- 1 -平成26年12月9日判決言渡平成26年(行ケ)第10117号審決取消請求事件(甲事件)平成26年(行ケ)第10123号審決取消請求事件(乙事件)口頭弁論終結日平成26年11月11日判決 甲事件原告・乙事件被告ツルヤ化成工業株式会社(以下「原告」という。) 訴訟代理人弁護士村林隆一同井上裕史同佐合俊彦 甲事件被告・乙事件原告三栄源エフ・エフ・アイ株式会社(以下「被告」という。) 訴訟代理人弁護士田中千博同溝内伸治郎同小林幸夫同坂田洋一訴訟代理人弁理士三枝英二同中野睦子同宮川直之 主文 1 原告の甲事件請求を棄却する。 2 被告の乙事件請求を棄却する。 - 2 - 3 訴訟費用は,甲事件については原告の負担とし,乙事件については被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件特許庁が無効2011-800234号事件について平成26年4月10日にした審決のうち,「訂正 いては被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件特許庁が無効2011-800234号事件について平成26年4月10日にした審決のうち,「訂正を認める。」との部分及び「特許第3439559号の請求項1,2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分を取り消す。 2 乙事件特許庁が無効2011-800234号事件について平成26年4月10日にした審決のうち,「特許第3439559号の請求項3に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯(当事者間に争いがない。)被告は,平成7年2月1日,発明の名称を「食品の風味向上法」とする特許出願(以下「本件出願」という。)をし,平成15年6月13日,設定の登録(特許第3439559号。請求項の数は3である。)を受けた(以下,この特許を「本件特許」という。)。 原告は,平成23年11月15日,本件特許の請求項1ないし3に係る発明について,特許無効審判を請求した(無効2011-800234号)。 被告は,平成24年2月3日及び同年7月2日,訂正請求をした。 特許庁は,同年9月28日,訂正を認め,請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする旨の審決をした。 被告は,平成24年11月5日,知的財産高等裁判所に対し,前記審決の取消しを求める訴えを提起し(平成24年(行ケ)第10384号),- 3 -平成25年2月1日,特許庁に対し,訂正審判を請求した。知的財産高等裁判所は,同月22日,平成23年改正(平成23年法律第63号による改正をいう。以下,同じ。)前の特許法181条2項に基づき,前取り消す旨の決定をした。 特許庁は,平成25年7月22 知的財産高等裁判所は,同月22日,平成23年改正(平成23年法律第63号による改正をいう。以下,同じ。)前の特許法181条2項に基づき,前取り消す旨の決定をした。 特許庁は,平成25年7月22日,請求項1及び2の訂正を認めず,請求項3の訂正を認め,請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする旨の審決をした。 被告は,平成25年8月28日,知的財産高等裁判所に対し,前決の取消しを求める訴えを提起し(平成25年(行ケ)第10243号),同年10月17日,特許庁に対し,訂正審判を請求した(以下「本件訂正」という。)。知的財産高等裁判所は,同年11月13日,平成23年改正前の特許法181条2項に基づき,前 特許庁は,平成26年4月10日,「訂正を認める。特許第3439559号の請求項3に係る発明についての特許を無効とする。特許第3439559号の請求項1,2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決をし(以下,単に「審決」というときは,この審決を指す。),同月18日,その謄本を原告及び被告に送達した。 原告は,平成26年5月9日,審判のうち,訂正を認めた部分及び請求項1,2に係る発明について審判請求が成り立たないとした部分を不服として,被告は,同月15日,請求項3に係る発明についての特許を無効とした部分を不服として,それぞれその部分の取消しを求めて訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載 本件訂正前の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正前の請求項1ないし3の発明を「訂正前発明1」のようにいい,訂正前発明1ないし3をまとめて「訂正前発明」という。また,本件訂正前の明細書を「本件特許明細書」という。)。 - 4 -「【請求項1】 食塩含有食品に,シュクラロースを添加することを にいい,訂正前発明1ないし3をまとめて「訂正前発明」という。また,本件訂正前の明細書を「本件特許明細書」という。)。 - 4 -「【請求項1】 食塩含有食品に,シュクラロースを添加することを特徴とする食塩含有食品の風味向上法。 【請求項2】 食塩100重量部に対して,シュクラロースを0.0001~2.5重量部添加する請求項1記載の食塩含有食品の風味向上法。 【請求項3】 食塩100重量部に対して,シュクラロースを0.001~2.5重量部添加する請求項1記載の食塩含有食品の風味向上法。」本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求項1ないし3の発明を「訂正発明1」のようにいい,訂正発明1ないし3をまとめて「訂正発明」という。また,本件訂正に係る訂正請求書に添付した明細書を「訂正明細書」という。下線は,訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】 食塩を2~8重量%含有する食品に,シュクラロースを,その甘味の閾値以下の量添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。 【請求項2】 食塩を2~8重量%含有する食品に,シュクラロースを,食塩100重量部に対して0.0001~2.5重量部の範囲内であって,シュクラロースの甘味の閾値以下になるように0.00005~0.00038重量%添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。 【請求項3】 食塩100重量部に対して,シュクラロースを0.001~1重量部添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写し記載のとおりであり,その要点は以下のとおりである。 ア本件訂正について本件訂正 有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写し記載のとおりであり,その要点は以下のとおりである。 ア本件訂正について本件訂正は,特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目- 5 -的とするものに該当し,本件特許明細書に記載した事項の範囲内でするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,平成23年改正前特許法134条の2第1項ただし書の規定に適合し,かつ,同条5項において読み替えて準用する同法126条3項及び4項の規定に適合する。 イ無効理由について訂正発明1及び2は,①浜島教子著「基本的四味の相互関係について」と題する論文(「調理科学」vol.8,No.3(1975年(昭和50年)発行)132~136頁,甲5。以下「甲5文献」という。),特開昭50-13568号公報(甲6。以下「甲6公報」という。),特開平6-133724号公報(甲7。以下「甲7公報」という。),馬越祥一著「天然甘味料の用途適性」と題する論文(「食品と科学」第25巻第7号(昭和58年7月号)90~94頁,甲10。以下「甲10文献」という。),小川敏男著「最新漬物製造技術」(昭和54年10月1日改訂第5版発行)188~199頁,甲11。以下「甲11文献」という。)及び特開平2-72842号公報(審決記載の参考資料11,乙14。以下「乙14公報」という。)によって本件特許の出願前に公然知られていたと認められる技術事項(以下「公知の技術事項」という。)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,②甲5文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから,訂正発 )及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,②甲5文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから,訂正発明1及び2に係る特許は,請求人(本件における原告)が主張する無効理由によって無効とすることはできない。 訂正発明3は,公知の技術事項,周知の技術事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,訂正発明3に係る特許は無効とすべきである。 - 6 - 本件訂正に係る訂正事項1ないし5は,次のとおりである。 ア訂正事項1特許請求の範囲の請求項1について,本件訂正前に「【請求項1】 食塩含有食品に,シュクラロースを添加することを特徴とする食塩含有食品の風味向上法。」とあったのを,「【請求項1】 食塩を2~8重量%含有する食品に,シュクラロースを,その甘味の閾値以下の量添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。」と訂正するもの。 イ訂正事項2特許請求の範囲の請求項2について,本件訂正前に「【請求項2】 食塩100重量部に対して,シュクラロースを0.0001~2.5重量部添加する請求項1記載の食塩含有食品の風味向上法。」とあったのを,「【請求項2】 食塩を2~8重量%含有する食品に,シュクラロースを,食塩100重量部に対して0.0001~2.5重量部の範囲内であって,シュクラロースの甘味の閾値以下になるように0.00005~0.00038重量%添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。」と訂正するもの。 ウ訂正事項3特許請求の範囲の請求項3について,本件訂正前に「【請求項 8重量%添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。」と訂正するもの。 ウ訂正事項3特許請求の範囲の請求項3について,本件訂正前に「【請求項3】 食塩100重量部に対して,シュクラロースを0.001~2.5重量部添加する請求項1記載の食塩含有食品の風味向上法。」- 7 -とあったのを,「【請求項3】 食塩100重量部に対して,シュクラロースを0.001~1重量部添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法。」と訂正するもの。 エ訂正事項4本件特許明細書の【0004】に「本発明の上記課題に鑑みなされたものであり,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法を提供することを目的としている。」とあったのを,「本発明は上記課題に鑑みなされたものであり,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法を提供することを目的としている。」と訂正するもの。 オ訂正事項5本件特許明細書の【0005】に「かくして,本発明によれば,食塩含有食品に,シュクラロースを添加する食塩含有食品の風味向上法が提供される。」とあったのを,「かくして,本発明によれば,食塩含有食品に,シュクラロースを添加する,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法が提供される。」と訂正するもの。 審決が認定した公知の技術事項の内容,訂正発明1と公知の技術事項との一致点及び相違点,訂正発明3と公知の技術事項との一致点及び相違点は,- 8 -次のとおりである。 ア公知の技術事項の内容「シ た公知の技術事項の内容,訂正発明1と公知の技術事項との一致点及び相違点,訂正発明3と公知の技術事項との一致点及び相違点は,- 8 -次のとおりである。 