平成17(行ウ)45 違法公金支出損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年8月24日 神戸地方裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-35778.txt

判決文本文24,226 文字)

- 1 -主文 本件訴えのうち,平成12年度から平成15年度の神戸市立教職員共済会に対する交付金支出,及び,平成16年度の同共済会に対する交付金支出のうち退会記念品事業費に充てられるべき分の支出以外の支出に係る訴えをいずれも却下する。 原告らのその余の請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1請求 被告は,Aに対し,神戸市に,3億3580万円及びうち2039万8500円に対する平成17年4月12日から,うち2210万1500円に対する平成16年12月10日から,うち2210万1500円に対する同年8月25日から,うち2210万1500円に対する同月4日から,うち2239万2000円に対する同年5月6日から,うち2194万4000円に対する平成15年12月10日から,うち2194万4000円に対する同年9月3日から,うち2194万4000円に対する同年6月27日から,うち2817万3000円に対する同年5月6日から,うち2820万4000円に対する,,同年1月28日からうち2827万円に対する平成14年12月16日からうち2826万7000円に対する同年9月18日から,うち4795万9000円に対する同年1月30日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 被告は,Bに対し,神戸市に,1億8238万5000円及びうち6714万3000円に対する平成14年4月1日から,うち2879万8000円に対する平成13年5月8日から,うち2877万4000円に対する同年1月,,25日からうち2883万1000円に対する平成12年10月12日からうち2883万9000円に対する同年7月10日から各支払済みまで各年5- 2 -分の割合による金員の支払を請求せよ。 被告は, 日からうち2883万1000円に対する平成12年10月12日からうち2883万9000円に対する同年7月10日から各支払済みまで各年5- 2 -分の割合による金員の支払を請求せよ。 被告は,神戸市立学校教職員共済会に対して,神戸市に,5億1818万5000円及びうち2039万8500円に対する平成17年4月12日から,うち2210万1500円に対する平成16年12月10日から,うち2210万1500円に対する同年8月25日から,うち2210万1500円に対する同月4日から,うち2239万2000円に対する同年5月6日から,うち2194万4000円に対する平成15年12月10日から,うち2194万4000円に対する同年9月3日から,うち2194万4000円に対する同年6月27日から,うち2817万3000円に対する同年5月6日から,うち2820万4000円に対する同年1月28日から,うち2827万円に対する平成14年12月16日から,うち2826万7000円に対する同年9月18日から,うち2876万円に対する同年5月7日から,うち2875万8000円に対する同年1月30日から,うち2876万6000円に対する平成13年10月12日から,うち2881万8000円に対する同年8月28日から,うち2879万8000円に対する同年5月8日から,うち2877万4000円に対する同年1月25日から,うち2883万1000円に対する平成12年10月12日から,うち2883万9000円に対する同年7月10日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 第2事案の概要本件は,神戸市(以下「市」ということがある)の住民である原告らが,。 平成12年度から平成16年度にかけて神戸市立学校教職員共済会以下共,(「済会」とい を請求せよ。 第2事案の概要本件は,神戸市(以下「市」ということがある)の住民である原告らが,。 平成12年度から平成16年度にかけて神戸市立学校教職員共済会以下共,(「済会」という)に対して,市が交付金を支出したことは法律上の根拠を欠き。 ,,(「」。)違法であるなどとして被告に対して地方自治法以下地自法という242条の2第1項4号前段に基づき,共済会に対し支出した交付金相当額の金員及びこれに対する各支出日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金について,上記支出当時に神戸市長の地位にあった者に対して損害賠償請求- 3 -することを求めるとともに,共済会に対して不当利得返還請求することを求めた事案である。 争いのない事実及び証拠により容易に認定することのできる事実(証拠の掲記のない事実は当事者間に争いがない)。 ( )当事者等 ア原告らは,肩書地記載のとおり,いずれも神戸市内に住居を有する者である。 イBは,平成12年4月1日から平成13年11月19日まで神戸市長の職にあった者であり,Aは,同月20日以降,神戸市長の地位にある者である。 ( )公金支出 ア共済会(甲1,4,乙1の2,11)共済会は,市民の篤志家による寄付金の一部を基金として発足した「神戸市立小学校教職員共済会を母体として神戸市立学校教職員以下教」,(「職員」という)の相互共済及び福利増進を図ることを目的に,神戸市立。 学校教職員共済会規則(以下「共済会規則」という)に基づき,昭和3。 7年2月に設立された,教職員らで構成される会員数7591名(平成17年4月1日現在)の組織である。 共済会は,下記の各種事業を実施している(平成12年度から平成16年度。 )記(ア)給付事業(結婚・ に設立された,教職員らで構成される会員数7591名(平成17年4月1日現在)の組織である。 共済会は,下記の各種事業を実施している(平成12年度から平成16年度。 )記(ア)給付事業(結婚・出産・入学祝金,弔慰金,脱退金,退会記念品)(イ)貸付事業(普通貸付,住宅貸付,入学・冠婚葬祭・病気・災害貸付等)(ウ)購買事業(百貨店購買等)(エ)厚生事業(レクリエーション事業,ホームヘルプ助成等)- 4 -(オ)研修寮運営事業(α等)イ共済会への交付金支出(甲1,2,5,23)(ア)共済会の事業経費共済会の事業は,教職員の掛金,市からの交付金及び事業収入・利息収入等の収入により運営されている。 (イ)交付金交付要綱市は,共済会に対する交付金の交付につき,神戸市立学校教職員共済会交付金交付要綱(以下「本件要綱」という)を作成しているが,平。 成16年4月1日施行の本件要綱には,次の趣旨の定めがある。 a通則(1条)共済会に対する交付金の交付については,地自法232条の2に定めるもののほか,この要綱の定めるところによる。 b交付の目的(2条)共済会が地方公務員法(以下「地公法」という)42条に定める。 厚生計画の一部を神戸市教育委員会(以下「教育委員会」という)。 