1 令和5年10月4日判決言渡令和3年(ネ)第10061号 損害賠償請求控訴事件、特許権侵害による損害賠償請求債務不存在確認等請求控訴事件(原審 大阪地方裁判所 平成30年(ワ)第5037号(以下「第1事件」という。)、令和2年(ワ)第10857号(以下「第2事件」という。))5口頭弁論終結の日 令和5年7月5日判 決 控訴人兼被控訴人 株式会社ヒラノテクシード(以下「一審原告」という。)10 同訴訟代理人弁護士 中 井 康 之同 青 海 利 之同 飯 島 奈 絵 15一審原告補助参加人 ピーアイ アドバンスト マテリアルズカンパニー・リミテッド(以下「参加人」という。) 同訴訟代理人弁護士 門 口 正 人20同 上 田 裕 康同 城 山 康 文同 後 藤 未 来 被控訴人兼控訴人 株式会社カネカ25(以下「一審被告」という。)2 同訴訟代理人弁護士 平 野 惠 稔同 黒 田 佑 輝同 吉 村 幸 祐同 渡 辺 洋5主 文1 一審被告の控訴に基づき原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 2 前項の部分につき一審原告の訴えをいずれも却下する。 3 一審原告の本件控訴を棄却する。 洋5主 文1 一審被告の控訴に基づき原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 2 前項の部分につき一審原告の訴えをいずれも却下する。 3 一審原告の本件控訴を棄却する。 4 一審原告の当審における拡張請求を棄却する。 105 訴訟費用は、第2事件に係る知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10059号事件判決及び最高裁判所平成31年(受)第619号事件判決により負担が確定した部分を除き、第1事件については第1、2審を通じ、第2事件については第1審、差戻し前の控訴審、上告審、差戻し後の第1審及び差戻し後の控訴審を通じ、参加人に15生じた費用は参加人の負担とし、その余は一審原告の負担とする。 6 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由第1 控訴の趣旨201 一審原告(1) 原判決中一審原告敗訴部分を取り消す。 (2) 一審被告は、一審原告に対し、1億3000万円及びこれに対する平成30年6月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 一審被告は、一審原告に対し、1億円及びこれに対する令和3年12月1257日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え(一審原告は、当審3 においてこの請求を追加して請求を拡張した。)。 (4) 一審被告の控訴を棄却する。 (5) (2)、(3)につき仮執行宣言2 一審被告(1) 主位的控訴の趣旨5主文同旨(2) 予備的控訴の趣旨ア 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 イ 一審原告が製造販売した原判決別紙2機械装置目録記載の機械装置を、参加人が使用して原判決別紙3製品目録記載のポリイミドフィルム製品10を製造したこと及び同製品を販売した 訴部分を取り消す。 イ 一審原告が製造販売した原判決別紙2機械装置目録記載の機械装置を、参加人が使用して原判決別紙3製品目録記載のポリイミドフィルム製品10を製造したこと及び同製品を販売したことに関し、一審被告が一審原告に対し、原判決別紙1特許権目録記載の特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有しないことを確認するとの請求を棄却する。 ウ 主文第3項、第4項同旨第2 事案の概要等151 事案の要旨(1) 事実の概略ア 一審被告は、原判決別紙1特許権目録記載1の日本における特許権(後記「本件日本特許権」)及び同目録記載2の米国における特許権(後記「本件米国特許権」)を有していた。 20イ 一審原告は、前記各特許権などについて、平成5年(1993年)12月に、一審被告と実施許諾契約(後記「本件実施許諾契約」)を締結した。 ウ 一審原告は、原判決別紙2機械装置目録記載1ないし4の機械装置(後記「本件各機械装置」)を、韓国の会社2社に販売納入し、一審原告と韓国の前記両会社は、それぞれ、本件各機械装置の売買契約において、特許権25侵害の訴訟等があった場合は、一審原告が韓国の両会社にその対処に要す4 る全ての費用等を支払うことを約した(後記「本件補償合意」)。 エ 平成20年4月、韓国の両会社が、両社のポリイミドフィルム製品の製造販売事業を統合し、合弁会社として参加人(商号変更前)を設立し、参加人は、一審原告の承諾を得て、本件各機械装置の売買契約に基づく権利義務を韓国の両会社より承継し、同月以降、本件各機械装置を使用して原5判決別紙3製品目録記載のポリイミドフィルム製品(後記「本件各製品」)を製造し、同製品は、最終製品の形で、米国に輸入された。 オ 一審被告は、平成22年7月、参加人などに対し、本件各製 して原5判決別紙3製品目録記載のポリイミドフィルム製品(後記「本件各製品」)を製造し、同製品は、最終製品の形で、米国に輸入された。 オ 一審被告は、平成22年7月、参加人などに対し、本件各製品の米国への輸入、販売等の行為が一審原告の本件米国特許権を侵害するとして損害賠償等を求める訴訟を米国において提起した(後記「本件米国訴訟」)。そ10の後、一審被告の請求を認容する旨の米国における判決が確定し、参加人は、令和2年11月6日、認容金額に判決後の利息等を加えた14億円余りを一審被告に支払った。 カ 一審原告は、参加人に対し、令和2年9月頃、本件補償合意に基づき、参加人が本件米国訴訟の認容判決に基づいて支払った金額等669万421518.82ドルを支払った。 (2) 請求の概要第1事件は、一審原告が、一審被告が本件米国訴訟を提起し追行したことは、本件実施許諾契約の債務不履行又は不法行為に当たると主張し、本件米国訴訟における参加人支援のための費用、本件米国訴訟の提起による一審原20告の信用棄損、第1事件の訴訟提起のための弁護士費用の損害合計1億3090万0851円の一部である1億3000万円及びこれに対する平成30年6月16日(第1事件の訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下「旧民法」という。)所定の年5分の遅延損害金の支払を求めた事案である。 25後記第2事件の経緯記載の差戻し等を経た後の第2事件は、一審原告が製5 造販売した原判決別紙2機械装置目録記載の本件各機械装置を、参加人が使用して本件各製品を製造したこと及び同製品を販売したことに関し、一審被告が一審原告に対し、本件各特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を求めた事案である。 機械装置を、参加人が使用して本件各製品を製造したこと及び同製品を販売したことに関し、一審被告が一審原告に対し、本件各特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を求めた事案である。 (3) 原判決の内容及び当審における訴えの追加的変更5ア 原判決は、一審原告の第1事件の請求を棄却し、第2事件の請求を認容したところ、一審原告と一審被告の双方が控訴した。 イ 一審原告は、当審において、本件実施許諾契約の債務不履行又は不法行為に基づき、一審被告に対し、一審原告が本件補償合意に基づき参加人に対して支払った669万4218.82ドルの一部である1億円及びこれ10に対する訴え変更申立書送達の日の翌日である令和3年12月17日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の請求を追加し、請求を拡張した。 2 前提事実並びに第2事件及び関連事件の経緯等(1) 前提事実は、次のとおり補正するほか、原判決第2の1(原判決3頁1行15目から7頁18行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決5頁3行目の「とおりである」の次に「(その特許に係る請求項1ないし6の記載は後記第4、4(3)アのとおりである。)」を加え、同5頁9行目の「方法の発明」を「本件日本特許権における方法及び物を生産する方法並びに本件米国特許権におけるmethod(方法)の発明」と、同頁2200行目の冒頭から同6頁2行目までを以下のとおりに、それぞれ改める。 「(4) 本件各特許権に関する実施許諾の契約一審原告と一審被告は、下記のとおりの記載のある『特許実施許諾契約書』を取り交わした(甲3。以下『本件契約書』と、そこに記載された内容の合意を『本件実施許諾契約』と、その条項をそれぞれ『本25件実施許諾契約第1条』等と のとおりの記載のある『特許実施許諾契約書』を取り交わした(甲3。以下『本件契約書』と、そこに記載された内容の合意を『本件実施許諾契約』と、その条項をそれぞれ『本25件実施許諾契約第1条』等という。)。 6 本件契約書には作成日付けを記入する『平成 年 月 日』との不動文字の記載があるが、そこに日付けは記載されていないものの、平成5年(1993年)12月2日頃に、記名押印の上で、これを取り交わしたものとみられる(この点、一審原告は、一審原告が保管するものには日付けが記載されていないが、一審被告の保管するものに5は平成5年12月2日の日付けが記入されているとする(一審原告平成30年6月7日付け証拠説明書2頁)。)。 本件契約書に日付けが記載されていない点については、平成5年12月9日、当時一審原告の依頼していた弁理士から、契約の有効期間の始期の関係で日付けがないのは不適切であるとして、一審原告に10対しその旨の指摘がされた(甲82)が、日付けが記入されることはなかった。契約当事者である一審原告について、代表取締役の記名と代表者の職印の押印があるが、一審被告については、社印の押印と、常務取締役であるA(以下「A’」という。)の記名、同人個人の印鑑の押印がある。 15記特許実施許諾契約書鐘淵化学工業株式会社(以下甲という。)と株式会社ヒラノテクシード(以下乙という)とは、甲が所有する特許(①日本特許出願番号特願平1-62838号、発明の名称「樹脂フィルムの連続製造方法20及び装置及び設備」、②米国特許No.5075064、③カナダ特許出願番号No.2012138、④EP 出願番号No.90104765)(以下本特許権という。)について、次のとおり契約する。 及び装置及び設備」、②米国特許No.5075064、③カナダ特許出願番号No.2012138、④EP 出願番号No.90104765)(以下本特許権という。)について、次のとおり契約する。 (実施権の許諾)第1条 甲は、本特許権についてその範囲全部にわたる独占的通常実25施権を乙に許諾する。但し甲及び甲の関係会社である米国法人アラ7 イドアピカル株式会社は、第三者からの本特許権の範囲に含まれる装置及び設備の購入も含め無条件で本特許権を実施できるものとする。 第2条 甲は、乙が自己の費用で本契約によって許諾された実施権の設定登録をすることに同意し、乙の請求によりこれに必要な書類を5無償で乙に提供するものとする。 第3条 乙は本契約締結後、それまでに甲が負担した本件特許取得並びに維持に要した費用の半額を、速やかに甲に支払う。それ以後に発生する当該費用については、費用発生の都度、甲は乙にその費用の半額を請求し、乙は速やかに甲に支払う。 10(甲に対する優遇措置)第4条 本特許実施許諾の対価に代わるものとして、甲が乙に機械又は装置を発注する場合は、乙は事前に詳細項目にわたる見積書を作成して甲と見積り価格について十分協議を行うものとし、他社同等品と比して甲に最も有利な見積り価格とするよう最大限の努力を15する。 (実施上の責任)第5条 甲は、本特許権の実施に関する技術上、経済上その他一切の事項について、乙又は第三者に対し何らの責任を負わない。乙は、本特許権の実施に関し第三者からその所有する権利の侵害を理由20とする訴訟その他紛争が生じた場合には、自らの責任でこれを解決する。但し、この場合乙の請求により甲は当該紛争の解決に役立つ資料の提供その他の援助を乙に対して行う。 (不争義務)第6条 20とする訴訟その他紛争が生じた場合には、自らの責任でこれを解決する。但し、この場合乙の請求により甲は当該紛争の解決に役立つ資料の提供その他の援助を乙に対して行う。 (不争義務)第6条 乙は、直接又は間接に本特許権の効力を阻害する一切の行為25をしてはならない。 8 (侵害の排除)第7条 乙は、第三者が本特許権を侵害し又は侵害しようとしていることを知ったときは直ちにその旨を甲に通知し、侵害の排除又は予防について甲に協力するものとする。 (解約)5第8条 甲及び乙は、誠意をもって本契約を履行し、甲又は乙が本契約に違背して相手方に損害を与えた場合には、その賠償の責を免れないものとする。 2.甲及び乙は、相手方が本契約に違背して書面による警告後60日を経過するもその違背が是正されない場合には、本契約を解除す10ることができる。 (契約有効期間)第9条 本契約の有効期間は、本契約締結の日から本特許権の消滅の日までとする。 (協議)15第10条 本契約に定めのない事項若しくは本契約の解釈について疑義が生じた場合には、その都度甲乙協議の上これを定める。 本契約の締結の証として、本書2通を作成し、甲及び乙は記名押印のうえ各1通を保有する。」20イ 同6頁25行目の「アメリカ合衆国(以下「米国」という。)」を「米国」と、同頁26行目の「本件米国訴訟の経緯」を「本件米国訴訟の経緯と同訴訟係属中における一審原告による一審被告への申入れ内容」とそれぞれ改め、同7頁7行目の末尾の次を改行し次のとおり加える。 「イ 本件米国訴訟が提起された後の平成23年5月23日、一審原告は、25一審被告に対し、以下の書面(乙32の1)を送付し、申入れをした。 9 乙32の1には以下の記載が おり加える。 「イ 本件米国訴訟が提起された後の平成23年5月23日、一審原告は、25一審被告に対し、以下の書面(乙32の1)を送付し、申入れをした。 9 乙32の1には以下の記載がある。 『株式会社カネカ御中 平成23年5月23日O技術統括部長殿SKC KOLON PI から貴社への正式申入れ 5・・・先般、ポリイミドフィルム(以下、PI)の韓国大手である、SKCKOLON PI(以下SPKIママ)の要請を受け下記の通り、会合を持ちました。(尚、SKPI は韓国大手財閥SK グループとKOLON の50:50の合弁会社です。弊社の如き一中小機械メーカーが、貴社に対して誠10にもって僭越至極では有りますが、長年の韓国両グループ会社と弊社との種々のフィルム用コーター販売などの取引関係から、強い依頼を受けたものであります。 ① 会合参加者:SKC B(SKC オーナー)KOLON C(KOLON 社長、CEO)15SKPI D(SKIP 社長、CEO)ヒラノテクシード E(取締役社長)、F(取締役 化工機械部長)② 依頼事項:貴社とPI 事業に関し、共同取り組みをする為の弊社への橋渡しの依頼(具体的には、韓国両グループの代表として是非20貴社との面談を出来るだけ早目にさせて欲しいと言う事です。)