平成25年11月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(行ケ)第10053号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年10月17日判決原告スウェマックオルトパエディクスアクチボラゲット訴訟代理人弁理士板谷康夫同板谷真之被告特許庁長官指定代理人蓮井雅之同横林秀治郎同氏原康宏同山田和彦 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2011-12814号事件について平成24年10月15日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 原告は,発明の名称を「関節補綴具及びその補綴部材のためのネジ用工具の使用」とする発明について,平成18年(2006年)2月13日(優先権主張日平成17年(2005年)2月16日,優先権主張国スウェーデン)を国際出願日とする特許出願(特願2007-555056号。以下「本願」という。)をした。原告は,平成22年5月10日 -権主張日平成17年(2005年)2月16日,優先権主張国スウェーデン)を国際出願日とする特許出願(特願2007-555056号。以下「本願」という。)をした。 原告は,平成22年5月10日付けの拒絶理由通知を受けたため,同年8月18日付けで本願の願書に添付した特許請求の範囲を変更する手続補正(甲8)をしたが,平成23年2月10日付けの拒絶査定を受けた。 原告は,同年6月15日,拒絶査定不服審判を請求するとともに,同日付けで特許請求の範囲を変更する手続補正(甲12。以下「本件補正」という。)をした。 (2) 特許庁は,上記請求を不服2011-12814号事件として審理を行い,平成24年10月15日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同月30日,その謄本が原告に送達された。 (3) 原告は,平成25年2月27日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件補正前のもの本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成22年8月18日付け手続補正による補正後のもの)の記載は,次のとおりである(甲8。以下,同請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 「【請求項1】関節(38)の異なる骨(39;41,42)に配置されるように適応された2つの補綴部材(2,3)を備え,各補綴部材(2,3)は,前記骨(39;41,42)の夫々にネジ止めされるように適応された第1及び第2のネジ状部材(4,5)を含み,一方の補綴部材(2)はソケット部を有するソケット部材(6)を,他方- 3 -の補綴部材(3)はヘッド部を有するヘッド部材(7)を含み,前記ソケット部材(6)は,該ソケット部材(6)を配置又は位置づけするために はソケット部を有するソケット部材(6)を,他方- 3 -の補綴部材(3)はヘッド部を有するヘッド部材(7)を含み,前記ソケット部材(6)は,該ソケット部材(6)を配置又は位置づけするために前記第1のネジ状部材(4)の第1穴(10)に挿入可能な装着ピン(22)を有し,前記ヘッド部材(7)は,該ヘッド部材(7)を配置又は位置づけするために前記第2のネジ状部材(5)の第1穴(11)に挿入可能な装着ピン(27)を有する関節補綴具であって,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)には,前記骨(39;41,42)の夫々に,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)をネジ止めするためにネジ用工具(32)のロッド(31)を挿入可能となるように設計された少なくとも1つの内部第2穴(夫々30及び33)があり,前記第2穴(夫々30及び33)は,前記第1穴(夫々10及び11)の底部(夫々17及び19)に備えられ,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)は,前記骨(39;41,42)の夫々に取り付けられる誘導線(43)上に,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)の夫々が装着されるようにするため,軸方向に伸びる貫通孔(夫々36及び37)が,前記第2穴(夫々30及び33)の底部に備えられていることを特徴とする関節補綴具。」(2) 本件補正後のもの本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(甲12。以下,同請求項1に係る発明を「本願補正発明」という。なお,下線部は,本件補正による補正箇所である。)。 「【請求項1】関節(38)の異なる骨(39;41,42)に配置されるように適応された2つの補綴部材(2,3)を備え,各補綴部材(2,3)は,前記骨(39;41,42)の夫々にネジ止め- 4 -されるように適 (38)の異なる骨(39;41,42)に配置されるように適応された2つの補綴部材(2,3)を備え,各補綴部材(2,3)は,前記骨(39;41,42)の夫々にネジ止め- 4 -されるように適応された第1及び第2のネジ状部材(4,5)を含み,一方の補綴部材(2)はソケット部を有するソケット部材(6)を,他方の補綴部材(3)はヘッド部を有するヘッド部材(7)を含み,前記ソケット部材(6)は,該ソケット部材(6)を配置又は位置づけするために前記第1のネジ状部材(4)の第1穴(10)に挿入可能な装着ピン(22)を有し,前記ヘッド部材(7)は,該ヘッド部材(7)を配置又は位置づけするために前記第2のネジ状部材(5)の第1穴(11)に挿入可能な装着ピン(27)を有する関節補綴具であって,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)には,前記骨(39;41,42)の夫々に,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)をネジ止めするためにネジ用工具(32)のロッド(31)を挿入可能となるように設計された少なくとも1つの内部第2穴(夫々30及び33)があり,前記第2穴(夫々30及び33)は,前記第1穴(夫々10及び11)の底部(夫々17及び19)に備えられ,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)は,前記骨(39;41,42)の夫々に取り付けられる誘導線(43)上に,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)の夫々が装着されるようにするため,軸方向に伸びる貫通孔(夫々36及び37)が,前記第2穴(夫々30及び33)の底部に備えられ,外面的な円錐形状を有すると共に,外部ネジ山(夫々34及び35)を更に備え,夫々,外部ネジ山(夫々34及び45)を,いくつかのネジ山セクションに分割するため,第1及び第2のネジ状部材(4,5)の夫々の軸方向 錐形状を有すると共に,外部ネジ山(夫々34及び35)を更に備え,夫々,外部ネジ山(夫々34及び45)を,いくつかのネジ山セクションに分割するため,第1及び第2のネジ状部材(4,5)の夫々の軸方向に伸びる延伸部(4a,5a)にはネジ山を有していないことを特徴とする関節補綴具。」 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,- 5 -本願補正発明は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である米国特許第5,147,386号明細書(甲4・訳文乙1。以下「引用例1」という。)に記載された発明,特表平5-509006号公報(甲5。以下「引用例2」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない(すなわち,独立特許要件を欠く)ものであるとして,本件補正を却下した上,本願発明も,同様に,引用例1に記載された発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができず,本願は拒絶すべきものであるというものである。 (2) 本件審決が認定した引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。),本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明「中手骨と指骨に配置されるように適応された第1補綴部材(11,19)と第2補綴部材(13,17)を備え,各補綴部材は,前記骨の夫々にネジ止めされるように適応された中手骨体11及び指骨体13を含み,第2補綴部材(13,17)はソケット27を有するヒンジステム17を,第1補綴部材(11,19)はボールエンド21を有する 夫々にネジ止めされるように適応された中手骨体11及び指骨体13を含み,第2補綴部材(13,17)はソケット27を有するヒンジステム17を,第1補綴部材(11,19)はボールエンド21を有するヒンジ体19を含み,前記ヒンジステム17は,該ヒンジステム17を配置又は位置づけするために前記指骨体13の収容室38に挿入可能な伸長部分23を有し,前記ヒンジ体19は,該ボールエンド21を配置又は位置づけするために前記中手骨体11の収容室35に挿入可能な伸長部分33を有する補綴装置であって,- 6 -前記中手骨体11及び指骨体13は,外面的な円錐形状を有すると共に,ネジ山部分(45,47)を更に備える補綴装置。」イ本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点(ア) 一致点「関節(38)の異なる骨(39;41,42)に配置されるように適応された2つの補綴部材(2,3)を備え,各補綴部材(2,3)は,前記骨(39;41,42)の夫々にネジ止めされるように適応された第1及び第2のネジ状部材(4,5)を含み,一方の補綴部材(2)はソケット部を有するソケット部材(6)を,他方の補綴部材(3)はヘッド部を有するヘッド部材(7)を含み,前記ソケット部材(6)は,該ソケット部材(6)を配置又は位置づけするために前記第1のネジ状部材(4)の第1穴(10)に挿入可能な装着ピン(22)を有し,前記ヘッド部材(7)は,該ヘッド部材(7)を配置又は位置づけするために前記第2のネジ状部材(5)の第1穴(11)に挿入可能な装着ピン(27)を有する関節補綴具であって,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)は,外面的な円錐形状を有すると共に,外部ネジ山(夫々34及び35)を更に備える関節補綴具。」である点。 (イ) 相違点 )を有する関節補綴具であって,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)は,外面的な円錐形状を有すると共に,外部ネジ山(夫々34及び35)を更に備える関節補綴具。」である点。 (イ) 相違点(相違点1)本願補正発明は,第1及び第2のネジ状部材(4,5)には,骨(39;41,42)の夫々に,第1及び第2のネジ状部材(4,5)をネジ止めするためにネジ用工具(32)のロッド(31)を挿入可能となるように設計された少なくとも1つの内部第2穴(夫々30及び33)があり,- 7 -第2穴(夫々30及び33)は,第1穴(夫々10及び11)の底部(夫々17及び19)に備えられるのに対し,引用発明は,そのような発明特定事項を有しているかはっきりしない点。 (相違点2)本願補正発明は,第1及び第2のネジ状部材(4,5)は,骨(39;41,42)の夫々に取り付けられる誘導線(43)上に,前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)の夫々が装着されるようにするため,軸方向に伸びる貫通孔(夫々36及び37)が,前記第2穴(夫々30及び33)の底部に備えられているのに対し,引用発明は,そのような発明特定事項を備えていない点。 (相違点3)本願補正発明は,夫々,外部ネジ山(夫々34及び45)を,いくつかのネジ山セクションに分割するため,第1及び第2のネジ状部材(4,5)の夫々の軸方向に伸びる延伸部(4a,5a)にはネジ山を有していないのに対し,引用発明は,そのような発明特定事項を備えていない点。 第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り)本件審決は,引用発明の「中手骨体11及び指骨体13」は,「外面的な円錐形状を有する」とした上で,本願補正発明と引用発明とは,「第 1) 取消事由1(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り)本件審決は,引用発明の「中手骨体11及び指骨体13」は,「外面的な円錐形状を有する」とした上で,本願補正発明と引用発明とは,「第1及び第2のネジ状部材(4,5)は,外面的な円錐形状を有する」点で一致する旨認定した。 しかしながら,本願の願書に添付した明細書(甲2。以下,図面(別紙1参照)を含めて「本願明細書」という。)には,引用例1を先行文献として挙げ,従来の2つのネジ状部材を有する関節補綴具には「近接する組織を傷- 8 -つける虞がある尖った縁部」を有する点に問題があり,この問題を解決するために,本願補正発明は,「補綴具のネジ状部材は,ソケット及びヘッド部材のそれぞれが穴を有し,特に,ネジ用工具用に設計された内部穴が備えられているので,問題のある骨にネジ状部材をネジ止めにより装着するため,ネジ用工具を穴に挿入することができ,また,尖った縁部を有する外部溝が損傷を与えうることを回避できる」ようにした旨の記載があることからすると,本願補正発明における「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」とは,「損傷を与えうる尖った縁部」の構成を有しないものに限定されると解すべきである。 しかるところ,引用例1の中手骨体11と指骨体13は,部分的な円錐形状を有してはいるものの,リップ39及びチャンネル47を備えており(別紙2のFIG.1ないし9),このリップ39及びチャンネル47は,外方に突出した構成を有し,この突出した構成によりインプラント時等に「近接する組織を傷つける虞」があり,「損傷を与えうる尖った縁部」であるといえるから,中手骨体11と指骨体13は本願補正発明にいう「外面的な円錐形状」を有するものに当たらない。 したがって,本件審決の上記一致 を傷つける虞」があり,「損傷を与えうる尖った縁部」であるといえるから,中手骨体11と指骨体13は本願補正発明にいう「外面的な円錐形状」を有するものに当たらない。 したがって,本件審決の上記一致点の認定は誤りである。 (2) 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り)本件審決は,相違点1について,引用例2には,「関節に適用される人工器官において,軸部には人工器官を非ねじ込み状態で取り外すためのアレンキー(ネジ用工具)が装着される6角状部が付加されている人工器官。」が記載されており,引用例2に記載された発明と引用発明は補綴の分野で共通するので,引用例2に記載された発明を引用発明に適用することは当業者が容易になし得る事項にすぎず,その際に,ネジ用工具のための第2穴(夫々30及び33)を,第1穴(夫々10及び11)の底部(夫々17及び19)に備えられるようにする程度のことは,当業者が適宜なし得る事項にすぎな- 9 -い旨判断した。 しかしながら,発明は,従来技術における課題を解決する手段であるから,引用刊行物から特許発明を容易に想到できたか否かは,引用刊行物において課題の共通性が見いだされるべきであり,技術分野が共通であっても,課題の共通性がなければ,それらを適用して発明を成すための動機付けとして十分であるとはいえない。 しかるところ,引用例2記載の人工器官における6角状部30は,軸部21に夫々付加された構成であり(別紙3のFIG.7),軸部21に設けられたねじ部25による挿入及び軸方向の引き戻しを可能とする際に用いられる。他方で,引用例1記載の関節補綴具には,引用例2のねじ部25に相当する構成は存在しないから,引用例1と引用例2には,課題の共通性はない。 なお,引用例1の中手骨体11及び指骨体13は,セルフタッピングス 方で,引用例1記載の関節補綴具には,引用例2のねじ部25に相当する構成は存在しないから,引用例1と引用例2には,課題の共通性はない。 なお,引用例1の中手骨体11及び指骨体13は,セルフタッピングスレッド45を備えているが,このセルフタッピングスレッド45は接続端部側の一部にしか形成されておらず,先細り部の大部分には存在しないことからすると,引用例1記載の関節補綴具においては,骨には,予めドリルを用いて装着穴が形成され,この装着穴に中手骨体11及び指骨体13が嵌め入れられており,セルフタッピングスレッド45は,骨にねじむために設けられているのではなく,中手骨体11及び指骨体13が骨から抜けないように骨に結合させるためだけのネジとして機能するにすぎないものといえる。 また,引用例1には,引用例1記載の関節補綴具に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用することについての示唆はなく,これを適用する動機付けは存在しない。かえって,引用例1記載の関節補綴具においては,本願補正発明の第1穴に相当する中手骨体11の収容室35は,中手骨体11の奥深くまで形成されており(別紙2のFIG.6,7),この収容室35の更に深い位置に6角状部を設けるとすれば,中手骨体11の先端の強度は極めて低下するので,現実にそのような適用がされるとは考え難い。もっとも,- 10 -指骨体13の収容室38は,比較的浅く形成されているので,6角状部を設けることが不可能とはいえないものの,収容室38に6角状部を設けた場合には,一方の指骨体13にのみ6角状部を設け,他方の中手骨体11には6角状部を設けないことになり,不合理となる。 したがって,引用例1記載の関節補綴具に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用して相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易にな には6角状部を設けないことになり,不合理となる。 したがって,引用例1記載の関節補綴具に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用して相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから,本件審決の上記判断は誤りである。 (3) 取消事由3(相違点2の容易想到性の判断の誤り)本件審決は,相違点2について,骨の夫々に取り付けられる誘導線上に,ネジ状部材が装着されるようにするため,ネジ部材に軸方向に伸びる貫通孔を設ける点は,骨の補綴の技術分野で本願の優先権主張日前の周知の技術(例えば,甲6等)にすぎず,上記周知技術を引用発明に適用して,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは,当業者が必要に応じてなし得た事項にすぎない旨判断した。 しかしながら,前記(2)のとおり,引用例1記載の関節補綴具においては,骨には,予めドリルを用いて装着穴が形成され,この装着穴に中手骨体11及び指骨体13が嵌め入れられており,セルフタッピングスレッド45は,骨にねじむために設けられているのではなく,中手骨体11及び指骨体13が骨から抜けないように骨に結合させるためだけのネジとして機能する。 そうすると,引用例1記載の関節補綴具において,ガイドワイヤ(誘導線)等が必要になるのは,予めドリルを用いて骨に装着穴を形成する段階であり,セルフタッピングスレッド45で手骨体11及び指骨体13を骨に結合させる段階では,もはや誘導線は必要なく,中手骨体11及び指骨体13に誘導線のための貫通孔を設ける必要性もないから,骨の夫々取り付けられる誘導線上に,中手骨体11及び指骨体13が装着されるようにするため,中手骨- 11 -体11及び指骨体13に軸方向に伸びる貫通孔を設ける構成(上記周知技術の構成)を適用 ら,骨の夫々取り付けられる誘導線上に,中手骨体11及び指骨体13が装着されるようにするため,中手骨- 11 -体11及び指骨体13に軸方向に伸びる貫通孔を設ける構成(上記周知技術の構成)を適用する動機付けは存在しない。 したがって,引用例1記載の関節補綴具に上記周知技術を適用して相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから,本件審決の上記判断は誤りである。 (4) まとめ以上のとおり,本件審決には,本願補正発明と引用発明との一致点の認定,相違点1及び2の容易想到性の判断の誤りがあり,その結果,本願補正発明が引用発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとして,独立特許要件を欠くことを理由に本件補正を却下した判断の誤りがある。 したがって,本件審決は,違法であるから,取り消されるべきである。 2 被告の主張(1) 取消事由1に対し原告は,引用発明の中手骨体11及び指骨体13が「外面的に円錐形状」に当たらない理由として,中手骨体11及び指骨体13がリップ39,チャンネル47といった外方に突出した構成を備えていることを指摘する。 しかしながら,本願明細書(甲2)には,第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々外部ネジ山34及び35が備えられることが記載されており(段落【0015】),外部ネジ山34,35は,図2,図4及び本件出願の優先権主張日当時の技術常識に照らして,外方に突出して設けられていると理解することができる。そうすると,本願補正発明の「前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」は,完全な円錐形状を示すもののみを指すのではなく,部分的な円錐形状を有するものを含み,外部ネジ山34,35のような外 本願補正発明の「前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」は,完全な円錐形状を示すもののみを指すのではなく,部分的な円錐形状を有するものを含み,外部ネジ山34,35のような外方に突出した構成を具備するものを排除するものではないと解すべきである。 - 12 -また,引用例1(甲4)には,リップ39に関し,9欄の請求項11に「前記中手骨本体はさらに,前記ヒンジ本体の前記平坦な表面に当接し,その最も広い端に円形の縁を特定することを特徴とする,請求項10に記載の人工関節デバイス。」(訳文(乙1)10頁)との記載があるように,リップ39は,引用例1の中手骨体11における必須の構成ではなく,任意的付加構成であり,本件審決における引用発明の認定においても,かかる構成を特定していない。 さらに,引用例1のチャンネル47は,ネジ山部45(セルフタッピングスレッド45)に形成されているが,上記のとおり,本願補正発明の「前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」は,ネジ山を具備するものを排除するものではない。 以上によれば,原告が指摘する点は,引用発明の中手骨体11及び指骨体13が「外面的に円錐形状」に当たらないことの根拠となるものではないから,本願補正発明と引用発明とは「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」が「外面的な円錐形状を有する」点で一致するとした本件審決の認定に誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。 (2) 取消事由2に対しアセルフタッピングとは,ねじ込むことで自ら雌ねじを切ること,又はその機能をもつことを意味する(乙2ないし4)。引用発明のセルフタッピングスレッド45は骨へのねじ込みを目的として形成されており,セルフタッピングスレッド45を有する中手骨体11及び指骨体13は骨 その機能をもつことを意味する(乙2ないし4)。引用発明のセルフタッピングスレッド45は骨へのねじ込みを目的として形成されており,セルフタッピングスレッド45を有する中手骨体11及び指骨体13は骨にねじ込まれるものである。一方で,引用例2の「図6には,この発明の実施例である大腿骨人工器官20の分解図が示されている。人工器官20は,軸部21…から構成されている。…軸部が既に説明した位置にねじ込まれたとき,ネジ部24及び25のそれぞれヘリカルねじは,骨の骨髄腔の壁面に対して応力を及ぼす。」(5頁左上欄13行~20行)との記載によれ- 13 -ば,引用例2のねじ部24及び25は骨へのねじ込みを目的とすることは明らかであるから,引用例2の人工器官20は骨にねじ込まれるものである。 したがって,引用発明の中手骨体11及び指骨体13と引用例2の人工器官20とは,関節の置き換えに利用される関節補綴具であるとともに,骨にねじ込まれる点において機能面で共通する。 また,引用発明の中手骨体11及び指骨体13には,それぞれヒンジ体19の伸長部分33及びヒンジステム17の伸長部分23を装着する収容室35及び38が設けられており,一方で,引用例2の人工器官20においても,その軸部21には,肘部22のオス状部29を装着するメス状凹み28が設けられているから,引用発明の中手骨体11及び指骨体13と引用例2の人工器官20とは,骨にねじ込まれる一方の部材には,他方の装着ピンが挿入される第1穴が設けられている点においても構造面で共通する。 以上によれば,引用発明の中手骨体11及び指骨体13と引用例2の人工器官20とは,技術分野,その機能及び構造において共通するから,当業者が引用発明に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用する動機付けは十分存在するものと の中手骨体11及び指骨体13と引用例2の人工器官20とは,技術分野,その機能及び構造において共通するから,当業者が引用発明に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用する動機付けは十分存在するものといえる。 イ原告は,この点に関し,引用発明の中手骨体11の収容室35は奥深くまで形成されており,この収容室35の更に深い位置に6角状部を設けるとすれば,中手骨体11の先端の強度が極めて低下するので,引用発明に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用することは考え難い旨主張する。 しかしながら,引用発明の中手骨体11の収納室35は,ヒンジ体19の伸長部分33の装着を目的として形成されるものであり,収納室35と伸長部分33とは相補的な形状として構成されれば足りるから,原告が指摘するような収納室35を中手骨体11の奥深くにまで形成されなければ- 14 -ならないとする理由はない。また,収容室35においても,指骨体13の収容室38と同様に,6角状部を設ける構成を採用することを妨げる理由はない。 したがって,原告の上記主張は,失当である。 ウ以上によれば,当業者は,引用発明に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用することを容易に想到し得たものといえるから,本件審決における相違点1の容易想到性の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。 (3) 取消事由3に対しア(ア) 本願明細書の段落【0018】,【0020】ないし【0024】の記載によれば,本願補正発明の第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々中心線CL1及びCL2を中心とする軸貫通孔36,37を有するものであって,各ネジ状部材4,5が各骨にネジ止めにより位置づけ又は設置されるときに,軸貫通孔36,37は,各骨に備えられた誘導線43上で誘導されるのであるから,第1及び第2 通孔36,37を有するものであって,各ネジ状部材4,5が各骨にネジ止めにより位置づけ又は設置されるときに,軸貫通孔36,37は,各骨に備えられた誘導線43上で誘導されるのであるから,第1及び第2のネジ状部材4,5に貫通孔36,37を設けることの技術的意義は,第1及び第2のネジ状部材4,5の装着(ネジ止め)を,より容易に,そして確実(正確)に行うことにあることを理解することができる。 一方で,本件審決が認定した周知技術は,骨の夫々に取り付けられる誘導線上に,ネジ状部材が装着されるようにするため,ネジ部材に軸方向に伸びる貫通孔を設けることであり,かかる周知技術も,本願補正発明の貫通孔36,37と同様に,ネジ状部材4,5の装着(ネジ込み)を,より容易に,そして確実(正確)に行うことにその技術的意義がある。このような貫通孔を設けることは,当業者が任意付加的に採用し得る技術にすぎず,このことは,本件出願の優先権主張日当時の技術常識(乙3ないし6)である。 - 15 -(イ) 引用例1の7欄65行ないし66行に「この関節は,耐久性があり,正常な指の動きを可能にする。」(訳文(乙1)8頁)との記載があるように,引用発明は,「正常な指の動き」を可能にするためのものであるから,引用発明の中手骨体11と指骨体13は,骨の所定位置に「正確」に配置されなければならないことは明らかである。 そうすると,引用発明において,中手骨体11及び指骨体13をより容易に,そして確実(正確)に装着(ネジ込み)すべき課題は内在するものといえるから,骨へのネジの導入・整合をより容易に,そして正確にするために,中手骨体11と指骨体13に,本件審決認定の周知技術(前記(ア))を採用することは,当業者にとって困難なことではない。 イ原告は,この点に関し,引用例1に接 をより容易に,そして正確にするために,中手骨体11と指骨体13に,本件審決認定の周知技術(前記(ア))を採用することは,当業者にとって困難なことではない。 イ原告は,この点に関し,引用例1に接した当業者は,引用発明においては,セルフタッピングスレッド45は,骨にねじむために設けられているのではなく,中手骨体11及び指骨体13が骨から抜けないように骨に結合させるためだけのネジとして機能し,また,骨には,予めドリルを用いて装着穴が形成され,この装着穴に中手骨体11及び指骨体13が嵌め入れられており,中手骨体11及び指骨体13を骨にねじ込む際に貫通孔を設ける必要性はないものと理解するから,引用発明に本件審決認定の周知技術を適用する動機付けはない旨主張する。 しかしながら,前記(2)アのとおり,引用発明のセルフタッピングスレッド45は,骨へのねじ込みを目的として形成されており,中手骨体11及び指骨体13が骨から抜けないように骨に結合させるためだけのネジとして機能しているものではない。また,「貫通孔」は,ネジ状部材の装着(ネジ込み)を,より容易に,そして確実(正確)に行うことを目的とするものであるから,セルフタッピングスレッド45を備えた,引用発明の中手骨体11及び指骨体13に貫通孔を設ける必要性がないとはいえない。 なお,乙3の段落【0010】及び【0011】,乙4の段落【0006- 16 -】には,セルフタッピングネジに貫通孔を設けることが記載ないし示唆されている。 したがって,原告の上記主張は,失当である。 ウ以上によれば,当業者は,引用発明に本件審決認定の周知技術を適用することを容易に想到し得たものといえるから,本件審決における相違点2の容易想到性の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由3は理由がない。 (4) まとめ 者は,引用発明に本件審決認定の周知技術を適用することを容易に想到し得たものといえるから,本件審決における相違点2の容易想到性の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由3は理由がない。 (4) まとめ以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本願補正発明が独立特許要件を欠くとして本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り)について(1) 本願明細書の記載事項等についてア本願補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の請求項1)の記載は,前記第2の2(2)のとおりである。 イ本願明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし12については,別紙1を参照)。 (ア) 「【技術分野】本発明は,関節補綴具に関するものであり,関節の異なった骨に配置されるように適合された2つの補綴部材を備え,互いの補綴部材は,それぞれ第1及び第2のネジ状部材を含み,夫々が骨の内部にねじ込まれるように適応される。一方の補綴部材はソケットを有する部材を含み,他方の補綴部材はヘッド部を有する部材を含む。ソケット部材は,ソケット部材の配置又は位置づけのために,第1のネジ状部材の第1穴に挿- 17 -入可能な装着ピンを有し,ヘッド部材は,上記ヘッド部材の配置又は位置決めのために,第2のネジ状部材の第1穴に挿入可能な装着ピンを有する。また,本発明は,関節補綴具の位置づけ部材のためのネジ用工具に関する。」(段落【0001】)(イ) 「【背景技術】米国特許文献514738 のネジ状部材の第1穴に挿入可能な装着ピンを有する。