平成13(行ウ)34 退去強制令書発布処分取消等請求

裁判年月日・裁判所
平成15年10月17日 東京地方裁判所
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判決文本文37,715 文字)

平成15年10月17日判決言渡平成13年(行ウ)第34号退去強制令書発付処分取消等請求事件判決原告 A同 B同 C被告法務大臣同東京入国管理局主任審査官 主文 1 被告東京入国管理局主任審査官が平成12年11月28日付けで原告A、同B及び同Cに対してした各退去強制令書発付処分をいずれも取り消す。 2 原告らの被告法務大臣に対する各訴えをいずれも却下する。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告法務大臣が平成12年11月28日付けで原告A、同B及び同Cに対してした、出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく各原告の異議申し出は理由がない旨の各裁決をいずれも取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、いずれも大韓民国の国籍を有し、在留期間を徒過して本邦における在留を続けることとなった原告A(以下「原告夫」という。)、その妻である原告B(以下「原告妻」という)及びその子である原告C(以下「原告子」という。)が、被告法務大臣が平成12年11月28日に原告らに対してした出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)49条1項に基づく各原告の異議申し出は理由がない旨の各裁決(以下「本件各裁決」という。)及び被告東京入国管理局主任審査官が同日に行った各退去強制令書発付処分(以下「本件各処分」という。)はいずれも違法であるとしてその取消しを求めるものである。 2 判断の前提となる事実(争いがない。)(1) 当事者原告夫は、1959年6月25日生まれの大韓民国(以下「韓国」という。)国籍を有する男性であり、原告妻は、1960年9月7日生まれの同国国籍を有する女性であり、両名は夫婦である。 (1) 当事者原告夫は、1959年6月25日生まれの大韓民国(以下「韓国」という。)国籍を有する男性であり、原告妻は、1960年9月7日生まれの同国国籍を有する女性であり、両名は夫婦である。原告子は、1992年10月26日に原告夫と原告妻の間に生まれた女児であり、韓国国籍を有するものである。 (2) 原告らの入国及び在留の経緯ア原告らは、平成6年4月7日、韓国のソウルから日本航空機で名古屋空港に到着し、名古屋入国管理局名古屋空港出張所入国審査官に対し、各人の外国人入国記録の渡航目的の欄に「方問(訪問)」、日本滞在予定期間の欄には「10day(10日)」と記載して上陸申請をし、同入国審査官から法別表第一に規定する在留資格「短期滞在」及び在留期間15日の許可を受け、本邦に上陸した。 イ原告らは、在留資格の変更又は在留期間の更新の申請を一度も行うことなく、在留期限である平成6年4月22日を超えて本邦に不法残留するに至った。 ウ原告らは、平成9年10月27日、群馬県前橋市長に対し、居住地を群馬県前橋市a町b丁目c番d-e号fマンションとして、外国人登録法に基づく新規登録を行い、同年11月21日、外国人登録証明書の交付を受けた。 (3) 原告らの退去強制手続の経緯ア原告夫は、平成12年8月21日、前橋市所在の総合交通センターにおいて、群馬県警前橋警察署員により、法違反(不法残留)により、現行犯逮捕された。 イ前橋地方検察庁は、平成12年8月23日、法62条に基づき、原告夫について、法24条(不法残留)に該当するとして、東京入国管理局(以下「東京入管」という。)調査第3部門あて、通報を行った。 ウ前橋地方検察庁は、平成12年9月1日、原告夫を、法70条1項5号に該当するものとして、前橋地方裁判所に対して起訴した。 エ原告夫は、平成12 入管」という。)調査第3部門あて、通報を行った。 ウ前橋地方検察庁は、平成12年9月1日、原告夫を、法70条1項5号に該当するものとして、前橋地方裁判所に対して起訴した。 エ原告夫は、平成12年10月6日、前橋地方裁判所から懲役2年執行猶予3年の判決を受けた。 オ東京入管入国警備官は、平成12年10月6日、原告夫が法24条4号ロ(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、東京入管主任審査官から収容令書の発付を受け、同日、同令書を執行して原告夫を東京入管収容場に収容し、同日、違反調査を行い、原告夫を法24条4号ロ該当容疑者として、東京入管入国審査官に引き渡した。 カ東京入管入国審査官は、平成12年10月10日及び同月12日、原告夫について違反審査を行い、その結果、同月12日、原告夫が法24条4号ロに該当する旨の認定を行い、原告夫にこれを通知したところ、原告夫は、同日、東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 キ東京入管入国警備官は、平成12年10月19日及び同月20日、原告妻及び原告子について違反調査を実施した結果、原告妻が法24条4号ロ(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、同月20日、東京入管主任審査官から収容令書の発付を受け、同月25日、同令書を執行して、原告妻及び原告子を法24条4号ロ該当被疑者として、東京入管入国審査官に引き渡した。東京入管主任審査官は、同日原告妻及び原告子に対し請求に基づき、仮放免を許可した。 ク東京入管入国審査官は、平成12年10月25日、原告妻及び原告子について違反審査を行い、その結果、原告妻及び原告子が法24条4号ロに該当する旨の認定を行い、原告妻及び原告子にこれを通知したところ、原告妻及び原告子は、同日、東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 ケ 審査を行い、その結果、原告妻及び原告子が法24条4号ロに該当する旨の認定を行い、原告妻及び原告子にこれを通知したところ、原告妻及び原告子は、同日、東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 ケ東京入管特別審理官は、平成12年10月30日、原告夫について、口頭審理を行い、その結果、同日、入国審査官の上記カの認定は誤りがない旨判定し、原告夫にこれを通知したところ、原告夫は、上記同日、法務大臣に対し、異議の申出をした。 コ東京入管特別審理官は、平成12年11月9日、原告妻及び原告子について、口頭審理を行い、その結果、同日、入国審査官の上記クの認定は誤りがない旨判定し、原告妻及び原告子にこれを通知したところ、原告妻及び原告子は、同日、法務大臣に対し、異議の申出をした。 サ法務大臣は、平成12年11月28日、原告夫からの上記ケの異議の申出については、理由がない旨裁決し、上記裁決の通知を受けた東京入管主任審査官は、同日、原告夫に本件裁決を告知するとともに、送還先を韓国とする退去強制令書を発付した。そこで、東京入管入国警備官は、同月29日、これを執行し、夫を引き続き東京入管収容場に収容した。 シ法務大臣は、平成12年11月28日、原告妻及び原告子からの上記コの異議申し出については、理由がない旨裁決し、上記裁決の通知を受けた東京入管主任審査官は、同年12月22日、原告妻及び原告子に本件裁決を告知するとともに、送還先を韓国とする退去強制令書を発付した。東京入管主任審査官は、平成12年12月22日、原告妻及び原告子に対し、請求に基づき、仮放免を許可した。 ス東京入管入国警備官は、平成12年12月26日、原告夫を入国者収容所東日本センターに移収した。その後、東京入管主任審査官は、平成14年7月17日、原告夫に対して仮放免を許可した。 第3 当事者の ス東京入管入国警備官は、平成12年12月26日、原告夫を入国者収容所東日本センターに移収した。その後、東京入管主任審査官は、平成14年7月17日、原告夫に対して仮放免を許可した。 第3 当事者の主張 1 被告ら(1) 本件各裁決の適法性についてア原告らの退去強制事由原告夫、原告妻及び原告子が、在留資格の変更又は在留期間の更新の許可申請を行うことなく、在留期限である平成6年4月22日を超えて本邦に不法残留したことは前記第2、2(2)イのとおり争いがなく、原告夫、原告妻及び原告子が法24条4号ロに規定する退去強制事由に該当することは明らかである。したがって、原告らが退去強制事由に該当することを認めた特別審理官の判定に何ら誤りはない。 イ在留特別許可に係る法務大臣の判断の適法性(ア) 法務大臣の広範な裁量権法務大臣は、異議の申出に対する裁決に当たって、異議の申出に理由がないと認める場合でも、特別に在留を許可すべき事情があると認めるときは、その者の在留を特別に許可することができるところ(法50条1項3号)、このような在留特別許可は、退去強制事由に該当することが明らかで、当然に本邦からの退去を強制されるべき者に対し、特別に在留を認める処分であって、その性質は、恩恵的なものであるというべきである。そして、在留特別許可の判断をするに当たっては、当該外国人の個人的事情のみならず、その時々の国内の政治・経済・社会等の諸事情、外交政策、当該外国人の本国との外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮すべきものであることから、在留特別許可に係る法務大臣の裁量の範囲は極めて広範なものであって、当該裁量権の行使が違法となることは容易には考え難く、例外的に当該外国人について本邦に在留することを認めなければならない積極的な理由があると認められる場合に限って 範囲は極めて広範なものであって、当該裁量権の行使が違法となることは容易には考え難く、例外的に当該外国人について本邦に在留することを認めなければならない積極的な理由があると認められる場合に限って、これが違法になると考えられる。したがって、そのような理由の存在については、原告らにおいて主張立証すべきものであり、法務大臣が裁決をするに当たっての判断の基礎とした事実がいかなるものであったかについては、それ自体およそ争点となり得ないのである。 (イ) 本件各裁決に裁量権の逸脱又は濫用がないことa 原告夫及び原告妻は、渡航目的を「方問(訪問)」、日本滞在予定期間を10日と申告して上陸したにもかかわらず、その後まもなく不法就労を開始し、その不法就労を行った期間は長期に及んでいるのであり、出入国管理行政上看過し難い。 この点原告らは、ドイツ在住の原告夫の叔父を訪問するためドイツに向かう際に、本邦に在住する原告妻の姉を訪ねるために立ち寄ったものであると主張し、当初から不法就労目的を有していたものではないとするが、これらは客観的事実と符合せず信用できないものであり、当初から本邦に不法就労目的で入国したというほかなく、原告らが不法残留に至った経緯は、極めて計画的であったというべきである。 