弊社としては、貴社がPI に関する特許問題でSKPI 社を、提訴しておられる事は承知しております。韓国側としては、恐らく特許で争うより、国際的にアライアンス等で組む方が双方に取り実利が有ると判断しているものだと思います。以下、先般の会合での韓国側の申入25れの られる事は承知しております。韓国側としては、恐らく特許で争うより、国際的にアライアンス等で組む方が双方に取り実利が有ると判断しているものだと思います。以下、先般の会合での韓国側の申入25れの趣旨をご説明致します。 10 ・・・』(乙32の1)ウ これに対して一審被告は、平成23年5月26日付けで、一審原告に対し、申入れ内容には、国内外の競争法(独占禁止法)に違反する可能性がある内容が含まれていること、代理人弁護士を立てて係争中であり、連絡は遠慮してほしいことや今後は何ら返事をしないこともある旨な5どを回答した(乙33の1)。 エ ところが、平成23年12月20日に至り、一審原告代表者E は、一審被告代表者に宛て、再度、以下の書面(乙34の1)を送付し、申入れをした。乙34の1には以下の記載がある。 『実は、現在、貴社と韓国のSKC コローン殿とポリイミドフィルム製造10装置に関し、アメリカITC で係争中とお聞きしております。就きましては今年の5月頃、韓国側より貴社と和解の方法を見い出せないものか、E さん何とか仲介していただけないでしょうかと依頼を受けました。早速国内の某社を通じ貴社へご挨拶をお受けされ、とりあえず一度ご面会の場でも設けられてはいかがですかと打診しましたが、拒否15されたようです。 しかし12月に入りまして再度仲介依頼がありました。2回もカネカ殿に申し上げることは失礼に当たるとお断り致しましたが、韓国側は何とか誠意をもって、かつ腹案をもって前向きに対応させていただくので、再度お願いしていただけないでしょうかとの強い要望です。両20社におかれましては高額な裁判費用と長時間を費やすことは大変なことと考えます。就きましては、再度韓国側の意向を、直接貴社にお伝えしたいと考えペンを取った けないでしょうかとの強い要望です。両20社におかれましては高額な裁判費用と長時間を費やすことは大変なことと考えます。就きましては、再度韓国側の意向を、直接貴社にお伝えしたいと考えペンを取った次第です。・・・』オ 一審被告は、これに対し返答をしなかった。」ウ 同7頁8行目の「イ」を「カ」と、同頁14行目の「ウ」を「キ」とそ25れぞれ改め、同頁18行目の末尾の次を改行し次のとおり加える。 11 「(7) 本件実施許諾契約締結後の状況本件各特許権につき、本件実施許諾契約第3条に基づく、一審原告による本件各特許権の取得及び維持(登録料)等に関する費用の支払ないし負担はされていない。これにつき一審原告は、一審被告からの請求がなかったからであるとする(当審における令和4年8月31日5付け一審原告第3準備書面62頁)。」(2) 事件の経緯及び請求の要旨については、次のとおり補正するほか、原判決第2の2(原判決7頁19行目から同9頁25行目まで)に記載のとおりでるから、これを引用する。 ア 原判決7頁19行目を「2 第1、第2事件の経緯及び請求の要旨、第102事件及び関連事件の経緯等」と、同8頁17行目の「当裁判所」を「大阪地方裁判所」とそれぞれ改める。 イ 同9頁25行目の末尾の次を改行し、次のとおり加える。 「(4) 関連事件の経緯等参加人は、平成30年、一審被告に対し、本件各製品を製造販売した15ことにつき本件日本特許権及び本件米国特許権を侵害するものとして不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認並びに被控訴人が本件米国訴訟を提起したことにより被った損害1031万5166.915米ドル及び12億7000万6272ウォンの支払を求める訴訟(以下『別件訴訟』という。)を大阪地方 ないことの確認並びに被控訴人が本件米国訴訟を提起したことにより被った損害1031万5166.915米ドル及び12億7000万6272ウォンの支払を求める訴訟(以下『別件訴訟』という。)を大阪地方裁判所に提起した(同裁判20所平成30年(ワ)第5041号損害賠償等請求事件)。 大阪地方裁判所が損害賠償請求権を有しないことの確認を求める訴えを却下し、その余の参加人の請求をいずれも棄却する判決をしたところ、参加人は知的財産高等裁判所に控訴したが(同裁判所令和3年(ネ)第10026号損害賠償等請求控訴事件)、同裁判所は、令和3年9月2530日、参加人の控訴を棄却する判決をし、同判決は確定した(乙88、12 90)。 別件訴訟において、知的財産高等裁判所は、本件実施許諾契約には控訴人から機械装置を購入して本件各発明(製法特許)を実施した者に対する不提訴義務が規定されていないことはもちろん、控訴人に対する不提訴義務についても規定されておらず、事情が変更する可能性があり5様々な形態をとり得る特許権者と実施権者ないし実施権者からの機械装置の購入者の将来の紛争について、明文の規定もなく不提訴の合意があったと軽々に認めることはできない、などとして本件実施許諾契約が参加人に対する不提訴義務を定めていると認めることはできないと判断した。」103 争点本件の争点については、次のとおり補正するほか、原判決第2の3(原判決10頁1行目から8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決10頁2行目の冒頭から3行目の末尾までを次のとおり改める。 15「(2) 本件実施許諾契約に基づき、一審被告は、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許を実施して生産された本件各製品に対し 行目の冒頭から3行目の末尾までを次のとおり改める。 15「(2) 本件実施許諾契約に基づき、一審被告は、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行使してはならない義務を負うか」(2) 同10頁6行目の冒頭から同頁7行目の末尾までを削り、同頁8行目の「(5)」を「(4)」と、同行目の「損害の発生及び」を「損害の発生の有無及20び」とそれぞれ改める。 (3) 同頁8行目の末尾の次を改行し次のとおり加える。 「(5) 当審における訴えの追加的変更の許否(6) 一審被告は、本件実施許諾契約の債務不履行若しくは不法行為又は不当利得に基づき、本件補償合意に基づいて一審原告が参加人に支払25った金銭について、一審原告に対して支払義務を負うか13 (7) 一審原告の債務不存在確認の訴えの利益の有無(第2事件の主位的控訴の趣旨)(8) 本件各特許権の侵害に基づく損害賠償請求権の発生原因事実が立証されているか(第2事件の予備的控訴の趣旨)」4 争点についての当事者の主張5争点についての当事者の主張は、次のとおり補正し、後記5のとおり当審における当事者の主な補充主張を付加するほかは、原判決第3(原判決10頁10行目から47頁5行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決10頁12行目から同頁16行目までを削る。 10(2) 同11頁19行目の「争点(2)」から同頁20行目の末尾までを次のとおり改める。 「争点(2)(本件実施許諾契約に基づき、一審被告は、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許権を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行使してはならない義務を負うか)」15(3) (本件実施許諾契約に基づき、一審被告は、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許権を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行使してはならない義務を負うか)」15(3) 同12頁5行目の「約の第1条」を「約第1条」と、同17頁13行目の「G」を「G’」とそれぞれ改める(以後の表記をすべて「G’」と改めることについて同様である。)。 (4) 同23頁9行目の「本件発明」を「本件各発明」と、同頁12行目の「1940年」を「昭和15年(1940年)」とそれぞれ改める。 20(5) 同24頁1行目の「本件発明」を「本件各発明」と、同頁3行目の「ジェット方」を「ジェット式」と、同26頁19行目の「被告の挙動」を「経過となること」と、同27頁23行目の「本件発明」を「本件各発明」とそれぞれ改め、同28頁25行目の「することを」の次に「無制限に」を加え、同29頁11行目の「本件」を削る。 25(6) 同30頁8行目ないし9行目の「方法の発明」を「方法の発明(本件日14 本特許権につき物を生産する方法の発明を含む。『方法の発明』という場合につき、以下同じ。)」と改め、同頁16行目及び同31頁1行目の各「本件」をそれぞれ削り、同38頁16行目の「最判昭和63年1月26日」を「最高裁昭和60年(オ)第122号同昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁(以下『昭和63年最判』という。)」と改め5る。 (7) 同44頁17行目の「本訴」の次に「(第1事件)」を加える。 5 当審における当事者の主な補充主張(1) 争点(3)(一審被告による本件米国訴訟の提起又は追行が、本件実施許諾契約の債務不履行又は不法行為に当たるか)について10〔一審原告の主張〕ア 一審被告の行為は、以下 張(1) 争点(3)(一審被告による本件米国訴訟の提起又は追行が、本件実施許諾契約の債務不履行又は不法行為に当たるか)について10〔一審原告の主張〕ア 一審被告の行為は、以下のとおり一審原告に対する債務不履行及び不法行為となる。 本件実施許諾契約のもと、一審被告は一審原告に許諾した独占的通常実施権の行使ないしその実現・享受を害してはならない義務を負う。本15件各発明は一審原告が発明し、一審被告は違法に特許を申請・取得したものであり、こうした経緯に基づき本件実施許諾契約が締結されたことを踏まえれば、一審被告は、当然に、本件実施許諾契約により一審原告に許諾された独占的通常実施権の行使ないしその実現・享受を害してはならない義務を負う。加えて、一審被告は、一審原告の契約上の権利(独占20的通常実施権)を害するような形で、当該契約に関して事実に反する主張・立証を裁判所等に行ってはならないことも、信義則等に照らして当然である。 契約を締結し、契約の相手方に権利(本件では独占的通常実施権)を付与した以上、相手方の契約上の権利の実現・享受に協力し、これを害しな25いようにすべきは当然の義務である。とりわけ、本件では、本件各特許に15 係る発明をしたのが一審原告のKであるのに、一審被告が一審原告に無断で特許を取得してしまったことを踏まえて、一審原告に範囲全部にわたる独占的通常実施権が許諾された経緯があり、一審原告による実施権の享受を保護すべき必要性は高い。他方で、一審被告は、本来、本件各特許権の正当な権利者ではなく、その権利行使、とりわけ一審原告の顧客5に対する場合には、相当の慎重さが要求されて然るべきである。仮に、原審認定のように本件各発明が一審原告と一審被告の共同発明であるとしても、一審被告が適法 、その権利行使、とりわけ一審原告の顧客5に対する場合には、相当の慎重さが要求されて然るべきである。仮に、原審認定のように本件各発明が一審原告と一審被告の共同発明であるとしても、一審被告が適法に得べかりしはせいぜい共有名義にすぎず、本件米国特許についていえば、本来、共有者である一審原告の同意なくして第三者に特許権行使はできないはずのものだからである。 10なお、一審原告は、機械装置の製造販売を業とする装置メーカーであり、自ら機械装置を用いてフィルム等を製造・販売するものではないから、一審原告にとっての独占的通常実施権の実現・享受とは、専ら本件各特許を実施して製造した機械装置を第三者(機械装置を使用してフィルムを製造するメーカー)に販売してその利用に供することにある。その15ような一審原告の業態は、一審被告も、当然に認識していた。 しかるに、一審被告は、参加人が使用した機械装置が一審原告製のものであり、したがって本件各特許権の侵害は成り立たないことを認識し、あるいは容易に認識し得たのに、参加人に対する本件米国訴訟を提起・追行し、一審原告による独占的通常実施権の行使ないしその実現・享受20を害したものである。 しかも、一審被告は、本件米国訴訟の提起・追行において、本件実施許諾契約の締結経緯を記憶する者が誰一人として見つからなかったにもかかわらず、その経緯について知っているかのように虚偽を述べた吉岡の供述・証言を援用し、それに沿った虚偽のストーリーを主張・立証して、25一審原告の契約上の権利(独占的通常実施権)の実現・享受を害したもの16 である。 このような一審被告の行為は、一審原告との本件実施許諾契約の本旨に著しく反し、契約上の信義にも大きく悖るものであり、一審原告に対する債務不履行・不法行為を構成する 害したもの16 である。 このような一審被告の行為は、一審原告との本件実施許諾契約の本旨に著しく反し、契約上の信義にも大きく悖るものであり、一審原告に対する債務不履行・不法行為を構成することは明らかである。 イ 原判決は、一審原告の販売先であり方法特許を実施した参加人に対し5て一審被告が本件米国訴訟を提起・追行したことが、一審原告に対する債務不履行ないし不法行為となる要件について、「請求が失当であることが一義的に明確、あるいは抗弁が成立することが一義的に明確であり、必ずや請求が棄却されるであろう場合に、製造元(機械装置の製造元であり実施許諾の相手方である一審原告)を害する意図をもってあえて販10売元を訴えたような場合に」限定されると解釈した(原判決101頁~102頁)本件の一連の経緯等に鑑みれば、本件にて原判決が採用した上記限定要件を適用することは明らかに誤りである。本件各特許は一審原告が少なくとも共同で発明したものであり、一審被告は一審原告に無断で違法15に特許を出願して取得したものである。そして、一審原告が本来の権利者であり、特許権者と同じ権利を一審原告に与えることを一審被告に主張し、それをいれる形で、一審原告が本来の権利者である点につき一審被告から反論がされることなく、一審原告の要求に従って、本件実施許諾契約が締結され、一審原告に対する範囲無制限の独占的通常実施権が20許諾された。 かかる経緯に鑑みれば、一審被告による債務不履行の要件について、原審のような極めて限定的な基準を採用する合理性・正当性はない。原審の限定的な基準は、瑕疵のない権利を有する特許権者が、何ら契約関係等にない被疑侵害者に対して訴訟提起した場合に、それが例外的に違法25とされる要件と同水準の厳格なものである。しかるに、本 。原審の限定的な基準は、瑕疵のない権利を有する特許権者が、何ら契約関係等にない被疑侵害者に対して訴訟提起した場合に、それが例外的に違法25とされる要件と同水準の厳格なものである。しかるに、本件では、瑕疵の17 ない特許権者と何ら契約関係等のない被疑侵害者との間の問題とは大きく事情が異なり、一審被告は瑕疵のある特許権を有する者にすぎず、他方、一審原告は、本件特許の真の(少なくとも共同の)発明者であり、本来は何の制約もなく正当に特許権を行使・実施できる者である。