平成18(行ウ)203 所得税還付金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年9月13日 大阪地方裁判所 租税
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判決文本文7,378 文字)

- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対し,386万8770円を支払え。 第2事案の概要本件は,大阪国税局長が,原告に対し,平成13年分から平成16年分の所得税に係る還付金を原告の相続税納税債務に充当する旨の処分をしたことが無効であるとして,原告が,被告に対し,当該還付金合計額386万8770円の支払を求めた訴訟である。 前提事実(争いのない事実並びに証拠(特記しない限り枝番を含む)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)被相続人Aは,平成▲年▲月▲日に死亡し,相続(以下「本件相続」という)が開始した(乙1。 。 )(2)被相続人の法定相続人である原告は,法定申告期限内の平成10年5月6日,岸和田税務署長に対し,本件相続に係る相続税の納税申告をするとともに(弁論の全趣旨,納付すべき税額(以下「本件相続税額」という))。 3億9913万8800円の全額につき,大阪府貝塚市α×××番の宅地その他の不動産(以下「本件物納申請財産」という)をもって物納する旨の。 申請(以下「本件物納申請」という)をした(乙1。 。 ),(3)岸和田税務署長から本件についての物納事務を引き継いだ堺税務署長は平成11年3月12日から平成12年4月6日までの間,原告に対し,本件物納申請財産につき物納財産として不適当とする事由の解消を求めた(弁論の全趣旨。 )(4)大阪国税局長(本件についての物納事務は,堺税務署長から岸和田税務- 2 -署長にいったん返戻され,平成13年5月8日付けで,更に大阪国税局長に引き継がれた)は,原告に対し,平成15年12月11日(物納許可額1。 583万9538円,平成16年2月24日(同1億1644万8780) 返戻され,平成13年5月8日付けで,更に大阪国税局長に引き継がれた)は,原告に対し,平成15年12月11日(物納許可額1。 583万9538円,平成16年2月24日(同1億1644万8780)円,同年5月10日(同5183万4019円,同年8月2日(同53))38万1697円,同年12月16日(同6764万3093円,平成))17年6月23日(同8847万0422円。なお,同金額は,同時点での納付すべき税額と同額である,本件物納申請を順次許可した(乙3。 。))原告は,平成15年12月11日から平成16年12月16日までにされた物納許可に係る不動産につき,いずれもそのころ,相続税物納許可を原因()(),として被告財務省に所有権を移転する旨の登記手続をし弁論の全趣旨平成17年6月23日にされた物納許可に係る不動産につき,同日付け相続税物納許可を原因として,同月27日,被告(財務省)に所有権を移転する旨の登記手続をした(乙2。 )本件相続に係る相続税は,上記登記手続の完了をもって,完納したものとされた(弁論の全趣旨。 )(5)岸和田税務署長は,原告に対し,平成12年4月19日(同年3月15),日に発生した平成11年分所得税確定申告に係る還付金50万0892円平成13年4月12日(同年3月15日に発生した平成12年分所得税確定申告に係る還付金115万1589円,各還付金を本件相続税額に充当す)る旨の処分をし,いずれもそのころ原告に通知した(乙4の1及び2,弁論の全趣旨。 )大阪国税局長は,原告に対し,平成14年4月24日(同年2月25日に発生した平成13年分所得税確定申告に係る還付金127万6039円,)平成15年4月24日(同年3月5日に発生した平成14年分所得税確定申告に係る還付金111万1532円 24日(同年2月25日に発生した平成13年分所得税確定申告に係る還付金127万6039円,)平成15年4月24日(同年3月5日に発生した平成14年分所得税確定申告に係る還付金111万1532円,平成16年4月23日(同年3月4)),日に発生した平成15年分所得税確定申告に係る還付金97万2522円- 3 -平成17年4月15日(同年3月8日に発生した平成16年分所得税確定申告に係る還付金50万8677円,各還付金を本件相続税額に充当する旨)の処分(以下,これらの還付金をまとめて「本件各還付金」といい,これらに係る充当処分をまとめて「本件各充当処分」という)をし,いずれもそ。 