令和2(ネ)1492

裁判年月日・裁判所
令和3年2月18日 大阪高等裁判所
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判決文本文9,300 文字)

- 1 -令和3年2月18日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和2年(ネ)第1492号意匠権侵害差止等請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成30年(ワ)第6029号)口頭弁論終結日令和2年11月13日判決控訴人(一審被告) FFFSMARTLIFECONNECTED 株式会社同訴訟代理人弁護士萬幸男同補佐人弁理士水野勝文同井出真同須澤洋被控訴人(一審原告) 株式会社バッファロー同訴訟代理人弁護士山田威一郎同松本響子同柴田和彦同訴訟代理人弁理士松井宏記同補佐人弁理士鈴木行大主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決主文第3項を取り消す。 2 上記の部分につき,被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要以下で使用する略称は,特に断らない限り,原判決の例による。 - 2 - 1 被控訴人の請求と訴訟の経過本件は,意匠に係る物品を「データ記憶機」とする意匠権(本件意匠権)を有する被控訴人が,控訴人の製造,販売する原判決別紙物件目録記載のデータ記憶機(被告製品1~4)の意匠(被告意匠)及び被告製品のケースの意匠は本件意匠権に係る意匠(本件意匠)に類似するなどとして,控訴人に対し,意匠権に基づき, ,販売する原判決別紙物件目録記載のデータ記憶機(被告製品1~4)の意匠(被告意匠)及び被告製品のケースの意匠は本件意匠権に係る意匠(本件意匠)に類似するなどとして,控訴人に対し,意匠権に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め(意匠法37条1項)及び廃棄(同条2項)を請求するとともに,不法行為に基づき,原判決「事実及び理由」第1の2に記載のとおり,損害賠償金5407万0857円及びうち平成29年6月から令和元年6月までの各月の損害額に対する不法行為の日又はその後の日である各月末日(ただし,令和元年6月のみ同月7日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。 不法行為に基づく損害賠償請求に関し,被控訴人は,意匠法39条の適用による損害額として,同条2項に基づき算定した損害額(ただし,同項による損害額の推定が覆滅される場合は,覆滅部分について同条3項に基づき算定した損害額を加えた額)と同条3項に基づき算定した損害額のいずれか大きな額を採用すべきであると主張している。 原審は,被告製品の製造,販売等の差止請求及び廃棄請求をいずれも認容し,損害賠償請求については,意匠法39条2項に基づき算定した損害額(ただし,同項による損害額の推定がその7割につき覆滅されるとした上で,覆滅部分について同条3項に基づき算定した損害額を加えた額)が同条3項に基づき算定した損害額を上回るとして同条の適用による損害額を3207万3994円と認定し,控訴人に対し,これに弁護士・弁理士費用を加えた3528万1382円及びうち原判決別紙損害一覧表(裁判所の認定)の「原告の損害額」欄記載の各金員に対する「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する限度で被 3528万1382円及びうち原判決別紙損害一覧表(裁判所の認定)の「原告の損害額」欄記載の各金員に対する「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する限度で被控訴人の請求を認容し,その余を棄- 3 -却した。 これに対し,控訴人が,原判決のうち損害賠償請求認容部分のみを不服として控訴した。 2 前提事実原判決「事実及び理由」第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点(1) 本件意匠と被告意匠の類否(争点1)(2) 被告製品のケースの製造,販売による本件意匠権侵害の成否(争点2)(3) 被控訴人の損害の有無及び額(争点3) 4 争点に関する当事者の主張後記5において当審における控訴人の主張を加えるほか,原判決「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 5 当審における控訴人の主張(1) 本件意匠と被告意匠の類否(争点1)ア特許庁の判定控訴人が令和元年7月26日,特許庁に対し,被告意匠と本件意匠について判定を請求したところ,特許庁は,同年12月20日,被告意匠は本件意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないと判定した。 