にもかかわらず一審被告が一審原告に無断で特許を出願して権利取得してしま5い、一審原告が気付いた時点では一審原告を権利の名義人とすることは手続的にできなかったことを踏まえて、冒認者である一審被告から一審原告に対して範囲無制限の独占的通常実施権を許諾することとされたものである。そのような一審原告の独占的通常実施権の保護について、瑕疵のある権利を有するにすぎない一審被告の権利行使を、単なる一般の10被疑侵害者と同列に扱えるはずはなく、その点からして原審の限定的な基準は失当である。 ウ 一審原告製装置を使用する第三者に対する一審被告の本件各特許権の行使は、一審原告に対する債務不履行を構成する。 本件各特許は一審原告が少なくとも共同で発明したものであり、一審15被告は一審原告に無断で出願・取得した瑕疵ある特許権を有するにすぎないから、本来の権利者でもあり無制限の独占的通常実施権を有する一審原告との関係においては、一審原告製装置を使用する第三者に対する一審被告の本件各特許権の行使が、一審原告による独占的通常実施権の実現・享受を害する場合は、免責事由のない限り、債務不履行が成立す20る。そして、本件では、少なくとも以下のような態様において、一審被告には債務不履 権の行使が、一審原告による独占的通常実施権の実現・享受を害する場合は、免責事由のない限り、債務不履行が成立す20る。そして、本件では、少なくとも以下のような態様において、一審被告には債務不履行が成立する。 一審被告は、一審原告に事実確認をすることなく、参加人に対し、本件各特許権を行使した。まず、一審被告は、瑕疵のある特許権者として一審原告に対して無制限の独占的通常実施権を付与していたのであるから、25一審原告以外の第三者である参加人に対して本件各特許権を行使しよう18 とする場合であっても、その権利行使をする前に、権利行使しようとする相手方を参加人と特定して一審原告に問い合わせをし、権利行使の可否につき一審原告の確認を得るべきであった(しかも、確認を得ることは極めて容易に可能であった)から、一審原告から本件各機械装置を購入した参加人に対して、一審原告に事実確認をすることなく本件各特許5権を行使したことは、一審原告に対する債務不履行となる。一審被告に、このような一審原告に対する確認義務を課したとしても、それは、瑕疵のある特許権を有するにすぎない一審被告としては、一審原告との契約(一審原告に対し負った、一審原告製装置を使用する顧客に対して本件各特許権を行使しない不作為義務)を遵守し、一審原告の実施権の実現・10享受を侵害しないためには必要な手続きであり、真の権利者である一審原告に無断で本件各特許を出願・取得した、瑕疵のある特許権者にすぎない一審被告による本件各特許権行使を不当に制限することにはならない。 また、一審被告は、参加人の使用した機械装置が一審原告製であること15を認識したのに、参加人に対する本件米国訴訟を提起・追行した。しかも、その中で、一審被告は、参加人による本件実施許諾契約に基づく抗弁を排 告は、参加人の使用した機械装置が一審原告製であること15を認識したのに、参加人に対する本件米国訴訟を提起・追行した。しかも、その中で、一審被告は、参加人による本件実施許諾契約に基づく抗弁を排斥する目的で、本件実施許諾契約の締結経緯に関する吉岡の虚偽の供述・証言を虚偽と知りつつ援用し、意図的に、当該契約の締結経緯に関して事実に反する主張立証を展開した。 20かかる一審被告の行為は、一審原告の本件独占的通常実施権の享受を不当に害するもので、一審原告との本件実施許諾契約の本旨に著しく反し、契約上の信義にも大きく悖るものであり、一審原告に対する債務不履行を構成することは明らかである。 エ 一審被告には、一審原告に対する不法行為も成立する。一審被告の行為25は、本件の一連の経緯に鑑みて保護されるべき一審原告の法的利益を害19 するもので、かつ、一審被告には故意又は過失があるから、一審原告に対する不法行為ともなる。 原審も正当に認定したとおり、日本法の正しい解釈・適用によれば、本件実施許諾契約には、その文言どおり、販売先制限の合意はなく、一審原告は独占的通常実施権に基づき本件各機械装置を適法に(本件各特許権5を侵害することなく)製造して参加人の前身会社に販売したのであり、消尽の法理により、当該装置を使用してポリイミドフィルムを製造して販売したことに関して本件各特許権の侵害とはならない。 そして、消尽が成立することについては、合理的な疑義を生ぜしめる事情はなく、一義的に明確であったといえる。 10本件米国訴訟において一審被告が消尽を否定するために主張した事情としては、本件実施許諾契約に販売先制限(一審原告による装置の販売先は一審被告の非競合他社に限定されるとの制限)があることであり、その根拠として一審被告が挙げた 告が消尽を否定するために主張した事情としては、本件実施許諾契約に販売先制限(一審原告による装置の販売先は一審被告の非競合他社に限定されるとの制限)があることであり、その根拠として一審被告が挙げたのは、①契約交渉において一審原告が宇部興産への販売のためだとして一審被告にライセンスを要求したこと、15及び②一審被告は自社の技術を競合他社にライセンスしないという長年の方針を持っていたことの2点である(丙48)。 しかるに、上述のとおり、原審での証人尋問の結果等を踏まえれば、一審被告が依拠した上記①・②のいずれについても、およそ合理性を欠くものであり、消尽の成立を合理的に疑わしめるようなものではない。 20その他、本件米国訴訟において、消尽が成立することについて、合理的な疑義を生ぜしめる事情は提示されていない。以上に照らせば、本件において、本件実施許諾契約に基づき一審原告に許諾された範囲無制限の独占的通常実施権により、一審原告製装置を使用した参加人の行為に関して消尽が成立することは一義的に明確であり、そうである以上、一審25被告による特許権侵害に基づく請求は必ず棄却されるであろう場合であ20 ったと評価できる。 なお、結果として、本件米国訴訟の陪審・裁判所が、一審被告が主張した販売先制限の存在を認めて消尽を否定したことは、上記の評価を左右しない。本件米国訴訟の陪審・裁判所の当該判断は、契約交渉過程に関する吉岡の虚偽の供述・証言や、これを援用した一審被告による事実に反5する主張について、それらが真実だと誤認し、明らかに誤った判断をしてしまったものだからである。 一審被告は、本件米国訴訟の提起時ないし追行中において、参加人が本件フィルム製品の製造に使用した機械装置が一審原告製のものであることを認識している。 10 判断をしてしまったものだからである。 一審被告は、本件米国訴訟の提起時ないし追行中において、参加人が本件フィルム製品の製造に使用した機械装置が一審原告製のものであることを認識している。 10本件実施許諾契約は、本件米国訴訟の提起より前に締結され、一審被告の当時の常務取締役(A’)が署名押印したものであるから、一審被告において、本件米国訴訟の提起時点で当該契約の存在を認識していたことは明らかである。 また、原審での証言によれば、本件米国訴訟を担当したMやLにおいて15も、どんなに遅くとも本件米国訴訟の提起後の平成24年(2012年)初頭には、当該契約の存在を認識していた(原審におけるMの尋問調書3頁)。 一審被告は、本件米国訴訟を提起する意思決定をした時には、本件実施許諾契約は有効期限を経過していたため、別の契約ファイルに移されて20いて、その存在に気づかず、提訴直後に念のため行った再調査によって、その存在に気付いたと主張する。 しかしながら、そもそも、本件実施許諾契約は、本件米国訴訟の提起より前に、一審被告の取締役が署名押印して締結されたのであるから、本件米国訴訟の提起時の担当者が契約の存在に気付いたか否かに関わらず、25一審被告として、当然、当該契約の存在を知っていたと評価すべきもの21 である。 一審被告において、本件実施許諾契約の締結に関与した者(A’)と、本件米国訴訟の提起の担当者が異なったことは、一審被告内部での事情にすぎず、それによって、一審被告という法人が締結した本件実施許諾契約に基づく義務(一審原告に対する債務)の具体的なレベル・態様が、契5約の相手方(一審原告)との関係で左右されてよいはずはない。 本件実施許諾契約において、その文言上、一審原告に許諾された「範囲全部にわたる独 一審原告に対する債務)の具体的なレベル・態様が、契5約の相手方(一審原告)との関係で左右されてよいはずはない。 本件実施許諾契約において、その文言上、一審原告に許諾された「範囲全部にわたる独占的通常実施権」について、一審原告による本件各特許権の実施品の販売先を制限する趣旨の記載は一切ない。すなわち、契約書の文言上は、一審原告は、独占的通常実施権に基づき、本件各特許を実10施して製造した機械装置を誰に対しても販売できることは明白である。 以上のとおり、本件実施許諾契約について、その文言から販売先制限がないことは明らかであり、文言に反して販売先制限を合理的に基礎づけるような事情はないから、一審被告としても販売先制限がないことは十分合理的に理解できたはずといえる。 15〔一審被告の主張〕否認ないし争う。 (2) 争点(5)(当審における訴えの追加的変更の許否)について〔一審原告の主張〕ア 当審における追加請求は、従前の請求と同じく「一審被告による本件米20国訴訟の提起・追行」を問題とし、それが一審原告との関係で債務不履行・不法行為を構成するかが問われているものである。一審原告は、従前の請求では問題となっていなかった「本件米国訴訟の判決の当否」を、追加請求について、追加で新たに問題としてはいない。従前の請求と、追加請求を比べてみると、一審原告は、両者のいずれについても、「一審被告による25本件米国訴訟の提起・追行」という同一の対象につきその違法性を問題と22 し、かかる同一の違法行為による損害の賠償を求めているものであって、両者の違いは単に損害の費目が異なるというにすぎない。損害の費目の違いに応じて、同一の違法行為(債務不履行にせよ不法行為にせよ)との相当因果関係の有無の評価考慮要素に若干の 求めているものであって、両者の違いは単に損害の費目が異なるというにすぎない。損害の費目の違いに応じて、同一の違法行為(債務不履行にせよ不法行為にせよ)との相当因果関係の有無の評価考慮要素に若干の差異が生じる可能性があるとしても、追加請求に係る損害についてのみ新たに「本件米国訴訟の判決の5当否」が(従前の請求では問題となっていなかった新たな形で)問題になる、などということはあり得ない。追加請求につき「請求の基礎の同一性」を欠くものではなく、また、その審理によって著しく訴訟手続を遅滞させることとはならない。 イ 一審原告と一審被告の間において、一審被告が利得した金額(本件米国10訴訟の判決に基づき参加人から支払を受けた金額)に法律上の原因があるか否かを判断するために、従前の請求に関して原審や当審で既に審理されてきた範囲を超えて本件米国訴訟の審理内容を別途新たに検討する必要はない。すなわち、一審原告と一審被告の間の不当利得返還請求について、その法律上の原因の有無を判断するためには、飽くまで、一審原告と一審15被告の間で締結された本件実施許諾契約(日本法に準拠)の正当な解釈(具体的には、一審原告が本件各特許権を実施して製造した機械装置を参加人に販売して使用させたことが当該実施許諾契約の許諾の範囲内か否かの解釈)に照らし、一審被告が本件各特許権侵害による損害賠償金名目で受け取った金員(給付結果)を、一審被告が保持することが是認されるか否20かを審理すべきである。 以上のとおり、追加請求を審理するのに、従前の請求に関して原審や当審で審理される範囲を超えて、別途新たに本件米国訴訟の判決の当否等を審理判断する必要があるとはいえず、一審被告の主張には理由がない。 〔一審被告の主張〕25ア 従前の請求で主張されていた損害と で審理される範囲を超えて、別途新たに本件米国訴訟の判決の当否等を審理判断する必要があるとはいえず、一審被告の主張には理由がない。 〔一審被告の主張〕25ア 従前の請求で主張されていた損害と、追加請求で主張されている損害は性23 質を異にする。すなわち、従前の請求による損害(金1億3000万円)の内訳は、㋐参加人が本件米国訴訟に応訴するために支出した弁護士費用(金13億円余り)のうち金1億円を参加人に支払ったことによる損害(金1億円)、㋑本件米国訴訟において、参加人の訴訟追行を支援するため一審原告が負担した人件費等(金790万0851円)、㋒本件米国訴訟の提起によ5って一審原告の信用が毀損されたことによる損害(金1000万円)、㋓本件訴訟の弁護士費用(金1300万円)とのことであるところ、本件訴訟に関するものである㋓を措くとして、㋐ないし㋒の損害はいずれも、一審被告が、本件米国訴訟を提起・追行したこと自体を問題として主張されているものである。 10これに対して、追加請求による損害は、本件米国訴訟において判決で参加人に命じられた損害賠償額分を一審原告が参加人に支払ったことによる損害(ただし、内金1億円分の損害)を主張するものである。これは、一審被告が本件米国訴訟において勝訴し、参加人に損害賠償を命じる確定判決を得たことを問題とするものである。つまり、判決の帰結の当否を問題とする15ものである。 このように、追加請求による損害の存否を判断する上では、本件米国訴訟における米国裁判所の判断及びその判断に至る経過や、参加人が当該判断を受け入れ不服申し立てをしなかった事実等を含めて審理する必要が生じ、現実にこれを行うとすれば、本件米国訴訟の訴訟記録全体を確認した上で、20その審理経過及び判決内容を米国法に照らして 当該判断を受け入れ不服申し立てをしなかった事実等を含めて審理する必要が生じ、現実にこれを行うとすれば、本件米国訴訟の訴訟記録全体を確認した上で、20その審理経過及び判決内容を米国法に照らして検討する必要が生じることになる。これは、追加請求による損害が、従前の請求で主張されている損害とは前提を異にし、明らかにその性質を違えることを意味するものである。 そうすると、従前の請求に関する審理との共通性があるとはいえないため、訴えの変更の要件たる「請求の基礎の同一性」を満たすとはいえない。 25以上より、請求の追加は、訴えの変更の要件(民事訴訟法143条1項)24 を満たすものではないため、許されるべきではない。 イ 一般に、不当利得返還請求権の要件事実としては、㋐利得、㋑損失、㋒利得と損失の因果関係、㋓利得についての法律上の原因の不存在が必要とされるところ、これらは当然、従前の請求の要件事実とは異なるものである。 また、その内容をみても、例えば、㋓(法律上の原因の不存在)について5は、当事者間で再審請求すらされていない本件米国訴訟における確定判決に基づく給付について、法律上の原因がないという余地があるのかを審理しなければならないが、これは従前の請求では全く審理されていない。この点、一審原告は、本件米国訴訟における確定判決は法律上の原因にはならないと主張するようであるが、そうであれば、これは確定判決の帰結の当否までを10問題とするものであり、従前の請求では審理されていないものであることは、既に述べたとおりである。 ウ 以上のとおり、一審原告による訴えの追加的変更の申立ては、いずれも要件を満たさず、適法性を欠くものであるから、許されるべきではない。 (3) 争点(6)(一審被告は、本件実施許諾契約の債務不履行若しくは のとおり、一審原告による訴えの追加的変更の申立ては、いずれも要件を満たさず、適法性を欠くものであるから、許されるべきではない。 (3) 争点(6)(一審被告は、本件実施許諾契約の債務不履行若しくは不法行為又は15不当利得に基づき、本件補償合意に基づいて一審原告が参加人に支払った金銭について、一審原告に対して支払義務を負うか)について〔一審原告の主張〕ア 債務不履行若しくは不法行為に基づく損害賠償(ア) 責任原因20争点(4)にかかる請求の責任原因と同じである。 (イ) 損害の発生参加人は、令和2年9月頃、一審被告から、本件米国訴訟の判決に基づき、認容額、遅延利息、訴訟費用を支払えとの請求を受け、同年末頃までに、一審被告に対し、本件米国特許権侵害を理由とした損害額(52592万0389.50ドル)のほか、別の特許権侵害を理由とした損害25 額(756万8375.56ドル)を合算した金額を支払った。 参加人は、日韓租税条約に基づき、一審被告のための源泉所得税(認容額の10%相当)134万8876.51ドルを別途出捐した。 一審原告は、上記参加人の支払の原因となった本件各機械装置に係る売買契約上の本件補償合意に基づき、上記支払額(源泉所得税を含む)5のうち本件米国特許権侵害に係るものとして、参加人から669万4218.82ドルの支払を請求され、その支払を余儀なくされた。 (ウ) 因果関係前項の損害は、一審被告による、本件実施許諾契約に基づく一審原告に対する債務不履行及び不法行為により一審原告が被った損害である10から、一審被告は、一審原告に対し、669万4218.82ドルを賠償すべき義務を負う。 (エ) 内金請求よって、一審原告は、一審被告に対し、債務不履行及び不法行為に基づき た損害である10から、一審被告は、一審原告に対し、669万4218.82ドルを賠償すべき義務を負う。 (エ) 内金請求よって、一審原告は、一審被告に対し、債務不履行及び不法行為に基づき、669万4218.82ドル(と遅滞の日からの遅延損害金)の15損害賠償請求権を有するが、内金1億円とこれに対する訴え変更申立書送達の日の翌日である令和3年12月17日から支払済みまで法定利率である年3分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ 不当利得返還請求(ア) 一審被告の法律上の原因のない利得20前記アのとおり、一審被告は、参加人から、669万4218.82ドルの支払を受けた。 しかし、原判決が正当に認めたように、一審原告が本件各特許を実施して製造販売した本件各機械装置を参加人が使用して本件各製品を製造販売した行為は、本件実施許諾契約に基づく特許消尽の法理によ25り、本件各特許権を侵害するものではない。にもかかわらず、一審被26 告が本件各特許権の侵害を理由として収受している上記給付は、一審原告との関係において、法律上の原因のない利得である。 (イ) 一審原告の損失一審被告が参加人から上記の損害賠償金名目の支払を受けたことにより、一審原告は参加人に対し、上記支払額を補償せざるを得ず、5同額の損失を被った。 この損失は、一審原告と一審被告との関係において、一審原告が本件実施許諾契約に基づく独占的実施権を正当に実施して本件各機械装置を製造販売したにもかかわらず被った法律上の原因のない損失である。 10(ウ) 因果関係一審原告と一審被告との間の法律関係(一審原告が少なくとも共同発明者である本件各特許権につき、本件実施許諾契約を締 被った法律上の原因のない損失である。 10(ウ) 因果関係一審原告と一審被告との間の法律関係(一審原告が少なくとも共同発明者である本件各特許権につき、本件実施許諾契約を締結して一審被告が一審原告に対して独占的通常実施権を許諾したことに基づく法律関係)の下で、一審被告は本来収受しえない利得を得た一方、一審15原告はいわれなく同額の損失を被ったから、両者の間には因果関係がある。 (エ) 不当利得返還請求権の成立以上のとおり、一審原告は、自ら特許を受ける権利を有するはずの本件各特許につき、一審被告が無断で単独で特許申請した状況を踏ま20え、一審被告から範囲全部にわたる独占的通常実施権の許諾を受けてこれを正当に実施して本件各機械装置を製造販売したにもかかわらず、何らいわれのない損失を被り、他方で一審被告は本来収受できないはずの利得を得ているものであるところ、かかる一審被告の利得を保護する正当性はない一方、一審原告に損失回復の保護を与えなければ、25正義衡平に反することとなるから、一審原告は、一審被告に対し、支27 払ったのと同額(一審被告が支払を受けたのと同額)の不当利得返還請求権を取得した。 (オ) 内金請求よって、一審原告は、一審被告に対し、669万4218.82ドルの不当利得返還請求権を有するが、内金1億円とこれに対する訴え5変更申立書送達の日の翌日である令和3年12月17日から支払済みまで法定利率である年3分の割合による遅延損害金の支払を求める。 なお、不当利得返還請求権と債務不履行・不法行為による損害賠償請求権とは、選択的併合の関係になる。 〔一審被告の主張〕10いずれも否認ないし争う。追加請求に係る損害は、本件米国訴訟において、参加人の一審被告に対する損害 行・不法行為による損害賠償請求権とは、選択的併合の関係になる。 〔一審被告の主張〕10いずれも否認ないし争う。追加請求に係る損害は、本件米国訴訟において、参加人の一審被告に対する損害賠償を命じる判決がされ、確定し、当該確定判決に基づき参加人が一審被告に支払った賠償金を、一審原告が負担したことによるものとして主張されているところ、これは単に一審被告が本件米国訴訟を提起・追行したことを問題としているのではなく、一審被告が本件米15国訴訟を提起・追行し、確定判決を得たことを問題とするものである。この確定判決の取得行為をもって、債務不履行又は不法行為ということは、当該確定判決の判断を否定することを意味するところ、そうであれば最低限、確定判決の騙取に準じる事情が必要となる。しかしながら、そうした事情は一切存在しない。 20そもそも、一審原告と参加人の間で補償義務に係る合意が存在すると証拠上評価し得るのは、一審原告とKOLON社との売買契約(甲42、43)のみであり、SKC社との売買契約には補償義務に係る合意は存在しておらず(甲45、46)、一見しても、本件米国訴訟判決で認容された全額相当分の補償を「余儀なくされ」る事実関係は認められない。 25また、追加請求に係る一審原告の損害は、前記のとおり、本件米国訴訟に28 おいて、参加人の一審被告に対する損害賠償を命じる判決がされ、確定し、当該確定判決に基づき参加人が一審被告に支払った賠償金を、一審原告が負担したことによるものとして主張されているものである。一審原告の主張によれば、本件米国訴訟における一審被告の請求は、本来理由がないことが「一義的」に明らかであり、一審原告が参加人に機械装置を販売したことも、参5加人が当該機械装置を使用してポリイミドフィルムを製造販 れば、本件米国訴訟における一審被告の請求は、本来理由がないことが「一義的」に明らかであり、一審原告が参加人に機械装置を販売したことも、参5加人が当該機械装置を使用してポリイミドフィルムを製造販売したことも何ら非難されるべきものではなかったところ、米国裁判所が判断を誤ったがために、一審被告の請求が認容されたことになる。とすれば、参加人が一審被告に対して賠償義務を負ったのは、一審原告が一審被告の特許権侵害品を参加人に販売したからではなく、専ら参加人と一審被告の間の訴訟追行の結果10によるものであって、一審原告におよそ帰責性はないことになる。また、一審原告の立場からすれば、本来理由がないことが「一義的に」明らかな主張であるにもかかわらず、第一審裁判所の判断を誤らせ、控訴審でもその「一義的」な誤りすら正すことをせず、さらに、「一義的」な誤りがあるにもかかわらず上告すらしなかったという参加人の訴訟対応を問題視して然るべき状15況にある。それにもかかわらず一審原告(販売元)が参加人(販売先)に対し補償義務を負うとするならば、その義務内容は、第三者の主張内容や販売先の対応いかんを問わず販売元は販売品に関するおよそ一切の販売先の支出を補償しなければならないことを意味するが、補償合意といった場合、そのような、販売元におよそ起因せずに販売先が負った支出についてまで販売元20が補償しなければならない義務を含意しているとは通常解されず、一審原告とすれば参加人の請求をそのまま受忍しなければならない道理はない(むしろ、一審原告の主張からすれば、一審原告には何ら落ち度はないのであるから参加人からの求償請求権の有無及びその額を争ってしかるべきである。)。 また、上記の重大な問題点を措いても、参加人が作成したとされる参加人25が賠償関連を整理し には何ら落ち度はないのであるから参加人からの求償請求権の有無及びその額を争ってしかるべきである。)。 また、上記の重大な問題点を措いても、参加人が作成したとされる参加人25が賠償関連を整理した資料(甲91)には、「損害賠償金」等だけでなく、「判29 決後利息」の項目すら存在する。これは、参加人が判決後直ちに支払っていれば発生しない性質の金員であるところ、実際には、上記のとおり、参加人は、一審被告が強制執行の申立てをするまでは一切の支払を行わなかったため発生したのであり、このような金員まで一審原告が補償すべき理由は存在しない。 5以上からすれば、「支払を余儀なくされた」という点は明らかに誤りである。 しかしながら、いうまでもなく、一審被告が参加人に対する本件米国訴訟で確定判決を得たことと、一審原告が参加人の請求に応じて支払うこととの間には、(確定判決の騙取に準じる事情が認められる必要があることを措いたとしても)余程特別な事情がなければ相当因果関係は存在しない。この点、10一審原告は、一審原告と参加人の間の補償合意を主張するが、そもそもSKC社との売買契約には補償合意と読める規定さえ存在していないほか、一審原告の主張を前提とすれば、一審原告が参加人の請求に応じることが余儀なくされるような補償合意が存在したと解する余地はなく、一審原告の主張する支払が補償合意に基づくものとは評価できない。仮に、そのような一審原15告に何ら帰責性がないにもかかわらず販売元であるということで参加人が負担したあらゆる支出について、無条件に補償しなければならないという合意が存在したとするのであれば、一審原告の参加人に対する支払は、専らその極めて特殊な合意をしたことによって生じたものと解すべきであるし、そのような合意の存在を第三者が予見す なければならないという合意が存在したとするのであれば、一審原告の参加人に対する支払は、専らその極めて特殊な合意をしたことによって生じたものと解すべきであるし、そのような合意の存在を第三者が予見することはおよそ不可能である。なお、一20審被告が、一審原告と参加人との間の売買契約の内容を知ったのは、日本の訴訟で当該契約書が証拠提出されてからであり(原審における証人Lの尋問調書6ないし7頁)、それまで一審原告とKOLON社の間で補償合意があることすら認識していないし、予見もしていない。 したがって、一審被告が参加人に対する本件米国訴訟で確定判決を得たこ25とと、一審原告が参加人の請求に応じて支払うこととの間には、相当因果関30 係が認められる余地はない。 本件実施許諾契約では、一審被告の競合他社である参加人の実施は許容されていない。また、一審被告が参加人から受けた支払は確定判決に基づくものであり、法律上の原因を有することは明らかである。 (4) 争点(7)(一審原告の債務不存在確認の訴えの利益の有無(第2事件))につ5いて〔一審原告の主張〕ア 一審原告は、日本国内のみに拠点を有する日本の会社であるところ、一審原告は、参加人の前身会社に販売するための本件各機械装置の製造及び販売(その申出を含む)を日本で行ったものであり、本件実施許諾契約に10販売先制限があるという一審被告の主張によれば、これらの一審原告の行為は、本件実施許諾契約により許諾されたものではなく、本件日本特許権(装置特許)の侵害を構成する。そのため、一審被告は、一審原告に対し、本件日本特許権の侵害による損害賠償請求権を有すると主張している。 イ 参加人は韓国で、一審原告が製造して参加人の前身会社に販売した本件15各機械装置を用いてポリイミドフ 告は、一審原告に対し、本件日本特許権の侵害による損害賠償請求権を有すると主張している。 イ 参加人は韓国で、一審原告が製造して参加人の前身会社に販売した本件15各機械装置を用いてポリイミドフィルムを製造し、そのポリイミドフィルムを材料として、第三者(サムスンやLG)が携帯端末の部品を作り、それを組み込んだ携帯端末が米国に輸入されて販売され、米国訴訟では、第三者による本件米国特許権(方法特許)の侵害に寄与したものとして参加人の寄与侵害の責任が認められた。一審被告は、一審原告が、本件各機械20装置が米国に輸入される携帯端末の部品の材料に使用されるポリイミドフィルムの製造に使われることを知って、日本において本件各機械装置を製造し販売(その申出を含む)したことについて、一審原告が参加人と共同で本件米国特許権の寄与侵害を行い、又は参加人の寄与侵害の幇助をしたものとして、一審原告に対し、本件米国特許権の侵害による損害賠償請25求権を有すると主張している。 31 ウ したがって、一審原告は、一審原告が製造販売した本件各機械装置を、参加人が使用して本件各製品を製造したこと及び本件各製品を販売したことに関し、一審被告が一審原告に対し、本件各特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を求める確認の利益がある。 〔一審被告の主張〕5ア 一審被告は、エンドレスベルトの組込み及び本件各機械装置の調整が韓国で行われているとし、本件各機械装置の製造販売が行われた地は韓国であるとしていることから、本件各機械装置の製造販売について本件日本特許権の侵害による損害賠償を請求するおそれはない。また、本件各機械装置の製造販売が日本で行われたとしても、本件各機械装置の製造販売が最10後にされた平成20年(2008年)4月頃から10 日本特許権の侵害による損害賠償を請求するおそれはない。また、本件各機械装置の製造販売が日本で行われたとしても、本件各機械装置の製造販売が最10後にされた平成20年(2008年)4月頃から10年以上、一審被告が原審第2事件の訴状の送達を受けた平成29年(2017年)8月から3年以上が経過しており、損害賠償請求権の消滅時効は完成している蓋然性が高い。一審被告は、令和5年7月5日に行われた当審の第1回口頭弁論期日において、仮に、本件各特許権の侵害に基づく一審被告の一審原告に15対する損害賠償請求権が存在するとしても、請求権を放棄すると陳述した。 したがって、一審被告が一審原告に対して本件日本特許権の侵害による損害賠償請求権を有しないことの確認を求める利益はない。 イ 参加人の本件各機械装置の使用と本件各製品の製造販売による本件米国特許権の侵害について、一審原告が、単に本件各機械装置を製造販売し20たことにより共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはあり得ない。また、参加人は、一審被告に対し、本件米国特許権侵害による損害賠償を支払済みであり、仮に一審原告が参加人とともに損害賠償責任を負うとしても、それは、参加人の支払により消滅した。