ア公知の技術事項の内容「ショ糖で塩から味がほぼ相殺され(甲5文献)ることが観察され並びにジヒドロカルコン類(甲6公報),グリチルリチン(甲10文献及び甲11文献),ステビア甘味料(甲7公報),ステビオサイド(甲11文献),イソマルトオリゴ糖(乙14公報),及び,ブドウ糖と砂糖の併用(甲11文献)で塩なれ,すなわち,刺激的な塩辛味である塩かどが取れ,刺激が所定の程度丸く感じる状態となることが観察される。」イ訂正発明1と公知の技術事項との一致点及び相違点 一致点「食塩を所定の重量%含有する食品に,甘味料を所定の量添加する,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を所定の程度丸く感じさせる風味向上法。」 相違点甘味料,その添加量,刺激を丸く感じさせる程度が,訂正発明1では「シュクラロース」であり,「甘味の閾値以下の量添加する」ことで,「塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせること」ができるのに対して,公知の技術事項では,「ショ糖」「ジヒドロカルコン類」「グリチルリチン」「ステビア甘味料」「ステビオサイド」「イソマルトオリゴ糖」「ブドウ糖と砂糖の併用」といった様々な甘味料であるがシュクラロースではなく,また,「甘味の閾値以下の量添加する」ことで塩味をやわらげられるものの,刺激の丸くなる程度までは不明な点。 ウ訂正発明3と公知の技術事項との一致点及び相違点 一致点「食塩100重量部に対して,シュクラロースを所定重量部添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を所定の程度丸- 9 -く感じさせる風味向上 及び相違点 一致点「食塩100重量部に対して,シュクラロースを所定重量部添加することを特徴とする,食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を所定の程度丸- 9 -く感じさせる風味向上法。」 相違点甘味料,その食塩100重量部に対する添加量,刺激を丸く感じさせる程度が,訂正発明3では「シュクラロース」であり,「シュクラロースを0.001~1重量部添加する」ことで,「塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせること」ができるのに対して,公知の技術事項では,「ショ糖」「ジヒドロカルコン類」「グリチルリチン」「ステビア甘味料」「ステビオサイド」「イソマルトオリゴ糖」「ブドウ糖と砂糖の併用」といった様々な甘味料であるがシュクラロースではなく,食塩100重量部に対する添加量が不明であり,さらに,塩味をやわらげられるものの,刺激の丸くなる程度までは不明な点。 4 原告及び被告が主張する取消事由甲事件において原告が主張する取消事由は,①訂正要件に係る判断の誤り(取消事由1),②明確性要件に係る判断の誤り(取消事由2),③訂正発明1及び2の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由3)である。 乙事件において被告が主張する取消事由は,訂正発明3の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由4)である。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(訂正要件に係る判断の誤り)について【原告の主張】訂正事項1ないし5は,特許請求の範囲を拡張するものであり(取消事由1-1),仮にそうでないとすると,訂正事項1及び2は新規事項を追加するものである(取消事由1-2)。したがって,訂正要件に係る審決の判断には誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。 取消事由1-1(訂正事項1ないし5は特許請求の範囲の 消事由1-2)。したがって,訂正要件に係る審決の判断には誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。 取消事由1-1(訂正事項1ないし5は特許請求の範囲の拡張に該当する- 10 -ものであること)ア訂正事項1ないし3について審決は,訂正事項1ないし3について,本件特許明細書の記載に照らし,訂正前の請求項2の「風味向上法」は,「食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法」又は「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」風味向上法のいずれかの風味向上法をいうとした上で,「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」風味向上法と訂正することは,訂正前のものから一つを選択したにすぎないから,実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されるものではないと判断している。 確かに,本件特許明細書には,①「閾値以下のシュクラロースを食塩水に添加した場合に塩なれが生じるという技術事項」(実験例1及び2)と,②「閾値以上のシュクラロースを食品に添加した場合に,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法」(実施例1ないし6)という二つの技術事項が記載されている。 しかし,被告は,本件出願において,発明の名称を「風味向上法」とし,本件特許明細書の【0004】に,発明の目的について,「食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法を提供することを目的としている」と明示し,当該目的に沿うものだけを「実施例」として記載したのである。すなわち,被告は,本件出願に係る発明として,上記の二つの技術事項のうち,② きる食品の風味向上法を提供することを目的としている」と明示し,当該目的に沿うものだけを「実施例」として記載したのである。すなわち,被告は,本件出願に係る発明として,上記の二つの技術事項のうち,②の「閾値以上のシュクラロースを食品に添加した場合に,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法」を選択したのである。 - 11 -このことは,上記①の「閾値以下のシュクラロースを食塩水に添加した場合に塩なれが生じるという技術事項」が,単なる「実験例」として記載されていることからも明らかである。また,実験例の説明である【0015】にも,「シュクラロースの甘味の閾値以下の量においても塩なれ効果があることが分かった」とのみ記載され,それが食品の風味向上法にどのように影響するかの分析もないし,続く実験例1ないし6でも,シュクラロースの甘味の閾値以下で食品の風味向上法が向上するかどうかは確認されていない。 以上のとおり,訂正前発明は,上記②の「閾値以上のシュクラロースを食品に添加した場合に,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法」であり,「こく付け」を必須とするものであるから,これを「塩かどを取る」効果のみに限定する訂正事項1ないし3は,特許請求の範囲を「こくを付さない風味向上法」まで拡張するものであり,平成23年改正前の特許法134条の2第1項ただし書の規定に適合しない。 被告は,本件特許明細書の【0028】に,食品の風味を向上させる方法として,①「塩かどをなくす+こく付け」と,②「塩かどをなくす+丸味を付ける」という少なくとも二とおりの内容が開示されていると主張する。 特許明細書の【0028】に,食品の風味を向上させる方法として,①「塩かどをなくす+こく付け」と,②「塩かどをなくす+丸味を付ける」という少なくとも二とおりの内容が開示されていると主張する。 しかし,【0028】は,「食塩を含有する食品にシュクラロースを添加することにより,食品の後味に残る強い塩味,すなわち「塩かど」をなくし,さらに味に幅を持たせる,いわゆる「こく付け」あるいは「丸味を付ける」効果を付与して食品の風味を向上させることができる。」というものであり,「味に幅を持たせる」効果を付与することが本件出願に係る発明の効果であると限定している。 - 12 -この点,シュクラロースの甘味閾値以下では,「刺激を丸く感じる」としても,「味に幅を持たせる」効果が発現されることはない。すなわち,【0028】の「丸味を付ける」とは,「刺激を丸く感じる」とは異なり,「こく付け」を言い換えたものにすぎず,【0028】が,本件出願に係る発明を,塩なれ効果(塩かどを取る効果)と味に幅を持たせる効果のいずれもが奏功するものに限定していることは明らかである。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 イ訂正事項4及び5について審決は,訂正事項4及び5について,訂正事項1ないし3の訂正に伴い,不明りょうとなった本件特許明細書の発明の詳細な説明の表現を訂正するものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないと判断している。 しかし,訂正事項4及び5は,本件出願に係る発明の「風味向上法」の意義から「こくを付ける」との要件を削除することを意図して行われたものであり,訂正事項1ないし3と相まって特許請求の範囲を いる。 しかし,訂正事項4及び5は,本件出願に係る発明の「風味向上法」の意義から「こくを付ける」との要件を削除することを意図して行われたものであり,訂正事項1ないし3と相まって特許請求の範囲を拡張するものである。 また,「明りょうでない記載の釈明」とは,本来的に明細書の記載に不備がある場合に当該不備を是正する訂正であり,特許請求の範囲を訂正したことによって生じた不整合を整合させることではないから,訂正事項4及び5は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものには該当しない。 取消事由1-2(訂正事項1及び2は新規事項の追加に該当するものであること)ア仮に,訂正事項1及び2が特許請求の範囲の拡張に当たらないとすると,訂正発明1及び2の「食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じ- 13 -させる風味向上法」は,「食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法」と同義となり,こく付けを必須とするものとなる。 しかし,本件特許明細書には,シュクラロースの甘味の閾値以下で「こくを付ける」との効果を奏することは,記載も示唆もされていない。すなわち,実験例1及び2は,いずれもシュクラロースの添加による「塩なれ効果」を評価したものにすぎず,それぞれのシュクラロースの添加により,食塩含有食品にこくが付けられたかは評価されていないし,その有無についての記載もない。また,実施例1ないし6は,いずれも,シュクラロースの含有量が甘味の閾値(0.00038%)を超えるものであるから,訂正発明1及び2の実施例とはいえない。 したがって,訂正事項1及び2は,新規事項の追加に該当する。 イ被告は,実施例3のシュクラロースの濃度は,0.000324%であり,シュクラロー ら,訂正発明1及び2の実施例とはいえない。 したがって,訂正事項1及び2は,新規事項の追加に該当する。 イ被告は,実施例3のシュクラロースの濃度は,0.000324%であり,シュクラロースの甘味の閾値以下であるから,実施例3は訂正発明1及び2の実施例であると主張する。 しかし,訂正発明1及び2は,「食塩を2~8重量%含有する食品」の風味向上法に係る発明である。しかるに,実施例3は,154.4部の重量を有する食品に,食塩3部が含有されているものであるから,当該食品は,食塩を1.94重量%(≒3÷154.4部×100)しか含有しない食品であり,訂正発明1及び2の実施例ではない。 被告は,「食塩を2~8重量%含有する食品」との記載における食塩濃度の数値は,いずれも有効数字一桁で表示されたものであり,実施例3の食塩濃度もこれに合わせて有効数字一桁で算出すれば2重量%となり,当該濃度範囲に含まれることになるとして,実施例3は訂正発明1及び2の実施例であると主張する。 しかし,仮に,被告の上記主張を前提としても,実施例3には,「みり- 14 -ん」が2部も含まれているところ,「みりん」は少なくとも糖分40%を含んでいることから,ショ糖換算で0.8部(=2部×40%),シュクラロース換算で0.001部(=0.8÷800)の甘味成分が含まれていることになる。そうすると,実施例3において,「塩かどがとれ,味にこく味が増し嗜好性の高いかまぼこ」(【0021】)が得られたのは,シュクラロースをその甘味閾値以下の量で単独で使用したことによる効果ではなく,「みりん」が含まれることで甘味の閾値以上となったことによる効果である。