平成22(ワ)805 意匠権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年3月15日 大阪地方裁判所
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平成24年3月15日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第805号意匠権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年12月21日判決原告東リ株式会社同訴訟代理人弁護士岩坪 哲同速見禎祥被告株式会社サンゲツ同訴訟代理人弁護士水谷博之同藏冨恒彦同訴訟復代理人弁護士石井雄介同補佐人弁理士松波祥文 主文 1 被告は,別紙被告商品目録記載のタイルカーペットを販売し又は販売の申出をしてはならない。 2 被告は前項記載のタイルカーペットを廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,367万7428円及びこれに対する平成22年1月27日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを3分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 6 この判決は,1項及び3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 原告(1) 被告は,別紙被告商品目録記載のタイルカーペット(以下「被告商品」という。)を製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 (2) 主文2項同旨(3) 被告は,原告に対し,747万5600円及び内400万円に対する平成22年1月27日から,347万5600円に対する同年12月15日から, の申出をしてはならない。 (2) 主文2項同旨(3) 被告は,原告に対し,747万5600円及び内400万円に対する平成22年1月27日から,347万5600円に対する同年12月15日から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は,被告の負担とする。 (5) 仮執行宣言 被告(1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 第2 事案の概要 前提事実(1) 当事者ア原告原告は,リノリューム等各種床材,カーペット等各種床敷物の製造,販売等を目的とする株式会社である。 イ被告被告は,壁装材料,カーテン,カーペット等の販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。 (2) 本件意匠権原告は,次の意匠登録(以下「本件意匠登録」といい,その登録意匠を「本件意匠」,その実施品を「本件実施品」という。)に係る意匠権(以下「本件意匠権」という。)を有している。 登録番号第1289529号 出願日平成16年11月29日登録日平成18年11月17日意匠に係る物品タイルカーペット登録意匠別紙本件意匠目録記載のとおり(3) 被告商品の販売被告は,平成21年3月頃,被告商品を●●●●●●●●●●●(以下「●●●●●」という。)から仕入れ,これを販売した(以下,被告商品の意匠を「被告意匠」という。)。 被告商品はタイルカーペットであり,被告意匠と本件意匠とは,意匠に係る物品が同一である。 原告の請求原告は,被告商品の製造・販売等が本件意匠権を侵害する行為であるとして,被告に対し,① 意匠法37条1項に基づく被告商品の製造・販売等の差止め,② 同条2項に基づく被告商品の廃棄,③ 不法 請求原告は,被告商品の製造・販売等が本件意匠権を侵害する行為であるとして,被告に対し,① 意匠法37条1項に基づく被告商品の製造・販売等の差止め,② 同条2項に基づく被告商品の廃棄,③ 不法行為に基づく747万5600円の損害賠償及び内400万円に対する平成22年1月27日(訴状送達の日の翌日)から,347万5600円に対する同年12月15日(訴え変更申立書送達の日の翌日)から,各支払済みまでの遅延損害金の支払を求めている。 争点 (1) 被告意匠は本件意匠に類似するか (争点1)(2)本件意匠登録は意匠登録無効審判により無効とされるべきものかア本件意匠は,乙3に記載された意匠(以下「乙3意匠」という。)に類似する意匠(意匠法3条1項3号)か (争点2-1)イ本件意匠は,乙85に記載された意匠(以下「乙85意匠」という。)に類似する意匠(意匠法3条1項3号)か (争点2-2)ウ本件意匠は,乙86に記載された意匠(以下「乙86意匠」という。) に類似する意匠(意匠法3条1項3号)か (争点2-3)エ本件意匠は,乙86意匠と乙3意匠又は乙85意匠との結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠(意匠法3条2項)か(争点2-4)(3)原告の損害 (争点3)第3 争点に関する当事者の主張 争点1(被告意匠は本件意匠に類似するか)について【原告の主張】以下のとおり,被告意匠は,本件意匠に類似する。 (1) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視において,縦縞パイルの織り込みによ 主張】以下のとおり,被告意匠は,本件意匠に類似する。 (1) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視において,縦縞パイルの織り込みによる密なる濃いグレーの織地上に,幅細の,さざ波状でフリーハンド状の略白色蛇行線模様がその上部を埋め尽くすように不等間隔で現れる,パイルカーペットである。 (イ) 裏面は密なる格子状の滑り止めが施されている。 イ具体的構成態様(ア) 前記ア(ア)の蛇行線模様は,微視的にはパイルが縦方向に織り込まれた線分よりなっており,巨視的には不定形であり長手方向にランダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状である。 (イ) 前記ア(ア)のさざ波状の蛇行線模様は,平面視縦方向に互いに近接し,次いで離間し,局所において接合して略X字ないし略Y字を形成するようになっている。 ウ被告主張の構成について(ア) 審査手続における主張について 意匠の基本的構成態様や具体的構成態様は,比較対象となる意匠との関係において適切な比較が可能となるように表現されるべきものである。 前記ア及びイの構成は,本件意匠の構成をより的確に表現したものであって,審査手続で用いられた表現と異なるものではあっても矛盾抵触するものではなく,包袋禁反言とはならない。 (イ) 被告主張の具体的構成態様(ウ)について「それぞれの点は大幅に糸の量が意識的に異ならされており」という構成は,意匠公報添付図面から読み取れない。 また,本件意匠の蛇行線模様は,意匠公報添付図面では,ほぼ均一の太さで構成されており,「曲線を構成するそれぞれの線は,どの線においても,太さが極めて不揃いになっている」ものではない。 エ要部(ア) 需要者・取引者の着目部分模 付図面では,ほぼ均一の太さで構成されており,「曲線を構成するそれぞれの線は,どの線においても,太さが極めて不揃いになっている」ものではない。 エ要部(ア) 需要者・取引者の着目部分模様のみのタイルカーペットにおいて,需要者・取引者が,一部の模様や特徴のみに強く惹き付けられて商品を選択することはなく,床面に敷き詰めた状態を想定しての,全体の印象が重要となる。 また,タイルカーペットは,通常は複数枚を組み合わせて用いられるから,1枚の模様だけでなく,複数枚を組み合わせたときの模様も重要な着目部分となる。 (イ) 要部前記(ア)からすれば,本件意匠の要部は,「平面視において,縦縞パイルの織り込みによる密なる濃いグレーの織地上に,幅細の,さざ波状でフリーハンド状の略白色蛇行線模様がその上部を埋め尽くすように不等間隔で現れるものであって,微視的にはパイルが縦方向に織り込まれた線分よりなっており,巨視的には不定形であり長手方向にラ ンダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様」といえる。 本件意匠は,さざ波状かつフリーハンド状に描かれた略白色蛇行線模様を,線分が集まることによって巨視的に1本の蛇行線とすることで,需要者・取引者に,自然で落ち着きのある深みに満ちた印象を与える。また,1本の蛇行線を微視的には複数の線分に分解することで,タイルカーペットを複数組み合わせて用いる際の接合部分の違和感を減少させ,看者により自然な印象を与える。 (2) 被告意匠の構成被告意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視において,縦縞パイルの織り込みによる密なる濃いグレーの織地上に,幅細の,さざ波状でフリーハンド状の略白色蛇行線模様がその上部を埋め尽くすように不等間隔で現 。 ア基本的構成態様(ア) 平面視において,縦縞パイルの織り込みによる密なる濃いグレーの織地上に,幅細の,さざ波状でフリーハンド状の略白色蛇行線模様がその上部を埋め尽くすように不等間隔で現れる,パイルカーペットである。 (イ) 裏面は密なる格子状の滑り止めが施されている。 イ具体的構成態様(ア) 前記ア(ア)の蛇行線模様は,パイルが縦方向に織り込まれた短い線分よりなっており,不定形であり長手方向にランダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様である。 (イ) 前記ア(ア)のさざ波状の蛇行線模様は,平面視縦方向に互いに近接し,次いで離間し,局所において接合して,略X字ないし略Y字を形成するようになっている。 (3) 対比以下のとおり,本件意匠と被告意匠は共通の美感を有しており,類似する。 ア基本的構成態様について(ア) 共通点本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様において同一である。 (イ) 被告主張の具体的構成態様(イ)について被告意匠も,略白色の蛇行線模様以外の部分において,濃色のグレー上にやや淡色のグレー部分が点在しているのであって,本件意匠と同様,濃淡が存在する。 また,グレーの濃淡の部分や程度について多少の差異があるとしても,微差にすぎず,看者に異なる美感を与えるものではない。 (ウ) 被告主張の基本的構成態様(ウ)について被告意匠の模様は,単なる直線の羅列ではなく,巨視的には蛇行線模様を形成している。 イ具体的構成態様について(ア) 共通点本件意匠と被告意匠は,具体的構成態様において,白色蛇行線模様を構成する線分が,本件意匠の方が被告意匠に比してやや短い点(差異点1),白色蛇行線模様の間隔が,本件意匠の方が被告意匠に比して小さい 本件意匠と被告意匠は,具体的構成態様において,白色蛇行線模様を構成する線分が,本件意匠の方が被告意匠に比してやや短い点(差異点1),白色蛇行線模様の間隔が,本件意匠の方が被告意匠に比して小さい点(差異点2)を除けば,ほぼ共通している。 (イ) 要部の具備被告意匠は,本件意匠の要部である「幅細の,さざ波状でフリーハンド状の略白色蛇行線模様がその上部を埋め尽くすように不等間隔で現れるものであって,微視的にはパイルが縦方向に織り込まれた線分よりなっており,巨視的には不定形であり長手方向にランダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様」を有している。 被告意匠は,微視的には短い線分を連ねることにより,巨視的には 1本の蛇行線を形成していることから,需要者・取引者に,自然で落ち着きのある深みに満ちた印象を与えている。 また,1本の蛇行線を,微視的には複数の線分に分解することで,タイルカーペットを複数組み合わせて用いる際の接合部分の違和感を減少させている点も本件意匠と同様であり,これによって,看者により自然な印象を与えている。 (ウ) 差異点1(線分の長さ)についてタイルカーペットは床面に敷き詰めて使用されるから,需要者・取引者は,その模様を立位あるいは座位の目線から,ある程度距離を置いて観察する。 また,カーペットの販売においては,カタログ掲載の工例写真や,展示会に設置された実物サンプルなどによる,ある程度距離を置いての観察が一般的である。 したがって,差異点1は微差にとどまる。 (エ) 差異点2(蛇行線模様の間隔)について被告意匠は,本件意匠を約150%に拡大したものとほぼ等しい。 しかしながら,模様の間隔や倍率の違いは本件意匠の要部ではないし,タイルカーペットは床に複 差異点2(蛇行線模様の間隔)について被告意匠は,本件意匠を約150%に拡大したものとほぼ等しい。 しかしながら,模様の間隔や倍率の違いは本件意匠の要部ではないし,タイルカーペットは床に複数枚を敷設するものであるから,150%程度の倍率の違いが看者に与える印象の違いはわずかである。 したがって,差異点2は微差であり,被告意匠は,本件意匠と同一の美感を与える。 (オ) 被告主張の差異点についてa 具体的構成態様(ア)について本件意匠の線分は,微視的には,被告意匠と同様に直線であって,距離を置いて観察した場合に曲線に見えるにすぎない。 また,本件意匠の蛇行線模様の一部を曲線と捉えるのであれば, 同一のスケールにおいて,被告意匠の蛇行線模様も曲線である。 b具体的構成態様(エ)について本件意匠の線分と同様,被告意匠の線分にも重なり部分はない。 c具体的構成態様(オ)について実際の使用態様において比較すると,蛇行線の近接点の形状や位置に少々の差異があることは,美感に何ら違いを生じない。 【被告の主張】以下のとおり,本件意匠と被告意匠は類似しない。 (1) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視及び底面視において,略正方形である。 (イ) 平面視において,線模様が縦方向に一定ではない間隔に多数描かれている。 (ウ) 平面視において描かれてなる線模様は波形である。 (エ) 平面視において,線模様は一定の形状に描かれておらず,1本ごとにその形状が異なっている。 イ具体的構成態様(ア) 平面視において,波形の線模様は,1本ごとに短い複数の曲線を集めてなる。 (イ) 平面視において,濃淡の異なる灰色のパイルが無作為に一面に植え込 状が異なっている。 イ具体的構成態様(ア) 平面視において,波形の線模様は,1本ごとに短い複数の曲線を集めてなる。 (イ) 平面視において,濃淡の異なる灰色のパイルが無作為に一面に植え込まれてなる。 (ウ) 波形の線模様を構成する複数のそれぞれの曲線は,点の羅列で構成されているところ,それぞれの点は大幅に糸の量が意識的に異ならされており,曲線を構成するそれぞれの線は,どの線においても,太さが極めて不揃いになっている。 (エ) 波形の線模様は,左右交互に描かれており,ある短い線の終点からわずかに離れた水平の点を始点として,次の線が配置されている。 (オ) 波形の線模様の配置は,並列で枝分かれしない構成になっており,不特定の位置で波線が近接することにより略X字状になっている。 ウ原告主張の構成について(ア) 審査手続における主張について原告は,審査手続では,本件意匠の構成について,前記ア並びにイ(ア)及び同(イ)のとおり主張し,看者をして細部まで注目されるものであることを前提に,前記ア(ウ)並びにイ(ア)及び同(イ)の構成における乙3意匠との差異を細部にわたって指摘し,表面の模様における両意匠の差異点を,他の意匠と区別される部分と主張していた。 