主文 1 原告らの労働契約上の地位確認請求及び金銭の支払に係る主位的請求をいずれも棄却する。 2 被告は,原告Aに対し,39万3060円及びうち17万2040円に対する平成27年6月20日から,うち22万10 20円に対する平成29年10月26日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Bに対し,19万7530円及びうち12万6960円に対する平成27年6月20日から,うち7万0570円に対する平成29年10月26日からそれぞれ支払済みま で年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Cに対し,11万0380円及びうち5万5330円に対する平成27年6月20日から,うち5万5050円に対する平成29年10月26日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。 7 この判決は,第2項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 原告らが,被告に対し,被告正社員用就業規則及び賃金規程上の賞与,家族手当,住宅手当及び精勤手当の支給を受ける権利を有する労働契約上の地位にあることを確認する。 2 被告は,原告Aに対し,139万8115円及びこれに対する平成27年6 月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Aに対し,152万1740円及びこれに対する平成29年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Bに対し,147万4501円及びこれに対する平成27年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員 する平成29年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Bに対し,147万4501円及びこれに対する平成27年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告Bに対し,168万3959円及びこれに対する平成29年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は,原告Cに対し,120万4709円及びこれに対する平成27年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は,原告Cに対し,156万5174円及びこれに対する平成29年1 0月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告との間で期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して就労している従業員(以下「有期契約労働者」という。)である原告らが,被告と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」と いう。)を締結している従業員(以下「無期契約労働者」という。)との間に,賞与,家族手当,住宅手当及び精勤手当(以下,これらを合わせて「本件手当等」という。)の支給に関して不合理な相違が存在すると主張して,被告に対し,①当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり,原告らには無期契約労働者に関する就業規則等の規定が適用されることに なるとして,当該就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認を求め(上記第1の1),②平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等については,主位的に,同条の効力により原告らに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求として,予備的に,不法行為に基づく損害賠償請求として,実際に支給された 件手当等については,主位的に,同条の効力により原告らに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求として,予備的に,不法行為に基づく損害賠償請求として,実際に支給された賃 金との差額及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年6月20日 から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(上記第1の2,4,6),③平成27年5月から平成29年10月までに支給される本件手当等について,不法行為に基づく損害賠償請求として,実際に支給された賃金との差額及びこれに対する不法行為の日の後である平成29年10月26日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(上記第1の3, 5,7)を求めた事案である。 2 前提事実(以下の各事実は,当事者間に争いがないか,掲記の各証拠等により容易に認定することができる。)当事者ア被告 被告は,農業用機械器具の製造及び販売等を事業目的とする株式会社であり,本社敷地内に工場(以下「本件工場」という。)を有している。被告には総務部(23名(平成27年6月1日時点における従業員数を指す。 以下この項において同じ。)),業務企画部(22名),製造部(360名),生産技術部(98名),品質保証部(29名),工務部(20名) の6つの部署があり(6つの部の従業員の合計は552名),そのうち製造部は,鋳造課(37名),機械課(42名),歯車課(36名),調質課(33名),エンジン製作課(40名),第一組立課(41名),第二組立課(40名),塗装課(39名),第三組立課(46名)の9つの課がある。各課の下には「組」という組織単位が設けられている。各組は, 組長の名を取って呼称される。(乙1)イ原告ら原告らは,それぞれ ,塗装課(39名),第三組立課(46名)の9つの課がある。各課の下には「組」という組織単位が設けられている。各組は, 組長の名を取って呼称される。(乙1)イ原告ら原告らは,それぞれ被告におけるトラクター等の農業機械の製造に係るライン業務(以下では,製品ラインを稼働させるために常時発生する作業を「定常業務」という。)の一端を担っている。原告らの担当するライン は大規模なものではなく,基本的に,ある1種類の作業に同時に2人が従 事することはなく,各人がそれぞれ異なる業務を割り当てられている。無期契約労働者と有期契約労働者の間だけでなく,無期契約労働者相互,有期契約労働者相互でも一人一人業務内容が異なっていることが多い。 ウ原告A(昭和43年生)原告Aは,平成19年7月16日に契約期間を6か月とする有期契約労 働者として被告に入社し,現在まで有期労働契約を更新し,平成26年7月以降,製造部エンジン製作課の02組(平成27年4月以降はE組と呼ばれている。)に所属している。 02組(E組)は,エンジンの部品を加工するグループであり,B系ヘッドライン,B系ブロックライン,C系ヘッドライン,C系ブロックライ ン(B系,C系とはエンジンの種類である。)及びギアケースラインの5つのラインがあり,その配属者数は,平成28年11月時点で18名であり,うち12名が無期契約労働者,残る6名が有期契約労働者である。 原告Aは,B系ヘッドライン,B系ブロックライン,C系ヘッドライン,ギアケースラインでの作業に従事している。 (甲26)エ原告B(昭和57年生)原告Bは,平成19年7月16日に契約期間を6か月とする有期契約労働者として被告に入社し,現在まで有期労働契約を更新している。平成20年8月以降 (甲26)エ原告B(昭和57年生)原告Bは,平成19年7月16日に契約期間を6か月とする有期契約労働者として被告に入社し,現在まで有期労働契約を更新している。平成20年8月以降,本件工場においてシリンダーヘッド組立ての業務に従事し, 平成26年8月以降,製造部エンジン製作課の03組(F組)に所属している。 03組(F組)は,加工された部品を用いてエンジンを組み立てるグループであり,シリンダーヘッドを組み立てるサブ組立ライン,エンジンブロックを組み立てる親メタルライン,シリンダーヘッドとエンジンブロッ クの組付け等を行う外装ラインの3つのラインがあり,その配属者数は, 平成28年11月時点で22名であり,うち16名が無期契約労働者,残る6名が有期契約労働者である。 原告Bは,サブ組立ラインでの作業に従事している。なお,原告Bは,派遣労働者であった時に,平成17年1月14日から平成18年4月末まで,エンジンブロックの組立作業を行う親メタルラインに配置されていた。 (甲27)オ原告C(昭和54年生)原告Cは,平成19年7月16日に契約期間を6か月とする有期契約労働者として被告に入社し,現在まで有期労働契約を更新している。原告Cは,派遣労働者であった平成18年10月以降,本件工場においてギアケ ース加工の業務に従事し,平成26年8月以降,製造部エンジン製作課の02組(E組)に所属し,ギアケースラインでの作業に無期契約労働者も含む三交替制で従事している。