したがって,実施例3は,訂正発明1及び2の実施例とはいえない。 【被告の主張】取消事由1-1(訂正事項1ない ではなく,「みりん」が含まれることで甘味の閾値以上となったことによる効果である。したがって,実施例3は,訂正発明1及び2の実施例とはいえない。 【被告の主張】取消事由1-1(訂正事項1ないし5は特許請求の範囲の拡張に該当するものであること)についてア原告は,主に,本件特許明細書の【0004】の記載を根拠に,訂正前発明はこく付けを必須とするものであると主張する。 しかし,本件特許明細書の【0028】には,食品の風味を向上させる方法として,「あるいは」という語を挟んで,①「塩かどをなくす+こく付け」と,②「塩かどをなくす+丸味を付ける」という少なくとも二とおりの内容が開示されている。原告の上記主張は,【0028】の記載と整合しないものであって,理由がない。 原告は,【0028】の「丸味を付ける」とは,「刺激を丸く感じる」とは異なり,「こく付け」を言い換えたものにすぎないと主張するが,広辞苑第六版に記載があるとおり,「こく」とは,「深みのある味わい」のことであり,「丸味を付ける」とは異なるものである。 原告は,訂正前発明がこく付けを必須とするものであることは,「閾値以下のシュクラロースを食塩水に添加した場合に塩なれが生じるという技術事項」が「実験例」として記載されていることからも明らかであり,ま- 15 -た,実験例の説明である【0015】でも,シュクラロースの塩なれ効果が食品の風味向上法にどのように影響するかの分析がないとも主張する。 しかし,本件特許明細書では,【0010】の冒頭で,「本発明の食品の風味向上法を説明する。」と記載され,これに引き続いて実験例1及び2が開示されており,これらの実験例も,本発明が開示する「食品の風味向上法」の一環であることは明白である。 そして,実験例1については,【0011】の【表 」と記載され,これに引き続いて実験例1及び2が開示されており,これらの実験例も,本発明が開示する「食品の風味向上法」の一環であることは明白である。 そして,実験例1については,【0011】の【表1】に「塩なれ -塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」と記載され,これに添加量0.01%のシュクラロースと,添加量0.04%の甘草抽出混合製剤が該当することが読み取れる。また,この表1の結果を総括して,【0012】には,「表1から明らかなように,シュクラロースと甘草抽出混合製剤において,良好な結果が得られた。」と記載されている。 また,実験例2においては,様々な塩濃度と,甘味料の添加量の組み合わせが試され,シュクラロースについては広範囲において「塩なれ効果があることが分かった。」(【0015】),すなわち「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」効果があることが記載される一方,甘草抽出物製剤については,「塩なれ効果はあるが,添加量を多くすると苦みを伴った不快な味になり,評価されなかった。」と記載され,甘草抽出物製剤との比較で,シュクラロースの塩なれ効果,すなわち「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」という良好な風味向上効果について記載されている。 以上の記載も,訂正前発明が,こく付けを含まない,「塩なれ」のみ,すなわち「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」ものを含んでいることを裏付けるものである。 イ以上のとおり,訂正前発明には,こく付けを含まない,塩なれのみ,すなわち,「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」場合も含まれている- 16 -ことは明らかである。 したがって,訂正前発明を「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」風味向上法と訂正することは,訂正前の風味の内容を一つのものに限定するものであって,特許請求の範 16 -ことは明らかである。 したがって,訂正前発明を「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」風味向上法と訂正することは,訂正前の風味の内容を一つのものに限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとの審決の判断に誤りはない。 取消事由1-2(訂正事項1及び2は新規事項の追加に該当するものであること)についてア原告は,訂正事項1及び2は新規事項の追加に該当すると主張するが,同主張は,訂正前発明がこく付けを必須とするものであるとの原告の誤った主張を前提にするものであるから,理由がない。 イ仮に,原告が主張するように,訂正前発明がこく付けを必須とするものであるとしても,実施例3のシュクラロースの濃度は,約0.000324%であり,シュクラロースの甘味の閾値以下であるから(【0007】),実施例3は,訂正発明1及び2の実施例である。 原告は,訂正発明1及び2は,「食塩を2~8重量%含有する食品」の風味向上法に係る発明であるところ,実施例3は,食塩を1.94重量%しか含有しない食品であり,訂正発明1及び2の実施例ではないと主張する。しかし,「食塩を2~8重量%含有する食品」との記載における食塩濃度の数値は,いずれも有効数字一桁で表示されたものであり,実施例3の食塩濃度もこれに合わせて有効数字一桁で算出すれば2重量%となり,当該濃度範囲に含まれることになるので,実施例3は,「食塩を2~8重量%含有する食品」に含まれる。 原告は,実施例3において,「塩かどがとれ,味にこく味が増し嗜好性の高いかまぼこ」(【0021】)が得られたのは,シュクラロースをその甘味閾値以下の量で単独で使用したことによる効果ではなく,「みりん」が含まれることで甘味の閾値以上となったことによる効果であるか- まぼこ」(【0021】)が得られたのは,シュクラロースをその甘味閾値以下の量で単独で使用したことによる効果ではなく,「みりん」が含まれることで甘味の閾値以上となったことによる効果であるか- 17 -ら,実施例3は,訂正発明1及び2の実施例とはいえないとも主張する。 しかし,「みりん」とシュクラロースの甘味(甘味質)は異なるものであるから,「みりん」の量をシュクラロース換算する原告の主張は,失当である。また,実施例3の「みりん」2部は,全体が154.4部であるからショ糖換算では0.52部含まれていることになるが,この量は甘味を呈する量である(【0007】には,しょ糖の甘味の閾値は0.31%である旨の記載がある。)ところ,【0021】には,「このかまぼこは,シュクラロース無添加区に比べ塩かどがとれ,味にこく味が増し嗜好性の高いかまぼこであった。」と記載されており,当該記載によれば,シュクラロース無添加区(「みりん」は添加されているが,シュクラロースは無添加)では,「みりん」だけで甘味があっても(甘味閾値以上となっても)効果がないのに対して,シュクラロースを甘味閾値以下の量さらに添加することで初めて効果を奏している。これは,シュクラロースを甘味閾値以下の量で使用したことによる効果であって,「みりん」が含まれることで(全体が)甘味閾値以上となったことによる効果ではないことを示すものである。原告の上記主張は理由がない。 2 取消事由2(明確性要件に係る判断の誤り)について【原告の主張】審決は,訂正明細書の発明の詳細な説明の【表1】,及び,特に【表2】には,シュクラロース及び甘草抽出混合製剤を濃度を変えて塩なれを測定した結果が記載されており,そこには,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」,すなわち,後続する塩味が十 ,及び,特に【表2】には,シュクラロース及び甘草抽出混合製剤を濃度を変えて塩なれを測定した結果が記載されており,そこには,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」,すなわち,後続する塩味が十分丸くなったと判断される濃度が記載されており,また,「± やや塩味がやわらげられていると感じる」,すなわち,塩かどは取れるが後続する塩味が十分丸くなったとはいえない濃度が記載されているとして,これらの濃度をパネラーが追試すれば,その判断基準は明らかであって,訂正発明1ないし3の「塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる」と- 18 -の事項は,客観的に特定されているものといえると判断している。 しかし,訂正明細書には,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」との評価はあるが,審決にいう「十分丸く」なったかどうかの評価はない。また,「刺激を丸く感じる」との評価はパネラーの感想にすぎず,客観的な判断基準は特定されていないから,どのような場合に訂正発明の技術的範囲に属するのか不明りょうである。 また,実験例1及び2において,訂正発明1及び2の塩分濃度である「2~8重量%」では,シュクラロースの評価は「×」か「-」であり,「±:やや塩味がやわらげられていると感じる。=塩味が十分丸くなったとはいえない濃度」の記載がないから,「±」と「-」とを区別する判断基準は不明である。 以上のとおり,本件訂正後の特許請求の範囲は,明確性要件に違反するものである。 【被告の主張】 本件訂正後の特許請求の範囲の「塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる」との記載について,訂正明細書の実験例1の記載によれば,「塩なれ効果をパネル10名で官能により評価した」として,その結果の評価方法についても表1及び表2に,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」「±や て,訂正明細書の実験例1の記載によれば,「塩なれ効果をパネル10名で官能により評価した」として,その結果の評価方法についても表1及び表2に,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」「±やや塩味がやわらげられていると感じる。」「+ 塩味がやわらげられず,塩味を直接感じる。」「++ 塩味をつよく感じる。」の四段階で評価すること,そのうち「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」場合を,「塩なれ」がある場合とすることが明確に記載されており,これに対応して訂正発明1ないし3の特許請求の範囲には,「塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる」と記載されているのであって,その判断基準は,訂正明細書の記載から明確である。 原告は,訂正明細書には,審決にいう「十分丸く」なったかどうかの評価はなく,また,「刺激を丸く感じる」との評価はパネラーの感想にすぎず,- 19 -客観的な判断基準は特定されていないと主張する。 しかし,「十分丸い」というのは,単に審決の表現であり,訂正明細書には,上記のとおりの記載があり,明細書の記載として何らあいまいなところはない。また,その評価に当たっても,10名のパネリストによる官能試験を行うことが記載され,その実際の試験結果も各甘味料の添加量とともに,当該4段階評価の基準に沿って詳細に記載されているのであるから,当業者であれば,当該基準を,追試などもまじえながら理解することは容易であって,何ら不明りょうな点はない。 3 取消事由3(訂正発明1及び2の容易想到性に係る判断の誤り)について【原告の主張】審決は,訂正発明1及び2は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないと判断しているが,以下のとおりその判断は誤りである。 審決は,本件特許の出願時の技術常識を参酌しても,甘味の閾値以 決は,訂正発明1及び2は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないと判断しているが,以下のとおりその判断は誤りである。 審決は,本件特許の出願時の技術常識を参酌しても,甘味の閾値以下の量添加で塩なれが起きるような技術常識はないと認定している。 しかし,甲7公報の実施例1の一夜漬用調味液全体に占める調味液Aの割合は0.002%であり,調味液Aの甘味度は70であるから,前記漬物用調味液のショ糖換算の甘味度は0.14%となり,ショ糖の甘味閾値0.31%(訂正明細書の【0007】)を下回る。 