また,本発明は,関節補綴具の位置づけ部材のためのネジ用工具に関する。」(段落【0001】)(イ) 「【背景技術】米国特許文献5147386において,補綴具によって連結された夫々の骨に装着又は取り付けられる2つのネジ状部材を有する関節補綴具が記述されている。このジョイントは,ソケット部及びヘッド部から成り,ヘッド部材の末端が,圧接によってネジ状部材の一つに装着される。 その外部末端の表面には,ネジ止めによってネジ状部材を固定するために,ネジ用工具用のネジ溝があるが,このネジ溝は,近接する組織を傷つける虞がある尖った縁部を形成するものであり,当然ながらこれは全く不適当である。」(段落【0002】)(ウ) 「【発明が解決しようとする課題】本発明は,補綴部材のネジ状部材が,尖った縁部を画定する外部ネジ溝を有するという問題を解消することを目的とする。これは,主に上記の請求項1の特徴によりもたらされる補綴具によって達成される。」(段落【0003】)(エ) 「【課題を解決するための手段】補綴具のネジ状部材は,ソケット及びヘッド部材のそれぞれが穴を有し,特に,ネジ用工具用に設計された内部穴が備えられているので,問題のある骨にネジ状部材をネジ止めにより装着するため,ネジ用工具を穴に挿入することができ,また,尖った縁部を有する外部溝が損傷を与えうることを回避できる。ネジ用工具のための穴は内部穴であるので,補綴具のソケット及びヘッド部材が取り付けられるときは,これらによって完全に覆われる。」(段落【0004】)- 18 -(オ) 「【発明を実施するための最良の形態】図面に示される手首補綴具1は,第1の補綴部材2及び第2の補綴部材3を備える。第1の補綴部材2は第1のネジ状 。」(段落【0004】)- 18 -(オ) 「【発明を実施するための最良の形態】図面に示される手首補綴具1は,第1の補綴部材2及び第2の補綴部材3を備える。第1の補綴部材2は第1のネジ状部材4を,第2の補綴部材3は第2のネジ状部材5を含む。第1の補綴部材2はソケット部を有する部材6を,第2の補綴部材3は,ヘッド部を有する部材7を更に含む。第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々,装着部8及び9を有し,後述する実施形態において,それらは夫々第1穴10及び11を備える。第1のネジ状部材4の第1穴10は,第1の末端縁部12において凹状になるように延伸され,上記部材4は,第1の末端縁部12において上記部材4の第2の末端縁部13に向けての軸方向における最大直径を有し,第2の末端縁部13において部材4の最小直径を有する。好ましくは,第1穴10は,部材4の軸方向に延びる幾何学的中心線CL1を中心とする。」(段落【0005】),「第2のネジ状部材5の第1穴11は,第1の末端縁部14において凹状になるように延伸され,上記部材5は,第1の末端縁部14において上記部材5の第2の末端縁部15に向けての軸方向における最大直径を有し,第2の末端縁部15において部材5の最小直径を有する。第1穴11は,部材5の軸方向に延びる幾何学的中心線CL2を中心とする。」(段落【0006】),「ソケット部材7(判決注・「ソケット部材6」の誤り)は,凹状の関節面21を画定するソケット部20を有する。ソケット部20の外側部から,装着ピン22が軸方向に伸びる。装着ピン22は,末端縁部23に向けて円錐形状に先細りになる軸外側部24を有する。…ヘッド部材7は,実質的に球形のヘッド部25を有し,これは,ソケット部材20(判決注・「ソケット部20」の誤り)の関節面21に適合する 縁部23に向けて円錐形状に先細りになる軸外側部24を有する。…ヘッド部材7は,実質的に球形のヘッド部25を有し,これは,ソケット部材20(判決注・「ソケット部20」の誤り)の関節面21に適合する形状の凸状の関節面26を形成するので,上記関節面21,26は,互いに滑ることにより関節を屈曲させる。装着ピン27は,ヘッド部25から軸- 19 -方向に突き出し,また,この装着ピン27は,末端縁部28に向けて軸方向に先細りになる外側部29を有する。」(段落【0009】,【0010】),「第1のネジ状部材4は,少なくとも1つの第2穴30を有し,この穴30は,問題の骨に第1のネジ状部材4を固定するため,ネジ用工具32のロッド31,例えば,ネジドライバを挿入可能となるように設計される。第2のネジ状部材5は,少なくとも1つの第2穴33を有し,この穴33は,問題の骨に第2のネジ状部材5を固定するため,ネジ用工具32のロッド31を挿入可能となるように設計される。」(段落【0011】)(カ) 「図2及び図4に示されるように,第2穴30及び33は,例えば,夫々第1穴10,11の底部17及び19に位置づけられる。」(段落【0013】),「第2穴30及び33は,好ましくは,第1穴10及び11と同様に,夫々中心線CL1,CL2を中心とする。更に,第2穴30及び33は,例えば,六角形又はそれに類する多角形穴のような,非円形の穴である。もちろん,ネジ用工具32のロッド31は,第2穴30及び33の形状に夫々適応されているので,夫々の骨の中に上記のネジ状部材をネジ止めするため,ネジ用工具32を回転することにより,ネジ状部材4,5の夫々を回転することができる。」(段落【0014】),「第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々の外側部において,第1の末端縁部12及び るため,ネジ用工具32を回転することにより,ネジ状部材4,5の夫々を回転することができる。」(段落【0014】),「第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々の外側部において,第1の末端縁部12及び14から,第2末端縁部13及び15に向かう方向に円錐形状に先細りになる。円錐形状は,必ずしも必須ではないが,好ましくは,上記の第1及び第2の末端縁部12,14及び13,15の全てにおいて用いられる。また,第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々外部ネジ山34及び35が備えられ,それらは好ましくは先細りになる。」(段落【0015】),「第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々外部ネジ山34及び45を,いくつかの,例えば4つのネジ山セク- 20 -ションに分割するため,第1及び第2のネジ状部材4,5の夫々の軸方向に伸びる延伸部4a,5aにはネジ山を有していない。」(段落【0017】),「第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々中心線CL1及びCL2を中心とする軸貫通孔36及び37を有し,上記部材が夫々の骨にネジ止めされるとき,これらの軸貫通孔は,夫々の骨に備えられ,第1及び第2のネジ状部材4,5を誘導する誘導線43上で,上記部材4及び5が装着されるようにする。」(段落【0018】)(キ) 「図示される手首補綴部は,手首38に位置づけられる。腕及び手にある骨は,図1において破線で概略的に示されており,これらの骨には,腕の橈骨39や,例えば小頭骨41のような1つ又はそれ以上の手根40における骨,及び,例えば中手における中手骨IIIのような1つの中手骨42がある。図面から明らかなように,第1のネジ状部材4は橈骨39にネジ止めされ,そのため,この部材4は,第2のネジ状部材5よりも短いが太く作成され,第2のネジ状部材5の第1穴11よりも大きな第1穴10 ある。図面から明らかなように,第1のネジ状部材4は橈骨39にネジ止めされ,そのため,この部材4は,第2のネジ状部材5よりも短いが太く作成され,第2のネジ状部材5の第1穴11よりも大きな第1穴10を有する。第2のネジ状部材5は,図示される手首38において,小頭骨41及び中手骨42にネジ止めされることにより固定される。」(段落【0019】),「図8乃至図12において,第1及び第2のネジ状部材4,5が,どのように各骨39,41及び42に位置づけ又は設置されるかの例を示す。」(段落【0020】),「図8に示されるように,ドリル44に取り付けられる誘導線43は,小頭骨41を通って,中手骨42の中に突き通される。そして,誘導線43を残してドリル44は除去される。」(段落【0021】),「図9に示されるように,円錐形のドリル鋼45,及びドリル鋼45をドリル47上に備えさせるチューブ状のブラケット46は,誘導線43上に装着され,また,円錐形の穴が小頭骨41及び中手骨42にドリルされる。」(段落【0022】),「図10は,第2のネジ状部材5が,どのよう- 21 -にして誘導線43上に装着されるかを示す。カニューレ挿入される,いわゆる延伸穴31aを有するネジドライバ32のロッド31は,誘導線43上であって第2のネジ状部材5の第2穴33内に装着され,ネジドライバ32は,第2のネジ状部材5を,小頭骨41及び中手骨42の穴に固定するために回転される。」(段落【0023】),「図11及び図12から明らかなように,橈骨39に第1のネジ状部材4を位置づけるための手段は同じである。すなわち,図11から明らかなように,誘導線43が橈骨39に固定され,円錐形ドリル鋼45(この場合,図9のドリル鋼45よりも大きい)が誘導線43上に装着され,また,ドリル鋼45を用い は同じである。すなわち,図11から明らかなように,誘導線43が橈骨39に固定され,円錐形ドリル鋼45(この場合,図9のドリル鋼45よりも大きい)が誘導線43上に装着され,また,ドリル鋼45を用いることにより,円錐穴が橈骨39に突き通され,ドリルされる。図12に示されるように,ネジドライバ32を用いることにより,第1のネジ状部材4は橈骨39にネジ止めされ,その後,誘導線43は除去される。」(段落【0024】)(ク) 「本発明は,上述の実施形態に限られることなく,請求項に記載の範囲において変形可能である。そのため,本補綴具は,例えば,指関節,親指関節,肘関節又は第一趾関節といった手首38よりも小さな関節に用いることができる。…ソケット部材及びヘッド部材6,7のソケット部及びヘッド部は,図示した以外の形状であってもよく,また,ネジ状部材4,5の末端縁部13,15は円形側部13a,13bを有していてもよい。最後に,ネジ用工具32はネジドライバ以外の他の適したタイプのネジ用工具である。」(段落【0029】)(2) 引用例1の記載事項について引用例1(甲4,訳文乙1)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙2参照)。 ア 「発明の背景…本発明は,手の関節のための外科的にインプラント(移植)可能な人工- 22 -関節の置換デバイスに関するものである。特に,これらのデバイスは,中手骨と指骨間の関節の置換に適していて,かかる関節は関節事故や関節炎などの疾患のために交換しなければならないものである。 特定の指の関節の置換は,当技術分野で知られており,特に手の指骨の間で,指内の関節を置換する種々の構造を具体的に解決する多数の特許が存在してきた。これらの特許は,米国特許番号4,158,893, 4,059, 節の置換は,当技術分野で知られており,特に手の指骨の間で,指内の関節を置換する種々の構造を具体的に解決する多数の特許が存在してきた。