さらに、原告夫は、平成12年8月21日に逮捕された当時、食品衛生法上の営業許可を取得することなく、居酒屋「ほんちゃん」の営業をしていたものであり、このような行為が我が国の公衆衛生上の観点からも許容し難いものであることは明らかである。 b 原告夫、原告妻及び原告子は、韓国で出生・生育したもので、原告夫及び原告妻について、今回来日前、韓国で従事していた仕事のために本邦に短期間滞在した事実が数回認められるものの、いずれも我が国とは何ら特別な関係を有していなかったものである。ま 育したもので、原告夫及び原告妻について、今回来日前、韓国で従事していた仕事のために本邦に短期間滞在した事実が数回認められるものの、いずれも我が国とは何ら特別な関係を有していなかったものである。また、原告夫及び原告妻の親兄弟は、原告妻の姉が本邦に在住しているとするほか、すべて韓国に在住しており、原告夫及び原告妻ともに稼働能力を有する健康な成人であること、本邦で不法就労して、前橋市に木造2階建ての家屋を原告妻名義で所有しており、同家屋購入時の借金等についても順調に返済するだけの収入を得ていることなどに照らせば、原告らが韓国に帰国したとしても本国での生活に支障はないといえる。また、原告子は、いまだ可塑性に富む年代にあり、仮に当初は言語や生活習慣の面で多少の困難を感じることがあるとしても、現地での生活を経験することが言語や生活習慣を身につける最善の方法であり、両親とともに帰国するのが子の福祉又はその最善の利益に適うところであることは明らかであり、自国の生活習慣及び言語等に習熟した両親とともに帰国し、他の親族の在住する韓国での生活に慣れ親しむことは十分に可能であると見込まれる。したがって、原告らについて、本邦への在留を認めなければならない特別な事情が存在するとは認められない。 確かに、原告らは、本邦に不法に残留する間に一定の安定した生活状態を形成した旨主張するが、生活の基盤となる家族の結合にしても、経済的な基盤にしても虚構の生活であって存在すること自体定かではないし、この間、原告らが外国人登録をした市役所から不法残留の事実が東京入管に連絡されたこともなく、その在留が容認されていたものでもないし、最高裁昭和54年10月23日第3小法廷判決は、「本邦に不法入国し、そのまま在留を継続する外国人は、出入国管理令9条3項の規定により決定された在留資 もなく、その在留が容認されていたものでもないし、最高裁昭和54年10月23日第3小法廷判決は、「本邦に不法入国し、そのまま在留を継続する外国人は、出入国管理令9条3項の規定により決定された在留資格をもって在留するものではないので、その在留の継続は違法状態の継続にほかならず、それが長期間平穏に継続されたからといって直ちに法的保護を受ける筋合いのものではない」と判示しており、これは、近時の裁判例においても踏襲されているところ、本件においても当てはまるものといえる。そもそも不法残留は、法70条1項5号による処罰の対象となる違法行為であり、原告夫及び原告妻が本邦において長期間不法就労活動を行ったという事実は、違法行為が長期間に及んだことを意味するものであるから、被告法務大臣が原告らの在留特別許可の可否を判断する上で、当該事実を有利な事情と解しなければならない理由はないのであり、むしろ、長期にわたる不法残留事実や不法就労事実等が在留特別許可の判断において消極的要素として評価されるべきものである。 c 以上のような諸事情を考慮すれば、法務大臣が本件各裁決に当たって付与された権限の趣旨に明らかに背いて裁量権を行使したものと認め得るような特別の事情が存在するとは認められない。 (ウ) 原告らの主張に対する反論a 原告らは、法務大臣による本件各裁決は、原告らの居住の自由を侵害するものである旨主張する。 しかし、最高裁判所昭和53年10月4日大法廷判決が判示しているように、在留する外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、適法な在留資格という基盤の上において与えられているにすぎないものである。そして、その基盤を形成する在留の許否を決定する国家の裁量を拘束するような範囲まで基本的人権の保障が及ぶものと解することはできないのである。 したがって、原告らが えられているにすぎないものである。そして、その基盤を形成する在留の許否を決定する国家の裁量を拘束するような範囲まで基本的人権の保障が及ぶものと解することはできないのである。 したがって、原告らが主張する居住の自由(憲法22条1項)は、在留制度の枠内で保障されるにすぎないと解され、本件各裁決が居住の自由の侵害である旨の主張は失当である。 b 児童の権利に関する条約(以下「子どもの権利条約」に違反しないことについて原告らは、子どもの権利条約3条1項が、児童に関するすべての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるべきことを定めているところ、本件においては、原告らに在留を特別に許可することが児童の最善の利益であるとして、これを与えなかった本件各裁決は子どもの権利条約3条に違反する旨主張する。 しかし、外国人は、憲法上、本邦に在留の権利ないし引き続き在留することを要求する権利を保障されているものでもなく、外国人の本邦への上陸、在留を認めるか否かについては、国際慣習法上、主権国家の広範な裁量により決し得るところであり、外国人に対する出入国や在留の管理は、国内の治安や保健・衛生の維持、確保、労働市場の安定等の国益保持のための政策的見地から国際情勢や外交関係等について政治的配慮をした上で決定されるものであることからすれば、原告らが主張する原告子の「最善の利益」については、在留制度の枠内で保障されるにすぎないものであり、原告子について、上記主張にかかる事情が存在するとしても、本件各裁決は、子どもの権利条約3条に違反するものではない。 そもそも、原告夫及び原告妻について在留特別許可を与えることが妥当でない以上、両名の未成年の実子でその扶養を受けるべきものについては、両親とは別に扱わず、同様に在留特別許可を与えないことが、むしろ そもそも、原告夫及び原告妻について在留特別許可を与えることが妥当でない以上、両名の未成年の実子でその扶養を受けるべきものについては、両親とは別に扱わず、同様に在留特別許可を与えないことが、むしろ家族を分離させる結果を招かないことから、子どもの権利条約に定める児童の「最善の利益」にも反しないこととなるのである。 そして、原告子はいまだ可塑性に富む年代にあり、仮に当初は言語や生活習慣の面で多少の困難を感じることがあるにしても、両親とともに帰国し他の親族の在住する韓国での生活に慣れ親しむことは十分に可能と見込まれるものであることは前記(イ)bのとおりであるから、本件各裁決が子どもの権利条約3条1項に違反するものであるとはいえない。 c 原告らは、韓国に帰国しても、親類の経済的支援を受けることもできず、自己資金もなく、新たに事業を開始することも困難なのであるから、韓国での生活基盤の再建が極めて困難であることは明らかであると主張する。 しかしながら、原告夫及び原告妻の近しい親族が、仮に原告らの生活に何らかの支障が生じた場合に何らの援助も行わないということは考え難いし、原告夫が韓国を出国する際に整理しなかった借金について、原告夫の親戚が原告夫が所有していた家屋を譲り受ける代わりに肩代わりしてくれたというのであり、協力的な関係が築かれていることが認められる。また、韓国において収入を得る方途が新たに事業を開始することに尽きるものでないことも明らかであり、結局、原告らは、転居に伴う通常の不便をいうにすぎない。 なお、原告らは、韓国に帰国した場合、本邦におけるのと同様の生活レベルを維持するのが困難であるとし、これを問題とするものとも解されるが、そのような事情が本件裁決の違法事由たり得ないことは明らかである。 この点をおくとしても、近年における韓国は るのと同様の生活レベルを維持するのが困難であるとし、これを問題とするものとも解されるが、そのような事情が本件裁決の違法事由たり得ないことは明らかである。 この点をおくとしても、近年における韓国は、政府の内需を刺激する減税政策の効果などを要因として経済は回復をみせ、中小企業の開業が雇用の増大に寄与するなどして失業率が低下するなど雇用機会は広がりをみせているのであるから、原告らについて全く雇用の機会等がないなどということはない。また、原告らは賃借に当たって一定のまとまったお金が必要であることなどを主張するが、韓国の最近の住宅事情をみるに、政府の相次ぐ住宅市場の安定対策が功を奏して住宅の売買価格が安定しつつあるとか、チョンセ制度(賃借時に住宅価格の3~7割を預けなくてはならない賃貸方式)が影を潜めているなどとされており、原告らが帰国後に住居を確保することができないとは認められない。 d 原告らは、原告子について、言語、行動様式、精神が日本人であり、韓国での生活にとけ込むことが困難であるとし、原告子を退去させることは、その学習の機会を奪うに等しい旨主張する。 しかしながら、韓国の教育や福祉等にかかる状況をみても、児童の生育上特段の問題があるとは認められず、原告子の状況は、韓国系企業の社員が家族を伴って日本に派遣され、長期滞在したのちに韓国に戻る場合と同様であって、同女を送還することが在留特別許可の権限を法務大臣に認めた趣旨に反する非人道的なものであるといった事情は何ら存在しない。 原告妻は、原告子が韓国に帰れば絶対にいじめられる旨述べるが、その根拠は漠としており、原告夫自身が韓国の子供達には日本人に対する悪感情はない旨答えているのであり、そのような事実は認められない。 e 国際連合は、平成2年12月18日、「すべての移住労働者とその家族構成 は漠としており、原告夫自身が韓国の子供達には日本人に対する悪感情はない旨答えているのであり、そのような事実は認められない。 e 国際連合は、平成2年12月18日、「すべての移住労働者とその家族構成員の権利保護に関する国際条約」を採択し、その30条には、移住労働者の子が公立学校で教育を受ける権利を有することを定めているが、同条は、不法に滞在するこの在留の適法化に関する権利を含むものと解してはならないとされているのであるから(同条約35条)、国際的にも、不法就労者の流入先の国が当該不法就労者及びその子女の在留を適法化すべきであるなどという合意がされている状況が存しないことは明らかである。 (エ) 以上のとおり、法務大臣が本件各裁決に当たって付与された権限の趣旨に明らかに背いて裁量権を行使したものと認めうるような特別の事情が存在するとは認められないから、本件各裁決に何らの違法性はない。 (2) 本件各処分の適法性について退去強制手続において、法務大臣から「異議の申出は理由がない」との裁決をした旨の通知を受けた場合、主任審査官は、退去強制令書を発付するにつき裁量の余地はないから、本件各裁決が違法であるといえない以上、本件各処分も適法である。 