このように,甲7公報では,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下添加したものであるが,「この組成の下漬用調味液で製造した一夜漬けは塩辛さもなく非常に味の良いものとなった」(甲7公報の【0015】)のであり,調味液Aの甘味閾値以下の添加により「塩なれ効果」が確認されている。すなわち,本件特許の出願時において,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下の量添加することで,塩なれが起きることは周知であった。 したがって,審決の上記認定は誤りである。 審決は,甘味閾値以下の濃度に着目して「塩味をやわらげ刺激を丸く感じ- 20 -させる」甘味料を探索する動機がないと判断している。 しかし,塩なれ効果の優れた甘味料を探索することは当たり前の技術課題であったのであるから,添加量の多寡にかかわらず,塩なれ効果のある甘味料としてシュクラロースを選ぶことは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,食塩の含有量により「塩なれ」が起きる甘味料の添加量が異なることは技術常識であり,甲7公報には,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下添加することで塩なれが生じることが開示されている。また,土居茂樹著「漬物への甘味料の利用」と題する論文(「食品と科学」1988 ことは技術常識であり,甲7公報には,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下添加することで塩なれが生じることが開示されている。また,土居茂樹著「漬物への甘味料の利用」と題する論文(「食品と科学」1988増刊号①(通巻396号,昭和63年6月30日発行)80頁,甲13。以下「甲13文献」という。)には,砂糖の甘味の閾値に近い0.5%で塩なれ効果があることが開示されていた。 したがって,甲7公報や甲13文献に接した当業者は,甘味料を甘味閾値以下添加した場合について,塩なれ効果があるかどうかを調べることも,容易に想到する。 審決は,甘味閾値以下におけるシュクラロースの効果は,甲13文献から予測できないし,加えて,本件特許の出願時の技術常識及び他の甲号証からも予測できないものであると判断している。 しかし,シュクラロースを甘味閾値以下添加した場合と,甘味閾値以上添加した場合とで,塩なれ効果について特段顕著な違いはない。また,甲7公報や甲13文献からすれば,シュクラロースの甘味閾値以下で塩なれ効果が確認されたとしても,それは従来の技術常識や他の甲号証から予測できる範囲内である。 また,公知技術の塩なれ効果は,料理の分野においては「隠し味」と称されるものであり,甘味を感じなくても効果を奏することは,本件出願前から周知であった。 - 21 -さらに,訂正発明は,「甘味の閾値以下の量」という数値によって限定された,いわゆる数値限定であるところ,数値限定の場合は,有利な効果について,その数値限定の内と外で量的に顕著な差異があることが要求されている。しかるに,実験例2に係る表2において,シュクラロースの甘味の閾値である0.00038重量%以下の範囲であっても,それを超える範囲と比して効果に顕著な差があるとはいえない。 したがって,訂正発 る。しかるに,実験例2に係る表2において,シュクラロースの甘味の閾値である0.00038重量%以下の範囲であっても,それを超える範囲と比して効果に顕著な差があるとはいえない。 したがって,訂正発明に進歩性がないことは明らかである。 【被告の主張】原告は,甲7公報の【0015】の表3の記載を根拠に,調味液Aの甘味閾値以下の添加により「塩なれ効果」が確認されているとして,本件特許の出願時において,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下の量添加することで,塩なれが起きることは周知であったと主張する。 しかし,甲7公報によれば,調味液Aは,ステビア甘味料,甘草甘味料,異性化糖の混合物であり(【0013】),このうち前二者は,食塩との相乗効果により,甘味度が2倍高くなることが記載されている(【0008】,【0009】)。したがって,甲7公報の【0015】の実施例1に記載されているように調味液Aを用いて一夜漬けを製造すると,一夜漬け中の食塩4.8kgとの相乗効果により,甘味度は70の2倍程度の飛躍的に高い甘味度を発揮することになるから,甘味度70をもって,ショ糖の閾値以下であるとは断定できない。 また,甲7公報の【0015】の実施例1において,表3の組成中には,調味液Aのほか,70%ソルビトール液5kgが含まれている。これは,砂糖の0.6倍程度の甘味度を持つ糖アルコールであり(【0010】),砂糖の甘味換算で,5kg×0.7×0.6=2.1kgもの量の砂糖に匹敵するから,実施例1に記載の調味液Aを含む一夜漬用調味液は,調味液Aの上記の相乗効果による甘味の飛躍的上昇の効果と合わせて考慮すれば,甘味- 22 -の閾値を超えていることは明らかである。すなわち,甲7公報の【0015】の表3の記載は,甘味閾値以下の添加により「塩なれ効果」が確 よる甘味の飛躍的上昇の効果と合わせて考慮すれば,甘味- 22 -の閾値を超えていることは明らかである。すなわち,甲7公報の【0015】の表3の記載は,甘味閾値以下の添加により「塩なれ効果」が確認されている公知例とはなり得ないものである。 また,調味液Aは,ステビア甘味料,甘草甘味料,異性化糖を適宜の割合で混合させた特殊な甘味料であり,3種の甘味料を混合したことによる相乗効果で甘味度が上がる特殊な甘味料である(甲7公報の【0008】【0009】)から,調味液Aの効果をもって,本件特許の出願時において,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下の量添加することで,塩なれが起きることは周知であったと結論付けることは誤りである。 原告は,塩なれ効果のある甘味料としてシュクラロースを選ぶことは,当業者が容易に想到し得たことであり,甘味料を甘味閾値以下添加した場合について,塩なれ効果があるかどうかを調べることも,容易に想到すると主張する。 しかし,本件特許の出願前に,甘味料を甘味閾値以下という極めて少ない量添加することで塩なれ効果が得られるといった技術常識が存在しないことはもちろん,そのような公知例は全く知られていなかったのであるから,シュクラロースの添加量を甘味の閾値以下の量として,塩なれ効果を得ようとする動機付けは到底得られるものではない。 原告は,シュクラロースの甘味閾値以下で塩なれ効果が確認されたとしても,それは従来の技術常識や他の甲号証から予測できる範囲内であると主張する。 しかし,甘味料を甘味閾値以下という極めて少ない量添加することで塩なれ効果が得られるというような公知例は全く知られていなかったのであるから,甘味の閾値以下でもシュクラロースを添加すると塩なれ効果が得られるというのは,当業者にとって予想外の効果である。 ることで塩なれ効果が得られるというような公知例は全く知られていなかったのであるから,甘味の閾値以下でもシュクラロースを添加すると塩なれ効果が得られるというのは,当業者にとって予想外の効果である。 4 取消事由4(訂正発明3の容易想到性に係る判断の誤り)について- 23 -【被告の主張】審決は,訂正発明3は当業者が容易に発明をすることができたものであると判断しているが,以下のとおりその判断は誤りである。 一致点の認定の誤り審決は,公知の技術事項の内容として,「ショ糖で塩から味がほぼ相殺され(甲5文献)ることが観察され並びにジヒドロカルコン類(甲6公報),グリチルリチン(甲10文献及び甲11文献),ステビア甘味料(甲7公報),ステビオサイド(甲11文献),イソマルトオリゴ糖(乙14公報),及び,ブドウ糖と砂糖の併用(甲11文献)で塩なれ,すなわち,刺激的な塩辛味である塩かどが取れ,刺激が所定の程度丸く感じる状態となることが観察される。」を認定した上,訂正発明3と公知の技術事項との一致点として,「塩味をやわらげ刺激を・・・丸く感じさせる」点を認定している。 しかし,訂正明細書における「塩なれ」とは,単に塩味の強弱のみならず,「刺激の丸さ」という別の二次元的な評価軸によって評価されたものであって,「塩味がやわらげられ」かつ「刺激を丸く感じる」という双方を満足する状態を意味するのに対し,公知の技術事項である「塩なれ」とは,単に塩から味を減少させる,すなわち,塩かどを取ることであり,その意味には,「刺激を丸く感じさせる」ことまでは含んでいない。 ア公知の技術事項における「塩なれ」について審決は,甲5文献において,「ショ糖で塩から味がほぼ相殺され」ることが記載されており,相殺という強い表現が用いられてい ことまでは含んでいない。 ア公知の技術事項における「塩なれ」について審決は,甲5文献において,「ショ糖で塩から味がほぼ相殺され」ることが記載されており,相殺という強い表現が用いられているから,「程度は不明であるものの所定の程度刺激が丸くなっているものと解される」と認定している。しかし,相殺と判断する根拠は,第2表を参照すれば明らかなように,単に塩から味より甘味を強く感じることを意味するのであり,そこには「所定の程度刺激が丸くな」るという異質な効果は全く記載- 24 -されていない。したがって,審決が,甲5文献の記載を根拠に,公知の技術事項の内容として「程度は不明であるものの所定の程度刺激が丸くな」ることを認定したのは誤りである。 また,甲6公報には,「ジヒドロカルコン類が鹹味を大巾に緩和する効果,すなわち塩なれ効果」との記載があるが,これは,塩からさを軽減する効果を意味するにすぎず,「塩味の刺激を丸く感じさせる」効果については記載されていない。このことは,甲6公報の実施例において,単に「塩からさ」を量的に評価していることからも明らかである。 甲7公報には,単に「塩辛さを無くする所謂塩なれ効果」が記載されているにすぎず,「塩味の刺激を丸く感じさせる」効果については記載されていない。 甲10文献,甲11文献,竹内征夫著「天然系調味料とコク味」と題する論文(「食品と科学」第29巻第7号93~99頁,乙12)及び乙14公報にも,同様に,「塩なれ」効果が記載されているにすぎず,「塩味の刺激を丸く感じさせる」効果は記載されていない。 審決は,特開昭54-122774号公報(審決のいう刊行物B。甲16。以下「甲16公報」という。)の「漬物類や塩蔵品においてはいずれも熟成が促進され,塩辛味が直接の刺激として感じられず(塩なれ 。 審決は,特開昭54-122774号公報(審決のいう刊行物B。甲16。以下「甲16公報」という。)の「漬物類や塩蔵品においてはいずれも熟成が促進され,塩辛味が直接の刺激として感じられず(塩なれ効果)従来品とくらべて一味違う丸味のある製品が得られる。」との記載を根拠に,塩なれ効果を,「刺激を所定の程度丸く感じさせる」効果に結びつけて判断している。しかし,当該記載の「丸味のある製品」との結論は,塩なれ効果のみならず,熟成が促進する効果とも結びつけて記載されている。したがって,このような記載のみから,塩なれ効果を,「刺激を所定の程度丸く感じさせる」効果に結びつけて判断することは誤りである。 審決は,特開平4-112766号公報(審決のいう参考資料12。乙15。以下「乙15公報」という。)の「塩なれ効果(塩分の刺激性が温- 25 -和になることをいう)」の記載をも根拠に,塩なれ効果を,「刺激を所定の程度丸く感じさせる」効果に結びつけて判断している。しかし,当該記載の「刺激性が温和になる」とは,単に刺激の程度を緩和させることを意味するにすぎないのであって,「丸く感じさせる」という,明らかに質的に異質な効果までは記載されていない。したがって,審決の上記判断は誤りである。 イ訂正明細書における「塩なれ」について訂正明細書の【表1】の備考には,「塩なれ - 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」と記載されており,「塩味がやわらげられ」ることと,「刺激を丸く感じる」ことは,区別される感覚のことである。また,「刺激」とは,専ら「痛覚」で受容する感覚であって「味」とは区別されるべきものであることは,技術常識である。そうでなければ,わざわざ「刺激を丸く感じる」と記載する必要がないし,単に「塩味がやわらげられた」ことの程度を記載した 受容する感覚であって「味」とは区別されるべきものであることは,技術常識である。そうでなければ,わざわざ「刺激を丸く感じる」と記載する必要がないし,単に「塩味がやわらげられた」ことの程度を記載したのが「刺激を丸く感じる」というのであれば,「やや塩味がやわらげられた」場合においては,塩味緩和の程度が低いものとして,「やや刺激を丸く感じる」と記載されるはずである。 