- 1 -平成30年2月28日判決言渡平成29年(ネ)第10068号不正競争行為差止等請求控訴事件平成29年(ネ)第10084号同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第24688号)口頭弁論終結日平成29年12月5日判決 控訴人・附帯被控訴人マツイマシン株式会社 同訴訟代理人弁護士田上洋平 廣瀬主嘉 被控訴人・附帯控訴人月島環境エンジニアリング株式会社 同訴訟代理人弁護士小池 豊 櫻井彰人 粟田英一主文 1 本件控訴及び附帯控訴に基づき,原判決主文4項~7項を次のとおり変更する。 2 控訴人は,被控訴人に対し,3784万1791円及びうち1779万0120円に対する平成27年9月12日から,うち1047万5446円に対する平成28年7月1日から,うち957万6225円に対する平成29年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人のその余の請求を棄却する。 - 2 - 4 訴訟費用については,第1,2審を通じてこれを4分し,その1を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。 5 本判決の上記第2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほか,原判決に従う。原判決中の「別紙」を「原判決別紙」と読み替える。 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴について(1) 控訴人ア原判決のうち控訴人敗訴部分を取り消す。 イ被控訴人の請求をいずれも棄却する。 (2) 被控訴人本件控訴を棄却する。 2 附帯控 控訴について(1) 控訴人ア原判決のうち控訴人敗訴部分を取り消す。 イ被控訴人の請求をいずれも棄却する。 (2) 被控訴人本件控訴を棄却する。 2 附帯控訴について(1) 被控訴人ア原判決のうち被控訴人敗訴部分を取り消す。 イ控訴人は,被控訴人に対し,473万8444円及びこれに対する平成27年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(被控訴人は,当審において,第1審で求めていた5568万2000円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の請求を,3011万2539円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の請求に,減縮した。)。 ウ控訴人は,被控訴人に対し,872万6225円及びこれに対する平成29年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(被控訴人は,当審において,平成28年7月1日から平成29年8月31日までの不正競争に基づく損害賠償請求を追加した。)。 (2) 控訴人 - 3 -ア本件附帯控訴を棄却する。 イ被控訴人の当審における追加請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の経緯等(1) 本件は,被控訴人が,控訴人が製造・販売する被告商品が,被控訴人の商品等表示として周知な原告商品の形態と類似し,誤認混同のおそれがあると主張して,不競法2条1項1号,3条1項に基づき,被告商品の製造・販売等の差止め,同法3条2項に基づき,控訴人が占有する被告商品の廃棄及び被告商品を製造するために使用した金型の除却,同法4条,5条2項に基づき,平成24年12月1日から平成28年6月30日までの不正競争に基づく損害賠償5568万2000円及びこれに対する平成27年9月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済 除却,同法4条,5条2項に基づき,平成24年12月1日から平成28年6月30日までの不正競争に基づく損害賠償5568万2000円及びこれに対する平成27年9月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 原審は,被告商品の製造・販売等の差止め,被告商品の廃棄及びこれを製造するために使用した金型の除却,並びに,損害賠償2537万4095円及びこれに対する平成27年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,被控訴人の請求を認容した。 (3) 控訴人は,原判決を不服として控訴した。 (4) 被控訴人は,附帯控訴し,原審で求めていた損害賠償5568万2000円及びこれに対する遅延損害金の請求を,損害賠償3011万2539円及びこれに対する遅延損害金の請求に減縮するとともに,平成28年7月1日から平成29年8月31日までの不正競争に基づく損害賠償872万6225円及びこれに対する同年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求を追加した。 2 前提事実本件の前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠により認められる事実)は,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2に記載のとおりである。 - 4 - 3 争点本件の争点は,原判決の「事実及び理由」欄の第2の3に記載のとおりである。 4 争点に関する当事者の主張本件の争点に関する当事者の主張は,下記(1)のとおり原判決を補正し,下記(2)及び(3)のとおり当審における当事者の補充主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3に記載のとおりである。 (1) 原判決の補正ア原判決6頁6行目に「異ならない」 記(2)及び(3)のとおり当審における当事者の補充主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3に記載のとおりである。 (1) 原判決の補正ア原判決6頁6行目に「異ならない」とあるのを「妨げられるものではない」と改める。 イ原判決7頁18行目に「S-Ⅱ」とあるのを「S-Ⅱ型」と改める。 ウ原判決8頁1行目に「L-Ⅱ」とあるのを「L-Ⅱ型」と改める。 エ原判決13頁9行目に「カタログに」とあるのを「カタログ」と改める。 オ原判決26頁9行目の後に,行を改め,次のとおり挿入する。 「 (6) 平成28年7月1日以降の被告商品の販売による損害額について控訴人は,平成28年7月1日から平成29年8月31日までの間において,被告商品の販売を継続している。 控訴人が上記期間内に販売した被告商品の販売価額は●●●●●●●●●●であり,限界利益は872万6225円である。 (7) 弁護士費用について本件事案の内容,事案の難易,訴訟の経緯及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,控訴人の不法行為と因果関係のある損害としての弁護士費用は,330万円である。 (8) 遅延損害金の起算日について遅延損害金の起算日は,①控訴人が平成24年12月から平成28年6月までの間に行った被告商品の販売による利益(限界利益)2681万2539円に,前記 - 5 -(7)の弁護士費用330万円を加算した3011万2539円については,訴状送達日の翌日である平成27年9月12日,②前記(6)の平成28年7月1日から平成29年8月31日までの間に行った被告商品の販売による利益(限界利益)872万6225円については,平成29年9月1日である。 仮に,訴状送達日である平成27年9月11日まで 8年7月1日から平成29年8月31日までの間に行った被告商品の販売による利益(限界利益)872万6225円については,平成29年9月1日である。 仮に,訴状送達日である平成27年9月11日までの取引か否かで区別するのであれば,遅延損害金の起算日は,③平成27年9月11日までの間に行った被告商品の販売による利益(限界利益)に,前記(7)の弁護士費用330万円を加算した2376万9141円については,訴状送達日の翌日である平成27年9月12日,④平成27年9月12日から平成28年6月30日までの間に行った被告商品の販売による利益(限界利益)634万3398円については,平成28年7月1日,⑤前記(6)の平成28年7月1日から平成29年8月31日までの間に行った被告商品の販売による利益(限界利益)872万6225円については,平成29年9月1日である。」カ原判決32頁2行目から5行目に「乙58の1の注文書記載の見積書No『PP-34001/TP33704』と乙58の3の受注カード記載のJobNo『TP-33704』となり,乙58の4の受注カード記載のJobNoが『PP-34001』と一致していること」とあるのを「乙58の1の注文書記載の見積書No『PP-34001/TP-33704』と,乙58の3・4の各受注カード記載の各JobNo.『TP-33704』,『PP-34001』とが一致していること」と改める。 キ原判決40頁の表中の「MT-S(PP)」の「製品別平均限界利益率」欄に「●●●●」とあるのを「●●●●●●」と改める。 ク原判決40頁19行目に「推定」とあるのを「推定した。」と改める。 ケ原判決42頁の表中の「MT-SⅡ(PP)」の「原告推定販売額」欄に「6,104,087」とあるのを「6, 。 ク原判決40頁19行目に「推定」とあるのを「推定した。」と改める。 ケ原判決42頁の表中の「MT-SⅡ(PP)」の「原告推定販売額」欄に「6,104,087」とあるのを「6,668,033」と改める。 