平成18(行ヒ)50 公文書一部非公開処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年4月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 名古屋高等裁判所 平成16(行コ)52
ファイル
hanrei-pdf-34541.txt

判決文本文7,886 文字)

- 1 -主文 原判決中,別紙目録1及び2記載の部分に関する部分を破棄する。 前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。 上告人のその余の上告を棄却する。 原判決別紙目録1及び2記載の部分に関する訴訟の総費用は,これを3分し,その1を上告人の,その余を被上告人の各負担とする。 理由 上告代理人新海聡ほかの上告受理申立て理由第3について 本件は,愛知県の住民である上告人が,愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号。平成12年愛知県条例第19号による全部改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づき,被上告人に対し,平成8年1月分から3月分の愛知県商工部万博誘致対策局の需用費中食糧費の支出に関する予算執行書,支出金調書等の公開を請求したところ,同9年3月21日,被上告人から,第1審判決別表二記載の予算執行書(以下「本件予算執行書」という。),支出金調書(以下「本件支出金調書」という。)等について,同別表一の「非公開理由」欄記載の理由により,同表の「非公開箇所」欄記載の部分を非公開とする公文書非公開決定(以下「本件非公開決定」という。)を受けたため,同決定のうち,原判決別紙目録1及び2記載の部分等に関する部分の取消しを求める事案である。 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1)本件条例6条1項は,「実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報- 2 -が記録されている公文書については,公文書の公開をしないことができる。」と規定し,その2号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。イ法令又は条例の定めるところにより,何人でも閲覧することができるとされている情報ロ公表することを に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。イ法令又は条例の定めるところにより,何人でも閲覧することができるとされている情報ロ公表することを目的としている情報ハ法令又は条例の規定に基づく許可,免許,届出等に際して実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することが公益上必要であると認められるもの」と規定し,その9号は,「監査,検査,取締り等の計画及び実施要領,争訟又は交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準その他県又は国等の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業若しくは同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に支障を生ずるおそれのあるもの」と規定している。 また,同条2項は,「実施機関は,公文書に前項各号のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において,当該該当する情報に係る部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ,かつ,その分離により公文書の公開の請求の趣旨が損なわれることがないと認められるときは,同項の規定にかかわらず,当該該当する情報に係る部分を除いて,公文書の公開をしなければならない。」と規定している。 (2)本件予算執行書及び本件支出金調書は,いずれも,需用費のうち,会議,懇談,意見交換会,打合せ会等の各種の懇談会(以下「本件各懇談会」という。)の開催に要する経費のうち食事代及び茶代並びに職員の残業に伴う弁当の購入代として支出するいわゆる食糧費の支出のために作成された文書である。本件予算執行- 3 -書のうち第1審判決別表二の番号2,8,9及び11ないし13の文書(以下,同番号2の文書を「本件予算執行書2」といい,その余の本件予算執行書及び本件支出金調書に 文書である。本件予算執行- 3 -書のうち第1審判決別表二の番号2,8,9及び11ないし13の文書(以下,同番号2の文書を「本件予算執行書2」といい,その余の本件予算執行書及び本件支出金調書についても同様に呼称する。)