原告は,訂正明細書に記載された「刺激を丸く感じる」ことは,「塩味がやわらげられた」程度の結果にすぎないと主張する。しかし,「刺激を丸く感じる」とは,「塩味がやわらげられ」た,すなわち十分に塩味が緩和され一定程度に達したときに,その緩和の程度とは別に,新たに発現してくる感覚のことである。 相違点の判断の誤り訂正発明3の効果である「食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる」効果については,本件特許の出願前,シュクラロース以外の甘味料,特に高甘味度甘味料について知られておらず,示唆もされていなかった。 - 26 -また,乙4の実験報告書の2頁の図の記載から明らかなように,甘味料としてシュクラロースを使用した場合にのみ,食塩水の後味に残る塩味の刺激が丸く感じるようになり,他の甘味料(砂糖,ネオヘスペリジンジヒドロカルコン)を使用した場合は依然として刺激を感じるままである。このように,シュクラロースの,「食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる」効果は,シュクラロースに特異かつ顕著なものであって,これは,本件特許の出願前に,当業者であっても予測することはできなかった。 さらに,乙6の実験報告書の2頁の図の記載から明らかなように,食塩水にシュクラロースを添加した試験サンプル①は,塩味に伴う刺激が丸く感じられたのに対して,他の甘味料(砂糖, ことはできなかった。 さらに,乙6の実験報告書の2頁の図の記載から明らかなように,食塩水にシュクラロースを添加した試験サンプル①は,塩味に伴う刺激が丸く感じられたのに対して,他の甘味料(砂糖,甘草抽出物,ステビア,ネオヘスペリジンジヒドロカルコン,サッカリンナトリウム)を添加した試験サンプル②~⑥はいずれも,塩味に伴う刺激が丸く感じられなかった。このことからも,シュクラロースの,「後続する塩味を十分丸く」する効果は,シュクラロースに特異かつ顕著なものであって,これは,本件特許の出願前に,当業者であっても予測することができなかったといえる。 以上のとおり,シュクラロースを添加することによる訂正発明3の「食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を所定の程度丸く感じさせる」効果は,シュクラロースに特異かつ顕著なものである。したがって,他の甘味料でこのような効果を奏するものを探索する動機付けが全くなく,当業者が公知の技術事項から訂正発明3に容易に想到できるとした審決の判断は誤りである。 【原告の主張】一致点の認定について被告は,審決が,訂正発明3と公知の技術事項との一致点として,「塩味をやわらげ刺激を・・・丸く感じさせる」点を認定したことは誤りであると主張する。 しかし,訂正明細書の実施例に記載された「刺激を丸く感じる」ことは,- 27 -「塩味がやわらげられた」程度の結果にすぎず,本件特許の出願前から公知の事実にすぎない。 すなわち,訂正明細書の表1の「備考」には,「塩なれ - 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。 ± やや塩味がやわらげられていると感じる。」との記載があり,これによれば,「塩味がやわらげられた」場合には,その結果として「刺激を丸く感じる」ことは理解できるが,「やや塩味がやわらげられてい 。 ± やや塩味がやわらげられていると感じる。」との記載があり,これによれば,「塩味がやわらげられた」場合には,その結果として「刺激を丸く感じる」ことは理解できるが,「やや塩味がやわらげられている」だけの場合には,「刺激を丸く感じる」のか,「感じない」のかは,不明である。また,「刺激を丸く感じる」というのも,当該パネラーの感想にすぎず,塩味がどの程度やわらげられた段階で,「丸く感じる」かの評価基準はない。 また,訂正明細書の実施例には,「塩かどがとれ,こく味のある」(【0016】)などの効果は開示されているものの,「丸みがついた」との具体的な事例はない。よって,訂正発明3が,具体的な食品において実施された場合,どの程度で「丸みがついた」と判断できるのかは,明細書からは不明である。 そして,本件特許の出願前においても,「塩味がやわらげられた(塩なれ)」場合に,「塩カドのないまろやかな風味」(甲15・【0014】)や,「塩辛味が直接の刺激として感じられず(塩なれ効果)・・・丸味のある製品が得られる」(甲16・2頁左下欄16行~18行)というように,「丸味がついた(まろやか・丸味のある味)」と表現されてきた。 そうすると,「刺激を丸く感じる」とは,ここでいう「塩カド」すなわち「刺激的な塩辛み」が取れることと同義といわざるを得ない。 したがって,審決の一致点の認定に誤りはない。 仮に,「刺激を丸く感じる」効果が,「塩味をやわらげる」効果と質的に異なるのであれば,その技術内容は訂正明細書に記載されていないといわざるを得ず,本件特許には,平成6年改正(平成6年法律第116号による改- 28 -正をいう。)前の特許法36条5項2号に違反する無効理由があることになる。 相違点の判断について当業者におい を得ず,本件特許には,平成6年改正(平成6年法律第116号による改- 28 -正をいう。)前の特許法36条5項2号に違反する無効理由があることになる。 相違点の判断について当業者において,塩味を適正なものとして食品の風味を調整することは最も関心のあることであり,シュクラロースの添加量を適宜変化させて,塩味をやわらげる程度を調整し,「刺激を丸く感じる」ようにすることは,当業者が容易に想到することである。 第4 当裁判所の判断 当裁判所は,取消事由1ないし4はいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 取消事由1(訂正要件に係る判断の誤り)について原告は,訂正事項1ないし5は特許請求の範囲を拡張するものであり(取消事由1-1),仮にそうでないとすると,訂正事項1及び2は新規事項を追加するものである(取消事由1-2)と主張するので,以下,本件特許明細書の記載に基づいて検討する。 本件特許明細書の記載本件特許明細書(乙50)の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 ア 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,食品の風味向上法に関し,より詳細には,食塩を含有する食品にシュクラロースを添加することにより食品の風味を向上させる方法に関するものである。」イ 「【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】多くの食品は,一般に食塩を含有している。例えば・・・【0003】従来から,上記のような食塩を含有する食品においては,塩かどを取り,こくを付け,風味を向上させるため,グリチルリチン塩,サ- 29 -ッカリン,アスパルテーム,甘草抽出物,ステビア,ネオヘスペリジンデヒドロカルコン,サイクラメート等の砂糖の20 塩かどを取り,こくを付け,風味を向上させるため,グリチルリチン塩,サ- 29 -ッカリン,アスパルテーム,甘草抽出物,ステビア,ネオヘスペリジンデヒドロカルコン,サイクラメート等の砂糖の20倍以上の甘味を有する高甘味度甘味料,グリシン,アラニン,グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸又は5’-リボヌクレオチドナトリウム,5’-イノシン酸等の核酸の旨味成分,コハク酸ナトリウムなどの有機酸を使用している。しかし,塩味は,後に続く味があるために,後続する塩味を十分丸くし,塩かどをとることが困難であった。例えば,目的とする効果が得られるまで高甘味度甘味料を添加すると,それぞれの甘味料が持つ独特の苦みを感じるようになる。また,アミノ酸では,アミノ酸特有のアミノ酸臭を生じる。さらに,核酸は後味に残り,充分な効果が得られるまで添加することができないという課題があった。 【0004】本発明の上記課題に鑑みなされたものであり,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法を提供することを目的としている。」ウ 「【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは,鋭意研究をかさねた結果,シュクラロースを添加することにより,食塩を含有する食品の塩かどを取り,こくを付け,風味を向上させることに成功し,本発明を完成した。かくして,本発明によれば,食塩含有食品に,シュクラロースを添加する食塩含有食品の風味向上法が提供される。 【0006】本発明における食塩含有食品とは,食塩を含有する食品であれば特に限定されるものではなく,漬け物・・・等の食塩を含有するものが挙げられる。これら食品に含有される食塩の量は,食品の種類,味付け等により種々異なる。 【0007】本発明のシュクラロー 品であれば特に限定されるものではなく,漬け物・・・等の食塩を含有するものが挙げられる。これら食品に含有される食塩の量は,食品の種類,味付け等により種々異なる。 【0007】本発明のシュクラロースは,・・しょ糖の約650倍の甘味- 30 -を有する高甘味度甘味料である。一般に,シュクラロースの甘味の閾値は,平均0.00038%である。しょ糖の甘味の閾値0.31%での甘味倍率は,約800倍となり,閾値付近では甘味倍率が高くなることが知られている(Progressinsweeteners, page131-132, ELSEVIERAPPLIEDSCIENCE) 。 【0008】本発明において,食塩含有食品に,シュクラロースを添加する方法は,食品の種類等により特に限定されるものではない。例えば,食塩含有食品となる食品素材にシュクラロースを添加してもよいし,食品素材の加工中に食塩,その他の添加物等とともにシュクラロースを添加してもよいし,食塩の加工が終了した後に添加してもよい。シュクラロースの食塩含有食品への添加量は,食品の風味を改善する量であれば特に限定されるものではなく,例えば,食品に含有されている食塩の量によっても異なるが,一般に食塩100重量部に対して,0.0001~2.5重量部が好ましい。このシュクラロースの添加量は,シュクラロースの甘味の閾値以下でも,すなわち甘味のない範囲でも塩なれ効果があることを意味する。なかでも,シュクラロースの添加量は,0.001~2.5重量部がより好ましく,さらに0.001~1重量部が好ましい。 【0009】上記のように食塩含有食品にシュクラロースを添加することにより,食塩を含有する食品の風味を改善することができるが,ソーマチン,アセスルファームカリウム,アリテーム,ステビア,ネオヘスペ 【0009】上記のように食塩含有食品にシュクラロースを添加することにより,食塩を含有する食品の風味を改善することができるが,ソーマチン,アセスルファームカリウム,アリテーム,ステビア,ネオヘスペリジンデヒドロカルコン(判決注・「ネオヘスペリジンジヒドロカルコン」の誤記と認める。),甘草などの高倍率甘味料を併用してもよい。また,グリシン,アラニン,グルタミン酸等のアミノ酸,コハク酸塩,クエン酸三ナトリウム等の有機酸,ホエイソルト,リン酸三カリウム等の無機酸,イノシン酸ナトリウム,グアニル酸ナトリウム等の核酸等の食品添加物の調味料を併用してもよい。」- 31 -エ 「【0010】【実施例】以下に本発明の食品の風味向上法を説明する。 実験例1イオン交換水100重量部に食塩8重量部を添加し,各種高甘味度甘味料を甘味度に応じた濃度で併用して,塩なれ効果をパネル10名で官能により評価した。その結果を表1に示す。なお,ここで用いられている甘草抽出混合製剤とは,グルチルリチン酸を60%以上含有する甘草抽出物50%とクエン酸三ナトリウム50%とを混合した製剤である。 【0011】【表1】 【0012】表1から明らかなように,シュクラロースと甘草抽出混合製剤において,良好な結果が得られた。 【0013】実験例2実験例1で塩なれ効果のある甘味料を用い,イオン交換水100重量部に食塩2,5,8,12,20重量部を添加し,各高甘味度甘味料を甘味度に応じた濃度で併用して,塩なれ効果をパネル10名で官能により評価した。その結果を表2に示す。なお,ここで用いている甘草抽出混合製剤- 32 -は,実験例1において使用したものと同様のものである。 【0014】【表2】 価した。その結果を表2に示す。なお,ここで用いている甘草抽出混合製剤- 32 -は,実験例1において使用したものと同様のものである。 【0014】【表2】 【0015】表2から明らかなように,シュクロース(判決注・「シュクラロース」の誤記と認める。)は,食塩2~20g/100gの範囲にわたり,0.001~2.5gの添加量の範囲にわたり良好な結果が得られた。