コ原判決42頁の表中の「MT-SⅡ(PP)」の「推定限界利益」欄に - 6 -「●●●●●●●●」とあるのを「●●●●●●●●●」と改める。 サ原判決42頁の表中の「MT-LⅡ(PP)」の「原告推定販売額」欄に「86,262,977」とあるのを「88,072,488」と改める。 シ原判決42頁の表中の「MT-LⅡ(PP)」の「推定限界利益」欄に「●●●●●●●●」とあるのを「●●●●●●●●●」と改める。 ス原判決42頁の表中の「MT-S(PP)」の「製品別平均限界利益率」欄に「●●●●」とあるのを「●●●●●●」と改める。 セ原判決42頁9行目に「9条主張」とあるのを「9条で主張」と改める。 ソ原判決42頁11行目の後に,行を改め,次のとおり挿入する。 「 (5) 平成28年7月1日以降の被告商品の販売による損害額について控訴人が平成28年7月1日から平成29年8月31日までの間において被告商品の販売を継続していること,控訴人が上記期間内に販売した被告商品の限界利益が872万6225円であることは,認める。 (6) 弁護士費用について我が国においては,ドイツ連邦共和国等とは異なり,弁護士強制制度は採用されておらず,本人(代表者)や支配人が全ての訴訟行為を行うことが可能である。したがって,弁護士に委任を行うか否かは,完全に被控訴人の任意であるから,不競法4条に基づく損害賠償請求においては,弁護士費用は相当因果関係のある損害とは認められない。 を行うことが可能である。したがって,弁護士に委任を行うか否かは,完全に被控訴人の任意であるから,不競法4条に基づく損害賠償請求においては,弁護士費用は相当因果関係のある損害とは認められない。 被控訴人の控訴人に対する損害賠償請求は,不競法4条に基づくものであり,不法行為ではないし,これを措くとしても,不法行為に関する最高裁昭和44年2月27日判決・民集23巻2号441頁の射程は,一般人(個人)についてのものであり,債権者が法人である場合は射程外である。」(2) 控訴についてア当審における控訴人の補充主張 - 7 -(ア) 原告商品における形態の商品等表示性についてa 不規則充填物は,充填塔内部において気液接触効率を向上させることを目的とする充填物であり,充填された状態においては,その形態を外部から認識することはできないし,その形態を認識すること自体も容易ではないから,その形態に着目されることはないし,充填された状態の外観にも大きな相違はない。 そして,不規則充填物は,①濡れ面積が大きく,装置内の単位容積当たりの接触面積が大きいこと(容量係数),②空間率の大きいこと(圧損失),③充填物材質の密度が小さいこと(塔重量・指示枚),④腐食性の小さいこと,⑤価格の低廉なこと等の特性に応じて形態が選択されているのであり,形態の選択はその不規則充填物の持つ機能にほかならない。 このように,不規則充填物は,気液接触効率等の技術的機能及び効用を追求した結果,多種多様な形態をしているものである。種々の不規則充填物に特別顕著性を認めることは,不規則充填物の形態が商品等表示として保護される可能性を認めることとなり,競争が制限され,需要者においては経済的な不規則充填物の選択が困難となり,自由競争に重大な 充填物に特別顕著性を認めることは,不規則充填物の形態が商品等表示として保護される可能性を認めることとなり,競争が制限され,需要者においては経済的な不規則充填物の選択が困難となり,自由競争に重大な悪影響を及ぼすとともに,新規の不規則充填物開発へのインセンティブが失われ,産業の発達を阻害することになる(特許法1条参照)。 したがって,不規則充填物においては,他の同種商品もそれぞれ特徴的な形態を有していることからすると,原告商品が他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているとはいえない。 被控訴人は,不規則充填物においては,他の同種商品もそれぞれ特徴的な形態を有していることは,原告商品が他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していることの理由となるものではないと主張するが,「他の同種商品とは異なる顕著な特徴」が要件であるから,他の同種商品がそれぞれ特徴的な形態を有しているのであれば,原告商品の形態が「他の同種商品とは異なる顕著な特徴」とは認められないことは明らかである。 - 8 -b 原判決は,「商品の形態が商品の技術的機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合」にいう「商品の技術的機能及び効用」について,何ら具体的な判断を行うことなく,控訴人主張の「原告商品と同一の技術的機能及び効用」ではなく,被控訴人主張の「不規則充填物一般の機能及び効用」を意味すると判断したが,誤りである。 上記「商品の技術的機能及び効用」は,原告商品と同一の技術的機能及び効用を意味すると解さなければ,特定の性能(空間率・表面積等)を有する不規則充填物を半永久的に被控訴人が独占する結果を招来し,自由競争に対する重大な悪影響を及ぼす結果となる。 不規則充填塔の塔径と充填高さは,不規則充填物の種類・ の性能(空間率・表面積等)を有する不規則充填物を半永久的に被控訴人が独占する結果を招来し,自由競争に対する重大な悪影響を及ぼす結果となる。 不規則充填塔の塔径と充填高さは,不規則充填物の種類・サイズによって決定される。異なる形態の不規則充填物を用いると,不規則充填塔として同一の技術的機能及び効用を達成することは不可能である。原告商品の形態は,古くからある不規則充填物であるラシヒリング等と比較して,必要なスペックを達成する上で,充填塔の塔径を小さく,かつ,充填高さを低くすることができ,不規則充填物を設計(形態を決定)する上での最大の目的(解決課題)である充填塔をコンパクトにするという目的が達成できる。 このように,省スペースで高効率かつ高処理量を達成するには原告商品の形態をとらざるを得ず,他の形態の不規則充填物では代替できないのであるから,不規則充填物として他の形態が存在することをもって,原告商品の商品等表示性を肯定するのは誤りである。原判決は,いわば充填塔として同一性能(処理量,効率)を達成することが可能なことをもって,商品等表示性を肯定したと理解できるが,充填塔をコンパクトにするという技術的機能及び効用は,原告商品の形態を選択しなければ得られない機能及び効用であり,他の不規則充填物ではこの機能及び効用を達成することはできない。 被控訴人は,原告商品は,大きさの異なる種々の充填塔内に大量に投入され,充填層を形成し,各充填塔における条件下で様々な効果を生じるものであり,また, - 9 -充填塔に大量かつ無作為に充填され,その結果,原告商品の充填状態はランダムに決まってしまうから,「原告商品と同一の機能」が何を意味するのかは明らかとはいえないと主張するが,不規則充填物は,文字通り,不規則に充填されるのであるから,充填塔に ,原告商品の充填状態はランダムに決まってしまうから,「原告商品と同一の機能」が何を意味するのかは明らかとはいえないと主張するが,不規則充填物は,文字通り,不規則に充填されるのであるから,充填塔に大量かつ無作為に充填され,充填状態がランダムに決まってしまうことは当然であり,そのような充填状態を前提として,必要な性能(処理量及び吸収性能・蒸留性能)を達成できるかが判断されている。このように,不規則充填物の性能は,単体(1個)で判断されるものではないから,単位体積当たりの表面積を意味する比表面積(㎡/㎥)や充填個数(ケ/㎥),単位体積当たりの粉体等を充填した場合における空間の割合を意味する空間率(空隙率)が用いられている。 また,被控訴人は,異なる形態の不規則充填物を代替的に使用することが可能であるなどと主張するが,同一塔径,同一充填高さにおいて,原告商品と同一の処理量及び吸収性能・蒸留性能を達成することは不可能である(乙77)。 c 原告商品の形態は,その機能・効用のみに由来するものであり,この点からも商品等表示性は認められない。控訴人は,被控訴人に対し,再三にわたり,原告商品の形態のうち,技術的機能に由来しない形態(部分)についての主張立証を行うことを求めたが,被控訴人は,この点についての主張立証を何らしていない。 d 原判決は,東京高裁平成15年(ネ)第366号同年5月22日判決とは異なり,第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があれば,知的財産権による独占状態の影響が払拭されると判断したが,仮に参入する機会があったとしても,現実に参入者との間で競争が生じない限り,知的財産権による独占状態の影響が払拭されたと評価することはできない。医薬品以外の分野では,特許製品のシェア,参入のための投資余力,マーケテ あったとしても,現実に参入者との間で競争が生じない限り,知的財産権による独占状態の影響が払拭されたと評価することはできない。医薬品以外の分野では,特許製品のシェア,参入のための投資余力,マーケティング,販売先の確保等の条件を見極め,一定の条件を満たしたときに初めて同種競合製品をもって市場に参入することになるから,知的財産権が消滅してから直ちに第三者が同種競合製品をもって市場に参入するものとは限らない。控訴人も,被告商品の製造には金型代等の相応の - 10 -初期投資が必要であり,BtoB(企業間取引)の製品である被告商品は販路が開拓できなければ参入困難であったので,投資余力が確保でき,販売先が確保できたことから,被告商品の販売を開始したものである。 