他方,本件訴訟では,看者がある程度距離を置いて観察することを根拠に,全体が要部であると主張しているが,比較対象が変わったからといって,取引者・需要者の取引における観察視点や関心点までもが変化することはないし,比較意匠が変わったからといって,取引者・需要者における意匠の要部までもが変わることもない。 前記【原告の主張】(1)ア及びイの本件意匠の構成は,本件意匠と被告意匠とが類似であると主張するために,審査手続において画した権利範囲を無視し,不当に権利主張範囲 要部までもが変わることもない。 前記【原告の主張】(1)ア及びイの本件意匠の構成は,本件意匠と被告意匠とが類似であると主張するために,審査手続において画した権利範囲を無視し,不当に権利主張範囲を広げるものであって,包袋禁反言として許されない。 (イ) 原告主張の基本的構成態様(ア)について本件意匠の意匠公報に添付された図面代用写真はモノクロ写真であるから,色彩は本件意匠の構成要素ではない。 エ要部要部とは,意匠全体の中から,看者の注意を惹く部分を特に抽出したものであり,全体的な印象・美感の共通性といった漠然としたものは要 部たり得ない。また,本件意匠の権利範囲は,意匠公報添付の代用図面の範囲で決まるから,複数枚を組み合わせた全体的な印象を要部とすることはできない。 そして,本件意匠と被告意匠が看者に与える印象の差異は,意匠の具体的構成態様の差異によって生ずるものであるから,需要者・取引者の関心は,上記印象の差異を生じさせる細部にある。 (2) 被告意匠の構成被告意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視及び底面視において,略正方形である。 (イ) 平面視において,線模様が縦方向に一定ではない間隔に多数描かれている。 (ウ) 平面視において描かれてなる線模様は直線の羅列である。 (エ) 平面視において,線模様の長さが一定ではなく,異なっている。 イ具体的構成態様(ア) 平面視において,波形の線模様は,個々に独立してなり,互いに接しない1本ごとの短い複数の直線を集めてなる。 (イ) 平面視において,濃淡のない灰色のパイルが無作為に一面に植え込まれてなる。 (ウ) 波形の線模様を構成する複数のそれぞれの直線は同じ太さである。 (エ) 波形の線模様を構成する直線は,左 (イ) 平面視において,濃淡のない灰色のパイルが無作為に一面に植え込まれてなる。 (ウ) 波形の線模様を構成する複数のそれぞれの直線は同じ太さである。 (エ) 波形の線模様を構成する直線は,左右交互に描かれており,ある直線の両端は,わずかに離れて配置された直線の一端と重なり合うように配置されている。 (オ) 直線の配置は,不特定の位置で,Y字状あるいは逆Y字状に枝分かれしている構成となっていて,並列ではない。 ウ原告主張の構成について 原告が主張する被告意匠の構成のうち,基本的構成態様は認める。 (3) 対比本件意匠と被告意匠は,以下のとおり,構成態様及び印象を全く異にする。 ア構成態様の差異本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様(ウ)及び(エ)と,具体的構成態様(ア)ないし(オ)において異なっている。 イ印象の差異本件意匠と被告意匠は,その構成のみならず,看者に与える印象も全く異なっている。 (ア) 構成による印象の違い本件意匠は,具体的構成態様(ウ)及び(エ)により,看者に対し,複雑で込み入った印象と,創作的な華やかさを与えている。 他方,被告意匠は,基本的構成態様(ウ)や,具体的構成態様(ウ)及び(エ)により,看者に対し,直線的で,シャープですっきりした印象を与えている。 (イ) 密度による印象の違い本件実施品は,1インチの間に12本のパイルが入っており,50㎝角の製品では228本のパイルが入っている。 他方,被告商品は,1インチの間に10本のパイルが入っており,50㎝角の製品では204本のパイルが入っている。 これによっても,前記(ア)のような印象の違いが生じている。 (ウ) 線模様による印象の違い1本の線模様における波形の数は,本件意匠では3回ないし4回 製品では204本のパイルが入っている。 これによっても,前記(ア)のような印象の違いが生じている。 (ウ) 線模様による印象の違い1本の線模様における波形の数は,本件意匠では3回ないし4回であるが,被告意匠では,直線の羅列を波形とみなしたとしても1.5回に過ぎず,直線的である。 線模様の本数も,本件意匠では29本認められるのに対し,被告意匠では,直線の羅列を波形とみなしたとしても20本に過ぎず,線模様の間隔が広い。 そのため,被告意匠では,線模様と背景の区別が明瞭で,シャープですっきりした印象を与える一方,本件意匠は,被告意匠に比べて全体的に模様が細かく,ソフトで華やかな印象を与える。 なお,原告は,本件意匠を150%に拡大して被告意匠と対比しているが,タイルカーペットの日本における標準規格は50㎝角であるから,この大きさの中で生じる美感が問題なのであって,拡大操作をした上で対比することはできない。 (エ) 色彩等による印象の違い被告意匠は,基本色が単一色であること(具体的構成態様(カ))や,具体的構成態様(オ)のような直線の配置から,直線的でシャープな印象を維持しながら,単なる波形にはない創作的な要素が加わっている。 他方,本件意匠は,基本色自体に濃淡があって(具体的構成態様(カ)),単なる波形で構成され,かつ曲線であることにより,全体的にソフトな印象を有している。 争点2-1(本件意匠は,乙3意匠に類似する意匠か)について【被告の主張】本件意匠は,その出願前に公然知られた乙3意匠と類似する意匠であるから,意匠法3条1項3号により意匠登録ができないものであり,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。 (1) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおり する意匠であるから,意匠法3条1項3号により意匠登録ができないものであり,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。 (1) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1【被告の主張】(1)アのとおり イ具体的構成態様前記1【被告の主張】(1)イ(ア)及び同(イ)のとおり(2) 乙3意匠の構成乙3意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視及び底面視において,横長の略長方形である。 (イ) 平面視において,線模様が縦方向に一定ではない間隔に多数描かれている。 (ウ) 平面視において描かれてなる線模様は波形である。 (エ) 平面視において,線模様は一定の形状に描かれておらず,1本ごとにその形状が異なっている。 イ具体的構成態様(ア) 平面視において,線模様は上端から下端までつながった1本の線からなる。 (イ) 平面視において,線模様部分以外は一面が無地である。 (3) 対比以下のとおり,本件意匠は乙3意匠に類似する。 ア意匠に係る物品の同一性本件意匠の意匠に係る物品はタイルカーペットであり,乙3意匠に係る物品はじゅうたんであって,いずれも敷物であるから,両意匠は,意匠に係る物品が同一である。 イ意匠の対比(ア) 共通点本件意匠と乙3意匠は,基本的構成態様(イ)ないし(エ)において共通する。 (イ) 差異点 本件意匠と乙3意匠は,以下の差異点を有する。 a基本的構成態様(ア)本件意匠は略正方形であるが,乙3意匠は横長の略長方形である。 b具体的構成態様(ア)本件意匠の波形の線模様は,1本ごとに短い複数の曲線を集めてなるのに対し,乙3意匠の線模様は上端から下 本件意匠は略正方形であるが,乙3意匠は横長の略長方形である。 b具体的構成態様(ア)本件意匠の波形の線模様は,1本ごとに短い複数の曲線を集めてなるのに対し,乙3意匠の線模様は上端から下端までつながった1本の線からなる。 c具体的構成態様(イ)本件意匠は,濃淡の異なるパイルが無作為に一面に植え込まれてなるのに対し,乙3意匠は,線模様部分以外は無地である。 (ウ) 差異点についての検討以下のとおり,本件意匠と乙3意匠との差異は微差である。 a差異点aについて略正方形も略長方形も,敷物としてはありふれた形状であり,方形状の範囲なので,この点が類否判断に影響を与えることはない。 b差異点bについて全体に線状の不規則な波形の線模様を縦に表したという点で共通すれば,波形の線模様が短い線分を集めたものであるか,1本の線であるかは,看者にとって微差に過ぎない。 また,本件意匠と乙3意匠は,波形の幅や波の出現頻度において差異があるものの,これらに特徴的な点はなく,「全体に線状の不規則な波形の線模様を縦に表した」という共通の印象を与えるにとどまるものであって,類似の範囲を出ない。 c差異点cについて濃淡の異なるパイルが無作為に一面に植え込まれてなるという本件意匠の態様は特徴的なものではなく,この点が類否判断に与える ことはない。 (エ) 本件訴訟における原告の主張を前提とした検討原告は,本件意匠と被告意匠を対比するにあたり,本件意匠について,「巨視的には不定形であり長手方向にランダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様」という点だけを強調し,本件意匠の「複雑で込み入った印象」と,被告意匠の「直線的で,シャープですっきりした印象」から生じる美感との に幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様」という点だけを強調し,本件意匠の「複雑で込み入った印象」と,被告意匠の「直線的で,シャープですっきりした印象」から生じる美感との差異を,類否判断の対象としていない。 さらに原告は,被告意匠を任意の倍率で拡大し,波形の形状等を操作することで,両者が類似する旨も主張しているが,任意の倍率で拡大・縮小すれば,波形の出現頻度や形状,波形の線と線との間の距離などを任意に操作できるのであり,これらの形状における差異は本件意匠との類否判断に影響を及ぼさないと主張しているに等しい。 そうすると,「巨視的には不定形であり長手方向にランダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様を有する」という点で共通する乙3意匠と本件意匠は,類似することになる。 【原告の主張】原告は,本件意匠と被告意匠の類似性について,蛇行線模様が,巨視的にはさざ波状でフリーハンド状であることのみならず,微視的には短い線分から成り立っていることも重視している。 ところが,乙3意匠は,フリーハンド状の曲線が単に並列的に並べられているだけであり,本件意匠の上記のような構成を備えておらず,本件意匠との差異は微差ではない。 そして,蛇行線の構成について,乙3意匠は単なる1本の曲線であるのに対し,本件意匠は短い線分を上下に順に並べることによって構成されているという明白な差異がある以上,乙3意匠との類似性を理由として,本件意匠 登録が無効であるとはいえない。 争点2-2(本件意匠は,乙85意匠に類似する意匠か)について【被告の主張】本件意匠は,その出願前に公然知られた乙85意匠と類似する意匠であるから,意匠法3条1項3号により意匠登録ができないものであり,本件意 意匠は,乙85意匠に類似する意匠か)について【被告の主張】本件意匠は,その出願前に公然知られた乙85意匠と類似する意匠であるから,意匠法3条1項3号により意匠登録ができないものであり,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。 (1) 乙85意匠の公知性乙85意匠は,「発刊2003年9月」と記載されたカタログに掲載されており,本件意匠の出願日である平成16(2004)年11月29日より前に公知であった。 (2) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1【被告の主張】(1)アのとおりイ具体的構成態様前記1【被告の主張】(1)イ(ア)及び同(イ)のとおり(3) 乙85意匠の構成乙85意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視及び底面視において,略正方形である。 (イ) 平面視において,線模様が縦方向に一定でない間隔に多数描かれている。 (ウ) 平面視において描かれてなる線模様は波形である。 (エ) 平面視において,線模様は一定の形状に描かれておらず,1本ごとにその形状が異なっている。 イ具体的構成態様 (ア) 平面視において,線模様は上端から下端までつながった1本の線からなる。 (イ) 平面視において,3色の異なるパイルが無作為に一面に植え込まれてなる。 (4) 対比以下のとおり,本件意匠は乙85意匠に類似する。 ア共通点本件意匠と乙85意匠は,基本的構成態様において一致している。 イ差異点本件意匠と乙85意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 具体的構成態様(ア)本件意匠の波形の線模様は,1本ごとに短い複数の線分を集めてなっているのに対し,乙85意匠の波形の線模 差異点本件意匠と乙85意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 具体的構成態様(ア)本件意匠の波形の線模様は,1本ごとに短い複数の線分を集めてなっているのに対し,乙85意匠の波形の線模様は,上端から下端までがつながった1本の線からなっている。 (イ) 具体的構成態様(イ)両意匠はパイルの色彩が異なる。 ウ差異点についての検討以下のとおり,本件意匠と乙85意匠の差異点は,類否判断に影響しない。 (ア) 差異点(ア)について原告が主張する立位ないし座位による観察を前提とすると,「全体に線状の不規則な波形の線模様を縦に表した」という点が共通すれば,波形の線模様が短い線分を集めたものであるか1本の線であるかは,大きな差異ではない。 また,原告は,被告意匠と本件意匠について,線模様の微視的な構成は,微差に過ぎないと主張している。 これらのことからすれば,本件意匠と乙85意匠は,複数枚が組み合わされて床面に敷き詰められることによって,さざ波が蛇行する模様を床面に生成する点で共通であり,線模様が短い曲線を集めたものであるか1本の線であるかは,「全体に線状の不規則な波模様を縦に表した」という共通の印象を変えるまでに至っていないといえる。 (イ) 差異点(イ)について本件意匠は,図面に代えてモノクロ写真を添付して出願されたものであり,色彩は意匠を構成していないから,類否判断において,この点を考慮する必要はない。 エ原告主張の差異点について以下のとおり,原告主張の差異点は,類否判断に影響しない。 (ア) 原告主張の差異点(イ)(縦縞模様の構成)について乙85意匠の縦縞模様は,タイルカーペットの分野における地の模様としてありふれたものである上,本件意匠及び乙85意匠において,最 い。 (ア) 原告主張の差異点(イ)(縦縞模様の構成)について乙85意匠の縦縞模様は,タイルカーペットの分野における地の模様としてありふれたものである上,本件意匠及び乙85意匠において,最も看者の目を惹く部分は蛇行線模様であるから,地の部分は類否判断に大きな影響を及ぼさない。 また,波形が陰影によって表されているか線によって表されているかは技術的な差異にすぎず,類否判断に大きな影響を及ぼさない。 (イ) 原告主張の差異点(ウ)(縦縞模様の本数)について本件意匠の蛇行線模様の本数(29本)及び配置はありふれたものである上,乙85意匠においても,蛇行線模様がほぼ等間隔に密な状態で配置されている。 (ウ) 原告主張の差異点(エ)(縦縞模様を構成する線の構成)について乙85意匠の蛇行線模様は,単なる曲線ではなく,本件意匠同様,小波状模様をなしている。 そして,表面上の蛇行線模様について,両意匠は,波形の幅や波の 出現頻度に差異が見られるものの,これらに特徴的な点はなく,「全体に線状の不規則な波形の線模様を縦に表した」という共通の印象を与えるにとどまる。 【原告の主張】以下のとおり,本件意匠は,乙85意匠と類似せず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものではない。 (1) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア全体形状平面視正方形状の薄板状体であって,表面側の模様の付いた織物部と裏面側のベース部が張り合わされた構成となっている。 イ表面側の模様の具体的構成態様(ア) 暗調子の地の上に,明調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている。 (イ) 縦縞模様を構成する縦条模様の本数は,全体として29本 (ア) 暗調子の地の上に,明調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている。 (イ) 縦縞模様を構成する縦条模様の本数は,全体として29本前後であって,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されている。 (ウ) 各縦条模様は,略直線状の短い縦線が,縦方向に断続的に連なって構成されており,これらの短い縦線は,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,巨視的には1条の連続する略小波状模様をなしている。 (2) 乙85意匠の構成乙85意匠の構成は次のとおりである。 ア全体形状平面視正方形状の薄板状体であって,表面側に模様があり,裏面側は表されていない。 イ表面側の模様の具体的構成態様 (ア) 異なる3色のパイルによって構成された直線状の細線が交互に配列された直線模様と,各直線状の細線を構成するパイルの高さに高低をつけることによって発生させた,左右に不規則に蛇行した曲線状の陰影を組み合わせた,略縦縞模様を基調としている。 (イ) 直線状の細線は表面全面に隙間なく配置されている。 (ウ) 各直線状の細線は,縦方向に上端から下端まで連なった1本の略直線として構成されている。 (エ) 曲線状の陰影は,直線模様と混ざり合って,本数の判別は不可能である。 (オ) 曲線状の陰影の形状は,全体に曖昧であるが,上端から下端までつながった1本の曲線が,平面視縦方向に配置されている。 ウ被告主張の具体的構成態様(イ)について乙85意匠において,3色のパイルは無作為に植え込まれているのではなく,直線を形成するように整然と配置されている。 (3) 対比以下のとおり,本件意匠は乙85意匠に類似しない。 ア共通点本件意匠と乙3意匠は,次の点で共通 為に植え込まれているのではなく,直線を形成するように整然と配置されている。 (3) 対比以下のとおり,本件意匠は乙85意匠に類似しない。 ア共通点本件意匠と乙3意匠は,次の点で共通する。 (ア) 全体形状は,平面視正方形状の薄板状体である。 (イ) 表面側に略縦縞模様が配されている。 イ差異点本件意匠と乙3意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 裏面本件意匠は,模様の付いた織物部と裏面側のベース部が張り合わされた構成となっているのに対し,乙85意匠は,裏面側が表されていない。 (イ) 縦縞模様の構成本件意匠の略縦縞模様は,暗調子の地の上に,明調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された構成となっている。 一方,乙85意匠の略縦縞模様は,異なる三色のパイルによって構成された,直線状の細線が交互に配列された直線模様と,各直線状の細線を構成するパイルの高さに高低をつけることによって発生させた,左右に不規則に蛇行した曲線状の陰影を組み合わせた構成となっている。 (ウ) 縦縞模様の本数本件意匠の縦縞模様を構成する縦条模様の本数は,全体として29本前後であって,略縦縞模様が全体にほぼ均質な態様で密な状態に配置されている。 一方,乙85意匠の直線模様を構成する直線状の細線は,表面全面に隙間なく配置されており,曲線状の陰影は,直線模様と混ざり合って本数の判別が困難である。 (エ) 縦縞模様を構成する線の態様本件意匠の縦縞模様を構成する縦条模様は,略直線状の短い縦線が,縦方向に断続的に連なって構成されており,これらの短い縦線は,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,巨視的には1条の連続する略小波状模様をなしている。 これに対し,乙85意匠の縦縞模様を 縦線が,縦方向に断続的に連なって構成されており,これらの短い縦線は,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,巨視的には1条の連続する略小波状模様をなしている。 これに対し,乙85意匠の縦縞模様を構成する各直線状の細線は,縦方向に上端から下端まで連なった1本の略直線として構成されており,曲線状の陰影の形状は,全体に曖昧であるが,上端から下端までつながった1本の曲線が平面視縦方向に配置されている。 ウ類否 (ア) 共通点について共通点(ア)は,タイルカーペットの分野で普遍的な構成であり,共通点(イ)も,タイルカーペットの分野によくある構成態様であるから,共に意匠の類否判断に与える影響は乏しい。 (イ) 差異点についてa略縦縞模様の構成について本件意匠は,表面に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様のみから構成されるのに対し,乙85意匠は,直線模様と曲線状の陰影との組み合わせから構成されており,略縦縞模様の基調となる具体的構成が異なる。 b模様の形状・質感・印象について本件意匠の縦条模様は,暗調子の地の上に,同一高さのパイルの色を変えることで明調子の細線状の模様が描かれており,模様としてはっきりとしているのに対し,乙85意匠の曲線状の陰影は,パイルの高低差によって生じる陰影であって,全体に曖昧で,形状を明確に認識することが困難であるから,両者の形状・質感・印象は大きく異なる。 c 模様の態様について本件意匠の縦条模様が,複雑で込み入った態様であるのに対し,乙85意匠の曲線状の陰影は,単純で平板な態様である。 d組み合わせ時の印象についてタイルカーペットを縦縞模様の方向に複数組み合わせて用いる際,本件意匠の縦条模様は,接合部分の違和感を減少させ,看者に対しより自然な印象を与えるの 様である。 d組み合わせ時の印象についてタイルカーペットを縦縞模様の方向に複数組み合わせて用いる際,本件意匠の縦条模様は,接合部分の違和感を減少させ,看者に対しより自然な印象を与えるのに対し,乙85意匠の曲線状の陰影は,単純で平板な態様であるため,違和感が生じる。 (ウ) 両意匠の共通点(ア)及び(イ)は,いずれもタイルカーペットの分野に よくある構成態様であって,類否判断に与える影響は乏しい。 一方,差異点(イ)ないし(エ)は,タイルカーペットという模様の構成態様が創作の主体となる意匠においては,その類否判断に極めて大きな影響を与える。 したがって,本件意匠は乙85意匠に類似しない。 争点2-3(本件意匠は,乙86意匠に類似する意匠か)について【被告の主張】本件意匠は,その出願前に公然知られた乙86意匠と類似する意匠であるから,意匠法3条1項3号により意匠登録ができないものであり,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。 (1) 乙86意匠の公知性以下のとおり,乙86意匠は,本件意匠の出願日である平成16(2004)年11月29日以前に公知であった。 アマニントン社の回答乙86意匠の実施品であるタイルカーペット「Canyon」(以下「キャニオン」という。)を製造していたマニントン社は,被告からの問い合わせに対し,キャニオンが平成15年頃から廃番になったと回答しており,それ以前に販売されていたことが確認されている。 イカタログの受付印キャニオンのサンプル付きカタログには,被告において,平成13年7月31日付けの受付印を押しており,キャニオンが,それ以前に販売されていたことは明らかである。 ウカタログの記載キャニオンのカタログには,その意匠 きカタログには,被告において,平成13年7月31日付けの受付印を押しており,キャニオンが,それ以前に販売されていたことは明らかである。 ウカタログの記載キャニオンのカタログには,その意匠(乙86意匠)が1999(平成11)年にデザインされ,その商品(キャニオン)が同年7月にアメリカで製造されたことが記載されている。 エ著作権登録日キャニオンは,1999(平成11)年6月に,アメリカにおいて著作権登録がされている。 (2) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1【被告の主張】(1)アのとおりイ具体的構成態様前記1【被告の主張】(1)イ(ア)及び同(イ)のとおり(3) 乙86意匠の構成乙86意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視及び底面視において,略正方形である。 (イ) 平面視において,線模様が縦方向に一定でない間隔に多数描かれている。 (ウ) 平面視において描かれてなる線模様は波形である。 (エ) 平面視において,線模様は一定の形状に描かれておらず,無秩序にその形状が異なっている。 イ具体的構成態様(ア) 平面視において,波形の線模様は,短い複数の曲線を集めてなる。 (イ) 平面視において,濃淡の異なる茶色のパイルが無作為に植え込まれてなる。 (ウ) 波形を構成する曲線の間隔は不等間隔である。 ウ原告主張の構成について(ア) 全体形状について乙86意匠は,大判サンプルの角のうちの1つが欠落しているもの の,平面視略正方形であることは明らかである。 (イ) 表面側の模様の具体的構成態様(イ)について乙86意匠の蛇行線模様は,その蛇行線を構成する線分の間隔が不等間隔ではあるが,明瞭 の,平面視略正方形であることは明らかである。 (イ) 表面側の模様の具体的構成態様(イ)について乙86意匠の蛇行線模様は,その蛇行線を構成する線分の間隔が不等間隔ではあるが,明瞭な間隔をもって途切れているわけではない。 (ウ) 表面側の模様の具体的構成態様(ウ)について乙86意匠の蛇行線模様を構成する線分は,それぞれ長さが異なっているだけであり,「線分」と「点形状」の区別はないし,線分の間隔は,多くは密着している。 さらに,乙86意匠の蛇行線模様は,巨視的には一定の連続性を有した小波状模様である。 (4) 対比以下のとおり,本件意匠は乙86意匠に類似する。 ア共通点本件意匠と乙86意匠は,次の点で共通する。 (ア) 基本的構成態様両意匠は,基本的構成態様(ア)ないし(ウ)で共通する。 (イ) 具体的構成態様両意匠は,具体的構成態様(ア)で共通する。 また,具体的構成態様(イ)における色彩の差異は,前記1【被告の主張】(1)ウ(イ)のとおり,類否判断において考慮する必要がない。 イ差異点本件意匠と乙86意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 線模様の形状(基本的構成態様(エ)に係る差異点)描かれている線模様について,本件意匠では1本ごとに形状が異なっており,乙86意匠では無秩序に描かれている。 (イ) 曲線の間隔(具体的構成態様(ウ)に係る差異点) 乙86意匠は,本件意匠とは異なり,波形を構成する曲線の間隔が不等間隔である。 ウ原告主張の差異点について以下のとおり,原告主張の差異点は,いずれも類否判断に影響を及ぼさない。 (ア) 原告主張の差異点(エ)(基調とする模様)について乙86意匠の蛇行線は,明瞭な間隔をもって途切れてはいない。そして, とおり,原告主張の差異点は,いずれも類否判断に影響を及ぼさない。 (ア) 原告主張の差異点(エ)(基調とする模様)について乙86意匠の蛇行線は,明瞭な間隔をもって途切れてはいない。そして,本件意匠も乙86意匠も,蛇行線模様が縦方向に一定ではない間隔で描かれており,縦縞模様を基調としている。 また,本件意匠の波形に特徴的な点はなく,「全体に線状の不規則な波形の線模様を縦に表した」という印象を与えるにとどまるのであり,本件意匠と乙86意匠の与える美感は共通している。 (イ) 原告主張の差異点(オ)(模様の本数)について乙86意匠の波形の線模様は,両端にほぼ同数(25本前後)の線模様が出発又は終着しており,巨視的には上端から発した線模様が下端に終着するかのように配されているのであって,分散はしてはいない。また,上記本数からして,本件意匠と乙86意匠に存在する線模様の本数及び密度の違いは,微差にすぎない。 したがって,両意匠は,「全体に線状の不規則な波形の線模様を縦に表した」という共通の印象を与えるといえる。 (ウ) 原告主張の差異点(カ)(線分の態様)について乙86意匠の蛇行線模様を構成する線分の長さは不揃いであるが,本件意匠の蛇行線模様を構成する線分の長さも全て同一ではなく,「それぞれの線分の長さが異なっている」点で共通である。 また,乙86意匠には,原告主張の「点形状」は存在せず,線分の長さが短いものが存在するだけであるところ,本件訴訟における原告 の主張によれば,蛇行線模様を構成する線分の長さが類否判断に影響を及ぼすことはない。 さらに,蛇行線模様が,線分が縦方向に断続的に連なって構成されているか,縦方向に不規則に連なって構成されているかは,微差にすぎない。 (エ) 原告主張の差異点(キ) 影響を及ぼすことはない。 さらに,蛇行線模様が,線分が縦方向に断続的に連なって構成されているか,縦方向に不規則に連なって構成されているかは,微差にすぎない。 (エ) 原告主張の差異点(キ)(模様の形状)について乙86意匠の蛇行線模様も,微視的には各線分が不等間隔で現れているものの,巨視的には一定の連続性を有した小波状模様であるし,蛇行線模様の曲率が一致しないのは,本件意匠も同様である。 また,前記(イ)のとおり,乙86意匠では,巨視的には上端から発した線模様が下端に終着しているかのように配されており,現れる蛇行線は,不規則ではあるが不等間隔で離隔した線分と連続性を有するように配置されている。 したがって,本件意匠と乙86意匠の蛇行線模様は,いずれも小波状模様をなしている。 (オ) 包袋禁反言について原告は,乙86意匠との非類似を主張するために,本件意匠の縦条模様が上端から下端まで連続していると主張するが,これは,出願経過における主張と矛盾するものであり,禁反言として許されない。 エ類否本件意匠と乙86意匠は,基本的構成態様において概ね共通している。 また,本件意匠と乙86意匠は,前記イの差異点において,わずかに差異が存在するものの,平面視において波形に描かれた線模様は曲線を集めてなることや,微視的にはパイルが縦方向に織り込まれた線分によりなっており,巨視的には不定形である長手方向にランダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様が描かれて いることは共通である。 