なかでも,食塩2,5,8g/100gの範囲においては,ショクラロース(判決注・「シュクラロース」の誤記と認める。)の甘味の閾値以下の量においても塩なれ効果があることが分かった。一方,甘草抽出物製剤は,適度の範囲での塩なれ効果はあるが,添加量を多くすると苦みを伴った不快な味になり,評価されなかった。 【0016】実施例1- 33 -醤油35部(重量部,以下同じ)(食塩5.25部),グルタミン酸ナトリウム19部,5′-リボヌクレオチド2ナトリウム0.1部,コンブ抽出物粉末0.7部,酵母粉末1部,砂糖20,澱粉2.5部,シュクラロース0.006部(食塩100部に対して約0.11部)を混合し,水にて全量を100部とし,加熱溶解してうるちせんべい用調味液を調製した。得られた調味液は,シュクラロース無添加区と比べて,塩かどがとれ,こく味のある調味液であった。 【0017】この調味液を,米菓生地100部に対して40部添加,乾燥してうるちせんべいを製造した。得られたうるちせんべいはシュクラロース無添加区と比べて,塩かどがとれ,こく味のある味のものであった。 【0018】実施例2食塩10部,亜硫酸ナトリウム0.01部,ポリリン酸ナトリウム0.12部,メタリン酸ナトリウム0.03部,香辛料1部に対して て,塩かどがとれ,こく味のある味のものであった。 【0018】実施例2食塩10部,亜硫酸ナトリウム0.01部,ポリリン酸ナトリウム0.12部,メタリン酸ナトリウム0.03部,香辛料1部に対して,シュクラロース0.006部(食塩100部に対して0.06部)を添加し,冷水に溶解し,全量100部とし,ハム用ピックル液を調製した。 【0019】このピックル液20部を豚肉100部にインジェクションし,常法通りハムを製造した。ここで得られたハムは,シュクラロース無添加区に比べ,塩かどがなく,味にこく味があり,嗜好性の高いハムがママあった。 【0020】実施例3冷凍すり身100部をカッティングし,食塩3部,小麦グルテン1.4部,グルタミン酸ナトリウム0.2部,澱粉5部,みりん2部,卵白2部,グリシン0.8部に対して,シュクラロース0.0005部(食塩100部に対して0.0167部)を添加し,さらに氷水40部を加えて成形した後,90℃で30分間加熱後,冷却し,かまぼこを得た。 【0021】このかまぼこは,シュクラロース無添加区に比べ塩かどがと- 34 -れ,味にこく味が増し嗜好性の高いかまぼこであった。 【0022】実施例4醤油18部(食塩2.7部),みりん3部,鰹節抽出粉末15部,酵母粉末1部,砂糖2部,食塩4部,グルタミン酸ナトリウム0.4部,コハク酸2ナトリウム0.04部,5’-イノシン酸2ナトリウム0.01部に対してに対して,シュクラロース0.003部(食塩100部に対して0.045部)を添加し,水に溶解し,全量100部として4倍濃縮の液体うどんスープを得た。 【0023】この4倍濃縮の液体うどんスープはシュクラロース無添加区に比べ,塩かどがとれ,鰹風味が増し嗜好性の高いうどんスープであった。またこの4倍濃縮の液体う 倍濃縮の液体うどんスープを得た。 【0023】この4倍濃縮の液体うどんスープはシュクラロース無添加区に比べ,塩かどがとれ,鰹風味が増し嗜好性の高いうどんスープであった。またこの4倍濃縮の液体うどんスープを4倍に希釈し,うどんの面ママを加え,素うどんを調理した。この素うどんは,シュクラロース無添加区比べ,塩かどがとれ,鰹風味が増し嗜好性の高い素うどんであった。さらに,この素うどんを冷凍保存した後,加熱冷凍しても同様の結果が得られた。 【0024】実施例5合挽肉67部,牛脂3部,パン粉5部,卵5部,ソテーした玉ねぎ17部,食塩0.7部,ホワイトペッパー末0.15部,ナツメグ末0.05部,酵母粉末0.03部に対してシュクラロース0.001部(食塩100部に対して,0.143部)を混合し,成形した後,調理してハンバーグステーキを得た。このハンバーグステーキはシュクラロース無添加区に比べ塩かどがとれ,味にこく味が増し嗜好性の高いハンバーグステーキであった。 【0025】またこのハンバーグステーキを容器に充填し,120℃で20分加熱し,2ケ月保存後,再加熱しても同様の結果が得られた。 【0026】実施例6- 35 -果糖ぶどう糖液糖85部,50%乳酸8.7部,食塩28部,動物蛋白加水分解物14部,グリシン2部,ウコン色素1部に対して,シュクラロース0.01部(食塩100部に対して0.036部)を添加し,水に溶解して全量300部とし,たくあん漬け用調味液を得た。 【0027】このたくあん漬け用調味液は,シュクラロース無添加区に比べ塩かどがとれ,味にこく味が増し,嗜好性の高いたくあん漬け用調味液であった。このたくあん漬け用調味液30部に塩ぬきしたたくあん70部をつけ込み,たくあん漬けを得た。このたくあん漬けは,シュクラロース 塩かどがとれ,味にこく味が増し,嗜好性の高いたくあん漬け用調味液であった。このたくあん漬け用調味液30部に塩ぬきしたたくあん70部をつけ込み,たくあん漬けを得た。このたくあん漬けは,シュクラロース無添加区に比べ塩かどがとれ,味にこく味が増し嗜好性の高いたくあん漬けであった。」オ 「【0028】【発明の効果】食塩を含有する食品にシュクラロースを添加することにより,食品の後味に残る強い塩味,すなわち「塩かど」をなくし,さらに味に幅を持たせる,いわゆる「こく付け」あるいは「丸味を付ける」効果を付与して食品の風味を向上させることができる。」 取消事由1-1(訂正事項1ないし5は特許請求の範囲の拡張に該当するものであること)についてア訂正事項1ないし3について原告は,訂正前発明は,「閾値以上のシュクラロースを食品に添加した場合に,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法」であり,こく付けを必須とするものであって,こく付けを伴わない,塩かどを取る効果(塩なれ効果)のみのものは,訂正前発明には含まれていないとして,これを「塩かどを取る」効果のみに限定する訂正事項1ないし3は,特許請求の範囲を「こくを付さない風味向上法」まで拡張するものであると主張する(前記第3 - 36 -そこで,まず,訂正前発明がこく付けを必須とするものであるかどうかについて,本件特許明細書に基づいて検討する。 ,本件特許明細書には,従来から,食塩を含有する食品においては,塩かどを取り,こくを付け,風味を向上させるために高甘味度甘味料,アミノ酸又は核酸の旨味成分等を使用しているが,塩味は,後に続く味があるために,目的とする効果が得られるまでこれら高甘味度 おいては,塩かどを取り,こくを付け,風味を向上させるために高甘味度甘味料,アミノ酸又は核酸の旨味成分等を使用しているが,塩味は,後に続く味があるために,目的とする効果が得られるまでこれら高甘味度甘味料等を添加すると,高甘味度甘味料についてはそれぞれの甘味料が持つ独特の苦みを感じるようになり,アミノ酸についてアミノ酸特有のアミノ酸臭を生じ,核酸について後味が残るため,充分な効果が得られるまで添加できず,後続する塩味を十分丸くし,塩かどをとることが困難であるという課題があったこと(【0003】),本件出願に係る発明は,このような課題を解決しようとするものであり,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法を提供することを目的とするものであること(【0004】),本件出願に係る発明は,上記の課題を解決するための手段として,食塩含有食品にシュクラロースを添加することにしたものであること(【0005】)が記載されている。 上記記載によれば,従来,高甘味度甘味料等は,「塩かどを取る」こと及び「こくを付ける」ことを目的として用いられているが,このうち,「塩かどを取る」ことに関しては,充分な効果が得られるまで添加することができず,後続する塩味を十分丸くすることが困難であるという課題があったこと,本件出願に係る発明は,このような課題を解決しようとするものであり,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法を提供することを目的としているというのである(【000- 37 -3】ないし【0005】)。 そうすると,本件出願に係る発明は,こくを付けるか否かにかかわらず,食塩含有食品の塩かどを取ることを課題 することを目的としているというのである(【000- 37 -3】ないし【0005】)。 そうすると,本件出願に係る発明は,こくを付けるか否かにかかわらず,食塩含有食品の塩かどを取ることを課題とするものであり,①食塩含有食品の塩かどを取り,こくを付けるという課題と,②食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くするという課題の,二つの課題を含むものであるといえる。 また,本件特許明細書の【0008】には,「シュクラロースの食塩含有食品への添加量は,食品の風味を改善する量であれば特に限定されるものではなく・・・このシュクラロースの添加量は,シュクラロースの甘味の閾値以下でも,すなわち甘味のない範囲でも塩なれ効果があることを意味する。」との記載があり,これによれば,本件特許明細書には,「塩なれ効果」が風味を改善するものであることが記載されているといえる。 そして,本件特許明細書には,実験例1及び2において,パネルによる官能評価の結果,シュクラロースは,甘味の閾値を超えた場合だけでなく,甘味の閾値以下の量においても,「塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」として,「塩なれ効果」があると確認されたことが記載されている(実験例1について【0010】~【0012】,実験例2について【0013】~【0015】)。 そうすると,実験例1及び2は,甘味の閾値を超えた場合だけでなく,甘味の閾値以下の量においても,本件出願に係る発明が解決しようとする課題の一つである,食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くするという課題を解決したものと理解することができる。 したがって,訂正前発明はこく付けを必須とするものであるとはいえない。 - 38 - 原告の主張についてa る塩味を十分丸くするという課題を解決したものと理解することができる。 したがって,訂正前発明はこく付けを必須とするものであるとはいえない。 - 38 - 原告の主張についてa 原告は,被告は,本件出願において,発明の名称を「風味向上法」とし,本件特許明細書の【0004】に,発明の目的について,「食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法を提供することを目的としている」と明示し,当該目的に沿うものだけを「実施例」として記載したとして,訂正前発明はこく付けを必須とするものであると主張する(前記第3。 しかし,本件出願に係る発明は,①食塩含有食品の塩かどを取り,こくを付けるという課題と,②食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くするという課題の,二つの課題を含むものであるといえ,本件特許明細書には,「塩なれ効果」が風味を改善するものであることが記載されているといえるところ,「塩なれ効果」があると確認された実験例1及び2は,甘味の閾値を超えた場合だけでなく,甘味の閾値以下の量においても,上記②の課題を解決したものと理解することができることに照らせば,訂正前発明はこく付けを必須とするものであるとはいえない。原告の上記主張は,この判断を左右するものではない。 b 原告は,「閾値以下のシュクラロースを食塩水に添加した場合に塩なれが生じるという技術事項」が,単なる「実験例」として記載されており,その実験例の説明である【0015】でも,シュクラロースの塩なれ効果が食品の風味向上法にどのように影響するかの分析もないとして,訂正前発明はこく付けを必須とするものであると主張する(前記第3。 確かに,「閾 ある【0015】でも,シュクラロースの塩なれ効果が食品の風味向上法にどのように影響するかの分析もないとして,訂正前発明はこく付けを必須とするものであると主張する(前記第3。 確かに,「閾値以下のシュクラロースを食塩水に添加した場合に塩なれが生じるという技術事項」は,「実験例」(実験例2)として記- 39 -載されている。しかし,実験例1及び2については,「【実施例】以下に本発明の食品の風味向上法を説明する。」との記載に続いて,実施例の項目の中で記載されていることからすれば,その記載は,実施例の一環として記載されたものと認められる。