これらの特許は,米国特許番号4,158,893, 4,059,854, 4,011,603, および3,991,425である。これらのすべての特許は,屈曲運動と様々な量のいくつかの横方向の変位を可能にする。 しかし,これらの人工の関節は,いつも人間の指関節の特性を再現できる訳ではない。特に,人間の指関節はその指をカールすることができるように,一つの平面内に曲げる能力を有する。人間の関節は横方向の動きや軽度のねじれに耐えることができる。さらに,縦方向の運動フォームは指関節の長さに沿って可能である。これらの4種類の運動において,耐久性があり簡単に組み立てられ,骨とインプラントの最適なインタフェースが実現して人間の体内に簡単に入れられるアプローチでのモジュラー方式にして,さらにこの置き換えられる関節をうまく再現できるようにすることを,人工の関節で達成することは極めて困難であった。 上記の関節運動で明確となった望ましい特性のすべてを達成することができるような,指骨関節置換,ならびに他の関節が,人工関節業界において非常に必要とされている。 指の人工関節や他の関節のために必要なものとして特定された上記の特徴は,すべて本発明によって提供される。」(以上,訳文1頁10行,13行~32行)イ 「発明の概要本発明は,人間の指節や他の関節で利用可能な様々な動きを最も再現し- 23 -て,その改善された指の人工関節を対象としたものである。本発明は,構造が簡単で,モジュラー式で,製造が比較的容易で,インプラントが簡単でかつ合理的に耐久性がある発明である。 より具体的には,本発明の人工関節は,近位および遠 節を対象としたものである。本発明は,構造が簡単で,モジュラー式で,製造が比較的容易で,インプラントが簡単でかつ合理的に耐久性がある発明である。 より具体的には,本発明の人工関節は,近位および遠位指骨の間または遠位指骨と中手骨との間の指関節置換のための,3つの基本要素から構成される。中手骨本体は,片方の一端に内部にテーパーのある壁を有し,軸方向に位置するチェンバーを保有し,もう一方の端は,近位指骨又は中手骨に取り付けられている。 指骨本体と,中手骨本体との間で,中手骨本体に指骨本体を接合するヒンジ手段がある。このヒンジ手段は,人間の中手骨/指骨または指骨/指骨関節を模倣した,指骨本体と中手骨本体の間における,ねじれ,屈曲,ピストン運動,および横方向への回転(関節の屈曲面へのわずかな垂直な方向の回転)を可能にした構成であるこの限定された不偏的な動きは,人間の指を再現するものである。 ヒンジ手段は,これらの4種類の動きを可能にし,これらの人間のような動きを可能にする3つの要素から構成されている特殊な構造を有している。手術に関連付けられる,これら3つの要素はヒンジ本体,ヒンジステム(幹)とヒンジリテーナである。 ヒンジ本体は,レセプタクル(カップ)端部とテーパの延出(延びた)端部を有する。手術可能な延出端部は,中手骨本体が延出端部に乗り,ねじれ,屈曲,ピストン運動ができるようにした,中手骨本体のチェンバーに係合する。ヒンジ本体の他の端部側に,レセプタクル端部側はヒンジステムを保持するためのソケットを保有している。 ヒンジステムは,ソケット内に受容(収容)されるボール端部内と,指骨本体がヒンジステムの延出端部に摩擦嵌合されるように,指骨本体のチェンバーに手術で係合する延出端とを,有する。」,「ヒンジリテーナが- 24 - ソケット内に受容(収容)されるボール端部内と,指骨本体がヒンジステムの延出端部に摩擦嵌合されるように,指骨本体のチェンバーに手術で係合する延出端とを,有する。」,「ヒンジリテーナが- 24 -配置され,ヒンジステムの途中に保持されている。 ヒンジリテーナは,ヒンジ本体のレセプタクル側の外側に曲線状の表面を有しており,ヒンジ本体のソケット内ヒンジステムのボール(球状)端部を保持する。 ヒンジ本体のレセプタクル端部のソケットは,ヒンジステムのボール端部の横方向の回転運動の所定量を可能にするソケット内に面取り又は凹部の側面を有する。ボール端部が捕捉され,限られた不偏的な運動を許容するためにルーズに受容される。」(以上,訳文1頁末行~2頁28行)ウ 「【発明の詳細な説明】番号が同様のエレメント,特に図1,2,3,4及び5の図面に示すように,本発明は,手術に関連する3つのコンポーネント(中手骨本体11,指節本体13,及びヒンジ部材15)から構成され,主に人工関節デバイスを描写している。すべての3つのコンポーネントは,ねじれ,屈曲,ピストン運動,横方向への動きは,人間の指の関節をシミュレートしたものが提供され,連携して動作する。 ヒンジ部材15は,屈曲および横方向への動きを可能にするユニークな構成を有している。ヒンジ部材15は,主に2つのコンポーネントから構成されている。ヒンジステム17が作動的に屈曲して,左右両方の動きを可能にするヒンジ本体19に係合する。ヒンジ本体19がプラスチック材料で一体的に形成されている。 ヒンジステム17は,ボール端部21で球状を有する。ヒンジステムの他方の端部は,摩擦がテーパーロックに適合する組み込みができる,指骨本体13に係合するように設計されたテーパ状に延びる端部23を有している。延出 17は,ボール端部21で球状を有する。ヒンジステムの他方の端部は,摩擦がテーパーロックに適合する組み込みができる,指骨本体13に係合するように設計されたテーパ状に延びる端部23を有している。延出端部23およびボール端部21との間に,ネック部25がある。 ネック部25が延出するか,または端部23の直径よりも大きい直径を有しても有さなくてもよいが,ネック25は,ホール端21の直径より小さ- 25 -い直径を有する。 ヒンジステム17のボール端部21は,ヒンジ本体19内に規定されたソケット27内に配置される。ボール端部21は,ヒンジステム17がそのヒンジ本体19の一つの平面に対して実質的に拘束された屈曲運動によって保持されるように,ソケット27内に配置される。これは,95°の測定軌跡に沿って,ヒンジ本体19を通して横方向に動作し,スロット29によって達成される。スロット29の長さは,ヒンジ本体19内で約95°にヒンジステム17の動きの回転を制限する。しかし,スロット19の壁は,ソケット27内にヒンジステム17の若干の不偏的な動きを可能にするために,外部から面取りされていてもよい。」(以上,訳文3頁30行~4頁18行)エ 「ヒンジ本体19は,中手骨本体11に手術に係合する延出端33を有する。延出端33は,それが狭くなるようにテーパー状に形成され,かつ相補的な形状であるので,延出端が軸方向の中手骨本体11内に位置し,同じ様なテーパーのある受容チェンバー35内に適合するか,または入るようになっている。受容チェンバー35は,図5Aに示す。」(訳文5頁16行~19行)オ 「中手骨本体11は,中手骨本体11の最も広く端部を囲む円形のリップ39を有している。従って,リップ39は,近位指節又は中手骨(図示せず)が押されたり,人工関節で結合さ 5頁16行~19行)オ 「中手骨本体11は,中手骨本体11の最も広く端部を囲む円形のリップ39を有している。従って,リップ39は,近位指節又は中手骨(図示せず)が押されたり,人工関節で結合された遠位指節骨(図示せず)に対して圧縮され,ヒンジ本体19の平らな面34に接触する。」(訳文6頁12行~15行),「図5Bに示すように,指骨本体13は,軸方向に延びる相補された端部の摩擦嵌合を引き起こして受容チェンバー38内に収まるように,ヒンジ17のステム13が配置され,その最も広い端部に受容チェンバー38を有する。 - 26 -指骨本体の最も広い端部には,延出端部23とヒンジリテーナ31の間に,タブ41に係合することができる六角形の形状を有するリップ40がある。タブ41は,ヒンジリテーナ31の延長上にある。タブ41は,延出端部23とヒンジリテーナ31との間の,様々な場所に配置することができる。リップ40とタブ41は,指骨本体13が,ヒンジステム17の延出端部23の回転や延出端部23に対する相対的な動きを防止するように構成されている。」(訳文6頁19行~26行)カ 「指骨本体13と中手骨本体11の両方が,それぞれの骨の中に接続され回転できるようにインプラント時に配置されているので,それらの広い端部10にセルフタッピングのスレッド(ねじ切)45を持たせることができる。色々な長さと異なる直径は,本発明である人工関節と受容骨の間が,ぴっちりとした適合を実現できるように外科医の能力を確かなものとする。これは,人工関節を接合する骨の端部に接続することができる。しかし,スレッド処理(ねじ切)はまた,接合される骨に人工関節を固定する働きをする凸凹面(図示せず)としては,必要でないかもしれない。 チャネル(くぼみ)47のねじ山の中断は,ス ることができる。しかし,スレッド処理(ねじ切)はまた,接合される骨に人工関節を固定する働きをする凸凹面(図示せず)としては,必要でないかもしれない。 チャネル(くぼみ)47のねじ山の中断は,スレッド処理で簡単に接合する骨にねじ込むことができ,関節を固定するためである。接合される骨は,指節体13と中手骨体11がそれぞれの骨の自由な引っ張りを防ぐために,チャネル(くぼみ)の中及びその周囲で成長する。」(訳文6頁27行~7頁1行)キ 「図10~12に示すような代替実施形態では,図1~9に示すようにヒンジリテーナ31は除去することができ,タブ41および指骨本体13のリップ40を含めることもできる。図10に最も具体的に示されているように,修正されたヒンジ本体55は,ヒンジ本体19の第1の実施形態(図1)と同様であるが,スロット57及び59は,ソケット61と連絡できるように,レセプタクル端部59を横方向に通って切断されるので除- 27 -去してある。」(訳文7頁14行~18行),「要するに,本実施形態の星型カラー65およびピン75は,機能的には,ヒンジリテーナ31と,第1の実施例のタブ41を取り替えること。 修正した中手骨本体95は,示されていないツールで,係合可能である露出したスロット99と第二の端部97を持っている。ねじ回しなどのツールまたは示されていない場合,インプラント時に,骨に中手骨本体95を回転しながらねじ込むために使用することができる。同様に,指節本体91の第二の端部89は,ツールがインプラント時に骨に指節本体91を回転しながらねじ込むことが示されていない場合には,露出したスロット99を持つことができる。 上述の違いを除いて,本発明の第2の実施形態は,上述した説明および本明細書も同様に適用された本発明の第一実施 ながらねじ込むことが示されていない場合には,露出したスロット99を持つことができる。 上述の違いを除いて,本発明の第2の実施形態は,上述した説明および本明細書も同様に適用された本発明の第一実施形態と同様である。」(訳文8頁14行~23行),「この人工関節は,設計が簡単で,近位中手指骨および/または遠位指骨を保持するのに有効で,ねじれ,屈曲,ピストン運動,不偏的な屈曲と横方向への回転運動を可能にする。この関節は,耐久性があり,正常な指の動きを可能にする。」