の監督の下に実施し,あるいは,地方公務員等共済組合法(以下「地」。),,公共法という112条に定める福祉事業の一部を実施しまたその他福利厚生に資する事業を実施する場合において,教職員の福利を増進し,もって神戸市教育の振興を図ることを目的とする。 c交付金の額(3条2項)毎年度,各教職員の4月1日現在の給料月額の総額に1000分の2.4を乗じて得た額を1年分合計した額とする。 (ウ)交付時期年間の交付額を4半期に分け,各期毎に交付額を c交付金の額(3条2項)毎年度,各教職員の4月1日現在の給料月額の総額に1000分の2.4を乗じて得た額を1年分合計した額とする。 (ウ)交付時期年間の交付額を4半期に分け,各期毎に交付額を決定して交付している。 (エ)交付金支出- 5 -市は,平成12年度から平成16年度(毎年4月1日から翌年3月31日を会計年度とする。地自法208条1項)の間,共済会に対する交付金として,平成12年度に1億1524万2000円,平成13年度に1億1510万2000円,平成14年度に1億1291万4000円,平成15年度に8822万4000円,及び,平成16年度に8670万3000円の交付金を支出した(以下「本件支出」という。 。)ウ掛金の徴収(甲1,4)共済会会員以下会員というは掛金として毎年4月1日年(「」。),,(度の中途で会員の資格を取得したときは,その資格を取得した日)現在の給料月額に1000分の5を乗じて得た額を毎月納付しなければならないとされている(共済会規則5条1項。 )( )退会記念品事業(甲1,11,24,32,乙9) ア概要共済会は,教職員の退職等に際し,退会記念品として旅行券(クーポン券)を支給している。 イ支給対象者教職員としての勤続年数及び会員期間がともに10年以上で退職した会員(在職中に死亡した者を含む)を対象に支給している。 。 ウ支給内容及び支給額退会記念品の支給内容は,平成12,13年度は別表1-1,平成14年度から平成16年度は別表1-2記載のとおりであり,平成12年度から平成16年度の退会記念品支給額は,平成12年度は2973万3180円,平成13年度は4174万円,平成14年度は3916万円,平成15年度は5102万円,平成16年度は4193万円で 12年度から平成16年度の退会記念品支給額は,平成12年度は2973万3180円,平成13年度は4174万円,平成14年度は3916万円,平成15年度は5102万円,平成16年度は4193万円である。 ( )監査請求(甲1,6,7) ア原告らは,平成17年5月27日及び同月30日に,神戸市監査委員に- 6 -対して,過去5年間に共済会が退会記念品として退職者等に対し支給したクーポン券代金約2億円のうち約7000万円が共済会に対する公費補助金によって賄われているところ,上記クーポン券は実質上は給与,退職金の上乗せで,給与条例主義(地自法204条の2,地公法25条)に違反する違法な公金支出であり,これが市財政から支出されているので市は同額の損害を被っているから,神戸市長及び教育長は7000万円を補填すべきであるなどと主張し,かかる趣旨に沿った措置を執ることを求めて,(「」。),,住民監査請求以下本件監査請求というを行い同年6月20日意見陳述(以下「本件意見陳述」という)を行った。 。 本件意見陳述の際,原告らのうちの1名が,本件支出自体についても,条例上の根拠がない本件要綱による支出であることを理由として,本件監,,査請求の対象とすることを求める旨の陳述を行い平成17年6月24日同陳述の内容を記載した「C,代表D」作成名義の「6月20日,口頭陳述」と題する書面が神戸市監査委員に提出された。 イ神戸市監査委員は,原告らに対し,平成17年7月25日付けで,本件支出のうち,平成12年度から平成15年度までの共済会に対する交付金支出については監査請求期間を徒過しており「正当な理由(地自法24」2条2項ただし書)がある場合にも該当しないこと,平成16年度の退会記念品事業以外の事業への交付金支出については事実の する交付金支出については監査請求期間を徒過しており「正当な理由(地自法24」2条2項ただし書)がある場合にも該当しないこと,平成16年度の退会記念品事業以外の事業への交付金支出については事実の特定及びいわゆる事実を証する書面の添付がないこと並びに既に受理している監査請求の対象範囲を超えることから監査の対象とはしないとした上,同年度の退会記念品事業への交付金支出については監査請求に理由がなく措置の必要を認めないとの監査結果(以下「本件監査結果」という)を送付し,原告ら。 は,そのころ,本件監査結果を受領した。 ( )本件訴えの提起 原告らは,本件監査結果に不服があるとして,平成17年8月19日,本- 7 -件訴えを提起した。 争点 ( )本案前の争点 ア監査請求期間徒過の有無具体的には,平成12年度から平成15年度の共済会への交付金支出に「」()対する監査請求についての正当の理由地自法242条2項ただし書の有無である(争点1。 )イ本件意見陳述における監査請求対象の追加変更の有無及び可否具体的には,本件支出のうち退会記念品事業費に充てられるべき分の支出以外の支出についての,本件意見陳述における監査請求対象の追加変更の有無及び可否である(争点2。 )( )本案の争点 ア財務会計行為の違法性具体的には,共済会が退職者等に給付した退会記念品の原資に,交付金が使用されているか(争点3,本件支出又は退会記念品の原資への交付)金使用が,地公法42条の規定に係る職員の保険,元気回復その他厚生に関する計画の一部として又は地自法232条の2により許されるか(争点4)である。 イA及びBの過失の有無(争点5)ウ共済会の不当利得の有無(争点6)エ損害及び損失額(争点7) 当事者の主張( ) 争点 として又は地自法232条の2により許されるか(争点4)である。 イA及びBの過失の有無(争点5)ウ共済会の不当利得の有無(争点6)エ損害及び損失額(争点7) 当事者の主張( )争点1 (原告らの主張)ア(ア)本件では,監査請求の対象が共済会という情報公開が効かない教職員の親睦団体の活動内容であったことなどを考慮すると,平成17年2- 8 -月25日にEニュース(以下「本件ニュース」という)において,教。 育委員会から共済会に対し,退職者への記念品である旅行クーポン券代等が支出されていたと報道された時点を,監査請求期間の起算点である監査請求をなし得る程度に財務会計行為の存在及び内容を知ることができたときと解するべきである。 (イ)被告は,本件支出は,予算説明書に明記されているなどと主張するが,専門家でもない一般市民に予算説明書の記載から気付くことを要求すべきでない。また,被告は,情報公開請求によって入手可能な文書については公開請求が可能となった時点を上記起算点とすべきと主張するが,かかる主張は,相当な注意の要件として市役所内の全公文書に対する公開請求を要求する非常識なものである。 イ本件監査請求は,本件ニュースの報道を受けて開始された調査に基づくものであり,相当な期間内になされたものといえる。 