令和2(ワ)19198 不正競争行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年12月20日 東京地方裁判所
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判決文本文85,876 文字)

1 令和4年12月20日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 令和2年(ワ)第19198号 不正競争行為差止等請求事件 口頭弁論終結日 令和4年10月31日 判 決 5 原 告 アストラゼネカ株式会社 同訴訟代理人弁護士 末 吉 剛 髙 橋 聖 史 同訴訟代理人弁理士 青 木 博 通 10 被 告 日本ジェネリック株式会社 (以下「被告日本ジェネリック」という。) 被 告 東亜薬品株式会社 (以下「被告東亜薬品」という。) 15 被告ら訴訟代理人弁護士 古 城 春 実 牧 野 知 彦 岡 田 健 太 郎 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 20 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告日本ジェネリックは、別紙被告商品目録記載の各医療用医薬品を譲渡し、 又は譲渡のために展示してはならない。 25 2 2 被告東亜薬品は、別紙被告商品目録記載の各医療用医薬品を製造し、譲渡し、 又は譲渡のために展示してはならない。 3 被告らは、別紙被告商品目録記載の各医療用医薬品を廃棄せよ。 4 被告らは、原告に対し、連帯して2億3886万2925円並びにうち1億1 756万4694円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割 5 合による金員及び 各医療用医薬品を廃棄せよ。 4 被告らは、原告に対し、連帯して2億3886万2925円並びにうち1億1 756万4694円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割 5 合による金員及びうち1億2129万8231円に対する、被告日本ジェネリッ クにおいては令和2年8月26日から、被告東亜薬品においては同月27日から 各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 5 仮執行宣言 第2 事案の概要等 10 本件は、気管支喘息用の医療医薬品である別紙原告商品目録記載の各商品(以 下「原告商品」と総称する。)を製造販売する原告が、原告商品の形態は商品等 表示に当たり、被告東亜薬品が当該商品等表示に類似した形態を商品等表示とし て使用した後発医療薬(ジェネリック医薬品)である別紙被告商品目録記載の各 商品(以下「被告商品」と総称する。)を製造し、被告日本ジェネリックがこれ 15 を販売する行為は、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の 不正競争行為に該当するなどと主張して、被告らに対し、不競法3条1項に基づ き、被告商品の譲渡等の差止めを、同条2項に基づき、被告商品の廃棄を求める とともに、同法4条、5条2項に基づき、令和元年12月から令和2年5月まで の間の損害賠償金として2億3886万2925円並びにうち1億1756万 20 4694円に対する令和2年3月31日から支払済みまで民法(平成29年法律 第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち1億21 29万8231円に対する訴状送達の日の翌日(被告日本ジェネリックにおいて は令和2年8月26日、被告東亜薬品においては同月27日)から支払済みまで 民法所定の年3分の割合による各遅延損害金の支払を求める事案である。 25 1 前提事実(当事者間に争いがない事実 において は令和2年8月26日、被告東亜薬品においては同月27日)から支払済みまで 民法所定の年3分の割合による各遅延損害金の支払を求める事案である。 25 1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により 3 認定できる事実をいう。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に記 載しない限り、枝番を含むものとする。) ⑴ 当事者 ア 原告は、英国法人であるAstraZeneca plcの日本法人であり、医療用医薬 品の開発、製造及び販売等を目的とする株式会社である。 5 イ 被告日本ジェネリックは、後発医薬品(ジェネリック医薬品。以下「後発 薬」という。)の研究、開発、製造及び販売等を目的とする株式会社である。 ウ 被告東亜薬品は、医薬品及び医薬部外品の製造、販売及び輸出等を目的と する株式会社である。 ⑵ 原告商品 10 ア 原告は、平成21年、アステラス製薬株式会社(以下「アステラス製薬」 という。)とともに、ブデゾニド及びホルモテロールフマル酸塩水和物を有 効成分とする気管支喘息治療用の吸入薬である原告商品の製造販売につき、 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下 「薬機法」という。)14条1項に基づく厚生労働大臣の承認を受けた(以 15 下、この承認を単に「製造販売承認」という。)。 その後、平成22年に、原告が原告商品の製造を、アステラス製薬がその 販売をそれぞれ開始したものの、平成31年7月31日以降は、原告が単独 で製造販売を行っている。 (以上につき、甲2、6ないし8、弁論の全趣旨) 20 イ 原告商品は、別紙原告商品写真目録記載1のとおり、キャップを装着した 状態で保管・携帯されるが(以下、この形態を「保管時形態」と 。 (以上につき、甲2、6ないし8、弁論の全趣旨) 20 イ 原告商品は、別紙原告商品写真目録記載1のとおり、キャップを装着した 状態で保管・携帯されるが(以下、この形態を「保管時形態」という。)、 吸入時には、同目録記載2のとおり、当該キャップを外した状態で使用され る(以下、この形態を「使用時形態」といい、保管時形態と併せて単に「形 態」という)。 25 4 ⑶ 被告らの行為 ア 製造販売承認 被告日本ジェネリックは、平成31年2月、ブデゾニド及びホルモテロ ールフマル酸塩水和物を有効成分とする気管支喘息治療用の吸入薬であ る被告商品1につき、製造販売承認を受けた。 5 被告商品1の形態は、別紙被告商品写真目録1記載のとおりである。 被告商品1は、原告商品の後発薬(ジェネリック医薬品)に当たる。 (以上につき、甲9、弁論の全趣旨) イ 被告商品の販売(形状変更前) 被告東亜薬品は、被告日本ジェネリックと共同して被告商品1を開発し 10 た後、令和元年12月頃、被告商品1の製造を開始した。 また、被告日本ジェネリックは、令和元年12月、被告商品1の販売を 開始した。 被告商品1の形態は、別紙被告商品写真目録1記載のとおりであり、原 告商品同様、キャップを装着した状態で保管・携帯されるが(保管時形態)、 15 吸入時には、当該キャップを外した状態(使用時形態)で使用される。 (以上につき、甲9ないし11、弁論の全趣旨) ウ 被告商品の販売(形状変更後) 被告東亜薬品は、令和2年5月頃、被告商品1の形状を変更した被告商 品2の製造を開始した。 20 また、被告日本ジェネリックは、同月頃、被告商品2の販売を開始した 被告商品の販売(形状変更後) 被告東亜薬品は、令和2年5月頃、被告商品1の形状を変更した被告商 品2の製造を開始した。 20 また、被告日本ジェネリックは、同月頃、被告商品2の販売を開始した。 被告商品2の形態は、別紙被告商品写真目録2記載のとおりである。 (以上につき、弁論の全趣旨) ⑷ 気管支喘息治療用の吸入剤 ア 我が国においては、気管支喘息治療用の吸入薬のうち、次のものに保険適 25 用がある。(甲14、弁論の全趣旨) 5 ① ICS (吸入ステロイド薬;Inhaled CorticoSteroid) ② ICS/LABA(吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬(Long-Acting Beta 2 Agonist;LABA)との合剤)。 ③ LABA(長時間作用性β2刺激薬)の一部 ④ SAMA(短時間作用性抗コリン薬;Short-Acting Muscarinic Antagonist) 5 ⑤ LAMA(長時間作用性抗コリン薬;Long-Acting Muscarinic Antagonist) の一部 ⑥ クロモグリク酸 イ 吸入器の種類 吸入器は、吸入粉末剤(dry powder inhalers; DPI)、加圧定量噴霧式 10 吸入剤(pressurized metered dose inhaler; pMDI)及びソフトミストの 3種類に大別される。 DPIは、噴射剤なしに、患者が息を吸い込む際に粉末を吸入するタイプ であるのに対し、pMDIは、噴射剤によって薬液を噴霧させるタイプである。 また、ソフトミストは、いわばネブライザーを携帯化したものであり、薬 15 液を霧状化させるタイプである。そして、現在承認されているICS/LABAで は、噴射剤によって薬液を噴霧させるタイプである。 また、ソフトミストは、いわばネブライザーを携帯化したものであり、薬 15 液を霧状化させるタイプである。そして、現在承認されているICS/LABAで は、DPI及びpMDIが使用されている。 (以上につき、甲14〔6、115~121頁〕)。 喘息治療薬の分野では、1つの吸入器が、様々な有効成分に使用される ことが多い。その場合、吸入薬ごとに、異なる色の吸入器が使用される。 20 例えば、DPIに関しては、名称を「タービュヘイラ―」とする吸入器は、 次の3種類の製剤のために使用されている。 ① パルミコート(ICSとして) ② シムビコート(ICS/LABAとして) ③ オーキシス(LABAとして) 25 (以上につき、甲14〔133~136、139頁〕、甲15〔60~6 6 1、64~67頁〕) ⑸ 各部の名称 原告商品の各部の名称は、次のとおりである。 ア 保管時形態 5 10 イ 使用時形態 15 20 25 小窓 本体部 下部空気取入口 ねじ山 上部空気取入口 段差 円錐形 部 突起 陥凹部 扁平管 回転グリップ部 マウスピース部 7 5 ⑹ オーソライズド・ジェネリック ア オーソライズド・ジェネリック(以下「AG」ともいう。)は、後発薬で はあるものの、有効成分及び効果・効能に加え、原薬・添加物、製造方法、 10 形状、色、味、製剤の安定性も先発薬と同一のものである(製造場所は、先 発薬と同じである場合と異なる場合がある。)。典型的な例において、AG は、先発 効果・効能に加え、原薬・添加物、製造方法、 10 形状、色、味、製剤の安定性も先発薬と同一のものである(製造場所は、先 発薬と同じである場合と異なる場合がある。)。典型的な例において、AG は、先発薬と同じ生産設備にて、同じ原材料・製造方法により製造され、先 発薬メーカーにより供給されるものの、承認及び販売元のみが先発薬と異な る。 15 イ 多くの患者は、後発薬について、その効果及び安全性の点で不安を抱いて いるという調査結果が存在するところ、AGにより、先発薬と同じ薬を後発 薬として使用することが可能となる。 (甲38、40、弁論の全趣旨) 第3 争点 20 1 不競法の適用の可否(争点1) 2 原告商品の形態の商品等表示該当性(争点2) ⑴ 原告商品の形態の出所識別機能の有無(争点2-1) ⑵ 原告商品の形態は機能的形態に当たるか(争点2-2) ⑶ 特別顕著性(争点2-3) 25 ⑷ 周知性(争点2-4) 長軸 短軸 略円柱状の陥凹部 貫通孔 段差 らせん状の スロープ 段差 8 3 原告商品と被告商品の類似性(争点3) 4 混同のおそれ(争点4) 5 損害(争点5) 第4 争点に対する当事者の主張 1 争点1(不競法の適用の可否) 5 (原告の主張) ⑴ 被告らは、被告商品が後発薬として承認されていることを根拠に、本件訴訟 は実質的には既に期間満了した知的財産権による保護期間の永続的な延長を 求めるものである旨主張するが、不競法の商品等表示は、薬事当局の審査対象 ではなく、後発薬の製造販売承認が得られたとしても、それは当該後発薬が薬 10 事上は適法であることを意味するにすぎず、先発薬の形態の模倣が許容される ことにはならない。 したがって、被告商品が薬事 ではなく、後発薬の製造販売承認が得られたとしても、それは当該後発薬が薬 10 事上は適法であることを意味するにすぎず、先発薬の形態の模倣が許容される ことにはならない。 したがって、被告商品が薬事承認を受けたことを理由として、被告らの行為 が正当化されるわけではない。むしろ、後発薬が先発薬の商品等表示にフリー ライドする行為は、それによって、先発薬メーカーと無関係な後発薬について、 15 あたかもオーソライズド・ジェネリック(AG)であるかのような印象を振り まくことは、正に悪質な不正競争である。 ⑵ 不競法の保護法益は、特許権や意匠法などの他の産業財産権の保護法益とは 異なる。したがって、先発薬メーカーが、特許権及び意匠権の存続期間中に、 その営業努力によって先発薬の形態について出所表示機能を獲得した場合、そ 20 れらの権利の存続期間満了後に不競法の保護を受けることは、何ら問題ではな い。 したがって、不競法上の商品等表示性の判断において、他の知的財産権の存 在を考慮する必要はなく、先行する商品の形態が技術的機能に由来して必然的 な形態であるか、第三者にとって競争上似ざるを得ないものである場合には、 25 不競法に内在する制約として、商品等表示性を否定すれば足りる。そして、原 9 告商品の形態が技術的機能に由来して必然的な形態ではなく、第三者にとって 競争上似ざるを得ない形態でもないことは、後述のとおりである。 (被告らの主張) ⑴ 被告商品は、先発薬である原告商品と同じ有効成分を有するものとして承認 された後発薬(ジェネリック医薬品)であるところ、先発薬と同等の性能を有 5 することが後発薬の承認のための条件となっている制度の下、後発薬として厚 労省の承認を受けた気管支喘息治療薬の吸入器の形態が先発薬の形態と一定 の共通性を有していたと ころ、先発薬と同等の性能を有 5 することが後発薬の承認のための条件となっている制度の下、後発薬として厚 労省の承認を受けた気管支喘息治療薬の吸入器の形態が先発薬の形態と一定 の共通性を有していたとしても、それは、ある意味必然である。 そして、被告商品は、原告商品に係る特許権の保護期間の終了後に、ジェネ リック医薬品として厚生労働省の製造販売承認を取得して適法に上市された。 10 これに対し、原告が、後発薬(ジェネリック医薬品)の参入を阻止するために、 原告商品の商品形態そのものが不競法2条1項1号の「商品等表示」に当たる として提起してきたのが本件訴訟であり、その実質は不正競争の名の下に、既 に期間満了した知的財産権による保護期間の永続的な延長を求めるものであ る。このような訴訟は、公正な競争を確保するという不競法の目的から逸脱す 15 るものであり、本件においては、不競法を適用する余地がない。 ⑵ 特に、気管支喘息治療のための吸入薬においては、吸入器の性能・形状が重 要であるところ、特許権や意匠権の有効期間が経過した後に、吸入器の形状に よる不競法による差止め等が認められれば、事実上、先発薬の永続的な独占を 認めることになり、後発薬が参入できないという事態を招くことになる。この 20 ような結果は、後発薬の利用促進という国家的な要請に反することになる。 2 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無) (原告の主張) 需要者は、以下のとおり、気管支喘息治療用の吸入薬を吸入器の形態により区 別しているところ、取引の実情に照らせば、需要者において原告商品と被告商品 25 につき誤認混同のおそれが生じる以上、吸入器である原告商品の形態には出所識 10 別機能が認められる。 ⑴ 形態に対する需要者の関心 医療従事者及び患者 において原告商品と被告商品 25 につき誤認混同のおそれが生じる以上、吸入器である原告商品の形態には出所識 10 別機能が認められる。 ⑴ 形態に対する需要者の関心 医療従事者及び患者にとって、吸入器は重要である。使用方法や使用に当た っての注意点は、吸入器によって異なり、医療従事者及び患者は、吸入器の形 態(保管時形態及び使用時形態)に強い関心を有する。 5 ⑵ アンケート調査の結果 ア 以下のとおり、原告が医師及び患者を対象として実施したアンケート調査 (以下「本件アンケート調査」という。)の結果からも(甲28、29)、 医師及び患者のいずれも吸入器の形態によって商品を区別していることが 明らかであるから、原告商品の形態は出所表示機能を有している。 10 呼吸器内科専門医の75%以上は、ICS/LABAの5つの商品のいずれにつ いても、製品名又は販売会社名のいずれかを正しく答えている。原告商品、 アドエアディスカス及びレルベアエリプタの3商品に限ると、呼吸器内科 専門医の正答率は89.5%以上であり、一般内科医でも83%以上であ った。(甲28のQ7〔4頁〕) 15 原告商品の形態から製品名又は販売会社名を回答できた者の割合は、呼 吸器内科専門医では93.4%、一般内科医では83.0%であった。(甲 28のQ7〔4頁〕) 患者に関しても、原告商品の形態を示して認知・使用状況につき質問し たところ、原告商品を認知している患者の割合は59.8%に達し(甲2 20 9の別紙2〔15頁〕)、販売名又は販売会社のいずれかを回答できた者 の割合は、36.0%に達した(甲29の別紙2〔21頁〕)。 多くの患者は、医師に対し、吸入器の形態を用いて、自らが使用してい る吸入薬を説明している。すな 売会社のいずれかを回答できた者 の割合は、36.0%に達した(甲29の別紙2〔21頁〕)。 多くの患者は、医師に対し、吸入器の形態を用いて、自らが使用してい る吸入薬を説明している。すなわち、26.6%の患者は、自らが使用し ている吸入薬を説明するに際し、吸入器の形状を説明すると回答した(甲 25 29の別紙2〔11頁〕)。また、医師が患者から吸入薬の説明を受ける 11 際、呼吸器内科専門医の52.5%及び一般内科医の43.5%が、患者 が吸入器の形態を説明すると回答した(甲28の別紙2〔14頁〕)。 イ 被告らの主張に対する反論 被告らは、アンケート調査を実施するのであれば、端的に、患者に処方 する医療用医薬品を商品の形態で区別しているか、それとも銘柄名や有効 5 成分で区別しているのかを尋ねるべきである旨主張するが、一般人に対し、 法的評価を直接に質問することはアンケートの手法として適切ではない。 被告らは、本件アンケート調査は、製品名及び製造販売元が記載された ラベルを剥がしたり、本体部の印字を消したりした状態で実施されたもの であるから、取引の実態から乖離したものである旨主張するが、ラベルは、 10 製品名及び容量についての情報を提供するものであり、形態としての視覚 的印象に及ぼす影響は乏しい。 また、ラベルが付された状態の写真を示してしまうと、当該ラベルの内 容に基づき回答することになるため、アンケートの意義が失われてしまう 上に、患者は専門的知識に乏しいため、そもそもラベルの表記に対する関 15 心は低い。 被告らは、本件アンケート調査は薬剤師を対象としていない点において 適切でない旨主張するが、薬剤師の認識は医師の認識と同様であると推認 されるし、薬剤師が対象でないからといって、医 低い。 被告らは、本件アンケート調査は薬剤師を対象としていない点において 適切でない旨主張するが、薬剤師の認識は医師の認識と同様であると推認 されるし、薬剤師が対象でないからといって、医師及び患者に対するアン ケート結果まで否定されることにはならない。 20 ⑶ 取引の実情 ア AGの存在を考慮すると広義の混同が生じること 被告らは、医療用医薬品に係る取引の実情に照らせば、医療用医薬品の選 択過程において商品の形態は考慮されない旨主張するが、AGが先発薬と同 一の生産者によって供給されていない場合であっても、AGの出所は、少な 25 くとも先発薬メーカーと何らかの緊密な関連を有している。 12 そのため、AGの存在を考慮すると、医師及び薬剤師においても、後発薬 の形態が先発薬のそれと同一又は類似する場合、先発薬メーカーが関与して いる後発薬であるとの誤認をするおそれがあり、少なくとも、広義の混同が 生じる。すなわち、商品の形態は、医師や薬剤師がAGと通常の後発薬(以 下、後発薬のうちAGでないものを特に「GE」という。)を識別する際に 5 用いられている。 また、患者においても、先発薬と後発薬の違いに関心を有している者が、 後発薬をAGであると誤信することにより、広義の出所の混同が生じる。 イ AGの存在を考慮すると狭義の混同が生じること また、AGは、先発薬と同じ生産者によって供給されることが一般的であ 10 り、先発薬と出所は同じである。したがって、需要者がGEをAGと誤信す ることは、後発薬の出所が先発薬と同じであると誤信すること、すなわち、 狭義の出所の混同が生じていることも意味する。本件アンケート調査の結果 からも、実際に、多くの需要者が、被告商品をAGであると誤信している。 そして、患者の中に ると誤信すること、すなわち、 狭義の出所の混同が生じていることも意味する。本件アンケート調査の結果 からも、実際に、多くの需要者が、被告商品をAGであると誤信している。 そして、患者の中にも、後発薬に対する不安からAGを望むものも多いと 15 ころ、そのような患者がGEをAGと誤信することによっても、狭義の出所 の混同が生じる。 ウ 被告らの主張に対する反論 被告らは、被告商品をAGと誤認するおそれがあるという原告の主張は、 医療用医薬品の場合には、第一義的には処方箋の記載に基づき商品が識別 20 されることを認めるものである旨主張するが、原告は、その処方箋の記載 を決定する過程において、商品の形態が出所の識別に使用されていると主 張するものである。 被告らは、需要者はどの医療用医薬品がAGであるかにつき、商品名や 企業名に基づき正確に理解している旨主張するが、医師及び薬剤師は、多 25 忙な日常業務の中で常に細心の注意を払ってAGか否かを書籍に当たっ 13 て確認しているとは限らない。とりわけ、医師は、処方箋の記載に当たり、 通常、先発薬の銘柄名又は一般名を記載しているのであり、一般名を記載 する場合であっても、それがAGであるか否かを書籍に当たって確認して いるとは限らない。まして、患者は、処方箋が記載される際に、医師に対 して積極的にAGの有無について確認作業を行うとは限らない。 5 実際にも、公益財団法人日本医療機能評価機構のウェブサイトにおいて、 平成22年から令和3年までの期間において、外観、外形、形状又は形態 の類似によって生じた事故情報を検索したところ、50件もの事案が存在 した(甲92)。この事実は、医療従事者であっても、常に細心の注意を 払って誤りなく薬剤の決定及び調剤を行うことができるわけではないこ の類似によって生じた事故情報を検索したところ、50件もの事案が存在 した(甲92)。この事実は、医療従事者であっても、常に細心の注意を 払って誤りなく薬剤の決定及び調剤を行うことができるわけではないこ 10 とを示している。 