(甲28)無期契約労働者の労働条件の概要ア適用される就業規則等 無期契約労働者(就業規則上は「従業員」と定義されているが,以下では「無期契約労働者」と読み替えて記載する。)には,「就業規則」(乙5),「賃金規程 条件の概要ア適用される就業規則等 無期契約労働者(就業規則上は「従業員」と定義されているが,以下では「無期契約労働者」と読み替えて記載する。)には,「就業規則」(乙5),「賃金規程」(乙6),「賞与支給規程」(乙25の1),「賞与支給基準」(乙25の2)が適用される(厳密には,事務系統,技術系統,技能系統又は特務系統で1級ないし8級の資格(1級から8級の順に昇級 する。)を取得した者に適用される(乙5・3条)。)。 イ労働時間等所定労働時間は,3か月単位の変形労働時間制によるものとし,3か月間の実働時間を平均して1週間当たりの実働時間が40時間を超えないようにする(乙5・43条)。労働日の所定就業時間は1日につき原則とし て8時間50分とする(実働時間は7時間50分,休憩は1時間であり, 始業は午前8時,終業は午後4時50分である。乙5・44条)。業務上の都合により交替作業をさせることがあり,その際の就業時間,休憩時間及び交替日の取扱いについてはその都度定める(乙5・45条)。業務上の都合によりやむを得ない場合,被告は労働者の過半数を代表する者と予め協定し,所定就業時間外に早出,残業,休日出勤をさせることがある (乙5・50条)。 無期契約労働者の定年は,満60歳到達日以降最初に到来する5月末日又は11月末日である(乙5・19条1項)。 被告は,業務の都合上,無期契約労働者の異動を必要とするときは,本人の健康,技能,勤務状況等を考慮して公正に行う(乙5・10条)。 ウ賃金基本給,賞与,管理職手当,職能資格手当,職制手当,家族手当,住宅手当,早出残業手当,休日出勤手当,特定休日出勤手当,深夜業手当,精勤手当,交替勤務手当,現場手当,技術資格手当,マイスター手当,鋳造手当, 賞与,管理職手当,職能資格手当,職制手当,家族手当,住宅手当,早出残業手当,休日出勤手当,特定休日出勤手当,深夜業手当,精勤手当,交替勤務手当,現場手当,技術資格手当,マイスター手当,鋳造手当,塗装手当,守衛手当,通勤手当,その他の手当及び休業手当がある (乙6・3条,乙21)。 本件手当等の概要は,次のとおりである。 賞与賞与の支給対象者,支給対象期間等は,別紙1の1「賞与支給規程」(乙25の1)のとおりであり,また,賞与額の算定基準は,別紙1の 2「賞与支給基準」(乙25の2)のとおりである。 被告の業績に応じて,被告が決定する無期契約労働者の平均賞与額(賞与原資,乙25の2・2条)は,平成25年夏季が36万3649円,平成25年冬季が平均35万9037円,平成26年夏季が38万9213円,平成26年冬季が38万8240円であった(乙26の1 ないし4)。 家族手当無期契約労働者に対しては,家族手当として,扶養家族の続柄に応じ手当が支給される(乙6・14条,補則3)。その支給額は,平成26年4月1日施行の現賃金規程(乙6)の下では,配偶者1万円,配偶者でない扶養家族1人目6000円,2人目3000円,3人目以降20 00円であり,平成26年4月改正前の賃金規程(乙24)の下では,配偶者1万円,その他の扶養家族は一律2000円であった。 この家族手当が配偶者ないし扶養家族の有無・人数に応じて支払われる生活手当の一種であり,生活補助的な性質を有していることについては,当事者間に争いがない。 住宅手当無期契約労働者に対しては,扶養者の有無及び住宅の別に応じて住宅手当が支給される(乙6・15条,補則4)。具体的には,有扶養者かつ民営借家居住者には1万円,有扶養者 がない。 住宅手当無期契約労働者に対しては,扶養者の有無及び住宅の別に応じて住宅手当が支給される(乙6・15条,補則4)。具体的には,有扶養者かつ民営借家居住者には1万円,有扶養者かつ公営住宅居住者ないし持家居住者には7000円,無扶養者かつ民営借家居住者には5000円, 無扶養者かつ公営住宅居住者ないし持家居住者には3500円が支給される。 有扶養者とは,①独立の生計を営む主たる生計者であること,②扶養家族を有する者又は共稼ぎの世帯主であること,③扶養家族又は共稼ぎの配偶者と同居していること,④当人が賃貸契約の当事者であり,賃借 料の支払事実が明確であること(ただし,持家居住者の場合は除く。)の各要件を満たすことを要する。無扶養者とは,①自ら住居を設営し,独立の生計を営む単身者であること(ただし,独身寮及び親元居住者は除く。),②賃貸契約の場合は有扶養者の④の条件を満たすことを要する(乙6・15条2項)。 民営借家とは,①都,道,府,県,市,町,村等公共団体において管 理されている公営住宅,②住宅公団の管理する公団住宅,③その他財団法人住宅協会等の管理する住宅,④賃借料の一部を金銭以外の条件にて賃借契約を結んでいる場合,⑤親族,姻族等の住宅に同居し賃借関係のない場合,⑥持家又はこれに準ずるものを除くものとする(乙6・15条3項)。 精勤手当月給日給者で,かつ,当該月皆勤者に限り精勤手当を支給する。その支給額は,月額基本給に1/68.11を乗じた金額(10円未満は切上げ)とする(乙6・17条)。 有期契約労働者の労働条件の概要 ア適用される就業規則等有期契約労働者には,「有期契約社員就業規則」(乙7)が適用される。 イ労働時間等所定労働時間は,6か 乙6・17条)。 有期契約労働者の労働条件の概要 ア適用される就業規則等有期契約労働者には,「有期契約社員就業規則」(乙7)が適用される。 イ労働時間等所定労働時間は,6か月単位の変形労働時間制によるものとする(乙7・10条)。労働日の所定就業時間は無期契約労働者と同様であり(乙 7・11条),業務上の都合により交替作業をさせることがある点も同様である(乙7・12条)。業務の都合上,やむを得ない場合には所定就業時間を超えて時間外・休日労働をさせることがある(乙7・16条2項)。 原告A及び原告Bの労働日の所定就業時間は,1日につき8時間50分(実働時間は7時間50分,休憩は1時間,始業は午前8時,終業は午後 4時50分)であり,原告Cの勤務時間は3交替勤務体系(1勤:午前6時から午後2時20分まで,2勤:午後1時20分から午後9時40分まで,3勤:午後9時40分から午前6時まで)による(甲1ないし3)。 被告は,業務の都合により,有期契約労働者の勤務場所,職種を変更することがある。人事異動を命ぜられた者は,正当な理由なくこれを拒むこ とはできない。(乙7・7条) ウ賃金有期契約労働者の賃金は,基本給,早出残業手当,休日出勤手当,深夜業手当,交替勤務手当,鋳造手当,塗装手当及び通勤手当がある(乙7・23条)。基本給は,時間給(又は日給,月給)とし,職務内容,技能,経験,職務遂行能力等を考慮して各人別に決定する(乙7・23条1号)。 原告A及び原告Cの基本給は時給1000円で,原告Bの基本給は時給1040円である(甲1ないし3)。 無期契約労働者に支給される家族手当,住宅手当及び精勤手当は,有期契約労働者には一切支給されない(乙7・23条参照)。 有期契約労働者には,賞 基本給は時給1040円である(甲1ないし3)。 無期契約労働者に支給される家族手当,住宅手当及び精勤手当は,有期契約労働者には一切支給されない(乙7・23条参照)。 有期契約労働者には,賞与は支給しないが,本人の成績,会社の経営 状態及び経済状勢を勘案し,寸志を支給することがある(乙7・28条)。原告らには,毎年7月及び12月の2回にそれぞれ一律5万円の寸志が支給されている。 この寸志が賞与と同様の性質を有することについては,当事者間に争いはない。 3 争点及びこれに対する当事者の主張労働契約法20条違反の成否(原告ら)ア労働契約法20条違反の有無の判断枠組み等本件では,就業規則が有期契約労働者と無期契約労働者で各別に定めら れ,契約期間の定めの有無に基づいて労働条件の相違が生じていることは明らかである。 労働契約法20条の「不合理」の意味は,問題となった処遇に合理的な理由がない場合と解すべきであり,被告の主張するように,労働条件の相違が法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものと解釈すること は,労働契約法20条の意義を滅却する。 有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の不合理性判断は,個々の労働条件ごとにされなければならない。 労働契約法20条は,不合理性を判断するに当たり考慮すべき事情として,①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。),②当該職務の内容及び配置の変更の範囲,③その他の 事情(以下,①及び②を合わせて「職務内容等」といい,①ないし③を総称して「各考慮要素」という。)を掲げているところ,上記①が労働者の就業の実態を表すものとして最も重視されるべきで,その次に上記②が考慮され,上記③は中核的な労働契約 内容等」といい,①ないし③を総称して「各考慮要素」という。)を掲げているところ,上記①が労働者の就業の実態を表すものとして最も重視されるべきで,その次に上記②が考慮され,上記③は中核的な労働契約の内容に関するものではないから,限定的に解釈されるべきである。 