主文 被告人を懲役17年に処する。 未決勾留日数中300日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は、A、B、C及びDと共謀の上 1 令和5年12月15日午後8時45分頃から同月16日午前2時35分頃までの間に、東京都大田区(住所省略)A方居室内において、E(当時46歳)に対し、殺意をもって、睡眠薬を混入させたコーヒー飲料を飲ませて眠らせた上、Eの頸部を結束バンドで絞め付け、よって、その頃、同所において、Eを絞頸による窒息により死亡させて殺害した。 2 その頃から同日午前4時15分頃までの間に、Eの死体をスーツケースに入れて自動車に積載するなどして同所から東京都大田区(住所省略)付近の多摩川河川敷まで運搬した上、同スーツケースを多摩川に投棄し、もって死体を遺棄した。 第2 被告人は、不正に入手したE名義のキャッシュカードを使用して現金を窃取しようと考え 1 令和5年12月26日午後4時31分頃、京都市(住所省略)F店において、同所に設置された現金自動預払機に、G銀行株式会社発行のE名義のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ、同機から株式会社H銀行金融犯罪対策部長管理の現金6万9000円を引き出して窃取した。 2 同月27日午後3時41分頃、東京都大田区(住所省略)I郵便局において、同所に設置された現金自動預払機に、株式会社J銀行発行のE名義のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ、同機から同郵便局局長管理の現金13万4000円を引き出して窃取した。 3 同月28日午後4時41分頃、東京都大田区(住所省略)K店において、同所に設置された現金自動預払機に、G銀行株式会社発行のE名義のキャッシュカー ドを挿入して同機を作動させ、同機からH銀行金融犯罪対策部長管理の現金2000円 田区(住所省略)K店において、同所に設置された現金自動預払機に、G銀行株式会社発行のE名義のキャッシュカー ドを挿入して同機を作動させ、同機からH銀行金融犯罪対策部長管理の現金2000円を引き出して窃取した。 第3 被告人は、不正に入手したEのスマートフォンにインストールされた電子決済サービスアプリLの送金機能を使用して、財産上不法の利益を得ようと考え 1 令和5年12月25日午後3時43分頃、大阪府内又はその周辺において、Eのスマートフォンを操作し、電気通信回線を介して、L株式会社が日本国内に設置して同社の事務処理に使用する電子計算機に対し、真実は、EがEのLアカウントから被告人のLアカウントに電子マネーを送金した事実がないにもかかわらず、EがEのLアカウントから被告人のLアカウントに1万417円分の電子マネーを送金する旨の虚偽の情報を与え、その頃、同電子計算機にその旨記録させ、財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、もって財産上不法の利益を得た。 2 同月28日午後3時56分頃、東京都内又はその周辺において、Eのスマートフォンを操作し、電気通信回線を介して、L株式会社が日本国内に設置して同社の事務処理に使用する電子計算機に対し、真実は、EがEのLアカウントから被告人のLアカウントに電子マネーを送金した事実がないにもかかわらず、EがEのLアカウントから被告人のLアカウントに5000円分の電子マネーを送金する旨の虚偽の情報を与え、その頃、同電子計算機にその旨記録させ、財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、もって財産上不法の利益を得た。 (量刑の理由) 1 被告人を含む共犯者らは、事前に殺害方法や犯行を隠蔽する方法について計画を立て、役割を分担し、必要な道具を用意した上で、睡眠薬で眠らせた無防備な状況 財産上不法の利益を得た。 (量刑の理由) 1 被告人を含む共犯者らは、事前に殺害方法や犯行を隠蔽する方法について計画を立て、役割を分担し、必要な道具を用意した上で、睡眠薬で眠らせた無防備な状況の被害者に対し、5名で犯行に及んでいる。被告人らの作った犯行計画は、巧妙とはいえないものの、被害者が死亡する確実性の高い悪質なものであったといえる。川に被害者の死体を遺棄した点も、死者の尊厳をも蔑ろにするものである。殺人及び死体遺棄の犯行は、これらの点において悪質性が高い。 2(1) 次に、本件犯行に至る経緯は、以下のとおりであったと認められる。 被告人と動画配信者である被害者は交際関係にあったが、被害者は、被告人に対し、性的画像を用いた脅迫行為や被告人及びその家族に対する誹謗中傷を行うようになった。