昭和35(う)2881 地方税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和37年4月26日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      当審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。          理    由  本件控訴の趣意は、弁護人風早八十二が差し出した控訴趣意書及び控訴趣意

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判決文本文6,805 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 当審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人風早八十二が差し出した控訴趣意書及び控訴趣意補充書にそれぞれ記載してあるとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断をする。 公訴事実にある入場税不納入額は経験則に反した架空の数字であるとの主張について。 被告人が経営していた映画常設館A映画館においては、昭和二六年一月一日以来いわゆる入場券のたらい廻しの方法によつて入場券の二重売りがなされており、従つて入場券を正規に一回売りをしていたものとして記載されている入場税徴収簿(昭和三五年押第一、一六九号の一及び二)記載の入場税額及びこれに基ずく申告税額が現実に徴収された入場税額を現わしていない過少のものであることは原判決が詳細に説明しているとおりである。従つて、被告人が映画常設館A映画館の入場税特別徴収義務者又は右映画館の入場税特別徴収義務者であるB有限会社の代表者として、納税義務者たる入場者から現実に徴収した入場税額は、被告人がC税務事務所に納入した入場税額を上廻つていたものと認めるのが相当であるところ、原判決は、被告人が右映画館の入場税特別徴収義務者又は同映画館の入場税特別徴収義務者であるB有限会社の代表者として現実に入場者から徴収した入場税額をD作成の週計表(前回押号の六)及び手帳(同押号の一四)並びに被告人作成の手帳(同押号の七ないし一二)に記載してある数額を基礎として認定しているが、右各手帳の数字特に右週計表の数字が真実であると認めるに足りることもまた原判決が詳細に説明しているとおりである。 もつとも、原判決が認定している、被告人が映画常設館A映画館の入場税特別徴収義務者又は右映画館の入場税 右週計表の数字が真実であると認めるに足りることもまた原判決が詳細に説明しているとおりである。 もつとも、原判決が認定している、被告人が映画常設館A映画館の入場税特別徴収義務者又は右映画館の入場税特別徴収義務者であるB有限会社の代表者として現実に入場者から徴収した入場税額は、被告人が現実にC税務事務所に納入した入場税額の二倍ないし三倍に達しているが、入場人員並びに入場券のたらい廻しの率及び回数の点からみて、原判決が認定した数額が必らずしも不可能な数額とはいえないこともまた原判決が詳細に説明しているとおりである。そればかりではなく、前記手帳及び週計表のうち最も記載内容が整備されていると認められる週計表の記載について検討してみるに、当審の証人Dの当公廷における供述によれば、同人は、右週計表は銀行等から金融を受ける便宜上、銀行等の信用を得られるような適当な数字を記載したものであると弁解し、且つ昭和二六年二月分から同年九月の第一週分までの各記載は、毎日の入場税込みの総売上とその毎週の合計としてそれぞれ適当な数字を記載したものであり、又同年九月の第二週分から同月の第四週分までの各記載はその外に上映映画のプリント代として適当な数字を記載したものであり、なお同年一〇月分から昭和二七年八月分までの各記載は、更らにその外に毎週の利益の概算として適当な数字を記載したものであるというのであるが、右週計表の以上の期間の記載については、その記載自体からその記載の真偽を判断する手掛りは見当らない。 