この判定の結果は本件訴訟においても十分に考慮されるべきである。 イ需要者が注目する部分についてデータ記憶機は一般に,目に付きにくい場所に設置されて使用されるため,いったん設置されてしまえばそこに放置されるから,製品の使用時に需要者がこれを積極的に見る機会はほとんどない。したがって,需要者が注目する部分を認定するに当たり,使用時の製品の見え方に偏って認定するのは誤りであり,需要者が現実に製品の選択を行う購入時の製品の見え方を十分に考慮すべきである。そして,製品サンプルを手に- 4 -取る,製品 定するに当たり,使用時の製品の見え方に偏って認定するのは誤りであり,需要者が現実に製品の選択を行う購入時の製品の見え方を十分に考慮すべきである。そして,製品サンプルを手に- 4 -取る,製品パッケージに付された製品画像を視認する,製品のウェブページを視認するといった購入時の視認の態様を考慮すると,製品の正面,平面及び側面における形態の差異はいずれも美感に大きな影響を与えるのであり,需要者の注意を惹く程度は,縦置きの場合の正面,平面及び左右の側面が同程度であると考えるのが相当である。なお,需要者によっては,データ記憶機をインテリアとして扱い,使用時に目に付きやすい位置にあえて設置する場合もあると考えられるが,この場合には,様々な方向から見えるように設置することになり,特定方向からの見え方が重視されることはない。このように,購入態様及び使用態様を総合的に勘案すると,需要者の注意を惹く程度については,縦置きの場合の正面,平面及び左右の側面が同程度であると考えるのが相当であり,これを基に本件意匠の要部を認定すべきである。 ウ要部の認定について乙1意匠,乙2意匠及び乙5意匠に見られるとおり,データ記憶機の製品の正面や平面を平坦とすることはありふれており,また,乙51の「外付けハードディスクに使用されるケース」の意匠(以下「乙51意匠」という。)にも,「平面から正面へとつながる角は,側面視円弧状に湾曲しているとともに,平面から背面につながる角は直角に折れ曲がっている」ことが示されている。したがって,本件意匠の基本的構成態様(C3)は,ありふれており,本件意匠の要部と見ることはできない。 エ類否の判断について前記のとおり,基本的構成態様(C3)を本件意匠の要部と見ることはできず,また,本件意匠と被告意匠については,具体的構 りふれており,本件意匠の要部と見ることはできない。 エ類否の判断について前記のとおり,基本的構成態様(C3)を本件意匠の要部と見ることはできず,また,本件意匠と被告意匠については,具体的構成態様(E3)と(e3),(D3)と(d3),(G3)と(g3),(L3)と(l3),(J3)と(j3),(K3)と(k3)のそれぞれの差異点及びこれらを総合した差異点がその類否の判断に及ぼす影響は大きく,これら差異点は,本件意匠と被告意匠の共通点がもたらす印象- 5 -を凌駕している。 したがって,本件意匠と被告意匠は非類似である。 (2) 被控訴人の損害額(争点3)ア推定覆滅の割合について控訴人の製品の平均単価は9841円であり,全ベンダーの平均単価1万0350円より安い。被控訴人の製品の平均単価が全ベンダーの平均単価より高いことを考慮すれば,控訴人の製品の平均単価は被控訴人の製品の平均単価より圧倒的に安く,被告製品に対する需要は単価の安さに起因することが明らかである。したがって,被告製品の販売がなくなった場合,被告製品に対する需要は,相当程度原告製品には向かわないと考えるのが適当である。 こうした事情をも考慮すると,意匠法39条2項による損害額の推定が覆滅される割合は9割とするのが相当である。 イ実施料率について原判決の引用する乙45によれば,特許権の場合のロイヤルティ料率は,平均値が約3.5%,中央値が約3.3%であり,特許権及び意匠権を組み合わせた場合のロイヤルティ料率は,平均値が約3.1%,中央値が約2.9%である。保護の対象の相違を考慮すれば,特許権及び意匠権それぞれに起因するロイヤルティ料率は,特許権及び意匠権を組み合わせたロイヤルティ料率の一部であることが明らかであり,したがって,意匠権に起 %である。