被告は,本件監査請求が本件ニュースの報道から91日後であることなどを根拠に,相当な期間が経過したと主張する。しかし,一般市民にとって監査請求を行う程度に気付くには,さらに報道後数週間の調査や議論を要し,また,情報公開請求から実際の閲覧まで3,4週間は必要となること,必ずしも最初の公開請求で目的の情報を入手できるわけではないことからも,相当な期間は経過していない。 ウしたがって,平成12年度から平成15年度の交付金支出 際の閲覧まで3,4週間は必要となること,必ずしも最初の公開請求で目的の情報を入手できるわけではないことからも,相当な期間は経過していない。 ウしたがって,平成12年度から平成15年度の交付金支出分について,地自法242条2項ただし書の「正当な理由」は認められる。 (被告の主張)ア(ア)本件支出は,公開請求の対象となる予算説明書に明記されており,共済会の事業内容も公文書公開請求により情報を入手することが可能である。また,市における公開請求は,公開を請求する公文書の内容の具体化の程度は可及的な範囲で足りること,現に原告らが支出決定兼支出- 9 -命令書等の必要書類の開示を受けていることを考慮すれば,公開請求により入手可能な情報については,公開請求が可能な状態となれば,相当の注意力をもって調査すれば客観的に知ることができたといえる。 ,,本件支出中平成15年度分の実際の支出決議等の公文書については最後の支出がなされた平成16年5月当初には公開請求が可能であったといえるところ,本件監査請求の行われた平成17年5月27日はそれから約1年が経過しており,相当期間が経過していることは明らかである。 (イ)原告らは,公開請求によって入手可能な文書には限界があるかのように主張するが,原告らの主張する本件支出自体の違法については,原告らが現に入手した文書によって監査請求を行うことは可能であるし,不足があれば追加して公開請求すればよい。また,原告らは,本件ニュースの報道時期を起算点とすべきと主張するが,監査請求を行った住民に公開請求を行うだけの契機や動機が存在したか否かという主観的事情ではなく,当該行為に関する情報の客観的な開示状況を基準とすべきである。したがって,上記原告らの主張は理由がない。 イまた,原告らは,本件ニュースにより本件支出 動機が存在したか否かという主観的事情ではなく,当該行為に関する情報の客観的な開示状況を基準とすべきである。したがって,上記原告らの主張は理由がない。 イまた,原告らは,本件ニュースにより本件支出及び共済会から退職者への退会記念品の支給を認識し,遅くともその時点においては監査請求を行うに足りる程度に本件支出の存在及び内容を認識したといえる。そして,本件監査請求が行われた平成17年5月27日は,本件ニュースの報道日である同年2月25日から起算して91日後であるから,相当な期間が経過していることは明らかである。 ウしたがって,平成12年度から平成15年度の共済会への交付金支出分,「」。 について地自法242条2項ただし書の正当な理由は認められない( )争点2 (原告らの主張)- 10 -退会記念品の支給と共済会に対する交付金の支出は密接に関連しており,交付金の支出なしに退会記念品の支給の違法はないことから,本件意見陳述,,。 は本件監査請求を補充してその趣旨を明確にしたものであり適法である被告は,監査請求に事実を証する書面の添付が要求されていることを理由に,口頭陳述のみによる監査請求対象の追加は認められないと主張する。しかし,原告らは,本件意見陳述において,口頭陳述のみではなく陳述内容も書面で提出しており,また,上記証する書面も「6月20日,口頭陳述」,と題する書面に記載のとおり,本件意見陳述時に提出している。また,被告は,監査請求対象の追加を認めると監査期間遵守が確保できず監査の実効性を欠くなどと主張するが,監査期間の定めは訓示規定に過ぎないし,同期間内に処理できないことが判明した時点で監査請求のやり直しを示唆し,あるいは,請求対象の追加を許さないというのであれば,追加分を新規の監査請求として扱い,新 査期間の定めは訓示規定に過ぎないし,同期間内に処理できないことが判明した時点で監査請求のやり直しを示唆し,あるいは,請求対象の追加を許さないというのであれば,追加分を新規の監査請求として扱い,新規に監査期間を設定すればよい。 (被告の主張)本件監査請求は,退会記念品支給のための交付金支出の違法のみを主張するものであり,共済会に対して交付金を支出すること自体を問題とするものではなかった。 原告らは,本件意見陳述において,共済会に対する交付金の支出自体が違法である旨陳述したが,意見陳述は,監査請求に関する意見を口頭で陳述するものであり,監査請求対象の拡張は予定されていない。地自法242条1項が,監査請求はいわゆる事実を証する書面を添えて行うことを求めていることからしても,口頭陳述のみによって監査請求の対象を追加することは認められない。さらに,監査委員による監査は,監査請求日から60日以内に行う必要があるところ,監査委員は,その期間内に請求人に陳述の機会を与え,執行機関又は職員の意見聴取を行うなどし,その上で,合議により監査結果を決定する必要がある。仮に監査請求後に監査請求対象が追加できると- 11 -なると,追加分については監査期間が確保されなくなり,監査の実効性に重,。 大な影響が生じるため監査請求後に請求対象を追加することは許されない追加分については別件として監査請求すべきである。 よって,平成16年度の交付金支出についても,退会記念品事業費4193万円を超える部分の訴えは監査請求前置を欠き,不適法である。 ( )争点3 (原告らの主張)ア脱退金積立基金の前年度からの繰越しによる影響被告は,本件支出の法的根拠は,地公法42条又は地自法232条の2,,,と主張するがつかみ金支給は許されず剰余分は返還すべきであるか 主張)ア脱退金積立基金の前年度からの繰越しによる影響被告は,本件支出の法的根拠は,地公法42条又は地自法232条の2,,,と主張するがつかみ金支給は許されず剰余分は返還すべきであるから繰越しによっても共済会の資産とはならない。仮に,共済会の資産となるとしても,本件支出は法的根拠が無く違法,無効であるから,共済会は市の不当利得返還請求に応じなければならない。 イ剰余金について金に色はついていないこと,会計を別にしていないことから,収入割合に応じて支出も分担されており,剰余金には,交付金,事業収入及び会員の掛金のうちの4分の1(以下「掛金4分の1」といい,残額を「掛金4分の3」という)が按分割合で含まれていると考えるべきである。 。 被告は,掛金4分の1を年度末に振替えており交付金は剰余金に含まれていないと主張するが,収入用途別の使い分けは,会計分離がなされていない限り本来できないものであり,単なる帳簿上の恣意的な操作により交付金から先に使用し,剰余金には交付金が含まれていないという外形を作出しているにすぎない。 被告提出の費目別歳入歳出簿(以下「入出簿」という)は,共済会の。 予算や決算の金の動きを示したものではない。また,入出簿の事業用掛金への振替欄に年月日は記入されておらず,掛金4分の3と掛金4分の1の- 12 -分離を帳簿上で計算したものに過ぎず,使用順序とは無関係である。 