イ職務内容等の相違の有無原告らと同じ製造ラインに配属された無期契約労働者(組長を除く。)との間で職務内容等の相違はない。この相違に関する個別主張は,別紙2・職務内容等整理表のとおりである。 ウ労働条件に関する相違の不合理性 上記イのとおり,原告らと無期契約労働者の間で職務内容等に相違はないから,本件手当等に関する相違は不合理である。本件手当等に関する個別主張は,別紙3・労働条件整理表のとおりである。 (被告)ア労働契約法20条違反の有無の判断枠組み等 労働契約法20条の「期間の定めがあることにより」とは,文理どおり,期間の定めがあることを理由とした労働条件の相違があることを要する趣旨であると解すべきである。仮に,期間の定めの有無に関連した相違があれば足りると解する場合には,期間の定めの有無を直接の理由としない事情が労働条件の相違に寄与する可能性があるため,その事情は不合理性を 否定する一事情として斟酌されるべきである。 不合理性の具体的な程度としては,法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものであることが必要であって,一般的な観念から単純に不合理といえる程度では足りないと解すべきである。 常に個々の労働条件を比較対象とすべきではなく,労働条件の相互の関連性によっては,複数の労働条件を一体として比較し不合理性を判断すべ き場合もあり得る。 各考慮要素は,相互に性質上の優劣はなく,その他の事情の範囲も広く解す べきではなく,労働条件の相互の関連性によっては,複数の労働条件を一体として比較し不合理性を判断すべ き場合もあり得る。 各考慮要素は,相互に性質上の優劣はなく,その他の事情の範囲も広く解すべきである。 イ職務内容等の相違の有無原告らと同じ製造ラインに配属された無期契約労働者との職務内容等に は大きな相違がある。職務内容等の相違に関する個別主張は,別紙2・職務内容等整理表のとおりである。 ウ労働条件に関する相違の合理性上記イのとおり,原告らと無期契約労働者の間で,職務内容等には大きな相違があるから,かかる相違等を考慮して,有期契約労働者と無期契約 労働者の間で本件手当等の支給に差をつけることは,被告の経営・人事制度上の施策として,法的に否認すべき内容ないし程度で不公正とはいえない。本件手当等に関する個別主張は,別紙3・労働条件整理表のとおりである。 労働契約法20条の効力 (原告ら)労働契約法20条には私法的効力があり,不合理な労働条件の相違は無効と判断される。そして,そのような明文の規定が存在することから使用者の故意又は過失の存在が推認され,使用者に不法行為責任を生じさせる。 当該労働条件の相違が無効とされた場合は,労使間の個別的又は集団的な 交渉に委ねては不公正な格差が是正できないから,無期契約労働者の当該労 働条件が有期契約労働者の労働契約の内容になる(補充的効力の肯定)。補充的効力が認められない場合であっても,関係する就業規則,労働協約,労働契約等の規定を合理的に解釈し,可能な限り,有期契約労働者に対して,無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則等の規定を適用すべきである。 (被告) 労働契約法20条には「無効とする」との明確な定めがなく,法的安定性の観 可能な限り,有期契約労働者に対して,無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則等の規定を適用すべきである。 (被告) 労働契約法20条には「無効とする」との明確な定めがなく,法的安定性の観点からも,強行法規性はないと解すべきである。 仮に強行法規性が認められる場合であっても,労働契約法12条や労働基準法13条のような明文の規定がない以上,労働契約法20条に補充的効力はないというべきである。 原告らの損害等の有無及びその額(上記1②及び③関係)(原告ら)ア労働契約に基づく差額賃金(上記1②主位的請求関係)平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等について,原告らには労働契約法20条の効力により無期契約労働者の就業規則 等の規定が適用され,原告らの勤務状況,扶養家族の有無及び住宅の別に照らして,本件手当等の支給を受ける権利を有している。その支給額は,別紙4ないし別紙6の原告らの請求額計算書1のとおりである。 なお,平成25年及び平成26年の夏季及び冬季の賞与は,給与比例配分額について原告らの支給前月の基本給(原告Bについては,平成25年 冬季は支給前々月の基本給に基づき計算し,平成26年冬季を除き家族手当6000円を加算した。)に各季の支給率(高勤続者)を乗じた額を算出し,成績配分額について各季の成績加算額原資の額に依拠し,その合計額から既払金を控除した。 イ不法行為に基づく損害(上記1②予備的請求及び③関係) 平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等につ いて,原告らと無期契約労働者の間の相違は労働契約法20条に反する違法があるところ,その相違が存在せず,原告らにも無期契約労働者と同様の基準により本件手当等が支給されていたとすれば,別紙 いて,原告らと無期契約労働者の間の相違は労働契約法20条に反する違法があるところ,その相違が存在せず,原告らにも無期契約労働者と同様の基準により本件手当等が支給されていたとすれば,別紙4ないし別紙6の原告らの請求額計算書1のとおりの額が支給されていたはずであるから,原告らに同額に相当する損害が生じた。 平成27年5月から平成29年10月までに支給される本件手当等についても,原告らにも無期契約労働者と同様の基準により本件手当等が支給されていたとすれば,別紙7ないし別紙9の原告らの請求額計算書2のとおりの額が支給されていたはずであるから,原告らに同額に相当する損害が生じた。 なお,平成27年夏季から平成29年夏季までの賞与については,平均賞与額が不明であるため,成績加算額が少なく支給率(高勤続者)が低い平成25年冬季に準拠し,給与比例配分額及び成績加算額原資を計算し,既払金を控除した。その際,原告B及び原告Cについては,賞与の支給前月の給与額が不明な部分があるため,直前で判明する基本給を 基準とした。 (被告)いずれも争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実,証拠〔甲26ないし28,31ないし33,乙23,証人G,原告A本人,原告B本人,原告C本人(ただし,いずれも以下の認定に反する部分を除く。),後掲の書証〕及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 被告における無期契約労働者の採用・育成等 被告において就労している正社員には,被告が採用した無期契約労働者, 被告の親会社である井関農機株式会社からの出向者及びグループ会社である株式会社井関邦栄製造所からの出向者が存在する。 被告において採用された無期契約労働者には,高卒後に新規採用された者 被告の親会社である井関農機株式会社からの出向者及びグループ会社である株式会社井関邦栄製造所からの出向者が存在する。 被告において採用された無期契約労働者には,高卒後に新規採用された者(以下「新規採用者」という。)と,被告において有期契約労働者としての採用及び就労を経た後,無期契約労働者として採用(被告では「中途採用」 と呼称している。)された者(以下「中途採用者」という。)が存在する。 新規採用者は毎年5名ないし6名が採用されている一方,中途採用もほぼ毎年実施されており,採用人数は1名の年もあれば,5名ないし6名の年もある。新規採用者については,勤務経験を積ませながら,現場で作業をする方が適しているのか,それとも部下を管理する方が適しているかなどを吟味し て,その適性を見極める。中途採用制度の応募者については,直属の上司である組長等の推薦を踏まえ,履歴書,ストレス適正チェック,小論文,面接等を実施した上,次期リーダーとして育成し,将来的に組長への登用が期待される人材や組長を補佐し得る能力等を有する人材等を採用している。 被告において採用された無期契約労働者に対しては,教育訓練として,配 属された部が直接部門,間接部門のいずれであるかを問わず,入社時に新入社員教育,入社1年目に新入社員育成教育,入社2年目に入社2年目研修,勤続5年ないし8年目頃に中堅社員教育が実施され,組長等の職制に就任した際には監督者教育等が実施される。また,入社1年目から3年目までは通信教育の受講料が無料とされ,無期契約労働者全員が受講の対象者となって いる。通信教育について,入社4年目以降の者の受講は任意とされているが,職能資格の昇格時に,特定のカリキュラムを受講することが義務付けられていることがある。 これらの教育訓練は, となって いる。通信教育について,入社4年目以降の者の受講は任意とされているが,職能資格の昇格時に,特定のカリキュラムを受講することが義務付けられていることがある。 これらの教育訓練は,有期契約労働者に対しては実施されていない。 (乙12,証人G,弁論の全趣旨) 被告における職制 被告には,部長,次長,課長,職長,組長という5つの職制(組長以上の職位)がある。部長,次長及び課長は管理職層であるが,課長は現場で作業をすることもある。