また,被控訴人における原告商品の宣伝広告は,実用新案権(乙2,3,甲119)の消滅の前後を通じて,専門誌に原告商品を掲載するという基本的な態様に変化はなく,実用新案権の消滅に伴い,実用新案権による独占により獲得した周知性に加えてさらなる周知性を獲得するための行動はしていない。被控訴人は,実用新案権による独占により獲得した周知性をそのまま主張しているにすぎないから,不競法2条1項1号の適用は認められない。 (イ) 原告商品と被告商品の誤認混同のおそれについて不競法2条1項1号の「混同」については,取引界の実情等を考慮すべきところ,不規則充填物は,完全にBtoBの製品で,その納入単位も㎥単位であり,その取引においては,納入前には具体的な引合い及び技術評価を受けて納入に至り,納入時にはフレコン袋又はPP袋に控訴人の登録商標である「MT-PAK」を明示し,被告商品にもそのほとんどに「MT-PAK」との刻印を行っているし,宣伝広告においても,「あの充填物がマツイマシン製でMT 時にはフレコン袋又はPP袋に控訴人の登録商標である「MT-PAK」を明示し,被告商品にもそのほとんどに「MT-PAK」との刻印を行っているし,宣伝広告においても,「あの充填物がマツイマシン製でMT-PAKとして登場!」(甲7)として,出所を明確に認識できるように表記している。したがって,このような取引界の実情を考慮すると,原告商品と被告商品の間には,出所の誤認混同は生じ得ない。 原判決は,甲108を根拠とするが,原告商品の形態が純粋に技術的機能のみに由来するものであることから,原告商品の写真を示して見積依頼が行われているにすぎない。 被控訴人は,控訴人に対しても,顧客が被告商品を原告商品であると誤認して,被告商品を見積依頼したことがうかがわれる(乙15の3,乙44の5)と主張するが,いずれも注文者は「テラレット相当品」の趣旨で発注したものである。控訴人は,乙44の6において,「MT-PAK」と明記しており,発注も「充填物 - 11 -(型式:MT-PAK,サイズ:MT-L,・・・)」としてされている(乙44の2)。 (ウ) 被告商品の製造・販売の有無について乙51の別紙7は,平成24年1月~平成28年6月のA社との取引を全て記載したものであるが,この中にMT-S0を販売したことは記載されていない。したがって,MT-S0を販売した事実はない。 原判決は,この乙51に触れることなく,ホームページ及びカタログにMT-S0が掲載されていること,原判決別紙被告商品説明書にMT-S0の実物の写真が掲載されていることから販売の事実を認定したが,不競法2条1項1号においても「譲渡し,引き渡し」と「譲渡若しくは引渡しのために展示し」とを不正競争行為として明示的に区別しているのであるから,カタログやホームページの掲載をもっ 事実を認定したが,不競法2条1項1号においても「譲渡し,引き渡し」と「譲渡若しくは引渡しのために展示し」とを不正競争行為として明示的に区別しているのであるから,カタログやホームページの掲載をもって「販売の事実」が認定できるわけがない。まして,上記の被告商品説明書においては,認否のためにわざわざ販売予定品を入手したものであり,販売の事実とは無関係である。 (エ) 損害発生の有無及びその額についてaNo27の取引における利益の額は,被控訴人が証明責任を負担する事実である。No27の取引に生じた倉庫代として,乙52の緑マーカーNo10~16の合計●●●●●を売上げから控除すべきであるから,No27の取引における利益の額は,原判決別紙3における主張のとおり,●●●●●●●●●である。 原判決は,周知性に関する重要な間接事実である原告商品の販売数量を被控訴人の報告書のみで認定しており,乙52が客観的証拠ではないから,No27の取引に生じた倉庫代●●●●●が認められないと判断したのであれば,著しく差別的・不合理な認定であり,自由心証の範囲を逸脱したものといわざるを得ない。 bNo32の取引における利益の額は,●●●●●●である。 乙42の4においては,品名欄1~3の取引額合計20万円に対し,2万円の値 - 12 -引き,すなわち,1割の値引きを行っているところ,被告商品は,品名欄2記載の製品(MT-PAKMT-LL型)であり,その販売額は●●●である。そうすると,2万円の値引きがどこにかかるものであるか不明である場合は,不競法5条2項の「利益」の証明責任が被控訴人にあることからすると,値引額は被告商品の販売額に優先的に充当されて,販売額は0円と解釈すべきことになる。そして,仕入価格は●●●●●で 明である場合は,不競法5条2項の「利益」の証明責任が被控訴人にあることからすると,値引額は被告商品の販売額に優先的に充当されて,販売額は0円と解釈すべきことになる。そして,仕入価格は●●●●●であるから,限界利益額は●●●●●●である。 仮に被告商品の販売額を0円と解することができなくても,値引額は各商品・役務の対価に按分して充当されると解するのが,商慣習・会計慣行に沿うものであることは明らかであるから,被告商品の販売額は●●●から1割の値引きを行ったものとして,●●●●●と認定されるべきである。 c 原判決は,平成27年9月24日~平成28年5月30日を譲渡日とする取引(原判決別紙4の取引No22~30,33,34,38,39)に係る損害に対し,平成27年9月12日からの遅延損害金を認めたが,最高裁昭和37年9月4日判決・民集16巻9号1834頁に実質的に相反する違法なものである。上記最高裁判決によると,不法行為に基づく損害賠償債務については,損害の発生と同時に遅滞に陥るところ,不競法4条に基づく損害賠償債務についてもこれと異なる解釈をする理由はない。上記取引に係る損害は譲渡日に発生したものであり,譲渡日よりも前に発生したと考える余地はない。 被控訴人は,仮に,控訴人指摘の各取引について,個別に損害賠償義務の遅滞が発生する時期を観念するとしても,控訴人主張の譲渡日ではなく,注文日を基準とすべきであると主張するが,法的な損害の発生時期を企業会計上の売上の計上時期と合致させなければならない理由は存在しないし,不競法2条1項1号に定める不正競争行為には,特許権の実施行為とは異なり「譲渡の申出」は含まれていない。 したがって,現実に対象商品を譲渡することが不正競争行為であり,現実の譲渡日(納品日)をもって損害賠償請求権は遅滞 定める不正競争行為には,特許権の実施行為とは異なり「譲渡の申出」は含まれていない。 したがって,現実に対象商品を譲渡することが不正競争行為であり,現実の譲渡日(納品日)をもって損害賠償請求権は遅滞に陥ると解すべきである。 イ被控訴人の主張 - 13 -(ア) 原告商品における形態の商品等表示性についてa 控訴人は,不規則充填物は,充填された状態においては,その形態を外部から認識することはできないし,その形態を認識すること自体も容易ではないから,その形態に着目されることはないし,充填された状態の外観にも大きな相違はないと主張するが,不規則充填物が充填塔に充填された使用態様について述べているにすぎず,不規則充填物の取引形態について述べているものではない。原告商品をはじめとする不規則充填物は,その形態が多数の広告,文献,雑誌等に写真や図付きで紹介されることが多く,実際の注文においてもその形状に基づいて見積依頼がされるものである(甲108)。 b 控訴人は,不規則充填物においては,他の同種商品もそれぞれ特徴的な形態を有していることからすると,原告商品が他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているとはいえないと主張するが,前者は後者の理由となるものではなく,むしろ,多種多様な形態を有する不規則充填物が存在することは,各企業が不規則充填物に要求される技術的機能に基づき独自の商品の形状を考案して製造・販売しており,不規則充填物の形状は技術的機能から必然的に求められる形状ではないことを裏付けるものである。原告商品の形態は,①中央リングと中央リングの周囲から外側に向かって放射状に延伸する多数の周辺リングからなり,これら周辺リングと中央リングとは略直交するように一体化されている形状について共通した特徴を有 品の形態は,①中央リングと中央リングの周囲から外側に向かって放射状に延伸する多数の周辺リングからなり,これら周辺リングと中央リングとは略直交するように一体化されている形状について共通した特徴を有している点,②原告商品のうちL型,M型,S型については,上記①に加えて,周辺リングの外側を外周リングで囲繞する構成を付加した形状を有する点,③原告商品のうちS-Ⅱ型,LL型,L-Ⅱ型については,上記①及び②に加えて,隣接する周辺リング同士を連結部材で連結するとともに,周辺リングの一部には外環リングと直交する半径方向に縦棒を付加した構造を有する点において,原判決認定の昭和46年頃,昭和47年頃,平成22年1月当時の多数の形状の不規則充填物(甲1,112,113)とは,明らかに異なる特徴を有している。 c 控訴人は,「商品の形態が商品の技術的機能及び効用を実現するた - 14 -めに他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合」にいう「商品の技術的機能及び効用」は,原告商品と同一の技術的機能及び効用を意味すると主張するが,控訴人の主張する「原告商品と同一の技術的機能及び効用」が何を意味するのかは明らかでない。原告商品は,大きさの異なる種々の充填塔内に大量に投入され,充填層を形成し,各充填塔における条件下で様々な効果を生じるものであり,また,充填塔に大量かつ無作為に充填され,その結果,原告商品の充填状態はランダムに決まってしまうから,「原告商品と同一の機能」が何を意味するのかは明らかとはいえない。また,控訴人の主張を前提にすると,全ての商品は独自の機能を有することから,およそ全ての商品について不競法2条1項1号による商品等表示性を否定する結果を招くことになり,相当でない。 