しかし、右証人の当公廷における証言によれば、前記週計表の昭和二七年九月分から昭和二八年一月分までの各記載は、毎日の入場税込みの総売上、その毎週の合計及び上映映画のプリント代としてそれぞれ適当な数字を記載し、且つ被告人が毎週現実に入場者から徴収し、C税務事務所に納入す から昭和二八年一月分までの各記載は、毎日の入場税込みの総売上、その毎週の合計及び上映映画のプリント代としてそれぞれ適当な数字を記載し、且つ被告人が毎週現実に入場者から徴収し、C税務事務所に納入すべき入場税額及び毎週の経費の概算を記載した上毎週の利益の概算を算出して記載したものであるというのであるが、右の各記載は末尾添付の別表(一)記載のようにその計算が大体合つているところ、(一)、同証人が弁解しているように、もし右週計表が銀行対策のためだけに作成されたものであるとすれば、入場税の税率は昭和二七年一二月までは百分の百、昭和二八年一月以降は百分の五〇であつたのであるから、毎週の入場税額は右の入場税の税率を基準として、毎週の売上合計に大体見合うような数字を記載して金融をしてくれる銀行等の係員をして右週計表の記載を信用させるようにすべきであるのにかかわらず、右週計表に記載されている毎週の入場税額は毎週の売上合計とは全く釣合のとれない数字であるばかりでなく、右通計表に記載されている毎週の入場税額が、末尾添付の別表(二)記載のように、前記入場税徴収簿に記載されている当該週間における入場税額と殆んど一致していることが明らかであり、結局右週計表が、五ケ月もの長きにわたつて、同証人によつて、被告人が現実に納入した入場税額を算出する基礎となつている右入場税徴収簿の数字を基礎として毎週の利益の概算が算出されていたものと認められること、(二)、同証人が弁解しているように、もし右週計表が銀行対策のためだけに作成されたものとすれば、毎週の利益の概算が赤字になるということは一寸考えられないところであるが、右週計表によれば、昭和二七年一二月の第二週分が二、八〇〇円の赤字になつており、又同月第四週分が三七、四〇〇円の赤字になつているばかりでなく、右週計表に記載され とは一寸考えられないところであるが、右週計表によれば、昭和二七年一二月の第二週分が二、八〇〇円の赤字になつており、又同月第四週分が三七、四〇〇円の赤字になつているばかりでなく、右週計表に記載されている被告人が映画常設館A映画館と同時に経営していたE劇場の昭和二七年一〇月の第一週、第三週及び第四週分並びに同年一二月第二ないし第四週分についてもいずれも利益の概算が相当の赤字である旨の記載がされていること、(三)同証人の当公廷における証言によれば、映画常設館A映画館の一ケ月の経費は大体三五万円であるというのであるが、右週計表に記載されている毎週の経費の概算は十万円ないし十二万円であつて、両者の間に大差がないことを総合して考慮すれば、右週計表の右期間の各記載は、その記載自体からみても、いずれもすべて信用するに足りるものと認めるのが相当である。 又右証人の当公廷における証言によれば、前記週計表の昭和二八年二月分及び同年三月分の各記載は、毎日の入場税込みの総売上、その毎週の合計及び上映映画のプリント代並びに毎週納入すべき入場税額としてそれぞれ適当な数字を記載したものであるというのであるが、(一)、同証人が弁解しているように、もし右週計表が銀行対策のためだけに作成されたものであるとすれば、昭和二八年一月以降の入場税の税率は百分の五〇であるから、毎週の入場税額は右の入場税の税率を基準として毎週の売上合計に大体見合うような数字を記載して金融をしてくれる銀行等の係員をして右週計表の記載を信用させるようにすべきであるのにかかわらず、右週計表に記載されている毎週の入場税額は毎週の売上合計とは全く釣合のとれない数字であること、(二)、右週計表に記載されている毎週の入場税額が、末尾添付の別表(三)記載のように、前記入場税徴収簿に記載されている当該週間における入 