主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,株式会社整理回収機構(旧株式会社住宅金融債権管理機構)の社員である被告が,他の社員2名と共謀の上,自分たちの債権回収の営業成績を上げるため,原告が一旦喪失した分割返済の期限の利益を回復するかのように装って原告を欺き,2年間にわたり月額50万円の分割返済を原告に続けさせた不法行為があったとして,原告が被告に対し,慰謝料等の支払いを求める事案である。 1 前提事実(後掲各証拠で認定するほかは,当事者間に争いがない。)(1) 原告は,平成元年9月22日,株式会社住宅ローンサービス(以下「住宅ローンサービス」という。)から,別紙物件目録記載の土地及び建物(以下「本件不動産」という。)の購入資金として,次のとおり金員を借り受けた(以下「本件貸付金」という)(甲2)。 ア貸付額金6500万円イ利息年6.6パーセントウ支払方法平成元年11月8日から平成24年10月8日まで(23年間)合計276回の元利均等割賦返済エ遅延損害金年14パーセントオ特約返済を1回でも怠ったときは,当然に期限の利益を喪失する。 (2) 原告は,平成元年9月27日,住宅ローンサービスとの間において,本件貸付金債務を担保するため,本件不動産につき,住宅ローンサービスを抵当権者,原告を債務者とする抵当権設定契約を締結し,同日,その旨の登記を経由した(甲4の1,2)。 (3) 株式会社整理回収機構(以下「整理回収機構」という。)は,平成8年10月1日,住宅ローンサービスから, を債務者とする抵当権設定契約を締結し,同日,その旨の登記を経由した(甲4の1,2)。 (3) 株式会社整理回収機構(以下「整理回収機構」という。)は,平成8年10月1日,住宅ローンサービスから,原告に対する本件貸付金契約に基づく一切の権利を譲り受けた。 なお,上記権利譲渡に関する住宅ローンサービスから原告に対する譲渡通知は,平成8年12月14日,原告に到達している(乙2,3)。 (4) 原告は,本件貸付金債務の分割金の支払いを,平成8年2月分から平成9年1月分まで遅滞した。 (5) 平成9年2月ころ,原告と株式会社住宅金融債権管理機構(以下「住宅金融債権管理機構」という。)名古屋支店長A(以下「A支店長」という。),同支店業務グループ調査役である被告及び同支店業務グループ社員B(以下「B」という。)との間で,上記遅滞分を含む本件貸付金の支払方法に関する協議が行われた(以下「本件協議」という。)。 (6) 原告は,上記協議に基づき,整理回収機構に対し,平成9年2月ころから平成11年1月ころまで,本件貸付金債務につき月額金50万円の返済を続けたが,同年2月以降については返済を行わなかった。 (7) 整理回収機構は,原告及びその妻(以下「原告ら」という。)を相手方として,名古屋地方裁判所に対し,本件貸付金債務の返済を求めて貸金等請求事件(当庁平成11年(ワ)第3176号)を提訴した。 同訴訟において,原告らは,抗弁として,本件協議の際,原告と整理回収機構との間において,本件貸付金につき遅滞している返済分も含め,平成9年3月以降,毎月金50万円を15年間の分割弁済する旨の合意(以下「本件変更合意」という。)が成立した等と主張したが,平成11年12月17日,同裁判所は,原告らの上記抗弁事実を認めず,整理回収機構の請求を全部認容する判決を言い渡し 年間の分割弁済する旨の合意(以下「本件変更合意」という。)が成立した等と主張したが,平成11年12月17日,同裁判所は,原告らの上記抗弁事実を認めず,整理回収機構の請求を全部認容する判決を言い渡した(乙4)。 (8) 原告らは,上記判決を不服として,名古屋高等裁判所に対して控訴したが,平成12年6月7日,同高等裁判所は,原審と同様,上記抗弁事実は認められないとして,原告らの控訴を棄却する判決を言い渡した(口頭弁論終結日平成12年4月17日)(乙5)。 原告らは,上記控訴審判決に対し,さらに上告したが,平成12年10月31日,最高裁判所は,原告らの上告を棄却する決定を言い渡した(乙6)(以下,本件貸付金に関する上記各訴訟を「本件貸金訴訟」という。)。 (9) 上記訴訟係属中の平成11年12月1日,名古屋地方裁判所は,整理回収機構の申し立てに基づき,本件不動産につき不動産競売開始決定を行い,平成12年5月22日,本件不動産は,金4500万円の売却代金で売却され,同売却代金は本件貸付金債務の支払いの一部に充当された。 (10) 原告は,整理回収機構を相手方として,名古屋簡易裁判所に対し,債務額確定等調停事件を申し立てたところ,平成13年3月19日,原告と整理回収機構の間において,本件貸付金の残元金491万4450円及び遅延損害金等を平成13年4月末から平成18年2月末まで分割して支払うこと,整理回収機構は原告に対し本件貸金訴訟の確定判決により強制執行を行わないことを約束すること等を内容とする調停が成立した(乙7)(以下「本件調停事件」という。)