d 控訴人は,不規則充填塔の塔径と充填 全ての商品は独自の機能を有することから,およそ全ての商品について不競法2条1項1号による商品等表示性を否定する結果を招くことになり,相当でない。 d 控訴人は,不規則充填塔の塔径と充填高さは,不規則充填物の種類・サイズによって決定され,異なる形態の不規則充填物を用いると,不規則充填塔として同一の技術的機能及び効用を達成することは不可能であって,省スペースで高効率かつ高処理量を達成するには原告商品の形態をとらざるを得ず,他の形態の不規則充填物では代替できないなどと主張する。 たしかに,新規の不規則充填塔の塔径と充填高さは,当初想定した不規則充填物の種類・サイズによる影響を受けるが,処理ガス,供給液の性状,要求される処理精度,充填物の充填状態等の不規則充填塔に関する諸条件も考慮して決定されるものであり,不規則充填物の種類・サイズのみによって決定するものではない。 また,既存の不規則充填塔内の不規則充填物を更新・交換する場合には,その不規則充填塔に要求される性能を達成できる限りにおいて,異なる形態の不規則充填物を代替的に使用することが可能である。 現に,被控訴人及びその販売代理店に対する顧客企業からの見積依頼において,塔径と充填高さが既に決定している充填塔に対して使用することが予定される不規則充填物に関し,その形状にはこだわらない旨を示して,不規則充填物の選定や見積を依頼する実例が存在する(甲125)。 - 15 -原告商品と同等の不規則充填物としての機能を有し原告商品と代替して使用される不規則充填物としては,カスケードミニリング(CMR。甲117),ネットリング(甲115の1・2),TPリング(甲126)等が挙げられる。特にカスケードミニリングについては,控訴人商品カタログ(甲127)において,ポールリング ドミニリング(CMR。甲117),ネットリング(甲115の1・2),TPリング(甲126)等が挙げられる。特にカスケードミニリングについては,控訴人商品カタログ(甲127)において,ポールリング等の他社製充填物と比べて,①充填量及び充填重量を極端に抑えることができ,②タワー(不規則充填塔)の全高を抑えることができることが記載されており,控訴人主張の原告商品の形態の特性と同じ特性を有する商品として製造販売されている。 そして,現に,同じ不規則充填塔において,原告商品と他の形状の不規則充填物とを選択的に購入・使用している実例や,原告商品に代えて他の形状の不規則充填物を購入・使用している実例が存在する(甲125)。 e 控訴人は,原告商品の形態は,その機能・効用のみに由来するものであり,この点からも商品等表示性は認められないと主張するが,原告商品の形態は,不規則充填物たる商品の技術的機能から必然的に求められる形態ではない。不規則充填物には比表面積の確保,空間率が大きい等の技術的機能が要求されるが,各企業は不規則充填物に要求される技術的機能に基づき独自の商品の形状を考案して製造・販売しており,原告商品を含めた不規則充填物の形状は,不規則充填物に要求される技術的機能から必然的に求められる形状ではない。 f 控訴人は,仮に第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があったとしても,現実に参入者との間で競争が生じない限り,知的財産権による独占状態の影響が払拭されたと評価することはできないと主張するが,知的財産権の権利期間満了後は,相当期間内に第三者が同種競合製品をもって参入してきたか否かを問わず,知的財産権による独占状態は払拭されるものである。控訴人の主張によると,知的財産権の権利期間満了後,何十年もの長期間が経過して は,相当期間内に第三者が同種競合製品をもって参入してきたか否かを問わず,知的財産権による独占状態は払拭されるものである。控訴人の主張によると,知的財産権の権利期間満了後,何十年もの長期間が経過しても,現実に同種競合製品が市場に参入して来ない限り,不競法2条1項1号による保護が受けられないことになってしまう。知的財産権をかつて有していた者が,そうでない者 - 16 -と同等あるいはそれ以上の営業努力をしたにもかかわらず,かえって後者よりも不利に取り扱われるのは,不合理である。 本件は,被控訴人による顕著な企業努力を経て原告商品の具体的形態が商品等表示性を有するに至った事案であって,実用新案権の存続期間が満了し,この権利による独占状態の影響が払拭された後でもなお,原告商品が,長期間にわたり独占的・継続的に大量に販売され,かつ,極めて多数のカタログ,パンフレット,化学工業誌,展示会等による広告宣伝活動がされていることから,原告商品の三つのタイプの形状(本件形状1~3)が,いずれも原告商品の出所を表示するものとして周知となったということができる。 (イ) 原告商品と被告商品の誤認混同のおそれについて控訴人は,不規則充填物は,完全にBtoBの製品で,その納入単位も㎥単位であり,その取引においては,納入前には具体的な引合い及び技術評価を受けて納入に至り,納入時にはフレコン袋又はPP袋に控訴人の登録商標である「MT-PAK」を明示しているのであって,このような取引界の実情を考慮すると,原告商品と被告商品の間には,出所の誤認混同は生じないと主張する。 しかし,被告商品は,ほとんど同一と言っていいほど原告商品と酷似しているため,実際に,被告商品が販売されるようになってから被告商品を原告商品と誤認して注文又は見積もりの問合せがさ いと主張する。 しかし,被告商品は,ほとんど同一と言っていいほど原告商品と酷似しているため,実際に,被告商品が販売されるようになってから被告商品を原告商品と誤認して注文又は見積もりの問合せがされた事例が複数存在しているし(甲9,107),控訴人に対しても,顧客が被告商品を原告商品であると誤認して,被告商品を見積依頼したことがうかがわれる(乙15の3,乙44の5)。 (ウ) 被告商品の製造・販売の有無について控訴人は,乙51の別紙7にMT-S0を販売したことが記載されていないから,MT-S0を販売した事実はないと主張するが,乙51の別紙7には控訴人が販売した被告商品の販売事実がすべて網羅的に記載されていることは,他の会計資料等から裏付けられていない。 また,控訴人は,カタログやホームページの掲載をもって販売の事実が認定でき - 17 -るわけがないと主張するが,カタログやホームページの掲載は,MT-S0型の販売を強くうかがわせる事実である。 さらに,控訴人は,原判決別紙被告商品説明書においては,認否のためにわざわざ販売予定品を入手したものであり,販売の事実とは無関係であると主張するが,控訴人は,販売予定品を入手したこと,すなわち,MT-S0型を販売するために控訴人がMT-S0型を入手したことを認めている。 (エ) 損害発生の有無及びその額についてa 控訴人は,No27の取引に生じた倉庫代として,乙52の緑マーカーNo10~16の合計●●●●●を売上げから控除すべきであると主張するが,乙52は,単なる控訴人従業員作成の控訴人主張に沿った陳述書にすぎない。 被控訴人は,上記●●●●●が他の被告商品の販売に使用された経費であり,No27の取引に関する倉庫費ではないとして争っているのであるから,控 なる控訴人従業員作成の控訴人主張に沿った陳述書にすぎない。 被控訴人は,上記●●●●●が他の被告商品の販売に使用された経費であり,No27の取引に関する倉庫費ではないとして争っているのであるから,控訴人主張の立証のためには,単なる控訴人従業員の陳述書ではなく,会計資料,伝票類等の客観的な証拠が必要である。それにもかかわらず,控訴人は,自らの主張を裏付ける会計資料,伝票類等の客観的な証拠を何ら提出していないのであるから,それによる不利益を負うのは当然である。 控訴人は,原判決の上記倉庫料の認定は原告商品の販売数量の認定と比べて差別的である旨の主張をするが,控訴人は原告商品の販売数量について実質的に争っていないし,その認定の根拠となった甲4,120,121は,被控訴人の会計資料に基づいて作成された詳細かつ具体的な報告書であり,その信用性に疑いの余地はない。 b 控訴人は,No32の取引における利益の額について,乙42の4において,2万円の値引きがどこにかかるものであるか不明である場合は,不競法5条2項の「利益」の証明責任が被控訴人にあることからすると,値引額は被告商品の販売額に優先的に充当されて,販売額は0円と解釈すべきことになるなどと主張する。 - 18 -しかし,乙42の4には,被告商品を●●●で販売したことが記載されているところ,この売上額からさらに値引きをしたという特殊事情があるのであれば,それは控訴人にとって有利な事実であるから,控訴人が「値引き」の存在及びその金額を会計資料等の客観的証拠に基づき主張立証すべきである。それにもかかかわらず,控訴人は,「値引き」の存在及びその金額を会計資料等の客観的証拠に基づき主張立証していないのであるから,その不利益は控訴人が負うべきであり,乙42の4の記載に反し,販売 ある。それにもかかかわらず,控訴人は,「値引き」の存在及びその金額を会計資料等の客観的証拠に基づき主張立証していないのであるから,その不利益は控訴人が負うべきであり,乙42の4の記載に反し,販売額は0円であると認定すべき理由はない。 c 控訴人は,原判決が,平成27年9月24日~平成28年5月30日を譲渡日とする取引(原判決別紙4の取引No22~30,33,34,38,39)に係る損害に対し,平成27年9月12日からの遅延損害金を認めたことは,最高裁判所の判例に実質的に相反する違法なものであると主張する。 しかし,原判決は,被控訴人の請求の範囲内で判決したものであるから,控訴人の主張は失当である。 