ウ建設償還金について昭和56年から24年間,1200万円が交付された平成16年度と同じ割合で支給されると2億7600万円となり1億円を超えることから,超過分の交付金は脱退金積立基金に流入している。また,研修事業程度で,。 建物を建設する必要はなく本来交付金で賄われるべき事業とはいえない(被告の主張)ア退会記念品の原資(ア)会員が ら,超過分の交付金は脱退金積立基金に流入している。また,研修事業程度で,。 建物を建設する必要はなく本来交付金で賄われるべき事業とはいえない(被告の主張)ア退会記念品の原資(ア)会員が退会すると,脱退返還金及び退会記念品(以下,両者を併せて「退会記念品等」という)が給付されるが,その原資は,後記のと。 おり脱退金積立基金である。 (イ)脱退金積立基金は,脱退金積立金として積み立てられたものである(共済会では,基金として積み立てるための歳出の項目では「積立金」の名称を用い「積立金」が積み立てられた結果の資産の項目では「積,立基金」の呼称を用いている)が,この脱退金積立金は,①脱退金積。 立金,②建設償還金及び③剰余金により構成される。 (ウ)a上記①の脱退金積立金は,会員の掛金4分の3を積み立てたものである(ただし,平成12年度までは掛金全額を積み立てていた。 。)b上記②の建設償還金は,後記エ記載のとおりである。 c上記③の剰余金は,市からの交付金,共済会の歳入のうち交付金及び掛金を除いたもの(事業収入,利息収入等。以下「事業収入等」という)並びに掛金4分の1を,共済会の総務費,退会記念品等事業。 以外の事業(以下「その他の事業」という)の事業費,建設償還金。 (,「」及びその他の積立金等以下これら4つの歳出を併せて事業費等ということがある)として使用した余剰金である。 。 イ脱退金積立基金の前年度からの繰越しによる影響- 13 -(ア)共済会においては,退会記念品等の給付額が確定すると,脱退金積立基金から当該確定額分だけ取り崩して歳入に繰り入れた上,その繰入額と同額を退会記念品等として支出しているため,その原資は同基金であるといえる。平成16年度分についても,退会記念品等の支給額及び支給時 金から当該確定額分だけ取り崩して歳入に繰り入れた上,その繰入額と同額を退会記念品等として支出しているため,その原資は同基金であるといえる。平成16年度分についても,退会記念品等の支給額及び支給時期と脱退金積立基金繰入金の額や取崩時期は完全に一致している。 (イ)会員の掛金4分の3と掛金4分の1の区分は,年度末に当該年度の掛金額が確定した後に一括して実施されるため,ある年度の退会記念品等の支給のため取崩しの対象となる脱退金積立基金は,前年度末時点で積み立てられていた同基金であり,これが直接の支払原資となる。 前年度から繰り越された脱退金積立基金は,繰越の時点で繰越前の原資如何に関わらず共済会の資産となるため,退会記念品等の支払原資は市の交付金でなく共済会の独自の資産であるから,退会記念品の支給は給与条例主義に違反しない。 ウ剰余金について(ア)交付金,掛金4分の1及び事業収入等の支出の順序共済会では,給付事業のうち,共済会の独自事業ではないその他の事業は,市が行うべき厚生事業を共済会が代行しているものであり,本来は市が全額を負担すべきであるから,その他の事業に必要な支出には交付金を優先して使用している。また,会員の掛金は,平成12年度までは全額を脱退金積立金に積み立てていたが,平成13年度以降,市の財政難にかんがみ,掛金4分の1は,交付金の補充とすべく脱退金積立金に積み立てないこととしたという経緯があり,掛金4分の1は,交付金で不足が生じたときの使用を予定したもので,先順位又は同順位での使用を予定したものではない。 すなわち,共済会では,交付金,事業収入等,掛金4分の1の順で事- 14 -業費等に使用しているため,各年度に余剰金が生じても,交付金は全額が事業費等に使用されており,剰余金に交付金が含まれることはない。 (イ) は,交付金,事業収入等,掛金4分の1の順で事- 14 -業費等に使用しているため,各年度に余剰金が生じても,交付金は全額が事業費等に使用されており,剰余金に交付金が含まれることはない。 (イ)掛金4分の1の年度末繰入れ掛金4分の1を事業費等として支出するためには,会計科目上脱退金積立基金用として使途が拘束されているため,まず,掛金4分の1相当額を入出簿の「掛金(積立」から「掛金(事業用」へ振替処理する))必要がある。事業費等については,年度途中で交付金や事業収入等で不足が生じた場合は,その必要が生じた時点において,上記振替処理を行う。事業費等のうち,建設償還金,研修寮整備費及び退職手当積立金を除いたものは,年度途中にその都度支出されるが,交付金及び事業収入等により賄うことができるため,その必要が生じることはなく,最終的に掛金全体の徴収が終了する年度末に,上記振替処理を行っている。 エ建設償還金について建設償還金は交付金が原資であるが,本来は市が補助すべき共済会運営の研修・保養施設(α)の建設資金を昭和56年に脱退金積立基金から1億円分取り崩して充当した分を復元するため,昭和59年度以降分割して繰り戻しており,同年度から平成14年度までで合計6300万円,平成15年度には2500万円,平成16年度には1200万円を繰り戻して合計1億円の繰戻しを完了させた。 元々の立替金の原資が脱退金積立基金である以上,建設償還金の原資が交付金であるからといって同基金に交付金が流入していることにはならな。 ,,い平成1516年度の支出額の増額もαの運営廃止が検討されたため脱退金積立基金への繰戻しを早期に完了させる必要が生じたために行われたものである。 なお,αは,研修・会議・親睦会等の施設として利用されており,昭和57年当時は年間約 もαの運営廃止が検討されたため脱退金積立基金への繰戻しを早期に完了させる必要が生じたために行われたものである。 なお,αは,研修・会議・親睦会等の施設として利用されており,昭和57年当時は年間約8500人,現在でも年間約5000人前後の利用実- 15 -績があり,このような施設の建設資金を市が負担することは福利厚生事業の実施方法についての任命権者の裁量の範囲内といえる。 オ脱退金積立金前記のとおり,全額が掛金又は掛金4分の3を積み立てたものである。 カ以上より,退会記念品の原資である脱退金積立基金は共済会の財産として繰り越されてきたものであり,また,そもそも同基金に積み立てられた脱退金積立金及び剰余金に交付金は含まれておらず,建設償還金にはこれが含まれているが,その性質は一種の立替金の返済であるから,交付金は退会記念品の原資となっていないので,給与条例主義違反等の生ずる余地はない。 ( )争点4 (原告らの主張)ア地公法42条違反について(ア)交付金の根拠は条例でなく本件要綱であるうえ,算定根拠も会員給与の定率交付という丼勘定であり,個別の福利厚生事業毎の予算を積算していないから,地公法42条の枠を越え違法である。また,地公共法112条所定の事業は地公法42条の事業とは基本的に異質であるから,同条をもって地公共法112条1項所定の事業と同様の事業を行うのは制度の混用であり,違法である。 (イ)被告は,共済会が市の行うべき厚生事業を代行していると主張するが,委託契約としても,委託すべき事業の内容及び実績を明らかにし,積算及び精算を行うべきである。また,市の支出額も,民間企業等と比較して相当な範囲内であると主張するが,公権力を行使しない民間企業と比較はできない。さらに,共済会事業の歳出額の範囲内であるから個別積算は び精算を行うべきである。また,市の支出額も,民間企業等と比較して相当な範囲内であると主張するが,公権力を行使しない民間企業と比較はできない。さらに,共済会事業の歳出額の範囲内であるから個別積算は不要であるとの被告の主張は,公金の使い方について全くルールがないことを意味し,使途を問わず,すべて違法である。 - 16 -イ地自法232条の2違反について市が,地公法,地公共法の他に,別途,教職員にだけ手厚く福利厚生事業を行う公益性はなく,地自法232条の2によっても正当化されない。 地公法42条の厚生事業を共済会が代行していることを公益性の根拠とする被告の主張は具体性がない。個別に公益性を考慮して補助項目毎に積算し精算すべきである。 (被告の主張)ア地公法42条違反について(ア)退会記念品等事業は共済会独自の資産に基づく独自の事業である。 仮に交付金が退会記念品等に使用されていても,本件支出は,後記のとおり,地公法42条又は地自法232条の2によって適法となる。 (イ)その他の事業は,地公法42条の職員の保険,元気回復その他厚生に関する計画の一部又は地公共法112条の福祉事業の一部である。本件支出の根拠は地公法42条であり,それは市が行うべき同条の厚生制度を共済会が代行していることに基づく。地公法42条に基づき実施すべき厚生制度の内容を定めるに当たって,地公共法112条1項所定の事業が参考となる。 地公法42条は,福利厚生事業の実施方法について何ら規定せず,任命権者の裁量に委ねているといえ,条例の根拠を有しない共済会を通じて同条の事業を実施することを禁止していない。むしろ,市が福利厚生事業の受益者を構成員とする共済会に対し,市の基本計画の範囲内で同事業の具体的な運営を委ねることも,受益者のニーズに適応した福利厚生の実現を可能とす 施することを禁止していない。むしろ,市が福利厚生事業の受益者を構成員とする共済会に対し,市の基本計画の範囲内で同事業の具体的な運営を委ねることも,受益者のニーズに適応した福利厚生の実現を可能とするものといえ,その裁量の範囲内といえる。 (ウ)また,交付金の額は,共済会の行う個別の福利厚生事業毎の予算を積算したものではないが,各年度とも,その他の事業の歳出の範囲内であるから,違法とはならない。会員一人当たりの市の負担額も年額約1- 17 -万1560円であり,民間企業と比較しても,社会的にも相当な範囲内の額である。 イ地自法232条の2違反について仮に,地公法42条が本件支出の適法性の根拠にならないとしても,同条の厚生事業を共済会が代行していることが,地自法232条の2の公益性を基礎づけ,同条に基づく補助金として適法となる。 ( )争点5 (原告らの主張)仮に,本件支出に係る支出命令がすべて教職員課長により発せられたとしても,専決権限の付与は,権限を法的に委任しない内部委任に過ぎず,監督義務者も監督を怠れば責任を負うというべきところ,B及びAは,法令を解釈して違法行為を吟味するよう同課長に指示するなどの監督を怠ったことは明らかであるから,指揮監督上の義務違反が認められる。 (被告の主張)本件支出の支出決議は,助役以下専決規定の「負担金,補助金,交付金,奨励金その他これらに類するもの」として,500万円以上は助役が専決で処理している。また,支出決議後の支出命令は,神戸市会計規則により,支出担当者たる教職員課長により処理されている。 ( )争点6 (原告らの主張)本件支出は法的根拠が無く,違法,無効であるから,共済会は不当利得として返還すべきである。 (被告の認否)争う。 ( )争点7 (原告らの主張)- ( )争点6 (原告らの主張)本件支出は法的根拠が無く,違法,無効であるから,共済会は不当利得として返還すべきである。 (被告の認否)争う。 ( )争点7 (原告らの主張)- 18 -,,共済会では会計分離がなされておらず交付金の使途を特定できないため本件支出はすべて違法であり,全額が損害・損失である。 また,本件のような一括支給交付金の場合,実施事業の全てに交付金が一定比率で含まれていると考えるのが合理的であり,少なくとも退会記念品等の支給における,一定比率で使用された交付金が損害である。その場合,別表2のとおり,毎年度の退会記念品等の支給額に,当該年度の収入である掛金・交付金・事業収入等に交付金比率を掛けた金額である合計2億1683万3464円が市の損害となる。 (被告の認否)争う。 第3当裁判所の判断 争点1について( )本件支出のうち,平成15年度分の交付金の最終の支出日が平成16年 5月6日であり,平成16年度分の交付金の最初の支出日が同年8月4日であること(甲5)から,平成12年度から平成15年度までの共済会に対する交付金支出は,本件監査請求がなされた平成17年5月27日よりも1年以上前に支出されたものであるため,同支出に対する監査請求が適法となるためには「正当な理由(地自法242条2項ただし書)が認められるこ,」とが必要である。 「正当な理由」の有無は,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたと解 できなかった場合には,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたか否かにより判断すべきである(最高裁平成14年9月12日第一小法廷判決・民- 19 -集56巻7号1481頁参照。 )( )証拠(甲2,3,5,8,9,13,14,23)及び弁論の全趣旨に よれば,前記第2,1の認定事実に加え,以下の事実が認められる。 ア本件支出について,教育委員会作成に係る平成12年度から平成16年度の予算説明書には,学校職員厚生費(福利厚生費)として,共済会に対する交付金支出の事実及びその額(ただし,教職員相談室等経費との合算額)が記載されている。 イ本件要綱は,4月1日を施行日として毎年作成及び発行されるところ,共済会は,平成12年度から平成16年度の交付金について,本件要綱4,,,,,条により被告に対し交付金交付申請書を提出しこれに対し被告は,。 共済会宛に交付予定金額の記載された交付金交付決定通知書を交付したウ本件支出に係る各年度毎の4回にわたる各支出の際,支出決定兼支出命令書(ただし,平成12年度は支出命令書)が作成された。なお,各年度の共済会の決算書には,各年度毎の交付金受領額が記載されている。 エ平成12年度から平成15年度の共済会に対する交付金支出に関する予算説明書,本件要綱及び支出決定兼支出命令書は,遅くとも平成16年6月ころには,公文書公開請求が可能となっていた。 