(訳文8頁25行~28行)ク 「【特許請求の範囲】【請求項1】近位指骨または中手骨及びからなる遠位指骨の間の置換用人工関節デバイスであって;(a)ヒトの骨に固定する手術に適合している第1の端部,及び,軸方向に配向した受容チェンバーを特定している第2の端部を有する独立した中手骨本体と;(b)ヒトの骨に固定する手術に適合している第1の端部,及び,軸方向に配向した受容チェンバーを特定している第2の端部を有する独立した指骨- 28 -本体と;(c)捩れ,屈曲,ピストン運動,ずれ,及び前記中手骨本体に対して相対的に前記指骨本体を横方向へ回転させるために独立した前記指骨本体を前記中手骨本体に連結させるヒンジ手段と,を備え;前記非独立の中手骨と指骨本体の前記第1の端部が,中断した空間のある複数のチャネルを持つセルフタッピングスレッド部を含み,且つ,前記独立の中手骨と指骨本体の前記第2の端部が,滑らかな外面を有する円錐形である,ことを特徴とする,近位指骨または中手骨及び遠位指骨の間の置換用人工関節デバイス。」(訳文8頁32行~9頁11行),「【請求項10】前記指骨本体及び中手骨本体は,テーパー形状であり,中断した均一空間のあるチャネルを前記スレッド処理さ 位指骨の間の置換用人工関節デバイス。」(訳文8頁32行~9頁11行),「【請求項10】前記指骨本体及び中手骨本体は,テーパー形状であり,中断した均一空間のあるチャネルを前記スレッド処理された,それらの端部にセルフタッピングスレッド部を有することを特徴とする,請求項9に記載の人工関節デバイス。 【請求項11】前記中手骨本体はさらに,前記ヒンジ本体の前記平坦な表面に当接し,その最も広い端に円形の縁を特定することを特徴とする,請求項10に記載の人工関節デバイス。」(訳文10頁25行~31行)(3) 一致点の認定の誤りの有無について原告は,本願補正発明における「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」とは,「損傷を与えうる尖った縁部」の構成を有しないものに限定されると解すべきであるとした上で,引用例1の中手骨体11と指骨体13が備えるリップ39及びチャンネル47は,外方に突出した構成を有し,「損傷を与えうる尖った縁部」であるといえるから,中手骨体11と指骨体13は本願補正発明にいう「外面的な円錐形状」を有するものに当たらないとして,本願補正発明と引用発明とが,「第1及び第2のネジ- 29 -状部材(4,5)は,外面的な円錐形状を有する」点で一致するとした本件審決の一致点の認定は誤りである旨主張するので,以下において判断する。 ア(ア) 本願補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の請求項1)には,「前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)」は,「外面的な円錐形状を有すると共に,外部ネジ山(夫々34及び35)を更に備え」るとの記載がある。この「外部ネジ山(夫々34及び45)」は,その文言上,「前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外部」(外側の表面)に形成されるものであるから,「前記第1及び第2の に備え」るとの記載がある。この「外部ネジ山(夫々34及び45)」は,その文言上,「前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外部」(外側の表面)に形成されるものであるから,「前記第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の表面から外方へ突出する構成を有するものと理解することができる。 一方で,同請求項には,「外面的な円錐形状」についてその具体的な形状を定義した記載はなく,また,「外部ネジ山(夫々34及び45)」の形状を具体的に特定する記載もない。 (イ) 本願明細書には,「外部ネジ山(夫々34及び45)」について,「第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々外部ネジ山34及び35が備えられ」(段落【0015】),「第1及び第2のネジ状部材4,5は,夫々外部ネジ山34及び35を,いくつかの,例えば4つのネジ山セクションに分割するため,第1及び第2のネジ状部材4,5の夫々の軸方向に伸びる延伸部4a,5aにはネジ山を有していない。」(段落【0017】)との記載があるが,「外部ネジ山(夫々34及び45)」の形状及び構造を説明した記載はない。もっとも,図1,2及び4には,外部ネジ山34及び35が模式的に線で図示されているが,特定の立体的形状を看取することはできない。 一方で,本願明細書には,「夫々の骨の中に上記のネジ状部材をネジ止めするため,ネジ用工具32を回転することにより,ネジ状部材4,5の夫々を回転することができる。」(段落【0014】)との記載が- 30 -ある。この記載とネジ状部材4,5が外部ネジ山34及び35を備えていることによれば,ネジ状部材4,5が骨の中にネジ止めされるときには,ネジ状部材4,5の夫々が回転し,ネジ状部材4,5に備えられた外部ネジ山34及び35によって夫々の骨がねじ切りされ,そのねじ切りに伴い骨の組織が ,ネジ状部材4,5が骨の中にネジ止めされるときには,ネジ状部材4,5の夫々が回転し,ネジ状部材4,5に備えられた外部ネジ山34及び35によって夫々の骨がねじ切りされ,そのねじ切りに伴い骨の組織が切り込まれているものと理解することができる。 (ウ) 以上によれば,ネジ状部材4,5は,外部ネジ山34及び35のような外方に突出される構成を有するものであっても,本願補正発明の「外面的な円錐形状」に当たるものと解される。 そして,引用例1の図1ないし4,7ないし9(別紙2のFIG.1ないし4,7ないし9)には,本願補正発明の「第1及び第2のネジ状部材4,5」に相当する,中手骨体11と指骨体13が,その一方の端部の表面にセルフタッピングスレッド45を備え,他方の端部の先端が細くなるようにテーパー状に形成されていることが示されているから,引用例1の中手骨体11と指骨体13は,本願補正発明にいう「外面的な円錐形状」を有するものと認められる。 なお,このセルフタッピングスレッド45は,別紙2のFIG.1ないし4,5B,7ないし9のとおり,中手骨体11と指骨体13の表面から外方へ突出する構成を有するが,このことが中手骨体11と指骨体13が本願補正発明の「外面的な円錐形状」を有することを否定すべき理由に当たらないことは,上記のとおりである。 イこれに対し原告は,①本願明細書には,引用例1を先行文献として挙げ,従来の2つのネジ状部材を有する関節補綴具には「近接する組織を傷つける虞がある尖った縁部」を有する点に問題があり,この問題を解決するために,本願補正発明は,尖った縁部を有する外部溝が損傷を与えうることを回避できる」ようにした旨の記載があることからすると,本願補正発明は,「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」は- 正発明は,尖った縁部を有する外部溝が損傷を与えうることを回避できる」ようにした旨の記載があることからすると,本願補正発明は,「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」は- 31 -「損傷を与えうる尖った縁部」の構成を有しないものに限定される,②引用例1の中手骨体11と指骨体13が備えるリップ39及びチャンネル47(別紙2のFIG.1ないし9)は,外方に突出した構成を有し,この突出した構成によりインプラント時等に「近接する組織を傷つける虞」があり,「損傷を与えうる尖った縁部」であるといえるから,中手骨体11と指骨体13は本願補正発明にいう「外面的な円錐形状」を有するものに当たらない旨主張する(以下,上記①,②をそれぞれ「原告の主張①」,「原告の主張②」という。)。 (ア) 原告の主張①についてまず,前記ア(ア)のとおり,本件補正後の請求項1には,「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」についてその具体的な形状を定義した記載はない。 次に,本願明細書の段落【0002】ないし【0004】の記載(前記(1)イ(イ)ないし(エ))を総合すると,本願明細書には,①「米国特許文献5147386」(引用例1)記載の従来の関節補綴具には,ネジ止めによってネジ状部材を固定するために,ネジ状部材の表面に「ネジ用工具用のネジ溝」があり,このネジ溝は「近接する組織を傷つける虞がある尖った縁部」を形成するものであったため,不適当であるという問題があったこと,②「本発明」は,「補綴部材のネジ状部材が,尖った縁部を画定する外部ネジ溝を有するという問題を解消することを目的」とし,この問題を解決するための手段として,「補綴具のネジ状部材」は「ソケット及びヘッド部材のそれぞれが穴を有し,特に,ネジ用工具用に設計された る外部ネジ溝を有するという問題を解消することを目的」とし,この問題を解決するための手段として,「補綴具のネジ状部材」は「ソケット及びヘッド部材のそれぞれが穴を有し,特に,ネジ用工具用に設計された内部穴が備えられる」構成を採用したことにより,「問題のある骨にネジ状部材をネジ止めにより装着するため,ネジ用工具を穴に挿入することができ,また,尖った縁部を有する外部溝が損傷を与えうることを回避できる」効果を奏することが開示されていると認- 32 -められる。 このように本願明細書は,引用例1の「ネジ用工具用のネジ溝」がネジ状部材の表面に「近接する組織を傷つける虞がある尖った縁部」を形成するものであったため,不適当であるという課題があり,この課題を解決するための手段として,「本発明」は,ネジ状部材の表面ではなく,その内部に「ネジ用工具用に設計された内部穴」を備える構成を採用したことを開示するものであり,引用例1のネジ状部材の表面に設けられた「ネジ用工具用のネジ溝」以外の構成部材については何ら言及するものではない。 加えて,本願明細書には,「近接する組織を傷つける虞がある尖った縁部」を有する「ネジ用工具用のネジ溝」が,引用例1のいかなる箇所に記述されているのかを具体的に指摘した記載はないのみならず,本願補正発明の「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」が,外方を突出した構成により近接する組織に「損傷を与えうる尖った縁部」を有しないものでなければならないことを明示した記載や,これを示唆する記載はない。 そうすると,本願明細書の記載を根拠として,本願補正発明における「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」は「損傷を与えうる尖った縁部」の構成を有しないものに限定されると解釈することはできないか 明細書の記載を根拠として,本願補正発明における「第1及び第2のネジ状部材(4,5)」の「外面的な円錐形状」は「損傷を与えうる尖った縁部」の構成を有しないものに限定されると解釈することはできないから,原告の主張①は理由がない。 (イ) 原告の主張②についてa 引用例1には,リップ39に関し,「中手骨本体11は,中手骨本体11の最も広く端部を囲む円形のリップ39を有している。従って,リップ39は,近位指節又は中手骨(図示せず)が押されたり,人工関節で結合された遠位指節骨(図示せず)に対して圧縮され,ヒンジ本体19の平らな面34に接触する。」(前記(2)オ)との記載があり,- 33 -また,引用例1の図1,3ないし9(別紙2のFIG.1,3ないし9)等には,リップ39が中手骨体11の端部においてその周方向に外方へ突出する構成を有するものとして図示されている。 