近年、多くの患者が後発薬につきその効果及び安全性に関して不安を抱 いており、AGを提供する後発薬メーカーの宣伝広告活動により、GEと AGの違いも患者に浸透しつつある。そして、AGの知識を有している患 者は、GEの形態が先発薬と酷似している場合、当該GEがAGであると 15 誤信する。 被告らは、AGの出所が先発薬メーカーではなく、AGの販売元である ことを根拠に、仮にあるGEにつきAGであると誤信したとしても、出所 の混同は生じない旨主張する。 しかしながら、主要な医薬品企業グループにおいては、厳密には異なる 20 法人格の会社であっても、同一又は類似の表示を用いて、先発薬の事業及 び後発薬(AGを含む。)の事業を一体として推進することがある。これ らの場合には、先発薬メーカーとAGを扱う後発薬メーカーとは、実質的 には1つの事業体を形成しており、同一の営業主体として評価されるべき であり、少なくとも、需要者は、先発薬とAGとが同一の会社から供給さ 25 れていると認識し得る。したがって、需要者がGEをAGと誤信すること 14 により、狭義の混同が生じる。 ⑷ 患者も需要者であること ア 自己決定権 原告商品及び被告商品は、いずれも通院治療において使用される医療用医 薬品であるところ、患者が通院によって治療を受け、医療用医薬品を処方さ 5 れる場合において、最終的に医療用医薬品を選択する権限(自己決定権)を有 しているのは、患者である。すなわち、患者は、医師の判断に基づく医療用 医薬品の決 によって治療を受け、医療用医薬品を処方さ 5 れる場合において、最終的に医療用医薬品を選択する権限(自己決定権)を有 しているのは、患者である。すなわち、患者は、医師の判断に基づく医療用 医薬品の決定を受け入れることもできるが、拒絶することもできるのである から、需要者に当たる。 イ 被告らの主張に対する反論 10 被告らは、患者が先発薬か後発薬かの希望を述べることはあっても、実 際に吸入器の形態を見て医療用医薬品を選択するという取引の実情は存 在しない旨主張するが、前記のとおり、患者が医師から吸入薬の説明を受 ける際に、GEが先発薬と形態において類似しているため、GEをAGで あると誤信して後発薬の使用を受け入れ、その結果、一般名処方がされる 15 場合がある。 また、一般名処方を前提に患者が薬局で吸入器を選択する際にも、GE の吸入器の見本又は画像を見て、形態の類似性によりGEをAGであると 誤信して、誤ってGEを選択するという事態が生じ得る。 被告らは、患者は先発薬か後発薬かというレベルでの選択権しか有して 20 おらず、後発薬メーカーを選択できない旨主張するが、今日では調剤薬局 は数多く存在し、調剤薬局によって、扱っている後発薬メーカーも異なる。 そのため、患者は、調剤薬局を選択することにより、信頼できる後発薬メ ーカーの後発薬を入手することができる。 被告らは、患者は訪れた調剤薬局に在庫のある後発薬を受け取るにすぎ 25 ず、特定のメーカーの後発薬を入手することはない旨主張する。 15 しかしながら、患者はいわゆる門前薬局を利用することにより、医師と の協議により選択した薬剤を受領することができる。すなわち、現状では、 門前薬局が調剤薬局の多くを占めるところ、門前薬局は、通常、医 しかしながら、患者はいわゆる門前薬局を利用することにより、医師と の協議により選択した薬剤を受領することができる。すなわち、現状では、 門前薬局が調剤薬局の多くを占めるところ、門前薬局は、通常、医師が説 明するデバイスの薬剤を取り扱っているため、患者が門前薬局に処方箋を 持ち込む場合には、当該薬剤を入手することができる。 5 また、調剤薬局は、近隣の薬局間又は同一グループの薬局間で在庫を融 通しているため、患者は、訪れた調剤薬局に在庫のない薬剤であっても入 手することが可能である。 (被告らの主張) 以下のとおり、吸入器の形態は「商品等表示」には当たらない。 10 ⑴ 不競法2条1項1号所定の「商品等表示」は、出所を混同させる不正な競争 を防止するという同法の趣旨からして、出所識別機能を有するものである必要 がある。 そして、原告商品及び被告商品は、いずれも医療機関で診察を受け、医師か ら処方されることによって初めて患者において使用することのできる医療用 15 医薬品(いわゆる処方薬)に当たる。医療用医薬品の場合、以下のような取引 の実情に照らせば、需要者である医師や薬剤師は、原告商品を、有効成分、銘 柄名並びに先発薬及び後発薬の区別により識別しており、商品の形態によって 識別することはないから、原告商品の形態は出所識別機能を何ら果たしていな いのであって、「商品等表示」には当たらない。 20 また、医師が吸入器を用いて使用方法を説明することが多いのは認めるが、 そのことによって、吸入器の形態が商品等表示に当たることにはならない。 ⑵ 取引の実情 ア 医師による処方のプロセス 医師は、処方する医療用医薬品を処方箋に記載するが、処方箋の様式で 25 ある「様式第二号」(乙22)には、「個々の処 とにはならない。 ⑵ 取引の実情 ア 医師による処方のプロセス 医師は、処方する医療用医薬品を処方箋に記載するが、処方箋の様式で 25 ある「様式第二号」(乙22)には、「個々の処方薬について、後発医薬 16 薬(ジェネリック医薬品)への変更に差し支えがあると判断した場合には、 「変更不可」欄に「レ」又は「×」を記載し、「保険医署名」欄に署名又 は記名・ 押印すること。」とされている。 そして、医師が、①処方する医療用医薬品名として、先発薬の銘柄を記 載した場合(銘柄名処方)であっても、「変更不可」欄に「レ」又は「×」 5 を記載しなかったときは、薬剤師は、処方薬に変えて、後発薬を調剤する ことができる(乙17)。②医師が、処方する医療用医薬品名として、先 発薬の銘柄を記載し(銘柄名処方)、かつ、「変更不可」欄に「レ」又は 「×」を記載した場合には、薬剤師は、処方箋に記載された先発薬を調剤 する。また、③医師が、処方する医療用医薬品名として、一般的名称に剤 10 形及び含量を付加する形で処方箋に記載した場合(一般名処方)、薬剤師 は、処方薬と一般的名称が同一である成分を含有する医療用医薬品を調剤 することができる。 以上のとおり、いずれの場合においても、医師は、「有効成分」、「銘 柄名」及び「先発薬及び後発薬の区別」を明確に認識した上で、処方する 15 医療用医薬品を選択して処方箋に記載するのであって、処方箋への記載の 過程において、商品がその商品形態(吸入器の形状)によって識別される ことはない。 イ 薬剤師による調剤のプロセス 薬剤師は、上記①の場合には、後発薬を調剤することができるから、後 20 発薬に変更することを明確に認識した上で、後発薬を調剤し、その旨を患 者にも説明する。また、 による調剤のプロセス 薬剤師は、上記①の場合には、後発薬を調剤することができるから、後 20 発薬に変更することを明確に認識した上で、後発薬を調剤し、その旨を患 者にも説明する。また、上記②の場合、薬剤師は、医師の処方に従うのみ であり、後発薬を調剤することはない。上記③の場合、薬剤師は、先発薬 又は後発薬を調剤することができる。 以上のとおり、いずれの場合においても、薬剤師は、「有効成分」、「銘 25 柄名」及び「先発薬及び後発薬の区別」によって調剤する医療用医薬品を 17 選んでいるのであって、その選択過程において商品の形態が出てくる余地 はない。 ウ 患者による選択のプロセス 後記のとおり、そもそも、患者は需要者には当たらない。 エ AGの存在は商品形態の出所表示機能とは関係しないこと 5 原告は、AGの存在を根拠に、吸入器の形態につき商品等表示性がある旨 主張するが、以下のとおり、理由がない。 そもそも、現実に存在しないAGと被告商品との誤認混同のおそれを議 論すること自体、失当である。 また、原告は、「医療従事者は、医療用医薬品を有効成分、銘柄名及び 10 先発薬と後発薬との区別によって識別しており、商品形態によって識別す ることはない」との被告らの主張に対する反論は放棄した上で、AGとの 誤認混同のみを論じている。 そして、被告商品とAGを混同するおそれがあるという原告の主張は、 医療用医薬品の場合には、第一義的には処方箋の記載に基づき商品が識別 15 されることを認めるものである。そうであるとすれば、そもそも、本件に おける商品等表示は、「商品の形態」ではなく、処方箋に記載される銘柄 名や医療用医薬品の一般名であることになる。 さらに、原告 ことを認めるものである。そうであるとすれば、そもそも、本件に おける商品等表示は、「商品の形態」ではなく、処方箋に記載される銘柄 名や医療用医薬品の一般名であることになる。 さらに、原告の主張を前提としても、AGの典型的な例は、先発薬メー カーとは異なる製薬会社が製造販売承認を得て、自らを製造販売元として 20 供給するというのであるから、仮にある需要者があるGEをAGであると 誤信したとしても、当該GEの出所が先発薬メーカーであると誤信したこ とにはならないため、狭義の出所の混同は生じない。 また、形態の商品等表示が問題となる事案においては、特段の事情がな い限り、広義の混同が生ずることはない。すなわち、一般に、出所の混同 25 が生じない場合であっても、需要者に対し、あるグループの企業との間に 18 緊密な営業上の関係又は同一の商品化事業を営むグループに属すると誤 信するようなおそれを生じさせるような場合を広義の混同というが、この ような混同が生じるのは、①問題となる出所表示が、「シャネル」のよう にそれ自体として本来的に出所表示機能を有する標章等について、②当該 標章を含む標章が使用された場合には、企業の多角経営などが普通になっ 5 ているという事情の下では、あるグループ企業との間に緊密な営業上の関 係又は同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存在すると誤信 するおそれがあるという経験則が存在するためである。 本件では、「吸入器の外観」という形態の商品等表示性が問題となって いるところ、①形態には本来的には出所表示性が認められない上に、「シ 10 ャネル」に対する「スナックシャネル」のように、問題となる商品等表示 をそのまま含むような態様での使用は通常想定し難いし、②上記のような 経験則も存在しない。 示性が認められない上に、「シ 10 ャネル」に対する「スナックシャネル」のように、問題となる商品等表示 をそのまま含むような態様での使用は通常想定し難いし、②上記のような 経験則も存在しない。 さらに、AGを扱うメーカーは、自らの医療用医薬品がAGであること を積極的に宣伝する。そして、需要者は、どの製品がAGであるかにつき、 15 商品名や企業名に基づき正しく理解しているから、AGであるか否かを区 別するに当たっても、「先発薬と成分等を含めてその性能が同一であるか」 否かが基準であり、形態が出所を区別するメルクマールになることはない。 また、臨床現場で薬剤の検索に参照される代表的な書物においても、A Gの存否及びどの銘柄名の医療用医薬品がAGであるのかについての情 20 報が記載されている(乙35)。 原告が主張するように、処方箋によって「後発薬」が選択された後の局 面における取引の実情を検討すると、患者が訪れた薬局に、AGとその他 の後発薬の両方の在庫がなければそもそも選択という行為は生じないし、 仮に両方の在庫があった場合であっても、「AGかそれ以外か」という基 25 準で選択されるから、やはり形態が出てくる余地はない。 19 結局のところ、原告は、AGという概念は知っており、かつ、当該後発 薬がAGか否かについては関心を持っているが、その判断を容器の外観に 基づき行ってしまうという特異な患者を需要者として想定している。 原告は、陳述書(甲92)を根拠として、医療従事者であっても常に細 心の注意をもって誤りなく薬剤の決定及び調剤を行うことができるわけ 5 ではない旨主張するが、上記陳述書は、単純なケアレスミスで異なる薬剤 を取り間違えた「ヒヤリ・ハット事例」を記載したものであり、形態 の注意をもって誤りなく薬剤の決定及び調剤を行うことができるわけ 5 ではない旨主張するが、上記陳述書は、単純なケアレスミスで異なる薬剤 を取り間違えた「ヒヤリ・ハット事例」を記載したものであり、形態の類 似による誤認混同の場面とは異なる。 ⑶ 本件アンケート調査の結果 原告は、本件アンケート調査の結果を根拠として、原告商品と被告商品の誤 10 認混同のおそれが生じる旨主張するが、以下のとおり、同主張には理由がない。 ア 本件アンケートは、そもそも意義が乏しいこと 質問が適切でないこと アンケートを実施するのであれば、端的に、医療用医薬品をその形態で 区別しているのか、商品名や有効成分で区別しているのかを尋ねるべきで 15 あるところ、本件アンケート調査は、そのような形式になっていない。 ラベルが貼付されていないこと 実際の原告商品及び被告商品は、保管時形態で取引されるものである が、その保管時形態では、製品名及び製品販売元が最も目立つ場所に大 きく印字されたラベルが張られており、使用時形態でも、本体表面に製 20 造販売元等が印字されている。そうすると、製品名及び製造販売元が記 載されたラベルを剥がしたり、本体部の印字を消したりした状態で販売 されることはない以上、本件アンケートは、取引の実態から乖離したも のであり、意味がない。 仮に患者が需要者に当たるとしても、患者が手にする被告商品におい 25 て、ラベルがないことや、本体部の印字が消されていることはあり得な 20 いから、患者との関係においても、実態から乖離した無意味なものであ る。 薬剤師が対象となっていないこと 本件アンケート調査は、薬剤師を対象としていない点においても、適 切とはいえない 者との関係においても、実態から乖離した無意味なものであ る。 薬剤師が対象となっていないこと 本件アンケート調査は、薬剤師を対象としていない点においても、適 切とはいえない。 5 イ 本件アンケートの結果を前提としても、混同のおそれがあるとはいえな いこと 医師 5種類の製剤しか存在していなかったICS/LABA の製剤について、専門 家である医師が商品の形状と銘柄名を対応して記憶していたとしても、 10 銘柄名や先発薬・ジェネリックの区別を離れた「商品の形態」そのもの が商品表示に当たることを基礎付けるものではない。そもそも、高度な 専門的知見を有する医師において、僅か5種類の商品の中で原告商品に ついて認識していたことはごく当然であり、むしろ、本件アンケート調 査において、銘柄名を覚えていることは(甲28のQ6及び7)、形態 15 ではなく銘柄名によって商品を識別していることを示している。 のみならず、Q12では、ラベルを剥がし、本体部の印字も消した状 態での比較について、呼吸器内科専門医の41.4%は、「先発品とジ ェネリック」であると正しく回答している(甲28〔7頁〕)。 また、Q14では、被告商品からラベルを剥がした状態の写真を示し 20 た上で質問をしているにもかかわらず、原告商品であると回答した者の 割合は、呼吸器内科専門医で僅かに4.4%、一般内科医で6.5%、 全体では5.5%にすぎない。このことからも、原告商品と被告商品に は混同を生じるような類似性がないことが示されている。 患者 25 21 下記⑷において述べるとおり、患者は需要者ではないため、患者を対 象とするアンケートには意味がない。 また、被告商品 が示されている。 患者 25 21 下記⑷において述べるとおり、患者は需要者ではないため、患者を対 象とするアンケートには意味がない。 また、被告商品のラベルを剥がした写真を示して印象などを尋ねた質 問に対し、原告商品であると回答した者は僅かに1.5%であることか らすれば(甲29のQ9別紙2〔33頁〕)、患者も被告商品の外観に 5 基づき原告商品との区別ができているといえる。 ⑷ 患者は需要者に当たらないこと 以下のとおり、患者は需要者には当たらない。 ア 処方箋がなければ購入することができない医療用医薬品の場合、処方する 薬剤を決定するのは医師又は薬剤師であり、患者に決定権があるということ 10 はできない。多くの裁判例においても、患者はせいぜい「従たる需要者」程 度に位置づけられており、医師や薬剤師を需要者として誤認混同のおそれの 有無が判断されている。 イ 患者は、先発薬か後発薬かの希望を述べることはあっても、実際に吸入器 の形態を見て医療用医薬品を選択するという取引の実情は存在しない。患者 15 が吸入器の形態を見た上でAGを選択するという取引の実情も存在しない。 ウ 仮に患者が後発薬を選択した場合であっても、どのメーカーの製品かさえ 選択することはできない。また、患者は、通常どの調剤薬局にどのメーカー の後発薬の在庫があるのかにつき情報を持っておらず、訪れた調剤薬局に備 えられた在庫に基づき後発薬の調剤を受けるにすぎない。 20 3 争点2-2(原告商品の形態は機能的形態に当たるか)について (原告の主張) ⑴ 原告商品の形態は、技術的機能に由来する必然的な形態でも、第三者にとっ て競争上似ざるを得ない形態にも当たらない。そのため、被告らは、吸入粉末 的形態に当たるか)について (原告の主張) ⑴ 原告商品の形態は、技術的機能に由来する必然的な形態でも、第三者にとっ て競争上似ざるを得ない形態にも当たらない。そのため、被告らは、吸入粉末 剤(DPI)タイプの吸入薬に関し後発薬を発売するに当たって、様々な選択肢が 25 存在したにもかかわらず、あえて原告商品の形態に酷似した形態を選択したも 22 のである。 したがって、原告商品の商品等表示性は認められる。 ⑵ 被告らは、後発薬制度の趣旨に照らせば、機能的な同一性を確保するために 必要な範囲で形態が類似することは制度自体が許容している旨主張する。 しかしながら、生物学的同等性の実現に当たっては、吸入器の内部構造や充 5 てんされる粒子の設計が重要であるところ、これらの要素は、吸入器の形態に は影響しない。そのため、被告らには、実際には、後発薬としての製造販売承 認を得る上で、吸入器の形態につき様々な選択肢があったのであり、原告商品 の形態は、技術的機能による形態又は競争上似ざるを得ない形態ではない。 ア 形状ごとの具体的な選択肢について 10 全体の形状について 例えば、原告商品と同じく粉末吸入薬(DPI)に属するアドエアディスカ スについては、米国では、その後発薬として、次の2種類の製品 (WixelaInhub、Hikma製品〔甲70、74〕)が既に承認されているとこ ろ、それらの外観は、アドエアディスカスの円盤状とは大きく異なってい 15 る。このように、吸入薬の後発薬を上市するに当たっても、内部構造を覆 う外形の形態については様々な選択肢がある。 20 アドエアディスカス WixelaInhub Hikma製品 ( 覆 う外形の形態については様々な選択肢がある。 20 アドエアディスカス WixelaInhub Hikma製品 (甲76) (甲70) (甲74) 薬剤の流路及び薬剤貯蔵部から一吸入分の薬剤を取り出してセットす 25 る構造について 23 薬剤を微粒子化する構造は、原告商品の構造に限られているわけではな く、例えば、アズマネックスは、渦流室において乱流を発生させ、次いで 六角柱の空洞の壁面に微粒子を衝突させることにより、微粒化を実現して おり、その流路の構造は、原告商品とは全く異なる。 また、仮に薬剤を微粒子化する構造が原告商品の構造に限られていると 5 しても、それを覆う外部形状やサイズは様々であり、原告商品において薬 剤を微粒子化するために必要な流路全体の立体的配置、形状や寸法に影響 を与えることなく、外部形状やサイズを変更することができる。 キャップについて 吸入器内部を密閉するために、キャップの形状を原告商品のように先細 10 りの形状とする必要はない。そのため、単純な円筒、先太の円筒又は多角 柱等を採用することも可能である。 残量計及びカウンター窓について 被告らは、容器の中に吸気導管、薬剤貯蔵部、分量ユニットなどを立体 配置したときに残るスペースは限られているから、残量計の配置及びカウ 15 ンター窓の位置は自ずと原告商品と同じになる旨主張するものの、残量計 を当該スペースに配置しなければならないわけではない。そもそも、残量 計の構造は様々であり、どの構造を採用するかによって、残量計及びカウ ンター窓の配置及び形状は異なり得る。 マウスピ 計 を当該スペースに配置しなければならないわけではない。そもそも、残量 計の構造は様々であり、どの構造を採用するかによって、残量計及びカウ ンター窓の配置及び形状は異なり得る。 マウスピースについて 20 被告らは、製剤学的同等性を実現するためには、マウスピースの形状を 原告商品に可能な限り近づける必要がある旨主張するものの、アズマネッ クスやICOresなどの他のICS/LABAのマウスピース部の形状は、原告商品と は異なる。これらのマウスピース部の形状も、患者が必要な量の薬剤を確 実に吸入でき、吸入された薬剤が肺に届くように設計されている。 25 24 また、先発薬と後発薬でマウスピース部の形状が大きく異なる例も存在 する。 【ICOresの形状(左側:保管時形態、右側:使用時形態)】 イ 海外における原告商品の後発薬の形状について 5 欧州において原告商品の欧州版の後発薬として承認されたBufomix Easyhaler(甲85)は、薬事審査により、生物学的同等性が確認された上に、 更に臨床試験を行い、その有効性についても先発薬と同等であることが示さ れた。しかしながら、下記のとおり、その形態は原告商品とは全く異なるこ とからしても、原告商品との生物学的同等性を確保するに当たり、形態の模 10 倣は不要であることが示されている。 15 【Bufomix Easyhalerの形状】 25 ⑶ 被告らは、同じ機能を持つ内部構造を実現しようとすると、ある程度の共通 性は避けられない旨主張するものの、「ある程度」というのは曖昧で不明確で ある。そもそも、生物学的同等性を確保するために原告商品に酷似させる必要 はないのであって、被告らは出所の混同が生じないように形態に差異を生じさ い旨主張するものの、「ある程度」というのは曖昧で不明確で ある。そもそも、生物学的同等性を確保するために原告商品に酷似させる必要 はないのであって、被告らは出所の混同が生じないように形態に差異を生じさ せる努力を放棄して、形態が酷似していることを正当化しようとしているにす 5 ぎない。 さらに、被告らは、原告商品が「当業者がある機能を発揮するために通常採 用する形態」である旨主張するものの、根拠が示されていないし、同主張を前 提としても、原告商品と同等の機能を実現するためには様々な外観を使用可能 であるから、原告商品の形態は「通常採用する形態」にも該当しない。 10 (被告らの主張) ⑴ 後発薬に対し、先発薬との生物学的同等性を求めるという我が国の制度設計 からすれば、同等性を実現するために、権利期間が満了した特許権に係る技術 思想や意匠権に係るデザイン(機能に関連するもの)が存在するのであれば、 むしろ積極的に利用して医療用医薬品としての安全性を高めるのが後発薬制 15 度の趣旨であり、機能的な同一性を確保するために必要な範囲で形態が類似す ることは、制度自体が許容するものである。 本件のような吸入器の外観については、特定の機能に関して採用された内部 構造という機能的な要素が極めて強く影響している。そのため、同じ機能を持 つ内部構造を実現しようとすると、おのずとその外観についてもある程度の共 20 通性が生じてしまうことになる。