仮に,控訴人指摘の各取引について,個別に損害賠償義務の遅滞が発生する時期を観念するとしても,控訴人主張の譲渡日ではなく,注文日を基準とすべきである。 (3) 附帯控訴についてア被控訴人の主張(ア) No29の「仕入価格等」における「横持費」の除外について横持費とは,顧客への出荷までの間にA社において被告商品を保管できない場合に,A社から外部倉庫へ一時保管するために運搬する費用であるから,仮に横持費を費消したとすると,外部倉庫へ一時保管した倉庫関連費用が存在するはずである。しかし,そのような費用は控訴人提出証拠の中に見当たらない。 したがって,No29の取引において,控訴人が横持費を費消したとは認められないから,仕入価格等から横持費を除外すべきである。 (イ) No30の「仕入価格等」における「横持費」「荷降ろし費」の除外 - 19 -について控訴人主張の「荷降ろし費」とは,「顧客の都合で製品の受取りがすぐにはできなくなり,荷降ろしの時間が午後にずれ込んだため,急遽現地の る「横持費」「荷降ろし費」の除外 - 19 -について控訴人主張の「荷降ろし費」とは,「顧客の都合で製品の受取りがすぐにはできなくなり,荷降ろしの時間が午後にずれ込んだため,急遽現地の外注人員を手配した費用」であるが,荷降ろし費が顧客の都合で発生した費用であるのなら,当然,顧客が負担するか,顧客に対して追加請求できる費用であり,荷降ろし費を販売費用と認めることはできない。しかも,控訴人は,乙54の1記載のように,他の被告商品の販売に係る費用を別の取引の費用にするような会計処理をしており,この点からも,No30の取引において,控訴人主張の荷降ろし費が発生したとは認められない。 また,横持費が認められないことは,前記(ア)と同様である。 したがって,No30の取引において,荷降ろし費及び横持費が発生したとは認められないから,仕入価格等からこれらを除外すべきである。 (ウ) No34の「販売価格」について原判決は,No34の「販売価格」について,乙44の6の記載を根拠としたが,乙44の6は,見積書にすぎず,しかも,乙44の2に「MT-SⅡ」及び「MT-LL」の記載がないことを被控訴人が指摘した後に提出されたものであり,信用性がないから,乙44の6を根拠に販売価格を認定することはできない。 (エ) No35の「販売価格」及び「仕入価格等」について原判決は,「販売価格」を明確に示す注文書等の証拠がないことを認めながら,乙51書面における説明は不合理とはいえないとして,販売価格及び仕入価格等を認定したが,商品の売上額は仕入価格等の割合に応じて定まるものではなく,No35の取引と同等の被告商品の取引と比較して販売価格等を認定すべきである。 (オ) No37の「限界利益」がマイナスであることについて 売上額は仕入価格等の割合に応じて定まるものではなく,No35の取引と同等の被告商品の取引と比較して販売価格等を認定すべきである。 (オ) No37の「限界利益」がマイナスであることについてNo37の赤字販売を侵害者利益の算出に当たって考慮することは,不正競争品の購入経費を経費として差し引くことになり,不正競争品の在庫品を廃棄する場合には損害額の算定において購入経費が考慮されないことと比べると,不正競争を行 - 20 -った者が実際に不正競争品を流通頒布しているにもかかわらず,算出された侵害者利益の額が赤字分だけ減少する結果を招くことになるから,不当である。 したがって,不正競争に基づく損害賠償においては,侵害者利益の算出において赤字販売取引を除外すべきである。 (カ) No40の「限界利益」がマイナスであることについて前記(オ)と同様に,侵害者利益の算出において赤字販売取引を除外すべきである。 イ控訴人の主張(ア) No29の「仕入価格等」における「横持費」の除外について控訴人が横持費をA社から請求されて同社に支払ったことは事実であり(乙39の1),仮にNo29の取引がなければ,A社に支払っていない費用であるから,No29の取引に直接要した費用である。 したがって,上記横持費は,不競法5条2項による「利益」を算定するに当たり,売上げから控除すべき費用である。 (イ) No30の「仕入価格等」における「横持費」「荷降ろし費」の除外について横持費及び荷降ろし費は発生している(乙40の1)。 仮に荷降ろし費が顧客に請求できるものであったとしても,現実に請求していない以上(乙40の3),不競法5条2項による「利益」を算定するに当たり,売上げから控除すべきである。同 る(乙40の1)。 仮に荷降ろし費が顧客に請求できるものであったとしても,現実に請求していない以上(乙40の3),不競法5条2項による「利益」を算定するに当たり,売上げから控除すべきである。同条項は,「利益を受けているとき」と規定しているのであって,「利益を受け得たとき」等とは規定していない。 (ウ) No34の「販売価格」について売主が提出した見積り(乙44の6)よりも高額の取引が成約することはあり得ないから,乙44の6を根拠に販売価格を認定することができる。 No34の取引についての控訴人の主張は一貫しており,被控訴人が枝葉末節の主張をしてくることを予想していなかったため,被控訴人の主張に応じて,乙44 - 21 -の6・7を提出したにすぎない。 (エ) No35の「販売価格」及び「仕入価格等」について被控訴人は,No35の販売価格及び仕入価格等は,No35と同等の被告商品の取引と比較して認定すべきであると主張するが,被控訴人の主張は,極めて恣意的であり,証明責任を踏まえると,およそ採用できるものではない。 (オ) No37及びNo40の「限界利益」がマイナスであることについて不競法5条2項において被控訴人の受けた損害と推定されるのは,控訴人が受けた利益の額であるから,個別の取引を細分化して,たまたま赤字の取引があったとしても,その額を控除しない理由はない。控訴人は,その額の分だけ利益を受けていないからである。全ての取引(原判決別紙No1~40の取引)を総体的に見て,これらの取引の全売上げから全経費(変動費)を控除すれば,控訴人が受けた利益の額が算出でき,その場合にはたまたま赤字の取引があったとしても,全体の取引として考慮されることとなる。 また,No40は独立の取引ではなく, から全経費(変動費)を控除すれば,控訴人が受けた利益の額が算出でき,その場合にはたまたま赤字の取引があったとしても,全体の取引として考慮されることとなる。 また,No40は独立の取引ではなく,No39にトラブルが発生したことに基づく一体の取引である。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人の請求(当審における追加請求を含む。)は,被告商品の製造・販売等の差止め,控訴人の占有する被告商品の廃棄,被告商品の製造のための金型の除却,損害賠償金3784万1791円及びうち1779万0120円に対する平成27年9月12日から,うち1047万5446円に対する平成28年7月1日から,うち957万6225円に対する平成29年9月1日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきであるところ,これと異なる判断をした原判決は一部失当であって,控訴人の本件控訴及び附帯控訴はいずれも一部理由があるから,原判決主文4項及び5項を本判決主文2項及び3項のとおりに変更すべきものと判断する。 - 22 -その理由は,下記1のとおり原判決を補正し,下記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を示し,下記3のとおり附帯控訴についての被控訴人の主張に対する判断を示すほかは,原判決「事実及び理由」欄の第4に記載のとおりである。 1 原判決の補正(1) 原判決44頁20行目に「「S-Ⅱ型,」とあるのを「「S-Ⅱ型」,」と改める。 (2) 原判決49頁13行目に「全て形状」とあるのを「全ての形状」と改める。 (3) 原判決51頁9行目及び12行目にそれぞれ「説明ともに」とあるのをいずれも「説明とともに」と改める。 (4) 原判決5 頁13行目に「全て形状」とあるのを「全ての形状」と改める。 (3) 原判決51頁9行目及び12行目にそれぞれ「説明ともに」とあるのをいずれも「説明とともに」と改める。 (4) 原判決52頁19行目に「全て原告商品」とあるのを「全ての原告商品」と改める。 (5) 原判決59頁17行目に「(周知性)」とあるのを削除し,同18行目の「周知になっていること」の直後に「(周知性)」を加える。 (6) 原判決61頁20行目に「効能」とあるのを「効用」と改める。 (7) 原判決62頁18行目に「特長」とあるのを「特徴」と改める。 (8) 原判決65頁7行目に「原告商品の形状」とあるのを「原告商品のうちS-O型の形状」と改める。 (9) 原判決65頁23行目に「原告商品の形状」とあるのを「原告商品のうちL型,M型,S型の形状」と改める。 (10) 原判決66頁12行目から13行目に「原告商品の形状」とあるのを「原告商品のうちS-Ⅱ型,LL型,L-Ⅱ型の形状」と改める。 (11) 原判決66頁19行目に「経過していること」とあるのを「経過していたところ」と改める。 (12) 原判決67頁8行目に「LⅡ型」とあるのを「L-Ⅱ型」と改める。 - 23 -(13) 原判決68頁6行目に「侵害のおそれがある者」とあるのを「侵害されるおそれがある者」と改める。 (14) 原判決68頁25行目に「争いない。」とあるのを「争いがない。」と改める。 (15) 原判決69頁6行目に「別紙1~3に」とあるのを「別紙1~3の」と改める。 (16) 原判決69頁9行目~16行目を,次のとおり改める。 