保護の対象の相違を考慮すれば,特許権及び意匠権それぞれに起因するロイヤルティ料率は,特許権及び意匠権を組み合わせたロイヤルティ料率の一部であることが明らかであり,したがって,意匠権に起因するロイヤルティ料率は,上記特許権及び意匠権を組み合わせたロイヤルティ料率の平均値や中央値よりも低いと考えるのが適当である。 したがって,意匠法39条3項に基づく損害額を算定する際の実施料率は,控訴人と被控訴人が直接的な競業関係にあること,意匠権侵害をした者に対して事後的に定められるものであることを考慮したとしても,- 6 -3%程度というべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人による被告製品の製造,販売等の行為について本件意匠権の侵害が成立し(争点1),また,控訴人による被告製品のケースの製造及び譲渡(販売)の行為について本件意匠権の間接侵害(意匠法38条1号)が成立するから(争点2),控訴人は被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償として3528万1382円及びうち原判決別紙「損害一覧表(裁判所の認定)」の「原告の損害額」欄記載の各金員に対する「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う(争点3)と判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2において当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほか,原判決「事実及び理由」第4の1から3までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決25頁11行目の「前面」を「全幅」に改める。 (2) 原判決31頁15行目の「乙4意匠」から16行目の「意匠であり」までを「乙4意匠は,略扁平直方体状の外付け型ハードディスクボックスに関する意匠であり」に改める。 (3) 原判決32頁5行目の「乙5意匠 決31頁15行目の「乙4意匠」から16行目の「意匠であり」までを「乙4意匠は,略扁平直方体状の外付け型ハードディスクボックスに関する意匠であり」に改める。 (3) 原判決32頁5行目の「乙5意匠」から6行目の「意匠である」までを「乙5意匠は,略扁平直方体状のハードディスクケースに関する意匠である」に改める。 (4) 原判決32頁8行目の「前面」を「全面」に改める。 (5) 原判決32頁24行目の「(A1)~(C1)」を「(A3)~(C3)」に改める。 (6) 原判決33頁5行目の「見られる点で」を「見られるものの」に改める。 (7) 原判決33頁15,16行目の「本件意匠の縦筋」を「本件意匠の正面にある縦筋」に改める。 (8) 原判決38頁10行目の「平面及び正面のプレート」を「平面のプレー- 7 -ト及びこれと側面視円弧状に湾曲して一体的に接続する正面のプレート」に改める。 (9) 原判決45頁12行目の「PC環境連動機能」を「PC電源連動機能」に改める。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 本件意匠と被告意匠の類否(争点1)ア需要者が注目する部分について控訴人は,原告製品及び被告製品のようなデータ記憶機について需要者が注目する部分がどこであるかを認定するに当たっては,製品の使用時における見え方のみならず,製品の購入時における見え方をも重視すべきであり,縦置きの場合の正面,平面及び左右の側面のいずれについても,需要者が注目する程度は同程度であると主張する。 本件意匠に係る物品であるデータ記憶機の需要者は,データ記憶機の購入者・使用者であるが,データ記憶機は,単体で持ち歩くものでもなく,テレビやパソコンの付属機器として,ケーブルで接続して使用するものであるから,これを購入するに当たっては,その は,データ記憶機の購入者・使用者であるが,データ記憶機は,単体で持ち歩くものでもなく,テレビやパソコンの付属機器として,ケーブルで接続して使用するものであるから,これを購入するに当たっては,そのような設置状況を専ら念頭に置いて製品の選択をすることになるとみるべきである。そうすると,需要者としては,使用する場合のデータ記憶機の置き方を想定して購入するのであるから,前記引用に係る原判決において説示されているとおり(原判決26頁4行目から28頁13行目まで),需要者の注意を惹く程度については,縦置き・横置き両場合の正面に加え,縦置きの場合の平面並びに平面及び正面を斜め方向から視認する場合の左右の側面がより強く,横置きの場合に上面となる側の側面並びに正面及び上記側面を斜め方向から視認する場合の平面はこれらよりやや弱いものと考えるのが相当である。