本件のような分野では、そもそも、外観が商 品等表示に該当するという議論自体が誤りというべきである。 ⑵ 原告は、被告らには吸入器の形態につき様々な選択肢があった旨主張するが、 不競法は、不正な競争を防止する制度であるところ、当業者がある機能を発揮 するためには通常採用するような形態は、特許権による保護が与えられてい らには吸入器の形態につき様々な選択肢があった旨主張するが、 不競法は、不正な競争を防止する制度であるところ、当業者がある機能を発揮 するためには通常採用するような形態は、特許権による保護が与えられている 25 ような場合を除き、本来、何人であっても自由に使えるべきである。したがっ 26 て、機能的機能に由来する形態とは、原告のいう「必然的で、それ以外に選択 肢のない形態」や「似ざるを得ない」形態ではなく、むしろ、「当業者がある 機能を発揮するために通常採用する形態」であると解すべきである。 そして、被告商品は、後発品としての承認審査上、先発品である原告商品と の生物学的同等性を、製剤学的同等性及び治療学的同等性に基づき証明する必 5 要があったが、この同等性の基準は厳格である上、被告商品の開発時には、原 告商品のように粉末吸入薬としての効果がその容器の構造に依存する商品に ついて、同等性がどのように評価されるかについて参考となる先例もなく、不 明確であった。そのような状況下で、原告商品と同等の評価を得ようとすれば、 原告商品の容器を参考にして、その内部構造などをほぼ同一にせざるを得なか 10 ったものである。 ⑶ 原告商品の形態は、原告商品の機能に由来するものであり、それゆえ、被告 商品が承認審査における同等性の要件の下で採用せざるを得なかったもので ある(乙38の1)。そのため、原告が主張するように様々な選択肢があった わけではない。 15 ア 薬剤の流路について 流路が変われば微粒子化した薬剤の粒子径や患者が吸入する薬剤の量・吸 入速度なども変わり得るのであるから、製剤学的同等性が求められ、かつ、 どの程度の厳格さで求められるかが不明であった状況の下においては、事実 上、流路の構造を同じにする以外に採り得る合理的な選択肢はなかっ 速度なども変わり得るのであるから、製剤学的同等性が求められ、かつ、 どの程度の厳格さで求められるかが不明であった状況の下においては、事実 上、流路の構造を同じにする以外に採り得る合理的な選択肢はなかった。 20 イ キャップ 先細の円筒のキャップ形状は、マウスピースや本体部の形状及び残滓薬剤 の除去の構造に合わせ、キャップ内部に余計な空間ができないように設計し た結果としての合理的な形状であるから、わざわざ先太の円筒、多角柱の形 状とする必要はないし、そのような形状にすれば残渣薬剤の除去等の機能に 25 も支障が出てしまうおそれもある。 27 そのため、被告商品においては、これらの機能に支障を出さないようにし つつ原告商品と異なる形態を採るために、キャップの上部のみを円筒ではな く十二角の角錐台形状にし、回転グリップ部の厚さと色を変え、ラベルのデ ザインも全く違うものにして製品名を目立つように記載している上に、形状 変更後の被告商品は、回転グリップ部の溝をより細かい溝に変更している。 5 ウ 残量計及びカウンター 仮にカウンター窓の配置及び形状について他の選択肢があり得たとして も、原告商品におけるカウンターの配置や形状は、ごく普通の選択肢の範囲 にすぎないものである以上、その類似性を問題視する前提に欠けている。 エ マウスピース 10 アズマネックスは、原告商品とは有効成分が異なり、薬剤の粒子径も異な るものであるから、アズマネックスが原告商品と異なるマウスピースの形状 を採用しているからといって、原告商品の後発薬である被告商品にアズマネ ックスと同じマウスピースの形状を採用できることにはならない。 ⑷ 海外製品 15 ア ICOresについて 原告は、生物学的同等性を 告商品の後発薬である被告商品にアズマネ ックスと同じマウスピースの形状を採用できることにはならない。 ⑷ 海外製品 15 ア ICOresについて 原告は、生物学的同等性を実現しつつも異なる形態を採用することが可能 な例としてICOresを挙げるが、米国においては、エアゾールとしてのシムビ コートは販売されているものの、吸入粉末剤としてのシムビコートは販売さ れていないため、ICOresは、生物学的同等性を実現しつつも異なる形態の吸 20 入粉末剤の吸入器を採用することが可能な例として適切ではない。そもそも、 米国における生物学的同等性の基準は日本とは異なるものであるため、参考 にすべきではない。 イ Bufomix Easyhaler 原告は、欧州において原告商品の後発薬として承認されたBufomix 25 Easyhalerの形態が原告商品と異なる旨主張するものの、同商品は、製剤学 28 的同等性試験において全ての基準を満たさず、PK試験により同等性を示し て承認された例であると考えられるところ、日本においては製剤学的同等性 及び臨床試験での同等性は必須であるため、Bufomix Easyhalerは日本では 承認されないと考えられる。 したがって、基準の異なる欧州の例は、日本において原告商品の後発薬と 5 して被告商品が採り得た形状についての根拠にはならない。 4 争点2-3(特別顕著性の有無)について (原告の主張) ⑴ 吸入器に必要とされる特別顕著性の程度 被告らは、吸入機の形態が商品等表示性を取得するためには極めて高い特別 10 顕著性が要求される旨主張するものの、その合理的な根拠を示していない。こ れまでの裁判例や学説において、極めて高い特別顕著性を要求する見解 機の形態が商品等表示性を取得するためには極めて高い特別 10 顕著性が要求される旨主張するものの、その合理的な根拠を示していない。こ れまでの裁判例や学説において、極めて高い特別顕著性を要求する見解は存在 しない。 ⑵ 原告商品の形態 以下のとおり、原告商品には、保管時形態、使用時形態のいずれについても 15 特別顕著性が認められる。 ア 保管時形態 原告商品の保管時形態は、略円筒状の本体部と、本体部の上方から上端に 向けてやや先細の上部と、本体部の下方の回転グリップ部とを備えたリップ スティック型である点に特徴がある。これらの特徴から、原告商品は、全体 20 としてコンパクトですっきりした印象を与える。 原告商品以外のICS/LABAとしては、略円盤状であるアドエアディスカス、 側面が丸みを帯びた略平板上のレルベアエリプタ、「く」の字型のアドエア エアゾール及びフルティフォームがあるが、いずれの商品も原告商品とは異 なる形態である。原告商品の形態は、ICS/LABAの市場において独特であり、 25 原告商品は、その独特の形態によってグッドデザイン賞を受賞している(甲 29 17)。 5 イ 使用時形態 10 原告商品の使用時形態は、略円錐形状の本体部と本体部上方のマウスピー ス部(円錐形部と扁平管部を備える)、本体部下方の回転グリップ部を備え、 本体部の正面右上部には小窓及びカウンターが設けられており、マウスピー スの円錐形部及び本体部が一体となって滑らかな周面を形成し、木管楽器用 のマウスピース型の形状を有している点に特徴がある。これらの特徴から、 15 原告商品は、上方に向かう流線形のよくまとまった一体感のある印象を与え る。 原告商品の 面を形成し、木管楽器用 のマウスピース型の形状を有している点に特徴がある。これらの特徴から、 15 原告商品は、上方に向かう流線形のよくまとまった一体感のある印象を与え る。 原告商品の上記形態は、他のICS/LABAとは異なる独自の形状である。すな わち、アドエアディスカスは、使用時も略円盤状であり、カバーを回転して 開くと、やや突出したマウスピースが現れる。また、レルベアエリプタも、 20 カバーを開くと、やや突出したマウスピースが現れるほか、アドエアエアゾ ール及びフルティフォームの使用時形態は、おおむね保管時形態と同一であ る。 そして、前記のとおり、原告商品は、その優れたデザインによってグッド デザイン賞を受賞しているところ、受賞に当たっては、マウスピース及びカ 25 ウンターという、使用時形態において現れる要素も評価されている(甲17)。 30 ウ 同種商品の範囲 気管支喘息用治療薬においては、ICSとICS/LABAが主流である。そして、 気管支喘息治療薬の中でも、治療ステップに応じて、ICSの市場とICS/LABA の市場がそれぞれ形成されており、両者は異なることからすれば、原告商 品と比較すべき同種商品の範囲は、ICS/LABAに限定されるべきである。 5 被告らは、アズマネックス、スミルスチック、ナゾネックス、ボンアル ファローション、オーキシス及びパルミコートを比較対象として挙げると ころ、このうち、スミルスチック及びボンアルファローションは塗布薬で あり、ナゾネックスは点鼻薬である。そして、オーキシス及びパルミコー トは、いずれも原告の商品であるから、原告以外の第三者が供給している 10 吸入薬はアズマネックスのみであるところ、アズマネックスはICSであり、 ICS/LABAではないため、アズマ 及びパルミコー トは、いずれも原告の商品であるから、原告以外の第三者が供給している 10 吸入薬はアズマネックスのみであるところ、アズマネックスはICSであり、 ICS/LABAではないため、アズマネックスとの比較は失当である。 また、仮にアズマネックスを比較対象とした場合であっても、アズマネ ックスには底部のディスクにカウンターが設けられており、中央付近に段 差があるため、その形態は原告商品とは明らかに異なる。 15 20 (保管時形態) (使用時形態) ⑶ 原告商品の特徴は技術的な機能に由来するものではないこと ア 被告らは、原告商品の形態のうち被告商品と共通する部分は、機能に基づ いて通常選択される形状であるから、特別顕著性は認められない旨主張する ものの、同主張は、特別顕著性の要件と技術的機能による形態の要件を混同 25 するものであり、失当である。 31 また、仮に被告らの主張を前提としても、原告商品と同様の機能を実現す るためには、様々な形態が利用可能であり、原告商品と被告商品の共通する 部分は、機能に基づき通常選択される形状であるとはいえない。 イ 原告商品の保管時形態及び使用時形態のいずれも、技術的機能に由来する 必然的な形態でもなければ、競争上似ざるを得ない形態でもない。前述のと 5 おり、後発薬の承認のための生物学的同等性の実現に当たっては、充填され る粒子の設計及び吸入器の内部構造が重要であり、被告らには、被告商品の 形態を決定するに際し、様々な選択肢があったのであるから、あえて原告商 品と類似の形態を転用する必要はない。 (被告らの主張) 10 ⑴ 吸入器に求められる特別顕著性の程度 ア 気管支喘息治療薬の吸入器は、表示的な機能よりも、むしろ、薬剤 えて原告商 品と類似の形態を転用する必要はない。 (被告らの主張) 10 ⑴ 吸入器に求められる特別顕著性の程度 ア 気管支喘息治療薬の吸入器は、表示的な機能よりも、むしろ、薬剤を適切 に体内に運ぶという生命身体の安全に関わる機能に本来的な使命を有する ものであるため、商品等表示性が認められるための特別顕著性としては、極 めて高いものが要求されるとともに、特別顕著性を評価するに当たっては、 15 吸入器の技術的な機能に由来する形態については捨象して考えるべきであ る。 イ そして、原告商品の吸入器の形態的特徴の多くの部分は薬剤の有効性を高 め、患者の利便性及び安全性に寄与するための技術的な機能を実現するのに 必要な形態にすぎないから、需要者の認識において、商品の識別に用いられ 20 るようなものではないから、特別顕著性を有しない。 ウ 原告は、高度な特別顕著性を求めるべき根拠がない旨主張するが、薬剤を 適切に体内に運ぶなどの機能に由来する場合に特別顕著性が否定されるこ とが多いことは知財高裁平成28年7月27日判決(エジソンのお箸事件) のとおりであり、技術的機能が生命身体の安全という極めて重要な事項に関 25 わる場合には、なおさら特別顕著性が認められにくくなることは、当然に理 32 解できることである。 ⑵ 原告商品の形態 以下のとおり、原告商品は、吸入器として見た場合に格別顕著な特徴は有し ていない。 ア 保管時形態 5 原告商品の保管時形態は、ごくありふれた形状である。すなわち、全体が 縦長円筒状でキャップが取り外せるようになった「リップスティック型」は、 ごく一般的な形態であり、正にリップスティックや口紅に用いられる形態で あるほか、スティックのりなどにも見られる形態であり、日 が 縦長円筒状でキャップが取り外せるようになった「リップスティック型」は、 ごく一般的な形態であり、正にリップスティックや口紅に用いられる形態で あるほか、スティックのりなどにも見られる形態であり、日常的にありふれ ている。医療用医薬品においても、アズマネックス(乙32の1、2)が同 10 様の形態を採用している。 また、全体を円筒状にして下部に回転グリップを設けることも、「リップ スティック型」に多く見られる普遍的な形態である上に、アズマネックスや スミルスチック(乙32の3)も同様の形態である。 さらに、容器の上部を上端に向けてやや先細にすることは、点鼻薬である 15 ナゾネックス(乙32の4)や塗布薬であるボンアルファ(乙32の5)な どにもよくみられる形態である。 そして、本体部の下方の回転グリップ部は、これを回転させることで1回 分の薬剤を吸入導管の下方にセットするために必要な構成であり、同じ目的 を持った吸入容器において特に形態上の特徴と認められる点ではない。加え 20 て、回転させる際に手が滑らないようにするために、回転グリップ部に縦溝 を設けることも一般的な手段であり、アズマネックスやスミルスチックや文 房用具のスティックのりなども同様の構成を採用している。原告の他の吸入 薬である「オーキシス」(乙32の6、7)や「パルミコート」(乙32の 8~10)も、原告商品とほぼ同様の形態をしている。 25 33 5 イ 使用時形態 10 原告商品の使用時形態もごくありふれた形状である。 ウ 同種商品の範囲 原告は、形態を比較すべき同種商品をICS/LABAに限定した上で、特別顕 著性につき主張するものの、比較すべき同種商品は、容器を使用した医療 用医薬 である。 ウ 同種商品の範囲 原告は、形態を比較すべき同種商品をICS/LABAに限定した上で、特別顕 著性につき主張するものの、比較すべき同種商品は、容器を使用した医療 用医薬品又は少なくとも吸入器一般であり、商品の範囲を狭く絞った上で、 15 限られた範囲内での特別顕著性をいう原告の主張は、それ自体理由がない。 原告自身、気管支喘息治療薬においては、ICSとICS/LABAが主流である と主張している以上、ICSについても比較対象とすべきであり、少なくと も、アズマネックスは、比較対象となるはずである。 ⑶ 特別顕著性を評価するに当たって、機能的形態は考慮すべきではないこと 20 原告が、原告商品の形態(特に使用時形態)のうち、被告商品も共通して備 えていると指摘する形態は、吸入薬としての機能に関係する内部構造等を反映 したものであって、機能に由来する形態であるから、特別顕著性を認めること はできない。 34 5 争点2-4(周知性) (原告の主張) ⑴ 原告商品の形態は、以下のとおり、遅くとも、被告商品の販売が開始された 令和元年12月には、医療従事者及び患者の間で周知となっており、その状態 は現在まで継続している。したがって、原告商品の形態は、約10年間の独占 5 的な使用により、出所表示機能を有するものとして周知となったということが できる。 ⑵ 保管時形態 ア シェア 原告は、平成22年1月の発売開始以降、原告商品の形態を独占的に使用 10 してきた。そして、原告商品のシェアは、平成23年には42.5%に達し、 平成24年以降も約4割のシェアを維持している。そして、シェアが高いほ ど需要者がその商品の形態を目にする機会が増えるから、商品の形態によっ て出所を認識す のシェアは、平成23年には42.5%に達し、 平成24年以降も約4割のシェアを維持している。そして、シェアが高いほ ど需要者がその商品の形態を目にする機会が増えるから、商品の形態によっ て出所を認識することにつながる。 イ 販促活動 15 原告は、原告商品について、多額の費用を投じて様々な販売促進活動を行 ってきた。例えば、原告商品の特徴や使用方法を説明するため、医療従事者 に対し、MRによる説明会及び対面コミュニケーション(ディテーリング) を行ってきた。 平成22年1月から令和元年7月までの間、原告はアステラス製薬と共 20 同で原告商品のプロモーション活動を行っていた。同期間中、原告は単独 で●(省略)●回のディテーリングを行っているから、アステラス製薬と 併せると、同期間中に行われたディテーリング回数は、合計●(省略)● 回となる。 また、原告商品のディテーリング数については、第三者による調査結果 25 が雑誌に掲載されているところ、それによれば、上記期間中のディテーリ 35 ング数は少なくとも年間61万4400回であり、10年間の合計回数は 614万4000回となる(甲31)。 上記期間中における原告によるプロモーション活動費用は、販売、マー ケティング及び医薬情報提供活動関連費の合計が●(省略)●円、FTE の合計が●(省略)●単位であった。これにアステラス製薬によるプロモ 5 ーション活動を加えると、原告商品のプロモーション活動費用は、●(省 略)●円、●(省略)●単位となる(甲31)。 原告は、平成24年以降、以下のとおり、多数回にわたって、複数の学 会誌・専門誌に原告商品の宣伝広告を掲載してきた(甲32~34)。 a 「日本呼吸器学会誌」:計15回 10 原告は、平成24年以降、以下のとおり、多数回にわたって、複数の学 会誌・専門誌に原告商品の宣伝広告を掲載してきた(甲32~34)。 a 「日本呼吸器学会誌」:計15回 10 b 「アレルギー」:計5回 c 「呼吸器内科」:計9回 ウ アンケート結果 上記のような原告の努力により、医師及び患者のいずれにおいても、原告 商品の形態は広く認知され、かつ、出所についても認知されるに至った。こ 15 のことは、本件アンケート調査の結果からも明らかである。 ICS/LABAの5つの先発薬の形態を医師に示したところ、93.9%の呼 吸器内科専門医及び87.5%の一般内科医が原告商品を知っていると回 答した。また、89.0%の呼吸器内科専門医及び82.5%の一般内科 医が、原告商品を処方していると回答した(甲28の別紙2〔18頁〕)。 20 原告商品の形態(ラベルを剥がした状態)を医師に示したところ、91. 7%の呼吸器内科専門医及び82.0%の一般内科医が、販売名をシムビ コートと正しく回答した。また、販売会社名についても、86.2%の呼 吸器内科専門医及び72.0%の一般内科医が、アストラゼネカ又はアス テラスと正しく回答した(甲28の別紙2〔19頁〕)。 25 販売名又は販売会社のいずれかを正しく回答した者の割合は、呼吸器内 36 科専門医において93.4%、一般内科医において83.0%に上った。 患者に対する調査においても、原告商品の形態(ラベルを剥がした状態) を示したところ、原告商品を認知していた者の合計割合は、59.8%に も上った。また、認知していた者に対して、販売名及び販売会社名を尋ね たところ、34.3%が販売名についてシムビコートと正しく回答し、1 5 7.1%が販 品を認知していた者の合計割合は、59.8%に も上った。また、認知していた者に対して、販売名及び販売会社名を尋ね たところ、34.3%が販売名についてシムビコートと正しく回答し、1 5 7.1%が販売会社名についてアストラゼネカ又はアステラスと正しく回 答した(甲29の別紙2〔15、21頁〕)。 さらに、販売名又は販売会社の何れかを回答できた割合は、36.0% に達した(甲29の別紙2〔21頁〕)。 ⑶ 使用時形態 10 ア 上記⑵のとおり、約10年間の独占的な使用や販売促進活動により、使用 時形態についても、医療従事者及び患者の間で、原告商品の形態として広く 認識されている。 イ 以上に加え、原告は、平成22年から、「患者向医薬品ガイド」と題する 患者向けの資料を作成し、医療従事者を介して患者に提供してきたが(甲7、 15 8)、その中では、原告商品の使用時形態の画像を示した上で、その使用方 法について説明している。このような原告による情報提供も、使用時形態の 周知性獲得に寄与している。 ウ 原告は、MRによるディテーリングの際にも、原告商品の使用時形態の写 真を示した上で、原告商品の使用方法を説明してきた(甲31)。したがっ 20 て、原告商品の使用時形態は、ディテーリングを通じても周知性を獲得して いる。 ⑷ 特許権による保護期間を考慮する必要はないこと ア 被告らは、周知性があるというためには、特許権等に基づき得られた独占 状態の営業が排除されている必要がある旨主張するが、同主張は、不競法上 25 の保護と特許法の保護を調整しようとしている点で、前提において誤ってい 37 る。 すなわち、特許発明は抽象的な技術思想であり、広い範囲に及ぶのに対し、 商品等表示は、個別具体的な商品の形態に基づく。 保護を調整しようとしている点で、前提において誤ってい 37 る。 すなわち、特許発明は抽象的な技術思想であり、広い範囲に及ぶのに対し、 商品等表示は、個別具体的な商品の形態に基づく。また、周知表示としての 保護を維持するためには、先行者には、模倣者の市場への参入を阻むための 不断の努力が必要となる。また、意匠権については、従前の裁判例や学説に 5 おいても、不競法との調整は問題とされていない。 したがって、不競法上の商品等表示に関し、特許権や意匠権との調整を図 る必要はなく、被告らの指摘する裁判例の懸念は、不競法に内在する制約と して、技術的機能による形態又は競争上似ざるを得ない形態を商品等表示か ら除外することにより解決済みであり、それ以上に調整の必要はない。 10 イ 仮に「調整」が必要であったとしても、その「調整」の対象となる特許権 は、商品形態全体を保護するものでならなければならないはずであり、商品 形態とは無関係の特許が存在するだけでは、商品形態の保護には何ら寄与し ていない。そして、本件においては、配合剤の特許によって、原告商品の形 態が保護されてきたわけではない。すなわち、被告らの指摘する9つの特許 15 権は、いずれも商品の形態とは無関係であるか、又は、商品の形態のごく一 部に関連しているにすぎず、原告商品の形態の保護に資するものではない。 また、吸入器に関する特許権も複数存在するが、以下のとおり、それらの 特許権によっても、原告商品と同様の形態の吸入器を製造・販売することが 禁止されるわけではない。 20 ① 薬量分配装置用の指示装置(乙5。特許第1892304号) 原告商品のカウンターに係る特許であり、平成18年4月9日に期間が 満了している。 ② 散薬吸入器用装置(乙6。 ① 薬量分配装置用の指示装置(乙5。特許第1892304号) 原告商品のカウンターに係る特許であり、平成18年4月9日に期間が 満了している。 ② 散薬吸入器用装置(乙6。特公平8-24715号) 吸入器内部での空気の流れを制御することについての特許であり、内部 25 構造に関するものである。そして、平成19年3月6日に期間が満了して 38 いる。 ③ 吸入装置(乙7) 吸入器下部の回転ディスクにおけるスプラインと呼ばれる部位の係合 についての特許であり、内部構造に関するものである。そして、平成30 年3月13日に権利が消滅している。 