職長及び組長は,現場で部下の指揮をしながら自らも作業に携わっている。組長は,各課に4名程度おり,製造部全体では34ないし35名程度いる。 被告においては,無期契約労働者のみが職制に就任することができ,有期契約労働者が職制に就任することはない。 被告の職制に就任している者には,井関農機株式会社からの出向者等も含まれ,被告において採用された無期契約労働者が部長又は次長に就任した実績はない。平成28年2月時点で課長,グループ長(グループとは,品質保 証部及び工務部に設けられた部署であり,グループ長は職長相当職である。)及び組長の職制に就任している無期契約労働者のうち11名が,被告において採用された無期契約労働者である。具体的には,製造部鋳造課の課長1名,工務部調達グループのグループ長1名及び組長9名(製造部鋳造課の組長1名,製造部機械課の組長1名,製造部歯車課の組長3名,製造部第一組立課 の組長2名及び製造部塗装課の組長2名)である。上記11名のうち9名(課長を含む。)は,当初被告に有期契約労働者として雇用され,その後,無期契約労働者に中途採用されて以降,上記の各職制に昇任するに至った者である。平成29年10月時点では,H鋳造課長が鋳造改善チームリーダーとい )は,当初被告に有期契約労働者として雇用され,その後,無期契約労働者に中途採用されて以降,上記の各職制に昇任するに至った者である。平成29年10月時点では,H鋳造課長が鋳造改善チームリーダーという課長相当職に異動しており,被告において採用された無期契約労働者 1名が製造部の海外支援担当リーダーという課長相当職に就任している。 新規採用者の場合,高卒後10年以上の勤務経験を経て組長に就任することが多い。中途採用者の場合,中途採用後無期契約労働者として3年以上の勤務経験を経なければ組長に就任しない傾向にある。 (証人G,弁論の全趣旨) 業務の内容 ア定常業務原告A関係原告Aは,本件工場において,02組(E組)のB系ヘッドライン(ヘッドとはシリンダーヘッドの意である。),B系ブロックライン(ブロックとはエンジンブロックの意であり,シリンダーヘッドと同様 にエンジンを構成する基本的な部品である。),C系ヘッドライン及びギアケースラインで作業をしている。各ラインには,それぞれ加工工程,エアブロー工程及びリークテスト工程の3つの作業工程があるところ,原告Aは,そのうちエアブロー工程(圧縮した空気を放出してエンジンのシリンダーヘッド等に付着した削りかす等を吹き飛ばす業務)及びリ ークテスト工程(製品から空気漏れがないかどうか確認する業務)の作業を担っている。B系ヘッドライン及びB系ブロックラインにおいては,加工工程は無期契約労働者2名が交替制で担当し,エアブロー工程及びリークテスト工程は原告Aと無期契約労働者又は有期契約労働者が担当している。C系ヘッドラインにおいても,加工工程は無期契約労働者が 担当し,エアブロー工程及びリークテスト工程は原告Aと無期契約労働者又は有期契約労働者が担当 約労働者又は有期契約労働者が担当している。C系ヘッドラインにおいても,加工工程は無期契約労働者が 担当し,エアブロー工程及びリークテスト工程は原告Aと無期契約労働者又は有期契約労働者が担当している。ギアケースラインにおいては,加工工程は無期契約労働者2名と原告Cが3交替制で担当し,エアブロー工程及びリークテスト工程は原告Aが担当している。B系ヘッドライン,B系ブロックライン及びC系ヘッドラインにおいて,エアブロー工 程及びリークテスト工程の際に不良が見つかった場合には,当該工程の担当者(無期契約労働者であるか有期契約労働者であるかを問わない。)が当該不良品を不良品置き場まで運ぶが,その間に他の無期契約労働者が関与することはない。不良品置き場に製品を運んだ後,その不良が修正できるか,それとも修正せずに鋳潰すかについては,品質保証部所属 の無期契約労働者が最終的に判断する。(甲26,乙16の1,原告A 本人,弁論の全趣旨)原告B関係原告Bが所属する03組(F組)には,サブ組立ライン,親メタルライン及び外装ラインの3つのラインがある。サブ組立ラインは,原告Bと無期契約労働者であるIが担当し,シリンダーヘッドを組み立ててい る。親メタルラインは,無期契約労働者のみが担当し,エンジンブロックを組み立てている。外装ラインは,無期契約労働者と有期契約労働者が担当し,サブ組立ラインで組み立てられたシリンダーヘッドと親メタルラインで組み立てられたエンジンブロックを組み付けて,最終の部品組み付けを行っている。 サブ組立ラインでは,手作業で50個以上の小さな部品を組み付けてシリンダーヘッドを完成させるところ,1日の生産台数が100台以上の場合は,Iが組立作業の前半を担当し,原告Bが組立作業の後半とマ サブ組立ラインでは,手作業で50個以上の小さな部品を組み付けてシリンダーヘッドを完成させるところ,1日の生産台数が100台以上の場合は,Iが組立作業の前半を担当し,原告Bが組立作業の後半とマーシャリング作業(親メタルラインに流すための部品を集める作業のことをいう。)を担当し,1日の生産台数が100台未満の場合は,原告 Bが組立作業を全て担当し,無期契約労働者であるJがマーシャリング作業を担当する。組立作業の前半と後半で難易度が異なるわけではない。 シリンダーヘッドの組立ては,02組(E組)で加工されたシリンダーヘッドをIがラインに投入すること(以下,この作業を「組立順序作業」という。)から始まる。投入されるシリンダーヘッドの種類は,生 産計画に応じて予め作られた組立順序表に従って決定される。組立順序表は,エンジン製作課の職長等が作成し,組立順序を変更する場合にも職長等からの指示がある。組立順序作業は,Iが無期契約労働者に採用される前の有期契約労働者の時から担当しており,その前は派遣労働者が担当している。なお,Iが無期契約労働者に採用される以前と比べて 現在の方が組立順序作業の難易度が上がっているとまでは証拠上認めら れない。 有期契約労働者は,平成18年5月以降,親メタルラインに配置されていない。 (甲27,乙16の3,原告B本人)原告C関係 原告Cは,02組(E組)のギアケースラインで,無期契約労働者2名と3交替制で作業をしている。ギアケースラインにおいては,ギアケース加工の業務のほかに,無期契約労働者及び有期契約労働者が,設備の日常点検,給油作業及び清掃作業も行っている。加えて,現在では,無期契約労働者が,ライン設備における刃工具の交換作業及びその後の 精度出し(交換対象 無期契約労働者及び有期契約労働者が,設備の日常点検,給油作業及び清掃作業も行っている。加えて,現在では,無期契約労働者が,ライン設備における刃工具の交換作業及びその後の 精度出し(交換対象となる刃工具に製品上存在する微細なサイズのばらつき等を測定し,均一となるよう,必要に応じて追加加工することをいい,100分の1ミリメートルのレベルでサイズを合わせている。)等の精密作業並びにライン設備の修理作業を行っており,原告Cはその作業を担当していない。過去には有期契約労働者(後に無期契約労働者に 登用された。)が上記精密作業を担当したことがある。原告Cも上記各作業の教育を受けたことがあるが,上記各作業をする能力がないと判断され,上記各作業の担当から外された。(甲28,乙16の2,原告C本人,弁論の全趣旨)イ管理業務及び新機種関連業務 定常業務の円滑な遂行を支える管理業務(例えば,作業要領書及び明細書の維持管理,作業計画の策定等)及び新機種関連業務(例えば,新機種に関する作業工程の新規策定や作業要領書,明細書等の作成)に関しては,組長及びラインごとの組長と同等の能力を持った無期契約労働者のみに割り当てられ,有期契約労働者が担当することはない。(乙23,証人G) ウ業務改善提案 被告においては,無期契約労働者に対して,一人当たり月5件の業務改善提案の提出を推奨している。平成26年度では,提出人員の実績はその目標の97%であり,過去に提出された業務改善提案と同内容のものもあったが,全体の約35%の業務改善提案が採用されている。有期契約労働者も業務改善提案を任意に提出でき,原告らも提出したことがある。業務 改善提案の作成に要する時間は,速い者で1件につき2,3分程度であるが,1件につき1時間程 提案が採用されている。有期契約労働者も業務改善提案を任意に提出でき,原告らも提出したことがある。業務 改善提案の作成に要する時間は,速い者で1件につき2,3分程度であるが,1件につき1時間程掛ける者もおり,平均すれば20分ないし30分である。(乙3,9,証人G)業務に伴う責任の程度ア現に発生したミスへの対応 被告において業務中にミスが発生した場合,リカバリーや修正のための対応手順を決定するのは,課長及び組長等の職制に就任している者又はそれと同等の能力を持つ一部の無期契約労働者であって,有期契約労働者が対応手順を決めることはない。その他の無期契約労働者及び有期契約労働者は,組長の指示に従ってミスに対応することになる。(乙23,証人G) イ品質不具合の再発防止のための対応(イエローカード制度)作業ミスをした場合,無期契約労働者と有期契約労働者のいずれも,報告書を提出することになっており,原告B及び原告Cも報告書を提出したことがある。