「 控訴人は,No27の取引に生じた倉庫代として,乙52の緑マーカーNo10~16の合計●●●●●を 別紙1~3の」と改める。 (16) 原判決69頁9行目~16行目を,次のとおり改める。 「 控訴人は,No27の取引に生じた倉庫代として,乙52の緑マーカーNo10~16の合計●●●●●を売上げから控除すべきであると主張する。 しかし,証拠(乙51,52)によると,乙52の別紙1の緑マーカーNo10~16は,乙51の別紙7に番号を付したものであり,乙51の別紙7は,控訴人の社内システムである見積管理システムから必要な情報だけを抽出したものであると認められる。そして,乙52の別紙1の8頁及び13頁によると,緑マーカーNo10~16の倉庫費合計●●●●●は,No27の取引のJobNoである「●●●●●●●●」(同8頁)とは異なるJobNoである●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の取引に係る費用として,控訴人の社内システムに登録されている事実が認められる。 また,A社の作成に係る納品書(乙63の3,乙64の4,乙55の5,乙65の3,乙66の4,乙67の3,乙68の4)によると,上記の控訴人の社内システムに登録されているJobNoである●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の取引に係る費用として,それぞれ緑マーカーNo10~16の倉庫費に対応する金額の倉庫費が記載されている事実が認められる。 これに対し,No27の取引に係る納品書(乙37の1),請求書(乙37の2),注文申込書(乙37の3)のいずれにも,倉庫費を経費として支払ったこと - 24 -は記載されていない。 以上の事実によると,乙52の別紙1の緑マーカーN 37の1),請求書(乙37の2),注文申込書(乙37の3)のいずれにも,倉庫費を経費として支払ったこと - 24 -は記載されていない。 以上の事実によると,乙52の別紙1の緑マーカーNo10~16の倉庫費合計●●●●●は,控訴人の社内システムに登録されているJobNoの取引に係る費用であることを推認することができる。 もっとも,控訴人従業員の陳述書(乙52)には,乙52の別紙1の緑マーカーNo10~16の倉庫費合計●●●●●は,No27の取引に係る倉庫費を他の取引に代替え処理した旨が記載されており,乙52の別紙1によると,緑マーカーNo10~16は,それぞれのJobNoの取引に係る不規則充填物の登録とは別に,倉庫費のみが連続的に登録されている事実(同13頁),No27の取引のMM入力日である「2015/11/2」(同8頁)と,緑マーカーNo10及び11のMM入力日である「2015/11/2」(同13頁)とは一致し,緑マーカーNo12~16のMM入力日である「2015/11/11」(同13頁)とは近接している事実が認められ,緑マーカーNo10,11,13~15のJobNoである●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の取引に係る納品書(乙63の3,乙64の4,乙65の3,乙66の4,乙67の3)の「MT-PAKLⅡ PP」又は「MT-LⅡ PP」に係る倉庫代である旨の記載と,これらの取引に係る発注書,受注カード,見積書等(乙63の1・2,乙64の1~3,乙65の1・2,乙66の1~3,乙67の1・2)の不規則充填物の種類に係る記載(「カスケードミニリング」,「CMR」など)とは整合しない事実が認められる。これらの事実は,乙52の別紙1の緑マーカーNo10~16の 乙66の1~3,乙67の1・2)の不規則充填物の種類に係る記載(「カスケードミニリング」,「CMR」など)とは整合しない事実が認められる。これらの事実は,乙52の別紙1の緑マーカーNo10~16の倉庫費合計●●●●●が控訴人の社内システムに登録されているJobNoの取引に係る費用であるとの推認を一定程度揺るがせるものではあるが,この推認を打ち破ったうえで,上記●●●●●がNo27以外の取引ではなく,No27の取引に係る費用であることまでも,推認させるものということはできない。 以上によると,控訴人の主張は理由がないし,この認定が著しく差別的・不合理 - 25 -なものであり,自由心証の範囲を逸脱したものということもできない。」(17) 原判決70頁14行目~20行目を,次のとおり改める。 「 No32の取引における注文書(乙42の4)には,「充填物費(型式:MT-PAKMT-LL型,材質:PP)」の金額欄に●●●と記載されているが,これと「充填物費(型式:1Bポールリング,材質:PP)」及び「梱包・輸送費及び掛費用」の合計は20万円であるところ,2万円の値引きにより,合計金額は18万円と記載されている。上記注文書において,どの費目に対し2万円の値引きがされたのかは明らかではないから,すべての費目に対し1割ずつの値引きを行ったものと認めるのが相当である。したがって,No32の販売価格は●●●●●と認められる。これに反する控訴人の主張及び被控訴人の主張は,いずれも採用することができない。」(18) 原判決71頁7行目の「乙51書面」の直後に「及び控訴人の主張」を加え,同頁9行目の「証拠がないため」を削る。 (19) 原判決71頁14行目~23行目を,次のとおり改める。 「 No37の取引は,不競法2条1項1号 51書面」の直後に「及び控訴人の主張」を加え,同頁9行目の「証拠がないため」を削る。 (19) 原判決71頁14行目~23行目を,次のとおり改める。 「 No37の取引は,不競法2条1項1号の不正競争行為に当たるものであるから,違法な行為である。控訴人がそのような違法な行為を行って損失を被ったとしても,それは,控訴人が行うことが許されない行為を行って損失を被ったにすぎず,他の取引と一連一体のものと見るべき特段の事情があれば格別,そのような事情がない限り,その損失額を他の取引と通算して損害額を算定することはできないというべきである。しかるところ,No37の取引態様は,控訴人に対し顧客からの見積依頼があると,控訴人は,製造委託先であるA社に見積依頼を行い,A社から取得した見積りを踏まえて,顧客に対し見積りを行って,商談が成立すると,顧客から控訴人への発注,控訴人からA社への発注に至るというものであり,控訴人は,被告商品の在庫を持たないというものである(乙9,51,弁論の全趣旨)から,このような取引態様からすると,No37の取引は,その余のNo1~36,38~40の取引と一連一体のものとみるべきものではなく,他に一連一体のもの - 26 -とみるべき事情も認められない。そうすると,No37の取引(譲渡)は,販売価格を超える仕入価格等の費用を要したものであるから,その限界利益は,0円と認めるのが相当である。これに反する控訴人の主張は採用することができない。」(20) 原判決72頁8行目~17行目を,次のとおり改める。 「 控訴人は,No40の取引は,No39のトラブル分の購入であり,No39と実質的には同一案件であると主張するところ,控訴人従業員がこれに沿う陳述をしており(乙51),No40の販売価格が0円であることもこれを No40の取引は,No39のトラブル分の購入であり,No39と実質的には同一案件であると主張するところ,控訴人従業員がこれに沿う陳述をしており(乙51),No40の販売価格が0円であることもこれを裏付けるものであることからすると,控訴人主張のとおり,No40の取引は,No39の取引と一連一体の取引と認められる。 他方,No39及び40の取引態様は,前記キのとおりであって,No39及び40の取引がその余のNo1~38の取引と一連一体のものとは認められない。 そうすると,No39及び40の取引(譲渡)の限界利益は,販売価格●●●●●●●●●●●●●●●●を超える仕入価格等の費用●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を要したものであるから,0円と認めるのが相当である。控訴人の主張は,この限度で理由があるが,これを超える部分は採用できず,また,これに反する被控訴人の主張は採用できない。」(21) 原判決73頁20行目に「被告による被告商品の取引は別紙4計算書記載のとおり」とあるのを「被告による平成24年12月1日から平成28年6月30日までの間の被告商品の取引は,本判決別紙計算書記載のとおり」と改める。 (22) 原判決73頁21行目に「2537万4095円」とあるのを「2581万5566円」と改める。 (23) 原判決73頁24行目に「適用すべき者の」とあるのを「適用すべき旨の」と改める。 (24) 原判決74頁3行目~4行目を,次のとおり改める。 「 (6) 控訴人による平成28年7月1日から平成29年8月31日までの間の被告商品の取引の限界利益の合計額が872万6225円であることは,当事者間に - 27 -争いがない。 (7) 被控訴人は,本件訴訟の追行を弁護士に委任したもの 9年8月31日までの間の被告商品の取引の限界利益の合計額が872万6225円であることは,当事者間に - 27 -争いがない。 (7) 被控訴人は,本件訴訟の追行を弁護士に委任したものであるところ,本件事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を考慮すると,弁護士費用330万円は,控訴人による不正競争と相当因果関係に立つ損害と認められる。 (8) 以上によると,被控訴人の損害額は,3784万1791円であると認められる。 そして,これに対する遅延損害金の起算日は,次のとおりとするのが相当である。 