控訴人の主張は採用することができない。 イ本件意匠の要部について- 8 -控訴人は,本件意匠の基本的構成態様(C3)はありふれているから,本件意匠の要部と見ることはできないと主張し,その根拠として,乙1意匠,乙2意匠及び乙5意匠において製品の正面や平面を平坦としていること及び乙51意匠との類似性を挙げる。 しかし,乙1意匠,乙2意匠及び乙5意匠が,本件意匠の要部を検討するに当たり,本件意匠に先行するものとして考慮すべき公知の意匠ということができないことは,前記のとおり補正した上で引用した原判決において説示されているとおりである(原判決28頁14行目から33頁9行目まで)。控訴人が当審において主張を追加した乙51意匠については,次のとおりである。 証拠(乙51)及び弁論の全趣旨によれば,乙51意匠は,その公告日が平成18年7月11日と認められるから,遅くともその頃には公知になった 主張を追加した乙51意匠については,次のとおりである。 証拠(乙51)及び弁論の全趣旨によれば,乙51意匠は,その公告日が平成18年7月11日と認められるから,遅くともその頃には公知になったと認められ,本件意匠に先行する公知意匠である。そして,乙51意匠は,略扁平直方体状のハードディスクケースに関する意匠であり,本件意匠との対比上,乙51の「左側視圖」を正面図,「右側視圖」を背面図,「俯視圖」を平面図,「仰視圖」を底面図,「前視圖」を右側面図,「後視圖」を左側面図と見ると,その左右の側面には,これらが正面,平面,背面及び底面に各接続する四辺に沿う形で筋が設けられており,また,平面から正面へとつながる角及び底面から背面へとつながる角はいずれも側面視円弧状に湾曲している一方,平面から背面へとつながる角及び底面から正面へとつながる角はいずれも直角である。 しかし,乙51意匠の側面の四辺に沿った上記の筋を本件意匠の「溝部」に相当する構成と見るのは困難であり,その形状及び側面の各辺との間隔等から,正面,平面,背面及び底面にプレートというべき部分が形成されているとの認識を生じさせるものとはいえない。また,乙51意匠の正面,平面,背面及び底面には全周にわたって中央部に縦筋が設- 9 -けられており,平坦ではない。さらに,乙51意匠における高さ(正面視の高さ)と奥行き(側面視の横幅)のサイズ比は本件意匠における高さと奥行きのサイズ比とそれほど異ならないように見えるが,幅(正面視の横幅)と高さのサイズ比及び幅と奥行きのサイズ比は,本件意匠におけるそれぞれのサイズ比とは異なっており,その幅は本件意匠の「プレート」の幅より明らかに狭い(直方体としての厚みがない。)。 そうすると,乙51意匠は,略扁平直方体状で,平面から正面へとつながる角 るそれぞれのサイズ比とは異なっており,その幅は本件意匠の「プレート」の幅より明らかに狭い(直方体としての厚みがない。)。 そうすると,乙51意匠は,略扁平直方体状で,平面から正面へとつながる角が側面視円弧状に湾曲し,平面から背面につながる角が直角に折れ曲がっている点が本件意匠と共通するといえるものの,本件意匠の「プレート」に相当する構成を有しない。そうである以上,乙51意匠の存在をもって,「プレート」の存在を前提とする本件意匠の基本的構成態様(A3)~(C3)が本件意匠の意匠登録出願前に公知であったということはできない。 以上のとおり,基本的構成態様(C3)に関する控訴人の主張を採用することはできず,前記アのとおりの需要者が注目する部分を踏まえれば,需要者は,本件意匠の構成態様のうち基本的構成態様(A3)~(C3)に注目すると考えられるから,これをもって本件意匠の要部と見るべきである。 ウ類否の判断について本件意匠の要部は基本的構成態様(A3)~(C3)であり,これは基本的構成態様の全てである。被告意匠の基本的構成態様の全てである基本的構成態様(a3)~(c3)は(A3)~(C3)と共通であり,さらに,本件意匠と被告意匠は,具体的構成態様(H3)と(h3)及び(I3)と(i3)も共通である。このように,本件意匠と被告意匠とは,幅・高さ・奥行きが同じ比率の略扁平直方体状であって,平面及び正面の全幅にわたり平坦な1枚のプレートが設けられ,平面から正面につながる角のみが側面視円弧状に滑らかに湾曲しているという形態において共通しているのであり,この全体的な形態が- 10 -視覚を通じて需要者に与える印象は強い。