主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一原判決を取り消す。 二被控訴人らは、熱海市に対し、連帯して、金13億5733万円及びこれに対する被控訴人日本鋼管株式会社、同三菱重工業株式会社は平成12年11月2日から、同川崎重工業株式会社、同株式会社クボタ、同日立造船株式会社、同住友重機械工業株式会社は平成12年11月3日から、同株式会社タクマは平成12年11月4日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 なお、本判決においても、原則として原判決と同じ略語を用いる。 第二事案の概要一本件事案の概要及び争点についての当事者の主張は、当審における当事者双方の主張を二及び三のとおり加えるほか、原判決「事実及び理由」欄中の「第2 事案の概要」及び「第3 争点に対する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。 二当審における控訴人の主張 1 本件監査請求に対する法第242条第2項の適用の有無本件監査請求については、請求期間の制限に関する法第242条第2項の適用はないと解すべきである。 (一) 本件住民訴訟の前提となった本件監査請求は、被控訴人らの談合によって被害を受けた熱海市が被控訴人らに対する損害賠償請求権を行使しないという、「財産の管理を怠る事実」(法第242条第1項)について申し立てられたものである。 法第242条第1項にいう「怠る事実」のうち、特定の財務会計行為の違法を前提としない、いわゆる「真正怠る事実」については、その性質上、同条第2項の監査請求期間の定めの適用はないものと解され、本件はそれに該当する。 これに対し、原判決は、本件損害賠償請求権が本件請負契約という財務会計行為が違法であることに基づいて発生する、いわゆる「不真正怠る事 査請求期間の定めの適用はないものと解され、本件はそれに該当する。 これに対し、原判決は、本件損害賠償請求権が本件請負契約という財務会計行為が違法であることに基づいて発生する、いわゆる「不真正怠る事実」に関わるものであるから、同条第2項の適用を受けると判示している。 しかしながら、本件請負契約という熱海市の財務会計行為の違法、不当に係る監査請求と、本件損害賠償請求権の行使を怠っているという「怠る事実」に係る監査請求とは、全く別のものであり、表裏の関係にはない。すなわち、(二)(1) 住民訴訟制度は、自治体の長や職員らの任務違反を咎め、その防止、是正を図る制度であり、そのことは、この制度が、地方公共団体の職員の職務上の地位の濫用による不正行為に対する住民による矯正の請求として設けられたという立法趣旨に照らしても明らかである。したがって、法第242条第1項にいう違法な財務会計行為の「違法」とは、「内部関係における違法」、すなわち自治体に対する長や職員らの任務違反を指すものと解される。 (2) 自治体の長や職員らによって違法な財務会計行為が行われた場合、その時点で直ちに住民の是正請求権が成立し、監査請求のための期間が開始されるが、財務会計行為によって自治体に損害が発生したとしても、長や職員らに職務違反行為がない場合には、住民は未だ是正請求権を持つには至らず、監査請求のための期間が開始されるものではないというべきである。自治体内部の者が不正に荷担していないのであれば、それらの是正措置は、第一次的には長や職員らの手で取られるべきことが期待され、直ちに住民に是正請求権を付与する必要性まで認められないからである。 (3) 自治体が発注する工事に関して入札談合が行われると、談合によってつり上げられた落札価格がそのまま自治体の負担とすべき工事代金額を形 民に是正請求権を付与する必要性まで認められないからである。 (3) 自治体が発注する工事に関して入札談合が行われると、談合によってつり上げられた落札価格がそのまま自治体の負担とすべき工事代金額を形成することになり、自治体は、競争価格との差額に相当する損害を被るが、この場合、発注者側は、談合により価格がつり上げられたという事実を認識しつつ、あえてこれを助長ないし容認して契約の締結に踏み切ったという、いわゆる官製談合の場合でない限り、不法行為(詐欺)の被害者にすぎない。 談合による損害賠償請求を怠るという不作為は、長や職員の自治体との内部関係における違法行為に該当するが、談合を経由した契約の締結それ自体は、上記のような官製談合でない限り、長や職員の自治体との内部関係における違法行為に当たらない。 (4) 以上のような、怠る事実に関する監査請求を、契約締結という財務会計行為に関する監査請求と同視することは、両者の同一性の把握を誤っているのみならず、監査請求制度、住民訴訟制度の立法趣旨をも見失っているというべきである。 (三)(1) また、本件請負契約に係る監査請求にあっては、財務会計職員が契約を締結した行為が妥当かどうかを中心に審査がなされることは明らかであり、相手方との間の契約内容や締結の過程に詐欺や談合等の違法があったか否かを審査できるはずはなく、特に、本件のように職員が談合の事実に気付かずに契約締結に至ったような場合は尚更である。 これに反し、本件損害賠償請求権の行使を怠っていることを理由とする監査請求においては、その対象は、談合による具体的な欺罔行為の有無、それと因果関係を有する損害の有無、程度、すなわち談合行為の存在そのものと、それに基づく損害とを中心になされることが明らかである。 (2) したがって、本件監査請求の対象である実 的な欺罔行為の有無、それと因果関係を有する損害の有無、程度、すなわち談合行為の存在そのものと、それに基づく損害とを中心になされることが明らかである。 (2) したがって、本件監査請求の対象である実体法上の請求権は、違法に高額な契約を締結したことに基づくものではなく、地方公共団体に対する詐欺行為に基づく損害賠償請求権にほかならず、賠償責任の主体も要件も異なる。そのため、本件監査請求においては、単に適正価格により契約がなされたか否かが問題にされるものではなく、欺罔行為の存在やそれによる損害が審査されることになる。したがって、監査請求の期間に制限を設けなくとも、法が監査請求期間を設けた趣旨を没却することにはならない。 (四) このように、本件監査請求の対象である請求権は、被控訴人らが談合行為により熱海市を欺罔し、同市をして公正な競争により契約金額が決定されたものと誤信させ、高額な工事代金を支出させたという不法行為に基づく損害賠償請求権であるから、本件監査請求は、「真正怠る事実」についてのものであり、法第242条第2項所定の監査請求期間は適用がないというべきである。 (五) 本件請負契約の締結により熱海市に損害が発生するとしても、そのことから直ちに本件請負契約が違法となるものでないことは、最高裁昭和57年7月13日判決(民集36巻6号970頁。田子の浦ヘドロ住民訴訟判決)に照らしても明らかである。この判決は、外部企業の不法行為により自治体が金員の出捐を余儀なくされた場合、自治体が外部企業に対し損害賠償請求を行わないことが法第242条第1項にいう「怠る事実」に当たるものとして捉えたが、その自治体職員の支出負担行為や支出行為自体を「違法な財務会計行為」とはしていない。このことは、本件のように自治体の職員が積極的に加功しない不法行為に基づく損害賠償請 実」に当たるものとして捉えたが、その自治体職員の支出負担行為や支出行為自体を「違法な財務会計行為」とはしていない。このことは、本件のように自治体の職員が積極的に加功しない不法行為に基づく損害賠償請求権の場合と共通するものである。 2 本件監査請求期間の起算点原判決は、本件監査請求期間の起算点を本件請負契約の締結日である平成8年9月27日と判示する。 しかしながら、本件請負契約の締結時点においては、熱海市及び控訴人が本件損害賠償請求権を行使することは客観的に不可能であり、それが可能になったのは、公正取引委員会が被控訴人らに対し排除勧告を行った平成11年8月13日と解すべきである。現に、熱海市は、この排除勧告を受けて初めて被控訴人らに対し指名停止処分をしている。 3 法第242条第2項但書の「正当な理由」の有無仮に本件監査請求が法第242条第2項所定の申立期間の制限を受け、その期間経過後になされたものであるとしても、そのことについて同項但書の「正当な理由」がある。 (一) 最高裁昭和63年4月22日判決(集民154号57頁。「昭和63年判例」)によると、法第242条第2項但書の「正当な理由」の有無は、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断されるべきものとされている。 ところで、昭和63年判例の事案は財務会計行為(予算外収入を原資として行った予算外支出)が秘密裡になされた場合についてのものであるが、その行為自体が公然となされたとしても、それを違法とする事由が秘密裡になされた場合には、行為が秘密裡になされた場合と同視すべきである。 