本件米国特許権は平成22年(2010年)3月14日に存続期間が満了したから、その侵害に25よる損害賠償請求権の消滅時効は完成している蓋然性が高い。一審被告は、32 令和5年7月5日に行われた当審の第1回口頭弁論期日において、仮に、本件各特許権の侵害に基づく一審被告の一審原告に対する損害賠償請求権が存在するとしても、請求権を放棄すると陳述した。 したがって、一審被告が一審原告に対して本件米国特許権の侵害による損害賠償請求権を有しないことの確認を求める利益はない。 5(5) 請求権が存在するとしても、請求権を放棄すると陳述した。 したがって、一審被告が一審原告に対して本件米国特許権の侵害による損害賠償請求権を有しないことの確認を求める利益はない。 5(5) 争点(8)(本件各特許権の侵害に基づく損害賠償請求権の発生原因事実が立証されているか(第2事件の予備的控訴の趣旨))について〔一審被告の主張〕参加人による本件各機械装置の使用と本件各製品の製造販売について、一審原告が、単に、その機械装置を参加人に製造販売したことを理由に共10同不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはあり得ないところ、原判決では、何故、単に機械装置を製造販売したにすぎない一審原告が、一審被告との間で損害賠償責任を負うのかの理由を全く明らかにしていない。また、当該責任(債務)の不存在確認を求める一審原告においても、そのような事実は何ら主張されていない。本件では、一審原告の一審被告に対す15る共同不法行為責任に係る請求原因事実が認められて、初めて、その抗弁としての消尽の法理の適否が判断されねばならないところ、原判決は、請求原因事実を明確に認定しておらず、また、そのような認定をすることは原審における双方の主張立証状況からしてあり得ないから、原判決で抗弁たる「消尽の法理」について判断したことは、明らかにその必要がない。 20原判決は誤りである。 〔一審原告の主張〕一審原告が不存在確認を求めている対象は、①一審原告が本件各機械装置を製造して韓国の参加人に譲渡したこと、②参加人が本件各機械装置を使用して、本件各製品を製造し販売したことによって生じた、一審被告の25一審原告に対する、本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権であ33 る。 そして、一審原告は、一審原告の①の行為と参加人の②の行為は、本 造し販売したことによって生じた、一審被告の25一審原告に対する、本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権であ33 る。 そして、一審原告は、一審原告の①の行為と参加人の②の行為は、本件各特許権を実施したものであることを自認した上で、①の行為は、本件実施許諾契約によって一審被告によって許諾された行為であるから、一審被告に対する本件各特許権侵害は成立せず、②の行為も、正当に本件各特許5権を実施した本件各機械装置を使用して各製品を製造販売したのであるから、一審被告に対する本件各特許権侵害は成立しないと主張している。 つまり、①の行為が、本件実施許諾契約によって許諾された行為でなければ、②の行為は、本件各特許権侵害となる可能性があり、そうすると、一審被告は、②の行為をした参加人に対して損害賠償請求権を取得すると10ともに、①の行為は②の行為と共同不法行為を構成する可能性があるから、①の行為をした一審原告に対して、損害賠償請求権を取得する可能性もある。 実際、一審被告は、差戻し前の控訴審において、①の行為と②の行為を前提に、「一審被告は一審原告に対して損害賠償請求権を有しているが、15その権利行使はしない」と主張していた。それゆえ、①の行為をした一審原告としては、一審被告に対して、一審原告の①の行為と参加人の②の行為を前提に、一審被告が一審原告に対して本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権のないことの確認を求めているものである。 第3 認定事実201 樹脂フィルム、一審原告と一審被告との関わり及び本件各特許権の出願については、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中、第4の1ないし4(原判決47頁9行目から65頁26行目)のうち、同1、同2(1)、(2)、(5)(なお、後記(1)のとおり 出願については、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中、第4の1ないし4(原判決47頁9行目から65頁26行目)のうち、同1、同2(1)、(2)、(5)(なお、後記(1)のとおり、「(5)」を「(3)」と改める)のア及びイ、同3(1)、(5)及び(6)(なお、後記(2)のとおり、「(5)」を「(2)」に、「(6)」を「(3)」25と改める)、同4(1)ないし(3)に記載のとおりであるから、これを引用する(そ34 の余の部分は引用しない。)。 (1) 原判決51頁9行目の「(5)」を「(3)」と改め、同頁21行目の「(前記(4)ア)」を削り、同52頁26行目の「PI製造設備の増強」の次に「(この契約において、以下「本件」という。)」を加え、同53頁の1行目の「締結して」から同頁6行目の末尾までを「締結した(以下「本件秘密保持契約」5という。)。同契約は、一審被告が、一審原告に対し開示提供する本件に関する技術的事項及び設計基礎条件仕様書、データや設計図類を含む技術、情報及び資料等について、一審原告はその秘密を保持し一切漏洩しない旨などが定められ、その契約の有効期間は調印の日から7年間とされている(甲31)。」と改める。 10(2) 同57頁9行目の「(5)」を「(2)」と改め、同頁10行目から同頁18行目までを削り、同頁19行目の「イ」を「ア」と、同58頁9行目の「ウ」を「イ」と、同頁10行目の「付し、」から同行目の「求めた」までを「付した」と、同58頁11行目の「(6)」を「(3)」と、同頁26行目の「前記(5)」を「前記(2)」と、同59頁3行目から4行目の「前記(5)ウ」を「前記(2)ウ」15とそれぞれ改める。 (3) 同63頁26行目の「該平行流」を「噴出流」と、同64頁21行目の「 記(5)」を「前記(2)」と、同59頁3行目から4行目の「前記(5)ウ」を「前記(2)ウ」15とそれぞれ改める。 (3) 同63頁26行目の「該平行流」を「噴出流」と、同64頁21行目の「平行流」を「噴出流」と、同65頁11行目の「前記平行流」を「前記噴出流」とそれぞれ改める。 2 本件実施許諾契約の締結については、以下のとおり補正するほかは、原判決20の「事実及び理由」中、第4の5(原判決66頁1行目から71頁26行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決66頁5行目の末尾の次に「なお、同年には、カネカ2号機と同様の機械を、一審原告が製造し、一審被告の米国の関連会社に納入した(甲79)。」を、同頁17行目の「3月」の次に「17日」をそれぞれ加え、同25頁19行目ないし20行目の「出願」を「公開」と、同行目の「ドイツの特35 許公報」を「東ドイツにおける一審被告の本件各発明とは異なる発明に係る特許のアブストラクト(要約)」と、同頁20行目から同頁21行目までの「甲41、79」を「甲41(ただし2枚目以降。甲41の1枚目については、文書(甲69)の一部のみをその旨明らかにせずにことさら証拠提出したものであって、採用しない。)、69、79、乙45、84」とそれぞれ5改め、同頁21行目の末尾の次に「甲69、乙45の上段には、クラレフィルム生産技術部NからヒラノテクシードG’課長宛てとされたものであるところ、『ベルト製膜に関する鐘化特許他送付致します。御査収下さい。添付資料 鐘化特許 全7葉 独特許 1葉』との記載がある。そして、添付の本件日本特許権の公開公報の特許請求の範囲(1)の『方法』及び同(2)の『装置』10の下には手書きで波線が引かれ、余白に『方法特許 ・方法を行うこと 独特許 1葉』との記載がある。そして、添付の本件日本特許権の公開公報の特許請求の範囲(1)の『方法』及び同(2)の『装置』10の下には手書きで波線が引かれ、余白に『方法特許 ・方法を行うこと ・方法を作ったもの』、『ダメ』との手書き記載がある。」を加え、同頁24行目冒頭から同67頁1行目までを「クラレ社は、一審被告の競合会社ではない。」と改める。 (2) 同67頁2行目から同71頁26行目までを以下のとおり改める。 15「(2) 一審原告における対応等の経緯(証拠は認定事実の末尾に摘示した)一審原告は、前記(1)イの平成4年3月のクラレ社からの連絡を受けた後、同年6月2日に至り、一審原告社員のHに対し、『1.クラレよりカネカから出ている特許の件でヒラノから本件カネカに申し出て、了解を得ておいて下さい、との話しがありました。2.先づ、ヒラノとして何を20したらよいか、を調査してくれませんか』との依頼がKを経てされた(甲69)。 平成4年6月24日、一審原告において、上記につき検討がされたとする、その議事録とされるものには、『ヒラノの実績(スチールベルト)1 宇部興産 S.57 2.東レ S.58 3.三菱化成 S.58 4.日立化25成 S.58 ・・・』、『1.権利を回避(逃げる)』『2.権利をつぶす36 理由①冒認出願である→見積書 ②公知・公用→カタログ☓ 販売実績』、『3.権利をつぶすことを示唆しつつ、カネカからの買取交渉をする』などと記載されている(甲80)。なお、その議事録(甲80)に記載された『カネカ3号機』については、一審原告はカネカ2号機を一審被告の米国子会社向けに製造し、一審原告が販売した製品であるとし(甲580)、一審被告は、1998年(平成10年)に一審原告から納入を受け カネカ3号機』については、一審原告はカネカ2号機を一審被告の米国子会社向けに製造し、一審原告が販売した製品であるとし(甲580)、一審被告は、1998年(平成10年)に一審原告から納入を受けて使用している製品(乙75)であるとし、認識が異なっている。 また、G’は、この間、米国における訴訟においてベルト成膜方式とカウンターフロー方式(平行流方式)を組み合わせた機械は一審原告が発明したものであり本件各特許出願につき、Iと交渉したところ、一審被10告は事態を真摯に受けとめ、一審原告の説明に理があることを分かってくれた、そして、一審原告の発案であり開発であることが一審被告との共通認識となったことを踏まえて、本件各特許発明に係る出願を共同出願とするよう申し入れたが拒絶されたので、専用実施権を与えるよう求めた、とする宣誓供述書を作成している(甲5)。また、G’は、クラレか15ら本件各発明の出願の事実を知らされてからIを訪ねるまでに相当時間が経過しているところ、これは特許申請の内容を確認したり、開発経緯に関する資料を集めたり、カウンターフロー式とジェット式の乾燥方法を採用した機械装置の販売実績などを整理するために数か月以上を要したためであるとしている(甲79)。 20クラレは、平成4年8月3日付け仕様書(甲74)により、カウンターフロー式を採用しないこととしたが、その理由を推認させる客観的証拠はない。 (3) 本件実施許諾契約の締結に至る経緯(証拠は認定事実の末尾に摘示した)25前記平成4年6月の一審原告における検討の後の具体的な経過を明ら37 かにする証拠はなく、不明であるところ、平成5年2月8日に至り、一審被告のIから、一審原告のG’に対し、本件実施許諾契約についての案の提示があった(甲11)。こ の後の具体的な経過を明ら37 かにする証拠はなく、不明であるところ、平成5年2月8日に至り、一審被告のIから、一審原告のG’に対し、本件実施許諾契約についての案の提示があった(甲11)。ここでは、本件日本特許権のみについて、通常実施権がその対象とされており、本件実施許諾契約第3条(一審原告による費用の半額負担)に相当する条項及び本件実施許諾契約第1条の一5審被告の関係会社である米国法人アライドアピカルの実施に関する規定は存在せず、本件実施許諾契約第5条(実施上の責任)に相当する条項の第2文以下は、『ただし、本特許権の実施に関し第三者からその所有する権利の侵害を理由とする訴訟その他紛争が生じた場合には、乙(一審原告)の請求により甲(一審被告)は当該紛争の解決に役立つ資料の提供そ10の他の援助を乙に対して行う。』とされていた。 平成5年2月8日、Hは、J弁理士(以下『J’弁理士』という。)に対し、『カネカ殿特許について』との連絡文書により、『以前よりカネカ殿特許につき、ご相談申し上げていましたが、別紙原案(判決注:上記Iからの案の提示)がFAX されてきました』とし、同月10日に打ち合わ15せを依頼した(甲12)。一審原告は、同月10日に打ち合わせをしたとするが、これについての証拠は提出されていない。 その後、平成5年10月頃、G’は、Iからさらに案を送付されたとする(G’は、本件米国訴訟における前記宣誓供述書において、同月頃に本件実施許諾契約が締結されたとしている(甲5))。 20平成5年12月2日頃に、本件実施許諾契約が締結された。 (4) 本件実施許諾契約締結についてのJ’弁理士による一審原告への意見(証拠は認定事実の末尾に摘示した)ア 平成5年12月9日、J’弁理士は、一審原告の求めに応じて 契約が締結された。 (4) 本件実施許諾契約締結についてのJ’弁理士による一審原告への意見(証拠は認定事実の末尾に摘示した)ア 平成5年12月9日、J’弁理士は、一審原告の求めに応じて、本件実施許諾契約につき意見を述べているところ、その書面には、『(1)本25件日本特許出願および対応外国出願の出願書類の交付を鐘化より受け38 ておられますか。(2)これら出願の進捗状況について、ヒラノ殿が常に連絡を受ける体制ができていますか。(3)拒絶理由通知に対する応答の際にヒラノ殿の見解が反映されるようになっていますか。(もしそうでなければ、基本契約(判決注:本件実施許諾契約)第3条において、特許出願費用等の諸費用につき、ヒラノ殿が半額を負担される旨規定5されていることを勘案すると、バランスを欠くと思われます。)(4)基本契約に日付が入っていませんが、どうなっていますか。特に、基本契約の第9条によれば、契約の有効期間の始期が契約締結日であることからして、日付がないことは不適切だと思われます。』と記載されている。同書面には、『鐘化との実施許諾契約 特願平1-6283108、対応米国特許5075064、カナダ特願2012138、EP 出願90104765』と記載され、EP 出願の下に矢印が引かれ、『英、仏、独、伊諸国か?』との記載がされている。また、外国出願に関連し、『2.外国における特許または特許出願について (1)国によっては、当該国の特許庁における実施権の登録が不要な(実施権を第三者15に対抗し、およびまたは実施権を行使して、第三者の侵害を自らの名義で禁止などするために)国もあり、また、登録が不可能な国もあります。(2)そこで、各国ごとに法制度を現地代理人に照会したいと思いますが、いかがでしょうか。』と記 を行使して、第三者の侵害を自らの名義で禁止などするために)国もあり、また、登録が不可能な国もあります。(2)そこで、各国ごとに法制度を現地代理人に照会したいと思いますが、いかがでしょうか。』