5 ④ 吸入装置(乙8) キャップ装着時に、キャップの内周面のシーリング面と、それに対向す る本体側のシーリング面が噛み合っていることについての特許であり、内 部構造に関するものである。そして、平成30年3月13日に権利が消滅 している。 10 ⑤ 吸入装置(乙9) 上記④同様、内歯スプラインと外歯スプラインの係合に関する特許であ り、内部構造に関するものである。そして、平成30年3月13日に権利 が消滅している。 ⑥ 吸入器(乙10) 15 吸入器内部の流路、投薬手段及び流路の表面に蓄積した散薬の除去手段 についての特許であり、内部構造に関するものである。そして、平成30 年3月13日に権利が消滅している。 ⑦ 吸入装置(乙11) 吸入器に設けられた小さな入り口(穴)についての特許であり、外部観 20 察でほとんど気づくことのない形態に関するものである。そして、平成3 1年3月30日に期間が満了している。 ウ 他方で、意匠権については、形態の保護に関するものであるものの、仮に 被告らの でほとんど気づくことのない形態に関するものである。そして、平成3 1年3月30日に期間が満了している。 ウ 他方で、意匠権については、形態の保護に関するものであるものの、仮に 被告らの主張するように、周知性の獲得のためには「知的財産権を有してい たことに基づく独占状態の影響」が払しょくされる必要があるとしても、本 25 件においては、既にそのような影響は払しょくされているといわざるを得な 39 い。すなわち、原告商品に係る意匠権は平成27年1月28日に存続期間が 満了しており、その後、被告商品の販売が開始されるまでに約5年が経過し ている。この点につき、東京高裁平成5年2月25日判決は、特許権の消滅 から競合品の販売までの期間が約3年半である事案において、商品等表示性 を肯定しているところ、本件事案では、上記期間が約3年半を優に超えてお 5 り、上記にいう影響は払しょくされている。 (被告らの主張) ⑴ 保管時形態 ア 前述のとおり、需要者である医師及び薬剤師は、原告商品を「有効成分」、 「銘柄名」及び「先発薬又は後発薬の区別」により識別しているのであって、 10 原告商品の形態が、それらの区別を離れて、商品等表示としての周知性を獲 得したとはいえない。 イ 原告商品のシェアは、商品形態が商品等表示性を獲得するほど周知になっ たことを基礎づけるものではない。また、高度な専門的知見を有する医師や 薬剤師が僅か5種類しかない医療用医薬品を選択する際に、商品の形態で判 15 断することはあり得ない。 ウ 本件アンケート調査の結果も、専門的知見を有する医師が僅か5種類の商 品の中で原告商品を認識していたことは当然であり、銘柄名を覚えていると いうことは、むしろ銘柄名によって商品を識別していることを示している (甲28 調査の結果も、専門的知見を有する医師が僅か5種類の商 品の中で原告商品を認識していたことは当然であり、銘柄名を覚えていると いうことは、むしろ銘柄名によって商品を識別していることを示している (甲28Q6、7)。 20 また、アンケートを実施するのであれば、端的に、患者に処方する商品を、 商品の形態で区別しているのか、それとも銘柄名や有効成分によって区別し ているのかを尋ねるべきあり、これを欠いた本件アンケート調査には意味が なく、さらに、患者は需要者ではない。 ⑵ 使用時形態 25 上記⑴のとおり、使用時形態が周知性を獲得したとはいえない。 40 ⑶ 特許権等による保護期間を考慮すべきであること ア 原告商品は、特許権及び意匠権によって他社の参入を阻止したことにより、 独占状態を維持してきたにすぎない。すなわち、東京高裁平成15年5月2 2日判決〔PCフレーム事件〕が判示するように、特許権等の知的財産権の 存在により独占状態が生じ、これに伴って周知性ないし著名性が生じるのは 5 ある意味では当然のことであり、これに基づき生じた周知性だけを根拠に、 不競法の適用を認めることは、結局、知的財産権の存続期間経過後も、第三 者によるその利用を妨げてしまうことに等しい。そのような事態が、価値あ る情報の提供に対する対価として、その利用の一定期間の独占を認め、期間 経過後は万人にその利用を認めることにより、産業の発達に寄与するという、 10 特許法等の目的に反することは明らかである。 そのため、周知性又は著名性が知的財産権に基づく独占状態によって生じ たような場合には、「知的財産権の存続期間が経過し、第三者の同種競合製 品が市場に投入されて相当期間経過するなどして、知的財産権を有していた ことに基づく独占状態の影響が払 に基づく独占状態によって生じ たような場合には、「知的財産権の存続期間が経過し、第三者の同種競合製 品が市場に投入されて相当期間経過するなどして、知的財産権を有していた ことに基づく独占状態の影響が払しょくされた後で、なお原告商品の形状が 15 出所を表示するものとして周知又は著名であるとの事情」が認められる必要 があるというべきである。 本件では、配合剤の特許の有効期間が満了したのは平成29年12月7日 であり、それまでの間は厚労省による後発薬の製造販売承認は得られない。 そして、製造販売の承認は毎年2月と8月の年2回行われることからすれば、 20 原告は平成30年2月までは、特許権に基づく独占状態を継続していたこと になる。したがって、原告商品には、「知的財産権の存続期間が経過し、第 三者の同種競合製品が市場に投入されて相当期間経過するなどして、知的財 産権を有していたことに基づく独占状態の影響が払しょくされた後で、なお 原告商品の形状が出所を表示するものとして周知又は著名であるとの事情」 25 はない。 41 イ 不競法の内在的制約と位置付けるかどうかはさておき、いずれにせよ、機 能に由来する形態につき不競法の保護が及ばないという結論に変わりはな いところ、本件では、後発薬として先発薬品と同等の機能を担保するために は、実質上、内部構造を先発薬と同様にするほかなく、その結果、おのずと 容器の寸法や外形の基本的形態が定まり、設計の自由度は相当程度制約され 5 る。そのような機能に由来するという意味において、原告が主張する形態上 の特徴は、ありふれた形態であり、原告商品には、機能に無関係なデザイン としての特徴はない。 6 争点3(原告商品と被告商品の類似性) (原告の主張) 10 ⑴ 類否判断の基準 ア 取引の りふれた形態であり、原告商品には、機能に無関係なデザイン としての特徴はない。 6 争点3(原告商品と被告商品の類似性) (原告の主張) 10 ⑴ 類否判断の基準 ア 取引の実情 ある商品等表示が不競法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似し ているか否かは、取引の実情の下において、取引者又は需要者が、両表示の 外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似の 15 ものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである(最判昭和5 8年10月7日民集37巻8号1082頁)。また、類似性の判断は、時と 場所を異にして観察するときに、その商品等表示により、取引者又は需要者 が誤認混同するおそれが認められるか否かにより行われるべきである。 このような基準に照らせは、原告商品及び被告商品は、下記⑵及び⑶のと 20 おり、保管時形態及び使用時形態のいずれにおいても類似している。 イ 被告らの主張に対する反論 被告らは、取引の実情に照らせば、吸入器の形態のみを比較すべきでは なく、外箱のデザインを考慮して類否を判断すべきである旨主張するが、 需要者は原告商品及び被告商品を使用する際に、当然、外箱から取り出し、 25 かつ、一旦取り出した後は、そのままの状態又は薬袋に入れて保管するの 42 が通常であり、再度外箱に入れて保管するわけではない。また、医師及び 薬剤師は、吸入指導の際に、患者に見本を示して説明する。 被告らは、原告商品及び被告商品はいずれも保管時形態で取引されるも のであるから、使用時形態は保管時形態と同様の重要性を持たない旨主張 するが、患者は吸入器を使用する際に、繰り返し使用時形態に接する以上、 5 使用時形態に強い関心を有する。 また るも のであるから、使用時形態は保管時形態と同様の重要性を持たない旨主張 するが、患者は吸入器を使用する際に、繰り返し使用時形態に接する以上、 5 使用時形態に強い関心を有する。 また、医師は、患者に使用方法を説明するに当たり、自らも使用方法を 熟知していなければならないため、医師も使用時形態に強い関心を有して おり、実際にも、医療従事者向けの様々な資料において、使用時形態が詳 細に説明されている。 10 被告らは、取引の実情として、医師や薬剤師は、先発薬と後発薬の形態 上の共通性よりも、むしろ相違点により多くの注意を向ける旨主張するが、 類否の判断は、第一義的には形態の対比によって行われるものであり、先 発薬・後発薬という薬事上の違いにより影響されるものではない。 原告商品の形態は技術的機能に由来する必然的な帰結ではない。すなわ 15 ち、先発薬との生物学的同等性を実現するに当たっては、吸入器に充填さ れる粒子の設計及び吸入器の内部構造が重要であり、それを包み込む外形 には様々な選択肢が存在する。 ⑵ 保管時形態 原告商品の形態は、別紙原告商品構成態様目録記載のとおりであり、被告商 20 品の形態は、別紙被告商品構成態様目録記載のとおりである(以下、符合に従 い「基本的構成態様A」、「基本的構成態様A′」などという。)。 ア 基本的構成態様 原告商品と被告商品は、いずれも、略円筒状の本体部と、本体部の上方か ら上端に向けてやや先細の上部と、本体部の下方に位置し周面に軸方向に等 25 間隔に溝孔を設けた回転グリップ部とを備えたリップスティック型である 43 点に特徴がある(基本的構成態様A及びA’)。そのため、両者は、基本的 構成態様の点で同一であり、差異は無い。 イ 具体 溝孔を設けた回転グリップ部とを備えたリップスティック型である 43 点に特徴がある(基本的構成態様A及びA’)。そのため、両者は、基本的 構成態様の点で同一であり、差異は無い。 イ 具体的構成態様 共通点 原告商品と被告商品とは、サイズの点ではほぼ一致する(具体的構成態 5 様B及びD並びにB’及びD’)。色の点でも、本体部及び上部が白であ り、回転グリップ部が暖色である点で一致する(具体的構成態様C及C’)。 また、いずれについても、回転グリップ部の周面には、軸方向に等間隔で 24本の溝孔が形成されている(基本的構成態様F及び同F’)。 相違点 10 a 原告商品と被告商品1は、以下の点で相違する。 ① 原告商品の上部の周面は凹凸部がなく滑らかであり、上面は円形で あるのに対し、被告商品の同部の周面には12本の稜線が等間隔で配 置され、稜線間は略等脚台形状の平面が形成され、上面は十二角形で ある。 15 ② 原告商品の回転グリップ部の厚さは1.2cmであるのに対し、被 告商品の同部の厚さは1.7cmである。そのため、原告商品の全長 は8.4cmであるのに対し、被告商品の全長は8.9cmである。 ③ 原告商品の回転グリップ部の溝孔の長さは0.8cmであるのに対 し、被告商品の同部の溝孔の長さは1.3cmである。 20 ④ 原告商品の回転グリップ部は赤色であるのに対し、被告商品の回転 グリップ部はオレンジ色である。 b 原告商品と被告商品2は、上記aの①、②及び④に加え、次③’の点 において相違する。 ③’原告商品の回転グリップ部の溝は長さが0.8cmであるのに対し、 25 被告商品2の回転グリップ部には、長い溝1本と短い溝3本の繰り返 44 し構造が18組設けられており おいて相違する。 ③’原告商品の回転グリップ部の溝は長さが0.8cmであるのに対し、 25 被告商品2の回転グリップ部には、長い溝1本と短い溝3本の繰り返 44 し構造が18組設けられており、長い溝が1.3cm、短い溝が1. 0cmである。 ウ 類否 被告商品1との類否 原告商品と被告商品1は、いずれもリップスティック型であり、前記の 5 ような特徴が一致する。したがって、医療従事者及び患者は、被告商品1 に対して、原告商品と同様に全体としてコンパクトですっきりとした印象 を受ける。 他方で、原告商品と被告商品1は、前記のような相違点も存在するが、 それらは、原告商品と被告商品1との全体的な印象、類似性を左右するも 10 のではない。すなわち、相違点①について、被告商品1は、原告商品と同 じく上部は全体にわたって白色であり、稜線が目立つものではなく、両者 を時と場所を異にして観察した場合に明瞭に認識できるものではない。 次に、相違点②及び③は、各部の寸法の差異を示しているものの、商品 全体のサイズに対してその差は僅かであり、全体的な印象を左右するもの 15 ではない。 また、相違点④につき、原告商品の回転グリップ部(赤色)及び被告商 品1の回転グリップ部(オレンジ色)は、いずれも暖色系に属する上に、 同一の製薬会社が、同一の形状の吸入器につき、色違いで複数の商品に使 用することは、一般的にみられることである。そのため、需要者は、同一 20 の者がそれらの商品群を特定の疾患(例えば、閉塞性肺疾患等)に対する 薬剤のシリーズのものとして提供していると理解する。したがって、相違 点④が全体的な印象を左右するものではない。 以上のとおり、被告商品1は、原告商品の顕著な特徴を 塞性肺疾患等)に対する 薬剤のシリーズのものとして提供していると理解する。したがって、相違 点④が全体的な印象を左右するものではない。 以上のとおり、被告商品1は、原告商品の顕著な特徴を備えており、両 者の相違点を考慮しても全体として与える印象を異にするものではない 25 から、被告商品1は原告商品に類似している。 45 被告商品2との対比 相違点①、②及び④については、上記 記載のとおりである。また、相 違点③’は、回転グリップ部の溝の形状という細部における違いにすぎず、 目立つものではないから、全体的な印象を左右するものではない。 したがって、被告商品2における回転グリップ部の形状変更は、原告商 5 品との類否判断に影響を及ぼすものではなく、被告商品2は原告商品に類 似している。 エ 被告らの主張に対する反論 特定論について 被告らは、原告商品及び被告商品の形態の特定につき、独自の主張をし 10 ているが、実際には、被告らの特定は原告の特定とほぼ同一であり、異な る点は、①原告商品及び被告商品のいずれについても、保管時形態の本体 部のラベルが付加されている点、②原告商品の本体部の上部には、空気取 入口に加えて、2つの小さな隙間が設けられているのに対し、被告商品に は設けられていないという点である。 15 被告らの指摘する差異は軽微であること 被告らの主張する相違点は、結局のところ、①配色の違い、②保管時形 態の本体部のラベルの表記、③回転グリップ部の厚みの違い(原告商品が 1.2cmであるのに対し、被告商品が1.7cmである。)、④被告商 品での保管時形態における本体部の上部の稜線及び段差、⑤原告商品での 20 使用時形態における本体部上部の「2つの小さな隙間 商品が 1.2cmであるのに対し、被告商品が1.7cmである。)、④被告商 品での保管時形態における本体部の上部の稜線及び段差、⑤原告商品での 20 使用時形態における本体部上部の「2つの小さな隙間」にとどまるところ、 これらはいずれも、類似性とは無関係であるか又は僅かな違いにすぎない。 その他に、被告らの主張は、争点2-2(原告商品の形態は機能的形態 に当たるか)及び争点2-3(特別顕著性)における主張と共通するとこ ろ、それらに理由がないことは、既に述べたとおりである。 25 46 ⑶ 使用時形態 ア 基本的構成態様 原告商品と被告商品は、いずれも、略円錐形状の本体部と、本体部の上方 に位置し円錐形部と扁平管部とが組み合わされたマウスピース部と、本体部 の下方に位置し周面に軸方向に等間隔に溝孔を設けた略円盤状の回転グリ 5 ップ部とを備え、本体部の正面右上には、水平方向に陥凹部(小窓)が設け られ、その陥凹部の底面に薬の残量を示す数字又は記号が表示されるカウン ターが設けられた、木管楽器用のマウスピース型の態様である(基本的構成 態様a及びa’)。 したがって、両者は、基本的構成態様の点で同一であり、差異はない。 10 イ 具体的構成態様 共通点 原告商品と被告商品とは、サイズの点ではほぼ一致する(具体的構成態 様b及びb’)。そして、マウスピース部の上面並びに扁平管部及び円錐 形部、本体部及び回転グリップ部の詳細についても、両者は一致する(具 15 体的構成態様dないしi及びd’ないしi’)。 相違点 a 被告商品1について 原告商品と被告商品1の相違点は、次のとおりである。 ① 原告商品では、本体部は白色であり、 i及びd’ないしi’)。 相違点 a 被告商品1について 原告商品と被告商品1の相違点は、次のとおりである。 ① 原告商品では、本体部は白色であり、回転グリップ部は赤色であり、 20 カウンターは白色であり、数字及び記号は黒色であるのに対し、被告 商品では、本体部は肌色であり、回転グリップ部はオレンジ色であり、 カウンターは灰色であり、数字及び記号は白色である。 ② 原告商品では、回転グリップ部の厚みが1.5cmであり、溝の長 さが0.8cmであるのに対し、被告商品1では、回転グリップ部の 25 厚みが2.0cmであり、溝の長さが1.3cmである。 47 b 被告商品2について 原告商品と被告商品2の相違点は、上記a①に加え、次の②’の点に ある。なお、被告らが相違点として主張するカウンターの目盛りは、需 要者が気付き難い部位にあるから、相違点として取り上げる必要はない ものの、仮にこれが相違点であるとした場合は、その内容は、次の③の 5 とおりである。 ②’原告商品の回転グリップ部の溝は24本であり、長さが0.8cm であるのに対し、被告商品2の回転グリップ部には、長い溝1本と短 い溝3本の繰り返し構造が18組設けられており、長い溝が1.3c m、短い溝が1.0cmである。 10 ③ 原告商品では、シムビコート60について、60、40、20及び 0の数字の表示と、50及び30に当たる位置に目盛りがあり、シム ビコート30について、30、15及び0の数字の表示があるのに対 し(数字は何れも残量を吸入回数で示したものである。)、被告商品 2では、60、40、20及び0の数字の表示と、50及び30に当 15 たる位置に目盛りがあることに加え、5回刻みの目盛りがある。 し(数字は何れも残量を吸入回数で示したものである。)、被告商品 2では、60、40、20及び0の数字の表示と、50及び30に当 15 たる位置に目盛りがあることに加え、5回刻みの目盛りがある。 ウ 類否 被告商品1との類否 原告商品と被告商品1は、いずれも木管楽器用のマウスピース型であり、 前記の特徴が一致する。したがって、医療従事者及び患者は、被告商品1 20 に対して、原告商品と同様に、上方に向かう流線形のよくまとまった一体 感のある印象を与える。 他方で、前記の相違点は、原告商品と被告商品1との全体的な印象、類 似性を左右するものではない。すなわち、相違点①については、吸入薬の 分野では、同一の製薬会社が、同一の形状の吸入器につき、色を変えて複 25 数の吸入薬に提供することは一般的である。したがって、同じ形状の吸入 48 器について、その全部又は一部が異なる場合、需要者は、同一の者がそれ らの商品群を特定の疾患(例えば、閉塞性肺疾患等)に対する薬剤のシリ ーズのものとして提供していると理解する。そのため、相違点①が全体的 な印象を左右するものではない。 相違点②については、回転グリップ部の寸法の差異は、全体のサイズに 5 対して僅かであり、全体的な印象を左右するものではない。 以上のとおり、被告商品1は、原告商品と実質的に同一であり、原告商 品の顕著な特徴を備えており、両者の相違点を考慮しても全体として与え る印象を異にするものではないから、被告商品1は原告商品に類似してい る。 10 被告商品2との類否 相違点①については、上記 記載のとおりである。また、相違点②’は、 溝の形状という細部における違いにすぎず、目立つものではない。 さらに、相違点③についても、カウンターの5回刻みの目盛り との類否 相違点①については、上記 記載のとおりである。また、相違点②’は、 溝の形状という細部における違いにすぎず、目立つものではない。 さらに、相違点③についても、カウンターの5回刻みの目盛りは、数字 に加えた補助的な表示すぎず、小さいため目立つものではない上に、原告 15 商品においても、使用開始時にはカウンター内に目盛りが表示されている ことに照らしても、全体的な印象を左右するものではない。 したがって、被告商品2におけるカウンターの形状変更は、原告商品と の類否判断に影響を及ぼすものではなく、被告商品2は原告商品に類似し ている。 20 エ 被告らの主張に対する反論 被告らは、吸入器の機能について縷々主張するが、同主張は、吸入薬の粒 子の設計及び吸入器の内部構造に関するものか、吸入器の形態として別の選 択肢が利用可能なものに関する主張であるから、理由がない。すなわち、吸 入薬の粒子径は、吸入器の形態とは無関係であるし、1回分の使用量及び薬 25 剤の残量の管理についても、吸入器の内部機構の問題であり、外部の形態と 49 しては様々な選択肢がある。 その他、被告らの主張は、争点2-2(原告商品の形態は機能的形態に当 たるか)及び争点2-3(特別顕著性)における主張と共通するところ、そ れらに理由がないことは、既に述べたとおりである。 ⑷ 本件アンケート調査の結果 5 原告商品と被告商品が形態において類似していることは、本件アンケート調 査に表れた医師及び患者の実際の認識によっても裏付けられる。 ア 医師の認識 被告商品の形態を医師に写真で示し、思い浮かんだことを自由に回答さ せたところ、47.5%の呼吸器内科専門医及び32.5%の一般内科医 10 が、被告商品は「シムビコートである」又は「シムビ 被告商品の形態を医師に写真で示し、思い浮かんだことを自由に回答さ せたところ、47.5%の呼吸器内科専門医及び32.5%の一般内科医 10 が、被告商品は「シムビコートである」又は「シムビコートに似ている」 と回答した。また、パルミコート(原告商品と同一の吸引器を使用してい る。)に似ていると回答した割合及びSMART療法(原告商品のみにつ いて承認された療法である。)と回答した割合を加えると、53.6%の 呼吸器内科専門医及び41.0%の一般内科医が、被告商品はシムビコー 15 ト(原告商品)であるか又は被告商品がシムビコート(原告商品)に似て いると回答した。 また、以下の写真を順に示し、右の写真のうち左の写真に含まれていた 吸入薬を回答させたところ、27.1%の呼吸器内科専門医及び40.0% の一般内科医が、被告商品(右の写真のうち最も右の列)が左の写真の吸 20 入薬に含まれていたと誤った回答した(甲28の別紙2〔30頁〕)。こ の結果は、医師ですら被告商品の形態を原告商品の形態と取り違えるほど 50 に、両者が類似していることを示している。 さらに、原告商品と被告商品を同時に示して思い浮かんだことを回答さ せたところ、28.2%の呼吸器内科専門医及び30.5%の一般内科医 が、両者は似ていると回答した(甲28の別紙2〔34頁〕)。 イ 患者の認識 5 被告商品の形態を患者に写真で示したところ、原告商品を使用している 患者のうち54.2%が、被告商品は「シムビコートである」又は「シム ビコートに似ている」と回答した。 