- 1 -主文 羽曳野労働基準監督署長が平成15年3月26日に原告に対して行った労働者災害補償保険法に基づく休業給付の支給をしないとした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1原告の求めた裁判主文同旨第2事案の概要本件は,原告が,退勤途中に交通事故にあったとして労働者災害補償保険法に基づく休業給付を申請したところ,労働基準監督署長が不支給処分を行ったため,同処分の取消しが請求された事案である。 前提事実(証拠を掲記した事実を除くほかは当事者間に争いがない)。 (1)当事者及び本件事故の発生ア原告は,平成13年2月26日当時,大阪府富田林市<以下略>所在のA建材店(以下「本件事業場」という)に勤務していた。 。 また,原告の自宅(以下「原告宅」という)は,大阪府富田林市<以下略>。 にあった。 イ原告は,平成13年2月26日午後8時45分ころ,大阪府富田林市<以下略>先路上の交差点(以下「本件交差点」という)において,徒歩で通行。 中,原動機付自転車と衝突し(以下「本件事故」という,頭部外傷,頭蓋。)骨骨折,急性硬膜外血腫,脳挫傷の傷害を負った。 (2)原告の義父の状況原告の妻の父(原告の義父)であるB(大正○年生まれ。以下「義父」という)は,平成12年に交通事故にあったために,1級身体障害者の認定を受け。 ていた。義父は,その当時,その息子(原告の妻の兄(原告の義兄)と大阪府)富田林市<以下略>所在の自宅(以下「義父宅」という)に同居していたが,。 原告の義兄は仕事の都合で帰宅するのが遅く,また,原告の妻も仕事の都合で(,,)。 帰宅するのが遅くなることが多かった以上について甲1の6・17甲2そこで,原告は,義父の面倒をみるために,月曜日から金曜日までの勤務 するのが遅く,また,原告の妻も仕事の都合で(,,)。 帰宅するのが遅くなることが多かった以上について甲1の6・17甲2そこで,原告は,義父の面倒をみるために,月曜日から金曜日までの勤務日のうち4日間程度,本件事業場からの帰りに義父宅に立ち寄り,原告の妻が作った夕食を温めたり,入浴の介助をするなどしていた。 (3)原告宅等の位置関係及び原告の通常の通勤経路ア原告宅,本件交差点,本件事業場及び義父宅の位置関係は,概略,別紙通勤経路図のとおりである。なお,本件事業場の位置は,同別紙において「会社」と記載されている箇所であり,本件交差点は「α交差点」と記載されて,いる箇所であり,原告宅は,同別紙において「自宅」と記載されている箇所である。 ,,「」イ原告は所用のないときは往路については別紙通勤経路図記載の往路の経路を,また,復路については同別紙記載の「復路」の経路を経て,徒歩- 2 -で通勤していた。 この往路及び復路の経路は,いずれも合理的な通勤経路であり,復路は本件交差点を通っている。 (4)本件事故の当日の経緯原告は,平成13年2月26日,本件事業場において勤務した後,同日午後6,,。 時30分ころ義父を介護するために本件事業場から義父宅に徒歩で向かったその際の経路は,別紙通勤経路図における「本件事故当日の復路」として記載のとおりであった。 原告は,同日午後6時50分ころ,義父宅に到着し,義父の夕食の用意などの介護を行い,その後,同日午後8時30分ころ原告宅へ徒歩で向かった。 その際の経路も,別紙通勤経路図における「本件事故当日の復路」として記載のとおりであった。 原告は,このようにして原告宅に向かう途中,同日午後8時45分ころ,本件交差点において本件事故にあった。 (5)本件処分及びその後 経路図における「本件事故当日の復路」として記載のとおりであった。 原告は,このようにして原告宅に向かう途中,同日午後8時45分ころ,本件交差点において本件事故にあった。 (5)本件処分及びその後の経緯原告は,平成15年2月27日,羽曳野労働基準監督署長に対し,本件事故による平成13年2月27日から同年8月28日までの期間についての休業給付の支給を請求した。 これに対し,同監督署長は,平成15年3月26日,原告の負傷は通勤災害に当たらないとして,休業給付を不支給とする処分を行い(以下「本件処分」という,同日付けで原告に通知した。 。)原告は,本件処分を不服として,同年4月9日,大阪労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をしたが,同審査官は,同年9月1日付けで審査請求を棄却する旨の決定をした。 