また、二人で宿泊するホテル代は、被告人のクレジットカードで支払っていた。被害者が被告人に対する脅迫行為で逮捕されたことを契機に、被告人はBの家に避難し、Bと交際するようになった。被告人は、誹謗中傷等について、弁護士や警察に相談したものの、被告人の期待する解決がなされることはなかった。被告人は、被害者の釈放後、父であるCになりすまし、被害者に対し、金銭を支払うことや誹謗中傷をやめることを求めたが、被告人にとって十分な額の返済を受けることはできず、被害者の被告人らに言及する配信が止まらなかったこと等から、精神的に追い詰められるとともに、被害者に対して怒り等の感情を持ち、被害者の殺害を考えるようになった。 (2) 被害者の被告人及びその家族に対する誹謗中傷は、決して許されるものではなく、その点においては被害者も悪かったことは否定できない。また、被告人が、被害者の配信や誹謗中傷により、精神的に追い詰められたということにも同情できる点はある。 誹謗中傷は、決して許されるものではなく、その点においては被害者も悪かったことは否定できない。また、被告人が、被害者の配信や誹謗中傷により、精神的に追い詰められたということにも同情できる点はある。他方で、金銭の支払については、交際当事者同士の問題であり、どちらか一方に非がある話ではない。また、性的画像を用いた脅迫行為については、被告人が、被害者に対して、これを削除するように働きかけた形跡は証拠上みられず、動機形成に与えた影響は大きいとはいえない。そうすると、被害者の言動等については、殺人という本件犯行における被害者の落ち度として殊更強調すべきものではない。 (3) 次に、母であるAの言動が被告人の意思決定に与えた影響についてみると、被告人は、その成育過程において、両親の離婚や一時保護等を経験するなどし、就職後はAから金を無心されるなどしていた。このような成育過程から、被告人は愛着に問題を抱え、Aに依存しており、Aの言動は被告人に対して大きな影響を与えるものであったと認められる。そして、本件においても、被告人が被害者と関わらないようにすることもできたのに最後まで金銭の支払にこだわっていた背景には、 被害者が十分な額の金銭を支払わないことに不満を漏らしていたAの存在があったといえる。他方で、被害者を殺害することに関しては、被告人とAのLINEのやり取りをみても、Aが被告人の気持ちを煽っていた面はあるが、被告人の方からも殺害に積極的な発言がみられ、Aに逆らえないといった主従関係のようなものはうかがわれない。 (4) また、被告人の知的能力の低さが犯行に具体的に影響していた様子もみられない。 (5) そうすると、精神的に追い詰められていたことやAの影響があったことは被告人に有利に考慮すべきであるが、最終的には自分の意思で殺害 能力の低さが犯行に具体的に影響していた様子もみられない。 (5) そうすると、精神的に追い詰められていたことやAの影響があったことは被告人に有利に考慮すべきであるが、最終的には自分の意思で殺害という手段を選択したといえ、その意思決定は厳しい非難に値する。 3 その上で、本件に関して被告人が行ったことをみると、被告人は、BやCに対し、自分が死ぬか被害者が死ぬかの二択だなどと言って、被告人の精神状態を案じたBやCに被害者殺害を決意させ、本件犯行に巻き込んだ。そして、共犯者らと一緒に計画を立て、スーツケースやこれに取り付ける重り、浮き輪、睡眠薬といった犯行に必要な道具を自ら用意している。そうすると、被告人は、被害者の殺害に向けた流れにおいて中心にいた人物であったと認められ、殺人や死体遺棄の犯行の実行行為を担っていないとしても、B、C、Dよりも重い責任を負う主導的な立場に位置づけられる。 4 そして、被告人は、犯行後、被害者のキャッシュカードやスマートフォンを用いて、窃盗及び電子計算機使用詐欺の犯行にも及んでいる。犯行に及んだきっかけとしてAがお金を要求するなどの言動が関係した可能性はあるものの、物品の購入状況をみると、被告人自身のために行った面もあったと認められ、この点の犯情も悪い。 5 以上の事情に加え、被告人が謝罪と反省の弁を述べるものの、自身の罪に真摯に向き合っているとは認められないことも踏まえ、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当と判断した。 (求刑懲役19年)令和7年10月3日横浜地方裁判所第5刑事部 裁判長裁判官佐藤卓生 裁判官菅野祐希 裁判官安藤幸歩 刑事部 裁判長裁判官佐藤卓生 裁判官菅野祐希 裁判官安藤幸歩
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