(原告A本人,原告B本人,原告C本人)品質不具合が発生した場合には,品質保証部がイエローカードを発行し, 不具合発生工程の作業台周辺等に掲示され,当該不具合発生工程の担当作業者(無期契約労働者)がイエローカードに従った再発防止の継続実施及び改善対応を実施し,その責任を負うことになる。担当作業者が新入社員,派遣労働者又は有期契約労働者の場合には,新入社員以外の無期契約労働者と同等の指導をするものの,改善対応及び再発防止の責任は組長及び管 理監督者が行い,負うものとされる。(乙4の1及び2) なお,この点について,原告らはイエローカード制度が形骸化していると主張し,原告Aも同様の供述をするが,エンジン製作課においてもイエローカードが実際に掲示される る。(乙4の1及び2) なお,この点について,原告らはイエローカード制度が形骸化していると主張し,原告Aも同様の供述をするが,エンジン製作課においてもイエローカードが実際に掲示されるなどしていることから(乙11),採用できない。 職務の内容及び配置の変更の範囲 無期契約労働者には部又は課を越えた異動が行われ,有期契約労働者には課を越えた異動が行われることがある。もっとも,無期契約労働者の異動に際しても本人の希望が聴取されており,部を越えた異動は少なく,特に中途採用者については同じ課に所属し続けることが多い。他方で,有期契約労働者についても,本人の同意を得た上で課を越えた異動が行われることがある。 また,被告の従業員は,本件工場内で業務を遂行することが想定されており,勤務地の変更を伴う異動は想定されていない。 (証人G,原告C本人,弁論の全趣旨)原告らの基本給,勤務状況,扶養家族の有無,住宅の別原告らは,平成25年5月から平成29年10月までの間(ただし,原告 Aにつき平成25年8月,平成26年5月及び8月並びに平成28年2月を,原告Bにつき,平成25年11月並びに平成27年5月及び6月を,原告Cにつき,平成27年11月及び12月,平成28年2月及び8月並びに平成29年1月及び8月支給分をそれぞれ除く。),欠勤がなく,その間の基本給の金額は別紙10ないし別紙15の原告らの認容額計算書1及び2の「基 本給額」欄のとおりである。(甲7の1ないし21,甲8の1ないし23,甲9の1ないし24,甲36の1ないし29,甲38の1ないし28,甲40の1ないし24,弁論の全趣旨)。 原告Aは,扶養者がなく,平成21年10月23日に自らが賃借人となって住所地の民間住宅の賃貸借契約を締結し,現在に至る の1ないし29,甲38の1ないし28,甲40の1ないし24,弁論の全趣旨)。 原告Aは,扶養者がなく,平成21年10月23日に自らが賃借人となって住所地の民間住宅の賃貸借契約を締結し,現在に至るまで居住し,賃料を 支払っている(甲14,弁論の全趣旨)。 原告Bは,祖母のKが平成26年11月22日死亡するまで,祖母と同居し,祖母を扶養していた(甲13)。 本件手当等の趣旨目的に関する資料被告において,本件訴訟係属中に,本件手当等が設定された経緯及び趣旨等について調査したが,その設定当時の具体的な趣旨目的について記載され た資料等は発見されなかった(弁論の全趣旨)。 (労働契約法20条違反の成否)について本件手当等の支給に関する相違有期契約労働者である原告らには,賞与と同様の性質を有する寸志が一季5万円のみ支給され,家族手当,住宅手当及び精勤手当は支給されていない ところ,無期契約労働者には賞与支給基準に従い賞与が支給され,その平均賞与額は一季35万円を超え,家族手当,住宅手当及び精勤手当が支給されており,本件手当等の支給に関して,原告らと無期契約労働者の間で相違がある(以下この相違を「本件相違」という。)。本件相違は,有期契約労働者である原告らと無期契約労働 者で適用される就業規則が異なることによって生じていることは明らかであるから,各考慮要素を考慮して不合理であると認められる場合には,労働契約法20条に違反することになる。 労働契約法20条違反の有無に係る判断枠組みア労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件 の相違について,各考慮要素を考慮して,「不合理と認められるものであってはならない」と規定し,「合理的でなければならない ア労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件 の相違について,各考慮要素を考慮して,「不合理と認められるものであってはならない」と規定し,「合理的でなければならない」との文言を用いていないことに照らせば,同条は,当該労働条件の相違が不合理であると評価されるかどうかを問題としているというべきであり,そのような相違を設けることについて,合理的な理由があることまで要求する趣旨では ないと解される。 イそして,同条は,有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の相違が不合理と認められるか否かの考慮要素として,①職務の内容,②当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか,③その他の事情を掲げており,その他の事情として考慮すべきことについて,上記①及び②を例示するほかに特段の制限を設けていないことからすると,労働条件の相違が不合理 であると認められるか否かについては,上記①及び②に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して,個々の労働条件ごとに判断すべきものと解される。 これに対し,原告らは,上記①及び②の事情が上記③の事情に比して重視されるべきであると主張する。しかし,労働契約法20条の文言及び厚 生労働省労働基準局長通達「労働契約法の施行について」(平成24年基発0810第2号。以下「本件施行通達」という。甲22)では,上記①ないし③の考慮要素の重みづけについて明確に定められていないことに照らせば,原告らの主張は採用できない。 他方で,被告は,常に個々の労働条件を比較対象とすべきではないと主 張する。しかし,本件施行通達では不合理性について「個々の労働条件ごとに判断される」としているほか,個々の労働条件ごとに相違の不合理性を判断する場合においても,当該労働条件と密接 はないと主 張する。しかし,本件施行通達では不合理性について「個々の労働条件ごとに判断される」としているほか,個々の労働条件ごとに相違の不合理性を判断する場合においても,当該労働条件と密接に関連する労働条件や賃金体系全体については上記③のその他の事情として考慮することができると解されるから,被告の主張は採用できない。 原告らと無期契約労働者の職務内容等の相違等ア本件において,原告らとの比較対象となる無期契約労働者は,原告らと同じ製造ラインに配属された無期契約労働者(組長を除く。)であることに争いはない。以下,各考慮要素を順に検討する。 イ業務の内容の相違 定常業務 a 原告A関係上記のとおり,B系ヘッドライン,B系ブロックライン及びC系ヘッドラインのエアブロー工程及びリークテスト工程は,原告A及び無期契約労働者がそれぞれ担当しているから,原告Aの担当業務は,定常業務に関し,その無期契約労働者と同一の業務に従事して いると認められる。B系ヘッドライン,B系ブロックライン及びC系ヘッドラインの加工工程は無期契約労働者のみ担当しているが,ギアケースラインについては,加工工程についても原告Cと無期契約労働者が三交替制で勤務しているから,無期契約労働者と有期契約労働者で相互に代替可能な業務であると認められる。 これに対し,被告は,無期契約労働者のみがエンジンを鋳潰すかを決定する業務を担当しているから,無期契約労働者と有期契約労働者で業務の内容に相違があると主張する。しかし,エンジンを鋳潰すか否かについては,原告Aが所属する製造部のエンジン製作課の労働者ではなく,品質保証部所属の無期契約労働者が最終的に判断するので あるから,これを原告Aと無期契約労働者の業務の相違と を鋳潰すか否かについては,原告Aが所属する製造部のエンジン製作課の労働者ではなく,品質保証部所属の無期契約労働者が最終的に判断するので あるから,これを原告Aと無期契約労働者の業務の相違と捉えることは相当でない。 b 原告B関係Bは,1日の生産台数が100台以上の時は,無期契約労働者であるIと組立作業の前半と後半に分かれて 作業を行うところ,その前半と後半で難易度に差があるわけではないし,生産台数が100台未満の際には,そもそも組立作業の全体を原告Bが担当している。また,マーシャリング作業については,生産台数によって原告Bと無期契約労働者であるJで担当者を交替している。 したがって,原告Bのサブ組立ラインにおける定常業務はIやJとい った無期契約労働者の作業と同一であると認められる。 これに対し,被告は,①無期契約労働者のみが親メタルラインでエンジン内部の組立作業に従事していること,②無期契約労働者であるIのみが組立順序作業に従事していることから,原告Bと無期契約労働者で業務の内容に相違があると主張する。しかし,原告Bは,平成17年1月14日から平成18年4月末まで,エンジンブロックの組 立作業を行う親メタルラインに配置されていたところ(上記第2の2),その当時と現在で親メタルラインの業務内容に相違があるとは証拠上認められない。また,Iは無期契約労働者ではない派遣労働者ないし有期契約労働者の時から組立順序作業を担当しており,その当時に比べて現在の方が作業の難易度が上がっているとまでは証拠上 認められない上,組立順序作業は組立順序表に従って実施され,組立順序の変更に関してIには裁量はない。