実験例1及び2が「実験例」として記載されているのは,実施例1ないし6が,うるちせんべい用調味液等の食品にシュクラロースを添加した場合における効果を検証したものであるのに対し,実験例1及び2は,食品ではなく,食塩含有食イオン交換水にシュクラロースを添加してその効果を検証したものであることによるものと解される。 また,【0015】では,実験例2において確認された塩なれ効果が食品の風味向上法にどのように影響するかについての記載はない。 しかし,前記のとおり,【0008】の記載によれば,本件特許明細書には,「塩なれ効果」が風味を改善するものであることが記載されているといえるから,実験例2において確認された塩なれ効果も食品の風味を改善するものであるといえる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 c 原告は,【0028】の「丸味を付ける」とは,「刺激を丸く感じる」とは異なり,「こく付け」を言い換えたものにすぎず,【0028】が,本件出願に係る発明を,塩なれ効果(塩かどを取る効果)と味に幅を持たせる効果のいずれもが奏功するものに限定していることは明らかであると主張する(前記 付け」を言い換えたものにすぎず,【0028】が,本件出願に係る発明を,塩なれ効果(塩かどを取る効果)と味に幅を持たせる効果のいずれもが奏功するものに限定していることは明らかであると主張する(前記第3。 しかし,の塩かどを取り,こくを付けるという課題と,②食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くするという課題の,二つの課題を含むものであるといえるところ,【0028】の「「塩かど」をなくし,さらに味に幅を持たせる「こく付け」- 40 -あるいは「丸味を付ける」効果を付与」するとの記載は,「塩かど」をなくし,さらに味に幅を持たせるものとして,(a)「こく付け」の効果を付与することと,(b)「丸味を付ける」効果を付与することの,両者に言及したものであると理解することができ,(a)は,上記①の課題に対応する効果として記載され,(b)は,上記②の課題に対応する効果として記載されたものと解するのが相当である。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 訂正事項1ないし3について以上のとおり,訂正前発明は,こく付けを必須とするものとは認められないから,訂正前発明がこく付けを必須とするものであることを前提として,「塩かどを取る」効果のみに限定する訂正事項1ないし3は,特許請求の範囲を「こくを付さない風味向上法」まで拡張するものであるとの原告の前記主張は理由がない。 イ訂正事項4及び5について原告は,訂正事項4及び5は,本件出願に係る発明の「風味向上法」の意義から「こくを付ける」との要件を削除することを意図して行われたものであり,訂正事項1ないし3と相まって特許請求の範囲を拡張するものであり,また,明りょうでない記載の釈明を目的と 「風味向上法」の意義から「こくを付ける」との要件を削除することを意図して行われたものであり,訂正事項1ないし3と相まって特許請求の範囲を拡張するものであり,また,明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないと主張する(前記第3。 しかし,前記アに説示したとおり,訂正事項1ないし3は特許請求の範囲を拡張するものではない。訂正事項4及び5は,訂正事項1ないし3に伴い,発明の詳細な説明の記載を整合するものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 取消事由1-2(訂正事項1及び2は新規事項の追加に該当するものであること)について- 41 -原告は,訂正事項1及び2が特許請求の範囲の拡張に当たらないとすると,訂正発明1及び2の「食塩含有食品の塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる風味向上法」は,「食塩含有食品の塩かどを取り,風味を向上させながら,後続する塩味を十分丸くし,こくを付けることができる食品の風味向上法」と同義となり,こく付けを必須とするものとなるが,本件特許明細書には,シュクラロースの甘味の閾値以下で「こくを付ける」ことは記載も示唆もされていないとして,訂正事項1及び2は,新規事項の追加に該当すると主張する(前記第3。 しかし,ない。 したがって,原告の上記主張は,前提において誤りがあり,採用することができない。 小括よって,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(明確性要件に係る判断の誤り)について 原告は,訂正明細書には,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」との評価はあるが,審決にいう「十分丸く」なったかどうかの評価はなく,また,「刺激を丸く感じる」との評価はパネラーの感想にすぎ 原告は,訂正明細書には,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる」との評価はあるが,審決にいう「十分丸く」なったかどうかの評価はなく,また,「刺激を丸く感じる」との評価はパネラーの感想にすぎず,客観的な判断基準は特定されていないから,どのような場合に訂正発明の技術的範囲に属するのか不明りょうであると主張する(前記第3の2【原告の主張】)。 しかし,実験例1及び2において,シュクラロースの塩なれ効果は,パネル10名による官能により四段階の判断基準に分けて評価され,「± やや塩味がやわらげられていると感じる。」という段階ではなく,「- 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」という段階となって初めて「塩なれ効果」があるとされていることに照らせば,「刺激を丸く感じる」との評価に- 42 -ついての判断基準は特定されており,不明りょうであるとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 原告は,実験例1及び2において,訂正発明1及び2の塩分濃度である「2~8重量%」では,シュクラロースの評価は「×」か「-」であり,「±:やや塩味がやわらげられていると感じる。=塩味が十分丸くなったとはいえない濃度」の記載がないから,「±」と「-」とを区別する判断基準は不明であるとも主張する(前記第3の2【原告の主張】)。 しかし,実験例1について,表1には,イオン交換水100重量部に食塩8重量部を添加した水溶液に,シュクラロース0.01%あるいは甘草抽出混合製剤0.04%を添加した場合は「-」であり,サッカリンNa0.02%,ステビア抽出物0.04%あるいは砂糖6%を添加した場合には「±」となることが示されている。また,実験例2について,表2には,①イオン交換水100重量部に食塩を12重量部添加した水溶液に, 2%,ステビア抽出物0.04%あるいは砂糖6%を添加した場合には「±」となることが示されている。また,実験例2について,表2には,①イオン交換水100重量部に食塩を12重量部添加した水溶液に,シュクラロースを添加すると,「±」から「-」へと評価が変わる点があること,②イオン交換水100重量部に食塩を2,8又は20重量部添加した水溶液に,甘草抽出混合製剤を添加する量を増やすと,「±」から「-」へと評価が変わる点があることが示されている。 そうすると,訂正発明1及び2の塩分濃度である「2~8重量%」において,シュクラロースを添加した場合について「±」の評価がないとしても,実験例1及び2を再現した当業者であれば,上記①及び②における「±」と「-」との評価の違いを参考にして,訂正発明1及び2の塩分濃度である「2~8重量%」において,シュクラロースを添加した場合についても,「±」と「-」を明確に区別して評価することができるとものと認められる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 小括- 43 -よって,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(訂正発明1及び2の容易想到性に係る判断の誤り)について原告は,審決が,本件特許の出願時の技術常識を参酌しても甘味の閾値以下の量添加で塩なれが起きるような技術常識はないと認定したことについて,甲7公報の実施例1の一夜漬用調味液全体に占める調味液Aの割合は0.002%であり,調味液Aの甘味度は70であるから,前記漬物用調味液のショ糖換算の甘味度は0.14%となり,ショ糖の甘味閾値0.31%(訂正明細書の【0007】)を下回るから,本件特許の出願時において,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下の量添加することで,塩なれが起きることは周知であったと主張する り,ショ糖の甘味閾値0.31%(訂正明細書の【0007】)を下回るから,本件特許の出願時において,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下の量添加することで,塩なれが起きることは周知であったと主張する(前記第3。 そこでまず,甲7公報の記載について検討する。 ア甲7公報には以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】【請求項1】 ステビア甘味料,甘草甘味料及び糖質を含有する塩性食品向け液体調味料。 【請求項2】 糖質が異性化糖である請求項1に記載の塩性食品向け液体調味料。 【請求項3】 糖質が糖アルコールである請求項1に記載の塩性食品向け液体調味料。」「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は塩性食品向けの液体調味料に関し,特にステビア甘味料,甘草甘味料及び糖質を含有し,その液体調味料の甘味度を砂糖の50~100倍に調整したものに関するものである。糖質として異性化糖を用いた場合,3成分の組み合わせにより,この液体調味料を使用した塩性食品の味質を向上させると共に,食品工場で使い易い- 44 -形態になった液体調味料に関するものである。・・・」「【課題を解決するための手段】・・・【0008】・・・ステビア甘味料の甘味度は通常砂糖の100~300倍と言われているのが,食塩,砂糖,異性化糖と共存させると2倍程度甘味が上がることが知られている。 【0009】次に本発明に用いる甘草甘味料は・・・純度80%以上(UV法)の甘草製品を使用するのが好ましい。その甘味度は通常砂糖の300倍と言われているが,ステビア甘味料同様,砂糖,異性化糖,食塩との共存下で2倍程度甘味度が高くなることが知られている。」「【0012】【実施例】処方例1:表1の組成でステビア甘味料,甘草甘味料及び異性 るが,ステビア甘味料同様,砂糖,異性化糖,食塩との共存下で2倍程度甘味度が高くなることが知られている。」「【0012】【実施例】処方例1:表1の組成でステビア甘味料,甘草甘味料及び異性化糖を用いた液体調味料A,B,Cを製造した。 ・・・【0013】【表1】 - 45 - (注)ステビア甘味料(ステビアフィンH)の純度測定はHPLC法ステビア甘味料(SKスイートZ3)の純度測定はGC法甘草甘味料の純度測定はUV法・・・【0015】実施例1調味液A,B,Cを用いて表3の組成の一夜漬用調味液を作り,下漬け野菜300kg の一夜漬けを製造した。 - 46 -以上を水で100Lにし良く混合する。この組成の下漬用調味液で製造した一夜漬けは塩辛さも無く非常に味の良いものとなった。」イ前記アのとおり,甲7公報には,ステビア甘味料,甘草甘味料及び異性化糖の3成分を混合し,その甘味度を砂糖(ショ糖)の50~100倍に調整した液体調味料とすることにより,塩性食品の味質を向上させるとともに,食品工場で使いやすい形態になった液体調味料となることが記載されており,実施例1には,甘味度70の調味液A(ステビア甘味料,甘草甘味料及び異性化糖の3成分を混合したもの)を2g,70%ソルビトール液5kg等を含み,100Lとなるよう水で調整した一夜漬け用調味液を調製し,それを用いて製造した一夜漬けは,「塩辛さも無く」非常に味の良いものであったことが記載されている。 しかし,上記の一夜漬け用調味液には,調味液A2gの他に,甘味料の一種であるソルビトールが5kgも含まれているから,一夜漬け用調味液における調味液Aが,ソルビトールの存在に関係なく,その甘味閾値以下の量で「塩辛さ」をなくすことが記 ,調味液A2gの他に,甘味料の一種であるソルビトールが5kgも含まれているから,一夜漬け用調味液における調味液Aが,ソルビトールの存在に関係なく,その甘味閾値以下の量で「塩辛さ」をなくすことが記載されているとは認められない。 