と記載されている(甲82)。 イ この当時、仮に共同出願違反の問題があった場合、特許出願人の協20力が得られるのであれば、特許出願後の権利の承継の方法を取ることとして、譲受人が単独で出願人名義変更届を提出することにより、共同出願人の地位を確保することができた(平成8年通産省令79号による改正前の特許法施行規則5条1項、平成11年通産省令132号による改正前の特許法施行規則12条1項)。仮に特許出願人の協力25が得られない場合でも、共同発明者は、特許出願人に対し、特許を受39 ける権利を有することの確認を求める訴訟を提起し、その勝訴判決を提出することで、特許を受けることができるものとされていた。 しかし、その当時においては、いったん特許登録がされてしまうと、これらの方法を取ることにより共同発明者が共有特許権者となることはできなくなり、無効審判請求により無効とするなどの対処をするほ5かないものとされていた(特許出願をした特許を受ける権利の共有者の一人から同人の承継人と称して特許権の設定の登録を受けた無権利者に対する当該特許権の持分の移転登録手続請求を認める最高裁判決がされたのは平成13年6月のことであり(最高裁平成9年(オ)第1918号同13年6月12日第三小法廷判決・民集55巻4号79103頁)、特許権の移転登録を認める現行特許法74条が制定されたのは平成23年法律第63号の改正(平成24年4月1日施行)によるものである。)。 ウ Iは、平成6年1月12日、G’に対し、本件日本特許権につき、審査未請求であり、本件米国特 74条が制定されたのは平成23年法律第63号の改正(平成24年4月1日施行)によるものである。)。 ウ Iは、平成6年1月12日、G’に対し、本件日本特許権につき、審査未請求であり、本件米国特許権については成立している、カナダ特許15については審査中であり、ヨーロッパ特許については審査請求済みで、審査中である旨などを知らせ、添付資料として、本件日本特許権についての当時の公開公報、外国特許出願時の英文明細書、米国特許公報、カナダ出願手続き書類及びヨーロッパ出願手続き書類を送付した(甲83)。 20(5) 東レからの一審原告への引合い(証拠は認定事実の末尾に摘示した)平成6年6月8日、東レから一審原告への引合いがあり、一審原告の内部において検討が行われた。G’から、一審被告の本件特許出願は、日本においては未請求、米国においては成立、ヨーロッパ及びカナダでは審査中であるところ、一審被告との間で本件実施許諾契約を締結したこと25を聴取した上で、一審原告において作成した書面には、『今回、東レから40 引合いあり ヒラノ以外より買う可能性あり。日本において先使用権があると言う可能性あり そこで 井上(判決注:一審原告の競合会社である井上金属(甲61、原審における証人Mの尋問調書9頁))のキカイでフィルムを輸出した場合どうなるか調査して欲しい 6/14日出張のため、見解を教えて欲しい。』とし、方法特許においては方法を行うこ5とと方法で作ったもののについて『ダメ』、『アメリカは先使用権制度はない。』との記載がある。 平成6年6月9日、J’弁理士は、一審原告に対し、「貴社発明に基づく鐘化殿所有の米国特許について」と題する書面(甲62)において、『標記の件に関し、東レに対して、今回の装置を貴社に発注する必要が10あ 6月9日、J’弁理士は、一審原告に対し、「貴社発明に基づく鐘化殿所有の米国特許について」と題する書面(甲62)において、『標記の件に関し、東レに対して、今回の装置を貴社に発注する必要が10あると思わせるためには、次のような説明が適当かと思います。 鐘化は米国で特許を取得している。これは、ヒラノ殿の意向に基づいて鐘化が出願したものである。 そして、前記鐘化の米国特許について、ヒラノ殿が実施権を有しておられる。 したがって、東レとしては、ヒラノ以外のものに機械を製造させることは特許の侵害となる。 東レはアメリカ15における先使用権の主張をするようであるが、アメリカ特許法では先使用権の考えはない。したがって、先使用権を理由として、東レが独自に、あるいは他の会社に今回の機械を製造させることはできない。 なお、次のことをご了承下さい(東レには言わないで下さい)。 鐘化の米国特許出願の前に、東レがヒラノ殿の装置を米国において使用している場合、20どのようになるかという問題があります。2つの場合に分けて考えます。 (1)鐘化の使用が公然である場合(2)そうでない場合 (1)の場合には、鐘化特許が無効となります。しかし、(2)の場合には、鐘化特許は無効とならず、東レとしては、対抗のしようがありません。 以上のとおりお知らせ致します。』と記載し、一審原告に送付した。 25(6) G’のIへの資料の交付(証拠は認定事実の末尾に摘示した)41 G’は、本件米国訴訟における証言において、Iとの最初の打ち合わせで、平行流技術に関する一審原告の資料である仕様書、図面、議事録その他多量の技術資料の全てをIに渡してしまい、一審原告には残されていない旨証言し(乙64の2)、G’は原審においても、一審原告が、本件各発明につき、一審原告が共同 の資料である仕様書、図面、議事録その他多量の技術資料の全てをIに渡してしまい、一審原告には残されていない旨証言し(乙64の2)、G’は原審においても、一審原告が、本件各発明につき、一審原告が共同発明者であることを証する一審原告の開発5経緯に関する資料について、これらを、交渉の経緯において全てIに渡してしまっており、一審原告において写しを含め保管していないと証言した(G’の原審における尋問調書13ないし16頁)。 (7) 本件日本特許権の設定登録と本件各発明についての特許権の推移等(証拠は認定事実の末尾に摘示した)10本件日本特許権は、平成9年6月16日に査定がされ、同年9月19日に設定登録がされた(乙71)。 G’は、本件各発明のヨーロッパにおける出願について、本件実施許諾契約締結後の経過を把握していない(G’の原審における尋問調書20頁)。 15本件各特許権のうち、英国における権利については、G’の在職中(G’は昭和39年から平成12年まで一審原告に在職。甲5)の平成9年3月13日に、ベルギーにおいては平成12年3月31日に、いずれも年金の不払により失効した。その後も、ドイツでは平成14年10月1日に、フランスでは同年11月29日に、イタリアでは平成17年3月1203日に、いずれも年金の不払により失効した(乙72)。」(3) 同71頁25行目の「存続期間中、」の次に「本件実施許諾契約第2条の定めがあるにもかかわらず、」を加える。 3 本件各機械装置の売買契約等については、原判決72頁22行目から23行目の「本件補償条項」を「本件補償合意」に改め、同頁23行目の「定めがあ25る」を「定めがあるが、本件日本特許権及び本件米国特許権が存する旨や、一42 審原告が本件実施許諾契約に基づき独占的通常実施 補償条項」を「本件補償合意」に改め、同頁23行目の「定めがあ25る」を「定めがあるが、本件日本特許権及び本件米国特許権が存する旨や、一42 審原告が本件実施許諾契約に基づき独占的通常実施権を取得していること等については規定されていない」と改めるほかは、原判決の「事実及び理由」中、第4の6(原判決72頁1行目から73頁10行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 4 本件米国訴訟の経緯については、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事5実及び理由」中、第4の7(原判決73頁11行目から90頁10行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決73頁14行目の「(2007)年」を「(2007年)」に改め、同79頁5行目の「思った」の次に「とする」を加え、同82頁8行目の「被告」を「一審原告」と改め、同頁14行目の「(本件米国」から同頁15行10目の「解される。)」までを削る。 ⑵ 同84頁1行目の「従業員にのみ発明され」を「従業員のみにより発明され」と改め、同14行目の「しかしながら、」から18行目の「りである。」までをいずれも削る。 ⑶ 同78頁12行目、同82頁8行目、同頁20行目及び同90頁7行目の15「当裁判所」を「大阪地方裁判所」と改める。 第4 当裁判所の判断当裁判所は、一審原告による第2事件に係る債務不存在確認を求める訴えについては訴えの利益を欠き不適法却下されるべきであり、また、第1事件に係る一審原告の請求については理由がなく、当審における一審原告の訴えの追加20的変更による拡張請求についても理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。 1 争点(1)(不法行為に基づく損害賠償請求権に適用されるべき準拠法)について原判 の追加20的変更による拡張請求についても理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。 1 争点(1)(不法行為に基づく損害賠償請求権に適用されるべき準拠法)について原判決第5の1(原判決90頁13行目から91頁12行目まで)に記載の25とおりであるから、これを引用する。 43 2 争点(2)(本件実施許諾契約に基づき、一審被告は、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許権を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行使してはならない義務を負うか)について(1) 本件実施許諾契約の解釈本件実施許諾契約の内容は前記前提事実(補正の上で引用した原判決第25の1)(4)記載のとおりであるところ、本件実施許諾契約第1条によれば、一審被告は、一審原告に対し、本件各特許権並びにカナダ及び欧州特許に出願中の特許について独占的通常実施権を許諾するものとするが、一審被告及び一審被告の関係会社である米国法人アライドアピカル株式会社については、第三者からの同特許権等の特許請求の範囲に含まれる装置及び設備の10購入も含め無条件で同特許権等を実施できるものとされている。 そして、本件実施許諾契約第7条によれば、本件各特許権等について、一審原告は、第三者が同特許権を侵害し又は侵害しようとしていることを知ったときには直ちにその旨を一審被告に通知するものとして、侵害の排除及び予防について、一審原告は一審被告に協力すべきことが定められ、侵害15の排除及び侵害の予防は、特許権者である一審被告が行うこととされている。また、本件実施許諾契約第6条には、一審原告は、直接又は間接に、同特許権等について、その効力を阻害する一切の行為をしてはならない旨が定められている。その一方で、一審原告が機械を製造し とされている。また、本件実施許諾契約第6条には、一審原告は、直接又は間接に、同特許権等について、その効力を阻害する一切の行為をしてはならない旨が定められている。その一方で、一審原告が機械を製造し、これを第三者に販売した場合に、一審原告に付与した独占的通常実施権に起因して、その第三20者に対する一審被告による本件特許権の行使が妨げられる旨の定めは何ら存せず、そのように解すべき根拠となる条項も存しない。 このように、本件実施許諾契約においては、本件各特許権等について、特許権侵害の排除及び予防は特許権者である一審被告が行うこととされているのであって、不起訴の合意に関する条項も一切ないから、本件実施許諾契25約の当事者ではない、参加人による本件米国特許権の侵害に係る行為につ44 いて、一審被告がその侵害の排除及び予防の措置を取ることについて、本件実施許諾契約には、これを妨げる条項は何ら存しない。 したがって、一審被告は、本件実施許諾契約に基づき、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許権を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行使してはならない義務を負うと解することはでき5ない。 (2) 一審原告の主張に対する判断ア この点に関して一審原告は、本件実施許諾契約の内容のとおり、一審被告は、一審原告に対し、本件各特許権の実施を無制約に許諾したものであり、一審原告が、本件各特許権(装置特許)を実施した機械装置を第三者10に販売すること、及び当該第三者が本件各特許権(方法特許)を実施することは、いずれも本件実施許諾契約の範囲内の行為であるから、一審被告は、本件実施許諾契約に基づき、当然に、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行 れも本件実施許諾契約の範囲内の行為であるから、一審被告は、本件実施許諾契約に基づき、当然に、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行使してはならない義務を負うなどと主張する。 15しかし、前記認定の契約に至る交渉の経緯からすれば、本件実施許諾契約は、確かに、一審原告に対し本件各特許権について特段の対価の定めなく独占的通常実施権を設定するものではあるが、他方で、一審原告は機械装置の製造会社であって、同機械装置に基づき樹脂フィルム等を製造販売するものではないことからすれば、本件実施許諾契約の範囲内にあるの20は、一審原告による機械装置の製造販売のみであり、したがって、一審原告が販売した機械装置により、第三者が本件各特許権(方法特許)を実施して樹脂フィルム製品を製造販売することまで本件実施許諾契約により当然に許容されていると解することはできない。 したがって、一審原告の上記主張は採用することができない。 25イ また、一審原告は、本件実施許諾契約は、Kが本件各発明の発明者であ45 ることを前提として交渉が始まったものであり、一審原告にとっての本件実施許諾契約の意義及び契約締結に至る交渉の経緯によれば、本件実施許諾契約は、一審原告が本件各特許権を実施した機械装置を製造できるだけでなく、これを顧客に販売し、一審原告から購入した顧客は当該機械装置を使用して樹脂フィルムを製造し販売できることを前提としていたこと5は明らかであると主張する。 しかし、前記第3で認定した一審原告における研究開発の経緯、カネカ2号機の納入に至る経緯、本件各特許権の出願に至る経緯及び本件実施許諾契約に至る経緯によれば、確かに、本件各発明の内容と関連する平行流 かし、前記第3で認定した一審原告における研究開発の経緯、カネカ2号機の納入に至る経緯、本件各特許権の出願に至る経緯及び本件実施許諾契約に至る経緯によれば、確かに、本件各発明の内容と関連する平行流(カウンターフロー方式)に関し、Kが一定の知見を有していたことが認10められるものの、本件各発明の着想から完成に至る経緯には不明の点が多く、本件各発明の発明者が誰かを特定することは困難であり、他に本件全証拠を精査しても、Kが本件各発明の単独発明者若しくは共同発明者であることを認めるに足りる十分な証拠はない。 したがって、一審原告の上記主張はその前提を欠き採用することはでき15ない。 