しかしながら,リップ39は,そもそも「ネジ用工具用のネジ溝」ではないから,本願明細書が不適当であるとする引用例1のネジ状部材の表面に設けられた「ネジ用工具用のネジ溝」には当たらない。また,引用例1には,リップ39が「損傷を与えうる尖った縁部」を構成に有することや,中手骨体11と指骨体13のインプラント時等に「近接する組織を傷つける虞」があることについての記載も示唆もない。 b 引用例1には,チャンネル47に関し,「チャネル(くぼみ)47のねじ山の中断は,スレッド処理で簡単に接合する骨にねじ込むことができ,関節を固定するためである。接合される骨は,指節体13(判決注・「指骨体13」の誤り)と中手骨体11がそれぞれの骨の自由な引っ張りを防ぐために,チャネル(くぼみ)の中及びその周囲で成長する。」(前記(2)カ)との記載があり,また,引用例1の図1,2,8,9(別紙2のFI 」の誤り)と中手骨体11がそれぞれの骨の自由な引っ張りを防ぐために,チャネル(くぼみ)の中及びその周囲で成長する。」(前記(2)カ)との記載があり,また,引用例1の図1,2,8,9(別紙2のFIG.1,2,8,9)等には,中手骨体11及び指骨体13の表面の周方向に形成された複数のタッピングスレッド45間の溝として図示されている。 しかしながら,チャンネル47は,そもそも「ネジ用工具用のネジ溝」ではないから,本願明細書が不適当であるとする引用例1のネジ状部材の表面に設けられた「ネジ用工具用のネジ溝」には当たらない。 また,引用例1には,チャンネル(チャネル)47が「損傷を与えうる尖った縁部」を構成に有することや,中手骨体11と指骨体13のインプラント時等に「近接する組織を傷つける虞」があることについての記載も示唆もない。 - 34 -c そうすると,引用例1の記載から,引用例1の中手骨体11と指骨体13が備えるリップ39及びチャンネル47が,インプラント時等に「近接する組織を傷つける虞」があることはもとより,「損傷を与えうる尖った縁部」の構成を有することを認めることはできないから,原告の主張②は,その前提において理由がなく,採用することができない。 (ウ) 小括以上のとおり,原告の主張①及び②はいずれも理由がないから,引用例1の中手骨体11と指骨体13は本願補正発明にいう「外面的な円錐形状」を有するものに当たらないとの原告の主張も,理由がない。 ウ以上によれば,本願補正発明と引用発明とが,「第1及び第2のネジ状部材(4,5)は,外面的な円錐形状を有する」点で一致すると認定した本件審決に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り)について原告は,本件審決は は,外面的な円錐形状を有する」点で一致すると認定した本件審決に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り)について原告は,本件審決は,引用例2には,「関節に適用される人工器官において,軸部には人工器官を非ねじ込み状態で取り外すためのアレンキー(ネジ用工具)が装着される6角状部が付加されている人工器官。」の発明が記載されているとした上で,引用発明に引用例2に記載された発明を適用して相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない旨判断したが,引用発明に引用例2に記載された発明を適用する動機付けが存在しないから,本件審決の上記判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。 (1) 引用例1についてア前記1(2)によれば,引用例1(甲4,訳文乙1)には,次の点が開示されていることが認められる。 (ア) 従来,外科的にインプラント(移植)可能な手の関節の置換用の人- 35 -工関節デバイスにおいては,耐久性があり,簡単に組み立てられ,骨とインプラントの最適なインタフェースを実現して人間の体内に簡単に入れられるモジュラー方式とし,置換される指関節の運動の特性を再現し,正常な指の動きを再現できるようにすることが必要とされていたが,これらを人工関節で達成することは極めて困難であった。 (イ) 「本発明」は,上記のとおり人工関節に必要とされた特徴をすべて備えた人工関節を提供するものであり,「本発明」の人工関節は,人間の指関節や他の関節で利用可能な様々な動きを最も再現し,構造が簡単で,モジュラー方式で,製造が比較的容易で,インプラントが簡単でかつ合理的に耐久性がある。 (ウ) 「本発明」の人工関節は,近位指骨と遠位指骨との間又は遠位指骨 な様々な動きを最も再現し,構造が簡単で,モジュラー方式で,製造が比較的容易で,インプラントが簡単でかつ合理的に耐久性がある。 (ウ) 「本発明」の人工関節は,近位指骨と遠位指骨との間又は遠位指骨と中手骨との間の指関節置換のためのものであり,中手骨体11,指骨体13及びヒンジ部材15の3つの要素から構成され(図1ないし5)(別紙2のFIG.1ないし5),これらの3つの要素は,ねじれ,屈曲,ピストン運動,横方向への動き(関節の屈曲面へのわずかな垂直方向の回転)といった人間の指の関節をシミュレートした動きを提供し,連携して動作する。 中手骨体11の一方の端は骨(近位指骨又は中手骨)に取り付けられ,他方の端はヒンジ部材15に接合し,指骨体13の一方の端は骨に取り付けられ,他方の端はヒンジ部材15に接合する。このように中手骨体11と指骨体13は,ヒンジ部材によって接合される。 ヒンジ部材15は,ソケット27を有するヒンジステム17とボールエンド21を有するヒンジ本体19を構成に有し,屈曲及び横方向への動きを可能にする。ヒンジステム17は,ヒンジステム17を配置又は位置づけするために指骨体13の収納室38に挿入可能な伸長部分23を有し,ヒンジ体19は,ボールエンド21を配置又は位置づけするた- 36 -めに中手骨体11の収容室35に挿入可能な伸長部分33を有する。 中手骨体11及び指骨体13は,テーパー形状を有し,その表面の周方向に形成されたセルフタッピングスレッド45(ねじ切)を備えている。セルフタッピングスレッド45の色々な長さと異なる直径は,「本発明」の人工関節と受容骨の間が,ぴっちりとした適合を実現できるように外科医の能力を確かなものとする。このセルフタッピングスレッド45は,中手骨体11と指骨体13の表面から外方へ突出 る直径は,「本発明」の人工関節と受容骨の間が,ぴっちりとした適合を実現できるように外科医の能力を確かなものとする。このセルフタッピングスレッド45は,中手骨体11と指骨体13の表面から外方へ突出する構成を有する。 (エ) 「第2の実施形態」に関し,修正した中手骨本体95は,示されていないツールで,係合可能である露出したスロット99と第二の端部97を持っている。ねじ回しなどのツールで,インプラント時に,骨に中手骨本体95を回転しながらねじ込むために使用することができる。 イ(ア) 前記ア(ウ)認定のとおり,引用例1には,中手骨体11及び指骨体13の表面から外方へ突出する構成を有するセルフタッピングスレッド45が,「ねじ切」であり,引用例1の人工関節と骨との間がぴっちりとした適合を実現できるように外科医の能力を確かなものとすることが開示されている。 また,乙2(マグローヒル科学技術用語大辞典改訂第3版)には,「タッピング」とは「タップを用いて穴その他のねじ山を切ること」を,「タッピンねじ」とは,「特別に硬化したねじ山のついたねじ。そのためやわらかい材料の穴の中へドライバーで押し込むと,自身のねじ山にあった溝を相手の材料に切り込むことができる。セルフタッピングスクリューともいう。」との記載があり,これらの記載によれば,「セルフタッピング」とは,「ねじ込むことで自ら雌ねじを切ること,又はその機能をもつ部材」を意味するものといえる。 以上によれば,引用例1の中手骨体11及び指骨体13に備えたセル- 37 -フタッピングスレッド45は,この「セルフタッピング」であり,中手骨体11及び指骨体13をそれぞれ骨にねじ込むことを目的として形成されたものと理解することができる。 そして,引用例1には,中手骨体11及び指骨体13を骨にねじ の「セルフタッピング」であり,中手骨体11及び指骨体13をそれぞれ骨にねじ込むことを目的として形成されたものと理解することができる。 そして,引用例1には,中手骨体11及び指骨体13を骨にねじ込むための具体的な手段を直接述べた記述はないが,一方で,前記ア(エ)のとおり,「ねじ回しなどのツールで,インプラント時に,骨に中手骨本体95を回転しながらねじ込む」旨の記載があり,この記載は,中手骨体11及び指骨体13についても,骨にねじ込むためにねじ回しなどのツール(ネジ用工具)を用いることを示唆するものといえる。 (イ) 原告は,この点に関し,引用例1の中手骨体11及び指骨体13にはセルフタッピングスレッド45が,接続端部側の一部にしか形成されておらず,先細り部の大部分には存在しないことからすると,引用例1記載の関節補綴具においては,骨には,予めドリルを用いて装着穴が形成され,この装着穴に中手骨体11及び指骨体13が嵌め入れられており,セルフタッピングスレッド45は,骨にねじむために設けられているのではなく,中手骨体11及び指骨体13が骨から抜けないように骨に結合させるためだけのネジとして機能するにすぎない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)認定のとおり,セルフタッピングスレッド45は,中手骨体11及び指骨体13をそれぞれ骨にねじ込むことを目的として形成された「セルフタッピング」であると認められる。また,引用例1の人工関節(関節補綴具)において,中手骨体11及び指骨体13のための装着穴が予め骨に形成されている場合であっても,中手骨体11及び指骨体13を骨に取り付ける際にはセルフタッピングスレッド45がその装着穴を広げながら骨をねじ切りするものと理解することができるから,予め骨に装着穴が形成されていることは,上記認定を左右する 1及び指骨体13を骨に取り付ける際にはセルフタッピングスレッド45がその装着穴を広げながら骨をねじ切りするものと理解することができるから,予め骨に装着穴が形成されていることは,上記認定を左右するものではない。 - 38 -したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (2) 引用例2についてア引用例2(甲5)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図6,7については別紙3参照)。 (ア) 「この発明は,外科用人工器官,特に,早期埋没症に引続く初期治療或いは股関節機能の校正による股関節の置換えに利用される大腿部構造に関する。股関節の置換えは,整形外科に共通の手法であって,股関節の変形疾患,股関節の損傷,及び,股関節の損傷のあとの股関節形成による疾患などに必要とされる。」(2頁右下欄3行~8行)(イ) 「図6には,この発明の実施例である大腿骨人工器官20の分解図が示されている。人工器官20は,軸部21,及び,肘部22と頭部23からなる着脱可能な頚部から構成されている。軸部21は,また,終端部26に沿ってまたは近傍に位置されているねじ部24,及び,端部から離れた位置27に位置されているねじ部25から構成されている。 