には,懇談会の名称及び議題,懇談会に出席した相手方等の所属名,職名,肩書,氏名等の本件各懇談会の相手方出席者が識別される記載があり,また,本件支出金調書2及び8の摘要欄には,懇談会の名称や肩書等の本件各懇談会の相手方出席者が識別される記載がある(以下,本件各懇談会の相手方出席者が識別されるこれらの記載部分を「相手方識別部分」という。)。これらの文書に記載された相手方出席者の内訳は,別紙「本件各懇談会に出席した相手方出席者の内訳」のとおりである。 (3)被上告人は,本件非公開決定において,相手方出席者の本件各懇談会への出席に係る情報が本件条例6条1項2号及び9号所定の非公開情報に該当することを理由として,上記(2)の相手方識別部分を非公開とした。 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断して,本件非公開決定のうち本件予算執行書2,8,9及び11ないし13並びに本件支出金調書2及び8の各相手方識別部分を非公開とした部分について,上告人の請求を棄却すべきものとした。 (1)相手方出席者の本件各懇談会への出席に関する情報は,当該出席者が公務員(公務員であって大学に在職する学者を含む。以下同じ。)である場合は,本件条例6条1項2号所定の非公開情報に該当しないが,公務員以外の者である場合は,同号所定の非公開情報に該当する。なお,これらの情報は,いずれも同項9号所定の非公開情報には該当しない。 (2)本件予算執行書2及び12並びに本件支出金調書2の各相手方識別部分- 4 -は,これらの文書に係る本件各懇談会の相手 なお,これらの情報は,いずれも同項9号所定の非公開情報には該当しない。 (2)本件予算執行書2及び12並びに本件支出金調書2の各相手方識別部分- 4 -は,これらの文書に係る本件各懇談会の相手方出席者が全員公務員以外の者であるから,本件条例6条1項2号所定の非公開情報に該当する。 (3)本件予算執行書8,9,11及び13並びに本件支出金調書8の各相手方識別部分については,これらの文書に係る本件各懇談会の相手方出席者に公務員のほか公務員以外の者が含まれており,同文書中には公務員の出席に関する情報と公務員以外の者の出席に関する情報とに共通する題名欄等の記載部分があるところ,同部分は,公務員以外の者の懇談会出席に関する情報の一部をも成すものであって,その情報を更に細分化することはできないから,同部分のみを公開することはできない。そうすると,上記文書中の公務員の氏名のみを公開することは,公務員の懇談会出席に関する情報を更に細分化することとなるから許されず,結局,上記文書中の相手方識別部分はすべて本件条例6条1項2号所定の非公開情報に該当することとなる。 しかしながら,原審の上記3(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 本件予算執行書又は本件支出金調書中に,非公開情報に該当しない公務員の懇談会出席に関する情報が記載されている場合には,その記載が上記各文書中のいずれの箇所にあるかを問わず,すなわち,その記載が上記各文書中の「題名」欄ないし「執行の目的」欄,「執行の内容」欄にあるか,あるいはその余の箇所にあるかを問わず,すべてこれを公開すべきであり,このことは,本件の第1次上告審判決の命ずるところである。 また,上記各文書中に,非公開情報に該当しない公務員の懇談会出席に関する情報とこれに該当する公務員以外の者の ,すべてこれを公開すべきであり,このことは,本件の第1次上告審判決の命ずるところである。 また,上記各文書中に,非公開情報に該当しない公務員の懇談会出席に関する情報とこれに該当する公務員以外の者の懇談会出席に関する情報とに共通する記載部- 5 -分がある場合,それ自体非公開情報に該当すると認められる記載部分を除く記載部分は,公開すべき公務員の本件各懇談会出席に関する情報としてこれを公開すべきであり,本件条例6条2項の規定も,このような解釈を前提とするものと解される(最高裁平成10年(行ツ)第167号同15年11月11日第三小法廷判決・裁判集民事211号349頁参照)。 したがって,上記3(3)の各文書中の公務員の氏名や所属名,職名等の出席公務員が識別される部分は,公務員の本件各懇談会出席に関する情報としてすべてこれを公開すべきである。 以上によれば,上記3(3)の各文書中の相手方識別部分がすべて本件条例6条1項2号所定の非公開情報に該当するとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち上記判断に係る部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上記各文書に係る本件非公開決定のうち別紙目録1及び2記載の部分を非公開とした部分は違法であって,同部分について請求を認容した第1審判決は正当であるから,同部分に対する被上告人の控訴を棄却すべきであり,その余の部分については上告人の上告を棄却すべきである。