判決平成14年6月4日神戸地方裁判所平成14年(わ)第19号保護責任者遺棄致死被告事件 主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成12年4月2日に母親が死亡してから,兵庫県明石市Aa丁目b番c号の自宅において,かねてから自室に引きこもり,被告人以外の第三者と接触することがない状態であった被告人の実弟のV(当時44歳)とともに,二人だけで居住し,生活していたものであるが,平成13年8月下旬ころ,Vが極度の栄養失調状態に陥り,自ら食料を購入するなどして食事を摂ることができない状態にあったのであるから,Vの実兄として,Vに十分な食事を摂取させるとともに,医師による治療を受けさせる等,Vの生存に必要な保護をなすべき責任があったにもかかわらず,そのころから同年9月上旬ころまでの間,漫然とその状態を継続し,Vに十分な食事を与えず,医師による治療等の措置をとらないで,Vの自室に放置し,よって,そのころ,同所において,Vを飢餓により死亡するに至らせた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為は,刑法219条(218条)に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 被告人 予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 被告人は,被害者が文字どおり骨と皮の極端な栄養失調状態にあったことを知りつつ,被害者が被告人のもとに食事を求めてくるうちは大丈夫だろうし,被害者は病院が嫌いだったから病院には連れていかなくて構わないなどと自分勝手に決めつけ,被害者に十分な食事を与えず,病院で適切な治療を受けさせなかったばかりか,飢えた被害者が,被告人の管理していた食糧を2回勝手に取って食べたことに立腹し,それ以後は,被害者が求めてきても食料を分け与えることをせず,その結果,被害者を餓死させたものである。被告人は,被害者の精神疾患により被告人以外に頼る者がいないことを十分知りながら,前記のような動機から,その保護を放棄したもので,その行為態様は不作為による殺人にも比肩すべきものであり,ひもじさにさいなまれ,ついには餓死するに至った被害者の苦しみや無念さは計り知れない。加えて,被告人は,被害者が死亡したことを知った後も,警察官に届けることもせず,約3か月後,警察官によりミイラ化した無惨な状態で発見されるまで放置していたこと等の事情を併せ考えると,被告人の刑事責任は重大であるといわざるを得ない。 2 しかしながら,他方,被告人は当公判廷において,反省の情を表していること,被害者はかねてより精神疾患によって,他人との意思疎通能力に問題があったとうかがわれるところ,被告人も被害者との間に十分な意思疎通を図ることができず,被害者の状況を認識することが若干困難であったと認められること,被告人には罰金前科1犯のほかに前科がないことなど,被告人に有利な事情も認められる。 3 そこで,これらの事情を総合 を図ることができず,被害者の状況を認識することが若干困難であったと認められること,被告人には罰金前科1犯のほかに前科がないことなど,被告人に有利な事情も認められる。 3 そこで,これらの事情を総合考慮して,被告人に対しては,主文の刑に処した上,その執行を猶予し,被告人の今後の生活の立て直しを図り,その際に行政的な支援を受けられるよう,専門家により強力に援助してもらうため,その猶予の期間中被告人を保護観察に付することとする。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・懲役4年)平成14年6月4日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸
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