法は、法務大臣が在留特別許可の権限を行使するか否かの判断を行う過程においてのみ、退去強制事由に該当する外国人の在留を例外的に認める裁量を認めており、異議の申出を受けた法務大臣が、在留特別許可に関する権限を発動せず、異議の申出に理由がないとの裁決を行った場合には、それは我が国が国家として当該外国人を退去強制すべきとする最終的な意思決定をしたことを意味するものであって、上級行政機関である法務大臣の意思決定を同大臣の指揮監督を受ける下級行政機関である主任審査官が、その独自の判断に基づいて覆し、あるいはその適 きとする最終的な意思決定をしたことを意味するものであって、上級行政機関である法務大臣の意思決定を同大臣の指揮監督を受ける下級行政機関である主任審査官が、その独自の判断に基づいて覆し、あるいはその適用時期を考慮できるとすることは行政組織法上の観点からして考えられず、法がこのような立法政策を採用しているとは考えられない。また、法は、在留資格のない外国人が本邦に適法に在留することは、明文で定められた例外を除いて予定していないところ、主任審査官が裁量により退去強制令書を発付しない場合に、当該外国人が引き続き本邦に在留するための法的地位を定める手続規定は存在しないのであって、法は、主任審査官の裁量により退去強制令書を発付しないという事態を想定していないというべきである。 したがって、主任審査官に退去強制令書を発付するか否かに係る裁量権限がある旨の原告らの主張には理由がないというべきである。 なお、原告らは比例原則違反の主張をするが、退去強制事由に該当する外国人には比例原則において警察権の行使と対比されるべき権利利益がそもそも存在しないこと、退去強制令書に基づく収容についても目的と手段とが比例していること、在留特別許可及び仮放免の制度があることからすると、退去強制令書の発付につき、法の定める要件適合性以外に比例原則違反の有無が問題となる余地はない。 2 原告ら(1) 本件各裁決の適法性についてア本件各裁決の裁量違反(ア) 法務大臣の裁量権の範囲について日本国憲法は、国会を国権の最高機関と定めていることから、国家の裁量は、第一義的には国会に属するものとして立法裁量に現れることとなる。その立法裁量の結果として、特定の場合には外国人に入国・在留を許可すべく行政庁に義務づけをすることもあり、行政庁に裁量を与えつつ、許可内容に制約を付すこともある ものとして立法裁量に現れることとなる。その立法裁量の結果として、特定の場合には外国人に入国・在留を許可すべく行政庁に義務づけをすることもあり、行政庁に裁量を与えつつ、許可内容に制約を付すこともある。そして、憲法の精神や「法律による行政の原理」からすれば、行政庁に全くの自由裁量が付与されることなどあり得ないのであって、一定の裁量権が与えられたとしても、その根拠となる法律の目的及び趣旨等によって覊束裁量となるのである。この点、法は、「出入国の公平な管理」を目的としており(1条)、「出入国の公平な管理」とは、国内の治安や労働市場の安定など公益並びに国際的な公正性、妥当性の実現及び憲法、条約、国際慣習、条理等により認められる外国人の正当な利益の保護を図るための管理を意味する。法50条1項の趣旨も、この公益目的と外国人の正当な権利・利益の調整を図ることにあり、法務大臣の裁量権もこの趣旨の範囲内で認められるにすぎない。 被告の主張は、この点を看過し、国家の裁量権と法務大臣の裁量権とを混同したものといわざるを得ない。 また、上記のとおり、被告法務大臣の裁量権は、法の目的及び法50条1項の趣旨に覊束されるものであり、法も平成元年の法改正によって各在留資格に関する審査基準を省令で定めて交付し、行政の裁量の幅を減少させようとしているところであり、在留特別許可の制度に恩恵的な面があるとしても、そこから法務大臣の「極めて広範な裁量権」が導かれるものではない。裁量性のある処分であっても、判断の前提となる具体的事実関係が正確に把握されていなければならないこと、当該具体的事件の具体的諸事実を斟酌しないままに行われた処分は違法の評価を受けること、過去の行政処分例や内部基準等に従い、行政の平等性を損なう恣意的な判断に基づく処分が違法と評価されることは自明であり、 体的事件の具体的諸事実を斟酌しないままに行われた処分は違法の評価を受けること、過去の行政処分例や内部基準等に従い、行政の平等性を損なう恣意的な判断に基づく処分が違法と評価されることは自明であり、司法審査もかかる観点から行われるべきである。 その上、法によれば、在留特別許可の許否に関する法務大臣の裁決を地方入国管理局長に委任する旨規定されているが、地方入国管理局長は、法務省の一部局である入国管理局の下にある8つの地方入国管理局のうちの1つの長にすぎず、諸般の事情を総合的に考慮する特別な能力もなければ、政治的配慮をする資格もないのであり、このようなものに委任がされていることからすると、それまでもそのような要素が在留特別許可の許否に際して考慮されてきたわけでないことは明らかである。したがって、法務大臣の権限行使も古色蒼然たる自由裁量論で説明することはできず、事実を正確に把握した上で、各種通達、先例、出入国管理基本計画、国際的な準則等の示すところに従い、退去強制が著しく不当であるか否かを慎重に判断すべきで、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事実を考慮して処分がされた場合、あるいは、その判断が合理性を持つものとして許容されない場合には、裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったとして違法となる。 (イ) 本件における裁量違反a 原告らの入国及び在留の経緯原告夫は、高校卒業後兵役を経て、製靴業に就職した後、SODAという靴とハンドバックの製造会社に就職した。そして、1987年からは、独立して会社を設立し、SODAの製造請負等を行っていたものの、独自ブランドの商品の企画・販売に失敗し、1994年には倒産した。 原告妻は、1979年にソウル市内の高校を卒業し、服飾関係の仕事を経た後、1983年に原告夫と同じSODAに就職し、在職中の1 の、独自ブランドの商品の企画・販売に失敗し、1994年には倒産した。 原告妻は、1979年にソウル市内の高校を卒業し、服飾関係の仕事を経た後、1983年に原告夫と同じSODAに就職し、在職中の1986年6月22日、原告夫と婚姻し、1992年10月26日には原告子をもうけた。 原告夫の会社の倒産により、生計を立てるすべを失った原告らは、ドイツでレストランを経営している原告夫の叔父を頼り、ドイツを訪ねようと考えた。そこで、ドイツ行きのチケットを日本で購入し、ドイツに行く前に当時日本に居住していた原告妻の姉を訪ねる目的で、1994年4月7日、日本に立ち寄った。 しかし、日本に立ち寄った際に、日本に在住している韓国人等から、収入の点でも韓国に近い距離にあるという点でも、そして同じアジア人種であるという点で子どものためにも、ドイツより日本の方がよいと勧められ、日本で生活することを決意し、現在まで至っている。 b 原告らの生活状況等(a) 原告夫は、来日後間もなく、富士吉田市にある親戚の経営する飲食店を住み込みで2ヶ月ほど手伝い、その間原告妻及び原告子は、前橋の知人の家に居住していた。その後、原告夫は、前橋市の知人の経営する韓国風食堂でアルバイトをするようになり、同店の寮で暮らすようになった。原告ら家族の生活は徐々に安定し、定着していった。 (b) 原告妻は、平成8年3月から前橋市内でブティック「GeeCollection」を経営し、地域に密着した経営を続けている。原告夫は、平成11年3月ころ前橋市内で、韓国風居酒屋「ほんちゃん」を開業し、利益が25万円程度上がるなど経営が軌道に乗った。 (c) 原告らは、前橋市の外国人登録証記載の住所地の賃貸マンションで居住していたが、平成11年6月30日には、同市g町h丁目i-j所在の土地建物を原告妻名 万円程度上がるなど経営が軌道に乗った。 (c) 原告らは、前橋市の外国人登録証記載の住所地の賃貸マンションで居住していたが、平成11年6月30日には、同市g町h丁目i-j所在の土地建物を原告妻名義で購入し、リフォームを行った後、翌12年2月から同所に居住している。 その際、自己資金1000万円程度のほかに、購入資金を830万円ほど借りたが、毎月返済している。又リフォームの際の借金も完済している。 (d) 原告子は、韓国語を僅かに聞き取ることができる程度で話すことも読むこともできず、自分の名前を書くこともできない。2歳時からは4年間、前橋市の若草幼稚園に通園し、平成11年4月からは同市立城東小学校に通学しており、日本人の友人達と楽しく学校生活を送っているほか、成績もよく、習字等で賞を獲得している。またバイオリン、バトントワリング、ピアノ、ジュニアオーケストラ等の習い事をして、いずれにおいても活躍している。また、学校においても、習い事においても友人が多数いる。そして、原告子は、日本人としてのアイデンティティーを築いている。 原告妻は、PTAの役員をするなど、地域に密着した生活をしている。 (e) 原告ら夫婦は、原告夫の逮捕以前も、仮放免後も仲むつまじく、原告子も原告ら夫婦を慕っており、その家族の結合はとても強い(この点について、被告は、原告ら夫婦の関係が破綻しており、虚構の生活を継続できないとしても原告らの生活基盤が奪われる事にはならないと述べるが、完全な事実誤認である。)。 (f) 原告妻は、前記(c)の不動産の代金や自らのブティックの開店、原告夫の居酒屋の開店のため借入れを行っているが、それらの借入れは、ほとんどが事業のための投資としての性格をもち、原告妻が月々返済を続けているのであり、経済事情が破綻しているなどということは決してない。 居酒屋の開店のため借入れを行っているが、それらの借入れは、ほとんどが事業のための投資としての性格をもち、原告妻が月々返済を続けているのであり、経済事情が破綻しているなどということは決してない。 c 原告らの居住の自由の侵害憲法22条が保障する居住の自由は、日本にいるすべての外国人について憲法22条の保障が及ぶものである。仮に、在留資格の枠内に限定されるとすれば、前国家的・普遍的なものである憲法の人権規定の保証の範囲を、下位規範である法により保障するものであり、到底容認することができない。 つまり、憲法22条1項が、何人も公共の福祉に反しない限り居住の自由を有する旨規定する以上、適法な在留資格を有しない外国人に対しても憲法上の居住の権利の保障は及ぶものであり、これに対する制約の合理性の判断に際し、在留資格の有無が考慮されるにとどまるものである。 そして、居住の自由は、経済的自由の側面のみならず、人身の自由や精神的自由の側面も有していることにかんがみれば、具体的に国家が害されるとする公益と個人が失うであろう私益を検討した上で、裁決が合理的といえるかを判断すべきである。 そして、原告らが韓国に強制送還されれば、原告子の精神的アイデンティティーが失われ、個人の尊厳を中核とする人格権が侵害される上、原告子への教育の権利が侵され、さらに、原告ら家族の基盤、最低限の生活が奪われるものであり、その失われる私益は極めて甚大である。他方、原告らは入国後、法違反以外には何ら法を犯すことなく、善良な市民として地域社会にとけ込んだ生活を送っていた。