その後,原告は,同年9月30日付けで労働保険審査会に対して再審査請求をしたが,同審査会は,平成17年1月7日付けで再審査請求を棄却する旨の裁決をした。 そこで,原告は,同年4月8日,本件訴訟を提起した(顕著な事実。 ) 関係法令(1)労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という)。 7条1項この法律による保険給付は,次に掲げる保険給付とする。 1号(略)2号労働者の通勤による負傷,疾病,障害又は死亡(以下「通勤災害」という)に関する保険給付。 3号(略)7条2項前項2号の通勤とは,労働者が,就業に関し,住居と就業の場所との間を,合理的な経路及び方法により往復することをいい,業務の性質を有するものを除くものとする。 - 3 -7条3項労働者が,前項の往復の経路を逸脱し,又は同項の往復を中断した場合においては,当該逸脱又は中断の間及びその後の同項の往復は,1項2号の通勤としない。ただし,当該逸脱 のとする。 - 3 -7条3項労働者が,前項の往復の経路を逸脱し,又は同項の往復を中断した場合においては,当該逸脱又は中断の間及びその後の同項の往復は,1項2号の通勤としない。ただし,当該逸脱又は中断が,日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は,当該逸脱又は中断の間を除き,この限りでない。 (2)労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号。以下「労災保険規則」という)。 8条法(労災保険法)7条3項の厚生労働省令で定める行為は,次のとおりとする。 1号日用品の購入その他これに準ずる行為2号(略)3号(略)4号病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為 争点 (1)本件事故が生じた時点における原告の帰宅行為について,労災保険法7条2項の「就業に関し」の要件が充たされているか。 (2)本件事故が通勤経路から逸脱した後に生じた点について,労災保険規則8条1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」に該当し,労災保険法7条3項ただし書の要件を充たすか。 (3)本件事故が,原告が合理的経路に復していない時点で起きたものであり,労「」。 災保険法7条3項ただし書の当該逸脱又は中断の間に該当するか 争点に関する原告の主張(1)争点(1)について原告は,本件事故の当日,勤務を終えて直ちに退勤しており,このような退勤行為が「業務を終えたことにより行われる行為」である以上「就業に関し」,の要件は充たされている。 原告は,義父の介護をする目的で,本件事業場を出発した後,直ちに合理的経路から外れているが,この点は,争点(2)のとおり,この合理的経路から。 の逸脱が労災保険法7条3項ただし書の要件を充たす る。 原告は,義父の介護をする目的で,本件事業場を出発した後,直ちに合理的経路から外れているが,この点は,争点(2)のとおり,この合理的経路から。 の逸脱が労災保険法7条3項ただし書の要件を充たすかという問題にすぎない被告の主張(1)は,本件事業場から義父宅への経路が合理的経路を逸脱している旨を述べるものにすぎない。 (2)争点(2)について次のとおり,原告が義父宅に赴いた行為は,労災保険規則8条1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」に該当し,労災保険法7条3項ただし書の要件を充たす。 ア労災保険規則8条1号該当性について労災保険規則8条1号が合理的経路を逸脱,中断した後であっても合理的経路に復した後の災害について保険給付の対象とした趣旨は,労働者が通勤- 4 -途上で行うささいな行為以外の行為であっても,労働者の通勤の実態を考慮し,本人又は家族の衣,食,保健,衛生等,家庭生活を営む上での必要な行為などにつき例外を設けるというものである。 (),,前提事実 の事情の下では原告が本件事業場での仕事に就いており勤務の終了が夕刻であることからすると,義父の夕食の世話と入浴介助を行うには,退勤の途中で義父宅に立ち寄る必要があった。これに加え,高齢者社会が進展する中で,高齢者の介助が家族の努力と協力に依存している現況に鑑みれば,原告が退勤の途中で義父の介護のために義父宅に立ち寄ったことは,家族の衣,食,保健,衛生等,家庭生活を営む上での必要な行為に当たり,労災保険規則8条1号に該当する。 