のころ原告に通知した(乙4の3~6,弁論の全趣旨。 )(6)原告は,平成17年11月26日,大阪国税局長に対し,本件各充当処分についての異議申立てをしたが,平成18年2月16日付けで,異議申立期間経過を理由に却下された(甲1。 )原告は,同年3月16日,国税不服審判所長に対し,上記異議決定を不服として審査請求をしたが,平成18年5月30日付けで,適法な異議申立てを経ていないことを理由に却下され,同年6月2日以降,その旨の通知を受けた(甲1,弁論の全趣旨。 )原告は,同年12月2日,本件訴えを提起した(顕著な事実。 ) 争点 本件の争点は,本件各充当処分が無効であるか否かであり,この点についての当事者の主張は以下のとおりである。 (原告の主張)(1)相続税について物納があった場合においては,当該物納に係る相続税額について延滞税が課されない。延滞税が課されないのは,法定納期限内に納税を済ませたとみられるからにほかならない。そうであるなら,物納申請者は,物納を申請したことにより,既に納付すべき税額を納付したものといえるから「納付すべきこととなって れないのは,法定納期限内に納税を済ませたとみられるからにほかならない。そうであるなら,物納申請者は,物納を申請したことにより,既に納付すべき税額を納付したものといえるから「納付すべきこととなっている国税があるとき(国税通則法57,」条1項(以下「充当適状」という)には該当しないというべきである。 ),。 (2)納税者が物納申請をしただけではなく,租税行政庁が様々な補完の指示を出し,これに応じて納税者が物納の準備を進めていけば,相当の時期を経過した時点で,後戻りできない臨界期を超えたとみるべきであり,その場合- 4 -には,当該納税者について充当適状には該当しないこととなるというべきである。 (3)原告は,本件物納申請財産について物納許可を受けるため,堺税務署長から受けた指示に従って,関係書類の収集や境界標の設置等の極めて多岐に渡る作業を行った。したがって,本件においては上記の意味での臨界期を既に超えており,本件各充当処分の時点では,充当適状ではなかった。 しかるに,本件各充当処分がされたので,本件各充当処分は国税通則法57条1項に反する違法なものである。 (4)しかも,本件各充当処分は,原告の行った物納準備作業を無に帰させるものとして明らかに信義則に反するものであるし,その違法は,簡単な調査で容易に判明するものであるから,本件各充当処分の違法は重大かつ明白なものとして,無効である。 (被告の主張)(1)行政処分が無効であるというためには,当該処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならない。 ここにいう重大かつ明白な瑕疵とは,処分の要件の存在を肯定する行政庁の認定に重大かつ明白な瑕疵がある場合を指すものと解すべきであり,この趣旨からすると,瑕疵が明白であるというのは,処分成立の当初から,誤認であることが外形状客観的に明白で 要件の存在を肯定する行政庁の認定に重大かつ明白な瑕疵がある場合を指すものと解すべきであり,この趣旨からすると,瑕疵が明白であるというのは,処分成立の当初から,誤認であることが外形状客観的に明白である場合を指すものと解すべきである。 さらに,ここにいう「客観的に明白」とは,特に権限ある国家機関の判断を待つまでもなく,何人の判断によっても,ほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかであることを指すと解すべきである。 そして,行政処分に上記のような意味で重大かつ明白な瑕疵があることの証明責任は,行政処分の無効を主張する者が負うと解すべきである。 (2)租税行政庁は,還付金又は国税に係る過誤納金(以下「還付金等」という)がある場合において,その還付を受けるべき者につき「納付すべきこ。 - 5 -ととなっている国税」があるときは,還付に代えて,還付金等をその国税に充当しなければならない(国税通則法57条1項。 )ここにいう「納付すべきこととなっている国税」とは,納付すべき国税が確定した国税で,同条2項により同法施行令23条が規定する充当適状にある国税をいう(国税通則法基本通達57条関係2。 )すなわち,還付金等と納付すべき国税とが同一の納税者につき存在し,これらが充当適状になっていることが充当の要件であり,充当の要件を満たす限り,租税行政庁は,還付金等を還付することは許されず,必ず充当をしなければならない。 (3)相続税の納税義務者は,納付すべき相続税額を延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があるときは,その納付を困難とする金額を限度として,租税行政庁の許可を受けて物納をすることができるが,これによって当該許可に係る物納によって相続税額が納付されたものとされるのは,物納財産の引渡し,所有権移転登記その他法令により第三者に対抗するこ て,租税行政庁の許可を受けて物納をすることができるが,これによって当該許可に係る物納によって相続税額が納付されたものとされるのは,物納財産の引渡し,所有権移転登記その他法令により第三者に対抗することができる要件を充足した時点と規定されている(平成15年法律第8号による改正前の相続税法41条1項,43条2項。なお,同改正により,上記内容は実質的に改正されていない。 。)(4)原告は,平成10年5月6日に本件物納申請をしたが,本件相続税額について完納があったとされたのは,平成17年6月23日付け物納許可に係る物納申請財産について,対抗要件たる所有権移転登記がされた同月27日である。 したがって,本件各充当処分がされた平成14年4月24日から平成17年4月15日までの時点では,未だ本件相続税額について物納による納付の効果は生じておらず,本件相続税額は「納付すべきこととなっている国税」(国税通則法57条1項)に該当する。そうすると,本件還付金は本件相続税額と充当適状にあったというべきであるから,大阪国税局長が本件還付金- 6 -を本件相続税額に充当する処分(本件各充当処分)をしたことには違法はない。 (5)原告は,相続税について物納があった場合においては,当該物納に係る相続税額について延滞税が課されないことを根拠に,物納を申請すれば,既に納付すべき税額を納付したものといえると主張する。しかし,上記のような効果が生ずるのは,平成18年法律第10号による改正前の相続税法51条4項が,納期限の翌日から上記納付があったものとされた日までの期間に対応する延滞税を納付することを要しないとして,これを免除していたからにほかならないから,原告の主張は前提に誤りがある。 (6)原告は,本件物納申請財産について物納許可を受けるため,堺税務署長から受 応する延滞税を納付することを要しないとして,これを免除していたからにほかならないから,原告の主張は前提に誤りがある。 (6)原告は,本件物納申請財産について物納許可を受けるため,堺税務署長から受けた指示に従って,関係書類の収集や境界標の設置等の極めて多岐に渡る作業を行ったにもかかわらず,本件各充当処分がされたことによって,原告の行った物納準備作業が無に帰したのであって,本件各充当処分が信義則に反すると主張する。 しかし,原告が当初物納申請した財産については全て物納許可がされ(乙1,3,かつ物納がされているであって,原告の物納準備作業が無に帰し)たとはいえない。 そもそも,租税は金銭で納付するのが原則であって(国税通則法34条1項,物納は納税者の申請により例外的に認められるものにすぎないから,)物納申請をするかしないか,租税行政庁からの補完指示に従うか否かも,専ら物納申請者の自由な判断に委ねられているものである。更に,本件各充当処分は,その都度原告に告知されたにもかかわらず,原告はあえて本件物納申請を維持し,準備作業を継続したのである。 そうすると,本件においては,大阪国税局長の信義則違反を問題とするような事実関係自体が存在しないものというべきである。 第3争点に対する判断- 7 - 本件各充当処分の適法性,,,(1)国税通則法57条1項は租税行政庁が還付金等がある場合においてその還付を受けるべき者につき納付すべきこととなっている国税があるときは,還付に代えて,還付金等をその国税に充当しなければならないと規定している。そして,相続税法43条2項(平成15年法律第8号による改正前のもの及び平成18年法律第10号による改正前のもの。いずれも,現行法と実質的には異ならないので,以下,改正経緯は注記しない)は,物納の。 して,相続税法43条2項(平成15年法律第8号による改正前のもの及び平成18年法律第10号による改正前のもの。いずれも,現行法と実質的には異ならないので,以下,改正経緯は注記しない)は,物納の。 