主文 被告人を懲役2年6月に処する。 この裁判の確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 X,Y及びZと共謀の上,金品を窃取する目的で 1 平成14年3月19日午後10時30分ころ,兵庫県洲本市Aa番地のb所在のB株式会社B事業部淡路営業所所長Cが看守する同営業所内に,1階西側腰高窓の施錠を開けるなどして侵入した上,同所において,同人が管理する現金24万4324円及びノートパソコン3台他2点(時価合計66万5000円相当)を窃取し 2 同日午後11時ころ,同市Ac番地のd所在のD株式会社代表取締役Eが看守する同社事務所内に,出入口引き戸の施錠を開けて侵入した上,同所において,同人が管理する現金24万2915円,手形11通(額面合計1039万5785円)及び金庫1台他57点(時価合計3万7000円相当)を窃取し第2 Y及びZと共謀の上,金品を窃取する目的で 1 同年4月3日午後8時41分ころ,神戸市長田区F通e丁目f番地G1階所在のH工業株式会社代表取締役Iが看守する同社事務所内に,同事務所南側出入口ドアの施錠を開けて侵入した上,同所において,同人が所有する皮ジャンパー1着(時価5万円相当)を窃取し 2 同日午後9時35分ころ,同区J町g丁目h番i号所在の株式会社K代表取締役Lが看守する同社2階事務所内に,同事務所出入口ガラス戸の施錠を開けて侵入した上,同所において,同人が所有又は管理する現金約17万7230円及び財布1個他17点(時価合計500円相当)を窃取し 3 同日午後11時20分ころ,同市垂水区M町j番k号Nl号所在のO所長Pが看守する同事務所内に,同事務所出入口ドアの施錠を開けて侵入した上,同所において,机の引き出しを開けるなどして金品を物色中, 3 同日午後11時20分ころ,同市垂水区M町j番k号Nl号所在のO所長Pが看守する同事務所内に,同事務所出入口ドアの施錠を開けて侵入した上,同所において,机の引き出しを開けるなどして金品を物色中,隣室の従業員に発見されたため,その目的を遂げなかった。 (証拠の標目)(括弧内の数字は検察官の証拠請求番号を示す。)省略(事実認定の補足説明)弁護人は判示第2の2の事実につき,被告人は窃盗の共謀も実行行為もしていないから無罪であると主張し,被告人もこれに沿う供述をするので,この点について,裁判所の判断を補足して説明する。 関係各証拠によれば以下の各事実が認められる。被告人は,知人のZに誘われ,平成14年2月ころから,Z及びY,あるいはZを加えた窃盗グループに参加するようになり,本件判示第2の各犯行に先立ち,判示第1の各犯行を含め通算約6日間にわたり同種の建造物侵入,窃盗の犯行に見張りとして加担していた。本件当日も,午後7時30分ころ,自宅にいたところ,Zから電話で連絡を受け,分配金を目当てに盗みに行くつもりでZやYと合流し,まず,判示第2の1の犯行において,現場事務所の駐車場付近で見張りをし,判示第2の2の犯行(以下,「本件犯行」という。)後の判示第2の3の犯行においても,犯行現場のビルの前で自動車の中から見張りをしていた。そして,本件犯行時には,被告人は,Yから,駐車場内で自動車を見ておき,駐車場の契約者が戻ってきたら知らせるように指示され,犯行現場から約120メートル離れた駐車場で,ZやYの帰りを待っていた。この間,被告人は,ZやYが付近の事務所等に盗みにいっていることを知っており,駐車場に契約者が戻ってきたり,付近を警察官が通れば,携帯電話でZやYに知らせたり,同人らから指示があれば,現場にバールを持っていくなど,その指示に従う の事務所等に盗みにいっていることを知っており,駐車場に契約者が戻ってきたり,付近を警察官が通れば,携帯電話でZやYに知らせたり,同人らから指示があれば,現場にバールを持っていくなど,その指示に従うつもりで待機していた。被告人は,その後,自動車内に戻ってきたZから,多数の小銭が入ったビニール袋や手形の束ようのものなどを手渡され,自動車道の通行料を,ビニール袋の中の小銭から支払った。 