属する情報であり、どの範囲で如何なる相手方にこれらの情報を明らかにするかは、当該法人等又は事業を営む個人の経営に関わる部分が大きく、その自由な選択に委ねられるべきものと言えるのであって、秋田県に対する代金等の請求の際の請求書等にこれらの事項が記載されているからといって、取引関係にない一般市民にまで広くこれを公開することを予定しているとまでは言えず、これをむやみに公開するならば、まさに、当該法人等や事業を営む個人の自治ないし私的自治に干渉することになるものと言わざるを得ない。 したがって、右の振込先、口座番号は、二号本文にいう「公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの」というべきである。 なお、原告は、同一の飲食店からの請求書で 号本文にいう「公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの」というべきである。 なお、原告は、同一の飲食店からの請求書であるのに、その用紙、筆跡、押印等が異なることからすると、適正な公金支出であったか否かを確認するために債権者の振込先や口座番号を確認する必要性も否定できないとするが、右のような事情を二号本文の該当性の判断に際し考慮することはできないというべきである(仮に、原告の主張を二号ただし書①ないし③の公開事由に該当するという主張であると解するとしても、右公開事由に該当すると認めるに足りないというべきである。)。 三争点3について 1 前記認定に係る争いのない事実によれば、原告の被告に対する本件公文書の公開請求に対し、被告は、本件公文書のうち、別紙文書目録二の1記載の部分について本件条例六条一項一号及び四号により、同目録二の2記載の部分については本件条例六条一項二号及び四号により非公開とし、その余の部分を公開する旨の部分公開決定(本件原処分)をなし、その旨を原告に通知し、これに対して原告が被告に対して異議申立てをしたところ、被告は、異議申立てに係る審査中の平成九年四月一六日、右本件処分の非公開部分を変更し、別紙文書目録一記載の公文書のうち、同目録三の1及び同3記載部分を本件条例六条一項一号により、同目録三の2記載部分を本件条例六条一項二号によりそれぞれ非公開とする旨の原処分の非公開部分を変更する旨の決定(本件処分)をしたことが認められる。 右によれば、別紙文書目録三の3記載部分は、本件原処分においては公開の対象となっていたことが明らかであるというべきである。この点について、被告は、「債権者の従業員の氏名・印」は債権者の内部管理情報に含めて非公開とする取扱 三の3記載部分は、本件原処分においては公開の対象となっていたことが明らかであるというべきである。この点について、被告は、「債権者の従業員の氏名・印」は債権者の内部管理情報に含めて非公開とする取扱いをしていたものであり、当初から非公開の対象となっていたと主張するが、本件原処分の記載内容からは「債権者の従業員の氏名・印」が非公開の対象となっているとは到底解することはできないから理由がないというべきである。 以上によれば、「債権者の従業員の氏名・印」を非公開とした「変更決定」は、一旦公開すると決定されていた部分を、決定から六か月経過後に非公開と変更したことになるところ、債権者の従業員の氏名・印が個人情報若しくは企業の内部情報として非公開事由に該当するか否かはともかくとして、本件条例上、一旦公開決定した部分を非公開とする処分に変更する規定がなく、したがって、右「変更決定」は、条例上の根拠なく行われた処分で、違法であると言わざるを得ない。 第四結語以上により、本件各処分のうち、別紙文書目録一の1及び3記載の部分を非公開とした処分はいずれも違法であるからこれを取り消すこととし、その余の処分は適法であるから右部分に係る請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 (弁論終結日・平成一〇年七月三日)秋田地方裁判所民事第一部裁判長裁判官手島徹裁判官田邊浩典裁判官山下英久(別紙文書目録)一原告の公文書公開請求秋田県農政部農地計画課の平成三年度、四年度食糧費に関する支出負担行為伺及び支出命令書二非開示部分 1 懇談の理由、出席者(懇談の相手方) 2 債権者(被振込人)の住所・名称(氏名)・振込先・口座番号三平成九年四月一六日付変更決定における非開示部分 1 前項1のうち、懇談等の相手方の職・氏名 2 前項2のうち、債権者(被振 の相手方) 債権者(被振込人)の住所・名称(氏名)・振込先・口座番号三平成九年四月一六日付変更決定における非開示部分 前項1のうち、懇談等の相手方の職・氏名 前項2のうち、債権者(被振込人)の振込先・口座番号 債権者の従業員の氏名、印

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