イ労災保険法7条3項ただし書該当性について本件においては,原告が義父宅に到着してから帰宅の途につくまでの時間は2時間以内であり,合理的経路からの逸脱は,時間的に最小限度のものであったと言える。 (3)争点(3)について本件交差 ついて本件においては,原告が義父宅に到着してから帰宅の途につくまでの時間は2時間以内であり,合理的経路からの逸脱は,時間的に最小限度のものであったと言える。 (3)争点(3)について本件交差点は,その全体が原告の復路に当たり,本件事故は,合理的経路に復した後に発生したものと判断すべきである。 道幅が非常に広い道路の交差点であれば,右折するのにどの横断歩道を通るのかが問題となりうるとしても,本件交差点は,一方の道路が狭い生活道路であり,横断歩道もないのであって,このような本件交差点において,通勤経路を交差点内の一部に限定し,それを外れれば通勤経路を外れたものとする解釈は不合理である。 争点に関する被告の主張(1)争点(1)について労災保険法7条1項2号のいう「通勤」は「労働者が,就業に関し,住居と,就業の場所との間を,合理的な経路及び方法により往復すること(同条2項)」を意味するが,本件事故においては,このうちの「就業に関し」の要件を充たさない。 すなわち,この「就業に関し」は,その往復行為が業務に就くため又は業務が終了したことにより行われるものであること,つまり,その往復行為が業務関連性を要することを明らかにする趣旨で設けられた要件であり,終業後の行為の目的,内容,継続時間,行為の場所等を総合的に考慮して,業務と密接な関連があるかどうかによって判断すべきである。 これを本件について見ると,原告は,本件事故の当日,義父の介護という私的で,業務とは無関係な目的で帰宅を開始しており,行為態様も,本件事業場を離れた時点から原告宅までの合理的通勤経路をそれて,義父宅に行き,義父の食事の世話,入浴の介助等を行うなど,原告の業務とは無関係の行為を行っており,その継続時間も介護を終了して原告宅に向かうまで約2時間と長時間であるほか, 合理的通勤経路をそれて,義父宅に行き,義父の食事の世話,入浴の介助等を行うなど,原告の業務とは無関係の行為を行っており,その継続時間も介護を終了して原告宅に向かうまで約2時間と長時間であるほか,義父宅という事業場施設と関係のない場所で長時間を過ごしてい- 5 -ることなどの事情を総合すれば,原告の帰宅行為が業務と密接な関連があると認めることはできない。 (2)争点(2)について労災保険規則8条1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」は,労働者又はその家族の衣,食,保健,衛生など日常生活を営む上で必要な行為であるだけでは足りず,所要時間も短時間であるなど最小限度の行為であって,日用品の購入と同程度と評価できるものでなければならない。 介護行為は,その内容が被介護者に対する食事の準備,介助のほか,排泄の,,,,介助衣服の洗濯住居の清掃入浴の介助など多岐にわたることが想定されその所要時間は性質上相当長時間を要するものであり,また,日常的な介護で,。 ,,,あればその頻度も高くなるものであるこのような行為の性質目的時間頻度等を総合すると,所要時間も短時間であるなど最小限度の行為であって,日用品の購入と同程度であると評価することはできない。 また,原告は,専ら義父の介護という私的な目的のみで,業務と関連した目的を有することなく義父の介護を行っており,その所要時間も逸脱後約2時間と相当長時間に及んでいる上,義父の介護のために義父宅を訪れる頻度も週6日の勤務日のうち4日以上であったことからすれば,原告が義父の介護のために義父宅に赴いた行為が日用品の購入と同程度と評価することはできない。 (3)争点(3)について原告宅は,本件交差点の北西方向に位置しており,本件交差点から西に向かう道路は北側のみに路側帯が設けら に義父宅に赴いた行為が日用品の購入と同程度と評価することはできない。 (3)争点(3)について原告宅は,本件交差点の北西方向に位置しており,本件交差点から西に向かう道路は北側のみに路側帯が設けられている。したがって,原告の復路については,本件交差点の北側を東から西へ横断する限りにおいて合理的経路といえる。しかし,原告は本件交差点の東側を南から北に横断する時点で本件事故にあっており,原告の合理的通勤経路に復する前に被災したというべきである。 