以上の事実関係によれば,被告人は,本件犯行においても,ZやYが窃盗の犯行をしていることを認識しながら,何か異変があれば同人らに知らせたり,求められれば,実行行為にも加わるつもりで,待機していたものであり,ZやYも,被告人にそのような役割を委ね,安心して実行行為に及んでいたのであるから,被告人とZ及びYは,それぞれ,互いにその行為を利用する意思で,本件犯行に及んだものであることが認められる。 被告人が述べるような,被告人は,本件現場を具体的には知らされていなかったこと,被告人が待機していた駐車場から,本件現場を直接見通すことができなかったことなどの事情は,前記の認定を左右しない。 以上のとおりであって,被告人は,判示第2の2の事実についても共同正犯としての罪責を負うことは明らかである。 (法令の適用)被告人の判示第1の1,2及び判示第2の1,2の各行為のうち,建造物侵入の点は刑法60条,130条前段に,窃盗の点は同法60条,235条に,判示第2の3の行為のうち建造物侵入の点は同法60条,130条前段に,窃盗未遂の点は同法60条,243条,235条にそれぞれ該当するところ,判示第1の1,2及び判示第2の1,2の各建造物侵入と窃盗並びに判示第2の3の建造物侵入と窃盗未遂との間には,それぞれ手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により,判示第1 るところ,判示第1の1,2及び判示第2の1,2の各建造物侵入と窃盗並びに判示第2の3の建造物侵入と窃盗未遂との間には,それぞれ手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により,判示第1の1,2及び判示第2の1,2については,いずれも重い窃盗罪の刑で,判示第2の3については,重い窃盗未遂罪の刑で,それぞれ一罪として処断することとし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が窃盗グループに見張り役等として参加し,平成14年3月19日及び同年4月3日の2日間に合計5件の建造物侵入,窃盗,窃盗未遂の事務所荒らしに及んだ事案である。被告人らは,盗みに入る会社事務所の下見をし,実行犯役と見張り役の役割分担をしたうえで,バールやピッキング道具を用いて会社事務所に侵入し,手当たり次第に金目の物や金庫等を盗み,金庫をこじ開けてその中の金品を手に入れ,被告人らの間で盗品を分配するという,組織的かつ計画的な犯行を繰り返していたものでその犯行態様は悪質である。そして,本件被害は現金合計66万4469円,物品合計75万2500円相当に及んでいるところ,被害回復は一部しかなされておらず,今後の弁償の見込みも乏しい。また,被告人は,Zらから事務所荒らしをする際の見張り役をしないかと誘われ,軽い気持ちからこれに参加し,アルバイトなどをして金を稼ぐより窃盗の分け前にあずかったほうが楽であるという理由で,幾度となく窃盗 告人は,Zらから事務所荒らしをする際の見張り役をしないかと誘われ,軽い気持ちからこれに参加し,アルバイトなどをして金を稼ぐより窃盗の分け前にあずかったほうが楽であるという理由で,幾度となく窃盗グループの犯行に参加していたものであり,その動機に酌量の余地はない。これらの事情に照らすと被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 しかしながら,被告人は窃盗グループ内で末端の立場にあったに過ぎず,本件各犯行における被告人の役割も従属的なものにとどまり,被告人の利得も多いとはいえない。加えて,被告人は,捜査段階において,当初は,ZとかYなどという人間は知らないなどと述べて本件犯行を否認していたものの,やがて素直に自供するようになり,公判廷においても,深く反省していること,被告人には前科がなく,まだ年も若いことなど,被告人のために酌むべき情状が認められる。そこで,これらの諸事情を総合考慮し,主文の刑を定めた上,その刑の執行を猶予することとした。 (検察官大野雅祥出席)平成14年12月11日神戸地方裁判所第4刑事部裁判官笹野明義
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