したがって,両意匠は,その具体的構成態様の差異点を考慮しても,全体として美感を共通にするというべきであり,被告意 のであり,この全体的な形態が- 10 -視覚を通じて需要者に与える印象は強い。したがって,両意匠は,その具体的構成態様の差異点を考慮しても,全体として美感を共通にするというべきであり,被告意匠は本件意匠に類似するということができる。 なお,特許庁は,令和元年12月20日,本件意匠と被告意匠について,「被告意匠の図面及びその説明により示された『データ記憶機』の意匠は,本件意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。」と判定しているが(乙44,49),その理由及び結論は,既に検討してきた判断と異なるもので,上記判定の結果を考慮すべきであるとする控訴人の主張は採用することができない。 (2) 被控訴人の損害額(争点3)ア推定覆滅の割合について前記引用に係る原判決において説示されているとおり(原判決43頁14行目から51頁13行目まで),本件においては,意匠法39条2項による損害額の推定は,7割の限度で覆滅されるというべきである。 控訴人は,控訴人の製品が被控訴人の製品より安価であることを理由に,覆滅の割合を9割とすべきであると主張する。しかし,証拠(乙19)によれば,ここで控訴人が比較しているのは,外付け型HDD についての控訴人の製品全体の平均単価と被控訴人の製品全体の平均単価であって,原告製品の価格と被告製品の価格がどれだけ違うのかは明らかでない。被告製品が一般に原告製品より安価であるといえるとしても,前記の7割という推定覆滅の程度は,このことをも考慮の対象とした上でのものである。したがって,控訴人の主張を採用することはできない。 イ実施料率について前記引用に係る原判決において説示されているとおり(原判決52頁5行目から53頁21行目まで),本件においては,意匠法39条3項を適用して損害額を認定するに当 できない。 イ実施料率について前記引用に係る原判決において説示されているとおり(原判決52頁5行目から53頁21行目まで),本件においては,意匠法39条3項を適用して損害額を認定するに当たり(同条2項による損害額の推定が- 11 -覆滅される部分について同条3項を適用する場合を含む。),被控訴人が本件意匠の実施に対し受けるべき料率(実施料率)は,5%を下らないというべきである。 控訴人は,アンケート調査結果(乙45)を根拠として,本件における実施料率は3%程度とすべきであると主張する。このアンケート調査結果には,特許権のみの場合のロイヤルティ料率と特許権と意匠権を組み合わせた場合のロイヤルティ料率が示されており,前者は,平均値が約3.5%,中央値が約3.3%であり,後者は,平均値が約3.1%,中央値が約2.9%であるから,確かに控訴人の指摘するとおり,後者の数字の方が若干低くなっている。しかし,このアンケート調査の回答数は必ずしも多くなく,特許権と意匠権を組み合わせた場合のロイヤルティ料率についての回答数は全部で25にすぎないし,意匠権のみの場合のロイヤルティ料率についての調査結果は存在しない。また,特許権,意匠権それぞれ単独でロイヤルティ料率を設定する場合と,これを組み合わせてロイヤルティ料率を設定する場合を比較すると,単純に,単独の場合の料率を足したものが組み合わせた場合の料率になるとは考え難く,むしろ,組み合わせた場合の料率は,単独の場合の料率を足したものより低くなるのが一般的ではないかと考えられる。したがって,このアンケート調査結果は,本件における実施料率を認定するに当たっては,あくまでも参考資料の一つにとどまるといわざるを得ない。これに加え,本件意匠自体の価値,被告製品の需要者がデザイン性を考慮する程度 アンケート調査結果は,本件における実施料率を認定するに当たっては,あくまでも参考資料の一つにとどまるといわざるを得ない。これに加え,本件意匠自体の価値,被告製品の需要者がデザイン性を考慮する程度,原告製品と被告製品とが競合品の関係にあることといった事情を総合的に考慮すれば,本件における実施料率は5%を下らないというべきであり,控訴人の主張を採用することはできない。 3 結論以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄- 12 -却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官倉地康弘 裁判官池町知佐子

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