第3当裁判所の判断 原告の帰宅行為と業務関連性(争点(1)について)(1)前提事実,証拠(甲1の17,甲6,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,原告が,本件事故の当日,午後6時30分ころ本件事業場での仕事を終え,義父宅に立ち寄った上で帰宅しようと考えて,同時刻ころ本件事業場を出発し,前提事実(4)記載のとおり,義父宅を経て,原告宅に向かう途中,本件交差点に至ったことが認められる。 この事実によれば,この原告の移動は,業務の終了により本件事業場から原告の住居へ最終的に向かうために行われたものであり,労災保険法7条2項のいう「就業に関し(業務関連性)の要件を充たすものと認められる。 」(2)この点について,被告は,この「就業に関し」の要件については,終業後の行為の目的,内容,継続時間,行為の場所等を総合的に考慮して,業務と密接な関連があるかどうかによって判断すべきである旨主張し,①義父の介護という,業務とは無関係な目的で帰宅を開始していること,②本件事業場を離れた時点から合理的通勤経路をそれていること,③義父宅において業務とは無関係- 6 -の介護行為を約2時間も行っていることを指摘する(被告の主張(1。 ))しかし,まず,①の点については,なるほど,前提事実(4)のとおり,原告は,介護の ③義父宅において業務とは無関係- 6 -の介護行為を約2時間も行っていることを指摘する(被告の主張(1。 ))しかし,まず,①の点については,なるほど,前提事実(4)のとおり,原告は,介護のために義父宅に赴くことを意図しつつ,本件事業場からの移動を開始している。しかし,前記(1)において認定したとおり,原告は,義父宅に立ち寄った後は,原告宅に帰宅する目的で,本件事業場からの移動を開始しているのであるから,原告の帰宅行為が業務と無関係ということはできない。 ,()義父宅への立ち寄り行為は合理的通勤経路からの逸脱労災保険法7条3項としてとらえた上,逸脱後の往復行為として通勤にあたるか否かを検討することが相当であると考えられる。 また,②の点については,なるほど,原告は,本件事業場を離れた時点から(「」)。 合理的通勤経路をそれている別紙通勤経路図の本件事故当日の復路参照しかし,事業場を離れる当初の時点から合理的通勤経路をそれるというだけで逸脱(労災保険法7条3項)にも該当せず「就業に関し」という要件を充たさ,ないということは相当ではない。その後に合理的通勤経路に復した場合には,逸脱又は中断の後の往復行為として通勤に当たるか否か(同項ただし書参照)を検討することが相当であると考えられ,本件においては,さらに,逸脱の後の往復行為に当たるかという観点からの検討を行うのが相当であると考えられる。 さらには,③の点については,なるほど,原告が義父宅において相当時間をかけて介護を行ったことが認められるものの,そのことをもって前記の「就業に関し」の要件を充たさないというべき理由はなく,介護のために経過した時間,すなわち逸脱した時間については,労災保険法7条3項ただし書の「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを 就業に関し」の要件を充たさないというべき理由はなく,介護のために経過した時間,すなわち逸脱した時間については,労災保険法7条3項ただし書の「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のもの」という要件を充たすか否かという観点からの検討を行うのが相当であると考えられる。 労災保険法7条3項ただし書該当性(争点(2)について)(1)合理的通勤経路からの逸脱前提事実(4)記載のとおり,本件事故は,原告が合理的通勤経路を離れ義父宅を訪れて介護を行った後に生じたものであるところ,この義父宅を訪れて介護を行った行為は,通常通勤の途中で行うようなささいな行為とは言えず,労災保険法7条3項のいう「逸脱」に当たるものと認められる。 そうすると,本件事故が生じた時点における原告の帰宅行為が同条1項2号の「通勤」に当たると認められるためには,この「逸脱」が同条3項ただし書の要件を充たす必要があることになる。 (2)本件介護の内容ところで,前提事実,証拠(甲1の6・17,甲2,甲6,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 すなわち,義父は,本件事故の当時,両足が不自由であり,壁や机に手をかけたり杖を使うなどして,どうにか歩けるという状態であって,両下肢機能全- 7 -廃により1級身体障害者の認定を受けていた。