また、患者に対しても、上記ア の質問をしたところ、36.3%の患 者が、被告商品(右の写真のうち最も右の列)が左の写真の吸入薬に含ま 10 れていたと誤った回答した(甲29号証別紙2の32頁) また、患者に対しても、上記ア の質問をしたところ、36.3%の患 者が、被告商品(右の写真のうち最も右の列)が左の写真の吸入薬に含ま 10 れていたと誤った回答した(甲29号証別紙2の32頁)。 さらに、原告商品と被告商品を同時に示して思い浮かんだことを回答さ せたところ、28.6%の患者が、両者は似ていると回答した(甲29〔別 紙2・39頁〕) ウ 被告らの主張に対する反論 15 被告らは、甲29のQ9において、「シムビコート」と回答した者は僅 か1.5%である旨主張するが、この数値は、患者の回答者全員を分母と した場合の割合である。しかしながら、患者は、医師とは異なり、自らが 使用していない吸入薬に接する機会に乏しく、形態についての正確な情報 51 を有していないことが多い以上、シムビコートを使用していない患者には 適切な回答は期待できない。したがって、シムビコートを使用している患 者を分母とした場合の比率を検討すべきである。 被告らは、「似ている」という回答は「区別できている」ことを意味す る旨主張するが、回答者において断定を避けるため「似ている」という表 5 現が多用されたにすぎない。 (被告らの主張) 以下のとおり、原告商品及び被告商品は、保管時形態・使用時形態のいずれに ついても類似していない。 ⑴ 類否判断の基準 10 ア 取引の実情 ある商品等表示が不競法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似し ているか否かは、取引の実情の下において、取引者又は需要者が、両表示の 外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似の ものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断するとされ(最判昭和58 15 年10月7日民集37巻8号1082頁)、類似性の判断は、取引の実情が 前提となっ 象、記憶、連想等から両者を全体的に類似の ものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断するとされ(最判昭和58 15 年10月7日民集37巻8号1082頁)、類似性の判断は、取引の実情が 前提となっており、取引者又は需要者の注意力、判断力の下で、誤認混同を 生ずるおそれがあるか否かを考慮して判断される。 外箱の存在 原告商品及び被告商品は、いずれも、吸入容器のラベルと同様のデザイ 20 ン・色使いで、「シムビコート」、「ブデホル」などの商品名を大書した 外箱に入った状態で販売され、薬局においても通常は外箱に入った状態で 保管されているところ(乙28の1)、外箱のデザイン及び記載内容は原 告商品と被告商品とで大きく異なっている。 したがって、両商品の吸入容器の形態のみを比較することは、そもそも、 25 取引の実情に即した商品形態の類否の判断方法とはいえないところ、外箱 52 の形態からしても、原告商品と被告商品とが混同されるおそれはない。 医師や薬剤師の意識 原告商品及び被告商品の取引者又は需要者である医師や薬剤師は、医療 用医薬品を誤れば患者の健康に重大な被害が生じることから、細心の注意 をもって医療用医薬品の処方・調剤をしており、また、ある医療用医薬品 5 に後発薬があるか否か、及び、後発薬が存在する場合には処方・調剤する 医療用医薬品が先発薬であるか後発薬であるかは常に意識している。 また、吸入容器の構造が吸入薬の薬効の発揮に重要な役割を果たすこと は医学上の常識であり、先発薬と同等の製剤学的同等性及び治療学的同等 性を有するものとして承認されている後発薬がその容器の構造・形状にお 10 いて先発薬と一定程度の共通性を有するであろうことは、医師や薬剤師に とって、所与の前提である。そのた 同等性及び治療学的同等 性を有するものとして承認されている後発薬がその容器の構造・形状にお 10 いて先発薬と一定程度の共通性を有するであろうことは、医師や薬剤師に とって、所与の前提である。そのため、医師や薬剤師が処方・調剤する医 療用医薬品の選別に際して、吸入容器の形態に着目するのであれば、吸入 容器の形態上の共通性よりも、むしろ相違点により多くの注意を向けると 考えられる。 15 このような処方薬に特有の事情は、本件の類否判断において、取引の実 情を構成する重要な要素として考慮されるべきである。 イ 判断要素の軽重 使用時形態は従たる要素であること 使用時形態は、取引の時点ではなく、患者が使用するときや使用方法の 20 説明の際に現出するものにすぎないから、取引における誤認混同のおそれ の可能性があるかという観点に基づく商品形態の類否の判断において、保 管時形態と同等ではなく、飽くまで従たる要素と位置づけられるべきもの である。 機能的形態は捨象すべきこと 25 原告商品や被告商品のような喘息用吸入薬において、キャップを取り外 53 したときに表れる形態の多くは、薬剤の有効性を高め、患者の利便性及び 安全性に寄与するための機能や物理的構造と密接に関連している。被告商 品は、医療用医薬品の承認審査上、先発薬である原告商品と同等の機能・ 性能(製剤学的同等性及び治療学的同等性)を備えることを要求されてい るため、機能・性能に関連する可能性がある部分については、原告商品と 5 一定程度共通する容器構造を採らざるを得ず、その結果、構造を反映した ものとして外部に現れる形状も、原告商品とある程度の共通性を有するこ とにはなる。 もっとも、医療に従事する者にとって、後発薬が先発薬と同等の機能を 確 構造を採らざるを得ず、その結果、構造を反映した ものとして外部に現れる形状も、原告商品とある程度の共通性を有するこ とにはなる。 もっとも、医療に従事する者にとって、後発薬が先発薬と同等の機能を 確認されたものとして承認されていることは常識であるから、先発薬と同 10 等の性能を発揮するために採用されている後発薬の形状が先発薬とある 程度の共通性を有していても、それは当然のことと受け取られるのであっ て、そのような共通性は、医師や薬剤師が商品を見る際に、いわば捨象さ れる要素といえる。 したがって、機能に由来する形態の共通性は、商品形態の類否の判断に 15 おいて重視されるべき要素ではない。 ⑵ 保管時形態 ア 共通点及び相違点 原告商品と被告商品の共通点及び相違点は、別紙対比表1のとおりである。 イ 類否 20 共通点がありふれた形状であること 原告商品と被告商品の形態における共通点は、①全体形状がリップステ ィック型であって、キャップと回転グリップ部から構成されている点、② キャップの本体部から続く上部がやや先細りになっている点、③下端に設 けた回転グリップ部が周面に等間隔に軸方向の溝孔を設けた構成である 25 点の3点であるところ、これらがいずれもごくありふれた形態であること 54 は、争点2-3(特別顕著性)において主張したとおりである。 差異が全体的な印象を左右すること 原告商品と被告商品は、少なくとも以下の点において相違しており、全 体として、見る者に異なった印象を与える。 a 原告商品と被告商品の相違点 5 ① 全体の寸法比 原告商品は、キャップの長さ7.2cmに対して回転グリップ部の 長さが1.2cmであり、全体として回転グリップ部の長さが小さい (薄 a 原告商品と被告商品の相違点 5 ① 全体の寸法比 原告商品は、キャップの長さ7.2cmに対して回転グリップ部の 長さが1.2cmであり、全体として回転グリップ部の長さが小さい (薄い)印象を与える。これに対して、被告商品は、キャップの長さ 7.2cmに対する回転グリップ部の長さ(厚さ)が大きく(1.7 10 cm)、回転グリップ部の存在感が大きい。 ② 全体の配色 原告商品は回転グリップ部が赤色で、本体部などの白色とはっきり としたコントラストをなす。これに対し、被告商品は、回転グリップ 部が黄色がかったオレンジ色(被告商品1)又はオレンジ色(被告商 15 品2)であり、落ち着いた印象を与える。 ③ キャップの全体形状 原告商品は、やや先細りにした略円筒状の上部の外周面が本体部か ら連続する平滑な円周面となっているため、本体部から上部へのなだ らかな連続性を感じさせ、キャップ全体が連続した一体として感得さ 20 れる。これに対し、被告商品は、軸方向の幅0.15cmの稜線と等 脚台形状の略平面で構成された一二角の角錐台形状(上部は平坦面) である上部を円筒状の本体部の上に載せた形であって、稜線のある角 張った角錐台形状(上部)と平滑な周面で構成された円筒体(本体部) との間にある段差の存在と相俟って、上部と本体部とがはっきり区画 25 された印象を与え、また、本体部に対して上部の形態を変化させたデ 55 ザイン性を感じさせる。 なお、被告東亜薬品は、ニプロ株式会社とともに、被告商品の本体 部から上部にかけての形状を部分意匠として出願し、意匠登録を認め られていることからしても(乙34)、被告商品のキャップ部分に原 告商品とは異なる独自のデザイン性があることが明らかである。 5 ④ 回転グリップ部 原告商品は、なだ として出願し、意匠登録を認め られていることからしても(乙34)、被告商品のキャップ部分に原 告商品とは異なる独自のデザイン性があることが明らかである。 5 ④ 回転グリップ部 原告商品は、なだらかに連続した形状となった長さ7.2cmのキ ャップの下端に長さ1.2cmの回転グリップ部を設けているため、 回転グリップ部が薄い感じを与える。これに対し、被告商品はキャッ プの長さ7.2cmに対して回転グリップ部が1.7cmと厚く、周 10 囲の溝の長さも長いので、持ちやすく、回しやすい印象を与える。 また、原告商品は、平滑な円周面を構成しているキャップ(上部及 び本体部)に対する回転グリップ部の凹凸感が印象付けられる。これ に対し、被告商品は、上部の12本の軸方向の稜線と、回転グリップ 部の稜線(溝と溝の間に約0.2cmの幅で高く残った部分であって、 15 原告商品の1.6倍強の長さがある。)との緩やかな呼応関係が感得 される。 ⑤ 本体部の表示 原告商品は、本体の上部側ほぼ2/3の長さの領域が黄緑色(原告 商品1)又は水色(原告商品2)の地色のラベルで占められ、正面側 20 に商品名を表示する横長白色の区画とその下の小さな横長紺色区域 がある他は、色使いが少なく、すっきりした印象を与える。これに対 し、被告商品は、本体のほぼ2/3の長さを占める部分に本体色と同 色の白色の地色のラベルが貼られており、正面側の長さ方向ほぼ中央 の白地部分に黒字で商品名を表示し、その上方に横長のエンジ色区画、 25 左側に縦長の小さな緑色の区画(被告商品1)又は青色の区画(被告 56 商品2)、ラベル右下に横長の小さな緑色の区画(被告商品1)又は 青色の区画(被告商品2)を設けており、全体として色使いの多いデ ザインとなっている。 ⑥ ラベルの存 (被告 56 商品2)、ラベル右下に横長の小さな緑色の区画(被告商品1)又は 青色の区画(被告商品2)を設けており、全体として色使いの多いデ ザインとなっている。 ⑥ ラベルの存在 医療用医薬品の容器の大きな領域を占めるように貼られるラベル 5 には常に注意が向けられるところであり、その形態が商品の識別に与 える影響は、他の商品と比較して比類なく大きい。そのため、ラベル を商品形態から除外する理由はなく、商品形態の類否を検討するに当 たっては、ラベルも含めた状態を対比する必要がある。この点につき、 原告商品及び被告商品は、ラベルの存在により全体の印象が全く異な 10 っており、この点一つをとっても非類似である。 b 原告商品と被告商品2の固有の相違点 上記aに挙げた点に加え、さらに、被告商品2に関しては、回転グリ ップ部に計72本の細い溝が設けられており、溝の数が24本である原 告商品と比較して、より細かく精密な印象を与える。これに対し、原告 15 商品は、溝の数は24本であり、溝と溝の間には幅約0.2cmの平ら な凸部が稜線状に残っており、全体として凹凸が強調されたゴツゴツし た印象を与え、形状変更後の被告商品の印象とは相当異なる。 ⑶ 使用時形態 ア 共通点及び相違点 20 原告商品と被告商品の共通点及び相違点は、別紙対比表2のとおりである。 イ 類否 原告商品と被告商品の類否 原告商品や被告商品の使用時形態における対比においては、最も大きな 部分を占めるものとして最初に目に入って来る本体部の色の差異(原告商 25 品は白、被告商品は肌色)及びその結果としての全体的な配色の差異(2 57 色使いと3色使い)、さらに、使用時の使いやすさ 分を占めるものとして最初に目に入って来る本体部の色の差異(原告商 25 品は白、被告商品は肌色)及びその結果としての全体的な配色の差異(2 57 色使いと3色使い)、さらに、使用時の使いやすさという観点から注目さ れやすい回転グリップ部における差異(回転グリップ部は、溝のついた部 分が原告商品で0.8cmと短いのに対して、被告商品では被告商品の1. 6倍強の1.3cmであり、また、色は、原告商品が「赤」、被告商品が 「黄色」又は「オレンジ」である。)が重視されるべきであり、このよう 5 な直ちに看取される形態から生じる印象は、原告が指摘する空気流入孔、 カウンター(窓部)、陥凹部、マウス部周囲の突起などといった細かな構 造・形態の印象をはるかに凌駕するものである。 原告商品と被告商品の相違点 ① 全体的構成における相違点 10 原告商品の本体部とマウスピース部は白色で統一されているのに対 し、被告商品は、本体部の大部分(小径部を除いた部分)を肌色、マウ スピース部を白色として、両者の配色を変えることで、マウス部と本体 部にコントラストを持たせている。 また、原告商品では、本体部とマウスピース部の白色の下にすぐに続 15 けて赤色の回転グリップ部があり、赤と白のコントラストが強調された 2色使いである。これに対し、被告商品では、上部の白色、これに続く 本体部の肌色、更に本体部の小径部の白色、回転グリップ部の黄色がか ったオレンジ色(被告商品1)又はオレンジ色(被告商品2)という順 で縦方向に異なる3色が配されており、それぞれの部位を区別した3色 20 使いであるとの印象を与える。 さらに、キャップを取った後の容器の形態において最も大きな面積を 占める本体の色の差異(白と肌色の差異)と全体とし り、それぞれの部位を区別した3色 20 使いであるとの印象を与える。 さらに、キャップを取った後の容器の形態において最も大きな面積を 占める本体の色の差異(白と肌色の差異)と全体としての配色の差異は、 それのみで両商品を異なったものとして認識させるのに十分である。 ② 本体部における相違点 25 原告商品の本体部及びカウンターは白色であり、数字及び記号は黒 58 色である。これに対し、被告商品の本体部は肌色、カウンターは濃い 灰青色、数字及び記号は白色である。このように、原告商品は本体部 から上部にかけて全体的に白色で統一されているのに対し、被告商品 は、上部の白色に対し、本体部は色を変えて肌色としているところが 特徴的であり、肌色によって温かみのある印象を与える。 5 また、1回ごとに所定量の薬剤を吸入する吸入薬において、吸入の 残り回数を確認するためのカウンターは、注意が向けられやすい部位 であるところ、原告商品のカウンターは本体色と同じ白であって、小 窓の奥の方に引っ込んだ印象が強いのに対し、被告商品はカウンター を本体色とコントラストのある濃い灰青色(本体部の肌色に含まれる 10 オレンジ色の色味に対する補色である青を含んでいる。)としてお り、カウンター部分がはっきりと目立つ構成となっている。 ③ 回転グリップ部における相違点 原告商品は、回転グリップ部の長さが1.5cm、そのうち溝を形 成した部分の長さが0.8cmで、色は赤色である。これに対し、被 15 告商品の回転グリップ部の長さは2.0cmであり、溝を形成した部 分の長さが1.3cmであり、色は黄色がかったオレンジ色(被告商 品1)又はオレンジ色(被告商品2)である。 そして、回転グリップ部は、回転グリップ部を回すこと 長さは2.0cmであり、溝を形成した部 分の長さが1.3cmであり、色は黄色がかったオレンジ色(被告商 品1)又はオレンジ色(被告商品2)である。 そして、回転グリップ部は、回転グリップ部を回すことで1回分の薬 剤が出せるようにしている喘息用吸入薬において、使用感を大きく左右 20 するため、注意の向けられやすい部位であるところ、原告商品は、回転 グリップ部が比較的薄く、縦溝の長さも短いのに対し、被告商品は、回 転グリップ部の厚さが大きく、縦溝の長さも長いので、持ちやすく回し やすい印象を与える。また、原告商品は、回転グリップ部の赤と本体部 の白とがはっきりとしたコントラストを感得させる。これに対し、被告 25 商品は、回転グリップ部の穏やかなオレンジ色、本体部が肌色であるこ 59 ととも相俟って、全体として落ち着いていて温かみのある印象を与える。 原告商品と被告商品2の固有の相違点 上記に加え、被告商品2については、回転グリップ部に計72本の細い 溝が設けられ、溝の数が24本である原告商品と比較して、相当異なる印 象を与えることは、前記のとおりである。 5 また、医薬品の残量を示すカウンター表示部は、もともと、原告商品が 白色に黒文字を表示しているのに対し、被告商品1では濃い灰青色(本体 色の肌色に含まれるオレンジ色の色味に対する補色である、青を含む濃い 灰色を使用している。)に白文字という違いがあったところ、形状変更後 の被告商品2では、5回刻みの目盛りが設けられているという違いが加わ 10 り、医薬品の残量を把握しやすい形態となっている。 ウ 原告の主張に対する反論 原告が使用時形態における共通性を主張する構成のほとんどは、気管支 喘息治療用の吸入薬(容器)としての性能・機能を達成することに関連し た構成で っている。 ウ 原告の主張に対する反論 原告が使用時形態における共通性を主張する構成のほとんどは、気管支 喘息治療用の吸入薬(容器)としての性能・機能を達成することに関連し た構成であるところ、このような機能に関連する構造に由来する形状にお 15 ける共通点は、類否判断を左右する要素として重視されるべきではない。 ⑷ 医師及び患者の認識(本件アンケート調査の結果) 原告は、原告商品及び被告商品の形態における類似性は、本件アンケート調 査の結果に表れた医師及び患者の認識によっても裏付けられる旨主張するも のの、以下のとおり、理由がない。 20 ア アンケート自体が適切でないことは、前記のとおりである。 イ 高度な専門的知見を有する医師において、僅か5種類の商品の中で原告商 品について認識していたことはごく当然であり、むしろ、本件アンケートの Q6や7において、銘柄名を覚えていることは、銘柄名によって識別してい ることを示している。 25 ウ ラベルを剥がし、本体部の印字も消しているのに、呼吸器内科専門医の4 60 1.4%は、「先発品とジェネリック」であると正しく回答していることに 着目すべきである(甲28〔7頁〕)。 エ Q14では、被告商品からラベルを剥がした写真を示した上で質問をして いるにもかかわらず、原告商品であると回答した者の割合は、呼吸器内科専 門医で僅かに4.4%、一般内科医で6.5%、全体では5.5%にすぎな 5 い。このことからも、原告商品と被告商品が誤認混同を生じるような類似性 がないことが示されている。 7 争点4(混同のおそれ) (原告の主張) ⑴ 争点3(原告商品と被告商品の類似性)において主張したとおり、原告商 10 品と被告商品は形態において類似する ないことが示されている。 7 争点4(混同のおそれ) (原告の主張) ⑴ 争点3(原告商品と被告商品の類似性)において主張したとおり、原告商 10 品と被告商品は形態において類似するものであるから、被告商品に接した医 療従事者及び患者が、被告商品は原告の商品であるか、少なくとも被告商品 が原告と何らかの関係にある者によって提供されていると認識することは明 らかである。 ア 広義の混同のおそれ 15 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張した とおり、AGの存在を考慮すると、医師や薬剤師であっても、後発薬の形 態が先発薬のそれと同一又は類似する場合、先発薬メーカーが関与してい る後発薬であるとの誤認をするおそれがあり、少なくとも、広義の混同が 生じる。 20 イ 狭義の混同のおそれ 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張した とおり、AGは、先発薬と同じ生産者によって供給されており、先発薬と 出所は同じである。したがって、需要者がGEをAGと誤信することは、 GEの出所が先発薬と同じであると誤信すること、すなわち、狭義の出所 25 の混同が生じている 61 ⑵ 患者も需要者であること 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張したと おり、患者も需要者である。 ⑶ 本件アンケート調査の結果 本件アンケート調査の結果によっても、実際の需要者の認識としても、出 5 所の混同が生じることが裏付けられている。 ア 医師の認識 医師の回答者に対し、原告商品の形態と被告商品の形態とを同時に示 し、両者の関係を自由に回答させたところ、19.3%の呼吸器内科専 門医及び23.0%の一般内科医が、①2つの商品 師の認識 医師の回答者に対し、原告商品の形態と被告商品の形態とを同時に示 し、両者の関係を自由に回答させたところ、19.3%の呼吸器内科専 門医及び23.0%の一般内科医が、①2つの商品が同一の製造元によ 10 る、②2つの商品が同一のシリーズに属する、③一方が他方の派生品に 当たる旨の回答をした(甲28の別紙2〔36頁〕)。 さらに、両者について用法・用量、容量、成分含有量又は効果が異な るとの回答(2つの商品が同じシリーズの製品であることを前提とする と解される。)を加えると、原告商品と被告商品との間に何らかの関連 15 性があると回答した医師の割合は、呼吸器内科専門医について21. 0%、一般内科医について34.0%に達した。 また、医師の回答者に対し、被告商品の形態を示して、両者の関係を 選択肢から回答させたところ、被告商品が原告商品の販売元と関連を有 することを意味する回答の合計の割合は、呼吸器内科専門医について3 20 7.1%、一般内科医について43.5%に達した(甲28の別紙2 〔38頁〕)。 イ 患者の認識 患者に対し、原告商品及び被告商品の形態を同時に示し、両者の関係を尋 ねたところ、24.4%の患者が、①2つの商品が同一の製造元による、② 25 2つの商品が同一のシリーズに属する、③一方が他方の派生品に当たる旨の 62 回答をした(甲29の別紙2〔41頁〕)。 さらに、両者について用法・用量、容量、成分含有量又は効果が異なると の回答(2つの商品が同じシリーズの製品であることを前提とする。)を加 えると、両者に何らかの関連性があると回答した患者の割合は、37.1% に達した。この結果は、需要者である患者において、実際に出所の混同が生 5 じていることを示している。 (被告ら る。)を加 えると、両者に何らかの関連性があると回答した患者の割合は、37.1% に達した。