オ平成17年2月25日,本件ニュースにおいて,共済会が過去5年間に退職者へ記念品として支給した旅行クーポン券の代金約2億円のうち,約7000万円が教育委員会からの公費補 請求が可能となっていた。 オ平成17年2月25日,本件ニュースにおいて,共済会が過去5年間に退職者へ記念品として支給した旅行クーポン券の代金約2億円のうち,約7000万円が教育委員会からの公費補助金で賄われていたことなどが報道された。 カ原告らは,平成17年5月24日付けで,市に対し,本件要綱,本件支出に係る支出命令書及び退会記念品支給請求書等について,神戸市情報公開条例(以下「本件情報公開条例」という)に基づき公文書公開請求を。 し,市は,これに対して,同年6月7日付けで,全部公開決定を行った。 キ原告らは,平成17年6月24日付けで,市に対し,本件情報公開条例- 20 -,,,,に基づき公文書公開請求し市はこれに対して同年7月11日付けで請求に係る文書のうち「実施報告書の取り決め「残金の処置方法の取り」決め」がわかる文書以外の共済会規則,本件要綱,予算説明書及び決算説明書並びに事業報告書等について,公開決定を行った。 ( )ア以上の事実関係を前提に検討するに,予算説明書からは共済会に対す る交付金支出の事実が窺えること,共済会に対する交付金支出に関する予算説明書等の各文書や共済会の事業内容を示す共済会規則等の各文書につ,,いて原告らは本件情報公開条例に基づき公文書公開請求することができ現に原告らは同請求により上記各文書の開示を受けていることなどに照ら,,,,し市の住民が相当の注意力をもって調査すれば予算説明書本件要綱支出決定兼支出命令書につき公文書公開請求が可能な状態となった平成16年6月当初から遅くとも約1か月経過した同年7月15日までには,客観的にみて監査請求をするに足りる程度に平成12年度から平成15年度の共済会に対する交付金支出の存在及び共済会の事業内容を知ることができたという ら遅くとも約1か月経過した同年7月15日までには,客観的にみて監査請求をするに足りる程度に平成12年度から平成15年度の共済会に対する交付金支出の存在及び共済会の事業内容を知ることができたというべきである。したがって,平成16年7月15日から相当期間経過後(同日時点で交付金支出から1年を経過していない分については,当該交付金支出時から1年経過後)になされた本件支出に関する監査請求は不適法となる。 原告らは,専門家でない一般市民に予算説明書の記載から気づくことを要求すべきでないことや相当な注意の要件として市役所内の全公文書に対する公開請求を要求するものである旨主張する。しかし,市の歳入,歳出が予算としてまず計上されることは一般的常識に属するといえること,本件の場合,予算説明書の記載を手掛かりに共済会の事業内容を調査することが可能であったと考えられること,本件情報公開条例による公文書公開請求も,何人も行うことができ(同条例8条,神戸市内に住居を有する)(,,者であれば原則として手数料も無料であり同条例18条1項2項1号- 21 -2号ア,原告らに格別の負担を強いるものでもないことからすれば,上)記のとおり予算説明書の情報公開請求が可能となった時期から約1か月経過した日を起算点とすることは合理的といえる。 イそして,原告らは,平成16年7月15日から1年近く経過した平成17年5月27日に本件監査請求を行っているところ,これが相当な期間内に監査請求をしたものということができないことは明らかである。 また,仮に,原告ら主張のとおり,本件ニュースの報道日をもって本件における「監査請求をするに足りる程度に当該財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたと解される時」としたとしても,原告らの本件監査請求は,本件ニュースが報道さ 件ニュースの報道日をもって本件における「監査請求をするに足りる程度に当該財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたと解される時」としたとしても,原告らの本件監査請求は,本件ニュースが報道された日から91日後になされたものであり,監査請求のために必要となる調査に要する期間等を考慮しても,相,「」当な期間の経過後になされたものといわざるを得ないから正当な理由があるとはいえない。 したがって,本件監査請求中,平成12年度ないし平成15年度の共済会に対する交付金支出についての監査請求には「正当な理由」があるといえず,本件訴えのうち,上記支出に係る訴えはいずれも不適法である。 争点2について( )地自法は,監査委員は,監査請求に対する監査を行うに当たっては,請 求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない(地自法242条6項)旨規定するが,これは,監査委員が監査を行う際に,請求人に対する手続保障の観点から既になされた監査請求を補充する機会を与えるために行われるものと解され,同条項は請求人がなし得る行為として請求対象の追加変更を掲げておらず,他にもこの趣旨を定めた規定は存在しない。そうすると,地自法242条6項の文理上も,意見陳述の制度趣旨からも,意見陳述時に監査請求の対象を追加変更することは制度上予定されていないといわざるをえない。また,監査委員は監査請求があった日から60日以内に監査及- 22 -び勧告を行う必要がある(地自法242条5項)ところ,意見陳述時に監査請求の対象を追加変更できるとすると,追加変更された監査請求対象については十分な監査期間を確保することができず監査の実効性を欠くおそれがある上に,監査請求の対象の追加変更を認めると,追加変更分については行政上の法律関係の早期安定の見地から監査請求期間を 求対象については十分な監査期間を確保することができず監査の実効性を欠くおそれがある上に,監査請求の対象の追加変更を認めると,追加変更分については行政上の法律関係の早期安定の見地から監査請求期間を制限した同条2項の趣旨を没却するおそれがある。 したがって,意見陳述時に監査請求の対象を追加変更することは許されないと解すべきである。 ( )原告らは,本件意見陳述は,本件監査請求を補充してその趣旨を明確に ,。 ,,したものであり適法であると主張する原告らの主張の趣旨は原告らは,,本件監査請求の時点から共済会に対する交付金の支出自体の違法を主張しこれを監査請求の対象としていたものであって,本件意見陳述の際に請求対象を追加変更したものではないという点にあると解される。 しかし,平成17年5月27日付けの監査請求措置請求書には共済会に対する交付金支出に関する記載は見受けられないこと(甲6,本件意見陳述)時に提出された「6月20日,口頭陳述」と題する文書中には「この度の口頭陳述の機会を借りて,5月27日付けの住民監査請求の請求範囲を次のように変更させていただきたいと思います「住民監査請求の範囲をこの5。」年間全体の5億円超の金額支出に対する神戸市長と教育委員会委員長への補。」(),填責任を求めるものに変更したいと思いますとの記載があること甲7内容面を見ても上記監査請求措置請求書は,共済会を通じた公費による退会記念品の支給のみを問題とするものと認められる(甲6)一方で,前記本件意見陳述時提出文書は,原告らが本件情報公開条例に基づく情報公開請求により知った共済会に対する交付金支出自体を問題視するものであると認められる(甲7。 )そうすると,原告らは,本件監査請求の時点においては,自ら退会記念品- 23 -事業費 に基づく情報公開請求により知った共済会に対する交付金支出自体を問題視するものであると認められる(甲7。 )そうすると,原告らは,本件監査請求の時点においては,自ら退会記念品- 23 -事業費として支出された分に係る市からの共済会に対する交付金支出を財務会計上の行為として本件監査請求の対象としていたが,本件意見陳述の際,初めて監査請求の対象を本件支出自体とすることを求めた,すなわち,本件意見陳述において監査請求対象を追加又は変更しようとしたものというべきであるから,原告らの上記主張には理由がない。監査請求対象のかかる事後的な追加変更が許されないことは上記のとおりであるから,本件監査請求の対象は,市の共済会に対する交付金支出のうち退会記念品事業費に充てられるべき分の支出に限られると解すべきである。 ( )したがって,本件訴えのうち,平成16年度の交付金支出中,退会記念 品事業費に充てられるべき分の支出以外の支出に係る訴えは,監査請求前置を欠き,不適法である。 争点3について( )退会記念品が脱退金積立基金を取り崩して支給されているかについて ア被告は,退会記念品事業費は,脱退金積立基金を取り崩して支出されている旨主張するところ,証拠(乙2の8,11,13の8)及び弁論の全趣旨によれば,脱退金積立基金とは,共済会が,後述の脱退金積立金,建設償還金及び剰余金を合わせた脱退金積立金(歳出)を資産として積み立てた基金であることが認められる。 イ証拠(乙1の1・2,2の1ないし4・6・7,11)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年度の共済会における退会記念品等の支給合計額と脱退金積立基金繰入金(資産としての脱退金積立基金の一部を支出に充てるため歳入に繰り入れるもの)の額は,いずれも1億4712万8157円であり一致しているこ 共済会における退会記念品等の支給合計額と脱退金積立基金繰入金(資産としての脱退金積立基金の一部を支出に充てるため歳入に繰り入れるもの)の額は,いずれも1億4712万8157円であり一致していること,同年度の入出簿における退会記念品等の支給に係る同基金の取崩(歳入繰入)時期及び額は,退会記念品等の支給時期及び額とほぼ一致することが認められ,上記各事実によれば,退会記念品等は,支給額が確定する毎に,逐一,同基金を取り崩して当該退職者等に- 24 -支給されているものと認められる。 (,,),ウ 証拠 乙2の1・2 13の1・2及び弁論の全趣旨によれば会員の掛金が,平成15年度については同年4月から平成16年4月にかけて,平成16年度については同年4月から平成17年4月にかけて徴収されたこと,平成16年度は,平成17年6月30日に過誤納金により2259円を会員に返金し,最終的に掛金総額が1億8063万2219円と確定したこと,平成15年度の掛金4分の1(4597万円(1000円未満切り捨て計算)については平成16年4月21日以降に,また,)平成16年度の掛金4分の1(4515万8000円(1000円未満切り捨て計算)については,平成17年4月25日から同年6月30日の)間に「事業用へ振替」の摘要により「掛金(積立」から「掛金(事業,)用」へと振り替えられたこと,平成15,16年度のいずれも,上記振)替処理がなされるまで,掛金を歳出に充てる経理処理は一切なされていないことが認められ,上記各事実によれば,共済会の経理処理上,会員の掛金4分の3と掛金4分の1は,各年度末に当該年度の掛金額が確定した後に一括して区分されたものと認められる。 また,証拠(乙2の8,11,13の8)及び弁論の全趣旨によれば,共済会の経理 上,会員の掛金4分の3と掛金4分の1は,各年度末に当該年度の掛金額が確定した後に一括して区分されたものと認められる。 また,証拠(乙2の8,11,13の8)及び弁論の全趣旨によれば,共済会の経理上,建設償還金及び剰余金の脱退金積立基金への積立ては,毎年度末に一括して行っていることが認められる。 エ以上からすると,平成16年度の退会記念品等の支給のために取崩しの対象となる脱退金積立基金は,平成15年度末時点で積み立てられていた同基金であるといえる。 ( )脱退金積立基金への交付金流入の有無について まず,脱退金積立基金は,前記のとおり,脱退金積立金,剰余金及び建設償還金を積み立てた基金であるから,これら各項目について,交付金流入の有無を検討する。 - 25 -ア脱退金積立金について教職員は,会員として,毎年4月1日(年度途中で会員の資格を取得したときは,その資格を取得した日)現在の給料月額に1000分の5を乗じた額を毎月納付しなければならないところ(甲4,共済会規則5条1項,脱退金積立金は,会員の掛金4分の3を指すと認められる(乙2の)1・8,11,13の1・8)から,平成15年度末時点で積み立てられた脱退金積立金の原資は掛金4分の3であり,市からの交付金が使用されていないことは明らかである。 イ剰余金について証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば,共済会の歳入には,会員の,(),掛金市からの交付金及び事業収入・利息収入等事業収入等があるがこのうち脱退金積立金として積み立てる掛金4分の3を除いたものから事業費等を使用して残った余剰分を剰余金としていることが認められる。原,,,告らはそもそも金に色はついておらず会計を別にしていないことから収入割合に応じて支出も分担されており,剰余金には,交付金,事 使用して残った余剰分を剰余金としていることが認められる。原,,,告らはそもそも金に色はついておらず会計を別にしていないことから収入割合に応じて支出も分担されており,剰余金には,交付金,事業収入等及び掛金4分の1が按分割合で含まれている旨主張する。これに対し,被告は,共済会では,交付金,事業収入等,掛金4分の1の順で使用しているため,各年度に剰余金が生じても,交付金は全額が事業費等に使用されており,剰余金に交付金が含まれることはないと主張する。 (ア)証拠(甲4,23,24,乙1の1・2,2の1・2,11,13の8)及び弁論の全趣旨によれば,前記認定事実に加え,以下の事実を認めることができる。 ,,a共済会においては歳入費目毎の会計区分は帳簿上なされておらず事業費等についても,交付金,事業収入等,掛金4分の1の順で使用するとの明文の規定等は存在しない。 b会員の掛金は,平成12年度までは全額を脱退金積立金に積み立て- 26 -ていたが,市の財政状況の悪化から,交付金と事業収入等により事業を維持することが困難となることが見込まれたため,不足が生じた場合にこれを補うことを目的として平成13年度に共済会規則を改正し,同年度以降の掛金4分の1は,脱退金積立金に積み立てないこととした(共済会規則5条2項参照。 )c市及び共済会の関係者は,共済会の事業中,その他の事業は,市の行うべき福利厚生事業等を共済会が代行するという関係にあると認識している。 d平成15年度の事業収入等の額5399万5686円(うち,事業,)収入3149万3980円利息収入等諸収入2250万1706円及び交付金の額8822万4000円の合計額は,1億4221万9686円であり,一方,同年度の事業費等の額は,これを下回る1億3569万6877円で 万3980円利息収入等諸収入2250万1706円及び交付金の額8822万4000円の合計額は,1億4221万9686円であり,一方,同年度の事業費等の額は,これを下回る1億3569万6877円である。 e平成16年度の事業収入等の額4123万7655円(うち,事業,)収入2027万5151円利息収入等諸収入2096万2504円及び交付金の額8670万3000円の合計額は,1億2794万0655円であり,一方,同年度の事業費等の額は,これを下回る1億0799万0751円である。 (イ)以上の認定事実を基に判断するに,掛金4分の1は事業費等の不足の補填を目的とすると解されることや平成1516年度において掛,,「金(積立」から「掛金(事業用」へ掛金4分の1が振り替えられた))のはいずれも当該年度末以降であることに照らし,平成16年度の事業費等は交付金及び事業収入等で賄ったと見る余地があること,現に平成15,16年度のいずれにおいても,事業収入等及び交付金の合計額は各年度の事業費等の額を上回ること,さらに,その他の事業について,市が本来行うべき福利厚生事業等を共済会が代行していると関係者が認- 27 -識していることに照らし,事業収入等よりも交付金を優先してその他の事業に使用する扱いをすることは首肯できることにかんがみると,使用順序についての明文の規定等は存在しないが,共済会は,交付金,事業収入等,掛金4分の1の順で事業費等に使用しているものと認めるのが相当であり,これを単なる帳簿上の操作による外形の作出に過ぎないということはできない。かかる使用順序に加え,前記の平成15,16年度における事業収入等,交付金及び事業費等の額にかんがみれば,平成16年度の市からの交付金は事業費等として使用し尽くされ,剰余金には含まれて はできない。かかる使用順序に加え,前記の平成15,16年度における事業収入等,交付金及び事業費等の額にかんがみれば,平成16年度の市からの交付金は事業費等として使用し尽くされ,剰余金には含まれていないものと推認することができる。 ウ建設償還金について(ア)証拠(乙1の2,2の8,11,13の8)及び弁論の全趣旨によれば,昭和56年に,共済会運営の研修・保養施設であるαの建替費用のため,脱退金積立基金から1億円を取り崩したこと,当初は,昭和59年度から毎年500万円ずつ20回に分けて交付金を支出することによって償還する予定であったこと,建設償還金として,平成15年度に2500万円,平成16年度に1200万円と交付金が支出された(ただし,平成16年度の予算額は200万円)ことが認められる。 原告らは,平成16年度と同じ割合で昭和56年から24年間にわたり支給されると2億7600万円となり,1億円を超え,超過分の交付。 ,,金が脱退金積立基金に流入していると主張するしかし前記のとおり平成16年度の予算額は200万円であることなどに照らすと,昭和59年度から平成14年度までで合計6300万円を償還していたがαの運営廃止が検討されたため平成15,16年度に残額を全額償還した旨の被告の主張を必ずしも排斥することはできず,平成16年度の償還額のみをもって,1億円を超過して交付金が支出されたと認めるに足りるとはいえず,他にこれを認めるべき証拠はない。 - 28 -(イ)証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば,前記認定の交付金の優先的使用の慣行は以前から存在したものと認められること及び平成12年度までは会員の掛金は脱退金積立金として全額積み立てられていたことからすれば,昭和59年当時の脱退金積立基金にも交付金は含まれていなかったと推 行は以前から存在したものと認められること及び平成12年度までは会員の掛金は脱退金積立金として全額積み立てられていたことからすれば,昭和59年当時の脱退金積立基金にも交付金は含まれていなかったと推認されるので,その後取り崩した額と同額の交付金が同基金に流入しても,それはもともと交付金を含まない同基金の欠損分が填補されたにすぎないといえる。したがって,実質的には交付金が脱退金積立基金に流入したことにはならず,退会記念品等の原資に交付金が含まれているとはいえない。 (ウ)なお,原告らは研修事業程度の施設の建替費用は交付金で賄われるべき事業ではない旨主張する。しかし,地公法42条は「地方公共団,体は,職員の保険,元気回復その他厚生に関する事項について計画を樹立し,これを実施しなければならない」と規定し,地方公共団体に対。 して職員の福利厚生に関する計画の樹立及び実施を義務付けているところ,同条に基づき具体的にどのような制度を設けるかについては,それ(),が適正かつ公正さを欠くものと認められないかぎり同法41条参照各地方公共団体の職員数等の地域事情に応じて合理的な裁量の下に決定されるべきであり,その裁量を逸脱又は濫用した場合に限り違法となると解すべきである。 本件において,地公法42条に基づく厚生事業の一環として市の職員の研修・保養施設たるαの建替をすることは任命権者の上記裁量を逸脱濫用するものとはいえない。漸減しつつあるとはいえ,平成16年度時点でもαには年間約1500万円程度の運用実績があること(甲24)は,任命権者の裁量判断の妥当性を裏付けるといえる。したがって,いわば共済会の立替金の返済に当たるものとして,市が建設償還金として交付金を支出することも,同条に照らし適法と解すべきである。 - 29 -エ以上により,前年度か を裏付けるといえる。したがって,いわば共済会の立替金の返済に当たるものとして,市が建設償還金として交付金を支出することも,同条に照らし適法と解すべきである。 - 29 -エ以上により,前年度から繰り越された脱退金積立基金が共済会の独自の資産となるか否かについて判断するまでもなく,平成16年度の共済会に対する交付金には,同年度の退会記念品事業費に充てられた分はないばかりか,平成17年度以降の退会記念品事業費の原資となる脱退金積立基金に積み立てられた分も存在しないといわざるを得ない。 第4 結論 以上の次第で,争点4ないし7について判断するまでもなく,原告らの本件訴えのうち,平成12年度から平成15年度の共済会に対する交付金支出,及び,平成16年度の共済会に対する交付金支出のうち退会記念品事業費に充てられるべき分の支出以外の支出に係る訴えは不適法であるからいずれも却下することとし,原告らのその余の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官佐藤明裁判官菊池章裁判官重高啓

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る