軸部が既に説明した位置にねじ込まれたとき,ねじ部24及び25のそれぞれヘリカルねじは,骨の骨髄腔の壁面に対して応力を及ぼす。従って,軸方向の引き戻しによる不必要な回転に対し,高い抗力及び回転安定性を有する堅牢な埋込みが達成される。図7によれば,軸部21は,端部26に,肘部22のオス状部29が結合されるためのメス状凹み28を有している。軸部21には,また,人工器官を非ねじ込み状態で取り外すためのアレンキーが装着される6角状部30が付加されている。」(5頁左上欄13行~右上欄1行)イ(ア) 前 めのメス状凹み28を有している。軸部21には,また,人工器官を非ねじ込み状態で取り外すためのアレンキーが装着される6角状部30が付加されている。」(5頁左上欄13行~右上欄1行)イ(ア) 前記アによれば,引用例2(甲5)には,次の点が開示されていることが認められる。 a 大腿骨の関節を置換するための人工器官20は,軸部21,肘部22及び頭部23からなる着脱可能な頚部から構成され,骨(大腿骨)- 39 -にねじ込まれる。 b 軸部21は,その表面に,人工器官20の骨へのねじ込みを目的として形成された2つのヘリカルねじ(ねじ部24及び25)を備えている。 また,軸部21は,その端部26に,肘部22のオス状部29が結合されるためのメス状凹み28を有している。 さらに,軸部21は,その内部に,人工器官20を非ねじ込み状態で骨から取り外すためのアレンキーが装着される6角状部30が付加されている。すなわち,軸部21には,人工器官20を非ねじ込み状態で骨から取り外すためのアレンキーが装着される6角状部の内部穴が形成されている。 (イ) 前記(ア)のとおり,引用例2には,人工器官を非ねじ込み状態で骨から取り外すためのアレンキーが装着される6角状部の内部穴を有する人工器官が開示されている。このアレンキー(6角棒スパナ)は,ネジ用工具であるから,人工器官を取り外す場合のほか,人工器官を骨にネジ止めする場合にも使用され得ることを理解することができる。 したがって,この「6角状部」の構成は,「ネジ止めするためにネジ用工具」を「挿入可能となるように設計された内部穴」に相当するものと認められる。 (3) 相違点1の容易想到性についてア前記(1)及び(2)によれば,①引用例1の人工関節と引用例2の人工器官20とは,骨の関節の置換に利 うに設計された内部穴」に相当するものと認められる。 (3) 相違点1の容易想到性についてア前記(1)及び(2)によれば,①引用例1の人工関節と引用例2の人工器官20とは,骨の関節の置換に利用される関節補綴具である点で技術分野が共通すること,②引用例1の人工関節の構成部材である中手骨体11及び指骨体13と引用例2の人工器官20の構成部材である軸部21とは,それぞれ一方の端部から骨にねじ込まれる点において機能面で共通し,また,他方の端部には,他の構成部材を装着する「穴」(中手骨体11及び指骨- 40 -体13にあっては,ヒンジ体19の伸長部分33及びヒンジステム17の伸長部分23を装着する収容室35及び38,軸部21にあっては,肘部22のオス状部29を装着するメス状凹み28)が設けられている点において機能面で共通することが認められる。 そして,引用例1には,中手骨体11及び指骨体13を骨にねじ込むための具体的な手段を直接述べた記述はないが,中手骨体11及び指骨体13についても,骨にねじ込むためにねじ回しなどのツール(ネジ用工具)を用いることを示唆する記載がある。 そうすると,引用例1及び2に接した当業者においては,引用例1の人工関節の中手骨体11及び指骨体13を骨にねじ込むための手段として,技術分野,機能及び構造が共通する引用例2の人工器官におけるアレンキーが装着される6角状部(内部穴)の構成を適用することの動機付けが存在し,これを適用して中手骨体11の収容室35及び指骨体13の収容室38のそれぞれの底部に,ネジ用工具を挿入可能となるように設計された内部穴(相違点1に係る本願補正発明の構成)を設けることを容易に想到することができたものと認められる。 イこれに対し原告は,引用例1の図6,7(別紙2のFIG.6,7)を となるように設計された内部穴(相違点1に係る本願補正発明の構成)を設けることを容易に想到することができたものと認められる。 イこれに対し原告は,引用例1の図6,7(別紙2のFIG.6,7)を根拠に,引用例1の中手骨体11の収容室35は奥深くまで形成されており,この収容室35の更に深い位置に6角状部を設けるとすれば,中手骨体11の先端の強度が極めて低下するので,引用発明に引用例2記載の「6角状部」の構成を適用することは考え難いなどと主張する。 しかしながら,引用例1の中手骨体11の収納室35は,ヒンジ体19の伸長部分33の装着を目的として形成されるものであり,収納室35と伸長部分33とは相補的な形状として構成されれば足りるから,原告が挙げる引用例1のFIG.6,7に示された深さの形状のものに限定する必要性は認められず,また,収納室35を中手骨体11の奥深くまで形成し- 41 -なければならないとする必然性も認められない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 ウ以上によれば,相違点1の容易想到性についての本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(相違点2の容易想到性の判断の誤り)について原告は,本件審決は,骨の夫々に取り付けられる誘導線上に,ネジ状部材が装着されるようにするため,ネジ部材に軸方向に伸びる貫通孔を設ける点は,骨の補綴の技術分野で本願の優先権主張日前の周知の技術にすぎず,上記周知技術を引用発明に適用して相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは,当業者が必要に応じてなし得た事項にすぎない旨判断したが,引用発明に上記周知技術を適用する動機付けが存在しないから,本件審決の上記判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。 (1)ア前記2 が必要に応じてなし得た事項にすぎない旨判断したが,引用発明に上記周知技術を適用する動機付けが存在しないから,本件審決の上記判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。 (1)ア前記2(1)ア(ア)及び(イ)によれば,引用例1には,従来,手の関節の置換用の人工関節においては,耐久性があり,簡単に組み立てられ,骨とインプラントの最適なインタフェースを実現して人間の体内に簡単に入れられるモジュラー方式とし,置換される指関節の運動の特性を再現し,正常な指の動きを再現できるようにすることが必要とされていたが,これらのすべての特徴を人工関節で達成することは極めて困難であるという問題があり,引用例1の人工関節は,これらのすべての特徴を備えた人工関節を提供することを課題とすることが記載されていることが認められる。 そして,人工関節が置換される指関節の運動の特性を再現し,正常な指の動きを再現できるようにするためには,引用例1の人工関節を構成する部材である中手骨体11及び指骨体13を骨の所定の位置に確実に取り付けなければならないことは,引用例1に明示の記載はないが,引用例1の人工関節の自明の課題であるといえる。 イ証拠(甲6,乙3ないし6)によれば,本願の優先権主張日(平成17- 42 -年2月16日)当時,骨の補綴の技術分野において,骨の所定の位置に取り付けられるネジ状部材を正しく位置決めし,より簡単に骨に取り付けるようにするために,ネジ状部材の軸方向にガイドワイヤ(誘導線)用の貫通孔を形成し,このガイドワイヤを当該貫通孔に通して骨に取り付けることは広く知られており,「骨の夫々に取り付けられる誘導線上に,ネジ状部材が装着されるようにするため,ネジ部材に軸方向に伸びる貫通孔を設けること」は,周知の技術であったことが認められる。 付けることは広く知られており,「骨の夫々に取り付けられる誘導線上に,ネジ状部材が装着されるようにするため,ネジ部材に軸方向に伸びる貫通孔を設けること」は,周知の技術であったことが認められる。 ウ前記ア及びイによれば,引用例1に接した当業者においては,骨の所定の位置に確実に,かつ,簡単に取り付けることができる人工関節を提供するという引用例1記載の課題を解決するために,引用例1の人工関節の中手骨体11及び指骨体13に,本願の優先権主張日当時に周知であった「骨の夫々に取り付けられる誘導線上に,ネジ状部材が装着されるようにするため,ネジ部材に軸方向に伸びる貫通孔を設ける」構成を適用する動機付けが存在し,相違点2に係る本願補正発明の構成を容易に想到することができたものと認められる。 (2) 原告は,これに対し,①引用例1記載の関節補綴具においては,骨には,予めドリルを用いて装着穴が形成され,この装着穴に中手骨体11及び指骨体13が嵌め入れられており,セルフタッピングスレッド45は,骨にねじむために設けられているのではなく,中手骨体11及び指骨体13が骨から抜けないように骨に結合させるためだけのネジとして機能する,②引用例1記載の関節補綴具において,ガイドワイヤ(誘導線)等が必要になるのは,予めドリルを用いて骨に装着穴を形成する段階であり,セルフタッピングスレッド45で手骨体11及び指骨体13を骨に結合させる段階では,もはや誘導線は必要なく,中手骨体11及び指骨体13に誘導線のための貫通孔を設ける必要性もないから,引用例1記載の関節補綴具に「骨の夫々取り付けられる誘導線上に,中手骨体11及び指骨体13が装着されるようにするた- 43 -め,中手骨体11及び指骨体13に軸方向に伸びる貫通孔を設ける」構成(周知技術の構成)を適用する動機 の夫々取り付けられる誘導線上に,中手骨体11及び指骨体13が装着されるようにするた- 43 -め,中手骨体11及び指骨体13に軸方向に伸びる貫通孔を設ける」構成(周知技術の構成)を適用する動機付けは存在しない旨主張する。 しかしながら,前記2(1)イ(イ)で認定したように,セルフタッピングスレッド45は,中手骨体11及び指骨体13をそれぞれ骨にねじ込むことを目的として形成された「セルフタッピング」であり,また,中手骨体11及び指骨体13のための装着穴が予め骨に形成されている場合であっても,中手骨体11及び指骨体13を骨に取り付ける際にはセルフタッピングスレッド45がその装着穴を広げながら骨をねじ切りするものであるから,予め骨に装着穴が形成されている場合であっても,骨の所定の位置に中手骨体11及び指骨体13を確実に,かつ,簡単に取り付けるために,中手骨体11及び指骨体13に誘導線のための貫通孔を設ける必要性があり得るものと認められる。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (3) 以上によれば,相違点2の容易想到性についての本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由3は理由がない。 4 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 - 44 -裁判官大鷹一郎 裁判官齋藤 巌 - 45 -(別紙1) 【図1】 【図2 大鷹一郎 裁判官齋藤巌
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