。 (11) 原告は,平成13年3月22日,A支店長を相手方として,名古屋地方裁判所に対し,損害賠償請求事件を提訴した。 原告は,同訴訟において,本件協議の際,本件変更合意が成立していたにもかかわらず 11) 原告は,平成13年3月22日,A支店長を相手方として,名古屋地方裁判所に対し,損害賠償請求事件を提訴した。 原告は,同訴訟において,本件協議の際,本件変更合意が成立していたにもかかわらず,A支店長がその事実及び証拠となる書類を隠した上,全国E協会宛に原告が整理回収機構に対する債務の支払いを延滞した旨の届出を行ったことにより,原告は商売上の信用を喪失して取引ができなくなり,金400万円の損害を被ったと主張したが,平成13年8月3日,同裁判所は,本件変更合意は認められないとして,原告の請求を棄却する判決を言い渡した(乙9ないし11)。 (12) 原告は,上記判決を不服として,名古屋高等裁判所に対して控訴し,同控訴審において,本件変更合意の存在を主張するとともに,追加的に,仮に本件変更合意が成立しなかったとしても,整理回収機構の職員であるA支店長,被告及びBの3名(以下「被告ら」という。)が,原告において本件変更合意が成立したものと信ずるのに相当な状況を作り出した点で責任がある旨主張したが,平成13年12月7日,同高等裁判所は,原審と同様,本件変更合意の事実が認められない以上,原告が分割返済を遅滞した事実をA支店長が全国E協会宛に届出した行為に違法性は存在しないとして,原告の控訴を棄却する判決を言い渡した(乙12)。 原告は,上記控訴審判決に対し,さらに上告したが,平成14年4月26日,最高裁判所は,原告の上告を棄却する決定を言い渡した(乙13)(以下,A支店長に対する上記各訴訟を「本件A訴訟」という。)。 (13) 原告は,平成14年5月4日,被告を相手方として,名古屋地方裁判所に対し,本件協議の際,被告らが,共謀の上,自分たちの債権回収の営業成績を上げるため,整理回収機構の正当な業務のように装って,原告が一旦喪失した分割返済の 4日,被告を相手方として,名古屋地方裁判所に対し,本件協議の際,被告らが,共謀の上,自分たちの債権回収の営業成績を上げるため,整理回収機構の正当な業務のように装って,原告が一旦喪失した分割返済の期限の利益を回復するかのように原告を欺き,2年間にわたり月額50万円の分割返済を原告に無理に続けさせた不法行為があったとして,慰謝料50万円等合計金100万円の支払いを求める損害賠償請求事件を提訴した(顕著事実)。 2 当事者の主張(1) 本件訴訟提起は不当訴訟にあたるか。 (被告の主張)ア原告と整理回収機構の間の本件貸付金に関する問題は,本件貸金訴訟及び本件調停事件によって確定し,既に紛争解決がなされているにもかかわらず,原告は,実質的に本件貸付金の件を蒸し返すために,何ら帰責事由のない被告に対し,本件訴訟を提起している。 すなわち,原告は,本件貸金訴訟及び本件調停事件の過程において,執拗に本件変更合意の成立を主張してきたが,本件貸金訴訟において認定されたとおり,本件変更合意が成立した事実はなく,合意書も作成された事実もない。 したがって,被告らが,原告との間で喪失した期限の利益を復活させる旨の合意をした事実はなく,期限の利益を復活させるように装った事実もない。 イさらに,原告は,A支店長に対しても,本件とほぼ同様の趣旨で,本件A訴訟を提起したが,同訴訟は既に原告の敗訴が確定している。 ウ原告は,本件請求についても,同様に理由がないことを知り,若しくは知り得べきであるにもかかわらず,敢えて本件訴訟を提起しているのであり,本件訴訟が不当訴訟であることは明らかである。 (原告の主張)ア本件訴訟と本件A訴訟とでは,被告が異なる上,その損害発生の不法行為も具体的に違いがあるから,不当訴訟である旨の被 しているのであり,本件訴訟が不当訴訟であることは明らかである。 (原告の主張)ア本件訴訟と本件A訴訟とでは,被告が異なる上,その損害発生の不法行為も具体的に違いがあるから,不当訴訟である旨の被告の主張は失当である。 イ本件A訴訟では,原告の真実の主張に対し,嘘で固めて真実を見え難くし,裁判所までも騙して,本件被告代理人弁護士と同一弁護士をして証拠調べもさせずになされた判決であり,A支店長は勝訴判決を得たやも知れないが,真実が判決に反映されたとは言えないものである。 ウ毎月の支払額が金30万円から金50万円に変更された経緯につき,原告と被告とはその事実の主張に違いがあるが,被告の主張は明らかに社会常識に反する主張であり,被告側の主張は常識的に考えても筋の通らない主張である。 もし,真実,債務者である原告が,その時点で月額金30万円の支払いが困難となっていたとするなら,何ら良い事もなく月額金50万円にして,それも3年間も支払い続けること(実際には2年間支払いをしている。)をするはずはない。