そして,乙86意匠も,その使用態様において複数枚が組み合わされて床面に敷き詰められることによって,さざ波が蛇行する模様を床面に生成するものであり,これにより,看者に複雑で込み入った印象を与えるものであ ,乙86意匠も,その使用態様において複数枚が組み合わされて床面に敷き詰められることによって,さざ波が蛇行する模様を床面に生成するものであり,これにより,看者に複雑で込み入った印象を与えるものであって,原告が主張する本件意匠の美感と共通の美感を生じる。 したがって,本件意匠は乙86意匠に類似する。 【原告の主張】以下のとおり,本件意匠は,乙86意匠と類似せず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものではない。 (1) 公知性アマニントン社からの回答について被告からの問い合わせに対する回答が,マニントン社の責任ある立場の人物による回答であるかは不明である。また,この回答はキャニオンについてのものであって,乙86意匠についてのものかは不明であるし,乙86意匠に係る製品が一般に販売されていたかも不明である。 イ製造時期の記載についてカタログの「MadeinU.S.A (大きな空白) 7/99」との記載を,製造時期の記載と一義的に解釈することはできない。 また,1999年にマニントン社がデザインしたという意匠が,乙86意匠であるかは不明であり,公知になっていたかも不明である。 ウ著作権登録についてアメリカで著作権登録がされたキャニオンが,乙86意匠であるかは不明であり,公知になっていたかも不明である。 (2) 本件意匠の構成本件意匠の構成は,次のとおりである。 ア全体形状 前記3【原告の主張】(1)アのとおりイ表面側の模様の具体的構成態様前記3【原告の主張】(1)イのとおり(3) 乙86意匠の構成乙86意匠の構成は次のとおりである。 ア全体形状平面視略正方形ないし不等辺の五角形の薄板状体であって,表面側に模様があり,裏面側は表さ 張】(1)イのとおり(3) 乙86意匠の構成乙86意匠の構成は次のとおりである。 ア全体形状平面視略正方形ないし不等辺の五角形の薄板状体であって,表面側に模様があり,裏面側は表されていない。 イ表面側の模様の具体的構成態様(ア) 明度の異なる2色の地の上に,地の色より暗調子の縦方向の不連続の蛇行線が,表面側全体に多数配されたものである。 (イ) 蛇行線は,縦方向に不規則な長さで,不規則な曲率で,明瞭な間隔をもって途切れながら,表面全面に不均一に分散し,その不規則性及び不連続性ゆえに,蛇行線の本数を数えることは困難である。 (ウ) 蛇行線は,微視的には,長さが不規則な線分と点形状が縦方向に不規則に連なって構成されており,線分ないし点形状は,一部において大きく離間し,巨視的には不連続で曲率も一致せず,略皺状模様をなしている。 (4) 対比以下のとおり,本件意匠は乙86意匠に類似しない。 ア共通点本件意匠と乙86意匠は,次の点で共通する。 (ア) 表面側に模様がある。 (イ) 表面側の模様が縦方向の蛇行線である。 (ウ) 蛇行線が,短い線分又は点形状で構成されている。 イ差異点 本件意匠と乙86意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 形状本件意匠が平面視正方形状であるのに対し,乙86意匠は平面視略正方形ないし不等辺五角形状である。 (イ) 裏面本件意匠が模様の付いた織物部と裏面側のベース部が張り合わされた構成となっているのに対し,乙86意匠は裏面側が表されていない。 (ウ) 地と模様との明暗本件意匠の縦条模様が,暗調子の地の上に,明調子の線で描かれているのに対し,乙86意匠の蛇行線は,明度の異なる2色の地の上に,地の色より暗調子の線で描かれている。 (エ) 基調 と模様との明暗本件意匠の縦条模様が,暗調子の地の上に,明調子の線で描かれているのに対し,乙86意匠の蛇行線は,明度の異なる2色の地の上に,地の色より暗調子の線で描かれている。 (エ) 基調とする模様本件意匠の縦条模様は,縦方向の上端から下端まで連続し,蛇行も緩やかであって,表面側全体が略縦縞模様を基調とするのに対し,乙86意匠の蛇行線は,縦方向に不規則な長さで,不規則な曲率で,明瞭な間隔をもって途切れており,縦縞模様を基調とするものではない。 (オ) 模様の本数本件意匠の縦縞模様を構成する縦条模様の本数は,全体として29本前後であって,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されているのに対し,乙86意匠の蛇行線は,その不規則性及び不連続性のために,本数を数えることができず,表面全面に不均一に分散している。 (カ) 線分の態様本件意匠の縦条模様は,略直線状の短い縦線が,縦方向に断続的に連なって構成されるのに対し,乙86意匠の蛇行線は,長さが不規則な線分と点形状が混在し,これらが縦方向に不規則に連なって構成される。 (キ) 模様の形状本件意匠の縦条模様は,巨視的には1条の連続する略小波状模様をなしているのに対し,乙86意匠の蛇行線は,巨視的には不連続で,曲率も一致せず,略皺状模様をなしている。 ウ対比(ア) 共通点について共通点(ア)及び(イ)は,タイルカーペットの分野によくある構成態様であり,類否判断に与える影響は乏しい。 共通点(ウ)は,蛇行線を描く場合に,看者により複雑な印象を与える構成であって,類否判断に与える影響は一定程度存在する。 (イ) 差異点についてa差異点(ア)ないし(ウ)について類否判断に及ぼす影響は大きくない。 b差異点(エ),(オ)及び る構成であって,類否判断に与える影響は一定程度存在する。 (イ) 差異点についてa差異点(ア)ないし(ウ)について類否判断に及ぼす影響は大きくない。 b差異点(エ),(オ)及び(キ)について本件意匠の縦条模様は,縦方向の上端から下端まで連続し,蛇行も緩やかであって,1条の連続する略小波状模様をなしており,表面側全体が略縦縞模様を基調とする。これに対し,乙86意匠の蛇行線は,不連続で,縦方向に不規則な長さで,不規則な曲率で,明瞭な間隔をもって途切れ,表面全面に不均一に分散しており,略皺状模様をなしている。 したがって,本件意匠と乙86意匠は,表面の模様が大幅に異なり,上記各差異点が類否判断に与える影響は極めて大きい。 c差異点(カ)本件意匠の縦条模様は,縦方向の短い線分のみで構成されており,長さや左右配置の程度に統一感があるが,乙86意匠の蛇行線は,線分のみならず点形状の構成要素も含まれ,長さや左右方向などが 極めて不規則である。 その結果,本件意匠は整然とした印象を与えるのに対し,乙86意匠は不規則で分散した印象を与えるものであって,上記差異点が類否判断に与える影響は少なくない。 (ウ) 類否以上のとおり,本件意匠と乙86意匠の共通点(ア)及び(イ)と,差異点(ア)ないし(ウ)は,類否判断に与える影響が乏しい。 また,差異点(カ)のとおり,本件意匠と乙86意匠は,蛇行線を構成する線分または点形状の構成・配置に相違するところがあり,蛇行線が短い線分又は点形状で構成されているという共通点(ウ)のみをもって類似するとは言い難い。 そして,差異点(エ),(オ)及び(キ)のとおり,本件意匠は略縦縞模様であるのに対し,乙86意匠は略皺状模様であって,表面の模様が大きく異なり,この 点(ウ)のみをもって類似するとは言い難い。 そして,差異点(エ),(オ)及び(キ)のとおり,本件意匠は略縦縞模様であるのに対し,乙86意匠は略皺状模様であって,表面の模様が大きく異なり,この違いは類否判断において重視されるべきものである。 したがって,両意匠は類似しない。 争点2-4(本件意匠は,乙86意匠と乙3意匠又は乙85意匠との結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠か)について【被告の主張】本件意匠は,乙86意匠と乙85意匠又は乙3意匠とを組み合わせることによって,当業者において容易に創作可能であるから,意匠法3条2項により意匠登録ができないものであり,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。 (1)波形の線模様が描かれてなる意匠の公知性本件意匠は,前記2【被告の主張】のとおり,乙3意匠とは,具体的構成態様(ア)を除き明らかに類似しているし,前記3【被告の主張】のとおり,乙85意匠とは,基本的構成態様において一致している。 したがって,本件意匠の基本的構成態様である,「平面視において波形の線模様が縦方向に一定ではない間隔に多数描かれており,その線模様が一定の形状に描かれていない」という意匠は,本件意匠の出願前から公知かつありふれたものであった。 (2)線分を集めて曲線を構成する意匠の公知性乙86意匠は,平面視において波形に描かれた線模様は曲線を集めてなり,微視的にはパイルが縦方向に織り込まれた線分によりなっており,巨視的には不定形である長手方向にランダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様が描かれている。 したがって,原告が本件意匠の出願手続において乙3意匠との比較において要部と主張していた点は,本件意匠の出 ンダムに幅及び蛇行方向が変わる,さざ波状かつフリーハンド状の蛇行線模様が描かれている。 したがって,原告が本件意匠の出願手続において乙3意匠との比較において要部と主張していた点は,本件意匠の出願前に公知である。 (3)創作容易性前記(1)及び(2)のとおり,タイルカーペットの分野において,平面視において波形の線模様が描かれてなる意匠,1本ごとに短い複数の曲線を集めてなる波形の線模様は,本件意匠の出願前に公知であった。 そして,乙86意匠の縦条模様には,短い線分が断続的に密集した箇所が多数存在するところ,これを乙85意匠又は乙3意匠に表された蛇行線に適用すれば,本件意匠に極めて近似した意匠が形成される。 また,このような適用は,当業者にとってありふれた手法により行われるから,当業者が上記意匠を組み合わせて本件意匠を創作することは容易である。 (4)原告の主張に対する反論意匠法3条2項の想定する判断基準は,当該意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づき容易に創作が可能であるか否かであり,原告の主張するような,「ある公知な意匠を別の公知な意匠の一 部に置き換えたり,付け加えたりする場合」に限られるものではない。 また,意匠法が,3条1項とは別に同条2項を規定しているのは,排他的独占権を与えるべき意匠の要件として,公知意匠との類否とは別に,創作非容易性を要件とする趣旨である。したがって,公知意匠との類否判断と創作容易性の判断が別異のものになるのは,当然である。 【原告の主張】以下のとおり,本件意匠が容易に創作可能であったとはいえず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものではない。 (1) 断が別異のものになるのは,当然である。 【原告の主張】以下のとおり,本件意匠が容易に創作可能であったとはいえず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきものではない。 (1) 乙86意匠の公知性について前記4【原告の主張】(1)のとおり,乙86意匠が本件意匠の出願当時に公知であったことは争う。 (2) 創作容易性について意匠法3条2項の公知意匠の結合とは,ある公知意匠を別の公知意匠の一部に置き換えたり,付け加えたりする場合であって,意匠の構成態様の一要素のみを取り出し,他の意匠に適用するような結合ではない。 本件意匠と公知意匠の差異点に係る構成態様の一要素を別の公知意匠が備えているというだけで,創作容易とするのであれば,類否判断において,その差異点が与える美感・印象の差を検討する意味が失われる。 (3) 乙86意匠が本件意匠の要部を備えていないこと乙86意匠の蛇行線は,縦方向に不規則な長さで,不規則な曲率で,明瞭な間隔をもって途切れながら,表面全面に不均一に分散した,不規則かつ不連続なものであり,本件意匠とは大きく構成が異なるから,本件意匠の要部を備えるものではない。 (4) 乙3意匠と乙86意匠の結合について本件意匠と乙3意匠と乙86意匠は,線模様の形状が異なり,乙3意匠の線模様を乙86意匠のような線分と点形状で描いたとしても,本件意匠 とはならない。 争点3(原告の損害)について【原告の主張】(1) 被告商品の譲渡による損害被告による本件意匠権の侵害によって生じた原告の損害は,以下のとおり,少なくとも679万6000円である(意匠法39条1項)。 ア被告の譲渡数量 ●●●●㎡被告は,被告商品を,約●●●●㎡分販売した。 被告商品の一部は,●●●● 告の損害は,以下のとおり,少なくとも679万6000円である(意匠法39条1項)。 ア被告の譲渡数量 ●●●●㎡被告は,被告商品を,約●●●●㎡分販売した。 被告商品の一部は,●●●●●●●●●●●●(以下「本件ホテル」という。)で使用されたところ,本件ホテルの客室面積からすれば,本件ホテル用の譲渡数量は少なくとも2721.3㎡分(1万0886枚)である。 また,被告商品の一部は,●●●●●●●●●●(以下「本件寮」という。)で使用されたところ,本件寮用の譲渡数量は,●●●●●㎡分(●●●枚)である。 イ原告の単位数量(1㎡)当たりの利益 ●●●●円(ア) 販売価格 ●●●●円本件実施品の平成21年1月頃のカタログ価格は,1㎡(4枚)当たり9100円であったところ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1㎡当たり●●●●円である。 (イ) 変動経費 ●●●●円(下記a+b)a仕入費用 ●●●●円本件実施品の仕入費用は,平成21年1月ないし3月において,1㎡当たり●●●●円である。 b物流費用 ●●●円原告が柄物タイルカーペットの物流に要した費用は,平成21年 において,1㎡当たり●●●円である。 c宣伝広告費について宣伝広告費は,本件実施品の販売数量の増減にかかわらず支出される費用であり,本件実施品を販売したからといって新たに支出される費用ではないから,変動経費ではない。 (ウ) 利益額 ●●●●円したがって,本件実施品の単位数量当たりの利益は,1㎡当たり●●●●円(前記(ア)-(イ))となる。 ウ損害の額前記ア及びイによれば,原告が受けた損害の額は,少なくとも679万6000円である。 計算式:●●●●●●=6,796,000(2) ●●円(前記(ア)-(イ))となる。 ウ損害の額前記ア及びイによれば,原告が受けた損害の額は,少なくとも679万6000円である。 計算式:●●●●●●=6,796,000(2) 弁護士費用本件において相当な弁護士費用は,67万9600円を下らない。 (3) 本件ホテルの廊下部分のカーペットに係る損害以下のとおり,被告による本件意匠権の侵害によって,原告は,本件ホテルの廊下部分に敷設するタイルカーペットの取引をも失い,●●●●●●●●円の損害を被った。 ア逸失枚数 ●●●●枚(●●●●●㎡分)被告は,●●●●●に対し,本件ホテルの廊下部分に敷設された「●●●●●●●●●● 03D ローカ」(以下「364商品」という。)を,少なくとも●●●●枚発注した。 そして,被告の主張によれば,被告と●●●●●との取引においては,通常,発注分に対して3%ないし5%程度多めに製造されるから,製造された364商品は,少なくとも●●●●枚である。 したがって,本件ホテルに敷設された364商品は,少なくとも●● ●●枚であり,原告が喪失した取引枚数も,少なくとも●●●●枚(●●●●㎡分)である。 イ 1㎡当たりの逸失利益 ●●●●円(ア) 販売価格 ●●●●円原告が,本件ホテルの廊下部分に敷設する予定であった商品は,「ソコイタリインスピレーション」である。 