そうすると,親メタルラインでの作業及び組立順序作業のいずれも,現在無期契約労働者のみが従事して 認められない上,組立順序作業は組立順序表に従って実施され,組立順序の変更に関してIには裁量はない。そうすると,親メタルラインでの作業及び組立順序作業のいずれも,現在無期契約労働者のみが従事していることをもって,原告Bと無期契約労働者で業務内容が相違していると認めることはできない。 c 原告C関係原告Cは,他の無期契約労働者と三交替制であるため,他の無期契約労働者と同一の業務に従事している()。 これに対し,被告は,無期契約労働者のみが精密作業及びライン設備の修理作業に従事しており,無期契約労働者と原告Cで業務の内容 に相違があると主張する。しかし,過去には有期契約労働者が精密作業に従事したこともあることに加え,原告Cも上記各作業の教育を受けたことがあるから,精密作業を遂行できる能力がある者は有期契約労働者でも当該作業に従事できるのであって,無期契約労働者と有期契約労働者で業務内容が相違していると認める ことはできない。この点については,有期契約労働者が当該作業に従 事していた事実が重要であって,被告が主張するように当該有期契約労働者が後日中途採用されたことは,上記結論を左右しないというべきである。 d 以上によれば,原告らと同一の製造ラインに配属された無期契約労働者との間で,その定常業務の内容に相違はないと認められ,この点 に関する被告の主張は採用できない。 管理業務及び新機種関連業務によれば,管理業務及び新機種関連業務は,共に定常業務の円滑な遂行を支える点で,被告において重要な業務であると認められるところ,職制に就任している者のほか,ラインごとの組長と同等の能 力を持った無期契約労働者のみに割り当てられ,有期契約労働者は,その職務遂行能力にかかわらず,当該業務を担当す あると認められるところ,職制に就任している者のほか,ラインごとの組長と同等の能 力を持った無期契約労働者のみに割り当てられ,有期契約労働者は,その職務遂行能力にかかわらず,当該業務を担当することはない。したがって,職制に就かず,原告らと同一の製造ラインに配属された無期契約労働者のうち一部の者については,原告ら有期契約労働者とは異なる業務を担当している点で,原告らの業務内容とは相違していると認められ る。 業務改善提案のとおり,業務改善提案は焼き直しによる提出が容認されているほか,その提出までの所要時間が比較的少なく,労働者の職務に占める時間的割合が小さいと認められる。 5S活動及び自衛消火隊の活動5S活動及び自衛消火隊の活動に無期契約労働者のみが従事していることを認めるに足りる証拠はない。 小括原告らと同一の製造ラインに配属された無期契約労働者との間で,そ の定常業務の内容に相違はな管理業務及び新機種関連業 務は重要な業務であるものの,無期契約労働者のうち一部の者についてられないことからすると,原告らと比較対象となる無期契約労働者との業務の内容に大きな相違があるとはいえない。 ウ業務に伴う責任の程度に関する相違 作業ミスが発生した場合,有期契約労働者と無期契約労働者のいずれも,報告書の提出を義務付けられている点で差異はない。 また,現に発生したミスについて,リカバリーや修正のための対応手順を決めるのは,職制に就任している者又はそれと同等の能力を持つ無期契約労働者の一部であって,無期契約労働者全体と有期契約労働者全体で相違 があるものではない。 他方で,品質不具合の再発防止のための対応については,無期契約労働者のみが,再発防止の継続実施及び改善対 者の一部であって,無期契約労働者全体と有期契約労働者全体で相違 があるものではない。 他方で,品質不具合の再発防止のための対応については,無期契約労働者のみが,再発防止の継続実施及び改善対応を実施し,その責任を負い,有期契約労働者はその責任を負わない。したがって,職制に就かず,原告らと同一の製造ラインに配属された無期契約労働者であっても,ミスの発 生時及び発生後の対応の程度が異なっており,無期契約労働者と有期契約労働者で業務に伴う責任の程度が一定程度相違していると認められる。さらに,被告は,無期契約労働者が有期契約労働者よりも優先して時間外・休日労働を命じられると主張し,G証人も同旨の供述をするが,無期契約労働者と有期契約労働者の時間外・休日労働時間にどの程度差異が生じて いるかは証拠上明らかでないことから,この点は,業務に伴う責任の程度を左右しないというべきである。 エ職務の内容及び配置の変更の範囲に関する相違被告においては,無期契約労働者のみ組長以上の職制に就くことができ,有期契約労働者が職制に就くことはない。そ して,被告において採用される無期契約労働者は,将来,組長以上の職制 に就任し部下を指揮する立場や組長を補佐する立場となる等して被告における重要な役割を担うことを期待されて,定期的な研修が実施されているほか,職能資格の昇格時には特定の通信教育のカリキュラムを受講することが義務付けられるなど,継続的な教育訓練と長期間の勤務経験を積みながら育成されるものと認められる。このことは,無期契約労働者で組長と 同等の能力を持つ者に管理業務及び新機種関連業務を担当させたり,ミスが発生した際のリカバリーや修正のための対応手順を決めさせたりしていること)からも裏付けられる。 他方で,有期 者で組長と 同等の能力を持つ者に管理業務及び新機種関連業務を担当させたり,ミスが発生した際のリカバリーや修正のための対応手順を決めさせたりしていること)からも裏付けられる。 他方で,有期契約労働者については,のとおり,定期的な教育訓練は実施されておらず,有期契約労働者を中途採用制度により無 期契約労働者とする場合であっても,職制に就任させるためには3年程度の無期契約労働者としての勤務経験を経ることが必要である。そのため,有期契約労働者全体について,将来,組長以上の職制に就任したり,組長を補佐する立場になったりする可能性がある者として育成されるべき立場にあるとはいえない。 したがって,原告らと無期契約労働者の間には,職務の内容及び配置の変更の範囲に関して,人材活用の仕組みに基づく相違があると認められる。 これに対し,原告らは,有期契約労働者も,中途採用により無期契約労働者となった後に職制に就任することがあるから,組長になり得ると主張する。しかし,上記1 は,有期契約労働者のうち,将来的に組長に昇任させたい人材や組長を補佐するのに適した人材等を選抜して無期契約労働者に採用しているのであるから,中途採用されていない有期契約労働者全体と,中途採用者を含む無期契約労働者に上記のとおり差異があることは否定できないというべきである。 オその他の事情 中途採用は,ほぼ毎年実施されており,現に平成28年2月時点では,被告において採用された無期契約労働者であって職制にある11名のうち,9名が有期契約労働者から中途採用されており,無期契約労働者と有期契約労働者の地位が必ずしも固定的でないことは,本件相違の不合理性を判断する際に考慮すべき事情といえる。 本件相違の不合理性上記 期契約労働者から中途採用されており,無期契約労働者と有期契約労働者の地位が必ずしも固定的でないことは,本件相違の不合理性を判断する際に考慮すべき事情といえる。 本件相違の不合理性上記⑶の原告らと無期契約労働者との職務内容等の相違等を踏まえて,本件手当等の労働条件ごとにその不合理性を検討する。 ア賞与一般的に,賞与は,支給対象期間の企業の業績等も考慮した上で,毎月 支給される基本給を補完するものとして支給され,支給対象期間の賃金の一部を構成するものとして基本給と密接に関連し,賃金の後払としての性質を有することに加え,従業員が継続勤務したことに対する功労報奨及び将来の労働に対する勤労奨励といった複合的な性質を有するものと解されており,被告における賞与についても,これと同様の性質を有するものと 推認される。そして,これらの性質については,無期契約労働者だけでなく有期契約労働者にも及び得ることは,原告らの指摘するとおりである。 しかし,前記のとおり,無期契約労働者と有期契約労働者で業務に伴う責任の程度が一定程度相違していること,職務の内容及び配置の変更の範囲に関する相違に関してみたとおり,将来,組長以上の職制に就任したり, 組長を補佐する立場になったりする可能性がある者として育成されるべき立場にある無期契約労働者に対してより高額な賞与を支給することで,有為な人材の獲得とその定着を図ることにも一定の合理性が認められること,原告らにも夏季及び冬季に各5万円の寸志が支給されていること,中途採用制度により有期契約労働者から無期契約労働者になることが可能でその 実績もあり,両者の地位は必ずしも固定的でないことを総合して勘案する と,一季30万円以上の差が生じている点を考慮しても,賞与における原告 から無期契約労働者になることが可能でその 実績もあり,両者の地位は必ずしも固定的でないことを総合して勘案する と,一季30万円以上の差が生じている点を考慮しても,賞与における原告らと無期契約労働者の相違が不合理なものであるとまでは認められない。 これに対し,原告は,厚労省ガイドライン案(甲29の2)に照らして被告の賞与における相違は不合理であると主張する。 