この結果は、需要者である患者において、実際に出所の混同が生 5 じていることを示している。 (被告らの主張) ⑴ 患者は需要者に当たらないこと ア 患者は、医師の処方箋なしには医療用医薬品を購入することはできない から、医療用医薬品における需要者は医師又は薬剤師であって、患者は需 10 要者には当たらない。多くの裁判例においても、患者はせいぜい「従たる 需要者」程度に位置づけられており、医師や薬剤師を需要者として混同の おそれの有無が判断されている。 イ また、患者は、先発薬か後発薬かの希望を述べることはあっても、実際 に吸入器の形態を見て医療用医薬品を選択するという取引の実情は存在し 15 ない。また、患者が吸入器の形態を見た上でAGを選択するという取引の 実情も存在しない。 ウ さらに、患者は、通常、どの調剤薬局にどのメーカーの後発薬の在庫が あるのかにつき情報を持っておらず、訪れた調剤薬局にある在庫に基づき 後発薬の調剤を受けるにすぎない。仮に、患者が後発薬を選択した場合で 20 あっても、どのメーカーの製品かさえ選択することはできない。 ⑵ 混同のおそれがないこと ア 取引の実情 混同については、取引の実情の下において、取引者、需要者が、両者の 外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似 25 63 のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当 である。 処方のプロセス 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張し たような取引の実情(処方・調剤のプロセス)に照らせば、医師及び薬 5 剤師は、いずれも、 処方のプロセス 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張し たような取引の実情(処方・調剤のプロセス)に照らせば、医師及び薬 5 剤師は、いずれも、医療用医薬品の銘柄名や先発薬・後発薬の区別を明 確に認識しており、商品の形態によって医療用医薬品を識別しているわ けではない。このことは、複数の異なる吸入薬が同じ形状の吸入器を共 有していること(甲15)からも示されている。 ラベルの存在 10 最も目につくのは容器中央に大きく貼られたラベルであるところ、ラ ベルには大きな文字でそれぞれの銘柄名が記載され、そのデザインも異 なることから、混同のおそれはない。 外箱の存在 原告商品及び被告商品は、販売時には、外箱に入った状態で販売され 15 るところ、外箱には銘柄名等が明記されており、外箱に印刷されたデザ インも大きく異なるため、混同のおそれはない。 イ 狭義の混同のおそれ 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張した とおり、AGの存在を考慮してもなお、狭義の混同のおそれは認められな 20 い。 ウ 広義の混同のおそれ 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張したと おり、AGの存在を考慮してもなお、広義の混同のおそれは認められない。 ⑶ 本件アンケート調査の結果 25 64 争点2-1(原告商品の形態の出所識別機能の有無)において主張したと おり、本件アンケート調査の結果をもって、誤認混同の根拠とすることはで きない。 8 争点5(損害) (原告の主張) 5 以下のとおり、被告らの行為と相当因果関係のある損害額は、2億3886 万2925円を下らない。 ⑴ 不 の根拠とすることはで きない。 8 争点5(損害) (原告の主張) 5 以下のとおり、被告らの行為と相当因果関係のある損害額は、2億3886 万2925円を下らない。 ⑴ 不競法5条2項に基づく損害 被告らは、令和元年12月に被告商品の販売を開始したところ、それ以 降、原告商品の販売数量が減少しているため、当該減少幅が、被告商品の販 10 売数量に対応する。 そこで、同月から翌年5月までの各月について、原告商品の前年の販売数 量との差に基づき、被告商品の販売数量を算出した上で、当該販売数量に被 告商品の薬価(ブデホル30について1137.00/キット、ブデホル6 0について2135.90/キット)を乗じて、被告商品の売上高を算出す 15 ると、その額は●(省略)●円となる。 そして、被告商品の利益率は●(省略)●%を下らないため、原告の受け た損害額は、少なくとも●(省略)●円と推定される。 ⑵ 弁護士費用 原告は、被告らの行為により、本訴訟追行を余儀なくされた。これによ 20 り、原告は、弁護士費用及び弁理士費用として、少なくとも、上記損害賠償 請求額の10%に相当する2171万4811円の損害を被った。 (被告らの主張) 争う。 第5 当裁判所の判断 25 65 1 認定事実 前記前提事実に加え、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認 められる。 ⑴ 気管支喘息治療用の吸入薬 ア ICS 及びICS/LABA について 5 気管支喘息治療用の吸入薬としては、有効成分の観点から、主として 次の2種類が使用されている。ICS には、気管支の炎症を抑える効用があ り、LABA には、長時間にわたり気管支を拡張する効用がある。 ① ICS ( の吸入薬としては、有効成分の観点から、主として 次の2種類が使用されている。ICS には、気管支の炎症を抑える効用があ り、LABA には、長時間にわたり気管支を拡張する効用がある。 ① ICS (吸入ステロイド薬;Inhaled CorticoSteroid) ② ICS/LABA(吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬(Long-Acting 10 Beta 2 Agonist;LABA)との合剤)。 シムビコートについて シムビコートは、ブデゾニド(ICS)及びホルモテロールフマル酸塩水和 物(LABA)を有効成分とするものであり、ICS/LABAに分類される。 イ 治療ステップ 15 気管支喘息治療用の吸入薬は、治療ステップに応じて選択される。治療ス テップは、1ないし4に分類されることもあり、数字が大きくなるほど重い 症状向けである。 治療ステップ1では、長期管理薬として、ICSの使用が推奨されるが、治療 ステップ2では、ICSでは不十分な場合には、ICSに加えLABAその他の薬剤の 20 うち1剤を併用することとされている(併用に代えて、ICS/LABAの使用で もよい。以下同じ。)。 また、治療ステップ3では、ICSに加え、LABAその他の薬剤のうち1剤ある いは複数を併用することとされている。 (以上につき、甲1、8、14〔12~13頁、15~17頁〕、弁論の全趣 25 旨)。 66 ⑵ ICS/LABAの市場 ア 製剤の種類 我が国においては、次のとおり、現在では5種類のICS/LABAの製剤(以 下「ICS/LABA製剤」と総称する。)が販売されている(なお、薬剤の容量・ 吸入回数による区別は考慮しない。以下同じ。)。 5 ① アドエアディスカス(平成19年6 のICS/LABAの製剤(以 下「ICS/LABA製剤」と総称する。)が販売されている(なお、薬剤の容量・ 吸入回数による区別は考慮しない。以下同じ。)。 5 ① アドエアディスカス(平成19年6月販売開始) ② アドエアエアゾール(平成21年4月販売開始) ③ 原告商品(平成22年1月販売開始) ④ フルティフォーム(平成25年11月販売開始) ⑤ レルベアエリプタ(平成25年12月販売開始) 10 イ ICS/LABA製剤の吸入器の形状 ICS/LABA製剤の吸入器の形態は、次のとおりである。(甲14、弁論の全 趣旨) 15 ウ 原告商品のシェア 20 平成21年度以降のICS/LABA製剤市場における各製剤の売上高及びシェ アは、別紙売上高・シェア率推移表記載のとおりである。なお、「アドエア」 の売上げは、アドエアディスカス及びアドエアエアゾールの売上げを合計し たものであり、シムビコートの2019年度の売上げは、原告及びアステラ ス製薬による売上を合算したものである(甲26)。 25 これによれば、原告商品は、①平成21年の発売当初は、年間15億円の 67 売上高であり、市場シェア率も4.5%にとどまっていたものの、その後、 急速にその売上高を伸ばし、平成23年には、32.5%の市場シェア率を 占めるに至ったこと、②平成27年には、それまで市場シェア率1位であっ た「アドエア」と並び、翌年(平成28年)には、380億円の売上げを計 上し、アドエアの売上高(320億円)を超えるに至ったこと、③その後も 5 毎年、年間売上高は1位であり、平成24年以降は、常に40%近い市場シ ェア率を維持していることが認められる。 (以上につき、甲14〔6頁)、15の1〔17頁〕、甲16〔1 ったこと、③その後も 5 毎年、年間売上高は1位であり、平成24年以降は、常に40%近い市場シ ェア率を維持していることが認められる。 (以上につき、甲14〔6頁)、15の1〔17頁〕、甲16〔164~16 5頁〕、18~26、弁論の全趣旨) ⑶ ICSの市場 10 ア 我が国においては、次のとおり、現在では5種類のICSの製剤(以下「ICS 製剤」と総称する。)が販売されている。なお、パルミコートタービュヘイ ラーは、原告商品と同一の吸入器を使用している。 ① オルベスコインヘラー(pMDI) ② パルミコートタービュヘイラー(DPI) 15 ③ パルミコート吸入液(ネブライザー) ④ フルタイドディスカス(DPI) ⑤ フルタイドロタディスク(DPI) ⑥ フルタイドエアゾール(pMDI) ⑦ キュバールエアゾール(pMDI) 20 ⑧ アズマネックスツイストヘラー(アズマネックス。DPI) イ ICS製剤の吸入器の形態は、次のとおりである(フルタイドロタディスク 及びパルミコート吸入液を除く。)。 (以上につき、甲14、弁論の全趣旨) 68 5 10 ⑷ 原告による販促活動 ア 原告は、平成21年から令和元年7月30日までの間、アステラス製薬と 15 共同で、原告商品につきMRによるディテーリングを実施したところ、原告 によるディテーリング数は、●(省略)●回に及んだ。また、原告は、上記 の期間中、原告商品の宣伝のために、●(省略)●円のプロモーション活動 費を投入した。 イ 平成24年以降、別紙「掲載文献一覧表」のとおり、学会誌・専門誌に原 20 告商品の宣伝広 告は、上記 の期間中、原告商品の宣伝のために、●(省略)●円のプロモーション活動 費を投入した。 イ 平成24年以降、別紙「掲載文献一覧表」のとおり、学会誌・専門誌に原 20 告商品の宣伝広告が掲載された。 (以上につき、甲2、6、31、弁論の全趣旨) ⑸ 原告商品の形態 ア 保管時形態 原告商品の保管時形態は、別紙原告商品写真目録1のとおりであり、略円 25 筒状の赤色の回転グリップ部の上に白色のキャップが設置されたリップス 69 ティック型の形状である。そして、キャップは、①略円筒状の本体部と、② 上端に向かってやや先細りとなっている上部から構成されている。 略円筒状の本体部は、直径が約3.3cm、長さが5.2cmであり、上 部は、その上端部の直径が約2.5cm、長さが2.0cmである。したが って、キャップの全長は7.2cmとなる。 5 また、回転グリップ部は、長さ約1.2cmであり、垂直方向に長さ0. 8cmの溝が24本設けられている。 イ 使用時形態 全体形状 原告商品の使用時形態は、別紙原告商品写真目録2のとおりであり、略 10 円筒状の赤色の回転グリップ部の上に、白色の本体部及びマウスピース部 が設置され、全体として上に向かって先細りとなった略円筒状の形状であ る。 また、全長は8.0cmであり、本体部及びマウスピース部の長さは6. 5cm、回転グリップ部の長さは1.5cmである。 15 本体部の形状 本体部は、上方に向かってやや先細りとなった略円筒状の形状であり、 本体部の全長は、4.0cmである。 本体部の下端部分は、キャップをかみ合わせるために、やや直径が小さ くなっており、その周面にはらせん状のねじ山が形成されてい や先細りとなった略円筒状の形状であり、 本体部の全長は、4.0cmである。 本体部の下端部分は、キャップをかみ合わせるために、やや直径が小さ くなっており、その周面にはらせん状のねじ山が形成されている(以下、 20 この下端部分を「下端部」という。)。 本体部の正面左上には、上部空気取入口として細長い陥凹部が形成され ているほか、正面右上にも陥凹部が設けられ、その底部の小窓に、薬の残 量を示すカウンターが表示されている。また、下端部の正面右側には、下 部空気取入口として、略長方形状の溝孔が形成されている。 25 マウスピース部の形状 70 マウスピース部は、略円錐形の下部と略扁平管形の上部が組み合わされ た形状であり、全長は2.5cmである。 略扁平管形の上部は、断面の長径が約2.5cm、短径が約1.6cm であり、略円錐形の下部の直径は、上端付近では2.7cm、下端付近で は2.9cmである。 5 回転グリップ部の形状 回転グリップ部は、上部の直径が下部の直径よりやや小さいため、上部 と下部に段差のある略円筒状となっており、下部の直径は3.4cmであ る。キャップを閉めると、この上部は隠れてしまうため、保管時形態にお いては、下部だけを認識することができる(下部の形態は、上記アにおい 10 て認定した回転グリップ部の形状と一致する。)。 (以上につき、前提事実、弁論の全趣旨) ⑹ 本件アンケート調査の結果 原告による本件アンケート調査の結果の概要は、次のとおりである。 なお、本件アンケート調査においては、原告商品その他のICS/LABA製剤(被 15 告商品を含む。)につき、ラベルを剥がした状態でアンケート対象者に示して いる。 ア 6 のとおりである。 なお、本件アンケート調査においては、原告商品その他のICS/LABA製剤(被 15 告商品を含む。)につき、ラベルを剥がした状態でアンケート対象者に示して いる。 ア 67.4%の呼吸器内科専門医及び57.0%の一般内科医が、患者への 吸入薬の紹介又は説明等に際し、吸入器の形状に言及していると回答した。 また、87.3%の呼吸器内科専門医及び81.5%の一般内科医が、患 20 者に対し、吸入器を用いて使用方法を説明していると回答した。(甲28の 別紙2〔11、12頁〕) イ ICS/LABA製剤のうち、被告商品を除いた5つの先発薬の形態を医師に示し たところ、93.9%の呼吸器内科専門医及び87.5%の一般内科医が原 告商品を知っていると回答した。 25 また、89.0%の呼吸器内科専門医及び82.5%の一般内科医が、実 71 際に原告商品を処方していると回答した。(甲28の別紙2〔18頁〕) ウ 93.4%の呼吸器内科専門医及び83.0%の一般内科医が、原告商品 の形態から、原告商品の販売名又は製造販売元を正しく回答することができ た。(甲28の別紙2〔19頁〕) エ 原告商品の形態を患者に示したところ、59.8%の患者は、原告商品を 5 認知している旨回答した。(甲29の別紙2〔15頁〕) また、36.0%の患者は、原告商品の形態から、原告商品の販売名又は 販売会社のいずれかを回答することができた。(甲29の別紙2〔21頁〕) オ 26.6%の患者は、普段が使用している吸入薬を医師に説明するに際し、 その形状を説明すると回答した。(甲29の別紙2〔10頁〕) 10 また、医師についても、呼吸器内科専門医の52.5%及び一般内科医の 43.5%が、患者は、普段使用している吸入器が何である 際し、 その形状を説明すると回答した。(甲29の別紙2〔10頁〕) 10 また、医師についても、呼吸器内科専門医の52.5%及び一般内科医の 43.5%が、患者は、普段使用している吸入器が何であるかについて、そ の形態によって説明すると回答した。(甲28の別紙2〔14頁〕) ⑺ 処方・調剤の実情 医療用医薬品の処方や調剤に当たっては、専門家である医師及び薬剤師にお 15 いて、患者の生命身体の安全に関わるものとして、細心の注意力をもって医療 用医薬品を選択することが当然に要求され、患者も薬剤師の指示説明を十分踏 まえて医療医薬品を選択している。 ア 医師による処方の実情 医師は、処方する医療用医薬品を処方箋に記載するに当たって、①医療用 20 医薬品の具体的な銘柄を指定して記載する方法(銘柄名処方)と、②医療用 医薬品の一般的名称に剤形及び含量を付加する形で記載する方法(一般名処 方)のいずれかを選択することができる。そして、処方箋の様式である「様 式第二号」(乙22)は、別紙のとおりであり、「個々の処方薬について、 後発医薬品(ジェネリック医薬品)への変更に差し支えがあると判断した場 25 合には、「変更不可」欄に「レ」又は「×」を記載し、「保険医署名」欄に 72 署名又は記名・押印すること。」という記載が存在する。 そのため、医師が、①処方する医薬品名として、先発薬の銘柄を記載した 場合(銘柄名処方)であっても、「変更不可」欄に「レ」又は「×」を記載 しなかったときは、薬剤師は、処方薬に変えて、後発薬を調剤することがで きる(乙17)。これに対し、②医師が、処方する医薬品名として、先発薬 5 の銘柄を記載し(銘柄名処方)、かつ、「変更不可」欄に「レ」又は「×」 を記載した場合には、薬剤師は、処方箋に記載された先発薬を調剤する 7)。これに対し、②医師が、処方する医薬品名として、先発薬 5 の銘柄を記載し(銘柄名処方)、かつ、「変更不可」欄に「レ」又は「×」 を記載した場合には、薬剤師は、処方箋に記載された先発薬を調剤すること になる。また、③医師が、処方する医薬品名として、一般的名称に剤形及び 含量を付加する形で処方箋に記載した場合(一般名処方)、薬剤師は、処方 薬と一般的名称が同一である成分を含有する医薬品を調剤することができ 10 る。 上記のいずれの場合においても、医師は、有効成分、銘柄名、先発薬又は 後発薬の区分を明確に認識した上、処方する医療医薬品を選定し、これを処 方箋に記載する。 イ 薬剤師による調剤の実情 15 薬剤師による調剤は、上記アに記載した医師による処方の方法に依存する ところ、まず、①医師が銘柄名処方をしつつも、「変更不可」欄に「レ」又 は「×」を記載しなかったときは、薬剤師は、後発薬を調剤することが可能 である。その場合には、薬剤師は、後発薬を希望するか否かにつき患者の意 向を確認した上で、後発薬を調剤する。 20 また、②医師が銘柄名処方をし、かつ、「変更不可」欄に「レ」又は「×」 を記載したときには、薬剤師において、銘柄が指定された先発薬を調剤する 以外の選択肢は存在しない。 さらに、③医師が一般名処方をした場合には、薬剤師は、処方薬と一般的 名称が同一の成分を含有する医薬品(先発薬又は後発薬)を調剤することが 25 できる。そして、薬剤師は、後発薬を希望するか否かにつき患者の意向を確 73 認した上で、後発薬を調剤するよう努めることになる。 そして、後発薬への変更調剤を行うに当たっては、薬剤師は、当該後発薬 を選択した基準(例えば、当該後発薬に係る薬価、製造販売業者における製 造、供給、情 発薬を調剤するよう努めることになる。 そして、後発薬への変更調剤を行うに当たっては、薬剤師は、当該後発薬 を選択した基準(例えば、当該後発薬に係る薬価、製造販売業者における製 造、供給、情報提供に係る体制及び品質に関する情報開示の状況等)を患者 に対して説明することとされている。その上で、保険薬局において、銘柄名 5 処方に係る処方薬につき後発薬への変更調剤を行ったときや、一般名処方に 係る処方薬について調剤を行ったときは、調剤した薬剤の銘柄等について、 原則として、当該調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供する 必要がある。 上記のいずれの場合においても、薬剤師は、有効成分、銘柄名、先発薬又 10 は後発薬の区分を明確に認識した上、調剤を行っている。 ウ 患者による医療医薬品の選択 患者は、調剤薬局において、一般に先発薬と後発薬のいずれを希望するの かを述べるにとどまり、それ以上に、医療医薬品の形態そのものを見比べる などして医療医薬品を当該形態自体によって選択することはない。 15 (以上につき、乙17、25、28) ⑻ 原告商品に関する知的財産法による保護 ア 特許権 配合剤に関する特許 原告商品の配合剤に関しては、平成4年12月7日、発明の名称を「新 20 規な配合」とする特許に係る出願がされ、平成14年8月23日に登録さ れた(特許第3342484号)ものの、平成22年10月20日に特許 期間が延長された後、平成29年12月7日に存続期間が満了した。(乙 3、弁論の全趣旨) 製剤に関する特許 25 原告商品の製剤に関しては、平成10年1月13日、発明の名称を「0. 74 28から0.38G/MLの流動かさ密度を有する 3、弁論の全趣旨) 製剤に関する特許 25 原告商品の製剤に関しては、平成10年1月13日、発明の名称を「0. 74 28から0.38G/MLの流動かさ密度を有する吸入用新規製剤、その 製剤を調製する方法及びその使用」とする特許に係る出願がされ、平成2 2年5月14日に登録された(特許第4512204号)ものの、平成3 0年1月13日に存続期間が満了した。(乙4) イ 意匠権 5 原告商品に係る吸入器の形態に関しては、平成12年1月28日、意匠に 係る物品を「吸入器」とする意匠権(意匠登録1068084号。以下、こ の意匠権に係る意匠を「本件意匠」という。)が登録されたものの、平成2 7年1月28日に存続期間が満了した。 また、本件意匠については、平成12年1月28日、2件の類似意匠が登 10 録され(登録番号1068084号の類似意匠登録第1号及び第2号)たも のの、同様に、平成27年1月28日に存続期間が満了した。 (以上につき、乙12ないし14) 2 争点1(不競法の適用の可否)について 被告らは、①被告商品は、原告商品の後発薬として厚生労働省の承認を受けた 15 ものである以上、被告商品と原告商品の吸入器の形態が共通性を有することは、 ある意味必然であることや、②被告商品は、原告商品に係る特許権の保護期間の 終了後に、ジェネリック医薬品として厚生労働省の製造販売承認を取得して適法 に上市されたものであるところ、本件訴訟の実質は、後発薬の参入を阻害するた めに、不正競争の名の下に、既に期間満了した知的財産権による保護期間の永続 20 的な延長を求めるものであり、公正な競争を確保するという不競法の目的から逸 脱するものであることを根拠に、本件においては、不競法を適用する余地がない 期間満了した知的財産権による保護期間の永続 20 的な延長を求めるものであり、公正な競争を確保するという不競法の目的から逸 脱するものであることを根拠に、本件においては、不競法を適用する余地がない 旨を主張する。 しかしながら、不競法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示(人の業務に 係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を 25 表示するものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表示を使用等するこ 75 とをもって、不正競争に該当する旨規定しているところ、適用除外等を定める不 競法19条その他の不競法の規定によっても、同法2条1項1号において、後発 薬として製造販売承認を受けている医療用医薬品の形態の適用を除外する旨の 規定はなく、被告ら主張に係る事情は、同号に定める要件の解釈適用において考 慮されるべきものといえる。