また,2年間続けている者に対し,いかなる債権者でも,若しそのようにすることを勧めたとしたなら,その勧めたことを忠実に履行している債務者に対し一括弁済を請求するはずはない。 被告の主張は全て嘘で固められた主張であるがために,そのような一般的でないことを事実として主張しなければならなくなっている。 (2) 被告の不法行為責任の有無及び原告の損害額(原告の主張)ア被告らは,共謀して,住宅金融債権管理機構の社員としての営業成績を上げるため,原告が一旦喪失した分割返済の期限の利益を回復するかのように装って原告を欺き,2年間にわたり月額50万円の分割返済を原告に続けさせた。 イ原告は,被告らの不法行為により,次の内容の損害を被った。 (ア) 慰謝料金5 割返済の期限の利益を回復するかのように装って原告を欺き,2年間にわたり月額50万円の分割返済を原告に続けさせた。 イ原告は,被告らの不法行為により,次の内容の損害を被った。 (ア) 慰謝料金50万円原告において,被告らの甘言に乗せられて,毎月金50万円を2年間にわたり無理をして支払い続けた精神的苦痛に対する慰謝料(イ) 損害金金50万円被告らの欺罔行為がなければ,原告は,その支払いは停止したか,他の金融機関に借り換えていた。仮に支払いを停止すれば,直ちに本件マンションに対して競売がなされたていたはずであるが,当時と2年後では,不動産の価値が少なく見積もっても金50万円は違っているから,金50万円の損害が発生したことになる。また,仮に他の金融機関で借り換えができれば,そのまま支払可能となっており,本件マンションを失うことはなかったから,少なくとも金50万円の損害は発生していることになる。 (被告の主張)原告の主張は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 不当訴訟の主張について第2の1記載の前提事実,本件における原告の訴状,準備書面,証拠(乙4ないし6,乙9ないし13)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件貸金訴訟において,抗弁として主張した本件変更合意の存在が認められず,敗訴したことを不服とし,本件貸付金の弁済方法について整理回収機構との間で本件調停事件において調停が成立した直後に,本件協議に関与した3名の整理回収機構の社員のうち,まず,A支店長に対し,本件変更合意の成立を前提として本件A訴訟を提訴したものの,同訴訟において原告の敗訴判決が確定したことから,さらに,本件A訴訟の確定直後に本件訴訟を提起したこと,本件訴訟においても,結局のところ,原告は,本件貸金訴訟及び本件A訴訟において認められなかった本件変更合意に関す 告の敗訴判決が確定したことから,さらに,本件A訴訟の確定直後に本件訴訟を提起したこと,本件訴訟においても,結局のところ,原告は,本件貸金訴訟及び本件A訴訟において認められなかった本件変更合意に関する申し出が被告らから行われたことを前提とし,本件A訴訟当時と特に異なる事情が判明したともいえない状況で,上記申し出が被告らによる詐欺行為であるとの理論で本件訴訟を提起したものであること,本件A訴訟提起にあたり,被告及びBについても共同被告として訴訟提起することに格別の支障があったとことを窺わせる事情も存在しないにもかかわらず,原告は,本件協議に関与した者に対して個別に訴訟提起を行っているが,本件訴訟の帰趨如何によっては,さらにBに対しても訴訟提起する意向を有していること,本件A訴訟及び本件訴訟において原告が主張する財産上の損害は必ずしも具体的なものとはいえないこと,以上の各事実が認められる。 そうすると,本件訴訟は,本件A訴訟とは当事者及び請求内容が異なるものの,その実質は,本件貸金訴訟において本件変更合意の存在が認められなかったことに不満を抱いた原告が,本件協議に関与した者を被告として新たに民事訴訟を提起することにより,同訴訟中において本件変更合意の存在が認定されることを主たる目的として提起したものと推認されるから,本件訴訟が,本件変更協議の存否を争点として争われた本件貸金訴訟及び本件A訴訟の実質的な蒸し返しに当たることは明らかである。 したがって,本件訴訟提起は,訴権の濫用にあたり,信義則に反して許されないものというべきであるから,本件訴えは不適法として却下すべきことになる。 2 よって,原告の本件訴えを却下することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第10部裁判官 不適法として却下すべきことになる。 2 よって,原告の本件訴えを却下することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第10部裁判官鵜飼祐充(別紙物件目録省略)
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