しかし,労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の間の 労働条件の相違が不合理なものであることを禁止した規定であり,同一労働同一賃金の原則を定めたものと解することはできない。そして,上記ガイドライン案の前文には,同案をもとに,法改正の立案作業を進めることが予定され,今後,関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて,同案を最終的に確定すると記載されていることに鑑みると,労働契約 法20条の不合理性判断に際して,少なくとも現時点の同案を参酌する必要があるとはいえず,原告の主張は採用できない。 イ家族手当証拠(乙20)によれば,昭和14年にインフレを抑制するために発出された賃金臨時措置令を受けて賃金引上げが凍結されたが,物価上昇によ って,扶養家族を有する労働者の生活が厳しさを増したことから,翌年,一定収入以下の労働者に対し扶養家族を対象とした手当の支給が許可されたことにより,多くの企業において家族手当が採用されたこと,その後,第2次大戦直後のインフレ期には,労働組合が生活保障の要素を重視する観点から家族手当の支給や引上げを要求し,企業もそれに応じ,高度経済 成長期には,いわゆる日本的雇用システムが構築され,正規雇用者として長期に雇用される男性世帯主を中心に支給される家族手当が,従業員に対する処遇として定着したことが認め もそれに応じ,高度経済 成長期には,いわゆる日本的雇用システムが構築され,正規雇用者として長期に雇用される男性世帯主を中心に支給される家族手当が,従業員に対する処遇として定着したことが認められる。被告においても,家族手当は,生活補助的な性質を有しており,労働者の職務内容等とは無関係に,扶養家族の有無,属性及び人数に着目して支給されている( )。 上記の歴史的経緯並びに被告における家族手当の性質及び支給条件からすれば,家族手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難である。そして,配偶者及び扶養家族がいることにより生活費が増加することは有期契約労働者であっても変わりがないから,無期契約労働者に家族手当を支給するにもかかわらず,有期契約労働者に 家族手当を支給しないことは不合理である。 これに対し,被告は,平成23年時点で,無期契約労働者に家族手当を支給する企業の割合と比べて,有期契約労働者が無期契約労働者と同様の職務に従事していると企業が認識している場合であっても有期契約労働者に家族手当を支給する企業の割合は極めて低いと主張し,これに沿う証拠 として厚生労働省労働基準局の「平成23年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)報告書」(以下「実態調査報告書」という。乙14及び14の2)を挙げるほか,雇用システムの相違それ自体及び各考慮要素における相違を理由として,より手厚い生活補助を無期契約労働者に対し講じることは不合理ではないと主張する。 しかし,各企業の家族手当の支給条件はそれぞれ異なると予想されるところ,有期契約労働者と無期契約労働者に対して家族手当を支給する企業の割合を単純に比較することは必ずしも相当とはいえない。加えて,有期契約労働者について雇止め 支給条件はそれぞれ異なると予想されるところ,有期契約労働者と無期契約労働者に対して家族手当を支給する企業の割合を単純に比較することは必ずしも相当とはいえない。加えて,有期契約労働者について雇止めの不安があることによって合理的な労働条件の決定が行われにくいことや,処遇に対する不満が多く指摘されていること を踏まえて,有期労働契約の労働条件を設定する際のルールを法律上明確化し,期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止するものとしたという労働契約法20条の制定経緯(本件施行通達参照)に鑑みれば,平成23年当時の企業実態の大勢を重視することは相当とはいえない。また,被告における家族手当の支給条件が,職務内容等の相違に基因するも のとはいえないことは上述のとおりである上,上記法の制定経緯に照らせ ば,雇用システムの相違自体や中途採用制度の存在を含む各考慮要素の相違をもって,その支給対象を無期契約労働者に限定することの不合理性が否定されるとも解されない。したがって,被告の主張は採用できない。 ウ住宅手当被告は,無期契約労働者に対して一律に住宅手当を支給しているわけ ではなく,民営借家,公営住宅又は持家に居住する無期契約労働者に住宅手当を支給している。そして,民営借家居住者には公営住宅居住者及び持家居住者と比べて高額な手当を支給し,扶養者がいる場合にはより高額な手当を支給している。また,賃貸契約の場合,当人が賃貸契約の当事者であることを要件としている。 そうすると,被告の住宅手当は,住宅費用の負担の度合いに応じて対象者を類型化してその者の費用負担を補助する趣旨であると認められ,住宅手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難であり,有期契約労働者であっても,住宅 合いに応じて対象者を類型化してその者の費用負担を補助する趣旨であると認められ,住宅手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難であり,有期契約労働者であっても,住宅費用を負担する場合があることに変わりはない。したがって,無期契約労働者には住 宅手当を支給し,有期契約労働者には住宅手当を支給しないことは,不合理であると認められる。 これに対し,被告は,配置の変更の範囲が広い無期契約労働者は,潜在的に住宅に要する費用が有期契約労働者よりも高くなるから,無期契約労働者のみに住宅手当を支給することは不合理ではないと主張する。 しかし,被告の従業員は,勤務地の変更を伴う異動は想定されていないからに住宅費用が高くなると認めることは困難である。 また,被告は,住宅手当は,その歴史的背景として,家族手当と同様に年功序列型賃金の一内容として定着したと主張するが,その主張を裏 付ける的確な証拠はない上,被告における住宅手当の内容 おりであって,これを年功序列型賃金の一内容とみることはできない。 さらに,被告は,実態調査報告書に依拠して有期契約労働者に住宅手当を支給する企業の割合は極めて低いとか,無期契約労働者に対してより手厚い生活補助を講じることに合理性がある旨主張するが,そのような被告の主張が採用できないことは上記イのとおりである。 エ精勤手当無期契約労働者には,月給者(連続1か月未満の欠勤については,基本給の欠勤控除を行わない者をいい,事務・技術職とされる。)と月給日給者(欠勤1日につき,月額基本給の1/20.3の金額を欠勤控除する者をいい,技能職とされる。)がいるところ,被告は,月給日給者かつ当該 月皆勤者に限り精勤手当を支給しており,月給者には精勤手当を支給し 1日につき,月額基本給の1/20.3の金額を欠勤控除する者をいい,技能職とされる。)がいるところ,被告は,月給日給者かつ当該 月皆勤者に限り精勤手当を支給しており,月給者には精勤手当を支給していない(乙6・2条3項ないし5項,10条1項及び3項,17条)。そうすると,精勤手当の趣旨としては,少なくとも,月給者に比べて月給日給者の方が欠勤日数の影響で基本給が変動して収入が不安定であるため,かかる状態を軽減する趣旨が含まれると認められる。他方で,被告が主張 するように,無期契約労働者に対して精勤に対する見返りを支給し,会社に対する貢献の増大を図るために精勤手当が設定されたと認めるに足りる証拠はない。 そして,有期契約労働者は,時給制であり,欠勤等の時間については,1時間当たりの賃金額に欠勤等の合計時間数を乗じた額を差し引くものと され(乙7・23条ないし25条),欠勤日数の影響で基本給が変動し収入が不安定となる点は月給日給者と変わりはない。したがって,無期契約労働者の月給日給者には精勤手当を支給し,有期契約労働者には精勤手当を支給しないことは,不合理であると認められる。 被告は,実態調査報告書に依拠して有期契約労働者に精勤手当を支給す る企業の割合は極めて低いと主張するが,かかる主張が採用できないこと は上記イのとおりである。 オ以上のとおり,本件手当等のうち,家族手当,住宅手当及び精勤手当については労働契約法20条に違反するが,賞与については同条に違反しない。 (労働契約法20条の効力(補充的効力の有無))について 労働契約法20条が「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」との見出しの下に「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることから,同条に違反 力の有無))について 労働契約法20条が「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」との見出しの下に「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることから,同条に違反する労働条件の定めは無効というべきであり,同条に違反する取扱いは,民法709条の不法行為が成立する場合があり得るものと解される。 