入場税額は毎週の売上合計とは全く釣合のとれない数字であること、(二)、右週計表に記載されている毎週の入場税額が、末尾添付の別表(三)記載のように、前記入場税徴収簿に記載されている当該週間における入場税額の三倍に当る数字と殆んど合致しているところ、このように右週計表に記載されている毎週の入場税額が前記入場税徴収簿に記載されている当該週間における入場税額の三倍に当る数字と殆んど合致していることについては別段の説明はないが、二ケ月にわたつてこのような記載がなされていたということは決して偶然ということはできないばかりでなく、被告人が現実に納入した入場税額を算入する基礎となつている右入場税徴収簿の数字を基礎として毎週の利益を算出すると、余りにも利益が多いことになるので、その三倍に当る数字を基礎として毎週の利益を算出することにし、もつて毎週の利益を適当額に押えて帳簿の体裁を整えようとしていたものと推認されることを総合して考慮すれば、右週計表のこの期間の各記載も、その記載自体からみて、毎週の入場税額を前記入場税徴収簿に記載されている当該週間における入場税額の三倍にしてある以外には、いずれもすべて信用するに足りるものと認めるのが相当である。 果して然らば、前記週計表はその記載自体からみても、その全体をいわゆる裏帳簿と認めるのが相当であり、その記載はすべて信用するに足りるものと認められ、ひいては右週計表の基礎にされたと認められる前記手帖もいわゆる裏帳簿に類するものと認めるのが相当であり、その記載もまた信用するに足りるものと認められ、結局右手帖及び週計表が銀行対策のためだけに作成されたもので、いい加減な数字が記載されているに過ぎないとする被告人等の弁解は信用することができない。 <要旨第一>なお前記手帖及び週計表はさきに、詳細に説示したとおり、いわゆる 対策のためだけに作成されたもので、いい加減な数字が記載されているに過ぎないとする被告人等の弁解は信用することができない。 <要旨第一>なお前記手帖及び週計表はさきに、詳細に説示したとおり、いわゆる裏帳簿又はこれに類するものと認める</要旨第一>のが相当であつて、いずれも特に信用すべき情況の下に作成された書面と認められるから、いずれも刑事訴訟法第三二三条第三号の書面に当るものというべく、なお原審第七回公判調書の記載によつて明らかなように、弁護人がこれを証拠とすることに異議を述べなかつたものであるから、原審がその証拠調をした上、これを証拠に援用したことはまことに相当であつて、このことを非難することは当らない。 結局原判示事実はすべて原判決が引用して、いる証拠によつて十分に認定することができ、記録及び証拠物を精査し、且つ当審の事実取調の結果を検討しても、原判決の事実認定には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認の疑はないから、論旨は理由がない。 本件は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当するとの主張について。 本件起訴状が、被告人に対する公訴事実に対する罰条として示している「地方税法(昭和二五年法律第二二六号)第九二条第一項、第五項」の規定が昭和二九年法律第九五条によつて改正され、その入場税に関する部分が廃止されて娯楽施設利用税に関する規定に改められ、入場税についてはあらたに昭和二九年法律第九六号入場税法が制定され、結局右改正前の地方税法第九二条第一項が規定していた入場税不納入罪に対する罰則が廃止されたこと、右改正前の地方税法第九二条第一項が、入場税特別徴収義務者がした入場税不納入の所為を犯罪とし、これに対して、入場税を特別徴収の方法によらず、申告納税の方法によつて納税する納税者が、詐偽その他不正の行為によつて納入すべき入場税 一項が、入場税特別徴収義務者がした入場税不納入の所為を犯罪とし、これに対して、入場税を特別徴収の方法によらず、申告納税の方法によつて納税する納税者が、詐偽その他不正の行為によつて納入すべき入場税の全部又は一部を免かれた所為に対する刑罰と全く同一の刑罰を科すべきものと規定していること、入場税の税率が昭和二七年一二月までは百分の百、昭和二八年一月以降は百分の五〇であつたこと及び入場税法は、映画館等の経営者等の納税義務者が入場税を一定の納入期日までに完納しないときは、その未納に係る入場税額に対して利子税を科しているだけで、これに対して罰則の規定がないことはいずれも所論のとおりである。 