上告人のその余の上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,これを棄却すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官藤田宙靖の補足意見がある。 裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりであ 受理の決定において排除されたので,これを棄却すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官藤田宙靖の補足意見がある。 裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりである。 本件予算執行書又は本件支出金調書中の出席公務員が識別される部分は,これら- 6 -の文書中のいずれの箇所にあるかを問わず公開されるべきであることは,法廷意見の述べるとおりであるが,原審は,当審平成14年2月28日第一小法廷判決(民集56巻2号467頁。以下「平成14年第一小法廷判決」という。)を引用しつつ,本件条例6条2項の解釈として「非公開事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない」という考え方を採用し,この考え方に基づき,本件予算執行書8,9,11及び13並びに本件支出金調書8中の公務員の氏名のみを公開することは,公務員の懇談会出席に関する情報を更に細分化することとなるから許されない,と判断している。この判断が当審判例(平成15年11月11日第三小法廷判決・裁判集民事211号349頁。以下「平成15年第三小法廷判決」という。)に照らし採り得ないことは,法廷意見の示すとおりであるが,原審が上記のとおり当審の他判例を引用することに鑑み,以下に,これら判例相互の関係等について私の考えるところを述べておくこととしたい。 本件条例をも含む我が国の情報公開法制は,「情報」そのものではなく,「情報」の記載された「文書」を開示の対象として採用しており,また,文書を特定して開示請求がされる以上,その開示が請求者にとってどのような意義を持つ(役に立つ)のか,また,開示さ そのものではなく,「情報」の記載された「文書」を開示の対象として採用しており,また,文書を特定して開示請求がされる以上,その開示が請求者にとってどのような意義を持つ(役に立つ)のか,また,開示された文書をどのような目的のために利用するのか等を一切問うことなく,(例外的に法定された不開示事由に該当する情報が記載された文書を除き)請求の対象とされた文書の全体を開示することを原則として構築されている。この目的を可能な限り実現するために,請求の対象とされた文書の中に開示されるべき情報を記載した部分と不開示とされるべき情報を記載した部分とが混在- 7 -している場合に,後者が容易に区分し得る限りにおいて,これを除いた他の部分を全面的に開示しなければならないこととしたのが,本件条例6条2項にもその例をみるような,いわゆる部分開示規定である。このような立法趣旨に照らすとき,これらの規定が,記載された情報それ自体は不開示情報には当らないことが明確であるにもかかわらず,「一体としての(より包括的な)情報の部分」を構成するに過ぎないことを理由に,それが記載された文書の部分が開示義務の対象から外れることを想定しているなどという解釈は,およそ理論的根拠の無いものであると言わざるを得ない。もとより,不開示情報記載部分を除いた他の部分に有意な情報が全く含まれていない場合には,必ずしも開示の対象とする必要の無いことは当然であるが(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)6条1項ただし書参照),例えば本件における「出席した公務員の氏名」が,それ自体,単なる罫線の一部であるとか意味不明の記号の断片などとは異なり,全く有意でないなどとは言えないことは,余りにも明白であろう。ある文書上に記載された有意な情報は,本来,最小単位の情報から,こ れ自体,単なる罫線の一部であるとか意味不明の記号の断片などとは異なり,全く有意でないなどとは言えないことは,余りにも明白であろう。ある文書上に記載された有意な情報は,本来,最小単位の情報から,これらが集積して形成されるより包括的な情報に至るまで,重層構造を成すのであって(例えば,最高裁判所に関する情報の中には,最高裁判所第三小法廷に関する情報が含まれ,同情報の中には,裁判官藤田宙靖に関する情報が含まれ,更にその中には,同裁判官が関与した過去の事件に関する情報が含まれる,等々),行政機関が,そのいずれかの位相をもって開示に値する情報であるか否かを適宜決定する権限を有するなどということは,およそ我が国の現行情報公開法制の想定するところではないというべきである。