そのため,食事の世話,入浴の介助,簡易トイレにおける排泄物の処理といった介護が行われることが不可欠であった。 義父は,その当時,その息子(原告の義兄)と同居していたが,同人は仕事の都合で帰宅するのが遅く,また,原告の妻も仕事の都合で帰宅するのが遅くなることが多かったため,原告は,義父を介護するために,月曜日から金曜日までの勤務日のうち4日間程度,本件事業場からの帰りに 事の都合で帰宅するのが遅く,また,原告の妻も仕事の都合で帰宅するのが遅くなることが多かったため,原告は,義父を介護するために,月曜日から金曜日までの勤務日のうち4日間程度,本件事業場からの帰りに義父宅に寄り,原告の妻が作った夕食を温めたり,入浴の介助をするなどしていた。 本件事故の当日,原告は,午後6時50分ころ義父宅に到着した後,まず義父の食事の準備をし,義父が食事をとった後に入浴の介助を行い,午後8時30分ころ義父宅を出た。 (3)本件介護の必要性(日常生活上必要な行為)前記(2)で認定したところによれば,原告の義父に対する介護は,妻の父という近親者に対する介護であって,義父と同居する義兄又は原告の妻による介護のできない時間帯において原告が介護することは,原告の日常生活のために必要不可欠な行為であったと認められるところ労災保険規則8条1号の日,「用品の購入その他これに準ずる行為」には,このような介護をも含むものと解される。 そうすると,原告が義父に対する介護のために合理的通勤経路を逸脱したことは,労災保険規則8条1号に該当し,労災保険法7条3項ただし書の「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの」を行うためにしたと認められる。 (4)やむを得ない事由により行う最小限度アこの点について,被告は,労災保険規則8条1号に該当するためには,所要時間も短時間であるなど最小限度の行為であって,日用品の購入と同程度と評価できるものでなければならないが,介護行為は,その内容が多岐にわたり,その所要時間は相当長時間を要し,その頻度も高くなるものであるから,日用品の購入と同程度であると評価することはできない旨主張する(被告の主張(2)参照。 )しかし,前記(2)で認定したところによれば,原告が本件事故の当日に義父の介護 度も高くなるものであるから,日用品の購入と同程度であると評価することはできない旨主張する(被告の主張(2)参照。 )しかし,前記(2)で認定したところによれば,原告が本件事故の当日に義父の介護のために義父宅に滞在した時間は約1時間40分程度であるし,その間に原告が介護以外の行為に時間を割いたことは窺われないのであって,この滞在は介護のためにやむを得ない最小限度のものであったと考えられる。また,この約1時間40分という時間が「日用品の購入」のために要する時間に比して特に長時間であるとは認められない。さらには「日用品の購入」であ,っても頻繁に行われることはあり得るところであるから,頻度が高くなることが想定されるからという理由で介護のための立ち寄りが労災保険規則8条1号には該当しないと解すべき理由はない。そうすると,この被告の主張には理由がないこととなる。 - 8 -イなお,証拠(乙7ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,①「労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律」(昭和61年法律第59号。以下「本件改正法」という)による改正前の労災。 保険法以下改正前労災保険法という7条3項ただし書においては日(「」。),「用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」を行うために通勤経路を逸脱又は中断した場合であって一定の要件を充たすときは,逸脱又は中断後の往復行為であっても通勤と認められていたところ,労働者が通勤途上に病院等で短時間の診察等を受ける行為については,この「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」に該当すると考えられていたこと,②ところが,比較的長時間を要する人工透析等の治療については,改正前労災保険法7条3項ただし書の「日用品の購入その他これに準ずる日 これに準ずる日常生活上必要な行為」に該当すると考えられていたこと,②ところが,比較的長時間を要する人工透析等の治療については,改正前労災保険法7条3項ただし書の「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」に当たらないと考えられたために,本件改正法により関係法令(1)のとおりに改正がされ,これに伴って関係法令(2)のとおりに労災保険規則が改正されて,前記のような人工透析等については労災保険規則8条4号に当たるものと対処されたこと,③改正前労災保険法7条3項ただし書の「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」の範囲と,現行の労災保険規則8条,。 