また、昭和63年判 密裡になされた場合についてのものであるが、その行為自体が公然となされたとしても、それを違法とする事由が秘密裡になされた場合には、行為が秘密裡になされた場合と同視すべきである。 また、昭和63年判例の事案は、違法な財務会計行為が当該自治体の作成した正規の文書の中で特定されているのみならず、それが違法、不当であることについては全く争いのない事情があったものである。 (二) 本件において住民が「当該行為を知ることができた」時期とは、熱海市の一般住民が、本件請負契約に関して被控訴人ら指名業者間の談合が行われた事実を客観的に知ることができた時であり、談合対象工事の特定と談合が存在した事実について認識可能性があった時であることを要するというべきである。 平成10年9月17日、公正取引委員会が、ゴミ焼却施設のメーカー16社に対し、独占禁止法違反の嫌疑により立ち入り検査を行ったことは当時の新聞により報道され、平成11年8月13日、被控訴人らを含む5社に対し、独占禁止法第48条第2項による排除勧告が行われた事実も当時の新聞により報道されたが、その新聞が報じた内容は、「1994年4月から4年半にわたって、全国各地で行われたストーカー炉(全連続、准連続燃焼式)の入札の大部分で談合を繰り返していた」(朝日新聞平成11年8月14日朝刊)等というものであり、「大部分」とはされていたが何ら関係工事を特定するものではなかった。また、被控訴人らは、いずれも公正取引委員会の排除勧告を応諾せず、談合の事実を否認し、現在審判手続においてそれを争っている。 このような状況の下において、監査請求が認容され、被害を受けた自治体が損害賠償請求権を行使しないことが不当であるとされるためには、被審人である被控訴人らの否認を打ち破るに足りる資料が客観的に存在し、かつ、被害者である自治体 て、監査請求が認容され、被害を受けた自治体が損害賠償請求権を行使しないことが不当であるとされるためには、被審人である被控訴人らの否認を打ち破るに足りる資料が客観的に存在し、かつ、被害者である自治体自身において当該資料を利用する見込みがなければならない。 (三) そうすると、熱海市の住民が被控訴人らの談合行為を客観的に知ることができた時とは、被控訴人らに対する審判手続において、審査官の主張を裏付ける資料が証拠として審判廷に提出、採用され、独占禁止法第69条に基づき熱海市がその閲覧謄写を請求することが可能となった平成12年5月17日(第3回審判期日)又は同年6月20日(第4回審判期日)以降と解すべきである。 したがって、本件監査請求(平成12年8月1日申立て)は、被控訴人らの談合行為を知ることができた時から相当な期間内に申し立てられたものというべきであり、本件監査請求の申立ては、法第242条第2項但書の「正当な理由」に基づくものであるとして、適法である。 三当審における被控訴人らの主張 1 被控訴人ら(一) 本件監査請求に対する法第242条第2項の適用の有無について(1) 熱海市の被控訴人らに対する本件損害賠償請求権が成立するためには、本件請負契約の締結という財務会計行為が必要不可欠であるから、本件監査請求がいわゆる「不真正怠る事実」に関するものであることは明らかである。 (2) 住民監査請求制度は、地方公共団体の財務会計職員による違法な公金の支出、財産の管理又は処分等を予防し、あるいはそれらの事後の是正を図り、住民全体の利益を擁護するために設けられたものであって、個々の職員等の責任を追及することを目的とするものではないから、法第242条第1項にいう財務会計行為の違法は、客観的に決せられるべきであり、控訴人の主張するように、自治体に対す られたものであって、個々の職員等の責任を追及することを目的とするものではないから、法第242条第1項にいう財務会計行為の違法は、客観的に決せられるべきであり、控訴人の主張するように、自治体に対する長や職員らの任務違反を指すものと限定的に解することは許されない。 (3) 控訴人の引用する最高裁昭和57年7月13日判決は、本件のような契約締結行為を前提とするものではなく、事実的不法行為により地方公共団体が損害を受けた事案についてのものであるから、本件に妥当するものではない。 (二) 本件監査請求期間の起算時について本件損害賠償請求権は、本件請負契約が締結されたことを前提に発生し、かつ、そのことにより行使することが可能になったものと解されるから、本件監査請求期間の起算時は、原判決判示のとおり、本件請負契約の締結された日である平成8年9月27日と解すべきである。 (三) 法第242条第2項但書の「正当な理由」の有無について(1) 住民監査請求は、住民の立場から地方自治体の財務会計行為に係る疑惑について監査を求めるというものであり、住民自身が監査に当たる訳ではない。住民に期待されるのは、請求の対象である財務会計行為を他の事項と区別して特定認識できる程度に具体的に摘示することによって行う、疑惑の指摘、監査の端緒である。したがって、住民においては、請求の対象である財務会計行為を、監査委員が補充的に調査をすることによって明らかにできる程度に特定し、当該行為が違法である疑いがあると考えるに至った理由とその資料を提出することで足りるものであり、監査請求において具体的な財務会計行為を詳細に特定したり、その違法性を確度の高い証拠をもって立証するまでの必要はない。 そのため、監査請求に際しては、「事実を証する書面」を添えることが求められているが(法第242 具体的な財務会計行為を詳細に特定したり、その違法性を確度の高い証拠をもって立証するまでの必要はない。 そのため、監査請求に際しては、「事実を証する書面」を添えることが求められているが(法第242条第1項)、その書面は、監査請求者が自ら聞知したことを記載した書面、又は単なる新聞の切抜き等でも足りるものとされている(行政実例昭和23年12月25日自発1147号)。 したがって、本件については、独占禁止法の審判事件の資料を収集するまでもなく、新聞の切抜き等を「事実を証明する書面」として添付することにより、監査請求を行うことが可能であったというべきである。 (2) 控訴人が本件について監査請求をすることができた時期は、地方公共団体の発注によるゴミ焼却炉の談合疑惑により公正取引委員会が立ち入り検査を実施したこと及び被控訴人らを含む大手プラントメーカーが地方公共団体発注のゴミ焼却炉の受注をほぼ独占していることについての新聞報道がなされた平成10年9月17日又は18日、ないしは、具体的に本件請負契約に係る工事名、受注業者名、受注金額を挙げて公正取引委員会の排除勧告の見通しについての新聞報道がなされた平成11年8月9日であるというべきである。 2 被控訴人日本鋼管株式会社法第242条第2項但書の「正当な理由」の有無について被控訴人らの談合疑惑については、上記の平成10年9月17日及び18日の新聞報道のほか、同年10月29日にも、大手5社が中心となり昭和55年から18年間にわたり全連続燃焼式ストーカー炉を対象とする談合を継続していた旨の新聞報道がなされている。 したがって、同年10月29日の時点においても、相当な注意力を有する住民は、本件請負契約について談合がなされたことを客観的に知ることができ、本件損害賠償請求権の行使について監査請求を行う ている。 したがって、同年10月29日の時点においても、相当な注意力を有する住民は、本件請負契約について談合がなされたことを客観的に知ることができ、本件損害賠償請求権の行使について監査請求を行うことができたというべきである。 第三当裁判所の判断一当裁判所も、控訴人の本件請求は、適法な監査請求を経ていない不適法なものであり、却下すべきものと判断する。その理由は、当審における控訴人の主張に対する判断として次の二のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第 4 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。 二当審における控訴人の主張について 1 本件監査請求に対する法第242条第2項の適用の有無について(一) 控訴人は、違法、不当な本件請負契約についての監査請求と、本件損害賠償請求権の行使を怠っているという「怠る事実」についての監査請求とは、全く別のものであるとし、その理由として、法第242条第1項にいう違法な財務会計行為の「違法」とは自治体の「内部関係における違法」、すなわち自治体に対する長や職員らの任務違反を指すものと主張する。 しかしながら、法第242条第1項の文理上、そのように限定的に解すべき理由はなく、また、住民監査請求制度の趣旨は、地方公共団体の職員による違法、不当な財務会計上の行為又は怠る事実により地方公共団体が損失を被ることを防止し、住民全体の利益を確保することにあるというべきであるから、法第242条第1項にいう当該職員の財務会計上の行為等に関する「違法」を、控訴人の主張に係る「内部関係の違法」に限定すべき理由はないものと解される。 したがって、控訴人の上記主張は失当であり、これを前提に、本件監査請求に法第242条第2項の適用がないとする控訴人の主張も失当というべきである。 (二) また、控訴人 べき理由はないものと解される。 したがって、控訴人の上記主張は失当であり、これを前提に、本件監査請求に法第242条第2項の適用がないとする控訴人の主張も失当というべきである。 (二) また、控訴人は、本件請負契約に係る監査請求と、本件損害賠償請求権の行使を怠っていることによる監査請求とは、審査の対象が異なるから、全く別個のものであるとも主張する。 しかしながら、本件損害賠償請求権の行使を怠ったことを理由とする監査請求は、本件請負契約の違法、無効の判断を不可欠の前提とするものであり、両者を別個のものと認めることができないことは、前記引用に係る原判決が適切に説示しているとおりである。 したがって、控訴人の上記主張も失当である。 (三) なお、控訴人は、本件請負契約の締結によって熱海市に損害が発生したとしても、そのことから直ちに本件請負契約が違法となるものでないとして、最高裁昭和57年7月13日判決を引用するが、同判決は、本件のような地方公共団体による契約締結行為を介さない、汚水排水者の廃液のたれ流しという事実的不法行為によって発生した損害を回復するための損害賠償請求に係る事案に関するものであるから、談合という不正な入札によって締結された違法な請負契約という財務会計上の行為により発生した損害を回復するための損害賠償請求に係る本件とは事案を異にし、本件における判断を左右するものではない。 2 本件監査請求期間の起算点について本件監査請求期間の起算点を、本件請負契約が締結された日である平成8年9月27日と解することが相当であることは、前記引用に係る原判決の説示するとおりであり、この点についての控訴人の主張も失当である。 3 法第242条第2項但書の「正当な理由」の有無について控訴人は、本件監査請求が法第242条第2項本文の期間経過後に申し立 判決の説示するとおりであり、この点についての控訴人の主張も失当である。 3 法第242条第2項但書の「正当な理由」の有無について控訴人は、本件監査請求が法第242条第2項本文の期間経過後に申し立てられたものであるとしても、控訴人が被控訴人らの談合行為を客観的に知ることができた時とは、被控訴人に対する独占禁止法の審判手続において談合行為の資料が提出され、その閲覧謄写が可能となった平成12年5月17日又は同年6月20日以降と解すべきであるとし、本件監査請求は、被控訴人らの談合行為を知ることができた時から相当な期間内に申し立てられたものであるから、法第242条第2項但書の「正当な理由」があると主張する。 しかしながら、法第242条第1項における監査請求は、対象事実を解明するだけの資料の添付を要するものではなく、監査委員による監査が可能な程度の資料を提出することで足り、新聞記事だけでも必ずしも不十分とはいえないと認められるから、上記の「正当な理由」を判断するに当たり、控訴人主張の時期をもって、控訴人が被控訴人らの談合行為を知った時と認めることは相当でない。 そして、前記引用に係る原判決の認定事実、殊に、控訴人が、昭和50年4月から連続7期にわたって熱海市の市会議員を務め、その間、熱海市議会副議長、同議長を務め、更に、平成7年5月から平成8年7月まで熱海市の監査委員(議会選出)を務めた者であり、平成10年10月9日には、市議会において、同議会議員として、本件請負契約について談合の疑いがある旨を指摘し、熱海市当局に対し、その認識と対処方法についての質問を行ったという事実に照らすと、原判決の判示するとおり、控訴人は、遅くとも平成11年8月9日までには、監査請求が可能な程度に被控訴人らの談合の事実を知ったものと認めるのが相当である。 そうする 質問を行ったという事実に照らすと、原判決の判示するとおり、控訴人は、遅くとも平成11年8月9日までには、監査請求が可能な程度に被控訴人らの談合の事実を知ったものと認めるのが相当である。 そうすると、本件監査請求はその約1年後(平成12年8月1日)に申し立てられたことに照らすと、控訴人が、監査請求期間を徒過したことについて、「正当な理由」があるとは到底認め難い。 以上によれば、控訴人の上記主張も失当というべきである。 第四結論よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第67条第1項、第61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官魚住庸夫裁判官濱野惺裁判官持本健司
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