したがって、原告らの本邦における在留資格を認めることによって、日本の善良な風俗・秩序に好影響を与えることこそあれ、悪影響を及ぼすことは想定し難く、原告らに在留資格を認めないことによって保護されるべき国の具体的 原告らの本邦における在留資格を認めることによって、日本の善良な風俗・秩序に好影響を与えることこそあれ、悪影響を及ぼすことは想定し難く、原告らに在留資格を認めないことによって保護されるべき国の具体的利益は存在しない。むしろ諸外国においては、非正規滞在者を正規化することが、国益にかなうものであることを理由として、大規模な正規化を行っている。 d 子どもの権利条約違反子どもの権利条約3条は、「児童に関するすべての措置を採るに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定しているところ、この内容によれば、第一に子どもの最善の利益とは何かが考慮された上で、当該利益が他の対立利益の中でも主として考慮された結果、行政処分が行われる必要があるのであり、最善の利益は在留制度の枠内で保障されるにすぎないとの被告の主張は誤りである。そして、前記cのとおり、本件各裁決により原告子の利益が害され、逆に、対立利益は抽象的なものであるのであり、本件各裁決は、子どもの権利条約3条に違反するものとなる。 (2) 本件各処分の適法性についてア本件各裁決の違法を承継することによる違法前記のとおり、本件各裁決が違法である以上、これに基づいてされた本件処分も違法なものということになる。 イ本件各処分独自の違法性(ア) 退去強制令書発付処分が裁量行為であること仮に、法務大臣が在留特別許可をせず、異議に理由がない旨の判断をする裁決がされた場合にも、主任審査官は、退去強制令書を発付するかどうか、ないし、いつの時点で出すかについて裁量があると解すべきである。 すなわち、法24条は、同条各号の定める退去強制事由に該当する外国人について、法第5章に規定 査官は、退去強制令書を発付するかどうか、ないし、いつの時点で出すかについて裁量があると解すべきである。 すなわち、法24条は、同条各号の定める退去強制事由に該当する外国人について、法第5章に規定する手続により、「本邦からの退去を強制することができる。」と定めているところ、法律の文言が、「することができる」と規定している場合には、裁量の範囲はともかく、一定の効果裁量を認めたものとするのが極めて一般的な見解である。 特に、退去強制令書の発付処分のような侵害的行政処分であって第三者に対する関係でも受益的な側面をもたない処分については、上記の文言が裁量を示すものと解することに支障はないし、行政法の解釈において、伝統的に権力発動要件が充足されている場合行政庁はこれを行使しないことができるとの考え方(行政便宜主義)が一般的であることとも整合する。 実際、退去強制令書の発付に裁量権を認めないと、本国及び市民権のある国に送還することができず、しかも第三国への入国許可を受けていない外国人など退去強制令書を発付しても執行が不能であることが明らかな場合にも、主任審査官は退去強制令書を発付しなければならないという背理を生ずるし、特に、外国人の出入国管理を含む警察法の分野においては、一般に行政庁の権限行使の目的は公共の安全と秩序を維持することにあるから、その権限行使はこれを維持するための必要最小限度にとどまるべきであると考えられている(警察比例の原則)。 このような観点から、法第5章の手続規定をみると、主任審査官の行う退去強制令書の発付が、当該外国人が退去を強制されるべきことを確定する行政処分として規定されており、退去強制に関する上記手続を解して、主任審査官に、退去強制令書を発付するか否か(効果裁量)、発付するとしてこれをいつ発付するかについての裁量が与 れるべきことを確定する行政処分として規定されており、退去強制に関する上記手続を解して、主任審査官に、退去強制令書を発付するか否か(効果裁量)、発付するとしてこれをいつ発付するかについての裁量が与えられているというべきである。 (イ) 比例原則違反そして、裁量権の行使に当たっては、比例原則が適用されるべきところ、本件では、前記(1)ア(イ)記載のとおり、本件各処分により、原告らが築きあげてきた住居、営業の根拠、学校生活、言語環境等、すべての生活を根こそぎ奪うことになり、このような不利益を被ることを知りながらされた本件各処分は、違法というほかない。 第4 争点及びこれに関する裁判所の判断本件の争点は、①法49条1項の異議の申出に対する裁決の処分性及び退去強制令書発付処分における主任審査官の裁量の存否、②本件各裁決における裁量権行使の濫用・逸脱の存否、③本件各処分の違法性の存否である。 1 争点1(裁決の処分性及び退去強制令書発付処分における主任審査官の裁量の存否)(1) 法49条1項の異議の申出に対する裁決の処分性ア法49条1項の異議の申出を受けた法務大臣は、同異議の申出に理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならず(法49条3項)、主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由あるとした旨の通知を受けたときは、直ちに当該容疑者を放免しなければならない一方で(同条4項)、法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに当該容疑者に対しその旨を知らせるとともに、法51条の規定による退去強制令書を発付しなければならないこととされている(法49条5項)。 このように、法は、法務大臣による裁決の結果につき、異議の申出に理由がある場合及び理由がない場合のいずれにおいても、当該容疑者に対し 令書を発付しなければならないこととされている(法49条5項)。 このように、法は、法務大臣による裁決の結果につき、異議の申出に理由がある場合及び理由がない場合のいずれにおいても、当該容疑者に対してではなく主任審査官に対して通知することとしている上、法務大臣が異議の申出に理由がないと裁決した場合には、法務大臣から通知を受けた主任審査官が当該容疑者に対してその旨を通知すべきこととする一方、法務大臣が異議の申出に理由があると裁決した場合には、当該容疑者に対しその旨の通知をすべきことを規定しておらず、単に主任審査官が当該容疑者を放免すべきことを定めるのみであって、いずれの場合も、法務大臣がその名において異議の申出をした当該容疑者に対し直接応答することは予定していない(なお、平成13年法務省令76号による改正後の法施行規則43条2項は、法49条5項に規定する主任審査官による容疑者への通知は、別記61号の2による裁決通知書によって行うものとすると定めているが、この規定はあくまで主任審査官が容疑者に対して通知する方式を定めたものにすぎず、法の定め自体に変更がない以上、この規則改正をもって法務大臣が容疑者に直接応答することとなったとは考えられない。)。こうした法の定め方からすれば、法49条3項の裁決は、その位置づけとしては退去強制手続を担当する行政機関内の内部的決裁行為と解するのが相当であって、行政庁への不服申立てに対する応答行為としての行政事件訴訟法3条3項の「裁決」には当たらないというべきである。 イこのことは、法の改正の経緯に照らしても明らかである。すなわち、法第5章の定める退去強制の手続は、法の題名改正前の出入国管理令(昭和26年政令319号)の制定の際に、そのさらに前身である不法入国者等退去強制手続令(昭和26年政令第33号)5条ない 。すなわち、法第5章の定める退去強制の手続は、法の題名改正前の出入国管理令(昭和26年政令319号)の制定の際に、そのさらに前身である不法入国者等退去強制手続令(昭和26年政令第33号)5条ないし19条の規定する手続を受け継いだものと考えられ、同手続令においては、入国審査官が発付した退去強制令書について地方審査会に不服申立てをすることができ(9条)、地方審査会の判定にも不服がある場合には中央審査会に不服の申立てをすることができ(12条)、中央審査会は、不服の申立てに理由があるかどうかを判定して、その結果を出入国管理庁長官(以下「長官」という。)に報告することとされ、報告を受けた長官は、中央審査会の判定を承認するかどうかを速やかに決定し、その結果に基づき、事件の差戻し又は退去強制令書の発付を受けた者の即時放免若しくは退去強制を命じなければならないものとされていた(14条)もので、この長官の承認が、法49条3項の裁決に変わったものと考えられる。そして、長官の承認は、中央審査会の報告を受けて行われるものとされていて、退去強制令書の発付を受けた者が長官に対して不服を申し立てることは何ら予定されておらず、長官の承認・不承認は、退去強制手続を担当する側の内部的決裁行為にほかならない。したがって、同制度を受け継いだものと考えられる法49条3項の裁決についても、退去強制令書の発付を受けた者の異議申出を前提とする点において異なるものの、その者に対する直接の応答行為を予定していない以上、基本的には同様の性格のものと考えるのが自然な解釈ということができる。 ウまた、上記の解釈は、法49条1項が、行政庁に対する不服申立てについての一般的な法令用語である「異議の申立て」を用いずに、「異議の申出」との用語を用いていることからも裏付けられる。すなわち、昭和3 また、上記の解釈は、法49条1項が、行政庁に対する不服申立てについての一般的な法令用語である「異議の申立て」を用いずに、「異議の申出」との用語を用いていることからも裏付けられる。すなわち、昭和37年に訴願法を廃止するとともに行政不服審査法(昭和37年法第160号)が制定されたが、同法は、行政庁に対する不服申立てを「異議申立て」、「審査請求」及び「再審査請求」の3種類(同法3条1項)に統一し、これに伴い、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(昭和37年法律第161号)は、それまで各行政法規が定めていた不服申立てのうち、行政不服審査法によることとなった行政処分に対する不服申立ては廃止するとともに、行政処分以外の行政作用に対する不服申立ては上記3種類以外の名称に改め、そうした名称の一つとして「異議の申出」を用いることとした。 他方、法の対象とする外国人の出入国についての処分は行政不服審査の対象からは除外されている(同法4条1項10号)とはいえ、上記のとおり行政不服審査法の制定に際して個別に不服申立手続について規定する多数の法令についても不服申立てに関する法令用語の統一が図られたのに、法49条1項に関しては、従前どおり「異議の申出」との用語が用いられたまま改正がされず、法についてはその後も数次にわたって改正がされたにもかかわらず、やはり法49条1項の「異議の申出」との用語については改正がされなかった。