1号の範囲とは同一であると一般に解されてきたことがそれぞれ認められるところで,証拠(甲5)によれば,透析療法には5時間以上を要することがあることが認められる。そうすると,前記のような本件改正法に関する理解を前提にしても,約1時間40分を要した介護行為を現行の労災保険規則8条1号に該当すると認めることは妨げられないと解される。 本件事故が合理的経路に復した後の事故であるか否か(争点(3)について)(),(,,,,) 前提事実 証拠 甲1の6・8・16・17甲3甲4乙6原告本人及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 すなわち,原告は,本件事故の当日,義父宅を出た後,別紙通勤経路図に記載の「本件事故当日の復路」として記載のとおりの経路を経て,まず,本件交差点から約50メートル南にあるコンビニエンスストア(同別紙において「コンビニ」と記載)に行き,同所において自己の夕食を購入し,その後に,本件交差点において本件事故にあった。 本件事故は,本件交差点の東側部分を南から北に歩行中の原告に,西から東に直進してきた原動機付自転車が衝突したという き,同所において自己の夕食を購入し,その後に,本件交差点において本件事故にあった。 本件事故は,本件交差点の東側部分を南から北に歩行中の原告に,西から東に直進してきた原動機付自転車が衝突したというものである。 本件交差点は,南北方向の道路(β線)と東西方向の道路との交差点であって,信号機はなかった。この南北方向の道路は片側各1車線であるが,東西方向の道路はセンターラインのない道路であり,原告が横断しようとした本件交差点東側の道路の幅は約3.9mであり(甲1の8の4枚目,本件交差点は特)に規模の大きな交差点ではない。 (2)ところで,被告は,本件交差点の北側を東から西へ横断する限りにおいて合理的経路といえるにすぎない旨主張する(被告の主張(3。しかし,前記))(1)で認定したとおり,本件交差点が特に規模の大きな交差点ではないこと- 9 -を考慮すると,本来,合理的な通勤経路を判断するに当たって,本件交差点のどの部分を横断することが合理的であるかまでを厳格に検討する必要はないというべきである。 しかも,証拠(甲1の8の4枚目)によると,原告は,本件交差点東側の道路(幅員約3.9m)を南から北へ約3mわたった地点(原告の復路については,北方向から本件交差点に至り,本件交差点において西に向かって右折するという経路が,合理的な通勤経路であることについては,当事者間において争,,. いがなくしたがって被告のいうところの合理的な通勤経路まであと僅か09mの地点ということになる)で本件事故にあったことが認められるのであっ。 て,原告が本来の合理的な通勤経路に復した後に本件事故が生じたものと認めて差し支えないと考える。 そうすると,本件事故は,労災保険法7条3項ただし書の「当該逸脱又は中断の間」に生じたものではなく,同条1項2号の「 の合理的な通勤経路に復した後に本件事故が生じたものと認めて差し支えないと考える。 そうすると,本件事故は,労災保険法7条3項ただし書の「当該逸脱又は中断の間」に生じたものではなく,同条1項2号の「通勤」の要件を充たすこととなる。 なお,前記(1)で認定したとおり,原告は本件交差点に至る前にコンビニエンスストアに立ち寄って自己の夕食を購入しているが,この行為が同条3項ただし書(労災保険規則8条1号)に当たることは明らかである。 以上によれば,本件事故は「通勤(労災保険法7条1項2号)の途上の災害に,」当たると認められる。 よって,原告の請求は理由があるから,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部裁判長裁判官山田陽三裁判官川畑正文裁判官下田敦史は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官山田陽三
▼ クリックして全文を表示