現行法上、物の無体物としての面の利用に関しては、 5 特許法、意匠法、著作権法、商標法、不競法等の知的財産権関係の各法律が、そ れぞれの知的財産権又は法的利益の発生原因、内容、範囲、消滅原因等を定め、 その範囲、限界を明確にしているのであるから、被告ら主張に係る上記特許権に 関する事情をもって直ちに不競法そのものの適用を否定するのは相当ではなく、 知的財産権関係の各法律の上記区分を前提として、不競法における当該規定の解 10 釈適用において上記事情を踏まえた判断がされるべきものと解するのが相当で ある。 したがって、被告らの主張は、採用することができない。 3 争点2及び4(原告商品の形態の商品等表示該当性及び混同のおそれ) ⑴ 商品等表示該当性及び混同のおそれ 15 ア 不競法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示と同一又は類似の商品等 表示を使用等することをもって、不正競争に 品等表示該当性及び混同のおそれ) ⑴ 商品等表示該当性及び混同のおそれ 15 ア 不競法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示と同一又は類似の商品等 表示を使用等することをもって、不正競争に該当する旨規定している。この 規定は、周知な商品等表示の有する出所表示機能を保護するという観点から、 周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混 同させて顧客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保する 20 ものと解される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味 を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示 機能を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態が商 標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能を発揮するような 特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないというべきである。そう 25 すると、商品の形態は、①客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(以 76 下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、②特定の事業者によって 長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強力な宣伝 広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示する ものとして周知(以下「周知性」という。)であると認められる特段の事情 がない限り、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するの 5 が相当である。 そして、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のもの と誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止するという同号の上記趣旨目 的に鑑みると、商品の形態が、取引の際に出所表示機能を有するものではな いと認められる場合には、特定の出所を表示するものとして特別顕著性又は 10 周知性があるとはいえず、商品等表示に該当しない 旨目 的に鑑みると、商品の形態が、取引の際に出所表示機能を有するものではな いと認められる場合には、特定の出所を表示するものとして特別顕著性又は 10 周知性があるとはいえず、商品等表示に該当しないと解するのが相当である。 イ これを本件についてみると、前記認定事実によれば、①医師及び薬剤師は、 医療用医薬品の処方や調剤に当たり、専門家である患者の生命身体の安全に 関わるものとして細心の注意力をもって、医療用医薬品を選択することが当 然に要求され、患者もその指示説明を十分踏まえて医薬品を選択すること、 15 ②医師は、銘柄名処方又は一般名処方により、医療用医薬品を処方するもの であるところ、銘柄名処方においては、医療用医薬品の銘柄により処方薬が 特定され、また、一般名処方においては、医療用医薬品の成分名により処方 薬が特定されており、いずれの場合においても、医師は、有効成分、銘柄名、 先発薬又は後発薬の区分を明確に認識した上、処方する医療医薬品を選定し、 20 これを処方箋に記載すること、③薬剤師は、医療用医薬品を調剤するに当た って、銘柄名処方がされており、かつ、「変更不可」欄に「レ」又は「×」 が記載されているときは、後発薬を選択する余地はなく、他方、銘柄名処方 がされているものの、「変更不可」欄に「レ」又は「×」が記載されていな い場合や、一般名処方がされている場合には、後発薬の調剤が可能となると 25 ころ、いずれの場合においても、薬剤師は、有効成分、銘柄名、先発薬又は 77 後発薬の区分を明確に認識した上、調剤を行っていること、④患者は、調剤 薬局において、一般に先発薬と後発薬のいずれを希望するのか述べるにとど まり、薬剤師の指示説明を十分踏まえて医療医薬品を選択し、それ以上に、 医療医薬品の形態そのものを見比べるなどして医療医薬品を当該形態 局において、一般に先発薬と後発薬のいずれを希望するのか述べるにとど まり、薬剤師の指示説明を十分踏まえて医療医薬品を選択し、それ以上に、 医療医薬品の形態そのものを見比べるなどして医療医薬品を当該形態自体 によって選択することはないこと、以上の事実が認められる。 5 上記認定事実によれば、医師、薬剤師とも、有効成分、銘柄名、先発薬又 は後発薬の区分を明確に認識した上で、医師にあっては、処方する医療医薬 品を処方箋に記載し、薬剤師にあっては、医師からの当該処方に基づき医療 医薬品を調剤していることが認められ、また、患者は、調剤薬局において、 一般に先発薬と後発薬のいずれを希望するのか述べるにとどまり、それ以上 10 に、医療医薬品の形態そのものを見比べるなどして医療医薬品を当該形態自 体によって選択することはないことが認められる。 これらの事情の下においては、原告商品の需要者である医師及び薬剤師は、 医療医薬品を選択するに当たり、原告商品の形態によってその出所を識別す るものではなく、仮に患者も原告商品の需要者であるとしても、上記認定は 15 同様に当てはまるものといえる。 このような取引の実情を踏まえると、原告商品の形態は、一定程度周知性 があるとしても、取引の際に出所表示機能を有するものではなく、商品等表 示に該当しないと解するのが相当である。 仮に、原告商品の形態が商品等表示に該当するという見解に立ったとして 20 も、上記認定事実によれば、原告商品の需要者である医師や薬剤師は、患者 の生命身体の安全に関わるものとして細心の注意力をもって、有効成分、銘 柄名、先発薬又は後発薬の区分を明確に認識した上、医療用医薬品の処方や 調剤をするのであり、患者も薬剤師の指示説明を十分踏まえて医療医薬品を 選択していることからすると、被告商品の形態自体が、原告 、銘 柄名、先発薬又は後発薬の区分を明確に認識した上、医療用医薬品の処方や 調剤をするのであり、患者も薬剤師の指示説明を十分踏まえて医療医薬品を 選択していることからすると、被告商品の形態自体が、原告商品と混同を生 25 じさせるものではないことは、明らかである。 78 したがって、被告が被告商品を製造又は販売する行為は、不競法2条1項 1号の不正競争行為に該当するものと認めることはできない。 ⑵ 原告の主張に対する判断 ア 原告は、医師が処方薬の記載を決定する過程において、商品の形態が出所 の識別に使用されているほか、AGの存在を考慮した場合、①被告商品が原 5 告商品のAGであるという広義の混同をするおそれがあり、②AGは先発薬 と同じ生産者によって供給されており、需要者が被告商品を原告商品のAG であると誤認することにより、狭義の混同をするおそれがある旨主張する。 しかしながら、弁論の全趣旨によれば、現在に至るまで、原告商品のAG は一切販売されていないことが認められることからすると、需要者において、 10 現実には存在しない原告商品のAGと、被告商品を誤認混同する余地はない。 のみならず、原告商品の形態は、一定程度周知性があるとしても、取引の 際に出所表示機能を有するものではなく、被告商品の形態による出所の混同 を生じさせるものとはいえないことは、上記において説示したとおりである。 そうすると、広義、狭義を問わず、被告商品が原告商品のAGとして販売 15 された旨の混同が生じるものと認めることはできず、原告の主張は、前記認 定に係る取引の実情を正解しないものに帰する。したがって、原告の主張は、 採用することができない。 イ 原告は、医師及び薬剤師は常に細心の注意を払ってAGか否かを書籍に当 たって確認しているとは限らず、その証拠 引の実情を正解しないものに帰する。したがって、原告の主張は、 採用することができない。 イ 原告は、医師及び薬剤師は常に細心の注意を払ってAGか否かを書籍に当 たって確認しているとは限らず、その証拠に、実際に、平成22年から令和 20 3年までの間に、外観、外形、形状又は形態の類似に伴う事故が50件以上 も発生している旨主張する。 この点につき、原告は、上記主張を裏付ける証拠として陳述書(甲92) を提出しているところ、同陳述書は、医師や薬剤師が一般に求められる注意 力を欠いたため、薬剤の取り違えが生じたという、いわゆる「ヒヤリ・ハッ 25 ト事例」を指摘するものと認められる。 79 他方、不競法2条1項1号にいう混同とは、需要者において一般に払われ る注意力の下で判断されるべきところ、専門家である医師及び薬剤師は、患 者の生命身体の安全に関わるものとして細心の注意力をもって医療医薬品 を選別することが要求されていることは、上記において説示したとおりであ る。 5 そうすると、原告の主張は、上記にいう一般の需要者を前提とするものと はいえず、その前提を欠く。したがって、原告の主張は、採用することはで きない、 ウ 原告は、本件アンケート調査の結果によれば、実際に、原告商品と被告商 品との間に何らかの関連性があると回答した者の割合が一定以上であった 10 として、混同のおそれがある旨主張する。 しかしながら、本件アンケート調査は、医療用医薬品に係る取引の実情を 考慮することなく、単純に、原告商品と被告商品の形態(ラベルを剥がした 状態)を比較したものであるから、必ずしも取引の際における需要者の医療 用医薬品に関する識別又は選択の実情を示すものとはいえない。そうすると、 15 原告の主張を踏まえても、上記判断を左右するに至らない。したがって、原 告 あるから、必ずしも取引の際における需要者の医療 用医薬品に関する識別又は選択の実情を示すものとはいえない。そうすると、 15 原告の主張を踏まえても、上記判断を左右するに至らない。したがって、原 告の主張は、採用することができない。 エ 原告は、①患者が医師から吸入器の説明を受ける際に、GEの吸入器が先 発薬のそれと酷似しているため、AGであると誤信して後発薬の使用を受け 入れ、その結果一般名処方がされる場合や、②患者が薬局で吸入器を選択す 20 る際にも、形態の類似性によりGEをAGであると誤信して、誤ってGEを 選択する事態が生じ得る旨主張する。 しかしながら、前記認定事実によれば、薬剤師は、患者に対し、後発薬へ の変更調剤を行うなどに当たっては、当該後発薬を選択した基準として、薬 剤師において薬価や品質に関する情報開示の状況等を説明することなどが 25 必要とされている実情を踏まえると、患者が吸入器の形態のみによってAG 80 であると誤信するものと直ちに認めることはできない。そもそも、上記認定 に係る取引の実情に照らすと、患者は、調剤薬局において、一般に先発薬と 後発薬のいずれを希望するのか述べるにとどまり、それ以上に、医療医薬品 の形態そのものを見比べるなどして医療医薬品を当該形態自体によって選 択することはないことは、上記において説示したとおりである。そうすると、 5 原告の主張は、可能性を指摘するにとどまり、上記認定に係る取引の実情に 照らし、現に原告にいう事態が生じることを認めるに足りないというべきで ある。したがって、原告の主張は、採用することはできない。 オ 原告は、調剤薬局によっては扱っている後発薬が異なるところ、患者は、 調剤薬局を選択することにより、後発薬メーカーの選択を行うことができる 10 旨主張する。 しかしながら、 ことはできない。 オ 原告は、調剤薬局によっては扱っている後発薬が異なるところ、患者は、 調剤薬局を選択することにより、後発薬メーカーの選択を行うことができる 10 旨主張する。 しかしながら、上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、一般に患者は、 調剤薬局における後発薬の在庫の有無及びその種類につき、情報を持ってお らず、後発薬を希望する場合であっても、その際訪れた調剤薬局に在庫のあ る後発薬の調剤を受けるにすぎないものと認めるのが相当である。仮に、予 15 め調剤薬局の在庫を検討した上で医療医薬品を選択する患者が存在したと しても、事前に在庫まで確認した患者が、吸入器の形態のみに着目し、原告 商品と被告商品を混同するというのは、極めて不自然である。そうすると、 原告の主張は、一般の需要者を前提とするものではなく、上記判断を左右す るに至らない。したがって、原告の主張は、採用することができない。 20 カ その他に、原告の準備書面における主張につき、原告提出に係る証拠を踏 まえ改めて検討しても、上記において繰り返し説示したとおり、前記認定に 係る取引の実情を踏まえると、上記判断を左右するに至らない。したがって、 原告の主張は、いずれも採用することができない。 ⑶ 特別顕著性(争点2-3) 25 上記において説示したところによれば、その余の点につき判断するまでもな 81 く、被告が被告商品を製造又は販売する行為は、不競法2条1項1号の不正競 争行為に該当するものと認めることはできない。もっとも、本件の審理経過に 照らし、念のため、商品等表示該当性を肯定するための特別顕著性の要件につ いても、以下検討する。 ア 原告は、原告商品につき、①保管時形態にあっては、略円筒状の本体部と、 5 本体部の上方から上端に向けてやや先細の上部と、本 示該当性を肯定するための特別顕著性の要件につ いても、以下検討する。 ア 原告は、原告商品につき、①保管時形態にあっては、略円筒状の本体部と、 5 本体部の上方から上端に向けてやや先細の上部と、本体部の下方の回転グリ ップ部とを備えたリップスティック型である点に特徴があり、②使用時形態 にあっては、略円錐形状の本体部と本体部上方のマウスピース部(円錐形部 と扁平管部を備える。)、本体部下方の回転グリップ部を備え、本体部の正 面右上部には小窓及びカウンターが設けられており、マウスピースの円錐形 10 部及び本体部が一体となって滑らかな周面を形成し、木管楽器用のマウスピ ース型の形状を有している点に特徴がある旨主張する。 イ そこで検討するに、前記前提事実によれば、原告商品は、①保管時形態は、 略円筒状の本体部と、本体部の上方にある、上端に向けてやや先細りの上部 と、本体部の下方にある回転グリップ部とを備えた、直立するリップスティ 15 ック型の形状であること、②使用時形態は、略円錐形状の本体部と、本体部 の上方にあるマウスピース部(略円錐形状の下部及び略扁平管状の上部から 成る。)、本体部の下方にある回転グリップ部を備え、本体部の正面右上部 には小窓及びカウンターが設けられており、マウスピースの円錐形部及び本 体部が一体となった、全体として木管楽器のマウスピース型の形状であるこ 20 とが認められる。 他方、前記認定事実によれば、①ICS/LABA製剤の市場においては、原告商 品及び被告商品以外には、マウスピース型の吸入器は存在しないものの、ICS 製剤の市場についてみると、リップスティック型の吸入器であるアズマネッ クスが存在すること、②アズマネックスの保管時形態は、略円筒状の回転グ 25 リップ部の上に、キャップがかぶさった、直立するリップスティック型の形 てみると、リップスティック型の吸入器であるアズマネッ クスが存在すること、②アズマネックスの保管時形態は、略円筒状の回転グ 25 リップ部の上に、キャップがかぶさった、直立するリップスティック型の形 82 状であり、全体として略円筒状であるものの、キャップ部分は、上3分の2 の半径は下3分の1の半径よりもやや小さく、その限度でやや先細りなって いること、③アズマネックスの使用時形態は、略円筒状の回転グリップ部の 上部に略円錐状のマウスピース部が備わった、直立する略円錐状の形状であ り、マウスピース部は、先端がやや先細りであり、上端において略扁平管形 5 の吸入口を有する形状であることが認められる。 上記認定事実によれば、①原告商品の保管時形態に係る形状のうち、本体 部が略円筒状であり、かつ、本体部は上方に向けてやや先細りになっている という点、本体部の下方に回転グリップ部が存在する点、全体としてリップ スティック型の形状であるという点、②原告商品の使用時形態に係る形状の 10 うち、本体部が略円錐形状であり、本体部の上方にあるマウスピース部(上 端において略扁平管形である。)、本体部の下方にある回転グリップ部を備 えているという点、以上については、既に、アズマネックスが備えていた特 徴であるということができる。 そうすると、アズマネックスは、①原告商品の保管時形態において特徴が 15 あると原告が指摘する形状について、その全てを備えているとともに、②原 告商品の使用時形態において特徴があると原告が指摘する形状についても、 その大半を備えており、その共通する形態は、いずれもごくありふれたもの と認められる。したがって、原告商品は、保管時形態及び使用時形態のいず れにおいても、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有するものと 20 いうことはできない。 は、いずれもごくありふれたもの と認められる。したがって、原告商品は、保管時形態及び使用時形態のいず れにおいても、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有するものと 20 いうことはできない。 以上によれば、原告商品の形態には、特別顕著性があるものと認めること はできない。 83 5 10 ウ これに対し、原告は、特別顕著性を判断するに際して比較対象とする同種 商品の範囲につき、ICS/LABA製剤の他の製品とのみ比較すべきであって、ICS 15 製剤であるアズマネックスは、比較対象とすべきではなく、仮にアズマネッ クスを比較対象の範囲に含めるとしても、アズマネックスには、回転グリッ プ部にカウンターが設けられているため、当該カウンターがない原告商品に は、際立った特徴が存在する旨主張する。 しかしながら、前記認定事実によれば、気管支喘息治療用の吸入薬として 20 は、主として、ICS及びICS/LABAの2種類が使用されており、治療ステップ1 ではICSが推奨されるが、治療ステップ2以上では、ICSとLABAの併用又は ICS/LABAが推奨されるため、両者は需要者が共通することが認められる。 そうすると、比較対象とする同種商品の範囲を検討するに当たっては、そ の取引の際に需要者が共通する以上、ICS製剤の製品を除外してICS/LABA製 25 剤に限定するのは、相当ではない。 84 また、アズマネックスに設けられたカウンターは、証拠(甲55)及び弁 論の全趣旨によれば、上記の写真からも明らかなとおり、製品の底部に小さ く表示されたものにすぎず、その位置や大きさに照らして、原告商品やアズ マネックスに接した需要者に対して強い印象を与えるものとはいえ 論の全趣旨によれば、上記の写真からも明らかなとおり、製品の底部に小さ く表示されたものにすぎず、その位置や大きさに照らして、原告商品やアズ マネックスに接した需要者に対して強い印象を与えるものとはいえない。そ うすると、上記カウンターがない原告商品に際立った特徴を認めることはで 5 きず、原告の主張は、その前提を欠く。 したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 エ その他に、原告の準備書面における主張につき、原告提出に係る証拠を踏 まえ改めて検討しても、原告商品とアズマネックスの形態及び需要者の共通 性に照らし、上記判断を左右するに至らない。したがって、原告の主張は、 10 いずれも採用することができない。 以上によれば、原告商品は、特別顕著性を有しないというべきである。 4 その他 その他に、原告の準備書面における主張につき、原告提出に係る証拠を踏ま え改めて検討しても、上記において繰り返し説示したとおり、前記認定に係る 15 取引の実情等を踏まえると、上記判断を左右するに至らない。したがって、原 告の主張は、いずれも採用することができない。 第6 結論 よって、原告の請求は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のと おり判決する。 20 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 25 85 中 島 基 至 裁判官 5 小 田 誉 太 郎 裁判官 10 古 賀 千 尋 15 86 (別紙) 被告商品目録 1 形状変更前のもの(以下、被告商品 10 古 賀 千 尋 15 86 (別紙) 被告商品目録 1 形状変更前のもの(以下、被告商品1-1及び1-2を併せて「被告商品1」と いう。) 5 ⑴ 被告商品1-1 販売名を「ブデホル吸入粉末剤30吸入「JG」」とする医療用医薬品(製造 番号が108030未満のもの) ⑵ 被告商品1-2 販売名を「ブデホル吸入粉末剤60吸入「JG」」とする医療用医薬品(製造 10 番号が101040未満のもの) 2 形状変更後のもの(以下、被告商品2-1及び2-2を併せて「被告商品2」と いい、被告商品1と併せて「被告商品」という。) ⑴ 被告商品2-1 15 販売名を「ブデホル吸入粉末剤30吸入「JG」」とする医療用医薬品(製造 番号が108030以降のもの) ⑵ 被告商品2-2 販売名を「ブデホル吸入粉末剤60吸入「JG」」とする医療用医薬品(製造 番号が101040以降のもの) 20 25 87 (別紙) 被告商品写真目録1 1 保管時形態 5 10 (被告商品1-1) (被告商品1-2) 2 使用時形態 15 20 (被告商品1-1) (被告商品1-2) 25 88 (別紙) 被告商品写真目録2 (写真は、被告商品2-2のものであるが、被告商品2-1についても、 ラベル以外の形状は同一である。) 5 1 保管時形態 10 15 2 使用時形態 20 25 以外の形状は同一である。) 