3 争点(3)(一審被告による本件米国訴訟の提起又は追行が、本件実施許諾契約の債務不履行又は不法行為になるか)のうちの債務不履行の成否について(1) 前記2のとおり、本件実施許諾契約には、一審被告が本件実施許諾契約の当事者以外の者に対し本件各特許権の侵害の排除及び予防の措置を取ること20について何らの制約もなく、一審被告は、本件実施許諾契約に基づき、一審原告が販売した本件各機械装置により本件各特許権を実施して生産された本件各製品に対し、本件各特許権を行使してはならない義務を負うものではないから、一審被告による参加人への本件米国特許権の行使が一審原告に対する本件実施許諾契約の債務不履行となる理由はない。 25その理由をさらに付言するならば、まず、本件実施許諾契約第1条によれ46 ば、一審原告には本件各特許権につき独占的通常実施権が付与されているものの、一審原告が製造した機械の販売を受けた本件実施許諾契約の当事者以外の者が同機械を使用して製造した製品について、一審被告が本件各特許権を行使するについて、本件実施許諾契約にはこ 付与されているものの、一審原告が製造した機械の販売を受けた本件実施許諾契約の当事者以外の者が同機械を使用して製造した製品について、一審被告が本件各特許権を行使するについて、本件実施許諾契約にはこれを妨げる文言は規定されていないから、一審被告は一審原告から本件実施許諾契約に基づく債務不履行5責任を追及される理由はないというべきである。 また、本件実施許諾契約第7条には、前記のとおり、第三者が本件各特許権を侵害し又は侵害しようとしていることを知ったときには直ちにその旨を一審被告に通知するものとして、侵害の排除及び予防について、一審原告は一審被告に協力すべきことが定められているところ、一審原告は、本件米国10特許権の実施として侵害に当たる行為を参加人が行うについて、一審被告に対し、本件実施許諾契約に基づく通知等を行った形跡はない。 加えて、本件実施許諾契約第10条では、本契約に定めのない事項若しくは本契約の解釈について疑義が生じた場合には、その都度協議の上これを定めるとされているところ、一審原告が、参加人による本件米国特許権の侵害15に当たる行為は、本件実施許諾契約に基づき許容されており違法ではない旨について、協議を申し入れた形跡もない。 以上の検討によれば、一審被告の参加人に対する本件米国訴訟の提起及びその維持が本件実施許諾契約の債務不履行となることはない。 (2) 一審原告の主張に対する判断20ア 一審原告は、本件実施許諾契約は、本件各特許権は一審原告による発明についての冒認ないし共同出願違反であり、これを一審被告も了解の上で契約の締結に至ったものであるから、本件実施許諾契約はこれを踏まえて解釈すべきであり、一審原告は、本件実施許諾契約により独占的通常実施権を付与されているところ、一審原告が製 れを一審被告も了解の上で契約の締結に至ったものであるから、本件実施許諾契約はこれを踏まえて解釈すべきであり、一審原告は、本件実施許諾契約により独占的通常実施権を付与されているところ、一審原告が製造販売した装置を使用する者は、25本件各特許権の侵害には当たらない旨を主張する。 47 しかし、前記2のとおり、そもそも本件実施許諾契約にはそのように解すべき根拠となる規定が存しない。加えて、以下のとおり、一審原告の行動は、一審原告の主張する上記認識に沿うものではないどころか、かえって、これとは反するものである。 一審原告は、本件実施許諾契約により可能とされた本件各特許権につい5ての実施権の登録を行っていない。前記のとおり、本件実施許諾契約締結当時においては、登録をしなければ契約当事者から権利を承継した者に対して対抗することができないものであった。 これを詳しくみると、平成23年法律第63号による改正(以下「改正法」という。平成23年3月11日閣議決定、同年5月31日可決成立、10同年6月8日公布。同年12月2日政令第369号により平成24年4月1日施行)前の特許法99条は、通常実施権につき、「通常実施権は、その登録をしたときは、その特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる。」と定めており、債権である通常実施権については、原則として通常実施権15の契約当事者以外の第三者には対抗できないが、その登録をしたときには、その特許権等を取得した者に対しても、対抗力を有するものとされていた。 本件実施許諾契約締結当時においては、このように通常実施権が設定されていても、その登録をしなければ、一審被告が本件各特許権を譲渡した20場合においては、特許権の譲受 有するものとされていた。 本件実施許諾契約締結当時においては、このように通常実施権が設定されていても、その登録をしなければ、一審被告が本件各特許権を譲渡した20場合においては、特許権の譲受人から、一審原告のみならず、一審原告が実施権の保護の対象となると考えて装置を販売した顧客についても、本件各特許権の権利行使を受けるおそれがあった。なお、改正法附則11条は、特許法99条の適用につき、「この法律の施行の際現に存する通常実施権にも適用する。」と規定しているところ、本件実施許諾契約の終期がいつ25かは明確とはいえないものの、改正法が施行される平成24年4月1日よ48 り前に有効なものとして本件各特許権の譲渡がされれば、一審原告は、本件実施許諾契約に基づく通常実施権を、特許権の譲受人には対抗できない地位にあったものである。 ところが、一審原告は、平成9年に本件日本特許権の設定登録がされた後にも、本件実施許諾契約に基づき、第三者対抗要件を具備しなかった。 5また、本件米国訴訟提起後の平成23年に、前記のとおり一審原告から一審被告に対する申入れが複数回されているところ、そのいずれにおいても、本件実施許諾契約に基づき一審原告が納入した装置により製造された製品であるから、一審被告は権利行使をすることができない旨について、全く通知がされていない。前記申入れにおいては、本件実施許諾契約に触10れることもなく、それどころか、参加人とは無関係な第三者的な仲裁人を装っているというほかない。Kは、SKC社に対し、一審原告が本件各特許権につき通常実施権を有しており、一審原告から販売を受けた機械を使用して製造した製品については本件各特許権との関係で問題が生じない旨を説明したとするところ(原審におけるKの尋問調書23、24頁)、15 通常実施権を有しており、一審原告から販売を受けた機械を使用して製造した製品については本件各特許権との関係で問題が生じない旨を説明したとするところ(原審におけるKの尋問調書23、24頁)、15一審原告の行動は、これに沿うものとなっていない。 さらに、一審原告は、本件各特許権について、年金の支払、ひいては本件各特許権の維持についても関心を持っていないというほかない。前記5(7)のとおり、英国での特許権については、本件日本特許権の設定登録がされるよりも前の平成9年3月に、年金の不払を理由として権利が失効して20しまっている。一審原告の発明であると主張する権利について一審被告がヨーロッパにおいて出願をしたことを知りながら、本件実施許諾契約第3条に定められた半額費用の支払によりその維持への協力が可能であるのに、年金の支払に関心を持たず、権利が失効し独占権を喪失するという結果が生じたことについては不可解というほかない。 25イ 一審原告は、一審被告のIは、本件各特許権につき冒認ないし共同出願49 違反の問題があることを認識した上で本件実施許諾契約を締結したのであるから、本件実施許諾契約はこれを前提として解釈し得る旨を主張する。 しかし、一審原告からは、本件実施許諾契約の締結の前後に、一審原告の側で検討したことを示す証拠等は提出されているが、それらに対し、一審被告がどのような認識を示したかに関する書証等は一切提出されていな5い。 一審被告のIが、一審原告のG’の説明に納得し、冒認出願であるとの認識を共通にしたのであれば、Iがどのような形で納得したのかを示す記載が残されているのが自然である。しかも、G’によれば、冒認出願であることをIが納得したにもかかわらず、出願名義の変更には納得しなかったと10するのであるから どのような形で納得したのかを示す記載が残されているのが自然である。しかも、G’によれば、冒認出願であることをIが納得したにもかかわらず、出願名義の変更には納得しなかったと10するのであるから、本件各特許の発明者は一審原告であるとの立場に立って交渉を進めている一審原告において、これに対しどのように対応すべきかを検討するものと思われるところ、G’とIとの交渉経過についての報告文書や社内の検討結果も一切不明であり、Iから送られてきたとする2通の提案以外に、これについての資料は一切提出されていない。それどころ15か、一審被告が名義変更に納得しなかったから最終的に独占的通常実施権とする本件実施許諾契約の締結で最終的な満足を得たとするのは、一審原告が発明者であることを前提とすれば首肯し難い内容であり、これについての一審原告による検討の経緯も不明である。 これらによれば、一審被告においても本件各特許権につき冒認ないし共20同出願違反の問題があるとの認識のもとに本件実施許諾契約が締結されたとする一審原告の主張は、裏付けを欠くものというほかない。 ウ なお、前記第3の2(補正の上で引用した原判決第4の5)(3)及び(4)のとおりのJ’弁理士作成の文書によれば、一審原告は、本件各発明について、一審原告の提案ないし創意に係る部分があるとの前提のもとにJ’弁理士25に対し相談をしていた事実は認められる。また、J’弁理士は、その説明に50 沿い、一審原告が本件各特許に係る発明に一審原告が関与していたことを前提として、その主張に即した指示を一審原告に対し行っていた事実についても認められる。 しかし、一審原告の行動は、以下のとおり、J’弁理士の指示に必ずしも沿うものとはなっておらず、J’弁理士が文書において記載した一審原告が5本件 原告に対し行っていた事実についても認められる。 しかし、一審原告の行動は、以下のとおり、J’弁理士の指示に必ずしも沿うものとはなっておらず、J’弁理士が文書において記載した一審原告が5本件各特許の発明者であることを前提とした記載と、一審原告の実際の認識との間には、齟齬があることが伺われるというべきである。 J’弁理士は、本件実施許諾契約の締結後、その重要性を示した上で、直ちに日付けを補充することを求めたが、一審原告はそれに沿うことをしなかった。Iからは本件実施許諾契約締結後の平成6年1月12日に、本件10各特許の出願状況について知らせてきているものであるから、これらの機会に日付けの補充についての連絡を取り合うことは容易であったとみられるところ、結局日付けが補充されることがなかった。その結果、G’においても、本件米国訴訟における宣誓供述書の作成の段階において本件実施許諾契約締結の正確な日付けを認識できておらず、平成5年10月頃に同15契約が締結されたとしており、一審原告において、本件実施許諾契約の締結がいつであるのかの正確な管理はされていない状況にあった。 また、本件各特許の実施権について、J’弁理士はその登録に向けての様々なアドバイスをしているところ、一審原告は、結局、実施権の登録をすることがなかった。前記のとおり、本件実施許諾契約締結の当時、登録20をしなければ実施権を第三者に対抗できず、これは一審被告が特許権の譲渡をした場合でも同様なのであるから、本件各特許の設定登録後、すみやかに設定登録を行うのが通常であり、しかも、一審原告の主張によれば、一審原告が取得した実施権は、一審原告が製造し販売した装置を使用して第三者が製造した製品について、一審被告は特許権行使をすることが一切25できないとする極めて強力な権 、一審原告の主張によれば、一審原告が取得した実施権は、一審原告が製造し販売した装置を使用して第三者が製造した製品について、一審被告は特許権行使をすることが一切25できないとする極めて強力な権利であるから、一審原告が装置を販売した51 顧客の適切な保護のためにも、その保全は最重要課題であるはずである。 それにもかかわらず、一審原告がJ’弁理士の重視する実施権の登録について、これを行わなかったのは不可解である。 さらに重要なこととして、一審原告は、本件各特許の発明者であることを示すとする資料を、全く手元に残していない。G’は、Iに対して、数か5月を要して集めたとするこれら資料をすべて渡してしまったとしており、仮にこれが事実であったとしても、J’弁理士からのアドバイスを受けた時点においては、渡した資料を再生するなり、社内に残された資料を集めるなり、Iに対して返還ないし写しの交付を求めるなりするなどのことは、一審原告こそが本件各特許の発明者でありIもこの点を十分に納得して10本件実施許諾契約を締結したとする一審原告の立場からすれば、拒絶理由通知等に対応するためには当然に必要なことと解される。 一審原告は、これら資料が手元に残されていない点について、本件実施許諾契約の締結によって満足な交渉成果を得たと考えた以上、交渉過程で使用した膨大な資料まで保存する必要はなかったとする(一審原告第3準15備書面(令和4年8月31日付け)61頁)が、前記のとおり、J’弁理士は、当時審査段階にあった本件日本特許権につき、拒絶理由通知が発せられた場合に、一審原告が真の発明者であるというのであれば、それに的確に対応する必要があることを前提として、その体制整備を促したものであり、G’の行動はこれに反するものである上に、その後に、一審原告におい 場合に、一審原告が真の発明者であるというのであれば、それに的確に対応する必要があることを前提として、その体制整備を促したものであり、G’の行動はこれに反するものである上に、その後に、一審原告におい20て一切対応がとられた形跡がないことも不可解である。 これらは、J’弁理士に一審原告が説明したことが伺われる内容である、一審原告が本件各特許に係る発明をしたとのことが事実に基づくものであるか、G’とIとの交渉の経過が、原審においてG’が証言した内容のとおりであるのかについて、疑問を生じさせるものである。 25エ Kは、本件米国訴訟において、一審原告が平成4年(1992年)に本件52 各特許権について情報提供を受けた会社は、ポリビニルアルコール(PVA)を製造販売しており、ポリイミドフィルムを製造販売する一審被告とは競合しない会社であるところ、その会社は、一審原告に対し、自社の新しい装置を購入しようとしているところ、本件各特許権の関係があるので、これを何とかしてもらいたいとして、一審原告において一審被告から実施権5を付与されることを求め、一審原告はその会社と取引をするために、本件実施許諾契約を締結したと証言しているところ(乙31)、この内容は、前記一連の経過とは符合するものである一方、平成4年6月24日に行われたとする一審原告における議事録(甲80)記載の検討内容や、原審における証人Kの尋問調書15頁等の証言内容とは整合しない。 10加えて、前記第3の2(補正の上で引用した原判決第4の5)(5)のとおり、東レは日本においては先使用権を主張するが、米国向けの次回発注予定の装置については井上金属に発注することもあり得ることを前提とした、東レからの引合いについての一審原告からの問い合わせに対し、J’弁理士は、「鐘化の米国 先使用権を主張するが、米国向けの次回発注予定の装置については井上金属に発注することもあり得ることを前提とした、東レからの引合いについての一審原告からの問い合わせに対し、J’弁理士は、「鐘化の米国特許出願の前に、東レがヒラノ殿の装置を米国にお15いて使用している場合、どのようになるかという問題があります。