そして、現在においては、法令用語としての「異議の申出」と「異議の申立て」は通常区別して用いられ、「異議の申出」に対しては応答義務さえないか、又は応答義務があっても申立人に保障されているのは形式的要件の不備を理由として不当に申出を排斥されることなく何らかの実体判断を受けることだけである場合に用いられる用語であるのに対し、「異 えないか、又は応答義務があっても申立人に保障されているのは形式的要件の不備を理由として不当に申出を排斥されることなく何らかの実体判断を受けることだけである場合に用いられる用語であるのに対し、「異議の申立て」は、内容的にも適法な応答を受ける地位、すなわち手続上の権利ないし法的地位としての申請権ないし申立権を認める場合に用いられる用語として定着しているということができる。したがって、数次にわたる改正を経てもなお「異議の申出」の用語が用いられている法49条1項の異議の申出は、これにより、法務大臣が退去強制手続に関する監督権を発動することを促す途を拓いているものではあるが、同異議の申出自体に対しては、被告の応答義務がないか、又は、応答義務があっても、形式的要件の不備を理由として不当に申出を排斥されることなく何らかの実体判断を受けることが保障されるだけであり、申出人に手続上の権利ないし法的地位としての申請権ないし申立権が認められているものとは解されない(最高裁第1小法廷判決昭和61年2月13日民集40巻1号1頁は、土地改良法96条の2第5項及び9条1項に規定する異議の申出につき、同旨の判示をしている。)。 よって、法49条1項の異議の申出に対してされる法49条3項の「裁決」は、不服申立人にそうした手続的権利ないし地位があることを前提とする「審査請求、異議申立てその他の不服申立て」に対する行政庁の裁決、決定その他の行為には該当せず、行政事件訴訟法3条3項の裁決の取消しの訴えの対象となるということはできない。 エさらに、法49条1項の異議の申出については、上記のとおり、申出人に対して法の規定により手続上の権利ないし法的地位としての申請権ないし申立権が認められているものと解することはできないのであるから、異議の申出に理由がない旨の裁決がこうし ては、上記のとおり、申出人に対して法の規定により手続上の権利ないし法的地位としての申請権ないし申立権が認められているものと解することはできないのであるから、異議の申出に理由がない旨の裁決がこうした手続上の権利ないし法的地位に変動を生じさせるものということはできず、同裁決が行政事件訴訟法3条2項の「処分」に当たるということもできない(前記ウの最1小判参照。)。 オ以上によれば、法49条1項の異議の申出に対する法務大臣の裁決は、内部的決裁行為というべきものであり、行政事件訴訟法3条1項にいう公権力の行使には該当しないというべきものである。 (2) 退去強制令書発付処分における主任審査官の裁量及び比例原則の適用ア法24条は、同条各号の定める退去強制事由に該当する外国人については、法第5章に規定する手続により、「本邦からの退去を強制することができる」と定めている。そして、いかなる場合において行政庁に裁量が認められるかの判断において、法律の規定が重要な判断根拠となることに異論はないというべきであり、法律の文言が行政庁を主体として「・・・することができる」との規定をおいている際には、その裁量の内容はともかく、立法者が行政庁にある幅の効果裁量を認める趣旨であると解すべきものであって、同条が退去強制に関する実体規定として、退去強制事由に該当する外国人に対して退去を強制するか否かについてはこれを担当する行政庁に裁量があることを規定しているのは明らかであり、法第5章の手続規定は、主任審査官の行う退去強制令書の発付に至る手続を規定しているにすぎないことからすれば、退去強制について実体規定である法24条の認める裁量は、具体的には、退去強制に関する上記手続規定を介して主任審査官に与えられ、その結果、主任審査官には、退去強制令書を発付するか否か(効果裁量) ば、退去強制について実体規定である法24条の認める裁量は、具体的には、退去強制に関する上記手続規定を介して主任審査官に与えられ、その結果、主任審査官には、退去強制令書を発付するか否か(効果裁量)、発付するとしてこれをいつ発付するか(時の裁量)につき、裁量が認められているというべきである。 このような解釈は、行政法の解釈において伝統的に認められる行政便宜主義、すなわち権力発動要件が充足されている場合にも行政庁はこれを行使しないことができるとの考え方や、警察比例の原則、すなわち、警察法分野においては、一般に行政庁の権限行使の目的は公共の安全と秩序を維持することにあり、その権限行使はそれを維持するため必要最小限なものにとどまるべきであるとの考え方ばかりか、憲法13条の趣旨等に基づき、権力的行政一般に比例原則を認める考え方によっても肯定されるべきものである。 イこのように主任審査官に裁量権を認めることに対し、被告は、法47条4項、48条8項及び49条5項が、いずれも「主任審査官は・・・(中略)・・・退去強制令書を発付しなければならない。」と規定していることに反する旨主張する。 しかし、退去強制手続は、原則として容疑者である外国人の身柄を収容令書により拘束していることを前提としているため、その手続を担当する者が何の考慮もないままに手続を中断し、放置することを許さないように、法47条1項、48条6項及び49条4項において、それぞれ容疑者が退去強制事由に該当しないと認められる場合に「直ちにその者を放免しなければならない」ことを定めるとともに、法47条4項、48条8項及び49条5項においては、退去強制に向けて手続を進める場合においても、「退去強制令書を発付しなければならない」として主任審査官の義務として規定をおいたものと解され、これらの規定と法2 項、48条8項及び49条5項においては、退去強制に向けて手続を進める場合においても、「退去強制令書を発付しなければならない」として主任審査官の義務として規定をおいたものと解され、これらの規定と法24条をあわせて解釈すれば、実体規定である法24条において退去強制について前記効果裁量及び時の裁量を認めている以上、主任審査官において、そうした裁量の判断要素について十分考慮してもなお退去強制手続を進めるべきであると判断した場合には、放免又は退去に至らないまま手続を放置せず、法の定める次の手続に進む(退去強制令書を発付する)べきことを定めたものと解すべきであり、このように法の各規定をその位置づけに応じて解釈すれば、主任審査官に退去強制令書発付についての裁量を認めることは、法47条4項、48条8項及び49条5項の各規定と何ら矛盾するものではない。 ウまた、被告は、退去強制事由に該当する外国人には比例原則において警察権の行使と対比されるべき権利利益が存在しないなどとして上、退去強制令書の発付には、法の定める要件適合性以外に比例原則違反の有無が問題となる余地がないと主張する。 しかし、たとえ正規の在留資格を有しない外国人であっても、その性質が許す限り基本的人権を享有するのであって、退去強制手続に当たっても、このことと外国人の出入国の公正な管理という公益上の要請とを調和させる必要があることはいうまでもないことであり、被告が前提とする立論は、当該外国人の人権を全く無視するに等しく、到底採用できない。 また、退去強制令書の発付は、これまでの訴訟実務上は行政処分として扱われているが、これに応じない者に対しては直ちに実力を持って執行することが可能なものであることからすると、むしろ義務の賦課という段階を伴わない即時強制(又は即時執行)手続とみるべきものであ として扱われているが、これに応じない者に対しては直ちに実力を持って執行することが可能なものであることからすると、むしろ義務の賦課という段階を伴わない即時強制(又は即時執行)手続とみるべきものであって(このように解しても、その実力行使の継続性からして取消訴訟の対象となることには問題がない。)、それが、行政処分という義務の賦課にとどまるものに比べて、より直接的かつ強力な権力行使の手段であることからして、比例原則のより厳格な適用が求められるべきであり、このことは学説上も異論がないものと思われる。すなわち、法は、退去強制事由を定めているが、それらは一般的かつ抽象的にみて比例原則を満たすことが多いと考えられる類型にすぎないのであるから、それらに該当することのみをもって比例原則上の問題がないとは到底いえず、現に退去強制令書を発付するに当たっては、それが比例原則に違反しないか否かにつき、当該外国人の個別具体的事情など当該事案に即した個別的かつ具体的な検討を要するのであり、退去強制令書の発付が、このような検討を全く経ないでされた場合や、考慮すべき事情を考慮せず、考慮すべきでない事情を考慮するなどして社会通念上著しく不当な判断をした場合には、当該令書の発付は、比例原則に反する違法なものになるというべきである。 エまた、被告は、上級行政機関である法務大臣の意思決定を同大臣の指揮監督を受ける下級行政機関である主任審査官が、その独自の判断に基づいて覆し、あるいはその適用時期を考慮できるとすることは行政組織法上の観点から考えられない旨の主張をするが、前記のとおり裁決は、行政処分ではなく単なる行政機関内部における決裁手続にすぎないと解すべきであるから、その決裁の趣旨が退去強制令書の発付を命じる趣旨であるとしても、それは組織法上の義務を生じさせるにとどまり、 決は、行政処分ではなく単なる行政機関内部における決裁手続にすぎないと解すべきであるから、その決裁の趣旨が退去強制令書の発付を命じる趣旨であるとしても、それは組織法上の義務を生じさせるにとどまり、それにより当該発付処分が適法となるのではなく、客観的に裁量違反ないし比例原則違反の事実がある場合には当該処分は違法といわざるを得ない。このことは処分庁が事前に上級行政庁の決裁を受けて行政処分をした場合一般に生じることであり、そのような決裁が行われたとしても、裁量権行使の主体は、あくまでも当該行政処分を行う行政庁であり、上級行政庁となるわけではないのである。 (3) 以上を前提とすれば、法49条1項の異議の申出に対する裁決につきその取消しを求める訴訟は、対象の処分性を欠く不適法なものといわざるを得ないこととなり、上記(2)のとおり、退去強制令書発付処分につき効果裁量、時の裁量が認められていることによれば、退去強制令書発付処分の取消等を求める訴訟において、退去強制事由の有無に加え、その裁量の逸脱濫用についても同処分の違法事由として主張し得ると解すべきである。このような解釈によれば、前記判示の解釈により法49条3項の法務大臣の裁決につき独立して適法に取消訴訟を提起することができなくなるが、法49条3項の裁決の取消訴訟で問題とされた法務大臣の裁量権行使の適否は、退去強制令書発付における主任審査官の裁量権行使の適否においてもほぼ同一の内容で審理の対象となるべきものであって、外国人が退去を強制されることを争う機会を狭めるものとはならない。むしろ、在留特別許可をするか否かの判断がたまたま法49条の裁決に当たってされるとの制度が採用されていることのみを捉え、本来全く別個の制度である在留特別許可の判断(法50条3項は、在留特別許可が、専ら退去強制事由に該当す るか否かの判断がたまたま法49条の裁決に当たってされるとの制度が採用されていることのみを捉え、本来全く別個の制度である在留特別許可の判断(法50条3項は、在留特別許可が、専ら退去強制事由に該当するか否かを判断してされる法49条の裁決とは本来的に異なる制度であることから、在留特別許可がされた場合には、あえて、それを法49条4項の適用につき異議の申出に理由がある旨の裁決とみなす旨を定めている。)