【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。 本件を神戸地方裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人大塚明、同神田靖司、同戎正晴、同中村留美の上告理
主 文 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。 本件を神戸地方裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人大塚明、同神田靖司、同戎正晴、同中村留美の上告理由について 一 本件記録によれば、上告人の本件訴えは、D町営土地改良事業(以下「本件 事業」という。)が、農業生産とは直接結びつくことのない国道九号線バイパス新 設のために土地改良法(以下「法」という。)を利用又は流用しようとするもので あり、本件事業は、法二条二項各号所定の事業には該当せず、また、本件事業は、 農業から商業への産業構造の転換を促すものであり、農業生産の拡大や農業構造の 改善には何ら資するところがないから、法施行令二条一号の必要性、同条六号の総 合性を欠く違法なものであるとして、被上告人がした本件事業施行認可処分(以下 「本件認可処分」という。)の取消しを求める、というものである。 第一審は、本件事業計画に係る工事及び換地処分はすべて完了しており、工事費 二億六七九〇万円、事業主体事務費二六六万二〇〇〇円(合計二億七〇五六万二〇 〇〇円)の費用を投じ、三九・四ヘクタール(昭和五九年の計画変更により、四二 ヘクタール)の区画、形質は既に変更され、関係権利者一〇〇人にも及ぶ換地処分 による登記も完了し、上告人も二筆の換地を得たとの事実を確定した上、本件認可 処分に係る事業施行地域を原状に回復することは、物理的に全く不可能とまでいう ことはできないとしても、その社会的、経済的損失を考えると、社会通念上、法的 に不可能であるとし、本件認可処分を取り消しても、もはや上告人の主張する違法 状態を除去することはできないから、これを取り消す実益はなく、訴えの利益はな いものというべきであるとして、本件訴えを却下し、原審もこれを支持して、上告 人の控訴を棄却した。 - 1 - の主張する違法 状態を除去することはできないから、これを取り消す実益はなく、訴えの利益はな いものというべきであるとして、本件訴えを却下し、原審もこれを支持して、上告 人の控訴を棄却した。 - 1 - 二 しかしながら、原審の右判断は、是認することができない。その理由は、次 のとおりである。 本件認可処分は、本件事業の施行者であるD町に対し、本件事業施行地域内の土 地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施 行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処 分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするも のであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これによ り右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。そして、本件訴訟 において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行 以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地 処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不 可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法三一条の適用に関して考 慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益 を消滅させるものではないと解するのが相当である。 してみると、右と異なる見解に立って、訴えの利益が消滅したものとして本件 訴えを却下した第一審判決及びこれを支持した原判決は、いずれも法令の解釈適用 を誤ったものといわざるを得ず、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである から、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れず、また、第一審判決も取消しを免 れず、本件を神戸地方裁判所に差し戻すべきである。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条 かである から、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れず、また、第一審判決も取消しを免 れず、本件を神戸地方裁判所に差し戻すべきである。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八八条 に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 藤 島 昭 裁判官 中 島 敏 次 郎 - 2 - 裁判官 木 崎 良 平 裁判官 大 西 勝 也 - 3 -
▼ クリックして全文を表示