2つの場合に分けて考えます。 (1)鐘化の使用が公然である場合(2)そうでない場合 (1)の場合には、鐘化特許が無効となります。しかし、(2)の場合には、鐘化特許は無効とならず、東レとしては、対抗のしようがありません。」と回答している。これらによれば、東レは一審原告が販売した装置を日本及20び米国で使用しているところ、本件各特許権との関係につき、日本においてはこれにより先使用権の要件を満たすと考えていることが伺われる。一方、東レの同装置の使用の開始と本件米国特許の出願の前後は分からないものの、東レは一審原告が製造した装置を本件米国特許の出願前に米国で使用した可能性があり、一審原告は、自ら発明したとする内容について特25許出願をすることなく、東レに対し、その実施品に当たる装置を製造して53 提供していたが、この装置については、一審原告の競合会社である井上金属等に生産をさせても問題ないもの、すなわち一審原告が発明したとする内容について、守秘義務等の縛りのないものとして提供していたことになる。 これらからすると、一審原告は、本件実施許諾契約締結の当時における5販売先に、本件各特許権の侵害の問題さえ生じなければ、それで本件実施許諾契約締結の目的は達せられたものと考えていたとみるのが相当である。 オ 一方で、カネカ2号機に関する見積りは、一審被告から、一審原告のほか数社に対しされており、その比較検討が一審被告において 許諾契約締結の目的は達せられたものと考えていたとみるのが相当である。 オ 一方で、カネカ2号機に関する見積りは、一審被告から、一審原告のほか数社に対しされており、その比較検討が一審被告において昭和62年110月8日にされている(乙18)ところ、そこにおいては、仮に一審原告の発明ないし同社のみの提案に係るのであればその検討がされるであろう平行流(カウンターフロー方式)の採用について、検討がされた形跡は伺えない上、その前後においても、一審原告のみが提案し得るであろう上記内容について、その優位性を示す書類も提出されておらず、その点の検討がさ15れた旨の証拠もない。 そうすると、昭和61年11月当時の資料が一審被告に残されておらず、一審原告作成に係る昭和61年12月15日付け原告見積設計図(甲9)や同月19日付けベルト乾燥装置仕様書12月版(甲32)にカネカ2号機で実現されたとする平行流(カウンターフロー方式)が示されているか20らといって、同年5月に本件秘密保持契約が締結されていることにも鑑みれば、カネカ2号機で実現されたとする平行流(カウンターフロー方式)が、一審原告の着想に係るものと直ちに断じることはできない。 カ 以上の検討によれば、本件各特許権の出願につき、一審原告の発明に係る内容についての一審被告による冒認ないし共同出願違反の問題があると25認めることはできないというべきである。 54 したがって、本件各特許は一審原告が少なくとも共同で発明したものであり、一審被告は一審原告に無断で出願・取得した瑕疵ある特許権を有するにすぎないことを前提とする一審原告の主張はいずれも採用することができない。 4 争点(3)(一審被告による本件米国訴訟の提起又は追行が、本件実施許諾契約5の債務不履行又は不法行為に を有するにすぎないことを前提とする一審原告の主張はいずれも採用することができない。 4 争点(3)(一審被告による本件米国訴訟の提起又は追行が、本件実施許諾契約5の債務不履行又は不法行為になるか)のうちの不法行為の成否について(1) 一審原告は、参加人による米国での本件各製品の販売は、本件実施許諾契約により一審原告に許諾された行為から派生した範囲に当然含まれるものであるから、一審被告による本件米国訴訟の提起は不法行為に該当する旨主張する。この点に関する一審原告の主張は必ずしも明確とはいいがたいが、こ10れをまとめると、次のような主張と思われる。すなわち、本件実施許諾契約において、その文言上、一審原告に許諾された「範囲全部にわたる独占的通常実施権」について、一審原告による本件各特許権の実施品の販売先を制限する趣旨の記載は一切なく、契約書の文言上は、一審原告は、独占的通常実施権に基づき、本件各特許権を実施して製造した機械装置を誰に対しても販15売できることは明白であることを前提とし、そうであれば、本件において、本件実施許諾契約に基づき一審原告に許諾された範囲無制限の独占的通常実施権により、一審原告製装置を使用した参加人の行為に関して消尽が成立することは一義的に明確であり、そうである以上、一審被告による特許権侵害に基づく請求は必ず棄却されるであろう場合であったと評価できる状況下に20おいて、一審被告が、参加人が使用した本件各機械装置が一審原告が本件各特許権を実施して製造販売した機械装置であることを知っていたか又は容易に知り得たにもかかわらず、参加人に対して本件米国訴訟を提起・追行して本件各特許権を行使し、同訴訟において一審被告が消尽を否定するために主張した事情としては、本件実施許諾契約に販売先制限(一審原告に に知り得たにもかかわらず、参加人に対して本件米国訴訟を提起・追行して本件各特許権を行使し、同訴訟において一審被告が消尽を否定するために主張した事情としては、本件実施許諾契約に販売先制限(一審原告による装置25の販売先は一審被告の非競合他社に限定されるとの制限)があることである55 が、一審被告の上記主張は消尽の成立を合理的に疑わせるようなものではなかったにもかかわらず、一審被告が、同訴訟において、虚偽の供述・証言やこれを援用した事実に反する主張をしたことにより、特許権侵害による勝訴判決を獲得したことは、一審原告に対する不法行為を構成するものである、と主張するものと解される。 5しかし、前記2のとおり、本件実施許諾契約には、不起訴の合意など、一審被告による本件各特許権の侵害行為に対する権利行使を制限する条項は何ら存しないのであるから、そもそも、一審被告が参加人に対して本件米国訴訟を提起し、これを追行したこと自体が本件実施許諾契約の存在によって直ちに違法になるとはいえないというべきである。 10この点に関し、訴えの提起・追行が不法行為となる場合についての昭和63年最判は、「法的紛争の当事者が当該紛争の終局的解決を裁判所に求めうることは、法治国家の根幹にかかわる重要な事柄であるから、裁判を受ける権利は最大限尊重されなければならず、不法行為の成否を判断するにあたっては、いやしくも裁判制度の利用を不当に制限する結果とならないよう慎重15な配慮が必要とされることは当然のことである。したがって、法的紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則として正当な行為であり、提訴者が敗訴の確定判決を受けたことのみによって、直ちに当該訴えの提起をもつて違法ということはできないというべきである。一方、訴えを提起された者にとって 提起することは、原則として正当な行為であり、提訴者が敗訴の確定判決を受けたことのみによって、直ちに当該訴えの提起をもつて違法ということはできないというべきである。一方、訴えを提起された者にとっては、応訴を強いられ、そのために、弁護士に訴訟追行を委任しその費20用を支払うなど、経済的、精神的負担を余儀なくされるのであるから、応訴者に不当な負担を強いる結果を招くような訴えの提起は、違法とされることのあるのもやむをえないところである。以上の観点からすると、民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利25又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くもの56 であるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。けだし、訴えを提起する際に、提訴者において、自己の主張しようとする権利等の事実的、法律的根拠につき、高度の5調査、検討が要請されるものと解するならば、裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でないからである。」と判示しており、また、本件米国訴訟の提起及びこれについての確定判決の取得をわが国における確定判決の取得に準ずるものと考えて、確定判決の騙取について判示した最高裁判決である、最高裁平成21年(受)第1216号同22年4月13日第10三小法廷判決・集民234号31頁が「当事者間に確定判決が存在する場合に、その判決の成立過程における相手方の不法行為を理由として、その判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する 2年4月13日第10三小法廷判決・集民234号31頁が「当事者間に確定判決が存在する場合に、その判決の成立過程における相手方の不法行為を理由として、その判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求をすることは、確定判決の既判力による法的安定を著しく害する結果となるから、原則として許されるべきではなく、当事者の一方が、相手方の権利を害する意図の下に、作為15又は不作為によって相手方が訴訟手続に関与することを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正な行為を行い、その結果本来あり得べからざる内容の確定判決を取得し、かつ、これを執行したなど、その行為が著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合に限って、許されるも20のと解するのが相当である(最高裁昭和43年(オ)第906号同44年7月8日第三小法廷判決・民集23巻8号1407頁、最高裁平成5年(オ)第1211号・第1212号同10年9月10日第一小法廷判決・裁判集民事189号743頁参照)。」と判示していることに照らし、本件米国訴訟における一審被告の訴え提起、追行及び勝訴判決の取得が不法行為を構成す25るか否かは、上記各判例の判断枠組みにおいて判断するのが相当である。 57 これを本件において検討するに、前記のとおりの一審原告と一審被告との本件実施許諾契約の内容や、前記のとおりの事実関係によれば、少なくとも、本件米国訴訟の訴え提起当初において、一審被告は本件実施許諾契約の存在を認識しておらず、また、同訴訟の追行中に一審被告が本件実施許諾契約の存在を認識したとしても、前記認定のとおり、本件各発明の着想から完成ま5での一連の経過、本件実施許諾契約の締結の経緯には不明な点が多い ておらず、また、同訴訟の追行中に一審被告が本件実施許諾契約の存在を認識したとしても、前記認定のとおり、本件各発明の着想から完成ま5での一連の経過、本件実施許諾契約の締結の経緯には不明な点が多いから、同訴訟において一審被告が消尽を否定するために本件実施許諾契約に販売先制限(一審原告による装置の販売先は一審被告の非競合他社に限定されるとの制限)があると主張し、その立証活動をしたことが裁判制度の趣旨目的に照らし著しく相当性を欠く、あるいは著しく正義に反する行為であるとは認10められないというべきである。したがって、一審被告の本件米国訴訟の提起、追行及び勝訴判決の取得が一審被告に対する不法行為であると解する余地はない。 (2) なお、一審原告と一審被告は、一審被告の滋賀工場に、一審原告の1号機から6号機までが納入され、その最後の納入は平成17年頃であるほか、ポ15リイミドフィルムの工場をマレーシアに作る一審被告の平成22年から行われたプロジェクトに一審原告も参加し、9億円にのぼる装置をいくつかの候補会社の中から一審原告に発注することとなり、これは平成24年の半ば頃に行われるなど、一審被告による平成22年の本件米国訴訟提起後においても、一審原告と一審被告との取引は、継続していた(原審における証人M20の尋問調書6、9頁等、同証人Lの尋問調書7頁)。 一審被告としては、この一審原告との取引関係が継続している中で、一審原告が、ポリイミドフィルムに関し競合関係にある会社である参加人の前身会社に、本件各機械装置を販売しているとは想像もしておらず、もしそのような状況を知っていれば、平成24年に行われた上記装置の発注は一審原告25に対しては行われなかったであろうとしている(原審における証人Mの尋問58 調書10頁)。 本件 らず、もしそのような状況を知っていれば、平成24年に行われた上記装置の発注は一審原告25に対しては行われなかったであろうとしている(原審における証人Mの尋問58 調書10頁)。 本件実施許諾契約前後における一審原告と一審被告とのこれらの経緯にもよれば、一審原告から本件実施許諾契約に基づく通知ないし申入れをするのも容易であり、これも行うことなく、一審被告による一審原告に対する不法行為が成立する余地はそもそもないというべきである。 55 争点(5)(当審における訴えの追加的変更の許否)について一審原告による訴えの追加的変更については、前記第2の1(3)記載の当審における一審原告による追加請求の内容に照らし、「請求の基礎の同一性」を欠くものとはいえず、また、その審理によって著しく訴訟手続を遅延させるものとは認められないから、その同追加は許されると解すべきであり、この点に関10する一審被告の主張は採用することができない。 6 争点(6)(一審被告は、本件実施許諾契約の債務不履行若しくは不法行為又は不当利得に基づき、本件補償合意に基づいて一審原告が参加人に支払った金銭について、一審原告に対して支払義務を負うか)についてこの点については、前記3及び4における説示と同様の理由により、一審原15告の主張は理由がない。 7 争点(7)(一審原告の債務不存在確認の訴えの利益の有無(第2事件の主位的控訴の趣旨))について(1) 一審被告は、令和5年7月5日に行われた当審の第1回口頭弁論期日において、仮に本件各特許権の侵害に基づく一審被告の一審原告に対する損20害賠償請求権が存在するとしても、そのいずれについても請求権を放棄すると陳述した。 これによれば、一審被告が一審原告に対して本件各特許権の侵 の侵害に基づく一審被告の一審原告に対する損20害賠償請求権が存在するとしても、そのいずれについても請求権を放棄すると陳述した。 これによれば、一審被告が一審原告に対して本件各特許権の侵害による損害賠償請求権を有しないことの確認を求める確認の利益はない。 (2) 上記によれば、本件第2事件に係る一審原告の訴えについては、却下す25べきである。 59 8 以上に認定及び判断をしたところは、当審における一審原告のその余の補充主張によっても左右されるものではない。 よって、その余の点について判断するまでもなく、第2事件の請求を認容した原判決は不当であるから一審被告の控訴に基づき原判決中一審被告敗訴部分を取り消して第2事件に係る一審原告の訴えを却下し、第1事件に係る一審5原告の請求を棄却した原判決は結論において相当であり、一審原告の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、一審原告の当審における追加請求も理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 10 裁判長裁判官東海林 保 15 裁判官今井弘晃 20 裁判官水野正則
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