同商品の平成21年春頃のカタログ価格は,1㎡(4枚)当たり9500円であったところ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1㎡当たり●●●●円である。 (イ) 変動経費 ●●●●円(下記a+b)a仕入費用 ●●●●円ソコイタリインスピレーションの仕入費用は,平成21年春頃において,1㎡当たり●●●●円である。 b ●円である。 (イ) 変動経費 ●●●●円(下記a+b)a仕入費用 ●●●●円ソコイタリインスピレーションの仕入費用は,平成21年春頃において,1㎡当たり●●●●円である。 b物流費用 ●●●円ソコイタリインスピレーションの物流に要した費用は,平成21年において,1㎡当たり●●●円である。 (ウ) 逸失利益 ●●●●円したがって,原告が失った廊下部分の取引に係る逸失利益は,1㎡当たり●●●●円(前記(ア)-(イ))となる。 ウ逸失利益額以上のことから,原告の廊下部分の取引に係る逸失利益は,●●●●●●●●円である。 計算式:●●●×●●●=●●●●●エ相当因果関係ホテル建設におけるタイルカーペットの発注は,全体の風合いを統一する必要性もあり,客室用も廊下用も同一メーカーに対して行われるこ とが一般的である。そのため,本件ホテルにおいても,当初は,施工会社から原告に対し,客室用と廊下用双方について引き合いがあった。 しかし,被告は,客室用の被告商品を受注したことで,廊下用の364商品についても受注するに至った。 ホテル建設において,上記のようなタイルカーペットの発注実体が存在する以上,被告の本件意匠権の侵害行為(不法行為)による,原告の廊下用タイルカーペットの受注喪失は,通常起こりうるものであるから(被告も当然に予期し,むしろ,廊下用タイルカーペットの受注も積極的に意図している。),両者の間には相当因果関係があると評価できる。 【被告の主張】(1) 被告商品の譲渡による損害についてア被告の譲渡数量について被告は,●●●●●に対し,被告商品を●●●●枚発注し,●●●●枚の納品を受けた(通常,発注分に対して3%ないし5%程度多めに製造されている。)。そして, についてア被告の譲渡数量について被告は,●●●●●に対し,被告商品を●●●●枚発注し,●●●●枚の納品を受けた(通常,発注分に対して3%ないし5%程度多めに製造されている。)。そして,このうち●●●●枚を譲渡した。 そして,被告商品のうち,●●●●枚(●●●●㎡分)は本件ホテルで使用され,●●●枚(●●●㎡分)は本件寮で使用された。 なお,被告商品は,本件ホテルの客室内全範囲に敷設されているわけではないから,客室面積により譲渡数量を算出することはできない。 イ単位数量当たりの利益について(ア) 販売価格についてタイルカーペット業界では,本件ホテルのような規模の取引においては,カタログ価格の●●%程度で取引されるのが一般である。 (イ) 変動経費について本件実施品については,多額の宣伝広告費が支出されているはずであり,これも変動経費となる。 ウ因果関係について建物建築の現場において,どのタイルカーペットが採用されるかは,① デザイン,② 性能,③ 価格,④ オーナーとの関係,⑤ 設計事務所やデザイン事務所との関係,⑥ 建築会社や内装業者との関係等により決定されるものであり,品質が同程度であれば,一般的には価格が極めて重視される。 原告は,本件ホテル用に,本件実施品を1枚当たり●●●●●円(1㎡当たり●●●●円)で販売する予定であったというが,被告は,被告商品を1枚当たり●●●円(1㎡当たり●●●●円)で販売した。 しかしながら,価格に●●●●の開きがある商品が採用されることはおよそありえないから,本件実施品が採用されなかったのは,価格が競業他社に比べて高価であったためである。 (2) 弁護士費用について争う。 (3) 本件ホテルの廊下部分のカーペットに係る損害について えないから,本件実施品が採用されなかったのは,価格が競業他社に比べて高価であったためである。 (2) 弁護士費用について争う。 (3) 本件ホテルの廊下部分のカーペットに係る損害についてア逸失枚数について被告は,364商品を●●●●枚発注したが,生産ロスが生じたため,通常の場合とは異なり,発注枚数どおりの納品を受けた。そして,このうち●●●●枚を譲渡し,●枚は得意先にサンプルとして提供したから,譲渡数量は●●●●枚である。 イ単位当たりの逸失利益について前記(1)イ(ア)のとおりウ相当因果関係について居室と廊下のタイルカーペットが同一メーカーに発注される必然性はないから,原告に廊下部分に係る損害は発生していない。 第4 当裁判所の判断 争点1(被告意匠は本件意匠に類似するか)について(1) 意匠に係る物品本件意匠と被告意匠とは,意匠に係る物品が同一(タイルカーペット)である(争いがない。)。 (2) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視正方形状の薄板状体である。 (イ) 表面側には模様が表されている。 (ウ) 裏面側は格子状の滑り止めが施されている。 イ具体的構成態様(ア) 暗調子の地の上に,明調子の,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている。 (イ) 縦縞模様を構成する縦条模様の本数は,全体として29本前後であって,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されている。 (ウ) 各縦条模様は,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が緩やかに蛇行し 状態に配置されている。 (ウ) 各縦条模様は,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が緩やかに蛇行し,略小波状模様をなしている。 (エ) 短い縦線は,太さや長さは一様ではなく,一部,破線状となっているため,始点と終点が明瞭でない箇所がある。 ウ要部登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2 項)。 したがって,その判断にあたっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意を惹き付ける部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。 以下,このような観点から,本件意匠の要部について検討する。 (ア) タイルカーペットの性質,用途,使用態様等タイルカーペットは,室内装飾のために床面に敷いて使用されるものであり,需要者の好みや希望するイメージによってデザインが選択される,インテリア用品である。そのため,取引においても,様々なデザインの商品を数多く見比べて比較検討できるように,カタログ等で,実物の小片(サンプル)や写真・画像が示されるなど(甲19,甲20の1・2,甲21の1・2,甲51の資料1~4,甲52等),模様,質感,色目等の違いが強調されている。 また,タイルカーペットは,複数枚を組み合わせて使用されるものであり,インテリア用品としての性格上,需要者は,現実に使用した場合における室内の雰囲気に注目するといえるから,複数枚を組み合わせた場合の印象も重要となる。そのた 複数枚を組み合わせて使用されるものであり,インテリア用品としての性格上,需要者は,現実に使用した場合における室内の雰囲気に注目するといえるから,複数枚を組み合わせた場合の印象も重要となる。そのため,上記カタログ等には,実際に異なる模様のタイルカーペットを組み合わせて敷いた写真・画像も掲載されている。 (イ) 公知意匠a乙10ないし乙27の各意匠公報に記載された意匠本件意匠の出願日(平成16年11月29日)より前に存在した,織物地,レース地,電気カーペット,電気カーペット用カバー,椅子張地及び窓掛地,敷物地等に係る公知意匠として,被告は,乙1 0ないし乙27の各意匠公報に記載された意匠を挙げる。 そして,これらの意匠によれば,本件意匠の基本的構成態様である,平面視正方形状の薄板状体であって,表面側に模様が表されている構成は,タイルカーペットを含む敷物・織物の分野においてありふれたものであり,公知であったと認められる。 また,平成14年10月28日発行の意匠公報(乙22)によれば,暗調子の地の上に,明調子の,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている構成(本件意匠の具体的構成態様(ア))も,公知であったと認められる。 b乙3意匠及び乙85意匠乙3意匠はじゅうたんに係る意匠であり(乙3),乙85意匠はタイルカーペットに係る意匠である(乙85)。 また,乙3意匠が本件意匠の出願日前に公知であったことに争いはなく,乙85意匠は,2003(平成15)年9月に発刊されたカタログに掲載されており(乙85,94),本件意匠の出願日(平成16年11月29日)前に公知であったと認められる。 そして,乙3意匠及び乙85意匠によれば,本件意匠の具体的構成態 に発刊されたカタログに掲載されており(乙85,94),本件意匠の出願日(平成16年11月29日)前に公知であったと認められる。 そして,乙3意匠及び乙85意匠によれば,本件意匠の具体的構成態様(イ)のうち,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されている構成もまた,タイルカーペットを含む敷物の分野において特徴的なものではなく,公知であったと認められる。 もっとも,「密な状態」の程度は,各意匠によって異なっており,特定の密度が知られていたわけではない。 c乙86意匠乙86意匠には,本件意匠の具体的構成態様(ウ)のうち,略直線状のものを含む短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ, 縦方向に断続的に連なっている構成が開示されている。 そして,証拠(乙89の1・2,乙90,95,乙96の1・2,乙97の1・2)によれば,乙86意匠は,1999(平成13)年にデザインされ,キャニオン(Canyon)という名称で,アメリカにおいて,同年6月に著作権登録がされたこと,乙86意匠に係る製品は,キャニオンという名称で,アメリカで製造されており,被告は,そのサンプルが添付されたカタログを,平成13年7月31日に受領したこと,同製品は2003(平成15)年頃に廃番となったことが,いずれも認められる。 なお,原告は,キャニオンと乙86意匠との同一性が不明であると主張し,マニントン社が,キャニオンに類似する名称で,異なるデザインの商品を販売している事実を指摘する(甲68~70)。しかしながら,これら商品の名称は,「canyonrim」(甲68),「CanyonPoint」(甲69),「CanyonRidge」(甲70)であって,「Canyon」ではないし,現在において原告が指摘する事実が存 は,「canyonrim」(甲68),「CanyonPoint」(甲69),「CanyonRidge」(甲70)であって,「Canyon」ではないし,現在において原告が指摘する事実が存在するからといって,上記認定は左右されない。 したがって,本件意匠の具体的構成態様(ウ)のうち,略直線状のものを含む短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なっている構成もまた,本件意匠の出願日以前において,公知であったと認められる。 (ウ) 要部前記(ア)からすれば,タイルカーペットについて,需要者は,他の商品と区別される1枚1枚の全体的なデザインのほか,複数枚を組み合わせて床面に敷き詰めた際に受ける印象も重視するといえる。 そして,前記(イ)からすれば,タイルカーペットを含む敷物・織物の分野において,① 平面視正方形状の薄板状体であって,表面側に模 様が表されている基本的な構成のほか,② 暗調子の地の上に,明調子の,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調とする構成,③ 略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密に配置されている構成,④ 略直線状のものを含む短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なっている構成といった具体的な構成は,本件意匠の出願時において公知であったと認められる。 もっとも,本件意匠の具体的構成態様(ウ)は,その一部である上記④の構成が公知であったとしても,このような構成によって,略直線状の短い縦線が,連なって,巨視的に1条の連続する略小波状模様を描くという構成において,乙86意匠のみならず,その他の公知意匠においても認められない態様ということができる。加えて,この具体的構成態様(ウ)のうち略直 なって,巨視的に1条の連続する略小波状模様を描くという構成において,乙86意匠のみならず,その他の公知意匠においても認められない態様ということができる。加えて,この具体的構成態様(ウ)のうち略直線状の短い縦線の連なり具合(縦線の長さとこれによって構成される小波の波形との関係)によって,本件意匠は,需要者に対し,単に1条の連続した蛇行線を描いた場合には生じない,複雑で繊細な印象を与えており,特に他の意匠との差別化が図られているといえる。 また,本件意匠の具体的構成態様(イ)は,縦条模様が全体として29本前後であるという本数や,縦条模様の絶対的な間隔(距離)自体よりも,縦条模様の蛇行の形状(小波の波形)と,縦条模様の相対的な間隔(その結果,略縦縞模様のデザインが決定される。)によって,上記のような複雑で繊細な印象を生じているといえる。そして,前記(イ)bのとおり,本件意匠の出願日前において,上記縦条模様の蛇行の形状と縦条模様の間隔の関係(密度)が知られていたわけではなく,需要者は,意匠の印象を左右する「密な状態」の程度にも着目するといえるから,密な状態に配置されている点もまた要部といえる。 なお,具体的構成態様(エ)については,前記(ア)のようなタイルカーペットの使用態様からして,需要者は,個々の短い縦線の細かな態様そのものよりも,そこから生じる本件意匠の複雑で繊細な印象にこそ着目するといえるから,具体的構成態様(エ)自体を要部と捉えるのは相当でない。 また,基本的構成態様(ウ)についても,前記(ア)のようなタイルカーペットの使用態様からして,需要者は,裏面の形状については着目しないといえるから,要部とはいえない。 これらのことからすれば,本件意匠において,需要者の注意を惹き付ける要部は,タイルカーペットの表 ットの使用態様からして,需要者は,裏面の形状については着目しないといえるから,要部とはいえない。 これらのことからすれば,本件意匠において,需要者の注意を惹き付ける要部は,タイルカーペットの表面全体に,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,ほぼ均質な態様で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が緩やかに蛇行し,略小波状模様をなしている点であると認められる。 そして,本件意匠の要部に係る上記認定は,本件意匠登録に係る審査手続の過程における原告の主張(乙4,乙7の1)と矛盾するとは認められない。 (3) 被告意匠の構成被告意匠の構成は次のとおりである(なお,被告は,被告意匠について,幅細の,さざ波状でフリーハンド状の略白色蛇行線模様が,織地の上部を埋め尽くすように不等間隔で現れるものであることを認めている。)。 ア基本的構成態様(ア) 平面視正方形状の薄板状体である。 (イ) 表面側には模様が表されている。 (ウ) 裏面側は格子状の滑り止めが施されている。 イ具体的構成態様(ア) 暗調子の地の上に,明調子の,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている。 (イ) 縦縞模様を構成する縦条模様の本数は,全体として20本前後であって,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されている。 (ウ) 各縦条模様は,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている。 (エ) 短い縦線は,1本1 模様は,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている。 (エ) 短い縦線は,1本1本の太さや長さがはっきりしており,個々の形状を明確に認識できる。 (4) 対比【本件意匠】 【被告意匠】 ア共通点本件意匠と被告意匠は,次の点で共通する。 (ア) 基本的構成態様に係る共通点平面視正方形状の薄板状体であって,表面側に模様が表されている おり,裏側は格子状の滑り止めが施されている(基本的構成態様(ア)ないし(ウ))。 (イ) 具体的構成態様に係る共通点暗調子の地の上に,明調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としており(具体的構成態様(ア)),各縦条模様は,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている(具体的構成態様(ウ))。 また,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されている(具体的構成態様(イ))。 イ差異点本件意匠と被告意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 縦条模様の間隔(具体的構成態様(イ)に係る差異点)縦条模様の本数は,本件意匠においては29本前後であるのに対し,被告意匠においては20本前後であり,そのため,被告意匠の略縦縞模様は,本件意匠ほど密な状態には配置されていない。 (イ) 短い縦線の態様(具体的構成態様(エ)に係る差異点)縦条模様を構成する短い縦線が,被告意匠は,本件意匠に比して,太くて長く,1本1本の形状が明瞭である。 ウ類否 置されていない。 (イ) 短い縦線の態様(具体的構成態様(エ)に係る差異点)縦条模様を構成する短い縦線が,被告意匠は,本件意匠に比して,太くて長く,1本1本の形状が明瞭である。 ウ類否(ア) 共通点について前記(2)ウ(ウ)のとおり,本件意匠の要部は,タイルカーペットの表面全体に,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,ほぼ均質な態様で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に 連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている点にあると認められる。 そして,前記ア(イ)のとおり,両意匠は,タイルカーペットの表面に密な状態に配置された略縦縞模様において,縦縞模様を構成する各縦条模様が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている点において共通するのであるから,要部において共通することになる。 (イ) 差異点についてa差異点(ア)について略縦縞模様が密な状態に配置されていることは,本件意匠の要部であるところ,被告意匠は,本件意匠に比して,略縦縞模様が密な状態に配置されていないのであるから,これは要部に係る差異点といえる。 もっとも,上記差異は相対的なものであり,これが類否判断に影響を与えるか否かは,結局は,需要者が受ける印象によって決まるものである。そうしたところ,被告意匠と,本件意匠の一部を150%に拡大したものとを比較すると,差異点(ア)だけでなく,差異点(イ)の一部(被告意匠は,本件意匠に比べ,短い縦線が太くて長い点)についても消失し,前記(ア)の要部に係る共通点のみが強調 を150%に拡大したものとを比較すると,差異点(ア)だけでなく,差異点(イ)の一部(被告意匠は,本件意匠に比べ,短い縦線が太くて長い点)についても消失し,前記(ア)の要部に係る共通点のみが強調され,短い縦線から構成される縦条模様と,その縦条模様によって構成される縦縞模様(前記(ア)の要部に係る共通点)は,ほぼ同一であると認められる(甲48)。そのため,被告商品と本件実施品とは,複数枚を組み合わせて敷いた状態を観察すれば,対比観察(甲8)においても,離隔的観察(甲49)においても,ほぼ同一の印象を生じるといえる。 そして,前記(2)ウ(ウ)のとおり,需要者は,他の商品と区別される1枚1枚の全体的なデザインのほか,複数枚を組み合わせて床面に敷き詰めた際に受ける印象も重視するから,需要者においては,本件意匠と被告意匠について,縦条模様の間隔に差異はあるものの,この点は,実際の使用状態においては美感に差異を生じさせるものではないと認識することになる。 【本件意匠】 【被告意匠】 (縦横150%比で拡大)b差異点(イ)について前記(2)ウ(ウ)のとおり,本件意匠の具体的構成態様(エ)自体は要部ではなく,需要者は,個々の短い縦線の細かな態様そのものでなく,そこから生じる本件意匠の複雑で繊細な印象にこそ着目するといえる。 そして,前記aのとおり,被告意匠は,本件意匠を150%に拡大したものとほぼ同一であり,複数枚を組み合わせて敷いた状態を観察すれば,ほぼ同一の印象を生じるところ,需要者は,複数枚を組み合わせて床面に敷き詰めた際に受ける印象も重視する。したがって,需要者は,本件意匠と被告意匠について,上記のとおり短い縦線の態様において差異があるものの,この点は,実際の使用状 は,複数枚を組み合わせて床面に敷き詰めた際に受ける印象も重視する。したがって,需要者は,本件意匠と被告意匠について,上記のとおり短い縦線の態様において差異があるものの,この点は,実際の使用状 態においては美感に差異を生じさせるものではない。 (ウ) 類否判断以上のとおり,被告意匠と本件意匠は,タイルカーペットの表面全体に,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,ほぼ均質な態様で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしているという,本件意匠の要部において共通する。 そして,前記(イ)で述べたとおり,「密な状態」の程度に係る差異や,短い縦線の形態に係る差異は,タイルカーペットの現実の使用場面において,美感に差異を生じさせるものではなく,結局,需要者が両意匠の差異点から受ける印象は,両意匠の共通点から受ける印象を凌駕するものではないといえる。 したがって,本件意匠と被告意匠は,全体として需要者の視覚を通じて起こさせる美感を共通にしているということができ,類似するといえる。 争点2-1(本件意匠は,乙3意匠に類似する意匠か)について(1) 意匠に係る物品本件意匠の意匠に係る物品はタイルカーペットであり,乙3意匠の意匠に係る物品はじゅうたんであるところ(乙3),両者は,いずれも床敷物であるから,意匠に係る物品が類似する。 (2) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1(2)アのとおりイ具体的構成態様 前記1(2)イ(ア)ないし(ウ)のとおりウ要部前記1(2)ウ(ウ 本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1(2)アのとおりイ具体的構成態様 前記1(2)イ(ア)ないし(ウ)のとおりウ要部前記1(2)ウ(ウ)のとおり(3) 乙3意匠の公知性前記1(2)ウ(イ)bのとおり,乙3意匠は,本件意匠の出願日前において,公知であった。 (4) 乙3意匠の構成(なお,対比の便宜上,本件意匠の図面における平面の縦縞模様の向きに,乙3意匠を合わせることとする。)乙3意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視において,横長矩形状(縦横比は約1:1.4)である。 (イ) 表面側には模様が表されている。 (ウ) 裏面側は表されていない。 イ具体的構成態様(ア) 明調子の地の上に,暗調子の,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている。 (イ) 縦縞模様を構成する縦条模様の本数は,全体として32本であって,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されている。 (ウ) 各縦条模様は,連続する細線が左右に蛇行しており,フリーハンドで描かれた線のようになっている。 (5) 対比【本件意匠】 【乙3意匠】 ア共通点本件意匠と乙3意匠は,次の点で共通する。 (ア) 基本的構成態様に係る共通点表面側に模様が表されている(基本的構成態様(イ))。 (イ) 具体的構成態様に係る共通点a基調とする模様(具体的構成態様(ア)に係る共通点)地の上に,反対調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている。 b略縦縞模様の配置(具体的構成態様(イ)に係 様(ア)に係る共通点)地の上に,反対調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に多数配された,略縦縞模様を基調としている。 b略縦縞模様の配置(具体的構成態様(イ)に係る共通点)略縦縞模様は,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されている。 c縦条模様は不規則に蛇行し,小波状模様をなしている。 イ差異点本件意匠と乙3意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 基本的構成態様に係る差異点a形状(基本的構成態様(ア)に係る差異点)本件意匠は,平面視正方形状の薄板状体であるのに対し,乙3意匠は,平面視横長矩形状(縦横比は約1:1.4)である。 b裏面(基本的構成態様(ウ)に係る差異点)本件意匠は,裏面に格子状の滑り止めが施されているのに対し,乙3意匠は,裏面が表されていない。 (イ) 具体的構成態様に係る差異点a地と模様との明暗(具体的構成態様(ア)に係る差異点)本件意匠は,暗調子の地の上に,明調子の縦条模様が配されているのに対し,乙3意匠は,明調子の地の上に,暗調子の縦条模様が配されている。 b縦条模様の本数(具体的構成態様(イ)に係る差異点)縦条模様の本数が,本件意匠は,全体として29本前後であるのに対し,乙3意匠は,全体として32本である。 c縦条模様の態様(具体的構成態様(ウ)に係る差異点)本件意匠では,各縦条模様は,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている。 これに対し,乙3意匠では,各縦条模様は,連続する細線が左右に蛇行しており,フリーハンドで描かれた線のようになっている。 ウ類否判断(ア) 共通 連続する細線が略小波状模様をなしている。 これに対し,乙3意匠では,各縦条模様は,連続する細線が左右に蛇行しており,フリーハンドで描かれた線のようになっている。 ウ類否判断(ア) 共通点について両意匠の共通点(前記ア)は,略縦縞模様が密な状態に配置されていることを除き,いずれも本件意匠の要部に係るものではなく,敷物の分野において特徴的な構成とはいえない(前記1(2)ウ(イ))。 (イ) 差異点についてa基本的構成態様に係る差異点aについて両意匠の平面視の形状は,いずれも敷物の形状として特徴的なも のとはいえず,本件意匠の要部でもない。 b基本的構成態様に係る差異点bについて裏面の態様は,敷物の意匠において重視されず,本件意匠の要部でもない。 c具体的構成態様に係る差異点aについて地と模様との明暗は,模様自体の差異を導くものではなく,本件意匠の要部でもない。 d具体的構成態様に係る差異点bについて縦条模様の本数は,本件意匠の要部ではないし,この点に係る差異は,本件意匠の要部である「密な状態」の程度にも,格段の差異を生じさせていない。 e具体的構成態様に係る差異点cについて本件意匠の要部は,タイルカーペットの表面全体に,細線状の縦条模様が,ほぼ均質な態様で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている点であるから,縦条模様の態様は,本件意匠の要部である。 そして,本件意匠は,各縦条模様が短い縦線を断続的に連ねて構成されることにより,看者に対し,複雑で繊細な印象を与えるのに対し,乙3意匠は,縦条模様 から,縦条模様の態様は,本件意匠の要部である。 そして,本件意匠は,各縦条模様が短い縦線を断続的に連ねて構成されることにより,看者に対し,複雑で繊細な印象を与えるのに対し,乙3意匠は,縦条模様が1本の線からなることにより,看者に対し,単純で平板な態様であるという印象を与えている。 (ウ) 以上のとおり,両意匠は,敷物として特徴的ではない部分において共通点があるものの,乙3意匠が本件意匠の要部を具備していないため,看者に与える印象を異にしており,需要者の視覚を通じて起こさせる美感は同一ではない。 したがって,本件意匠が乙3意匠に類似するとはいえない。 (6) まとめ以上のとおりであるから,本件意匠は,乙3意匠に類似する意匠に該当せず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきとはいえない。 争点2-2(本件意匠は,乙85意匠に類似する意匠か)について(1) 民事訴訟法157条1項に基づく却下の申立てについて原告は,乙85の提出及び乙85意匠に基づく無効主張について,第1回口頭弁論期日から約1年後,侵害論を終えてから約5か月後に提出されたものであり,時機に後れて提出された攻撃防御方法であるとして却下を求めている。 しかしながら,証拠(乙90,乙91の1・2,乙92の1・2)によれば,上記提出が時機に後れたことについて,被告に故意または重大な過失があったとまではいえないので,これらは却下せず,以下,上記無効主張について判断する。 (2) 意匠に係る物品本件意匠の意匠に係る物品と,乙85意匠の意匠に係る物品は,いずれもタイルカーペットであるから,意匠に係る物品が同一である。 (3) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1(2)アの 意匠の意匠に係る物品は,いずれもタイルカーペットであるから,意匠に係る物品が同一である。 (3) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1(2)アのとおりイ具体的構成態様前記1(2)イ(ア)ないし(ウ)のとおりウ要部前記1(2)ウ(ウ)のとおり (4) 乙85意匠の公知性前記1(2)ウ(イ)bのとおり,乙85意匠は,本件意匠の出願日前において,公知であったと認められる。 (5) 乙85意匠の構成乙85意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視正方形状の薄板状体である。 (イ) 表面側には模様が表されている。 (ウ) 裏面側は表されていない。 イ具体的構成態様(ア) 明調子の地の上に,暗調子の,不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面全体に配された,略縦縞模様を基調としている。 (イ) 縦縞模様を構成する縦条模様は,地に紛れて本数の判別が困難であるが,全体にほぼ均質な態様で配置されている。 (ウ) 各縦条模様は,連続する細線が左右に蛇行しており,波長の大きな略波模様をなしている。 (6) 対比【本件意匠】 【乙85意匠】 ア共通点本件意匠と乙85意匠は,次の点で共通する。 (ア) 基本的構成態様に係る共通点平面視正方形状の薄板状体であり,表面側には模様が表されている(基本的構成態様(ア)及び(イ))。 (イ) 具体的構成態様に係る共通点a表面側の模様(具体的構成態様(ア)に係る共通点)地の上に,反対調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に配された,略縦縞模様を基調としている。 b略縦縞模様の配 a表面側の模様(具体的構成態様(ア)に係る共通点)地の上に,反対調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の縦条模様が,表面側全体に配された,略縦縞模様を基調としている。 b略縦縞模様の配置(具体的構成態様(イ)に係る共通点)略縦縞模様は,全体にほぼ均質な態様で配置されている。 イ差異点本件意匠と乙85意匠は,具体的構成態様において,次の差異点を有する。 (ア) 基本的構成態様に係る差異点本件意匠は,裏面に格子状の滑り止めが施されているのに対し,乙85意匠は,裏面が表されていない(基本的構成態様(ウ)に係る差異点)。 (イ) 具体的構成態様に係る差異点a地と模様との明暗(具体的構成態様(ア)に係る差異点)本件意匠は,暗調子の地の上に,明調子の縦条模様が配されているのに対し,乙85意匠は,明調子の地の上に,暗調子の縦条模様が配されている。 b縦条模様の数(具体的構成態様(ア)及び(イ)に係る差異点)縦条模様が,本件意匠では,全体として29本前後であるのに対し,乙85意匠では,地に紛れて本数の判別が困難であるが,多数 配されてはおらず,密な状態に配置されてもいない。 c縦条模様の態様(具体的構成態様(ウ)に係る差異点)本件意匠では,各縦条模様は,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって構成されているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている。 これに対し,乙85意匠では,各縦条模様は,連続する細線が左右に蛇行しており,波長の大きな略波模様をなしている。 ウ類否判断(ア) 共通点について両意匠の共通点(前記ア)は,いずれも本件意匠の要部に係るものではなく,敷物の分野においてありふれた構成態様である り,波長の大きな略波模様をなしている。 ウ類否判断(ア) 共通点について両意匠の共通点(前記ア)は,いずれも本件意匠の要部に係るものではなく,敷物の分野においてありふれた構成態様である(前記1(2)ウ(イ))。 (イ) 差異点についてa基本的構成態様に係る差異点について裏面の態様は,タイルカーペットの意匠において重視されず,本件意匠の要部でもない。 b具体的構成態様に係る差異点aについて地と模様との明暗は,模様自体の差異を導くものではなく,本件意匠の要部でもない。 c具体的構成態様に係る差異点bについて縦条模様の本数自体は,本件意匠の要部ではないが,密な状態に配置されていることは,本件意匠の要部であるところ,乙85意匠の縦条模様は,本件意匠に比べ少なく,密な状態に配置されているとはいえない(後記dのとおり,乙85の縦条模様は,判別しにくく,そのことからも,密な状態に配置されているという印象を受け ない。)。 d具体的構成態様に係る差異点cについて本件意匠の要部は,タイルカーペットの表面全体に,細線状の縦条模様が,ほぼ均質な状態で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ,縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている点であるから,縦条模様の態様は,本件意匠の要部である。 そして,本件意匠は,各縦条模様が,短い縦線を断続的に連ねて構成され,1条の連続する細線によって略小波状模様をなしていることにより,看者に対し,複雑で繊細な印象を与える。 これに対し,乙85意匠は,各縦条模様が地に紛れて判別しにくく,看者に模様を強く意識させないものとなっている上, よって略小波状模様をなしていることにより,看者に対し,複雑で繊細な印象を与える。 これに対し,乙85意匠は,各縦条模様が地に紛れて判別しにくく,看者に模様を強く意識させないものとなっている上,各縦条模様が,連続する細線が左右に蛇行して,波長の大きな略波模様をなしていることで,本件意匠と異なる印象を与える(具体的構成態様に係る差異点b)。 (ウ) 以上のとおり,両意匠は,タイルカーペットとして特徴的ではない部分において共通点があるものの,乙85意匠が本件意匠の要部を具備しておらず,本件意匠のような複雑で繊細な印象を与えることはないため,需要者の視覚を通じて起こさせる美感は同一ではない。 したがって,本件意匠が乙85意匠に類似するとはいえない。 (7) まとめ以上のとおりであるから,本件意匠は,乙85意匠に類似する意匠に該当せず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきとはいえない。 争点2-3(本件意匠は,乙86意匠に類似する意匠か)について (1) 民事訴訟法157条1項に基づく却下の申立てについて原告は,乙86の提出及び乙86意匠に基づく無効主張について,乙85意匠に係るものと同様に,時機に後れて提出された攻撃防御方法であるとして却下を求めているが,前記3(1)で述べたところと同様の理由から,これらは却下せず,以下,上記無効主張について判断する。 (2) 意匠に係る物品本件意匠の意匠に係る物品と,乙86意匠の意匠に係る物品は,いずれもタイルカーペットであるから,意匠に係る物品が同一である。 (3) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1(2)アのとおりイ具体的構成態様前記1(2)イのとおりウ要部前記1( である。 (3) 本件意匠の構成本件意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様前記1(2)アのとおりイ具体的構成態様前記1(2)イのとおりウ要部前記1(2)ウ(ウ)のとおり(4) 乙86意匠の公知性前記1(2)ウ(イ)cのとおり,本件意匠の出願日前において,乙86意匠は公知であったと認められる。 (5) 乙86意匠の構成乙86意匠の構成は次のとおりである。 ア基本的構成態様(ア) 平面視正方形状の(乙86には,「45.7㎝角タイルカーペット」との記載がある。)薄板状体である。 (イ) 表面側には模様が表されている。 (ウ) 裏面側は無地である(乙95)。 イ具体的構成態様(ア) 明調子の地の上に,暗調子の不規則に蛇行する細線状のうねり模様が,表面側全体に多数配された,略波模様を基調としている。 (イ) 波模様を構成するうねり模様は,始点と終点が明確でないため本数の判別は困難であるが,全体に不均一に分散して配置されており,密な部分と離間している部分とが存在する。 (ウ) 各うねり模様は,略直線状のものを含む短い縦線が,縦方向に断続的に連なって構成されており,これらの短い縦線は,不規則な振れ幅で左右に位置を変えている。 (エ) 短い縦線は,個々の形状が明瞭であるが,長さは一様ではなく,点形状に近い長さのものも存在する。 (6) 対比【本件意匠】 【乙86意匠】 ア共通点本件意匠と乙86意匠は,次の点で共通する。 (ア) 基本的構成態様に係る共通点平面視正方形状の薄板状体であり,表面側には模様が表されており, 裏面は無地である(基本的構成態様(ア)ないし(ウ))。 (イ) 具体的構成態 る。 (ア) 基本的構成態様に係る共通点平面視正方形状の薄板状体であり,表面側には模様が表されており, 裏面は無地である(基本的構成態様(ア)ないし(ウ))。 (イ) 具体的構成態様に係る共通点a表面側の模様(具体的構成態様(ア)に係る共通点)地の上に,反対調子の不規則に緩やかに蛇行する細線状の模様が,表面側全体に多数配されている。 b模様の配置(具体的構成態様(ウ)に係る共通点)各模様は,略直線状の短い縦線が,縦方向に断続的に連なって構成されており,これらの短い縦線は,小幅な振れ幅で左右に位置を変えている。 c短い縦線の形状(具体的構成態様(エ)に係る共通点)短い縦線は,長さが一様ではない。 イ差異点本件意匠と乙86意匠は,次の差異点を有する。 (ア) 地と模様との明暗(具体的構成態様(ア)に係る差異点)本件意匠は,暗調子の地の上に,明調子の模様が配されているのに対し,乙86意匠は,明調子の地の上に,暗調子の模様が配されている。 (イ) 基調とする模様(具体的構成態様(ア)に係る差異点)本件意匠は,縦条模様の集合からなる略縦縞模様を基調としているのに対し,乙86意匠は,うねり模様の集合からなる略波模様を基調としている。 (ウ) 模様の本数(具体的構成態様(イ)に係る差異点)本件意匠は,縦条模様が,全体として29本前後配されているのに対し,乙86意匠は,うねり模様に途切れている部分があるため,各うねり模様の始点と終点が明確でなく,本数を数えることが困難である。 (エ) 模様の配置(具体的構成態様(イ)に係る差異点)本件意匠は,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されているのに対し,乙86意匠は,略波模様が,不均一に分散して配置 (エ) 模様の配置(具体的構成態様(イ)に係る差異点)本件意匠は,略縦縞模様が,全体にほぼ均質な態様で,密な状態に配置されているのに対し,乙86意匠は,略波模様が,不均一に分散して配置されており,密な部分と離間している部分とが存在する。 (オ) 模様の連続性(具体的構成態様(ウ)に係る差異点)本件意匠は,各縦条模様を構成する短い縦線が,巨視的には1条の連続する略小波状模様をなしている。 これに対し,乙86意匠では,各うねり模様を構成する短い縦線は,巨視的にも1条に連続はしていない。 (カ) 短い縦線の形状(具体的構成態様(エ)に係る差異点)短い縦線が,本件意匠では,形状が不明瞭であるものの,いずれも略直線状であるが,乙86意匠では,形状が明瞭であって,略直線状のもののほか,点形状に近い長さのものも含まれる。 ウ類否判断(ア) 共通点について両意匠の共通点(ア)並びに(イ)a及び同cは,いずれも本件意匠の要部に係るものではなく,共通点(ア)及び(イ)aは,タイルカーペットの分野においてありふれた構成態様といえる(前記1(2)ウ(イ))。 他方,両意匠の共通点(イ)bは,本件意匠の要部に係るものであるが,具体的構成態様(ウ)の一側面に過ぎず,同構成態様の結果,後記(イ)のとおり,縦条模様からなる縦縞模様(本件意匠)とうねり模様(波模様)(乙86意匠)という異なる印象を看者に与えている。 (イ) 差異点について本件意匠の要部は,タイルカーペットの表面全体に,細線状の縦条模様が,ほぼ均質な状態で,密な状態に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ, 縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様 に配置された略縦縞模様において,略直線状の短い縦線が,小幅な振れ幅で左右に位置を変えつつ, 縦方向に断続的に連なって縦条模様を構成しているため,巨視的には1条の連続する細線が略小波状模様をなしている点である。 ところが,乙86意匠は,タイルカーペットの表面に,密な部分と離間している部分とが不均一に分散して配置された(差異点(エ)),略波模様において(差異点(イ)),波模様を構成する各うねり模様が,巨視的にも1条に連続はしていないのであるから(差異点(オ)),乙86意匠と本件意匠とは,本件意匠の要部において大きく構成を異にする。 (ウ) 以上のとおり,両意匠は,タイルカーペットの意匠として特徴的ではない部分のほか,各模様が,略直線状の短い縦線が縦方向に断続的に連なって構成されており,これらの短い縦線は,小幅な振れ幅で左右に位置を変えているという,本件意匠の要部に係る共通点(共通点(イ)b)を有する。また,短い縦線の長さが一様でないこと(共通点(イ)c)は,両意匠に繊細な印象を生じさせる要素となっている。 しかしながら,共通点(イ)bは,本件意匠の要部のうち一要素に過ぎないところ,乙86意匠は,そもそも略縦縞模様ではなく(差異点(イ)),断続的に連なった短い縦線により1条に連続して見える線を描くという,本件意匠において最も創作性が発揮されたと考えられる要素を備えておらず(差異点(オ)),個々の模様の配置においても,あえて不均一に分散させるという工夫がされている(差異点(エ))から,本件意匠の要部において,大きく構成を異にする。そのため,共通点(イ)cが,両意匠に共に繊細な印象を生じさせているとはいえ,需要者が両意匠の差異点から受ける印象は,両意匠の共通点から受ける印象を凌駕しているといえる。 そのため,本件意匠と乙 のため,共通点(イ)cが,両意匠に共に繊細な印象を生じさせているとはいえ,需要者が両意匠の差異点から受ける印象は,両意匠の共通点から受ける印象を凌駕しているといえる。 そのため,本件意匠と乙86意匠は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感が同一ではなく,したがって,本件意匠が乙86意匠に類似するとはいえない。 (7) まとめ以上のとおりであるから,本件意匠は,乙86意匠に類似する意匠に該当せず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきとはいえない。 争点2-4(本件意匠は,乙86意匠と乙3意匠又は乙85意匠との結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠か)について(1) 乙86意匠の構成前記4(5)のとおり(2) 乙3意匠の構成前記2(3)のとおり(3) 乙85意匠の構成前記3(5)のとおり(4) 本件意匠と乙86意匠の対比前記4(6)のとおり(5) 容易創作性ア意匠法3条2項について意匠法3条2項は,物品との関係を離れた抽象的なモチーフとして日本国内(又は外国)において広く知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を基準として,それから当業者が容易に創作することができた意匠でないことを登録要件としたものであり,そのモチーフを基準として,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものである(最高裁昭和49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁,最高裁昭和50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号287頁参照)。 イ本件意匠についての検討被告は,乙86意匠の縦条模様における,短い線分が断続的に密集し た箇所を,乙85意匠又は乙3意匠に表された蛇行線に適用すれば,本件意匠に極めて近似 照)。 イ本件意匠についての検討被告は,乙86意匠の縦条模様における,短い線分が断続的に密集し た箇所を,乙85意匠又は乙3意匠に表された蛇行線に適用すれば,本件意匠に極めて近似した意匠が形成されると主張する。 