ア不競法2条1項1号は,他人の周知商品等表示を使用した商品を譲渡して他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為を不正競争としているのであるから,納品日を基準として,平成24年12月1日から平成27年9月12日までの間の不正競争(No1~21,31,32,35,36の取引)による損害金1624万0120円に対し,各不正競争以降の日である平成27年9月12日イ平成27年9月13日から平成28年6月30日までの間の不正競争(No22~30,33,34,37~40)による損害金957万5446円に対し,各不正競争の日より後の日である平成28年7月1日ウ平成28年7月1日から平成29年8月31日までの間の不正競争による損害金872万6225円に対し,各不正競争の日より後の日である平成29年9月1日エ弁護士費用330万円については,前記ア~ウの割合に応じて,うち155万円に対し平成27年9月12日,うち90万円に対し平成28年7月1日,うち85万円に対し平成29年9月1日」(25) 原判決74頁7行目から9行目に「2537万4095円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27 ,うち90万円に対し平成28年7月1日,うち85万円に対し平成29年9月1日」(25) 原判決74頁7行目から9行目に「2537万4095円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年9月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金」とあるのを「3784万1791円及びうち1779万0120円に対する平成27年9月12日から,うち1047万5446円に対する平 - 28 -成28年7月1日から,うち957万6225円に対する平成29年9月1日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金」と改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断(1) 原告商品における形態の商品等表示性についてア控訴人は,不規則充填物においては,他の同種商品もそれぞれ特徴的な形態を有していることからすると,原告商品が他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているとはいえないなどと主張する。 しかし,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおり,特別顕著性を認めるためには,商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していれば足り,他の同種商品の形態が同様のものであることまで要するものではないから,不規則充填物において,他の同種商品がそれぞれ特徴的な形態を有しているからといって,そのことから直ちには,原告商品の特別顕著性が否定されるものではない。そして,原告商品の形態が客観的に同種商品とは異なる顕著な特徴を有していることは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりである。また,控訴人は,種々の不規則充填物に特別顕著性を認めることは,不規則充填物の形態が商品等表示として保護される可能性を認めることとなり,競争が制限されるなどと主張するが,特別顕著性及び周知性を有する不規則充 訴人は,種々の不規則充填物に特別顕著性を認めることは,不規則充填物の形態が商品等表示として保護される可能性を認めることとなり,競争が制限されるなどと主張するが,特別顕著性及び周知性を有する不規則充填物の形態が商品等表示に該当することを認めたからといって,競争が不当に制限されるということはできないから,控訴人の主張は理由がない。 イ控訴人は,「商品の形態が商品の技術的機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合」にいう「商品の技術的機能及び効用」は,不規則充填物一般の技術的機能及び効用ではなく,原告商品と同一の技術的機能及び効用を意味するものであり,省スペースで高効率かつ高処理量を達成するには原告商品の形態をとらざるを得ず,他の形態の不規則充填物では代替できないのであるから,不規則充填物として他の形態が存在することをもって,原告商品の商品等表示性を肯定するのは誤りであると主張する。 - 29 -しかし,控訴人主張のように,「商品の形態が商品の技術的機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合」にいう「商品の技術的機能及び効用」を,原告商品のような個別具体的な商品の厳密な意味での技術的機能及び効用を意味するものとまで解すべき理由はない。 不規則充填物として,多くの商品が様々な形態で製造され,販売・使用されていること,原告商品においても,七つの型式で,表面積(㎡/㎥)や空間率(%)は異なる(原判決別紙原告商品説明書2項)ところ,いずれも相応の販売数量が認められることは,前記1のとおり補正して引用する原判決の認定するとおりであるし,証拠(甲125)によると,不規則充填物の購入に当たり,原告商品と他の形態の不規則充填物とを比較の対象とするなど, が認められることは,前記1のとおり補正して引用する原判決の認定するとおりであるし,証拠(甲125)によると,不規則充填物の購入に当たり,原告商品と他の形態の不規則充填物とを比較の対象とするなど,たとえ原告商品と他の形態の不規則充填物とが全く同一の表面積(㎡/㎥)や空間率(%)を有するものではないとしても,それらの間に代替性を認めている取引の実情も認められる。そうすると,原告商品の有する不規則充填物としての技術的機能及び効用は,原告商品の形態をとらざるを得ず,他の形態の不規則充填物では代替できないということもできない。 したがって,控訴人の主張は,理由がない。 ウ控訴人は,原告商品の形態は,その機能・効用のみに由来するものであり,この点からも商品等表示性は認められないと主張する。 しかし,商品の形態が商品の技術的な機能及び効用に由来するものであっても,他の形態を選択する余地がある場合は,当該商品の形態につき,特別顕著性及び周知性が認められる限り,不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当することは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりである。そして,充填塔におけるガス吸収操作などの機能・効用を果たすために,原告商品とは異なる他の形態を選択する余地があることは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりであるし,原告商品の有する不規則充填物としての技術的機能及び効用は,他の形態の不規則充填物では代替できないといえないことは,前記イのとおりである。 - 30 -したがって,控訴人の主張は,理由がない。 エ控訴人は,仮に第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があったとしても,現実に参入者との間で競争が生じない限り,知的財産権による独占状態の影響が払拭されたと評価することはでき 。 エ控訴人は,仮に第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があったとしても,現実に参入者との間で競争が生じない限り,知的財産権による独占状態の影響が払拭されたと評価することはできないと主張する。 しかし,知的財産権の存在による独占状態は,知的財産権の存続期間が経過することにより解消し,知的財産権の存続期間中の独占状態に基づき生じた周知性も,存続期間満了後の期間の経過に伴って漸減し,存続期間満了後相当期間が経過した後は,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響は払拭されたものと評価することができる。 そして,被告商品の販売を開始した平成24年12月までの間に,原告商品のうちS-O型については,実用新案権1の存続期間が満了した昭和54年6月23日から約30年間,原告商品のうちL型,M型,S型については,実用新案権2の存続期間が満了した昭和57年12月4日から約30年間,原告商品のうちS-Ⅱ型,LL型,L-Ⅱ型については,実用新案権3の存続期間が満了した平成9年2月26日から約15年間が経過しており,第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会が十分にあったと評価し得ることは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりである。 また,控訴人は,被控訴人による原告商品の宣伝広告が実用新案権の存続期間満了の前後を通じて基本的に変化がない旨を指摘するが,商品の形態の商品等表示性の要件である周知性を基礎付ける宣伝広告が,知的財産権の存続期間満了の前後を通じて同様のものであったからといって,そのことが周知性を否定する根拠となるものではないことは明らかである。 そして,原告商品について,実用新案権の存続期間満了後における広告・宣伝や,継続的・独占的な大量の製造・販売により,遅くとも平成24年までには原告 する根拠となるものではないことは明らかである。 そして,原告商品について,実用新案権の存続期間満了後における広告・宣伝や,継続的・独占的な大量の製造・販売により,遅くとも平成24年までには原告商品の形状が出所を表示するものとして周知又は著名であるとの事情が認められることは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりである。 - 31 -したがって,控訴人の主張は,理由がない。 (2) 原告商品と被告商品の誤認混同のおそれについて控訴人は,不規則充填物は,完全にBtoBの製品で,その納入単位も㎥単位であり,その取引においては,納入前には具体的な引合い及び技術評価を受けて納入に至り,納入時にはフレコン袋又はPP袋に控訴人の登録商標である「MT-PAK」を明示し,被告商品にもそのほとんどに「MT-PAK」との刻印を行っているし,宣伝広告においても,「あの充填物がマツイマシン製でMT-PAKとして登場!」(甲7)として,出所を明確に認識できるように表記しているから,原告商品と被告商品との間には,出所の誤認混同は生じ得ないと主張する。 しかし,原告商品と被告商品とは,製造上の誤差を除き,同一の形状であること,原告商品の形態は多数の広告,文献,雑誌等に写真や図付きで紹介されていること,実際の注文においても,不規則充填物の形状に基づいて見積依頼がされる場合があること(甲108)は,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりであり,これらの事実によると,控訴人指摘の諸事情を考慮しても,需要者である不規則充填物の購入者において,被告商品と原告商品との混同を生じるおそれがあるものと認めることができる。 したがって,控訴人の主張は,理由がない。 (3) 被告商品の製造・販売の有無について控訴人は, 入者において,被告商品と原告商品との混同を生じるおそれがあるものと認めることができる。 したがって,控訴人の主張は,理由がない。 (3) 被告商品の製造・販売の有無について控訴人は,乙51の別紙7に,MT-S0を販売したことが記載されていないから,MT-S0を販売した事実はないなどと主張する。 しかし,控訴人がMT-S0を販売した事実が認められることは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりである。乙51の別紙7は,控訴人の社内システムである見積管理システムから必要な情報を抽出したものであると認められる(乙51)が,これが控訴人による平成24年12月から平成28年6月までの間の全ての被告商品の販売を網羅したものであることまで認めるに足りる証拠はないから,乙51の別紙7にMT-S0の販売実績の記載がないことは,上記認 - 32 -定を妨げるものではない。 もっとも,仮に,控訴人がMT-S0を販売した事実まで認められないとしても,前記1のとおり補正して引用する原判決判示の事実(原判決67頁23行目~26行目)から,控訴人がMT-S0の販売(不正競争)によって営業上の利益を侵害するおそれがあると認められ,不競法3条1項に基づくMT-S0の製造・販売等の差止め,同条2項に基づくMT-S0の廃棄及びMT-S0を製造するために使用した金型の除却の各請求を認容することができる。 したがって,控訴人の主張は,理由がない。 3 附帯控訴についての被控訴人の主張に対する判断(1) No29の「仕入価格等」における「横持費」の除外について被控訴人は,No29の取引について,控訴人提出証拠の中に外部倉庫へ一時保管した倉庫関連費用が見当たらないから,控訴人が横持費を費消したとは認められず,仕入価格等から横 「横持費」の除外について被控訴人は,No29の取引について,控訴人提出証拠の中に外部倉庫へ一時保管した倉庫関連費用が見当たらないから,控訴人が横持費を費消したとは認められず,仕入価格等から横持費を除外するべきであると主張する。 しかし,A社の作成に係る納品書(乙39の1)には,横持費●●●が記載されており,乙52の別紙1の17頁によると,控訴人の社内システムにも,No29の取引に係るものとして,この横持費●●●に対応する登録がされている事実が認められる。そうすると,この横持費●●●は,No29の取引のために要した費用であると認められ,No29の取引による限界利益の算出に当たり,販売価格から控除すべき仕入価格等に含まれるものと認められる。 したがって,被控訴人の主張は,理由がない。 (2) No30の「仕入価格等」における「横持費」「荷降ろし費」の除外について被控訴人は,No30の取引について,荷降ろし費は顧客に追加請求できる費用であるし,控訴人は,他の被告商品の販売に係る費用を別の取引の費用にするような会計処理をしていること,控訴人提出証拠の中に外部倉庫へ一時保管した倉庫関連費用が見当たらないことから,荷降ろし費及び横持費が発生したとは認められ - 33 -ず,仕入価格等からこれらを除外するべきであると主張する。 しかし,A社の作成に係る納品書(乙40の1)には,横持費●●●及び荷降ろし費2件(●●●●●●●●●●●)が記載されており,乙52の別紙1の16頁によると,控訴人の社内システムにも,No30の取引に係るものとして,この横持費●●●及び荷降ろし費2件(●●●●●●●●●●●)に対応する登録がされている事実が認められる。また,荷降ろし費はその性質から直ちに顧客に請求できる費用であるとは認められないし のとして,この横持費●●●及び荷降ろし費2件(●●●●●●●●●●●)に対応する登録がされている事実が認められる。また,荷降ろし費はその性質から直ちに顧客に請求できる費用であるとは認められないし,他に顧客に請求できることを認めるに足りる証拠もない。そうすると,この横持費●●●及び荷降ろし費2件(●●●●●●●●●●●)は,No30の取引のために要した費用であると認められ,No30の取引による限界利益の算出に当たり,販売価格から控除すべき仕入価格等に含まれるものと認められる。 したがって,被控訴人の主張は,理由がない。 (3) No34の「販売価格」について被控訴人は,原判決がNo34の販売価格の認定の根拠とした乙44の6は,見積書にすぎず,しかも,乙44の2に「MT-SⅡ」及び「MT-LL」の記載がないことを被控訴人が指摘した後に提出されたものであり,信用性がないから,乙44の6を根拠に販売価格を認定することはできないと主張する。 しかし,証拠(乙44の1~7)によると,No34の取引は,控訴人に対し,依頼番号●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の見積依頼がされた(乙44の5)のに対し,控訴人が●●●●の見積もりをした(乙44の6)ところ,控訴人に対し,購買発注番号●●●●●●●●●●により,●●●●で注文がされたこと(乙44の2・7)が認められるから,No34の販売価格は,●●●●である。乙44の6の原審における提出の経緯は,この認定を左右するものではない。 したがって,被控訴人の主張は,理由がない。 (4) No35の「販売価格」及び「仕入価格等」について - 34 -被控訴人は,No35の販売価格等は,No35の取引と同等の被 。 したがって,被控訴人の主張は,理由がない。 (4) No35の「販売価格」及び「仕入価格等」について - 34 -被控訴人は,No35の販売価格等は,No35の取引と同等の被告商品の取引と比較して認定すべきであると主張するが,証拠(乙45の17,乙51)によると,被告商品以外の商品とNo35の取引に係る被告商品とを対象とした取引全体の販売価格は●●●●●であると認められ,この●●●●●のうちNo35の取引に係る被告商品に対応する金額を算定するに当たり,No35の取引に係る被告商品を含む乙45の17に係る取引対象商品全部の仕入価格等に占めるNo35の取引に係る被告商品の仕入価格等の割合を算出して,これを●●●●●に乗じることも合理性を有するものということができる。 これに対し,被控訴人従業員作成の報告書(甲123)には,他の取引事例に基づき,PP製のMT-S型の販売単価に,UPVC製のMT-SⅡ型の販売単価とPP製のMT-SⅡ型の販売単価の価格比を乗じて,No35の取引に係る被告商品であるサイズ「MT-S」,材質「UPVC」の商品の販売価格を算定することが記載されているが,同記載によると,同一商品の販売単価(1㎥当たりの販売価格)にも幅がある(PP製のMT-SⅡ型の販売単価は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の幅がある。)上,実際の取引の販売価格が●●●●●であった事実を踏まえたものではないから,これを踏まえた上記の販売価格の算定を超える合理性を有するものとはいえない。 したがって,被控訴人の主張は,理由がない。 第4 結論以上によると,被控訴人の請求(当審における追加請求を含む。)は,被告商品の製造・販売等の差止め,控訴人の占有する被告商品の廃棄,被告商品の製造のための金型の除却,損害 由がない。 第4 結論以上によると,被控訴人の請求(当審における追加請求を含む。)は,被告商品の製造・販売等の差止め,控訴人の占有する被告商品の廃棄,被告商品の製造のための金型の除却,損害賠償金3784万1791円及びうち1779万0120円に対する平成27年9月12日から,うち1047万5446円に対する平成28年7月1日から,うち957万6225円に対する平成29年9月1日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきところ,これと異なる判断を - 35 -した原判決は一部失当であって,控訴人の本件控訴及び附帯控訴はそれぞれ一部理由があるから,原判決主文4項及び5項を本判決主文2項及び3項のとおりに変更することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官森 義之 裁判官森岡礼子 裁判官古庄 研 (別紙省略)
▼ クリックして全文を表示