の当否を法49条3項の裁決の違法事由として主張し得ることを認めるという無理のある解釈を採用する必要がなくなるものである。 (4) 小括したがって、本件訴えのうち、原告らが被告法務大臣がした本件各裁決の取消しを求める部分は対象の処分性を欠く不適法なものというべきである。そして、そうである以上、争点2についての判断は不要ということになり、以下、争点3(退去強制令書発付処分の適法性)について判断することとなるが、法は、主任審査官の行うべき具体的な裁量基準を定めていないし、これまでの実務においては被告らが主張するとおり主任審査官には全く裁量の余地がないとの考え方がとられていたのであるから、行政庁内部においても裁量基準等は策定されていない。もっとも、法は、退去強制事由のある者を適法に在留させる唯一の制度として在留特別許可という制度を設けているのであるから、この趣旨からすると、主任審査官は在留特別許可をすべき者について退去強制令書を発付することは許されない反面、退去強制令書を発付しないことが許されるのは在留特別許可をすべき者に限られると解すべきである。そうすると、争点3についての判断内容は、争点2について判断した場合の判断内容と全く一致することとなる。また、被告らは、比例原則に違反しないことについての具体的な主張をしないし、主任審査官には裁量権がないとの 、争点3についての判断内容は、争点2について判断した場合の判断内容と全く一致することとなる。また、被告らは、比例原則に違反しないことについての具体的な主張をしないし、主任審査官には裁量権がないとの主張をしているため、本件各処分に当たってどのような裁量判断をしたのかについても主張しない。これを形式的に取り扱うと、被告主任審査官は事の当否を具体的に検討しないまま結論のみ認めたものとして、その処分を取り消さざるを得なくなるが、被告らは、被告法務大臣がした本件各裁決が適法なものであるとして具体的な主張をしているところであり、その主張は、仮に被告主任審査官に裁量権があるとするならば、同様の裁量判断に基づいて本件各処分をしたものであると主張し、かつ、比例原則上も問題がないとの主張もしているものと善解できるから、以下の検討においては、被告主任審査官が被告法務大臣と同様の判断に基づいて本件各処分をしたものとの前提で行うこととする。 2 争点3(本件各処分の適法性)(1) 本件における事実a 来日の経緯原告夫は、昭和34年(1959年)6月25日にソウルで生まれ、高校卒業後、兵役を経て、昭和56年(1981年)から昭和57年(1982年)ころにSODAという靴とハンドバックの製造会社に就職した。 原告妻は、昭和35年(1960年)9月7日にソウルで生まれ、昭和54年(1979年)にソウル市内の高校を卒業した後、服飾関係の仕事をし、その後、昭和58年(1983年)に原告夫と同じSODAという会社に就職した。在職中の昭和61年(1986年)6月22日に原告夫と結婚し、平成4年(1992年)10月26日には、原告子が出生した。 原告夫は、昭和62年(1987年)からは、SODAから独立して会社を設立し、SODAの製造請負を行っていたものの、独自ブラン と結婚し、平成4年(1992年)10月26日には、原告子が出生した。 原告夫は、昭和62年(1987年)からは、SODAから独立して会社を設立し、SODAの製造請負を行っていたものの、独自ブランドDAIANの商品の企画・販売に失敗し、また、景気が悪く、元請会社の支払いが滞るなどしたことから、その会社は、平成6年(1994年)には、倒産した。その後、原告らは、前記第2、2(2)アのとおり同年4月9日に日本に入国した。 (甲13、原告夫)b 原告らの生活の状況原告夫は、来日後2ヶ月ほど富士吉田市にある親戚の経営する飲食店を手伝い、その間、原告妻と原告子は、前橋市内の知人宅で生活し、やがて、原告夫も前橋市内に移り、知人の経営する同市内の韓国風食堂で調理等のアルバイトをしたのを初めとして、居酒屋等でアルバイトをして回った。そして、原告夫は、平成11年3月ころには前橋市内で韓国居酒屋「ほんちゃん」の経営を始めた。その際の開業には300万円程度の資金を要し、100万円程度の自己資金を用いて、その余は、合信という会社から借入れをした。同店の経営は、順調であったが、原告が下記のとおり逮捕された際に、知人に経営を任せることになった。 (甲1、甲13、原告夫)原告らは、平成11年(1999年)6月まで、前橋市内に賃貸マンションを借りて生活していたが、前橋市内に自宅を購入し、翌12年(2000年)1月からその自宅で生活を始めた。 (甲3、13、原告夫)原告夫は、免許センターに勤める知人が、在留資格がなくても免許の交付を受けることができる旨話していたことから、平成12年5月ころから、在留資格がないことも申告した上で、自動車教習所に通い始め、5回目の試験でようやく合格したところ、その合格発表の際に、警察に連行され逮捕され、平成12年10月6日に前橋 ら、平成12年5月ころから、在留資格がないことも申告した上で、自動車教習所に通い始め、5回目の試験でようやく合格したところ、その合格発表の際に、警察に連行され逮捕され、平成12年10月6日に前橋地方裁判所において法違反により執行猶予つきの有罪判決を受けた。その後、前記第2、2記載の退去強制手続を経て、本件処分を受け、平成14年7月17日に仮放免されるまで収容されていた。 (甲13、原告夫)原告夫は、現在は、神奈川県相模原市内の焼肉店「やきにくの館燦餐」において、焼肉店経営のための修行を兼ね、住み込みで働き、毎月約22万円の賃金を得ており、将来は同店での修行の成果を生かして、自ら焼肉店を経営しようと考えている。 (甲19、原告夫)原告妻は、平成8年(1996年)にブティック「GeeCollection」の経営を始め、この開業のために600万円を借り入れた。同店は、店舗を移転しつつも、現在に至るまで順調に経営されている。 (甲1、10、原告妻)原告子は、2歳時から前橋市内の若草幼稚園に通園し、平成11年4月からは、同市立城東小学校に通っており、本件各処分時には2年生、現在は5年生として在学している。学校では、日本人の子どもと変わりなく生活している。原告子は、韓国語の聞き取りは少しできるものの、韓国語を話すこと、読むことは全くできず、原告夫や原告妻と話す際も日本語を用いている。また、ピアノ、バイオリン、オーケストラ、バトントワリング等の習い事をしており、バトントワリングで入賞するなど、それぞれで成果を上げている。また、原告妻が原告子の小学校のPTA役員を引き受けたり、交通安全のための旗振り当番をするなど、原告ら家族は、地域にもとけ込んだ生活を送っており、在留特別許可申請書の提出に当たり、多数の知人らが原告ら家族が本邦において継 校のPTA役員を引き受けたり、交通安全のための旗振り当番をするなど、原告ら家族は、地域にもとけ込んだ生活を送っており、在留特別許可申請書の提出に当たり、多数の知人らが原告ら家族が本邦において継続して居住できることを嘆願して署名をしている。 (甲2、4、10、11、14の1ないし7、15、原告妻)なお、被告らは、原告らの生活の基盤となる家族の結合に疑問があると主張し、これを裏付けるために乙第74号証、第76号証を提出しているが、これらの証拠は、甲第20号証に照らして、その信用性に疑問があり、上記各証拠によると、原告らの家族の結合には何ら問題ないと認めるべきである。 c 韓国の状況韓国の住宅所有関係は、統計上、持ち家、チョンセ(住宅価格の3~7割を預けて、期限を定めて住宅を借りる方式)、ウォルセ(毎月賃貸料を払う通常の賃貸住宅形式)、無償の4つに分類され、ソウルでは、1995年現在において、持ち家が39.7パーセント、チョンセが43.8パーセント、ウォルセが15パーセントとなっている。そのため、本件各処分時において、韓国で住宅を確保するには、相当額の金銭を用意しなければならないことが多いことなど困難な状況にあった。 (甲23)なお、被告は、本訴提起後に収集した資料(乙86の1ないし7)に基づいて、最近の韓国においては住宅の売買価格が安定し、チョンセ制度が影を潜めていることから、原告らが帰国後に住居を確保することができないとは認められないと主張する。しかし、これらの資料を仔細に検討すると、確かに、平成14年4月以降は韓国において住宅売買価格やチョンセ価格が下落に転じたことがうかがわれるが、それは平成13年末から平成14年初頭にかけて急騰した価格が沈静化したという程度のもので、急騰以前の水準に戻ったか否かも明らかではないし(乙86の2 やチョンセ価格が下落に転じたことがうかがわれるが、それは平成13年末から平成14年初頭にかけて急騰した価格が沈静化したという程度のもので、急騰以前の水準に戻ったか否かも明らかではないし(乙86の2、3)、チョンセ型の物件が減少したことはむしろ賃貸物件の入手を困難にし、政府において対策を講じざるを得ない状況を招いていると認められ(乙86の6)、その状況が未だ解消されたか否かも明らかでないから、被告ら提出の資料によっても、原告らが帰国した際に住宅を容易に求め得る状況になっているとは認め難い。その上、これらの資料は、いずれも本件各処分後の状況を示すものであって、本件各処分時における状況を示すものではないから、仮に、被告の上記主張が認められるとしても、処分の適否に影響を及ぼすものではない。 (2) 本件における主任審査官の裁量の適否a 判断のあり方-特に裁量基準との関係について前記1(4)で説示したとおり、主任審査官の裁量の適否は、要するところ、当該外国人が在留特別許可を与えるべき者に該当するか否かについての判断を誤ったと評価し得るか否かにかかるところ、その判断自体にも裁量が認められるべきものであるから、裁判所としては、主任審査官の上記の点についての判断は裁量権の逸脱濫用があったか否か、すなわち、原告らにつき在留特別許可を与えるべき者に該当するか否かの判断に当たり、当然に重視すべき事項を不当に軽視し、又は、本来重視すべきでない事項を不当に重視することにより、その判断が左右されたものと認められるか否かという観点から審査を行い、これが肯定される場合には本件各処分を取り消すべきものとするのが相当である。 そして、主任審査官が本件各処分に当たり、いかなる事項を重視すべきであり、いかなる事項を重視すべきでないかについては、本来法の趣旨に基づいて決 は本件各処分を取り消すべきものとするのが相当である。 そして、主任審査官が本件各処分に当たり、いかなる事項を重視すべきであり、いかなる事項を重視すべきでないかについては、本来法の趣旨に基づいて決すべきものであるが、外国人に有利に考慮すべき事項について、実務上、明示的又は黙示的に基準が設けられ、それに基づく運用がされているときは、平等原則の要請からして、特段の事情がない限り、その基準を無視することは許されないのであり、当該基準において当然考慮すべきものとされている事情を考慮せずにされた処分については、特段の事情がない限り、本来重視すべき事項を不当に軽視したものと評価せざるを得ない。