そうすると,甲7公報に接した当業者が,その記載から,甘味料を甘味閾値以下の量を添加して「塩なれ効果」があることまでは把握することができるとは認められない。 したがって,甲7公報の記載を根拠として,本件特許の出願時において,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下の量添加することで塩なれが起きることは周知であったとの原告の前記主張は採用することができない。 原告は,審決が,甘味閾値以下の濃度に着目して「塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる」甘味料を探索する動機がないと判断したことについて,塩なれ効果の優れた甘味料を探索することは当たり前の技術課題であったのであるから,添加量の多寡にかかわらず,塩なれ効果のある甘味料としてシュクラロースを選ぶことは,当業者が容易に想到し得たことであり,また,食- 47 -塩の含有量により「塩なれ」が起きる甘味料の添加量が異なることは技術常識であり,甲7公報には,ステビアや甘草甘味料を甘味閾値以下添加することで塩なれが生じることが開示されており,甲13文献には,砂糖の甘味の閾値に近い0.5%で塩なれ効果があることが開示されていたのであるから,甲7公報や甲13文献に接した当業者は,甘味料を甘味閾値以下添加した場合について,塩なれ効果があるかどうかを調べることも,容易に想到すると主張する(前記第3。 ,甲7公報には,甘味閾値以下の量で「塩辛さ」をなくすことが記載されているとは認められないし,また,甲13文献には,甘味閾値に近い濃度である0.5%で砂糖に塩なれ効果がある (前記第3。 ,甲7公報には,甘味閾値以下の量で「塩辛さ」をなくすことが記載されているとは認められないし,また,甲13文献には,甘味閾値に近い濃度である0.5%で砂糖に塩なれ効果がある旨の記載があることは認められるが,甘味の閾値以下で塩なれが観察された甘味料の報告が存在しない以上,甲7公報や甲13文献に接したとしても,甘味閾値以下の濃度に着目して「塩味をやわらげ刺激を丸く感じさせる」甘味料を探索する動機はないといわざるを得ない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 原告は,審決が,甘味閾値以下におけるシュクラロースの効果は,甲13文献から予測できないし,加えて,本件特許の出願時の技術常識及び他の甲号証からも予測できないと判断したことについて,シュクラロースを甘味閾値以下添加した場合と,甘味閾値以上添加した場合とで,塩なれ効果について特段顕著な違いはない,また,甲7公報では甘味の閾値以下の添加量での塩なれ効果が報告されているし,甲13文献では,甘味の閾値に近い添加量での塩なれ効果が報告されているから,シュクラロースの甘味閾値以下で塩なれ効果が確認されたとしても,それは従来の技術常識や他の甲号証から予測できる範囲内であると主張する(前記第3。 しかし,シュクラロースを甘味閾値以下添加した場合と,甘味閾値以上添加した場合とで,塩なれ効果の程度において特段顕著な違いはないとして- 48 -も,シュクラロースを甘味閾値以下添加したときに塩なれ効果が生じること自体が,訂正発明1及び2の顕著な効果であることに変わりはない。また,のとおり,甲7公報には,甘味閾値以下の量で「塩辛さ」をなくすことが記載されているとは認められないし,甲13文献にも,甘味の閾値以下で塩なれが観察された甘味料の報告が存在し とに変わりはない。また,のとおり,甲7公報には,甘味閾値以下の量で「塩辛さ」をなくすことが記載されているとは認められないし,甲13文献にも,甘味の閾値以下で塩なれが観察された甘味料の報告が存在しない以上,シュクラロースを甘味閾値以下添加したときに塩なれ効果が生じること自体,従来の技術常識から予測できるものとはいえない。 原告は,公知技術の塩なれ効果は,料理の分野においては「隠し味」と称されるものであり,甘味を感じなくても効果を奏することは,本件出願前から周知であったと主張する(前記第3の3。 しかし,料理の分野における「隠し味」とは,「ある調味料を,目立たぬ程度にごく少量加え,全体の味を引き立たせる調理法。また,その調味料。」(広辞苑第6版)をいい,甘味料を隠し味として目立たぬ程度に少量用いることは,必ずしも甘味閾値以下の量で用いることを意味するとはいえない。したがって,甘味料を「隠し味」として用いるという周知技術から,シュクラロースを甘味閾値以下の量用いることで塩なれ効果を発揮することが予測の範囲内のものであるとはいえない。 原告は,訂正発明は,「甘味の閾値以下の量」という数値によって限定された,いわゆる数値限定であり,数値限定の場合は,有利な効果について,その数値限定の内と外で量的に顕著な差異があることが要求されているが,実験例2に係る表2において,シュクラロースの甘味の閾値である0.00038重量%以下の範囲であっても,それを超える範囲と比して効果に顕著な差があるとはいえないと主張する(前記第3の3。 しかし,シュクラロースの甘味の閾値である0.00038重量%以下の範囲において,それを超える範囲と比して効果に顕著な差がないとしても,シュクラロースを甘味閾値以下添加したときに塩なれ効果が生じること自体- ラロースの甘味の閾値である0.00038重量%以下の範囲において,それを超える範囲と比して効果に顕著な差がないとしても,シュクラロースを甘味閾値以下添加したときに塩なれ効果が生じること自体- 49 -が,従来の技術常識等から予測できるものでないことに変わりはない。 したがって,原告の上記各主張は採用することができない。 小括よって,原告主張の取消事由3は理由がない。 4 取消事由4(訂正発明3の容易想到性に係る判断の誤り)について 一致点の認定についてア被告は,審決が,訂正発明3と公知の技術事項との一致点を,「塩味をやわらげ刺激を・・・丸く感じさせる」と認定したことについて,訂正明細書の発明の詳細な説明における「塩なれ」とは,単に塩味の強弱のみならず,「刺激の丸さ」という別の二次元的な評価軸によって評価されたものであって,「塩味がやわらげられ」かつ「刺激を丸く感じる」という双方を満足する状態を意味するのに対し,公知の技術事項である「塩なれ」とは,単に塩から味を減少させる,すなわち,塩かどを取ることであり,その意味には,「刺激を丸く感じさせる」ことまでは含んでいないとして,審決の一致点の認定は誤りであると主張する(前記第3の4【被告の主張。 イ公知の技術事項における「塩なれ」の意味についてそこで,まず,公知の技術事項における「塩なれ」の意味について確認する。 以下の公報には,それぞれ次のとおりの記載がある。 a 特開平5-49439号公報(甲15。以下「甲15公報」という。)「従来提供されている一般の食塩は,味覚的に単調であり,いわゆる塩カドと呼ばれる刺激的な塩辛みを有する。」(【0005】)「・・・これを食品に添加することにより・・・塩カドのないま という。)「従来提供されている一般の食塩は,味覚的に単調であり,いわゆる塩カドと呼ばれる刺激的な塩辛みを有する。」(【0005】)「・・・これを食品に添加することにより・・・塩カドのないまろやかな風味が付与される・・・」(【0014】)- 50 -「・・・本発明の大豆ミネラル添加塩によれば,塩カドがなく,まろやかで,好ましい塩味を有し・・・」(【0059】)b 甲16公報「漬物類や塩蔵品においてはいずれも熟成が促進され,塩辛味が直接の刺激として感じられず(塩なれ効果)従来品とくらべて一味違う丸みのある製品が得られる。」(2頁左下欄15行から18行)c 乙15公報「塩なれ効果(塩分の刺激性が温和になることをいう。・・・)」(1頁左欄末行から右欄1行)d 甲6公報「甘味を呈する下記構造式のジヒドロカルコン類を鹹味を有する食品に所定量加えることにより,ジヒドロカルコン類が鹹味を大巾に緩和する効果,すなわち塩なれ効果を有し,嗜好性の高い食品をつくり出すことを見出した。」(1頁右欄8行から13行)e 甲7公報「ステビア甘味料,甘草甘味料は従来から塩性食品の塩辛さを無くする所謂塩なれ効果を期待して単独で或いは甘草とステビアの混合製剤として」(【0002】) 上記各記載によれば,本件出願に係る優先日当時において,「塩なれ」(塩かどを取る)とは,刺激的な塩辛味を取ることを意味しているものと認められる。 なお,甲6公報及び甲7公報には,「塩なれ」とは,「鹹味を大幅に緩和すること」,「塩辛さを無くすこと」と記載され,「刺激」との語は用いられていない。しかし,甲15公報,甲16公報及び乙15公報の記載からすると,「塩辛み(鹹味・塩辛さ)」には本来「刺激」的な 緩和すること」,「塩辛さを無くすこと」と記載され,「刺激」との語は用いられていない。しかし,甲15公報,甲16公報及び乙15公報の記載からすると,「塩辛み(鹹味・塩辛さ)」には本来「刺激」的な部分があることが認められる。したがって,甲6公報及び甲7公報の上- 51 -記記載は,刺激的な鹹味を大幅に緩和する,あるいは刺激的な塩辛さをなくすことをいうものと理解することができる。 ウ訂正明細書における「塩なれ」の意味について被告は,訂正明細書における「塩なれ」とは,単に塩味の強弱のみならず,「刺激の丸さ」という別の二次元的な評価軸によって評価されたものであって,「塩味がやわらげられ」かつ「刺激を丸く感じる」という双方を満足する状態を意味し,公知の技術事項とは異なると主張するが,前記甲15公報には,塩カドを取ることと「まろやかさ」という言葉が並列的に記載されている上,乙15公報には,「塩なれ効果(塩分の刺激性が温和になることをいう。)」との記載がされていることが認められる。そして,上記乙15公報の言葉の意味に照らしてみれば,ここにいう「塩分の刺激性が温和になる」とは,訂正発明にいう「刺激を丸く感じる」ことと,実質的に同じ意味であると解するのが相当である。 なお,被告は,上記主張の根拠として,①訂正明細書の【表1】の備考には,「塩なれ - 塩味がやわらげられ,刺激を丸く感じる。」と記載されており,「塩味がやわらげられ」ることと,「刺激を丸く感じる」ことは,区別される感覚のことであること,②「刺激」とは,専ら「痛覚」で受容する感覚であって「味」とは区別されるべきものであることは,技術常識であることを指摘する(前記第3の4【被告の。 しかし,上記①の点については,訂正明細書には,訂正明細書における「塩な 」で受容する感覚であって「味」とは区別されるべきものであることは,技術常識であることを指摘する(前記第3の4【被告の。 しかし,上記①の点については,訂正明細書には,訂正明細書における「塩なれ」が,公知の技術事項である「塩なれ」とどのように異なるものであるかについての説明が存在しない以上,訂正明細書の【表1】の上記記載をもって,訂正明細書における「塩なれ」が公知の技術事項である「塩なれ」と異なることの根拠になるものと認めることはできない。 また,上記②の点については,一般論としてはともかく,食塩は,「塩カドと呼ばれる刺激的な塩辛みを有する」(甲15公報【0005】)も- 52 -のであることが知られており,「味」である「塩辛み」を「刺激的」と表現していることに照らしても,食塩から感じる感覚において,「味」と「刺激」を明確に区別することができるものとは認められない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 そうすると,「塩なれ」を「刺激的な塩辛味である塩かどが取れ,刺激が所定の程度丸く感じる状態になること」として,これを一致点とした審決の認定に誤りはないというべきである。 相違点の判断について被告は,審決の相違点の判断に誤りがあると主張する(前記第3の4【被。 しかし,被告の上記主張は,訂正発明3と公知の技術事項との一致点の認認定に誤りはない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 小括よって,被告主張の取消事由4は理由がない。 5 まとめ以上のとおり,取消事由1ないし4はいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はない。 第5 結論よって,原告の甲事件請求及び被告の乙事件請求はいずれも理由がないから,これらをそれぞれ棄却することとし, 取消事由1ないし4はいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はない。 第5 結論 よって,原告の甲事件請求及び被告の乙事件請求はいずれも理由がないから,これらをそれぞれ棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官石井忠雄 裁判官西理香 裁判官田中正哉
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