許可を受けた税額に相当する相続税は,物納財産の引渡し,所有権の移転の登記その他法令により第三者に対抗することができる要件を充足したときにおいて,納付があったものとすると規定している。 本件各充当処分は,原告の相続税納税債務についてされたものであるが,前記前提事実のとおり,これらは,平成17年6月23日付けの相続税物納許可を原因とする同月27日付けの物納財産(不動産)の所有権移転登記がされたことにより納付があったものとされるから,平成14年4月24日から平成17年4月15日までに行われた本件各充当処分の時点では,未だに。 ,,相続税納税債務が存在していたものであるしたがって本件各充当処分は原告において納付すべきこととなっている国税があり,充当適状にあったときにされた充当処分であるから,適法というべきである。 (2)この点,原告は,相続税について物納があった場合においては,当該物納に係る相続税額について延滞税が課されないことから,物納申請者は,既に納付すべき税額を納付したといえるので,充当適状の状態になかったと主張する。 しかし,相続税法43条2項は,上記のとおり,物納により相続税の納付があったとするのは,当該物納財産について所有権移転登記その他の対抗要件を充足したときと規定しているのであるから,その時点までは,当該物納に係る相続税の納付があったこととはならないのは明らかである。相続税に- 8 -ついて物納があった場合において,納期限の翌日から物納により相続税の納付があったこととされた日までの期間に対応する延滞税を納付することを要しなか ととはならないのは明らかである。相続税に- 8 -ついて物納があった場合において,納期限の翌日から物納により相続税の納付があったこととされた日までの期間に対応する延滞税を納付することを要しなかったのは,平成18年法律第10号による改正前の相続税法51条4項がその旨を定め,上記期間の延滞税を免除していたからにすぎない(同改正により,同条項の規定は削除された。原告の上記主張は失当であり,。)採用することができない。 (3)また,原告は,納税者が物納申請をしただけではなく,租税行政庁が様々な補完の指示を出し,これに応じて納税者が物納の準備を進めていけば,相当の時期を経過した時点で,後戻りできない臨界期を超えたとみるべきであり,その場合には,当該納税者について充当適状には該当しないこととなると主張する。 しかし,このような解釈は,上記の相続税法43条2項,国税通則法57,,条1項の文言にも適合しない上納税者が物納の準備を進めていたとしても最終的にその準備が完了し,当該財産につき物納に不適当とする事由がすべて解消するか否かは不明であり,そのような段階で相続税納税債務の消滅を認めることが不当であることは明らかであるから,原告の上記主張は採用することができない。 (4)そして,原告は,本件物納申請財産について物納許可を受けるため,堺税務署長から受けた指示に従って,関係書類の収集や境界標の設置等の極めて多岐に渡る作業を行ったにもかかわらず,本件各充当処分がされたことによって,原告の行った物納準備作業が無に帰したのであって,本件各充当処分が信義則に反すると主張する。 ,,(),,しかし前提事実 証拠 甲3~8及び弁論の全趣旨によれば原告は本件各充当処分以後も,物納申請を取り下げることなく,物納に向けた準備,,,作 則に反すると主張する。 ,,(),,しかし前提事実 証拠 甲3~8及び弁論の全趣旨によれば原告は本件各充当処分以後も,物納申請を取り下げることなく,物納に向けた準備,,,作業を継続していたこと原告のした物納申請は最終的にすべて認められ平成17年6月23日付けの相続税物納許可及びこれを原因とする当該物納- 9 -財産の所有権移転登記により原告の相続税納税債務はすべて消滅し,原告の行った物納準備作業は実を結んだことが認められるのであり,これらの事実,,によれば本件各充当処分について信義則違反を指摘する原告の上記主張はその前提とする事実の認識ないし評価に誤りがあり,信義則違反の法理を論ずる前提を欠くものというべきである。 原告の上記主張は採用できない。 結論 以上のとおり,本件各充当処分には,原告の主張するような違法はない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官廣谷章雄裁判官森鍵一裁判官森永亜湖

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