この点については、裁量権の本質が実務によって変更されるものではなく、原則として、当不当の問題が生ずるにすぎないとの考え方があり、過去の裁判例にもこれを一般論として説示するものが少なくないが(例えば、最高裁大法廷判決昭和53年10月4日民集32巻7号1231頁)、このような考え方は、行政裁量一般を規制する平等原則を無視するものであって採用できない。 b 長期間平穏に在留している事実の評価(a) 本件の特徴は、前記(1)の事実関係からすると、原告ら一家が6年余りにわたって平穏かつ公然と在留を継続し、既に善良な一市民として生活の基盤を築いていることにある。原告らは、この点を、有利に考慮すべき重要な事実であると指摘するのに対し、被告らは、これは原告らにとって有利な事実ではなく、むしろ、長期間不法在留を継続した点において不利益な事実であると主張する。このことからすると、本件各処分は、上記事実を原告らに不利益な事実と評価してされたものと認めざるを得ない。 (b) しかし、上記の事実は、在留特別許可を与えるか否かの判断に当たって、容疑者側に有利な事情の第一に上げることが 各処分は、上記事実を原告らに不利益な事実と評価してされたものと認めざるを得ない。 (b) しかし、上記の事実は、在留特別許可を与えるか否かの判断に当たって、容疑者側に有利な事情の第一に上げることが、実務上、少なくとも黙示的な基準として確立しているものと認められる。 すなわち、このような在留資格を持たないまま長期にわたって在留を継続する者が相当数に上っていることは公知の事実であるが、そのような事態は相当以前から継続しているのであって、昭和56年の本法の題名を含む大改正の際にも、その解決策が国会で議論されたところである。例えば、昭和56年5月15日の衆議院法務委員会において、D委員がこれらの者のうち一定の条件を満たす者に適法な在留資格を与えるべきではないかとの立場から、「密入国してから十年以上くらい立った者、そしていま大臣のおっしゃるように社会生活も素行も生活水準も安定している者については、自主申告をした場合には検討に値する(在留を認めることを検討するに値するとの趣旨)というふうな水準だといわれておるのですが、いかがですか。」との質問をしたのに対し、当時の法務省入国管理局長は、「個々の事案につきましては、その不法入国者の居住歴、家族状況等、諸般の事情を慎重に検討して、人道的配慮を要する場合には特にその在留を認めているわけでございます。したがいまして、不法入国者が摘発されまして強制退去の手続がとられた後でも、法務大臣の特別在留許可がこういう場合には出るということになります。」とした上、それに続く同委員の質問に答えて、「潜在不法入国者のうちには、子供がいよいよ学齢に達したとか、そういう事情からみずから名のり出て、先生のおっしゃいましたいわゆる自主申告をする人がおります。こういう場合には、私どもといたしましては、当然、情状を考慮するに当たり 供がいよいよ学齢に達したとか、そういう事情からみずから名のり出て、先生のおっしゃいましたいわゆる自主申告をする人がおります。こういう場合には、私どもといたしましては、当然、情状を考慮するに当たりましてプラスの材料と考えております。」と答弁し、さらに当時の法務大臣は、「特別在留許可あるいは永住許可をもらえるのはどういう人であるかというある程度の基準が明らかになってくることも、私はいまのようなお話を伺っていますと大切なことじゃないかなと思います。これまでやってきたことを振り返ってみて、まとめるのも一つかなと、いまお話を伺いながら考えたわけであります。さらに、個々の事案について処理する場合にも、従来以上に人道的な配慮を加えていくことも一つの転換になるんじゃないかな、こう思うわけでございまして、私としてはできる限り人道的な配慮というものを重く見ていきたいな、こう思っております。」と答弁しているのである(同日付け衆議院法務委員会議録第14号3ないし4頁)。 また、このときの法改正によって法61条の9及び10が新設され「法務大臣は、出入国の公正な管理を図るため、外国人の入国及び在留の管理に関する施策の基本となるべき計画(出入国管理基本計画)を定めるものとする。」、「法務大臣は、出入国管理基本計画に基づいて、外国人の出入国を公正に管理するよう努めなければならない。」と定められ、これに基づいて本件各処分前の平成12年3月24日に策定された「出入国管理基本計画(第2次)」(法務省告示149号)Ⅲ2(2)には、「在留特別許可を受けた外国人の多くは、日本人等との密接な身分関係を有し、また実態として、さまざまな面で我が国に将来にわたる生活の基盤を築いているような人である。より具体的な例としては、日本人と婚姻し、その婚姻の実態がある場合で、入管法以外の法 密接な身分関係を有し、また実態として、さまざまな面で我が国に将来にわたる生活の基盤を築いているような人である。より具体的な例としては、日本人と婚姻し、その婚姻の実態がある場合で、入管法以外の法令に違反していない外国人が挙げられる。法務大臣は、この在留特別許可の判断に当たっては、個々の事案ごとに在留を希望する理由、その外国人の家族状況、生活状況、素行その他の事情を、その外国人に対する人道的な配慮の必要性と他の不法滞在者に及ぼす影響とを含めて総合的に考慮し、基本的に、その外国人と我が国社会とのつながりが深く、その外国人を退去強制することが、人道的な観点等から問題が大きいと認められる場合に在留を個別に許可している。」と明記している。この趣旨は、我が国において将来にわたる生活の基盤を築き、在留中の素行に問題がなく、その外国人と我が国社会とのつながりが深いことは、在留特別許可を与える方向に考慮すべき事情としているものと認めることができよう。そして、入管当局に出頭した不法残留の家族に在留特別許可が与えられていることがある(甲8、9)も、上記事実を有利に考慮した結果であると考えられるところである。 これらによると、上記のように適法な在留資格を持たない外国人が長期間平穏かつ公然と我が国に在留し、その間に素行に問題なく既に善良な一市民として生活の基盤を築いていることが、当該外国人に在留特別許可を与える方向に考慮すべき第一の事由であることは、本件各処分時までに黙示的にせよ実務上確立した基準であったと認められるのであり、本件各処分は、これを無視したばかりか、むしろ逆の結論を導く事由として考慮しているのであって、そのような取扱いを正当化する特段の事情も見当たらず、しかも、それが原告らに最も有利な事由と考えられるのであるから、当然考慮すべき事由を考慮しな しろ逆の結論を導く事由として考慮しているのであって、そのような取扱いを正当化する特段の事情も見当たらず、しかも、それが原告らに最も有利な事由と考えられるのであるから、当然考慮すべき事由を考慮しなかったことにより、その判断が左右されたものと認めざるを得ない(このような場合に、その点を適切に考慮したとしても、他の事情と総合考慮したとすることにより、当該処分が客観的には適法なものと評価し得る場合もあり得るところではあるが、そのような事情は処分の適法性を主張する被告らにおいて、予備的にせよ主張・立証すべきものであって、被告らがそのような主張立証をしない場合には、裁判所としては、自ら積極的にそれらの点を審理判断することはできず、当該処分を取り消して、再度判断させるほかない。)。 (c) 以上によると、本件各処分は、上記の事項の評価を誤った点のみからしても、裁量権を逸脱又は濫用してされたものとして取り消されるべきものであるが、被告らが本件処分の相当性につき積極的に主張している2つの事由についても、その判断内容に社会通念上著しく不相当な点があり、それらの点は本件各処分の相当性を基礎付けるものとは考え難いので、念のため、c及びdで説示するとともに、本件各処分は、比例原則の観点からも是認できないことをeにおいて説示する。 なお、被告らは、昭和54年の最高裁判決を引用して主張しているが、同判決も上記事項を外国人に有利な事情として考慮することを否定しているものではないと解すべきであるし、仮にそうでないとしても、この判決後に黙示的にせよ裁量基準が確立している以上、この判決は上記の判断に影響を及ぼすものではない。 c 本国に帰国した場合の原告らの生活被告らは、原告夫及び妻の親兄弟が、原告妻の姉を除きすべて韓国に在住していること、原告夫及び原告妻が稼働能力を この判決は上記の判断に影響を及ぼすものではない。 c 本国に帰国した場合の原告らの生活被告らは、原告夫及び妻の親兄弟が、原告妻の姉を除きすべて韓国に在住していること、原告夫及び原告妻が稼働能力を有する成人であること、原告夫及び妻が本邦で一定の収入を得ていることを根拠として原告らが本国に帰国しても生活に支障はなく、転居に伴う通常の不便をいうにすぎないと主張している。 しかし、原告夫及び原告妻の親兄弟の職業や収入状況等は明らかでなく、帰国した原告らにどの程度援助をし得るかも明らかではなく(被告は、原告夫の親戚が原告夫が所有していた家屋を譲り受ける代わりに、借金を肩代わりしてくれた点を強調するが、単なる肩代わりでなく、家屋を譲り受けてしたものであるから、その親戚が自ら実質的に出捐したか否かも定かではなく、倒産し国外に転居した原告夫に代わって親戚が単に弁済の手続を代行した程度のものとの可能性もあるというべきで、そのことから直ちに親戚らによる経済的援助を受けられると認めることはできない。)、また、原告らは、長期にわたり本国を離れており、原告夫婦ともに40代半ばになろうとしているのであって、そのような者が帰国後に直ちに就職をすることが可能か否かについては、本国の経済状況の如何にかかわらず疑問があり、少なくとも何らかの困難が予想されるところである。さらに、原告らが現時点で収入を有し、本邦に不動産を有しているといっても、その取得の費用や事業への投資のために数百万円の借金を有しているのであり、現在の本邦での事業を終えて帰国した場合に当分の間生活するのに十分な資産をもったまま帰国し得るか否かは確実ではないというべきであり、むしろ、原告らが本国に帰国した場合には、その生活には困難な状況が生ずると予測するのが通常人の常識にかなうものと認められ、転居に伴う な資産をもったまま帰国し得るか否かは確実ではないというべきであり、むしろ、原告らが本国に帰国した場合には、その生活には困難な状況が生ずると予測するのが通常人の常識にかなうものと認められ、転居に伴う通常の不便をいうにすぎないとの判断は、誤りというほかない。 d 帰国による原告子への影響被告らは、原告子が未だ可塑性に富む年代であることを根拠に両親とともに帰国することがその福祉又は最善の利益に適うと主張する。 しかし、被告らの上記主張は、まず両親が帰国せざるを得ないこと前提としている点において、子どもの権利条約にいう子どもの最善の利益が何かを考慮するものとはなっていないし(まず、子どもを帰国させるべきか否かを検討した上、その結論を前提として両親の処分を決すべきものである。)