5 1 保管時形態 10 15 2 使用時形態 20 25 89 (別紙) 原告商品目録 1 販売名を「シムビコートタービュヘイラー30吸入」とする医療用医薬品 5 2 販売名を「シムビコートタービュヘイラー60吸入」とする医療用医薬品 10 15 20 25 90 (別紙) 原告商品写真目録 1 保管時形態 5 10 シムビコート30 シムビコート60 2 使用時形態 15 20 シムビコート30及びシムビコート60で共通 91 (別紙) 原告商品構成態様目録 1 保管時形態 ⑴ 基本的構成態様 5 A 略円筒状の本体部と、本体部の上方から上端に向けてやや先細の上部と、 本体部の下方に位置し周面に軸方向に等間隔に溝孔を設けた回転グリップ 部とを備えたリップスティック型の態様である。 ⑵ 具体的構成態様 10 B 本体部の直径約3.3cm、長さが5.2cmであり、上部の上端での直 径が2.5cm、長さが2.0cmであり、回転グリップ部の厚さが1.2 cmであり、全体の長さが8.4cmである。 C 本体部及び上部は白色であり、回転グリップ部は赤色である。 D 本体の下端から約1.5cmの領域は、直径が約3.4cmに僅かに膨ら 15 んでいる。 E 上部の外周面は、凹凸部のない滑らかな曲面を形成している。 F 回転グリップ部の溝 部は赤色である。 D 本体の下端から約1.5cmの領域は、直径が約3.4cmに僅かに膨ら 15 んでいる。 E 上部の外周面は、凹凸部のない滑らかな曲面を形成している。 F 回転グリップ部の溝は24本であり、長さは0.8cmである。 2 使用時形態 20 ⑴ 基本的構成態様 a 略円錐形状の本体部と、本体部の上方に位置し略円錐形状の部分(下側; 「円錐形部」)と円みを帯びた略扁平管状(上側;「扁平管部」)とが組 み合わされたマウスピース部と、本体部の下方に位置し周面に軸方向に等 間隔に溝孔を設けた略円盤状の回転グリップ部とを備え、本体部の正面右 25 上には、水平方向に掘込加工様の陥凹部が設けられ、その底面は、略台形 92 (上底が本体部の軸側に位置し、下底がややアーチ状に膨らみ本体部の円 錐形の周面側に位置する。)にくり抜かれて小窓を形成し、当該小窓に薬 の残量を示す数字又は記号が表示されるカウンターが設けられた、木管楽 器用のマウスピース型の態様である。 5 ⑵ 具体的構成態様 b マウスピース部の長さが2.5cm、本体部の長さが4.0cm、回転 グリップ部の長さ1が1.5cm、全体の長さが8.0cmである。マウス ピース部のうち扁平管部の断面長軸の径は、約2.5cmであり、断面短 軸の径は、約1.6cmである2。マウスピース部のうち円錐形部の直径は、 10 約2.7cmである。本体部の略円錐形状について、上端付近での直径は 2.7cmであり、下端付近での直径は2.9cmである。回転グリップ 部直径は、3.4cmである。 c マウスピース部及び本体部は白色であり、回転グリップ部は赤色である。 カウンターは白色であり、数字及び記号は黒色である。 15 d マウスピース部の円錐形部と本体部とは、一体として一つの円錐形を形 成 ウスピース部及び本体部は白色であり、回転グリップ部は赤色である。 カウンターは白色であり、数字及び記号は黒色である。 15 d マウスピース部の円錐形部と本体部とは、一体として一つの円錐形を形 成する。 e マウスピース部の扁平管部の断面長軸側の側面は、dの円錐形の側面と 一体となって滑らかな周面を形成し、断面短軸側の側面は、dの円錐形と の境界で段差を形成する 20 f マウスピース部の円錐形部の側面下端には、1/4周ごとに、長さ5m mの細長い突起が形成されている。 g マウスピース部の上面は、その中央に略円形状の陥凹部を有し、当該陥 1 キャップを外して現れる部分があるため、保管時形態とは長さが異なる。 2 扁平管部は、回転軸の下に向かうほどやや膨らむため、長軸及び短軸の径は、軸方向の位 置に依存する。 93 凹部は、その中央に貫通孔を有し、当該凹陥部の内周には、相対する半円 の各々に、らせん状のスロープが形成されている。当該陥凹部の隣に、小 さい円形の開口の陥凹部が形成されている。 h 本体部の下端には、径のやや小さい略円錐形部が設けられ、その周面に は、らせん状のねじ山が形成され、正面右側に略長方形状の溝孔(下部空 5 気取入口)を形成されている。 i 本体部の正面左上方に細長い陥凹部(上部空気取入口)が形成され、そ の下方に開口が略円形の陥凹部が形成されている。 j 回転グリップ部の溝は、24本であり、長さは0.8cmである。 10 94 (別紙) 被告商品構成態様目録 1 保管時形態 ⑴ 基本的構成態様 5 A’略円筒状の本体と、本体部の上方から上端に向けてやや先細の上部と、本 体部の下方に位置し周面に軸方向に溝孔を設けた回転グリップ 商品構成態様目録 1 保管時形態 ⑴ 基本的構成態様 5 A’略円筒状の本体と、本体部の上方から上端に向けてやや先細の上部と、本 体部の下方に位置し周面に軸方向に溝孔を設けた回転グリップ部とを備え たリップスティック型の態様である。 ⑵ 具体的構成態様 10 B’本体部の直径が3.3cm、長さが5.2cm、上部の上端の十二角形の 対角線の長さが2.5cm、長さが2.0cmであり、回転グリップ部の厚 さが1.7cmであり、全体の長さが8.9cmである。 C’本体部及び上部は白色であり、回転グリップ部はオレンジ色である。 D’本体の下端から約1.5cmの領域は、直径が約3.4cmに僅かに膨ら 15 んでいる。 E’上部の周面には、12本の稜線(幅1.5mm)が等間隔で配置され、稜 線間は等脚台形状の略平面が形成されている。 F’回転グリップ部の溝は、24本であり、長さは1.3cmである。 20 2 使用時形態 ⑴ 基本的構成態様 a’ 略円錐形状の本体部と、本体部の上方に位置し略円錐形状の部分(下 側;「円錐形部」)と円みを帯びた略扁平管状(上側;「扁平管部」)と が組み合わされたマウスピース部と、本体部の下方に位置し周面に軸方向 25 に等間隔に溝孔を設けた略円盤状の回転グリップ部とを備え、本体部の正 95 面右上には、水平方向に掘込加工様の陥凹部が設けられ、その底面は、略 台形(上底が本体部の軸側に位置し、下底がややアーチ状に膨らみ本体部 の円錐形の周面側に位置する。)にくり抜かれて小窓を形成し、当該小窓 に薬の残量を示す数字又は記号が表示されるカウンターが設けられた、木 管楽器用のマウスピース型の態様である 5 ⑵ 具体的構成態様 b’ マウスピース部の長さが2.5cm、本体部の長さが4.0cm、回 転グリッ 字又は記号が表示されるカウンターが設けられた、木 管楽器用のマウスピース型の態様である 5 ⑵ 具体的構成態様 b’ マウスピース部の長さが2.5cm、本体部の長さが4.0cm、回 転グリップ部の長さ3が2.0cm、全体の長さが8.5cmである。マウ スピース部のうち扁平管部の断面長軸の径は、約2.4cmであり、断面 10 短軸の径は、約1.6cmである4。マウスピース部のうち円錐形部の直径 は、約2.5cmである。本体部の略円錐形状について、上端付近での直 径は2.7cmであり、下端付近での直径は2.9cmである。回転グリ ップ部直径は、3.4cmである。 c’ マウスピース部は白色であり、本体部は肌色であり、回転グリップ部 15 はオレンジ色である。カウンターは灰色であり、数字及び記号は白色であ る。 d’ マウスピース部の円錐形部と本体部とは、一体として一つの円錐形を 形成する。 e’ マウスピース部の扁平管部の断面長軸側の側面は、d’の円錐形の側 20 面と一体となって滑らかな周面を形成し、断面短軸側の側面は、d’の円 錐形との境界で段差を形成する f’ マウスピース部の円錐形部の側面下端には、1/4周ごとに、長さ5 3 キャップを外して現れる部分があるため、保管時形態とは長さが異なる。 4 扁平管部は、回転軸の下に向かうほどやや膨らむため、長軸及び短軸の径は、軸方向の位 置に依存する。 96 mmの細長い突起が形成されている。 g’ マウスピース部の上面は、その中央に略円形状の陥凹部を有し、当該 陥凹部は、その中央に貫通孔を有し、当該凹陥部の内周には、相対する半 円の各々に、らせん状のスロープが形成されている。当該陥凹部の隣に、 小さい円形の開口の陥凹部が形成されている。 5 部を有し、当該 陥凹部は、その中央に貫通孔を有し、当該凹陥部の内周には、相対する半 円の各々に、らせん状のスロープが形成されている。当該陥凹部の隣に、 小さい円形の開口の陥凹部が形成されている。 5 h’ 本体部の下端には、径のやや小さい略円錐形部が設けられ、その周面 には、らせん状のねじ山が形成され、正面右側に略長方形状の溝孔(下部 空気取入口)を形成されている。 i’ 本体部の正面左上方に細長い陥凹部(上部空気取入口)が形成され、 その下方に開口が略円形の陥凹部が形成されている。 10 j’ 回転グリップ部の溝は、24本であり、長さは1.3cmである。 15 97 (別紙) 対比表1 (原告商品と被告商品の保管時形態に係る形態の対比) 原告商品の形態 被告商品1の形態 全 体 形 状 (全体構成) 底部に略短円筒状の回転グリップ部 を設け、その上側に、上部と本体部とで なるキャップを配して、全体としてリッ プスティック型に構成されている。 (配色) キャップは白色、回転グリップ部は赤 色である。 (寸法) 全体の長さは8.4cmである。 上部の長さは2.0cm、本体部の長 さは5.2cm(キャップの長さ7.2 cm)、回転グリップ部の長さ(原告が いう「厚さ」)は1.2cmである。 上部の上端面(円形)の直径は、2. 5cm、本体部の直径は3.3cmであ る。 (全体構成) 底部に略短円筒状の回転グリップ部 を設け、その上側に、上部と本体部とで なるキャップを配して、全体としてリッ プスティック型に構成されている。 (配色) キャップは白色、回転グリップ部は、 黄色がかったオレンジ色(被告商品1) 又はオレンジ色(被告商品2)である。 (寸法) 全体の長さは8.9cmである。 ィック型に構成されている。 (配色) キャップは白色、回転グリップ部は、 黄色がかったオレンジ色(被告商品1) 又はオレンジ色(被告商品2)である。 (寸法) 全体の長さは8.9cmである。 上部の長さは2.0cm、本体部の長 さは5.2cm(キャップの長さ7.2 cm)、回転グリップ部の長さ(原告が いう「厚さ」)は1.7cmである。 上部の上端面(十二角形)の対角線長 は2.5cm、本体部の直径は3.3c mである。 上 上方に向けてやや先細となった略円 上方に向けてやや先細となった十二 98 部 筒形状で、上面は円形である。外周面は、 凹凸のない滑らかな曲面を形成し、本体 部の曲面から連続している。 角の角錐台形状で、上面は十二角形であ る。外周面には、12本の稜線(幅0. 15cm)が等間隔で配置され、稜線間 に等脚台形状の略平面が形成されてお り、当該角錐台形状は本体部の曲面から 段差で区画されており、連続していな い。 本 体 部 本体部の下端の直径は3.3cmであ り、本体部の下端から約1.5cmの領 域は、直径が約3.4cmに僅かに膨ら んでいる。 本体部は全体が白地で構成されてお り、本体部の上部側約3分の2の長さの 領域を占めるように黄緑色(原告商品 1)又は水色(原告商品2)のラベルが 貼られている。地色が黄緑色又は水色の ラベルの上方の白抜き長方形の区画の 中に「シムビコート」など商品名を濃紺 色文字で表し、その下の小さな濃紺色の 長方形の区画に白抜き文字を表してい る。 本体部の下端の直径は3.3cmであ り、本体部の下端から約1.5cm の領域 は、直径が約3.4cmに僅かに膨らん でいる。 本体部は全体が白地で構成されてお り、本体部の上部側約3分の2の長さの 領域を占めるように白色のラベルが貼 られている の下端から約1.5cm の領域 は、直径が約3.4cmに僅かに膨らん でいる。 本体部は全体が白地で構成されてお り、本体部の上部側約3分の2の長さの 領域を占めるように白色のラベルが貼 られている。地色が白色のラベルの中央 に黒色太字で「ブデホル吸入粉末剤」な どの商品名を表し、商品名の上方には横 長のエンジ色区画、左側には縦長の緑色 の区画(被告商品1)又は青色の区画(被 告商品2)、更にラベルの右下隅に小さ な緑色の区画(被告商品1)又は青色の 区画(被告商品2)を設け、それぞれに 文字を表している。 回 転 長さ1.2cmの短円筒状であって、 外周面に軸方向に向けて24本の溝が 【被告商品1】 長さ1.7cmの短円筒状であって、 99 グ リ ッ プ 部 形成されており、溝と溝の間には幅約 0.2cmの平らな凸部が稜線状に残っ ている。溝孔の長さは0.8cmである。 外周面に軸方向に向けて24本の溝が 形成されており、溝と溝の間には幅約 0.2cmの平らな凸部が稜線状に残っ ている。溝孔の長さは1.3cmである。 【被告商品2】 長さ1.7cmの短円筒状であって、 外周面に軸方向に向けて計72本の溝 が形成されている(長い溝1本と短い溝 3本の繰り返し構造が18組設けられ ている)。 溝孔の長さは長い溝が1.3cmであ り、短い溝が1.0cmである。 100 (別紙) 対比表2 (原告商品と被告商品の使用時形態に係る対比) 原告商品の形態 被告商品の形態 全 体 形 状 略円筒状の本体部の上方に、マウス ピース部を設け、本体下方に回転グリ ップ部を設けた構造である。本体部の 上端付近には、カウンター表示用の小 窓及び上部空気取入口が設けられ、本 体部の下端付近には、回転グリップ部 に接してやや マウス ピース部を設け、本体下方に回転グリ ップ部を設けた構造である。本体部の 上端付近には、カウンター表示用の小 窓及び上部空気取入口が設けられ、本 体部の下端付近には、回転グリップ部 に接してやや径の小さい小径部が設け られている。 (相違点) ①配色:本体部とマウスピース部と を同色(白色)とし、回転グリップ 部を赤色としている。 同左 (相違点) 【被告商品1】 ①配色:本体部とマウスピース部とを異な る色とし(本体部は大部分が肌色で、下 部ネジ山部分のみを白色とし、マウスピ ース部は白色)、回転グリップ部を黄色 がかったオレンジ色(被告商品1)又は オレンジ色(被告商品2)としている。 全体として、マウスピース部から下方に 向かって、白(マウスピース)、肌色(本 体の大部分)、白(本体のネジ山部分)、 黄色がかったオレンジ色又はオレンジ 101 ②寸法:全長は8.0cmである。 ③寸法比:マウスピース部及び本体部 の合計長(6.5cm)に対し、回 転グリップ部の長さが1.5cmで ある。 色(回転グリップ部)という配色である。 ②寸法:全長は8.5cmである。 ③寸法比:マウスピース部及び本体部の 合計長(6.5cm)に対し、回転グリ ップ部の長さが2.0cmである。 【被告商品2】 ①色:小径部以外は肌色である。 ②カウンター:カウンター表示部の色は 濃い灰青色(本体色の肌色に含まれる オレンジ色の色味に対する補色である 青を含む濃い灰色を使用している)で あり、表示される数字及び記号は白色 である。残量計に視認性向上のための 5回刻みの目盛りを追加している。 ③本体部の上部に上部空気取入口がある が、その他に隙間は設けられていない。 ④本体部に横書きで「ブデ される数字及び記号は白色 である。残量計に視認性向上のための 5回刻みの目盛りを追加している。 ③本体部の上部に上部空気取入口がある が、その他に隙間は設けられていない。 ④本体部に横書きで「ブデホル」などの文 字が表されている。 円錐形部と扁平管部とが組み合わされ た形状である。 b.長さは2.5cmである。扁平管部の 断面長軸の径は、約2.5cmであり、 断面短軸の径は、約1.6cmである。 円錐形部の直径は、約2.7cmであ る。 同左 マ ウ ス ピ ー ス 部 102 d.円錐形部と本体部とは、一体として 上方に向けてやや先細となった一つ の略円筒形を形成する。e.扁平管部 の断面長軸側の側面は、dの略円筒形 の側面と一体となって滑らかな周面 を形成し、断面短軸側の側面は、dの 略円筒形との境界で段差を形成する。 f.円錐形部の側面下端には1/4周ご とに、長さ5mmの細長い突起が形成 されている。g.上面は、その中央に略 円形状の陥凹部を有し、当該陥凹部 は、その中央に貫通孔を有し、当該陥 凹部の内周には、相対する半円の各々 に、らせん状のスロープが形成されて いる。当該陥凹部の隣に、小さい円形 の開口の陥凹部が形成されている。 本 体 部 全体として上方に向けてやや先細 となった略円筒形状である。 正面左上に細長い陥凹部(上部空気 取入口)が形成され、その下方に開口 が略円形の陥凹部が形成されている。 正面右上に、水平方向に掘込加工様 の陥凹部が設けられ、その底面は略台 形にくり抜かれて小窓を形成し、当該 小窓に薬の残量を示す数字又は記号が 同左 103 表示されるカウンターが設けられてい る。 本体部の下端は径のやや小さい部 分(以下「小径部」)となって 当該 小窓に薬の残量を示す数字又は記号が 同左 103 表示されるカウンターが設けられてい る。 本体部の下端は径のやや小さい部 分(以下「小径部」)となっており、 小径部周面には、らせん状のねじ山が 形成され、また、小径部正面右側に略 長方形状の溝孔(下部空気取入口)が 形成されている。 周面には小さな黒文字で商品名、製 造番号等が印字されている。 (相違点) ①色:白色である。 ②カウンター:カウンター表示部の色 は白色(本体色と同色)であり、表 示される数字及び記号は黒色であ る。 ③本体部の上部に上部空気取入口に加 えて2つの小さな隙間が設けられて いる。 ④本体部に縦書きで有効成分と製造番 号が表されている。 (相違点) ①色:小径部以外は肌色である。 ②カウンター:カウンター表示部の色は 濃い灰青色(本体色の肌色に含まれる オレンジ色の色味に対する補色である 青を含む濃い灰色を使用している)で あり、表示される数字及び記号は白色 である。 ③本体部の上部に上部空気取入口がある が、その他に隙間は設けられていない。 ④本体部に横書きで「ブデホル」などの文 字が表されている。 回 転 本体の下部に設けられ、段差のある 略円筒状であって、下方部分には軸 同左 104 グ リ ッ プ 方向に24本の溝が設けてある。溝 と溝の間には幅約0.2cmの平ら な凸部が稜線状に残っている。 (相違点) ①寸法:回転グリップ部の長さは1. 5cmであり、直径は3.4cmであ る。 ②色:赤色である ③溝の形状: 溝の長さ(軸方向)は0. 8cmである。 ④その他:回転グリップ部の底に点字 (数字の「6」)が付されている。 cmであり、直径は3.4cmであ る。 ②色:赤色である ③溝の形状: 溝の長さ(軸方向)は0. 8cmである。 ④その他:回転グリップ部の底に点字 (数字の「6」)が付されている。 (相違点) 【被告商品1】 ①寸法:回転グリップ部の長さは2.0c mであり、直径は、上側の最大径部で 3.4cm、下端付近で3.3cmであ り、下方が先細りになっている。 ②色:黄色がかったオレンジ色(被告商品 1-1)又はオレンジ色(被告商品1- 2)である。 ③溝の形状:溝の長さ(軸方向)は1.3 cmである。 ④回転グリップ部の底に点字はない。 【被告商品2】 ①寸法:回転グリップ部の長さは2.0c mであり、直径は、上側の最大径部で3. 4cm、下端付近で3.3cmであり、下 方が先細りになっている。 ②色:黄色がかったオレンジ色(被告商品 2-1)又はオレンジ色(被告商品2- 2)である。 ③溝の数及び形状:計72本の溝が設け られており(長い溝1本と短い溝3本 105 の繰り返し構造が18組設けられてい る)、溝の長さ(軸方向)は長い溝が1. 3cmであり、短い溝が1.0cmであ る。 ④回転グリップ部の底に点字はない。 106 (別紙) 売上高・シェア率推移表(ICS/LABA) 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 売 上 高 ( 億 円 ) アドエア 320 385 415 455 470 420 370 320 270 298 275 シムビコート 15 120 200 275 355 330 370 380 375 455 474 フルティフォーム 0 370 320 270 298 275 シムビコート 15 120 200 275 355 330 370 380 375 455 474 フルティフォーム - - - - 5 35 70 95 110 141 158 レルベア - - - - 5 50 125 165 210 282 321 合計 335 505 615 730 835 835 935 960 965 1176 1228 シ ェ ア ( % ) アドエア 95.5 76.2 67.5 62.3 56.3 50.3 39.6 33.3 28.0 25.3 22.4 シムビコート 4.5 23.8 32.5 37.7 42.5 39.5 39.6 39.6 38.9 38.7 38.6 フルティフォーム 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 4.2 7.5 9.9 11.4 12.0 12.9 レルベア 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 6.0 13.4 17.2 21.8 24.0 26.1 合計 100. 100. 100. 100. 100. 100. 100. 100. 100. 100. 100. 5 107 (別紙) 掲載文献一覧表 年 「日本呼吸器学会誌」 発行: 一般社団法人日 本呼吸器学会 「アレルギー」 発行:一般社団法人日本ア レルギー学会 「呼吸器内科」 発行:科学評論社 2012 Vol. 1 No. 1(1 月) No. 2(2 月) No. 3(3 月) No. 4(5 月) No. 5(7 月 科」 発行:科学評論社 2012 Vol. 1 No. 1(1 月) No. 2(2 月) No. 3(3 月) No. 4(5 月) No. 5(7 月) No. 6(9 月) ― ― 2013 Vol. 2 No. 3(5 月) No. 4(7 月) No. 5(9 月) ― ― 2014 Vol. 3 No. 3(5 月) No. 4(7 月) No. 5(9 月) ― ― 2015 ― 第64 巻 第3・4 号(4 月) 第5 号(5 月) 第6 号(6 月) 第7 号(8 月) 第8 号(9 月) ― 108 2016 Vol. 5 No. 3(5 月) No. 4(7 月) No. 5(9 月) 第65 巻 第3 号(5 月) 第4・5 号(5 月) 第6 号(7 月) 第7 号(8 月) 第8 号(9 月) Vol. 29 No. 6(6 月) Vol. 30 No. 2(8 月) No. 4(10 月) No. 6(12 月) 2017 ― 第66 巻 第4・5 号(5 月) 第6 号(7 月) 第8 号(9 月) 第9 号(11 月) 第10 号(12 月) Vol. 31 No. 2(2 月) No. 4(4 月) No. 6(6 月) Vol. 32 No. 2(8 月) No. 4(10 月) 109 (別紙) 月) No. 6(6 月) Vol. 32 No. 2(8 月) No. 4(10 月) 109 (別紙)

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