しかし、入場税不納入罪は、入場税特別徴収義務者が、納税義務者たる入場者からすでに入場税を徴収しておきながら、これを一定の納入期日までに地方自治体に納入しなかつた所為を処罰しようとしているものであつて、単純な滞納を処罰しようとしているものではなく、本質的には業務上横領罪に類似する性質を有する行為を処罰しようとしているものであるから、これに対して、入場税を特別徴収の方法によらず、申告納税の方法によつて納税すべき納税者が詐偽その他不正の行為によつて納入すべき入場税の全部又は一部を免かれた所為に対する刑罰と全く同一の刑罰を科することにしたからといつて、必らずしも不当のものということはできないから(最高裁判所昭和二六年(あ)第九九〇号、昭和二九年一一月一〇日大法廷判決、最高裁判所判例集第八巻第一一号第一七四九頁以下参照)、右規定をもつて直ちに違憲とすることは当らず、又入場税の税率が百分の百ないし百分の五〇であるとか、昭和二九年法律第九五号による改正前の地方税法がいわゆるシヤウプ税制勧告案に基ずいて立法されたものであるというようなことによつて、直ちに右規定が違憲である 税率が百分の百ないし百分の五〇であるとか、昭和二九年法律第九五号による改正前の地方税法がいわゆるシヤウプ税制勧告案に基ずいて立法されたものであるというようなことによつて、直ちに右規定が違憲であるとすることもできない。 又入場税法は、原判決も説示しているように、租税法体系を整備するため、昭和二九年法律第九五号による改正前の地方税法が、入場税の徴収については特別徴収の方法によることを原則とし、映画館等の経営者等徴税に便宜を有する者を入場税特別徴収義務者に指定し、入場税特別徴収義務者をして納税義務者たる入場者から入場税を徴収し、これを一定の納入期日までに地方自治体に納入すべきものとしていたのを改めて、映画館等の経営者等を入場税の納税義務者とし、映画館等の経営者等をして入場税を一定の納入期日までに所轄の税務署に申告して納税すべきものとしたが、これに伴つて、右改正前の地方税法においては、特別徴収の方法によらず、申告納税の方法によつて納税すべき納税者が詐偽その他不正の行為によつて納入すべき入場税の全部又は一部を免かれた所為を処罰の対象とすると同時に、入場税特別徴収義務者が徴収した入場税の全部又は一部をも一定の納入期日までに地方自治体に納入しなかつた所為を処罰の対象としていたのを改めて、入場税法においては納税義務者であるところの映画館等の経営者等が詐偽その他の不正の行為によつて入場税を免かれ又は免かれようとした所為だけを処罰の対象とすることにしたものであり、換言すれば、入場税法においては、徴収制度の変更により、映画館等の経営者等が入場税特別徴収義務者として納税義務者たる入場者から入場税を徴収して地方自治体に納入するという制度がなくなつたため、必然的に入場税特別徴収義務者がした入場税不納入の所為を処罰の対象とすることができなくなつたため、入場税不 て納税義務者たる入場者から入場税を徴収して地方自治体に納入するという制度がなくなつたため、必然的に入場税特別徴収義務者がした入場税不納入の所為を処罰の対象とすることができなくなつたため、入場税不納入罪が廃止されたまでのことで<要旨第二>あつて、論旨の主張するように入場税不納入の所為に対する法益の価値判断が変り、入場税特別徴収義務者が</要旨第二>した入場税不納入の所為が可罰性を失つたものとして右所為に対する罰則を廃止したものではなく、もともと入場税不納入罪は、前記のように、その本質においては業務上横領罪に類似する性質を有しているものであつて、入場税特別徴収義務者がした入場税不納入の所為を処罰の対象とすることには別段の違法はないのであるから、入場税法の実施に伴い、入場税特別徴収義務者がした入場税不納入の所為に対する罰則が廃止されたことがその行為の可罰性がないことによるものであるとすることは当らない。 従つて昭和二九年法律第九五号による改正前の地方税法第九二条第一項の規定が違憲であること及び右規定が規定している入場税特別徴収義務者がした入場税不納入の所為が可罰性がないことを前提として、昭和二九年法律第九五号地方税法の一部を改正する法律附則第三七項が無効であるとする論旨は理由がない。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事加納駿平判事久永正勝判事河本文夫)

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