、その根拠は極めて抽象的なもので、韓国籍を有する者は韓国において居住すべきだといった固定観念を前提としたもので、原告子自身の意向や個別的事情を全く無視している点で不当なものといわざるを得ず、我が国で幼少から過ごした原告子が、隣国であるとはいえ、言語、風俗及び習慣を全く異にし、歴史的沿革から相互に複雑な感情を有するともいえる韓国に帰国した場合に、どのような影響を受けるかについて具体的かつ真摯に検討したものとは到底うかがわれない。 そうすると、被告らの上記主張も十分な根拠に基づかない独断と評価せざるを得ず、本件各処分の相当性を基礎付けるものとは考え難い。 e 比例原則違反法は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図ることを目的としているものであり、退去強制令書が、入国審査官の退去強制事由該当の認定に服した(口頭審理の請求をしない旨記載した文書に署名した)者(47条4項)、口頭審理において入国審査官のした認定に誤りがない旨の特別審理官の判 、退去強制令書が、入国審査官の退去強制事由該当の認定に服した(口頭審理の請求をしない旨記載した文書に署名した)者(47条4項)、口頭審理において入国審査官のした認定に誤りがない旨の特別審理官の判定に服した者(48条8項)、法務大臣により法49条1項の異議の申出に理由がない旨の裁決を受けた者(49条5項)に限って発付され、退去強制事由に該当する者の送還を行うのに不可欠なものであることにかんがみれば、退去強制令書の発付処分は、法が目的とする出入国の公正な管理のために重要な役割を持っているものであると認められ、本件各処分を行い、もって出入国管理の適正を図る必要性があるという側面は否定し得ない。 しかし、原告ら家族は、在留資格を得られず、就労等に著しい制限が存するなどさまざまな不利益が存する中、家族3人で生活の基盤を築いてきたものであり、その基盤は、在留資格を得られることによりさらに強固になることが予測されるものである。また、同人らは、法違反以外に何らの他の法益を侵害する犯罪等を行ったことはなく(この点について被告らは、原告夫が営業していた居酒屋が無許可営業であった旨を述べ、居酒屋ほんちゃんにつき平成11年12月20日に廃業届が出されている旨の群馬県前橋保健福祉事務所長作成の回答書(乙80)を提出するが、少なくとも、原告が営業を引き継いだ平成11年3月当初は、廃業届が提出されておらず、原告自身は、店内に許可書を掲示していたと述べているところであるし、仮に、営業許可の存否に疑義があるとしても、それにより、他者の法益が具体的に侵害されているとは認められない。)、原告妻の経営するブティックや原告子の学校や習い事での活動を通じて社会にも積極的にとけ込んでいるといえる。また、原告らは、処分時で約6年半、現在で9年半と本邦に長期在留していると評価し られない。)、原告妻の経営するブティックや原告子の学校や習い事での活動を通じて社会にも積極的にとけ込んでいるといえる。また、原告らは、処分時で約6年半、現在で9年半と本邦に長期在留していると評価し得る期間に達していると認められるものであり、前記(2)bによれば、これらの事情は、原告らの在留資格付与にとって有利な事情というべきである。 また、前記認定の事実によれば、原告ら家族は、韓国に送還された際に生活を維持することが可能な程度の資産を有しているかについては疑問が残るところであり、原告夫及び原告妻が職に就き、安定した収入を得られる可能性も決して高いとはいえず、居住用の不動産を有していないことによれば、帰国した際、家族3人が生活に困窮する可能性が全くないとはいえず、少なくとも通常の転居と同様の不利益にとどまらない不利益を被ることは容易に予想し得る。 特に、幼少のときに来日し、人格形成に重要な時期を日本で過ごした原告子は、上記のとおり、その生活様式や思考過程、趣向等が完全に日本人と同化しているものであり、現段階で帰国した場合に、そのギャップを本人の努力や周囲の協力等のみで克服しきれるかどうかには疑問が残る。原告子は、現在日本の小学校で勉学に励んでいるが、韓国語もできない原告子が、送還された際に現状の程度において就学を維持することは困難であるし、バトントワリング、ピアノ、オーケストラ等の習い事について、送還後も、これらを継続することが可能かについても疑問が残り、送還がされた場合には、原告子の今後の成長に重大な障害が生じる可能性があるといえる。この点は、前記の子どもの権利条約3条の内容にかんがみれば、退去強制令書の発付に当たり原告夫婦の処分を決する以前に考慮されるべき重要な事情であるといえる。 以上によれば、退去強制令書の発付及びその執行が は、前記の子どもの権利条約3条の内容にかんがみれば、退去強制令書の発付に当たり原告夫婦の処分を決する以前に考慮されるべき重要な事情であるといえる。 以上によれば、退去強制令書の発付及びその執行がされた場合には、原告ら家族の生活に大きな変化が生じることが予想され、特に原告子に生じる負担は相当に重大なものであり、これらの事態は、場合によっては、人道に反するものとなる可能性を有するものといわざるを得ない。 そして、前記のような不法在留外国人の取締りの必要性があることは確かではあるが、被告は、原告らに在留資格を与えることによっていかなる支障が生ずるかにつき何ら具体的な主張をしないし、不法残留以外に何らの犯罪行為等をしていない原告ら家族につき、在留資格を与えたとしても、それにより生じる支障は、同種の事案について在留資格を付与せざるを得なくなること等、出入国管理全体という観点において生じる、いわば抽象的なものに限られているといわざるを得ず、仮に、原告らと同様の条件の者に在留特別許可を与えざるを得ない事態が生じたとしても、原告らのように長期にわたって在留資格を有しないまま在留を継続し、かつ、善良な一市民として生活の基盤を築くことは至難の業というべきことであるから、そのような条件を満たす者に在留特別許可を与えることにどれほどの支障が生ずるかには大いに疑問がある。本件においても、原告らの在留資格付与の要否について、在留期間や生活の安定性、韓国に帰国した場合どのような事態が予測されるか等を考慮した上で検討を行っているものであり、他の者についてもこれと同様慎重な判断を行った場合には、前記のような出入国管理全体という観点からも著しい支障は生じないというべきであろう。このことは、現に、前記判示のとおり、被告法務大臣が、原告と特段の事情の差異が認められない な判断を行った場合には、前記のような出入国管理全体という観点からも著しい支障は生じないというべきであろう。このことは、現に、前記判示のとおり、被告法務大臣が、原告と特段の事情の差異が認められない家族について、在留特別許可を行っているところからしても明らかである。 以上によれば、原告ら家族が受ける著しい不利益との比較衡量において、本件各処分により達成される利益は決して大きいものではないというべきであり、本件各処分は、比例原則に反した違法なものというべきである。 このような原告らに著しい不利益が生じることが予測される状況の中、原告らにこのような不利益を甘受せよというには、被告が主張するように、不法な在留の継続は違法状態の継続にほかならず、それが長期間平穏に継続されたからといって直ちに法的保護を受ける筋合いのものではないとの考え方に拠るほかないが、このような考え方が採用できないことは前記bに説示したところである。また、在留特別許可の制度は、退去強制事由が存在する外国人に対し、在留資格を付与する制度であり、その退去強制事由から不法残留や不法入国が除外されていることなどはないのであるから、法は、不法入国や不法残留の者であっても、一定の事情がある場合には在留資格を付与することを予定しているものとみることもでき、単純に、不法在留者の本邦での生活が違法状態の継続にすぎないとしてそれを保護されないものとするのはあまりに一面的であり、当該外国人に酷なものであるといわざるを得ない。 適式な手続きを経ないで他国に入国することは、現在の主権国家を中心とする国際秩序を前提とする限り、違法なものといわざるを得ないが、より良き生活を求めて他国に移住しようとすることは、人間として自然の情に基づくものであり、他国に移ったのちに先住者と平和裡に共存をし得るものならば 序を前提とする限り、違法なものといわざるを得ないが、より良き生活を求めて他国に移住しようとすることは、人間として自然の情に基づくものであり、他国に移ったのちに先住者と平和裡に共存をし得るものならば、そのような行為は何ら人倫に反するものではないというべきである。原告夫妻は、在留資格を有しないことによる多くの不利益の中、自己や家族の生活の維持に努めながら、帰国しなければという思いと本邦での生活に完全にとけ込みながら成長していく子供の成長等の狭間で長期間にわたり自らの状態等に悩みながら生活していたものとうかがわれ、その心中は察するにあまりあるものであり、当人らとしても違法状態を認識しながらもいずれの方法も採り得なかったというのが正直なところであると思われる。乙第93号証の1及び3、第94号証、第95号証、第98号証によれば、入管当局や群馬県としても不法滞在外国人の取締り等を可能な限り行っていることは認められるが、本件に限ってみても外国人登録の際や小学校への入学時など、原告らが公的機関と接触を持っている機会は多数あり、そのような場面での取締りが制度化しておらず、取締りが行われなかったことで長期化した在留について、その非をすべて原告らに負わせるというのは無理があると考えられる。 (3) 小括以上によれば、本件各処分は、前記(2)bのとおり、既に確立した裁量基準において原告らに有利に考慮すべき最重要の事由とされている事項を、原告らに有利に考慮しないばかりか、逆に不利益に考慮して結論を導いている点において、裁量権の逸脱又は濫用するものであるし、前記(2)c及びdのとおりその相当性の根拠として積極的に主張された点は、いずれも十分な根拠に基づかない独断といわざるを得ないから、その相当性を基礎付ける事由も認定することができず、しかも、前記(2)eの )c及びdのとおりその相当性の根拠として積極的に主張された点は、いずれも十分な根拠に基づかない独断といわざるを得ないから、その相当性を基礎付ける事由も認定することができず、しかも、前記(2)eのとおり、比例原則にも反するものであるから、これを取り消すべきものとするほかない。 第5 結論以上によれば、原告らの被告法務大臣に対する訴えは不適法であるからこれを却下することとし、原告らの被告主任審査官に対する請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき、被告法務大臣は本訴において勝訴しているものの、被告主任審査官の本件処分を実質的には事前に決裁しているものとみるべきことを考慮し、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、62条、64条ただし書、65条を適用し、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官廣澤諭裁判官加藤晴子

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