しかしながら,被告の主張は,前記4(6)のとおり本件意匠とは多くの差異点を有する乙86意匠において,その一部分に過ぎない「短い線分が断続的に密集した箇所」のみを取り上げて,他の意匠への適用を主張するものであるが,モチーフの特定として十分とはいえず(被告の主張は,「断続した線分の連続により線模様を描く」という技法を取り上げて,他の意匠への適用を主張しているに等しい。),これを基準として意匠の創作容易性を検討することは困難というべきである。 また,上記「短い線分が断続的に密集した箇所」を基準となるモチーフとして検討しても,本件意匠の蛇行線(略小波状模様)は,乙85意匠(波長の大きな略波模様),乙3意匠(フリーハンドで描かれた線様),被告の指摘する他の公知意匠(乙10ないし乙27)の各蛇行線のいずれとも異なるものであって,具体的な蛇行線の描き方については,当業者において創意工夫を要するものというべきである。 したがって,本件意匠は,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができた意匠であるとは認められない。 (6) まとめ以上のとおりであるから,本件意匠は,乙86意匠と乙3意匠又は乙85意匠との結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当せず,本件意匠登録は,意匠登録無効審判により無効とされるべきとはいえない。 争点3(原告の損害)について(1) 被告商品の譲渡による損害原告は,被告商品の譲渡による損害について,意匠法39条1項に基づ 意匠登録無効審判により無効とされるべきとはいえない。 争点3(原告の損害)について(1) 被告商品の譲渡による損害原告は,被告商品の譲渡による損害について,意匠法39条1項に基づ く損害額を主張しているので,以下検討する。 ア被告商品の譲渡数量 ●●●●枚被告は,●●●●●に対し,被告商品を●●●●枚注文し(乙67,76),●●●●枚の納入を受け(乙68,79),このうち●●●●枚を本件ホテル用として,●●●枚を本件寮用として,それぞれ譲渡したものと認められる(乙69~75,77,81)。原告は,本件ホテルの客室のうちユニットバス部を除く部分(居室部分)の面積からして,本件ホテル用の譲渡数量は●●●●●●枚以上であると主張するが,居室部分においてもタイルカーペットが敷設されていない部分は存在するのであるから(乙99,101,102),上記認定は覆されない。 したがって,被告商品の譲渡数量は●●●●枚と認められる。 イ原告の単位数量(1枚)当たりの利益の額 ●●●●●円(ア) 1㎡当たりの販売価格 ●●●●円本件実施品の平成21年1月頃のカタログ価格は,1㎡(4枚)当たり9100円であるが(甲52),原告が本件ホテルのような規模の取引を行う際は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1㎡当たり●●●●円であったと認められる(甲53,57,73)。なお,原告が本件寮のような規模の取引を行う際の販売価格は明らかでないが,被告は,本件寮用に販売した被告商品についても,本件ホテル用に販売したものと同額で譲渡しているから(乙104,乙105の6),原告の単位数量当たりの利益の計算においても,全譲渡数量について,本件ホテル用に譲渡した場合と同一価格で計算するのが相当である。 被告は,本件ホ 額で譲渡しているから(乙104,乙105の6),原告の単位数量当たりの利益の計算においても,全譲渡数量について,本件ホテル用に譲渡した場合と同一価格で計算するのが相当である。 被告は,本件ホテルのような規模の取引においては,カタログ価格の●●%程度で取引されるのが一般であると主張し,被告従業員作成の報告書(乙80)及び陳述書(乙104)には,被告はカタログ価 格の●●%で販売しているとか,他社が競合する場合はカタログ価格の●●%程度となるとの記載がある。しかしながら,被告自身,被告商品に係る商談をしていた際,原告は競合会社ではなかったと主張しているから,被告が他社と競合する場合の価格によって,上記認定が覆されるものではない。 さらに,被告は,原告販売商品の卸会社が,本件実施品をカタログ価格の30%あるいは33%で販売しているから,原告の販売価格はこれより安価であるというが(乙104),原告においても,取引の状況によっては,値引割合が例外的に高くなることも考えられるし(甲73),現実に●●●で販売している場合も多く存在するのであるから(甲57),やはり,上記認定は覆されない。 (イ) 1㎡当たりの変動経費 ●●●●円(下記a+b)a仕入費用 ●●●●円本件実施品の仕入費用は,平成21年1月ないし3月において,1㎡当たり●●●●円であったと認められる(甲53)。 b物流費用 ●●●円本件実施品の物流に要した費用は,平成21年において,1㎡当たり●●●円であったと認められる(甲53)。 c宣伝広告費について被告は,本件実施品については,多額の宣伝広告費が支出されているはずであり,これも変動経費となると主張する。 しかしながら,宣伝広告費は,販売数量に応じて変動する費用ではなく,被告商 ついて被告は,本件実施品については,多額の宣伝広告費が支出されているはずであり,これも変動経費となると主張する。 しかしながら,宣伝広告費は,販売数量に応じて変動する費用ではなく,被告商品に対応する本件実施品を販売するために新たに必要であった費用であるとも認められないから,被告の主張には理由がない。 (ウ) 1㎡当たりの利益額 ●●●●円(前記(ア)-(イ)) したがって,本件実施品の1㎡当たりの利益は●●●●円(1枚当たり●●●●●円)となる。 ウ相当因果関係被告は,本件実施品が採用されなかったのは,価格が競業他社に比べて高価であったためであると主張する。 しかしながら,ホテルにおいては,一般に,敷設するカーペットのデザインが重視されると考えられるところ(甲73),本件ホテルが,ビジネスホテルとしてはハイグレードなものとして位置づけられていることからしても(甲54),ホテルの雰囲気を左右するカーペットの意匠は,やはり重視されていたと考えられる。 そして,本件ホテルにおいては,原告が本件実施品により商談を進めていたところ(甲56),本件実施品と意匠が類似する被告商品が採用されていることや,被告が被告商品を他の機会に製造,販売した形跡が窺えないことからも,被告商品の採用と本件実施品の不採用との間に因果関係がないとは考えられず,意匠法39条1項の推定は覆されない。 エ本件意匠の寄与率本件ホテルにおいて,本件実施品は1㎡当たり●●●●円(1枚当たり●●●●●円)で販売される予定であったところ,被告商品は,その●●●●である,1㎡当たり●●●●円(1枚当たり●●●円)で販売されている(乙104)。そして,競合他社が,原告販売商品に類似する商品を低廉に販売する場合,原告としても通常見積価格を大幅 は,その●●●●である,1㎡当たり●●●●円(1枚当たり●●●円)で販売されている(乙104)。そして,競合他社が,原告販売商品に類似する商品を低廉に販売する場合,原告としても通常見積価格を大幅に下回る価格提示を余儀なくされることもあるというのであり(甲73),仮に,原告が本件ホテル用に本件実施品を販売できたとしても,本件実施品について,上記予定価格を維持できなかった可能性は否定できない。 しかし,前述したとおり(前記ウ),ホテルにおいては,一般に,床面のデザインが重視されると考えられ(甲73),タイルカーペットのデザ インが購入の判断に与える影響は大きい。 しかも,被告は,被告意匠を伴った商品を他の機会に販売した形跡は窺えず,原告が宣伝販売活動(甲10ないし47〔枝番省略〕)に力を入れている本件実施品(商品名:ソコイタリ)に類似する被告商品をあえて選択して提供した可能性もまた否定できない(被告商品を製造したのは●●●●●であるが,被告商品を誰がデザインしたかは不明である。)。 これらのことを考慮すれば,被告商品の採用について本件意匠の寄与するところは,80%であったと認めるのが相当である(なお,本件寮への採用については,本件意匠の寄与を示す事情が明らかでなく,寄与率は,本件ホテルの場合の2分の1である40%と認める。)。 オ損害額以上のとおりであるから,原告の損害は,●●●●●●●●円(1円未満切り捨て)となる。 計算式:●●●×(●●●×0.8+●●×0.4)=●●●●●(2) 本件ホテルの廊下部分のカーペットに係る損害原告は,被告による本件意匠権の侵害によって,本件ホテルの廊下部分に敷設するタイルカーペットの取引をも失い,●●●●●●●●円の損害を被ったと主張するので,この点について検討す ペットに係る損害原告は,被告による本件意匠権の侵害によって,本件ホテルの廊下部分に敷設するタイルカーペットの取引をも失い,●●●●●●●●円の損害を被ったと主張するので,この点について検討する。 ア相当因果関係原告従業員の報告書(甲56)には,ホテル等の施設では,客室と廊下に敷設されるカーペットは,同一製造業者の製品を用いることが一般的であるとの記載がある。一方,被告従業員作成の陳述書(乙104)には,必ずしも同一メーカーに発注される必然性はなく,異なるメーカーで発注されることもあるとの記載があるが,上記一般的な取引の実情を否定するものではない。 また,実際にも被告は,本件ホテルについて,客室用に被告商品を, 廊下用に364商品を,それぞれ販売できたのであるし,原告もまた,本件ホテルについて,客室用に本件実施品(商品名:ソコイタリ)を,廊下用に本件実施品と同シリーズであるソコイタリインスピレーションを,それぞれ提示し,具体的な引き合いを受けていたというのである(甲56)。 そして,客室用と廊下用のタイルカーペットを同一業者に発注するとの扱いが一般的であることは,ホテルにおいてインテリアデザインの雰囲気を統一できることや発注手続の煩雑さを回避できること(甲56)などからも,十分理解できるところである。 したがって,被告による本件意匠権の侵害と,原告が廊下部分のタイルカーペットの取引を失ったこととの間には,相当因果関係があると認められる。 イ逸失利益前記アに述べた事実関係によると,その損害(逸失利益)の計算は,次のとおり,前記(1)と同様の方法により行うことが相当と考える。 (ア) 枚数について原告が本件ホテルの廊下用に販売する予定であったソコイタリインスピレーションの枚数は不明であるが 計算は,次のとおり,前記(1)と同様の方法により行うことが相当と考える。 (ア) 枚数について原告が本件ホテルの廊下用に販売する予定であったソコイタリインスピレーションの枚数は不明であるが,364商品と同枚数であると考えられる。 そうしたところ,被告は,本件ホテルの廊下用として,364商品を●●●●枚発注し,同枚数の納品を受け(乙103),これを全て譲渡している。 もっとも,上記●●●●枚のうち,本件ホテルの廊下用として販売されたものは,同年4月20日までに販売が終了した●●●●枚のみであると考えられ,残りの枚数は,その販売時期からして,いずれも本件ホテルの廊下用として販売されたものとは認められない(乙10 4,105の3・4・6,乙106の3,乙107の2・3)。 したがって,原告が取引を失った,本件ホテルの廊下部分に敷設するタイルカーペットの枚数は,●●●●枚であると認められる。 (イ) 利益についてa1㎡当たりの販売価格 ●●●●円原告が本件ホテルの廊下用に販売する予定であったソコイタリインスピレーションの販売価格は,1㎡(4枚)当たり9500円であるが(甲71),●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1㎡当たり●●●●円であったと認められる(甲53,57,73)。 b1㎡当たりの変動経費 ●●●●円(下記(a)+(b))(a) 仕入費用 ●●●●円ソコイタリインスピレーションの仕入費用を示す証拠は提出されていない。 もっとも,原告は,ソコイタリインスピレーションの仕入費用は1㎡当たり●●●●円であったと主張しているところ,ソコイタリインスピレーションと同シリーズである本件実施品について,カタログ価格が9100円であり,仕入価格が●●●●円であることからして,カタ は1㎡当たり●●●●円であったと主張しているところ,ソコイタリインスピレーションと同シリーズである本件実施品について,カタログ価格が9100円であり,仕入価格が●●●●円であることからして,カタログ価格が9500円であるソコイタリインスピレーションの仕入費用は,原告の主張する●●●●円であったと認める。 参考計算式:●●●×9,500÷9,100≒●●●●(b) 物流費用 ●●●円ソコイタリインスピレーションの物流に要した費用は,平成21年において,1㎡当たり●●●円であったと認められる(甲53)。 c1㎡当たりの逸失利益 ●●●●円(前記a-b) したがって,ソコイタリインスピレーションの1㎡当たりの逸失利益は●●●●円(1枚当たり●●●●●円)となる。 (ウ) 本件意匠の寄与率原告は,364商品(乙78)の販売について,本件意匠権の侵害を主張するものではなく,364商品の意匠は,本件意匠と類似するものではない。そして,364商品の販売に関し,被告による本件意匠権の侵害(被告商品の販売)は,その契機となったに過ぎない。 また,本件ホテルにおいて,ソコイタリインスピレーションは,1㎡当たり●●●●円(1枚当たり●●●●●円)で販売される予定であったところ,364商品は,その●●●●の価格である,1㎡当たり●●●●円(1枚当たり●●●円)で販売されている。そして,競合他社が,原告販売商品に類似する商品を低廉に販売する場合,原告としても通常見積価格を大幅に下回る価格提示を余儀なくされることもあるというのであり(甲73),仮に,原告が廊下部分のタイルカーペットの取引を失わなかったとしても,ソコイタリインスピレーションについて,上記予定価格を維持できなかった可能性は否定できない。 これらのことを であり(甲73),仮に,原告が廊下部分のタイルカーペットの取引を失わなかったとしても,ソコイタリインスピレーションについて,上記予定価格を維持できなかった可能性は否定できない。これらのことを考慮すれば,364商品の採用について本件意匠の寄与するところは,20%と認めるのが相当である。 (エ) 逸失利益の額以上のとおりであるから,原告の損害は,●●●●●●●●円(1円未満切り捨て)となる。計算式:●●●×●●●×0.2=●●●● (3) 弁護士費用本件訴訟の難易度や認容額等,一切の事情を考慮すれば,本件において相当な弁護士費用は,34万円と認める。 (4) まとめ 以上のとおりであるから,原告の損害は,前記(1)の●●●●●●●●円,前記(2)の●●●●●●●円,前記(3)の34万円の合計額である367万7428円となる。 第5 結論以上のとおりであるから,原告の請求は,主文記載の限度において理由がある(前提事実(3)のとおり,被告は,被告商品を製造しているとは認められず,製造の差止めについては必要性を認めることができない。)。なお,主文2項に係る仮執行宣言は,相当でないから,これを付さないこととする。よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官達野ゆき 裁判官西田昌吾 (別紙)被告商品目録表面の形態が下記写真の模様からなるタイルカーペット 以上 (別紙) (別紙)被告商品目録表面の形態が下記写真の模様からなるタイルカーペット 以上 (別紙)本件意匠目録 【正面図】 【背面図】 【平面図】 【底面図】 【右側面図】 【左側面図】 以上

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