なお,原審(及びその引用する平成14年第一小法廷判決)が上記のような解釈を行うのは,本件条例には,公開請求に係る公文書に記録されている情報が条例所定の- 8 -非公開情報に該当するにもかかわらず,当該情報の一部を除くことにより,残余の部分のみであれば非公開情報に該当しないことになるものとして,当該残余の部分を公開すべきものとする定め(例えば,情報公開法6条2項のような規定)が存在しないという事実から,条文の文理解釈を行うことによるものであるが,しかし,情報公開法が6条1項に加え更に同条2項の規定を置いたのは,5条1号において非公開事由の一つとされる「個人に関する情報」が,同条2号以下の各非公開情報がその範囲につき「おそれがあるもの」等の限定を付しているのに比して,その語意上甚だ包括的・一般的な範囲にわたるものであるため,そのような性質を持つ「個人に関する情報」を記載した文書についても同条1項の部分開示の趣旨が確実に実現されるように,特に配慮をしたためであるからにほかならない。この 般的な範囲にわたるものであるため,そのような性質を持つ「個人に関する情報」を記載した文書についても同条1項の部分開示の趣旨が確実に実現されるように,特に配慮をしたためであるからにほかならない。この意味において,それは,いわば念のために置かれた,確認規定としての性質を持つものであるに過ぎないのである。このような我が国情報公開法制の基本的な趣旨・構造に思いを致さず,単に例えば情報公開法6条2項が「当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する」という文言を用いているという事実から,専ら形式的な文言解釈により,これと異なる考え方を導き出す原審のような解釈方法は,事の本末を見誤ったものと言わざるを得ず,到底採用することはできない。以上に述べた意味において,原審が引用する平成14年第一小法廷判決及び同判決が引用する最高裁平成13年3月27日第三小法廷判決(民集55巻2号530頁。以下「平成13年第三小法廷判決」という。)の説示するところは,少なくとも法令の解釈を誤るものであり,その限りにおいて,これらの判例は,本来変更されて然るべきものであるということもできよう。 しかし,翻って考えるに,現実の問題は,結局,これらの判例がいう「一体的な- 9 -情報」とは何かに掛かるとみることもできないではない。上記にも触れたとおり,ある情報の一部分について,それ自体がおよそ有意な情報を成さないということであれば,そのようなものを記載した文書の部分が開示義務の対象とはならないことは,例えば情報公開法もまた明文で定めるところである(同法6条1項ただし書)。そうであるとすれば,上記判例がいう「一体的な情報」の範囲を,情報公開法制の上記にみたような本来の趣旨・目的に照らし,最小限の有意な情報という意味に限定して取り扱う限り,本件 法6条1項ただし書)。そうであるとすれば,上記判例がいう「一体的な情報」の範囲を,情報公開法制の上記にみたような本来の趣旨・目的に照らし,最小限の有意な情報という意味に限定して取り扱う限り,本件で問題とされる出席公務員の氏名をすべて公開することと,平成14年第一小法廷判決(及び平成13年第三小法廷判決)との間に,少なくともその結論において,矛盾は生じないこととなる。そして,このような考え方は,平成14年第一小法廷判決より後の当審判決,すなわち,本件第一次上告審判決(平成16年11月26日第二小法廷判決)及び平成15年第三小法廷判決が,いずれも基本的に依拠するところであると考えられるのであって,本判決における法廷意見もまた,これを承継したものというべきである。 (裁判長裁判官上田豊三裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官那須弘平裁判官田原睦夫)- 10 -目録 第1審判決別表二の予算執行書のうち番号8,9,11及び13の各文書中,懇談会の名称及び議題,懇談の相手方等の所属名,職名,肩書,氏名等の懇談会の相手方出席者が識別される部分(公務員(公務員であって大学に在職する学者を含む。)以外の相手方出席者が識別される部分を除く。) 第1審判決別表二の支出金調書のうち番号8の文書中,摘要欄に記載された懇談会の名称や肩書等の懇談会の相手方出席者が識別される部分(公務員以外の相手方出席者が識別される部分を除く。)- 11 -本件各懇談会に出席した相手方出席者の内訳公務員(公務員であって大学公務員(公務員であって大学に在職する学者を含む。)のに在職する学者を含む。)を出席者数除く出席者数本件予算執行書20名全員本件支出金調書2本件予算執行書83名4名本件支出金調書8本件予算執行書913名14名本件予 を含む。)のに在職する学者を含む。)を出席者数除く出席者数本件予算執行書20名全員本件支出金調書2本件予算執行書83名4名本件支出金調書8本件予算執行書913名14名本件予算執行書112名2名本件予算執行書120名全員本件予算執行書131名10名

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る