そして,労働契約法は,同法20条に違反した場合の効果として,同法12条や労働基準法13条に相当する補充的効力を定めた明文の規定を設けておらず,労働契約法20条により無効と判断された有期契約労働者の労働条件をどのように補充するかについては,無期契約労働者と有期契約労働者の相違を前提とした人事制度全体との整合性を考慮した上,労使間の個別的又 は集団的な交渉に委ねられるべきものであって,裁判所が,明文の規定がないにもかかわらず労働条件を補充することは,できる限り控えるべきものと考えられる。 この点,労働契約法の改正の際の国会審議において,政府参考人から,労働契約法20条により「不合理であり無効とされた労働条件はどうなるかに ついては,基本的には,無期契約労働者と同じ労働条件が認められるものと考えます。」(平成24年7月25日第180回国会衆議院厚生労働委員会議録第15号(甲21・24頁,25頁))とする説明がされ,本件施行通達においても「無効とされた労働条件については,基本的には,無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること」とされている。 しかし,いずれにおいても「基本的には」という留保が付されていること から,常に補充的効力を肯定する趣旨とは解されない。そして,例えば,就業規則が全従業員に適用され,その一部条項のみ有期契約労働者の適用を除外する定めが置 は」という留保が付されていること から,常に補充的効力を肯定する趣旨とは解されない。そして,例えば,就業規則が全従業員に適用され,その一部条項のみ有期契約労働者の適用を除外する定めが置かれているような場合には,当該定めを無効とすることにより,結果として有期契約労働者についても無期契約労働者と同様に当該就業規則が適用されることになるが,そのように就業規則等の規定を合理的に解 釈することができない場合には,前記のとおり,不法行為による損害賠償責任が生じ得るにとどまるものと解するほかないというべきである。 本件では,無期契約労働者の就業規則は,有期契約労働者については別に定める就業規則を適用すると明記している(乙5・2条,3条)。無期契約労働者の賃金規程においても,無期契約労働者に適用する賃金に関する事項 を定めると規定し,試用社員について家族手当を除き賃金規程を準用し,嘱託,準社員及び臨時については,別に定める基準によると規定しているが,有期契約労働者については言及がない(乙6・1条)。そして,有期契約労働者の就業規則には,無期契約労働者の就業規則(乙5)2条に基づき,有期契約労働者の労働条件等を定めると規定し(乙7・1条1項),賃金につ いてもその就業規則において規定している(乙7・23条ないし29条)。 また,原告らの労働契約書(甲1ないし3)をみても,無期契約労働者の就業規則(乙5)及び賃金規程(乙6)が適用されることを前提とする約定は見当たらない。 以上のとおり,無期契約労働者の就業規則等とは別個独立のものとして有 期契約労働者の就業規則等が存在しており,関係する就業規則等の規定を合理的に解釈しても,有期契約労働者に対して,無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則等の規定を適用することはできな して有 期契約労働者の就業規則等が存在しており,関係する就業規則等の規定を合理的に解釈しても,有期契約労働者に対して,無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則等の規定を適用することはできない。 そうすると,原告らの被告に対する,無期契約労働者に関する就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認を求める請求(上記 第2の1①の請求)及び平成25年5月から平成27年4月までに支給され る本件手当等について,原告らに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働契約に基づく賃金請求(上記第2の1②の主位的請求)には理由がない。 ⑷ 他方で,原告Bは,祖母が平成26年11月22日に死亡するまで祖母を扶養しており,同月分までは家族手当の支給要件に該当 すること,原告Aは,扶養者がなく,自らが賃借人となって民間住宅の賃貸借契約を締結して現在に至るまで居住し,賃料を支払っており,住宅手当の要件のうち「無扶養者かつ民営借家居住者」に該当すること,原告らは,一部の月を除き,精勤手当の支給要件に該当することから,原告らに対する上記各手当(以下「本件各手当」という。)の不支給は,原告らに対する不法 行為を構成するというべきである。 (原告らの損害の有無及びその額)について原告らの被告に対する,平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等に関する不法行為に基づく損害賠償請求(上記第2の1②の予備的請求)について 原告らには,本件各手当が無期契約労働者と同様の条件で支給された場合における支給額に相当する損害が生じたと認めるのが相当である。平成25年5月から平成27年4月までの間における原告らの基本給,勤務状況,扶養家族の有無及び住宅の別)に照らすと,原告らに対 れた場合における支給額に相当する損害が生じたと認めるのが相当である。平成25年5月から平成27年4月までの間における原告らの基本給,勤務状況,扶養家族の有無及び住宅の別)に照らすと,原告らに対して,無期契約労働者と同様の条件で本件各手当が支給された場合における原告らに対 する本件各手当の支給額は,別紙10ないし12の原告らの「認容額計算書1」の「支給日」欄の各支給日に対応する「家族手当」欄,「住宅手当」欄及び「精勤手当」欄の各金額のとおりであって,その合計額が原告らの各損害と認められる。 原告らの被告に対する,平成27年5月から平成29年10月までに支給 される本件手当等に関する不法行為に基づく損害賠償請求(上記第2の1③ の請求)について平成27年5月から平成29年10月までの間における原告らの基本給,勤務)に照らすと,原告らに対して,無期契約労働者と同様の条件で本件各手当が支給された場合における原告らに対する本件各手当の支給額は,別紙13ないし15の原告らの「認容額計算書2」 の「支給日」欄の各支給日に対応する「住宅手当」欄及び「精勤手当」欄の各金額のとおりであって,その合計額が原告らの各損害と認められる。 5 結論以上の次第で,原告らの請求のうち,原告らの被告に対する,地位確認請求(上記第2の1①の請求)及び平成 25年5月から平成27年4月までの間に支給される本件手当等について,主位的請求である労働契約に基づく賃金請求(上記第2の1②の主位的請求)はいずれも理由がないから棄却し,同期間に支給される本件手当等について,予備的請求である不法行為に基づく損害賠償請求(上記第2の1②予備的請求)は,原告Aにつき,被告に 対し17万2040円及びこれに対する不法行為の日 同期間に支給される本件手当等について,予備的請求である不法行為に基づく損害賠償請求(上記第2の1②予備的請求)は,原告Aにつき,被告に 対し17万2040円及びこれに対する不法行為の日の後である平成27年6月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告Bにつき,被告に対し12万6960円及びこれに対する不法行為の日の後である平成27年6月20日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告Cにつき,被告に対し5万 5330円及びこれに対する不法行為の日の後である平成27年6月20日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれ理由があるから認容し,その余の予備的請求は理由がないから棄却し,平成27年5月から平成29年10月までに支給される本件手当等について,不法行為に基づく損害賠償請求(上記第2の1③の請求)は,原告Aに つき,被告に対し22万1020円及び不法行為の日の後である平成29年 10月26日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告Bにつき,被告に対し7万0570円及びこれに対する不法行為の日の後である平成29年10月26日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告Cにつき,被告に対し5万5050円及びこれに対する不法行為の日の後である平成29年10月26日から支払済み まで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれ理由があるから認容し,その余は棄却することとして,主文のとおり判決する。 松山地方裁判所民事第2部裁判長裁判官久保井恵子 裁判官百瀨 玲 裁判官酒本雄一は,転補のため署名押印でき 主文 こととして,主文のとおり判決する。 理由 松山地方裁判所民事第2部裁判長裁判官久保井恵子 裁判官百瀬玲 裁判官酒本雄一は,転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官久保井恵子
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